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JP2015067832A - エポキシ樹脂、エポキシ樹脂組成物、プリプレグおよびそれらの硬化物 - Google Patents

エポキシ樹脂、エポキシ樹脂組成物、プリプレグおよびそれらの硬化物 Download PDF

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JP2015067832A
JP2015067832A JP2013206441A JP2013206441A JP2015067832A JP 2015067832 A JP2015067832 A JP 2015067832A JP 2013206441 A JP2013206441 A JP 2013206441A JP 2013206441 A JP2013206441 A JP 2013206441A JP 2015067832 A JP2015067832 A JP 2015067832A
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epoxy resin
resin composition
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substituted
epoxy
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Application number
JP2013206441A
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English (en)
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篤彦 長谷川
Atsuhiko Hasegawa
篤彦 長谷川
宏一 川井
Koichi Kawai
宏一 川井
政隆 中西
Masataka Nakanishi
政隆 中西
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Nippon Kayaku Co Ltd
Original Assignee
Nippon Kayaku Co Ltd
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Abstract

【課題】軟化点が低く、さらに溶液安定性が高いことから均一な硬化物を作成でき、その硬化物が高い熱伝導性を有するエポキシ樹脂、本発明のエポキシ樹脂を含有するエポキシ樹脂組成物、プリプレグ、およびその硬化物を提供する。
【解決手段】下記工程(イ)〜(ハ)を経ることにより得られるエポキシ樹脂。工程(イ):ヒドロキシアルキルベンゾフェノン誘導体で表される化合物の一種以上と、ヒドロキシベンズアルデヒド誘導体で表せる化合物との反応によってフェノール化合物(a)を得る工程。工程(ロ):工程(イ)により得られるフェノール化合物(a)にアルカリ金属水酸化物存在下、エピハロヒドリンと反応させることによりエポキシ樹脂(b)を得る工程。工程(ハ):工程(ロ)により得られるエポキシ樹脂(b)を150℃以上に加熱し、樹脂中の結晶成分を融解した後に、50℃以下にて急冷する工程。
【選択図】なし

Description

本発明は、新規なエポキシ樹脂およびエポキシ樹脂組成物に関する。また、かかるエポキシ樹脂組成物により形成されるプリプレグ等の硬化物に関する。
エポキシ樹脂組成物は、一般的に機械的性質、耐水性、耐薬品性、耐熱性、電気的性質などに優れた硬化物となり、接着剤、塗料、積層板、成形材料、注型材料などの幅広い分野に利用されている。近年、これらの分野に用いられるエポキシ樹脂の硬化物には、高純度化を始め、難燃性、耐熱性、耐湿性、強靭性、低線膨張率、低誘電率特性など諸特性の一層の向上が求められている。
特に、エポキシ樹脂組成物の代表的な用途である電気・電子産業分野においては、多機能化、高性能化、コンパクト化を目的とした半導体の高密度実装やプリント配線板の高密度配線化が進んでいるが、高密度実装化や高密度配線化に伴って半導体素子やプリント配線板の内部から発生する熱が増加し、誤作動を引き起こす原因となりうる。そのため、発生した熱をいかにして効率よく外部に放出させるかということが、エネルギー効率や機器設計の上からも重要な課題となっている。これら熱対策としては、メタルコア基板を使用したり、設計の段階で放熱しやすい構造を組んだり、使用する高分子材料(エポキシ樹脂)に高熱伝導フィラーを細密充填したりするなど、様々な工夫がなされている。しかしながら、高熱伝導部位を繋げるバインダー役の高分子材料の熱伝導率が低いため、高分子材料の熱伝導スピードが律速となり、効率的な放熱ができていないのが現状である。
エポキシ樹脂の高熱伝導化を実現する手段として、メソゲン基を構造中に導入することが特許文献1に報告されており、同文献にはメソゲン基を有するエポキシ樹脂として、ビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂などが記載されている。またビフェニル骨格以外のエポキシ樹脂としてはフェニルベンゾエート型のエポキシ樹脂が記載されているが、該エポキシ樹脂は酸化によるエポキシ化反応によって製造する必要があることから、安全性やコストに難があり実用的とは言えない。ビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂を用いた例としては特許文献2〜4が挙げられ、中でも特許文献3には高熱伝導率を有する無機充填材を併用する手法が記載されている。しかしながら、これら文献に記載の手法により得られる硬化物の熱伝導性は市場の要望を満足するレベルでは無く、比較的安価に入手可能なエポキシ樹脂を用いた、より高い熱伝導率を有する硬化物を与えるエポキシ樹脂組成物が求められている。
また、これまでに報告されているメソゲン基を有する高熱伝導性エポキシ樹脂は融点が非常に高く樹脂状の取出しが困難であり、なおかつ溶剤溶解性が劣るものが多い。このようなエポキシ樹脂は硬化の際に完全に融解する前に硬化が始まってしまうため、均一な硬化物を作製することが困難であり、好ましいとは言えない。
