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JP2015222696A - リチウムイオン二次電池用正極活物質及びその製造方法 - Google Patents

リチウムイオン二次電池用正極活物質及びその製造方法 Download PDF

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JP2015222696A
JP2015222696A JP2014107331A JP2014107331A JP2015222696A JP 2015222696 A JP2015222696 A JP 2015222696A JP 2014107331 A JP2014107331 A JP 2014107331A JP 2014107331 A JP2014107331 A JP 2014107331A JP 2015222696 A JP2015222696 A JP 2015222696A
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秀一 高野
Shuichi Takano
秀一 高野
所 久人
Hisato Tokoro
久人 所
崇 中林
Takashi Nakabayashi
崇 中林
章 軍司
Akira Gunji
章 軍司
達哉 遠山
Tatsuya Toyama
達哉 遠山
小西 宏明
Hiroaki Konishi
宏明 小西
孝亮 馮
Hyo-Ryang Pung
孝亮 馮
翔 古月
Sho Furutsuki
翔 古月
小林 満
Mitsuru Kobayashi
満 小林
心 高橋
Shin Takahashi
高橋  心
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Hitachi Metals Ltd
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Abstract

【課題】本発明は、電極密度が上がりやすく、高いエネルギー密度を得ることができるリチウムイオン二次電池用正極活物質を提供することを目的とする。【解決手段】本発明のリチウムイオン二次電池用正極活物質は、層状固溶体化合物よりなる一次粒子が凝集した二次粒子を含み、前記二次粒子の圧壊強度が10MPa〜40MPaであることを特徴とする。【選択図】図1

Description

本発明は、リチウムイオン二次電池用正極活物質及びその製造方法に関する。
非水系二次電池として、非水系電解液を用い、リチウムイオンを充放電反応に用いるリチウムイオン二次電池が実用化されている。リチウムイオン二次電池は、ニッケル水素電池等と比べてエネルギー密度が大きく、例えば、携帯電子機器等の電源として用いられている。近年では、さらに、ハイブリット自動車、電気自動車等の車載用途、定置無停電電源、電力平準化用途等、中・大型用途への適用が進められている。例えば、電気自動車では走行距離の長距離化の要請があり、さらなる高エネルギー密度化が求められている。
現在、リチウムイオン二次電池の正極中の正極活物質としては、LiCoO、LiCo1/3Ni1/3Mn1/3等の層状酸化物系正極活物質が用いられているが、放電容量は150Ah/kg〜180Ah/kg程度であり、さらなる高容量化が求められている。そこで近年では、リチウムを富化することによる高容量化が提案されており、そのような正極活物質として層状固溶体化合物が注目されている。例えば、特開2013−232318号公報(特許文献1)には、一般式Li1+x1−x(M:Mn、Co、Ni、及び、周期律表の第3族元素から第11族元素の間に存在する遷移元素及び周期律表の第3周期までの典型元素のうちのいずれか1種以上)で表される、層構造を有するリチウム金属複合酸化物が開示されている。
上記特許文献1では、二次粒子の圧壊強度を高めることにより、高温サイクル時の容量維持率を向上させている。具体的には、微小圧縮試験機を用いてリチウム金属複合酸化物粉体を圧壊することで求められる粉体圧壊強度の最小値を70MPaより大きくすることで、リチウム二次電池を充放電させた時の正極活物質の膨張・収縮に伴う粒子の崩壊を防ぎ、これにより高温サイクル時の容量の低下を抑制している。
