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JP2019085399A - ビスフェノール化合物の製造方法 - Google Patents

ビスフェノール化合物の製造方法 Download PDF

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JP2019085399A JP2018198556A JP2018198556A JP2019085399A JP 2019085399 A JP2019085399 A JP 2019085399A JP 2018198556 A JP2018198556 A JP 2018198556A JP 2018198556 A JP2018198556 A JP 2018198556A JP 2019085399 A JP2019085399 A JP 2019085399A
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Abstract

【課題】アルデヒド型ビスフェノール化合物の製造方法において、特定の触媒種および第二成分を組み合わせることで、著しく高い位置選択性で4,4’−置換体を効率的かつ容易に得ることを課題とする。【解決手段】フェノール類、アルデヒド類からアルデヒド型ビスフェノール化合物を製造する際に、酸触媒としてヘテロポリ酸、及び特定のメルカプト化合物を共存させて製造することにより、上記課題を解決した。【選択図】なし

Description

本発明は、ビスフェノール化合物の製造方法に関する。詳しくは、特定のビスフェノール化合物の製造工程において、4,4’−置換体を効率良く製造する方法に関する。
2つのフェノール構造がメチレン構造にて架橋されたビスフェノール化合物は、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、アクリレート樹脂、ポリアリレート樹脂等の熱可塑性樹脂の原料や、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂、シアネート樹脂等の熱硬化性樹脂原料、硬化剤、天然ゴム、合成ゴム及び潤滑油などの酸化防止剤、感熱記録体の顕色剤等のほか、殺菌剤、酸化防止剤、防かび剤、難燃剤等の添加剤として広く使用されており、化学工業上重要な化合物である。ビスフェノール化合物はその製造原料に由来する構造の違いによって、ビスフェノールAなどのメチレン架橋部に置換基を2有する化合物(以下、「ケトン型ビスフェノール化合物」と呼称することがある。)群、およびビスフェノールFやビスフェノールEなどのメチレン架橋部に置換基を0または1有する化合物(以下、「アルデヒド型ビスフェノール化合物」と呼称することがある)群に分類できる。これらの中でも特にアルデヒド型ビスフェノール化合物は、メチレン架橋部に水素原子を有することによる酸化防止特性や、化合物の対称性向上に由来する融点の向上および樹脂とした際の結晶特性の向上など、ケトン型ビスフェノール化合物にはない種々の特異な特性の発現が期待されることから、工業的な応用が期待されている化合物である。
ビスフェノール化合物は、通常ケトン類やアルデヒド類などカルボニル類もしくはその誘導体を、フェノール類もしくはその誘導体と酸触媒存在下に縮合させることによって製造されるのが一般的である。製造の際得られる反応混合物は、通常ヒドロキシ基の置換位置が異なる異性体やフェノール類が3以上縮合したオリゴフェノール化合物を含むことが知られており、ビスフェノール化合物の低粘度化、結晶性向上や、樹脂とした際の製造安定性など、種々の面で有利となることから、前記混合物から特定の置換位置にヒドロキシ基が置換したビスフェノール化合物のみを精製処理等で取り出して用いることが一般的になされている。そのため、製造の効率化および精製処理における負荷低減による低コスト化の観点から、製造時に特定の置換位置にヒドロキシ基が置換したビスフェノール化合物、特に工業上応用可能性の広い4,4’−ジヒドロキシ置換体(以下、「4,4’−置換体」と呼称することがある。)を効率良く製造できる方法が強く求められている。
その中でもアルデヒド型ビスフェノール化合物の製造方法として、例えば特許文献1には、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ドデカンの製造方法として、塩酸を触媒としてドデカナールとフェノールを縮合させる方法が記載されている。非特許文献1には、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ノナンの製造方法として、硫酸を触媒としてデカナールとフェノールを縮合させる方法が記載されている。特許文献2には、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)デカンの製造方法として、カチオン交換樹脂を用いてデカナールとフェノールを縮合させる方法が記載されている。特許文献3には、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタンの製造方法として、85%リン酸を溶媒量用いてブタナールとフェノールを反応させる方法が開示されている。また、特許文献4には1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタンの製造方法として、リンタングステン酸を用いてフェノールとホルムアルデヒドを反応させる方法が開示されている。
工業化学雑誌、1965年(59号)94頁
特開昭59−131623号公報 米国特許第3242220号明細書 特開2006−45122号公報 特開平6−32756号公報
しかしながら、本発明者が検討した結果、非特許文献1および特許文献1〜4のいずれの方法においても、反応選択性が低く目的の4,4’−置換体が効率的に得られないことが判明した。さらに、本発明者が検討した結果、代表的な有機酸であるメタンスルホン酸やp−トルエンスルホン酸などのスルホン酸類を触媒とした場合においても同様に、4,4’−置換体が効率的に得られないことが判明した。ビスフェノールAなどケトン型ビスフェノール化合物の製造には前記触媒群が一般的に用いられていることから、ケトン型ビスフェノール化合物とアルデヒド型ビスフェノール化合物の製造工程には本質的に違いがあり、ケトン型ビスフェノール化合物の製造方法をそのままアルデヒド型ビスフェノール化合物の製造方法として適用できないことがわかる。以上から、アルデヒド型ビスフェノール化合物は、前記の通り工業的な応用が期待されているにも関わらず、ケトン型ビスフェノール化合物と異なり4,4’−置換体を容易かつ高選択的に得る方法がないため、その応用が阻害されているという課題が見出された。
本発明者は、上記課題に鑑み、特定のアルデヒド型ビスフェノール化合物の製造方法において、特定の触媒種および第二成分を組み合わせることで、著しく高い位置選択性で4,4’−置換体を効率的かつ容易に得ることができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明の要旨は、以下の[1]〜[7]に存する。
[1] 下記式(1)で表されるビスフェノール化合物の製造方法であって、
少なくともフェノール類、アルデヒド類、ヘテロポリ酸、および下記式(2)で表されるメルカプト化合物を共存させた状態から、下記式(1)で表されるビスフェノール化合物を生成させる工程を含むことを特徴とする、ビスフェノール化合物の製造方法。
Figure 2019085399
[式(1)中、Rは、水素原子もしくは炭素数1〜29の一価の有機基を表し、R、Rはそれぞれ独立に、ハロゲン原子又は炭素数1〜29の一価の有機基を表し、a及びbはそれぞれ独立に0〜4の整数を表す。a又はbが2以上の場合、同一のベンゼン環上にある2以上のR又はRは互いに結合して当該ベンゼン環に縮合する環を形成していてもよい。]
Figure 2019085399
[式(2)中、Rは、炭素数1〜30のn価の脂肪族炭化水素基を表し、nは1〜6の整数を表す。なお、Rの炭素−炭素結合はエステル構造で1〜6回中断されていても良い。]
[2] 前記ヘテロポリ酸の総量が、アルデヒド類の総量に対して0.01モル%以上、0.5モル%以下であることを特徴とする、[1]に記載のビスフェノール化合物の製造方法。
[3] 前記ヘテロポリ酸がケイタングステン酸、リンタングステン酸、もしくはそれらの塩から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする、[1]または[2]に記載のビスフェノール化合物の製造方法。
[4] 前記式(2)で表されるメルカプト化合物の総量が、前記アルデヒド類の総量に対して0.1モル%以上、25モル%以下であることを特徴とする、[1]〜[3]のいずれか1項に記載のビスフェノール化合物の製造方法。
[5] 前記式(2)で表されるメルカプト化合物において、Rがエステル構造で中断されない炭素数1〜30の1価の脂肪族炭化水素基であり、かつnが1であることを特徴とする、[1]〜[4]のいずれか1項に記載のビスフェノール化合物の製造方法。
[6] [1]〜[5]のいずれか1項の製造方法で製造されたビスフェノール化合物を原料として用いることを特徴とする、樹脂の製造方法。
[7] 前記樹脂がポリカーボネート樹脂であることを特徴とする、[6]に記載の樹脂の製造方法。
本発明によれば、アルデヒド型ビスフェノール化合物のうち工業的に応用可能性の広い4,4’−置換体を、高選択的かつ効率的に、工業的規模で製造することができる。
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施の形態の一例であり、本発明はその要旨を超えない限り、以下の記載内容に限定されるものではない。
なお、本明細書において「〜」という表現を用いる場合、その前後の数字または物性値を含む表現として用いるものとする。
[メカニズム]
以下に、本発明の製造方法により効率的に本発明のビスフェノール化合物を製造することができる理由について記載する。
ビスフェノール化合物を製造する際、通常ヒドロキシル基の置換位置が異なる異性体の混合物として得られるが、各異性体の製造過程においてそれぞれ中間体として特定のカチオンを経ることが一般的に知られている。本発明の製造方法を用いることで、ヘテロポリ酸とメルカプト化合物の相乗効果により、目的となる4,4’−置換体の中間体となるカチオンのみを特異的に強く安定化させることができ、結果として本発明のビスフェノール化合物を高選択的に得ることができたと考えられる。さらに、本発明の製造方法は中間体のカチオンに対するヘテロポリ酸およびメルカプト化合物の相乗効果が優れることから、ごく微量のヘテロポリ酸触媒の使用でも効率的に目的のビスフェノール化合物を得ることができることも特徴とする。このことは、工業的な生産を志向する上で大きな利点となると考えられる。
[ビスフェノール化合物]
本発明の製造方法により製造されるビスフェノール化合物(以下、本発明のビスフェノール化合物と呼称する)は、下記式(1)で表されることを特徴とする。
Figure 2019085399
[式(1)中、Rは、水素原子もしくは炭素数1〜29の一価の有機基を表し、R、Rはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子および炭素数1〜29の一価の有機基を表し、a及びbはそれぞれ独立に0〜4の整数を表す。a又はbが2以上の場合、同一のベンゼン環上にある2以上のR又はRは互いに結合して当該ベンゼン環に縮合する環を形成していてもよい。]
[R
式(1)中、Rは、水素原子もしくは炭素数1〜29の一価の有機基を表す。ここで、一価の有機基の例としては、飽和脂肪族炭化水素基、不飽和脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基を含む炭化水素基、もしくはヘテロ原子を含む基などが挙げられる。これらのうち、本発明のビスフェノール化合物を樹脂としたときに柔軟性や耐熱性などの種々の特性を発現させやすい点で、Rは水素原子、飽和脂肪族炭化水素基、不飽和脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基を含む炭化水素基のいずれかであることが好ましく、水素原子、飽和脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基を含む炭化水素基のいずれかであることが特に好ましい。さらに、樹脂としたときに柔軟性などの特性を発現しさせやすい点では水素原子もしくは飽和脂肪族炭化水素基であることが好ましく、炭素数1〜22の飽和脂肪族炭化水素基であることがさらに好ましく、炭素数6〜18の飽和脂肪族炭化水素基であることが特に好ましく、炭素数7〜11の飽和脂肪族炭化水素基であることが特に好ましい。一方、耐熱性などの特性を発現しさせやすい点では芳香族炭化水素基を含む炭化水素基であることが好ましく、その炭素数は6〜22であることがさらに好ましく、6〜18であることが特に好ましく、6〜12であることが特に好ましい。
が炭素数1〜29の飽和脂肪族炭化水素基の場合、直鎖状又は分岐状のアルキル基、一部環状構造を有するアルキル基などが挙げられるが、なかでも得られる樹脂の柔軟性をより効果的に高めることができることから、直鎖状又は分岐状アルキル基であることが好ましく、直鎖状アルキル基がさらに好ましい。
直鎖状アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ヘキシル基、n−へプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基、n−イコシル基、n−ヘンイコシル基、n−ドコシル基、n−トリコシル基、n−テトラコシル基などが挙げられるが、この中でも、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ヘキシル基、n−へプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基などの炭素数1〜18の直鎖状アルキル基が好ましい。なお、本発明のビスフェノール化合物を樹脂とした際に柔軟性などの物性をより発現しやすい点ではアルキル基の炭素数は6〜18であることが好ましく、8〜11であることがさらに好ましく、n−ウンデシル基であることが特に好ましい。一方、本発明のビスフェノール化合物を樹脂とした際に耐熱性などの物性をより発現しやすい点ではアルキル基の炭素数は1〜5であることが好ましく、1〜3であることが特に好ましい。
分岐状アルキル基の具体例としては、メチルエチル基、メチルブチル基、メチルペンチル基、メチルヘキシル基、メチルへプチル基、メチルオクチル基、メチルノニル基、メチルデシル基、メチルウンデシル基、メチルドデシル基、メチルトリデシル基、メチルテトラデシル基、メチルペンタデシル基、メチルヘキサデシル基、メチルヘプタデシル基、メチルオクタデシル基、メチルノナデシル基、メチルイコシル基、メチルイコシル基、メチルヘンイコシル基、メチルドコシル基、メチルトリコシル基;
ジメチルエチル基、ジメチルブチル基、ジメチルペンチル基、ジメチルヘキシル基、ジメチルへプチル基、ジメチルオクチル基、ジメチルノニル基、ジメチルデシル基、ジメチルウンデシル基、ジメチルドデシル基、ジメチルトリデシル基、ジメチルテトラデシル基、ジメチルペンタデシル基、ジメチルヘキサデシル基、ジメチルヘプタデシル基、ジメチルオクタデシル基、ジメチルノナデシル基、ジメチルイコシル基、ジメチルイコシル基、ジメチルヘンイコシル基、ジメチルドコシル基;
トリメチルヘキシル基、トリメチルへプチル基、トリメチルオクチル基、トリメチルノニル基、トリメチルデシル基、トリメチルウンデシル基、トリメチルドデシル基、トリメチルトリデシル基、トリメチルテトラデシル基、トリメチルペンタデシル基、トリメチルヘキサデシル基、トリメチルヘプタデシル基、トリメチルオクタデシル基、トリメチルノナデシル基、トリメチルイコシル基、トリメチルイコシル基、トリメチルヘンイコシル基;
エチルペンチル基、エチルヘキシル基、エチルへプチル基、エチルオクチル基、エチルノニル基、エチルデシル基、エチルウンデシル基、エチルドデシル基、エチルトリデシル基、エチルテトラデシル基、エチルペンタデシル基、エチルヘキサデシル基、エチルヘプタデシル基、エチルオクタデシル基、エチルノナデシル基、エチルイコシル基、エチルイコシル基、エチルヘンイコシル基、エチルドコシル基;
プロピルヘキシル基、プロピルへプチル基、プロピルオクチル基、プロピルノニル基、プロピルデシル基、プロピルウンデシル基、プロピルドデシル基、プロピルトリデシル基、プロピルテトラデシル基、プロピルペンタデシル基、プロピルヘキサデシル基、プロピルヘプタデシル基、プロピルオクタデシル基、プロピルノナデシル基、プロピルイコシル基、プロピルイコシル基、プロピルヘンイコシル基;
ブチルヘキシル基、ブチルへプチル基、ブチルオクチル基、ブチルノニル基、ブチルデシル基、ブチルウンデシル基、ブチルドデシル基、ブチルトリデシル基、ブチルテトラデシル基、ブチルペンタデシル基、ブチルヘキサデシル基、ブチルヘプタデシル基、ブチルオクタデシル基、ブチルノナデシル基、ブチルイコシル基、ブチルヘンイコシル基;
が挙げられる。
これらのうち、エチルペンチル基、エチルヘキシル基、エチルへプチル基、エチルオクチル基、エチルウンデシル基、エチルペンタデシル基等の炭素数7〜17の分岐アルキル基が好ましく、エチルペンチル基、エチルヘキシル基がより好ましく、エチルペンチル基が特に好ましい。
なお、前記分岐アルキル基の例において、分岐の位置は任意である。
一部環状構造を有するアルキル基の具体例としては、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、シクロウンデシル基、シクロドデシル基;
シクロヘキシルメチル基、シクロヘプチルメチル基、シクロオクチルメチル基、シクロノニルメチル基、シクロデシルメチル基、シクロウンデシルメチル基、シクロドデシルメチル基;
シクロヘキシルエチル基、シクロヘプチルエチル基、シクロオクチルエチル基、シクロノニルエチル基、シクロデシルエチル基、シクロウンデシルエチル基、シクロドデシルエチル基;
シクロヘキシルプロピル基、シクロヘプチルプロピル基、シクロオクチルプロピル基、シクロノニルプロピル基、シクロデシルプロピル基、シクロウンデシルプロピル基、シクロドデシルプロピル基;
メチルシクロヘキシル基、メチルシクロヘプチル基、メチルシクロオクチル基、メチルシクロノニル基、メチルシクロデシル基、メチルシクロウンデシル基、メチルシクロドデシル基;
ジメチルシクロヘキシル基、ジメチルシクロヘプチル基、ジメチルシクロオクチル基、ジメチルシクロノニル基、ジメチルシクロデシル基、ジメチルシクロウンデシル基、ジメチルシクロドデシル基;
エチルシクロヘキシル基、エチルシクロヘプチル基、エチルシクロオクチル基、エチルシクロノニル基、エチルシクロデシル基、エチルシクロウンデシル基、エチルシクロドデシル基;
プロピルシクロヘキシル基、プロピルシクロヘプチル基、プロピルシクロオクチル基、プロピルシクロノニル基、プロピルシクロデシル基、プロピルシクロウンデシル基、プロピルシクロドデシル基;
ヘキシルシクロヘキシル基、ヘキシルシクロヘプチル基、ヘキシルシクロオクチル基、ヘキシルシクロノニル基、ヘキシルシクロデシル基、ヘキシルシクロウンデシル基、ヘキシルシクロドデシル基;
メチルシクロヘキシルメチル基、メチルシクロヘプチルメチル基、メチルシクロオクチルメチル基、メチルシクロノニルメチル基、メチルシクロデシルメチル基、メチルシクロウンデシルメチル基、メチルシクロドデシルメチル基;
メチルシクロヘキシルエチル基、メチルシクロヘプチルエチル基、メチルシクロオクチルエチル基、メチルシクロノニルエチル基、メチルシクロデシルエチル基、メチルシクロウンデシルエチル基、メチルシクロドデシルエチル基;
