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JP2017063040A - リチウムイオン電池用負極材及びその用途 - Google Patents

リチウムイオン電池用負極材及びその用途 Download PDF

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JP2017063040A
JP2017063040A JP2016214122A JP2016214122A JP2017063040A JP 2017063040 A JP2017063040 A JP 2017063040A JP 2016214122 A JP2016214122 A JP 2016214122A JP 2016214122 A JP2016214122 A JP 2016214122A JP 2017063040 A JP2017063040 A JP 2017063040A
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村田 浩一
Koichi Murata
浩一 村田
石井 伸晃
Nobuaki Ishii
伸晃 石井
武内 正隆
Masataka Takeuchi
正隆 武内
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Showa Denko KK
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Abstract

【課題】充放電容量が大きく、充放電での抵抗増加が少なく、充放電サイクル特性及び急速充放電特性に優れたリチウムイオン電池用負極材の提供。【解決手段】リチウムを吸蔵・放出可能な元素を含有する粒子(A)と、炭素粒子(B)との混合物からなり、該粒子(A)は、体積基準累積粒度分布における90%粒子径が500nm以下であり、該炭素粒子(B)は、黒鉛粒子を含有し、該炭素粒子(B)のピーク強度比I(110)/I(004)が、0.2以上であるリチウムイオン電池用負極材。又、リチウムを吸蔵・放出可能な元素を含有する粒子(A)と、炭素粒子(B)とを、力学的エネルギーをかけて該粒子(A)の凝集を解しつつ該炭素粒子(B)に該粒子(A)を埋め込むように混合する工程を有するリチウムイオン電池用負極材の製造方法。【選択図】図6

Description

本発明は、リチウムイオン電池用負極材及びその用途に関する。より詳細に、本発明は、充放電容量が大きく、充放電サイクル特性が良好なリチウムイオン電池を得ることができる負極材、該負極材を含有するペースト、該ペーストを塗布して成る負極シート及び該負極シートを有するリチウムイオン電池に関する。
電子部品の省電力化を上回る速さで携帯電子機器の多機能化が進んでいるために携帯電子機器の消費電力が増加している。そのため、携帯電子機器の主電源であるリチウムイオン電池の高容量化および小型化がいままで以上に強く求められている。また、電動自動車の需要が伸び、それに使われるリチウムイオン電池にも高容量化が強く求められている。
従来のリチウムイオン電池には、負極材料として黒鉛が主に使われている。黒鉛は化学量論上LiC6の比率までしかLiを吸蔵することができないので、黒鉛を負極に用いたリチウムイオン電池の理論容量は372mAh/gである。
リチウムイオン電池の高容量化を図るために、理論容量の大きいSiやSnなどの金属元素を含む粒子を負極材料に用いることが検討されている。例えば、Siを含む粒子を負極材料に用いた場合のリチウムイオン電池の理論容量は4200mAh/gである。金属リチウムを用いた場合のリチウム電池の理論容量は3900mAh/gであるので、Siなどを負極材料に用いることができれば、リチウム電池よりも小型で高容量なリチウムイオン電池が得られると期待される。ところが、Siなどの負極材料はリチウムイオンの挿入・脱離(吸蔵・放出)に伴う膨張率および収縮率が大きい。そのために粒子間に隙間が生じて期待したほどの容量が得られない。また、大きな膨張と収縮の繰り返しにより粒子が砕けて微粉化するために電気的な接触が分断されて内部抵抗が増加するので、得られるリチウムイオン電池は充放電サイクル寿命が短い。
そこで、Siおよび/またはSnを含む粒子と繊維状炭素とを含有してなる負極材料(特許文献1)、Siを含む粒子と繊維状炭素とを含有する炭素質材料を黒鉛粒子の表面に付着してなる負極材料(特許文献2)、Si、Sn、Geなどの金属系粒子とd002が0.3354nm以上0.338nm以下で且つラマン分光分析によるGピークとDピークの面積比がG/D≧9である黒鉛粒子との混合物からなる負極材料(特許文献3)、SiやGeなどのリチウムイオンを吸蔵・放出可能な元素と銅などのリチウムイオンを吸蔵・放出不可能な元素とを含有する固溶体からなる負極材料(特許文献4)などが提案されている。
特開2004−178922号公報 特開2004−182512号公報 特開2004−362789号公報 特開2002−075350号公報
本発明の目的は、充放電容量が大きく、充放電での抵抗増加が少なく、充放電サイクル特性および急速充放電特性に優れたリチウムイオン電池を得ることができる負極材を提供することである。
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、以下の態様を含む発明を完成するに至った。
[1] リチウムを吸蔵・放出可能な元素を含有する粒子(A)と、黒鉛材料を含有してなる炭素粒子(B)との混合物からなる負極材であって、
該炭素粒子は、光学顕微鏡画像から算出した粒子のアスペクト比が1以上5以下で、レーザー回折式粒度分布測定機によって測定される体積基準累積粒度分布における50%粒子径が2〜40μmで、且つ400回タッピングを行った際の嵩密度が1.0g/cm3以上1.35g/cm3以下であり;
該黒鉛材料は、ラマン分光スペクトルで測定される1360cm-1の付近にあるピークの強度(ID)と1580cm-1の付近にあるピークの強度(IG)との比ID/IG(R値)が0.01以上0.2以下で、 30℃〜100℃の熱膨張係数(CTE)が4.0×10-6/℃以上5.0×10-6/℃以下で、 粉末X線回折における002回折線から求めた面間隔d002が0.3340nm〜0.3380nmで、 且つ石油系コークス及び/又は石炭系コークスを2500℃以上で熱処理して得られるものである、リチウムイオン電池用負極材。
