図1は本発明の実施例1における金属コアはんだボール100の断面図である。1は金属コア、2は第一金属膜、3は第二金属膜、4ははんだである。金属コア1の材料は、はんだ4よりも電気伝導率の高い金属であればよく、例えば銅、金、銀、アルミニウムなどを主成分とした金属が挙げられる。金属コア1の直径は10μm〜1000μmが望ましい。金属コアはんだボール100を用いて半導体素子と基板を接合する際、金属コア1は接合部の高さを制御する役割を果たすことができる。しかし金属コア1の直径が10μm以下となると、高さ制御の効果が低減する可能性が高く、かつハンドリングが困難となる。また金属コア1の直径が1000μm以上となると、金属コアはんだボール100のサイズが1mm以上となるため、接合ピッチが1mm以下の微細接合を実現できない。
上記説明で半導体素子を一例として記載したが、半導体素子上で再配線を施したウェハレベルパッケージや基板上にチップを実装してモールドした半導体パッケージなどでもよい。また基板はセラミック基板、プリント基板、シリコン基板、ガラス基板、フレキシブル基板、金属ベース基板などが挙げられる。更には半導体素子と半導体素子、半導体パッケージと半導体パッケージ、半導体素子とパッケージなどの接合でも同様に高さ制御の効果が得られる。金属コア1は球状で説明したが、楕円、立方体、円柱、直方体、三角柱、四角柱、多角中、円錐などでもかまわない。
第一金属膜2に関しては、融点以上に加熱したときの第一金属膜2とはんだ4の反応速度が第二金属膜3とはんだ4の反応速度よりも遅くなるような第一金属膜2の材料を選定する。例えば第二金属膜3を銅もしくは銅を主成分とする金属膜とする場合は、第一金属膜2はニッケルやチタン、クロムを主成分とした金属が好ましい。第一金属膜2の形成方法はめっきや蒸着など、どのような方法でもかまわない。また第一金属膜2の厚さは金属コア1の直径以下であればよい。
第二金属膜3は、銅もしくは銅を主成分とする金属膜であることが望ましい。第二金属膜3とはんだ4の反応速度は半導体素子や基板の電極材料とはんだ4との反応速度よりも早いもしくは同等の材料を選定する方がよい。また、銅を50%以上含んだ金属であることが望ましい。
はんだ4は錫を主成分とした材料であれば、そのほかの元素を含有していても良い。はんだ4の形成方法は無電解もしくは電解めっき法で形成することが可能であるが、形成方法は他の方法でもかまわない。
図2は本実施例1による金属コアはんだボール100を用いて接合した半導体素子と基板との接合部断面の模式図である。1は金属コア、4ははんだ、10は半導体素子、20は基板側電極、21は基板である。10は半導体素子を一例として記載したが、半導体素子上で再配線を施したウェハレベルパッケージや基板上にチップを実装してモールドした半導体パッケージなどでもよい。
図2では、半導体素子10の電極であるチップ側電極11にはんだ4と金属コア1を有する金属コアはんだボール100を接合した一例を示す。はじめに図2の上段に示すように、金属コアはんだボール100を接合した半導体素子10のチップ側電極11に、基板21上の基板側電極20を位置あわせを行う。位置あわせ後、図2の下段に示すように、半導体素子10の電極上に形成した金属コアはんだボールと、基板21上の基板側電極20とを接触させ、リフローなどで熱を加え、はんだ4を溶融させて金属コアはんだボール100を介して半導体素子10のチップ側電極11と、基板21上の基板側電極20との電気的接続を得る。図2では図示していないが、基板側電極20上にはんだを形成してもよい。ここで、基板21はセラミック基板、プリント基板、シリコン基板、ガラス基板、フレキシブル基板、金属ベース基板などである。半導体素子10の形状は立方体、直方体、円柱、多角柱など特に規定はしないが、最長辺の長さが20mm以下であることが望ましい。また、接合方法でリフローを上記したが、超音波接合などでもよい。
図3は実施例1における基板21上の基板側電極20と接合前で半導体素子10のチップ側電極11に接合された状態の金属コアはんだボール100を含む半導体素子10と基板21との断面図である。1は金属コア、2は第一金属膜、3は第二金属膜、4ははんだ、6は金属間化合物、10は半導体素子、11はチップ側電極、12はチップ側金属間化合物、20は基板側電極、21は基板である。
図3に示すように、基板側電極20と接合する前に、あらかじめ金属コアはんだボール100をチップ側電極11に接合する。接合時はリフロー炉などで金属コアはんだボール100のはんだ4を溶融させて接合するため、チップ側電極11とはんだ4が反応し、チップ側電極11とはんだ4の界面にチップ側金属間化合物12が形成される。同様に第二金属膜3とはんだ4の界面でも金属間化合物6が形成される。はんだ4は錫を主成分とするはんだであればよい。