メチルシクロヘキシルプロピル基、メチルシクロヘプチルプロピル基、メチルシクロオクチルプロピル基、メチルシクロノニルプロピル基、メチルシクロデシルプロピル基、メチルシクロウンデシルプロピル基、メチルシクロドデシルプロピル基;
ジメチルシクロヘキシルメチル基、ジメチルシクロヘプチルメチル基、ジメチルシクロオクチルメチル基、ジメチルシクロノニルメチル基、ジメチルシクロデシルメチル基、ジメチルシクロウンデシルメチル基、ジメチルシクロドデシルメチル基;
ジメチルシクロヘキシルエチル基、ジメチルシクロヘプチルエチル基、ジメチルシクロオクチルエチル基、ジメチルシクロノニルエチル基、ジメチルシクロデシルエチル基、ジメチルシクロウンデシルエチル基、ジメチルシクロドデシルエチル基;
ジメチルシクロヘキシルプロピル基、ジメチルシクロヘプチルプロピル基、ジメチルシクロオクチルプロピル基、ジメチルシクロノニルプロピル基、ジメチルシクロデシルプロピル基、ジメチルシクロウンデシルプロピル基、ジメチルシクロドデシルプロピル基、シクロヘキシルシクロヘキシル基;
等が挙げられる。
これらのうち、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、シクロヘキシルメチル基、シクロヘプチルメチル基、シクロオクチルメチル基、シクロノニルメチル基、シクロヘキシルエチル基、シクロヘプチルエチル基、シクロオクチルエチル基等の炭素数6〜10の環状アルキル基又は環状アルキル基を置換基として有するアルキル基が好ましく、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基がより好ましく、シクロヘキシル基が特に好ましい。
なお、前記一部環状構造を有するアルキル基において、置換基の置換位置は任意である。
が炭素数1〜29の不飽和脂肪族炭化水素基である場合の具体例としては、前記直鎖状アルキル基、分岐状アルキル基、及び一部環状構造を有するアルキル基の構造中に1つ以上の炭素−炭素二重結合もしくは三重結合をもつ構造のものであれば特に制限はないが、具体例としては、エテニル基、エチニル基、プロペニル基、プロピニル基、ブチニル基、ブテニル基、ペンチニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、ヘプチニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル基、ノナデセニル基、イコセニル基、ヘンイコセニル基、ドコセニル基、トリコセニル基、テトラコセニル基、4,8,12−トリメチルトリデシル基、ビシクロ[2,2,1]ヘプタ−5−エン−2−イル基等が挙げられる。
これらのうち、エテニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル基などの炭素数18以下の不飽和脂肪族炭化水素基であることが好ましく、エテニル基がさらに好ましい。
が炭素数1〜29の芳香族炭化水素基を含む炭化水素基である場合の具体例としては、フェニル基、4−メチルフェニル基、3,5−ジメチルフェニル基、1−ナフチル基、3−メチルフェニル基、2−メチルフェニル基、2,5−ジメチルフェニル基、9−アントラセニル基、4−tert−ブチルフェニル基、2,4−ジメチルフェニル基、3,4−ジメチルフェニル基、2,3−ジメチルフェニル基、2,4,6−トリメチルフェニル基、4−エチルフェニル基、4−イソプロピルフェニル基、2,4,5−トリメチルフェニル基、3,5−ジ−tert−ブチルフェニル基、4−エチニルフェニル基、4−n−ブチルフェニル基、4−イソブチルフェニル基、4−フェニルエテニルフェニル基、4−フェニルフェニル基、1−アズレニル基、1−メチル−2−(4−イソプロピルフェニル)エチル基、1−メチル−2−(4−tert−ブチルフェニル)エチル基、1−n−ヘキシル−2−フェニルエテニル基等が挙げられる。
これらのうち、フェニル基、4−メチルフェニル基、3,5−ジメチルフェニル基、1−ナフチル基、3−メチルフェニル基、2−メチルフェニル基、2,5−ジメチルフェニル基、9−アントラセニル基、4−tert−ブチルフェニル基、2,4−ジメチルフェニル基、3,4−ジメチルフェニル基、2,3−ジメチルフェニル基、2,4,6−トリメチルフェニル基、4−エチルフェニル基、4−イソプロピルフェニル基、2,4,5−トリメチルフェニル基、3,5−ジ−tert−ブチルフェニル基、4−エチニルフェニル基、4−n−ブチルフェニル基、4−イソブチルフェニル基、4−フェニルエテニルフェニル基、4−フェニルフェニル基などの置換基を有していても良い芳香族炭化水素基が好ましく、フェニル基、4−メチルフェニル基、3,5−ジメチルフェニル基、3−メチルフェニル基、2−メチルフェニル基、2,5−ジメチルフェニル基、4−tert−ブチルフェニル基、2,4−ジメチルフェニル基、3,4−ジメチルフェニル基、2,3−ジメチルフェニル基、2,4,6−トリメチルフェニル基、4−エチルフェニル基、4−イソプロピルフェニル基、2,4,5−トリメチルフェニル基、3,5−ジ−tert−ブチルフェニル基、4−エチニルフェニル基、4−n−ブチルフェニル基、4−イソブチルフェニル基、4−フェニルエテニルフェニル基、4−フェニルフェニル基などの置換基を有していても良いフェニル基がより好ましく、フェニル基、4−メチルフェニル基、3,5−ジメチルフェニル基、3−メチルフェニル基、2−メチルフェニル基、2,5−ジメチルフェニル基、2,4−ジメチルフェニル基、3,4−ジメチルフェニル基、2,3−ジメチルフェニル基、2,4,6−トリメチルフェニル基、2,4,5−トリメチルフェニル基等のフェニル基もしくはメチル基が置換したフェニル基がさらに好ましく、フェニル基が特に好ましい。
が炭素数1〜29のヘテロ原子を含む基である場合の具体例としては、2−シアノフェニル基、3−シアノフェニル基、4−シアノフェニル基などのシアノ基を含む基;
トリブロモメチル基、2−フルオロフェニル基、4−フルオロフェニル基、2−トリフルオロメチルフェニル基、4−トリフルオロメチルフェニル基、2−クロロフェニル基、4−クロロフェニル基、2,3−ジクロロフェニル基、2,4−ジクロロフェニル基、2,5−ジクロロフェニル基、3,4−ジクロロフェニル基、2−ブロモフェニル基、3−ブロモフェニル基、4−ブロモフェニル基、4−ヨードフェニル基などのハロゲン原子を含む基;
2−ヒドロキシフェニル基、3−ヒドロキシフェニル基、4−ヒドロキシフェニル基、2,4−ジヒドロキシフェニル基、4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル基、2−ヒドロキシナフチル基、3,4−ジヒドロキシフェニル基等、4−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルフェニル基、4−(2−ヒドロキシエチル)フェニル基などの水酸基を含む基;
3−(メチルチオ)プロピル基、2−(メチルチオ)ブチル基、2−メトキシフェニル基、4−メトキシフェニル基、4−n−ブトキシフェニル基、4−tert−ブトキシフェニル基、4−ヘキシルオキシフェニル基、3−フェノキシフェニル基、4−フェノキシフェニル基、2,3−ジメトキシフェニル基、2,5−ジメトキシフェニル基、2,6−ジメトキシフェニル基、3,4−ジメトキシフェニル基、3,5−ジメトキシフェニル基、3,4,5−トリメトキシフェニル基、4−メチルチオフェニル基、3−エトキシフェニル基、4−エトキシフェニル基、2−メトキシナフチル基、4−メトキシナフチル基、3,4−メチレンジオキシフェニル基、4−オクタデシルオキシフェニル基などのエーテルもしくはチオエーテル構造を含む基;
2−ジメチルアミノ−1−メチルエテニル基、4−ジメチルアミノフェニル基、4−ジエチルアミノフェニル基などのアミノ基を含む基;
2−ヒドロキシカルボニルフェニル基、4−ヒドロキシカルボニルフェニル基、3−ヒドロキシカルボニル−4−ヒドロキシフェニル基などのカルボキシ基を含む基;
1−(エトキシカルボニル)エチル基、8−メトキシカルボニルオクチル基、4−アセトキシ−3−メトキシフェニル基、3,4−ジアセトキシフェニル基、3−メトキシカルボニルフェニル基、4−メトキシカルボニルフェニル基、3−アセチルフェニル基、3−メトキシ−4−ヒドロキシフェニル基、4−tert−ブトキシカルボニルフェニル基などのカルボニルもしくはエステル構造を含む基;
4−アセトアミドフェニル基、4−メトキシカルボニルアミノフェニル基、フタルイミドメチル基などのアミド構造を含む基;
2−(ジフェニルホスフィノ)フェニル基などのリン原子を含む基;
3−ニトロイソブチル基、2−ニトロフェニル基、3−ニトロフェニル基、4−ニトロフェニル基、2−ヒドロキシ−4−ニトロフェニル基、4−クロロ−2−ニトロフェニル基などのニトロ基を含む基;
トリメチルシリルエチニル基などのケイ素原子を含む基;
2−フリル基、5−メチル−2−フリル基、3−ピラゾリル基、2−イミダゾリル基、4−イミダゾリル基、2−チオフェニル基、3−メチル−2−チオフェニル基、2−チアゾリル基、2−ピリジル基、3−ピリジル基、4−ピリジル基、2−キノリル基、5−ニトロ−2−フリル基、2−(5−メチル−2−フリル)エチル基、N−エチル−3−カルバゾリル基、(5−チオフェニル)−2−チオフェニル基などのヘテロ環を含む基;等が挙げられる。
これらのうち、2−フリル基、5−メチル−2−フリル基、3−ピラゾリル基、2−イミダゾリル基、4−イミダゾリル基、2−チオフェニル基、3−メチル−2−チオフェニル基、2−チアゾリル基、2−ピリジル基、3−ピリジル基、4−ピリジル基、2−キノリル基、5−ニトロ−2−フリル基、2−(5−メチル−2−フリル)エチル基、N−エチル−3−カルバゾリル基、(5−チオフェニル)−2−チオフェニル基などのヘテロ環を含む基が好ましく、2−フリル基、5−メチル−2−フリル基、2−チオフェニル基、3−メチル−2−チオフェニル基、2−チアゾリル基、(5−メチル−2−フリル)エチル基、N−エチル−3−カルバゾリル基、(5−チオフェニル)−2−チオフェニル基などの5員環を含む基であることがさらに好ましく、2−フリル基、もしくは2−チオフェニル基であることが特に好ましい。
[RおよびR
式(1)中のRおよびRはそれぞれ独立に、ハロゲン原子および炭素数1〜29の一価の有機基を表す。ここで、ハロゲン原子の具体例としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられ、炭素数1〜29の一価の有機基の具体例としては、Rで表される炭素数1〜29の一価の有機基として挙げられた具体例が挙げられる。これらのうち、炭素数1〜29の炭化水素基であることが本発明のビスフェノール化合物を樹脂とした時に柔軟性や耐熱性などの種々の特性を発現させやすい点で好ましく、炭素数1〜15の炭化水素基であることがさらに好ましく、炭素数1〜6の炭化水素基であることがより好ましく、メチル基、エチル基、アリル基などの炭素数1〜3の置換基であることがその中でも好ましく、メチル基が最も好ましい。
なお、RおよびRは同一であることが本発明のビスフェノール化合物を容易に製造しやすい点で好ましい。
また、式(1)におけるRおよびRの結合位置は特に規定されないが、ヒドロキシル基に対してオルト位に結合していることが本発明のビスフェノール化合物を用いて良好な物性の樹脂を得やすい点で好ましい。
[aおよびb]
a及びbはそれぞれ独立に0〜4の整数を表す。aまたはbが2以上の場合、同一のベンゼン環上にある2以上のR又はRは互いに結合して当該ベンゼン環に縮合する環を形成していてもよい。
ここで、aまたはbが2以上の場合、2以上のRまたはRはそれぞれ同一であってもよく、異なるものであってもよい。また、2以上のRまたはRのうち2つ以上が互いに結合して、当該ベンゼン環に縮合する環を形成してもよい。なお、aおよびbは同一であることが本発明のビスフェノール化合物を容易に製造しやすい点で好ましく、本発明のビスフェノール化合物を含む樹脂とした際に柔軟性などの優れた物性を付与しやすい点で0または1であることが好ましく、0であることが特に好ましい。
[ビスフェノールの例示]
本発明のビスフェノールの具体例を以下に例示する。なお、本発明のビスフェノールは以下の具体例に何ら限定されるものではない。
Figure 2019085399
Figure 2019085399
Figure 2019085399
なかでも、本発明のビスフェノール化合物としては、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン(化合物P−1)
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン(化合物P−2)
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(化合物P−3)
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン(化合物P−4)
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン(化合物P−5)
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサン(化合物P−6)
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン(化合物P−7)
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン(化合物P−8)
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ノナン(化合物P−9)
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)デカン(化合物P−10)
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ウンデカン(化合物P−11)
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ドデカン(化合物P−12)
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)トリデカン(化合物P−13)
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタデカン(化合物P−17)
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−エチルヘキサン(化合物P−22)
3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロピレン(化合物P−38)
α,α−ビス(4−ヒドロキシフェニル)トルエン(化合物P−45)
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−(4−メチルチオフェニル)メタン(P−75)
1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)ドデカン(P−123)
1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)ドデカン(P−128)
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−(4−カルボキシフェニル)メタン(P−137)
がさらに好ましく、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ノナン (化合物P−9)
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)デカン (化合物P−10)
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ウンデカン (化合物P−11)
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ドデカン (化合物P−12)
1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)ドデカン(P−123)
1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)ドデカン(P−128)
が特に好ましい。このようなビスフェノール化合物は、樹脂原料や顕色剤の原料として特に好適に用いることができる。
[アルデヒド類]
本発明のビスフェノール化合物は、後述のモノフェノール化合物と、アルデヒド類を縮合させて製造することを特徴とする。ここで、アルデヒド類とは、アルデヒド化合物、アセタール化合物、チオアセタール化合物、トリオキサン化合物などのアルデヒド化合物もしくは分解してアルデヒド構造を生成する化合物の総称を表す。なかでも、副生物の生成量が少なく、さらには副生物が水であることより精製工程が簡略化でき廃棄物も少ないという点より、アルデヒド化合物を原料として含むことが好ましい。
前記アルデヒド化合物の具体例としては、ホルムアルデヒド、直鎖状アルキルアルデヒド、分岐状アルキルアルデヒド、一部環状構造を有するアルキルアルデヒド、不飽和結合を含む炭化水素基を有するアルデヒド、芳香族炭化水素基を含む炭化水素基を有するアルデヒド、ヘテロ原子を含むアルデヒド等が挙げられる。
これらのうち、本発明のビスフェノール化合物を樹脂としたときに柔軟性や耐熱性などの種々の特性を発現しさせやすい点で、ホルムアルデヒド、直鎖状アルキルアルデヒド、分岐状アルキルアルデヒド、一部環状構造を有するアルキルアルデヒド、不飽和結合を含む炭化水素基を有するアルデヒド、芳香族炭化水素基を含む炭化水素基を有するアルデヒド、又はヘテロ原子を含むアルデヒドのいずれかであることが好ましく、ホルムアルデヒド、直鎖状アルキルアルデヒド、分岐状アルキルアルデヒド、芳香族炭化水素基を含む炭化水素基を有するアルデヒドのいずれかであることが特に好ましい。さらに、樹脂としたときに柔軟性などの特性を発現しさせやすい点ではホルムアルデヒド、直鎖状アルキルアルデヒド、分岐状アルキルアルデヒド、一部環状構造を有するアルキルアルデヒドのいずれかであることが好ましく、ホルムアルデヒドもしくは直鎖状アルキルアルデヒドであることがさらに好ましく、直鎖状アルキルアルデヒドであることが特に好ましい。一方、耐熱性などの特性を発現しさせやすい点では芳香族炭化水素基を含む炭化水素基を有するアルデヒドであることが好ましい。具体的には、前記式(1)で表されるビスフェノール化合物を製造するには、下記式(3)で表されるアルデヒド化合物が使用される。
CHO (3)
[式(3)中、Rは式(1)におけると同義である。]
直鎖状アルキルアルデヒドの具体例としては、エタナール、n−プロパナール、n−ブタナール、n−ペンタナール、n−ヘプタナール、n−オクタナール、n−ノナナール、n−デカナール、n−ウンデカナール、n−ドデカナール、n−トリデカナール、n−テトラデカナール、n−ペンタデカナール、n−ヘキサデカナール、n−ヘプタデカナール、n−オクタデカナール、n−ノナデカナール、n−ノナデシルアルデヒド、n−イコシルアルデヒド、n−ヘンイコシルアルデヒド、n−ドコシルアルデヒド、n−トリコシルアルデヒド、n−テトラコシルアルデヒドなどが挙げられるが、これらのうち、エタナール、n−プロパナール、n−ブタナール、n−ペンタナール、n−ヘプタナール、n−オクタナール、n−ノナナール、n−デカナール、n−ウンデカナール、n−ドデカナール、n−ヘキサデカナール、n−オクタデカナール、n−ノナデカナールなど炭素数1〜19の直鎖状アルキルアルデヒドが好ましい。なお、本発明のビスフェノール化合物を樹脂とした際に柔軟性などの物性を発現しやすい点では、直鎖状アルキルアルデヒドの炭素数は7〜19であることが好ましく、9〜12であることがさらに好ましく、直鎖状アルキルアルデヒドはn−ドデカナールであることが特に好ましい。一方、本発明のビスフェノール化合物を樹脂とした際に耐熱性などの物性を発現しやすい点では炭素数1〜6の直鎖状アルキルアルデヒドであることが好ましく、炭素数1〜4の直鎖状アルキルアルデヒドであることが特に好ましい。
