JP2016199481A - 褐色脂肪細胞分化誘導剤及びその用途 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】プレニル桂皮酸誘導体を有効成分として含む、褐色脂肪細胞分化誘導剤が提供される。好ましい一態様では、プレニル桂皮酸誘導体とクルクミン若しくはクルクミン誘導体が併用される。
【選択図】なし
Description
以上の成果に基づき、以下の発明を提供する。尚、上記の通り、本発明者はアルテピリンCとその類縁化合物、及びクルクミンとその類縁化合物が糖尿病の予防・抑制に有効であることを報告したが、本発明は新たな知見に基づき新規な用途(褐色脂肪細胞化及びそれを利用した抗肥満)を提供するものであり、過去の報告とは一線を画する。
[1]プレニル桂皮酸誘導体を有効成分として含む、褐色脂肪細胞分化誘導剤。
[2]プレニル桂皮酸誘導体が以下の化学式(化1)で表されることを特徴とする、[1]に記載の褐色脂肪細胞分化誘導剤、
[3]プレニル桂皮酸誘導体が、以下のいずれかの化学式で表される化合物である、[1]に記載の褐色脂肪細胞分化誘導剤。
[5][1]〜[4]のいずれか一項に記載の褐色脂肪細胞分化誘導剤を含む、肥満の予防又は治療用組成物。
[6]医薬、医薬部外品、食品又は化粧料である、[5]に記載の組成物。
本発明の第1の局面は褐色脂肪細胞分化誘導剤(以下、説明の便宜上「分化誘導剤」とも呼ぶ)に関する。「褐色脂肪細胞分化誘導剤」とは、褐色脂肪細胞への分化能を有する細胞(即ち前駆細胞又は幹細胞。典型的には、筋・褐色脂肪前駆細胞又は脂肪前駆細胞)に作用し、褐色脂肪細胞に分化するように働きかける薬剤をいう。褐色脂肪細胞分化誘導剤を使用すると、褐色脂肪細胞への分化が促進される結果、褐色脂肪細胞数が増大する。
褐色脂肪細胞は中性脂肪を燃焼して過剰エネルギーを消費する特殊な細胞であり、その減少が肥満の原因となることが明らかとなってきた。従って、褐色脂肪細胞を増加させることは、肥満の予防・治療に有効な手段となる。そこで本発明の第2の局面は、肥満の予防又は治療用の組成物を提供する。本発明の組成物の形態は特に限定されないが、好ましくは医薬、医薬部外品、食品又は化粧料である。即ち、本発明は好ましい態様として、本発明の褐色脂肪細胞分化誘導剤を有効成分として含有する医薬組成物、医薬部外品組成物、食品組成物、及び化粧料組成物を提供する。
本発明における「医薬」及び「医薬部外品」は、標的疾患に対する治療的又は予防的効果を示す薬剤組成物である。治療的効果には、標的疾患に特徴的な症状又は随伴症状を緩和すること(軽症化)、症状の悪化を阻止ないし遅延すること等が含まれる。後者については、重症化を予防するという点において予防的効果の一つと捉えることができる。このように、治療的効果と予防的効果は一部において重複する概念であり、明確に区別して捉えることは困難であり、またそうすることの実益は少ない。尚、予防的効果の典型的なものは、標的疾患に特徴的な症状や病態の発現(発症)又は再発を阻止ないし遅延することである。尚、標的疾患に対して何らかの治療的効果又は予防的効果、或いはこの両者を示す限り、本発明の医薬組成物ないし医薬部外品組成物に該当する。
上記の通り本発明の一態様は、本発明の分化誘導剤を含有する食品組成物である。本発明での「食品組成物」の例として一般食品(穀類、野菜、食肉、各種加工食品、菓子類、牛乳、清涼飲料水、アルコール飲料等)、栄養補助食品(サプリメント、栄養ドリンク等)、食品添加物、愛玩動物用食品、愛玩動物用栄養補助食品を挙げることができる。栄養補助食品又は食品添加物の場合、粉末、顆粒末、タブレット、ペースト、液体等の形状で提供することができる。食品組成物の形態で提供することによって、本発明の有効成分を日常的に摂取したり、継続的に摂取したりすることが容易となる。
