JP2017066532A - 導電性及び応力緩和特性に優れる銅合金板 - Google Patents
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Abstract
【課題】高強度、高導電性および優れた応力緩和特性を兼ね備えた銅合金板、銅合金板の製造方法並びに該銅合金板を用いた大電流用電子部品及び放熱用電子部品を提供する。【解決手段】Snを0.005〜0.25質量%含有し、残部が銅およびその不可避的不純物からなり、330MPa以上の0.2%耐力を有し、200℃で30分加熱した際の圧延方向の熱伸縮率が50ppm以下である銅合金板である。【選択図】なし
Description
本発明は銅合金板及び通電用又は放熱用電子部品に関し、特に、電機・電子機器、自動車等に搭載される端子、コネクタ、リレー、スイッチ、ソケット、バスバー、リードフレーム、放熱板等の電子部品の素材として使用される銅合金板、及び該銅合金板を用いた電子部品に関する。中でも、電気自動車、ハイブリッド自動車等で用いられる大電流用コネクタや端子等の大電流用電子部品の用途、又はスマートフォンやタブレットPCで用いられる液晶フレーム等の放熱用電子部品の用途に好適な銅合金板及び該銅合金板を用いた電子部品に関するものである。
自動車や電機・電子機器等には、端子、コネクタ、スイッチ、ソケット、リレー、バスバー、リードフレーム、放熱板等の電気又は熱を伝えるための部品が組み込まれており、これら部品には銅合金が用いられている。ここで、電気伝導性と熱伝導性は比例関係にある。
近年、電子部品の小型化に伴い、通電部における銅合金の断面積が小さくなる傾向にある。断面積が小さくなると、通電した際の銅合金からの発熱が増大する。また、成長著しい電気自動車やハイブリッド電気自動車で用いられる電子部品には、バッテリー部のコネクタ等の著しく高い電流が流される部品があり、通電時の銅合金の発熱が問題になっている。発熱が過大になると、銅合金は高温環境に晒されることになる。
コネクタ等の電子部品の電気接点では、銅合金板にたわみが与えられ、このたわみで発生する応力により、接点での接触力を得ている。たわみを与えた銅合金を高温下に長時間保持すると、応力緩和現象により、応力すなわち接触力が低下し、接触電気抵抗の増大を招く。この問題に対処するため銅合金には、発熱量が減ずるよう導電性により優れることが求められ、また発熱しても接触力が低下しないよう応力緩和特性により優れることも求められている。
一方、例えばスマートフォンやタブレットPCの液晶には液晶フレームと呼ばれる放熱部品が用いられている。このような放熱用途の銅合金板においても、応力緩和特性を高めると、外力による放熱板のクリープ変形が抑制され、放熱板周りに配置される液晶部品、ICチップ等に対する保護性が改善される、等の効果を期待できる。このため、放熱用途の銅合金板においても、応力緩和特性に優れることが望まれている。
導電率が高く、比較的高い強度を有する材料として、Cu−Sn系合金が知られている。例えば、0.10〜0.15質量%のSnを含有する銅合金が、CDA(Copper Development Association)合金番号C14415として実用に供されている。また、Cu−Sn合金は以前より、銅合金箔として携帯電話のフレキシブルプリント基盤やリチウムイオン二次電池等の二次電池の負極集電体材料にも使用されている。(特許文献1、2)。
銅の応力緩和特性は、合金元素を添加することにより改善できる。ただし、合金元素の添加は導電率を低下させるため、添加元素には導電率低下への影響が少ないこと、少量の添加で応力緩和改善効果が発現することが求められる。
