JP2017025385A - コールドスプレー装置およびこれを用いた被膜形成方法 - Google Patents
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Abstract
Description
実施形態によるコールドスプレー装置100は、大気中において、材料粉末を作動ガスによりノズルから噴射し、基材に衝突させることにより、被膜を形成するコールドスプレー装置である。そして、ノズルから噴射された材料粉末に対し、基材に衝突する直後までに、レーザー照射などによってエネルギーを付与する機構10(以下「エネルギー付与機構」ということがある。)を備えてなることを特徴とする(図1参照)。また、エネルギー付与機構は、レーザービームを、コールドスプレーから噴射される作動ガスのガス流に照射するものに限定されず(図1参照)、例えば基材と略平行にシートレーザーを照射することにより、エネルギー照射領域に材料粉末を通過させることにより行われてもよい(図2参照)。
まず、粉末供給部11へ材料粉末を投入する。この材料粉末は、粉末供給ガスにより、ノズル13へ供給される。次いで、コンプレッサー14において圧縮され、加熱ヒーター15において予備加熱された作動ガスとともに、ノズル13に供給された材料粉末は、ノズル13から噴射される。この作動ガスは、ノズル13を通過させることにより、超音速に加速させることができる。そして、噴射された材料粉末に対し、エネルギー付与機構10を使用してエネルギーを付与する。エネルギーが付与された材料粉末は、作動ガスにより、基材16へ衝突し、被膜を形成する。
第1の実施形態によるエネルギー付与機構は、図1に示すように、パルスレーザー照射装置10である。パルスレーザー照射装置より照射されるパルスレーザー光は、材料粉末表面のクリーニング効果が極めて高く、また、材料粉末に高いエネルギーを付与することができるため、本実施形態は、特に好ましい。
上記したように、粉末供給部には、粉末供給ガスと共に、材料粉末が投入される。粉末供給部に投入される材料粉末の種類は、目的とする被膜に応じて選択され、例えば酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化チタン、酸化タングステン、酸化クロム、酸化ガリウム、酸化ニッケル、酸化マグネシウムおよびムライトなどのセラミックス材料やニッケル、コバルト、鉄、クロム、アルミニウム、亜鉛、ジルコニウム、チタン、銅、イットリウムおよびこれらの合金などの金属材料を挙げることができる。実施形態によれば、従来コールドスプレーによって被膜を形成することが困難であった、アルミナやそれを含む金属材料なでを用いて被膜を形成することが可能となる。なお、材料粉末として、上記材料を2種以上使用してもよい。
ノズルの絞られた流路を、作動ガスおよび材料粉末が通過することにより、これらは超音速にまで加速され、基材に向かってノズル先端から噴射される。ここに示した例ではノズルとして、コールドズプレー装置で広く採用されているラバルノズルを用いている。この材料粉末の流速は、基材上に被膜を形成することができる程度のものであれば、特に限定されるものではないが、通常は、500m/sec程度である。本発明によれば、噴射された材料粉末に対し、エネルギーを付与することができるため、これより低い流速であっても被膜を形成させることができ、例えば、材料粉末の流速を100〜300m/sec程度とすることができる。このようにより低い流速により材料粉末を基材に衝突させることにより、基材からの跳ね返りを防止することができ、被膜形成率を向上させることができる。また、基材との衝突により、基材の変形および材料粉末が粉砕されてしてしまうことを防止することができる。
コンプレッサーにおいて、ガスが圧縮され、高圧の作動ガスとなる。作動ガスの種類は、特に限定されず、例えば、圧縮された空気、窒素、アルゴンまたはヘリウムなどを使用することができる。これらの中でも、作動ガスをより高速のガス流とすることができるという観点からは、ヘリウムが好ましく、コストという観点からは、空気が好ましい。一実施形態におけるコールドスプレー装置は、材料粉末に対し、エネルギーを付与する機構を備えてなるため、通常のコールドスプレー装置の場合と比較し、作動ガスの流速を低くしても良好な被膜を形成させることができるため、空気が特に好ましい。
コンプレッサーにおいて加熱された作動ガスは、加熱ヒーターにおいて加熱される。加熱ヒーターに用いられるヒーターの種類は特に限定されないが、温度調整が容易な、電気抵抗により発熱する電熱ヒーターが好ましい。作動ガスは、材料粉末の融点を考慮して加熱されることが好ましく、一般的には、100〜800℃に加熱されることが好ましく、300〜550℃に加熱されることがより好ましい。例えば、材料粉末として、アルミナ(融点:2072℃)を使用した場合、作動ガスは、400〜550℃に加熱されることが好ましい。
観察機構は、材料粉末へのレーザー照射を観察することができるものであれば、特に限定されるものではなく、例えば、CCDカメラなどを使用することができる。
エネルギー付与領域調節機構は、エネルギーを付与する領域を移動させることができるものであれば、特に限定されず、エネルギー付与機構をスライドさせることのできる装置や、エネルギー付与機構の角度をかえることのできる装置を使用することができる。