ここで金属コア1は、はんだ4よりも硬い材料、例えば銅、ニッケル、アルミニウム、タングステン、金、銀、もしくはこれらのうち少なくともひとつの金属を主成分とする合金であればよい。また金属コア1は、二種類以上の金属の複合体、もしくは積層体でもよい。このように、接合前の状態ではチップ側電極11とはんだ4、および第二金属膜3とはんだ4の界面に、各々チップ側金属間化合物12と金属間化合物6が形成されている。
図4は実施例1における接合直後の金属コアはんだボール100を含む半導体素子10と基板21との断面図である。1は金属コア、2は第一金属膜、3は第二金属膜、6は金属間化合物、4ははんだ、10は半導体素子、11はチップ側電極、12はチップ側金属間化合物、20は基板側電極、21は基板、22は基板側金属間化合物である。
図3の状態から、半導体素子10のチップ側電極11に接合された金属コアはんだボール100と基板側電極20の位置合せを行い、リフローなどによりはんだ4の融点以上まで熱を加えてはんだ4を溶融させて、基板側電極20とはんだ4を反応させることにより接合を行う。この際にはんだ4と基板側電極20の間には金属間化合物22が形成される。第一金属膜2はこの接合プロセスの後でも消失しない膜厚とする。
また、図3および図4に示した金属コアはんだボール100の断面図は図2に示した接合プロセスにおけるはんだボール接合部の一部を取り出したものである。なお金属コア1の形状は、球、楕円、円柱、立方体、多角柱などであればよい。また半導体素子10と基板21の接合高さを確保するためには、金属コア1のサイズをはんだボール径の50%以上とすることが望ましい。
このように、金属コアはんだボール100を介して半導体素子10と基板21を接合した構造を得ることができる。この構造により、半導体素子10と基板21の接合部に金属コア1を介在させることにより接合高さを確保し接合部の歪みを低減できること、電気抵抗がはんだ4よりも低い金属コア1がチップ側電極11と基板側電極20の間に入り接合部の電気抵抗を低減し耐エレクトロマイグレーション性を向上させることが可能になる。
図5は実施例1における半導体素子に予め接合した金属コアはんだボール100を基板10に接合後、一定の時間が経過した時の金属コアはんだボールの接合部と半導体素子と基板との断面図である。1は金属コア、2は第一金属膜、3は第二金属膜、4ははんだ、6は金属間化合物、8は金属間化合物、10は半導体素子、11はチップ側電極、12はチップ側金属間化合物、20は基板側電極、21は基板、22は基板側金属間化合物である。
図5は図4の状態から実使用環境などで一定の時間経過後の状態を示し、チップ側電極11の側に生成された金属間化合物12、基板側電極21の側に生成された金属間化合物22、及びはんだ4と第2金属膜3との間に生成された金属間化合物8が成長した様子を示している。金属間化合物8は図3及び4に示した金属間化合物6が成長した様子を示している。以下は金属コア1が銅、第一金属膜2がニッケル、第二金属膜3が銅、はんだ4が錫系はんだ(錫-銀-銅系など)チップ側電極11が銅の場合を例に挙げて本接合の効果について説明する。
図4に示したようにチップ側電極11に接合した金属コアはんだボール100を基板側電極21に接合した直後の状態では、はんだ4が溶融し、第二金属膜3および基板側電極20と反応するため、第二金属膜3とはんだ4、および基板側電極20とはんだ4の接合界面にそれぞれ金属間化合物が形成される(図4中、金属間化合物6と基板側金属間化合物22)。はんだ4とチップ側電極11の界面には既にチップ側金属間化合物12が形成されているが、基板側電極20との接合時の熱負荷によりチップ側金属間化合物12は成長する。このように、各接合界面に金属間化合物が形成された接合部となる。図4に示したような接合直後では、第二金属膜3は全て反応することなく残存している構造とする。
実使用環境等で熱負荷が引き続き加えられると各々の反応が進み、各金属間化合物が成長すると共に、第二金属膜3、はんだ4、チップ側電極11、基板側電極20は金属間化合物化することにより減少していく。
一方で、電流密度が一定量以上になると、微細なはんだ接合部にもエレクトロマイグレーションが発生することがわかっており、はんだ中にボイドが形成されたり、原子の移動による配線材料の化合物化の加速、それに伴う配線もしくはパッドにおける断線が発生することが知られている。
第二金属膜3がない場合、第一金属膜2(ニッケル)とはんだ4の反応速度はチップ側電極11や基板側電極20とはんだ4の反応速度よりも遅いため、上記のように実使用環境による熱負荷、さらには通電によるエレクトロマイグレーションによりチップ側電極11とはんだ4、基板側電極20とはんだ4の界面の反応(銅-錫系金属間化合物の成長)が促進され、チップ側電極11や基板側電極20が消費される。特にチップ側電極11や基板側電極20が銅である場合は高電流密度、温度負荷条件下ではチップ側電極11や基板側電極20の断線が懸念される。
