JP2017197625A - ポリエチレン樹脂組成物及びそれを用いた積層体 - Google Patents
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Abstract
Description
更には、EVOHやアルミニウム箔などのガス遮断性材料と積層することにより、上記特性に加えてガス遮断性などの性質を付加させることができ、高機能な包装用材料や容器とすることが可能となる。
また、特許文献5〜7には、機械的強度、衝撃強度と剛性のバランス等に優れ、かつ成形加工特性にも優れたエチレン・α−オレフィン共重合体が提案されている。
(1)MFRが0.01〜100g/10分である。
(2)密度が0.860〜0.970g/cm3である。
(3)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される分子量分布(Mw/Mn)が3.0〜7.0である。
(4)示差屈折計、粘度検出器及び光散乱検出器を組み合わせたGPC測定装置により測定される分岐指数(g’)の分子量10万から100万の間での最低値(gc)が0.40〜0.85である。
(5)クロス分別クロマトグラフィー(CFC)により測定される積分溶出曲線から求められた溶出量が50質量%となる温度以下で溶出する成分のうち分子量が当該ポリオレフィン樹脂(II)の重量平均分子量以上の成分の割合(W2)及び積分溶出曲線から求められた溶出量が50質量%となる温度より高い温度で溶出する成分のうち分子量が当該ポリオレフィン樹脂(II)の重量平均分子量未満の成分の割合(W3)の和(W2+W3)が、40〜80質量%である。
また、本発明の樹脂組成物は、優れた接着性能を有すると共に諸物性がバランスされる為、さまざまな用途、例えば、押出成形、吹込成形などによって、多層フィルム、多層ブロー瓶などに成形され、広範囲な用途に使用可能である。
(1)極性基含有ポリオレフィン樹脂
本発明に係わる極性基含有ポリオレフィン樹脂(I)とは、分子中に極性基を含有したポリオレフィン樹脂である。
極性基含有ポリオレフィン樹脂(I)の製造方法は、ポリオレフィン樹脂に対し極性基含有モノマーをグラフト変性させる方法、ビニル基を有したポリオレフィン樹脂のビニル基部分を化学修飾する方法、高圧ラジカル重合法プロセスを用いて、エチレンと極性基含有モノマーを共重合せしめる方法、遷移金属触媒の存在下にエチレンと極性基含有モノマーを共重合せしめる方法等が例示され、これらに限定されないものの、例えば、特開昭50−4144号公報、特許第2792982号公報、特開平3−229713号公報、特開2005−97587号公報、特開2005−97588号公報、特開2006−131707号公報、特開2009−155655号公報、特開2009−155656号公報、特開2013−147644号公報等に開示された方法を適宜使用することができる。
本発明に係わる極性基含有ポリオレフィン樹脂(I)に含有される極性基は、公知の極性基を制限無く適応できるが、カルボキシル基、ジカルボン酸無水物基、アミノ基、エステル基、シラノール基、グリシジル基等が好ましい例として挙げられ、カルボキシル基、ジカルボン酸無水物基をより好ましく用いる事ができる。
ポリオレフィン樹脂に極性基を導入する方法の一つとして、グラフト変性が挙げられる。グラフト変性の方法は限定されないが、例えば、押出機等によって溶融状態としたポリオレフィン樹脂に、反応開始剤を用いて極性基含有モノマーを反応させる溶融法、ポリオレフィン樹脂を溶媒に溶解し、反応開始剤を用いて極性基含有モノマーを反応させる溶液法等が知られており、いずれも好適に用いる事ができるが、生産コストや環境負荷の面から溶融法がより好適に選択される。
グラフト変性方法のうち、溶融法による極性基含有ポリオレフィン樹脂の製造方法の一例を以下に示す。
グラフト変性を実施する溶融混練装置は限定されないが、単軸押出機、二軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサー、ブラベンダー、往復式混練機(BUSS KNEADER)等が一般的に用いられ、その中でも単軸押出機、二軸押出機が生産性の面からより好適に用いられる。
本発明に係わるグラフト変性に用いられる反応開始剤としては、加熱等によって分解しラジカルを発生させるラジカル開始剤が挙げられる。ラジカル開始剤としては、有機過酸化物、ジヒドロ芳香族化合物、ジクミル化合物等が挙げられる。該有機過酸化物としては、例えば、ヒドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジアルキル(アリル)パーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンヒドロパーオキサイド、ジプロピオニルパーオキサイド、ジオクタノイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、パーオキシ琥珀酸、パーオキシケタール、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルオキシアセテート、t−ブチルパーオキシイソブチレート等が好適に用いられる。
ジクミル化合物としては、2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタン、2,3−ジエチル−2,3−ジフェニルブタン、2,3−ジエチル−2,3−ジ(p−メチルフェニル)ブタン、2,3−ジエチル−2,3−ジ(p−ブロモフェニル)ブタン等が例示され、特に2,3−ジエチル−2,3−ジフェニルブタンが好ましく用いられる。
グラフト変性に用いられる極性基含有モノマーとしては、カルボン酸基又は酸無水基含有モノマー(a)、エステル基含有モノマー(b)、アミノ基含有モノマー(c)、シラン基含有モノマー(d)、グリシジル基含有モノマー(e)等が例示され、カルボン酸基又は酸無水基含有モノマー(a)がより好ましく、その中でも酸無水物基含有モノマーが好適に用いられる。極性基含有モノマーは1種類でもよく、2種類以上を用いても良い。
グラフト変性の処理温度は、ポリオレフィン樹脂の劣化、極性基含有モノマーの分解、使用する過酸化物の分解温度などを考慮して適宜選択されるが、前記の溶融混練法を例に挙げると、通常190〜350℃であり、とりわけ200〜300℃が好適である。
また、このような高温で反応を行なうため、押出機や反応器などの内部への空気の混入はできるだけ抑える必要があり、また溶融混練では、押出機内などでの樹脂の長時間滞留も避けなければならない。このため、原料樹脂投入口付近での窒素フィードを行なうことは、極めて好ましい。
本発明に係わる極性基含有ポリオレフィン樹脂(I)の、測定温度190℃、荷重2.16kgにおけるメルトフローレート(MFR)は、0.01〜100g/10分、好ましくは0.01〜50g/10分、より好ましくは0.01〜20g/10分、更に好ましくは、0.01〜10g/10分の範囲であると、異種材料との接着性、樹脂組成物の物性バランスの観点から好適である。0.01g/10分を下回ると、流動性が非常に低くなり、押出成形や射出成形といった成形が困難なものとなる。また、100g/10分を超えると、耐衝撃性や耐クリープ性が低下する他、異種材料との接着性に対しても悪影響を及ぼす。
