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JP2015167939A - 脱気用中空糸膜モジュール - Google Patents

脱気用中空糸膜モジュール Download PDF

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JP2015167939A JP2014046944A JP2014046944A JP2015167939A JP 2015167939 A JP2015167939 A JP 2015167939A JP 2014046944 A JP2014046944 A JP 2014046944A JP 2014046944 A JP2014046944 A JP 2014046944A JP 2015167939 A JP2015167939 A JP 2015167939A
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Yoshie Tanizaki
美江 谷崎
岡崎 博行
Hiroyuki Okazaki
博行 岡崎
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Abstract

【課題】小型でありながら、脱気対象の液体を高流量で通液した際でも脱気性能に優れ、圧力損失も小さい、内部潅流型の脱気用中空糸膜モジュールの提供。
【解決手段】両端部が開口した状態で、複数本の中空糸膜がモジュールケース12内に樹脂で固定され、モジュールケース12の両端部に装着されたキャップ13,14のうちの一方には液体流入口13aが形成され、他方には液体流出口14aが形成され、最大外径Doutが90mm以下の中空糸膜モジュール10であり、液体流入口13aから水温25℃、溶存酸素濃度8mg/Lの水を500mL/分の流速で導入するとともに、中空糸膜の外側を排気口12aを通じて圧力13kPaの減圧下に保ちながら、液体流出口14aから処理水を得た場合に、処理水は溶存酸素除去率が50%以上で、液体流入口13aと液体流出口14aの圧力損失が2.0kPa以下である中空糸膜モジュール10。
【選択図】図1

Description

本発明は、液体から溶存ガスを除去する際に使用される脱気用中空糸膜モジュールに関する。
従来、様々な分野において、液体の特性を向上させるために、液体から溶存ガスを除去することが行われている。例えば、インクジェットプリンタ用のインクから酸素等の溶存ガスを除去することにより、印字精度を向上させることができる。液体から溶存ガスを除去する脱気方法として、中空糸膜モジュールを用いる方法が知られている。
脱気用中空糸膜モジュールとしては、中空糸膜の外側に脱気対象の液体を流し、中空糸膜の中空部を減圧することで脱気を行う、外部灌流型のモジュール(例えば特許文献1および2参照。)と、中空糸膜の内側(中空部)に脱気対象の液体を流し、中空糸膜の外側を減圧することで脱気を行う、内部灌流型のモジュール(例えば特許文献3参照。)とが知られている。
外部潅流型のモジュールは、内部潅流型のモジュールに比べて、通液時の圧力損失が少なく、比較的高流量での脱気が可能である等のメリットがあるが、デッドボリュームが大きく、脱気の初期等には廃棄処分となる液体が多く生じやすい傾向にある。そのため、脱気対象が例えば高価なインク等である場合には、デッドボリュームが小さく、廃棄される液体量を低減でき、少量の液体でも効果的に脱気しやすい内部潅流型のモジュールの使用が好適である。
国際公開第2009/144813号 特開2005−305432号公報 特開2008−114170号公報
しかしながら、近年の技術の進歩、印刷対象の拡大等に伴うプリンタの大型化、印字速度の高速化等を背景として、内部潅流型のモジュールにも、高流量で通液した場合でも脱気性能が優れ、圧力損失も小さいことが求められるようになってきている。
また、脱気用中空糸膜モジュールは、限られたスペースに配置されることが多いため、できるだけ小型であることも求められる。
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、小型でありながら、脱気対象の液体を高流量で通液した際でも脱気性能に優れ、圧力損失も小さい、内部潅流型の脱気用中空糸膜モジュールの提供を目的とする。
