JP2018159010A - マクロモノマー共重合体および成形材料 - Google Patents
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Abstract
Description
特に、触媒的連鎖移動重合(Catalytic Chain Transfer Polymerization、CCTPと略記)で製造されたアクリル系マクロモノマーとコモノマーの共重合体に関する。
前述の2種以上のポリマーセグメントを化学結合させた(メタ)アクリルブロックコポリマーであれば、を使用したアクリル樹脂成形体が知られている。(メタ)アクリルブロックコポリマーは互いに化学結合で連結しているため、その相分離構造はミクロ相分離構造となる。そのため、各ポリマーセグメントの特性を発揮させることによって、透明性に優れ、且つ耐衝撃性や柔軟性に優れたアクリル樹脂成形体が得られることが期待できる。
これらの問題点を解決する方法として、触媒的連鎖移動重合と呼ばれる連鎖移動定数が極めて高いコバルト錯体をごく微量用いてアクリル系マクロモノマーをあらかじめ製造し、そのアクリル系マクロモノマーと他のアクリル系モノマーを共重合させることで(メタ)アクリルブロック/グラフト共重合体を製造する方法が知られている(例えば、特許文献5参照)。
マクロモノマーとは、重合反応が可能な官能基を持った高分子のことであり、マクロマーとも呼ばれるものである。
また、CCTPで製造されたマクロモノマーとコモノマーの共重合体では、耐熱分解性が必ずしも十分とは言えず、溶融成形に用いる際に成形不良となる場合があった。
[1] 下記一般式(1)で表されるマクロモノマー(A)由来の単位と、前記マクロモノマー(A)と共重合可能なコモノマー(B)由来の単位からなるマクロモノマー共重合体(Y)であって、窒素気流下、昇温速度10℃/分の条件で測定したマクロモノマー共重合体(Y)の5%重量減少温度が340℃以上であることを特徴とする、マクロモノマー共重合体(Y)。
[3] 前記アルキルアクリレート(B1)が、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、i−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、i−ブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ラウリルアクリレート、トリデシルアクリレート、及びi−ステアリルアクリレートからなる群選ばれる1種以上である、[2]のマクロモノマー共重合体(Y)。
[4] 前記芳香族アクリレート(B2)が、ベンジルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、及びフェニルアクリレートからなる群より選ばれる1種以上である、[2]または[3]のマクロモノマー共重合体(Y)。
[5] 前記コモノマー(B)のみからなる重合体の屈折率と、前記マクロモノマー(A)の屈折率との差の絶対値が0.05以下であることを特徴とする、[1]〜[4]のいずれかのマクロモノマー共重合体(Y)。
[6] [1]〜[5]のいずれかのマクロモノマー共重合体(Y)と、ポリメチルメタクリレート(Z)とを含む成形材料であって、前記ポリメチルメタクリレート(Z)がメチルメタクリレート単位を80質量%以上含み、前記マクロモノマー(A)がメチルメタクリレート単位を80質量%以上含む、成形材料。
以下において重合前のモノマー成分のことを「〜単量体」といい、「単量体」を省略することもある。重合体を構成する単量体単位のことを「〜由来の単位」または「〜単位」という。また、(メタ)アクリレートは、メタクリレート又はアクリレートを示す。
また、ポリメチルメタクリレートをPMMAと略記する場合がある。PMMAはメチルメタクリレート単量体の単独重合体、またはメチルメタクリレート単位以外の単位を含む共重合体である。
X1〜Xnは、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基である。
Zは、末端基である。
nは、2〜10,000の自然数である。)
マクロモノマー(A)は、ポリ(メタ)アクリレートセグメントの片末端にラジカル重合可能な不飽和二重結合を有する基を持つ。ここで、マクロモノマーとは、重合可能な官能基を持ったポリマーであり、別名マクロマーとも呼ばれる。
一般式(1)において、R及びR1〜Rnは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又は複素環基である。アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又は複素環基は、置換基を有することができる。
R又はR1〜Rnの置換基としてのカルバモイル基としては、例えば、N−メチルカルバモイル基及びN,N−ジメチルカルバモイル基が挙げられる。
R又はR1〜Rnの置換基としてのアミド基としては、例えば、ジメチルアミド基が挙げられる。
R又はR1〜Rnの置換基としてのハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子が挙げられる。
R又はR1〜Rnの置換基としてのアルコキシ基としては、例えば、炭素数1〜12のアルコキシ基が挙げられる。具体例としては、メトキシ基が挙げられる。
