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JP2016026865A - 分離膜エレメント - Google Patents

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JP2016026865A JP2015107212A JP2015107212A JP2016026865A JP 2016026865 A JP2016026865 A JP 2016026865A JP 2015107212 A JP2015107212 A JP 2015107212A JP 2015107212 A JP2015107212 A JP 2015107212A JP 2016026865 A JP2016026865 A JP 2016026865A
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洋帆 広沢
Hiroho Hirozawa
洋帆 広沢
高木 健太朗
Kentaro Takagi
健太朗 高木
山田 博之
Hiroyuki Yamada
博之 山田
宜記 岡本
Yoshiki Okamoto
宜記 岡本
由恵 丸谷
Yoshie Marutani
由恵 丸谷
田中 祐之
Sukeyuki Tanaka
祐之 田中
将弘 木村
Masahiro Kimura
将弘 木村
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Abstract

【課題】
本発明は、特に長期間にわたり高い圧力をかけて分離膜エレメントを運転したときの分離除去性能を安定化させることのできる分離膜エレメントを提供することにある。
【解決手段】
本発明の分離膜エレメントは、集水管と、分離膜本体と前記の分離膜本体の透過側の面に固着された複数の突起からなる透過側流路材とを備えた前記の集水管の周囲に巻囲された分離膜と、前記の分離膜の供給側の面に対向するように配置された供給側流路材とを備えてなる分離膜エレメントであって、前記の突起の高さが、0.15mm以上0.35mm以下であり、かつ、前記の分離膜の巻囲方向において、前記の分離膜の外側端部から分離膜の長さの20%以内の領域に配置された突起の平均高さが、前記の分離膜の内側端部から前記の分離膜の長さの50%以内の領域に配置された突起の平均高さの1.05倍以上2.0倍以下の分離膜エレメントである。
【選択図】 図5

Description

本発明は、液体および気体等の流体に含まれる成分を分離するために好適に使用される分離膜エレメントに関するものである。
海水およびかん水などに含まれるイオン性物質を除くための技術においては、近年、省エネルギーおよび省資源のためのプロセスとして、分離膜エレメントによる分離法の利用が拡大している。分離膜エレメントによる分離法に使用される分離膜は、その孔径や分離機能の点から、精密ろ過膜、限外ろ過膜、ナノろ過膜、逆浸透膜および正浸透膜に分類される。これらの膜は、例えば、海水、かん水および有害物を含んだ水などからの飲料水の製造、工業用超純水の製造、並びに排水処理および有価物の回収などに用いられており、目的とする分離成分および分離性能によって使い分けられている。
分離膜エレメントとしては様々な形態があるが、分離膜の一方の面に原流体を供給し、他方の面から透過流体を得る点では共通している。分離膜エレメントは、束ねられた多数の分離膜を備えていることにより、1個の分離膜エレメントあたりの膜面積が大きくなるように、具体的には1個の分離膜エレメントあたりに得られる透過流体の量が大きくなるように形成されている。分離膜エレメントとしては、用途や目的にあわせて、スパイラル型、中空糸型、プレート・アンド・フレーム型、回転平膜型および平膜集積型などの各種の形状の分離膜エレメントが提案されている。
例えば、逆浸透ろ過には、スパイラル型分離膜エレメントが広く用いられる。スパイラル型分離膜エレメントは、中心管とその中心管の周囲に巻き付けられた積層体とを備えている。積層体は、原流体を分離膜表面に供給する供給側流路材、原流体に含まれる成分を分離する分離膜、および分離膜を透過し供給側流体から分離された透過側流体を中心管へと導くための透過側流路材が積層されることで形成されている。このスパイラル型分離膜エレメントは、原流体に圧力を付与することができるので、透過流体を多く取り出すことができる点で好ましく用いられている。
また、スパイラル型分離膜エレメントでは、一般的に、供給側流体の流路を形成させるために、供給側流路材として主に高分子化合物からなるネットが使用される。また、分離膜としては、積層型の分離膜が用いられる。積層型の分離膜は、供給側から透過側に積層されたポリアミドなどの架橋高分子化合物からなる分離機能層、ポリスルホンなどの高分子化合物からなる多孔性樹脂層、ポリエチレンテレフタレートなどの高分子化合物からなる不織布を備える分離膜である。また、透過側流路材としては、分離膜の落ち込みを防き、かつ透過側の流路を形成させる目的で、供給側流路材よりも間隔の細かいトリコットと呼ばれる編み物部材が使用される。
近年、造水コストの低減への要求の高まりから、膜エレメントの高性能化が求められている。例えば、分離膜エレメントの分離性能の向上および単位時間あたりの透過流体量の増大のために、各流路部材等の分離膜エレメント部材の性能向上が提案されている。具体的には、樹脂を分離膜の透過側に、接着力が1N/m以上となるように配置することにより、エレメントの造水量を高めた分離膜エレメントが提案されている(特許文献1参照。)。
国際公開第2013/047744号
しかしながら、上記した従来の分離膜エレメントは、長期間にわたり高圧で運転を行った際のエレメントの構造安定性がなお十分とは言えないという課題がある。
そこで、本発明の目的は、特に長期間にわたり高い圧力をかけて分離膜エレメントを運転したときの分離除去性能を安定化させることのできる分離膜エレメントを提供することにある。
本発明は、前記の課題を解決せんとするものであり、本発明の分離膜エレメントは、 集水管と、分離膜本体と前記分離膜本体の透過側の面に固着された複数の突起からなる透過側流路材とを備えた前記集水管の周囲に巻囲された分離膜と、前記分離膜の供給側の面に対向するように配置された供給側流路材とを備えてなる分離膜エレメントであって、前記突起の高さが、0.15mm以上0.35mm以下であり、かつ、前記分離膜の巻囲方向において、前記分離膜の外側端部から分離膜の長さの20%以内の領域に配置された突起の平均高さが、前記分離膜の内側端部から前記分離膜の長さの50%以内の領域に配置された突起の平均高さの1.05倍以上2.0倍以下の分離膜エレメントである。
本発明の分離膜エレメントの好ましい態様によれば、前記の分離膜の巻囲方向内側端部から前記の分離膜の長さの50%以内の領域に配置された突起の高さの変動係数は、0%以上10%以下である。
本発明によれば、高効率かつ安定した透過側流路を形成することができ、分離成分の除去性能と高い透過性能を有するだけでなく、巻囲性に優れエレメントの寸法安定性が良好な高性能で高効率の分離膜エレメントを得ることができる。
図1は、本発明で用いられる分離膜リーフの一形態を示す分解斜視図である。 図2は、本発明で用いられる分離膜の長さ方向(第2方向)において連続的に設けられた流路材を備える分離膜を示す平面図である。 図3は、本発明で用いられる分離膜の長さ方向(第2方向)において不連続的に設けられた流路材を備える分離膜を示す平面図である。 図4は、図2および図3の分離膜の断面図である。 図5は、集水管の周囲に分離膜を巻囲した本発明の分離膜エレメントの一形態を示す展開斜視図である。 図6は、本発明で用いられる分離膜の横面模式図である。 図7は、本発明で用いられる分離膜本体の概略構成を示す断面図である。 突起物を固着させたシートを膜リーフに配置する方法の一例である。
次に、本発明の分離膜エレメントの実施形態について、詳細に説明する。本発明の分離膜エレメントは、集水管と、分離膜本体と前記分離膜本体の透過側の面に固着された複数の突起からなる透過側流路材とを備えた前記集水管の周囲に巻囲された分離膜と、前記分離膜の供給側の面に対向するように配置された供給側流路材とを備えてなる分離膜エレメントであって、前記突起の高さが、0.15mm以上0.35mm以下であり、かつ、前記分離膜の巻囲方向において、前記分離膜の外側端部から分離膜の長さの20%以内の領域に配置された突起の平均高さが、前記分離膜の内側端部から前記分離膜の長さの50%以内の領域に配置された突起の平均高さの1.05倍以上2.0倍以下の分離膜エレメントである。
〔1.分離膜〕
(1−1)分離膜の概要
分離膜とは、分離膜表面に供給される流体中の成分を分離し、分離膜を透過した透過流体を得ることができる膜である。分離膜は、分離膜本体と分離膜本体上に配置された流路材とを備えている。
このような分離膜の例として、本発明の実施形態の分離膜1は、図1に示されるように、分離膜本体2と透過側流路材3とを備えている。そして分離膜本体2は、供給側の面21と透過側の面22とを備えている。
