以下に、本発明の実施の形態にかかる苗移植機について説明する。
(実施の形態1)
図1及び図2は本実施の形態にかかる苗移植機1の側面図と平面図である。この苗移植機1は、走行車体2の後側に昇降リンク装置3を介して植え付け装置52が昇降可能に装着され、走行車体2の後部上側に施肥装置5の本体部分が設けられている。
走行車体2は、駆動輪である左右一対の前輪10,10及び左右一対の後輪11,11を備えた四輪駆動車両であって、機体の前部にミッションケース12が配置され、そのミッションケース12の左右側方に前輪ファイナルケース13,13が設けられ、該左右前輪ファイナルケース13,13の操向方向を変更可能な各々の前輪支持部から外向きに突出する左右前輪車軸に左右前輪10,10が各々取り付けられている。
また、ミッションケース12の背面部にメインフレーム15の前端部が固着されており、他方、そのメインフレーム15の後端左右中央部に水平に設けた後輪上下動支点軸181を支点にして左右後輪ギヤケース18,18がローリング自在に支持され、その左右後輪ギヤケース18,18から外向きに突出する後輪車軸17に後輪11,11が取り付けられている。
尚、左右後輪ギヤケース18,18には、ミッションケース12の後壁から突出して設けた左右後輪ギヤケース18,18に連結した左右後輪伝動軸18a,18aにて動力が伝達される構成となっている。
エンジン20はメインフレーム15の上に搭載されており、該エンジン20の回転動力が、ベルト伝動装置21及びHST(変速装置)23を介してミッションケース12に伝達される。ミッションケース12に伝達された回転動力は、該ケース12内のトランスミッションにより変速された後、走行動力と外部取出動力に分離して取り出される。そして、走行動力は、一部が前輪ファイナルケース13,13に伝達されて前輪10,10を駆動すると共に、残りが左右後輪ギヤケース18,18に伝達されて左右後輪11,11を駆動する。
また、ミッションケース12の右側側面より取出された外部取出動力は、植え付け伝動軸26によって植え付け装置52へ伝動される。尚、施肥装置5の肥料繰出し機構へは、右後輪ギヤケース18から動力が駆動軸にて取出されて伝動される。
エンジン20の上部はエンジンカバー30で覆われており、その上に座席31が設置されている。座席31の前方には各種操作機構を内蔵するフロントカバー32があり、その上方に前輪10,10を操向操作する操舵部材34が設けられている。なお35はハンドシャフトである。このフロントカバー32内には、リザーバタンク16を設け、前記HST23とパイプ19で連結して高い位置からオイルをHST23に供給するようにしている。
なお、操舵部材34の右側には、植え付け装置52の昇降を設定するための植え付け昇降レバー33が設けられている。
この植え付け昇降レバー33を操作することで、植え付け装置52の上昇、停止、下降、及び植え付けの切替を行うことができる。
尚、本実施の形態の植え付け昇降レバー33は、本発明の植え付け操作レバーの一例にあたる。
また、操舵部材34の左側には、走行車体2の前進、停止(中立)、後進、走行速度などを設定する変速レバー36が設けられている。変速レバー36の操作に対応してHST23が切り替わり、ミッションケース12へ伝達される動力が変化する。
エンジンカバー30及びフロントカバー32の下端左右両側は水平状のフロアステップ37になっている。
フロアステップ37の左右前部には複数の貫通孔が形成されており、座席31に着座して機体を操縦する操縦者が左右前輪10,10を見通せることができて操縦が容易な構成となっていると共に、該ステップ37を歩く作業者の靴についた泥が圃場に落下するようになっている。
昇降リンク装置3は平行リンク構成であって、1本の上リンク40と左右一対の下リンク41,41を備えている。これらリンク40,41,41は、その基部側がメインフレーム15の後端部に立設した背面視門形のリンクベースフレーム42に回動自在に取り付けられ、先端側には縦リンク43が連結されている。そして、縦リンク43の下端部に、植え付け装置52に回転自在に支承された連結軸が挿入連結され、連結軸を中心として植え付け装置52がローリング自在に連結されている。
メインフレーム15に基部を回動自在に枢支した昇降油圧シリンダ46の先端を上リンク40に一体形成したスイングアーム(図示せず)の先端部に連結して設けており、該昇降油圧シリンダ46を油圧で伸縮させることにより、上リンク40が上下に回動し、植え付け装置52がほぼ一定姿勢のまま昇降する。
なお、28,28は左右補助ステップであって、作業者が機体に乗り降りする時に足を載せるステップである。
また、図1に示す通り、昇降レバー33が上昇位置にあることによって植え付け装置52が所定位置まで上昇したことを検知する上昇検知スイッチ140が、上リンク40の上方に配置されている。
尚、本実施の形態の上昇検知スイッチ140は、本発明の上昇検知部の一例にあたる。
また、図1〜図3に示す通り、走行車体2が畦際に到着したことを検知するための畦際検知部110が、走行車体2の中央前方に突き出して配置されている。畦際検知部110は、棒状のステイ111の先端部に固定されており、そのステイ111の根元部は、走行車体2のフロアステップ37の裏面側であって、平面視で、左右方向中央部からやや左寄りに固定されている(図2参照)。
畦際検知部110は、レーザー又は超音波等のセンサで構成されており、図3に示す通り、レーザー光又は超音波等を圃場面151aに向けて発射して、その反射から距離を検出することで、圃場面151aと畦154の段差部155の存在を検知して、走行車体2が畦際に到着したと判定する装置である。
尚、本明細書では、圃場面151aとは、図3に示す通り、圃場の比較的硬い土の層150の上にあって、水面152より下にある比較的軟らかい泥の層151の表面を云う。
ここで、図3は、本実施の形態の畦際検知部110が、段差部155の存在を検知する状況を示す図である。
また、苗移植機1には、後輪11の回転数を検出する回転センサ182(図12参照)が、後輪11の回転軸の近傍に設けられている。尚、回転センサ182の取り付け位置については、図12を用いて、更に後述する。
次に、図4を用いて、変速レバー36を自動的に移動させる構成について説明する。
図4は、変速レバー36を自動的に移動させる構成について説明する概略側面図である。
フロントカバー32の内部には、図4に示す通り、モータ回動アーム122が固定されたモータ回動軸121を正逆回動可能に有する変速レバー駆動用モータ120が配置されており、モータ回動アーム122の先端には、モータ回動軸121に平行な方向に突き出した円柱状のピン122aが形成されている。また、図4に示す通り、一端側が変速レバー36の下端側に回動自在に連結されると共に、他端側に長孔125が形成されて、その長孔125にモータ回動アーム122の先端に形成された円柱状のピン122aが移動可能に挿入された変速レバー移動アーム126が設けられている。
