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JP2015099884A - Cigs太陽電池の製造方法 - Google Patents

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太一 渡邉
誠喜 寺地
Seiki Terachi
誠喜 寺地
智宏 鞍田
Tomohiro Kurata
智宏 鞍田
由考 椙田
Yoshitaka Sugita
由考 椙田
洸人 西井
Hiroto Nishii
洸人 西井
祐輔 山本
Yusuke Yamamoto
祐輔 山本
和典 河村
Kazunori Kawamura
和典 河村
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Abstract

【課題】変換効率に優れるCIGS太陽電池の製造方法を提供する。
【解決手段】少なくとも、基板1と、CIGS膜4と、第1のバッファ層5aと、透明電極層6とをこの順で有するCIGS太陽電池の製造方法であって、CIGS膜4を真空条件下で形成し、引き続き、上記CIGS膜4上にアルカリ金属の化合物からなる仮保護層を真空条件下で形成し、その後、上記CIGS膜4を大気に暴露することなく上記仮保護層を除去した状態で、第1のバッファ層5aの形成を溶液成長法により行うようにした。
【選択図】図1

Description

本発明は、良好な特性を有するCIGS膜を備えたCIGS太陽電池の製造方法に関するものである。
アモルファスシリコン太陽電池や化合物薄膜太陽電池に代表される薄膜型太陽電池は、従来の結晶型シリコン太陽電池と比較すると、材料コストや製造コストの大幅な削減が可能である。このため、近年、これらの研究開発が急速に進められている。なかでも、I族、III族、VI族の元素を構成物質とした化合物薄膜太陽電池であって、光吸収層が銅(Cu)、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、セレン(Se)合金からなるCIGS太陽電池は、シリコンを全く使用せず、しかも優れた光電変換効率(以下「変換効率」とする)を有するため、薄膜太陽電池の中でも特に注目されている。
このようなCIGS太陽電池は、通常、基板、裏面電極層、CIGS膜、バッファ層、表面電極層が、この順で積層された構造を有しており、CIGS膜とバッファ層との界面でpn接合が形成されている。ところで、このCIGS膜は、真空蒸着法またはスパッタ法等を用いて形成することができる。一方、バッファ層は、溶液成長(CBD)法、真空蒸着法、スパッタ法、有機金属気相成長(MOCVO)法等を用いて形成することができるが、密着力が高く表面被覆性に優れ、しかもCIGS膜との間に高効率が期待できる浅いpnホモ接合を形成できる等の点から、CBD法によるものがとりわけ重用とされている。
しかしながら、バッファ層をCBD法により形成するためには、真空条件下で形成されたCIGS膜を、一旦大気中に取出して(大気暴露)CBD法で用いる水溶液(CBD溶液)に浸漬する必要があるため、大気中に取り出したCIGS膜表面に、大気中に含まれる水分が付着することにより汚染したり、CIGS膜表面が大気中に含まれる酸素により酸化したりするといった問題が発生する。このような問題を解決するために、例えば、特許文献1では、CIGS膜を大気暴露させることなく真空のまま搬送しながらバッファ層を形成するという手法が提案され、特許文献2では、不活性ガスが連続的に供給された装置内でバッファ層を形成するという手法が提案され、特許文献3では、相対湿度が30%以下の均一に制御管理された装置内でバッファ層を形成するという手法が提案されている。
しかしながら、特許文献1および2のものは、高価な装置を必要としコストがかかるという問題がある。特許文献3のものも、別途、相対湿度を一定に保つ装置を必要とし、相対湿度の制御を行わなければならないという問題がある。
特開平8−236456号公報 特開2000−353738号公報 特開2006−203092号公報
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、別途、特別な装置を必要とせず、簡単な方法によって大気が遮断されたCIGS膜表面に、CBD法によりバッファ層を形成することができるCIGS太陽電池を製造する方法の提供をその目的とする。