本発明において、分離膜本体の「供給側の面」とは、分離膜本体2の2つの面のうち、原流体が供給される側の表面を意味する。また、「透過側の面」とは、その逆側の面を意味する。後述するように、分離膜本体2が、図7に示されるように、基材201および分離機能層203を備える場合は、一般的に、分離機能層側の面が供給側の面21であり、基材側の面が透過側の面22である。
透過側流路材3は、透過側の面22上に流路を形成するように設けられている。分離膜1の各部の詳細については、後述する。
図中に、x軸、y軸およびz軸の方向軸を示す。x軸を第1方向、y軸を第2方向と称することがある。図1等に示されるように、分離膜本体2は長方形であり、第1方向および第2方向は、分離膜本体2の外縁に平行である。第1方向を幅方向と称し、第2方向を長さ方向と称することがある。
(1−2)分離膜本体
<概要>
分離膜本体としては、使用方法と目的等に応じた分離性能を有する膜が用いられる。分離膜本体は、単一層によって形成されていてもよく、分離機能層と基材とを備える複合膜の構成とすることもできる。また、図7に示されるように、複合膜においては、分離機能層203と基材201との間に、多孔性支持層202を形成させることができる。
<分離機能層>
分離機能層の厚みは、分離性能と透過性能の点で5nm以上3000nm以下であることが好ましい。特に、逆浸透膜、正浸透膜およびナノろ過膜では、厚みは5nm以上300nm以下であることが好ましい。
分離機能層の厚みの測定は、これまでの分離膜の膜厚測定法に準ずることができる。例えば、分離膜を樹脂により包埋し、それを切断することで超薄切片を作製し、得られた切片に染色などの処理を行う。その後、透過型電子顕微鏡により観察することにより、厚みの測定が可能である。また、分離機能層がひだ構造を有する場合、多孔性支持層より上に位置するひだ構造の断面長さ方向に50nm間隔で測定し、ひだの数を20個測定しその平均から厚みを求めることができる。
分離機能層は、分離機能および支持機能の両方を有する層であってもよく、分離機能のみを備えていているように構成することもできる。「分離機能層」とは、少なくとも分離機能を備える層を指す。
分離機能層が分離機能および支持機能の両方を有する場合、分離機能層としては、セルロース、ポリフッ化ビニリデン、ポリエーテルスルホンおよびポリスルホン等を主成分として含有する層が好ましく適用される。
一方、分離機能層しては、孔径制御が容易であり、かつ耐久性に優れるという観点で、架橋高分子化合物が好ましく使用される。特に、原流体中の成分の分離性能に優れるという観点で、多官能アミンと多官能酸ハロゲン化物とを重縮合させてなるポリアミド分離機能層、および有機無機ハイブリッド機能層等が好適に用いられる。
上記の分離機能層は、多孔性支持層上でモノマーを重縮合することによって形成することが可能である。
例えば、分離機能層は、ポリアミドを主成分として含有することができる。このような膜は、公知の方法により、多官能アミンと多官能酸ハロゲン化物とを界面重縮合することにより形成される。例えば、多孔性支持層に多官能アミン水溶液を塗布し、余分なアミン水溶液をエアーナイフなどで除去し、その後、多官能酸ハロゲン化物を含有する有機溶媒溶液を塗布することにより、ポリアミド分離機能層が得られる。また、分離機能層は、Si元素などを有する有機−無機ハイブリッド構造を有することができる。
いずれの分離機能層についても、使用前に、例えばアルコール含有水溶液やアルカリ水溶液によって膜の表面を親水化させることができる。
<多孔性支持層>
多孔性支持層は、分離機能層を支持する層であり、多孔性樹脂層とも言い換えことができる。
多孔性支持層に使用される材料やその形状としては、例えば、多孔性樹脂によって基板上に形成させて構成することができる。多孔性支持層としては、ポリスルホン、酢酸セルロース、ポリ塩化ビニル、およびエポキシ樹脂、あるいはそれらを混合し、または積層したものが使用される。化学的、機械的および熱的に安定性が高く、孔径が制御しやすいという観点から、ポリスルホンを使用することが好ましい。
多孔性支持層は、分離膜に機械的強度を与え、かつイオン等の分子サイズの小さな成分に対して分離膜のような分離性能を有さない。多孔性支持層の有する孔のサイズおよび孔の分布については、例えば、多孔性支持層は、均一で微細な孔を有してもよく、あるいは分離機能層が形成される側の表面からもう一方の面にかけて径が徐々に大きくなるような孔径の分布を有する構成とすることができる。
また、いずれの場合でも、分離機能層が形成される側の表面で原子間力顕微鏡または電子顕微鏡などを用いて測定された細孔の投影面積円相当径は、1nm以上100nm以下であることが好ましい。特に、界面重合反応性および分離機能層の保持性の点で、多孔性支持層において分離機能層が形成される側の表面における孔は、3nm以上50nm以下の投影面積円相当径を有することが好ましい。
多孔性支持層の厚みは、分離膜に強度を与えるため等の理由から、20μm以上500μm以下の範囲にあることが好ましく、より好ましくは30μm以上300μm以下の範囲である。
多孔性支持層の上記の厚みと孔径は、平均値であり、多孔性支持層の厚みは、断面観察で厚み方向に直交する方向に20μm間隔で測定し、20点測定の平均値である。また、孔径は、200個の孔について測定された各投影面積円相当径の平均値である。
次に、多孔性支持層の形成方法について説明する。多孔性支持層は、例えば、上記のポリスルホンのN,N−ジメチルホルムアミド(以降、DMFと記載することがある。)溶液を、後述する基材、例えば密に織ったポリエステル布あるいは不織布の上に一定の厚さに注型し、それを水中で湿式凝固させることによって製造することができる。
多孔性支持層は、”オフィス・オブ・セイリーン・ウォーター・リサーチ・アンド・ディベロップメント・プログレス・レポート”No.359(1968)に記載された方法に従って形成される。所望の形態の多孔性支持層を得るために、ポリマー濃度、溶媒の温度および貧溶媒は、適宜調整することが可能である。
<基材>
分離膜本体は、分離膜本体の強度と寸法安定性等の観点から基材を有することができる。基材としては、強度、凹凸形成能および流体透過性の点で、繊維状基材を用いることが好ましい。
基材としては、長繊維不織布および短繊維不織布がいずれも好ましく用いることができる。特に、長繊維不織布は、優れた製膜性を有するので、高分子重合体の溶液を流延させた際に、その溶液が過浸透により裏抜けすること、多孔性支持層が剥離すること、さらには基材の毛羽立ち等により膜が不均一化すること、およびピンホール等の欠点が生じることを抑制することができる。
また、基材が熱可塑性連続フィラメントにより構成される長繊維不織布からなることにより、短繊維不織布と比べて、高分子重合体溶液流延時に繊維の毛羽立ちによって起きる不均一化および膜欠点の発生を抑制することができる。さらに、分離膜は、連続製膜されるときに、製膜方向に対し張力がかけられるので、寸法安定性に優れた長繊維不織布を基材として用いることが好ましい。
長繊維不織布は、成形性と強度の点で、多孔性支持層とは反対側の表層における繊維が、多孔性支持層側の表層の繊維よりも縦配向であることが好ましい。そのような構造にすることにより、強度を保つことで膜破れ等を防ぐ高い効果が実現されるだけでなく、分離膜に凹凸を付与する際の多孔性支持層と基材とを含む積層体としての成形性も向上し、分離膜表面の凹凸形状が安定する。
より具体的には、長繊維不織布の多孔性支持層とは反対側の表層における繊維配向度は、0°以上25°以下であることが好ましく、また、多孔性支持層側表層における繊維配向度との配向度差は10°以上90°以下であることが好ましい。
分離膜の製造工程やエレメントの製造工程においては加熱する工程が含まれるが、加熱により多孔性支持層または分離機能層が収縮する現象が起きる。特に、連続製膜において張力が付与されていない幅方向において、収縮は顕著である。収縮することにより、寸法安定性等に問題が生じるため、基材としては熱寸法変化率が小さいものが望まれる。不織布において多孔性支持層とは反対側の表層における繊維配向度と多孔性支持層側表層における繊維配向度との差が10°以上90°以下であると、熱による幅方向の変化を抑制することもできる。
ここで、繊維配向度とは、多孔性支持層を構成する不織布基材の繊維の向きを示す指標である。具体的には、繊維配向度とは、連続製膜を行う際の製膜方向、すなわち不織布基材の長手方向と不織布基材を構成する繊維との間の角度の平均値である。すなわち、繊維の長手方向が製膜方向と平行であれば、繊維配向度は0°である。また、繊維の長手方向が製膜方向に直角であれば、すなわち不織布基材の幅方向に平行であれば、その繊維の配向度は90°である。従って、繊維配向度が0°に近いほど縦配向であり、90°に近いほど横配向であることを示す。
繊維配向度は、次のようにして測定される。まず、不織布からランダムに小片サンプル10個を採取する。次に、そのサンプルの表面を走査型電子顕微鏡で100〜1000倍で撮影する。撮影像の中で、各サンプルあたり10本を選び、不織布の長手方向(縦方向、製膜方向)を0°としたときの角度を測定する。すなわち、1枚の不織布あたり計100本の繊維について、角度の測定が行われる。このようして測定された100本の繊維についての角度から平均値を算出する。得られた平均値の小数点以下第一位を四捨五入して得られる値が、繊維配向度である。