第一金属膜2および第二金属膜3がない場合、実使用環境下では金属コア1がはんだ4と反応するため、チップ側電極11や基板側電極20の消費は抑制されるが金属コア1が消費されるため、金属コアはんだボールの特徴である耐マイグレーション性が低下することが想定される。
本発明のように第二金属膜3を形成した場合、実使用環境下では第二金属膜3を形成しない場合と同様にチップ側電極11とはんだ4、基板側電極20とはんだ4の界面の反応(銅-錫系金属間化合物の成長)が生じるが、第二金属膜3もはんだ4と反応するため、チップ側電極11と基板側電極20の反応量は抑制される。すなわち、第二金属膜3がはんだ4と反応する銅の供給源となるため、チップ側電極11および基板側電極20による金属コア1の消費が低減される。
反応が進行し、ほぼ全ての第二金属膜3が化合物化したのちは反応速度の遅い第一金属膜2が存在するため金属コア1形状は保持され、金属コアはんだボール100特有の耐マイグレーション性を低下させることもない。第二金属膜3がほぼ全て反応した際には、はんだ4が残存していないこと、もしくは、はんだ4がほぼ全て反応した際に金属コア1の表面に金属膜3が残存していることが望ましい。上記の通り、第二金属膜3を形成することにより耐マイグレーション性を向上した金属コアはんだ接合部を形成することができる。
図3乃至図5を用いて説明した例は、予めチップ側電極10に接合しておいた金属コアはんだボールを基板側電極20に接合する例を示したが、これとは逆に、図6に断面を示すように、金属コアはんだボールを予め基板側電極20に接合しておき、これをチップ側電極10に接合するようにしても良い。図6に、その例を示す。
図6で、1は金属コア、2は第一金属膜、3は第二金属膜、4ははんだ、6は金属間化合物、10は半導体素子、11はチップ側電極、20は基板側電極、21は基板、22は基板側金属間化合物である。
図6に示すように、チップ側電極11と接合する前に、あらかじめ金属コアはんだボール100を基板側電極20に接合する。接合時はリフロー炉などで金属コアはんだボール100のはんだ4を溶融させて接合するため、基板側電極20とはんだ4が反応し、基板側電極20とはんだ4の界面に基板側金属間化合物22が形成される。同様に第二金属膜3とはんだ4の界面でも金属間化合物6が形成される。
はんだ4は錫を主成分とするはんだであればよい。ここで金属コア1は、はんだよりも硬い材料、例えば銅、ニッケル、アルミニウム、タングステン、金、銀、もしくはこれらのうち少なくともひとつの金属を主成分とする合金であればよい。
また金属コア1は、二種類以上の金属の複合体、もしくは積層体でもよい。更に、金属コア1は金属であることが望ましいが、最外周部が金属であれば樹脂の周囲を金属で覆ったもの、例えば樹脂ボールの周囲に銅をコーティングしたものでも代替可能である。
このように、接合前の状態では基板側電極20とはんだ4、および第二金属膜3とはんだ4の界面に、各々基板側金属間化合物22と金属間化合物6が形成されている。
図6の状態から、基板21の金属コアはんだボール100とチップ側電極11の位置あわせを行い、リフローなどによりはんだ4の融点以上まで熱を加えてはんだ4を溶融させて、チップ側電極11とはんだ4を反応させることにより接合を行う。この際にはんだ4とチップ側電極11の間にはチップ側金属間化合物12が形成される。第一金属膜2はこの接合プロセスの後でも消失しない膜厚とする。
図6の金属コアはんだボール100つき基板21をチップ10に接合した直後は図4と同様な断面図となる。なお金属コア1の形状は、球、楕円、円柱、立方体、多角柱などであればよい。また半導体素子10と基板21の接合高さを確保するためには、金属コア1のサイズを金属コアはんだボール100の径の50%以上とすることが望ましい。このように、金属コアはんだボール100を介して半導体素子10と基板21を接合した構造を得ることができる。
この構造により、半導体素子10と基板21の接合部に金属コア1を介在することにより接合高さを確保し接合部の歪みを低減できること、電気抵抗がはんだ材よりも低い金属コア1がチップ側電極11と基板側電極20の間に入り接合部の電気抵抗を低減し耐エレクトロマイグレーション性を向上できることが可能になる。さらに本実施例では、あらかじめ基板側に金属コアはんだボール100を形成するため、チップ側金属間化合物12にかかる熱負荷が1回のみであるので接合直後のチップ側金属間化合物12の厚さを薄くすることができる。
〔変形例1〕
次に、実施例1の変形例1を、以下に説明する。
図7は本発明の実施例1の変形例1における金属コアはんだボール110の断面図である。111は金属コア、112は第一金属膜、114ははんだ、115は金属粉である。