上記目的を達成するため、本発明のCIGS太陽電池の製造方法は、少なくとも、基板と、光吸収層と、バッファ層と、透明電極層とをこの順で有するCIGS太陽電池の製造方法であって、光吸収層として用いられるCIGS膜を真空条件下で形成し、引き続き、上記CIGS膜上にアルカリ金属の化合物からなる仮保護層を真空条件下で形成し、その後、上記CIGS膜を大気に暴露することなく上記仮保護層を除去した状態で、バッファ層の形成をCBD法により行うことをその要旨とする。
すなわち、本発明者らは、高い変換効率を達成する太陽電池を得るため、CIGS膜とバッファ層との接合界面に着目し、研究を重ねた。その結果、変換効率の低下や電池間の変換効率のばらつきが発生するのは、CBD法によってバッファ層を形成する前に、CIGS膜表面が大気に暴露され、大気に含まれる水分や酸素によってCIGS膜表面が汚染されることが一因であることが判明した。したがって、CIGS膜表面を大気に暴露することなく清浄な状態を保ったまま、バッファ層を形成することができないか、さらに研究を重ねた。そして、CIGS膜を形成後、その表面にアルカリ金属の化合物からなる仮保護層を形成し、CIGS膜の表面に直接大気が触れないようにして大気下に取り出し、その後、大気が触れない状態で上記仮保護層を除去し、CBD法によりバッファ層を形成するようにすると、高い変換効率を達成でき、しかも、得られた電池間の変換効率のばらつきを少なくすることができることを見出し、本発明に想到した。
このように、本発明のCIGS太陽電池の製造方法は、少なくとも、基板と、光吸収層と、バッファ層と、透明電極層とをこの順で有するCIGS太陽電池の製造方法であって、光吸収層として用いられるCIGS膜を真空条件下で形成し、引き続き、上記CIGS膜上にアルカリ金属の化合物からなる仮保護層を真空条件下で形成するようにしている。このため、CIGS膜表面を大気から確実に保護することができる。また、この仮保護層は、CIGS膜形成時に用いた蒸着装置を援用して形成することができるため、特別な装置を設ける必要がなく、コストの低減化を図ることができる。さらに、仮保護層を形成するアルカリ金属の化合物は、水溶液に簡単に溶解するため、仮保護層が形成された基板ごとCBD法で用いる水溶液に浸漬すると、まずアルカリ金属の化合物が溶解して、仮保護層が除去され、その下から現れた清浄なCIGS膜表面に、バッファ層を形成することができる。このため、CIGS膜とバッファ層とのpn接合を好適なものとすることができる。また、バッファ層の形成をCBD法により行っているため、CIGS膜との密着性に優れ、高い変換効率を達成することのできるCIGS太陽電池を低コストで製造することができる。すなわち、本発明の製造方法により製造されたCIGS太陽電池は、変換効率が向上するだけでなく、電池間の変換効率のばらつきが改良された極めて優れたものとなる。
また、仮保護層を、NaおよびLiの少なくとも一方を含有するアルカリ金属の化合物によって形成すると、Na,LiがCIGS膜内に移行、浸透することにより、膜内のキャリア濃度が増大し、開放電圧を高めることが期待できる。
そして、アルカリ金属の化合物が、NaFであるようにすると、仮保護層の膜厚の調整の容易性と、水溶液に浸漬した際の溶解性とのバランスに優れるため、好適である。
さらに、仮保護層の膜厚を、10nm以上、200nm以下に設定すると、CIGS膜の保護を充分に行うことができ、しかも、仮保護層の除去が容易であるため、好適である。
また、仮保護層を、蒸着法、スパッタ法またはイオンプレーティング法により形成すると、CIGS膜の全面に均一な厚みで形成することが容易となるため、好適である。
そして、仮保護層が形成されたCIGS膜をバッファ層形成用の水溶液に浸漬し、仮保護層のアルカリ金属の化合物を溶解することにより、仮保護層を除去すると、従来通りの手法でバッファ層の形成を行うだけでよく、仮保護層の除去のために工程数を増やさずに済むため、好適である。
また、バッファ層形成用の水溶液として、Cd,Zn,Inからなる群から選ばれた少なくとも一つの元素イオンを含有するものを用いると、CIGS膜とバッファ層との界面に、高い変換効率が期待できる浅いpnホモ接合の形成が可能となるため、好適である。