本発明は以下の構成を有する。
[1]複数本の中空糸膜と、該中空糸膜が収納された円筒状のモジュールケースとを備えた脱気用中空糸膜モジュールにおいて、前記中空糸膜は、両端部が開口した状態でモジュールケース内に樹脂で固定され、前記モジュールケースの一方の端部には、前記中空糸膜の中空部に液体を導入する液体流入口が形成され、前記モジュールケースの他方の端部には、前記中空糸膜の中空部から脱気後の処理水を得る液体流出口が形成され、前記モジュールケースの側面には、前記液体から除去されたガスを排出する排気口が形成され、当該脱気用中空糸膜モジュールは、最大外径が90mm以下であり、前記液体流入口から水温25℃、溶存酸素濃度8mg/Lの水を500mL/分の流速で導入するとともに、前記排気口を通じて前記中空糸膜の外側を圧力13kPaの減圧下に保ちながら、前記液体流出口から処理水を得た場合に、前記処理水は、溶存酸素除去率が50%以上で、前記液体流入口と前記液体流出口の圧力損失が、2.0kPa以下である、脱気用中空糸膜モジュール。
[2]前記モジュールケースの両端部に装着されたキャップをさらに備え、前記液体流入口は、前記モジュールケースの一方の端部に装着されたキャップに形成され、前記液体流出口は、前記モジュールケースの他方の端部に装着されたキャップに形成されている、[1]に記載の脱気用中空糸膜モジュール。
[3]前記中空糸膜の内径が200μm以上である、[1]または[2]に記載の脱気用中空糸膜モジュール。
[4]前記中空糸膜は、気体透過性の均質層と、該均質層を支持する多孔質支持層とを有し、前記均質層は、密度が0.850〜0.910g/cmのポリオレフィン系樹脂からなる、[1]〜[3]のいずれかに記載の脱気用中空糸膜モジュール。
[5]前記ポリオレフィン系樹脂は、エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンとが共重合した分子量分布が4.0以下のエチレン・α−オレフィン共重合体である、[4]に記載の脱気用中空糸膜モジュール。
本発明によれば、小型でありながら、脱気対象の液体を高流量で通液した際でも脱気性能に優れ、圧力損失も小さい、内部潅流型の脱気用中空糸膜モジュールを提供できる。
(a)本発明の脱気用中空糸膜モジュールの一例について外観を示す側面図、(b)(a)のI−I’線に沿う横断面図である。 図1の脱気用中空糸膜モジュールの縦断面図である。
以下、本発明を詳細に説明する。
図1は、本発明の内部潅流型の脱気用中空糸膜モジュール(以下、「中空糸膜モジュール」ともいう。)の一例を示す図であり、(a)は外観を示す側面図、(b)は(a)のI−I’線に沿う横断面図である。図2は、図1の中空糸膜モジュールの縦断面図である。
図示例の中空糸膜モジュール10は、複数本の中空糸膜11と、中空糸膜11が収納される円筒状のモジュールケース12と、モジュールケース12の両端部に外嵌されたキャップ13,14とを備えて概略構成されている。
中空糸膜11は複数本が集束され、中空糸膜11の長手方向とモジュールケース12の長手方向とが概略一致するように、モジュールケース12内に収納されている。収納された中空糸膜11の両端部は、開口した状態を維持しつつ、モジュールケース12内に樹脂15で固定されている。
キャップ13,14は、モジュールケース12の長手方向の両端部に、図示略のOリングを介して、液密に装着されている。
モジュールケース12の一方の端部に装着されたキャップ13の中央には、液体流入口13aが形成され、該液体流入口13aから、脱気対象の液体がモジュールケース12内に導入され、さらに中空糸膜11の中空部に導入されるようになっている。
モジュールケース12の他方の端部に装着されたキャップ14の中央には、液体流出口14aが形成され、該液体流出口14aから、中空糸膜11の中空部において溶存ガスが脱気された処理水が中空糸膜モジュール10の外部に取り出されるようになっている。
モジュールケース12の側面には、脱気対象の液体から除去された酸素等のガスを排出する排気口12aが外方に突出して形成されている。