応力緩和改善効果が顕著な元素として、例えばZrがあげられる。ところが、Zrは極めて活性であるため、インゴットの溶製時に添加したZrの一部が酸化する。このZr酸化物がインゴットに巻き込まれると、製品表面に傷が発生したり、圧延中の材料が切れたりする。また、Zrは固体銅中で析出物を形成し、その析出形態によって機械的特性や応力緩和特性が変化するため、熱間圧延や各熱処理の条件を厳密に調整する必要がある。このことから、Cu−Zr系合金の製造コストは極めて高価なものであった。
一方、Cu−Sn系合金の場合、SnはZr等と比較し溶銅中で酸化物を形成しにくいため、インゴットの溶製が容易であり、圧延材の品質も良好である。また、Snは固体銅中に安定して固溶するため、製品特性が安定して発現する。したがって、Cu−Sn系合金は安価に製造することができる。しかし、Cu−Sn系合金の応力緩和特性は純Cuと比べると優れるものの、近年市場から要求されるレベルに対し充分といえなかった。
そこで、本発明は、高強度、高導電性および優れた応力緩和特性を兼ね備えた銅合金板を提供することを目的とし、具体的には、安価で導電性と強度に優れるCu−Sn系合金板の応力緩和特性を改善することを課題とする。さらには、本発明は、該銅合金板の製造方法、及び大電流用途又は放熱用途に好適な電子部品を提供することをも目的とする。
本発明者は、鋭意検討を重ねた結果、Cu−Sn系合金について、その圧延方向の熱伸縮率を所定の値に調整することにより、高強度および高導電性を有するCu−Sn系合金の応力緩和特性が向上することを見出した。
以上の知見を基礎として完成した本発明は一側面において、Snを0.005〜0.25質量%含有し、残部が銅およびその不可避的不純物からなり、330MPa以上の0.2%耐力を有し、200℃で30分加熱した際の圧延方向の熱伸縮率が50ppm以下であることを特徴とする銅合金板である。
本発明に係る銅合金板は一実施態様において、Ag、Fe、Co、Ni、Cr、Mn、Zn、Mg、Si、PおよびBのうちの一種以上を0.2質量%以下含有する。
本発明に係る銅合金板は別の一実施態様において、80%IACS以上の導電率を有し、150℃で1000時間保持後の応力緩和率が50%以下である。
本発明は別の一側面において、インゴットを、800〜1000℃で厚み3〜30mmまで熱間圧延した後、冷間圧延と再結晶焼鈍とを繰り返し、最終の冷間圧延の後、歪取焼鈍を施す銅合金板の製造方法であって、(A)最終の冷間圧延前の再結晶焼鈍において、炉内温度を250〜800℃として、銅合金板の平均結晶粒径を50μm以下に調整し、(B)最終の冷間圧延において、総加工度を25〜99%、1パスあたりの圧延加工度を20%以下とし、(C)歪取焼鈍において、連続焼鈍炉を用い、炉内温度を300〜700℃、炉内で銅合金板に付加される張力を1〜5MPaとして、銅合金板を通板し、0.2%耐力を10〜50MPa低下させることを含む銅合金板の製造方法である。
本発明は更に別の一側面において、上記銅合金板を用いた大電流用電子部品である。
本発明は更に別の一側面において、上記銅合金板を用いた放熱用電子部品である。
本発明によれば、高強度、高導電性および優れた応力緩和特性を兼ね備えた銅合金板及びその製造方法、並びに大電流用途又は放熱用途に好適な電子部品を提供することが可能である。この銅合金板は、端子、コネクタ、スイッチ、ソケット、リレー、バスバー、リードフレーム等の電子部品の素材として好適に使用することができ、特に大電流を通電する電子部品の素材又は大熱量を放散する電子部品の素材として有用である。
以下、本発明について説明する。
(目標特性)