そして、仮保護層が形成されたCIGS膜を水またはアルカリ性水溶液に浸漬し、仮保護層のアルカリ金属の化合物を溶解することにより、仮保護層を除去した後に、バッファ層の形成を行うと、バッファ層が形成されるまでの間もCIGS膜表面を確実に保護することができる。また、仮保護層の除去とバッファ層の形成とを同一水溶液中で行うことにより、仮保護層の除去後に現れた清浄なCIGS膜表面にバッファ層を形成することができ、CIGS膜とバッファ層とのpn接合を好適なものとすることができる。
得られたCIGS太陽電池において、CIGS膜のアルカリ金属含有量が、1×1018原子数/cc以上1×1020原子数/cc以下となるように制御すると、CIGS膜内のキャリア濃度が増大し、開放電圧を高くすることができるため、好適である。
本発明の一実施の形態により得られるCIGS太陽電池を模式的に示す断面図である。 本発明の一実施の形態であるCIGS太陽電池の製造方法の説明図である。 本発明の一実施の形態であるCIGS太陽電池の製造方法の説明図である。 本発明の一実施の形態であるCIGS太陽電池の製造方法の説明図である。
つぎに、本発明を実施するための形態について説明する。
図1は、本発明の一実施の形態により得られるCIGS太陽電池の説明図である。このCIGS太陽電池は、基板1、不純物拡散防止層2、裏面電極層3、光吸収層であるCIGS膜4、第1のバッファ層5aと第2のバッファ層5bとからなるバッファ層5、透明電極層6がこの順で積層されている。以下に、このCIGS太陽電池を詳しく説明する。なお、図1において、各部分は模式的に示したものであり、実際の厚み,大きさ等とは異なっている(以下の図においても同じ)。
すなわち、このCIGS太陽電池は、基板1として、幅10mm、長さ100mm、厚み50μmのステンレス箔(SUS)が用いられ、基板1の上に、厚み300nmのクロム(Cr)からなる不純物拡散防止層2が設けられ、不純物拡散防止層2の上に厚み500nmのモリブデン(Mo)からなる裏面電極層3が設けられている。そして、裏面電極層3の上に、厚み2000nmのCIGS膜4が設けられ、CIGS膜4の上に厚み50nmのCdSからなる第1のバッファ層5aと、厚み70nmのZnOからなる第2のバッファ層5bがこの順で設けられ、第2のバッファ層5bの上に、厚み200nmのITOからなる透明電極層6が設けられているという構成をしている。なお、上記CIGS膜4は、銅(Cu)、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、セレン(Se)からなるカルコパイライト化合物からなり、6×1018原子数/ccのNaを含有している。
このようなCIGS太陽電池は、例えば、つぎのような方法で製造することができる。まず、不純物拡散防止層2と裏面電極層3とがこの順で設けられた基板1を準備し、裏面電極層3上に、真空条件下でCu,In,Ga,Seの各蒸着源を用いた蒸着法によりCIGS膜4を形成する。ついで、同蒸着装置を用い、CIGS膜4の上に、下記に詳述するように、NaFからなる仮保護層αを形成する。
仮保護層αの形成をより詳しく説明すると、CIGS膜4の形成を終了した後、基板1の温度を400℃に保持する。そして、NaF蒸着源の温度を750℃に設定し、CIGS膜4上に厚み50nmのNaFからなる仮保護層αを蒸着法により形成する(図2参照)。そして、仮保護層αが形成された後もさらに10分間、基板1の温度を400℃に保ち、熱拡散を利用して仮保護層αからCIGS膜4の粒界にNaを拡散させ、仮保護層αまで形成された基板1を、蒸着装置から大気中に取り出す。
つぎに、上記仮保護層αまで形成された基板1を、CBD法により第1のバッファ層5aを形成するための水溶液(CBD水溶液、この実施の形態では、酢酸カドミウム0.01M、チオ尿素0.05M、酢酸アンモニウム0.1M、アンモニア水0.4Mを混合した水溶液)に1分間浸漬する。これにより、上記CBD水溶液に仮保護層αを構成するNaFが溶解し、CIGS膜4上から仮保護層αが除去され、最表面にCIGS膜4が現れる(図3参照)。その後、この水溶液を80℃に加熱し、その状態を15分間保持することにより、大気下での悪影響を受けていない清浄なCIGS膜4上に、厚み50nmのCdSからなる第1のバッファ層5aが形成される(図4参照)。