分岐状アルキルアルデヒドの具体例としては、メチルエチルアルデヒド、メチルプロピルアルデヒド、メチルブチルアルデヒド、メチルペンチルアルデヒド、メチルヘキシルアルデヒド、メチルへプチルアルデヒド、メチルオクチルアルデヒド、メチルノニルアルデヒド、メチルデシルアルデヒド、メチルウンデシルアルデヒド、メチルドデシルアルデヒド、メチルトリデシルアルデヒド、メチルテトラデシルアルデヒド、メチルペンタデシルアルデヒド、メチルヘキサデシルアルデヒド、メチルヘプタデシルアルデヒド、メチルオクタデシルアルデヒド、メチルノナデシルアルデヒド、メチルイコシルアルデヒド、メチルイコシルアルデヒド、メチルヘンイコシルアルデヒド、メチルドコシルアルデヒド、メチルトリコシルアルデヒド;
ジメチルエチルアルデヒド、ジメチルプロピルアルデヒド、ジメチルブチルアルデヒド、ジメチルペンチルアルデヒド、ジメチルヘキシルアルデヒド、ジメチルへプチルアルデヒド、ジメチルオクチルアルデヒド、ジメチルノニルアルデヒド、ジメチルデシルアルデヒド、ジメチルウンデシルアルデヒド、ジメチルドデシルアルデヒド、ジメチルトリデシルアルデヒド、ジメチルテトラデシルアルデヒド、ジメチルペンタデシルアルデヒド、ジメチルヘキサデシルアルデヒド、ジメチルヘプタデシルアルデヒド、ジメチルオクタデシルアルデヒド、ジメチルノナデシルアルデヒド、ジメチルイコシルアルデヒド、ジメチルイコシルアルデヒド、ジメチルヘンイコシルアルデヒド、ジメチルドコシルアルデヒド;
トリメチルヘキシルアルデヒド、トリメチルへプチルアルデヒド、トリメチルオクチルアルデヒド、トリメチルノニルアルデヒド、トリメチルデシルアルデヒド、トリメチルウンデシルアルデヒド、トリメチルドデシルアルデヒド、トリメチルトリデシルアルデヒド、トリメチルテトラデシルアルデヒド、トリメチルペンタデシルアルデヒド、トリメチルヘキサデシルアルデヒド、トリメチルヘプタデシルアルデヒド、トリメチルオクタデシルアルデヒド、トリメチルノナデシルアルデヒド、トリメチルイコシルアルデヒド、トリメチルイコシルアルデヒド、トリメチルヘンイコシルアルデヒド;
エチルペンチルアルデヒド、エチルヘキシルアルデヒド、エチルへプチルアルデヒド、エチルオクチルアルデヒド、エチルノニルアルデヒド、エチルデシルアルデヒド、エチルウンデシルアルデヒド、エチルドデシルアルデヒド、エチルトリデシルアルデヒド、エチルテトラデシルアルデヒド、エチルペンタデシルアルデヒド、エチルヘキサデシルアルデヒド、エチルヘプタデシルアルデヒド、エチルオクタデシルアルデヒド、エチルノナデシルアルデヒド、エチルイコシルアルデヒド、エチルイコシルアルデヒド、エチルヘンイコシルアルデヒド、エチルドコシルアルデヒド;
プロピルヘキシルアルデヒド、プロピルへプチルアルデヒド、プロピルオクチルアルデヒド、プロピルノニルアルデヒド、プロピルデシルアルデヒド、プロピルウンデシルアルデヒド、プロピルドデシルアルデヒド、プロピルトリデシルアルデヒド、プロピルテトラデシルアルデヒド、プロピルペンタデシルアルデヒド、プロピルヘキサデシルアルデヒド、プロピルヘプタデシルアルデヒド、プロピルオクタデシルアルデヒド、プロピルノナデシルアルデヒド、プロピルイコシルアルデヒド、プロピルイコシルアルデヒド、プロピルヘンイコシルアルデヒド;
ブチルヘキシルアルデヒド、ブチルへプチルアルデヒド、ブチルオクチルアルデヒド、ブチルノニルアルデヒド、ブチルデシルアルデヒド、ブチルウンデシルアルデヒド、ブチルドデシルアルデヒド、ブチルトリデシルアルデヒド、ブチルテトラデシルアルデヒド、ブチルペンタデシルアルデヒド、ブチルヘキサデシルアルデヒド、ブチルヘプタデシルアルデヒド、ブチルオクタデシルアルデヒド、ブチルノナデシルアルデヒド、ブチルイコシルアルデヒド、ブチルヘンイコシルアルデヒド;
等が挙げられる。
これらのうち、エチルペンチルアルデヒド、エチルヘキシルアルデヒド、エチルへプチルアルデヒド、エチルオクチルアルデヒド、エチルウンデシルアルデヒド、エチルペンタデシルアルデヒド等の炭素数8〜18の分岐状アルキルアルデヒドが好ましく、エチルペンチルアルデヒド、エチルヘキシルアルデヒドがより好ましく、エチルペンチルアルデヒドが特に好ましい。
なお、前記分岐状アルキルアルデヒドの例において、分岐の位置は任意である。
一部環状構造を有するアルキルアルデヒドの具体例としては、ホルミルシクロヘキサン、ホルミルシクロヘプタン、ホルミルシクロオクタン、ホルミルシクロノナン、ホルミルシクロデカン、ホルミルシクロウンデカン、ホルミルシクロドデカン;
シクロヘキシルメチルアルデヒド、シクロヘプチルメチルアルデヒド、シクロオクチルメチルアルデヒド、シクロノニルメチルアルデヒド、シクロデシルメチルアルデヒド、シクロウンデシルメチルアルデヒド、シクロドデシルメチルアルデヒド;
シクロヘキシルエチルアルデヒド、シクロヘプチルエチルアルデヒド、シクロオクチルエチルアルデヒド、シクロノニルエチルアルデヒド、シクロデシルエチルアルデヒド、シクロウンデシルエチルアルデヒド、シクロドデシルエチルアルデヒド;
シクロヘキシルプロピルアルデヒド、シクロヘプチルプロピルアルデヒド、シクロオクチルプロピルアルデヒド、シクロノニルプロピルアルデヒド、シクロデシルプロピルアルデヒド、シクロウンデシルプロピルアルデヒド、シクロドデシルプロピルアルデヒド;
メチルシクロヘキシルアルデヒド、メチルシクロヘプチルアルデヒド、メチルシクロオクチルアルデヒド、メチルシクロノニルアルデヒド、メチルシクロデシルアルデヒド、メチルシクロウンデシルアルデヒド、メチルシクロドデシルアルデヒド;
ジメチルシクロヘキシルアルデヒド、ジメチルシクロヘプチルアルデヒド、ジメチルシクロオクチルアルデヒド、ジメチルシクロノニルアルデヒド、ジメチルシクロデシルアルデヒド、ジメチルシクロウンデシルアルデヒド、ジメチルシクロドデシルアルデヒド;
エチルシクロヘキシルアルデヒド、エチルシクロヘプチルアルデヒド、エチルシクロオクチルアルデヒド、エチルシクロノニルアルデヒド、エチルシクロデシルアルデヒド、エチルシクロウンデシルアルデヒド、エチルシクロドデシルアルデヒド;
プロピルシクロヘキシルアルデヒド、プロピルシクロヘプチルアルデヒド、プロピルシクロオクチルアルデヒド、プロピルシクロノニルアルデヒド、プロピルシクロデシルアルデヒド、プロピルシクロウンデシルアルデヒド、プロピルシクロドデシルアルデヒド;
ヘキシルシクロヘキシルアルデヒド、ヘキシルシクロヘプチルアルデヒド、ヘキシルシクロオクチルアルデヒド、ヘキシルシクロノニルアルデヒド、ヘキシルシクロデシルアルデヒド、ヘキシルシクロウンデシルアルデヒド、ヘキシルシクロドデシルアルデヒド;
メチルシクロヘキシルメチルアルデヒド、メチルシクロヘプチルメチルアルデヒド、メチルシクロオクチルメチルアルデヒド、メチルシクロノニルメチルアルデヒド、メチルシクロデシルメチルアルデヒド、メチルシクロウンデシルメチルアルデヒド、メチルシクロドデシルメチルアルデヒド;
メチルシクロヘキシルエチルアルデヒド、メチルシクロヘプチルエチルアルデヒド、メチルシクロオクチルエチルアルデヒド、メチルシクロノニルエチルアルデヒド、メチルシクロデシルエチルアルデヒド、メチルシクロウンデシルエチルアルデヒド、メチルシクロドデシルエチルアルデヒド;
メチルシクロヘキシルプロピルアルデヒド、メチルシクロヘプチルプロピルアルデヒド、メチルシクロオクチルプロピルアルデヒド、メチルシクロノニルプロピルアルデヒド、メチルシクロデシルプロピルアルデヒド、メチルシクロウンデシルプロピルアルデヒド、メチルシクロドデシルプロピルアルデヒド;
ジメチルシクロヘキシルメチルアルデヒド、ジメチルシクロヘプチルメチルアルデヒド、ジメチルシクロオクチルメチルアルデヒド、ジメチルシクロノニルメチルアルデヒド、ジメチルシクロデシルメチルアルデヒド、ジメチルシクロウンデシルメチルアルデヒド、ジメチルシクロドデシルメチルアルデヒド;
ジメチルシクロヘキシルエチルアルデヒド、ジメチルシクロヘプチルエチルアルデヒド、ジメチルシクロオクチルエチルアルデヒド、ジメチルシクロノニルエチルアルデヒド、ジメチルシクロデシルエチルアルデヒド、ジメチルシクロウンデシルエチルアルデヒド、ジメチルシクロドデシルエチルアルデヒド;
ジメチルシクロヘキシルプロピルアルデヒド、ジメチルシクロヘプチルプロピルアルデヒド、ジメチルシクロオクチルプロピルアルデヒド、ジメチルシクロノニルプロピルアルデヒド、ジメチルシクロデシルプロピルアルデヒド、ジメチルシクロウンデシルプロピルアルデヒド、ジメチルシクロドデシルプロピルアルデヒド、シクロヘキシルシクロヘキシルアルデヒド;
等が挙げられる。
これらのうち、ホルミルシクロヘキサン、ホルミルシクロヘプタン、ホルミルシクロオクタン、ホルミルシクロノナン、ホルミルシクロデカン、メチルシクロヘキシルアルデヒド、メチルシクロヘプチルアルデヒド、メチルシクロオクチルアルデヒド、ジメチルシクロヘキシルアルデヒド、ジメチルシクロヘプチルアルデヒド、エチルシクロヘキシルアルデヒド、エチルシクロヘプチルアルデヒド等の炭素数7〜11の環状構造を有するアルキルアルデヒドが好ましく、ホルミルシクロヘキサン、ホルミルシクロヘプタン、ホルミルシクロオクタンがより好ましく、ホルミルシクロヘキサンが特に好ましい。
なお、前記環状構造を有するアルキルアルデヒドの例において、ホルミル基の置換位置は任意である。
不飽和結合を含む炭化水素基を有するアルデヒドの具体例としては、前記直鎖状アルキルアルデヒド、分岐状アルキルアルデヒド、及び一部環状構造を有するアルキルアルデヒドの構造中に1つ以上の炭素−炭素二重結合をもつ構造のものであれば特に制限はないが、具体例としては、ビニルアルデヒド、エテニルアルデヒド、n−プロペニルアルデヒド、n−プロピニルアルデヒド、n−ブテニルアルデヒド、n−ペンテニルアルデヒド、n−ヘキセニルアルデヒド、n−へプテニルアルデヒド、n−オクテニルアルデヒド、n−ノネニルアルデヒド、n−デセニルアルデヒド、n−ウンデセニルアルデヒド、n−ドデセニルアルデヒド、n−トリデセニルアルデヒド、n−テトラデセニルアルデヒド、n−ペンタデセニルアルデヒド、n−ヘキサデセニルアルデヒド、n−ヘプタデセニルアルデヒド、n−オクタデセニルアルデヒド、n−ノナデセニルアルデヒド、n−イコセニルアルデヒド、n−ヘンイコセニルアルデヒド、n−ドコセニルアルデヒド、n−トリコセニルアルデヒド、n−テトラコセニルアルデヒド、4,8,12−トリメチルトリデシルアルデヒド、ノルボルネンカルボキシアルデヒド等が挙げられる。
これらのうち、ビニルアルデヒド、n−プロペニルアルデヒド、n−ブテニルアルデヒド、n−ペンテニルアルデヒド、n−ヘキセニルアルデヒド、n−ヘプテニルアルデヒド、n−オクテニルアルデヒド、n−ノネニルアルデヒド、n−デセニルアルデヒド、n−ウンデセニルアルデヒド、n−ドデセニルアルデヒド、n−トリデセニルアルデヒド、n−テトラデセニルアルデヒド、n−ペンタデセニルアルデヒド、n−ヘキサデセニルアルデヒド、n−ヘプタデセニルアルデヒド、n−オクタデセニルアルデヒドなどの炭素数19以下の不飽和脂肪族炭化水素アルデヒドであることが好ましく、ビニルアルデヒドがさらに好ましい。
なお、上記不飽和結合を有するアルデヒドの例において、不飽和結合の位置は任意である。
芳香族炭化水素基を含む炭化水素基を有するアルデヒドの具体例としては、ベンズアルデヒド、4−メチルベンズアルデヒド、3,5−ジメチルベンズアルデヒド、1−ナフチルアルデヒド、3−メチルベンズアルデヒド、2−メチルベンズアルデヒド、2,5−ジメチルベンズアルデヒド、9−アントラセニルアルデヒド、4−tert−ブチルベンズアルデヒド、2,4−ジメチルベンズアルデヒド、3,4−ジメチルベンズアルデヒド、2,3−ジメチルベンズアルデヒド、2,4,6−トリメチルベンズアルデヒド、4−エチルベンズアルデヒド、4−イソプロピルベンズアルデヒド、2,4,5−トリメチルベンズアルデヒド、3,5−ジ−tert−ブチルベンズアルデヒド、4−エチニルベンズアルデヒド、4−n−ブチルベンズアルデヒド、4−イソブチルベンズアルデヒド、4−フェニルエテニルベンズアルデヒド、4−フェニルベンズアルデヒド、1−アズレニルアルデヒド、1−メチル−2−(4−イソプロピルフェニル)エチルアルデヒド、1−メチル−2−(4−tert−ブチルフェニル)エチルアルデヒド、1−n−ヘキシル−2−フェニルエテニルアルデヒド等が挙げられる。
これらのうち、ベンズアルデヒド、4−メチルベンズアルデヒド、3,5−ジメチルベンズアルデヒド、1−ナフチルアルデヒド、3−メチルベンズアルデヒド、2−メチルベンズアルデヒド、2,5−ジメチルベンズアルデヒド、9−アントラセニルアルデヒド、4−tert−ブチルベンズアルデヒド、2,4−ジメチルベンズアルデヒド、3,4−ジメチルベンズアルデヒド、2,3−ジメチルベンズアルデヒド、2,4,6−トリメチルベンズアルデヒド、4−エチルベンズアルデヒド、4−イソプロピルベンズアルデヒド、2,4,5−トリメチルベンズアルデヒド、3,5−ジ−tert−ブチルベンズアルデヒド、4−エチニルベンズアルデヒド、4−n−ブチルベンズアルデヒド、4−イソブチルベンズアルデヒド、4−フェニルエテニルベンズアルデヒド、4−フェニルベンズアルデヒドなどの芳香族炭化水素基にホルミル基が結合した化合物が好ましく、ベンズアルデヒド、4−メチルベンズアルデヒド、3,5−ジメチルベンズアルデヒド、3−メチルベンズアルデヒド、2−メチルベンズアルデヒド、2,5−ジメチルベンズアルデヒド、4−tert−ブチルベンズアルデヒド、2,4−ジメチルベンズアルデヒド、3,4−ジメチルベンズアルデヒド、2,3−ジメチルベンズアルデヒド、2,4,6−トリメチルベンズアルデヒド、4−エチルベンズアルデヒド、4−イソプロピルベンズアルデヒド、2,4,5−トリメチルベンズアルデヒド、3,5−ジ−tert−ブチルベンズアルデヒド、4−エチニルベンズアルデヒド、4−n−ブチルベンズアルデヒド、4−イソブチルベンズアルデヒド、4−フェニルエテニルベンズアルデヒド、4−フェニルベンズアルデヒドなどのフェニル基にホルミル基が結合した化合物がより好ましく、ベンズアルデヒド、4−メチルベンズアルデヒド、3,5−ジメチルベンズアルデヒド、3−メチルベンズアルデヒド、2−メチルベンズアルデヒド、2,5−ジメチルベンズアルデヒド、2,4−ジメチルベンズアルデヒド、3,4−ジメチルベンズアルデヒド、2,3−ジメチルベンズアルデヒド、2,4,6−トリメチルベンズアルデヒド、2,4,5−トリメチルベンズアルデヒド等のベンズアルデヒドもしくはメチル基が置換した化合物がさらに好ましく、ベンズアルデヒドが特に好ましい。
ヘテロ原子を含むアルデヒドの具体例としては、2−シアノベンズアルデヒド、3−シアノベンズアルデヒド、4−シアノベンズアルデヒドなどのシアノ基を含むアルデヒド;
トリブロモメチルアルデヒド、2−フルオロベンズアルデヒド、4−フルオロベンズアルデヒド、2−トリフルオロメチルベンズアルデヒド、4−トリフルオロメチルベンズアルデヒド、2−クロロベンズアルデヒド、4−クロロベンズアルデヒド、2,3−ジクロロベンズアルデヒド、2,4−ジクロロベンズアルデヒド、2,5−ジクロロベンズアルデヒド、3,4−ジクロロベンズアルデヒド、2−ブロモベンズアルデヒド、3−ブロモベンズアルデヒド、4−ブロモベンズアルデヒド、4−ヨードベンズアルデヒドなどのハロゲン原子を含むアルデヒド;
2−ヒドロキシベンズアルデヒド、3−ヒドロキシベンズアルデヒド、4−ヒドロキシベンズアルデヒド、2,4−ジヒドロキシベンズアルデヒド、4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルベンズアルデヒド、2−ヒドロキシナフチルアルデヒド、3,4−ジヒドロキシベンズアルデヒド等、4−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルベンズアルデヒド、4−(2−ヒドロキシエチル)ベンズアルデヒドなどの水酸基を含むアルデヒド;
3−(メチルチオ)プロピルアルデヒド、2−(メチルチオ)ブチルアルデヒド、2−メトキシベンズアルデヒド、4−メトキシベンズアルデヒド、4−n−ブトキシベンズアルデヒド、4−tert−ブトキシベンズアルデヒド、4−ヘキシルオキシベンズアルデヒド、3−フェノキシベンズアルデヒド、4−フェノキシベンズアルデヒド、2,3−ジメトキシベンズアルデヒド、2,5−ジメトキシベンズアルデヒド、2,6−ジメトキシベンズアルデヒド、3,4−ジメトキシベンズアルデヒド、3,5−ジメトキシベンズアルデヒド、3,4,5−トリメトキシベンズアルデヒド、4−メチルチオベンズアルデヒド、3−エトキシベンズアルデヒド、4−エトキシベンズアルデヒド、2−メトキシナフチルアルデヒド、4−メトキシナフチルアルデヒド、3,4−メチレンジオキシベンズアルデヒド、4−オクタデシルオキシベンズアルデヒドなどのエーテルもしくはチオエーテル構造を含むアルデヒド;
3−ジメチルアミノ−2−メチルエテニルアルデヒド、4−ジメチルアミノベンズアルデヒド、4−ジエチルアミノベンズアルデヒドなどのアミノ基を含むアルデヒド;
2−カルボキシベンズアルデヒド、4−カルボキシベンズアルデヒド、3−カルボキシ−4−ヒドロキシベンズアルデヒドなどのカルボキシ基を含むアルデヒド;
1−(エトキシカルボニル)エチルアルデヒド、8−メトキシカルボニルオクチルアルデヒド、4−アセトキシ−3−メトキシベンズアルデヒド、3,4−ジアセトキシベンズアルデヒド、3−メトキシカルボニルベンズアルデヒド、4−メトキシカルボニルベンズアルデヒド、3−アセチルベンズアルデヒド、4−メトキシカルボニルオキシベンズアルデヒド、4−tert−ブトキシカルボニルベンズアルデヒドなどのカルボニルもしくはエステル構造を含むアルデヒド;
4−アセトアミドベンズアルデヒド、4−メトキシカルボニルアミノベンズアルデヒド、フタルイミドメチルアルデヒドなどのアミド構造を含むアルデヒド;
2−(ジベンズホスフィノ)ベンズアルデヒドなどのリン原子を含むアルデヒド;
3−ニトロイソブチルアルデヒド、2−ニトロベンズアルデヒド、3−ニトロベンズアルデヒド、4−ニトロベンズアルデヒド、2−ヒドロキシ−4−ニトロベンズアルデヒド、4−クロロ−2−ニトロベンズアルデヒドなどのニトロ基を含むアルデヒド;
トリメチルシリルエチニルアルデヒドなどのケイ素原子を含むアルデヒド;
2−フリルアルデヒド、5−メチル−2−フリルアルデヒド、3−ピラゾリルアルデヒド、2−イミダゾリルアルデヒド、4−イミダゾリルアルデヒド、2−チオベンズアルデヒド、3−メチル−2−チオベンズアルデヒド、2−チアゾリルアルデヒド、2−ピリジルアルデヒド、3−ピリジルアルデヒド、4−ピリジルアルデヒド、2−キノリルアルデヒド、5−ニトロ−2−フリルアルデヒド、2−(5−メチル−2−フリル)エチルアルデヒド、N−エチル−3−カルバゾリルアルデヒド、(5−チオベンズ)−2−チオベンズアルデヒドなどのヘテロ環を含むアルデヒド;
等が挙げられる。