特開2013−232318号公報
電池の容量密度向上には、電極の高密度化が望まれる。層状固溶体化合物は、層状酸化物系正極活物質に比べて一般に真密度が低く、電極密度が上がりにくい。電極の高密度化には、粒子間の空隙をいかに少なくするかが重要である。
上記特許文献1では、スプレードライ法で二次粒子を作製しており、原理上空隙の多い二次粒子ができる。圧壊強度が高く且つ空隙の多い二次粒子を正極活物質として使用すると、電極にした際に空隙を含むため、電極密度が上がりにくく、エネルギー密度を高くしにくい傾向がある。
そこで本発明は、上記従来の状況に鑑み、電極密度が上がりやすく、高いエネルギー密度を得ることができるリチウムイオン二次電池用正極活物質及びその製造方法を提供することを目的とする。また、その正極活物質を用いたリチウムイオン二次電池用正極及びその製造方法と、リチウムイオン二次電池を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため、本発明のリチウムイオン二次電池用正極活物質は、層状固溶体化合物よりなる一次粒子が凝集した二次粒子を含み、前記二次粒子の圧壊強度が10MPa〜40MPaである。
また、上記課題を解決するため、本発明のリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法は、少なくともリチウム及びニッケルを含有する原料粉末を300℃〜750℃で第一次熱処理を行う工程と、第一次熱処理を行った原料粉末を粉砕・混合してスラリーを得る工程と、スラリーをスプレードライヤーにて乾燥した後、900℃〜1100℃で第二次熱処理を行う工程と、を含む。
本発明のリチウムイオン二次電池用正極活物質により、リチウムイオン二次電池における電極密度を高め、エネルギー密度を向上させることができる。なお、上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
リチウムイオン二次電池用正極活物質を用いて正極を作製する工程を説明するための模式図である。 二次粒子の圧壊強度が高いリチウムイオン二次電池用正極活物質を用いて正極を作製する工程を説明するための模式図である。 二次粒子の圧壊強度が低いリチウムイオン二次電池用正極活物質を用いて正極を作製する工程を説明するための模式図である。 リチウムイオン二次電池の一実施形態の構造を模式的に示す部分断面図である。 実施例及び比較例における二次粒子の圧壊強度と電極密度との関係を示すグラフである。 リチウムイオン二次電池用正極活物質を用いて作製した正極の顕微鏡写真である。 二次粒子の圧壊強度が高いリチウムイオン二次電池用正極活物質を用いて作製した正極の顕微鏡写真である。
以下、本発明を詳細に説明する。
(正極活物質)
本発明に係るリチウムイオン二次電池用正極活物質は、層状固溶体化合物よりなる一次粒子が凝集した二次粒子を含み、その二次粒子の圧壊強度が10MPa〜40MPaであることを特徴とする。層状固溶体化合物とは、LiMnO−LiMO系(Mは、Ni等)の組成式で表され、概念的に高容量のLiMnOと活性の高いLiMOとが固溶して形成されると考えられ、層状酸化物に比してリチウム及びマンガンを多く含み、一体の層状結晶構造を有する物質である。層状固溶体化合物は、LiMnO粉末と、LiMO粉末(LiNiO粉末、LiMnO粉末等)との単なる混合物とは明確に区別される。
より好ましくは、一般式:xLiMnO−(1−x)LiNiMnCo[式中、x、a、b、c及びdは、以下の関係:0.2≦x≦0.8、0.3≦a<1.0、0≦b≦0.6、0≦c<0.5、0≦d≦0.05、a+b+c+d=1を満たし、Mは、Fe、Ti、Zr、Al、Mg、Cr、V、Nb、Ta、W、Mo、Cu、Zn、Sn及びRuからなる群より選択される少なくとも1種の元素である]で表される固溶体系正極活物質の一次粒子が凝集した二次粒子から構成される。