本発明に係わる極性基含有ポリオレフィン樹脂(I)の密度は、0.860〜0.970g/cm3、好ましくは0.900〜0.968g/cm3、より好ましくは0.910〜0.965g/cm3の範囲である。密度が0.860g/cm3を下回ると、剛性及び接着性の低下につながり、0.970g/cm3を超えると耐衝撃性や耐クリープ性が低下する。
極性基含有ポリオレフィン樹脂(I)に含まれる極性基の導入量は、一般的には0.001〜10.0質量%の範囲、より好ましくは0.01〜5.0質量%の範囲、0.02〜3.0質量%の範囲であると更に好適である。極性基含有ポリオレフィン樹脂(I)に含まれる極性基の導入量が0.001質量%より低いと異種材料との接着性が十分ではなく、10.0質量%を超えると、ポリオレフィン樹脂との相溶性が低下するばかりか、機械物性も低下する。
本発明のポリオレフィン樹脂は、下記に説明する条件(1)〜(4)、好ましくは更に条件(5)、(6)又は(7)を満たす。
(1)MFR
ポリオレフィン樹脂(II)のMFRが0.01〜100g/10分、好ましくは0.1〜50g/10分、より好ましくは0.1〜20g/10分、更に好ましくは、0.1〜10g/10分の範囲であると、本発明の樹脂組成物の加工特性に優れる。一方、MFRが0.01g/10分以下では樹脂組成物の流動性が不足し、成形時にメルトフラクチャー等が発生することにより積層体の表面平滑性などに悪い影響を与える。MFRが100g/10分より大きいと、耐衝撃性や耐クリープ性能といった機械特性が不十分となる他、成形時の溶融張力が不足して樹脂切れや外観不良の原因となる為好ましくない。MFRの調整は、重合中に共存させる連鎖移動剤(水素等)の量を変化させるか、重合温度を変化させることによって、調整することができ、水素の量を増加させる又は重合温度を高くすることにより、大きくすることができる。
ポリオレフィン樹脂(II)の密度は0.860〜0.970g/cm3、好ましくは0.895〜0.940g/cm3、より好ましくは0.898〜0.934g/cm3、さらに好ましくは0.900〜0.930g/cm3、特に好ましくは0.915〜0.925g/cm3範囲である。0.860g/cm3を下回ると、剛性や耐薬品性、耐燃料油性の低下につながり、0.970g/cm3を超えると耐衝撃性や耐クリープ性能が不十分となる。
ポリオレフィン樹脂(II)の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)は、3.0〜7.0、好ましくは3.0〜5.9、より好ましくは3.0〜5.1、更に好ましくは3.2〜5.1、特に好ましくは3.3〜5.0である。Mw/Mnが3.0未満では、押出成形時の加工性に劣り、メルトフラクチャー等の外観不良の原因となる為、避けるべきである。
Mw/Mnが7.0より大きいと該樹脂組成物やその積層体の剛性や衝撃強度の低下につながる。また、有機溶剤やガソリン等に対する溶解性が高くなり、接触した有機溶剤等にポリオレフィン成分が移行するという問題があり好ましくない。なお、本発明で、ポリオレフィン樹脂(II)のMwやMnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法で測定したものをいう。
各々が0.5mg/mLとなるように、ODCB(0.5mg/mLのBHTを含む)に溶解した溶液を0.2mL注入して較正曲線を作成する。較正曲線は、最小二乗法で近似して得られる三次式を用いる。分子量への換算は森定雄著「サイズ排除クロマトグラフィー」(共立出版)を参考に汎用較正曲線を用いる。その際使用する粘度式[η]=K×Mαは以下の数値を用いる。
PS:K=1.38×10−4、α=0.7
PE:K=3.92×10−4、α=0.733
装置:Waters社製GPC(ALC/GPC 150C)
検出器:FOXBORO社製MIRAN 1A IR検出器(測定波長:3.42μm)
カラム:昭和電工社製AD806M/S(3本)
移動相溶媒:o−ジクロロベンゼン
測定温度:140℃
流速:1.0ml/分
注入量:0.2ml
試料の調製:試料は、ODCB(0.5mg/mLのBHTを含む)を用いて、1mg/mLの溶液を調製し、140℃で約1時間を要して溶解させる。
なお、得られたクロマトグラムのベースラインと区間は、図1に例示されるように行う。
分子量分布(Mw/Mn)は、主に、重合触媒及び重合条件を選択することにより、所定の範囲とすることができ、また、異なる分子量の複数成分を混合することにより、所定の範囲とすることができる。
ポリオレフィン樹脂(II)は、上記条件(1)〜(3)に加えて更に、示差屈折計、粘度検出器及び光散乱検出器を組み合わせたGPC測定装置により測定される分岐指数(g’)の分子量10万から100万の間での最低値(gc)が、0.40〜0.85、好ましくは0.50〜0.80、更に好ましくは0.50〜0.77、特に好ましくは0.51〜0.75である。gC値が0.85より大きいと本発明に関わる樹脂組成物に対する成形加工性の改良効果が十分に発現しないので好ましくない。gC値が0.50より小さいと、該樹脂組成物の成形加工性は向上するが、衝撃強度が低下したり、透明性が悪化したりするので好ましくない。
なお、本発明で、ポリオレフィン樹脂(II)のgC値は、下記のGPC−VIS測定から算出する分子量分布曲線や分岐指数(g’)を用いた長鎖分岐量の評価手法である。
示差屈折計(RI)及び粘度検出器(Viscometer)を装備したGPC装置として、Waters社のAlliance GPCV2000を用いた。また、光散乱検出器として、多角度レーザー光散乱検出器(MALLS)Wyatt Technology社のDAWN−Eを用いることができる。検出器は、MALLS、RI、Viscometerの順で接続する。移動相溶媒は、1,2,4−trichlorobenzene(酸化防止剤Irganox1076を0.5mg/mLの濃度で添加)である。流量は1mL/分である。カラムは、東ソー社 GMHHR−H(S) HTを2本連結して用いることができる。カラム、試料注入部及び各検出器の温度は、140℃である。試料濃度は1mg/mLとし、注入量(サンプルループ容量)は0.2175mLである。MALLSから得られる絶対分子量(M)、慣性二乗半径(Rg)及びViscometerから得られる極限粘度([η])を求めるにあたっては、MALLS付属のデータ処理ソフトASTRA(version4.73.04)を利用し、以下の文献を参考にして計算を行うことができる。
1.Developments in polymer characterization,vol.4.Essex:Applied Science;1984.Chapter1.