これらのうち、2−フリルアルデヒド、5−メチル−2−フリルアルデヒド、3−ピラゾリルアルデヒド、2−イミダゾリルアルデヒド、4−イミダゾリルアルデヒド、2−チオフェニルアルデヒド、3−メチル−2−チオフェニルアルデヒド、2−チアゾリルアルデヒド、2−ピリジルアルデヒド、3−ピリジルアルデヒド、4−ピリジルアルデヒド、2−キノリルアルデヒド、5−ニトロ−2−フリルアルデヒド、2−(5−メチル−2−フリル)エチルアルデヒド、N−エチル−3−カルバゾリルアルデヒド、(5−チオフェニル)−2−チオフェニルアルデヒドなどのヘテロ環を含むアルデヒドが好ましく、2−フリルアルデヒド、5−メチル−2−フリルアルデヒド、2−チオフェニルアルデヒド、3−メチル−2−チオフェニルアルデヒド、2−チアゾリルアルデヒド、(5−メチル−2−フリル)エチルアルデヒド、N−エチル−3−カルバゾリルアルデヒド、(5−チオフェニル)−2−チオフェニルアルデヒドなどの5員環を含むアルデヒドであることがさらに好ましく、2−フリルアルデヒド、もしくは2−チオフェニルアルデヒドであることが特に好ましい。
これらのアルデヒド化合物は、単独で用いても、二種以上を混合して用いても良い。
また、本発明のビスフェノール化合物の製造方法に用いるアセタール化合物、チオアセタール化合物、トリオキサン化合物等については、それぞれに上述に例示したアルデヒド化合物から誘導されたアセタール化合物、チオアセタール化合物、トリオキサン化合物等を用いることができる。なお、以下において、これらアセタール化合物、チオアセタール化合物、トリオキサン化合物等アルデヒド化合物以外を用いた場合のアルデヒド類の総量は、これら化合物に含まれるアルデヒド構造の総量で表すものとする。例えば、アセタール化合物およびチオアセタール化合物各1分子に含まれるアルデヒド類は1分子、トリオキサン化合物1分子に含まれるアルデヒド類は3分子とカウントして総量を計算する。
[フェノール類]
本発明のビスフェノール化合物の製造方法では、原料フェノール類として、好ましくは、下記式(4)及び(4’)で表されるモノフェノール化合物(以下、「本発明のモノフェノール化合物」と呼称することがある。)を用いる。式(4)及び(4’)のモノフェノール化合物は同一でも異なっていてもよいが、同一であることが本発明のビスフェノール化合物を容易に製造できる点で好ましい。
Figure 2019085399
[式(4),(4’)中、R、R、aおよびbは式(1)におけると同義である。]
前記式(4),(4’)で表されるモノフェノール化合物の具体例としては、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、2,3−ジメチルフェノール、2,5−ジメチルフェノール、2,6−ジメチルフェノール、2−エチルフェノール、2−エチル−6−メチルフェノール、2−アリルフェノール、2−イソプロピルフェノール、2−プロピルフェノール、2,3,6−トリメチルフェノール、5,6,7,8−テトラヒドロ−1−ナフトール、2−sec−ブチルフェノール、2−tert−ブチルフェノール、カルバクロール、チモール、2−tert−アミルフェノール、6−tert−ブチル−o−クレゾール、2−フェニルフェノール、2−シクロヘキシルフェノール、2−アミル−5−メチルフェノール、2,6−ジイソプロピルフェノール、2−ベンジルフェノール、2−シクロヘキシル−5−メチルフェノール、2−アリルフェノール、1−ナフトール、3−ペンタデシルフェノール、グアヤコール、2−クロロフェノール、2−ブロモフェノール、3−メトキシフェノール、2−フルオロフェノール、3−エトキシフェノール、2−ヒドロキシメチルフェノール、2−アセチルフェノール、3−ヒドロキシカルボニルフェノール、2−ニトロフェノール、3−ニトロフェノール、2−アミノカルボニルフェノール、2,6−ジメトキシフェノール、3−アセトキシフェノール、2−メトキシカルボニルフェノール、3−メトキシカルボニルフェノール、5−ニトログアヤコール、3−ヒドロキシアセトアニリド、2,2−ジメチル−7−ヒドロキシクマラン、サリチル酸ベンジル、サリチル酸フェニル、サリチル酸ブチル、サリチル酸イソアミル、サリチル酸(2−ヒドロキシエチル)、サリチル酸(2−エチルヘキシル)等が挙げられるが、なかでもフェノール、o−クレゾール、2,3−ジメチルフェノール、2,5−ジメチルフェノール、2,6−ジメチルフェノール、2−エチルフェノール、2−エチル−6−メチルフェノール、2−イソプロピルフェノール、2−プロピルフェノール、2−アリルフェノール、2,3,6−トリメチルフェノール、等の炭素数3以下の炭化水素基を有するモノフェノール化合物が好ましく、フェノール、o−クレゾールがより好ましく、フェノールが特に好ましい。
なお、これらモノフェノール化合物は、単独で用いても、二種以上を混合して用いても良い。
[アルデヒド類とフェノール類の使用割合]
本発明のビスフェノール化合物製造時におけるアルデヒド類とフェノール類である上記モノフェノール化合物の比は、本発明のビスフェノールが効率良く生成する条件であれば特に規定されないが、アルデヒド類1モルに対するモノフェノール化合物の使用量が、通常1モル倍以上であり、2モル倍以上であることが好ましく、3モル倍以上であることが特に好ましい。フェノール化合物の量が前記下限値以上であることで、本発明のビスフェノール化合物を効率良く製造できる傾向にあり、好ましい。一方、アルデヒド類1モルに対するモノフェノール化合物の使用量は通常20モル倍以下であり、15モル倍以下であることが好ましく、10モル倍以下であることが特に好ましい。モノフェノール化合物の使用量が前記上限値以下であることで、本発明のビスフェノール化合物製造の際に、未反応のモノフェノール化合物を分離する工程の負荷が低減する傾向にあり、好ましい。
本発明のビスフェノール化合物を製造する際、前記アルデヒド化合物とフェノール化合物は全量を混合した状態から製造しても良いし、いずれか片方もしくは両方を連続的もしくは間歇的に添加しながら製造しても良い。特に、アルデヒド化合物を連続的もしくは間歇的に添加しながら製造することが、本発明のビスフェノール化合物をより効率良く製造しやすい点で好ましい。
[ヘテロポリ酸]
本発明の製造方法は、酸触媒として、ヘテロポリ酸を共存させた状態で本発明のビスフェノール化合物を生成させることを特徴とする。
ヘテロポリ酸の具体例としては、リンタングステン酸、リンモリブデン酸、リンモリブドタングステン酸、リンモリブドバナジン酸、リンモリブドタングストバナジン酸、リンタングストバナジン酸、リンモリブドニオブ酸、ケイタングステン酸、ケイモリブデン酸、ケイモリブドタングステン酸、ケイモリブドタングストバナジン酸、ゲルマニウムタングステン酸、ヒ素モリブデン酸、ヒ素タングステン酸などが挙げられる。これらのうち、タングステンを構成原子として含むことが製造工程において本発明のビスフェノール化合物を生成させる効果をより発揮しやすい点で好ましく、リンタングステン酸もしくはケイタングステン酸であることがさらに好ましく、ケイタングステン酸であることが特に好ましい。
ヘテロポリ酸は、他の塩基と混合して塩の状態で用いても良い。その具体例としては、リチウム塩、ナトリウム塩、セシウム塩などのアルカリ金属塩;
マグネシウム塩、カルシウム塩、バリウム塩などのアルカリ土類金属塩;
パラジウム塩などの遷移金属塩;
アンモニウム塩、テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩、テトラフェニルアンモニウム塩などの周期表第15族原子の塩;
等が挙げられる。これらの塩は、反応液への溶解のしやすさ、本発明のビスフェノール化合物を効率良く生成させる効果、精製工程における分離の容易さ等に応じて種々選択される。
これらヘテロポリ酸およびその塩は、単独でも、二種以上を混合して用いても良い。
本発明のビスフェノール化合物を製造する際に用いるヘテロポリ酸触媒の量は、本発明のビスフェノール化合物を効率良く製造できれば特に規定されないが、本発明で使用するアルデヒド類に対してヘテロポリ酸触媒の総量が、通常0.001モル%以上であり、好ましくは0.005モル%以上であり、さらに好ましくは0.01モル%以上であり、特に好ましくは0.025モル%以上である。この量が前記下限値以上であることで、本発明のビスフェノール化合物を効率良く製造できる傾向にあり、好ましい。また、アルデヒド類に対するヘテロポリ酸触媒の総量は通常10モル%以下であり、好ましくは1モル%以下であり、さらに好ましくは0.5モル%以下であり、特に好ましくは0.2モル%以下である。この量が前記上限値以下であることで、本発明のビスフェノール化合物製造の際、精製工程におけるヘテロポリ酸触媒を分離する負荷が低減する傾向にあり、好ましい。
[他の酸触媒]
本発明の製造方法は、本発明のビスフェノール化合物をより効率良く生成させる目的で、他の酸を第二酸触媒として併用しても良い。その具体例としては、リン酸、シュウ酸、塩酸、硫酸などの無機酸触媒;酢酸、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ヒドロキシベンゼンスルホン酸、カンファースルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸などの有機酸触媒;固体酸、カチオン交換樹脂などの不均一系酸触媒などが挙げられる。
これらの第二酸触媒の種類および量は、反応液への溶解のしやすさ、本発明のビスフェノール化合物を効率良く生成させる効果、精製工程における分離の容易さ等に応じて種々選択される。
なお、これら第二酸触媒は、単独でも、二種以上を混合して用いても良い。
[メルカプト化合物]
本発明の製造方法は、以下の式(2)で表されるメルカプト化合物を助触媒として共存させた状態で本発明のビスフェノール化合物を生成させることを特徴とする。
Figure 2019085399
[式(2)中、Rは、炭素数1〜30のn価の脂肪族炭化水素基を表し、nは1〜6の整数を表す。なお、Rの炭素−炭素結合はエステル構造で1〜6回中断されていても良い。]
式(2)で表されるメルカプト化合物の具体例としては、メチルメルカプタン、エチルメルカプタン、n−プロピルメルカプタン、2−プロパンチオール、n−ブチルメルカプタン、sec−ブチルメルカプタン、t−ブチルメルカプタン、n−ペンチルメルカプタン、3−メチル−2−ブタンチオール、イソアミルメルカプタン、n−ヘキシルメルカプタン、シクロヘキサンチオール、n−ヘプチルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、2−エチル−1−ヘキサンチオール、n−ノニルメルカプタン、n−デシルメルカプタン、n−ウンデシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、n−テトラデシルメルカプタン、tert−テトラデカンチオール、n−ヘキサデシルメルカプタン、n−オクタデシルメルカプタン、n−ドコシルメルカプタン、1−アダマンタンチオールなどの炭化水素基および1つのメルカプト基からなる化合物;
1,2−エタンジチオール、1,2−プロパンジチオール、1,3−プロパンジチオール、2,3−ブタンジチオール、1,5−ペンタンジチオール、1,10−デカンジチオールなどの炭化水素基および2つ以上のメルカプト基からなる化合物;
チオグリコール酸メチル、チオグリコール酸エチル、チオグリコール酸ブチル、チオグリコール酸オクチル、チオグリコール酸2−エチルヘキシル、2−メルカプトプロピオン酸メチル、3−メルカプトプロピオン酸メチル、3−メルカプトプロピオン酸エチル、3−メルカプトプロピオン酸オクタデシルなどのエステル構造で中断された炭化水素基および1つのメルカプト基からなる化合物;
エチレングリコールビス(3−メルカプトプロピオナート)、ペンタエリトリトールテトラ(3−メルカプトプロピオナート)、ジペンタエリトリトールヘキサキス(3−メルカプトプロピオナート)、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオナート)などのエステル構造で中断された炭化水素基および2つ以上のメルカプト基からなる化合物;
等が挙げられる。
これらのうち、精製工程における除去が容易である点で、nが1であるメルカプト化合物を用いることが好ましく、製造工程において本発明のビスフェノール化合物を生成させる効果をより発揮しやすい点でRは炭素数1〜30のエステル構造で中断されないアルキル基であることがさらに好ましい。中でも、揮発性や臭気性が少なく製造工程に適用しやすいという点では、炭素数6〜16であることが好ましく、炭素数8〜14であることがさらに好ましく、炭素数10〜12であることが特に好ましい。一方、後述の濃縮工程において溶媒とともに容易に除去できるという点では、炭素数1〜5であることが好ましく、炭素数1〜4であることがさらに好ましく、炭素数1〜2であることが特に好ましい。
本発明のビスフェノール化合物を製造する際に用いるメルカプト化合物の量は、本発明のビスフェノール化合物を効率良く製造できれば特に規定されないが、本発明のヘテロポリ酸を主成分とする酸触媒に対してメルカプト化合物の量が、通常0.1モル倍以上であり、好ましくは1モル倍以上であり、特に好ましくは10モル倍以上である。また、通常2000モル倍以下であり、好ましくは1000モル倍以下であり、さらに好ましくは400モル倍以下である。
また、アルデヒド類の総量に対してメルカプト化合物の総量が、通常0.01モル%以上であり、好ましくは0.05モル%以上であり、さらに好ましくは0.1モル%以上であり、特に好ましくは1モル%以上である。メルカプト化合物の量が前記下限値以上であることで、本発明のビスフェノール化合物を効率良く、高選択性に製造できる傾向にあり、好ましい。また、アルデヒド類の総量に対するメルカプト化合物の総量は、通常50モル%以下であり、好ましくは30モル%以下であり、さらに好ましくは25モル%以下であり、特に好ましくは10モル%以下である。メルカプト化合物の量が前記上限値以下であることで、本発明のビスフェノール化合物製造の際、使用後のメルカプト化合物を分離する負荷が低減する傾向にあり、好ましい。
なお、上記メルカプト化合物は、単独で用いても、二種以上を混合して用いても良い。
[溶媒]
本発明のビスフェノール化合物を製造する際は、溶媒を用いて反応しても良い。溶媒の具体例としては、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、石油エーテルなどの炭素数5〜18の直鎖状炭化水素溶媒;イソオクタンなどの炭素数5〜18の分岐鎖状炭化水素溶媒;シクロヘキサン、シクロオクタン、メチルシクロヘキサンなどの炭素数5〜18の環状炭化水素溶媒;水;メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノールなどのアルコール溶媒;アセトニトリルなどのニトリル溶媒;ジブチルエーテルなどのエーテル溶媒;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル溶媒;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどの含窒素溶媒;ジメチルスルホキシド、スルホランなどの含硫黄溶媒;塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタンなどの含塩素溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素溶媒などが挙げられる。なお、なお、これらの溶媒を用いることが、反応時における原料の固化抑止や内部発熱による予期せぬ副反応を抑止するなど、反応の操作性を向上できる点で好ましい。一方これらの溶媒を用いないことが、本発明のビスフェノール化合物と溶媒との分離が不要となり精製工程を簡略化できる点で好ましい。
本発明のビスフェノール化合物を製造する際に用いる溶媒の量は、ビスフェノール化合物を効率良く製造できれば特に規定されないが、アルデヒド類に対する溶媒の量として、通常0.1質量倍以上であり、好ましくは0.2質量倍以上であり、特に好ましくは0.5質量倍以上である。溶媒の量が前記下限値以上であることで、ビスフェノール化合物製造時に溶媒の効果をより効率的に発揮できる傾向にあり、好ましい。また、通常20質量倍以下であり、好ましくは10質量倍以下であり、特に好ましくは5質量倍以下である。該溶媒の量が前記上限値以下であることで、ビスフェノール化合物を効率良く製造できる傾向にあり、好ましい。
[反応温度]
本発明のビスフェノール化合物を製造する際の反応温度は通常0℃以上であり、好ましくは15℃以上であり、特に好ましくは30℃以上である。反応温度が前記下限値以上であることで反応混合物の固化を防止しやすくなる傾向にあり、好ましい。一方、通常150℃以下、好ましくは120℃以下、特に好ましくは90℃以下である。反応温度が前記上限値以下であることで本発明のビスフェノール化合物を効率的に製造できる傾向にあり、好ましい。
[反応圧力]
本発明のビスフェノール化合物を製造する際の反応圧力は、ビスフェノール化合物を効率よく生成できる条件であれば特に規定されないが、その中でも常圧であることが、ビスフェノール化合物を製造する際に原料を間歇的に添加することが容易となり、結果として反応熱により予期せぬ反応暴走を招く危険性を抑止できる点で好ましい。
[酸触媒の除去工程]
本発明のビスフェノール化合物を製造する工程は、用いた酸触媒を除去する工程を含んでいることが好ましい。触媒除去工程の具体例としては、塩基による中和工程、溶媒に溶解させることによる除去工程、ろ過による除去工程等が挙げられる。中でも塩基による中和工程を含むことが、効率良く酸触媒を除去することができる傾向にあり、好ましい。なお、これら触媒除去工程は単独でも、二種以上を組み合わせて用いても良い。
塩基による中和工程に用いられる塩基の具体例としては、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸セシウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、リン酸一水素ナトリウム、リン酸一水素カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水素化ナトリウム、ナトリウムアミド等のアルカリ金属原子もしくはアルカリ土類金属原子を有する無機塩基;クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、コハク酸ナトリウム、コハク酸カリウム、コハク酸カルシウム、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、カリウム−tert−ブトキシド等のアルカリ金属原子もしくはアルカリ土類金属原子を有する有機塩基;ピリジン、アニリン、トリエチルアミン、N,N−ジメチルアニリン、モルホリン、1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン、ジアザビシクロウンデセンなどの含窒素化合物等が挙げられる。これらのうち、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、リン酸一水素ナトリウム、リン酸一水素カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、水素化ナトリウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、コハク酸ナトリウム、コハク酸カリウム等のナトリウムもしくはカリウムを含む塩基を用いることが中和塩の除去が容易となる点で好ましい。また、これら塩基は単独でも、二種以上を組み合わせて用いても良い。
中和工程では、反応混合物の酸性度を調整する目的で第二成分を添加しても良い。その具体例としては、酢酸、クエン酸、コハク酸、リンゴ酸などの有機酸;リン酸、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、塩化アンモニウム、クエン酸一ナトリウムなどの酸素以外のヘテロ原子を含む酸などが挙げられる。第二成分の種類および量は、反応工程に用いられる酸触媒および中和工程に用いられる塩基の種類および量、および中和後の反応混合物の酸性度目標値に応じて種々選択される。