層状固溶体化合物の組成は、例えば、透過型電子顕微鏡によるエネルギー分散型X線分光法(TEM−EDX)、電子線エネルギー損失分光法(TEM−ELLS)等により測定することができる。
層状固溶体化合物の一次粒子径は、走査型電子顕微鏡(SEM)や、透過型電子顕微鏡(TEM)により測定することができる。本発明においては、無作為に抽出した層状固溶体化合物の一次粒子を、走査型電子顕微鏡(SEM)又は透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて観察し、無作為に選んだ3視野を観察した結果から求めた平均粒子径を一次粒子径とする。個々の一次粒子は完全な球状ではないため、SEM又はTEM像における一次粒子の長径と短径の平均値をその一次粒子の粒子径とする。平均粒子径は、各視野で40個の一次粒子を、粒子径が中央値に近い順から抽出し、3視野で抽出した全ての粒子径から求められる平均値である。本発明に係るリチウムイオン二次電池用正極活物質の一次粒子径は、原料の焼成温度等によって調節することができ、大き過ぎると粒成長が激しく、粗大な粒子ができ、小さ過ぎると焼結不足となり、結晶性が低くなるため、これらのバランスを考慮して適宜設定される。また、一次粒子径が大きすぎると、リチウムイオンの拡散抵抗により容量低下する傾向がある。また、一次粒子径が小さすぎると、原料作製が困難になるとともに材料の取り扱いが困難となるため好ましくない。好ましくは、200nm〜400nm、より好ましくは200nm〜300nmである。
一次粒子が凝集した二次粒子は、空隙を有する。二次粒子の空隙率は15%〜40%であることが好ましく、より好ましくは15%〜30%である。二次粒子の空隙率は、水銀ポロシメーター等により測定することができる。測定セルに二次粒子を充填し、そこに水銀を注入して測定するが、二次粒子間に形成される空隙と、二次粒子内に存在する空隙との両方が観察される。本発明における空隙率は、約0.3gの試料を標準5cc粉体用セルに採り、初期圧20kPaの条件で測定したものをいう。測定結果として2つの分布が現れた試料においては、二次粒子内の空隙に比して二次粒子間の空隙が大きく、細孔径の大きい分布は二次粒子間の空隙に対応するため考慮せず、細孔径の小さい分布に基づいて二次粒子内の空隙率を算出する。
二次粒子の平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布計を用いて測定することができる。好ましい二次粒子の平均粒子径は、5μm〜30μm、より好ましくは10μm〜20μmである。二次粒子が大きすぎると、電極厚み方向に配置される二次粒子が少なくなり、電極密度向上に不利である。また、二次粒子が小さすぎると、電極作製が困難になるため好ましくない。
そして、本発明においては、二次粒子の圧壊強度が10MPa〜40MPaであることを特徴とする。より好ましくは20MPa〜30MPaである。二次粒子の圧壊強度は、微小圧縮試験機により測定することができる。本発明では、10個測定し、その平均値を二次粒子の圧壊強度とする。正極を作製する際には、図1に示すように正極活物質の二次粒子100、導電材(図示せず)及びバインダー101を含む正極合剤スラリーを調製し、この正極合剤スラリーを集電体200上に塗布、乾燥して正極合剤層を形成する(図1(a))。そして、この正極合剤層を加圧成形することにより(図1(b)、(c))、正極が製造される。このとき、加圧成形は通常30MPa〜50MPaの圧力で行われる。二次粒子100の圧壊強度が10MPa〜40MPaの範囲内であると、プレスの初期段階において二次粒子100はプレス圧力に耐え、強度を保持しながら再配列する(図1(b))。そして、さらに加圧が進むと、プレスの最終段階において二次粒子100が圧壊し(図1(c))、二次粒子内の空隙が減少して電極密度が高まることとなる。
二次粒子の圧壊強度が本発明の範囲外である場合、すなわち、二次粒子の圧壊強度が40MPaを超える場合には、図2に示すように、加圧成形により二次粒子100が再配列した後も二次粒子100内の空隙が残存し(図2(b))、電極密度が上がりにくいため不適である。一方、二次粒子の圧壊強度が10MPa未満であると、図3に示すように、加圧成形時に簡単に二次粒子100が圧壊して一次粒子化してしまい(図3(b))、プレスの応力が伝わらず、電極密度が低い結果となる。