[2] 粒子(A)は、体積基準累積粒度分布における90%粒子径が500nm以下である、[1]に記載のリチウムイオン電池用負極材。
[3] 繊維径が2〜1000nmで且つアスペクト比が10〜15000である炭素繊維をさらに含む[1]または[2]に記載のリチウムイオン電池用負極材。
[4] 炭素繊維は2000℃以上で熱処理されたものであり且つ粉末X線回折における002回折線から求めた面間隔d002が0.344nm以下である、[3]に記載のリチウムイオン電池用負極材。
[5] 炭素繊維は内部に中空構造を有し且つ分岐状炭素繊維を含むものである、[3]または[4]に記載のリチウムイオン電池用負極材。
[6] 炭素繊維の量が炭素粒子(B)100質量部に対して1〜20質量部である、[3]〜[5]のいずれかひとつに記載のリチウムイオン電池用負極材。
[7] 粒子(A)の量が炭素粒子(B)100質量部に対して5〜40質量部である[1]〜[6]のいずれかひとつに記載のリチウムイオン電池用負極材。
[8] リチウムイオンを吸蔵・放出可能な元素が、Si、Sn、GeおよびInからなる群から選ばれる少なくとも一つである、[1]〜[7]のいずれかひとつに記載のリチウムイオン電池用負極材。
[9] 炭素粒子(B)は、前記の黒鉛材料からなる粒子と、その表面に存在する炭素質層とを含有して成る炭素被覆黒鉛粒子であり、
該炭素質層は、ラマン分光スペクトルで測定される1300〜1400cm-1の範囲にあるピークの強度(ID)と1580〜1620cm-1の範囲にあるピークの強度(IG)との比ID/IG(R値)が0.1以上である、[1]〜[8]のいずれかひとつに記載のリチウムイオン電池用負極材。
[10] 炭素質層は、有機化合物を黒鉛材料からなる粒子に付着させ、次いで500℃以上の温度で熱処理して得られるものである[9]に記載のリチウムイオン電池用負極材。
[11] 有機化合物が、石油系ピッチ、石炭系ピッチ、フェノール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、フラン樹脂、セルロース樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリイミド樹脂及びエポキシ樹脂からなる群から選択される少なくとも1つである[10]に記載のリチウムイオン電池用負極材。
[12] 有機化合物の付着量が黒鉛材料からなる粒子100質量部に対して0.05〜10質量部である[9]〜[11]のいずれかひとつに記載のリチウムイオン電池用負極材。
[13] 炭素粒子(B)の隙間を埋めるように粒子(A)が分散しているものを含む[1]〜[12]のいずれかひとつに記載のリチウムイオン電池用負極材。
[14] 炭素粒子(B)に粒子(A)が埋め込まれたものを含む[1]〜[12]のいずれかひとつに記載のリチウムイオン電池用負極材。
[15] リチウムを吸蔵・放出可能な元素を含有する粒子(A)と、
黒鉛材料を含有してなる炭素粒子(B)とを、
力学的エネルギーをかけて粒子(A)の凝集を解しつつ炭素粒子(B)に粒子(A)を埋め込むように混合する工程を有するリチウムイオン電池用負極材の製造方法。
[16] 前記[1]〜[14]のいずれかひとつに記載の負極材とバインダーとを含む負極シート。
[17] 非水系電解液および非水系ポリマー電解質からなる群から選ばれる少なくとも一つ、 正極シート、 および[16]に記載の負極シートを有するリチウムイオン電池。
[18] エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、及びビニレンカーボネートからなる群から選ばれる少なくとも1つをさらに含有する[17]に記載のリチウムイオン電池。
本発明の負極材を用いることによって、充放電容量が大きく、充放電での抵抗増加が少なく、充放電サイクル特性および急速充放電特性に優れたリチウムイオン電池を製造することができる。
実施例1〜4で用いたSi粒子の体積基準累積粒度分布を示す図である。 実施例1の負極材のSEM画像を示す図である。 実施例2の負極材のSEM画像を示す図である。 実施例1および2の負極材並びに実施例1〜4で用いたSi粒子の体積基準粒度分布を示す図である。 実施例3の負極材のSEM画像を示す図である。 実施例4の負極材のSEM画像を示す図である。
本発明の一実施形態に係るリチウムイオン電池用負極材は、リチウムイオンを吸蔵・放出可能な元素を含む粒子(A)と、黒鉛材料を含有してなる炭素粒子(B)との混合物からなるものである。
(リチウムイオンを吸蔵・放出可能な元素を含む粒子(A))
本発明の一実施形態に係る負極材の構成物質の一つである粒子(A)は、リチウムイオンを吸蔵・放出可能な元素を含む物質からなるものである。当然ながら、粒子(A)は後記の炭素粒子(B)以外のものを意味する。粒子(A)に含まれる元素はリチウムイオンを吸蔵・放出可能なものであれば特に限定されない。好ましい元素としては、Si、Sn、GeまたはInが挙げられる。粒子(A)は該元素の単体または該元素を含む化合物からなるものであってもよいし、該元素のうちの少なくとも2つを含む化合物、混合体、共融体または固溶体からなるものであってもよい。また粒子(A)は複数の微粒子が凝集したものであってもよい。粒子(A)の形状としては、塊状、鱗片状、球状、繊維状などが挙げられる。これらのうち、球状または塊状が好ましい。粒子(A)は二次粒子化していてもよい。
Si元素を含む物質としては、一般式:Ma mSiで表される物質が挙げられる。該物質はSi1モルに対してmモルとなる比で元素Maを含む化合物、混合体、共融体または固溶体である。
aはLiを除く元素である。具体的に、Maとして、Si、B、C、N、O、S、P、Na、Mg、Al、K、Ca、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Mo、Ru、Rh、Pd、Pt、Be、Nb、Nd、Ce、W、Ta、Ag、Au、Cd、Ga、In、Sb、Baなどが挙げられる。なお、MaがSiの場合は、Si単体を意味する。式中、mは好ましくは0.01以上、より好ましくは0.1以上、さらに好ましくは0.3以上である。
