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JP2016079363A - 硬化性組成物及びその硬化物、ハードコート材及びハードコート膜、並びに積層体 - Google Patents

硬化性組成物及びその硬化物、ハードコート材及びハードコート膜、並びに積層体 Download PDF

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JP2016079363A
JP2016079363A JP2014215407A JP2014215407A JP2016079363A JP 2016079363 A JP2016079363 A JP 2016079363A JP 2014215407 A JP2014215407 A JP 2014215407A JP 2014215407 A JP2014215407 A JP 2014215407A JP 2016079363 A JP2016079363 A JP 2016079363A
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JP2014215407A
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English (en)
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克朗 浦川
Katsuro Urakawa
克朗 浦川
陽太郎 服部
Yotaro Hattori
陽太郎 服部
浩文 井上
Hirofumi Inoue
浩文 井上
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Resonac Holdings Corp
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Showa Denko KK
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Abstract

【課題】透明な基材との屈折率差が小さく、鉛筆硬度、基材密着性を同時に有するハードコート膜を非加熱で形成することができる硬化性組成物及びハードコート材を提供する。【解決手段】硬化性組成物は、下記化学式(I)で表される反応性ビニルモノマー(A)と、分子内にトリアジン環及び少なくとも2つの(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレート(B)と、を必須成分とする重合性モノマーを含有するとともに、光重合開始剤(C)をさらに含有する。反応性ビニルモノマー(A)と多官能(メタ)アクリレート(B)の質量比は、A:B=10:90〜50:50である。重合性モノマーの含有量を100質量部とした場合の光重合開始剤(C)の含有量は0.1質量部以上20質量部以下である。また、ハードコート材は、前記硬化性組成物からなる。【化1】【選択図】なし

Description

本発明は、硬化可能な硬化性組成物、及び、前記硬化性組成物を硬化させた硬化物に関する。また、本発明は、前記硬化性組成物のハードコート材としての適用、及び、前記ハ
ードコート材を用いて形成されるハードコート膜に関する。さらに、本発明は、前記ハードコート材を用いて基材の表面に前記ハードコート膜を形成してなる積層体に関する。
ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリメチルメタクリレート/スチレン共重合樹脂(MS樹脂)、ポリカーボネート樹脂等の合成樹脂からなる成形品は、軽量且つ耐衝撃性に優れ、透明性も良好である。そのため、ヘッドランプ、計器類のカバー、車両のガラス窓代替基材、導光板等への適用など、幅広い利用が検討されている。ただし、これらの合成樹脂からなる成形品は耐擦傷性が十分ではないため、より硬い材料からなる部材との接触や摩擦によって表面に損傷が生じやすいという問題があった。そのため、これらの合成樹脂からなる成形品の表面にハードコート膜を設けて表面硬度を高めることで、耐擦傷性の改善が図られている。
ハードコート膜を設ける方法としては、例えば、シリコーン系被覆剤やメラミン系被覆剤を表面に塗布した後に加熱縮合させることで被膜を形成する方法や、ラジカル重合性組成物を表面に塗布した後に熱又は光によってラジカル重合を生じさせ架橋させることで被膜を形成する方法があげられる。
しかしながら、加熱縮合によりハードコート膜を形成する方法は、高い耐擦傷性を得るためには合成樹脂からなる成形品に対して長時間にわたって高温での熱処理を行う必要があるので、省エネルギーや生産効率の観点で好ましくなかった。また、ラジカル重合によりハードコート膜を形成する方法は、ラジカル重合性組成物の多くが溶剤を含有しているので、溶剤の発散による環境への負荷や作業者の健康被害の懸念があるほか、乾燥工程が必要であるため省エネルギーの観点でも好ましくなかった。よって、ハードコート膜を形成するための組成物が溶剤を含有していることは好ましくなかった。
樹脂製基材の表面にハードコート膜を形成する技術の例としては、ビスフェノールA骨格を有するアクリレートモノマーとビニルモノマーとを含有するコーティング剤を用いて、屈折率が調整されたハードコート膜を形成する方法が、特許文献1に開示されている。しかしながら、特許文献1に開示の技術は、熱硬化によってハードコート膜を形成する方法であるので、上記の通り、省エネルギーや生産効率の観点で問題があった。
また、特許文献2には、多官能アクリレートとビスフルオレン化合物とを含有する紫外線硬化性コーティング剤を用いて、屈折率が調整されたハードコート膜を形成する方法が開示されている。しかしながら、特許文献2に開示のコーティング剤は溶剤を含有しているので、上記の通り、環境への負荷や作業者の健康被害の懸念があるほか、省エネルギーの観点でも問題があった。
さらに、特許文献3には、無溶剤型の紫外線硬化性コーティング剤を用いてハードコート膜を形成する方法が開示されている。しかしながら、特許文献3に開示の技術は、嫌気性雰囲気下で硬化を行ってハードコート膜を形成する方法であるので、混入した酸素により硬化不良が生じる懸念があった。
非加熱でハードコート膜を形成する方法や、無溶剤のコーティング剤を用いてハードコート膜を形成する方法も知られているが、これらの方法では、樹脂製基材の表面にハードコート膜を十分に密着させることができないおそれがあった。密着性を高めるためにコーティング剤の架橋密度を下げると、ハードコート膜の硬さが不十分となって、十分な耐擦傷性、耐摩耗性が得られないおそれがあった。
さらに、透明な樹脂製基材は、それぞれ固有の屈折率を有しているが、ハードコート膜との屈折率の差が大きい場合には、反射率の増加による全光線透過率の低下や、光の干渉に起因した、いわゆる干渉縞や干渉ムラが発生し、視認性が低下するおそれがあった。そのため、樹脂製基材の種類によって、最適な屈折率となるようにコーティング剤の組成を設計する必要があった。