上記の通り本発明の一態様は、本発明の分化誘導剤を有効成分として含有する化粧料組成物である。本発明の化粧料組成物は、本発明の分化誘導剤と、化粧料に通常使用される成分・基材(例えば、各種油脂、ミネラルオイル、ワセリン、スクワラン、ラノリン、ミツロウ、変性アルコール、パルミチン酸デキストリン、グリセリン、グリセリン脂肪酸エステル、エチレングリコール、パラベン、カンフル、メントール、各種ビタミン、酸化亜鉛、酸化チタン、安息香酸、エデト酸、カミツレ油、カラギーナン、キチン末、キトサン、香料、着色料など)を配合することによって得ることができる。
(1)マウスC3H10t1/2細胞を用いた褐色脂肪細胞化誘導評価
C3H10t1/2細胞は10% FBS含有DMEM(Dulbecco’s modified eagle’s medium, high glucose、SIGMA)を用い、CO2インキュベーター内(37℃、CO2濃度5%)で培養した。細胞がハイパーコンフルエントになった時点で、コントロール群として、分化誘導剤として最終濃度がそれぞれ2μM インスリン(Insulin)(シグマ社)、1μM デキサメタソン(dexamethasone)(和光純薬)、0.5mM 3-イソブチル-1-メチルキサンチン(3-isobutyl-1-methylxanthine)(和光純薬)、3 nM T3 (トリヨードサイロニン;triiodothyronine)(和光純薬)を含む10% FBS含有DMEMに培地交換し(0日目とする)、2日間培養した。処理群は、コントロール群と同様の試薬添加培地にさらにアルテピリンC(ArtC);((E)-3-(4-hydroxy-3,5-bis(3-methylbut-2-enyl)phenyl)acrylic acid)あるいは、クルクミン、もしくはArtCとクルクミンを所定の最終濃度となるように添加しコントロールと同様に2日間培養した。その後コントロール群は2μM インスリン、3 nM T3含有10% FBS含有DMEMに培地交換して(3日目)培養を続け、2日間ごとに同様の培地に交換して6日間培養した(8日目)。処理群は、コントロール群と同様の試薬添加培地にさらにArtC又はクルクミン、或いはこれらの両者を所定の最終濃度となるように添加しコントロールと同様に2日間ごとに培地に交換して6日間培養した(8日目)。
C57BL/6Jマウス(雄、8〜9週齢、8匹:SLC)の鼠径部白色脂肪組織(iWAT)を採取した。採取したiWATをはさみで細かくした後、コラゲナーゼ溶液(TypeII, シグマ社)を加え37℃の恒温槽で30分間消化させた。その後遠心分離を行い、沈殿として得られるstromal vascular fraction:SVF画分を10%FBS-DMEMで懸濁し、細胞数が1.0×106 生細胞/wellになるように調製して12 wellコラーゲンコートプレート(コーニング社)に播き、CO2インキュベーター内に静置し培養した。細胞がハイパーコンフルエントになった時点で、(1)のC3H10t1/2細胞と同様に分化誘導を行い、コントロール群と処理群との間で褐色脂肪細胞化マーカー遺伝子発現量を比較した。但し分化誘導期間は11日間とした。
培養終了後、培地を取り除き、細胞をPBS(phosphate buffered saline)で洗浄した後に、1ウェルあたり1mLのQIAZOL(キアゲン社)を加え、セルスクレイパーで細胞を回収し、全量を滅菌済みの1.5 mL容チューブに加えてヴォルテックスミキサーでよく混合して5分間室温で静置した。その後、200μLのクロロホルムを加えてヴォルテックスミキサーでよく混合した後、そのまま室温で5分間静置した。次に、12000×g、4℃で15分間遠心分離し、水層を新しい1.5 mL容チューブに回収した。回収した液に同量のイソプロパノールを加えてよく混合し、室温で5分間静置した。次に、12000×g、4℃で15分間遠心分離し、上清を取り除いた。さらに1mLの冷70%エタノールを加えて軽く混合した後、12000×g、4℃で5分間遠心分離し、上清を取り除いた。そのまま沈殿を室温で5分間風乾させた。次に、沈殿にジエチルピロカーボネート(DEPC)で処理した水(DEPC処理水)20μLを加えてピペッティングを行い、よく混合した。分光光度計(NanoDrop ND-1000)を用いて、260nmにおける吸光度を測定し、RNA濃度を定量した。
