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JP2016072301A - 絶縁材、この絶縁材を用いた絶縁コイル、これらの製造方法、ならびにこの絶縁コイルを具備する装置 - Google Patents

絶縁材、この絶縁材を用いた絶縁コイル、これらの製造方法、ならびにこの絶縁コイルを具備する装置 Download PDF

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JP2016072301A JP2014197258A JP2014197258A JP2016072301A JP 2016072301 A JP2016072301 A JP 2016072301A JP 2014197258 A JP2014197258 A JP 2014197258A JP 2014197258 A JP2014197258 A JP 2014197258A JP 2016072301 A JP2016072301 A JP 2016072301A
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resin
insulating
insulating material
coil
glass fiber
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史雄 澤
Fumio Sawa
史雄 澤
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Toshiba Corp
Original Assignee
Toshiba Corp
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Abstract

【課題】優れた絶縁性、耐アーク性能、耐熱性に加え、高い機械的ストレスにも対応でき、優れた絶縁性を長期間維持できる絶縁材、絶縁コイル、この絶縁コイルを具備する装置等を提供する。
【解決手段】ガラス繊維からなる基材1中に、1分子あたり2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂とエポキシ樹脂用硬化剤とノボラック型樹脂とを含む樹脂材料100重量部および粒径50nm以下の酸化珪素粒子2を10〜40重量部含んでなる粒子含有樹脂材料3が保持されてなる。
【選択図】図1

Description

本発明の実施形態は、絶縁材、この絶縁材を用いた絶縁コイル、これらの製造方法、ならびにこの絶縁コイルを具備する装置等に関する。
従来より、数々の電気絶縁材が提案されており、各種の電気装置ないし電気機械等において導体同士間や対地間とを遮断するための絶縁材として用いられている。
一般に、発電機や回転電機などに組み込まれる絶縁コイルは、電気を流すための導体と、この導体の周囲に配置された絶縁材とを具備してなる。
例えば、高電圧機器用の絶縁材としては、従来、マイカ層と樹脂材料を含浸させた繊維質層とからなるものが提案されている。この絶縁材は、構成要素のマイカ層が特に優れた耐放電特性を有している点で好ましいものである。
特開平11−213757号公報 特開2006−57017号公報
電気絶縁性材料は、単に絶縁性だけでなく、その利用用途に応じて種々の要求性能を満たすことが求められている。
従って、本発明が解決しようとする課題は、優れた絶縁性、耐アーク性能、耐熱性に加えて、高い遠心力や曲げ応力などの機械的ストレスにも対応でき、かつこのような機械的ストレスに長期間かつ繰り返し曝されても、一定水準以上の優れた絶縁性を長期間維持できるような高度な耐久性を有する、絶縁材、この絶縁材を用いた絶縁コイル、これらの製造方法、ならびにこの絶縁コイルを具備する装置等を提供することである。
上述したような状況に鑑み、本発明者らは、上記の要求を満たすことができる絶縁材を見出すにいたった。
したがって、本発明の実施形態による絶縁材は、ガラス繊維からなる基材中に、1分子あたり2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂とエポキシ樹脂用硬化剤とノボラック型樹脂とを含む樹脂材料100重量部および粒径50nm以下の酸化珪素粒子を10〜40重量部含んでなる粒子含有樹脂材料が保持されてなること、を特徴とする。
そして、本発明の実施形態は、上記の絶縁材の製造方法、この絶縁材を用いた絶縁コイルおよびその製造方法、ならびにこの絶縁コイルを用いて形成された巻型回転子コイルを具備する回転電機および可変速揚水発電機に関するものである。