変速レバー駆動用モータ120が図4に示す時計回り(図4の矢印P参照)に回動すると、長孔125の長手方向の中央位置にあるピン122aが長孔125の左内縁部125aに当接して、更に回動することで変速レバー移動アーム126が図4中で左方向に移動し、例えば、「停止(中立)」位置にある変速レバー36を回動支点36aを中心として反時計回り、即ち、「後進」側に回動させる。
また、変速レバー駆動用モータ120が図4に示す反時計回り(図4の矢印Q参照)に回動すると、長孔125の長手方向の中央位置にあるピン122aが長孔125の右内縁部125bに当接して、更に回動することで変速レバー移動アーム126が図4中で右方向に移動し、例えば、「停止(中立)」位置にある変速レバー36を回動支点36aを中心として時計回り、即ち、「前進」側に回動させる。
また、変速レバー駆動用モータ120の近傍には、ピン122aの位置を検知するピン位置検知ポテンショメータ160(図14参照)が備えられている。そして、フロントカバー32の内部に収納されている制御回路200(図14参照)は、変速レバー駆動用モータ120に対して、上記の時計回り、又は反時計回りの回動動作を行わせる指令を出力した後、ピン位置検知ポテンショメータ160からの検知信号を受けると、その直前の回動方向と反対の方向に変速レバー駆動用モータ120を回動させて、長孔122aの所定位置で停止させる。
ここで、所定位置とは、変速レバー駆動用モータ120により自動的に移動させられた変速レバー36の位置から、次に作業者が手動で変速レバー36を動かす動作を行ったときに、後進側又は前進側の何れの方向に手動で移動させたとしても、ピン122が、長孔125の左内縁部125aと右内縁部125bの何れにも接触しない位置を云う。
次に、図14を用いて、制御回路200について更に説明する。
即ち、制御回路200は、走行車体2が畦際へ到着したことを検知した旨の畦際検知信号を畦際検知部110から受信すると、変速レバー駆動用モータ120に回動指令を出して、変速レバー36を「前進」位置から「停止(中立)」位置に自動で移動させる。その後、制御回路200は、変速レバーの位置を検知する変速レバーポテンショメータ170(図14参照)から、変速レバー36が「停止(中立)」位置にあることを検知した旨の停止検知信号を受信すると、上記畦際検知信号を畦際検知部110から受信していることを前提条件として、変速レバー駆動用モータ120に回動指令を出力して、変速レバー移動アーム126を移動させることにより、変速レバー36を「停止(中立)」位置から「後進」側へ移動させ、HST(変速装置)23を自動で「後進」側に切り替えさせる。
更にその後、制御回路200は、HST23が「後進」側に切り替えられた時点から後の、回転センサ182により検出された回転数が、予め定められている回転数に達した時に、走行車体2の自動の後進走行による走行距離が所定距離α(図5参照)に達したと判定する。そして、制御回路200は、変速レバー駆動用モータ120に回動指令を出力して、変速レバー移動アーム126を移動させることにより、変速レバー36が「後進」位置から「停止(中立)」を経て、「前進」側へ自動で移動し、HST23を「後進」側から「前進」側に切り替えさせる。
ここで、所定距離αとは、図5に示す通り、苗移植機1の旋回中心R0と、畦際の段差部155との距離が、最大旋回半径Rを確保出来るまで、苗移植機1が後進した時の移動距離を云う。
尚、図5は、走行車体2が自動で後進走行した際の所定距離αを説明するための平面図である。
また、制御回路200は、HST23を「前進」側に切り替えさせ、旋回走行が終了したことを検知して、後述する旋回連動制御機構により苗の植え付けが自動で開始された際、HST23を旋回走行時に比べて高速側、即ち、通常の苗植え付け作業時の前進走行速度に切り替えさせる構成である。ここで、通常、旋回走行時は、通常の苗植え付け作業時の前進走行速度より低速で走行する。
尚、旋回連動制御機構とは、走行車体2が旋回走行を終了した後、植え付け装置52を自動で下降させると共に、苗の植え付けを自動で開始させる機構を云うが、これについては、下記項目Bにおいて更に詳細に説明する。
尚、本実施の形態の変速レバー36は、本発明の走行操作レバーの一例にあたり、本実施の形態のHST(変速装置)23は、本発明の変速装置の一例にあたる。また、本実施の形態の制御回路200は、本発明の制御部の一例にあたる。また、本実施の形態の回転センサ182は、本発明の距離検知部の一例にあたる。また、本実施の形態の変速レバー駆動用モータ120は、本発明の駆動力供給部の一例にあたる。また、本実施の形態の変速レバー移動アーム126は、本発明の移動部材の一例にあたる。
上記の構成により、走行車体2が畦際に到着して走行を自動で停止させると、HST23が自動で後進に切り替わることにより、畦際まで苗を植え付けてから旋回開始位置まで後進する際に、作業者による変速レバー36の操作が不要になるので、操作性が向上する。
また、本実施の形態の苗移植機1は、旋回時においては、後述するピットマンアーム60側に連結されているケーブル71や切替カム74側に設けられたバックリフトアーム76等を介して、植え付け昇降レバー33を「上昇」側に移動させるべく切替カム74を回動させると共に、後進時においては、変速レバー36が「停止(中立)」位置から「後進」側へ移動することに応じて引き上げられるロッド361(図19参照)やケーブル362等を介して、バー83を下降させ、植え付け昇降レバー33を「上昇」側に移動させるべく切替カム74を回動させることにより、植え付け装置52を自動で上昇させる自動上昇機構を設けている。これにより、自動的に後進走行しても植え付け装置52は自動上昇するので、植え付けた苗を踏み倒すことが防止される。
尚、旋回時における自動上昇機構の動作については、下記項目A’において更に詳細に説明する。また、後進時における自動上昇機構の動作については、下記項目Cにおいて更に詳細に説明する。
ここで、本実施の形態のケーブル71、バックリフトアーム76、ロッド361、ケーブル362、バー83、切替カム74、制御回路200等を包含する構成が、本発明の自動上昇機構の一例にあたる。
また、上記の通り、畦際検知部110により、走行車体2が畦際へ到着したことが検知されて、制御回路200からの指令によりHST23の自動停止、及び自動後進が開始された後、走行車体2が、所定距離後進するとHST23の出力伝動方向が、停止(中立)位置を介して、自動で前進側に切り替わる構成としたことにより、自動の後進走行で旋回開始位置に到達した際に、作業者は変速レバー36の切替操作を行うことなく、操舵部材34を旋回方向に回すだけで旋回操作を行うことができるので、操作性が向上する。
また、旋回走行後に苗の植え付けが始まると、HST23の出力伝動方向が前進側で且つ高速側に自動的に切り替わることにより、植え付け開始時に、変速レバー36を作業者が手動で操作して走行速度を速める操作が不要となるので、作業能率が向上する。