また、基材の厚みは、基材と多孔性支持層との厚みの合計が、30μm以上300μm以下の範囲内、または50μm以上250μm以下の範囲内となる程度に設定されることが好ましい。
(1−3)透過側流路材
<概要>
分離膜本体の透過側の面には、透過側流路を形成するように透過側流路材が設けられる。「透過側流路を形成するように透過側流路材が設けられる」とは、分離膜が後述の分離膜エレメントに組み込まれたときに、分離膜本体を透過した透過流体が集水管に到達できるように、透過側流路材が形成されていることを意味する。透過側流路材の構成の詳細は次のとおりである。
<透過側流路材の構成成分>
透過側流路材3は、分離膜本体2とは異なる素材で形成されることが好ましい。異なる素材とは、分離膜本体2で使用される材料とは異なる組成を有する材料を意味する。特に、透過側流路材3の組成は、分離膜本体2のうち、透過側流路材3が形成されている面の組成とは異なることが好ましく、分離膜本体2を形成するいずれの層の組成とも異なることが好ましい。
透過側流路材を構成する成分としては、樹脂が好ましく用いられる。具体的には、耐薬品性の点で、エチレン酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィンや共重合ポリオレフィンなどが好ましく、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂などのポリマーも選択できる。これらの樹脂は、単独もしくは2種類以上からなる混合物として用いることができる。特に、熱可塑性樹脂は成形が容易であるため、均一な形状の透過側流路材を形成することができる。
<透過側流路材の形状および配置>
<<概要>>
従来広く用いられているトリコットは編み物であり、立体的に交差した糸条で構成されている。すなわち、トリコットは、二次元的に連続した構造を有している。このようなトリコットが透過側流路材として適用された場合、流路の高さはトリコットの厚みよりも小さくなる。すなわち、トリコットの厚みの全てを流路の高さとして利用することはできない。
これに対して、本発明の構成の例として、図1等に示す透過側流路材3は、互いに重ならないように配置されている。従って、本発明の実施形態の透過側流路材3の高さ(すなわち厚み)は全て、流路の溝の高さとして活用される。従って、本発明の実施形態の透過側流路材3が適用された場合、透過側流路材3の高さと同じ厚みを有するトリコットが適用された場合よりも、流路は高くなる。すなわち、流路の断面積がより大きくなるので、流動抵抗はより小さくなる。
また、各図においては、不連続な複数の透過側流路材3が、1つの分離膜本体2上に設けられている。「不連続」とは、透過側流路材3を分離膜本体2から剥離すると、複数の流路材3が互いに分かれる構造であることを指す。これに対して、ネット、トリコットおよびフィルム等の部材は、分離膜本体2から分離されても、連続した一体の形状を有する。
不連続な複数の透過側流路材3が設けられていることにより、分離膜1は、後述の分離膜エレメント100に組み込まれたときに、圧力損失を低く抑えることができる。このような構成の一例として、図2では、透過側流路材3は第1方向においてのみ不連続に形成されおり、また、図3では、透過側流路材3は第1方向および第2方向のいずれにおいても不連続に形成されている。
分離膜は、分離膜エレメントにおいて、第2方向が巻囲方向と一致するように配置されていることが好ましい。すなわち、分離膜エレメントにおいて、分離膜は、第1方向が集水管6の長手方向に平行であり、第2方向が集水管6の長手方向に直交するように配置されることが好ましい。
図2に示す例では、流路材3は、第1方向において不連続に設けられると共に、第2方向においては、分離膜本体2の一端から他端まで連続するように設けられている。すなわち、図5のように分離膜エレメント100に分離膜1が組み込まれたときに、図2の透過側流路材3は、巻囲方向における分離膜1の内側端部から外側端部まで連続するように配置される。巻囲方向の内側とは、分離膜において集水管に近い側であり、巻囲方向の外側とは、分離膜において集水管から遠い側である。
透過側流路材が「第2方向において連続する」とは、図2のように途切れなく設けられている場合と、図3のように途切れても実質的に連続している場合の両方を包含する。「実質的に連続する」形態とは、好ましくは、第2方向における透過側流路材の間隔e(すなわち、透過側流路材において途切れている部分の長さ)が5mm以下であることを満たす。特に、1mm以下を満たすことがより好ましく、0.5mm以下であることがさらに好ましい態様である。また、第2方向において並ぶ一列の透過側流路材の先頭から最後尾までで、間隔eの合計値が、100mm以下であることが好ましく、30mm以下であることがより好ましく、3mm以下であることがさらに好ましい態様である。
図2のように流路材3が途切れずに設けられている場合、加圧ろ過時に膜落ち込みが抑制される。膜落ち込みとは、膜が流路に落ち込んで流路を狭めることである。
また、図3では、流路材3は、第1方向だけでなく第2方向においても不連続に設けられている。すなわち、透過側流路材3は、長さ方向において間隔をおいて設けられている。ただし、上述したように、流路材3が第2方向において実質的に連続していることにより、膜落ち込みは抑制される。さらに、透過側流路材3が、第1方向および第2方向の2つの方向において不連続であることで、透過側流路材と流体との接触面積が小さくなるので圧力損失が小さくなる。この形態は、透過側流路5が分岐点を備える構成であるとも言い換えられる。すなわち、図3の構成において、透過流体は、透過側流路5を流れながら、透過側流路材3によって分けられ、さらに下流で合流することができる。
上述したように、図2では、透過側流路材3が、長さ方向(第2方向)において分離膜本体2の一端から他端まで連続するように設けられている。また、図3では長さ方向(第2方向)において透過側流路材3は複数の部分に分割されているが、これらの複数の部分が、分離膜本体2の一端から他端まで並ぶように設けられている。
透過側流路材が「分離膜本体2の一端から他端まで並ぶように設けられている」とは、透過側流路材が分離膜本体の縁まで設けられていなければならない、という意味ではない。透過側流路材は、透過側の流路を形成できる程度に、分離膜の第2方向全体に渡って配置されていることを意味する。透過側の面における他の分離膜との接着部分には、透過側流路材が設けられる必要はない。また、その他の仕様上または製造上の理由により、分離膜の外縁付近等の一部の箇所には、透過側流路材が配置されない領域が設けることができる。
(巻囲方向内側および外側領域)
突起が固着している分離膜の透過側の面について、巻囲方向の内側から外側にかけて、内側端部からの位置を百分率で表すと、内側端部で0%、膜長さを二等分する箇所で50%、外側端部では100%となる。巻囲方向内側とは内側端部と膜長さを二等分する箇所の間、すなわち0%を超えて50%以下の領域である。一方、巻囲方向外側とは80%を超えて100%以下の領域である。
(透過側流路材の高さc)
透過側流路材の高さcとは、透過側流路材と分離膜本体の表面との高低差である。図4に示されるように、透過側流路材の高さcは、第2方向に垂直な断面における、透過側流路材3の最も高い部分と分離膜本体の透過側面との高さの差である。すなわち、高さにおいては、基材中に含浸している部分の厚みは考慮しない。
透過側流路材の高さcが大きい方が流動抵抗は小さくなる。従って、透過側流路材の高さcは0.15mm以上であることが好ましい。その一方で、透過側流路材の高さcが小さい方が、1つのエレメント当たりに充填される膜の数が多くなる。従って、透過側流路材の高さcは、0.35mm以下であることが好ましい。従って、透過側流路材の高さcは好ましくは0.15mm以上0.35mm以下であり、より好ましくは、0.2mm以上0.35mm以下である。
さらに、巻囲方向における分離膜の巻囲方向外側での透過側流路材の高さが、巻囲方向内側での高さに対して1.05倍以上2.0倍以下であることにより、巻囲性を向上させることができ、流路材の収縮および変形の影響が分離膜本体に伝わりにくくなる。その結果、分離膜のカール、ならびにそれに起因する膜ズレおよびシール不良、さらには巻き取り時のシワ発生が抑制される。すなわち、巻囲初期は集水管に巻きつけた分離膜リーフの量が少ないため巻囲するための仕事量が少ないが、巻囲を進めるにつれて分離膜リーフの量が多くなっていくため、仕事量も増していく。このとき、巻囲方向外側の透過側流路材の高さが上記の範囲ならば巻囲した際のリーフの曲率が小さくなり、透過側流路材の収縮および変形の影響が分離膜本体に伝わりにくい。その結果、分離膜のカール、ならびにそれに起因する膜ズレおよびシール不良、および巻き取り時のシワ発生が抑制され、また、リーフ接着剤の幅が均一になる傾向にある。その結果、得られた分離膜エレメントは長時間の運転下でも安定に作動することができる。特に、分離膜の巻囲方向外側で略連続的に透過側流路材の高さが大きくなる場合に、優れた効果を発揮できる。