R又はR1〜Rnの置換基としての親水性又はイオン性を示す基としては、例えば、カルボキシ基のアルカリ塩又はスルホキシル基のアルカリ塩、ポリエチレンオキシド基、ポリプロピレンオキシド基等のポリ(アルキレンオキシド)基及び四級アンモニウム塩基等のカチオン性置換基が挙げられる。
アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基又はi−プロピル基が好ましく、入手のしやすさの観点から、メチル基がより好ましい。
一般式(1)において、X1〜Xnは、それぞれ水素原子又はメチル基であり、メチル基が好ましい。さらに、マクロモノマー(A)の合成し易さの観点から、X1〜Xnの半数以上がメチル基であることが好ましい。
一般式(1)において、Zは、マクロモノマー(A)の末端基である。マクロモノマー(A)の末端基としては、例えば、公知のラジカル重合で得られるポリマーの末端基と同様に、水素原子及びラジカル重合開始剤に由来する基が挙げられる。
マクロモノマー(A)を得るためのモノマー(原料モノマー)としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、i−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−ラウリル(メタ)アクリレート、n−ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリレート;(メタ)アクリル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルヘキサヒドロフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルマレイン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルマレイン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルコハク酸、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、マレイン酸モノメチル、イタコン酸モノメチル等のカルボキシ基含有ビニル系単量体;無水マレイン酸、無水イタコン酸等の酸無水物基含有ビニル系単量体;グリジシル(メタ)アクリレート、グリジシルα−エチルアクリレート、3,4−エポキシブチル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有ビニル系単量体;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有(メタ)アクリレート系のビニル系単量体;(メタ)アクリルアミド、N−t−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド、マレイン酸アミド、マレイミド等のアミド基を含有するビニル系単量体;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、(メタ)アクリロニトリル、塩化ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニル系単量体;ジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、N,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミド等の多官能性のビニル系単量体;などが挙げられる。これらは、1種以上を適宜選択して使用することができる。
メタクリレートとしては、メチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート及び4−ヒドロキシブチルメタクリレートが好ましく、メチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート及び2−エチルヘキシルメタクリレートがより好ましい。
アクリレートとしては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、i−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、i−ブチルアクリレート及びt−ブチルアクリレートが挙げられる。これらは、1種以上を適宜選択して使用することができる。これらの中で、入手しやすさの点で、メチルアクリレートが好ましい。
マクロモノマー(A)の全単位のうち、メタクリレート単位は80〜100質量%が好ましく、82〜99質量%より好ましく、84〜98質量%がさらに好ましい。
マクロモノマー(A)の全単位のうち、アクリレート単位は0〜20質量%が好ましく、1〜18質量%より好ましく、2〜16質量%がさらに好ましい。
マクロモノマー(A)は、公知の方法で製造できる。マクロモノマーの製造方法としては、例えば、コバルト連鎖移動剤を用いて製造する方法(米国特許第4680352号明細書)、α−ブロモメチルスチレン等のα置換不飽和化合物を連鎖移動剤として用いる方法(国際公開第88/04304号)、重合性基を化学的に結合させる方法(特開昭60−133007号公報、米国特許第5147952号明細書)及び熱分解による方法(特開平11−240854号公報)等が挙げられる。
これらの中で、マクロモノマー(A)の製造方法としては、製造工程数が少なく、連鎖移動定数が高い触媒を使用する点で、コバルト連鎖移動剤を用いて製造する方法が好ましい。