特開平5−5011号公報 特開平7−247383号公報 特開平10−36540号公報
そこで、本発明は、上記のような従来技術が有する問題点を解決し、透明な基材との屈折率差が小さく、鉛筆硬度、基材密着性を同時に有するハードコート膜を非加熱で形成することができる硬化性組成物及びハードコート材を提供することを課題とする。また、本発明は、鉛筆硬度、基材密着性を同時に有するハードコート膜及び硬化物を提供することを併せて課題とする。さらに、本発明は、鉛筆硬度、基材密着性を同時に有するハードコート膜が基材の表面に高密着で形成されてなる積層体を提供することを併せて課題とする。
前記課題を解決するため、本発明の一態様は以下の[1]〜[6]の通りである。
[1] 下記化学式(I)で表される反応性ビニルモノマー(A)と、分子内にトリアジン環及び少なくとも2つの(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレート(B)と、を必須成分とする重合性モノマーを含有するとともに、光重合開始剤(C)をさらに含有し、
前記反応性ビニルモノマー(A)と前記多官能(メタ)アクリレート(B)の質量比が、A:B=10:90〜50:50であり、
前記重合性モノマーの含有量を100質量部とした場合の前記光重合開始剤(C)の含有量が0.1質量部以上20質量部以下である硬化性組成物。
ただし、下記化学式(I)中のRは、水素原子、任意の位置に酸素原子を含んでもよい炭素数1以上10以下の直鎖状若しくは分岐鎖状であるアルキル基、炭素数6以上12以下の芳香族基、炭素数3以上6以下のアルコキシシリル基、カルボキシ基若しくはその塩、又は、スルホ基若しくはその塩を示し、3個のRはそれぞれ独立して水素原子又はメチル基を示し、mは1又は2を示す。
Figure 2016079363
[2] 前記重合性モノマーとして、少なくとも2つのエチレン性二重結合を有する化合物である架橋性モノマー(D)をさらに含有し、前記反応性ビニルモノマー(A)の含有量を100質量部とした場合の前記架橋性モノマー(D)の含有量が10質量部以上400質量部以下である[1]に記載の硬化性組成物。
[3] 前記多官能(メタ)アクリレート(B)はメラミン骨格を有する[1]又は[2]に記載の硬化性組成物。
[4] 前記重合性モノマーとして、極性基及び(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートモノマーである密着性付与材(E)をさらに含有し、前記反応性ビニルモノマー(A)の含有量を100質量部とした場合の前記密着性付与材(E)の含有量が0.1質量部以上20質量部以下である[1]〜[3]のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
[5] 前記密着性付与材(E)が下記化学式(II)で表される化合物である[4]に記載の硬化性組成物。
ただし、下記化学式(II)中のRは、炭素数2以上10以下の直鎖状若しくは分岐鎖状の脂肪族炭化水素基又は炭素数6以上18以下の芳香族基を示し、Rは水素原子又はメチル基を示し、nは1以上5以下の整数を示す。
Figure 2016079363
[6] 粘度が20mPa・s以上1000mPa・s以下である[1]〜[5]のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
[7] [1]〜[6]のいずれか一項に記載の硬化性組成物を硬化させたものである硬化物。
[8] [1]〜[6]のいずれか一項に記載の硬化性組成物からなるハードコート材。
[9] [8]に記載のハードコート材を基材の表面に膜状に配し硬化させて形成されるハードコート膜。
[10] 波長578nmの光に対する屈折率が1.54以上1.60以下である[9]に記載のハードコート膜。
[11] 基材と、[8]に記載のハードコート材を前記基材の表面に膜状に配し硬化させて形成されるハードコート膜と、を備える積層体。
[12] 前記ハードコート膜の波長578nmの光に対する屈折率が1.54以上1.60以下である[11]に記載の積層体。
[13] 前記基材の波長578nmの光に対する屈折率が1.54以上1.60以下である[11]又は[12]に記載の積層体。
[14] 前記基材が、ポリカーボネート、ポリスチレン、及び、スチレンとメチルメタクリレートの共重合体のうちの少なくとも1種で構成される[11]〜[13]のいずれか一項に記載の積層体。
本発明の硬化性組成物及びハードコート材は、透明な基材との屈折率差が小さく、鉛筆硬度、基材密着性を同時に有するハードコート膜を非加熱で形成することができる。
また、本発明のハードコート膜及び硬化物は、鉛筆硬度、基材密着性を同時に有する。
さらに、本発明の積層体は、鉛筆硬度、基材密着性を同時に有するハードコート膜が基材の表面に対して高密着で形成されている。
本発明の実施の形態を詳細に説明する。なお、本発明においては、「(メタ)アクリレート」はメタクリレート及び/又はアクリレートを意味し、「(メタ)アクリロイル」はメタクリロイル及び/又はアクリロイルを意味し、「(メタ)アクリル」はメタクリル及び/又はアクリルを意味する。
本発明者らは、前述の従来技術が有する種々の問題点を解決するために鋭意検討した結果、特定の芳香環を有する反応性ビニルモノマーと、分子内にトリアジン環及び少なくとも2つの(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレートと、光重合開始剤と、を組み合わせることにより、前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本実施形態の硬化性組成物は、下記化学式(I)で表される反応性ビニルモノマー(A)と、分子内にトリアジン環及び少なくとも2つの(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレート(B)と、を必須成分とする重合性モノマーを含有するとともに、光重合開始剤(C)をさらに含有し、反応性ビニルモノマー(A)と多官能(メタ)アクリレート(B)の質量比がA:B=10:90〜50:50であり、重合性モノマーの含有量を100質量部とした場合の光重合開始剤(C)の含有量が0.1質量部以上20質量部以下である。
なお、重合性モノマーとは、エチレン性二重結合等の重合可能な構造を有する化合物であり、反応性ビニルモノマー(A)、多官能(メタ)アクリレート(B)と、後述する架橋性モノマー(D)、密着性付与材(E)が包含される。
ただし、下記化学式(I)中のRは、水素原子、任意の位置に酸素原子を含んでもよい炭素数1以上10以下の直鎖状若しくは分岐鎖状であるアルキル基、炭素数6以上12以下の芳香族基、炭素数3以上6以下のアルコキシシリル基、カルボキシ基若しくはその塩、又は、スルホ基若しくはその塩を示し、3個のRはそれぞれ独立して水素原子又はメチル基を示し、mは1又は2を示す。Rの例としては、−SONa、−SOLi、−SONH、−SOCHCH、ターシャリーブトキシ基、アセチルオキシ基、1−エトキシエトキシ基、カルボキシ基、メチル基があげられる。