実施形態による絶縁材の好ましい一具体例を示す断面図。 実施形態による絶縁コイルの好ましい一具体例を示す斜視図。 実施形態による絶縁材の好ましい一具体例が適用可能なタービン発電機の構造を示す斜視図であって、図3(a)は水素間接冷却方式のタービン発電機について、図3(b)は水直接冷却方式のタービン発電機について示す図である。 実施形態による絶縁材を適用可能な高電圧用コイルの好ましい一具体例の断面図であって、図4(a)は水素間接冷却方式のタービン発電機の固定子コイルについて、図4(b)は水直接冷却方式のタービン発電機の固定子コイルについて示す図である。
下記に示す実施形態は例示であって、従って、発明の範囲はこれら具体的に開示された範囲内に限定されない。
<絶縁材>
本発明の実施形態による絶縁材は、「ガラス繊維からなる基材」中に、所定の「粒子含有樹脂材料」(詳細後記)が保持されてなること、を特徴とする。
ここで、「保持されてなる」とは、「ガラス繊維からなる基材」の内部ならびに表面に、所定の「粒子含有樹脂材料」が含浸ないし付着していることを意味する。このような本発明の実施形態による絶縁材では、「ガラス繊維からなる基材」と所定の「粒子含有樹脂材料」中の「粒子」および「樹脂材料」とが一体化した複合体が形成されているところから、粒子、樹脂材料ならびにガラス繊維の破損および脱落が有効に抑制されたものであって、絶縁材としての良好な電気絶縁性および優れた機械的強度を実現することを可能にするものである。
この本発明の実施形態による絶縁材の有用性が顕著に認められる特に好ましい用途としては、例えば、高電圧機器用の絶縁コイル、回転子コイル、特に巻型回転子コイル等を挙げることができる。
<<ガラス繊維からなる基材>>
本発明の実施形態では、ガラス繊維からなる基材として、例えば、ガラス繊維を直角または所定の角度をもって二次元または三次元的に交錯させた、ガラスクロス、ウエブ、マット、ガラス不織布等からなるものを用いることができる。これらの中では、機械強度の観点からガラスクロスが好ましい。
ガラス繊維は、テープ状にて提供される場合は、そのテープが使用される最大長さの連続する長さ50m程度の長繊維が好ましいが、それよりも短いガラス繊維が混在することができる。
各ガラス繊維(ヤーン)は、直径が4〜20μmの物が好ましいが、これに限定されることはない。また、場合により、ガラスフレーク、ガラス粒子等が混在することができる。
ガラス繊維の断面形状は、実質的に円形状であることが一般的であるが、これに限定されることはない。
ガラス繊維からなる基材は、繊維密度が50〜100(本/25mm)であることが好ましい。このことによって、例えば機械特性や成形性が良好になる。
本発明の実施形態は絶縁材に関するものであることから、この絶縁材の構成材料であるこのガラス繊維からなる基材も、絶縁性が高いことが好ましい。従って、ガラス繊維は、電気絶縁用途として用いられるEガラスが好ましい。そして、ガラス繊維は、強度が高いことが好ましい。
本発明の実施形態は絶縁材において、ガラス繊維からなる基材は、ガラス繊維のみからなるものに限定されることはなく、必要に応じて、ガラス以外の他の材料からなる繊維材料等が混在することができる。そのようなガラス以外の繊維材料としては、例えばアルミナ繊維、アラミド繊維やその他有機繊維を挙げることができる。このことによって、例えば、ガラス繊維からなる基材の形状保持性の向上、伸びの抑制、放熱性の向上等を図れる場合がある。
ガラス繊維からなる基材の厚さは、本発明の実施形態による絶縁材の具体的用途、目的等に応じて異なるが、一般的に0.015〜0.2mm、好ましくは0.025〜0.05mm、である。ガラス繊維からなる基材の厚さが上記範囲内である場合、例えば成形性、樹脂の浸透性、作業性等の点で特に好ましい。
ガラス繊維からなる基材の外形形状および大きさは、本発明の実施形態による絶縁材の具体的用途、目的等に応じて適宜定めることができる。本発明の実施形態による絶縁材に用いられるガラス繊維からなる基材の好ましい具体例には、例えば、長辺1〜20m、短辺20〜200cmのシート状のもの、および幅が1.5〜4.0cmのテープ状のもの等が含まれる。
また、ガラス繊維からなる基材を構成しているガラス繊維は、必要に応じて、表面処理を行うことができる。この処理を行うことによって、本発明の実施形態で用いられる所定の「粒子含有樹脂材料」(詳細後記)との接触性や結合性等の改良を図ることができ、「粒子含有樹脂材料」の含浸性や保持性を向上させることができる場合がある。
<粒子含有樹脂材料>