2.Polymer,45,6495−6505(2004)
3.Macromolecules,33,2424−2436(2000)
4.Macromolecules,33,6945−6952(2000)
分岐指数(g’)は、サンプルを上記Viscometerで測定して得られる極限粘度(ηbranch)と、別途、線形ポリマーを測定して得られる極限粘度(ηlin)との比(ηbranch/ηlin)として算出する。
ポリマー分子に長鎖分岐が導入されると、同じ分子量の線形のポリマー分子と比較して慣性半径が小さくなる。慣性半径が小さくなると極限粘度が小さくなることから、長鎖分岐が導入されるに従い同じ分子量の線形ポリマーの極限粘度(ηlin)に対する分岐ポリマーの極限粘度(ηbranch)の比(ηbranch/ηlin)は小さくなっていく。したがって分岐指数(g’=ηbranch/ηlin)が1より小さい値になる場合には分岐が導入されていることを意味し、その値が小さくなるに従い導入されている長鎖分岐が増大していくことを意味する。特に本発明では、MALLSから得られる絶対分子量として、分子量10万から100万における上記g’の最低値を、gCとして算出する。図2に上記GPC−VISによる解析結果の一例を示した。図2は、分子量(M)における分岐指数(g’)を表す。ここで、線形ポリマーとしては、直鎖ポリエチレンStandard Reference Material 1475a(National Institute of Standards & Technology)を用いることができる。
分岐指数g’の分子量10万から100万の間での最低値(gc)は、主に、重合触媒及び重合条件を選択することにより、所定の範囲とすることができ、好ましくは、特定のメタロセン触媒を使用することにより、所定の範囲とすることができる。
本発明におけるポリオレフィン樹脂(II)は、上記条件(1)〜(4)に加えて更に、クロス分別クロマトグラフィー(CFC)により測定される積分溶出曲線から求められた溶出量が50質量%となる温度以下で溶出する成分のうち分子量が当該ポリオレフィン樹脂(II)の重量平均分子量以上の成分の割合(W2)及び積分溶出曲線から求められた溶出量が50質量%となる温度より高い温度で溶出する成分のうち分子量が当該ポリオレフィン樹脂(II)の重量平均分子量未満の成分の割合(W3)の和(W2+W3)が、40〜80質量%が好ましく、更に好ましくは40質量%を超え、56質量%未満、特に好ましくは43質量%を超え、56質量%未満、更に好適には45質量%を超え、56質量%未満であることが好ましい。W2+W3値が40質量%未満であると、本発明に関わる樹脂組成物の衝撃強度向上に効果的に作用する低密度高分子量成分の割合が減少したり、該樹脂組成物の剛性向上に効果的に作用する高密度低分子量成分が減少したりして、物性改良効果を発現させるためにより多量のポリオレフィン樹脂(II)のブレンドが必要となって経済的でないので好ましくない。一方、W2+W3値が80質量%を超えると、該樹脂組成物に含まれる該高密度低分子量成分と該低密度高分子量成分の含有量のバランスが崩れ、ポリオレフィン樹脂(II)の改質効果が期待通り発現しなかったり、該高密度低分子量成分と該低密度高分子量成分の分散性が悪くなって、透明性の悪化やゲルが発生したりするので好ましくない。
クロス分別クロマトグラフィー(CFC)は、結晶性分別を行う昇温溶出分別(TREF)部と分子量分別を行うゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)部とから成る。
このCFCを用いた分析は、次のようにして行われる。
まず、ポリマーサンプルを0.5mg/mLのBHTを含むオルトジクロロベンゼン(ODCB)に140℃で完全に溶解した後、この溶液を装置のサンプルループを経て140℃に保持されたTREFカラム(不活性ガラスビーズ担体が充填されたカラム)に注入し、所定の第1溶出温度まで徐々に冷却しポリマーサンプルを結晶化させる。所定の温度で30分保持した後、ODCBをTREFカラムに通液することにより、溶出成分がGPC部に注入されて分子量分別が行われ、赤外検出器(FOXBORO社製MIRAN 1A IR検出器、測定波長3.42μm)によりクロマトグラムが得られる。その間、TREF部では次の溶出温度に昇温され、第1溶出温度のクロマトグラムが得られた後、第2溶出温度での溶出成分がGPC部に注入される。以下、同様の操作を繰り返すことにより、各溶出温度での溶出成分のクロマトグラムが得られる。
装置:ダイヤインスツルメンツ社製CFC−T102L
GPCカラム:昭和電工社製AD806MS(3本を直列に接続)
溶媒:ODCB
サンプル濃度:3mg/mL
注入量:0.4mL
結晶化速度:1℃/分
溶媒流速:1mL/分
GPC測定時間:34分
GPC測定後安定時間:5分
溶出温度:0,5,10,15,20,25,30,35,40,45,49,52,55,58,61,64,67,70,73,76,79,82,85,88,91,94,97,100,102,120,140
測定によって得られた各溶出温度における溶出成分のクロマトグラムから、総和が100%となるように規格化された溶出量(クロマトグラムの面積に比例)が求められる。
更に、溶出温度に対する積分溶出曲線が計算される。この積分溶出曲線を温度で微分して、微分溶出曲線が求められる。
また、各クロマトグラムから、次の手順により分子量分布が求められる。保持容量から分子量への換算は、予め作成しておいた標準ポリスチレンによる検量線を用いて行う。使用する標準ポリスチレンは何れも東ソー社製の以下の銘柄である。
F380、F288、F128、F80、F40、F20、F10、F4、F1、A5000、A2500、A1000。
各々が0.5mg/mLとなるようにODCB(0.5mg/mLのBHTを含む)に溶解した溶液を0.4mL注入して較正曲線を作成する。
較正曲線は最小二乗法で近似して得られる三次式を用いる。
分子量への換算は森定雄著「サイズ排除クロマトグラフィー」(共立出版)を参考に汎用較正曲線を用いる。その際使用する粘度式[η]=K×Mαは以下の数値を用いる。
PS:K=1.38×10−4、α=0.7
PE:K=3.92×10−4、α=0.733
なお、第1溶出温度でのクロマトグラムでは、溶媒に添加したBHTによるピークと溶出成分の低分子量側とが重なる場合があるが、その際は、図1のようにベースラインを引き分子量分布を求める区間を定める。
更に、下記の表1のように、各溶出温度における溶出割合(表中の質量%)と重量平均分子量(表中のMw)からwhole(全体)の重量平均分子量を求める。
上記の等高線図を用いて、以下の成分量を求める。
W1:積分溶出曲線から求められる溶出量が50質量%となる温度以下で溶出する成分のうち分子量が当該ポリオレフィン樹脂(II)の重量平均分子量未満の成分の割合。
W2:積分溶出曲線から求められる溶出量が50質量%となる温度以下で溶出する成分のうち分子量が当該ポリオレフィン樹脂(II)の重量平均分子量以上の成分の割合。