さらに、上記第1のバッファ層5aが形成された基板1を上記水溶液から取出し、乾燥させた後、第1のバッファ層5aの上に、スパッタ法により厚み70nmのZnOからなる第2のバッファ層5bを形成し、さらに、その上に、スパッタ法により厚み200nmのITOからなる透明電極層6を形成することにより、図1に示すCIGS太陽電池を得ることができる。
この実施の形態によれば、光吸収層として用いられるCIGS膜4を真空条件下で形成し、上記CIGS膜4に引き続きアルカリ金属の化合物からなる仮保護層αを大気に暴露することなく真空条件下でCIGS膜4上に形成するようにしているため、第1のバッファ層5aが形成されるまでの間、CIGS膜4表面を確実に保護することができる。また、この仮保護層αは、CIGS膜4形成に用いた蒸着装置を援用して形成することができるため、仮保護層αを形成する特別な装置が不要で、コストの低減化を図ることができる。
また、仮保護層αの厚みが50nmであるため、CIGS膜4表面の保護を充分に図ることができ、またその後の除去も容易に行うことができる。そして、仮保護層αを形成するアルカリ金属の化合物が、膜厚をコントロールしやすいNaFであるため、仮保護層αの膜厚を容易に任意な厚みに調整することができる。そして、仮保護層αを、蒸着法により形成しているため、CIGS膜4表面の全面に均一な厚みで積層することができ、CIGS膜4内へのNaの拡散を、より均一的に行うことができる。しかも、仮保護層αを形成後、基板1の温度を400℃にし、その状態を10分間保持するようにしているため、仮保護層αからCIGS膜4へNaがさらに拡散し、CIGS膜4の導電率とキャリア濃度の増大や、伝導帯不連続量の減少等の光吸収層としての有利な効果を得ることができる。
さらに、仮保護層αを形成するNaFは、水、または水溶液に浸漬すると簡単に溶解する。このため、仮保護層αの除去と第1のバッファ層5aの形成を同一水溶液中で行うことができ、しかも、除去後に現れた清浄なCIGS膜4表面に第1のバッファ層5aを形成することができるため、CIGS膜4と第1のバッファ層5aとのpn接合を好適なものとすることができる。また、第1のバッファ層5aの形成をCBD法により行っているため、CIGS膜4との密着性に優れ、高い変換効率を達成することのできるCIGS太陽電池を低コストで製造することができる。そして、得られたCIGS太陽電池は、CIGS膜4のNa濃度が、6×1018原子数/cc程度となるよう制御されているため、変換効率がより一層高いものとなっている。
また、上記の実施の形態では、仮保護層αの形成を、蒸着法により行っているが、大気に暴露することなく真空条件下で行うことができる他の方法により行ってもよい。このような方法としては、例えば、イオンプレーティング法、イオンビーム蒸着法、マグネトロン・スパッタリング法、イオンビーム・スパッタリング法があげられる。なかでも、層形成効率が良く、CIGS膜4に与えるダメージが少ない点から、蒸着法が好ましく用いられる。そして、仮保護層αの厚みは、蒸着温度、時間等の各種条件を調整することにより、制御することができる。
そして、上記の実施の形態では、仮保護層αが形成された後もさらに10分間、基板1の温度を400℃に保ち、熱拡散を利用して仮保護層αからCIGS膜4の粒界にNaを拡散させているが、不純物拡散防止層2を設けず基板1としてソーダライムガラス(SLG)等を用いる等、他の方法によりCIGS膜4内にアルカリ金属元素を拡散することができれば、上記のような熱拡散を行わなくともよい。ただし、仮保護層αを加熱してアルカリ金属元素をCIGS膜4の粒界に拡散させるようにすると、拡散の制御が容易であり、CIGS膜4のアルカリ金属含有量を正確に特定の範囲内とすることができるため、好適である。
さらに、上記の実施の形態では、仮保護層αの除去を、CBD法により第1のバッファ層5aを形成するための水溶液にNaFを溶解して行うようにしているが、第1のバッファ層5aの形成前にCIGS膜4の表面を大気に暴露させない限り他の方法により行って、仮保護層αを除去してもよい。このような方法としては、例えば、CBD法により第1のバッファ層5aを形成するための水溶液に浸漬する前に、水または他の水溶液に仮保護層αを浸漬して除去する方法等があげられる。
そして、上記実施の形態では、CIGS膜4を、真空条件下で蒸着法により形成しているが、上記CIGS膜4は、この他にも、セレン化/硫化法、スパッタ法等によっても形成することができる。