本発明の実施形態の絶縁材における「粒子含有樹脂材料」は、「1分子あたり2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂」と「エポキシ樹脂用硬化剤」と「ノボラック型樹脂」とを含む樹脂材料100重量部および「粒径50nm以下の酸化珪素粒子」を10〜40重量部含んでなるものである。ここで、「含んでなる」とは、挙示の成分(即ち、「1分子あたり2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂」と「エポキシ樹脂用硬化剤」、「ノボラック型樹脂」および「粒径50nm以下の酸化珪素粒子」)を必須成分として含んでなるものを意味する。したがって、上記必須成分とこれらの必須成分以外の成分とを含んでなる「粒子含有樹脂材料」も、本発明の実施形態における「粒子含有樹脂材料」に該当する。
<<1分子あたり2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂>>
このようなエポキシ樹脂の好ましい具体例としては、エピクロルヒドリンとビスフェノール類等の多価フェノール類や多価アルコール類との縮合によって得られる、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂を挙げることができる。これらは、単独で用いることができるし、二種以上を併用することができる。
<<エポキシ樹脂用硬化剤>>
本発明の実施形態の絶縁材において用いられる、エポキシ樹脂用硬化剤の好ましい具体例としては、無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、4‐メチルヘキサヒドロフタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、4‐メチルテトラヒドロ無水フタル酸、テトラブロモ無水フタル酸、無水ナジック酸、無水メチルナジック酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水ヘッド酸、無水メチルハイミック酸、ドデセニル無水コハク酸、無水ポリアゼライン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸などが挙げられる。これらは、単独で、あるいは二種以上を併用することができる。なお、必要に応じて、上記のエポキシ樹脂用硬化剤と共に、エポキシ樹脂の硬化反応を促進ないし制御する硬化促進剤を使用することができる。そのような硬化促進剤としては、三級アミンやその塩、四級アンモニウムの化合物、イミダゾール、アルカリ金属アルコキシドなどを挙げることができる。
<<ノボラック型樹脂>>
本発明の実施形態の絶縁材において用いられるノボラック型樹脂としては、ノボラック型フェノール樹脂およびノボラック型エポキシ樹脂を挙げることができる。ノボラック型フェノール樹脂は、2つのフェノール由来のベンゼン環がCHで結合された構造を有しており、ノボラック型エポキシ樹脂としては、フェノールノボラックやo‐クレゾールノボラックをグリシジルエーテル化したフェノールノボラック型エポキシ樹脂およびオルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂を挙げることができる。
このようなノボラック型樹脂としては、例えば、三菱化学社製のjER152,154フェノールノボラック型エポキシ樹脂、DIC社製のEPICLON N660樹脂をそのまま、あるいは必要に応じてカップリング剤添加などの処理を施した後に用いることができる。』
<<樹脂組成>>
本発明の実施形態における絶縁材において用いられる樹脂材料は、上記のように、「1分子あたり2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂」と「エポキシ樹脂用硬化剤」と「ノボラック型樹脂」と必須成分として含むものである。
これらの必須成分の割合は、例えば、本発明の実施形態による絶縁材の具体的用途、目的や、前記の「ガラス繊維からなる基材」へ含浸させる際の作業性、硬化温度、シェルフライフ、コスト等を考慮して適宜定めることができる。
これらの必須成分の当該樹脂材料中における好ましい存在割合は、以下の通りである。
(イ)1分子あたり2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂
「1分子あたり2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂(a)の存在割合は、好ましくは25〜45重量部、特に好ましくは35〜42重量部である。(ここで、1分子あたり2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂(a)の存在割合は、このエポキシ樹脂(a)と、エポキシ樹脂用硬化剤(b)と、ノボラック型樹脂(c)との合計を100重量部としたときのものである。)」