本発明の実施の形態に係る銅合金板は、80%IACS以上の導電率を有し、且つ330MPa以上の0.2%耐力を有する。導電率が80%IACS以上であれば、通電時の発熱量が純銅と同等といえる。また、0.2%耐力が330MPa以上であれば、大電流を通電する部品の素材又は大熱量を放散する部品の素材として必要な強度を有しているといえる。
(目標特性)
本発明の実施の形態に係る銅合金板は、80%IACS以上の導電率を有し、且つ330MPa以上の0.2%耐力を有する。導電率が80%IACS以上であれば、通電時の発熱量が純銅と同等といえる。また、0.2%耐力が330MPa以上であれば、大電流を通電する部品の素材又は大熱量を放散する部品の素材として必要な強度を有しているといえる。
本発明の実施の形態に係る銅合金板の応力緩和特性については、0.2%耐力の80%の応力を付加し、150℃で1000時間保持した時の銅合金板の応力緩和率(以下、単に応力緩和率と記す)が50%以下であり、より好ましくは40%以下、さらに好ましくは30%以下である。通常のCu−Sn系合金板の応力緩和率は70〜80%程度であるが、これを50%以下にすることで、コネクタに加工した後に大電流を通電しても接触力低下に伴う接触電気抵抗の増加が生じ難くなり、また、放熱板に加工した後に熱と外力が同時に加わってもクリープ変形が生じ難くなる。
(合金成分濃度)
Sn濃度は0.005〜0.25質量%、好ましくは0.05〜0.20質量%とする。Snが0.25質量%を超えると、80%IACS以上の導電率を得ることが難しくなり、Snが0.005%未満になると、330MPa以上の0.2%耐力を得ることが難しくなる。
Sn濃度は0.005〜0.25質量%、好ましくは0.05〜0.20質量%とする。Snが0.25質量%を超えると、80%IACS以上の導電率を得ることが難しくなり、Snが0.005%未満になると、330MPa以上の0.2%耐力を得ることが難しくなる。
Cu−Sn系合金には、強度や耐熱性を改善するために、Ag、Fe、Co、Ni、Cr、Mn、Zn、Mg、Si、PおよびBのうちの一種以上を含有させることができる。ただし、添加量が多すぎると、導電率が低下して80%IACSを下回ったり、製造性が悪化したりするので、添加量は総量で0.2質量%以下、より好ましくは0.1質量%以下、さらに好ましくは0.05質量%以下に制限される。また、添加による効果を得るためには、添加量を総量で0.001質量%以上にすることが好ましい。
(熱伸縮率)
銅合金板に熱を加えると、極微小な寸法変化が生じる。この寸法変化の割合を「熱伸縮率」と称する。本発明者らは、熱伸縮率を指標とし、Cu−Sn系合金板の金属組織を調質することにより、応力緩和率を著しく改善できることを見出した。
銅合金板に熱を加えると、極微小な寸法変化が生じる。この寸法変化の割合を「熱伸縮率」と称する。本発明者らは、熱伸縮率を指標とし、Cu−Sn系合金板の金属組織を調質することにより、応力緩和率を著しく改善できることを見出した。
本発明では、熱伸縮率として、200℃で30分加熱した時の圧延方向の寸法変化率を用いる。この熱伸縮率の絶対値(以下、単に熱伸縮率と記す)を50ppm以下、好ましくは30ppm以下に調整することにより、応力緩和率が50%以下となる。熱伸縮率の下限値については、銅合金板の特性の点からは制限されないが、熱伸縮率が1ppm以下になることは少ない。
(厚み)
製品の厚みは0.1〜2.0mmであることが好ましい。厚みが薄すぎると、通電部断面積が小さくなり通電時の発熱が増加するため大電流を流すコネクタ等の素材として不適であり、また、わずかな外力で変形するようになるため放熱板等の素材としても不適である。一方で、厚みが厚すぎると、曲げ加工が困難になる。このような観点から、より好ましい厚みは0.2〜1.5mmである。厚みが上記範囲となることにより、通電時の発熱を抑えつつ、曲げ加工性を良好なものとすることができる。