金属コア111の材料ははんだ114よりも電気伝導率の高い金属であればよく、例えば銅、金、銀、アルミニウムなどを主成分とした金属が挙げられる。金属コア111の直径は10μm〜1000μmが望ましい。
金属コアはんだボール110を用いて半導体素子10と基板21を接合する際、金属コア111は接合部の高さを制御する役割を果たすことができる。しかし金属コア111の直径が10μm以下となると、高さ制御の効果が低減する可能性が高く、かつハンドリングが困難となる。また金属コア111の直径が1000μm以上となると、金属コアはんだボール110のサイズが1mm以上となるため、接合ピッチが1mm以下の微細接合を実現できない。
上記説明で半導体素子を一例として記載したが、半導体素子上で再配線を施したウェハレベルパッケージや基板上にチップを実装してモールドした半導体パッケージなどでもよい。また基板はセラミック基板、プリント基板、シリコン基板、ガラス基板、フレキシブル基板、金属ベース基板などが挙げられる。更には半導体素子と半導体素子、半導体パッケージと半導体パッケージ、半導体素子とパッケージなどの接合でも同様に高さ制御の効果が得られる。
第一金属膜112に関しては、第一金属膜112とはんだ114の反応速度が金属粉115とはんだ114の反応速度よりも遅くなるような第一金属膜112の材料を選定する。例えば金属粉115を銅もしくは銅を主成分とする場合は、第一金属膜112はニッケルやチタン、クロムを主成分とした金属が好ましい。第一金属膜112の形成方法はめっきや蒸着など、どのような方法でもかまわない。また第一金属膜112の厚さは金属コア111の直径以下であればよい。金属コア111は球状で説明したが、楕円、立方体、円柱、直方体、三角柱、四角柱、多角中、円錐などでもかまわない。
金属粉115は、銅もしくは銅を主成分とする金属であることが望ましい。金属粉115とはんだ114の反応速度は半導体素子や基板の電極材料とはんだ114との反応速度よりも早いもしくは同等な材料を選定する方がよい。また、銅を50%以上含んだ金属であることが望ましい。金属粉115のサイズは最長辺がはんだ114の膜厚よりも小さく、はんだ114中に介在できるサイズとする。はんだ114中への金属粉115の形成方法は、はんだ114を形成する際に含有させてもよいし、あらかじめ金属粉115を含有したはんだ114をコーティングしてもよい。
はんだ114は錫を主成分とした材料であれば、そのほかの元素が含有していても限りではない。はんだ114の形成方法は無電解もしくは電解めっき法で形成することが可能であるが、形成方法はどのような方法でもかまわない。
変形例1において接合後一定の時間経過させた場合、図5と同様な断面構造となる。
図8は変形例1における金属コアはんだボール110を半導体素子10のチップ側電極11に接合させた状態で、基板21の側の基板電極20と接合させる前の状態を示す金属コアはんだボール110と半導体素子10及び基板21との断面図である。116はチップ側電極11とはんだ114との間に形成されたチップ側金属間化合物、90は金属コア111とはんだ114との間に形成された金属間化合物である。
図8に示すように、基板電極20と接合させる前に、あらかじめ金属コアはんだボール110をチップ側電極11に接合させる。接合時はリフロー炉などで金属コアはんだボール110のはんだ4を溶融させて接合するため、チップ側電極11とはんだ4が反応し、チップ側電極11とはんだ74の界面にチップ側金属間化合物12が形成される。また、実施例1で説明した第二金属膜3に代わってはんだ4の中に混在する金属粉115がはんだ4が反応しチップ側金属間化合物116や金属間化合物90が形成される。
はんだ4は錫を主成分とするはんだであればよい。ここで金属コア111は、はんだ4よりも硬い材料、例えば銅、ニッケル、アルミニウム、タングステン、金、銀、もしくはこれらのうち少なくともひとつの金属を主成分とする合金であればよい。また金属コア111は、二種類以上の金属の複合体、もしくは積層体でもよい。このように、接合前の状態では、図8に示したように、チップ側電極11とはんだ4、および第一金属膜2とはんだ4の界面に、各々チップ側金属間化合物116と金属間化合物90が形成されている。
図9は実施例1の変形例1における接合直後の金属コアはんだボール110の断面図である。117ははんだ4と基板側電極20との間に形成された基板側金属間化合物である。
図8に示した状態から、半導体素子10のチップ側電極11に接合させた金属コアはんだボール110と基板側電極20との位置あわせを行い、リフローなどによりはんだ4の融点以上まで熱を加えてはんだ4を溶融させて、基板側電極20とはんだ4を反応させることにより接合を行う。この際にはんだ4と基板側電極20の間には金属間化合物117が形成される。第一金属膜112はこの接合プロセスの後でも消失しない膜厚とする。