また、透過側流路材の高さcは、巻囲方向において、巻囲時に抵抗とならない程度の急激な高さ変動が生じないように設計することが好ましい。この透過側流路材の高さは、該当する領域において顕微鏡による断面観察や、市販の厚み計を用いて測定することができる。
巻囲方向内側領域における透過側流路材高さの変動係数は0%以上10%以下であることにより、分離膜巻取り時に透過側流路材が分離膜機能層面に転写されることを抑制することができる。変動係数が10%を超えると、加圧ろ過時に分離膜の歪みが生じるので、分離膜に欠陥が発生することがある。
透過側流路材の高さcの変動係数は、透過側流路材の高さを測定して算出することができ、巻囲方向内側領域における透過側流路材高さの標準偏差/透過側流路材高さの平均値で表すことができる。
<透過側流路材の構成成分>
透過側流路材3、分離膜本体2とは異なる材料で形成されることが好ましい。異なる材料とは、分離膜本体2で使用される材料とは異なる組成を有する材料を意味する。特に、透過側流路材3の組成は、分離膜本体2のうち、透過側流路材3が形成されている面の組成とは異なることが好ましく、分離膜本体2を形成するいずれの層の組成とも異なることが好ましい。
透過側流路材3を構成する材料としては、樹脂が好ましく用いられる。具体的には、耐薬品性の点で、エチレン酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリエチレン、およびポリプロピレンなどのポリオレフィンやオレフィン共重合体などが好ましく用いられる。これらに比べて接着性ではやや劣るものの、透過側流路材3を構成する材料としては、樹脂が好ましく用いられる。具体的には、ウレタン樹脂やエポキシ樹脂などの樹脂も選択することができ、これらを単独もしくは2種類以上からなる混合物として用いることができる。特に、熱可塑性樹脂は成形が容易であるため、均一な形状の透過側流路材3を構成する材料としては、樹脂が好ましく用いられる。
透過側流路材3を基材に固着させるに先立ち、基材をプライマー処理することもできる。
<<分離膜本体および透過側流路材の寸法>>
図2〜図4に示されるように、次の符号a〜fは下記を指す。
a:分離膜本体2の長さ
b:分離膜本体2の幅方向における透過側流路材3の間隔
c:透過側流路材の高さ(透過側流路材3と分離膜本体2の透過側の面22との高低差)
d:透過側流路材3の幅
e:分離膜本体2の長さ方向における透過側流路材の間隔
f:透過側流路材3の長さ。
上記の値a〜fの測定には、例えば、市販の形状測定システムまたはマイクロスコープなどを用いることができる。上記の各値は、1枚の分離膜において30箇所以上で測定を行い、それらの値を総和した値を測定総箇所の数で割って平均値を算出することにより求められる。このようにして、少なくとも30箇所における測定の結果得られる各値が、上記の範囲を満たすことが求められる。
(分離膜本体の長さa)
分離膜本体の長さaは、第2方向における分離膜本体2の一端から他端までの距離である。この距離が一定でない場合、1枚の分離膜本体2において30箇所以上の位置でこの距離を測定し、平均値を求めることにより分離膜本体の長さaを得ることができる。
(第1方向(図5のCD)での透過側流路材の幅方向間隔b)
第1方向における透過側透過側の幅方向間隔bは、流路5の幅に相当する。1つの断面において1つの流路5の幅が一定でない場合、すなわち隣り合う2つの透過側流路材3の側面が平行でない場合は、1つの断面内で、1つの透過側流路5の幅の最大値と最小値の平均値を測定し、その平均値を算出する。図4に示されるように、第2方向に垂直な断面において、透過側流路材3は上が細く下が太い台形状を示す場合、まず、隣接する2つの透過側流路材3の上部間の距離と下部間の距離を測定して、その平均値を算出する。任意の30箇所以上の断面において、透過側流路材3の間隔を測定して、それぞれの断面において平均値を算出する。そして、このようにして得られた平均値の相加平均値をさらに算出することにより、透過側透過側の幅方向間隔bが算出される。
透過側透過側の幅方向間隔bが大きくなるにつれて圧力損失は小さくなるものの、膜落ち込みが生じやすくなる。逆に、透過側透過側の幅方向間隔bが小さいほど膜落ち込みは生じにくくなるが、圧力損失は大きくなる。分離膜エレメントとしての性能や安定性を勘案すると、透過側透過側の幅方向間隔bは0.05mm以上5mm以下であることが好ましく、この範囲であれば、膜落ち込みを抑えながら圧力損失を小さくすることができる。透過側透過側の幅方向間隔bは、より好ましくは0.2mm以上2mm以下であり、さらに好ましくは0.3mm以上0.8mm以下である。
(透過側流路材の幅d)
透過側流路材3の幅dは、次のようにして測定される。まず、第1方向に垂直な1つの断面において、1つの透過側流路材3の最大幅と最小幅の平均値を算出する。すなわち、図4に示されるような上部が細く下部が太い透過側流路材3においては、流路材下部の幅と上部の幅を測定し、その平均値を算出する。このような平均値を少なくとも30箇所の断面において算出し、その相加平均を算出する。透過側流路材3の幅dは、好ましくは0.2mm以上または0.3mm以上である。透過側流路材3の幅dが0.2mm以上であることにより、分離膜エレメントの運転時に流路材3に圧力がかかっても、流路材の形状を保持することができ透過側流路が安定的に形成される。透過側流路材3の幅dは、好ましくは2mm以下または1.5mm以下である。透過側流路材3の幅dを2mm以下とすることにより、透過側の流路を十分確保することができる。
透過側流路材の幅dを、幅方向での流路材の幅方向間隔bよりも広くことにより、透過側流路材にかかる圧力を分散することができる。
透過側流路材3は、その長さがその幅よりも大きくなるように形成されている。このように長い流路材3は「壁状物」とも称される。
透過側流路材3の幅は、本発明の効果が損なわれない範囲であれば巻囲方向内側領域と外側領域で異なる構成とすることができる。
(第2方向(図5のMD)での透過側流路材の長さ方向の間隔e)
第2方向における透過側流路材3の長さ方向の間隔eは、第2方向において隣り合う流路材3間の最短距離である。図2に示されるように、透過側流路材3が第2方向において分離膜本体2の一端から他端まで(分離膜エレメント内では、巻囲方向の内側端部から外側端部まで)連続して設けられている場合、透過側流路材の長さ方向の間隔eは0mmである。また、図3に示すように、透過側流路材3が第2方向において途切れている場合は、透過側流路材の長さ方向の間隔eは、好ましくは0mm以上5mm以下であり、より好ましくは0mm以上1mm以下であり、さらに好ましくは0mm以上0.5mm以下である。透過側流路材の長さ方向の間隔eを上記範囲内とすることにより、膜落ち込みが生じても膜への機械的負荷が小さく、流路閉塞による圧力損失を比較的小さくすることができる。
(透過側流路材の長さf)
透過側流路材3の長さfは、分離膜本体2の長さ方向(第2方向)における透過側流路材3の長さである。透過側流路材3の長さfは、1枚の分離膜1内で、30個以上の透過側流路材3の長さを測定し、その平均値を算出することで求められる。透過側流路材の長さfは、分離膜本体の長さa以下とすることができる。透過側流路材の長さfが分離膜本体の長さaと同等のときは、透過側流路材3が分離膜1の巻囲方向内側端部から外側端部へ連続的に設けられていることを指す。長さfは、好ましくは10mm以上または20mm以上である。透過側流路材の長さfを10mm以上であることにより、圧力下でも流路が確保される。
(透過側流路材の形状)
透過側流路材の形状としては、流路の流動抵抗を少なくし、透過させた際の流路を安定化させるような形状が選択され得る。これらの点で、分離膜の面方向に垂直ないずれかの断面において、透過側流路材の形状は、直柱状や台形状、曲柱状あるいはそれらを組み合わせて構成することができる。
例えば、透過側流路材の断面形状が台形の場合、上底と下底の長さの差が大きすぎると溝幅の広い方で加圧ろ過時の膜落込みが生じやすくなるため、下底の長さに対する上底の長さの比率は0.6以上1.4以下が好ましく、0.8以上1.2以下がさらに好ましい態様である。透過側流路材の形状は、流動抵抗を低減する観点から、後述の分離膜面に対して垂直な直柱状であることが好ましい。また、透過側流路材は、高い箇所ほど幅が小さくなるように形成されていてもよく、逆に高い箇所ほど幅が広くなるように形成されていてもよく、分離膜表面からの高さによらず同じ幅を有するように形成することもできる。加圧ろ過時の流路材潰れが著しくない範囲であれば、透過側流路材の断面において、その上辺が丸みを帯びていても良いことも許容される。
透過側流路材が熱可塑性樹脂であれば、処理温度および選択する熱可塑性樹脂の種類を変更することで、要求される分離特性や透過性能の条件を満足できるように、自由に流路材の形状を調整することができる。
