JP2018104579A - 筆記具用水性インキ組成物及びそれを用いた筆記具 - Google Patents
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Abstract
Description
すなわち、本発明は、
「1.顔料粒子と、湿式シリカと、含水カオリンと、凝集コントロール剤と、水とを含むことを特徴とする、筆記用具用水性インキ組成物。
2.前記顔料粒子が酸化チタンを含む、第1項に記載の組成物。
3.前記凝集コントロール剤がセルロース誘導体である、第1項または第2項に記載の組成物。
4.さらに凝集分散剤を含む第1項〜第3項のいずれか1項に記載の組成物。
5.前記凝集分散剤が多塩基酸のアルキロールアンモニウム塩であるである、第4項に記載の組成物。
6.前記含水カオリンが、その平均粒子径が0.1μm〜5.0μmである、第1項〜第5項のいずれか1項に記載の組成物。
7.第1項〜第6項のいずれか1項に記載の組成物を収容してなることを特徴とする、筆記具。」に関する。
本発明において、顔料粒子は従来知られている任意のものから選択することができる。顔料としては、金属酸化物または金属塩などの無機顔料、ならびに有機色素顔料またはレーキ顔料などの有機顔料が挙げられる。本発明においては、無機顔料粒子が好ましく、特に金属酸化物粒子が好ましい。特に酸化チタンは白色であるため、後述する補色顔料などと組み合わせることで、多様な色彩を実現できるので好ましい。さらに、酸化チタンにおいて、その表面をアルミナ処理したものを用いると、分散安定性が向上するため、特に好ましい。また、顔料として、光沢のある光輝性顔料、例えばアルミニウム顔料などを用いることもできる。
本発明による水性インキ組成物は、湿式シリカを含んでいる。本発明でいう湿式シリカとは湿式法で合成した非晶質のシリカであり、数〜数十nmの比較的大きい一次粒子が凝集した、分散では一次粒子とすることが困難な、数〜数十μmの二次粒子である。本発明において湿式シリカは、乾式シリカと比較して、比表面積が高く、表面にシラノール基を多く有していることから、顔料粒子との相互作用により、ゆるい橋かけネットワークを形成する。そして、後述する凝集コントロール剤や凝集分散剤などとゆるい嵩高い凝集体を作ることができるため、インキ組成物中に湿式シリカを含有していることにより、顔料粒子の分散安定性が向上し、さらに、凝集体の再分散性を向上させることができる。一方、乾式シリカを用いた際には、分散安定性を保つことはできるが、少量の添加で構造粘性を生じ、インキ粘度が高くなるため好ましくない。
本発明による水性インキ組成物は、凝集コントロール剤を含んでなる。凝集コントロール剤は、前記した湿式シリカにより形成された、相対的に密度の低い凝集体に対して結合し、さらに、後述する含水カオリンや体質材などを水性インキ組成物中に分散し、嵩高い凝集体を作ることができるものである。この凝集コントロール剤により、水性インキ組成物のハードケーキ化を防止し、嵩高い凝集体を作るため、再分散性を向上させることができる。凝集コントロール剤としては、例えば、セルロース誘導体を用いることができ、2種以上のセルロース誘導体を併用することもできる。
本発明による水性インキ組成物は、含水カオリンを含んでなる。本発明でいう含水カオリンとは、天然粘土鉱物であるカオリンクレーを精製し得られる、結晶水を含んだケイ酸アルミニウムを主成分とする扁平または板状の天然粘土鉱物である。本発明において、含水カオリンは、前記の通り、扁平または板状の粒子形状を有することから、インキ組成物中に含水カオリンを含有していることにより、筆記面として紙を用いた場合、含水カオリンが目止めの効果を強く発揮し、顔料粒子が紙の繊維間に入り込むことを防ぐことができ、より一層、筆跡の発色性を高める効果が得られる。
水性インキ組成物は、さらに樹脂を含むことができる。本発明に用いることができる樹脂としては、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体などが挙げられ、水溶性樹脂、樹脂が水中に粒子状に分散されてなる樹脂エマルションなどを用いることができる。水性インキ組成物にアクリル樹脂を含有させることにより、水性インキ組成物の定着性を向上させ、これを用いて形成される筆記線の耐擦性をさらに向上させることができる。