Figure 2016079363
このような硬化性組成物は、光重合開始剤(C)を含有しているので、非加熱で硬化させることができる。よって、硬化性組成物の硬化プロセスは、省エネルギー性や生産効率が優れている。また、この硬化性組成物は溶剤を含んでいる必要がなく、無溶剤型の組成物とすることができるので、溶剤の発散による環境への負荷や作業者の健康被害の懸念がない。さらに、硬化性組成物の硬化プロセスにおいて溶剤の乾燥が不要なので、省エネルギー性が優れている。さらに、本実施形態の硬化性組成物は、多官能(メタ)アクリレート(B)の反応性が高ので、酸素存在下であっても優れた硬化性を示し、表面にタックが発生しにくいなど、安定的に硬化を行うことができる。
そして、このような本実施形態の硬化性組成物を光硬化(例えば紫外線硬化)させた硬化物及びハードコート膜は、高屈折率であるとともに、優れた耐擦傷性及び鉛筆硬度を有している。さらに、本実施形態の硬化性組成物を光硬化させたハードコート膜は、反応性ビニルモノマー(A)が有するスチレン骨格の基材侵食性により、基材に対する密着性が高い。例えば、難密着性であるポリカーボネートで構成された基材の表面に対しても、ハードコート膜を高密着で形成することができる。
以下に、本実施形態の硬化性組成物の各成分について説明する。
<(1)反応性ビニルモノマー(A)>
本実施形態の硬化性組成物に含有される反応性ビニルモノマー(A)は、芳香環を有する化合物であり、前記化学式(I)で表される化学構造を有している。反応性ビニルモノマー(A)の含有量により、本実施形態の硬化性組成物を硬化させて製造されたハードコート膜の屈折率を調整することができ、波長578nmの光に対する屈折率を例えば1.54以上1.60以下の高屈折率とすることができる。
ハードコート膜の屈折率を1.54以上1.60以下とすることで、ポリカーボネート、ポリスチレン、スチレンとメチルメタクリレートの共重合体との屈折率差を低減させ、結果として、透明性の向上や干渉ムラの低減に寄与することができる。また、ポリカーボネートは商品によってその屈折率が異なる場合があるが、屈折率が1.51以上1.63以下のものを使用した場合に特に有効である。ポリスチレンの屈折率は1.59である。スチレンとメチルメタクリレートの共重合体は、屈折率が1.51以上1.59以下のものを使用した場合に特に有効である。
また、反応性ビニルモノマー(A)の含有量により、本実施形態の硬化性組成物及びハードコート材の粘度を調整することができるとともに、基材に対するハードコート膜の密着性を向上させることができる。本実施形態の硬化性組成物及びハードコート材の粘度は、20mPa・s以上1000mPa・s以下としてもよい。ハードコート材の粘度を、20mPa・s以上1000mPa・s以下とすることで、塗工均一性と生産性の高いグラビアコート等の手法を適用することができる。なお、本発明における粘度は、RheoSense社製のμ−VISCを用いて、測定温度25℃にて測定される粘度である。
反応性ビニルモノマー(A)の種類は、化学式(I)で表される化学構造を有し芳香環とビニル基を備えていれば特に限定されるものではないが、例えばスチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼン、α−メチルスチレン、フェニルスチレン、p−スチレンスルホン酸ナトリウム、p−スチレンスルホン酸リチウム、p−スチレンスルホン酸アンモニウム、p−スチレンスルホン酸エチル、p−tert−ブトキシスチレン、m−tert−ブトキシスチレン、p−アセトキシスチレン、p−(1−エトキシエトキシ)スチレン、4−ビニル安息香酸などがあげられる。これらの中では、スチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼンが好ましい。また、これらの反応性ビニルモノマー(A)は、1種を単独で使用することもできるし、2種以上を併用することもできる。
本実施形態の硬化性組成物中における反応性ビニルモノマー(A)の含有量は、反応性ビニルモノマー(A)と多官能(メタ)アクリレート(B)の質量比がA:B=10:90〜50:50となる量であり、好ましくはA:B=15:85〜45:55となる量である。
反応性ビニルモノマー(A)の前記質量比が10以上であれば、硬化性組成物及びハードコート材の粘度並びにハードコート膜の屈折率の調整が容易となるとともに、ハードコート膜の基材密着性が優れている。一方、反応性ビニルモノマー(A)の前記質量比が50以下であれば、硬化性組成物の硬化時に硬化不良が生じにくく、硬化性組成物の硬化により得られた硬化物及びハードコート膜の強度が十分に高くなる。
<(2)分子内にトリアジン環及び少なくとも2つの(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレート(B)>
本実施形態の硬化性組成物は、分子内にトリアジン環及び少なくとも2つの(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレート(B)を含有している。多官能(メタ)アクリレート(B)により、ハードコート膜の鉛筆硬度と屈折率が高められる。なお、多官能(メタ)アクリレートとは、(メタ)アクリロイルオキシ基を2つ以上有する(メタ)アクリレートを意味する。
本実施形態の硬化性組成物中における多官能(メタ)アクリレート(B)の含有量は、(1)項に上記した通りである。
本実施形態の硬化性組成物中における多官能(メタ)アクリレート(B)の含有量が上記範囲内であれば、硬化性組成物の硬化性が優れているとともに、硬化性組成物から得られたハードコート膜の屈折率が高くなり、ハードコート膜の屈折率を1.54以上1.60以下に設定しやすくなる。
多官能(メタ)アクリレート(B)の種類は、分子内にトリアジン環及び少なくとも2つの(メタ)アクリロイル基を有しているならば特に限定されるものではないが、例えば、トリス(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ビス(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)−2−ヒドロキシエチルイソシアヌレート、カプロラクトン変性トリス(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、メラミン骨格を有する(メタ)アクリレートなどがあげられる。これらの化合物は、1種を単独で使用することもできるし、2種以上を併用することもできる。
メラミン骨格を有する(メタ)アクリレートとしては、例えば、下記の方法によって得ることができる化合物があげられる。すなわち、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート中にメラミン及びパラホルムアルデヒドを加えて加熱撹拌し、水分を抜出しながら縮合反応を進行させる方法、メチロール化メラミンと2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートのようなヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートモノマーとを反応させる方法、エーテル化メラミンと2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとをトランスエーテル化によって反応させる方法などである。なお、メラミン骨格とは、トリアジン環(例えば1,3,5−トリアジン環)に存在する3つの炭素原子の全てに、トリアジン環中の窒素原子以外の窒素原子が結合した構造をいう。