このような現状を踏まえ、特許文献5ではメソゲン基を有し、かつ高熱伝導樹脂を低融点化させることに成功している。しかしながら、該文献記載のエポキシ樹脂は、晶析後に溶剤へと溶解した際の溶液安定性が低く、結晶が析出し、溶剤へ再溶解させることが困難であった。また、融点においても120℃前後と依然として高く、ロール等での混練が難しいというのが実状である。
日本国特開平11−323162号公報 日本国特開2004−2573号公報 日本国特開2006−63315号公報 日本国特開2003−137971号公報 国際公開第2011/093474号
本発明はこのような問題を解決すべく検討の結果なされたものであり、軟化点が低く、さらに溶液安定性が高いことから均一な硬化物を作成でき、その硬化物が高い熱伝導性を有するエポキシ樹脂、本発明のエポキシ樹脂を含有するエポキシ樹脂組成物、プリプレグ、およびその硬化物を提供するものである。
本発明者らは前記課題を解決するために鋭意研究した結果、本発明を完成させるに到った。
すなわち本発明は、
(1)下記工程(イ)〜(ハ)を経ることにより得られるエポキシ樹脂、
工程(イ):下記式(1)
Figure 2015067832
(式(1)中、Rはそれぞれ独立して存在し、水素原子、炭素数1〜10の置換または無置換のアルキル基、炭素数6〜10の置換または無置換のアリール基、水酸基、ニトロ基又は炭素数1〜10の置換または無置換のアルコキシ基のいずれかを表す。lはR1の数を表し、0〜4の整数である。)で表される化合物の一種以上と、
下記式(2)
Figure 2015067832
(式(2)中、Rはそれぞれ独立して存在し、水素原子、炭素数1〜10の置換もしくは無置換のアルキル基、炭素数6〜10の置換若しくは無置換のアリール基、水酸基、ニトロ基、ホルミル基、アリル基又は炭素数1〜10の置換もしくは無置換のアルコキシ基のいずれかを表す。kはRの数を表し、0〜4の整数である。)で表される化合物との反応によってフェノール化合物(a)を得る工程、
工程(ロ):工程(イ)により得られるフェノール化合物(a)にアルカリ金属水酸化物存在下、公知の手法でエピハロヒドリンと反応させることによりエポキシ樹脂(b)を得る工程、
工程(ハ):工程(ロ)により得られるエポキシ樹脂を150℃以上に加熱し、樹脂中の結晶成分を融解した後に、50℃以下にて急冷する工程、
(2)前項(1)に記載の製造方法により得られる、エポキシ当量が176〜235g/eqであることを特徴とするエポキシ樹脂、
(3)(1)に記載のエポキシ樹脂のうち、軟化点が100℃以下であることを特徴とするエポキシ樹脂、
(4)前項(1)〜(3)に記載のエポキシ樹脂と硬化剤および/または硬化促進剤を含有することを特徴とするエポキシ樹脂組成物、
(5)熱伝導率20W/m・K以上の無機充填材を含有してなる前項(4)に記載のエポキシ樹脂組成物、
(6)半導体封止用途に用いられる前項(4)または(5)に記載のエポキシ樹脂組成物、
(7)前項(4)または(5)に記載のエポキシ樹脂組成物及びシート状の繊維基材からなるプリプレグ、
(8)前項(4)〜(6)のいずれか一項に記載のエポキシ樹脂組成物、または前項(7)に記載のプリプレグを硬化してなる硬化物、
(9)前項(1)〜(3)に記載のエポキシ樹脂の製造方法であって、樹脂の取り出しの際に150℃以上で結晶を融解し、50℃以下にて急冷することを特徴とする製造方法、
(10)前項(9)に記載のエポキシ樹脂の製造方法であって、エポキシ樹脂(b)を得た後、水洗後にエピハロヒドリンを回収し、その後の工程における樹脂の取り出しの際に150℃以上で結晶を融解し、50℃以下にて急冷することを特徴とする製造方法、
に関する。
本発明のエポキシ樹脂は、軟化点が低く、溶液安定性が高いことから均一な硬化物を作成でき、その硬化物が熱伝導性に優れている。そのため、半導体封止材料、プリプレグを始めとする各種複合材料、接着剤、塗料等に使用する場合に有用である。また、本発明のエポキシ樹脂は、溶剤溶解性にも優れるため、プリプレグとしても有用である。
フェノール化合物(a)について説明する。本発明のフェノール化合物(a)は下記式(1)で表される化合物から選ばれる一種以上と下記式(2)で表される化合物との反応によって得られる。
Figure 2015067832
(式(1)中、Rはそれぞれ独立して存在し、水素原子、炭素数1〜10の置換または無置換のアルキル基、炭素数6〜10の置換または無置換のアリール基、水酸基、ニトロ基、又は炭素数1〜10の置換または無置換のアルコキシ基のいずれかを表す。lはR1の数を表し、0〜4の整数である。)
式(1)においてRはそれぞれ独立して存在し、水素原子、炭素数1〜10の無置換のアルキル基、炭素数6〜10の無置換のアリール基、水酸基、ニトロ基、又は炭素数1〜10の無置換のアルコキシ基であることが好ましい。
フェノール化合物(a)を得るために、式(2)で表される化合物との反応に用いられる式(1)で表される化合物の具体例としては、2−ヒドロキシアセトフェノン、3−ヒドロキシアセトフェノン、4−ヒドロキシアセトフェノン、2’,4’−ジヒドロキシアセトフェノン、2’,5’−ジヒドロキシアセトフェノン、3’,4’−ジヒドロキシアセトフェノン、3’,5’−ジヒドロキシアセトフェノン、2’,3’,4’−トリヒドロキシアセトフェノン、2’,4’,6’−トリヒドロキシアセトフェノン一水和物、4’−ヒドロキシ−3’−メチルアセトフェノン、4’−ヒドロキシ−2’−メチルアセトフェノン、2’−ヒドロキシ−5’−メチルアセトフェノン、4’−ヒドロキシ−3’−メトキシアセトフェノン、2’−ヒドロキシ−4’−メトキシアセトフェノン、4’−ヒドロキシ−3’−ニトロアセトフェノン、4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジメトキシアセトフェノン、4’,6’−ジメトキシ‐2’−ヒドロキシアセトフェノン、2’−ヒドロキシ−3’,4’−ジメトキシアセトフェノン、2’−ヒドロキシ−4’,5’−ジメトキシアセトフェノン、5−アセチルサリチル酸メチル、2’,3’−ジヒドロキシ−4’−メトキシアセトフェノン水和物、が挙げられる。これらのうち、得られるフェノール化合物(a)をエポキシ化した際の溶剤溶解性が高く、かつエポキシ樹脂組成物の硬化物が高い熱伝導性を示すことから、4’−ヒドロキシ−3’−メトキシアセトフェノン、4’−ヒドロキシアセトフェノンが好ましい。