このように、金属コアはんだボール110を介して半導体素子10と基板21を接合した構造を得ることができる。この構造により、半導体素子10と基板21の接合部に金属コア111を介在させることにより接合高さを確保し接合部の歪みを低減できること、電気抵抗がはんだ材よりも低い金属コア111がチップ側電極11と基板側電極20の間に入り接合部の電気抵抗を低減し耐エレクトロマイグレーション性を向上できることが可能になる。
さらに本実施例でははんだ中に金属粉115を含有できるので、実施例1で説明した第二金属膜3を形成するプロセスを削減できること、任意の組成の金属粉115を選択できることが特長である。
図10は変形例1において図9で説明した金属コアはんだボール110を基板側電極20と接合した後一定の時間が経過したときの金属コアはんだボール110の断面の状態を示す図である。図10では、図9に示した接合直後の状態と比べて、金属間化合物116、金属間化合物117、金属間化合物91がそれぞれ成長した様子を示している。金属間化合物91は金属間化合物90が成長した様子を示している。以下は金属コア111が銅、第一金属膜112がニッケル、金属粉115が銅、はんだ114が錫系はんだ(錫-銀-銅系など)チップ側電極11が銅の場合を例に挙げて本接合の効果について説明する。
図9の接合直後の状態でははんだ114が溶融し、金属粉115および基板側電極20と反応するため、第一金属膜112とはんだ114、および基板側電極20とはんだ114の接合界面に金属間化合物が形成される(図9中金属間化合物90と基板側金属間化合物22)。はんだ114とチップ側電極11の界面には既にチップ側金属間化合物12が形成されているが、基板接合時の熱負荷によりチップ側金属間化合物116は成長する。
このように、各接合界面に金属間化合物が形成された接合部となる。
図9の接合直後では金属粉115は全て反応することなく残存している状態である構造とする。実使用環境等で熱負荷が引き続き加えられると各々の反応が進み、各金属間化合物が成長すると共に、はんだ114、金属粉115、チップ側電極11、基板側電極20は金属間化合物化することによりそれぞれの体積が減少していく。
一方で、電流密度が一定量以上になると、微細なはんだ接合部にもエレクトロマイグレーションが発生することがわかっており、はんだ中にボイドが形成されたり、原子の移動による配線材料の化合物化の加速、それに伴う配線もしくはパッドにおける断線が発生することが知られている。
金属粉115がない場合、実施例1で説明した第二電極膜3がない場合と同様になる。
すなわち、第一電極膜112(ニッケル)とはんだ114の反応速度はチップ側電極11や基板側電極20とはんだ114の反応速度よりも遅いため、上記のように実使用環境による熱負荷、さらには通電によるエレクトロマイグレーションによりチップ側電極11とはんだ114、基板側電極20とはんだ114の界面の反応(銅-錫系金属間化合物の成長)が促進され、チップ側電極11や基板側電極20が消費される。特にチップ側電極11や基板側電極20が銅である場合は高電流密度、温度負荷条件下ではチップ側電極11や基板側電極20の断線が懸念される。
第一電極膜112およびはんだ114の中に金属粉115が混在していない場合、実使用環境下では金属コア111がはんだ114と反応するため、チップ側電極11や基板側電極20の消費は抑制されるが金属コア111が消費されるため、金属コアはんだボール110の特徴である耐マイグレーション性が低下することが想定される。
本実施例のように金属粉115を形成した場合、実使用環境下では金属粉115を含有しない場合と同様にチップ側電極11とはんだ114、基板側電極20とはんだ114の界面の反応(銅-錫系金属間化合物の成長)が生じるが、金属粉115もはんだ114と反応するため、チップ側電極11と基板側電極20の反応量は抑制される。すなわち、金属粉115がはんだ114と反応する銅の供給源となるため、チップ側電極11および基板側電極20の消費が低減される。
反応が進行し、ほぼ全ての金属粉115が化合物化したのちは反応速度の遅い第一金属膜112が存在するため金属コア111の形状は保持され、金属コアはんだボール110特有の耐マイグレーション性を低下させることもない。
上記の通り、はんだ114中に金属粉115を含有させることにより耐マイグレーション性を向上した金属コアはんだ接合部を形成することができる。
本変形例においては、あらかじめチップ側にはんだボールを接合させておく構造で説明したが、あらかじめ基板側にはんだボールを接合させておいてもかまわない。
〔変形例2〕
次に、実施例1の変形例2を以下に説明する。