図示例の中空糸膜モジュール10は、モジュールケース12にキャップ13,14が外嵌されたものである。そのため、この例の中空糸膜モジュール10は、キャップ13,14が装着された部分の外径が最も大きくなっている。この例の中空糸膜モジュール10は、最大外径Dout(この例ではキャップ13,14が装着された部分の外径)が90mm以下に形成されている。
なお、中空糸膜モジュール10の外径には、モジュールケース12の側面から外方に突出するように形成された排気口12aの長さは含めない。
中空糸膜モジュール10の最大外径Doutは、中空糸膜モジュール10の小型化(スリム化)の点から、上述のとおり90mm以下であり、85mm以下が好ましい。最大外径Doutは、モジュールケース12内に充分な本数の中空糸膜11を収納して、良好な脱気性能を確保する点から、60mm以上が好ましく、70mm以上がより好ましい。
この例の中空糸膜モジュール10は、モジュールケース12の長さLが150mm以下であることが好ましく、130mm以下であることがより好ましい。モジュールケース12の長さLは、80mm以上であることが好ましく、100mm以上であることがより好ましい。また、モジュールケース12の内径Dinとモジュールケース12の長さLとの比(L/Din)は、2〜3であることが好ましい。モジュールケース12の長さLおよび比(L/Din)が上記範囲内であると、最大外径Doutが90mm以下である中空糸膜モジュール10に、脱気対象の液体を高流量で通液した際でも、圧力損失を低減でき、かつ、充分な脱気性能が得られやすい。
中空糸膜11は、中空糸膜11の中空部−外側間を気体が透過する気体透過性を有する。
中空糸膜11の内径は、200μm以上であることが好ましく、220μm以上であることがより好ましい。中空糸膜11の内径は、300μm以下であることが好ましい。中空糸膜11の内径が上記下限値以上であると、液体の通液時の圧力損失を低減できる。また、脱気中に中空糸膜11の振動等が起こっても、中空糸膜11が破損しにくい。一方、中空糸膜11の内径が上記上限値以下であると、モジュールケース12内に充分な本数の中空糸膜11を収納でき、良好な脱気性能を維持できる。
中空糸膜11の膜厚は、30〜70μmが好ましく、40〜65μmがより好ましい。膜厚が上記範囲の下限値以上であると、モジュールケース12内における中空糸膜11の外側(外周部)を繰り返し減圧した際の耐久性に優れる。膜厚が上記範囲の上限値以下であると、脱気性能を良好に維持できる。
なお、中空糸膜の膜厚は、中空糸膜の内径と外径との差から、下記式(1)により算出される。
中空糸膜の膜厚=(中空糸膜の外径−中空糸膜の内径)/2…(1)
中空糸膜の内径および外径は、下記のように実測する。
まず、中空糸膜を数本束ねて、その外側全体をポリウレタン樹脂で覆うとともに、各中空糸膜の中空部にもポリウレタン樹脂を充填し、硬化させる。ついで、硬化した束を中空糸膜の径方向に沿って、その長手方向の長さが約0.5mmとなるようにスライスし、厚み約0.5mmの薄片状のサンプルを得る。ついで、このサンプルの断面の光学像を投影機を用いて例えば100倍の倍率でスクリーンに投影する。投影された像において、各中空糸膜の外径および内径を測定する。このようにサンプルを切り出して測定する操作を3回繰り返し、3回の全数値の平均値をもって、中空糸膜の外径および内径とする。
中空糸膜11は、気体透過性の均質層と、該均質層を支持する多孔質支持層とを有する複合膜であることが、強度に優れるとともに、液体の漏れを抑制しつつ溶存ガスを効果的に除去でき、脱気性能に優れる点で好ましい。
複合膜の具体的な層構成としては、均質層の内側または外側に多孔質支持層が設けられた二層構造、均質層の内側と外側に多孔質支持層が設けられた三層構造が好ましく、強度および脱気性能の点で三層構造がより好ましい。