Figure 2015067832
(式(2)中、Rはそれぞれ独立して存在し、水素原子、炭素数1〜10の置換もしくは無置換のアルキル基、炭素数6〜10の置換若しくは無置換のアリール基、水酸基、ニトロ基、ホルミル基、アリル基又は炭素数1〜10の置換もしくは無置換のアルコキシ基のいずれかを表す。kはRの数を表し、0〜4の整数である。)
フェノール化合物(a)を得るために、式(1)で表される化合物から選ばれる1種以上との反応に用いられる式(2)で表される化合物の具体例としては、例えば、2−ヒドロキシベンズアルデヒド、3−ヒドロキシベンズアルデヒド、4−ヒドロキシベンズアルデヒド、2,3‐ジヒドロキシベンズアルデヒド、2,4−ジヒドロキシベンズアルデヒド、2,5−ジヒドロキシベンズアルデヒド、3,4−ジヒドロキシベンズアルデヒド、シリンガアルデヒド、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンズアルデヒド、イソバニリン、4−ヒドロキシ−3−ニトロベンズアルデヒド、5−ヒドロキシ−2−ニトロベンズアルデヒド、3,4−ジヒドロキシ−5−ニトロベンズアルデヒド、バニリン、o−バニリン、2−ヒドロキシ−1−ナフトアルデヒド、2−ヒドロキシ−5−ニトロ−m−アニスアルデヒド、2−ヒドロキシ−5−メチルイソフタルアルデヒド、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンズアルデヒド、1−ヒドロキシ−2−ナフトアルデヒド、2−ヒドロキシ−5−メトキシベンズアルデヒド、5−ニトロバニリン、5−アリル−3−メトキシサリチルアルデヒド、3,5−ジ−tert−ブチルサリチルアルデヒド、3−エトキシサリチルアルデヒド、4−ヒドロキシイソフタルアルデヒド、4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルベンズアルデヒド、2,4,6−トリヒドロキシベンズアルデヒド、2,4,5−トリヒドロキシベンズアルデヒド、2,3,4−トリヒドロキシベンズアルデヒド、3,4,5−トリヒドロキシベンズアルデヒド、3−エトキシ−4−ヒドロキシベンズアルデヒド、などが挙げられる。これらは1種のみを使用しても、2種類以上を併用してもよい。これらのうち、得られるフェノール化合物(a)をエポキシ化した際の溶剤溶解性が高く、エポキシ樹脂組成物の硬化物が特に高い熱伝導性を示すことから、バニリンを単独で使用するのが好ましい。
フェノール化合物(a)は、酸性条件下もしくは塩基性条件下、式(1)で表される化合物と式(2)で表される化合物とのアルドール縮合反応によって得られる。
式(2)で表される化合物は式(1)で表される化合物1モルに対して1.0〜1.05モルを使用する。
酸性条件下でアルドール縮合反応を行う場合、用い得る酸性触媒としては、塩酸、硫酸、硝酸のような無機酸、トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、シュウ酸等の有機酸が挙げられる。これらは単独で使用してもよく、複数の種類を併用してもよい。酸性触媒の使用量は、式(2)で表される化合物1モルに対して0.01〜1.0モル、好ましくは0.2〜0.5モルである。
一方、塩基性条件下でアルドール縮合反応を行う場合、用い得る塩基性触媒としては、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウム等の金属水酸化物、炭酸カリウム及び炭酸ナトリウム等の炭酸アルカリ金属塩、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジイソブチルアミン、ピリジン及びピペリジン等のアミン誘導体、並びにジメチルアミノエチルアルコール及びジエチルアミノエチルアルコール等のアミノアルコール誘導体が挙げられる。塩基性条件の場合も、先に挙げた塩基性触媒を単独で使用してもよく、複数の種類を併用してもよい。塩基性触媒の使用量は、式(2)で表される化合物1モルに対して0.1〜2.5モル、好ましくは0.2〜2.0モルである。
フェノール化合物(a)を得る反応では、必要に応じて溶剤を使用してもよい。用い得る溶剤としては、例えばケトン類のように式(2)で表される化合物との反応性を有するものでなければ特に制限はないが、原料の式(2)で表される化合物を容易に溶解させる点ではアルコール類を溶剤として用いるのが好ましい。
反応温度は通常10〜90℃であり、好ましくは35〜70℃である。反応時間は通常0.5〜10時間であるが、原料化合物の種類によって反応性に差があるため、この限りではない。反応終了後、樹脂として取り出す場合には、反応物を水洗後または水洗無しに、加熱減圧下で反応液から未反応物や溶媒等を除去する。結晶で取り出す場合、大量の水中に反応液を滴下することにより結晶を析出させる。塩基性条件で反応を行った場合は生成したフェノール化合物(a)が水中に溶け込むこともありうるので、塩酸を加えるなどして中性〜酸性条件にして結晶として析出させる。
次に、エポキシ樹脂(b)について説明する。
エポキシ樹脂(b)は、上記手法によって得られたフェノール化合物(a)とエピハロヒドリンとを反応させ、エポキシ化することにより得られる。なお、エポキシ化の際には、フェノール化合物(a)を1種類のみ使用しても、2種以上を併用してもよい。また、フェノール化合物(a)に、フェノール化合物(a)以外のフェノール化合物を併用しても良い。
併用できるフェノール化合物(a)以外のフェノール化合物としては、エポキシ樹脂の原料として通常用いられるフェノール化合物であれば特に制限なく用いることができるが、硬化物が高い熱伝導率を有するという本発明の効果が損なわれる恐れがあるので、併用し得るフェノール化合物の使用量は極力少ないことが好ましく、フェノール化合物(a)のみを用いることが特に好ましい。