中和工程後の反応混合物は弱酸性ないしは弱塩基性であることが、本発明のビスフェノール化合物の安定性が向上する傾向にあり、好ましい。なお、反応混合物が弱酸性ないしは弱塩基性であるとは、反応混合物中に水を加えて水とそれ以外の成分の質量比を1:3に調整した際に、水層のpHが通常2以上、好ましくは3以上、特に好ましくは4以上で、通常11以下、好ましくは10以下、特に好ましくは9以下であることを言う。水層のpHが上記範囲内であることで、本発明のビスフェノール化合物の安定性が向上する傾向にあり、好ましい。
溶媒に溶解させることによる触媒除去工程に用いられる溶媒の具体例としては、水;メタノール、エタノール、プロパノール、ジメチルスルホキシド、ジエチルエーテル、N−メチルピロリドンなどの有機溶媒等が挙げられる。これらのうち、水を用いることが精製工程を簡略化できる点で好ましい。
ろ過による触媒除去工程で用いられるろ過剤としては、活性炭、シリカゲル、活性白土、珪藻土などの粉状、破砕状もしくは球状等のろ過剤;ろ紙、ろ布、糸巻きフィルタ等の繊維状もしくは布状等に成形されたろ過剤等が挙げられる。これらろ過剤は、使用する酸触媒の性状や、酸触媒の再利用の可能性の有無等を踏まえて、種々選択される。
[濃縮工程]
本発明のビスフェノール化合物を製造する工程は、本発明のビスフェノール化合物を含む反応混合物から、溶媒や未反応の原料などの低沸点成分を濃縮により除去する工程(以下、濃縮工程と呼称する場合がある。)を含んでいても良い。本工程を実施することで、後述の析出工程における本発明のビスフェノール化合物の取り出し効率が向上する傾向にある。濃縮工程は通常加熱減圧条件で実施する。加熱温度は40℃以上であることが好ましく、60℃以上であることがさらに好ましく、80℃以上で実施することが特に好ましい。また、通常200℃以下であり、180℃以下であることが好ましく、160℃以下であることが特に好ましい。加熱温度が上記温度の範囲内であることで、効率良く濃縮工程を実施でき、かつ本発明のビスフェノール化合物の分解を抑制できる傾向にある。なお、本濃縮工程における加熱温度とは、加熱に用いる熱媒の温度を指す。減圧度は通常760Torr未満であり、200Torr以下であることが好ましく、100Torr以下であることがさらに好ましく、50Torr以下であることが特に好ましい。減圧度が上記上限値以下であることで、効率良く濃縮工程を実施できる傾向にある。一方、減圧度の下限値は特に規定されないが、広く一般的に使用されている減圧機器を使用できる観点から通常0.1Torr以上であり、好ましくは1Torr以上であり、さらに好ましくは10Torr以上であり、特に好ましくは20Torr以上である。
[粗精製工程]
本発明のビスフェノール化合物を製造する際、通常、前述のアルデヒド類とモノフェノール化合物との反応、その後の酸触媒の除去工程、或いは酸触媒の除去工程及び濃縮工程を経て得られる反応混合物は、本発明のビスフェノール化合物を主成分とする混合物となる。本発明のビスフェノール化合物を製造する工程では、後述の析出工程に先立ち、この本発明のビスフェノール化合物を主成分とする反応混合物から本発明のビスフェノール化合物以外の成分を粗取りする粗精製工程を含むことが好ましい。
この粗精製工程は、好ましくは、反応混合物から抽出溶媒で本発明のビスフェノール化合物を抽出した後、本発明のビスフェノール化合物を含む抽剤層を水で洗浄し、その後、この抽剤層から減圧下で抽出溶媒を除去することにより行われる。
この抽出に用いる抽出溶媒としては、本発明のビスフェノール化合物の良溶媒であればよく、特に制限はないが、その具体例としては、ビスフェノール化合物を製造する際に用いることができる溶媒のうち、水を除いたもの等が挙げられる。これらのうち、エーテル溶媒、ケトン溶媒、エステル溶媒、含塩素溶媒、芳香族炭化水素溶媒から選ばれる溶媒のいずれかを少なくとも含むことが、本発明のビスフェノール化合物の抽出が容易となる点で好ましく、エーテル溶媒、ケトン溶媒、エステル溶媒、含塩素溶媒、芳香族炭化水素溶媒のいずれかから選ばれる溶媒を少なくとも含むことがさらに好ましく、芳香族炭化水素溶媒から選ばれる溶媒を少なくとも含むことが特に好ましく、その中でもトルエンもしくはキシレンを含むことが好ましく、トルエンを含むことが最も好ましい。
これらの抽出は、単独で用いても良いし、二種以上を混合して用いても良い。
抽出溶媒は、反応混合物に対して0.1質量倍以上用いることが好ましく、0.5質量倍以上用いることがさらに好ましく、1質量倍以上用いることが特に好ましい。抽出溶媒の量が上記下限値以上であることで、効率良く本発明のビスフェノール化合物を抽出できる傾向にある。また、抽出溶媒は、反応混合物に対して20質量倍以下用いることが好ましく、10質量倍以下用いることがさらに好ましく、5質量倍以下用いることが特に好ましい。抽出溶媒の量が上記上限値以下であることで、本発明のビスフェノール化合物の製造効率が向上する傾向にある。
また、抽出により得られる本発明のビスフェノール化合物を含む抽剤層の水洗の際に用いる水の量は、抽剤層の全量に対して通常0.1質量倍以上であり、0.5質量倍以上であることが好ましく、1質量倍以上であることが特に好ましい。水量が上記下限値以上であることで粗精製工程における精製効率が向上する傾向にある。また、この水量は、抽剤層の全量に対して通常10質量倍以下であり、5質量倍以下であることが好ましく、3質量倍以下であることが特に好ましい。水量が上記上限値以下であることで、本発明のビスフェノール化合物の製造効率が向上する傾向にある。
抽剤層の水洗回数は、通常1〜20回程度であり、2〜10回であることが好ましく、3〜6回であることが特に好ましい。水洗回数が上記下限値以上であることで、粗精製工程における精製効率が向上する傾向にあり、上記上限値以下であることで、本発明のビスフェノール化合物の製造効率が向上する傾向にある。なお、本発明の製造方法において、抽剤層の水洗時の油層−水層分離性は通常よりも優れる傾向にある。
上記水洗後に抽出溶媒を除去する際は、通常40〜200℃の温度で、760〜1Torrの減圧下に実施される。なお、前述の温度は使用する熱媒の温度を表す。
なお、本粗精製工程は、前述の酸触媒の除去工程や濃縮工程を兼ねて実施しても良い。
[析出工程]
本発明のビスフェノール化合物の製造方法は、ビスフェノール化合物を含む反応混合物からビスフェノール化合物を、少なくとも1種の脂肪族炭化水素溶媒を含む溶媒から析出させる工程(以下、「析出工程」と呼称する場合がある。)を含むことが好ましい。この析出工程は、通常、ビスフェノール化合物を含む反応混合物と、脂肪族炭化水素溶媒を含む溶媒とを混合した後、温度を下げて静置することにより行うことができる。
析出工程に用いる脂肪族炭化水素溶媒の具体例としては、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、石油エーテルなどの炭素数5〜18の直鎖状炭化水素溶媒;イソオクタンなどの炭素数5〜18の分岐鎖状炭化水素溶媒;シクロヘキサン、シクロオクタン、メチルシクロヘキサンなどの炭素数5〜18の環状炭化水素溶媒などが挙げられる。これらのうち、本発明のビスフェノール化合物から溶媒を除去することが容易となる点より、炭素数6〜10の炭化水素溶媒を用いることが好ましく、炭素数6〜8の炭化水素溶媒であることがより好ましい。また、これら炭化水素溶媒は、1種でも、2種以上を混合して用いても良い。
また、析出工程で用いる溶媒には、第二溶媒として脂肪族炭化水素溶媒以外の溶媒を含んでいても良い。その具体例としては、水;メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノールなどのアルコール溶媒;アセトニトリルなどのニトリル溶媒;ジブチルエーテルなどのエーテル溶媒;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル溶媒;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどの含窒素溶媒;ジメチルスルホキシド、スルホランなどの含硫黄溶媒;塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタンなどの含塩素溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素溶媒などが挙げられる。これらのうち、ビスフェノール化合物を効率良く精製できる観点から、アルコール溶媒、芳香族炭化水素溶媒のいずれかを第二溶媒として含むことが好ましい。また、これら第二溶媒は、1種でも、2種以上を混合して用いても良い。
第二溶媒と、脂肪族炭化水素溶媒の混合比は、本発明のビスフェノール化合物の特性を損なわない限り特に制限はなく、適宜設定し用いれば良いが、全溶媒中の脂肪族炭化水素溶媒の構成比は、通常10〜99質量%である。全溶媒中の脂肪族炭化水素溶媒の構成比を上記上限値以下とすることで、副生物を効率的に除去しやすくなり好ましい。また、全溶媒中の脂肪族炭化水素溶媒の構成比を上記下限値以上とすることで、本発明のビスフェノール化合物が第二溶媒中に選択的に溶解し、除去されてしまうこと、すなわち収率が低下することを抑止できるため、好ましい。このような観点より、全溶媒中の脂肪族炭化水素溶媒の構成比は、20〜98質量%であることがより好ましく、25〜97質量%であることがさらに好ましく、30〜96質量%であることが特に好ましい。
本発明のビスフェノール化合物を含む反応混合物と、上述の溶媒との混合比は、効率良くビスフェノール化合物を析出させることができれば特に規定されないが、通常ビスフェノール化合物を含む反応混合物に対して全溶媒の質量比が好ましくは0.2倍以上であり、さらに好ましくは0.5倍以上であり、特に好ましくは1倍以上である。一方、ビスフェノール化合物を含む反応混合物に対して全溶媒の質量比は、好ましくは100倍以下であり、さらに好ましくは50倍以下であり、特に好ましくは10倍以下である。全溶媒の質量比が上記下限値以上であることで、ビスフェノール化合物を含む反応混合物から本発明のビスフェノール化合物を優先的に析出させやすくなる傾向にあり、一方上記上限値以下であることで本発明のビスフェノール化合物の製造効率が向上する傾向にあり、好ましい。
ビスフェノール化合物を含む反応混合物と上記の少なくとも1種の脂肪族炭化水素溶媒と第二溶媒を含む溶媒とを混合する際、脂肪族炭化水素溶媒と第二溶媒はそれぞれ別々に添加しても、予め混合した状態で反応混合物と混合しても良い。なお、本発明のビスフェノール化合物の製造効率を向上させる観点から、これらの溶媒は予め混合しておくことが好ましい。
ビスフェノール化合物を含む反応混合物と上記の少なくとも1種の脂肪族炭化水素溶媒を含む溶媒を混合する際の温度は、通常0℃以上、好ましくは20℃以上、特に好ましくは40℃以上であり、通常溶媒の沸点以下、好ましくは(溶媒の沸点−5)℃以下、特に好ましくは(溶媒の沸点−10)℃以下である。混合時の温度が上記下限値以上で上記上限値以下であることで、ビスフェノール化合物を効率良く溶解させることが可能となり、好ましい。ここで、溶媒を二種以上混合して用いる場合、上記の溶媒の沸点は、混合後の溶媒の沸点を表す。
混合後、ビスフェノール化合物を析出させる析出工程の温度は、本発明のビスフェノール化合物の特性を損なわない限り特に制限はなく、適宜設定することが可能であるが、通常−20℃以上であり、−10℃以上であることが好ましく、0℃以上であることが特に好ましい。一方、この温度は通常70℃以下であり、65℃以下であることが好ましく、60℃以下であることが特に好ましい。析出工程の温度が上記範囲内であることで、本発明のビスフェノール化合物を効率良く精製できる傾向にあり、好ましい。
上記析出工程では、ビスフェノール化合物の析出効率を向上させるために本発明のビスフェノール化合物の種晶を添加しても良い。種晶の量は、ビスフェノール化合物の製造効率を向上させる点から、ビスフェノール化合物を含む反応混合物に対して質量比で通常0.0001〜10%であり、0.0005〜5%であることが好ましく、0.001〜1%であることが特に好ましい。
上記析出工程で本発明のビスフェノール化合物を析出させた後は、ろ過、遠心分離、デカンテーション等より固液分離することで、用いた溶媒からのビスフェノール化合物の粉体を回収する。
上記析出工程の回数はビスフェノール化合物の精製度合いに応じて種々選択されるが、精製処理を簡略化できる点から、通常3回以下であることが好ましく、2回以下であることがより好ましく、1回であることが特に好ましい。
[洗浄工程]
上記析出工程後、得られた本発明のビスフェノール化合物の粉体を、さらに粉体の表面洗浄や結晶内部洗浄の目的で溶媒を用いて洗浄しても良い。この洗浄に使用される溶媒の具体例は、上記脂肪族炭化水素溶媒および第二溶媒として例示した溶媒が挙げられ、その中でも脂肪族炭化水素溶媒もしくは水を少なくとも含む溶媒で洗浄することが、洗浄用の溶媒にビスフェノール化合物を過剰に溶解させることを抑制できる傾向にあり、好ましい。この洗浄処理の温度は、通常−20℃以上、好ましくは−10℃以上、特に好ましくは0℃以上であり、通常70℃以下、好ましくは60℃以下、特に好ましくは50℃以下である。温度が上記範囲内であることで、洗浄用の溶媒にビスフェノール化合物を過剰に溶解させることを抑制できる傾向にあり、好ましい。
[脱溶媒工程]
上記析出工程および洗浄工程を経て得られた本発明のビスフェノール化合物の粉体を、さらに加熱、減圧、風乾などにより脱溶媒処理を行い、実質的に溶媒を含まない本発明のビスフェノール化合物を得ても良い。ここで、脱溶媒処理の際の温度は、脱溶媒処理を円滑に進行させるために通常20℃以上であり、40℃以上であることが好ましい。なお、温度の上限は通常本発明のビスフェノール化合物の融点以下であり、75℃以下であることが好ましく、72℃以下であることが特に好ましい。
[粉砕工程、分級工程]
上記析出工程、洗浄工程を経て、もしくはさらに上記脱溶媒工程を経て得られた本発明のビスフェノール化合物の粉体を、取り扱い性向上のためにさらに粉砕もしくは分級などを行い、粉体性状を制御しても良い。ここで、粉砕の方法は、ビーズミル、ロールミル、ハンマーミル、遊星ミルなどの一般的に粉体を粉砕することができる種々の方法を、分級の方法は、乾式分級、湿式分級、ふるい分け分級などの一般的に粉体を分級することができる種々の方法を、それぞれ用いることができる。なお、本発明のビスフェノール化合物の製造負荷を低減する観点から、上記粉砕および分級工程は経ないことが好ましい。
[用途]
本発明のビスフェノール化合物は、光学材料、記録材料、絶縁材料、透明材料、電子材料、接着材料、耐熱材料など種々の用途に用いられるポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂など種々の熱可塑性樹脂や、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ポリベンゾオキサジン樹脂、シアネート樹脂など種々の熱硬化性樹脂などの構成成分、硬化剤、添加剤もしくはそれらの前駆体などとして用いることができる。また、感熱記録材料等の顕色剤や退色防止剤、殺菌剤、防菌防カビ剤等の添加剤としても有用である。
これらのうち、良好な機械物性を付与できることより、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂の原料(モノマー)として用いることが好ましく、ポリカーボネート樹脂もしくはエポキシ樹脂の原料として用いることがさらに好ましい。また、顕色剤として用いることも好ましく、特にロイコ染料、変色温度調整剤と組み合わせて用いることがより好ましい。
[ポリカーボネート樹脂]
以下に、本発明のビスフェノール化合物を原料として得られるポリカーボネート樹脂(以下、「本発明のポリカーボネート樹脂」と呼称する場合がある。)について説明する。
なお、本発明のポリカーボネート樹脂は、後述の通り、ポリエステルカーボネートを包含する広義のポリカーボネート樹脂を意味する。
本発明のポリカーボネート樹脂は、本発明のビスフェノール化合物を用いて製造されたものであり、従来公知のポリカーボネート樹脂と比較して、流動性や衝撃強度、曲げ強度等といった機械物性に優れ、機械物性と光学特性のバランスも良好なものである。
<その他のジヒドロキシ化合物>
本発明のポリカーボネート樹脂は、その特徴を損なわない範囲で、本発明のビスフェノール化合物に含まれる前記の式(1)で表されるビスフェノール化合物とは異なるその他のジヒドロキシ化合物を同時に用いて重合して得られるポリカーボネート樹脂共重合体であっても良い。また、共重合形態としては、ランダムコポリマー、ブロックコポリマー等、種々の共重合形態を選択することができる。
本発明のポリカーボネート樹脂の製造において、本発明の式(1)で表されるビスフェノール化合物とは異なるその他のジヒドロキシ化合物を用いる場合、式(1)で表されるビスフェノール化合物とその他のジヒドロキシ化合物との合計である全ジヒドロキシ化合物に対するその他のジヒドロキシ化合物の割合は、適宜選択すればよいが、通常0.1〜50モル%である。
その他のジヒドロキシ化合物の割合が上記範囲の下限値未満の場合は、その他のジヒドロキシ化合物による改質効果が十分に得られない可能性があり、また上記範囲の上限値を超える場合は、本発明のポリカーボネート樹脂の強度、耐熱性、熱安定性が不十分となる可能性がある。このような観点より、前記その他のジヒドロキシ化合物の割合は、0.5モル%以上であることが好ましく、1モル%以上であることがより好ましく、1.5モル%以上であることがさらに好ましい。また40モル%以下であることが好ましく、35モル%以下でより好ましく、20モル%以下であることがさらに好ましく、10モル以下であることが特に好ましい。
なお、全ジヒドロキシ化合物に対するその他のジヒドロキシ化合物の割合は、ポリカーボネート樹脂を加水分解して得られるジヒドロキシ化合物をNMRなどの公知の分析方法によって当業者であれば容易に同定することができる。
上述のその他のジヒドロキシ化合物については、特に制限はなく、分子骨格内に芳香環を含む芳香族ジヒドロキシ化合物であっても、芳香環を有さない脂肪族ジヒドロキシ化合物であってもよい。また、種々の特性付与のために、N(窒素)、S(硫黄)、P(リン)、Si(ケイ素)等のヘテロ原子やヘテロ結合が導入されたジヒドロキシ化合物であってもよい。
好適なその他のジヒドロキシ化合物として、具体的には以下のものが挙げられる。
1,2−ジヒドロキシベンゼン、1,3−ジヒドロキシベンゼン(即ち、レゾルシノール)、1,4−ジヒドロキシベンゼン等のジヒドロキシベンゼン類;
2,5−ジヒドロキシビフェニル、2,2’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシビフェニル等のジヒドロキシビフェニル類;
2,2’−ジヒドロキシ−1,1’−ビナフチル、1,2−ジヒドロキシナフタレン、1,3−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、1,7−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン等のジヒドロキシナフタレン類;
2,2’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、3,3’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルエーテル、1,4−ビス(3−ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン等のジヒドロキシジアリールエーテル類;