マクロモノマー(A)とコモノマー(B)との共重合反応機構については、山田らの報文(Prog. Polym. Sci.31 (2006) p835−877)等に詳しく記載されている。具体的には、マクロモノマー(A)の末端二重結合基は、アクリレートとの共重合反応では分岐構造を形成し、共重合することができる。しかし、マクロモノマー(A)の末端二重結合基とメタクリレートとの反応では分岐構造の形成が困難であり、主に再開裂して末端二重結合基とメタクリレート成長末端のラジカルが生成する。コモノマー(B)にスチレンを用いた場合は、分岐構造を形成可能であるが反応の進行が極端に遅く、工業的に好ましくない。この点からは、コモノマー(B)は、アクリレートを主成分とすることが好ましい。
コモノマー(B)は、マクロモノマー(A)と共重合可能であれば特に限定されず、必要に応じて種々の重合性単量体を使用できる。しかし、前述のマクロモノマー(A)とコモノマー(B)との共重合反応機構を考慮し、アクリレートを主成分とすることが好ましい。コモノマー(B)単位からなるポリマーセグメントに柔軟性を持たせる場合、コモノマー(B)がアルキルアクリレート(B1)を含むことが好ましい。また、コモノマー(B)単位からなるポリマーセグメントの耐熱分解性の向上と屈折率調整を同時に達成するためには、コモノマー(B)が芳香族アクリレート(B2)を含むことが好ましい。コモノマー(B)単位からなるポリマーセグメントの耐熱分解性を向上させることで、マクロモノマー共重合体(Y)の耐熱分解性を向上させることができる。また、コモノマー(B)単位からなるポリマーセグメントの屈折率を調整することで、マクロモノマー共重合体(Y)の透明性を向上させたり、他の樹脂とマクロモノマー共重合体(Y)との混合物の透明性を向上させたりすることができる。また、コモノマー(B)は、その他のモノマー(B3)を含んでも良い。その他のモノマー(B3)は、マクロモノマー共重合体(Y)に種々の機能を付与するために用いられる。
アルキルアクリレート(B1)は、アクリレートのうち、エステル基がアルキル基であるものを指す。アルキル基は直鎖アルキル基、分岐アルキル基、環状アルキル基などを含む。これらのうち、コモノマー(B)単位からなるポリマーセグメントが柔軟性に優れる点では、直鎖アルキル基や分岐アルキル基を用いることが好ましい。
芳香族アクリレート(B2)を用いることにより、耐熱分解性の向上と屈折率調整を同時に達成することができる。芳香族アクリレート(B2)単位からなる重合体の屈折率は、アルキルアクリレート(B1)単位からなる重合体の屈折率より高くなることから、屈折率調整に好適に用いられる。
さらに、芳香族アクリレート(B2)を共重合することでマクロモノマー共重合体(Y)の耐熱分解性を向上させることができる。例えばマクロモノマー共重合体(Y)の5%重量減少温度が340℃以上を達成することができる。該5%重量減少温度は345℃以上がより好ましく、350℃以上がさらに好ましい。
その他のモノマー(B3)は、マクロモノマー共重合体(Y)に種々の機能性を付与するために使用される。その他のモノマー(B3)は、マクロモノマー(A)、アルキルアクリレート(B1)及び、芳香族アクリレート(B2)のうちのいずれかと共重合可能な重合性単量体であれば、特に制限なく選択可能である。
その他のモノマー(B3)としては、例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、i−プロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、i−ブチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、n−ラウリルメタクリレート、n−ステアリルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、フェニルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、2−メトキシエチルメタクリレート、2−エトキシエチルメタクリレート、フェノキシエチルメタクリレート等のメタクリレート;2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレート、グリセロールメタクリレート等の水酸基含有メタクリレート;メタクリル酸、2−メタクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−メタクリロイルオキシプロピルヘキサヒドロフタル酸、2−メタクリロイルオキシエチルフタル酸、2−メタクリロイルオキシプロピルフタル酸、2−メタクリロイルオキシエチルマレイン酸、2−メタクリロイルオキシプロピルマレイン酸、2−メタクリロイルオキシエチルコハク酸、2−メタクリロイルオキシプロピルコハク酸、等のカルボキシ基含メタクリレート;グリジシルメタクリレート、3,4−エポキシブチルメタクリレート等のエポキシ基含有メタクリレート;ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート等のアミノ基含有メタクリレート;エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、トリプロピレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、アリルメタクリレート、