本発明のエポキシ樹脂としては、特に優れた溶剤溶解性を示し、なおかつ高い熱伝導率有する硬化物が得られることから、式(2)で表される化合物と式(1)で表される化合物との反応により得られたフェノール化合物(a)のエポキシ化物が好ましい。
エポキシ樹脂(b)を得る反応において、エピハロヒドリンとしてはエピクロルヒドリン、α−メチルエピクロルヒドリン、β−メチルエピクロルヒドリン、エピブロモヒドリン等が使用できるが、工業的に入手が容易なエピクロルヒドリンが好ましい。エピハロヒドリンの使用量は、フェノール化合物(a)の水酸基1モルに対し通常2〜20モル、好ましくは2〜15モル、特に好ましくは2〜4.5モルである。エポキシ樹脂は、アルカリ金属酸化物の存在下でフェノール化合物とエピハロヒドリンとを付加させ、次いで生成した1,2−ハロヒドリンエーテル基を開環させてエポキシ化する反応により得られる。この際、エピハロヒドリンを上記のように通常より顕著に少ない量で使用することで、エポキシ樹脂の分子量を延ばすとともに分子量分布を広げることができる。この結果、得られるエポキシ樹脂(b)は、比較的低い軟化点を有する樹脂状物として系中から取り出せ、優れた溶剤溶解性を示す。
エポキシ化反応に使用できるアルカリ金属水酸化物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられ、これらは固形物をそのまま使用しても、あるいはその水溶液を使用してもよい。水溶液を使用する場合は、該アルカリ金属水酸化物の水溶液を連続的に反応系内に添加すると共に、減圧下または常圧下で連続的に留出させた水及びエピハロヒドリンの混合液から分液により水を除去し、エピハロヒドリンのみを反応系内に連続的に戻す方法でもよい。アルカリ金属水酸化物の使用量は、フェノール化合物(a)の水酸基1モルに対して通常0.9〜3.0モル、好ましくは1.0〜2.5モル、より好ましくは1.0〜2.0モル、特に好ましくは1.0〜1.3モルである。
また、本発明者等は、エポキシ化反応において、特にフレーク状の水酸化ナトリウムを用いることで、水溶液とした水酸化ナトリウムを使用するよりも得られるエポキシ樹脂に含まれるハロゲン量を顕著に低減させることが可能となることを知見するに至った。このハロゲンはエピハロヒドリン由来のものであり、エポキシ樹脂中に多く混入するほど硬化物の熱伝導性の低下が引き起こされる。更にこのフレーク状の水酸化ナトリウムは、反応系内に分割添加されることが好ましい。分割添加を行なうことで、反応温度の急激な減少を防ぐことができ、これにより不純物である1,3−ハロヒドリン体やハロメチレン体の生成を防止することができ、より熱伝導率の高い硬化物の形成が可能となる。
エポキシ化反応を促進するために、テトラメチルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムブロマイド、トリメチルベンジルアンモニウムクロライド等の4級アンモニウム塩を触媒として添加することが好ましい。4級アンモニウム塩の使用量としては、フェノール化合物(a)の水酸基1モルに対し通常0.1〜15gであり、好ましくは0.2〜10gである。
また、エポキシ化の際に、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール類、ジメチルスルホン、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン、ジオキサン等の非プロトン性極性溶媒などを添加して反応を行うことが反応進行上好ましい。中でも、アルコール類またはジメチルスルホキシドが好ましい。アルコール類を用いた場合にはエポキシ樹脂が高い収率で得ることができる。一方、ジメチルスルホキシドを用いた場合にはエポキシ樹脂中のハロゲン量をより低減させることができる。
上記アルコール類を使用する場合、その使用量はエピハロヒドリンの使用量に対し通常2〜50質量%、好ましくは4〜35質量%である。また非プロトン性極性溶媒を用いる場合はエピハロヒドリンの使用量に対し通常5〜100質量%、好ましくは10〜80質量%である。
反応温度は通常30〜90℃であり、好ましくは35〜80℃である。反応時間は通常0.5〜10時間であり、好ましくは1〜8時間である。
反応終了後、反応物を水洗後、または水洗無しに加熱減圧下で反応液からエピハロヒドリンや溶媒等を除去する。また得られたエポキシ樹脂中に含まれるハロゲン量をさらに低減させるために、回収したエポキシ樹脂をトルエン、メチルイソブチルケトンなどの溶剤に溶解し、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物の水溶液を加えて反応を行ない、閉環を確実なものにすることも出来る。この場合、アルカリ金属水酸化物の使用量は、フェノール化合物(a)の水酸基1モルに対して通常0.01〜0.3モル、好ましくは0.05〜0.2モルである。反応温度は通常50〜120℃、反応時間は通常0.5〜2時間である。
反応終了後、生成した塩を濾過、水洗などにより除去し、更に加熱減圧下で溶剤を留去することによりエポキシ樹脂(b)が得られる。
本発明のエポキシ樹脂においては、エピハロヒドリンを回収する前に水洗を行う。水洗の方法は公知の方法であれば特には限定されない。
ここで水洗することにより、エピハロヒドリン留去の際の熱刺激による逆反応が抑制され、その後に前述の非プロトン極性溶媒ないしアルコール類等の溶媒に溶解させた後に、アルカリ金属水酸化物により閉環反応を進めた際に、エポキシ基の閉環が進みやすくなり、得られるエポキシ樹脂のエポキシ当量を低くすることが可能となる。このようにエポキシ当量が特に低いものの場合に、150℃以上で結晶を融解し、50℃以下にて急冷することで、エポキシ当量が低いことに起因して結晶性が高いにも関わらず、特に溶剤溶解性に優れたエポキシ樹脂となる。
続いて本発明のエポキシ樹脂について説明する。本発明のエポキシ樹脂は前述のエポキシ樹脂(b)を150℃以上で加熱し結晶成分を融解した後、50℃以下にて急冷することにより得られる。本発明のエポキシ樹脂は樹脂中に結晶成分が少ないため、アモルファス成分として取り出すことができるため、軟化点が低く、さらに溶液安定性が高いことから均一な硬化物の作成に効果的である。