Si元素を含む物質の具体例としては、Si元素とアルカリ土類金属との合金;Siと遷移金属との合金;Siと半金属との合金;Siと、Be、Ag、Al、Au、Cd、Ga、In、SbまたはZnとの固溶性合金または共融性合金;CaSi、CaSi2、Mg2Si、BaSi2、Cu5Si、FeSi、FeSi2、CoSi2、Ni2Si、NiSi2、MnSi、MnSi2、MoSi2、CrSi2、Cr3Si、TiSi2、Ti5Si3、NbSi2、NdSi2、CeSi2、WSi2、W5Si3、TaSi2、Ta5Si3、PtSi、V3Si、VSi2、PdSi、RuSi、RhSiなどのケイ化物;SiO2、SiC、Si34などが挙げられる。
Sn元素を含む物質としては、錫単体、錫合金、酸化錫、硫化錫、ハロゲン化錫、錫化物などが挙げられる。Sn元素を含む物質の具体例としては、SnとZnとの合金、SnとCdとの合金、SnとInとの合金、SnとPbとの合金;SnO、SnO2、Mb 4SnO4(MbはSn以外の金属元素を示す。)などの酸化錫;SnS、SnS2、Mb 2SnS3などの硫化錫;SnX2、SnX4、MbSnX4(MbはSn以外の金属元素を示す。Xはハロゲン原子を示す。)などのハロゲン化錫;MgSn、Mg2Sn、FeSn、FeSn2、MoSn、MoSn2などの錫化物が挙げられる。
粒子(A)は、レーザー回折式粒度分布測定機によって測定される体積基準累積粒度分布における90%粒子径(D90)が、好ましくは500nm以下、より好ましくは450nm以下である。なお、この粒度分布の測定においては二次粒子の粒径も含まれている。また、粒子(A)は、1μm以上の大きさの粒子を実質的に含まない粒度分布のものがよい。粒子(A)は、粒径が大きくなるほど、充放電時の収縮と膨張により砕けやすく、内部抵抗の増加および充放電サイクル特性の低下を招きやすい。
粒子(A)は、レーザー回折式粒度分布測定機によって測定される体積基準累積粒度分布における10%粒子径(D10)が、好ましくは80nm以上、より好ましくは100nm以上である。また、粒子(A)は、レーザー回折式粒度分布測定機によって測定される体積基準累積粒度分布における50%粒子径(D50)が、好ましくは100〜400nm、より好ましくは200〜300nmである。
粒度分布を調整するために、公知の粉砕方法及び/又は分級方法を利用することができる。粉砕装置としては、例えば、ハンマーミル、ジョークラッシャー、衝突式粉砕器などが挙げられる。また、分級は気流分級及び/又は篩によって行うことができる。気流分級装置としては、例えば、ターボクライファイヤー、ターボプレックスなどが挙げられる。
(炭素粒子(B))
本発明の一実施形態に係る負極材の構成物質の一つである炭素粒子(B)は、光学顕微鏡画像から算出した粒子のアスペクト比が、通常、1以上5以下、好ましくは1以上2以下である。アスペクト比がこの範囲内にあると大型電池に要求されるエネルギー密度を満たす高密度電極を作製することが可能となる。
炭素粒子(B)は、体積基準累積粒度分布における50%粒子径(D50)が、好ましくは2〜40μm、より好ましくは2〜15μmである。なお、この粒度分布の測定においては二次粒子の粒径も含まれている。
細かい粒子が多いと電極密度を上げ難くなり、逆に大きな粒子が多いと負極シートに斑ができて電池特性を低下させる恐れがある。このことから、炭素粒子(B)は、粒子径1〜50μmの範囲にある粒子が数基準で90%以上存在する粒度分布であることが好ましく、粒子径5〜50μmの範囲にある粒子が数基準で90%以上存在する粒度分布であることが好ましい。炭素粒子(B)は、レーザー回折式粒度分布測定機によって測定される体積基準累積粒度分布における10%粒子径(D10)が、好ましくは1μm以上、より好ましくは2μm以上である。また、炭素粒子(B)は、レーザー回折式粒度分布測定機によって測定される体積基準累積粒度分布における50%粒子径(D50)が、好ましくは3〜10μm、より好ましくは4〜8μmである。
なお、後述する黒鉛材料のみからなる炭素粒子、黒鉛粒子と炭素質層とを含有してなる炭素粒子、および炭素繊維が結着された黒鉛粒子または炭素被覆黒鉛粒子からなる炭素粒子の粒子径も上記のとおりの粒子径であることが好ましい。
炭素粒子(B)は、400回タッピングを行った際の嵩密度が、通常、1.0g/cm3以上1.35g/cm3以下、好ましくは1.1g/cm3以上1.3g/cm3以下である。炭素粒子(B)のタッピング密度がこの範囲内にあると電極へ塗工した際の、プレス前の電極密度をより高くすることができる。また、タッピング密度の値により、ロールプレス一回で十分な密度の電極を得ることが可能かどうか予測できる。更に、タッピング密度が上記範囲内にあることにより、プレス時に到達する電極密度を十分高くすることができる。
炭素粒子(B)は、黒鉛材料を含有するものである。炭素粒子(B)は、黒鉛材料のみからなる粒子(すなわち、黒鉛粒子)であってもよいし、黒鉛粒子とその表面に存在する炭素質層とからなる粒子(すなわち、炭素被覆黒鉛粒子)であってもよいし、炭素被覆黒鉛粒子または黒鉛粒子に炭素繊維を付着させてなる粒子であってもよい。
〔黒鉛材料からなる粒子〕
黒鉛材料としては、人造黒鉛、熱分解黒鉛、膨張黒鉛、天然黒鉛、鱗状黒鉛、鱗片状黒鉛などが挙げられる。これらのうち人造黒鉛が好ましい。
(1)R値
黒鉛材料は、ラマン分光スペクトルで測定される1360cm-1の付近にあるピークの強度(ID)と1580cm-1の付近にあるピークの強度(IG)との比ID/IG(R値)が、通常、0.01以上0.2以下、好ましくは0.03以上0.15以下である。R値は黒鉛材料表面の結晶の発達状態を示す指標と考えられる。一般に、R値が大きいほど結晶が未発達であることを表す。
(2)CTE
黒鉛材料は、30℃〜100℃の熱膨張係数(CTE)が、4.0×10-6/℃以上5.0×10-6/℃以下、好ましくは4.1×10-6/℃以上4.6×10-6/℃以下である。
熱膨張係数(CTE)は以下のようにして決定する。先ず、黒鉛材料500gを28メッシュの大きさ以下に粉砕して分級する。28〜60メッシュの大きさの粒60g、60〜200メッシュの大きさの粒32g、および200メッシュの大きさ以下の粒8gを混合し、これにバインダーとなるピッチ25gを加え、125℃のオイルバスで20分間加熱し、均一に混合する。この混合物を冷却し、粉砕して再度28メッシュの大きさ以下にする。得られた粉砕品30gを125℃の加圧成形機に入れ、ゲージ圧450kg/cm2で5分間加圧して成形する。この成形体を磁性ルツボに入れ、それを焼成炉に入れ、室温から1000℃までを5時間で昇温し、次いで1000℃で1時間保持するという条件で焼成する。その後、室温に冷却し、焼成炉から取り出し、焼成品を精密切断機で4.3×4.3×20.0mmに切り出し、熱膨張率測定用のテストピースを得る。テストピースをTMA(熱機械分析装置;例えばセイコー電子製TMA/SS350)を用いて、30〜100℃におけるテストピースの長さ方向の熱膨張率を測定する。