また、上記の実施の形態では、CIGS膜4に、6×1018原子数/ccのアルカリ金属(Na)が含まれるようにしているが、これに限らず任意の量としてもよく、含まれなくてもよい。しかし、CIGS太陽電池におけるCIGS膜4に、1×1018原子数/cc以上1×1020原子数/cc以下のアルカリ金属が含まれるようにすると、キャリア濃度が向上し、その結果、高い変換効率を達成できるようになるため、好ましい。
また、上記の実施の形態では、CBD法により第1のバッファ層5aを形成するための水溶液として、酢酸カドミウム0.01M、チオ尿素0.05M、酢酸アンモニウム0.1M、アンモニア水0.4Mを混合した水溶液を用い、この水溶液を80℃に加熱し、その状態を15分間保持することによって第1のバッファ層5aを形成しているが、他の水溶液を用い、他の条件によって、形成するようにしてもよい。ただし、Cd,Zn,Inからなる群から選ばれた少なくとも一つの元素イオンを含有するものを用いると、CIGS膜4との界面に、高い変換効率が期待できる浅いpnホモ接合形成が可能となる点で好ましい。なお、第2のバッファ層5bは、CBD法の他、真空蒸着法、スパッタ法、原子層堆積法、有機金属気相成長法等によって形成することもできる。すなわち、バッファ層を複数層に形成する場合には、少なくともCIGS膜4に接する層を、CBD法により形成すればよい。
上記の実施の形態では、基板1として、SUSを用いているが、この他にも、柔軟性のある金属箔、SLG、薄膜樹脂等を基板として用いることができる。具体的には、SUS、チタン、ポリイミドフィルム等があげられ、なかでもフェライト系SUS430を好ましく用いることができる。
上記の実施の形態では、不純物拡散防止層2として、Crを用いているが、これに代えて、SiO2、Al23、TiO2等を用いることもできる。また、その厚みも300nmに限られないが、効果とコストとのバランスの点から、10〜1000nmであることが好ましい。この不純物拡散防止層2は、例えば、スパッタ法、蒸着法、CVD法、ゾル・ゲル法、液相析出法を用いて形成することができ、図1に示すような基板1上ではなく、裏面電極層3の上に形成することもできる(図示せず)。しかし、基板1由来の不純物が太陽電池に悪影響を及ぼすおそれがない等の場合には、不純物拡散防止層2は設けなくてもよい。
また、上記実施の形態では、裏面電極層3として、Moを用いているが、このほかにも、タングステン、クロム、チタン等を用いることができ、単層のみならず複層に形成することもできる。そして、その厚みは、裏面電極層3全体として、100〜1000nmであることが好ましい。このような裏面電極層3は、例えば、スパッタ法、蒸着法、インクジェット法があげられる。なお、基板1が導電性を有し裏面電極層3の機能を兼ねる場合には、裏面電極層3は設けなくてもよい。
そして、上記実施の形態では、CIGS膜4の厚みは、2000nmに形成されているが、これに限らず任意の厚みとすることができる。しかし、上記CIGS膜4の厚みは、1000nm以上3000nm以下の範囲にあることが好ましく、1500nm以上2500nm以下の範囲にあることがより好ましい。厚みが薄すぎると、光吸収層として用いた際の光吸収量が少なくなり、素子の性能が低下する傾向がみられ、逆に、厚すぎると、膜の形成にかかる時間が増加し、生産性に劣る傾向がみられるためである。
なお、上記の実施の形態では、仮保護層αをNaFによって形成するようにしているが、この他のアルカリ金属の化合物を用いるようにしてもよい。このようなアルカリ金属の化合物としては、例えば、Na2Se、Na2S、LiFがあげられる。なかでも、アルカリ金属元素のCIGS膜4内への拡散により、変換効率の向上が期待できる点で、ナトリウム、カリウム、リチウムの化合物が好ましい。
そして、上記の実施の形態では、第1のバッファ層5aとしてCdS、第2のバッファ層5bとしてZnOを用いているが、これらの他に、例えば、ZnMgO、ZnS、Zn(OH)2、In23、In23、これらの混晶であるZn(O,S,OH)等を用いて形成することができる。また、第1のバッファ層5a,第2のバッファ層5bの複層に形成しているが、CIGS膜4とpn接合できる高抵抗のn型半導体を用いる等の場合には、単層とすることもできる。また、バッファ層5a,5bの厚みは、上記の実施の形態に限定されず、それぞれ30〜200nmであることが好ましい。そして、バッファ層5を単層とした場合でも同様に30〜200nmの厚みであることが好ましい。