W3:積分溶出曲線から求められる溶出量が50質量%となる温度より高い温度で溶出する成分のうち分子量が当該ポリオレフィン樹脂(II)の重量平均分子量未満の成分の割合。
W4:積分溶出曲線から求められる溶出量が50質量%となる温度より高い温度で溶出する成分のうち分子量が当該ポリオレフィン樹脂(II)の重量平均分子量以上の成分の割合。
なお、W1+W2+W3+W4=100である。
W2+W3の値は、主に、重合触媒及び重合条件を選択することにより、所定の範囲とすることができ、好ましくは、特定のメタロセン触媒を使用することにより、所定の範囲とすることができる。
本発明に係わるポリオレフィン樹脂(II)は、上記条件(1)〜(4)に加えて更に、臨界せん断速度が1,000sec−1以上、好ましくは1,500sec−1以上、更に好ましくは2,000sec−1以上であることが好ましい。
臨界せん断速度が1,000sec−1未満では、高速成形時にメルトフラクチャー等の外観荒れの原因となる為、避けるべきである。
臨界せん断速度は、試験機として、インテスコ社製キャピラリーレオメーターを使用して、オリフィス:L/D=25.4/1.53、流入角90°、設定温度190℃にて、押出スピードを徐々に上げていき、目視観察にてストランド表面に肌荒れが発生した時のせん断速度を臨界せん断速度として測定される。
臨界せん断速度を1,000sec−1以上とするためには、分子量分布と分岐指数を適切な範囲に設定することによって達成することができ、分子量分布(Mw/Mn)は、重合触媒及び重合条件を選択することにより、所定の範囲とすることができる。重合触媒としては、メタロセン触媒が好ましいものとして挙げられる。分岐指数は、分子鎖に長鎖分岐を導入することにより制御することができ、長鎖分岐の導入は、重合触媒、特に特定のメタロセン触媒によって行うことができる。
本発明におけるポリオレフィン樹脂(II)は、溶融張力(メルトテンション:MT)が高く、好ましくは50mN以上である。MTが50mN未満では、成形加工特性、特に押出成形性が低下する傾向がある。
MTは、溶融させたエチレン系重合体を一定速度で延伸したときの応力を測定することにより決定される値であり、以下の条件において測定できる。試験機として、東洋精機社製キャピログラフ1Bを使用し、オリフィス:L/D=8.0/2.095、流入角フラット、設定温度:190℃、ピストンスピード:10mm/分、引取り速度3.9m/分の条件にて測定される。
MTは、特に、ポリエチレンの分岐指数(g’)の分子量10万から100万の間での最低値(gc)を適宜選択することにより調製することが可能である。
本発明のポリオレフィン樹脂(II)は、エチレンと炭素数3〜10のα−オレフィンとの共重合体である。ここで用いられる共重合成分であるα−オレフィンとしては、プロピレン、ブテン−1、3−メチルブテン−1、3−メチルペンテン−1、4−メチルペンテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、ヘプテン−1、オクテン−1、ノネン−1、デセン−1等が挙げられる。また、これらα−オレフィンは1種のみでもよく、また2種以上が併用されていてもよい。これらのうち、より好ましいα−オレフィンは炭素数3〜8のものであり、具体的にはプロピレン、ブテン−1、3−メチルブテン−1、4−メチルペンテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、ヘプテン−1、オクテン−1等が挙げられる。更に好ましいα−オレフィンは炭素数4又は炭素数6のものであり、具体的にはブテン−1、4−メチルペンテン−1、ヘキセン−1が挙げられる。特に好ましいα−オレフィンは、ヘキセン−1である。なお、後述するオレフィン重合用触媒の中には、エチレン単独重合時においても、エチレンオリゴメリゼーション反応による1−ブテンや1−ヘキセン等のα−オレフィンを重合系内で副生したり、「Chain−walking反応」と呼ばれる、オレフィン重合生長末端において活性中心金属−末端炭素間結合の異性化反応からオレフィン重合体主鎖にメチル基やエチル基といった短鎖分岐が生じる反応が知られており、これらの反応から生じるエチレン単独重合体の中には、その短鎖分岐構造が、α−オレフィンの共重合によって生じる短鎖分岐構造と区別がつかないエチレン系重合体となる場合がある。そのため、これら副生短鎖分岐が外部からコモノマーとしてのα−オレフィンを供給した場合に生じる短鎖分岐と分析的に同じ炭素原子数を有し、かつ、これらのエチレン系重合体が上記の条件を満たす場合においては本発明のポリオレフィン樹脂(II)に含むものとする。
共重合は、交互共重合、ランダム共重合、ブロック共重合のいずれであっても差し支えない。もちろん、エチレンやα−オレフィン以外のコモノマーを少量使用することも可能であり、この場合、スチレン、4−メチルスチレン、4−ジメチルアミノスチレン等のスチレン類、1,4−ブタジエン、1,5−ヘキサジエン、1,4−ヘキサジエン、1,7−オクタジエン等のジエン類、ノルボルネン、シクロペンテン等の環状化合物、ヘキセノール、ヘキセン酸、オクテン酸メチル等の含酸素化合物類、等の重合性二重結合を有する化合物を挙げることができる。ただしジエン類を使用する場合は長鎖分岐構造や分子量分布が上記の条件を満たす範囲内において使用しなくてはいけないことは言うまでもない。
本発明のポリオレフィン樹脂(II)は、上記の条件を全て満たすように製造して使用される。その製造は、オレフィン重合用触媒を用いてエチレンと上述のα−オレフィンとを共重合する方法によって実施される。
オレフィン重合用触媒としては様々な種類のものが知られており、該触媒成分の構成及び重合条件や後処理条件の工夫の範囲内において上記条件を満足するポリオレフィン樹脂(II)が準備可能であれば何ら制限されるものではないが、本発明のポリオレフィン樹脂(II)が有する特定の長鎖分岐構造、組成分布構造、MFR、密度を同時に実現するための好適な製造方法例として、以下に説明する特定の触媒成分(A)、(B)及び(C)を含むオレフィン重合用触媒を用いる方法を挙げることができる。
触媒成分(A):遷移金属元素を含む架橋シクロペンタジエニルインデニル化合物。
触媒成分(B):成分(A)の化合物と反応してカチオン性メタロセン化合物を生成させる化合物。
触媒成分(C):無機化合物担体。
本発明のポリオレフィン樹脂(II)を製造するのに好ましい触媒成分(A)は、遷移金属元素を含む架橋シクロペンタジエニルインデニル化合物であり、より好ましくは下記の一般式[1]で表されるメタロセン化合物であり、更に好ましくは下記の一般式[2]で表されるメタロセン化合物である。
好ましいX1c及びX2cの具体例としては、塩素原子、臭素原子、メチル基、n−ブチル基、i−ブチル基、メトキシ基、エトキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、フェノキシ基、ジメチルアミノ基、ジi−プロピルアミノ基が挙げられる。これらの具体例の中でも、塩素原子、メチル基、ジメチルアミノ基が特に好ましい。