製品の厚みは0.1〜2.0mmであることが好ましい。厚みが薄すぎると、通電部断面積が小さくなり通電時の発熱が増加するため大電流を流すコネクタ等の素材として不適であり、また、わずかな外力で変形するようになるため放熱板等の素材としても不適である。一方で、厚みが厚すぎると、曲げ加工が困難になる。このような観点から、より好ましい厚みは0.2〜1.5mmである。厚みが上記範囲となることにより、通電時の発熱を抑えつつ、曲げ加工性を良好なものとすることができる。
(用途)
本発明の実施の形態に係る銅合金板は、電機・電子機器、自動車等で用いられる端子、コネクタ、リレー、スイッチ、ソケット、バスバー、リードフレーム等の電子部品の用途に好適に使用することができ、特に、電気自動車、ハイブリッド自動車等で用いられる大電流用コネクタや端子等の大電流用電子部品の用途、又はスマートフォンやタブレットPCで用いられる液晶フレーム等の放熱用電子部品の用途に有用である。
本発明の実施の形態に係る銅合金板は、電機・電子機器、自動車等で用いられる端子、コネクタ、リレー、スイッチ、ソケット、バスバー、リードフレーム等の電子部品の用途に好適に使用することができ、特に、電気自動車、ハイブリッド自動車等で用いられる大電流用コネクタや端子等の大電流用電子部品の用途、又はスマートフォンやタブレットPCで用いられる液晶フレーム等の放熱用電子部品の用途に有用である。
(製造方法)
純銅原料として電気銅等を溶解した後、Snおよび必要に応じ他の合金元素を添加し、厚み30〜300mm程度のインゴットに鋳造する。このインゴットを例えば800〜1000℃の熱間圧延により厚み3〜30mm程度の板とした後、冷間圧延と再結晶焼鈍とを繰り返し、最終の冷間圧延で所定の製品厚みに仕上げ、最後に歪取り焼鈍を施す。ここで、熱伸縮率を上述した範囲に調整する手段は、特定の方法に制限されないが、例えば、最終冷間圧延及び歪取焼鈍の両条件を、後述するように制御することで可能となる。
純銅原料として電気銅等を溶解した後、Snおよび必要に応じ他の合金元素を添加し、厚み30〜300mm程度のインゴットに鋳造する。このインゴットを例えば800〜1000℃の熱間圧延により厚み3〜30mm程度の板とした後、冷間圧延と再結晶焼鈍とを繰り返し、最終の冷間圧延で所定の製品厚みに仕上げ、最後に歪取り焼鈍を施す。ここで、熱伸縮率を上述した範囲に調整する手段は、特定の方法に制限されないが、例えば、最終冷間圧延及び歪取焼鈍の両条件を、後述するように制御することで可能となる。
再結晶焼鈍では、圧延組織の一部または全てを再結晶化させる。最終冷間圧延前の再結晶焼鈍(最終再結晶焼鈍)では、銅合金板の平均結晶粒径を50μm以下に調整する。平均結晶粒径が大きすぎると、製品の0.2%耐力を330MPa以上に調整することが難しくなる。
最終再結晶焼鈍の条件は、目標とする焼鈍後の結晶粒径に基づき決定する。具体的には、バッチ炉または連続焼鈍炉を用い、炉内温度を250〜800℃として焼鈍を行えばよい。バッチ炉では250〜600℃の炉内温度において30分から30時間の範囲で加熱時間を適宜調整すればよい。連続焼鈍炉では450〜800℃の炉内温度において5秒から10分の範囲で加熱時間を適宜調整すればよい。
最終冷間圧延では、一対の圧延ロール間に材料を繰り返し通過させ、目標の板厚に仕上げてゆく。最終冷間圧延の総加工度と1パスあたりの加工度を制御する。