多官能(メタ)アクリレート(B)として好適に使用できる市販品としては、例えば、東亜合成化学工業株式会社製のアロニックス M−215、アロニックス M−315、アロニックス M−325や、MIWON社製のMIRAMER M370、MIRAMER M3730、MIRAMER SC9610や、新中村化学工業株式会社製のNKエステル A−9200、NKエステル A−9300、NKエステル A−9300−1CL、NKエステル A−9300−3CLをあげることができる。
<(3)光重合開始剤(C)>
本実施形態の硬化性組成物は、光重合開始剤(C)を含有している。そのため、硬化性組成物に光(紫外線、可視光等)を照射するとラジカルが発生し、反応性ビニルモノマー(A)と多官能(メタ)アクリレート(B)の反応性基が重合して硬化するので、ハードコート膜等の硬化物が得られる。
本実施形態の硬化性組成物中における光重合開始剤(C)の含有量は、重合性モノマーの含有量100質量部に対して、0.1質量部以上20質量部以下であることが好ましく、0.5質量部以上10質量部以下であることがより好ましく、1質量部以上5質量部以下であることがさらに好ましい。
本実施形態の硬化性組成物中における光重合開始剤(C)の含有量が上記範囲内であれば、硬化性組成物を硬化させる際に硬化が十分に進行する。また、硬化性組成物の保存安定性が良好となり、例えば着色が生じにくい。さらに、硬化性組成物が硬化する際の架橋反応が急激に進行することがないため、ハードコート膜等の硬化物に割れ等の問題が発生しにくい。さらに、ハードコート膜等の硬化物を高温処理した際に、多量のアウトガス成分が発生することがないので、周辺を汚染しにくい。
光重合開始剤(C)としては、例えば、ベンゾフェノン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ジエトキシアセトフェノン、1−ヒドロキシフェニルフェニルケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(例えばBASF社製の商品名イルガキュア184)、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(例えばBASF社製の商品名イルガキュア651)、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン(例えばBASF社製の商品名ダロキュア1173)、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン(例えばBASF社製の商品名イルガキュア2959)、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオニル)−ベンジル]−フェニル}−2−メチルプロパン−1−オン(例えばBASF社製の商品名イルガキュア127)、フェニルグリオキシリックアシッドメチルエステル(例えばBASF社製の商品名ダロキュアMBF)、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン(例えばBASF社製の商品名イルガキュア907)、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1−オン(例えばBASF社製の商品名イルガキュア369)、2−ジメチルアミノ−2−(4−メチル−ベンジル)−1−(4−モルフォリン−4−イル−フェニル)−ブタン−1−オン(例えばBASF社製の商品名イルガキュア379)、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド(例えばBASF社製の商品名イルガキュア819)、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−ホスフィンオキサイド(例えばBASF社製の商品名ルシリンTPO)、ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウム(例えばBASF社製の商品名イルガキュア784)、1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)](例えばBASF社製の商品名イルガキュアOXE01)、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−1,1−(0−アセチルオキシム)(例えばBASF社製の商品名イルガキュアOXE02)があげられる。これらの化合物は、1種を単独で使用することもできるし、2種以上を併用することもできる。
<(4)少なくとも2つのエチレン性二重結合を有する化合物である架橋性モノマー(D)>
本実施形態の硬化性組成物には、ハードコート膜等の硬化物の鉛筆硬度等の特性を向上させる目的で、重合性モノマーとして、少なくとも2つのエチレン性二重結合を有する化合物である架橋性モノマー(D)をさらに含有させてもよい。ただし、架橋性モノマー(D)には、前記化学式(I)で表される反応性ビニルモノマー(A)、並びに、分子内にトリアジン環及び少なくとも2つの(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレート(B)は含まれない。
本実施形態の硬化性組成物中における架橋性モノマー(D)の含有量は、反応性ビニルモノマー(A)の含有量100質量部に対して、10質量部以上400質量部以下であることが好ましく、10質量部以上300質量部以下であることがより好ましく、10質量部以上200質量部以下であることがさらに好ましい。本実施形態の硬化性組成物中における架橋性モノマー(D)の含有量が上記範囲内であれば、硬化性組成物から得られたハードコート膜の基材密着性が高くなる。
架橋性モノマー(D)としては、例えば、(メタ)アクリル酸エステル(D−1)、エポキシ(メタ)アクリレート(D−2)、ウレタン(メタ)アクリレート(D−3)があげられる。
<(4−1)(メタ)アクリル酸エステル(D−1)>
(メタ)アクリル酸エステル(D−1)としては、具体的には、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレートなどのジアクリレートや、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリス(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレートなどの多官能(メタ)アクリレート、並びにそれらのエチレンオキサイド変性体及びプロピレンオキサイド変性体があげられるが、これらに限られるものではない。これらの中でも、硬化物の鉛筆硬度、耐擦傷性が良好となる観点から、3官能以上の(メタ)アクリレートモノマーが好ましい。また、これらの化合物は、1種を単独で使用することもできるし、2種以上を併用することもできる。