更に、R1cとしては、それぞれ独立して、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、ネオペンチル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、フェニル基などが挙げられる。また、R1cがQ1c及びQ2cと一緒に環を形成している場合として、シクロブチリデン基、シクロペンチリデン基、シクロへキシリデン基、シラシクロブチル基、シラシクロペンチル基、シラシクロヘキシル基などが挙げられる。
好ましいR1cの具体例として、Q1c又は/及びQ2cが炭素原子の場合、水素原子、メチル基、エチル基、フェニル基、エチレン基、シクロブチリデン基が挙げられ、また、Q1c又は/及びQ2cがケイ素原子の場合、メチル基、エチル基、フェニル基、シラシクロブチル基が挙げられる。
R2cとR4cの好ましい具体例としては、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、フェニル基、2−メチルフリル基、トリメチルシリル基が挙げられる。これらの具体例の中でも、水素原子、メチル基、n−ブチル基、t−ブチル基、フェニル基、トリメチルシリル基が更に好ましく、水素原子、メチル基、t−ブチル基、フェニル基、トリメチルシリル基が特に好ましい。
該表1c中の、1c〜4c、7c、8c、12c〜38c、44c〜47c、52c〜54c、116c〜123c、127c〜136c、142c、143c、144c〜146c、148c、152c〜155c、157c、161c〜164c、166c、170c〜173c、175c、179c〜182c、184c、188c〜191c、193c、等が挙げられる。
また、上記化合物のジルコニウムを、チタニウム又はハフニウムに代えた化合物等が、好ましいものとして挙げられる。
該表1c中の、1c〜4c、7c、8c、12c〜38c、44c〜47c、52c〜54c、116c〜123c、127c〜136c、142c、143c、144c〜146c、148c、等が挙げられる。
また、上記化合物のジルコニウムを、チタニウム又はハフニウムに代えた化合物等が、好ましいものとして挙げられる。
また、上記化合物のジルコニウムを、チタニウム又はハフニウムに代えた化合物等が、好ましいものとして挙げられる。
本発明のポリオレフィン樹脂(II)を製造するのに好ましい触媒成分(B)は、成分(A)の化合物と反応してカチオン性メタロセン化合物を生成させる化合物であり、より好ましくは特開2013−227271号公報[0064]〜[0083]に記載された成分(B)であり、更に好ましくは同[0065]〜[0069]に記載された有機アルミニウムオキシ化合物である。
本発明のポリオレフィン樹脂(II)を製造するのに好ましい触媒成分(C)は、無機化合物担体であり、より好ましくは特開2013−227271号公報[0084]〜[0088]に記載された無機化合物である。この時、無機化合物として好ましいのは該公報[0085]に記載された金属酸化物である。
本発明のポリオレフィン樹脂(II)は、上記触媒成分(A)、(B)、(C)を含むオレフィン重合用触媒を用いてエチレンと上述のα−オレフィンとを共重合する方法によって好適に製造される。本発明の上記触媒成分(A)、(B)、(C)からオレフィン重合用触媒を得る際の各成分の接触方法は、特に限定されず、例えば、以下に示す(I)〜(III)の方法が任意に採用可能である。
(II)触媒成分(A)と触媒成分(C)とを接触させた後、触媒成分(B)を接触させる。
(III)触媒成分(B)と触媒成分(C)とを接触させた後、触媒成分(A)を接触させる。
(IV)触媒成分(A)と触媒成分(C)とを接触させて溶媒を除去し、これを固体触媒成分とし、重合条件下で有機アルミニウムオキシ化合物、ボラン化合物、ボレート化合物又はこれらの混合物と接触させる。
(V)触媒成分(B)である有機アルミニウムオキシ化合物、ボラン化合物、ボレート化合物又はこれらの混合物と触媒成分(C)とを接触させて溶媒を除去し、これを固体触媒成分とし、重合条件下で触媒成分(A)と接触させる。
上記(IV)、(V)の接触方法の場合も、成分比、接触条件及び溶媒除去条件は、前記と同様の条件が使用できる。
本発明のポリオレフィン樹脂(II)は、好適には上記2−4に記載された製法により準備されたオレフィン重合用触媒を用いて、エチレンと上述のα−オレフィンとを共重合して製造される。
なお、かかるスカベンジャーとしては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物、前記有機アルミニウムオキシ化合物、分岐アルキルを含有する変性有機アルミニウム化合物、ジエチル亜鉛、ジブチル亜鉛などの有機亜鉛化合物、ジエチルマグネシウム、ジブチルマグネシウム、エチルブチルマグネシウムなどの有機マグネシウム化合物、エチルマグネシウムクロリド、ブチルマグネシウムクロリドなどのグリニヤ化合物などが使用される。これらのなかでは、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、エチルブチルマグネシウムが好ましく、トリエチルアルミニウムが特に好ましい。
生成共重合体の長鎖分岐構造(即ちgC)やコモノマー共重合組成分布(即ちW1〜W4等)は、触媒成分(A)や触媒成分(B)の種類、触媒のモル比、重合温度や圧力、時間等の重合条件や重合プロセスを変えることによって調節可能である。長鎖分岐構造を形成しやすい触媒成分種を選択しても、例えば重合温度を下げたりエチレン圧力を上げたりして長鎖分岐構造の少ない共重合体を製造することも可能である。また、分子量分布や共重合組成分布の広い触媒成分種を選択しても、例えば触媒成分モル比、重合条件や重合プロセスを変えることによって分子量分布や共重合組成分布の狭い共重合体を製造することも可能である。
(1)樹脂組成物について
本発明の樹脂組成物は、極性基含有ポリオレフィン樹脂(I)、及びポリオレフィン樹脂(II)を含む樹脂組成物である。
樹脂組成物中の極性基含有ポリオレフィン樹脂(I)の組成比率は、好ましくは0.5質量%〜80質量%、より好ましくは1質量%〜75質量%、更に好ましくは2質量%〜70質量%、より好適には5質量%〜60質量%である。極性基含有ポリオレフィン樹脂(I)の組成比率が0.5質量%よりも少ないと、極性の高い異種材料との接着性が十分では無く、80質量%より多いとポリオレフィン樹脂(II)をブレンドする事による改質効果が十分に発現されない。ポリオレフィン樹脂(II)の組成比率は、好ましくは20質量%〜99.5質量%、より好ましくは25質量%〜99質量%、更に好ましくは30質量%〜98質量%、より好適には40質量%〜95質量%である。ポリオレフィン樹脂(II)の組成比率が20質量%より少ないと、本発明の樹脂組成物の成形加工性改良効果が十分では無く、95.5質量%より多いと極性の高い異種材料との接着性が十分では無い。なお、本発明の樹脂組成物中の各組成比率の表記は、組成比率範囲の低い側の数字が以上を示しており、また、高い側の数字は未満を示している。例えば、0.5質量%〜80質量%と表記されている場合、0.5質量%以上、80質量%未満の組成範囲であることを示している。