等の多官能メタクリレート;クロトン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、マレイン酸モノメチル、イタコン酸モノメチル等のカルボキシ基含有ビニル系単量体;無水マレイン酸、無水イタコン酸等の酸無水物基含有ビニル系単量体;(メタ)アクリルアミド、N−t−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド、マレイン酸アミド、マレイミド等のアミド基を含有するビニル系単量体;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、(メタ)アクリロニトリル、塩化ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニル系単量体;ジビニルベンゼン、N,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミド等の多官能性のビニル系単量体;などが挙げられる。これらは、1種以上を適宜選択して使用することができる。
マクロモノマー(A)とコモノマー(B)との共重合反応をラジカル重合開始剤の存在下で行う場合、ラジカル重合開始剤として、有機過酸化物あるいはアゾ化合物を使用することができる。有機過酸化物の具体例としては、例えば、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシピバレート、o−メチルベンゾイルパーオキサイド、ビス−3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、シクロヘキサノンパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド等が挙げられる。
アゾ化合物の具体例としては、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2 , 2’−アゾビス(2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル)等が挙げられる。これらの中でも、ベンゾイルパーオキサイド、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル)が好ましい。これらラジカル重合開始剤は、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
ラジカル重合開始剤は、マクロモノマー(A)とコモノマー(B)の合計量100質量部に対して0.0001〜10質量部の範囲内で用いることが好ましい。
重合温度については特に制限はなく、例えば、−100〜250℃であり、好ましくは0〜200℃の範囲である。
マクロモノマー共重合体(Y)は、マクロモノマー(A)由来の単位とコモノマー(B)由来の単位を共に含有するブロック/グラフト共重合体(Y1)を含み、そのほかの成分を含んでもよい。例えば、コモノマー(B)単位のみからなる重合体(Y2)、及び、未反応のマクロモノマー(A)を含む可能性がある。重合体(Y2)及び未反応のマクロモノマー(A)の含有量は少ない方が好ましい。
「ブロック/グラフト共重合体」はブロック共重合体およびグラフト共重合体の一方または両方の意味である。
具体的には、未反応のマクロモノマー(A)がマクロモノマー共重合体(Y)100質量%に対して20質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましく、10質量%以下がさらに好ましい。
また、コモノマー(B)単位のみからなる重合体(Y2)が、マクロモノマー共重合体(Y)100質量%に対して15質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましく、5%以下がさらに好ましい。
該屈折率の差の絶対値が0.05以下であると、マクロモノマー共重合体(Y)は透明性に優れる。またマクロモノマー共重合体(Y)を他の樹脂と混合したときに、他の樹脂の透明性が低下しにくい。
例えば、透明性が高いポリメチルメタクリレートにマクロモノマー共重合体(Y)を混合した時の透明性の低下が小さい。
したがって、マクロモノマー共重合体(Y)は、ポリメチルメタクリレートの耐衝撃性や柔軟性を向上させる改質剤として好適に使用できる。またマクロモノマー共重合体(Y)自身の耐熱分解性が高いため、従来のマクロモノマー共重合体では適用できなかった、成形温度や使用温度が高い他の樹脂の改質剤として好適に使用できる。
コモノマー(B)のみからなる重合体の屈折率は特に限定されないが、例えば波長589nmにおける屈折率が1.44〜0.54であることが好ましく、1.47〜1.51がより好ましい。
マクロモノマー(A)の屈折率は特に限定されないが、例えば波長589nmにおける屈折率が1.44〜0.54であることが好ましく、1.47〜1.51がより好ましい。
本発明のマクロモノマー共重合体(Y)の製造は、溶液重合、懸濁重合もしくは塊状重合で行われる。溶液重合は、得られたポリマー溶液をそのまま塗料や粘接着剤の原料として用いることができる。また、脱気押出等の方法で溶剤等を除去し、成形材料及びその添加剤として用いることもできる。塊状重合は重合場が懸濁重合と同等であり、シラップを型に注入して重合・硬化させることで目的の成形体を得ることができる。懸濁重合では微小なビーズ(粒子状)としてマクロモノマー共重合体(Y)を得ることができることから、成形材料としてそのまま溶融成形に用いたり、他の樹脂に混合して添加剤として使ったり、塗料や粘接着剤の成分として用いたりすることができる。