ライフテクノロジー社のHigh Capacity cDNA Reverse Transcription Kitを用いて行った。得られたRNA 1μgを含む、13.2μLのDEPC処理水、2μLの10×reverse transcription buffer (ライフテクノロジー社)、0.8μLの100mM 25×dNTP Mixture (ライフテクノロジー社)、1μLの20U/μL ribonuclease inhibitor(ライフテクノロジー社)、1μLの50 U/μL MuLV reverse transcriptase(ライフテクノロジー社)、2μLの50μM 10×random primer(ライフテクノロジー社)を加え(計20μL)、25℃で10分間、37℃で120分間、85℃で5秒間反応させ、cDNAを合成した。
得られたcDNA 1μgを含む11.25μLのDEPC処理水、12.5μLのTakara premix Ex Taq(タカラバイオ社)、ROX reference dye(タカラバイオ社)及び1.25μLの褐色脂肪細胞化マーカー遺伝子発現定量用のマウス用Taqman (R) Gene expression Assays(ライフテクノロジー社)を加え(計25μL)、7300 real-time PCRシステム(アプライドバイオシステムズ社)のプロトコールに従ってリアルタイムPCRによる遺伝子発現量測定を行なった。各褐色脂肪細胞化マーカー遺伝子発現量のmRNA量と内因性コントロールとしてTATA box binding protein (TBP)遺伝子発現量のmRNA量を測定し、各褐色脂肪細胞化マーカー遺伝子発現量のmRNA量をTBP遺伝子発現量のmRNA量で割って補正した値を各褐色脂肪細胞化マーカー遺伝子発現量とし、コントロールの発現量を1.0とした時の各処理群の相対的発現量で表した。以下に使用したTaqman (R) Gene expression AssaysのAssayIDと測定した遺伝子を示す。
uncoupling protein 1 (UCP1)
Assay ID: Mm01244861_m1
cell death-inducing DNA fragmentation factor, alpha subunit-like effector A (Cidea)
Assay ID: Mm00432554_m1
cytochrome c oxidase subunit 8b (Cox8b)
Assay ID: Mm00432648_m1
elongation of very long chain fatty acids protein 3 (Elovl3)
Assay ID: Mm00468164_m1
TATA box binding protein (TBP)
Assay ID: Mm00446971_m1
C3H10t1/2細胞において、ArtCの添加(1μM、5μM、10μM)は、コントロールと比較して濃度依存的に褐色脂肪細胞化マーカー(UCP1、Cidea、Cox8b、Elovl3)遺伝子発現量を有意に上昇させ、褐色脂肪細胞化を誘導した(図2)。同様の細胞系においてクルクミン単独の投与(10μM)は褐色脂肪細胞化マーカー遺伝子の発現量を有意に上昇させないが、ArtC(10μM)とクルクミン(10μM)の同時投与はArtC(10μM)単独投与の場合と比較して褐色脂肪細胞化マーカー(UCP1、Cidea、Elovl3)遺伝子発現量を有意に上昇させた(図3)。
Claims (6)
- プレニル桂皮酸誘導体を有効成分として含む、褐色脂肪細胞分化誘導剤。
- クルクミン若しくはクルクミン誘導体、又はその塩を有効成分として更に含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の褐色脂肪細胞分化誘導剤。
- 請求項1〜4のいずれか一項に記載の褐色脂肪細胞分化誘導剤を含む、肥満の予防又は治療用組成物。
- 医薬、医薬部外品、食品又は化粧料である、請求項5に記載の組成物。
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