JP2017155161A - 筆記具用水性インク組成物 - Google Patents
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これを抑制するためには、凝集を発生させない、若しくは緩い凝集を生じさせることにより「蓋」のような状態をつくる方法が考えられる。しかしながら、緩い凝集であっても「嵩高い」凝集であると、粘度が高いインクのダマのような状態となるので、耐ドライアップ性は発現するものの、このダマが描線に転写されるため描線品位が低下するなどの課題がある。
(1) 少なくとも平均粒子径が0.3μm以上の樹脂粒子を5質量%以上と、スルホン酸変性ポリビニルアルコールを0.05〜10質量%とを含有することを特徴とする筆記具用水性インク組成物。
(2) 前記樹脂粒子がコアシェル型のマイクロカプセルであることを特徴とする上記(1)記載の筆記具用水性インク組成物。
(3) 上記(1)又は(2)に記載の筆記具用水性インク組成物を搭載したことを特徴とする筆記具。
本発明の筆記具用水性インク組成物は、少なくとも平均粒子径が0.3μm以上の樹脂粒子を5質量%以上と、スルホン酸変性ポリビニルアルコールを0.05〜10質量%とを含有することを特徴とするものである。
本発明に用いる樹脂粒子としては、その機能、種類は特に限定されない。例えば、色材として用いられる樹脂粒子、バインダーや目止効果を目的した樹脂粒子であってもよい。また、樹脂粒子を構成する素材も限定されない。例えば、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ウレタン系樹脂、ウレア系樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、シリコーン系樹脂及びこれらの共重合体、各種ラテックス粒子などが挙げられる。
上記(1)〜(3)の着色樹脂粒子の樹脂成分としては、例えば、上述の各種樹脂から選択される少なくとも1種が挙げられ、必要に応じて架橋などの処理を行ったものであってもよい。これらの樹脂への着色方法としては、樹脂粒子の重合に際して着色剤を添加する方法、樹脂粒子の表面にハイブリダイゼーション法により着色剤を被覆させる方法、樹脂粒子を染料で染着する方法など、従来公知の方法が用いられる。
マイクロカプセル化法としては、例えば、界面重合法、界面重縮合法、insitu重合法、液中硬化被覆法、水溶液からの相分離法、有機溶媒からの相分離法、融解分散冷却法、気中懸濁被覆法、スプレードライニング法などを挙げることができ、用途、マイクロカプセルの形状、構造特性に応じて適宜選択することができる。
好ましい樹脂粒子としては、安定性、より充実した機能を発揮せしめる点から、コアシェル型のマイクロカプセル化した樹脂粒子が望ましい。
用いる樹脂粒子の平均粒子径、及びその含有量は、樹脂粒子の機能、筆記具の種類、用途などにより変動するが、平均粒子径では、0.3〜15μm、その含有量はインク組成物全量に対して、5〜30質量%に調整されることが好ましい。
なお、本発明(実施例等含む)で規定する「平均粒子径」は、粒子径分布解析装置HRA9320−X100(日機装株式会社製)を用いて、体積基準により算出されたD50の値である。
本発明に用いるスルホン酸変性ポリビニルアルコールは、ポリビニルアルコール(以下、「PVA」と略する)『一般式、−〔CH2−CH(OH)〕m−〔CH2−CH(OCOCH3〕n−』の水酸基、酢酸基、末端基の少なくとも一部をスルホン酸基で変性したものであり、スルホン酸基を所定量含有するビニルアルコール系重合体であれば特に限定されずに用いることができる。
スルホン酸変性ポリビニルアルコールの合成法としては、例えば、スルホン酸基を有する単量体を酢酸ビニルと共に重合した後、酢酸ビニルの一部又は全てをケン化してビニルアルコールとする方法により合成することができ、また、ポリビニルアルコールのヒドロキシル基にスルホン酸基を有する化合物を結合させて合成することも可能である。
スルホン酸基を有する単量体としては、例えば、エチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸及びそれらの塩等が挙げられる。
スルホン酸変性ポリビニルアルコールとしては、適宜合成したものであっても良く、市販品であっても良い。
また、上記ケン化度のスルホン酸変性ポリビニルアルコールにおいて、筆記感、着色性を損なうことなく、本発明の効果を更に発揮せしめる点から、その重合度(m+n)は、好ましくは、1000以下、更に好ましくは、500以下、特に好ましくは、100〜300が望ましい。