加熱工程としては、150〜300℃が好ましく、150〜250℃がより好ましく、150〜200℃が特に好ましい。加熱温度が150℃以下の場合、結晶が融解しきらず、軟化点が下がらない可能性が有る。300℃以上の場合、エポキシ基の分解が進行するため、硬化物の熱伝導率などの諸物性が低下する恐れが有る。
冷却工程は、好ましく−30〜50℃、より好ましくは−15〜45℃、さらに好ましくは0〜40℃にて行う。冷却温度が−30℃以下の場合、樹脂表面に結露が発生し、常温に戻した際に吸湿しやすい。50℃以上の場合、冷却が遅く、冷却過程において樹脂の結晶が出やすく、軟化点が下がらない。また、冷却効率の観点から、樹脂をバットなどに流し込み、表面積を広げることが好ましい。
このようにして得られるエポキシ樹脂においては、エポキシ当量が通常176〜235g/eqであり、176〜230g/eqが好ましく、176〜220g/eqが特に好ましい。エポキシ当量がこの範囲にあることで、高い耐熱性を有するエポキシ樹脂を得ることができる。
軟化点は50℃以上が好ましく、55℃以上がより好ましい。
また、エポキシ当量及び軟化点の組み合わせとして、エポキシ当量が176〜230g/eqで、かつ軟化点が55℃以上であるエポキシ樹脂が好ましく、エポキシ当量が176〜220g/eqで、かつ軟化点が55℃以上であることが特に好ましい。エポキシ当量が低いにも関わらず、軟化点が高いことでエポキシ基が開環されているエポキシ樹脂の割合が一定量以上あることが示唆されるが、当該条件を満たすように一定以下にすることによって、より熱伝導性、耐熱性、電気信頼性、吸水率に優れるエポキシ樹脂が得られることから、上記条件を満たすエポキシ樹脂であることが好ましい。
以下、本発明のエポキシ樹脂組成物について記載する。本発明のエポキシ樹脂組成物は、本発明のエポキシ樹脂及び硬化剤および/または硬化促進剤を必須成分として含有する。
本発明のエポキシ樹脂組成物において、本発明のエポキシ樹脂は単独でまたは他のエポキシ樹脂と併用して使用することが出来る。
他のエポキシ樹脂の具体例としては、ビスフェノール類(ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ビフェノール、ビスフェノールAD及びビスフェノールI等)やフェノール類(フェノール、アルキル置換フェノール、芳香族置換フェノール、ナフトール、アルキル置換ナフトール、ジヒドロキシベンゼン、アルキル置換ジヒドロキシベンゼン及びジヒドロキシナフタレン等)と各種アルデヒド(ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、アルキルアルデヒド、ベンズアルデヒド、アルキル置換ベンズアルデヒド、ヒドロキシベンズアルデヒド、ナフトアルデヒド、グルタルアルデヒド、フタルアルデヒド、クロトンアルデヒド及びシンナムアルデヒド等)との重縮合物、キシレン等の芳香族化合物とホルムアルデヒドの重縮合物とフェノール類との重縮合物、フェノール類と各種ジエン化合物(ジシクロペンタジエン、テルペン類、ビニルシクロヘキセン、ノルボルナジエン、ビニルノルボルネン、テトラヒドロインデン、ジビニルベンゼン、ジビニルビフェニル、ジイソプロペニルビフェニル、ブタジエン及びイソプレン等)との重合物、フェノール類とケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトフェノン及びベンゾフェノン等)との重縮合物、フェノール類と芳香族ジメタノール類(ベンゼンジメタノール及びビフェニルジメタノール等)との重縮合物、フェノール類と芳香族ジクロロメチル類(α,α’−ジクロロキシレン及びビスクロロメチルビフェニル等)との重縮合物、フェノール類と芳香族ビスアルコキシメチル類(ビスメトキシメチルベンゼン、ビスメトキシメチルビフェニル及びビスフェノキシメチルビフェニル等)との重縮合物、ビスフェノール類と各種アルデヒドの重縮合物、並びにアルコール類等をグリシジル化したグリシジルエーテル系エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、グリシジルアミン系エポキシ樹脂、グリシジルエステル系エポキシ樹脂等が挙げられるが、通常用いられるエポキシ樹脂であればこれらに限定されるものではない。これらは、1種類のみ使用しても、2種以上を併用してもよい。
他のエポキシ樹脂を併用する場合、本発明のエポキシ樹脂組成物中の全エポキシ樹脂成分に占める本発明のエポキシ樹脂の割合は30質量%以上が好ましく、40質量%以上がより好ましく、70質量%以上が更に好ましく、特に好ましくは100質量%(他のエポキシ樹脂を併用しない場合)である。ただし、本発明のエポキシ樹脂をエポキシ樹脂組成物の改質剤として使用する場合は、全エポキシ樹脂中で1〜30質量%となる割合で添加する。
本発明のエポキシ樹脂組成物において用い得る硬化剤としては、例えばアミン系化合物、酸無水物系化合物、アミド系化合物及びフェノール系化合物等が挙げられる。これら他の硬化剤の具体例を下記(a)〜(e)に示す。
(a)アミン系化合物 ジアミノジフェニルメタン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジアミノジフェニルスルホン、イソホロンジアミン及びナフタレンジアミン等
(b)酸無水物系化合物 無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸及びメチルヘキサヒドロ無水フタル酸等
(c)アミド系化合物 ジシアンジアミド、若しくはリノレン酸の2量体とエチレンジアミンより合成されるポリアミド樹脂等、