(3)d002
黒鉛材料は、d002が0.3340nm〜0.3380nm、好ましくは0.3362〜0.3370nmである。また、黒鉛材料は、LCが好ましくは50nm以上、より好ましくは50nm〜100nmである。なお、d002は粉末X線回折における002回折線から求めた面間隔、LCは粉末X線回折における002回折線から求めた結晶子のc軸方向の大きさである。d002は黒鉛材料全体の結晶の発達状態を示す指標と考えられる。一般にd002が小さいほど結晶が発達していることを表す。
(4)石炭系コークスおよび/または石油系コークス
黒鉛材料は、原料として石炭系コークスおよび/または石油系コークスを用いる。該原料コークスは30℃から100℃までの熱膨張率が2.0×10-6/℃以下であることが好ましい。この熱膨張率は、次の方法で測定できる。原料コークス500gを28メッシュの大きさ以下に粉砕して分級する。28〜60メッシュの大きさの粒60g、60〜200メッシュの大きさの粒32g、および200メッシュの大きさ以下の粒8gを混合し、これにバインダーとなるピッチ25gを加え、125℃のオイルバスで20分間加熱し、均一に混合する。この混合物を冷却し、粉砕して再度28メッシュの大きさ以下にする。得られた粉砕品30gを125℃の加圧成形機に入れ、ゲージ圧450kg/cm2で5分間加圧して成形する。この成形体を磁性ルツボに入れ、それを焼成炉に入れ、室温から1000℃までを5時間で昇温し、次いで1000℃で1時間保持するという条件で焼成した。その後、室温に冷却し、焼成炉から取り出し、焼成品を精密切断機で4.3×4.3×20.0mmに切り出し、熱膨張率測定用のテストピースを得る。テストピースをTMA(熱機械分析装置;例えばセイコー電子製TMA/SS350)を用いて、30〜100℃におけるテストピースの長さ方向の熱膨張率を測定する。
黒鉛材料は上記の原料コークスを、通常、2500℃以上の温度で熱処理して成るものである。熱処理温度の上限は特に限定されないが、3200℃が好ましい。この熱処理は不活性雰囲気下で行うことが好ましい。熱処理においては従来からあるアチソン式黒鉛化炉などを用いることができる。
好適な黒鉛材料からなる粒子は、BET比表面積が好ましくは1〜10m2/g、より好ましくは1〜7m2/gである。
(炭素被覆黒鉛粒子)
炭素粒子(B)は、前記の黒鉛材料からなる粒子と、 その表面に存在する炭素質層とを含有して成るもの(以下、炭素被覆黒鉛粒子と表記することがある。)であってもよい。
表面に存在する炭素質層は、ラマン分光スペクトルで測定される1300〜1400cm-1の範囲にある非晶質成分由来のピークの強度(ID)と1580〜1620cm-1の範囲にある黒鉛成分由来のピークの強度(IG)との比ID/IG(R値)が好ましくは0.1以上、より好ましくは0.2以上、さらに好ましくは0.4以上、特に好ましくは0.6以上である。R値が大きい炭素質層、すなわち非晶質炭素材料からなる層を黒鉛粒子の表面に設けることにより、リチウムイオンの挿入・脱離が容易になり、リチウムイオン電池の急速充放電特性が改善される。
炭素被覆黒鉛粒子は、公知の方法に従って製造することができる。例えば、黒鉛粉末を先ず粉砕し、所定の大きさに微粉化された黒鉛粒子を得る。次いで有機化合物を吹きかけながら前記黒鉛粒子を撹拌する。または奈良機械製ハイブリダイザーなどの装置により黒鉛粒子とピッチやフェノール樹脂などの有機化合物とを混合してメカノケミカル処理を行う。
有機化合物は特に限定されないが、等方性ピッチ、異方性ピッチ、樹脂又は樹脂前駆体若しくはモノマーが好ましい。樹脂前駆体若しくはモノマーを用いた場合は、樹脂前駆体若しくはモノマーを重合して樹脂にすることが好ましい。好適な有機化合物としては、フェノール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、フラン樹脂、セルロース樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリイミド樹脂及びエポキシ樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物が挙げられる。これらのうち、有機化合物としては、石油系ピッチ、石炭系ピッチ、フェノール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、フラン樹脂、セルロース樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリイミド樹脂及びエポキシ樹脂からなる群から選ばれる少なくとも一つが好ましい。有機化合物の付着量によって、黒鉛粒子表面に存在する炭素質層の量を調整することができる。有機化合物の付着量は、黒鉛粒子100質量部に対して、好ましくは0.05〜10質量部、より好ましくは0.1〜10質量部である。炭素質層の量が多すぎると電池容量が低下するおそれがある。
次いで、有機化合物が付着された黒鉛粒子を、好ましくは200℃以上2000℃以下、より好ましくは500℃以上1500℃以下、さらに好ましくは900℃以上1200℃以下で熱処理する。この熱処理によって炭素被覆黒鉛粒子が得られる。熱処理温度が低すぎると有機化合物の炭素化が十分に終了せず炭素粒子(B)に水素や酸素が残留し、それらが電池特性に悪影響を及ぼすことがある。逆に熱処理温度が高すぎると結晶化が進みすぎて充電特性が低下する恐れがある。熱処理は、非酸化性雰囲気で行うことが好ましい。非酸化性雰囲気としては、アルゴンガス、窒素ガスなどの不活性ガスを充満させた雰囲気が挙げられる。熱処理によって炭素被覆黒鉛粒子同士が融着して塊になっていることがあるので、炭素被覆黒鉛粒子を電極活物質として用いるために、上述した粒子径になるように解砕することが好ましい。また、炭素被覆黒鉛粒子のBET比表面積は、好ましくは0.5〜30m2/g、より好ましくは0.5〜10m2/g、さらに好ましくは0.5〜5m2/gである。
さらに、本発明に係る負極活物質は、該負極活物質とバインダーとを含んでなる合剤を銅箔上に塗布し、乾燥させ、次いで加圧成型することによって合剤層を形成し、該合剤層をX線回折法によって測定したときのピーク強度比I(110)/I(004)が、好ましくは0.2以上、より好ましくは0.35以上0.9以下である。該測定法で得られるピーク強度比I(110)/I(004)は黒鉛粉末の配向性を示している。この値が大きいほど配向性は低い。