また、上記の構成により、変速レバー駆動用モータ120によって変速レバー移動アーム126を移動させ、変速レバー36を「前進」側、又は「後進」側に移動させることにより、変速レバー36を作業者が操作することなく、走行車体2の前進、停止、後進、及び、前後進の走行速度を自動的に切り替えることができるので、操作性が向上する。
また、変速レバー移動アーム126に長孔125を形成したことにより、変速レバー駆動用モータ120が、変速レバー36の作業者による手動操作を規制することを防止できるので、走行車体2の前進、停止、後進、及び前後進の走行速度の変速が手動でも容易に行え、作業能率が向上する。
次に、図6は、本実施の形態の苗移植機の前方部の拡大側面図であり、図8は同苗移植機の拡大正面図である。また、図7はピットマンアームの平面図である。
操舵部材34の操舵を受けて前輪10、10を回動させるT字型のピットマンアーム60が走行車体2の前方底側に設けられている。すなわち、操舵部材34の回転に応じて、操舵部材シャフト35が回動し、ピニオン機構を介して、あるいはパワステ機構を介して、T字型のピットマンアーム60が回動する。60bはその回動軸である。
このピットマンアーム60のT字型の2つの先端部60a、60aには、2本のタイロッドが回動可能に取り付けられ、それぞれのタイロッドは左右の前輪ファイナルケース13,13に取り付けられているナックルアームに連結されている(図示省略)。
これによって、操舵部材34を操舵することによって、右及び左の前輪10,10を左右に走行操作できるようになっている。
他方、このピットマンアーム60は上述したように左右線対称のT字型をしており、左右両先端部60a、60aの中間位置に、すなわち、左右線対称の中心線上に、円柱状ピン61が立設している。その円柱状ピン61の上端には前方方向に向かって水平にロッド62が回動自在に取り付けられている。さらに、このロッド62の先端62aには、その側面に連結ピン63が固定され、さらに、その連結ピン63の端部には、アーム64(64a、64b、64c)が取り付けられている。このアーム64(64a、64b、64c)は、上方に向かう部分64aと、水平に横に伸びる部分64bと、さらにそこから上方に伸びる部分64cとで構成されている。このように、ロッド62はピットマンアーム60の中心線上に位置しているので、右旋回でも左旋回でも同量の引っ張り力が出るという効果を奏する。
このアーム64の前側には、走行車体2のフロントフレーム70が配置されており、またそのアーム64の後側には、走行車体2のミッションケース12が配置されている。従って、アーム64は、フロントフレーム70と、ミッションケース12との間に設置されていることになる。そのため、作業中に藁屑などの夾雑物がこれらアーム64に絡むことを防止出来、アーム64が夾雑物により機能しなくなる、あるいは勝手に動いてしまうといった不都合が防止できる。また、絡みついた夾雑物を取り除く必要が無くなり、メンテナンス性が向上する。
さらに、アーム64の上方部分64cの上端64c1には、ケーブル71が回動自在に取り付けられている。
なお、図6、図8において、72は上述したケーブル71と連結したケーブル端部である。また、このケーブル端部72は旋回切替操作具73に回動可能に連結されている。また、74は切替カムであり、75はその切替カム74の位置決め溝であり、76はバックリフトアームであり、77は位置決めローラであり、78は切替カム74を前方(図面上右方向)へ付勢するスプリングである。
次に、切替カム74、及びその周辺の部材の詳細を説明する。
図9は本実施の形態の苗移植機1の切替カム付近を示す側面図、図10は同切替カム付近を示す正面図、図11は同切替カム付近を示す斜視図である。なお、図11は部材の配置関係を理解しやすくするために描かれた図であって、寸法、配置、形状など誇張して描いた模式図である。
植え付け装置52の昇降を設定するための植え付け昇降レバー33の下端33aは、ブラケット81を介して、軸80に回動可能に取り付けられているとともに、このブラケット81には切替カム74の上端が固定されている。従って、植え付け昇降レバー33を移動させることによって、切替カム74を回動出来るようになっている。また、切替カム74は上述したように前方方向に常時スプリング78によって付勢されている(図11上、矢印A方向)
この切替カム74は中央に横長形状の窓75が穿設されている。この窓75の上側端縁には4個の溝751が並んで形成されている。この窓75には、水平方向に配置された位置決めローラ77の先端が挿入されている。
この位置決めローラ77は常時上方方向にスプリングで付勢されており、4個の溝751のいずれかに半分程度嵌められるが、後述するような色々な力によってスプリングに対抗して下方方向へ移動しうるようになっている。この位置決めローラ77は水平方向に配置されているが、切替カム74の内側(図11上では切替カム74の向こう側)の部分には先ず、バックリフトアーム76が固定されている。さらに、その内側にはバックリフト入り切りレバー82が回動可能に取り付けられている。
さらに、切替カム74とバックリフトアーム76との間の隙間には、旋回切替操作具73が配置されている。そして、この旋回切替操作具73と、前記バックリフトアーム76は各後端部がそれぞれ共通の支持軸79に回動自在に連結されている。ここで同一の支持軸79で旋回切替操作具73とバックリフトアーム76が回動支持されているので、構造が簡単になるという効果がある。
この旋回切替操作具73の前端には、ピン721を介して、上述したとおり、ケーブル71と連結したケーブル端部72が回動可能に連結されている。従って、ピットマンアーム60の動きによって旋回切替操作具73が移動するようになっている。さらに、この旋回切替操作具73の中央位置には孔732が開けられ、その孔にロックピン731が通常嵌め込まれている。このロックピン731はバックリフトアーム76に固定されている。従って、通常は、旋回切替操作具73の移動に従って、バックリフトアーム76も移動するようになっている。
そして、そのバックリフトアーム76は位置決めローラ77に固定されているので、バックリフトアーム76の移動に従って、位置決めローラ77も上下に移動することになっている。もちろん、この旋回切替操作具73は手動によって左右方向(紙面に対して垂直方向)に移動出来、任意にロックピン731から外すことが出来るようになっている。
この位置決めローラ77が下方へ移動すると、溝751から外れるので、切替カム74は矢印A方向に回動するようになっている。
他方、バックリフト入り切りレバー82には、逆L字状の切り欠き孔84が穿設されている。すなわち、縦長部分と横長部分とでこの切り欠き孔84は構成されている。その切り欠き孔84には水平方向に配置されたバー83の先端が挿入されている。このバー83は、変速レバー36が後進に設定されたとき、ワイヤー、ロッドなどを介して下方向に移動するようになっている。
すなわち、後述するように(図19参照)、変速レバー36が後進に設定されると、その変速レバー36の移動に応じて回動するロッド361が引き上げられ、ケーブル362を通じて、バー83が下降する機構になっている。