均質層の材質としては、ポリジメチルシロキサン、シリコンとポリカーボネートの共重合体等のシリコンゴム系樹脂;エチレンとα−オレフィンとの共重合体、ポリ4−メチルペンテン−1、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、直鎖状超低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、アイオノマー樹脂、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸メチル共重合体、変性ポリオレフィン(例えば、オレフィンの単独重合体または共重合体と、マレイン酸、フマル酸等の不飽和カルボン酸、酸無水物、エステルまたは金属塩等との反応物。)等のポリオレフィン系樹脂;ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素含有樹脂;エチルセルロース等のセルロース系樹脂;ポリフェニレンオキサイド;ポリ4−ビニルピリジン;ウレタン系樹脂;等が挙げられる。これらの樹脂は1種単独で使用しても、2種以上をブレンドして用いてもよい。また、これらの樹脂の共重合体も使用できる。
なかでも均質層の材質としては、ポリオレフィン系樹脂が好ましく、密度が0.850〜0.910g/cmのポリオレフィン系樹脂がより好ましい。密度が上記範囲内のポリオレフィン系樹脂により形成された均質層は、高流量で処理対象の液体を通液した際でも脱気性能に優れるとともに、実用上適した融点または軟化点となる。
なお、密度は、JIS K 7112(ASTM D1505と同じ規定。)に基づいて測定される。
密度が上記範囲のポリオレフィン系樹脂は、示差走査型熱量計(DSC)で測定した融点(Tm)が、約40〜100℃となる。
中空糸膜11の耐薬品性の点からは、均質層を形成するポリオレフィン系樹脂は、エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンとが共重合した分子量分布が4.0以下のエチレン・α−オレフィン共重合体が好ましい。
炭素数3〜20のα−オレフィンとしては、プロピレン(炭素数3)、イソブチレン(炭素数4)、1−ブテン(炭素数4)、1−ペンテン(炭素数5)、1−ヘキセン(炭素数6)、4−メチル−1−ペンテン(炭素数6)、1−オクテン(炭素数8)が挙げられる。炭素数3〜20のα−オレフィンとしては、炭素数4〜20のα−オレフィンが好ましく、炭素数6〜8のα−オレフィンがより好ましく、1−ヘキセンまたは1−オクテンが特に好ましい。
炭素数3〜20のα−オレフィンは、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
エチレン・α−オレフィン共重合体の分子量分布は、上述のとおり4.0以下が好ましく、3.5以下がより好ましく、3.0以下が特に好ましい。このように分子量分布が小さなエチレン・α−オレフィン共重合体は、メタロセン触媒を使用して共重合する方法等で得られる。例えば、ダウ・ケミカル社が開発したインサイト(シングルサイト)触媒、いわゆるメタロセン触媒の一種である拘束幾何触媒を使用して共重合する方法で得られる。
なお、分子量分布とは、質量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比率(Mw/Mn)である。質量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)は、ポリスチレンを標準試料として用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により求められる。
エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンとが共重合したエチレン・α−オレフィン共重合体は、炭素数3〜20のα−オレフィンを全モノマーの10モル%以上用いて共重合したものが耐薬品性の点で好ましく、20〜40モル%用いて共重合したものがより好ましい。
均質層を形成するポリオレフィン系樹脂のメルトフローレート(MFR)は、190℃において、0.1〜5g/10minが好ましく、0.3〜2g/10minがより好ましい。MFRが上記範囲の下限値以上であると、均質層の成形性に優れる。MFRが上記範囲の上限値以下であると、中空糸膜の製造時において、該ポリオレフィン系樹脂が多孔質支持層側に流出することが抑制され、そのため、厚さが均一で、優れた脱気性能を有する均質層を形成できる。
なお、MFRは、ASTM D1238のE条件に従い、試験温度190℃、試験荷重2.16kgf(21.18N)で測定した値である。