上記の本発明に係る正極活物質を製造する方法としては、二次粒子の圧壊強度を10MPa〜40MPaに調節できる方法であれば良く、種々の方法を採用することができる。例えば、均一な混合状態が得られる従来知られた共沈法によって製造することができる。共沈法は、遷移金属を含む複数種の化合物を液相に溶解し、これら遷移金属を共沈化合物として析出させた後に焼成する方法である。しかし、共沈法により得られる二次粒子の空隙は少なく、焼結性も良いことから、焼成後、緻密で圧壊強度の比較的高い二次粒子が得られる傾向がある。そのため、二次粒子の圧壊強度が10MPa〜40MPaである正極活物質の製造方法としては、固相法を用いることが好ましい。原料粉末のスラリーを調製し、このスラリーをスプレードライヤーで乾燥した後、焼成(熱処理)を行うことにより正極活物質を得ることができる。なお、熱処理温度を高く、焼成時間を長くすると、粒成長が生じやすく、圧壊強度は高くなり、低温、短時間とすると圧壊強度が低くなる傾向にある。また、焼結促進材、焼結抑制材によっても圧壊強度の調整が可能である。
固相法により正極活物質を製造する場合、原料粉末は少なくともリチウム及びニッケルを含有する。その他、最終的な層状固溶体化合物の組成に対応して、マンガン、コバルト等を適宜分量で含有することができる。リチウムを含有する化合物としては、例えば、酢酸リチウム、硝酸リチウム、炭酸リチウム、水酸化リチウム等を挙げることができる。ニッケルを含有する化合物としては、例えば、酢酸ニッケル、硝酸ニッケル、炭酸ニッケル、硫酸ニッケル、水酸化ニッケル等を挙げることができる。また、マンガンを含有する化合物としては、例えば、酢酸マンガン、硝酸マンガン、炭酸マンガン、硫酸マンガン、酸化マンガン等を挙げることができ、コバルトを含有する化合物としては、例えば、酸化コバルト、硫酸コバルト、硝酸コバルトを挙げることができる。
上記原料粉末から固相法により正極活物質を製造するに当たっては、好ましくは、2段階の熱処理工程を経ることにより行われる。すなわち、少なくともリチウム及びニッケルを含有する原料粉末の第一次熱処理を行い、続いて原料粉末を一旦粉砕し、混合してスラリーを調製し、このスラリーをスプレードライヤーにて乾燥した後、第二次熱処理を行うことにより製造することが好ましい。第一次熱処理の目的は出発原料に含まれる揮発成分を除去することである。また、第二次焼成の目的は結晶性の良い層状固溶体化合物を形成させることである。
原料粉末の粉砕・混合には、例えば、湿式ボールミル、湿式ビーズミル、湿式遊星型ボールミル、湿式アトライター、湿式ジェットミル等を用いることができる。第一次及び第二次熱処理の雰囲気としては、大気や酸素等の酸化ガス雰囲気であれば良く、特に限定されない。熱処理温度は、層状固溶体化合物の組成等に応じて適宜設定することができるが、第一次熱処理の温度を300℃〜750℃、第二次熱処理の温度を900℃〜1100℃とすることが好ましい。第一次熱処理の温度が300℃未満であると、出発原料の熱分解反応が不十分となり好ましくない。また、750℃を超える場合は、揮発成分が炉内に残存している雰囲気下で正極活物質が形成され好ましくない。さらに、第二次熱処理の温度が900℃未満であると、結晶性の向上が不十分となり放電容量が低下してしまい、1100℃を超える場合は、粒成長が激しくなり二次粒子の粒径が粗大となるため好ましくない。
(正極)
上記の正極活物質を用いて、リチウムイオン二次電池用の正極を得ることができる。具体的には、本発明に係る正極活物質を、導電材、バインダー、及び溶媒等と混合して正極合剤スラリーを調製し、これを、例えば、ドクターブレード法、ディッピング法、スプレー法等によって集電体上に塗布し、乾燥させて正極合剤層を形成する。この正極合剤層を加圧成形することにより正極を製造することができる。加圧成形時の圧力は、一般的な条件により行うことができ、通常は30MPa〜50MPaの圧力を加えて成形する。また、正極合剤スラリーの塗布及び乾燥工程を複数回行うことにより、複数の正極合剤層を集電体上に積層させることも可能である。