(ロ)エポキシ樹脂用硬化剤
エポキシ樹脂用硬化剤(b)の存在割合は、好ましくは30〜50重量部、特に好ましくは35〜45重量部である。(ここで、エポキシ樹脂用硬化剤(b)の存在割合は、1分子あたり2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂(a)と、このエポキシ樹脂用硬化剤(b)と、ノボラック型樹脂(c)との合計を100重量部としたときのものである。)
(ハ)「ノボラック型樹脂」
ノボラック型樹脂(c)の存在割合は、好ましくは20〜45重量部、特に好ましくは30〜40重量部である。(ここで、ノボラック型樹脂(c)の存在割合は、1分子あたり2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂(a)と、エポキシ樹脂用硬化剤(b)と、このノボラック型樹脂(c)との合計を100重量部としたときのものである。)
これらの、1分子あたり2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂(a)、エポキシ樹脂用硬化剤(b)ならびにノボラック型樹脂(c)のそれぞれの配合比は、耐熱性、シェルフライフ、作業性の観点から決定されたものであるが、所定の硬化条件にて、所要の特性を満たすことができれば、上記以外の配合比において実施しても良い。
<<酸化珪素粒子>>
本発明の実施形態による絶縁材における「粒子含有樹脂材料」は、上述した「樹脂材料」を100重量部および「粒径50nm以下の酸化珪素粒子」を10〜40重量部含んでなるものである。粒径50nm以下の酸化珪素粒子の含有量は、好ましくは10〜30 重量部、特に好ましくは15〜25重量部である。粒径50nm以下の酸化珪素粒子の含有量が、上記範囲内であることによって、課電寿命特性を向上させることが可能になる。
この酸化珪素粒子としては、一酸化珪素(SiO)、二酸化珪素(SiO)、亜酸化珪素(Si)およびこれらの混在物のいずれも対象となるが、本発明の実施形態では、一酸化珪素(SiO)、二酸化珪素(SiO)、またはこれらの混在物を用いるのが普通でありかつ好ましい。
酸化珪素粒子の粒径は50nm以下であり、特に好ましくは20〜50nm、である。ここで、粒径は、レーザー回折法によって求められたものである。酸化珪素粒子の粒径が上記範囲内であることによって、課電寿命特性が良好となることから好ましい。
なお、本発明の実施形態の「粒子含有樹脂材料」は、「粒径50nm以下の酸化珪素粒子」を10〜40重量部含んでなるものである。従って、「粒径50nm以下の酸化珪素粒子」を10〜40重量部含むものである限り、例えば粒径50nmを超過する酸化珪素粒子や他の種類の粒子が含まれているものも、本発明の実施形態の「粒子含有樹脂材料」に該当する。
本発明の実施形態の絶縁材では、このように、粒径50nm以下の酸化珪素粒子を10〜40重量部含んでなる粒子含有樹脂材料を用いることによって、他の特性を損なうことなく、課電寿命特性を向上させることが可能になる。例えば、モンモリロナイトのような酸化珪素以外の他の絶縁性の無機材料では、このように高充填かつ粘度特性に優れた樹脂を十分達成することが困難であるか、成形後の空隙が多くなることから、特定粒径の酸化珪素粒子を特定範囲内で用いることの目的および効果は、従来の知見からは全く思いがけないことである。
<絶縁材の製造方法>
本発明の実施形態による絶縁材の製造方法は、ガラス繊維からなる基材に、1分子あたり2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂とエポキシ樹脂用硬化剤とノボラック型樹脂とを含む樹脂材料100重量部および粒径50nm以下の酸化珪素粒子を10〜40重量部含んでなる粒子含有樹脂材料を、溶剤と共に前記のガラス繊維からなる基材に含浸させ、その後、前記の溶剤を揮発除去すること、を特徴とする。
この実施形態による絶縁材の製造方法において用いられる、ガラス繊維からなる基材、1分子あたり2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂、エポキシ樹脂用硬化剤、ノボラック型樹脂、粒径50nm以下の酸化珪素粒子、ならびに粒子含有樹脂材料は、先に詳細に説明した通りである。
<<溶 剤>>
本発明の実施形態による絶縁材の製造方法における溶剤としては、上述の1分子あたり2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂、エポキシ樹脂用硬化剤、ノボラック型樹脂、粒径50nm以下の酸化珪素粒子および粒子含有樹脂材料を溶解または分散可能であり、かつ、この溶剤と上記各成分との溶解または分散物をガラス繊維からなる基体に含浸させた後に、容易にガラス繊維からなる基体から揮発除去することが可能な各種溶剤を用いることができる。