総加工度R(%)は、R=(t0−t)/t0×100(t0:最終冷間圧延前の板厚、t:最終冷間圧延後の板厚)で与えられる。また、1パスあたりの加工度r(%)とは、圧延ロールを1回通過したときの板厚減少率であり、r=(T0−T)/T0×100(T0:圧延ロール通過前の厚み、T:圧延ロール通過後の厚み)で与えられる。
総加工度Rは25〜99%とするのが好ましい。Rが小さすぎると、0.2%耐力を330MPa以上に調整することが難しくなる。Rが大きすぎると、圧延材のエッジが割れることがある。
総加工度R(%)は、R=(t0−t)/t0×100(t0:最終冷間圧延前の板厚、t:最終冷間圧延後の板厚)で与えられる。また、1パスあたりの加工度r(%)とは、圧延ロールを1回通過したときの板厚減少率であり、r=(T0−T)/T0×100(T0:圧延ロール通過前の厚み、T:圧延ロール通過後の厚み)で与えられる。
総加工度Rは25〜99%とするのが好ましい。Rが小さすぎると、0.2%耐力を330MPa以上に調整することが難しくなる。Rが大きすぎると、圧延材のエッジが割れることがある。
1パスあたりの加工度rは20%以下とすることが好ましい。全パスの中にrが20%を超えるパスが一つでも含まれると、後述の条件で歪取焼鈍を行ったとしても、熱伸縮率を50ppm以下に調整することが難しくなる。
本発明の歪取焼鈍は連続焼鈍炉を用いて行う。バッチ炉の場合、コイル状に巻き取った状態で材料を加熱するため、加熱中に材料が変形を起こし材料に反りが生じる。したがって、バッチ炉は本発明の歪取焼鈍に不適である。
連続焼鈍炉において、炉内温度を300〜700℃とし、5秒から10分の範囲で加熱時間を適宜調整し、歪取焼鈍後の0.2%耐力を歪取焼鈍前の0.2%耐力に対し10〜50MPa低い値、好ましくは15〜45MPa低い値に調整する。さらに、連続焼鈍炉内において材料に付加される張力を1〜5MPa、より好ましくは1〜4MPaに調整する。この条件で歪取焼鈍を行うことにより、熱伸縮率が低減する。
0.2%耐力の低下量が小さすぎても大きすぎても、歪取焼鈍による熱伸縮率の低減が不十分となり、熱伸縮率を50ppm以下に調整することが難しくなる。また、張力が大きすぎても、歪取焼鈍による熱伸縮率の低減が不十分となり、熱伸縮率を50ppm以下に調整することが難しくなる。一方、張力が小さすぎると、焼鈍炉を通板中の材料が炉壁と接触し、材料の表面やエッジに傷が付くことがある。
以下に本発明の実施例を比較例と共に示すが、これらの実施例は本発明及びその利点をよりよく理解するために提供するものであり、発明が限定されることを意図するものではない。
溶銅に合金元素を添加した後、厚みが200mmのインゴットに鋳造した。インゴットを850℃で3時間加熱し、熱間圧延により厚み15mmの板にした。熱間圧延板表面の酸化スケールを研削、除去した後、焼鈍と冷間圧延を繰り返し、最終の冷間圧延で所定の製品厚みに仕上げた。最後に連続焼鈍炉を用い歪取焼鈍を行った。
最終冷間圧延前の焼鈍(最終再結晶焼鈍)は、焼鈍時の厚みが2mmを超える場合はバッチ炉を、厚みが2mm以下の場合は連続焼鈍炉を用いて行った。バッチ炉の場合は加熱時間を5時間とし炉内温度を250〜700℃の範囲で調整し、焼鈍後の結晶粒径を変化させた。連続焼鈍炉の場合は炉内温度を700℃とし加熱時間を5秒から15分の間で適宜調整し、焼鈍後の結晶粒径を変化させた。
最終冷間圧延では、総加工度および1パスあたりの加工度を制御した。
連続焼鈍炉を用いた歪取り焼鈍では、炉内温度を500℃とし加熱時間を1秒から15分の間で調整し、歪取焼鈍による0.2%耐力の低下量を種々変化させた。また、炉内において材料に付加する張力を種々変化させた。なお、一部の例では歪取り焼鈍を行わなかった。
製造途中の材料および歪取焼鈍後の材料につき、次の測定を行った。