具体的に用いることができるスルホン酸変性ポリビニルアルコールとしては、市販の日本合成化学工業社製のゴーセネックスL−3266、CKS−50等が挙げられる。
これらのスルホン酸変性ポリビニルアルコールは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
この含有量が0.05%未満では、本発明の目的の効果が得られず、一方、10質量%超過ではインクの粘度が高くなるため、好ましくない。
用いることができる色材としては、水に溶解もしくは分散する染料、酸化チタン等の従来公知の無機系および有機顔料系、シリカや雲母を基材とし表層に酸化鉄や酸化チタンなどを多層コーティングした顔料等を本発明の効果を損なわない範囲で適宜量使用することができる。
染料としては、例えば、エオシン、フオキシン、ウォーターイエロー#6−C、アシッドレッド、ウォーターブルー#105、ブリリアントブルーFCF、ニグロシンNB等の酸性染料;ダイレクトブラック154、ダイレクトスカイブルー5B、バイオレットB00B等の直接染料;ローダミン、メチルバイオレット等の塩基性染料などが挙げられる。
これらの色材は、単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。
これらのアニオン性界面活性剤の含有量は、インク組成物全量に対して、0.05〜10質量%の範囲で適宜調整される。
これらの水溶性有機溶剤の含有量は、インク組成物毎に適宜調整され、インク組成物全量に対して、おおよそ10質量%〜30質量%の範囲であることが一般的である。
描線乾燥性に優れた機能を発揮せしめるため、これらの水溶性有機溶剤の含有量を10質量%以下とすることは有効な手段であるが、一方で耐ドライアップ性が損なわれやすい。本願発明によれば、10質量%以下、更には7質量%以下、更には5質量%以下の含有量であっても耐ドライアップ性が損なわれることがない。
また、防錆剤としては、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、ジシクロへキシルアンモニウムナイトライト、サポニン類など、防腐剤もしくは防菌剤としては、フェノール、ナトリウムオマジン、安息香酸ナトリウム、ベンゾイソチアゾリン、ベンズイミダゾール系化合物などが挙げられる。
pH調整剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属の水酸化物、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、モルホリン、トリエチルアミン等のアミン化合物、アンモニア等が挙げられる。
本発明におけるボールペンとしては、上記組成の筆記具用水性インク組成物をボールペン用インク収容体(リフィール)に収容すると共に、該インク収容体内に収容された水性インク組成物とは相溶性がなく、かつ、該水性インク組成物に対して比重が小さい物質、例えば、ポリブテン、シリコーンオイル、鉱油等がインク追従体として収容されるものが挙げられる。
なお、ボールペン、マーキングペンの構造は、特に限定されず、例えば、軸筒自体をインク収容体として該軸筒内に上記構成の筆記具用水性インク組成物を充填したコレクター構造(インク保持機構)を備えた直液式のボールペン、マーキングペンであってもよいものである。
従来において、樹脂粒子を含む筆記具用水性インク組成物を用いた場合に、水分の揮発により分散状態が崩れ、インク中で樹脂粒子同士の凝集が発生したり、また、筆記部で凝集が生じるとインクの吐出が阻害され筆記不良となるドライアップの課題が発生することとなる。更に、ドライアップを抑制するために、変性エチレンオキサイドPVAなどを含有して緩い凝集を生じさせるなどの方法があるが、緩い凝集であっても「嵩高い」凝集であると、粘度が高いインクのダマのような状態となるので、耐ドライアップ性は発現するものの、このダマが描線に転写されるため描線品位が低下したりするなどの課題があった。
従来の筆記具用水性インク組成物において、用いる樹脂粒子の含有量が多いほど、また、平均粒子径が大きいほど、上記の課題が顕在化する傾向がみられるものであるが、本発明では、上述の樹脂粒子を用いたインク組成物中に、スルホン酸変性ポリビニルアルコールを0.05〜10質量%含有せしめることにより、水分が揮発しても適度な嵩高さを有する緩い凝集体を形成できるので、樹脂粒子の分散安定性を低下することなく、耐ドライアップ性に優れ、筆記描線がインクダマとなるような描線品位の低下もなく筆記性能に優れ、経時的な粘度上昇もない機能を発揮するものとなる。
下記表1に示す配合組成により各筆記具用水性インク組成物を調製した。