従って、このバー83がL字型切り欠き孔84の横長部分に位置している場合は、バー83が下方向に移動することによって、バックリフト入り切りレバー82は押されて下方向に移動する。上述したように、このバックリフト入り切りレバー82は位置決めローラ77に連結されているので、位置決めローラ77は下方に移動することになる。これに対して、このバー83がL字型切り欠き孔84の縦長部分に位置している場合は、バー83が下方向に移動しても、縦長部分を移動するに止まるので、バックリフト入り切りレバー82を押し下げる力は働かず、位置決めローラ77も下方へ移動することにならない。
さらに、バックリフト入り切りレバー82は位置決めローラ77に対して回動可能に連結されているので、作業者が手で回動して適宜位置決め(前方へ引き出すか、後方へ押し込むか)することによって、上述した、後進の際、バックリフト入り切りレバー82を、そして、位置決めローラ77を自動的に下方へ押し下げるモードと、押し下げないモードを任意に選択できるようになっている。なお、このバックリフト入り切りレバー82より、上述した旋回切替操作具73の方が前方へ突出しているので、旋回切替操作具73の方が扱い易くなっている。その結果、バックリフト入り切りレバー82の入り切り頻度の方が旋回切替操作具73の切替頻度より、通常少ないので、作業者にとって都合がよい。
次に、図12は植え付け昇降レバー33と切替カム74との関係を示す側面図であり、図13は切替カム74の側面図である。以下に、図12と図13を用いて、植え付け昇降レバー33と切替カム74との関連を説明する。
植え付け昇降レバー33はその位置によって、手前から、「上昇」、「停止」、「下降」、「植え付け」の各モードを切替設定出来るようになっている。他方、切替カム74の第1〜第4溝751a、751b、751c、751dは、それぞれ「上昇」、「停止」、「下降」、「植え付け」に対応している。すなわち、「上昇」の位置に植え付け昇降レバー33を例えば手で設定すると、切替カム74は前方へ移動し、位置決めローラ77は相対的に後退して第1溝751aに収まる。また、「停止」の位置に植え付け昇降レバー33を設定すると、切替カム74は少し後に移動し、位置決めローラ77は第2溝751bに収まる。また、「下降」の位置に植え付け昇降レバー33を例えば手で設定すると(図12の状態)、切替カム74はさらに少し後に移動し、位置決めローラ77は第3溝751cに収まる。また、「植え付け」の位置に植え付け昇降レバー33を例えば手で設定すると、切替カム74はさらに少し後に移動し、位置決めローラ77は第4溝751dに収まる(図13の状態)。
このようにして、植え付け昇降レバー33を操作することによって、切替カム74を4種類の位置に移動させることが出来る。
この切替カム74の移動は、ワイヤーやロッド、アームなどを介して、植え付け装置52の昇降油圧シリンダ46への油路を切り替える切替バルブ461に連動している。その結果、その連動によって、切替カム74の移動によって、植え付け装置52の昇降、停止、下降、植え付けがそれぞれ制御されるようになっている。
次に、図9に示すように、走行車体2の、切替カム74の後方の付近には、モータ99などが配設されている。
このモータ99は、走行車体2が圃場の端に達して旋回走行に移り、その旋回に伴って後輪が回転する際、その後輪が所定数回転した時点(旋回終了時点)で、切替カム74を強制的に移動させて、植え付け装置52を自動的に下降させるための手段である。
また、モータ99は、上昇検知スイッチ140が、植え付け装置52の所定位置への上昇を検知した際、制御回路200から指令を受けて、切替カム74を強制的に回動させることによって、植え付け昇降レバー33を上昇位置から停止位置(中立位置)に移動させるための手段も兼ねている。
尚、本実施の形態の切替カム74は、本発明の植え付け移動部材の一例にあたり、本実施の形態のモータ99は、本発明の植え付け切替駆動部の一例にあたる。
すなわち、図14に示すように、モータ99は制御回路200からの指示に基づき、支持軸101を時計方向に回動させる手段である。この支持軸101にはモータアーム103が固定されている。従って、モータアーム103も時計回り方向に回動する。このモータアーム103の先端にはピン102が立設している。
他方、切替カム74の後方より位置にはピン105が立設している。このピン105には回動可能に、植え付けアーム100が連結されている。さらに、この植え付けアーム100にはその長手方向に長孔104が開設されている。この長孔104に、上述したモータアーム103のピン102が回動可能且つ摺動可能に嵌め合わされている。
これらの、ピン102、植え付けアーム100、ピン105などで、駆動リンクが構成されている。
さらに、切替カム74の後方下端には、カム74の位置を検出するために、三角形のプレート90が固定されている。このプレート90の頂点付近にはピン91が固定されている。他方、走行車体2の、上述したモータ99などの下方には、ポテンショメータ93が設けられている。このポテンショメータ93は、その軸に固定された、長孔94が開設されたメータアーム92を有している。このメータアーム92の回動角度が検出されるようになっている。そして、長孔94に上述したプレート90のピン91が回動可能且つ摺動可能に嵌め合わされている。従って、切替カム74の位置に応じてプレート90とピン91が移動し、その結果、メータアーム92も対応して回動する。これによってポテンショメータ93が、切替カム74の位置を精密に検出することが出来るようになっている。なお、切替カム74の移動に応じて移動するピン91の可動範囲よりも長く、長孔94が開設されていることによって、誤検知を防止できる。
図15は、本実施の形態の苗移植機の植え付け装置を除く側面図である。上述したように、ミッションケース12の背面部にメインフレーム15の前端部が固着されており、他方、そのメインフレーム15の後端左右中央部に水平に設けた後輪上下動支点軸181を支点にして左右後輪ギヤケース18,18がローリング自在に支持され、その左右後輪ギヤケース18,18から外向きに突出する後輪車軸17に後輪11,11が取り付けられている。18aは上述した後輪伝動軸である。
ここに、後輪上下動支点軸181に隣接して後輪11の回転数を検出する回転センサ182が設けられている。このような構造によって、後輪が回動しても検出された回転数は安定する。
図14に示すように、制御回路200は、これらのポテンショメータ93と、回転センサ182からの出力信号や、上昇検知スイッチ140からの出力信号を利用して、モータ99を駆動制御すると共に、畦際検知部110と、変速レバーポテンショメータ170と、ピン位置検出ポテンショメータ160からの出力信号を利用して、変速レバー駆動用モータ120を駆動制御している、コンピュータである。
次に、本実施の形態にかかる苗移植装置1の動作を説明する。
A: 自動後進、自動前進、及び旋回開始