<(4−2)エポキシ(メタ)アクリレート(D−2)>
エポキシ(メタ)アクリレート(D−2)は、エポキシ化合物に対して(メタ)アクリロイル基を有するカルボン酸を反応させて得ることができる。エポキシ化合物としては、具体的には、グリシジル(メタ)アクリレート、炭素数1〜12の直鎖アルコールの両末端グリシジルエーテル体、ジエチレングリオールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジグリシジルエーテル、プロピレンオキサイド変性ビスフェノールAジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル等があげられる。(メタ)アクリロイル基を有するカルボン酸としては、(メタ)アクリル酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸等があげられる。
<(4−3)ウレタン(メタ)アクリレート(D−3)>
ウレタン(メタ)アクリレート(D−3)は、アルコール化合物(D−3−1)、多官能チオール化合物(D−3−2)、又は多官能アミン化合物(D−3−3)に対して、後述の(メタ)アクリロイル基含有イソシアネート化合物(E−1)を反応させることによって得られる。あるいは、アルコール化合物(D−3−1)とイソシアネート化合物(D−3−4)をイソシアナト基過剰の条件下で縮合反応させ、末端にイソシアナト基を有するポリウレタン化合物を合成した後、末端イソシアナト基に対して(メタ)アクリロイル基を有するアルコール化合物(D−3−5)を縮合反応させることによって得られる。
アルコール化合物(D−3−1)としては、具体的には、2−ヒドロキシエチルアクリレートなどの(メタ)アクリロイルオキシ基含有アルコール、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、グリセリン、ポリグリセリン、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、1,3,5−トリヒドロキシペンタン、1,4−ジチアン−2,5−ジメタノールトリシクロデカンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール、ノルボルナンジメタノール、ポリカーボネートジオール、ポリシロキサンジオール、ビスフェノールA、水添ビスフェノールA、パーフルオロアルコール、パーフルオロポリエーテルアルコール、及びこれらのEO(エチレンオキシド)変性体、PO(プロピレンオキシド)変性体、カプロラクトン変性体があげられる。
また、多官能チオール化合物(D−3−2)としては、炭素数2〜20の直鎖状、分岐鎖状、又は環状のアルキルチオール(分子内にチオエーテル構造を有していてもよい)や、該アルキルチオールのチイラン付加物があげられる。あるいは、前記アルコール化合物(D−3−1)のうち、少なくとも2つのヒドロキシ基を有する化合物と、下記化学式(III)の化合物とを反応させたエステル化合物があげられる。
Figure 2016079363
なお、上記化学式(III)中のR及びRは各々独立して水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基若しくは芳香族基であり、中でもメチル基又はエチル基が好ましい。また、R及びRの一方が水素原子で、他方が炭素数1〜10のアルキル基(特にメチル基又はエチル基)であることがさらに好ましい。pは0以上2以下の整数であり、好ましくは0又は1である。qは0又は1であり、好ましくは0である。
化学式(III)の化合物の具体例としては、2−メルカプトプロピオン酸、3−メルカプトプロピオン酸、2−メルカプトブタン酸、3−メルカプトブタン酸、4−メルカプトブタン酸、2−メルカプトイソブタン酸、2−メルカプトイソペンタン酸、3−メルカプトイソペンタン酸、3−メルカプトイソヘキサン酸があげられ、3−メルカプトプロピオン酸、3−メルカプトブタン酸が好ましい。
多官能アミン化合物(D−3−3)としては、イソホロンジアミン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、ヘキサメチレンジアミン、メラミン、メラミン誘導体等があげられる。硬化物の耐候性、硬度の観点から、イソホロンジアミン、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、メラミンが好ましい。
イソシアネート化合物(D−3−4)としては、後述の(メタ)アクリロイル基含有イソシアネート化合物(E−1)のほか、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート及びその水添物、キシリレンジイソシアネート及びその水添物、ノルボルナンジイソシアネート、さらにそれらのアロファネート体、2量体(ウレトジオン)、3量体(イソシアヌレート)があげられる。
(メタ)アクリロイル基を有するアルコール化合物(D−3−5)としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシ−2−(メタ)アクリロイロキシプロピル(メタ)アクリレート、ビス((メタ)アクリロイルオキシエチル)−2−ヒドロキシエチルイソシアヌレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等があげられる。これらの化合物は、1種を単独で使用することもできるし、2種以上を併用することもできる。
<(5)極性基及び(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートモノマーである密着性付与材(E)>
本実施形態の硬化性組成物には、ハードコート膜の鉛筆硬度等の機械的特性や高屈折率を損なうことなく基材に対する密着性を向上させる目的で、重合性モノマーとして、極性基及び(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートモノマーである密着性付与材(E)をさらに含有せてもよい。ただし、密着性付与材(E)には、前記化学式(I)で表される反応性ビニルモノマー(A)、分子内にトリアジン環及び少なくとも2つの(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレート(B)、並びに、架橋性モノマー(D)は含まれない。