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−メトキシ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(3−メトキシ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,4−ジイソプロピルベンゼン、1,3−ビス[2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−プロピル]ベンゼン、4,4−ジヒドロキシジフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシルメタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)(4−プロペニルフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ナフチルメタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−ナフチルエタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、等のビス(ヒドロキシアリール)アルカン類;
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3−ジメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,4−ジメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,5−ジメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−プロピル−5−メチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−tert−ブチル−シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−tert−ブチル−シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−フェニルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−フェニルシクロヘキサン、等のビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類;
9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン等のカルド構造含有ビスフェノール類;
4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルフィド等のジヒドロキシジアリールスルフィド類;
4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルホキシド等のジヒドロキシジアリールスルホキシド類;
4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルホン等のジヒドロキシジアリールスルホン類;
エタン−1,2−ジオール、プロパン−1,2−ジオール、プロパン−1,3−ジオール、2,2−ジメチルプロパン−1,3−ジオール、2−メチル−2−プロピルプロパン−1,3−ジオール、ブタン−1,4−ジオール、ペンタン−1,5−ジオール、ヘキサン−1,6−ジオール、デカン−1,10−ジオール等のアルカンジオール類;
シクロペンタン−1,2−ジオール、シクロヘキサン−1,2−ジオール、シクロヘキサン−1,4−ジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、4−(2−ヒドロキシエチル)シクロヘキサノール、2,2,4,4−テトラメチル−シクロブタン−1,3−ジオール等のシクロアルカンジオール類;
エチレングリコール、2,2’−オキシジエタノール(即ち、ジエチレングリコール)、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、スピログリコール等のグリコール類;
1,2−ベンゼンジメタノール、1,3−ベンゼンジメタノール、1,4−ベンゼンジメタノール、1,4−ベンゼンジエタノール、1,3−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、2,3−ビス(ヒドロキシメチル)ナフタレン、1,6−ビス(ヒドロキシエトキシ)ナフタレン、4,4’−ビフェニルジメタノール、4,4’−ビフェニルジエタノール、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ビフェニル、ビスフェノールAビス(2−ヒドロキシエチル)エーテル、ビスフェノールSビス(2−ヒドロキシエチル)エーテル等のアラルキルジオール類;
1,2−エポキシエタン(即ち、エチレンオキシド)、1,2−エポキシプロパン(即ち、プロピレンオキシド)、1,2−エポキシシクロペンタン、1,2−エポキシシクロヘキサン、1,4−エポキシシクロヘキサン、1−メチル−1,2−エポキシシクロヘキサン、2,3−エポキシノルボルナン、1,3−エポキシプロパン等の環状エーテル類;
イソソルビド、イソマンニド、イソイデット等の酸素含有複素環ジヒドロキシ化合物類等が挙げられる。
なお、これらのその他のジヒドロキシ化合物は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
<ポリカーボネート樹脂の分子量>
本発明のポリカーボネート樹脂の分子量は、溶液粘度から換算した粘度平均分子量(Mv)で、5,000〜100,000であることが好ましい。粘度平均分子量が上記下限値以上であると、本発明のポリカーボネート樹脂の機械物性が向上する傾向にあり、上記上限値以下であると、本発明のポリカーボネート樹脂の流動性が十分となる傾向があるため好ましい。このような観点より、本発明のポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(Mv)は、より好ましくは10,000以上、さらに好ましくは12,000以上、特に好ましくは13,000以上、とりわけ好ましくは14,000以上である。また、より好ましくは40,000以下、さらに好ましくは30,000以下、特に好ましくは28,000以下、とりわけ好ましくは24,000以下である。
なお、本発明のポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量を上記範囲に制御する際には、粘度平均分子量の異なる2種類以上のポリカーボネート樹脂を混合して用いてもよく、この場合には、粘度平均分子量が上記の好適な範囲外であるポリカーボネート樹脂を用いて混合し、本発明のポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(Mv)を制御しても良い。
ここで、ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(Mv)は、溶媒として塩化メチレンを使用し、ウベローデ粘度計を用いて温度20℃での固有粘度(極限粘度)[η](単位dL/g)を求め、Schnellの粘度式、すなわち、η=1.23×10−4Mv0.83から算出される値を意味する。また固有粘度(極限粘度)[η]とは、各溶液濃度[C](g/dL)での比粘度[ηsp]を測定し、下記式により算出した値である。
Figure 2019085399
<ポリカーボネート樹脂の末端水酸基量>
本発明のポリカーボネート樹脂の末端水酸基量は、特に制限はないが、通常10〜3,000ppmであり、好ましくは20ppm以上、より好ましくは50ppm以上、さらに好ましくは200ppm以上で、一方で、好ましくは2,000ppm以下、より好ましくは1,500ppm以下、さらに好ましくは1,000ppm以下である。末端水酸基量を上記範囲内とすることで、ポリカーボネート樹脂の色相、熱安定性、湿熱安定性をより向上させることができる。
本発明のポリカーボネート樹脂の末端水酸基量は、公知の任意の方法によって上記範囲に調整することができる。例えば、ポリカーボネート樹脂をエステル交換反応によって重縮合して製造する場合は、カーボネートエステルとジヒドロキシ化合物との混合比率;エステル交換反応時の減圧度などを調整することにより、末端水酸基量を上記範囲に調整することができる。
また、より積極的な調整方法としては、反応時に別途、末端停止剤を混合する方法が挙げられる。この際の末端停止剤としては、例えば、一価フェノール類、一価カルボン酸類、炭酸ジエステル類などが挙げられる。なお、末端停止剤は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
また、本発明のポリカーボネート樹脂を界面重合法にて製造する場合には、分子量調整剤(末端停止剤)の配合量を調整することにより、末端水酸基量を任意に調整することができる。
なお、末端水酸基量の単位は、ポリカーボネート樹脂の質量に対する、末端水酸基の質量をppmで表示したものである。その測定方法は、四塩化チタン/酢酸法による比色定量(Macromol.Chem.88 215(1965)に記載の方法)である。複数のジヒドロキシ化合物からなるポリカーボネート樹脂共重合体においては、対応するジヒドロキシ化合物を共重合比率に応じて混合したサンプルを最低3水準の濃度で用意し、該3点以上のデータから検量線を引いた上でポリカーボネート樹脂共重合体の末端水酸基量を測定する。また、検出波長は546nmとする。
[ポリカーボネート樹脂の製造方法]
本発明のポリカーボネート樹脂を製造する方法は、公知の手法であれば特に制限はなく適宜選択して用いることができるが、本発明のポリカーボネート樹脂は、本発明のビスフェノール化合物および必要に応じて用いられるその他のジヒドロキシ化合物と、カーボネート形成性化合物とを重縮合することによって製造することができる。ここで、その他のジヒドロキシ化合物の具体例としては、前述のジヒドロキシ化合物を挙げることができる。
カーボネート形成性化合物としては、カルボニルハライド、カーボネートエステル等が使用される。なお、カーボネート形成性化合物は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
カルボニルハライドとしては、具体的には例えば、ホスゲン;ジヒドロキシ化合物のビスクロロホルメート体、ジヒドロキシ化合物のモノクロロホルメート体等のハロホルメート等が挙げられる。
カーボネートエステルとしては、具体的には例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ−t−ブチルカーボネート等のジアルキルカーボネート、ジフェニルカーボネート(以下、「DPC」と称する場合がある。)、ビス(4−メチルフェニル)カーボネート、ビス(4−クロロフェニル)カーボネート、ビス(4−フルオロフェニル)カーボネート、ビス(2−クロロフェニル)カーボネート、ビス(2,4−ジフルオロフェニル)カーボネート、ビス(4−ニトロフェニル)カーボネート、ビス(2−ニトロフェニル)カーボネート、ビス(メチルサリチルフェニル)カーボネート、ジトリルカーボネート等の(置換)ジアリールカーボネートが挙げられるが、なかでもジフェニルカーボネートが好ましい。
なお、これらのカーボネートエステルは、単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
また、前記のカーボネートエステルは、好ましくはその50モル%以下、さらに好ましくは30モル%以下の量を、ジカルボン酸又はジカルボン酸エステルで置換しても良い。置換し得る代表的なジカルボン酸又はジカルボン酸エステルとしては、テレフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸ジフェニル、イソフタル酸ジフェニル等が挙げられる。このようなジカルボン酸又はジカルボン酸エステルで置換した場合には、ポリエステルカーボネートが得られる。
本発明のポリカーボネート樹脂は、従来から知られている重合法により製造することができ、その重合法としては、特に限定されるものではない。重合法の例を挙げると、界面重合法、溶融エステル交換法、ピリジン法、環状カーボネート化合物の開環重合法、プレポリマーの固相エステル交換法などを挙げることができる。
なかでも本発明のビスフェノール化合物は、耐アルカリ性に優れるため、アルカリ触媒の存在下にこれを重合する方法が好ましい。アルカリ触媒の存在下に重合する方法としては、界面重合法、溶融エステル交換法がより好ましく、溶融エステル交換法であることがさらに好ましい。本発明のビスフェノール化合物を用いるポリカーボネート樹脂の製造に、このような製造方法を採用することで色調に優れたポリカーボネート樹脂を生産性良く生産することが可能となる。
以下、これらの方法のうち特に好適なものについて具体的に説明する。
<界面重合法>
まず、本発明のポリカーボネート樹脂を界面重合法で製造する場合について説明する。界面重合法では、反応に不活性な有機溶媒及びアルカリ水溶液の存在下で、通常pHを9以上に保ち、原料の本発明のビスフェノール化合物とカーボネート形成性化合物(好ましくは、ホスゲン)とを反応させた後、重合触媒の存在下で界面重合を行うことによってポリカーボネート樹脂を得る。なお、反応系には、必要に応じて分子量調整剤(末端停止剤)を存在させるようにしてもよく、ビスフェノール化合物の酸化防止のために酸化防止剤を存在させるようにしてもよい。
原料のビスフェノール化合物及びカーボネート形成性化合物は、前述のとおりである。なお、カーボネート形成性化合物の中でもホスゲンを用いることが好ましく、ホスゲンを用いた場合の方法は特にホスゲン法と呼ばれる。
反応に不活性な有機溶媒としては、特に限定されないが、例えば、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、モノクロロベンゼン、ジクロロベンゼン等の塩素化炭化水素等;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;などが挙げられる。なお、有機溶媒は1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
アルカリ水溶液に含有されるアルカリ化合物としては、特に限定されないが、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、炭酸水素ナトリウム等のアルカリ金属化合物やアルカリ土類金属化合物が挙げられる。中でも水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムが好ましい。なお、アルカリ化合物は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
アルカリ水溶液中のアルカリ化合物の濃度に制限は無いが、通常、反応のアルカリ水溶液中のpHを10〜12にコントロールするために、5〜10質量%で使用される。また、例えばホスゲンを吹き込むに際しては、水相のpHが10〜12、好ましくは10〜11になる様にコントロールするために、原料のジヒドロキシ化合物とアルカリ化合物とのモル比を、通常1:1.9以上、中でも1:2.0以上、また、通常1:3.2以下、中でも1:2.5以下とすることが好ましい。
重合触媒としては、特に限定されないが、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリプロピルアミン、トリヘキシルアミン等の脂肪族三級アミン;N,N’−ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N’−ジエチルシクロヘキシルアミン等の脂環式三級アミン;N,N’−ジメチルアニリン、N,N’−ジエチルアニリン等の芳香族三級アミン;トリメチルベンジルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムクロライド、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド等の第四級アンモニウム塩等;ピリジン;グアニン;グアニジンの塩;等が挙げられる。なお、重合触媒は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
分子量調節剤としては、特に限定されないが、例えば、一価のフェノール性水酸基を有する芳香族フェノール;メタノール、ブタノールなどの脂肪族アルコール;メルカプタン;フタル酸イミド等が挙げられるが、中でも芳香族フェノールが好ましい。このような芳香族フェノールとしては、具体的には例えば、フェノール、o−n−ブチルフェノール、m−n−ブチルフェノール、p−n−ブチルフェノール、o−イソブチルフェノール、m−イソブチルフェノール、p−イソブチルフェノール、o−t−ブチルフェノール、m−t−ブチルフェノール、p−t−ブチルフェノール、o−n−ペンチルフェノール、m−n−ペンチルフェノール、p−n−ペンチルフェノール、o−n−ヘキシルフェノール、m−n−ヘキシルフェノール、p−n−ヘキシルフェノール、p−t−オクチルフェノール、o−シクロヘキシルフェノール、m−シクロヘキシルフェノール、p−シクロヘキシルフェノール、o−フェニルフェノール、m−フェニルフェノール、p−フェニルフェノール、o−n−ノニルフェノール、m−n−ノニルフェノール、p−n−ノニルフェノール、o−クミルフェノール、m−クミルフェノール、p−クミルフェノール、o−ナフチルフェノール、m−ナフチルフェノール、p−ナフチルフェノール;2,5−ジ−t−ブチルフェノール;2,4−ジ−t−ブチルフェノール;3,5−ジ−t−ブチルフェノール;2,5−ジクミルフェノール;3,5−ジクミルフェノール;p−クレゾール、ブロモフェノール、トリブロモフェノール、平均炭素数12〜35の直鎖状又は分岐状のアルキル基をオルト位、メタ位又はパラ位に有するモノアルキルフェノール;9−(4−ヒドロキシフェニル)−9−(4−メトキシフェニル)フルオレン;9−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−9−(4−メトキシ−3−メチルフェニル)フルオレン;4−(1−アダマンチル)フェノールなどが挙げられる。これらのなかでは、p−t−ブチルフェノール、p−フェニルフェノール及びp−クミルフェノールが好ましく用いられる。なお、分子量調整剤は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
分子量調節剤の使用量は、特に限定されないが、例えば、原料のジヒドロキシ化合物100モルに対して、通常0.5モル以上、好ましくは1モル以上であり、また、通常50モル以下、好ましくは30モル以下である。分子量調整剤の使用量をこの範囲とすることで、ポリカーボネート樹脂の熱安定性及び耐加水分解性を向上させることができる。
反応の際に、反応基質(反応原料)、反応媒(有機溶媒)、触媒、添加剤等を混合する順番は、所望のポリカーボネート樹脂が得られる限り任意であり、適切な順番を任意に設定すればよい。例えば、カーボネート形成性化合物としてホスゲンを用いた場合には、分子量調節剤は原料のジヒドロキシ化合物とホスゲンとの反応(ホスゲン化)の時から重合反応開始時までの間であれば任意の時期に混合できる。
なお、反応温度は、特に限定されないが、通常0〜40℃であり、反応時間は、特に限定されないが、通常は数分(例えば、10分)〜数時間(例えば、6時間)である。
<溶融エステル交換法>
次に、本発明のポリカーボネート樹脂を溶融エステル交換法で製造する場合について説明する。
溶融エステル交換法では、例えば、カーボネートエステルと原料のビスフェノール化合物とのエステル交換反応を行う。