作業者は、走行車体2を変速レバー36を「前進」の位置に入れて(図19参照)圃場を走行させつつ、植え付け装置52を下降させた状態で苗を圃場に植え付けていく。この作業状態では植え付け昇降レバー33は図18に示すように、「植え付け入り」の位置に設定されている。従って、この植え付け昇降レバー33に連結されている切替カム74は図18のような位置、すなわち、位置決めローラ77が溝751dに入った状態の位置になっている。
そして、苗移植機1が畦際まで走行した際、畦際検知部110により、段差155の存在が検知されて、その検知信号が制御回路200に送られる(図14参照)。検知信号を受け取った制御回路200は、変速レバー駆動用モータ120を駆動させて、変速レバー移動アーム126を介して変速レバー36を「前進」位置から「停止(中立)」位置に移動させる。
これにより、苗移植機1の前進走行が自動停止されると共に、変速レバー120が「停止(中立)」位置にあることを検知した変速レバーポテンショメータ170からの検知信号を受信した制御回路200は(図14参照)、変速レバー駆動用モータ120に回動指令を出力し、変速レバー移動アーム126を移動させることにより、変速レバー36を「停止(中立)」位置から「後進」側へ移動させ、HST(変速装置)23を自動で「後進」側に切り替えさせる。
変速レバー36が「停止(中立)」位置から「後進」側へ移動すると、上述した通り、その移動に応じて引き上げられるロッド361(図19参照)やケーブル362等を介して、バー83を下降させ、植え付け昇降レバー33を「上昇」側に移動させるべく切替カム74が回動する。切替カム74の回動は、上述した通り、ワイヤーやロッド、アーム等(図示省略)を介して、植え付け装置52の昇降油圧シリンダ46への油路を切り替える切替バルブ461に連動する構成である為、植え付け装置52が自動で上昇する。
植え付け装置52が所定位置まで上昇したことを上昇検知スイッチ140が検知すると、その検知信号を制御回路200へ送る(図14参照)。当該検知信号を受信した制御回路200は、モータ99に対して回動指令を出力し、その回動指令を受けたモータ99は、切替カム74を強制的に回動させることによって、植え付け昇降レバー33を「上昇」位置から「停止(中立)」位置に移動させる。
これにより、植え付け装置52が所定高さまで上昇すると、植え付け昇降レバー33を移動させて植え付け装置の上昇を停止させることにより、作業者が植え付け操作レバーを操作することなく植え付け装置の上昇を停止させることができるので、操作性が向上する。
また、モータ99を回動させることで切替カム74を回動させて、植え付け昇降レバー33を上昇位置から停止位置に移動させる構成としたことにより、他の移動部材(例えば、ケーブル、ロッド、スプリング等)を省略することができ、部品点数の削減が図られる。
尚、変速レバー36が「後進」側へ切り替えられた場合の自動上昇機構の動作については、下記の項目Cにおいて、更に詳細に説明する。
そして、苗移植機1は、後進走行をして、走行車体2の自動の後進走行による走行距離が所定距離α(図5参照)に達したと制御回路200により判定されると、制御回路200は、変速レバー駆動用モータ120に回動指令を出力して、変速レバー移動アーム126を移動させ、変速レバー36を「後進」位置から「停止(中立)」を経て、「前進」側へ自動で移動させる。
これにより、苗移植機1は、自動で前進走行を開始するので、作業者は、操舵部材34を回動させるだけで、旋回動作を開始する。ここで、植え付け装置52は、上述した通り、既に自動による上昇が完了している。
以上説明したことから、畦際まで苗を植え付けてから旋回開始位置まで後進する際に、作業者による変速レバー36の操作が不要になるので、操作性が向上する。また、自動の後進走行で旋回開始位置に到達した際に、作業者は変速レバー36の切替操作を行うことなく、操舵部材34を旋回方向に回すだけで旋回操作を行うことができるので、操作性が向上する。
尚、上述した動作説明は、苗移植機1が、植え付け作業をしながら畦際まで前進走行した際、苗移植機1の先端から畦際の間において、旋回に必要な所定距離α(図5参照)を確保するために、一旦、自動後進した後、自動前進しながら旋回を開始する場合であった。
しかし、これに限らず例えば、植え付け作業をしながら前進走行をする際、畦際との間に少なくとも所定距離α(図5参照)を残した状態で走行を停止して、その後、前進しながら旋回動作を開始する場合における植え付け装置52の自動上昇について、以下の項目A’において説明する。
A’: 旋回開始から上昇
作業者は、走行車体2を変速レバー36を「前進」の位置に入れて(図19参照)圃場を走行させつつ、植え付け装置52を下降させた状態で苗を圃場に植え付けていく。この作業状態では植え付け昇降レバー33は図18に示すように、「植え付け入り」の位置に設定されている。従って、この植え付け昇降レバー33に連結されている切替カム74は図18のような位置、すなわち、位置決めローラ77が溝751dに入った状態の位置になっている。
圃場の端に到達すると、作業者は操舵部材34を回動させる。その操舵部材34の回動に伴って、操舵部材シャフト35が回動し、ピニオン機構を介して、T字型のピットマンアーム60が、回動軸60bを中心に回動する。
そのピットマンアーム60の回動によって、そのピットマンアーム60のT字型の2つの先端部60a、60aが回動する。その結果、その先端部60a、60aに回動可能に取り付けられている2本のタイロッドが移動し、それぞれのタイロッドが取り付けられている、左右の前輪ファイナルケース13,13のナックルアームが回動する。
このように、操舵部材34を操舵することによって、右及び左の前輪10を回動させ、走行車体2の旋回を開始する。
このとき、ピットマンアーム60の回動に伴って、円柱状ピン61に回動可能に取り付けられている、水平方向のロッド62も回動し移動する(図7参照)。その結果、ロッド62の先端62aが移動するので、その側面に固定された連結ピン63も、さらに、その連結ピン63の端部に取り付けられたアーム64(64a、64b、64c)も引っ張られる方向に移動する(図16〜図18参照)。
このアーム64(64a、64b、64c)が移動すると、アーム64の上方部分64cの上端64c1に連結されているケーブル71が引っ張られる。
その結果、ケーブル71のケーブル端部72(図9参照)が下方に引っ張られ、そのケーブル端部72が連結されている旋回切替操作具73が下方に移動する。
ここで、旋回切替操作具73が自動切り替えモードに選択されていたとする。すなわち、旋回切替操作具73の孔732に、バックリフトアーム76に固定されたロックピン731が嵌め込まれているとする(作業者が手動で、この旋回切替操作具73を左右に動かし、孔732にロックピン731を入れたり、外したりする)。
そのような場合、旋回切替操作具73が下方に移動すると、ロックピン731を介して、バックリフトアーム76も下方に移動する。バックリフトアーム76が下方に移動すると、バックリフトアーム76に固定されている位置決めローラ77も下方に移動する。その結果、位置決めローラ77が、それまで嵌め込まれていた切替カム74の溝751dから外れる。