また、上記実施の形態では、透明電極層6として、厚み200nmのITOを用いているが、この他にも酸化インジウム亜鉛(IZO)、酸化亜鉛アルミニウム(Al:ZnO)等を用いることができる。また、その厚みは、上記実施の形態に限定されず、100〜300nmであることが好ましい。このような透明電極層6は、例えば、スパッタ法、真空蒸着法、有機金属気相成長法によって形成することができる。
つぎに、実施例について、比較例と併せて説明する。ただし、本発明はこれに限定されるものではない。
〔実施例1〕
(裏面電極層3形成まで)
上記実施の形態と同様にして、CIGS太陽電池を製造した。すなわち、基板1として、ステンレス箔SUS430(大きさ10×100mm、厚み50μm)を用意し、この上に、厚み300nmのCrからなる不純物拡散防止層2と、厚み500nmのMoからなる裏面電極層3とをこの順に積層した。
(CIGS膜4の形成)
裏面電極層3まで形成された基板1を、真空蒸着装置内に搬入し、基板1保持温度を350℃にした状態で、裏面電極層3の上に、セレン化ガリウム(130nm)、セレン化インジウム(330nm)をこの順で積層し、層(A)を形成した。つづいて、基板1保持温度を350℃に保ったままの状態で、上記層(A)上にセレン化銅(1400nm)からなる層(B)を積層した。この積層体を、微量のSe蒸気を供給しつつ加熱し、基板1保持温度が650℃の状態を15分間保持し、結晶成長を行い、CIGS膜中間体を得た。さらに、このCIGS膜中間体に、微量のSeガスを供給しつつ、基板1保持温度を650℃に保った状態で、Gaの蒸着量を徐々に増加させながら、In、Ga、Seを蒸着し、層(C)として積層することにより、CIGS膜4(厚み2.0μm)を得た。
(仮保護層αの形成)
CIGS膜4の形成に引き続き、同真空蒸着装置を用いてCIGS膜4上に、厚み10nmのNaFからなる仮保護層αを形成した。すなわち、CIGS膜4を650℃で形成した後、冷却し、基板1温度を400℃に保持し、750℃に設定されたNaF蒸着源を用いることにより、大気に暴露されていないCIGS膜4上に仮保護層αを形成した。そして、仮保護層αが形成された後も基板1温度が400℃の状態を10分間保ち、仮保護層αのNaを、CIGS膜4上の粒界に拡散させた後、基板1温度が200℃になるまで冷却してチャンバーを開放し、CIGS膜4表面がNaFからなる仮保護層αで被覆された基板1を大気下に取り出した。
(仮保護層αの除去,第1のバッファ層5aの形成)
仮保護層αが形成された基板1を、酢酸カドミウム0.01M、チオ尿素0.05M、酢酸アンモニウム0.1M、アンモニア水0.4Mを有するCBD水溶液に1分間浸漬した。これにより、仮保護層αを形成するNaFが水溶液に融解し、CIGS膜4上から仮保護層αが除去される。ついで、この水溶液を80℃になるよう熱し、その状態を15分間保持して、仮保護層αが除去されたCIGS膜4上にCdSからなる第1のバッファ層5aを形成した。
(第2のバッファ層5bおよび透明電極層6の形成)
第1のバッファ層5aが形成された基板1を水溶液から取出し、乾燥させた後、第1のバッファ層5aの上に、スパッタ法により厚み70nmのZnOからなる第2のバッファ層5bを形成し、さらに、第2のバッファ層5bの上に、厚み200nmのITOからなる透明電極層6を形成して、CIGS太陽電池を製造した。
〔実施例2〜5〕
仮保護層αの膜厚を、後記の表1に示すように変更した他は、実施例1と同様にして、CIGS太陽電池を製造した。
〔実施例6〕
仮保護層αの形成後、基板1温度が400℃の状態を10分間維持することなく、すぐに基板1を冷却した他は、実施例1と同様にして、CIGS太陽電池を製造した。すなわち、実施例6では、意図して仮保護層αのNaを、CIGS膜4の粒界に拡散させていない。
〔比較例1〕
仮保護層αを形成しなかった他は、実施例1と同様にして、CIGS太陽電池を製造した。すなわち、比較例1では、CIGS膜4を形成した後、基板1温度が200℃になるまで冷却してチャンバーを開放し、CIGS膜4表面が仮保護層αで被覆されていない基板1を大気下に取り出し、これを酢酸カドミウム0.01M、チオ尿素0.05M、酢酸アンモニウム0.1M、アンモニア水0.4Mを有するCBD水溶液に浸漬している。