本実施形態の硬化性組成物中における密着性付与材(E)の含有量は、反応性ビニルモノマー(A)の含有量100質量部に対して、0.1質量部以上20質量部以下であることが好ましく、0.5質量部以上15質量部以下であることがより好ましく、1質量部以上10質量部以下であることがさらに好ましい。本実施形態の硬化性組成物中における密着性付与材(E)の含有量が上記範囲内であれば、硬化性組成物を硬化させて得られたハードコート膜の基材密着性がより高くなる。また、硬化性組成物の保存安定性が優れており、着色が生じにくい。さらに、硬化性組成物の架橋性が優れており、ハードコート膜の機械的強度がより高くなる。
密着性付与材(E)が有する極性基としては、例えば、ヒドロキシ基、カルボキシ基、メルカプト基、アミノ基、エポキシ基、スルホニル基、イソシアナト基があげられる。あるいは、アミド結合、イミド結合、ウレタン結合、チオウレタン結合、ウレア結合等の酸素原子以外のヘテロ原子を含む結合も、極性基としてあげることができる。さらには、モルホリン骨格等の3級アミノ基も、極性基としてあげることができる。
これら極性基を有する密着性付与材(E)の中でも、(メタ)アクリロイル基含有イソシアネート化合物(E−1)が特に好ましい。(メタ)アクリロイル基含有イソシアネート化合物(E−1)は、下記化学式(II)で表される化合物である。
ただし、下記化学式(II)中のRは、炭素数2以上10以下の直鎖状若しくは分岐鎖状の脂肪族炭化水素基又は炭素数6以上18以下の芳香族基を示し、Rは水素原子又はメチル基を示し、nは1以上5以下の整数を示す。
Figure 2016079363
(メタ)アクリロイル基含有イソシアネート化合物(E−1)としては、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルイソシアネート、4−(メタ)アクリロイルオキシブチルイソシアネート、5−(メタ)アクリロイルオキシペンチルイソシアネート、6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシルイソシアネート、2−(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)オキシエチルイソシアネート、3−(メタ)アクリロイルオキシフェニルイソシアネート、4−(メタ)アクリロイルオキシフェニルイソシアネート、1,3−ビス((メタ)アクリロイルオキシ)プロピル−2−メチル−2−イソシアネート、1,3−ビス((メタ)アクリロイルオキシ)プロピル−2−イソシアネート等があげられる。これらの化合物は、1種を単独で使用することもできるし、2種以上を併用することもできる。
本実施形態の硬化性組成物は、溶剤を含有している必要がなく、無溶剤型の組成物とすることができるが、有機溶剤等の溶剤を配合してもよい。有機溶剤の種類は特に限定されるものではないが、例えば、メチルエチルケトン、アセトン等のケトンや、酢酸メチル、酢酸エチル等のエステルや、トルエン、キシレン等の芳香族化合物があげられる。また、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素や、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテルや、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコールがあげられる。
また、本実施形態の硬化性組成物には、本発明の目的や効果を損なわない範囲において、硬化性組成物や硬化物に所望の特性を付与する添加剤(F)を配合してもよい。添加剤(F)としては、例えば、光増感剤、重合禁止剤、重合開始助剤、レベリング剤、濡れ性改良剤、消泡剤、可塑剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、帯電防止剤、シランカップリング剤、顔料、染料、スリップ剤、連鎖移動剤、光安定化剤、無機微粒子フィラーがあげられる。これらの添加剤(F)の中では、光増感剤、レベリング剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定化剤、無機微粒子フィラー、連鎖移動剤を配合することが好ましい。
本発明においては、樹脂やガラス等の種々の材質からなる物品(基材)の表面にコーティングして、耐擦傷性や防汚性等の表面性能を向上させる材料をハードコート材という。本実施形態の硬化性組成物はハードコート材として用いることができる。
本実施形態の液状のハードコート材を塗布、噴霧、浸漬等の慣用の方法によって種々の材質(樹脂、ガラス等)の基材の表面に膜状に配した上、該ハードコート材を光によって硬化させれば、基材の表面にハードコート膜を被覆することができる。
慣用の方法によって、本実施形態の硬化性組成物をフィルム状に加工するとともに硬化性組成物の硬化を行えば、硬化性組成物のフィルム状の硬化物を得ることができる。該硬化性組成物がハードコート材である場合は、該フィルム状の硬化物はハードコート膜となる。
光(放射線)については、ハードコート材を基材の表面にコーティングした後に短時間でハードコート材を硬化させることができるものであるならば、その光(放射線)の種類は特に限定されるものではないが、例えば、可視光線、紫外線、電子線等をあげることができる。
可視光線の線源としては、日光、可視光ランプ、蛍光灯、レーザー等をあげることができる。さらに、紫外線の線源としては、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、レーザー等をあげることができる。さらに、電子線の線源としては、市販されているタングステンフィラメントから発生する熱電子を利用する方式、金属に高電圧パルスを通じて電子線を発生させる冷陰極方式、及びイオン化したガス状分子と金属電極との衝突により発生する2次電子を利用する2次電子方式をあげることができる。
また、本実施形態のハードコート材は実質的に非反応性の成分を含まず、不純物を除く全ての成分が反応性の不飽和基を有するか十分に高い沸点を有する。従来は、このような組成物が良好な基材密着性を有することは困難であったが、本実施形態のハードコート材から得られるハードコート膜は良好な基材密着性を有している。
さらに、本実施形態のハードコート材は、実質的に溶剤成分を含まないようにすることができる。その場合は、基材の表面にハードコート材を膜状に配しハードコート材を硬化して、基材の表面にハードコート膜が形成された積層体を製造する一連の製造プロセスにおいて、溶剤成分を揮発させる必要がない。そのため、積層体を製造するための製造設備には乾燥装置を設ける必要がない。よって、本実施形態のハードコート材を用いた積層体の製造プロセスは、省エネルギー性や生産効率が優れている。
次に、本実施形態の硬化性組成物、ハードコート材、及びハードコート膜の用途について説明する。
本実施形態の硬化性組成物は、ハードコート材として、表面保護のための被覆材(ハードコート、クリアハードコート)や反射防止膜などのハードコート膜の用途に好適である。反射防止や被覆の対象となる基材としては、例えば、プラスチック、金属、木材、紙、ガラス、スレート等をあげることができる。