他方、切替カム74はスプリング78(図6参照)によって、常時前方(矢印A方向)へ付勢されているので、位置決めローラ77が切替カム溝751dから外れると、自由に移動出来るようになって、切替カム74は一気に軸80を中心に反時計方向に回動する。その結果、植え付け昇降レバー33は「上昇」位置まで移動する(図12参照)。
その結果、切替カム74の回動に伴い、ワイヤーやロッド、アームなどを介して、植え付け装置52の昇降油圧シリンダ46への油路を切り替える切替バルブ461が「上昇」側へ切り換わり、植え付け装置52が上方へ移動する。
このようにして、作業者が圃場の端で操舵部材34を切ると、自動的に植え付け装置52が上昇する。これによって、作業者が一々植え付け昇降レバー33を操作しなくてもよくなる。
なお、作業者が旋回切替操作具73を手動で左右に動かし、孔732からロックピン731を外していた場合は、操舵部材34を切っても、旋回切替操作具73、バックリフトアーム76、位置決めローラ77は下方に移動することはなく、当然に切替カム74が「上昇」位置に移動することも無い。
このように、本実施の形態の旋回切替操作具73は、操舵部材34と植え付け装置52の上昇との自動的連動を任意に選択出来るようになっている。
B: 旋回しながら下降開始
次に、さらに走行車体2を旋回させていった場合、植え付け装置52を自動的に下降させる。すなわち、図15に示すように、回転センサ182は後輪11の回転数を検出しているので、その検出された回転数信号を入力した制御回路200は、予め設定されている回転数に達すると、モータ99に駆動信号を出力する。
モータ99はその駆動信号を受けて、図16、図17、図18に示すように、切替カム74を移動させる。すなわち、旋回中は植え付け装置52は上昇位置に存在している。
一方、植え付け昇降レバー33は、植え付け装置52が所定位置まで上昇したことを上昇検知スイッチ140が検知し、その検知信号を受けた制御回路200からの駆動指令によりモータ99が回動して、強制的に「上昇」位置から「停止(中立)」位置に移動しており、位置決めローラ77は切替カム溝751bに入った状態となっている。
そこで、モータ99が支持軸101を時計回り方向に回動させる。それによって、モータアーム103も時計回り方向に回動する。その結果、モータアーム103に立設しているピン102が、切替カム74に連結されている植え付けアーム100を後方(図面上左へ)引っ張るので、切替カム74は時計回り方向に回動する。なお、位置決めローラ77はバネによって上方へ付勢されているが、このモータ99による回動力によって、切替カム74が強制的に回動して位置決めローラ77は切替カム溝を順次乗り越えていく。それに伴い、図17のように、「下降」位置まで、切替カム74と植え付け昇降レバー33が回動する。
モータ99はさらに、支持軸101を回動させるので、最終的には図18の「植え付け」状態となり、植え付け装置52に設けられた植え付け爪521が回転し始め、苗の植え付けが始まる。
なお、以上のように、このモータ99は動作する際、切替カム74を引っ張る方向に力を発揮するので、モータ99に掛かる負荷は小さくて済むというメリットがある。モータは通常押す方向に力を出す場合の方が高価なモータを使う必要があるので、本実施の形態のモータとしては安価なものを用いることが出来る。
また、このようなモータ99の駆動において、切替カム74の位置を正確に測りながら制御するため、次に示すようにして、正確に切替カム74の位置を検出し制御を行っている。すなわち、ポテンショメータ93がその軸に固定されたメータアーム92の位置を測定する。このメータアーム92の回動位置は、切替カム74に固定されたプレート90の位置、つまり、プレート90の頂点に固定されたピン91の位置に対応しているので、結果的に切替カム74の位置を検出することが出来る。
制御回路200は、これらのポテンショメータ93からの信号も利用して、モータ99をより正確に駆動制御する(図14参照)。
尚、本実施の形態のモータ99、ポテンショメータ93、回転センサ182、切替カム74、制御回路200等を包含する構成が、本発明の旋回連動制御機構の一例にあたる。
C: 後進に切り替えた場合の上昇
図19は、変速レバー36の略示平面図と、変速レバーとバー83の関係を示す説明図である。本実施の形態の苗移植機1では、図19に示すように、手動であるか、又は自動であるかに関わらず、変速レバー36を後進(バック)に入れると、その変速レバー36の移動に応じてロッド361が回動して引き上げられ、ケーブル362を通じて、バー83が下降する。
図9、図11に示すように、今、バックリフト入り切りレバー82が前方(図面上右方向)側に手動で設定されているとする。つまり、逆L字状切り欠き孔84の縦長部分の方にバー83が位置しているとする。そのような状態で、バー83が下降すると、バー83はその縦長部分の隙間を移動するに止まり、バックリフト入り切りレバー82には何の作用も及ぼさず、切替カム74もそれまでの状態を保持する。
これに対して、今、バックリフト入り切りレバー82が後方(図面上左方向)側に手動で設定されているとする。つまり、逆L字状切り欠き孔84の横長部分の方にバー83が位置しているとする。そのような状態で、バー83が下降すると、バー83はその横長部分の下側縁に直ぐに当接し、バックリフト入り切りレバー82を下方に押し下げ始める。その結果、バックリフト入り切りレバー82は位置決めローラ77に連結されているので、位置決めローラ77が下降する。
位置決めローラ77が下降すると、旋回切替操作具73に関して上述したように、位置決めローラ77が、それまで嵌め込まれていた切替カム74の溝から外れる。他方、切替カム74はスプリング78(図6参照)によって、常時前方(矢印A方向)へ付勢されているので、位置決めローラ77が切替カム溝から外れると、自由に移動出来るようになって、切替カム74は一気に軸80を中心に反時計方向に回動する。その結果、植え付け昇降レバー33は「上昇」位置まで移動する(図12参照)。その結果、切替カム74の回動に伴い、ワイヤーやロッド、アームなどを介して、植え付け装置52の昇降油圧シリンダ46への油路を切り替える切替バルブ461が「上昇」側へ切り換わり、植え付け装置52が上方へ移動する。
このように、バックリフト入り切りレバー82が後方(図面上左方向)側に手動で設定されている場合は、手動であるか自動であるかに関わらず、変速レバー36が後進(バック)に入れられると、自動的に、植え付け装置52は上昇位置に移動し、安全が確保される。
また、上述したように、後進時における植え付け装置の上昇連動機構が、位置決めローラ77という、旋回時における植え付け装置の上昇連動機構と共通化されているので、構造が簡単になるというメリットがある。
次に、図20を用いて、後輪11の交換や、補助車輪の取り付け等の作業を行う場合において、ジャッキを用いないで、これらの作業を行うことができる構成について説明する。