基材の表面が平らである場合には、問題とならないことが多いが、その表面が平坦で無く、機材材料そのものに由来する凹凸があったり、表面に加工による模様などが形成されている場合、材料粉末と基材とが衝突する位置のノズルからの距離は、衝突箇所によって異なる場合がある。このとき、粉末粒子がエネルギーを付与されてから基材表面に衝突するまでに時間が変動したり、ガス流に照射されるエネルギー密度が変動したりすることがある。この問題を解消すべく、実施形態によるコールドスプレー装置は、上記観察機構から得られた、基材と材料粉末との衝突位置の情報および実際にエネルギーが付与されている領域の位置情報から、エネルギー付与が最適にはなる位置を算出し、最適なエネルギー付与がなされるように上記エネルギー付与領域調節機構を制御することができる制御機構を備えてなることが好ましい。
一実施形態において、被膜形成方法は、上記したコールドスプレー装置を用い、ノズルから作動ガスを用いて粉末粒子を基板表面に噴射する工程と、噴射させた前記粉末粒子に対し、エネルギー付与機構を使用して、エネルギーを付与する工程と、を含んでなる。
ここで使用する基材は、特に限定されず、ガラス基材、金属製基材または樹脂製基材などを使用することができる。また、基材の厚さについても、材料粉末の衝突により、変形したりするものでなければ、特に限定されるものではなく、例えば、1〜10mmのものを使用することができる。また、基材表面は、平らなものあっても、凹凸を有するものであってもよい。さらに、その凹凸は、規則的なものあっても、不規則なものであってもよい。さらに、被膜の形成をより容易とするため、基材表面に対し、ブラスト処理などの表面処理が施されていてもよい。
図1に示す、エネルギー付与機構として、パルスレーザー照射装置を備えるコールドスプレー装置を用いて、以下の実施条件において、基材に、被膜を形成させた。
[実施条件]
・材料粉末組成:ジルコニウム酸化物
・材料粉末の平均一次粒子径:5nm
・材料粉末の平均二次粒子径:10μm
・作動ガス:圧縮空気
・作動ガス温度:400〜550℃
・作動ガス圧力:0.6MPa
・噴射速度:400m/sec
・エネルギー付与機構:パルスレーザー照射装置
・パルスレーザー光の波長:1062nm
・パルスレーザー光の繰り返し周波数:50kHz
・パルスレーザーの径:1mm
・基材材質:ステンレス鋼
・基材形状:50mm×50mm×厚さ5mm
・ラバルノズル先端−基材間距離:1cm
エネルギー付与機構を備えないコールドスプレー装置を使用した以外は、実施例と同様にして、基材に被膜を形成させた。
下記式から、実施例および比較例における付着率を算出した。結果を表に表す。
付着率(%)=(基材に付着した材料粉末の量/使用した材料粉末の量)×100
皮膜の断面組織を走査型電子顕微鏡をもちいて100倍の倍率で写真撮影し、この写真から画像処理によって気孔や欠陥を分離し、面積比から気孔率を求めた。
室温から1000℃まで加熱した後、室温まで冷却し、サンプルの外観観察から皮膜剥離が生じるサイクル数を測定した。
11 粉末供給部
12 スプレーガン本体
13 ラバルノズル
14 コンプレッサー
15 加熱ヒーター
16 基材
17 レーザー発振器
18 光ファイバ
19 光学ヘッド
20 電子ビーム照射装置
21 EBガン
22 ケーブル
23 EB電源
24 プラズマ発生装置
25 プラズマトーチ
26 ガス供給装置
27 ケーブル
28 電源
29 電源ケーブル
30 材料粉末の一次粒子
31 材料粉末の二次粒子
100 コールドスプレー装置
Claims (10)
- 大気中において、材料粉末を作動ガスによってノズルから噴射し、基材に衝突させることにより、被膜を形成するコールドスプレー装置であって、
前記ノズルから材料粉末が噴射された後から、前記基材に衝突する直後までの間に、前記材料粉末に対し、エネルギーを付与する機構を備えてなることを特徴とする、装置。 - 前記材料粉末に対し、エネルギーを付与する機構が、パルスレーザー照射装置である、請求項1に記載の装置。
- 前記パルスレーザー照射装置から照射されるパルスレーザー光のパルス幅が、50ns以下である、請求項1または2に記載の装置。
- 前記材料粉末に対し、エネルギーを付与する機構が、電子ビーム照射装置である、請求項1に記載の装置。
- 前記電子ビーム照射装置より照射される電子ビームの加速電圧が、10〜400kVである、請求項1または2に記載の装置。
- 前記材料粉末に対し、エネルギーを付与する機構が、プラズマ発生装置である、請求項1に記載の装置。
- 前記材料粉末へのエネルギー付与量が、単位面積あたり、10〜500Wである、請求項1〜6のいずれか一項に記載の装置。
- 前記材料粉末の平均一次粒子径が、10nm以下である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の装置。
- 噴射される前記材料粉末の流速が、100〜500m/secである、請求項1〜8のいずれか一項に記載の装置。
- 請求項1〜9のいずれか一項に記載のコールドスプレー装置を用いた被膜形成方法であって、
ノズルから作動ガスを用いて粉末粒子を基板表面に噴射する工程と、
噴射された前記粉末粒子に対し、エネルギー付与機構を使用して、エネルギーを付与する工程と、を含んでなることを特徴とする、方法。
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