原料のビスフェノール化合物、及びカーボネートエステルは、上述の通りであるが、カーボネートエステルとしてはジフェニルカーボネートを用いることが好ましい。
原料のビスフェノール化合物とカーボネートエステル(カーボネートエステルの一部を前記のジカルボン酸又はジカルボン酸エステルで置換した場合は、これらを含む。以下同じ。)との比率は所望のポリカーボネート樹脂が得られる限り任意であるが、これらカーボネートエステルは、ビスフェノール化合物と重合させる際に、原料のビスフェノール化合物に対して過剰に用いることが好ましい。すなわち、カーボネートエステルの使用量は、ビスフェノール化合物に対して1.01〜1.30倍量(モル比)であることが好ましく、1.02〜1.20倍量(モル比)であることがより好ましい。このモル比が小さすぎると、得られるポリカーボネート樹脂の末端水酸基が多くなり、樹脂の熱安定性が悪化する傾向となる。また、このモル比が大きすぎると、エステル交換の反応速度が低下し、所望の分子量を有するポリカーボネート樹脂の生産が困難となったり、樹脂中のカーボネートエステルの残存量が多くなり、成形加工時や成形品としたときの臭気の原因となる場合がある。
溶融エステル交換法によりポリカーボネート樹脂を製造する際には、通常、エステル交換触媒が使用される。エステル交換触媒は、特に限定されず、従来から公知のものを使用できる。エステル交換触媒としては、例えばアルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物を用いることが好ましい。また補助的に、例えば塩基性ホウ素化合物、塩基性リン化合物、塩基性アンモニウム化合物、アミン系化合物などの塩基性化合物を併用しても良い。なお、エステル交換触媒は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
溶融エステル交換法において、反応温度は、特に限定されないが、通常100〜320℃である。また、反応時の圧力は、特に限定されないが、通常2mmHg以下の減圧条件である。具体的操作としては、前記の条件で、副生成物を除去しながら、溶融重縮合反応を行えば良い。
反応形式は、バッチ式、連続式の何れの方法でも行うことができる。バッチ式で行う場合、反応基質、反応媒、触媒、添加剤等を混合する順番は、所望のポリカーボネート樹脂が得られる限り任意であり、適切な順番を任意に設定すればよい。ただし中でも、ポリカーボネート樹脂の安定性等を考慮すると、溶融エステル交換反応は連続式で行うことが好ましい。
溶融エステル交換法においては、必要に応じて、触媒失活剤を用いても良い。触媒失活剤としてはエステル交換触媒を中和する化合物を任意に用いることができる。その例を挙げると、イオウ含有酸性化合物及びその誘導体、リン含有酸性化合物及びその誘導体などが挙げられる。なお、触媒失活剤は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
触媒失活剤の使用量は、特に限定されないが、前記のエステル交換触媒が含有するアルカリ金属又はアルカリ土類金属に対して、通常0.5当量以上、好ましくは1当量以上であり、また、通常20当量以下、好ましくは10当量以下である。さらには、得られるポリカーボネート樹脂に対して、通常1ppm以上であり、また、通常100ppm以下、好ましくは50ppm以下である。
以下に本発明の実施例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下において各試薬は以下のものを用いた。
・n−ドデカナール、2−エチルヘキサナール、ベンズアルデヒド、n−ブタナール、37質量%ホルマリン水溶液、4−カルボキシベンズアルデヒド、4−メチルチオベンズアルデヒド、n−オクチルメルカプタン、シクロヘキサンチオール、n−ブチルメルカプタン、o−クレゾール、2,6−キシレノール:東京化成工業(株)製
・フェノール:ナカライテスク(株)製
・リンタングステン酸:日本無機化学工業(株)製H[PW1240]30水和物
・ケイタングステン酸:日本無機化学工業(株)製H[SiW1240]24水和物
・濃塩酸、濃硫酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸一水和物、85%リン酸水溶液、n−ドデシルメルカプタン、3−メルカプトプロピオン酸エチル:富士フィルム和光純薬工業(株)製
・1−アダマンタンチオール:シグマアルドリッチジャパン社製
また、以下の実施例及び比較例における各種分析方法は以下の通りである。
<高速液体クロマトグラフ(HPLC)分析>
サンプル20mgを100mlのアセトニトリルに溶解させた後、うち5μlに対して、アセトニトリル/0.1質量%酢酸アンモニウム水溶液の混合液を溶離液として用い、下記の条件にて測定および解析した。LC純度は、254nmにおける面積比として得た。反応生成率、および単離収率は、標品を用いて予め作成した検量線による絶対検量線法にて求め、原料アルデヒドに対するモル%として得た。
(測定条件)
コントローラ:島津製作所社製SCL−10AVP
カラム:ジーエルサイエンス社製inertsil ODS3V(4.6×150mm、5μm)
カラムオーブン:島津製作所社製CTO−10AVP、40℃
ポンプ:島津製作所社製LC−10ADVP、流速1.0ml/分
溶離条件:K1−アセトニトリル、K2−0.1質量%酢酸アンモニウム水溶液
K1/K2=60/40(0−5分)
K1/K2=60/40→95/5(線形に濃度変化、5−30分)
K1/K2=95/5(30−80分)
(比率は体積比)
検出器:島津製作所社製SPD−10AVP UV254nm
(解析条件)
ソフトウェア:島津製作所社製LC−solution ver.1.22SP1
設定:Width=5、Slope=200、Drift=0、T.DBL=1000、Min.Area=500
<GC分析>
サンプル20mgおよび内標としてn−ウンデカン(関東化学社製)10mgを100mlのアセトニトリルに溶解させた後、うち0.1μlを、下記の条件にて測定および解析した。アルデヒド転化率は、n−ウンデカンを内標とする相対検量線法にてアルデヒド残存率を定量した後、原料アルデヒドに対するモル%として得た。
(測定条件)
機器:島津製作所社製GC−2010
カラム:Agilent DB−1(無極性)
昇温条件:50〜250℃、10℃/min昇温、250℃で7minホールド
(解析条件)
ソフトウェア:島津製作所社製GCsolutionver.2.43
<含Na分析>
サンプル200mgを硫酸、硝酸、過酸化水素水を用いて湿式分解し、原子吸光光度計により測定した。条件は以下の通り。定量下限は1ppmであり、定量下限以下の場合は<1ppmと表記した。
(測定条件)
装置:アジレント・テクノロジー社製 原子吸光光度計 SpectrAA−220
<含S分析>
サンプル300mgをArガスキャリア内で熱分解後、Oガスを添加して燃焼し、燃焼ガスを吸収液で捕集した。この吸収液をイオンクロマトグラフにより測定した。条件は以下の通り。定量下限は0.5ppmであり、定量下限以下の場合は<0.5ppmと表記した。
(前処理条件)
装置:三菱化学アナリテック社製 自動試料燃焼装置/マクロシステム AQF−21
00M
吸収液:アルカリ溶液と過酸化水素水溶液の混合液
(測定条件)
装置:サーモフィッシャーサイエンティフィク社製イオンクロマトグラフ Dionex ICS−1600
カラム:サーモフィッシャーサイエンティフィク社製
Dionex IonPac AG12A/AS12A ICカラム
溶離液組成:2.7mM炭酸ナトリウム−0.3mM炭酸水素ナトリウム
<実施例1> 1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ドデカン(P−12)の合成
フェノール(28.4g、302mmol)を40℃に加温して融解させた後、リンタングステン酸(0.11g、0.032mmol)、n−ドデシルメルカプタン(0.61g、3.0mmol)を加えた。その後、内温を50℃に保ちながら、n−ドデカナール11.1g(60.2mmol)を4時間かけて滴下した。滴下後、2時間加熱攪拌し熟成させた。得られた反応液を一部取りLCおよびGC分析に供した。アルデヒド転化率は99%、4,4’−置換体生成率は79%であった。
<実施例2> 1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ドデカン(P−12)の合成
実施例1におけるリンタングステン酸をケイタングステン酸(0.11g、0.032mmol)に代える以外は、実施例1と同様の操作を行った。滴下後2時間におけるアルデヒド転化率は100%、4,4’−置換体生成率は82%であった。
<実施例3> 1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ドデカン(P−12)の合成
実施例1におけるn−ドデシルメルカプタンをメルカプトプロピオン酸エチル(0.40g、3.0mmol)に代えた以外は、実施例1と同様の操作を行った。アルデヒド転化率は100%、4,4’−置換体生成率は76%であった。
<実施例4> 4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ドデカン(P−12)の合成
フェノール(28.4g、302mmol)を40℃に加温して融解させた後、ケイタングステン酸30質量%水溶液(0.30g、0.032mmol)、n−ドデシルメルカプタン(0.61g、3.0mmol)を加えた。その後、内温60℃に保ちながら、n−ドデカナール(11.1g、60.2mmol)を4時間かけて滴下した。滴下後、1時間加熱攪拌し熟成させた。得られた反応液を一部取りLCおよびGC分析に供した。アルデヒド転化率は100%、4,4’−置換体生成率は78%であった。
<実施例5> 1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ドデカン(P−12)の合成
フェノール(28.4g、302mmol)を40℃に加温して融解させた後、ケイタングステン酸(0.055g、0.016mmol)、n−ドデシルメルカプタン(0.61g、3.0mmol)を加えた。その後、内温を50℃に保ちながら、n−ドデカナール(11.1g、60.2mmol)を4時間かけて滴下した。滴下後、15時間加熱攪拌し熟成させた。得られた反応液を一部取りLCおよびGC分析に供した。アルデヒド転化率は93%、4,4’−置換体生成率は73%であった。
<実施例6> 1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ドデカン(P−12)の合成
フェノール(28.4g、302mmol)を40℃に加温して融解させた後、ケイタングステン酸(0.22g、0.64mmol)、n−ドデシルメルカプタン(0.61g、3.0mmol)を加えた。その後、内温を50℃に保ちながら、n−ドデカナール(11.1g、60.2mmol)を4時間かけて滴下した。滴下後、1時間加熱攪拌し熟成させた。得られた反応液を一部取りLCおよびGC分析に供した。アルデヒド転化率は100%、4,4’−置換体生成率は80%であった。
<実施例7> 1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ドデカン(P−12)の合成
フェノール(28.4g、302mmol)を40℃に加温して融解させた後、ケイタングステン酸(0.44g、0.13mmol)、n−ドデシルメルカプタン(0.61g、3.0mmol)を加えた。その後、内温を50℃に保ちながら、n−ドデカナール(11.1g、60.2mmol)を4時間かけて滴下した。滴下後、1時間加熱攪拌し熟成させた。得られた反応液を一部取りLCおよびGC分析に供した。アルデヒド転化率は100%、4,4’−置換体生成率は79%であった。
<実施例8> 1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ドデカン(P−12)の合成
フェノール(28.4g、302mmol)を40℃に加温して融解させた後、ケイタングステン酸(0.11g、0.032mmol)、n−ドデシルメルカプタン(0.12g、0.60mmol)を加えた。その後、内温を50℃に保ちながら、n−ドデカナール(11.1g、60.2mmol)を4時間かけて滴下した。滴下後、4時間加熱攪拌し熟成させた。得られた反応液を一部取りLCおよびGC分析に供した。アルデヒド転化率は100%、4,4’−置換体生成率は75%であった。
<実施例9> 1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ドデカン(P−12)の合成
フェノール(28.4g、302mmol)を40℃に加温して融解させた後、ケイタングステン酸(0.11g、0.032mmol)、n−ドデシルメルカプタン(3.0g、15mmol)を加えた。その後、内温を50℃に保ちながら、n−ドデカナール(11.1g、60.2mmol)を4時間かけて滴下した。滴下後、2時間加熱攪拌し熟成させた。得られた反応液を一部取りLCおよびGC分析に供した。アルデヒド転化率は100%、4,4’−置換体生成率は70%であった。
<実施例10> 1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ドデカン(P−12)の合成
フェノール(28.4g、302mmol)を40℃に加温して融解させた後、ケイタングステン酸(0.11g、0.032mmol)、n−ドデシルメルカプタン(0.61g、3.0mmol)を加えた。その後、内温を60℃に保ちながら、n−ドデカナール(11.1g、60.2mmol)を4時間かけて滴下した。滴下後、2時間加熱攪拌し熟成させた。得られた反応液を一部取りLCおよびGC分析に供した。アルデヒド転化率は100%、4,4’−置換体生成率は81%であった。
<実施例11> 1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−エチルヘキサン(P−22)の合成
フェノール(28.4g、302mmol)を40℃に加温して融解させた後、ケイタングステン酸(0.11g、0.032mmol)、n−ドデシルメルカプタン(0.61g、3.0mmol)を加えた。その後、内温を50℃に保ちながら、2−エチルヘキサナール(7.71g、60.2mmol)を4時間かけて滴下した。滴下後、1時間加熱攪拌し熟成させた。得られた反応液を一部取りLCおよびGC分析に供した。アルデヒド転化率は75%、4,4’−置換体生成率は64%であった。
<実施例12> α,α−ビス(4−ヒドロキシフェニル)トルエン(P−45)の合成
フェノール(28.4g、302mmol)を40℃に加温して融解させた後、ケイタングステン酸(0.11g、0.032mmol)、n−ドデシルメルカプタン(0.61g、3.0mmol)を加えた。その後、内温を50℃に保ちながら、ベンズアルデヒド(6.39g、60.2mmol)を4時間かけて滴下した。滴下後、1時間加熱攪拌し熟成させた。得られた反応液を一部取りLCおよびGC分析に供した。アルデヒド転化率は100%、4,4’−置換体生成率は75%であった。
<実施例13> 1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン(P−4)の合成
フェノール(28.4g、302mmol)を40℃に加温して融解させた後、ケイタングステン酸(0.11g、0.032mmol)、n−ドデシルメルカプタン(0.61g、3.0mmol)を加えた。その後、内温を50℃に保ちながら、n−ブタナール(4.34g、60.2mmol)を4時間かけて滴下した。滴下後、1時間加熱攪拌し熟成させた。得られた反応液を一部取りLCおよびGC分析に供した。アルデヒド転化率は100%、4,4’−置換体生成率は78%であった。
<実施例14> 1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン(P−1)の合成
フェノール(28.4g、302mmol)を40℃に加温して融解させた後、ケイタングステン酸(0.11g、0.032mmol)、n−ドデシルメルカプタン(0.61g、3.0mmol)を加えた。その後、内温を50℃に保ちながら、ホルマリン37質量%水溶液(4.89g、60.2mmol)を4時間かけて滴下した。滴下後、1時間加熱攪拌し熟成させた。得られた反応液を一部取りLCおよびGC分析に供した。アルデヒド転化率は100%、4,4’−置換体生成率は45%であった。
<実施例15> 1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ドデカン(P−12)の合成
実施例1におけるn−ドデシルメルカプタンをn−オクチルメルカプタン(0.44g、3.0mmol)に代える以外は、実施例1と同様の操作を行った。滴下後2時間におけるアルデヒド転化率は100%、4,4’−置換体生成率は81%であった。
<実施例16> 1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ドデカン(P−12)の合成
実施例1におけるn−ドデシルメルカプタンをn−ブチルメルカプタン(0.27g、3.0mmol)に代える以外は、実施例1と同様の操作を行った。滴下後2時間におけるアルデヒド転化率は100%、4,4’−置換体生成率は82%であった。
<実施例17> 1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ドデカン(P−12)の合成
実施例1におけるn−ドデシルメルカプタンをシクロヘキサンチオール(0.35g、3.0mmol)に代える以外は、実施例1と同様の操作を行った。滴下後2時間におけるアルデヒド転化率は100%、4,4’−置換体生成率は84%であった。
<実施例18> 1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ドデカン(P−12)の合成
実施例1におけるn−ドデシルメルカプタンを1−アダマンタンチオール(0.50g、3.0mmol)に代える以外は、実施例1と同様の操作を行った。滴下後2時間におけるアルデヒド転化率は100%、4,4’−置換体生成率は81%であった。
<実施例19> 1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)ドデカン(P−123)の合成
実施例1におけるフェノールをo−クレゾール(32.7g、302mmol)に代える以外は、実施例1と同様の操作を行った。滴下後2時間におけるアルデヒド転化率は100%、4,4’−置換体生成率は91%であった。
<実施例20> 1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)ドデカン(P−128)の合成
実施例1におけるフェノールを2,6−キシレノール(36.9g、302mmol)に代える以外は、実施例1と同様の操作を行った。滴下後2時間におけるアルデヒド転化率は100%、4,4’−置換体生成率は97%であった。
<実施例21> 1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−(4−メチルチオフェニル)メタン(P−75)の合成
フェノール(28.4g、302mmol)を40℃に加温して融解させた後、ケイタングステン酸(0.11g、0.032mmol)、n−ドデシルメルカプタン(0.61g、3.0mmol)を加えた。その後、内温を50℃に保ちながら、4−メチルチオベンズアルデヒド(9.16g、60.2mmol)を4時間かけて滴下した。滴下後、1時間加熱攪拌し熟成させた。得られた反応液を一部取りLCおよびGC分析に供した。アルデヒド転化率は100%、4,4’−置換体生成率は79%であった。