(成分)
歪取焼鈍後の材料の合金元素濃度をICP−質量分析法で分析した。
歪取焼鈍後の材料の合金元素濃度をICP−質量分析法で分析した。
(最終再結晶焼鈍後の平均結晶粒径)
圧延方向と直交する断面を機械研磨により鏡面に仕上げた後、エッチングにより結晶粒界を現出させた。この金属組織上において、JIS H 0501(1999年)の切断法に従い測定し、平均結晶粒径を求めた。
圧延方向と直交する断面を機械研磨により鏡面に仕上げた後、エッチングにより結晶粒界を現出させた。この金属組織上において、JIS H 0501(1999年)の切断法に従い測定し、平均結晶粒径を求めた。
(0.2%耐力)
最終冷間圧延後および歪取焼鈍後の材料につき、JIS Z2241に規定する13B号試験片を引張方向が圧延方向と平行になるように採取し、JIS Z2241に準拠して圧延方向と平行に引張試験を行い、0.2%耐力を求めた。
最終冷間圧延後および歪取焼鈍後の材料につき、JIS Z2241に規定する13B号試験片を引張方向が圧延方向と平行になるように採取し、JIS Z2241に準拠して圧延方向と平行に引張試験を行い、0.2%耐力を求めた。
(導電率)
歪取焼鈍後の材料から、試験片の長手方向が圧延方向と平行になるように試験片を採取し、JIS H0505に準拠し四端子法により20℃での導電率を測定した。
歪取焼鈍後の材料から、試験片の長手方向が圧延方向と平行になるように試験片を採取し、JIS H0505に準拠し四端子法により20℃での導電率を測定した。
(熱伸縮率)
歪取焼鈍後の材料から、幅20mm、長さ210mmの短冊形状の試験片を、試験片の長手方向が圧延方向と平行になるように採取し、図1のようにL0(=200mm)の間隔を空け二点の打痕を刻印した。その後、200℃で30分加熱し、加熱後の打痕間隔(L)を測定した。そして、熱伸縮率(ppm)として、(L−L0)/L0×106の式で算出される値の絶対値を求めた。
歪取焼鈍後の材料から、幅20mm、長さ210mmの短冊形状の試験片を、試験片の長手方向が圧延方向と平行になるように採取し、図1のようにL0(=200mm)の間隔を空け二点の打痕を刻印した。その後、200℃で30分加熱し、加熱後の打痕間隔(L)を測定した。そして、熱伸縮率(ppm)として、(L−L0)/L0×106の式で算出される値の絶対値を求めた。
(応力緩和率)
歪取焼鈍後の材料から、幅10mm、長さ100mmの短冊形状の試験片を、試験片の長手方向が圧延方向と平行になるように採取した。図2のように、l=50mmの位置を作用点として、試験片にy0のたわみを与え、圧延方向の0.2%耐力の80%に相当する応力(s)を負荷した。y0は次式により求めた。
y0=(2/3)・l2・s / (E・t)
ここで、Eは圧延方向のヤング率であり、tは試料の厚みである。150℃にて1000時間加熱後に除荷し、図3のように永久変形量(高さ)yを測定し、応力緩和率{[y(mm)/y0(mm)]×100(%)}を算出した。
歪取焼鈍後の材料から、幅10mm、長さ100mmの短冊形状の試験片を、試験片の長手方向が圧延方向と平行になるように採取した。図2のように、l=50mmの位置を作用点として、試験片にy0のたわみを与え、圧延方向の0.2%耐力の80%に相当する応力(s)を負荷した。y0は次式により求めた。
y0=(2/3)・l2・s / (E・t)
ここで、Eは圧延方向のヤング率であり、tは試料の厚みである。150℃にて1000時間加熱後に除荷し、図3のように永久変形量(高さ)yを測定し、応力緩和率{[y(mm)/y0(mm)]×100(%)}を算出した。