図20は、本実施の形態の苗移植機1に、昇降リンク装置3を強制的に下に降ろすことができる電動シリンダ130が設けられた状態を示す側面図である。
図20に示す通り、電動シリンダ130は、一端がリンクベースフレーム42の中央部に固定されて、他端が後方に突き出した電動シリンダ取り付けステイ131と、上リンク40との間に配置されている。
この構成により、電動シリンダ130が下方に向けて伸張することで、昇降リンク装置3が強制的に下に降ろされると共に、植え付け部フロート135で地面139を支えることにより、後輪11を浮かし、後輪交換や補助車輪取り付けが、簡単に行える。
(実施の形態2)
実施の形態2では、苗移植機に設けられた予備苗枠を中心に、図面を参照しながら説明する。
実施の形態2における苗移植機300において、上記実施の形態1の苗移植機1と同じ構成には同じ符号を付し、その説明を省略する。
図21は第1の予備苗枠400を設けた苗移植機300の平面図であり、図22は側面図であり、図23は正面図である。
図21に示す通り、走行車体2の前側の左右両側に、予備の苗箱を積載する第1の予備苗枠400が設けられている。第1の予備苗枠400は、予備苗を載せる2段又は3段の予備苗載せ台401から構成されている。
尚、上述した第1の予備苗枠400は、左右対称形状であるので、図面では、便宜上、右側の第1の予備苗枠400しか表していない。他の図面についても同様である。
また、図21、図22では、予備苗載せ台401が標準位置にある状態を実線で示し、苗箱を積み込む位置に展開した展開位置にある状態を波線で示した。他の図面についても同様である。
上下2段の予備苗載せ台401は、走行車体2の前側の左右両側から2カ所で屈曲して前方外側寄り位置から上方に垂直に突き出した支柱500に回動自在に保持されている。この例では、回動支点501は、図21に示す通り、平面視で、標準位置にある予備苗載せ台401の前端の左角部に設けられている。
また、上下2段の予備苗載せ台401の、回動支点501の近傍には、平面視で同じ位置に円形の開口401aが形成されている。また、下段に配置された予備苗載せ台401の下面側には、その中心部を支柱500が貫通して固定された円形状のストッパープレート600が配置されている。そのストッパープレート600には、図21に示す、標準位置にある予備苗載せ台401、展開位置にある予備苗載せ台401を、それぞれの位置で固定する為の、上下2段の予備苗載せ台401の各開口401aを貫通して配置されたストッパー部材510の先端510aが選択的に挿入される貫通孔601が、回動支点501を中心として、平面視で、対称の位置に2つ形成されている。
また、ストッパー部材510は、その下端が上段の予備苗載せ台401の上面に固定され、且つ、その上端がノブ511の下面に固定された引っ張りバネ512を有している。
上記構成において、作業者は、引っ張りバネ512の復元力に対抗する力でノブ511を引っ張り上げて、標準位置における予備苗載せ台401のロックを解除した後、上下2段の予備苗載せ台401を、回動支点501を中心にして180度回動させると、ストッパー部材510の先端510aが、引っ張りバネ512の復元力により、ストッパープレート600に形成されたもう一つの貫通孔601に挿入されてロックされる。
これにより、例えば、畦に水路が設けられている穂場で、苗移植機300から離れた位置から、予備苗載せ台401に苗箱402を載せることができ、また、予備苗箱をスライドさせることなく、予備苗載せ台401を標準位置に移動させることができる。また、予備苗載せ台401の回動には大きな力を要しないので、作業効率が向上する。
次に、図24〜図26を参照しながら、上記の第1の予備苗枠400の変形例の第2の予備苗枠410を説明する。
図24〜図26において、上記の予備苗枠400と同じ構成には同じ符号を付し、その説明を省略する。
図24は第2の予備苗枠410を設けた苗移植機300の平面図であり、図25は側面図であり、図26は正面図である。
第2の予備苗枠410と、第1の予備苗枠400の相違点は、第2の予備苗枠410では、回動支点501を、図24に示す通り、平面視で、標準位置にある予備苗載せ台401の前端の中央に設けられている点である。
これにより、第1の予備苗枠400では、前方の展開位置に回動させたとき、平面視で、標準位置に対して左右にずれてしまうが(図21参照)、本構成例の第2の予備苗枠410では、展開位置に回動させたときに、左右の位置ずれが生じない(図24参照)。
次に、図27〜図28を参照しながら、上記の第1の予備苗枠400の変形例の第3の予備苗枠420を説明する。
図27〜図28において、上記の予備苗枠400と同じ構成には同じ符号を付し、その説明を省略する。
図27は第3の予備苗枠420を設けた苗移植機300の側面図であり、図28(a)〜図28(d)は第3の予備苗枠420の展開のパターンを示す模式図である。
第3の予備苗枠420と、第1の予備苗枠400の相違点は、第1の予備苗枠400では、上段の予備苗載せ台401と下段の予備苗載せ台401は、一体で回動させる構成であったが、第3の予備苗枠420では、上段の予備苗載せ台401と下段の予備苗載せ台401をそれぞれ独立して回動させることができる点である。
図28(a)は、標準位置における上段の予備苗載せ台401と下段の予備苗載せ台401を示した概略側面図であり、図28(b)は、展開位置における上段の予備苗載せ台401と、標準位置における下段の予備苗載せ台401を示した概略側面図であり、図28(c)は、標準位置における上段の予備苗載せ台401と、展開位置における下段の予備苗載せ台401を示した概略側面図であり、図28(d)は、展開位置における上段の予備苗載せ台401と下段の予備苗載せ台401を示した概略側面図である。
これにより、予備苗載せ台401を1段だけ回動させることが出来るので。1段しか展開させる必要がない場合において、上下の2段を一体で回動させる構成に比べて、少ない力で動かせるので、作業効率が向上する。
次に、図29〜図30を参照しながら、上記の第1の予備苗枠400の変形例の第4の予備苗枠430を説明する。
図29〜図30において、上記の予備苗枠400と同じ構成には同じ符号を付し、その説明を省略する。
図29は第4の予備苗枠430を設けた苗移植機300の平面図であり、図30は第4の予備苗枠430の側面図である。
第4の予備苗枠430と、第1の予備苗枠400の相違点は、第1の予備苗枠400では、回動支点501が上下2段の予備苗載せ台401について共通であったが、第4の予備苗枠430では、回動支点を個別に設けた点である。 図29、図30に示す通り、下段の予備苗載せ台401は、走行車体2の前側の左右両側から2カ所で屈曲して前方外側寄り位置から上方に垂直に突き出した支柱520に回動自在に保持されている。この例では、下段の予備苗載せ台401の回動支点521は、図29に示す通り、平面視で、標準位置にある予備苗載せ台401の前端の左角部に設けられている。