(炭素繊維が結着された黒鉛粒子)
炭素粒子(B)は、前述の黒鉛粒子または炭素被覆黒鉛粒子の表面に炭素繊維が結着されて成るものであってもよい。炭素繊維としては、気相法炭素繊維、石油ピッチ系炭素繊維、石炭ピッチ系炭素繊維、PAN系炭素繊維などが挙げられる。これらのうち気相法炭素繊維が好ましい。
使用される炭素繊維は、平均繊維径が、好ましくは2〜1000nm、より好ましくは10〜500nm、さらに好ましくは50〜300nm、よりさらに好ましくは70〜200nm、特に好ましくは100〜180nmである。平均繊維径が小さすぎるとハンドリング性が低下する傾向がある。
炭素繊維のアスペクト比は特段の制約は無いが、好ましくは5〜1000、より好ましくは5〜500、さらに好ましくは5〜300、特に好ましくは5〜200である。アスペクト比が5以上であれば繊維状導電材としての機能を発揮し、アスペクト比が1000以下であればハンドリング性が良好である。
また、炭素繊維は、粉末X線回折における002回折線から求めた面間隔d002が好ましくは0.344nm以下、より好ましくは0.339nm以下である。
さらに、炭素繊維は、内部に中空構造を有し、かつ分岐状炭素繊維を含むものであることが好ましい。
気相法炭素繊維は、原料であるベンゼンなどの有機化合物を、フェロセンなどの有機遷移金属化合物からなる触媒とともに、キャリアーガスを用いて高温の反応炉に導入し、気相熱分解させて製造することができる。製造方法としては、例えば基板上に熱分解炭素繊維を生成させる方法(特開昭60−27700号公報)、浮遊状態で熱分解炭素繊維を生成させる方法(特開昭60−54998号公報)、反応炉壁に熱分解炭素繊維を成長させる方法(特許第2778434号公報)などがあり、本発明で使用する気相法炭素繊維はこれらの方法により製造することができる。
このようにして製造される気相法炭素繊維は、このまま炭素粒子(B)用の原料として用いることができるが、気相成長後のそのままの状態では、表面に原料である有機化合物の熱分解物などが付着していたり、炭素繊維の結晶構造が未発達であったりすることがある。そこで、熱分解物などの不純物を除いたり、結晶構造を発達させるために、不活性ガス雰囲気下で熱処理を行うことができる。熱分解物などの不純物を処理するためには、アルゴンなどの不活性ガス中にて約800〜1500℃での熱処理を行うことが好ましい。また、結晶構造を発達させるためには、アルゴンなどの不活性ガス中にて好ましくは2000℃以上、より好ましくは約2000〜3000℃での熱処理を行うことが好ましい。その際に、炭化ホウ素(B4C)、酸化ホウ素(B23)、元素状ホウ素、ホウ酸(H3BO3)、ホウ酸塩などのホウ素化合物を黒鉛化触媒として気相法炭素繊維に混合することができる。ホウ素化合物の添加量は、用いるホウ素化合物の化学的特性または物理的特性に依存するため一概に規定できない。例えば炭化ホウ素(B4C)を使用した場合には、気相法炭素繊維に対して、好ましくは0.05〜10質量%、より好ましくは0.1〜5質量%である。このように処理された気相法炭素繊維として、例えば、「VGCF」(登録商標;昭和電工社製)などの市販品を挙げることができる。
黒鉛粒子または炭素被覆黒鉛粒子の表面に炭素繊維を結着(接着)させる方法に特に制限はない。例えば、炭素繊維を有機化合物に混ぜて、それを黒鉛粒子または炭素被覆黒鉛粒子に付着させ、次いで熱処理を行うことによって、炭素質層の形成過程で炭素繊維を炭素質層に結着させることができる。炭素繊維の量は、黒鉛粒子100質量部に対して、好ましくは0.1〜20質量部、より好ましくは0.1〜15質量部である。0.1質量部以上用いることで、黒鉛粒子表面を広く覆うことができる。黒鉛粒子と炭素繊維との間を導電性を有する炭素質層が繋いでいるので、接触抵抗が小さい。炭素繊維が結着された黒鉛粒子からなる炭素粒子(B)を用いると、炭素繊維を単純に電極へ添加するよりも電池特性を向上させる効果が大きい。
〔粒子(A)と炭素粒子(B)との混合物〕
本発明における混合物は、粒子(A)と炭素粒子(B)とを混合してなるものである。本発明における混合物は、粒子(A)の凝集が解きほぐされて炭素粒子(B)の表面に概ね均一に分散し、炭素粒子(B)の隙間を埋めるように粒子(A)が混ざっているものを含むことが好ましい。また、本発明における混合物は、炭素粒子(B)の表面に粒子(A)が埋め込まれたものを含むことがより好ましい。混合物に粒子(A)が炭素粒子(B)の表面に埋め込まれたものを含むようにするための方法として、高い力学的エネルギーを加えながら混合することが挙げられる。
粒子(A)の量は、炭素粒子(B)100質量部に対して、好ましくは5〜40質量部、より好ましく20〜40質量部、更に好ましくは30〜40質量部である。
本発明における混合物には炭素繊維が混合されていてもよい。混合に用いられる炭素繊維は、繊維径が、好ましくは2〜1000nm、より好ましくは10〜500nm、さらに好ましくは50〜300nm、よりさらに好ましくは70〜200nm、特に好ましくは100〜180nmである。混合に用いられる炭素繊維のその他の特性は黒鉛粒子などに結着させる炭素繊維と同じ特性を有するものであってもよい。炭素繊維の量は炭素粒子(B)100質量部に対して、好ましくは1〜20質量部、より好ましくは0.1〜15質量部、さらに好ましくは0.5〜10質量部である。
粒子(A)、炭素粒子(B)および必要に応じて添加される炭素繊維との混合は、公知の手法によって行うことができる。例えば、乳鉢にて解砕または磨潰しながら混合することができる。ビーズミル、ボールミルなどの粉砕機にて混合することができる。または、奈良機械製ハイブリダイザーなどの装置によりメカノケミカル処理によって混合することができる。
(負極用ペースト)
本発明の一実施形態に係る負極用ペーストは、負極材とバインダーと溶媒と必要に応じて導電助剤などを含むものである。本発明においては負極材として前記混合物を用いる。この負極用ペーストは、例えば、前記負極材とバインダーと溶媒と必要に応じて導電助剤などを混練することによって得られる。負極用ペーストは、シート状、ペレット状などの形状に成形することができる。
バインダーとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンプロピレンターポリマー、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、ブチルゴム、アクリルゴム、イオン伝導率の大きな高分子化合物などが挙げられる。イオン伝導率の大きな高分子化合物としては、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレンオキサイド、ポリエピクロルヒドリン、ポリファスファゼン、ポリアクリロニトリルなどが挙げられる。バインダーの量は、負極材100質量部に対して、好ましくは0.5〜100質量部である。
導電助剤は電極に対し導電性及び電極安定性(リチウムイオンの挿入・脱離における体積変化に対する緩衝作用)を付与する役目を果たすものであれば特に限定されない。例えば、気相法炭素繊維(例えば、「VGCF」昭和電工社製)、導電性カーボン(例えば、「デンカブラック」電気化学工業社製、「Super C65」TIMCAL社製、「Super C45」TIMCAL社製、「KS6L」TIMCAL社製)などが挙げられる。導電助剤の量は、負極材100質量部に対して、好ましくは10〜100質量部である。
溶媒は、特に制限はなく、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、イソプロパノール、水などが挙げられる。溶媒として水を使用するバインダーの場合は、増粘剤を併用することが好ましい。溶媒の量はペーストが集電体に塗布しやすいような粘度となるように調整される。
(負極シート)
本発明の一実施形態に係る負極シートは、バインダーと前記の負極材とを含有するものである。該負極シートは、通常、集電体を有する。
集電体としては、例えば、ニッケル箔、銅箔、ニッケルメッシュまたは銅メッシュなどが挙げられる。
負極シートは、例えば、前記のペーストを集電体に塗布し乾燥させることによって得ることができる。ペーストの塗布方法は特に制限されない。負極シートの厚さは、通常、50〜200μmである。負極シートの厚さが大きくなりすぎると、規格化された電池容器に負極シートを収容できなくなることがある。負極シートの厚さは、ペーストの塗布量によって調整できる。また、ペーストを乾燥させた後、加圧成形することによっても調整することができる。加圧成形法としては、ロール加圧、プレス加圧などの成形法が挙げられる。加圧成形するときの圧力は、好ましくは約100MPa〜約300MPa(1〜3ton/cm2程度)である。
(リチウムイオン電池)
本発明の一実施形態に係るリチウムイオン電池は、非水系電解液および非水系ポリマー電解質からなる群から選ばれる少なくとも一つ、 正極シート、 および前記負極シートを有するものである。
本発明に用いられる正極シートには、リチウムイオン電池に従来から使われていたもの、具体的には正極活物質を含んでなるシートを用いることができる。正極活物質としては、LiNiO2、LiCoO2、LiMn24、LiNi0.34Mn0.33Co0.332、LiFePO4などが挙げられる。
リチウムイオン電池に用いられる非水系電解液および非水系ポリマー電解質は特に制限されない。例えば、LiClO4、LiPF6、LiAsF6、LiBF4、LiSO3CF3、CH3SO3Li、CF3SO3Liなどのリチウム塩を、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、アセトニトリル、プロピロニトリル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、γ−ブチロラクトンなどの非水系溶媒に溶かしてなる有機電解液や;ポリエチレンオキシド、ポリアクリルニトリル、ポリフッ化ビリニデン、およびポリメチルメタクリレートなどを含有するゲル状のポリマー電解質や;エチレンオキシド結合を有するポリマーなどを含有する固体状のポリマー電解質が挙げられる。
また、電解液には、リチウムイオン電池の初回充電時に分解反応が起きる物質を少量添加してもよい。該物質としては、例えば、ビニレンカーボネート、ビフェニール、プロパンスルトンなどが挙げられる。添加量としては0.01〜5質量%が好ましい。
本発明のリチウムイオン電池には正極シートと負極シートとの間にセパレータを設けることができる。セパレータとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィンを主成分とした不織布、クロス、微孔フィルム又はそれらを組み合わせたものなどが挙げられる。
以下に実施例を挙げて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
本実施例においては以下の方法で各種の物性を測定した。
(ラマンR値)
日本分光株式会社製レーザーラマン分光測定装置(NRS−3100)を用いて、励起波長532nm、入射スリット幅200μm、露光時間15秒、積算回数2回、回折格子600本/mmの条件で測定を行った。測定されたスペクトルから1360cm-1付近のピークの強度ID(非晶質成分由来)と1580cm-1付近のピークの強度IG(黒鉛成分由来)の比(ID/IG)を算出した。それをR値として黒鉛化度合いの指標とした。
(熱膨張係数(CTE))
まず、炭素原料500gを振動ミルで28メッシュ以下に粉砕した。この試料を篩い分けて、28〜60メッシュ60g、60〜200メッシュ32g、200メッシュ以下8gの割合で混合し、全量を100gにした。この配合試料100gをステンレス容器に入れ、バインダーピッチ25gを加え、125℃のオイルバスで20分間加熱し均一に混合した。該混合物を冷却し、振動ミルで粉砕し、全量を28メッシュ以下にした。該試料30gを125℃の加圧成型機に入れ、ゲージ圧450kg/cm2で5分間加圧し、成型した。成型品を磁性坩堝に入れ、焼成炉で室温から1000℃まで5時間で昇温し、1000℃で1時間保持して冷却した。この焼成品を精密切断機で4.3×4.3×20.0mmに切断し、テストピースを得た。本テストピースをセイコー電子製TMA(熱機械分析装置)/SS 350で30〜100℃の熱膨張測定を行い、CTEを算出した。
(タッピング密度)
一定量の炭素材料(6.0g)を15mmφの測定用セルに入れ、タッピング装置にセットした。落下高さを46mm、タッピング速度を2秒/回とし、400回自由落下させた後、その体積を測定した。そして質量と体積の関係から嵩密度を算出した。
(d002、LC
粉末X線回折における002回折線から、面間隔d002および結晶子のc軸方向の厚さLCを求めた。