本発明の樹脂組成物は公知の方法を利用して製造することができ、例えば、極性基含有ポリオレフィン樹脂(I)とポリオレフィン樹脂(II)と、所望により添加される他成分を、単軸押出機、二軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサー、往復式混練機(BUSS KNEADER)、ロール混練機等、などを用いて溶融混練する方法、極性基含有ポリオレフィン樹脂(I)とポリオレフィン樹脂(II)と、所望により添加される他成分を適当な良溶媒(例えば、へキサン、ヘプタン、デカン、シクロヘキサン、キシレンなどの炭化水素溶媒)に溶解し、次いで溶媒を除去する方法で製造することができる。
本発明の樹脂組成物には、本発明の樹脂組成物の機能を逸脱しない範囲において、他の機能を付加するために、酸化防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、帯電防止剤、着色剤、顔料、架橋剤、発泡剤、核剤、難燃剤、充填材、導電材などの添加剤を配合しても良い。
樹脂組成物には、本発明の組成物の機能を逸脱しない範囲において、各種の樹脂改質材などを配合してもよい。その成分としては、ポリエチレン、ポリオレフィン等のポリオレフィン樹脂、ブタジエン系ゴム、イソブチレンゴム、イソプレン系ゴム、天然ゴム、ニトリルゴム、石油樹脂などが挙げられ、これらは単独でも混合物でもよい。
(1)積層体の材料
本発明の樹脂組成物は、被着体層とを少なくとも含む積層体を構成することができる。本発明の積層体は、本発明の脂組成物からなる層と基材層とを含む積層体であって、該基材層は、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体鹸化物(EVOH)などの極性の高い熱可塑性樹脂、接着性フッ素樹脂、アルミニウム、スチールなどの金属材料、などの基材を例示することができる。
自動車等の燃料タンクや、燃料が通過するチューブ・ホース・パイプ等に適応させる場合には、EVOH、ポリアミド類、変性フッ素樹脂のような燃料透過防止性能の優れた樹脂を用いる事が出来る。
ガスや水分などのバリア性樹脂としては、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体鹸化物(EVOH)、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、延伸ポリプロピレン(OPP)、延伸ポリエステル(OPET)、延伸ポリアミド、アルミナ蒸着フィルム、シリカ蒸着フィルムなどの金属、無機酸化物の蒸着フィルム、アルミ蒸着などの金属蒸着フィルム、金属箔などが挙げられる。
加工方法としては、通常のプレス成形、空冷インフレーション成形、空冷2段冷却インフレーション成形、高速インフレーション成形、水冷インフレーション成形、管状品成形、コルゲートパイプ成形、フラットダイ成形(T−ダイ成形)、などの押出成形、押出ラミネート加工、サンドラミネート加工、ドライラミネート加工等のラミネート加工法、ブロー成形、圧空成形、射出成形、回転成形など、従来公知の方法が挙げられる。
本発明の樹脂組成物は、導電性と極性の高い異種材料との接着性を有し、成形加工性にも優れ、更には、ポリエチレン樹脂の有する優れた性質である、機械的性質、軽量性、耐薬品性、耐燃料油性、生産性、低コスト等をも併せ持っており、有用な多層成形体として応用可能である。即ち、各種の被着体に積層されて、広く包装材、包装容器分野、繊維、パイプ、燃料タンク、中空容器、ドラム缶などの産業資材分野、止水材料などの土木分野、電子・家電部材などの電子分野、電線・ケーブルなどの電線分野などにおいて利用することができる。
なお、実施例及び比較例において使用した測定方法は、以下の通りである。また、以下の触媒合成工程及び重合工程は、すべて精製窒素雰囲気下で行い、かつ、使用した溶媒は、モレキュラーシーブ4Aで脱水精製したものを用いた。
(1)MFR
JIS K7210の「プラスチック−熱可塑性プラスチックのメルトマスフローレイト(MFR)及びメルトボリュームフローレイト(MVR)の試験方法」に準拠して、190℃、21.18N(2.16kg)荷重の条件で測定した。
JIS K7112(1999年版):A法(水中置換法)により測定した。
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定した。GPCの測定条件は、以下の通りである。
装置:Waters社製GPC(ALC/GPC 150C)
検出器:FOXBORO社製MIRAN 1A IR検出器(測定波長:3.42μm)
カラム:昭和電工社製AD806M/S(3本)
移動相溶媒:o−ジクロロベンゼン
測定温度:140℃
流速:1.0ml/分
注入量:0.2ml
試料の調製:試料は、ODCB(0.5mg/mLのBHTを含む)を用いて、1mg/mLの溶液を調製し、140℃で約1時間を要して溶解させる。
なお、得られたクロマトグラムのベースラインと区間は、図1に例示されるように行った。
保持容量から分子量への換算は、予め作成しておいた標準ポリスチレンによる検量線を用いて行った。使用する標準ポリスチレンは、何れも東ソー社製の以下の銘柄である。F380、F288、F128、F80、F40、F20、F10、F4、F1、A5000、A2500、A1000。
各々が0.5mg/mLとなるように、ODCB(0.5mg/mLのBHTを含む)に溶解した溶液を0.2mL注入して較正曲線を作成する。較正曲線は、最小二乗法で近似して得られる三次式を用いた。分子量への換算は森定雄著「サイズ排除クロマトグラフィー」(共立出版)を参考に汎用較正曲線を用いた。その際使用する粘度式[η]=K×Mαは以下の数値を用いた。
PS:K=1.38×10−4、α=0.7
PE:K=3.92×10−4、α=0.733
示差屈折計(RI)及び粘度検出器(Viscometer)を装備したGPC装置として、Waters社のAlliance GPCV2000を用いた。また、光散乱検出器として、多角度レーザー光散乱検出器(MALLS)Wyatt Technology社のDAWN−Eを用いた。検出器は、MALLS、RI、Viscometerの順で接続した。移動相溶媒は、1,2,4−trichlorobenzene(酸化防止剤Irganox1076を0.5mg/mLの濃度で添加)である。流量は1mL/分である。カラムは、東ソー社 GMHHR−H(S) HTを2本連結して用いた。カラム、試料注入部及び各検出器の温度は、140℃である。試料濃度は1mg/mLとした。注入量(サンプルループ容量)は0.2175mLである。MALLSから得られる絶対分子量(M)、慣性二乗半径(Rg)及びViscometerから得られる極限粘度([η])を求めるにあたっては、MALLS付属のデータ処理ソフトASTRA(version4.73.04)を利用し、上述した文献を参考にして計算を行った。