均質層の形成に好適なエチレン・α−オレフィン共重合体の市販品としては、α−オレフィンの炭素数が8であるダウ・ケミカル社製の「アフィニティー(AFFINITY)(登録商標)」、α−オレフィンの炭素数が6であるプライムポリマー社製の「エボリュー(登録商標)」等が挙げられる。
なお、均質層を形成するポリオレフィン系樹脂には、樹脂以外の成分として、必要に応じて、酸化防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、アンチブロッキング剤、着色剤、難燃化剤等の添加物が本発明の目的を損なわない範囲で添加されていてもよい。
多孔質支持層の材質としては、ポリジメチルシロキサン、シリコンとポリカーボネートの共重合体等のシリコンゴム系樹脂;ポリ4−メチルペンテン−1、ポリ3−メチルブテン−1、低密度ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂;ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素含有樹脂;エチルセルロース等セルロース系樹脂;ポリフェニレンオキサイド;ポリ4−ビニルピリジン;ウレタン系樹脂;ポリスチレン;ポリエーテルエーテルケトン;ポリエーテルケトン等が挙げられる。これらの樹脂は1種単独で使用しても、2種以上をブレンドして用いてもよい。また、これらの樹脂の共重合体も使用できる。
多孔質支持層の孔径は、0.01〜1μmの範囲が好ましい。孔径が上記範囲の上限値以下であれば、均質層の微細孔(気体が透過する孔)内が濡れにくく、そのため、処理対象の液体に含まれる薬品による均質層の劣化が低減される。孔径が上記範囲の下限値以上であると、気体透過性が高くなり、脱気性能に優れる。また、多孔質支持層の空孔率は30〜80体積%が好ましい。空孔率が上記範囲の下限値以上であると、気体透過性が向上し、脱気性能に優れる。空孔率が上記範囲の上限値以下であると、中空糸膜11の耐圧性等の機械的強度が向上する。
均質層および多孔質支持層の厚さは、膜厚が上記範囲内となるように決定されることが好ましく、その範囲内において、均質層の厚さは0.3〜2μmが好ましい。多孔質支持層の厚さは、30〜70μmが好ましく、35〜65μmがより好ましい。なお、ここでの多孔質支持層の厚みとは、多孔質支持層が複数の層からなる場合(たとえば、均質層の内側と外側に1層ずつ、合計2層の多孔質支持層が積層した場合等。)、複数の層の合計の厚みである。均質層および多孔質支持層の厚さが上記範囲の下限値以上であれば、中空糸膜11の耐圧性、機械的強度等が向上し、上記範囲の上限値以下であれば、中空糸膜11の気体透過性が向上し、脱気性能に優れる。また、中空糸膜11の外径が大きくなり過ぎず、モジュールケース12内に充分な本数の中空糸膜11を収納できる。
なお、均質層および多孔質支持層の厚さは、上述した中空糸膜の内径および外径の実測方法と同様にして、薄片状のサンプルの断面の投影像から実測でき、平均値として求める。すなわち、上述のようにして、厚み約0.5mmの薄片状のサンプルを得て、このサンプルの断面の光学像を投影機を用いて例えば100倍の倍率でスクリーンに投影し、得られた投影像において、各中空糸膜における均質層および多孔質支持層の厚みを測定する。このようにサンプルを切り出して測定する操作を3回繰り返し、3回の全数値の平均値をもって、中空糸膜の均質層および多孔質支持層の厚さとする。
ただし、均質層の厚さは、通常、多孔質支持層の厚さに比べて非常に小さいため、実測が困難な場合がある。その場合には、上記式(1)で算出された「中空糸膜の膜厚」=「多孔質支持層の厚み」とみなす。
均質層と多孔質支持層との材質の組み合わせには、特に制限はなく、異種の樹脂を組み合わせて用いても、同種の樹脂を組み合わせて用いてもよい。
均質層と多孔質支持層とを有する複合中空糸膜は、多層複合紡糸工程と延伸多孔質化工程を有する公知の方法等で製造できる。
例えば、内層ノズル部と中間層ノズル部と外層ノズル部とが順次形成された、同心円状複合ノズルを用い、外層ノズル部と内層ノズル部には、多孔質支持層を形成するための溶融樹脂を供給し、中間層ノズル部には、均質層を形成するための溶融樹脂を供給する。そして、同心円状複合ノズルから、各溶融樹脂を押出して冷却固化させ、未延伸中空繊維を得る(多層複合紡糸工程)。次に、該未延伸中空繊維を延伸し、内層と外層とを多孔質化する(延伸多孔質化工程)。これにより、均質層と、均質層の内側および外側に位置して均質層を支持する多孔質支持層とからなる、三層構造の中空糸膜が得られる。