実施例1、2の色材として用いる樹脂粒子である熱変色性マイクロカプセル顔料1,2は下記製造法1、2により得たものを用いた。また、比較例5で用いた変性エチレンオキサイドポリビニルアルコール(PVA)は、下記製造法3により得たものを用いた。
(製造例1:熱変色性マイクロカプセル顔料1)
ロイコ色素として、ETAC(山田化学工業社製)1質量部(以下、単に「部」という)、顕色剤として、ビスフェノールA2部、及び変色性温度調整剤として、ミリスチン酸ミリスチル24部を100℃に加熱溶融して、均質な組成物27部を得た。
上記で得た組成物27部の均一な熱溶液にカプセル膜剤として、イソシアネート10部及びポリオール10部を加えて攪拌混合した。次いで、保護コロイドとして12%ポリビニルアルコール水溶液60部を用いて、25℃で乳化して分散液を調製した。次いで、5%の多価アミン5部を用いて、80℃で60分間処理してコアシェル型のマイクロカプセルを得た。
(製造例2:熱変色性マイクロカプセル顔料2)
ロイコ色素として、RED520(山田化学工業社製)色素1部、顕色剤として、4,4′−(2−エチルヘキシリデン)ビスフェノール2部、及び変色性温度調整剤として、4,4′−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ビスフェノールジミリステート24部を100℃に加熱溶融して、均質な組成物27部を得た。
上記で得た組成物27部の均一な熱溶液を、保護コロイド剤として、メチルビニルエーテル・無水マレイン酸共重合樹脂〔ガンツレッツAN−179:ISP(株)社製〕40部をNaOHにてpH4に溶解させた90℃の水溶液100部中に徐々に添加しながら、加熱攪拌して直径約0.5〜1.0μmの油滴状に分散させ、次いでカプセル膜剤として、メラミン樹脂(スミテックスレジンM−3、(株)住友化学製)20部を徐々に添加し、90℃で30分間処理してコアシェル型のマイクロカプセルを得た。
これらの評価結果などを下記表1に示す。
得られた各水性ボールペンを、ペン先が暴露された状態で25℃、60%RH環境の恒温恒湿槽で10日間下向きに放置した後、PPC用紙へ直径2cm程度の円を連続して描くように20周螺旋筆記し、下記評価基準で耐ドライアップ性を評価した。
評価基準:
○:カスレが無く良好に筆記できる。
△:5周以内のカスレが発生。
×:5周を超えるカスレが発生。
上記試験における○評価の例について、筆記初めの描線状態を下記評価基準及び図1に準拠して評価した。
○:描線ダマ(最初に出渋ってボタッとかたまりが落ちた状態)が認められず一様である〔図1(b)参照〕。
×:描線ダマが認められる〔図1(c)参照〕。
得られた各水性ボールペンを50℃、65%RHの条件で1ヶ月間保管した後、JIS規格:S6039−2001に準拠した筆記試験機(ミニテック筆記試験機、三菱鉛筆)を用い、筆記速度4.5m/分、筆記角度60°、筆記加重1.96Nの筆記条件で、JIS規格P3201に準拠した筆記試験紙上に螺旋筆記することにより筆記試験を行い、0−100mの任意の箇所の描線濃度と300−400mの任意の箇所の描線濃度を比較した。
○:描線濃度に差がない。
△:描線濃度に僅かな差が認められる。
×:描線濃度に明らかな差が認められる。
得られた各インク組成物をガラス瓶に充填し、50℃、65%RHの条件で1ヶ月間保管した後の粘度値(剪断速度3.83/s)を初期(製造直後)と比較した。このインク粘度値が初期と1ヶ月間保管した経時後の粘度値の差が少ないほどインクの安定性に優れていることの指標となる。
比較例1〜5を見ると、比較例1〜4は、実施例1〜4と同じ樹脂粒子を含有したものであって、スルホン酸変性ポリビニルアルコールを含有しない筆記具用水性インク組成物であり、比較例5はスルホン酸変性ポリビニルアルコールの代わりに従来の特開2015−120777号公報に記載の変性エチレンオキサイドポリビニルアルコール共重合体(PVA)を含有したものであり、これらの場合、本発明の効果を発揮できないことが確認された。
Claims (3)
- 少なくとも平均粒子径が0.3μm以上の樹脂粒子を5質量%以上と、スルホン酸変性ポリビニルアルコールを0.05〜10質量%とを含有することを特徴とする筆記具用水性インク組成物。
- 前記樹脂粒子がコアシェル型のマイクロカプセルであることを特徴とする請求項1記載の筆記具用水性インク組成物。
- 請求項1又は2に記載の筆記具用水性インク組成物を搭載したことを特徴とする筆記具。
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