(粒子のアスペクト比(長軸の長さ/短軸の長さ))
粒子のアスペクト比は光学顕微鏡から求めることができるが、簡易的にはシスメックス製のFPIA3000を用い、画像解析で測定してもよい。最大長Dmax/最大長垂直長DNmax(Dmax:粒子画像の輪郭上の2点における最大の長さ;DNmax:最大長に平行な2本の直線で画像を挟んだとき、2直線間を垂直に結ぶ最短の長さ)をアスペクト比とした。測定点数は3000点以上であり、平均値を算出した。
(粒子径)
粉体を極小型スパーテル2杯分、及び非イオン性界面活性剤(トリトン−X;Roche Applied Science 製)2滴を水50mlに添加し、3分間超音波分散させた。この分散液をセイシン企業社製レーザー回折式粒度分布測定器(LMS−2000e)に投入し、体積基準累積粒度分布を測定した。
(I(110)/I(004))
1質量%カルボキシメチルセルロース(CMC)水溶液を、固形分1.5質量%となるように、黒鉛に少量ずつ加えながら混練した。次いで、バインダーとして日本ゼオン社製のスチレンブタジエンラバー(SBR)1.5質量%を加えてさらに混錬し、十分な流動性を持つようにさらに純水を加え、日本精機製作所製脱泡ニーダー(NBK−1)を用いて500rpmで5分間混練し、ペーストを得た。自動塗工機とクリアランス250μmのドクターブレードを用いて、前記ペーストを集電体上に塗布した。ペーストが塗布された集電体を約80℃のホットプレート上に置いて水分を除去した。その後、真空乾燥機にて120℃で6時間乾燥させた。乾燥後、黒鉛とバインダーの合計質量と体積とから割り出される電極密度が1.45±0.05g/cm3になるように一軸プレスにより加圧成形し、負極を得た。得られた負極を適当な大きさに切り取り、XRD測定用のガラスセルに貼り付け、(004)面及び(110)面に帰属されるXRDスペクトルを測定し、それぞれのピーク強度からピーク強度比を算出した。該測定法で得られるピーク強度比I(110)/I(004)は黒鉛粉末の配向性を示している。この値が大きいほど配向性は低い。
(炭素繊維の繊維径およびアスペクト比)
SEM画像解析より平均繊維径および平均繊維長を求めた。また(平均繊維径)/(平均繊維長)を炭素繊維のアスペクト比とした。
実施例1
(炭素粒子(B)の調製)
石油系コークスを、平均粒子径5μmとなるように粉砕した。これをアチソン炉にて3000℃で熱処理して、黒鉛粒子を得た。次いで、黒鉛粒子に質量比1%で石油ピッチを混ぜて、黒鉛粒子表面に石油ピッチを付着させた。その後、不活性雰囲気下1100℃で炭化処理した。BET比表面積が2.6m2/gで、ID/IG(R値)が0.77で、30℃〜100℃の熱膨張係数(CTE)が4.2×10-6/℃で、400回タッピングを行った際の嵩密度が1.20g/cm3で、d002が0.3361nmで、LCが59nmで、粒子のアスペクト比が1.3で、10%粒子径(D10)が2.3μmで、50%粒子径(D50)が5.7μmで且つ90%粒子径(D90)が11.8μmで、I(110)/I(004)が0.40である炭素被覆黒鉛粒子が得られた。
(負極材の調製)
Si粒子(Alfa Aesar、CAS7440-21-3、製品番号44384、一次粒子径50nm以下)を用意した。このSi粒子の体積基準累積粒度分布を図1に示す。10%粒子径(D10)が140nmで、50%粒子径(D50)は210nmで、且つ90%粒子径(D90)は約390nmである。500nm以下の粒子径を有する粒子の割合は全体の98%である。
炭素被覆黒鉛粒子3gおよびSi粒子1gをめのう乳鉢に入れて力をかけないよう気をつけながら30分間混合し、本願発明に係る負極材を得た。
得られた負極材は、図2に示すようにSi粒子が炭素被覆黒鉛粒子とは分離しその隙間を埋めるように分散していた。また、得られた負極材は、図4中の線1に示す粒度分布を有していた。Si粒子に由来するピークと炭素被覆黒鉛粒子に由来するピークが重なったダブルピークであった。なお、図4中の線A-1は粒子(A-1)の粒度分布を示す。
(負極シートの製造)
エチレン・酢酸ビニル・アクリル酸共重合水性エマルジョン(「ポリゾール〔登録商標〕」昭和電工社製)及びカルボキシメチルセルロース(ダイセル社製、品番:1380)を固形分質量比が1:1となるように混合してなるバインダーを用意した。
導電助剤としてTIMCAL製カーボンブラック(SUPER C65)を用意した。
前記の負極材100質量部、バインダー100質量部、及び導電助剤85.7質量部を混ぜ合わせ、これに粘度調整のための水を適量加え、自転・公転ミキサー(シンキー社製)にて混練し負極用ペーストを得た。
前記の負極用ペーストを負極層の厚さが120μmとなるよう銅箔上に塗布した。これを90℃で3時間乾燥させた。得られたシートから直径15mmのシート片を打ち抜いた。シート片を50℃で12時間真空乾燥させて、負極シートを得た。
(評価用電池の作製)
露点−80℃以下の乾燥アルゴンガス雰囲気に保ったグローブボックス内で下記の操作を実施した。
2032型コインセル(直径20mm、厚み3.2mm)を用意した。
厚み0.1mmのリチウム箔から直径15mmの箔片を打ち抜いた。これを正極シートとした。正極シートをSUS製スペーサーにポンチで軽く圧着させた。これをコインセルキャップに入れた。次に電解液をコインセルに注入した。その後、セパレータ(セルガード社製、品番:2500)および負極シートをこの順で載せ、コインセルケースをコインセルキャップとかしめて密封し、評価用リチウムイオン電池を得た。
なお、電解液は、エチレンカーボネート、メチルエチルカーボネート、及びジエチルカーボネートが体積比で3:5:2の割合で混合された溶媒にビニレンカーボネートを1質量%混合し、さらにこれに電解質LiPF6を1mol/Lの濃度で溶解させて得られた液である。
(充放電試験)
評価用リチウムイオン電池に、レストポテンシャルから25mVまでを40mA/gで定電流充電した。次いで40mA/gで定電流放電を行い、2.0Vでカットオフした。この充放電操作を1サイクルとして20サイクル行った。1サイクル目の充電容量(初期充電容量)および1サイクル目の放電容量(初期放電容量)と20サイクル目の放電容量を測定した。それらの結果を表1に示す。
表1中、初期効率は初期充電容量に対する初期放電容量の割合であり、放電量維持率は初期放電容量に対する20サイクル目の放電容量の割合である。
実施例2