本発明による水性インキ組成物は、凝集分散剤を含むことができる。ここで凝集分散剤とは顔料粒子の表面に吸着し、顔料粒子を相互に離間させながら、顔料粒子同士の距離を一定以上に保ち、顔料粒子同士が直接凝集することを防ぐことができるものである。この結果、顔料粒子の凝集が抑制され、凝集体が形成される場合であっても、相対的に密度の低い凝集体が形成される。さらに、顔料粒子、湿式シリカ、凝集コントロール剤、含水カオリンで形成された嵩高い凝集体の顔料粒子に対して、前記の通りの効果を発揮するため、再分散性をさらに向上することができる。
−C(=O)−N(−R1)(−R2−OH)
ここで、R1はアルキル基、R2はアルキレン基である。本発明において用いられる分散凝集剤は、このような部分構造を有するポリマーが好ましい。このようなポリマーは、上記の構造を複数有していればよく、その分子量は特に限定されないが、質量平均分子量が1,000〜100,000であることが好ましく、5,000〜20,000であることがより好ましい。
本発明による水性インキ組成物は、その性能に影響を及ぼさない範囲で、湿式シリカ、含水カオリンの他に体質材を含んでもよい。本発明において体質材は従来知られている任意のものから選択することができるが、具体的には、焼成カオリン、タルク、マイカ、クレー、ベントナイト、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウムなどが挙げられる。また、炭酸カルシウム、チタン酸カリウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウムなどのウィスカーなどを用いることもできる。
本発明による水性インキ組成物は、得られる筆記線の色彩を調整するため、補色顔料を含んでいてもよい。特に、主たる顔料粒子として白色の酸化チタンを選択した場合、補色顔料との組み合わせにより種々の発色を実現できる。補色顔料は、特に限定されず、赤、青、黄、緑、白、黒など様々な色の顔料を用いることができる。補色顔料としては、例えば、SPシリーズ(冨士色素株式会社製)Emacolシリーズ、Sandyeシリーズ(以上、山陽色素株式会社製)、ルミコールシリーズ(日本蛍光化学株式会社製)、EM・Colorシリーズ(東洋インキ社製)、シンロイヒカラーベースシリーズ(シンロイヒ社製)、WAカラーシリーズ(大日精化社製)などが挙げられる。
また、水性インキ組成物は、必要に応じて、界面活性剤、防腐剤、濡れ剤、消泡剤、防錆剤、pH調整剤、気泡抑制剤、気泡吸収剤、剪断減粘性付与剤および粘度調整剤などを含んでいてもよい。
本発明による水性インキ組成物の粘度は低いことが好ましい。組成物の粘度の測定はE型回転粘度計(ブルックフィールド社製)を用いて行うことができる。具体的には、20℃における水性インキ組成物の粘度は、回転数が100rpm(剪断速度380sec−1)の条件で測定した場合、1〜20mPa・sであることが好ましく、8〜18mPa・sであることがより好ましい。水性インキ組成物の粘度が上記数値範囲内であれば、マーカーなどの筆記用具に使用した場合のインキ吐出性を向上させることができ、またフィルムなど非浸透性の記録媒体への筆記性が向上する。
本発明の水性インキ組成物は、繊維チップ、フェルトチップ、プラスチックチップなどのペン芯またはボールペンチップなどを筆記先端としたマーキングペンやボールペン、金属製の筆記先端を用いた万年筆などの筆記具に用いることができる。その中でも、ペン先が繊維チップ、フェルトチップである筆記具に用いた際に、チップ内での顔料粒子の沈降を抑制できる為、筆記性能が向上するなど、特にその効果が高くなる。また、前記ペン芯の気孔率は、50〜80%とすることが好ましい。前記ペン芯の気孔率が上記数値範囲内であれば、前記顔料の目詰まりがなく、適切なインキ吐出量を維持することができる。
(実施例1)
下記原材料および配合量にて、室温で1時間攪拌混合することにより、筆記具用インキ組成物を得た。得られた水性インキ組成物の粘度をE型回転粘度計(DV−II+Pro、コーン型ローターCPE−42、ブルックフィールド社製)により測定した。具体的には、20℃、剪断速度380sec−1(回転速度100rpm)における粘度は13mPa・sであった。
・顔料粒子 25質量%
(表面がアルミナ処理された酸化チタン粒子、平均粒子径:0.21μm、テイカ株式会社製、商品名:JR−405)
・湿式シリカ 2質量%
(平均粒子径2μm、商品名:MizkasilP−527、水沢化学工業社製)
・含水カオリン 10質量%
(平均粒子径0.6μm、商品名:ASP−600、BASF社製)
・凝集分散剤 1.5質量%
(高分子量酸性ポリマーのアルキロールアンモニウム塩、商品名:Anti−Terra 250、ビックケミー社製)
・凝集コントロール剤 2質量%
(カルボキシメチルセルロース、10%水溶液、商品名:F−907A、第一工業製薬(株)社製)