また、透過側流路材の分離膜の平面方向における形状は、例えば、図2に示すように直線状であってもよく、曲線状、鋸歯状等波線状および破線状にすることもできる。
また、透過側流路材の分離膜の平面方向における形状が直線状である場合、隣り合う透過側流路材は、互いに略平行に配置させることができる。「略平行に配置させる」とは、例えば、透過側流路材が分離膜上で交差しないこと、隣り合う2つの透過側流路材の長手方向のなす角度が0°以上30°以下であること、上記角度が0°以上15°以下であること、および上記角度が0°以上5°以下であること等を包含する。
また、透過側流路材の長手方向と集水管の長手方向との成す角度は、60°以上120°以下であることが好ましく、75°以上105°以下であることがより好ましく、85°以上95°以下であることがさらに好ましい態様である。流路材の長手方向と集水管の長手方向との成す角度を上記の範囲とすることにより、透過水が効率良く集水管に集められる。
流路を安定して形成するには、分離膜エレメントにおいて分離膜本体が加圧されたときの分離膜本体の落ち込みを抑制できることが好ましい。そのためには、分離膜本体と透過側流路材との接触面積が大きいこと、具体的に分離膜本体の面積に対する流路材の面積(分離膜本体の膜面に対する投影面積)が大きいことが好ましい。一方で、圧力損失を低減させるには、流路の断面積が広いことが好ましい。流路の断面とは、流路の長手方向に対して垂直な分離膜本体と透過側流路材との接触面積を大きく確保しつつ、かつ流路の断面積を広く確保するには、流路の断面形状は凹レンズ状であることが好ましい。また、透過側流路材3は、巻囲方向に垂直な方向での断面形状において、幅に変化のない直柱状であってもよい。また、分離膜性能に影響を与えない範囲内であれば、巻囲方向に垂直な方向での断面形状において、幅に変化があるような台形状の壁状物、楕円柱、楕円錐、四角錐および半球のような形状にすることができる。
透過側流路材の形状は、図1〜図3に示されている形状に限定されるものではない。分離膜本体の透過側の面に、例えば、ホットメルト法のように、溶融した材料を固着させることにより透過側流路材を配置する場合は、処理温度や選択するホットメルト用樹脂の種類を変更することにより、要求される分離特性および透過性能の条件を満足できるように、透過側流路材の形状を自由に調整することができる。
図1〜図3では、透過側流路材3の平面形状は、長さ方向において直線状である。ただし、透過側流路材3は、分離膜本体2の表面に対して凸であり、かつ分離膜エレメントとしての所望の効果が損なわれない範囲であれば、他の形状に変更可能である。すなわち、透過側流路材の平面方向における形状は、曲線状および波線状等にすることができる。また、1つの分離膜に含まれる複数の透過側流路材が、幅および長さの少なくとも一方が互いに異なるように形成させることができる。
(投影面積比)
分離膜の透過側の面に対する透過側流路材の投影面積比は、特に透過側流路の流動抵抗を低減し、流路を安定に形成させるという点では、0.03以上0.85以下であることが好ましく、0.15以上0.85以下であることがより好ましく、0.2以上0.75以下であることがさらに好ましく、0.3以上0.6以下であることがさらに好ましい態様である。ここで、投影面積比とは、分離膜を5cm×5cmで切り出し、分離膜の面方向に平行な平面に投影したときに得られる透過側流路材の投影面積を、切り出し面積(25cm)で割った値である。また、この値は、上述の式df/(b+d)(e+f)で表すこともできる。
(欠点率)
分離膜を透過した水は透過側流路5を通過して集水管6に集められる。分離膜において、集水管6から遠い領域、具体的に巻囲方向外側の端部近傍の領域(図5における右側端部に近い領域)を透過した水は、集水管6に向かう間に巻囲方向においてより内側の領域を透過した水と合流し、集水管6へと向かう。従って、透過側流路5においては、集水管6から遠い方が存在する水量が少ない。
そのため、図6に示すような巻囲方向外側の端部近傍の領域において、透過側流路材が存在しない場合においても、その領域での流動抵抗が高くなっても、エレメント全体の造水量に与える影響は軽微である。図6では、分離膜本体2の長さL1よりも、巻囲方向外側端部において透過側流路材が形成されていない領域R3の長さL3が短くなっている。
同様の理由で、巻囲方向外側の端部近傍の領域において、透過側流路材の形成精度が低く、透過側流路材を形成する樹脂が第1方向において連続して塗布されていても、エレメントとしての造水量に与える影響は小さい。この領域において、分離膜本体の面方向(x−y平面)において、隙間無く塗布されている場合も同様である。
従って、分離膜本体2の巻囲方向外側の端部から透過側流路材3の巻囲方向外側の端部までの距離、具体的に、分離膜本体2の巻囲方向外側端部において透過側流路材が形成されていない領域R3の長さL3(図6参照。)が、分離膜本体の長さL1(上述の“a”に相当する。)に対して占める割合は、0%以上30%以下であることが好ましく、0%以上10%以下であることがさらに好ましく、0以上3%以下であることが特に好ましい態様である。この割合を欠点率と称する。
欠点率は、図6では、L3/L1×100 で表される。
〔2.分離膜エレメント〕
(2−1)概要
図4に示されるように、分離膜エレメント100は、集水管6と、上述したいずれかの構成を備え、集水管6の周囲に巻囲された分離膜1を備える。また、分離膜エレメント100は、図示しない端板等の部材をさらに備える。
(2−2)分離膜
<概要>
分離膜1は、集水管6の周囲に巻囲されており、幅方向が集水管6の長手方向に沿うように配置される。その結果、分離膜1は、長さ方向が巻囲方向に沿うように配置される。
よって、壁状物である透過側流路材3は、分離膜1の透過側の面22において、少なくとも集水管6の長手方向に不連続状に配置される。具体的に、流路5は、巻囲方向において分離膜の外側端部から内側端部まで連続するように形成される。その結果、透過水が中心パイプへ到達し易く、すなわち流動抵抗が小さくなるので、大きな造水量が得られる。
「巻囲方向の内側」および「巻囲方向の外側」は、図5に示されるとおりである。すなわち、「巻囲方向の内側端部」および「巻囲方向の外側端部」とはそれぞれ、分離膜1において集水管6に近い方の端部、および遠い方の端部に該当する。
上述したように、流路材は分離膜の縁まで達していなくてもよく、本発明では、例えば、巻囲方向における封筒状膜の外側端部、および集水管長手方向における封筒状膜の端部では、流路材が設けられていない態様が含まれる。
図5は、集水管6の周囲に分離膜1を巻囲した本発明の分離膜エレメントの一形態を示す展開斜視図である。図5において分離膜1は、分離膜リーフの片側の面として記載されている。図中、CDで示す矢印は、集水管6の長手方向および分離膜の幅方向(前述の第1方向)を示す。また、MDで示す矢印は、分離膜の長さ方向および集水管6へ巻囲する方向(前述の第2方向)を示す。
<分離膜リーフおよび封筒状膜>
図1に示されるように、分離膜は、分離膜リーフ4(本発明において、単に「リーフ」と称することがある。)を形成する。リーフ4において分離膜1は、供給側の面21が、図示しない供給側流路材を挟んで他の分離膜7の供給側の面71と対向するように、配置されている。分離膜リーフ4において、互いに向かい合う分離膜の供給側の面の間には供給側流路が形成される。
さらに、2枚の分離膜リーフ4が重ねられることにより、分離膜1とその分離膜1の透過側の面22に対向する他の分離膜リーフの分離膜7とが、封筒状膜を形成する。封筒状膜において、向かい合う透過側の面の間は、透過水が集水管6に流れるように、分離膜の長方形状において、巻囲方向内側の一辺のみにおいて開放され、他の三辺においては封止される。透過水はこの封筒状膜によって供給水から隔離される。
封止としては、接着剤またはホットメルトなどにより接着されている形態、加熱またはレーザなどにより融着されている形態、およびゴム製シートが挟みこまれている形態が挙げられる。接着による封止は、最も簡便で効果が高い。
また、分離膜の供給側の面において、巻囲方向における内側端部は、折りたたみまたは封止により閉じられている。分離膜の供給側の面が、折り畳まれているのではなく封止されていることにより、分離膜の端部における撓みが発生しにくい。また、折り目近傍での撓みの発生が抑制されることにより、巻囲したときに分離膜間での空隙の発生およびこの空隙によるリークの発生が抑制される。
このようしてリークの発生が抑制されることにより、封筒状膜の回収率が向上する。封筒状膜の回収率とは、次のように求められる。すなわち、水中で分離膜エレメントのエアリークテスト(air leak test)を行って、リークが発生した封筒状膜数をカウントする。そのカウント結果に基づいて、(エアリークが発生した封筒状膜の数/評価に供した封筒状膜の数)の比率を、封筒状膜の回収率として算出する。