マクロモノマー(A)の割合が上記範囲の下限値以上であるとマクロモノマー共重合体(Y)および後述の成形材料(Z)の透明性を向上させると共にミクロ相分離構造を制御でき、上限値以下であるとマクロモノマー(A)とコモノマー(B)の共重合反応が進行しやすくなる。
本発明のマクロモノマー共重合体(Y)は、マクロモノマー共重合体(Y)を主成分として使用しても良いし、他の樹脂の添加剤として使用しても良い。
マクロモノマー共重合体(Y)を主成分として使用する場合、溶融成形可能な成形材料としてシートやフィルム、各種筐体やカバー類、導光体などの種々の成形体として使用できる。また、溶剤に溶解させたのち塗工することで塗料や粘接着剤などとして利用可能である。
マクロモノマー共重合体(Y)を他の樹脂の添加剤として使用する場合、主成分となる樹脂としては、例えば、ポリメタクリル酸メチル等のアクリル系樹脂、ポリオレフィン、ポリアミド、不飽和ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等の飽和ポリエステル、ポリカーボネート、ポリスチレン、ABS樹脂、AS樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ乳酸、ポリフッ化ビニリデン等が挙げられる。
マクロモノマー共重合体(Y)が他の樹脂に付与する機能としては、柔軟性、靱性、耐衝撃性、耐候性、加工性、離型性、耐擦傷性、表面硬度、相溶性、結晶サイズ制御、延性等が挙げられる。
他の樹脂と混合させる方法としては、物理的混合、溶融混合、重合/硬化前に溶解・分散させておく方法、等が挙げられる。
成形材料の好ましい態様として、マクロモノマー共重合体(Y)と、ポリメチルメタクリレート(Z)を含む成形材料が挙げられる。
マクロモノマー共重合体(Y)をPMMA(ポリメチルメタクリレート(Z))に添加して使用する場合は、マクロモノマー(A)がメチルメタクリレート単位を含むことが好ましい。マクロモノマー(A)が含むメチルメタクリレート単位が多いほどPMMAとの相溶性が良好となり好ましい。この場合の、マクロモノマー(A)が含むメチルメタクリレート単位は、マクロモノマー(A)に対して50質量%以上が好ましく、80質量%以上がさらに好ましい。また、マクロモノマー共重合体(Y)を添加するPMMAがメチルメタクリレート単位以外の単位を含む場合は、マクロモノマー(A)とPMMAのモノマー組成を近づけることが好ましい。
成形材料は本発明の効果を損なわない範囲で任意成分を含んでもよい。例えば、成形材料に対して、マクロモノマー共重合体(Y)とポリメチルメタクリレート(Z)の合計が80〜100質量%であることが好ましく、90〜100質量%がより好ましい。
<測定方法・評価方法>
[GPC測定]
Mw及びMnは、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)を使用して求めた。以下に測定条件を示す。
装置:HLC−8220(東ソー社製)
カラム:TSK GUARD COLUMN SUPER H−H(4.6×35mm、東ソー社製)と2本のTSK−GEL SUPER HM−H(6.0×150mm、東ソー社製)を直列に接続
溶離液:テトラヒドロフラン
測定温度:40℃
流速: 0.6mL/分
Mw(質量平均分子量)及び(Mn)数平均分子量は、Polymer Laboratories製のポリメチルメタクリレート(Mp(ピーク分子量)=141,500、55,600、11,100及び1,590の4種)を用いて作成した検量線を使用して算出した。分子量分布は、式「分子量分布=(質量平均分子量)/(数平均分子量)」により算出した。
コモノマー(B)の反応率は、1H−NMR測定によって求められる。1H−NMR測定は核磁気共鳴装置を用いて実施した。以下に測定条件を示す。
装置:UNITY INOVA500(Varian社製)
重溶媒:重クロロホルム(シグマ−アルドリッチ社製)
サンプル調製:重合反応溶液0.225gに重クロロホルム1.2を加えた。
測定条件:積算回数1000回、測定温度40℃
耐熱分解性は、熱重量測定/示差熱分析装置を使用し、測定対象ポリマーの重量減少を追跡して評価した。以下に測定条件を示す。
装置: 日立ハイテクサイエンス社製 STA7300
測定条件: 窒素気流200mL/分、110℃〜550℃、昇温速度10℃/分
射出成形して2mm厚の成形板を得た後、ヘイズ値の測定を実施した。以下に測定条件を示す。
装置: 日本電色工業社製 NDH2000
測定条件: 全光線透過率はJIS K7361−1、ヘイズ値(曇価)はJIS K7316に準拠して評価した。
標準板としてVH001(三菱レイヨン社製、メタクリル酸メチルとアクリル酸メチルの共重合体、商品名)で作成した2mm厚板を用い、各サンプルのヘイズ値(単位:%)と標準板のヘイズ値(単位:%)との差の絶対値を△Haze値として算出した。△Haze値で比較することで、外部ヘイズの影響を除いた内部ヘイズの値を比較することができる。
撹拌機、冷却管及び温度計を備えた反応装置中に、17質量%水酸化カリウム水溶液61.6部、メチルメタクリレート19.1部及び脱イオン水19.3部を仕込んだ。次いで、反応装置内の液を室温にて撹拌し、発熱ピークを確認した後、4時間撹拌した。この後、反応装置中の反応液を室温まで冷却してメタクリル酸カリウム水溶液を得た。