表1に評価結果を示す。最終冷間圧延では複数のパスを実施したが、これら各パスの加工度の中での最大値を示してある。また、最終再結晶焼鈍後の結晶粒径における「<10μm」の表記は、圧延組織の全てが再結晶化しその平均結晶粒径が10μm未満であった場合、および圧延組織の一部のみが再結晶化した場合の双方を含んでいる。
発明例1〜24の銅合金板では、Sn濃度を0.005〜0.25%に調整し、最終冷間圧延前の再結晶焼鈍において、結晶粒径を50μm以下に調整し、最終冷間圧延において、総加工度を25〜99%に、1パスあたりの加工度を20%以下に調整し、歪取焼鈍において、材料を連続焼鈍炉に張力1〜5MPaで通板して0.2%耐力を10〜50MPa低下させた。その結果、熱伸縮率が50ppm以下となり、80%IACS以上の導電率、330MPa以上の0.2%耐力、50%以下の応力緩和率が得られた。
比較例1は歪取焼鈍を行わなかったものであり、熱伸縮率が50ppmを超え、応力緩和率が50%を超えた。
比較例2〜3では、歪取焼鈍を行ったものの、炉内での材料張力が5MPaを超えたため、熱伸縮率が50ppmを超え、応力緩和率が50%を超えた。
比較例4では歪取焼鈍における0.2%耐力の低下量が過小であり、比較例5では歪取焼鈍における0.2%耐力の低下量が過大であった。このため、熱伸縮率が50ppmを超え、応力緩和率が50%を超えた。
比較例6、7では、最終冷間圧延における1パス当たりの加工度が20%を超えたため、熱伸縮率が50ppmを超え、応力緩和率が50%を超えた。
比較例8では最終冷間圧延における総加工度が25%に満たなかったため、また比較例9では最終冷間圧延前の再結晶焼鈍上がりの結晶粒径が50μmを超えたため、歪取焼鈍後の0.2%耐力が330MPaに満たなかった。
比較例10では、Sn濃度が0.005質量%未満だったため、歪取焼鈍後の0.2%耐力が330MPaに満たなかった。比較例11では、Sn濃度が0.25質量%を超えたため、導電率が80%IACSに満たなかった。
Claims (6)
- Snを0.005〜0.25質量%含有し、残部が銅およびその不可避的不純物からなり、330MPa以上の0.2%耐力を有し、200℃で30分加熱した際の圧延方向の熱伸縮率が50ppm以下であることを特徴とする銅合金板。
- Ag、Fe、Co、Ni、Cr、Mn、Zn、Mg、Si、PおよびBのうちの一種以上を0.2質量%以下含有することを特徴とする請求項1に記載の銅合金板。
- 80%IACS以上の導電率を有し、150℃で1000時間保持後の応力緩和率が50%以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の銅合金板。
- インゴットを、800〜1000℃で厚み3〜30mmまで熱間圧延した後、冷間圧延と再結晶焼鈍とを繰り返し、最終の冷間圧延の後、歪取焼鈍を施す銅合金板の製造方法であって、
(A)前記最終の冷間圧延前の再結晶焼鈍において、炉内温度を250〜800℃として、銅合金板の平均結晶粒径を50μm以下に調整し、
(B)前記最終の冷間圧延において、総加工度を25〜99%、1パスあたりの圧延加工度を20%以下とし、
(C)前記歪取焼鈍において、連続焼鈍炉を用い、炉内温度を300〜700℃、炉内で銅合金板に付加される張力を1〜5MPaとして、銅合金板を通板し、0.2%耐力を10〜50MPa低下させること
を含む請求項1〜3の何れか1項に記載の銅合金板の製造方法。 - 請求項1〜3の何れか1項に記載の銅合金板を用いた大電流用電子部品。
- 請求項1〜3の何れか1項に記載の銅合金板を用いた放熱用電子部品。
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