具体的なエアリークテストの方法は、次のとおりである。分離膜エレメントの中心パイプの端部を封止し、もう一方の端部から空気を注入する。注入された空気は集水管の孔を通過して分離膜の透過側に到達するが、上記のように分離膜の折りたたみが不十分で折り目近傍で撓みが生じたりして空隙が存在すると、空気がその空隙を移動してしまう。その結果、分離膜の供給側へ空気が移動し、分離膜エレメントの端部(供給側)から水中に空気が到達する。このようにエアリークを気泡の発生として確認することができる。
折り畳みによって分離膜リーフを形成する場合、分離膜リーフが長いほど(すなわち、元の分離膜が長いほど)分離膜の折りたたみに要する時間は長い。しかしながら、分離膜の供給側の面を、折り畳みでなく封止することにより、分離膜リーフが長くても製造時間の増大を抑制することができる。
分離膜リーフおよび封筒状膜において、互いに対向する分離膜(図1における分離膜1および7)は、同じ構成を備えてもよく、異なる構成にすることもできる。すなわち、分離膜エレメントにおいて、向かい合う2枚の透過側の面のうち、少なくとも一方に上述の透過側流路材が設けられていればよく、透過側流路材を備えている分離膜と、透過側流路材を備えていない分離膜とが交互に重ねられた構成とすることもできる。ただし、説明の便宜上、分離膜エレメントおよびそれに関係する説明においては、「分離膜」は、透過側流路材を備えていない分離膜(例えば、分離膜本体と同じ構成を備える膜)を含む。
透過側の面において、または供給側の面において、互いに対向する分離膜は、2枚の異なる分離膜であってもよく、1枚の膜が折りたたまれた構成とすることもできる。
(2−3)透過側流路
上述したように、分離膜1は透過側流路材3を備えている。透過側流路材3によって、封筒状膜の内側、具体的に向かい合う分離膜の透過側の面の間には、透過側流路が形成される。
(2−4)供給側流路
(流路材)
分離膜エレメント100は、重なり合う分離膜の供給側の面の間に、分離膜1に対する投影面積比が0を超えて1未満となる供給側流路材を備える(図示せず)。供給側流路材の投影面積比は0.03以上0.50以下であることが好ましく、さらに好ましくは0.10以上0.40以下であり、特に好ましくは0.15以上0.35以下である。投影面積比を0.03以上0.50以下とすることにより、流動抵抗が比較的小さく抑えられる。ここで、投影面積比とは、分離膜と供給側流路材を5cm×5cmで切り出し、その供給側流路材を分離膜の面方向に平行な平面に投影したときに得られる投影面積を切り出し面積で割った値である。
供給側流路材の高さは、後述するように各性能のバランスや運転コストを考慮すると0.5mmを超えて2.0mm以下であることが好ましく、さらに好ましくは0.6mm以上1.0mm以下である。
供給側流路材の形状は、連続形状を有していてもよく、不連続な形状とすることもできる。連続形状を有する供給側流路材としては、フィルムおよびネット等の部材が挙げられる。ここで、連続形状とは、実質的に供給側流路材の全範囲において連続であることを意味する。連続形状には、造水量が低下するなどの不具合が生じない程度に、供給側流路材の一部に不連続となる箇所が含まれていることも許容される。また、「不連続」の定義については、透過側の透過側流路材について説明したとおりである。供給側流路材の素材としては、分離膜と同素材または異素材が用いられる。
(2−5)集水管
集水管6は、その中を透過水が流れるように構成されており、材質、形状および大きさ等は特に限定されない。集水管6としては、例えば、複数の孔が設けられた側面を有する円筒状の部材が好ましく用いられる。
〔3.分離膜エレメントの製造方法〕
(3−1)分離膜本体の製造
分離膜本体の製造方法については上述したが、簡単にまとめると次のとおりである。
良溶媒に樹脂を溶解し、得られた樹脂溶液を基材にキャストして純水中に浸漬して多孔性支持層と基材を複合させる。その後、上述したように、多孔性支持層上に分離機能層を形成する。さらに、必要に応じて分離性能と透過性能を高めるべく、塩素、酸、アルカリおよび亜硝酸などの化学処理を施し、さらにモノマー等を洗浄し分離膜本体の連続シートを作製する。
前記の化学処理の前または後で、エンボス等によって分離膜本体に凹凸を形成することができる。
(3−2)透過側流路材の配置
分離膜の製造方法は、分離膜本体の透過側の面に、連続的または/および不連続な透過側流路材を設ける工程を備える。この工程は、分離膜製造のどの時点でも行うことができる。例えば、透過側流路材は、基材上に多孔性支持層が形成される前に設けられてもよく、多孔性支持層が設けられた後であって分離機能層が形成される前に設けられてもよく、分離機能層が形成された後、上述の化学処理が施される前または後に行うこともできる。
透過側流路材を配置する方法は、例えば、柔らかな材料を分離膜上に配置する工程と、それを硬化する工程とを備える。具体的には、透過側流路材の配置には、紫外線硬化樹脂、化学重合、ホットメルトおよび乾燥等が利用される。特に、ホットメルトは好ましく用いられ、具体的には、熱により樹脂等の材料を軟化する(熱溶融する)工程、軟化した材料を分離膜上に配置する工程、およびこの材料を冷却により硬化することで分離膜上に固着させる工程を含む。
透過側流路材を配置する方法としては、例えば、塗布、印刷および噴霧等が挙げられる。また、使用される機材としては、ノズル型のホットメルトアプリケーター、スプレー型のホットメルトアプリケーター、フラットノズル型のホットメルトアプリケーター、ロール型コーター、押出型コーター、印刷機および噴霧器などが挙げられる。
(3−3)供給側流路の形成
供給側流路材が、分離膜本体と異なる素材で形成された不連続な部材である場合、供給側流路材の形成には、透過側流路材の形成と同じ方法およびタイミングを適用することができる。
供給側流路がネット等の連続的に形成された部材である場合は、分離膜本体に透過側流路材が配置されることで分離膜が製造された後、この分離膜と供給側流路材とを重ね合わせることにより形成することができる。
(3−4)分離膜リーフの形成
分離膜リーフは、上述したように、供給側の面が内側を向くように分離膜を折りたたむことで形成することされてもよく、別々の2枚の分離膜を貼り合わせることで形成することもできる。
分離膜エレメントの製造方法は、分離膜の巻囲方向における内側端部を、供給側の面において封止する工程を備えることが好ましい。封止する工程においては、2枚の分離膜を、互いの供給側の面が向かい合うように重ねる。さらに、重ねられた分離膜の巻囲方向における内側端部、すなわち図5における左側端部を封止する。
「封止」する方法としては、接着剤またはホットメルトなどによる接着、加熱またはレーザなどによる融着、およびゴム製シートを挟みこむ方法が挙げられる。接着による封止は、最も簡便で効果が高い。
このとき、重ねられた分離膜の内側に、分離膜とは別に形成された供給側流路材を配置することもできる。上述したように、エンボスまたは樹脂塗布等によって分離膜の供給側の面にあらかじめ高低差を設けることにより、供給側流路材の配置を省略することもできる。
供給側の面の封止と透過側の面の封止(封筒状膜の形成)とは、どちらかが先に行われてもよく、分離膜を重ねながら、供給側の面の封止と透過側の面の封止とを並行して行うこともできる。ただし、巻囲時における分離膜でのシワの発生を抑制するためには、隣り合う分離膜が巻囲によって長さ方向にずれることを許容するように、幅方向端部における接着剤またはホットメルトの固化等、すなわち封筒状膜を形成するための固化等を、巻囲の終了後に完了させることが好ましい。
(3−5)封筒状膜の形成
1枚の分離膜を透過側の面が内側を向くように折り畳んで貼り合わせることにより、または2枚の分離膜を透過側面が内側を向くように重ねて貼り合わせることにより、封筒状膜を形成することができる。長方形状の封筒状膜においては、長さ方向の一端のみが開口するように、他の3辺を封止する。封止は、接着剤またはホットメルト等による接着、熱またはレーザによる融着等により実行することができる。
接着剤の塗布量は、分離膜リーフを集水管に巻囲した後に、接着剤が塗布される部分の幅が10mm以上100mm以下であるような量であることが好ましい。これによって、分離膜が確実に接着されるので、原流体の透過側への流入が抑制される。また、有効膜面積も比較的大きく確保することができる。
(3−6)分離膜の巻囲
分離膜エレメントの製造には、従来のエレメント製作装置を用いることができる。また、エレメント作製方法としては、参考文献(特公昭44−14216号公報、特公平4−11928号公報および特開平11−226366号公報参照。)に記載されている方法を用いることができる。詳細には、次のとおりである。
集水管の周囲に分離膜を巻囲するときは、分離膜を分離膜リーフの閉じられた端部、すなわち封筒状膜の閉口部分が集水管を向くように配置する。このような配置で集水管の周囲に分離膜を巻きつけることにより、分離膜をスパイラル状に巻囲する。
集水管にトリコットや基材のようなスペーサーを巻囲しておくと、エレメント巻囲時に集水管へ塗布した接着剤が流動し難く、リークの抑制につながり、さらには集水管周辺の流路が安定に確保される。この場合、スペーサーは集水管の円周より長く巻囲しておくことが好ましい。