撹拌装置を備えた合成装置中に、窒素雰囲気下で、酢酸コバルト(II)四水和物(和光純薬工業社製、和光特級)2.00g(8.03mmol)及びジフェニルグリオキシム(東京化成社製、EPグレード)3.86g(16.1mmol)及び予め窒素バブリングにより脱酸素したジエチルエーテル100mlを入れ、室温で2時間攪拌した。
撹拌機、冷却管及び温度計を備えた重合装置中に、脱イオン水135部、硫酸ナトリウム(Na2SO4)0.1部及び製造例1で製造した分散剤(1)(固形分10質量%)0.26部を入れて撹拌して、均一な水溶液とした。次に、メチルメタクリレート95部、メチルアクリレート5部、製造例2で製造した連鎖移動剤(1)0.0024部及び重合開始剤としてパーオクタO(日油(株)製1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、商品名)0.3部を加え、水性分散液とした。
攪拌機、冷却管及び温度計を備えたセパラブルフラスコ内に、トルエン(和光純薬工業社製)200部、n−ブチルアクリレート(三菱化学社製)100部、V59(和光純薬工業社製AMBN(2,2−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、商品名)0.3部を加えて撹拌して均一な溶液を得た。30分間窒素バブリングを実施してセパラブルフラスコ内の雰囲気を窒素置換した。次いで69℃まで昇温して重合を開始し、5時間反応を進行させた後、室温まで冷却してポリマー溶液を得た。
製造例4において、用いるモノマーをn−ブチルアクリレート100部から表1に記載のモノマー組成に変更した以外は同様の方法でポリマー(Z−2)〜(Z−5)を得た。評価結果を表1に示す。
攪拌機、冷却管及び温度計を備えたセパラブルフラスコ内に、トルエン(和光純薬工業社製)100部、製造例3で製造したマクロモノマー(A−1)30.0部を入れて50℃で1時間撹拌して均一な溶液とした。一度室温まで冷却後、アルキルアクリレート(B1)であるn−ブチルアクリレート(三菱化学社製)49.0部、芳香族アクリレート(B2)であるベンジルアクリレート(大阪有機化学工業社製)21.0部、V59(和光純薬工業社製AMBN(2,2−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、商品名)0.3部を加えて撹拌して均一な溶液を得た。30分間窒素バブリングを実施してセパラブルフラスコ内の雰囲気を窒素置換した。次いで69℃まで昇温して重合を開始し、5時間反応を進行させた後、室温まで冷却してポリマー溶液を得た。
実施例1において、マクロモノマー(A1)およびコモノマー(B)の組成を表2に記載の内容に変更した。そのほかは実施例1と同様にして、実施例2および比較例1〜2を行い、マクロモノマー(Y−2)〜(Y−4)を得た。実施例1と同様に評価した。評価結果を表2に示す。
具体的に、マクロモノマー共重合体(Y−1)及び(Y−2)は、芳香族アクリレート(B2)を含まないマクロモノマー共重合体(Y−3)及び(Y−4)とそれぞれ比較して5%重量減少温度がおよそ20℃高くなった。
実施例1で製造したマクロモノマー共重合体(Y−1)14部とVH001(ポリメチルメタクリレート、三菱レイヨン社製、商品名)86部をラボプラストミル(東洋精機製作所社製)を用いて240℃で溶融混練した。得られた混練物を用い、微量混練射出成形機(井元製作所社製)を使用して2mm厚の成形板を作製し、上記の方法で透明性を評価した。△Haze値を表3に示す。
実施例3と同様の方法で、使用するマクロモノマー共重合体(Y)を表3に記載のものに変更して溶融混練、射出成形板作製、及び評価を行った。結果を表3に示した。
Claims (6)
- 前記アルキルアクリレート(B1)が、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、i−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、i−ブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ラウリルアクリレート、トリデシルアクリレート、及びi−ステアリルアクリレートからなる群選ばれる1種以上である、請求項2に記載のマクロモノマー共重合体(Y)。
- 前記芳香族アクリレート(B2)が、ベンジルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、及びフェニルアクリレートからなる群より選ばれる1種以上である、請求項2または3に記載のマクロモノマー共重合体(Y)。
- 前記コモノマー(B)のみからなる重合体の屈折率と、前記マクロモノマー(A)の屈折率との差の絶対値が0.05以下であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載のマクロモノマー共重合体(Y)。
- 請求項1〜5のいずれか一項に記載のマクロモノマー共重合体(Y)と、ポリメチルメタクリレート(Z)とを含む成形材料であって、前記ポリメチルメタクリレート(Z)がメチルメタクリレート単位を80質量%以上含み、前記マクロモノマー(A)がメチルメタクリレート単位を80質量%以上含む、成形材料。
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