上記実施例および比較例のCIGS太陽電池をそれぞれ10個ずつ製造し、それらの変換効率、CIGS膜4のNa含有量、CIGS膜の表面酸化の有無を、下記の手順により求めた。これらの結果を後記の表1に併せて示す。
〔変換効率〕
擬似太陽光(AM1.5)を各実施例品および比較例品に照射し、その変換効率をソーラーシミュレーター(山下電装社製、セルテスターYSS150)によって測定した。そして、それぞれの値の平均を算出し、各実施例および比較例の変換効率とした。
〔CIGS膜のNa含有量〕
各実施例品および比較例品に用いたCIGS膜4のNa含有量を、アルバック・ファイ社製のD−SIMSを用いて測定した。そして、それぞれの値の平均を算出し、各実施例および比較例のCIGS膜4のNa含有量とした。
〔CIGS膜の表面酸化の有無〕
各実施例品および比較例品に用いたCIGS膜4の、表面から深さ10nmまでの領域の酸素濃度を、X線電子分光法(ESCA)を用いて測定した。そして、それぞれの値の平均を算出して各実施例および比較例の酸素濃度をとし、平均酸素濃度が1%未満であるものを○(酸化されていない)、1〜2%であるものを△(やや酸化されている)、2%を超えるものを×(酸化されている)と判定した。
Figure 2015099884
上記の結果より、実施例1〜6は、変換効率が13.2%以上の高い値を示していることがわかる。なかでも、仮保護層の厚みが10nm,50nm,100nmである実施例1〜3は、変換効率が15.4〜15.8%の極めて高い値を示していた。一方、仮保護層を設けず製造した比較例1品は、変換効率が12.1%の低い値であった。
本発明のCIGS太陽電池の製造方法は、変換効率が極めて高いCIGS太陽電池を、低コストで製造するのに適している。
1 基板
4 CIGS膜
5 バッファ層
5a 第1のバッファ層
5b 第2のバッファ層
6 透明電極層

Claims (9)

  1. 少なくとも、基板と、光吸収層と、バッファ層と、透明電極層とをこの順で有するCIGS太陽電池の製造方法であって、光吸収層として用いられるCIGS膜を真空条件下で形成し、引き続き、上記CIGS膜上にアルカリ金属の化合物からなる仮保護層を真空条件下で形成し、その後、上記CIGS膜を大気に暴露することなく上記仮保護層を除去した状態で、バッファ層の形成を溶液成長法により行うことを特徴とするCIGS太陽電池の製造方法。
  2. 仮保護層を、NaおよびLiの少なくとも一方を含有するアルカリ金属の化合物によって形成するようにした請求項1記載のCIGS太陽電池の製造方法。
  3. アルカリ金属の化合物が、NaFである請求項1または2記載のCIGS太陽電池の製造方法。
  4. 仮保護層の膜厚を、10nm以上、200nm以下に設定するようにした請求項1〜3のいずれか一項に記載のCIGS太陽電池の製造方法。
  5. 仮保護層を、蒸着法、スパッタ法またはイオンプレーティング法により形成するようにした請求項1〜4のいずれか一項に記載のCIGS太陽電池の製造方法。
  6. 仮保護層が形成されたCIGS膜をバッファ層形成用の水溶液に浸漬し、仮保護層のアルカリ金属の化合物を溶解することにより、仮保護層を除去するようにした請求項1〜5のいずれか一項に記載のCIGS太陽電池の製造方法。
  7. バッファ層形成用の水溶液として、Cd,Zn,Inからなる群から選ばれた少なくとも一つの元素イオンを含有するものを用いるようにした請求項1〜6のいずれか一項に記載のCIGS太陽電池の製造方法。
  8. 仮保護層が形成されたCIGS膜を水またはアルカリ性水溶液に浸漬し、仮保護層のアルカリ金属の化合物を溶解することにより、仮保護層を除去した後に、バッファ層の形成を行うことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載のCIGS太陽電池の製造方法。
  9. 得られたCIGS太陽電池において、CIGS膜のアルカリ金属含有量が、1×1018原子数/cc以上1×1020原子数/cc以下となるように制御した請求項1〜8のいずれか一項に記載のCIGS太陽電池の製造方法。
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