このように溶剤を用いることにより、上記の各樹脂材料および酸化珪素粒子を含む粒子含有樹脂材料をガラス繊維からなる基体に含浸させることが容易になると同時に、ガラス繊維からなる基体の表面および内部における酸化珪素粒子の凝集や偏在化等を抑制することが可能になる。
溶剤の好ましい具体例としては、例えばメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトン、およびトルエンを挙げることができる。これらの中では、メチルエチルケトン、トルエンが特に好ましい。
溶剤の使用量は、上記の各樹脂材料および酸化珪素粒子の合計を100重量部とした場合に、10〜50重量部、好ましくは20〜40重量部、であって、例えば、上記の各樹脂材料および酸化珪素粒子の具体的内容や配合割合、粘度、乾燥のしやすさ、使用効果等に応じて上記範囲内で適宜定めることができる。
このように、溶剤と共に粒子含有樹脂材料を前記のガラス繊維からなる基材に含浸させることにより、粒子(即ち、酸化珪素粒子)を、凝集させることなく、ガラス繊維からなる基材の内部にまで十分浸透させることが容易になる。
<<絶縁材の製造方法(具体例)>>
本発明の実施形態による絶縁材の製造方法では、ガラス繊維からなる基材に、1分子あたり2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂とエポキシ樹脂用硬化剤とノボラック型樹脂とを含む樹脂材料100重量部および粒径50nm以下の酸化珪素粒子を10〜40重量部含んでなる粒子含有樹脂材料を、溶剤と共に前記のガラス繊維からなる基材に含浸させ、その後、前記の溶剤の少なくとも一部を前記のガラス繊維からなる基材から揮発除去することが行われる。
上記の粒子含有樹脂材料および溶剤をガラス繊維からなる基材に含浸させる際は、これらの粒子含有樹脂材料および溶剤を含む溶液(以下、本明細書において「含浸液」ということがある)を予め調製しておいて、この含浸液をガラス繊維からなる基材に含浸させることが好ましい。
この含浸液を調製する際の、各成分(即ち、1分子あたり2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂、エポキシ樹脂用硬化剤、ノボラック型樹脂、粒径50nm以下の酸化珪素粒子および溶剤)の配合順序および配合方法は、本発明の目的および効果が達成できる限り任意である。例えば、上述の各成分の全ての成分を同時に配合して調製することができるし、あるいは上述の各成分の一種または二種以上を別々に配合して調製することができる。また、各成分は、連続してあるいは段階的に添加し、配合することができる。
含浸液を調製する際は、上述の各成分の均一な混合物が得られるように、各成分を配合する時および(または)配合後において、撹拌を行うことが好ましい。含浸液の調製は、常温で行うのが普通であるが、若干の冷却下または加熱下で行うことも可能である。
なお、1分子あたり2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂とエポキシ樹脂用硬化剤との共存条件下においては、主としてエポキシ樹脂の硬化に起因すると思われる調製液の粘度上昇が見られ、各成分の均一な混合が迅速に行いにくくなる場合がある。しかし、これは、1分子あたり2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂とエポキシ樹脂用硬化剤との接触機会ないし接触時間が少なくなるように、これら二成分の片方または両方を調製の最終段階近くで配合したり、これら両成分を配合する時までに溶剤を配合しておくことによって、容易に避けることができる。
上記の各成分から調製された含浸液をガラス繊維からなる基体に含浸させる際は、種々の方法を採用できる。例えば、ガラス繊維からなる基体に含浸液を塗工する方法、含浸液にガラス繊維からなる基体を浸漬する方法、ガラスからなる基体に含浸液を滴下あるいはスプレーする方法などを採用することができる。
含浸液は、ガラス繊維からなる基体の内部にまで十分な量の含浸液が満たされるようにすることが好ましく、従って、ガラス繊維からなる基体を形成しているガラス繊維間の空隙まで含浸液が行き渡り、この空隙に存在していた空気の出来るだけ多く(好ましくは実質的全量)が含浸液に置換されるようになるまで十分に含浸させることが好ましい。また、ガラス繊維からなる基体の表面にガラス繊維が存在しない塗工液層が形成されるようになるまで、十分な量の含浸液を施すことができる。