石油系コークスを、平均粒子径5μmとなるように粉砕した。これをアチソン炉にて3000℃で熱処理して、BET比表面積が3.2m2/gで、ID/IG(R値)が0.06で、30℃〜100℃の熱膨張係数(CTE)が4.2×10-6/℃で、400回タッピングを行った際の嵩密度が1.20g/cm3で、d002が0.3361nmで、LCが61nmで、粒子のアスペクト比が1.3で、10%粒子径(D10)が2.5μmで、50%粒子径(D50)が5.1μmで且つ90%粒子径(D90)が12.3μmで、I(110)/I(004)が0.75である黒鉛粒子を得た。
実施例1で用いた炭素被覆黒鉛粒子をこの黒鉛粒子に変えた以外は実施例1と同じ手法で負極材を得た。
得られた負極材は、図3に示すようにSi粒子が黒鉛粒子の隙間を埋めるように分散していた。また、得られた負極材は、図4中の線2に示す粒度分布を有していた。Si粒子に由来するピークと黒鉛粒子に由来するピークが重なったダブルピークであった。なお、図4中の線A-1は粒子(A-1)の粒度分布を示す。
実施例1における負極材をここで得られた負極材に変えた以外は実施例1と同じ手法で評価用リチウムイオン電池を作製し、充放電試験を行った。その結果を表1に示す。
比較例1
実施例1で用いた炭素被覆黒鉛粒子を市販の天然黒鉛粒子に変えた以外は、実施例1と同じ手法で負極材を得た。
実施例1における負極材をここで得られた負極材に変えた以外は実施例1と同じ手法で評価用リチウムイオン電池を作製し、充放電試験を行った。その結果を表1に示す。
なお、天然黒鉛粒子は、BET比表面積が1.8m2/gで、ID/IG(R値)が0.23で、30℃〜100℃の熱膨張係数(CTE)が0.95×10-6/℃で、400回タッピングを行った際の嵩密度が1.10g/cm3で、d002が0.3355nmで、LCが109nmで、10%粒子径(D10)が9.6μmで、50%粒子径(D50)が16.8μmで且つ90%粒子径(D90)が28.1μmで、I(110)/I(004)が0.02であった。
Figure 2017063040
表1に示すとおり、本発明の負極材(実施例1及び2)は、高い初期効率を持ち且つ20回目の放電容量維持率が93%以上であることがわかる。一方、従来の製法で得られる負極材(比較例1)は、高い初期効率を有するが、20回目の放電容量維持率が低いことがわかる。
実施例3
実施例1で得られた炭素被覆黒鉛粒子3gおよびSi粒子1gをめのう乳鉢に入れ、力学的エネルギーをかけて押し潰しながら3分間混合して、本願発明に係る負極材を得た。
得られた負極材は、図5に示すように、Si粒子が凝集した部分とSi粒子の凝集が解かれ炭素被覆黒鉛粒子表面に埋め込まれるように分散した部分とに分かれていた。実施例1における負極材をここで得られた負極材に変えた以外は実施例1と同じ手法で評価用リチウムイオン電池を作製し、充放電試験を行った。その結果を表2に示す。
実施例4
実施例1で得られた炭素被覆黒鉛粒子3gおよびSi粒子1gを自転・公転ミキサー(シンキー社製)に入れ、更に直径3mmのジルコニアボール80gを入れて2000rpmで3分間メカノケミカルに混合し本願発明に係る負極材を得た。
得られた負極材は、図6に示すように、Si粒子の凝集が解かれ炭素被覆黒鉛粒子表面に埋め込まれるように分散していた。実施例1における負極材をここで得られた負極材に変えた以外は実施例1と同じ手法で評価用リチウムイオン電池を作製し、充放電試験を行った。その結果を表2に示す。
Figure 2017063040
表2に示すとおり、本発明の負極材(実施例3及び4)は、実施例1及び2に比べて更に高い初期効率を持ち且つ20回目の放電容量維持率が93%以上であることがわかる。これは、単純に混合した場合よりも力学的エネルギーをかけてSi粒子を黒鉛粒子に埋め込むよう混合した場合の方が、Si粒子の膨張・収縮を緩和する効果が大きいことによると考えられる。

Claims (10)

  1. リチウムを吸蔵・放出可能な元素を含有する粒子(A)と、炭素粒子(B)との混合物からなるリチウムイオン電池用負極材であって、
    前記粒子(A)は、体積基準累積粒度分布における90%粒子径が500nm以下であり、
    前記炭素粒子(B)は、黒鉛材料からなる粒子を含有し、且つ
    黒鉛の配向性を示すピーク強度比I(110)/I(004)が0.2以上である
    リチウムイオン電池用負極材。
  2. 黒鉛の配向性を示すピーク強度比I(110)/I(004)が0.35以上0.9以下である請求項1に記載のリチウムイオン電池用負極材。
  3. 前記黒鉛材料は、30℃〜100℃の熱膨張係数(CTE)が、4.0×10-6/℃以上5.0×10-6/℃以下である請求項1または2に記載のリチウムイオン電池用負極材。
  4. 繊維径が2〜1000nmで且つアスペクト比が10〜15000である炭素繊維をさらに含む請求項1乃至3のいずれかひとつに記載のリチウムイオン電池用負極材。
  5. 前記粒子(A)の量が、前記炭素粒子(B)100質量部に対して5〜40質量部である請求項1乃至4のいずれかひとつに記載のリチウムイオン電池用負極材。
  6. 前記リチウムを吸蔵・放出可能な元素が、Si、Sn、GeおよびInからなる群から選ばれる少なくとも一つである請求項1乃至5のいずれかひとつに記載のリチウムイオン電池用負極材。
  7. 前記炭素粒子(B)は、前記黒鉛材料からなる粒子と、その表面に存在する炭素質層とを含有して成る炭素被覆黒鉛粒子であり、
    該炭素質層は、ラマン分光スペクトルで測定される1300〜1400cm-1の範囲にあるピークの強度(ID)と1580〜1620cm-1の範囲にあるピークの強度(IG)との比ID/IG(R値)が0.1以上である、請求項1乃至6のいずれかひとつに記載のリチウムイオン電池用負極材。
  8. 請求項1乃至7のいずれかひとつに記載のリチウムイオン電池用負極材とバインダーとを含む負極シート。
  9. 非水系電解液および非水系ポリマー電解質からなる群から選ばれる少なくも一つ、
    正極シート、および
    請求項8に記載の負極シートを有するリチウムイオン電池。
  10. 前記粒子(A)と、前記炭素粒子(B)とを、力学的エネルギーをかけて該粒子(A)の凝集を解しつつ該炭素粒子(B)に該粒子(A)を埋め込むように混合する工程を有する請求項1乃至7のいずれかひとつに記載のリチウムイオン電池用負極材の製造方法。
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