・アクリル樹脂 7質量%
(スチレン−アクリル酸共重合体エマルジョン、固形分含有量47%、商品名:JONCRYL PDX−7600、BASF社製)
・濡れ剤 0.4質量%
(アセチレングリコール、商品名:ダイノール604、日信化学工業(株)社製)
・防腐剤 0.2質量%
(1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン、商品名:プロキセルXL−2、ロンザジャパン(株)社製)
・イオン交換水 61.9質量%
実施例1に対して、配合する成分の種類や添加量を表1に示したとおりに変更して、実施例2〜4、比較例1〜6のインキ組成物を得た。これらの例で使用した材料の詳細は以下の通りである。
・酸化チタン(1) JR−405(Al2O3処理、平均粒径:0.21μm、テイカ株式会社製)
・酸化チタン(2) JR−600E(Al2O3処理、平均粒径:0.27μm、テイカ株式会社製)
・湿式シリカ(1) (Mizkasil P−527、水沢化学工業社製)
・湿式シリカ(2) (Mizkasil P−763、水沢化学工業社製)
・乾式シリカ (アエロジル200、日本アエロジル社製)
・含水カオリン(1) (ASP−600、平均粒径:0.6μm、BASF社製)
・含水カオリン(2) (ASP−900、平均粒径:1.5μm、BASF社製)
・焼成カオリン (Satintone 5HB、平均粒径:0.8μm、BASF社製)
・凝集分散剤 Anti−Terra 250(高分子量酸性ポリマーのアルキロールアンモニウム塩、ビックケミー製)
・凝集コントロール剤 CMC(カルボキシメチルセルロース 商品名:F−907A、第一工業製薬(株)社製)
・アクリル樹脂 JONCRYL PDX−7600(スチレン−アクリル酸共重合体エマルション、固形分含有量47%、BASF社製)
・ウレタン樹脂 Neorez R−650 (ポリエーテルポリオール共重合型ウレタン樹脂エマルション、固形分含有量38%、DSM社製)
水性インキ組成物を、直径15mmの密閉ガラス試験管に入れて、常温にて14日間放置した。その後、一度沈降した各ガラス試験管を上下に振とうして、水性インキ組成物の再分散状態を目視により観察した。下記基準に従って、凝集状態を評価した。
A:振とうにより、容易に再分散された
B:振とうにより再分散されるが、時間がかかったもの
C:振とうにより十分に再分散されないもの
D:振とうしても再分散しないもの
ペン先には、気孔率60%の砲弾型ポリエステル繊維芯のチップを用いた。このマーキングペンにより、筆記試験用紙に筆記を行った。その際の筆跡発色性を目視により観察した。なお、筆記試験用紙として黒色紙(紀州製紙(株)社製、色上質紙、中厚口)を用いた。
A:筆跡が筆記面を隠蔽しており、良好な筆跡が得られている。
B:筆跡が筆記面を隠蔽しているものの十分でなく、筆記面の色がやや透過している。
C:筆跡は視認できるが、筆記面をほとんど隠蔽しておらず、筆記面の色が透過している。
D:筆跡の視認ができず、筆記面を全く隠蔽していない。
ペン先には、気孔率60%の砲弾型ポリエステル繊維芯のチップを用いた。このマーキングペンを用い、筆記試験用紙に筆記した後、チップ上向き状態で30日間放置した後、筆記試験用紙に筆記し、そのときの紙面の状態を目視により観察した。なお、筆記試験用紙として黒色紙を用いた。
A:筆跡が筆記面を隠蔽しており、良好な筆跡が得られている。
B:筆跡が筆記面を隠蔽しているものの十分でなく、筆記面の色がやや透過している。
C:筆跡の視認ができず、筆記面を全く隠蔽していない。
Claims (7)
- 顔料粒子と、湿式シリカと、含水カオリンと、凝集コントロール剤と、水とを含むことを特徴とする、筆記用具用水性インキ組成物。
- 前記顔料粒子が酸化チタンを含む、請求項1に記載の組成物。
- 前記凝集コントロール剤がセルロース誘導体である、請求項1または2に記載の組成物。
- さらに凝集分散剤を含む請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
- 前記凝集分散剤が多塩基酸のアルキロールアンモニウム塩であるである、請求項4に記載の組成物。
- 前記含水カオリンが、その平均粒子径が0.1μm〜5.0μmである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の組成物。
- 請求項1〜6のいずれか1項に記載の組成物を収容してなることを特徴とする、筆記具。
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