変形例2は、実施例1で図1を用いて説明した金属コアはんだボール100又は変形例1で図7を用いて説明した金属コアはんだボール110の構造において、中心の金属コア1を柔軟性のある樹脂のボールの表面に銅をコーティングした2層構造の金属コアに置き換えたものである。図11Aと図11Bに変形例2における金属コアはんだボール120及び130の構成を示す。樹脂のボールの表面にコーティングする材料としては、銅のほかに、ニッケル、金、銀、アルミニウム又はそれらを含む合金などであっても良い。
図11Aに示した金属コアはんだボール120は、実施例1の図1に示した金属コアはんだボール100に対応するもので、121は樹脂ボール、122は樹脂ボール121の表面にコーティングした銅膜、123は第一金属膜層でニッケル(Ni)又はチタン(Ti)、クロム(Cr)などをメッキ又は蒸着により形成される。124は第二金属膜層で銅(Cu)又は銅を主成分とする金属膜、125は錫(Sn)を主成分とするはんだ層である。
このような2層構造の金属コアを用いた金属コアはんだボール120を用いて半導体素子10と基板側電極20とを接合する方法は、図2乃至図6を用いて説明した方法と同じであるので、説明を省略する。
図11Aに示した樹脂コアはんだボール120の構成は、特許文献4の図1に記載されている構成と類似している。しかし、本変形例2による樹脂コアはんだボール120では、樹脂ボール121の表面にコーティングした銅膜122を第一金属膜層123のニッケル(Ni)又はチタン(Ti)、クロム(Cr)などで覆うことにより、樹脂コアはんだボール120をチップ側電極11や基板側電極20とはんだ接合するときに、銅膜122がはんだ材料と反応するのを防止する構成にしているのに対して、特許文献4に記載されている構成においては、有機重合体のコアの外周を覆うCu層がその外側のはんだ内層と直接接している構造となっており、Cu層がはんだ内層と反応するのを防止する構成になっていない点で異なる。
即ち、本変形例2の構成においては、樹脂ボール121の表面にコーティングした銅膜122は第一金属膜層123で覆われていてその外側のはんだ層と反応するのを防止されているので、一定の形状を保持すると共に、導電性材料としての安定した特性を維持することが可能になる。
また、図11Bに示した金属コアはんだボール130は、変形例1の図7に示した金属コアはんだボール110に対応するもので、金属コアはんだボール110において、中心部分の金属コア111を柔軟性のある樹脂のボール131の表面に銅膜132をコーティングした金属コアはんだボール130に置き換えたものである。図11Bで、131は樹脂ボール、132は樹脂ボール131の外周面にコーティングした銅膜、133は金属膜層でニッケル(Ni)又はチタン(Ti)、クロム(Cr)などをメッキ又は蒸着により形成される。134は錫(Sn)を主成分とするはんだ層、135は導電性フィラーで変形例1の場合と同様に銅(Cu)又は銅を主成分とする金属ある。
このような2層構造の金属コアを用いた金属コアはんだボール130を用いて半導体素子10と基板側電極20とを接合する方法は、図2乃至図6を用いて説明した方法と同じであるので、説明を省略する。
このような樹脂ボール121または131を用いた金属コアはんだボール120または130を用いることにより、半導体素子10と基板21との接合に柔軟性が加わり、半導体素子10と基板21との間の熱膨張率の差異により発生する半導体素子10と基板21との接合部の応力を、金属コアはんだボール120または130で吸収させることが可能になり、接合の信頼性を向上させることができる。
上記した樹脂ボール121または131の素材として、導電性ポリアセチレンなどの導電性樹脂(導電性高分子)を用いても良い。
次に、実施例1及び実施例1の変形例1および2で説明したはんだボールを、先ず半導体素子の側の多数の電極10に一括して接合し、次にこの半導体素子の多数の電極に接合した多数のはんだボールを基板側電極20に一括して接合する方法について説明する。
図12に実施例1及び変形例1,2で説明したはんだボールを半導体素子上の多数の電極へ一括して接合する方法を示す。30はチップ側電極、31は半導体素子、40はフラックス印刷用マスク、41はスキージ、42はフラックス、43ははんだ振込み用マスク、50は金属コアはんだボールである(実施例1の変形例2で説明した樹脂コアはんだボール120または130であっても良い)。
図12(a)はチップ電極30を有する半導体素子31である。この半導体素子31を、図示していない印刷機にセットする。
次に、半導体素子31を印刷機にセットした状態で、図12(b)に示すように、金属コアはんだボールを搭載する箇所に開口部を持つフラックス印刷用マスク40の位置あわせを行う。フラックス印刷用マスク40の厚さは転写したいフラックス厚さであればよく、例えば直径100μmの金属コアはんだボールを搭載したい場合は10−40μm厚程度が望ましい。