本発明の実施形態による絶縁材の製造方法では、次いで、前記の溶剤を前記のガラス繊維からなる基材から揮発除去することが行われる。この溶剤の除去は、常温、常圧下で行うことができるし、減圧下で行うことも、加熱条件下で行うことができる。加熱条件下で行う場合は、通常、120〜180℃、好ましくは130〜150℃、の温度範囲内で行うことができる。この温度範囲より高い温度条件では、部分的に溶剤の除去や樹脂の硬化が進行しすぎる場合がある。
以上のようにして、本発明の実施形態による絶縁材の製造することができる。
<絶縁コイルおよびその製造方法>
本発明の実施形態による絶縁コイルは、導体と、この導体を被覆している前記の絶縁材の硬化物とからなること、を特徴とする。
実施形態による絶縁コイルの好ましい一具体例としては、図2に示されるものを挙げることができる。この図2に示される実施形態による絶縁コイルは、導体4と、この導体4を被覆している前述の絶縁材の硬化物5とからなるものである。
<<絶縁コイルの製造方法(第一の製造方法)>>
本発明の実施形態による絶縁コイルの製造方法(第一の製造方法)は、導体の表面に前記の絶縁材を巻き回して得られた巻き回し体を、加熱成形して前記の絶縁材を硬化させること、を特徴とする。
上記の導体は、電気絶縁性を有するものである。特に好ましいものとして具体的には、高電圧機器用のコイルとして機能しうるものである。このような高電圧機器用のコイルの特に好ましい具体例としては、例えば図3に記載されたものを挙げることができる。
絶縁材の巻き回しは、導体の断面方向に対して直角に行うことができるし、また導体の断面方向に対して所定の角度で行い、導体の周りに螺旋状に巻き回わすことができる。本発明の実施形態では、導体の周りに螺旋状に巻き回わすことが好ましい。
絶縁材の巻き回し回数は、任意である。例えば、絶縁材の厚さや、必要とされる絶縁性、作業性、強度ないし耐久性等を考慮して適宜定めることができる。従って、例えば必要とされる絶縁性が比較的低く、この必要とされる絶縁性がただ一層の絶縁材によって実現可能な時は絶縁材の巻き回し回数は1回でもよい。一方、必要とされる絶縁性が高い場合や絶縁材の厚さが薄い場合、あるいはより高度の絶縁性および耐久性を求めるとき等は、絶縁材の巻き回し回数はそれに応じて定めることができる。
本発明の実施形態による絶縁コイルの製造方法(第一の製造方法)では、この絶縁材を巻き回して得られた巻き回し体を、加熱成形して、この絶縁材を硬化させることが行われる。
この加熱成形の温度は、通常120〜180℃、好ましくは130〜150℃、の温度範囲内で行うことができる。加熱成形の時間は、通常120〜600分、好ましくは300〜600分、の範囲内である。そして、この加熱成形は、外部からの加圧条件下で行うことが好ましい。このような加圧条件下の加熱成形は、好ましくは、例えば真空加圧硬化成形を採用することによって、容易に行うことができる。
以上のようにして、本発明の実施形態による絶縁材を製造することができる。
<<絶縁コイルの製造方法(第二の製造方法)>>
本発明の実施形態による絶縁コイルの製造方法(第二の製造方法)は、導体の表面に前記の絶縁材を巻き回して得られた巻き回し体を、脱気処理に付し、その後、加熱成形して前記の絶縁材を硬化させること、を特徴とする。
ここで、導体および絶縁層の内容、巻き回しの内容ならびに加熱成形の内容等は、前述した第一の製造方法と同様である。
この第二の製造方法では、導体の表面に絶縁材を巻き回して得られた巻き回し体を、脱気処理に付すことが行われる。このような脱気処理を行うことにより、巻き回し体の内部から気体(主として酸素)等が除去されて、より緻密な巻き回し体を得ることできる。その結果、より高度な絶縁性や機械的強度が得られ、耐久性等の更なる向上を図ることが可能になる。
<<絶縁コイルの製造方法(第三の製造方法)>>
本発明の実施形態による絶縁コイルの製造方法(第三の製造方法)は、導体の表面に前記の絶縁材を巻き回して得られた巻き回し体を、脱気処理に付した後、この巻き回し体に熱硬化性樹脂を含浸させ、その後、加熱成形して前記の絶縁材を硬化させること、を特徴とする。
ここで、導体および絶縁層の内容、巻き回しの内容、脱気処理の内容ならびに加熱成形の内容等は、前述した第二の製造方法と同様である。
この第三の製造方法では、前記の絶縁材を巻き回して得られた巻き回し体を、脱気処理に付した後、この巻き回し体に熱硬化性樹脂を含浸させることが行われる。このような熱硬化性樹脂を含浸させることにより、更に緻密な巻き回し体を得ることできる。