正極合剤層の厚さは、集電体の両面に塗布した場合で、それぞれ10μm〜30μm程度とすることが望ましいが、これに限定されるものではない。
なお、正極には、本発明に係る正極活物質以外に、例えば、オリビン系正極活物質、層状酸化物系正極活物質、スピネル系正極活物質等、その他の正極活物質を含んでいても構わない。ただし、その他の正極活物質の量は、全ての正極活物質中50重量%未満とすることが好ましい。
また、導電材としては、アセチレンブラック、カーボンブラック等の炭素粉末等が用いられる。正極活物質は、酸化物系であるために一般に電気抵抗が高いので、電気伝導性を補うために導電材が用いられる。
正極に用いるバインダーとしては、変性ポリアクリロニトリル、ポリイミド、ポリウレタン、ポリオレフィン、ポリビニリデンフルオライド等を用いることができる。また、正極合剤層におけるバインダーの量は、多過ぎると電池容量が低下し、逆にバインダーが少な過ぎると、正極合剤層の密着強度が低下し、正極の作製が困難になり、またサイクル特性の低下を招く恐れがあるため、これらのバランスを考慮して適宜設定される。具体的には、正極活物質、導電材及びバインダーの合計量に対して、バインダーの量を3重量%〜15重量%とすることが好ましい。
正極の集電体としては、例えば、厚さが7μm〜30μmのアルミニウム箔、アルミニウム製の穿孔箔、エキスパンドメタル又は発泡金属板等を用いることができる。アルミニウムの他に、ステンレスやチタン等の材質も適用可能であり、適宜選択することができる。
(リチウムイオン二次電池)
本発明に係るリチウムイオン二次電池は、上記の正極を含むことを特徴とする。本発明の正極を使用することにより、高出力が得られ、SOC範囲が広く実効容量が高いリチウムイオン二次電池を得ることができる。本発明に係るリチウムイオン二次電池は、例えば、電気自動車に対して好ましく使用することができる。このようなリチウムイオン二次電池は、上記の本発明に係る正極活物質を含む正極、負極活物質を含む負極、セパレータ、電解液、及び電解質等から構成される。
図4に、本発明に係るリチウムイオン二次電池の一実施形態を示す。リチウムイオン二次電池1は、集電体の両面に正極合剤層を形成した正極2と、集電体の両面に負極合剤層を形成した負極3と、セパレータ4とを有する電極群を備える。正極2及び負極3は、セパレータ4を介して捲回され、電極群を形成している。この捲回された電極群は電池缶5に収納される。
負極3は、負極リード片7を介して、電池缶5に電気的に接続される。電池缶5には、パッキン9を介して、密閉蓋8が取り付けられる。正極2は、正極リード片6を介して、密閉蓋8に電気的に接続される。電極群は、絶縁板10によって絶縁される。なお、電極群は、図4に示すような捲回体でなくても良く、セパレータ4を介して正極2と負極3とを積層した積層体でも良い。
負極3は、従来知られた構成を採用することができ、例えば、負極活物質、バインダー及び集電体から概略構成され、負極活物質を、スチレンブタジエン共重合体等のバインダー及び必要に応じてカルボキシメチルセルロース等と混合して負極合剤スラリーを調製し、この負極合剤スラリーを、ドクターブレード法、ディッピング法、スプレー法等によって集電体に塗布し、乾燥させ、加圧成形することにより作製することができる。負極活物質としては、リチウムイオンを吸蔵放出することができる物質であれば特に限定されない。リチウムイオン二次電池において一般的に使用されている物質を負極活物質として使用することができる。例えば、黒鉛、シリカ、リチウム合金、シリコン合金、スズ合金、アルミニウム合金等を例示することができる。また、負極3の集電体としては銅箔等を用いることができる。
セパレータ4としては、リチウムイオン二次電池において一般的に使用されているものであれば適用可能である。例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、プロピレンとエチレンとの共重合体等のポリオレフィン製の微孔性フィルムや不織布等を例示することができる。