位置あわせ後、フラックス印刷用マスク40上の任意の箇所にフラックス42を塗布し、スキージ41で印刷することによりフラックス印刷用マスク40に形成している開口部にフラックスを形成する(図12(c))。
印刷後、フラックス印刷用マスク40を取り外すことにより、チップ側電極30上の金属コアはんだボール搭載箇所にフラックス42のパターンを印刷した半導体素子31が完成する。
次に、チップ側電極30上にフラックス42のパターンを印刷した半導体素子31を金属コアはんだボール50を搭載するはんだボール搭載部(図示せず)へ移動させ、はんだ振込み用マスク43をフラックス42のパターンを印刷済みの半導体素子1に位置あわせし、そののち、はんだ振込み用マスク43上に金属コアはんだボール50を供給して、金属コアはんだボール50をチップ側電極30上に印刷されたフラックス42のパターン上に1個ずつ搭載する(図12(d))。はんだ振込み用マスク43の厚さは金属コアはんだ50の直径に近い方が望ましい。
はんだ振込み用マスク43を搭載した状態で、チップ側電極30上のフラックス42のパターン上に1個ずつ金属コアはんだボール50を搭載した状態で半導体素子1をリフロー炉の内部に搬送して熱処理を行い、金属コアはんだボール50のはんだ部(図1のはんだ4に相当)を溶融させることにより金属コアはんだボール50と半導体素子1上のチップ側電極30とを接合する(図12(e))。例えば金属コアはんだボール50としてSn系の材料を使用した場合は、リフロー時の接合部の最大温度を250℃から260℃とする。
最後に、はんだ振込み用マスク43を半導体素子31上から取り除くことにより、金属コアはんだボール50がチップ側電極30上に接合された半導体素子60が完成する(図12(f))。ここでは個片に分割した素子を用いて説明したが、ウェハ状態で図12のプロセスではんだボールを形成したのちに、ダイシングもしくはサンドブラストなどで個片に分割してもかまわない。
ここでは、はんだ振込み用マスク43を用いてチップ側電極30上に印刷されたフラックス42のパターン上に1個ずつ金属コアはんだボール50を搭載する方法を示したが、はんだ振込み用マスク43を用いずに、金属コアはんだボール50を吸着手段で吸着させたのちにチップ側電極30上に印刷されたフラックス42のパターン上に転写する転写方法などで形成してもよい。
図13に、チップ側電極30上に金属コアはんだボール50が接合された半導体素子31と基板60との組み立てプロセスを示す。61は基板側電極、70はアンダーフィルである。先ず、図12を用いて説明したプロセスで形成した金属コアはんだボール50が接合された半導体素子31のチップ側電極30と、基板60上の基板側電極61の位置あわせを行う(図13(a))。位置あわせ後、リフロー等で熱を加えはんだ溶融させる(図13(b))。図13では図示していないが、基板側電極61上にはんだを形成してもよい。最後に接合部の長期接合信頼性を向上させるためにアンダーフィル70を注入し、硬化させる(図13(c))。
これにより、金属コアはんだボールにて半導体素子上の電極と基板上電極の電気的導通を確保した半導体装置80が完成する。なおアンダーフィル70は必要に応じて形成すればよい。ここで、基板60はセラミック基板、プリント基板、シリコン基板、ガラス基板、フレキシブル基板、金属ベース基板などである。ここでは個片に分割した素子および基板を用いて説明したが、ウェハ状態で図12のプロセスではんだボールを形成したのちに、基板60にウェハ状態で接合を行い、その後ダイシングもしくはサンドブラストなどでウェハおよび基板を個片に分割してもかまわない。
図13では半導体素子31と基板60のサイズを同等として記したが、個片に分割した半導体素子31を基板60に搭載する際は、半導体素子31のサイズが基板60のサイズより小さくてもかまわない。このプロセスで形成した構造により、半導体素子31と基板60の接合部に金属コアはんだボール50の金属コア1(図1参照)を介在させることにより接合高さを確保し接合部の歪みを低減できること、電気抵抗がはんだ材よりも低い金属コア1がチップ側電極30と基板側電極61の間に入り接合部の電気抵抗を低減し耐エレクトロマイグレーション性を向上させることが可能になる。
図12及び図13では、先ず半導体素子31のチップ電極30上に金属コアはんだボール50を接合した後に基板60の基板側電極61と金属コアはんだボール50を接合するプロセスについて説明したが、逆に、先ず基板60の基板側電極61上に金属コアはんだボール50を接合した後に半導体素子31のチップ電極30上に金属コアはんだボール50を接合するプロセスについて、図14及び図15を用いて説明する。
図14において、40はフラックス印刷用マスク、41はスキージ、42はフラックス、43ははんだ振込み用マスク、50は金属コアはんだボール(実施例1の変形例2で説明した樹脂コアはんだボール120または130であっても良い)、60は基板、61は基板上電極である。