モジュールケース12およびキャップ13,14の材質は、適度な機械的強度を有するとともに、インク等の脱気対象の液体に含まれる成分への耐薬品性を有するものが好ましい。具体的には、硬質ポリ塩化ビニル樹脂;ポリカーボネート;ポリスルフォン系樹脂;ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂;アクリル系樹脂;ABS樹脂;変性ポリフェニレンオキサイド等が挙げられる。
中空糸膜11をその開口状態を維持したまま、モジュールケース12内に固定する樹脂15としては、エポキシ樹脂、不飽和エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂等の硬化性の液状樹脂、ポリオレフィン等を溶融させた樹脂等が挙げられる。樹脂15は、液体が流れる液体流路側と液体から除去されたガスが排気される気体流路側とを気密に仕切る封止材としても作用する。
この例の中空糸膜モジュール10を用いて液体の脱気を行う場合には、送液ポンプ等の送液手段を用いて、キャップ13に形成された液体流入口13aから中空糸膜モジュール10内に、脱気対象の液体を導入する。導入された液体は、モジュールケース12内で開口している中空糸膜11の一方の端部から中空部内に導入される。一方、モジュールケース12の側面に設けられた排気口12aに真空ポンプ等の減圧手段を接続し、該減圧手段を作動させ、モジュールケース12内の中空糸膜11の外側を減圧下に保つ。これにより、中空糸膜11を流通する液体の脱気が行われ、液体流出口14aから脱気された処理水が得られる。排気口12aからは、液体から除去された酸素等のガスが排出される。
脱気対象の液体が、例えばインクジェットプリンタ用のインクである場合には、処理対象のインクが、インクタンクから中空糸膜モジュール10の液体流入口13aに送液され、液体流出口14aから得られた脱気済みのインクが、インクジェットプリンタの記録ヘッドに供給されるように、中空糸膜モジュール10をプリンタのインク供給ラインに組み込むことができる。
以上説明した中空糸膜モジュール10は、上記の構成を有するため、最大外径Doutが90mm以下と小型でありながら、脱気対象の液体を高流量で通液した際でも脱気性能に優れ、圧力損失も小さい。具体的には、液体流入口13aから水温25℃、溶存酸素濃度8mg/Lの水を500mL/分の流速で導入するとともに、排気口12aを通じて中空糸膜11の外側を圧力13kPaの減圧下に保ちながら、液体流出口14aから処理水を得た場合に、処理水は、溶存酸素除去率が50%以上であり、かつ、液体流入口13aと液体流出口14aの間の圧力損失が2.0kPa以下である。
そのため、この例の中空糸膜モジュール10は、プリンタの内部または近傍における限られたスペースに配置されることが多いインクジェット用プリンタ等のインク脱気用モジュール等として、好適に使用される。また、この例の中空糸膜モジュール10は高流量での脱気が可能であるため、印字速度が速いインクジェット用プリンタにも対応できる。
なお、溶存酸素除去率は、液体流入口13aから中空糸膜モジュール10内に供給される液体の単位体積当たりの溶存酸素量をMbモルとし、液体流出口14aから得られた処理水の単位体積当たりの溶存酸素量をMaモルとした場合に、下記式により定義される。また、各溶存酸素量は、隔膜式溶存酸素計で測定できる。
溶存酸素除去率(%)=(Mb−Ma/Mb)×100
また、液体流入口13aと液体流出口14aの間の圧力損失は、液体流入口13aから水温25℃、溶存酸素濃度8mg/Lの水を500mL/分の流速で導入した際の、液体流入口13aにおける圧力と、液体流出口14aにおける圧力との差である。
以下、本発明について実施例を挙げて具体的に説明する。
[実施例1〜2、比較例1〜3]
図1および2に示す構成の中空糸膜モジュール10を製造した。
モジュールケース12およびキャップ13,14としては、ポリプロピレン製のものを用い、モジュールケース12内に、多数本の中空糸膜11を束ね、中空糸膜11の両端部の開口を維持しつつ樹脂15で固定した。