これは、例えば、巻き回し体を得る際の巻きムラや、巻き回しの際に与えられた張力やその回復等による変形などによって、巻き回し体内部に空隙部が残存する場合であっても、この空隙内に熱硬化性樹脂を浸透させることにより、その空隙を減少させることができるからである。併せて、この熱硬化性樹脂は、巻き回されたガラス繊維からなる基材(およびエポキシ樹脂やノボラック型樹脂等)のより強固な接合ないし接着を実現することができる場合がある。その結果、より高度な絶縁性や機械的強度が得られ、耐久性等のの更なる向上を図ることが可能になる。
この熱硬化性樹脂としては、前述の絶縁材の粒子含有樹脂材料を構成している樹脂材料の成分(即ち、1分子あたり2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂、エポキシ樹脂用硬化剤、ノボラック型樹脂)と非相溶のものであること好ましい。
これによって、巻き回し体内部の空隙部への熱可塑性樹脂の浸透が容易になる場合がある。また、このような非相溶のものである場合には、熱可塑性樹脂を巻き回し体に施す際に、粒子含有樹脂材料を構成している樹脂材料成分の熱可塑性樹脂への漏出が抑制されるので、この漏出による巻き回し体の密度低下、絶縁性や機械的強度の低下等が防止される。また、この含浸処理に用いた熱可塑性樹脂が粒子含有樹脂材料を構成している樹脂材料成分によって汚染されることが防止されるので、熱可塑性樹脂を再利用する際に有利である。
<絶縁材の利用>
本発明の実施形態による絶縁材は、その優れた絶縁性、耐アーク性能、耐熱性に加えて、高い遠心力や曲げ応力などの機械的ストレスにも対応でき、かつこのような機械的ストレスに長期間かつ繰り返し曝されても、一定水準以上の優れた絶縁性を長期間維持できるような高度な耐久性を有するものである。
従って、本発明の実施形態による絶縁材は、種々の分野において適用可能なものであって、従来のこの種の絶縁材よりも有用性が高いものである。
高い絶縁性および機械的強度ならびに優れた耐久性は、絶縁材使用重量の低減や絶縁層の薄層化等を可能にするので、各種の電気装置ないし電気機械等の小型化、高出力化を図ることが可能になる。
本発明の実施形態による絶縁材の有用性が特に顕著に認められる用途としては、例えば、高電圧機器用の絶縁コイル、回転子コイル、特に巻型回転子コイル、水素間接冷却方式あるいは水直接冷却方式のタービン発電機(図3参照)に適した絶縁コイル、特に固定子コイル(図4参照))、ならびにこの絶縁コイルを具備する回転電機および可変速揚水発電電動機等を挙げることができる。
以下の実施例は、上記した実施形態による絶縁材のうちの、特に好ましい幾つかの代表例について、より詳細に示すものである。従って、下記に示された実施例に具体的に開示された技術的範囲内のみに限定されることはない。
<実施例1>
以下、本発明の実施形態による絶縁材を、図1を参照して説明する。
図1は、ガラス繊維からなる基材(1)(重量80g)に、1分子あたり2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂60重量部、エポキシ樹脂用硬化剤60重量部、ノボラック型樹脂40重量部とを含む樹脂材料100重量部および粒径50nm以下の酸化珪素粒子(2)を10重量部含んでなる粒子含有樹脂材料(100g)を含浸させたものである。
ガラス繊維からなる基材は、厚さが0.025mmである。エポキシ樹脂としてはビスフェノールA型エポキシ樹脂を、硬化剤には酸無水物(具体的には、日立化成製HN2200)を用いた。
樹脂材料の含浸は、トレーに貯留させた上記の樹脂材料の混合物中に、上記のガラス繊維からなる基材を常温で2分間浸漬することによって行った。樹脂材料を含浸させたガラス繊維からなる基材をトレーから引き上げた後に、トレー中に残存した樹脂材料の量から、ガラス繊維からなる基材には約40%の上記の粒子含有の樹脂材料が含浸されたことが判った。
この粒子含有の樹脂材料樹脂が含浸されたガラス繊維からなる基材を、100℃の温度に25分間保持して、プリプレグ化したシートを得た。このプリプレグ化したシートは、厚さ0.035mmであった。
このプリプレグ化したシートを、10枚用意して、これらを積層して重ねた後、上下方向から6kg/cmの圧力で押圧しながら、160℃の温度に120分間保持することにからなる加熱硬化処理に付して、本発明の実施形態による絶縁材を製造した。この絶縁材の厚さは0.3mmであった。
この絶縁材に対し、6kVrms にて課電試験を実施したところ、500時間経過後においても絶縁層の破壊は認められなかった。