図14(a)は基板上電極61を有する基板60である。この基板60を、図示していない印刷機にセットする。次に、基板60を印刷機にセットした状態で、図14(b)に示すように、金属コアはんだボールを搭載する箇所に開口部を持つフラックス印刷用マスク40の位置あわせを行う。フラックス印刷用マスク40の厚さは転写したいフラックス厚さであればよく、例えば直径100μmの金属コアはんだボールを搭載したい場合は10−40μm厚程度が望ましい。位置あわせ後、フラックス印刷用マスク40上の任意の箇所にフラックス42を塗布し、スキージ41で印刷することによりフラックス印刷用マスク40に形成している開口部にフラックスを形成する(図14(c))。
印刷後、フラックス印刷用マスク40を取り外すことにより、基板上電極61の金属コアはんだボール搭載箇所にフラックス42のパターンを印刷した基板60が完成する。次に、基板上電極61にフラックス42のパターンを印刷した基板60を金属コアはんだボール50を搭載するはんだボール搭載部(図示せず)へ移動させ、はんだ振込み用マスク43をフラックス42のパターンを印刷済みの基板60に位置あわせし、そののち、はんだ振込み用マスク43上に金属コアはんだボール50を供給して、金属コアはんだボール50を基板上電極61上に印刷されたフラックス42のパターン上に1個ずつ搭載する(図14(d))。はんだ振込み用マスク43の厚さは金属コアはんだ50の直径に近い方が望ましい。
はんだ振込み用マスク43を搭載した状態で、基板上電極61のフラックス42のパターンに1個ずつ金属コアはんだ50を搭載した状態で基板60をリフロー炉の内部に搬送して熱処理を行い、金属コアはんだボール50のはんだ部(図1のはんだ4に相当)を溶融させることにより金属コアはんだボール50と基板60上の基板側電極61とを接合する(図14(e))。例えば金属コアはんだボール50としてSn-Cu系の材料を使用した場合は、リフロー時の接合部の最大温度を250℃から260℃とする。
最後に、はんだ振込み用マスク43を基板60から取り除くことにより、金属コアはんだボール50が基板上電極61に接合された基板が完成する(図14(f))。ここでは、個片に分割した基板を用いて説明したが、個片分割前状態で図14(a)〜(f)のプロセスではんだボールを形成したのちに、ダイシングもしくはサンドブラストなどで基板60を個片に分割してもかまわない。
ここでは、はんだ振込み用マスク43を用いて基板上電極61上に印刷されたフラックス42のパターン上に1個ずつ金属コアはんだボール50を搭載する方法を示したが、はんだ振込み用マスクを用いずに、金属コアはんだボール50を吸着手段で吸着させたのちに転写する転写方法などで形成してもよい。
図15に半導体素子上電極30と基板上電極61上に金属コアはんだボール50が接合された基板60の組み立てプロセスを示す。30はチップ側電極、31は半導体素子、60は基板、61は基板側電極、70はアンダーフィルである。
先ず、図14を用いて説明したプロセスで形成した金属コアはんだボール50が接合された基板側電極61と、半導体素子31上のチップ側電極30の位置あわせを行う(図15(a))。位置あわせ後、リフロー等で熱を加えはんだ溶融させる(図15(b))。これにより金属コアはんだボールを介して半導体素子31のチップ側電極30と、基板60上の基板側電極61との電気的接合を得る。図14では図示していないが、チップ側電極30上にはんだを形成してもよい。最後に接合部の長期接合信頼性を向上させるためにアンダーフィル70を注入し、硬化させる(図15(c))。
これにより、金属コアはんだボールにて半導体素子上の電極と基板上電極の電気的導通を確保した半導体装置が完成する。なおアンダーフィル70は必要に応じて形成すればよい。ここで、基板60はセラミック基板、プリント基板、シリコン基板、ガラス基板、フレキシブル基板、金属ベース基板などである。ここでは個片に分割した素子および基板を用いて説明したが、個片分割前の状態で図13のプロセスではんだボールを基板上に形成したのちに、半導体ウェハに個片分割前状態で接合を行い、その後ダイシングもしくはサンドブラストなどでウェハおよび基板を個片に分割してもかまわない。
このプロセスで形成した構造により、半導体素子31と基板60の接合部に金属コアはんだボール50の金属コア1(図1参照)を介在させることにより接合高さを確保し接合部の歪みを低減できること、電気抵抗がはんだ材よりも低い金属コア1がチップ側電極30と基板側電極61の間に入り接合部の電気抵抗を低減し耐エレクトロマイグレーション性を向上させることが可能になる。また、このプロセスではチップ側接合部の熱負荷は図15に示す一回のみであることから、図12と図13とを用いて説明したプロセスと比べてチップ側電極30の反応量を抑制することができる。