[分岐指数(gC)等の算出]
分岐指数(g’)は、サンプルを上記Viscometerで測定して得られる極限粘度(ηbranch)と、別途、線形ポリマーを測定して得られる極限粘度(ηlin)との比(ηbranch/ηlin)として算出した。
MALLSから得られる絶対分子量として、分子量10万から100万における上記g’の最低値を、gCとして算出した。ここで、線形ポリマーとしては、直鎖ポリエチレンStandard Reference Material 1475a(National Institute of Standards & Technology)を用いた。
結晶性分別を行う昇温溶出分別(TREF)部と分子量分別を行うゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)部とから成る、クロス分別クロマトグラフィー(CFC)により行った。
即ち、ポリマーサンプルを0.5mg/mLのBHTを含むオルトジクロロベンゼン(ODCB)に140℃で完全に溶解した後、この溶液を装置のサンプルループを経て140℃に保持されたTREFカラム(不活性ガラスビーズ担体が充填されたカラム)に注入し、所定の第1溶出温度まで徐々に冷却しポリマーサンプルを結晶化させた。
所定の温度で30分保持した後、ODCBをTREFカラムに通液することにより、溶出成分がGPC部に注入されて分子量分別が行われ、赤外検出器(FOXBORO社製MIRAN 1A IR検出器、測定波長3.42μm)によりクロマトグラムが得た。その間、TREF部では次の溶出温度に昇温され、第1溶出温度のクロマトグラムが得られた後、第2溶出温度での溶出成分がGPC部に注入された。以下、同様の操作を繰り返すことにより、各溶出温度での溶出成分のクロマトグラムが得られた。
なお、CFCの測定条件は、以下の通りである。
装置:ダイヤインスツルメンツ社製CFC−T102L
GPCカラム:昭和電工社製AD806MS(3本を直列に接続)
溶媒:ODCB
サンプル濃度:3mg/mL
注入量:0.4mL
結晶化速度:1℃/分
溶媒流速:1mL/分
GPC測定時間:34分
GPC測定後安定時間:5分
溶出温度:0,5,10,15,20,25,30,35,40,45,49,52,55,58,61,64,67,70,73,76,79,82,85,88,91,94,97,100,102,120,140
測定によって得られた各溶出温度における溶出成分のクロマトグラムから、総和が100%となるように規格化された溶出量(クロマトグラムの面積に比例)を求めた。
また、各クロマトグラムから、上述のGPCと同じ手順により分子量分布を求めた。
上記の等高線図を用いて、以下の成分量を求めた。
W1:積分溶出曲線から求められる溶出量が50質量%となる温度以下で溶出する成分のうち分子量が当該ポリオレフィン樹脂の重量平均分子量未満の成分の割合。
W2:積分溶出曲線から求められる溶出量が50質量%となる温度以下で溶出する成分のうち分子量が当該ポリオレフィン樹脂の重量平均分子量以上の成分の割合。
W3:積分溶出曲線から求められる溶出量が50質量%となる温度より高い温度で溶出する成分のうち分子量が当該ポリオレフィン樹脂の重量平均分子量未満の成分の割合。
W4:積分溶出曲線から求められる溶出量が50質量%となる温度より高い温度で溶出する成分のうち分子量が当該ポリオレフィン樹脂の重量平均分子量以上の成分の割合。
なお、W1+W2+W3+W4=100である。
試験機として、インテスコ社製キャピラリーレオメーターを使用し、オリフィス:L/D=25.4/1.53、流入角90°、設定温度190℃にて、押出スピードを徐々に上げていき、目視観察にてストランド表面に肌荒れが発生した時のせん断速度を臨界せん断速度として測定した。
JISK7152−1:1999 に準拠し、JISK7161−2に記載された多目的試験片1Aを射出成形する。ガラス製の瓶の中に多目的試験片1Aを15本入れ、市販の軽油1.5Lをガラス瓶中に注ぎいれ蓋を閉める。ガラス瓶を65℃に調整したオーブンに入れ168時間保持する。168時間経過後、ガラス瓶をオーブンから取出して室温まで下げ、ガラス瓶中の濁りの有無を確認する。濁りがある場合、溶出性は「×」、濁りが無い場合「○」とする。発生した濁りは、65℃の軽油に抽出されたオレフィン樹脂成分が、軽油の温度低下によって析出したものである。
下記条件にて押出し、ストランド外観を観察することで押出特性を評価した。
試験機:東洋精機社製キャピログラフ1B、オリフィス:L/D=25.4/1.53、流入角90°、設定温度190℃、ピストンスピード50及び500mm/分。
外観評価方法:目視にてストランドの外観を観察し以下の方法で判断した。
○:ストランド表面が平滑であり良好。×:ストランド表面が平滑でない。
多層Tダイ成形機を用い、3種5層多層フィルムを成形した後、得られた多層フィルムのEVOH/接着性樹脂間の剥離強度を測定した。
フィルム成形条件、剥離強度測定条件は下記の通りである。
・フィルム成形条件
成形機 :3種5層Tダイ
成形温度 :230℃
層構成:LLDPE/接着性樹脂/EVOH/接着性樹脂/LLDPE
膜厚:100μm(35μm/10μm/10μm /10μm /35μm)
内外層:LLDPE(日本ポリエチレン社製 銘柄:ノバテック UF943 MFR=2.0g/10分、密度=0.937/cm3)
接着層 :各実施例、及び比較例
中間層 :EVOH(クラレ社製 銘柄:エバール F101B)
・剥離強度測定条件
試験機:テンシロン引張試験機(東洋精機社製)
剥離形態:T剥離
試料巾:15mm
剥離速度:300mm/分
接着強度が500gf/15mm以上、成形性外観(ストランド外観)が〇、溶出性が○であれば総合評価「○」、いずれかの1つでも上記の総合評価基準を満たしていない場合は「×」とした。
市販の高密度ポリエチレン(日本ポリエチレン社製 HS430P:密度が0.955g/cm3、MFRが0.8g/10分)を100質量部、無水マレイン酸を0.8質量部、2,5−ジ(t−ブチルパ−オキシ)ヘキサンを0.015質量部加え、ヘンシェルミキサーで十分混合後、モダンマシナリー社製50mm単軸押出機を用い、スクリュー回転数50rpm、樹脂温度280℃の条件で溶融混練してグラフト変性を行い、極性基含有ポリオレフィン樹脂(A−1)を得た。得られた極性基含有ポリオレフィン樹脂のMFRは0.4g/10分、密度は0.955g/cm3であった。