集水管にトリコットを巻囲しておくことにより、エレメント巻囲時に集水管へ塗布した接着剤が流動し難く、リークの抑制につながり、さらには集水管周辺の流路が安定に確保される。この場合、トリコットは集水管の円周より長く巻囲しておくことが好ましい。
(3−7)その他の工程
分離膜エレメントの製造方法は、上述のように形成された分離膜の巻囲体の外側に、フィルムおよびフィラメント等をさらに巻きつける工程を含んでいてもよく、集水管の長手方向における分離膜の端を切りそろえるエッジカットや端板の取り付け等のさらなる工程を含ませることができる。
〔4.分離膜エレメントの他の形態〕
<分離膜エレメントの構成>
分離膜エレメントの他の形態について説明する。なお、以下で言及しない構成、並びに製造工程および利用については、上述の事項が適用される。
本実施形態では、図8に示すように、突起物3が、分離膜とは別のシートに固着していている。つまり、分離膜エレメントは、図8に示すように、分離膜20Aと、シート13とシート13上に固着した突起物3とを備える透過側流路材14とを備える。
本実施形態の分離膜エレメントは、透過側流路材を分離膜間に挟み込む工程を備える以外は、図1に示すリーフを備える分離膜エレメントと同様の方法によって製造される。
<分離膜>
分離膜20Aは、図1の分離膜1とは異なり、突起物3を備えない。つまり分離膜20Aとしては、図1の実施形態の分離膜本体2と同様の構成が採用される。分離膜20Aは、透過側の面同士および供給側の面同士がそれぞれ対向するように、配置される。
<透過側流路材>
透過側流路材14は、2枚の分離膜20Aの透過側の面122の間に配置される。分離膜の供給側の面は符号”121”で示す。より詳細には、2枚の分離膜20Aは、透過側流路材14を間に挟んで、図1の分離膜2および分離膜7と同様に、接着(封止)されている。その接着部分の少なくとも一部において、分離膜間に透過側流路材14のシート13が存在することが好ましい。図8では、シート13の大きさと分離膜20Aの大きさとは同一として示しているが、実際には、シートの方が大きくても良いし、分離膜の方が大きくてもよい。
分離膜に突起物が固着している場合と、分離膜とは別のシートに突起物が固着している場合とは、シート状の部材に突起物が固着している、という点で共通する。本書では、説明の便宜上、分離膜とは異なる部材として設けられたシート状部材を、“シート”とよぶ。
<シート>
シート13の空隙率は20%以上90%以下であることが好ましく、45%以上80%以下であることが特に好ましい。
突起物の配置の精度が不十分であると、突起間の溝が閉塞することがある。しかし、シートの空隙率が20%以上であると、透過水はシート13の空隙を通って別の溝に移動することができるので、分離膜エレメントの造水量が大きくなる。さらに、突起物3を構成する樹脂がシート13に適度に含浸できるので、突起物3のシート13からの剥離を抑制できる。また、分離膜間を封止する接着剤がシート13に適度に含浸できるので、供給水の透過側流路への流入を抑制することができる。
また、空隙率が90%以下であることで、突起物3を構成する樹脂がシート13の裏にまで含浸することを抑制できる。シート13の裏にまで樹脂が含浸すると、樹脂の含浸部分とその周りの部分とで、シート13の厚みが不均一になる。また、空隙率が90%以下であることで、リーフ同士を接着する接着剤の広がりを適度に抑制することができる。その結果、分離膜エレメント形成後に接着剤が塗布されていない領域、すなわち、加圧ろ過が有効に機能する領域(有効膜面積)を確保することができる。これによって、分離膜エレメントの造水量の低下を抑制できる。
ここで、空隙率とは、基材の単位体積当たりの空隙の割合をいう。空隙率は、基材に純水を含ませたときの重量から、基材の乾燥時の重量を差し引いた値を、乾燥時の基材の見かけ体積で除することで、百分率(%)として算出される。
シート13の厚みは0.2mm以下であることが好ましい。2枚の分離膜の透過側の面の間を封止するためには、封止箇所で分離膜間に挟まれたシート13に接着剤が含浸することが好ましい。シート13の厚みが0.2mm以下であると、シート13の厚み方向において全体にわたって接着剤が含浸するので、透過水への供給水の混合を防ぐことができる。ただし、シート13の厚みが0.2mmを超えても、シート13の空隙率が80%以上であれば、分離膜間を接着剤で封止することができる。また、シート13の厚みが0.02mm以上であることで、シート13の強度を確保することができるので、シート13の破損を抑制することができる。
特に、シート13の厚みが0.02mm以上0.2mm以下であれば、空隙率は20%以上80%以下であることが好ましく、シート13の厚みが0.02mmを超えて0.4mm以下であれば、空隙率は30%以上90%以下であることがより好ましい。
シート13として、具体的には、不織布が好ましく用いられる。シート13としては、例えば、上述の分離膜の基材と同様の素材および構造が適用される。
<突起物>
シートに固着した突起物には、図2等を参照して分離膜の基材に固着した突起物について説明した構成(つまり形状、寸法、配置、材質等)が、好ましく適用される。また、本実施形態の透過側流路材は、分離膜上に突起物を設ける場合と同様の方法によって、シートに突起物を設けることで製造される。
突起物は、シートのどちらか一方の面に設けられていてもよいし、両方の面に設けられていてもよい。いずれにしても、透過側流路材は、2枚の分離膜の透過側の面に挟まれるように配置され、透過側流路材の突起物が設けられた面は分離膜の透過側の面に対向する。
突起物の高さcと、シートの厚みH1との関係について説明する。突起物の高さcと、シートの厚みH1と突起物の高さcとの和H0との比(c/H0)は、0.05以上であることが好ましい。これによって、広い流路を確保できるからである。一方で、比(c/H0)が0.7以下であることで、張力を負荷しながら、シートを巻き取った際に、突起物によるシートの破壊や傷を防ぐことができる。これは、比(c/H0)が大きいほど突起物のシートへの負荷が大きく、かつシートの物理的耐久性が小さくなるためである。
比(c/H0)が0.13以下である場合、シートの空隙率は30%以上90%以下であることが好ましい。また、比(c/H0)が0.13を超え(または0.15以上であって)、かつ0.7以下である場合は、シートの空隙率は20%以上かつ80%以下であることが好ましい。
次に、実施例によって本発明の分離膜エレメントについてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によってなんら限定されるものではない。なお、ここでいう“透過側流路材”とは、分離膜本体の透過側の面に固着しているものを差し、“突起物”とは上述したシートに固着しているものを指す。
(巻囲方向内側および外側の透過側流路材(または突起物)の高さ)
後述する方法で得られた分離膜エレメントを解体し、1枚の分離膜リーフを任意に切り出し折り位置で二等分した。次に、二等分して得られた膜巻囲方向に100等分し、キーエンス製高精度形状測定システムKS−1100を用いて、上記の100個の各サンプルについて10μm以上の高低差のある5箇所を測定し、各高さの値を総和した値を測定総箇所の数で除して、各サンプルの透過側流路材(または突起物)高さを算出した。
そして、巻囲方向の内側から外側にかけて、内側端部からの位置0%〜50%位置で得られたサンプル50個について、各サンプルの高さの合計/サンプル数(50)を計算し、巻囲方向の内側の透過側流路材(または突起物)高さとした。
巻囲方向の内側から外側にかけて、内側端部からの位置80%〜100%位置で得られたサンプル20個について、各サンプルの高さの合計/サンプル数(20)を計算し、巻囲方向の外側の透過側流路材(または突起物)高さとした。
(巻囲方向外側/巻囲方向内側での透過側流路材(または突起物)の高さ比)
上記の透過側流路材の高さ比を、次式によりにより算出して求めた。
・巻囲方向の外側の透過側流路材高さ/巻囲方向の内側の透過側流路材(または突起物)
(巻囲方向外側/巻囲方向内側での透過側流路材(または突起物)の高さ比)
巻囲方向の内側から外側にかけて、内側端部からの位置0%〜50%位置で得たサンプル50個について、透過側流路材高(または突起物)さの標準偏差を平均値で除して算出した。
(透過側流路材(または突起物)のピッチおよび間隔)
走査型電子顕微鏡(S−800)(日立製作所製)を用いて30個の任意の透過側流路材の断面を30倍で写真撮影し、分離膜の透過側における透過側流路材(または突起物)の頂点から、隣の透過側流路材の頂点までの水平距離を測定し、その平均値をピッチとして算出した。
また、間隔bについては、ピッチを測定した写真において、上述の方法で測定した。
(耐ズレ性)
後述の実施例および比較例において作製されたそれぞれ15本の分離膜エレメントについて、巻きズレを測定した。巻きズレとは、{巻囲後のエレメント幅―巻囲に用いた分離膜幅}で算出される。全ての実施例および比較例で、巻囲に用いた分離膜幅は1000mmであった。また、巻囲後のエレメント幅とは、分離膜巻囲体の集水管長手方向における長さである。