中空糸膜11としては、均質層の内側と外側に多孔質支持層が積層した三層構造の複合膜を用い、樹脂15としては、エポキシ樹脂を用いた。
中空糸膜11を構成する各層の材質、多孔質支持層の厚み(均質層の内側と外側に積層した2層の多孔質支持層の合計の厚み)、中空糸膜11の内径および外径、収納した中空糸膜11の合計の膜面積、モジュールケース12の長さLおよび内径Dinとこれらの比(L/Din)、中空糸膜モジュール10の最大外径Doutを表1に示す。
中空糸膜の内径および外径は、上述のように、薄片状のサンプルの断面の投影像から実測し、平均値として求めた。なお、実施例1〜2、比較例1〜3において、均質層の厚さは、多孔質支持層に比べて非常に小さく、実測が困難であった。そのため、上記式(1)から算出された値を多孔質支持層の厚み(=中空糸膜の膜厚)とした。
そして、液体流入口13aから水温25℃、溶存酸素濃度8mg/Lの水を500mL/分の流速で導入するとともに、排気口12aを通じて、中空糸膜モジュール10内における中空糸膜11の外側を減圧(13kPa)に保ちながら、液体流出口14aから処理水を得た場合の処理水の溶存酸素除去率、液体流入口13aと液体流出口14aの間の圧力損失を求めた。
溶存酸素除去率、液体流入口13aと液体流出口14aの間の圧力損失を表2に示す。
Figure 2015167939
Figure 2015167939
表1および表2に記載のように、各実施例の中空糸膜モジュールは、水を高流量で通液した際でも溶存酸素除去率が高く脱気性能に優れ、圧力損失も小さかった。これに対して、各比較例の中空糸膜モジュールは、いずれも、水を高流量で導入した際の圧力損失が高かった。
10 中空糸膜モジュール
11 中空糸膜
12 モジュールケース
12a 排気口
13,14 キャップ
13a 液体流入口
14a 液体流出口
15 樹脂

Claims (5)

  1. 複数本の中空糸膜と、該中空糸膜が収納された円筒状のモジュールケースとを備えた脱気用中空糸膜モジュールにおいて、
    前記中空糸膜は、両端部が開口した状態でモジュールケース内に樹脂で固定され、前記モジュールケースの一方の端部には、前記中空糸膜の中空部に液体を導入する液体流入口が形成され、前記モジュールケースの他方の端部には、前記中空糸膜の中空部から脱気後の処理水を得る液体流出口が形成され、前記モジュールケースの側面には、前記液体から除去されたガスを排出する排気口が形成され、
    当該脱気用中空糸膜モジュールは、最大外径が90mm以下であり、
    前記液体流入口から水温25℃、溶存酸素濃度8mg/Lの水を500mL/分の流速で導入するとともに、前記排気口を通じて前記中空糸膜の外側を圧力13kPaの減圧下に保ちながら、前記液体流出口から処理水を得た場合に、
    前記処理水は、溶存酸素除去率が50%以上で、
    前記液体流入口と前記液体流出口の圧力損失が、2.0kPa以下である、脱気用中空糸膜モジュール。
  2. 前記モジュールケースの両端部に装着されたキャップをさらに備え、
    前記液体流入口は、前記モジュールケースの一方の端部に装着されたキャップに形成され、前記液体流出口は、前記モジュールケースの他方の端部に装着されたキャップに形成されている、請求項1に記載の脱気用中空糸膜モジュール。
  3. 前記中空糸膜の内径が200μm以上である、請求項1または2に記載の脱気用中空糸膜モジュール。
  4. 前記中空糸膜は、気体透過性の均質層と、該均質層を支持する多孔質支持層とを有し、
    前記均質層は、密度が0.850〜0.910g/cmのポリオレフィン系樹脂からなる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の脱気用中空糸膜モジュール。
  5. 前記ポリオレフィン系樹脂は、エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンとが共重合した分子量分布が4.0以下のエチレン・α−オレフィン共重合体である、請求項4に記載の脱気用中空糸膜モジュール。
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