変性原料として用いたポリエチレン(日本ポリエチレン社製 HS430P)をポリエチレン(SF8402G:密度が0.930g/cm3、MFRが2.8g/10分)に変更した以外は、製造例1と同様の方法で極性基含有ポリオレフィン樹脂(A−2)を得た。得られた極性基含有ポリオレフィン樹脂のMFRは0.9g/10分、密度は0.930g/cm3であった。
(1)架橋シクロペンタジエニルインデニル化合物の合成
ジメチルシリレン(4−(4−トリメチルシリル−フェニル)−インデニル)(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリドを、特開2013−227271号公報[0140]〜[0143]記載の方法に従い合成した。
(2)オレフィン重合用触媒の合成
窒素雰囲気下、500ml三口フラスコに400℃で5時間焼成したシリカ30グラムを入れ、次いで脱水トルエン195mlを追加してスラリーとした。別途用意した200ml二口フラスコに窒素雰囲気下で、上記(1)で合成したジメチルシリレン(4−(4−トリメチルシリル−フェニル)−インデニル)(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド412ミリグラムを入れ、脱水トルエン80.7mlで溶解した後、更に室温でアルベマール社製の20%メチルアルミノキサン/トルエン溶液78.9mlを加え30分間撹拌した。シリカのトルエンスラリー液の入った500ml三口フラスコを40℃のオイルバスで加熱及び撹拌しながら、上記ジルコノセン錯体とメチルアルミノキサンの反応物のトルエン溶液を全量加えた。40℃で1時間撹拌した後、40℃に加熱したまま15分静沈して上澄み221mlを除去し、次いでトルエン溶媒を減圧留去して粉状触媒を得た。
(3)オレフィン重合用触媒の処理
窒素雰囲気下、500ml三口フラスコに、上記(2)で得た粉状触媒のうち31gを入れ、脱水ヘキサン195mlと脱水液状ポリブテン(JX日鉱日石エネルギー社製;商品名日石ポリブテンLV−7)12.7gの混合液を室温で加えて10分撹拌した後、40℃で溶媒を減圧留去して再び粉状触媒を得た。
(4)エチレン・1−ヘキセン共重合体の製造
上記(3)で得た粉状触媒を使用してエチレン・1−ヘキセン気相連続共重合を行った。即ち、温度75℃、ヘキセン/エチレンモル比0.23%、水素/エチレンモル比0.70%、窒素濃度を32mol%、全圧を0.8MPaに準備された気相連続重合装置(内容積100L、流動床直径10cm、流動床種ポリマー(分散剤)1.8kg)に該粉状触媒を0.27g/時間の速さで間欠的に供給しながらガス組成と温度を一定にして重合を行った。また、系内の清浄性を保つためトリエチルアルミニウム(TEA)のヘキサン稀釈溶液0.03mol/Lを15.7ml/hrでガス循環ラインに供給した。その結果、生成ポリエチレンの平均生成速度は268g/時間となった。累積5kg以上のポリエチレンを生成した後に得られたエチレン・1−ヘキセン共重合体のMFRと密度は各々0.3g/10分、0.922g/cm3であった。結果を表2に示した。
重合体に酸化防止剤(住友化学社製スミライザーGP)を1000ppm添加し、単軸押出機(ユニオン・プラスチックス社製USV型30φ押出機)を用いて押出温度180℃で押出すことでポリオレフィン樹脂(B−1)を得た。
メタロセン触媒を用いて気相法で製造されたエチレン・1−ヘキセン共重合体(密度が0.918g/cm3、MFRが2.2g/10分)を用い、実施例1と同様にして材料物性及び成形性を評価した。
高圧法で製造された低密度ポリエチレン(密度が0.924g/cm3、MFRが0.8g/10分)を用い、実施例1と同様にして材料物性及び成形性を評価した。
市販の長鎖分岐を有するメタロセンポリエチレン(密度が0.922g/cm3、MFRが0.3g/10分)を用い、実施例1と同様に材料物性及び成形性を評価した。
極性基含有ポリオレフィン樹脂(A−1)を10質量%、ポリオレフィン樹脂(B−1)を90質量%、及び酸化防止剤0.7質量部を加えて、φ50mm単軸押出機を用いて設定温度230℃で混練することによって樹脂組成物を得た。
極性基含有ポリオレフィン樹脂、ポリオレフィン樹脂の種類、及び配合比率を表2に記載の内容に変更した以外は実施例1と同様の方法で実施例2〜4、比較例1〜4の樹脂組成物を製造した。
これに対し、比較例1の樹脂組成物に含まれるポリオレフィン樹脂は、分岐指数(g’)の分子量10万から100万の間での最低値(gc)が本発明の要件を外れており、ストランド外観が良好でなく成形性悪い。
比較例2の樹脂組成物に含まれるポリオレフィン樹脂は分岐指数(g’)の分子量10万から100万の間での最低値(gc)が本発明の要件を外れており、ストランド外観が良好でなく成形性悪い。また、溶出性が高い。
比較例3の樹脂組成物に含まれるポリオレフィン樹脂は、分子量分布(Mw/Mn)が本発明の要件を外れており、ストランド外観が良好でなく成形性悪い。
比較例4の樹脂組成物中の極性基含有ポリオレフィン樹脂組成比率が低く、接着性能が十分では無い。
Claims (6)
- 極性基含有ポリオレフィン樹脂(I)0.5質量%〜80質量%と、下記の条件(1)〜(4)を満足するポリオレフィン樹脂(II)20質量%〜99.5質量%からなる樹脂組成物。
(1)MFRが0.01〜100g/10分である。
(2)密度が0.860〜0.970g/cm3である。
(3)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される分子量分布(Mw/Mn)が3.0〜7.0である。
(4)示差屈折計、粘度検出器及び光散乱検出器を組み合わせたGPC測定装置により測定される分岐指数(g’)の分子量10万から100万の間での最低値(gc)が0.40〜0.85である。 - 前記ポリオレフィン樹脂(II)が下記の条件(5)を満足する請求項1に記載の樹脂組成物。
(5)クロス分別クロマトグラフィー(CFC)により測定される積分溶出曲線から求められた溶出量が50質量%となる温度以下で溶出する成分のうち分子量が当該ポリオレフィン樹脂(II)の重量平均分子量以上の成分の割合(W2)及び積分溶出曲線から求められた溶出量が50質量%となる温度より高い温度で溶出する成分のうち分子量が当該ポリオレフィン樹脂(II)の重量平均分子量未満の成分の割合(W3)の和(W2+W3)が、40〜80質量%である。 - 前記極性基含有ポリオレフィン樹脂(I)は、含有される極性基が、カルボキシル基、又はジカルボン酸無水物基である請求項1又は2に記載された樹脂組成物。
- 前記極性基含有ポリオレフィン樹脂(I)は、極性基がポリオレフィンにグラフトされたものである請求項1〜3のいずれか一項に記載された樹脂組成物。
- 前記極性基含有ポリオレフィン樹脂(I)は、極性基が0.001〜10.0質量%含有される請求項1〜4のいずれか一項に記載された樹脂組成物。
- 請求項1〜5のいずれか一項に記載された樹脂組成物と、被着体層とを少なくとも含む積層体。
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