このようして測定された15本のエレメントの巻きズレについて、その平均値を算出した。さらに、比較例1のエレメントについての巻きズレ平均値に対する、各実施例および比較例のエレメントについての巻きズレ平均値の比(%)を算出した。この平均値を耐ズレ性(%)として、各表1〜3に示す。
(耐久性)
分離膜または分離膜エレメントについて、原水として、濃度2,000mg/L、pH6.5のNaCL水溶液を用い、運転圧力3MPa、温度25℃の条件下で1分間運転して運転を終了するサイクル(発停)を10,000回繰り返した。
その後、分離膜エレメント内に残存した水を大方除き、集水管の一端から真空ポンプを用いて−100kPaの圧力で真空吸引を行った。真空度90kPa(すなわち、圧力―90kPa)になった段階で、真空ポンプと分離膜エレメントとをつなぐ配管に設けられたコックを閉じてエレメント内部の圧力を保持した。その後、下記基準によって、エレメントのシール性を評価した。15秒後のエレメント真空度が高いものほどシール性が高いことになり、本発明では優および良を合格とした。
優:15秒後のエレメント真空度が75kPaを超えて90kPa以下
良:15秒後のエレメント真空度が65kPaを超えて75kPa以下
可:15秒後のエレメント真空度が55kPaを超えて65kPa以下
不可:15秒後のエレメント真空度が55kPa以下。
上記の評価は、エレメント15本について実施し、最も多く得られた結果を耐久性とした。
(実施例1)
ポリエチレンテレフタレート繊維からなる不織布(単繊維繊度:1デシテックス、厚み:約0.09mm、密度0.80g/cm)上に、ポリスルホンの15.0質量%のDMF溶液を、180μmの厚みで室温(25℃)においてキャストし、ただちに純水中に浸漬して5分間放置し、80℃の温水で1分間浸漬することによって繊維補強ポリスルホン支持膜からなる、多孔性支持層(厚さ0.13mm)を作製した。
その後、得られた多孔性支持層ロールを巻き出し、ポリスルホン表面に、m−PDA(メタフェニレンジアミン)の2.0質量%、ε−カプロラクタム4.2質量%水溶液中を塗布し、エアーノズルから窒素を吹き付け支持膜表面から余分な水溶液を取り除いた後、トリメシン酸クロリド0.06質量%を含む25℃の温度のn−デカン溶液を表面が完全に濡れるように塗布した。その後、膜から余分な溶液をエアーブローで除去し、50℃の温度の水で洗浄して分離膜ロールを得た。
次に、流路材を分離膜の透過側に形成した。すなわち、バックアップロールを15℃の温度に温度調節しながら櫛歯状シムを装填したノズルを用いて、ポリプロピレン(温度230℃・荷重2.16kgf/cmでのMFR1000g/10分、80質量%)/スチレン系エラストマー(JSR社製“DYNARON・SEBS・8630P”、10質量%)を、分離膜の透過側に塗布して、膜の長さ方向に途切れなく連続する透過側流路材を作製した。樹脂温度は215℃であり、加工速度は4.5m/分であった。得られた透過側流路材の形状は、表1のとおりであった。
得られた分離膜を、折り畳み断裁加工し、ネット(厚み:0.7mm、ピッチ:5.2mm×5mm、繊維径:0.35mm、投影面積比:0.13)を供給側流路材として、幅900mmかつリーフ長800mmで26枚のリーフを作製した。
このようして得られたリーフに対して、接着剤を手動塗布し、これをトリコット(厚み:0.2mm、溝幅:0.2mm、畦幅:0.3mm、溝深さ:0.1mm)を予め1周分被覆したABS製集水管(幅:1,020mm、径:30mm、孔数40個×直線状1列)にスパイラル状に巻き付けた。リーフ間を接着した接着剤を、「リーフ接着剤」と称する。リーフ接着剤としては、主剤であるイソシアネートおよび硬化剤であるポリオールをそれぞれ1:2で混合したポリウレタンを用いた。
手動巻囲された封筒状膜の外周にさらにフィルムを巻き付け、テープで固定した後に、エッジカット、端板取りつけおよびフィラメントワインディングを行うことにより、8インチの分離膜エレメントを作製した。有効膜面積における膜幅は900mmであった。この分離膜エレメントを圧力容器に入れて、上述の条件で運転を行ったところ、耐ズレ性および耐久性は表1のとおりであった。
(実施例2〜7)
特に言及しない条件については、実施例1と同様にして分離膜を作製した。具体的に、透過側流路材を分離膜の透過側に形成するにあたり、バックアップロールとノズル間の距離、加工速度を変更しながら実施し、透過側流路材の高さを表1および表2のとおりに変更したこと以外は、全て実施例1と同様にして、分離膜を作製した。続いて、実施例1と同様にして分離膜エレメントを作製した。
手動巻囲された封筒状膜の外周にさらにフィルムを巻き付け、テープで固定した後に、エッジカット、端板取りつけおよびフィラメントワインディングを行うことにより、8インチの分離膜エレメントを作製した。有効膜面積における膜幅は900mmであった。この分離膜エレメントを圧力容器に入れて、上述の条件で運転を行ったところ、耐ズレ性および耐久性は表1および表2のとおりであった。
(実施例8)
突起物を分離膜の基材側に形成する代わりに、シートを抄紙不織布(糸径:1デシテックス、厚み:約0.03mm、空隙率25%)とし、表2に示す突起物を配置したこと以外は、全て実施例7と同様に、分離膜エレメントを作製した。
このエレメントを圧力容器に入れて、上述の条件で運転を行って透過水を得たところ、エレメント性能は表2の通りであった。
(比較例1〜3)
流路材を分離膜の透過側に形成するにあたり、バックアップロールとノズル間の距離と加工速度を変更しながら実施し、透過側流路材の高さを表3のとおりに変更したこと以外は、全て実施例1と同様にして分離膜を作製した。続いて、実施例1と同様にして分離膜エレメントを作製した。
手動巻囲された封筒状膜の外周にさらにフィルムを巻き付け、テープで固定した後に、エッジカット、端板取りつけ、およびフィラメントワインディングを行うことにより、8インチの分離膜エレメントを作製した有効膜面積における膜幅は900mmであった。この分離膜エレメントを圧力容器に入れて、上述の条件で運転を行ったところ、耐ズレ性および耐久性は表3のとおりであった。
これらの結果から明らかなように、本発明の実施例の分離膜エレメントは、高造水性能、安定運転性能および優れた除去性能を有していることが明らかである。
Figure 2016026865
Figure 2016026865
Figure 2016026865
1、20A 分離膜
121 供給側の面
122 透過側の面
2 分離膜本体
201 基材
202 多孔性支持層
203 分離機能層
3 透過側流路材
31 突起物
4 分離膜リーフ
5 透過側流路
6 集水管
7 分離膜
13 シート
14 透過側流路材(シート状)
21 供給側の面
22 透過側の面
71 供給側の面
72 透過側の面
100 分離膜エレメント
a 分離膜本体の長さ
b 分離膜本体の幅方向における突起物の幅方向の間隔
c 突起物の高さ
d 突起物の幅
e 突起物の長さ方向の間隔
f 突起物の長さ
L1 分離膜本体の長さ
L3 分離膜の巻囲方向外側端部において透過側流路材が設けられていない領域の長さ
R3 分離膜の巻囲方向外側端部において透過側流路材が設けられていない領域

Claims (4)

  1. 集水管と、
    分離膜本体と前記分離膜本体の透過側の面に固着された複数の突起からなる透過側流路材とを備えた前記集水管の周囲に巻囲された分離膜と、
    前記分離膜の供給側の面に対向するように配置された供給側流路材とを備えてなる分離膜エレメントであって、
    前記突起の高さが、0.15mm以上0.35mm以下であり、
    かつ、前記分離膜の巻囲方向において、前記分離膜の外側端部から分離膜の長さの20%以内の領域に配置された突起の平均高さが、前記分離膜の内側端部から前記分離膜の長さの50%以内の領域に配置された突起の平均高さの1.05倍以上2.0倍以下であることを特徴とする
    分離膜エレメント。
  2. 集水管と、
    分離膜本体と前記分離膜本体の透過側の面に配置された突起を有するシートである透過側流路材と、
    前記分離膜本体の供給側の面に対向するように配置された供給側流路材とを備えてなる分離膜エレメントであって、
    前記突起の高さが、0.15mm以上0.35mm以下であり、
    かつ、前記透過側流路材の巻囲方向において、前記透過側流路材の外側端部から透過側流路材の長さの20%以内の領域に配置された突起の平均高さが、前記透過側流路材の内側端部から前記透過側流路材の長さの50%以内の領域に配置された突起の平均高さの1.05倍以上2.0倍以下であることを特徴とする
    分離膜エレメント。
  3. 分離膜の巻囲方向内側端部から前記分離膜の長さの50%以内の領域に配置された突起の高さの変動係数が0%以上10%以下であることを特徴とする請求項1記載の分離膜エレメント。
  4. 透過側流路材の巻囲方向内側端部から前記透過側流路材の長さの50%以内の領域に配置された突起の高さの変動係数が0%以上10%以下であることを特徴とする請求項2記載の分離膜エレメント。
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