また、図29、図30に示す通り、上段の予備苗載せ台401は、標準位置における下段の予備苗載せ台401の後側の左角部の位置から上方に垂直に配置された支柱530に回動自在に保持されている。この例では、上段の予備苗載せ台401の回動支点531は、図29に示す通り、平面視で、標準位置にある予備苗載せ台401の後端の左角部に設けられている。
これにより、標準位置にある上下2段の予備苗載せ台401を、下段の予備苗載せ台401の回動支点521を中心として、180度回動させた後、更に、上段の予備苗載せ台401の回動支点531を中心として、上段の予備苗載せ台401を180度回動させることができる。
上記構成によれば、回動支点を個別に、且つ反対側に設けたことにより、予備苗載せ台401を、その段数分だけ、簡単に前側に展開することができる。
次に、図31(a)、図31(b)を参照しながら、上記の第3の予備苗枠420の変形例の第5の予備苗枠440を説明する。
図31(a)、図31(b)において、上記の予備苗枠400と同じ構成には同じ符号を付し、その説明を省略する。
図31(a)は第5の予備苗枠440の斜視図であり、図31(b)は第5の予備苗枠450の正面図である。
第5の予備苗枠450は、上記の第3の予備苗枠420の特徴である、上段の予備苗載せ台401と下段の予備苗載せ台401をそれぞれ独立して回動させる点は、第3の予備苗枠420と同じであるが、下段の予備苗載せ台401を回動させる下段用回動支点部541を支柱540の上端に設け、上段の予備苗載せ台401を回動させる上段用回動支点部560を一端部550aに有する略U字形状のU字ステイ550の他端部550bを支柱540の上端に設けた点が相違する。
これにより、予備苗載せ台401を1段だけ回動させることが出来るので。1段しか展開させる必要がない場合において、上下の2段を一体で回動させる構成に比べて、少ない力で動かせるので、作業効率が向上する。
また、図31(b)に示す通り、正面視で、上段の予備苗載せ台401と下段の予備苗載せ台401の間を上下に横切る支柱がないので、標準位置にある予備苗載せ台401に苗箱を載せる際に、支柱がじゃまにならない。
次に、図32(a)、図32(b)を用いて、センタマスコット棒700を階段状にして、フロントカバー(ボンネット)32(図1参照)を開けて止める位置を、複数の位置から選択できる構成について説明する。
図32(a)に示す通り、センタマスコット棒700は、階段状に3つのフック部701、702、703が形成されている。また、センタマスコット棒700の根本部710は、3つのフック部701、702、703に対応して、前方側への傾斜角度を変えられる構成となっている。
これにより、作業者が、フロントカバー32を大きく開けて、例えば、一番上のフック部701に固定させる場合は、予め、センタマスコット棒700を前方側に傾斜させておいて、フロントカバー32を大きく開けて所望の高さにきたときに、フロントカバー32の先端部が、一番上のフック部701によって保持されるべく、センタマスコット棒700の傾斜を調節すれば良い(図32(b)参照)。
これにより、従来のセンタマスコット棒の様にフックが1つ設けられている構成に比べて、センタマスコット棒700を階段状に構成するという簡単な構成で、フロントカバー32を開く角度を複数の中から適宜選択できるので、作業効率が向上する。
また、従来のセンタマスコット棒に取り付けられていたフック部品を廃止できるので、部品点数を削減することもできる。
尚、上記実施の形態では、畦際検知部110をレーザー又は超音波等の距離検知センサで実現する場合について説明したが、これに限らず例えば、苗移植機の先端部から前方斜め下方に突き出した接触センサを用いて、畦際の段差を検知する構成であっても良いし、あるいは、上述した回転センサ182や、制御回路200のタイマー機能を利用して、植え付け作業開始から所定値(回転センサ182の場合は所定の回転数、タイマー機能の場合は所定時間)を越えると、畦際まで植え付けが完了したと判定する構成であっても良い。
また、上記実施の形態では、畦際検知部110により、畦際の段差155の存在が検知されると、苗移植機1の走行が自動停止し、畦際検知部110からの段差検知信号と変速レバーポテンショメータ170からの停止検知信号を受け付けた制御回路200からの指令により、HST23を自動で「後進」側に切り替える構成について説明したが、これに限らず例えば、畦際の段差155の存在が検知された際、畦際検知信号を制御回路200が受け付けると、自動停止ではなく、畦際検知を知らせる警告ランプ(図示省略)を点滅させ、それを見た作業者が苗移植機1の走行を手動で停止させる構成でも良い。この場合でも、畦際検知部110からの段差検知信号と変速レバーポテンショメータ170からの停止検知信号を受け付けた制御回路200からの指令により、HST23を自動で「後進」側に切り替えることができる。
また、上記実施の形態では、植え付け装置52が所定高さまで上昇したことを上昇検知センサ140を用いて検出する構成について説明したが、これに限らず例えば、上昇検知センサ140を備えずに、制御回路200にタイマー機能を持たせた構成であっても良い。即ち、この構成の場合、制御回路200の時間カウント部(図示省略)において、植え付け装置52の上昇開始から予め定めて所定時間が経過したことが検知された際、切替カム74を強制的に回動させることによって植え付け昇降レバー33を「上昇」位置から「停止(中立)」位置に移動させる。これにより、上記と同様の効果を発揮すると共に、更に、上昇検知スイッチ140を省けて、部品を削減できるという効果も発揮する。
また、上記実施の形態では、畦際検知部110と変速レバーポテンショメータ170と回転センサ182とを備えた構成であって、畦際検知部110からの畦際検知信号と、変速レバーポテンショメータ170からの停止検知信号を受け付けた制御回路200からの指令により、HST23を自動で「後進」側に切り替えると共に、HST23が「後進」側に切り替えられた以降の回転センサ182による検知距離が所定距離に到達したと判定した制御回路200からの指令により、HST23が自動で「前進」側に切り替えられる構成について説明したが、これに限らず例えば、HST23の「前進」側への切り替えは、自動で行われるのではなく、作業者が変速レバー36を手動で切り替えることにより行われる構成であっても良い。
また、上記実施の形態では、旋回連動制御機構により苗の植え付けが自動で開始された際、制御回路200が、HST23を旋回走行時に比べて高速側、即ち、通常の苗植え付け作業時の前進走行速度に切り替えさせる構成について説明したが、これに限らず例えば、HST23を旋回走行時に比べて高速側に自動で切り替えることは行わない構成であっても良い。
また、上記実施の形態では、図4に示す通り、変速レバー36を、長孔125が形成された変速レバー移動アーム126を介して変速レバー駆動用モータ120に連結した構成により、変速レバー36の自動移動を実現すると共に、手動移動も可能とした構成について説明したが、これに限らず他の構成により、変速レバー36の自動移動を実現すると共に、手動移動も可能としても良い。