次いで、上記と同様にして製造した本発明の実施形態による絶縁材を、25mm幅のテープ状に裁断した。導体を模擬した線状のアルミ導体(断面 10mm × 50mm)の上に剥離テープ(テフロン樹脂製の厚さ0.02mm)を巻いた物の上に、上記のテープ状に裁断した絶縁材を巻き回した後、周囲から6kg/cmの圧力で押圧しながら、150℃の温度に300分間保持することにからなる加熱硬化処理に付して、本発明の実施形態による導体と絶縁材とからなる絶縁コイルを製造した。
この絶縁コイルについて、JIS K6911に基づく三点曲げ試験方法によって曲げ強度を測定したところ、245MPaであった。
<実施例2>
樹脂材料に対する粒径50nm以下の酸化珪素粒子の配合割合を30重量部にかえた以外は実施例1と同様な方法によって、粒子含有の樹脂材料が含浸されたガラス繊維からなる基材(重量80g)、ならびにプリプレグ化したシートを得た。
次いで、実施例1と同様の加熱硬化処理に付して、本発明の実施形態による絶縁材を製造した。この絶縁材の厚さは0.3mmであった。
実施例1と同様に、この絶縁材に対し、6kVrms にて課電試験を実施したところ、500時間経過後においても絶縁層の破壊は認められなかった。
さらに、実施例1と同様に、本発明の実施形態による導体と絶縁材とからなる絶縁コイルを製造した。この絶縁コイルについて、JIS K6911に基づく三点曲げ試験方法によって曲げ強度を測定したところ、245MPaであった。
<比較例1>
粒径50nm以下の酸化珪素粒子を用いない以外は実施例1と同様の方法によって、樹脂組成物を含浸させたガラス繊維からなる基材を製造した。
これについて、実施例1と同様に、6kVrms にて課電試験を実施したところ、6時間経過後に絶縁層が破壊した。
以上説明した少なくとも一つの実施形態によれば、優れた絶縁性かつ機械的強度を有する絶縁材を得ることができる。このような絶縁材は、例えば、高電圧機器、特に機械的ストレスの高くかかるコイルや、起動停止回数が多い揚水発電電動機の巻き線コイルにおいても長期間の信頼性を提供するコイル絶縁構造を提供することができるので、実用的に極めて有効なものである。
1 ガラス繊維からなる基材
2 酸化珪素粒子
3 樹脂材料
4 導体
5 絶縁材の硬化物
6 高電圧機器用のコイル
7 固定子コイル
8 固定子鉄心
9 回転子
10 冷却水配管
11 コイル絶縁層
12 導体
13 通水孔

Claims (11)

  1. ガラス繊維からなる基材中に、(a)1分子あたり2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂と(b)エポキシ樹脂用硬化剤と(c)ノボラック型樹脂とを含む樹脂材料100重量部および(d)粒径50nm以下の酸化珪素粒子を10〜40重量部含んでなる粒子含有樹脂材料が保持されてなることを特徴とする、絶縁材。
  2. 高電圧機器用の絶縁材である、請求項1に記載の絶縁材。
  3. ガラス繊維からなる基材に、(a)1分子あたり2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂と(b)エポキシ樹脂用硬化剤と(c)ノボラック型樹脂とを含む樹脂材料100重量部および(d)粒径50nm以下の酸化珪素粒子を10〜40重量部含んでなる粒子含有樹脂材料を、溶剤と共に前記のガラス繊維からなる基材に含浸させ、その後、前記の溶剤を揮発除去することを特徴とする、絶縁材の製造方法。
  4. 導体と、この導体を被覆している請求項1記載の絶縁材の硬化物とからなることを特徴とする、絶縁コイル。
  5. 導体の表面に前記の請求項1に記載の絶縁材を巻き回して得られた巻き回し体を、加熱成形して前記の絶縁材を硬化させることを特徴とする、絶縁コイルの製造方法。
  6. 導体の表面に前記の請求項1に記載の絶縁材を巻き回して得られた巻き回し体を、脱気処理に付し、その後、加熱成形して前記の絶縁材を硬化させることを特徴とする、絶縁コイルの製造方法。
  7. 導体の表面に前記の請求項1に記載の絶縁材を巻き回して得られた巻き回し体を、脱気処理に付した後、この巻き回し体に熱硬化性樹脂を含浸させ、その後、加熱成形して前記の絶縁材を硬化させることを特徴とする、絶縁コイルの製造方法。
  8. 前記の巻き回し体に含浸させる熱硬化性樹脂が、含浸時の温度条件において、前記の絶縁材の粒子含有樹脂材料を構成している樹脂材料の成分と非相溶のものである、請求項7に記載の絶縁コイルの製造方法。
  9. 回転電機用の絶縁コイルである、請求項4に記載の絶縁コイル。
  10. 請求項9に記載の絶縁コイルを用いて形成された巻型回転子コイルを具備することを特徴とする、回転電機。
  11. 請求項9に記載の絶縁コイルを用いて形成された巻型回転子コイルを具備することを特徴とする、可変速揚水発電電動機。
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