プラスチックの具体例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリメチルメタクリレート、スチレン−メチルメタクリレート共重合体(スチレンとメチルメタクリレートの共重合体)、ポリスチレン、ポリエステル、ポリオレフィン、エポキシ、メラミン、トリアセチルセルロース、ABS樹脂(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂)、AS樹脂(アクリロニトリル−スチレン樹脂)、ノルボルネン系樹脂、シクロオレフィンポリマー(COP樹脂)があげられる。これらのプラスチックの中でも、透明性を有し、波長578nmの光に対する屈折率が1.54以上1.60以下のものが好ましい。
これら基材の形状は特に限定されるものではなく、例えば板状、フィルム状、3次元成形体があげられる。ハードコート材のコーティング方法としては、通常のコーティング方法、例えばグラビア印刷、マイクログラビア印刷、インクジェットコート、ディッピングコート、スプレーコ−ト、フローコ−ト、シャワーコート、ロールコート、スピンコート、刷毛塗り等をあげることができる。これらコーティングにおける塗膜の厚さは、硬化の後の厚さで、通常は0.1μm以上400μm以下であり、好ましくは1μm以上200μm以下である。
本実施形態のハードコート膜を基材の表面に形成して得られた積層体は、ハードコート膜と基材の表面との密着性が優れているとともに、鉛筆硬度、透明性に優れている。よって、本実施形態のハードコート膜を基材の表面に形成して得られた積層体は、自動車等の車体、携帯電話端末本体、太陽電池、タッチパネル、テレビ受像機、フレキシブルディスプレイ装置、パーソナルコンピュータ等の表面被覆がなされる部分に適用することができる。また、この積層体は、CD(コンパクトディスク)、DVD(デジタル多用途ディスク)、BD(ブルーレイディスク)等の記録用ディスクに適用することができる。さらに、この積層体は、車両の窓ガラスの代替材料、自動車ヘッドランプ、導光板、拡散板として特に好適である。
以下に実施例及び比較例を示して、本発明をより詳細に説明する。
(1)硬化性組成物(ハードコート材)の調製
[調製例1]:硬化性組成物(M−1)の調製
反応性ビニルモノマー(A)としてスチレン(出光興産株式会社製の商品名スチレンモノマー)20質量部と、多官能(メタ)アクリレート(B)としてメラミン骨格を有するアクリレート(MIWON社製の商品名MIRAMER SC9610、1分子当たりのアクリロイルオキシ基の数は3超、GPC測定によるポリスチレン換算の質量平均分子量は1500)80質量部と、光重合開始剤(C)として2−ヒドロキシシクロヘキシルアセトフェノン(BASF社製の商品名IRG184)4質量部とを混合して、実施例の硬化性組成物(M−1)を得た。
[調製例2]:硬化性組成物(M−2)の調製
硬化性組成物(M−1)に、さらに密着性付与材(E)として2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート(昭和電工株式会社製の商品名カレンズ AOI)1質量部を加えて、硬化性組成物(M−2)を得た。
[調製例3、4]:硬化性組成物(M−3)、(M−4)の調製
各原料の使用量を表1に示すように変更した点以外は、調製例2と同様にして、実施例の硬化性組成物(M−3)、(M−4)を得た。
[調製例5]:硬化性組成物(M−5)の調製
反応性ビニルモノマー(A)としてスチレン(出光興産株式会社製の商品名スチレンモノマー)25質量部と、多官能(メタ)アクリレート(B)としてメラミン骨格を有するアクリレート(MIWON社製の商品名MIRAMER SC9610、1分子当たりのアクリロイルオキシ基の数は3超、GPC測定によるポリスチレン換算の質量平均分子量は1500)55質量部と、架橋性モノマー(D)としてジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(SARTOMER社製の商品名SARTOMER DPHA)20質量部と、密着性付与材(E)として2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート(昭和電工株式会社製の商品名カレンズ AOI)1質量部と、光重合開始剤(C)として2−ヒドロキシシクロヘキシルアセトフェノン(BASF社製の商品名IRG184)4質量部とを混合して、実施例の硬化性組成物(M−5)を得た。
[調製例6、7]:硬化性組成物(M−6)、(M−7)の調製
各原料の使用量を表1に示すように変更した点以外は、調製例5と同様にして、実施例の硬化性組成物(M−6)、(M−7)を得た。
[調製例8]:硬化性組成物(M−8)の調製
反応性ビニルモノマー(A)とは異なるモノマーとしてベンジルアクリレート(大阪有機化学工業株式会社製の商品名ビスコート#160,BZA)25質量部と、多官能(メタ)アクリレート(B)としてメラミン骨格を有するアクリレート(MIWON社製の商品名MIRAMER SC9610、1分子当たりのアクリロイルオキシ基の数は3超、GPC測定によるポリスチレン換算の質量平均分子量は1500)55質量部と、架橋性モノマー(D)としてジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(SARTOMER社製の商品名SARTOMER DPHA)20質量部と、光重合開始剤(C)として2−ヒドロキシシクロヘキシルアセトフェノン(BASF社製の商品名IRG184)4質量部とを混合して、比較例の硬化性組成物(M−8)を得た。
[調製例9、10]:硬化性組成物(M−9)、(M−10)の調製
各原料の使用量を表1に示すように変更した点以外は、調製例1と同様にして、比較例の硬化性組成物(M−9)、(M−10)を得た。硬化性組成物(M−9)は、多官能(メタ)アクリレート(B)の含有量が多すぎる例である。また、硬化性組成物(M−10)は、多官能(メタ)アクリレート(B)の含有量が少なすぎる例である。
[調製例11]:硬化性組成物(M−11)の調製
ベンジルアクリレートを使用しない点と各原料の使用量を表1に示すように変更した点以外は、調製例8と同様にして、比較例の硬化性組成物(M−11)を得た。
[調製例12]:硬化性組成物(M−12)の調製
メラミン骨格を有するアクリレートと密着性付与材(E)を使用しない点と各原料の使用量を表1に示すように変更した点以外は、調製例5と同様にして、比較例の硬化性組成物(M−12)を得た。
Figure 2016079363
(2)積層体の作製と評価
[実施例1]
基材として、厚さ200μmのポリカーボネート樹脂板(帝人株式会社製の商品名パンライトシート PC−2151−A、波長578nmの光に対する屈折率1.585)を用意した。そして、硬化性組成物(M−1)を、硬化して形成されるハードコート膜の厚さが15μmとなるように、ポリカーボネート樹脂板の表面にバーコート塗装した。
次に、空気雰囲気下で、硬化性組成物(M−1)が表面に膜状に配されたポリカーボネート樹脂板に、波長356nmのエネルギー線を照射して、硬化性組成物(M−1)を硬化させ、硬化性組成物(M−1)の硬化物(ハードコート膜)がコーティング処理された実施例1のポリカーボネート樹脂板(以下「積層体」と記す)を得た。エネルギー線の照射は、高圧水銀ランプを用いて、積算光量が1000mJ/cmとなるまで行った。得られた積層体は、後述の評価方法に則った鉛筆硬度、光学特性、密着性、屈折率の試験へ供した。また、硬化性組成物(M−1)については、粘度を測定した。