電池缶5の内部を満たす電解液、及び電解質としては、リチウムイオン二次電池において一般的に使用されているものであれば適用可能である。例えば、電解液として、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ビニレンカーボネート、メチルアセテート、エチルメチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、ジメトキシエタン等を挙げることができる。また、電解質としては、LiClO、LiPF、LiBF、LiAsF、LiSbF、LiCFSO、LiCSO、LiCFCO、Li(SO、LiN(CFSO、LiC(CFSO等を挙げることができる。
以下、実施例及び比較例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
(実施例1)
炭酸リチウム、炭酸マンガン及び炭酸ニッケルをジルコニア製ポットに加え、さらに、アセトンを加え、遊星型ボールミル装置を用いて溶解することなく粉砕・混合した。得られたスラリーを乾燥し、原料粉末を得た。この原料粉末を大気中において500℃で12時間焼成し(第一次熱処理)、リチウム遷移金属酸化物を得た。得られたリチウム遷移金属酸化物をジルコニア製ポットに加え、さらに、純水を加え、遊星型ボールミル装置を用いて粉砕・混合し、スラリーを得た。得られたスラリーをスプレードライヤー(ビュッヒ製B−290)にて乾燥した後、大気中において1000℃で12時間焼成し(第二次熱処理)、目的のリチウムイオン二次電池用正極活物質を製造した。正極活物質の組成は0.5LiMnO−0.5LiNi0.625Mn0.375であった。一次粒子の平均粒子径は234nmであり、二次粒子の平均粒子径は18μmであった。また、水銀ポロシメーターにより測定した二次粒子の空隙率は35%であった。さらに二次粒子の圧壊強度は22MPaであった。
(実施例2〜4)
第二次熱処理の温度を変更した以外は、実施例1と同様の方法でリチウムイオン二次電池用正極活物質を製造した。第二次熱処理の温度はそれぞれ、実施例2は900℃、実施例3は1050℃、実施例4は1100℃とした。
(比較例1)
炭酸リチウム、炭酸マンガン及び炭酸ニッケルをジルコニア製ポットに加え、さらに、水を加え、遊星型ボールミル装置を用いて粉砕・混合し、スラリーを得た。得られたスラリーをスプレードライヤーにて乾燥し、原料粉末を得た。この原料粉末を大気中において1000℃で12時間焼成し、リチウム遷移金属酸化物からなる正極活物質を得た。
(比較例2)
第二次熱処理の温度を1150℃に変更した以外は、実施例1と同様の方法により正極活物質を製造した。
実施例1〜4及び比較例1〜2において製造した正極活物質について測定した一次粒子の平均粒子径、二次粒子の平均粒子径、二次粒子の空隙率、及び二次粒子の圧壊強度を表1に示す。
Figure 2015222696
(正極の作製)
上述のようにして作製した層状固溶体化合物からなる正極活物質85重量部、導電材としてアセチレンブラック(電気化学工業株式会社製、デンカブラック(登録商標))10重量部、及びバインダーとして変性ポリアクリロニトリル5重量部を、N−メチルピロリドンに溶解した溶液を混錬し正極合剤スラリーを調製した。正極合剤スラリーを厚み15μmのアルミニウム集電体箔上に塗布し、120℃で乾燥し、得られた電極板を直径15mmの円盤状に打ち抜き、その後、40MPaで3回プレスして正極を作製した。作製した各正極について、正極合剤層の電極密度を測定した。
(リチウムイオン二次電池の作製)
上述のようにして作製した正極を用いてリチウムイオン二次電池を作製した。負極としては金属リチウムを用い、非水電解液としては、体積比1:2のエチレンカーボネートとジメチルカーボネートとの混合溶媒に、LiPFを1.0mol/Lの濃度で溶解させたものを用いた。
(リチウムイオン二次電池の特性評価)
実施例1〜4及び比較例1〜2で作製した正極活物質を用いた各リチウムイオン二次電池について、充放電試験を行った。充放電試験の条件は、充電は0.05C相当の電流で上限電圧を4.6V、放電は0.05C相当の電流で下限電圧を2.5Vとして各電池の放電容量を求めた。それぞれのリチウムイオン二次電池の正極の電極密度、及び放電容量を表2に示す。また、二次粒子の圧壊強度と電極密度の関係を図5に示す。