<実施例22> 1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−(4−カルボキシフェニル)メタン(P−137)の合成
フェノール(28.4g、302mmol)を40℃に加温して融解させた後、ケイタングステン酸(0.11g、0.032mmol)、n−ドデシルメルカプタン(0.61g、3.0mmol)を加えた。その後、内温を50℃に保ちながら、4−カルボキシベンズアルデヒド(9.03g、60.2mmol)を4時間かけて滴下した。滴下後、1時間加熱攪拌し熟成させた。得られた反応液を一部取りLCおよびGC分析に供した。アルデヒド転化率は100%、4,4’−置換体生成率は79%であった。
<比較例1> 1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ドデカン(P−12)の合成
フェノール(28.4g、302mmol)を40℃に加温して融解させた後、リンタングステン酸(0.11g、0.032mmol)を加えた。その後、内温を50℃に保ちながら、n−ドデカナール(11.1g、60.2mmol)を4時間かけて滴下した。滴下後、18時間加熱攪拌し熟成させた。得られた反応液を一部取りLCおよびGC分析に供した。アルデヒド転化率は99%、4,4’−置換体生成率は58%であった。
<比較例2> 1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ドデカン(P−12)の合成
比較例1におけるn−ドデカナール滴下後の加熱熟成条件を70℃、15時間とした以外は比較例1と同様の操作を行った。アルデヒド転化率は97%、4,4’−置換体生成率は53%であった。
<比較例3> 1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ドデカン(P−12)の合成
比較例1におけるリンタングステン酸を濃塩酸(0.38g、3.6mmol)に代え、反応時間を1時間とした以外は比較例1と同様の操作を行った。アルデヒド転化率は99%、4,4’−置換体生成率は50%であった。
<比較例4> 1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ドデカン(P−12)の合成
フェノール(28.4g、302mmol)を40℃に加温して融解させた後、濃塩酸(0.38g、3.6mmol)、n−ドデシルメルカプタン(0.73g、3.6mmol)を加えた。その後、内温を50℃に保ちながら、n−ドデカナール(11.1g、60.2mmol)を4時間かけて滴下した。滴下後、1時間加熱攪拌し熟成させた。得られた反応液を一部取りLCおよびGC分析に供した。アルデヒド転化率は99%、4,4’−置換体生成率は55%であった。
<比較例5> 1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ドデカン(P−12)の合成
比較例1におけるリンタングステン酸をp−トルエンスルホン酸一水和物(1.03g、6.0mmol)に代え、n−ドデカナール滴下後の加熱熟成条件を1時間とした以外は比較例1と同様の操作を行った。アルデヒド転化率は100%、4,4’−置換体生成率は42%であった。
<比較例6> 1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ドデカン(P−12)の合成
比較例1におけるリンタングステン酸をp−トルエンスルホン酸一水和物(2.06g、12.0mmol)に代え、n−ドデカナール滴下後の加熱熟成条件を1時間とした以外は比較例1と同様の操作を行った。アルデヒド転化率は100%、4,4’−置換体生成率は45%であった。
<比較例7> 1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ドデカン(P−12)の合成
比較例1におけるリンタングステン酸をメタンスルホン酸(1.15g、12.0mmol)に代え、n−ドデカナール滴下後の加熱熟成条件を1時間とした以外は比較例1と同様の操作を行った。アルデヒド転化率は99%、4,4’−置換体生成率は46%であった。
<比較例8> 1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ドデカン(P−12)の合成
比較例1におけるリンタングステン酸を濃硫酸(12.4g、12mmol)に代え、n−ドデカナール滴下後の加熱熟成条件を1時間とした以外は比較例1と同様の操作を行った。アルデヒド転化率は89%、4,4’−置換体生成率は36%であった。
<比較例9> 1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ドデカン(P−12)の合成
フェノール(28.4g、302mmol)を40℃に加温して融解させた後、85%リン酸水溶液(3.47g、30.1mmol)を加えた。その後、内温を50℃に保ちながら、n−ドデカナール(11.1g、60.2mmol)を4時間かけて滴下した。滴下後、36時間加熱攪拌し熟成させた。得られた反応液を一部取りLCおよびGC分析に供した。アルデヒド転化率は68%、4,4’−置換体生成率は35%であった。
<比較例10> 1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ドデカン(P−12)の合成
フェノール(28.4g、302mmol)を40℃に加温して融解させた後、三菱ケミカル社製SK104H強酸性カチオン交換樹脂(6.01g、30.1mmol)を加え懸濁させた。その後、内温を50℃に保ちながら、n−ドデカナール(11.1g、60.2mmol)を4時間かけて滴下した。滴下後、4時間加熱攪拌し熟成させた。得られた反応液を一部取りLCおよびGC分析に供した。アルデヒド転化率は97%、4,4’−置換体生成率は51%であった。
<比較例11> 1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−エチルヘキサン(P−22)の合成
フェノール(28.4g、302mmol)を40℃に加温して融解させた後、p−トルエンスルホン酸一水和物(2.06g、12.0mmol)を加えた。その後、内温を50℃に保ちながら、2−エチルヘキサナール(7.71g、60.2mmol)を4時間かけて滴下した。滴下後、1時間加熱攪拌し熟成させた。得られた反応液を一部取りLCおよびGC分析に供した。アルデヒド転化率は65%、4,4’−置換体生成率は35%であった。
<比較例12> α,α−ビス(4−ヒドロキシフェニル)トルエン(P−45)の合成
フェノール(28.4g、302mmol)を40℃に加温して融解させた後、p−トルエンスルホン酸一水和物(2.06g、12.0mmol)を加えた。その後、内温を50℃に保ちながら、ベンズアルデヒド(6.39g、60.2mmol)を4時間かけて滴下した。滴下後、1時間加熱攪拌し熟成させた。得られた反応液を一部取りLCおよびGC分析に供した。アルデヒド転化率は61%、4,4’−置換体生成率は39%であった。
<比較例13> 1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン(P−4)の合成
フェノール(28.4g、302mmol)を40℃に加温して融解させた後、p−トルエンスルホン酸一水和物(2.06g、12.0mmol)を加えた。その後、内温を50℃に保ちながら、n−ブタナール(4.34g、60.2mmol)を4時間かけて滴下した。滴下後、1時間加熱攪拌し熟成させた。得られた反応液を一部取りLCおよびGC分析に供した。アルデヒド転化率は100%、4,4’−置換体生成率は49%であった。
<比較例14> 1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン(P−1)の合成
フェノール(28.4g、302mmol)を40℃に加温して融解させた後、p−トルエンスルホン酸一水和物(2.06g、12.0mmol)を加えた。その後、内温を50℃に保ちながら、ホルマリン37質量%水溶液(4.89g、60.2mmol)を4時間かけて滴下した。滴下後、1時間加熱攪拌し熟成させた。得られた反応液を一部取りLCおよびGC分析に供した。アルデヒド転化率は100%、4,4’−置換体生成率は27%であった。
<比較例15> 1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)ドデカン(P−123)の合成
o−クレゾール(32.7g、302mmol)を40℃に加温して融解させた後、p−トルエンスルホン酸一水和物(2.06g、12.0mmol)を加えた。その後、内温を50℃に保ちながら、ドデカナール(11.1g、60.2mmol)を4時間かけて滴下した。滴下後、1時間加熱攪拌し熟成させた。得られた反応液を一部取りLCおよびGC分析に供した。アルデヒド転化率は100%、4,4’−置換体生成率は76%であった。
<比較例16> 1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−1−(4−メチルチオフェニル)メタン(P−75)の合成
フェノール(28.4g、302mmol)を40℃に加温して融解させた後、p−トルエンスルホン酸一水和物(2.06g、12.0mmol)を加えた。その後、内温を50℃に保ちながら、4−メチルチオベンズアルデヒド(9.16g、60.2mmol)を4時間かけて滴下した。滴下後、1時間加熱攪拌し熟成させた。得られた反応液を一部取りLCおよびGC分析に供した。アルデヒド転化率は64%、4,4’−置換体生成率は40%であった。
<比較例17> 1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ドデカン(P−12)の合成
フェノール(28.4g、302mmol)を40℃に加温して融解させた後、ケイタングステン酸(0.11g、0.032mmol)を加えた。その後、内温を70℃に保ちながら、n−ドデカナール(11.1g、60.2mmol)を4時間かけて滴下した。滴下後、4時間加熱攪拌し熟成させた。得られた反応液を一部取りLCおよびGC分析に供した。アルデヒド転化率は100%、4,4’−置換体生成率は57%であった。
結果を以下の表1,2にまとめる。
実施例1〜22のようにヘテロポリ酸触媒とメルカプト化合物を用いて合成した場合、高い4、4’−体選択性でビスフェノール化合物を合成することができ、またその反応速度にも優れることが明白である。実施例と比較例1〜2を比較すると、ヘテロポリ酸のみを用いた場合に比べ、本発明の製造方法が原料アルデヒドの転化率、および4,4’−置換体選択率の双方に総じて優れる傾向にあることが判る。また、実施例1〜10と比較例3〜10を比較すると、メルカプト化合物の併用有無や、酸触媒の使用量、反応温度などの種々の条件によらず、他の酸触媒を用いた場合に比べて本発明のヘテロポリ酸触媒を用いた場合は、原料アルデヒドの転化率、および4,4’−置換体選択率の双方に総じて優れる傾向にあることも判る。さらに、実施例1および比較例6、実施例11および比較例11、実施例12および比較例12、実施例13および比較例13、および実施例14および比較例14、実施例19と比較例15、実施例21と比較例16をそれぞれ比較すると、高いアルデヒド転化率および4,4’−置換体生成率を得られるという本発明の製造方法の優れた効果は、アルデヒド型ビスフェノールの種類によらないことが明らかである。なお、実施例1〜3、実施例15〜18、比較例1および比較例17との比較から、メルカプト化合物の種類によらず本発明の製造方法が優れた4,4’−置換体選択率向上効果を発揮できること、およびそれらのうち実施例1〜2および実施例15〜18のような脂肪族炭化水素基を有するメルカプト化合物が特に優れた効果を有することが判る。以上から、本発明の製造法が従来公知の方法に比べ本発明のビスフェノール化合物製造の点で優位であることが明白である。
さらに、実施例1〜22と比較例3〜16を比較すると、他の酸触媒を用いた場合に比べ本発明の方法では数十分の1から数百分の1という極めて微量の酸触媒を使用しているにもかかわらず、高選択的かつ効率的に本発明のビスフェノール化合物を製造できていることが判る。酸触媒の使用量が低減することは、本発明のビスフェノール化合物製造時の製造コスト低減の面で優位であるだけでなく、精製工程における酸触媒除去の負荷も低減するため、本発明のビスフェノール化合物の品質面でも優位となる。従って、本発明の製造方法は本発明のビスフェノール化合物を工業生産する観点から極めて優れた方法であると言える。
本発明の方法により、このような効率的かつ選択的に4,4’−置換体を得られるのは、ヘテロポリ酸とメルカプト化合物とを組み合わせることで、特に4,4’−置換体の中間体となるカチオンを特異的に安定化することができたためと考えられる。
Figure 2019085399
Figure 2019085399
<合成例1> 1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ドデカン(P−12)の合成およびポリカーボネート樹脂の製造
フェノール(204.2g、2170mmol)を40℃に加温して融解させた後、ケイタングステン酸24水和物(0.72g、0.22mmol)、n−ドデシルメルカプタン(4.39g、22mmol)を加えた。その後、内温を50℃に保ちながら、n−ドデカナール(80.0g、434mmol)を4時間かけて滴下した。滴下後、2時間加熱攪拌し熟成させた。得られた反応液を一部取りLCおよびGC分析に供したところ、アルデヒド転化率は100%、4,4’−置換体生成率は79.0%であった。
該反応液を1モル/Lクエン酸3ナトリウム水溶液(0.633ml、0.33mmol)で中和した後、トルエン(320g)を加え、水(200g)で3回水洗した。本水洗工程の分液性は良好であった。水洗後の有機層を130℃、20Torrで減圧濃縮し、トルエン、フェノールおよび水を除去した。得られた残渣(154.8g)に2−プロパノール(53g)およびn−ヘプタン(240g)を加え、70℃に加温して溶解させた。その後、10℃/時間の条件で15℃まで降温し結晶析出を完了させた。得られた懸濁液をろ過し、2−プロパノール(3.6g)およびn−ヘプタン(90g)の混合液でふりかけ洗浄した。得られた粉体を75℃、20Torrの条件で48時間加熱乾燥させることで、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ドデカンの白色粉末を得た。収量108g、単離収率70.1%、LC純度99.6%。Na含有量は<1ppm、S含有量は16ppmであった。
得られた1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ドデカンを用い、次の(工程1)〜(工程3)に従い、溶融エステル交換法にてポリカーボネート樹脂を重合した。
(工程1)
上述の方法で得られた1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ドデカン32.64g、ビスフェノールA(三菱ケミカル社製)84.07g、ジフェニルカーボネート(三菱ケミカル社製)105.02gを反応器加熱装置、反応器圧力調整装置を付帯した内容量150mLのガラス製反応器に投入し、さらに触媒として炭酸セシウム2wt%水溶液を、炭酸セシウムが全ジヒドロキシ化合物1mol当たり0.5μmolとなるように添加し、原料混合物を調整した。次に、ガラス製反応器内を約100Pa(0.75Torr)に減圧し、続いて、窒素で大気圧に復圧する操作を3回繰り返し、反応器の内部を窒素置換した。窒素置換後、反応器外部温度を220℃にし、反応器の内温を徐々に昇温させ、混合物を溶解させた。
(工程2)
次に、100rpmで撹拌機を回転させ、反応器の内部で行われるジヒドロキシ化合物とDPCのオリゴマー化反応により副生するフェノールを留去しながら、40分間かけて反応器内の圧力を絶対圧で101.3kPa(760Torr)から13.3kPa(100Torr)まで減圧した。
続いて、反応器内の圧力を13.3kPaに保持し、フェノールをさらに留去させながら、80分間、エステル交換反応を行った。
(工程3)
その後、反応器外部温度を260℃に昇温すると共に、40分間かけて反応器内圧力を絶対圧で13.3kPa(100Torr)から399Pa(3Torr)まで減圧し、留出するフェノールを系外に除去した。その後、さらに反応器外部温度を255℃まで昇温、反応器内の絶対圧を30Pa(約0.2Torr)まで減圧、攪拌機の回転速度を30rpmに減速し、重縮合反応を行った。次いで、反応器の攪拌機が予め定めた所定の攪拌動力となったときに、重縮合反応を終了した。このように溶融エステル交換法による重合を行ったところ、問題なく重合させることができ、(工程3)での重合時間160分で重合が終了し、Mv15,000のポリカーボネート樹脂が得られた。
上記合成例1の通り、本発明の製造法を含む製造、精製工程を経て得られたビスフェノール化合物は高単離収率かつ、ポリカーボネート樹脂を問題なく重合できたことから純度面でも優れていることが明らかである。

Claims (7)

  1. 下記式(1)で表されるビスフェノール化合物の製造方法であって、
    少なくともフェノール類、アルデヒド類、ヘテロポリ酸、および下記式(2)で表されるメルカプト化合物を共存させた状態から、下記式(1)で表されるビスフェノール化合物を生成させる工程を含むことを特徴とする、ビスフェノール化合物の製造方法。
    Figure 2019085399
    [式(1)中、Rは、水素原子もしくは炭素数1〜29の一価の有機基を表し、R、Rはそれぞれ独立に、ハロゲン原子又は炭素数1〜29の一価の有機基を表し、a及びbはそれぞれ独立に0〜4の整数を表す。a又はbが2以上の場合、同一のベンゼン環上にある2以上のR又はRは互いに結合して当該ベンゼン環に縮合する環を形成していてもよい。]
    Figure 2019085399
    [式(2)中、Rは、炭素数1〜30のn価の脂肪族炭化水素基を表し、nは1〜6の整数を表す。なお、Rの炭素−炭素結合はエステル構造で1〜6回中断されていても良い。]
  2. 前記ヘテロポリ酸の総量が、アルデヒド類の総量に対して0.01モル%以上、0.5モル%以下であることを特徴とする、請求項1に記載のビスフェノール化合物の製造方法。
  3. 前記ヘテロポリ酸がケイタングステン酸、リンタングステン酸、もしくはそれらの塩から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする、請求項1または2に記載のビスフェノール化合物の製造方法。
  4. 前記式(2)で表されるメルカプト化合物の総量が、前記アルデヒド類の総量に対して0.1モル%以上、25モル%以下であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のビスフェノール化合物の製造方法。
  5. 前記式(2)で表されるメルカプト化合物において、Rがエステル構造で中断されない炭素数1〜30の1価の脂肪族炭化水素基であり、かつnが1であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載のビスフェノール化合物の製造方法。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項の製造方法で製造されたビスフェノール化合物を原料として用いることを特徴とする、樹脂の製造方法。
  7. 前記樹脂がポリカーボネート樹脂であることを特徴とする、請求項6に記載の樹脂の製造方法。
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