[実施例2〜7及び比較例1〜5]
硬化性組成物(M−1)をそれぞれ硬化性組成物(M−2)〜(M−12)に変更した点以外は実施例1と同様の方法により、実施例2〜7及び比較例1〜5の積層体を得て、実施例1と同様に各種試験へ供した。なお、硬化性組成物(M−10)については、硬化不良が生じ十分に硬化しなかったので、比較例3の積層体は得られなかった。また、硬化性組成物(M−2)〜(M−12)については、粘度を測定した。
(3)積層体の評価方法
[鉛筆硬度の評価]
表面性測定器(新東科学株式会社製のトライボギア14FW)及び鉛筆硬度測定用鉛筆(三菱鉛筆株式会社製の三菱UNI)を用いて、JIS K5600−5−4に規定の方法に基づき、鉛筆硬度を測定した。測定荷重は750g、測定の速度は30mm/min、測定距離は5mmとした。測定は5回行い、合格数が4/5を超えた鉛筆の硬度を評価結果とした。
[光学特性の評価]
光学特性については、全光線透過率、Haze、b*の3項目について評価を行った。全光線透過率とHazeは、ヘーズメーター・曇り度計(日本電色工業株式会社製のNDH−5000)を用いて測定した。全光線透過率はJIS K7361、HazeはJIS K7136に規定の方法に基づき、それぞれ評価した。b*は、色差計(日本電色工業株式会社製のSD−6000)を用いて、JIS K8729に規定の方法に基づき評価した。
[密着性の評価]
積層体上にクロスカットガイド(コーテック株式会社製)を載置し、カッターナイフを用いて積層体のハードコート膜をマス目状に切断した。1つのマスは縦横2mm四方をなし、縦10マス、横10マスで合計100マスが形成されるように切断した。
切断したハードコート膜に粘着テープ(ニチバン株式会社製のセロテープ(登録商標))を貼り付け、十分に密着させた後に粘着テープをハードコート膜から引き剥がした。そして、ハードコート膜の基材(ポリカーボネート樹脂板)からの剥離状況を目視により観察し、合計100マスのうち基材から剥離せず残ったマスの個数を計測した。
[屈折率の評価]
アッベ屈折率計(株式会社アタゴ製 DR−M4)を用いて積層体のハードコート膜の屈折率を測定した。測定波長は578nmである。
[粘度の評価]
各硬化性組成物の粘度は、RheoSense社製のμ−VISCを用いて、測定温度25℃にて測定した。
これら各種試験の結果を表2に示す。表2に示す結果から分かるように、実施例1〜7の積層体のハードコート膜は、鉛筆硬度、光学特性に優れ、高屈折率であった。また、実施例1〜7の積層体のハードコート膜は、比較例1〜5に比べて、基材に対する密着性が優れていた。
なお、ハードコート膜を備えていないポリカーボネート樹脂板の各種物性を、比較のために以下に示す。ポリカーボネート樹脂板の鉛筆硬度は6B以下、全光線透過率は90%、Hazeは0.3、b*は0.4、屈折率は1.586である。
Figure 2016079363

Claims (14)

  1. 下記化学式(I)で表される反応性ビニルモノマー(A)と、分子内にトリアジン環及び少なくとも2つの(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレート(B)と、を必須成分とする重合性モノマーを含有するとともに、光重合開始剤(C)をさらに含有し、
    前記反応性ビニルモノマー(A)と前記多官能(メタ)アクリレート(B)の質量比が、A:B=10:90〜50:50であり、
    前記重合性モノマーの含有量を100質量部とした場合の前記光重合開始剤(C)の含有量が0.1質量部以上20質量部以下である硬化性組成物。
    ただし、下記化学式(I)中のRは、水素原子、任意の位置に酸素原子を含んでもよい炭素数1以上10以下の直鎖状若しくは分岐鎖状であるアルキル基、炭素数6以上12以下の芳香族基、炭素数3以上6以下のアルコキシシリル基、カルボキシ基若しくはその塩、又は、スルホ基若しくはその塩を示し、3個のRはそれぞれ独立して水素原子又はメチル基を示し、mは1又は2を示す。
    Figure 2016079363
  2. 前記重合性モノマーとして、少なくとも2つのエチレン性二重結合を有する化合物である架橋性モノマー(D)をさらに含有し、前記反応性ビニルモノマー(A)の含有量を100質量部とした場合の前記架橋性モノマー(D)の含有量が10質量部以上400質量部以下である請求項1に記載の硬化性組成物。
  3. 前記多官能(メタ)アクリレート(B)はメラミン骨格を有する請求項1又は請求項2に記載の硬化性組成物。
  4. 前記重合性モノマーとして、極性基及び(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートモノマーである密着性付与材(E)をさらに含有し、前記反応性ビニルモノマー(A)の含有量を100質量部とした場合の前記密着性付与材(E)の含有量が0.1質量部以上20質量部以下である請求項1〜3のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
  5. 前記密着性付与材(E)が下記化学式(II)で表される化合物である請求項4に記載の硬化性組成物。
    ただし、下記化学式(II)中のRは、炭素数2以上10以下の直鎖状若しくは分岐鎖状の脂肪族炭化水素基又は炭素数6以上18以下の芳香族基を示し、Rは水素原子又はメチル基を示し、nは1以上5以下の整数を示す。
    Figure 2016079363
  6. 粘度が20mPa・s以上1000mPa・s以下である請求項1〜5のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
  7. 請求項1〜6のいずれか一項に記載の硬化性組成物を硬化させたものである硬化物。
  8. 請求項1〜6のいずれか一項に記載の硬化性組成物からなるハードコート材。
  9. 請求項8に記載のハードコート材を基材の表面に膜状に配し硬化させて形成されるハードコート膜。
  10. 波長578nmの光に対する屈折率が1.54以上1.60以下である請求項9に記載のハードコート膜。
  11. 基材と、請求項8に記載のハードコート材を前記基材の表面に膜状に配し硬化させて形成されるハードコート膜と、を備える積層体。
  12. 前記ハードコート膜の波長578nmの光に対する屈折率が1.54以上1.60以下である請求項11に記載の積層体。
  13. 前記基材の波長578nmの光に対する屈折率が1.54以上1.60以下である請求項11又は請求項12に記載の積層体。
  14. 前記基材が、ポリカーボネート、ポリスチレン、及び、スチレンとメチルメタクリレートの共重合体のうちの少なくとも1種で構成される請求項11〜13のいずれか一項に記載の積層体。
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