(d)フェノール系化合物多価フェノール類(ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フルオレンビスフェノール、テルペンジフェノール、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、2,2’−ジヒドロキシビフェニル、3,3’,5,5’−テトラメチル−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジオール、ハイドロキノン、レゾルシン、ナフタレンジオール、トリス−(4−ヒドロキシフェニル)メタン及び1,1,2,2−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン等);フェノール類(例えば、フェノール、アルキル置換フェノール、ナフトール、アルキル置換ナフトール、ジヒドロキシベンゼン及びジヒドロキシナフタレン等)と、アルデヒド類(ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、p−ヒドロキシベンズアルデヒド、o−ヒドロキシベンズアルデヒド及びフルフラール等)、ケトン類(p−ヒドロキシアセトフェノン及びo−ヒドロキシアセトフェノン等)、若しくはジエン類(ジシクロペンタジエン及びトリシクロペンタジエン等)との縮合により得られるフェノール樹脂;前記フェノール類と、置換ビフェニル類(4,4’−ビス(クロルメチル)−1,1’−ビフェニル及び4,4’−ビス(メトキシメチル)−1,1’−ビフェニル等)、若しくは置換フェニル類(1,4−ビス(クロロメチル)ベンゼン、1,4−ビス(メトキシメチル)ベンゼン及び1,4−ビス(ヒドロキシメチル)ベンゼン等)等との重縮合により得られるフェノール樹脂;前記フェノール類及び/又は前記フェノール樹脂の変性物;テトラブロモビスフェノールA及び臭素化フェノール樹脂等のハロゲン化フェノール類
(e)その他イミダゾール類、BF アミン錯体、グアニジン誘導体
これら他の硬化剤の中ではジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン及びナフタレンジアミンなどのアミン系化合物、並びにカテコールとアルデヒド類、ケトン類、ジエン類、置換ビフェニル類又は置換フェニル類との縮合物などの活性水素基が隣接している構造を有する硬化剤がエポキシ樹脂の配列に寄与するため好ましい。
他の硬化剤は単独で用いてもよく、複数を併用してもよい。他の硬化剤を併用する場合、本発明のエポキシ樹脂組成物中の全硬化剤成分に占める本発明のフェノール化合物の割合は20質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましく、70質量%以上が更に好ましく、特に好ましくは100質量%(他の硬化剤を併用しない場合)である。
本発明のエポキシ樹脂組成物において、本発明のフェノール化合物を含む全硬化剤の使用量は、全エポキシ樹脂のエポキシ基1当量に対して0.5〜2.0当量が好ましく、0.6〜1.5当量が特に好ましい。
本発明のエポキシ樹脂組成物には、必要により硬化促進剤を添加しても良い。硬化促進剤の具体例としては、トリフェニルフォスフィン、ビス(
メトキシフェニル) フェニルフォスフィン等のフォスフィン類、2―メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2―エチル,4―メチルイミダゾール等のイミダゾール類、2−(ジメチルアミノメチル)フェノール、トリスジメチルアミノメチルフェノール、ジアザビシクロウンデセン等の3級アミン類、テトラブチルアンモニウム塩、トリイソプロピルメチルアンモニウム塩、トリメチルデカニルアンモニウム塩、セチルトリメチルアンモニウム塩などの4級アンモニウム塩、トリフェニルベンジルフォスフォニウム塩、トリフェニルエチルフォスフォニウム塩、テトラブチルフォスフォニウム塩などの4級フォスフォニウム塩(4級塩のカウンターイオンはハロゲン、有機酸イオン、水酸化物イオンなど、特に指定は無いが、特に有機酸イオン、水酸化物イオンが好ましい。)、オクチル酸スズ等の金属化合物等が例示される。
硬化促進剤の使用量は、エポキシ樹脂100重量部当たり、通常0.2〜5.0重量部、好ましくは、0.2〜4.0重量部である。
本発明のエポキシ樹脂組成物は必要に応じて熱伝導に優れた無機充填材を含有させることで、その硬化物にさらに優れた高熱伝導性を付与することができる。
本発明のエポキシ樹脂組成物が含有する無機充填材は、エポキシ樹脂組成物の硬化物に、より高い熱伝導率を付与する目的で加えられるもので、無機充填材自体の熱伝導率が低すぎる場合には、エポキシ樹脂と硬化剤の組み合わせにより得られた高熱伝導率が損なわれる恐れがある。従って、本発明のエポキシ樹脂組成物が含有する無機充填材としては、熱伝導率が高いものほど好ましく、通常20W/m・K以上、好ましくは30W/m・K以上、より好ましくは50W/m・K以上の熱伝導率を有するものであれば何ら制限はない。尚、ここでいう熱伝導率とは、ASTM E1530に準拠した方法で測定した値である。この様な特性を有する無機充填材の具体例としては、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、炭化ケイ素、窒化チタン、酸化亜鉛、炭化タングステン、アルミナ、酸化マグネシウム等の無機粉末充填材、合成繊維、セラミックス繊維等の繊維質充填材、着色剤等が挙げられる。これら無機充填材の形状は、粉末(塊状、球状)、単繊維、長繊維等いずれであってもよいが、特に、平板状のものであれば、無機充填材自身の積層効果によって硬化物の熱伝導性がより高くなり、硬化物の放熱性が更に向上するので好ましい。
本発明のエポキシ樹脂組成物における無機充填材の使用量は、エポキシ樹脂組成物中の樹脂成分100質量部に対して通常2〜1000質量部であるが、熱伝導率を出来るだけ高める為には、本発明のエポキシ樹脂組成物の具体的な用途における取り扱い等に支障を来たさない範囲で、可能な限り無機充填材の使用量を増やすことが好ましい。これら無機充填材は1種のみを使用しても、2種類以上を併用してもよい。
また、充填材全体としての熱伝導率を20W/m・K以上に維持できる範囲であれば、熱伝導率が20W/m・K以上の無機充填材に熱伝導率が20W/m・K未満の充填材を併用しても構わないが、出来るだけ熱伝導率の高い硬化物を得るという本発明の目的からして、熱伝導率が20W/m・K未満の充填材の使用は最小限に留めるべきである。併用し得る充填材の種類や形状に特に制限はない。