Figure 2015222696
表2及び図5に示すように、実施例1〜4の正極活物質を用いた場合には比較例1〜2と比較して高密度な電極が得られた。つまり電極密度を向上させるには、二次粒子の圧壊強度を適正な範囲に制御しなければならないことが示された。二次粒子の圧壊強度が10MPa未満の場合、電極作製時の加圧成形において、プレス直後に二次粒子が崩壊して一次粒子化してしまい、プレス圧力が十分伝達しなかったため電極密度が低くなった。また、二次粒子の圧壊強度が40MPaを超える場合は、図7の顕微鏡写真に示すように、電極作製時の加圧成形では二次粒子は崩壊せず、二次粒子間の空隙が残ったままとなり電極密度が低くなった。スプレードライ法で作製された二次粒子の電極密度を向上させるには、電極作製時の加圧成形の初期段階では十分にプレス圧力に耐えうる二次粒子強度が求められ、プレス圧力の増加に伴い、二次粒子を単位とした再配列が起こり、さらにプレス圧力が増すと、二次粒子の変形、破壊が進み空隙が減少し、図6に示すように電極密度が向上する。
本明細書で引用した全ての刊行物、特許、及び特許出願をそのまま参考として本明細書にとり入れるものとする。
1 リチウムイオン二次電池
2 正極
3 負極
4 セパレータ
5 電池缶
6 正極リード片
7 負極リード片
8 密閉蓋
9 パッキン
10 絶縁板
100 二次粒子
101 バインダー
200 集電体

Claims (7)

  1. 層状固溶体化合物よりなる一次粒子が凝集した二次粒子を含み、前記二次粒子の圧壊強度が10MPa〜40MPaであるリチウムイオン二次電池用正極活物質。
  2. 前記層状固溶体化合物が、一般式
    xLiMnO−(1−x)LiNiMnCo
    [式中、x、a、b、c及びdは、以下の関係:0.2≦x≦0.8、0.3≦a<1.0、0≦b≦0.6、0≦c<0.5、0≦d≦0.05、a+b+c+d=1を満たし、Mは、Fe、Ti、Zr、Al、Mg、Cr、V、Nb、Ta、W、Mo、Cu、Zn、Sn及びRuからなる群より選択される少なくとも1種の元素である]
    で表される請求項1に記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質。
  3. 前記二次粒子の空隙率が、15%〜40%である請求項1又は2に記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質。
  4. 層状固溶体化合物よりなる一次粒子が凝集した二次粒子を含み、前記二次粒子の圧壊強度が10MPa〜40MPaであるリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法であって、
    少なくともリチウム及びニッケルを含有する原料粉末を300℃〜750℃で第一次熱処理を行う工程と、
    第一次熱処理を行った原料粉末を粉砕・混合してスラリーを得る工程と、
    スラリーをスプレードライヤーにて乾燥した後、900℃〜1100℃で第二次熱処理を行う工程と、
    を含む前記製造方法。
  5. 請求項1〜3のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質を含むリチウムイオン二次電池用正極。
  6. 請求項1〜3のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質、導電材及びバインダーを含む正極合剤スラリーを調製する工程と、
    正極合剤スラリーを集電体上に塗布し、乾燥して正極合剤層を形成する工程と、
    正極合剤層を加圧成形する工程と、
    を含むリチウムイオン二次電池用正極の製造方法。
  7. 請求項5に記載のリチウムイオン二次電池用正極を含むリチウムイオン二次電池。
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