本発明のエポキシ樹脂組成物を半導体封止用途に用いる場合、硬化物の耐熱性、耐湿性、力学的性質などの点から、エポキシ樹脂組成物中において75〜93質量%を占める割合で熱伝導率が20W/m・K以上の無機充填材使用するのが好ましい。この場合、残部はエポキシ樹脂成分、硬化剤成分及びその他必要に応じて添加される添加剤であり、添加剤としては併用できる他の無機充填材や後述する硬化促進剤等である。
本発明のエポキシ樹脂組成物には硬化促進剤を含有させることもできる。使用できる硬化促進剤としては、例えば、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール及び2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール類、2−(ジメチルアミノメチル)フェノール、トリエチレンジアミン、トリエタノールアミン及び1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7等の第3級アミン類、トリフェニルホスフィン、ジフェニルホスフィン及びトリブチルホスフィン等の有機ホスフィン類、オクチル酸スズなどの金属化合物、テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート及びテトラフェニルホスホニウム・エチルトリフェニルボレート等のテトラ置換ホスホニウム・テトラ置換ボレート、2−エチル−4−メチルイミダゾール・テトラフェニルボレート及びN−メチルモルホリン・テトラフェニルボレート等のテトラフェニルボロン塩などが挙げられる。硬化促進剤は、エポキシ樹脂100質量部に対して0.01〜15質量部が必要に応じ用いられる。
本発明のエポキシ樹脂組成物には、必要に応じてシランカップリング剤、離型剤及び顔料等種々の配合剤、各種熱硬化性樹脂並びに各種熱可塑性樹脂等を添加することができる。熱硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂の具体例としては、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、マレイミド樹脂、シアナート樹脂、イソシアナート化合物、ベンゾオキサジン化合物、ビニルベンジルエーテル化合物、ポリブタジエンおよびこの変性物、アクリロニトリル共重合体の変性物、インデン樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンエーテル、ポリアセタール、ポリスチレン、ポリエチレン、ジシクロペンタジエン樹脂等が挙げられる。熱硬化性樹脂、または熱可塑性樹脂は本発明のエポキシ樹脂組成物中において60質量%以下を占める量が用いられる。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、上記各成分を均一に混合することにより得られ、その好ましい用途としては半導体封止材やプリント配線版等が挙げられる。
本発明のエポキシ樹脂組成物は従来知られているのと同様の方法で容易にその硬化物とすることが出来る。例えば、本発明のエポキシ樹脂組成物の必須成分であるエポキシ樹脂、硬化剤及び熱伝導率が20W/m・K以上の無機充填材、並びに必要により硬化促進剤、配合剤、各種熱硬化性樹脂や各種熱可塑性樹脂等を、必要に応じて押出機、ニーダ又はロール等を用いて均一になるまで充分に混合して得られた本発明のエポキシ樹脂組成物を、溶融注型法あるいはトランスファー成型法やインジェクション成型法、圧縮成型法などによって成型し、更にその融点以上で2〜10時間加熱することにより本発明のエポキシ樹脂組成物の硬化物を得ることが出来る。前述の方法でリードフレーム等に搭載された半導体素子を封止することにより、本発明のエポキシ樹脂組成物を半導体封止用途に用いることができる。
また、本発明のエポキシ樹脂組成物は溶剤を含むワニスとすることもできる。該ワニスは、例えば、エポキシ樹脂、硬化剤のうち、少なくとも一方に本発明のエポキシ樹脂、もしくは本発明のフェノール樹脂の少なくとも一方を含み、必要に応じて熱伝導率が20W/m・K以上の無機充填材などのその他の成分を含む混合物を、トルエン、キシレン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、N,N’−ジメチルホルムアミド、N,N’−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル等のグリコールエーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、グルタル酸ジアルキル、コハク酸ジアルキル、アジピン酸ジアルキル等のエステル類、γ−ブチロラクトン等の環状エステル類、石油エーテル、石油ナフサ、水添石油ナフサ及びソルベントナフサ等の石油系溶剤等の有機溶剤と混合することにより得ることが出来る。溶剤の量はワニス全体に対し通常10〜95質量%、好ましくは15〜85質量%である。
上記のようにして得られるワニスをガラス繊維、カーボン繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アルミナ繊維及び紙などの繊維基材に含浸させた後に加熱によって溶剤を除去すると共に、本発明のエポキシ樹脂組成物を半硬化状態とすることにより、本発明のプリプレグを得ることが出来る。尚、ここで言う「半硬化状態」とは、反応性の官能基であるエポキシ基が一部未反応で残っている状態を意味する。該プリプレグを熱プレス成型して硬化物を得ることが出来る。
以下、本発明を実施例で更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。合成例、実施例、比較例において部は質量部を意味する。
なお、エポキシ当量、融点、軟化点、全塩素量、熱伝導率は以下の条件で測定した。
・エポキシ当量
JIS K−7236に記載された方法で測定し、単位はg/eq.である。
・融点
Seiko Instruments Inc.製 EXSTAR6000
測定試料 2mg〜5mg 昇温速度 10℃/min.
・軟化点
JIS K−7234に準拠した方法で測定し、単位は℃である。
・熱伝導率
ASTM E1530に準拠した方法で測定し、単位はW/m・Kである。
(合成例1)
撹拌機、還流冷却管、撹拌装置を備えたフラスコに、4’−ヒドロキシアセトフェノン150部、バニリン167部およびエタノール221部を仕込み、溶解した。これに97質量%
硫酸22部を添加後60℃ まで昇温し、この温度で10時間反応後、反応液を水1324部に注入し、晶析させた。結晶を濾別後、水662部で2回水洗し、その後真空乾燥し、黄色結晶のフェノール化合物1を282部得た。得られた結晶のDSC測定による吸熱ピーク温度は233℃であった。
(実施例1)
撹拌機、還流冷却管、撹拌装置を備えたフラスコに窒素パージを施しながら、合成例1で得られたフェノール化合物1を177部、エピクロルヒドリンを363部、ジメチルスルホキシド(以下、DMSO)を182部、水を4部加え、撹拌下、70℃
にまで昇温し、溶解し、フレーク状の水酸化ナトリウム56部を90分間かけて分割添加した後、70℃ のまま3時間反応を行なった。反応終了後、反応液にエピクロルヒドリンを363部加え、水洗を行った。水洗後の有機層を、ロータリーエバポレーターを用いて135℃
で減圧下、過剰のエピクロルヒドリン等の溶剤を留去した。残留物をメチルイソブチルケトン(以下、MIBK)382部に溶解した後に水洗し塩を取り除いた。水洗後、MIBK溶液を75℃に昇温し、撹拌下で30%水酸化ナトリウム水溶液17部を添加し、1時間反応を行なった後、洗浄水が中性になるまで水洗を行ない、得られた溶液を、ロータリーエバポレーターを用いて180℃で減圧下にMIBK等を留去することでエポキシ樹脂1を200部得た。得られたエポキシ樹脂1のエポキシ当量は217g/eq.、軟化点は55℃であった。
(比較例1)
撹拌機、還流冷却管、撹拌装置を備えたフラスコに窒素パージを施しながら、合成例1で得られたフェノール化合物1を135部、エピクロルヒドリン370部、ジメチルスルホキシド(以下、DMSO)93部を加え、撹拌下、70℃
にまで昇温し、溶解し、フレーク状の水酸化ナトリウム41部を90分間かけて分割添加した後、70℃ のまま2.5時間反応を行なった。反応終了後、ロータリーエバポレーターを用いて135℃
で減圧下、過剰のエピクロルヒドリン等の溶剤を留去した。残留物をメチルイソブチルケトン(以下、MIBK)440部に溶解した後に水洗し塩を取り除いた。水洗後、MIBK溶液を70℃に昇温し、撹拌下で30%水酸化ナトリウム水溶液11部を添加し、1時間反応を行なった後、洗浄水が中性になるまで水洗を行ない、得られた溶液を、ロータリーエバポレーターを用いて180℃で減圧下にMIBK等を留去することでエポキシ樹脂2を200部得た。得られたエポキシ樹脂2のエポキシ当量は240g/eq.、軟化点は56℃であった。
(比較例2)
撹拌機、還流冷却管、撹拌装置を備えたフラスコに窒素パージを施しながら、合成例1で得られたフェノール化合物1を135部、エピクロルヒドリン925部、ジメチルスルホキシド(以下、DMSO)139部を加え、撹拌下、45℃にまで昇温し、溶解し、フレーク状の水酸化ナトリウム40部を90分間かけて分割添加した後、45℃のまま1.5時間、その後70℃に昇温し30分間反応を行なった。反応終了後、ロータリーエバポレーターを用いて70℃で減圧下、過剰のエピクロルヒドリン等の溶剤を800部留去した。残留物を水1500部に注入し結晶を析出させた。結晶を濾過後、600部のメタノールで洗浄し、その後70℃で真空乾燥することでエポキシ樹脂3を181部得た。得られたエポキシ樹脂3のエポキシ当量は210g/eq.、DSC測定による吸熱ピーク温度は118℃、130℃であった。
(実施例2、比較例3,4)
これらの操作によって得られたエポキシ樹脂1、2を含む各種エポキシ樹脂の50℃におけるメチルイソブチルケトンに対する樹脂濃度30%での、6時間後、12時間後、24時間後の溶液安定性を表1に示した。
Figure 2015067832
実施例3〜4、比較例5〜8
各種成分を表1の割合(部)で配合し、ミキシングロールで混練、タブレット化後、トランスファー成形で樹脂成形体を調製し、160℃で2時間、更に180℃で8時間加熱を行い、本発明のエポキシ樹脂組成物及び比較用樹脂組成物の硬化物を得た。これら硬化物の熱伝導率を測定した結果を表2に示した。
Figure 2015067832
以上の結果から、本発明で得られたエポキシ樹脂は軟化点が低く、溶液安定性がが向上したことから、ロールでの混練や、ワニスとして取り扱いが改善し、均一な硬化物を作成でき、さらにその硬化物が高い熱伝導率を示し、特にIC封止材料、積層材料、電気絶縁材料等などの電気・電子分野に有用である。

Claims (10)

  1. 下記工程(イ)〜(ハ)を経ることにより得られるエポキシ樹脂。
    工程(イ):下記式(1)
    Figure 2015067832
    (式(1)中、Rはそれぞれ独立して存在し、水素原子、炭素数1〜10の置換または無置換のアルキル基、炭素数6〜10の置換または無置換のアリール基、水酸基、ニトロ基又は炭素数1〜10の置換または無置換のアルコキシ基のいずれかを表す。lはR1の数を表し、0〜4の整数である。)で表される化合物の一種以上と、
    下記式(2)
    Figure 2015067832

    (式(2)中、Rはそれぞれ独立して存在し、水素原子、炭素数1〜10の置換もしくは無置換のアルキル基、炭素数6〜10の置換若しくは無置換のアリール基、水酸基、ニトロ基、ホルミル基、アリル基又は炭素数1〜10の置換もしくは無置換のアルコキシ基のいずれかを表す。kはRの数を表し、0〜4の整数である。)で表される化合物との反応によってフェノール化合物(a)を得る工程。
    工程(ロ):工程(イ)により得られるフェノール化合物(a)にアルカリ金属水酸化物存在下、エピハロヒドリンと反応させることによりエポキシ樹脂(b)を得る工程。
    工程(ハ):工程(ロ)により得られるエポキシ樹脂を150℃以上に加熱し、樹脂中の結晶成分を融解した後に、50℃以下にて急冷する工程。
  2. 請求項1に記載の製造方法により得られる、エポキシ当量が176〜235g/eqであることを特徴とするエポキシ樹脂。
  3. 請求項1に記載のエポキシ樹脂のうち、軟化点が100℃以下であることを特徴とするエポキシ樹脂。
  4. 請求項1〜3に記載のエポキシ樹脂と硬化剤および/または硬化促進剤を含有することを特徴とするエポキシ樹脂組成物。
  5. 熱伝導率20W/m・K以上の無機充填材を含有してなる請求項4に記載のエポキシ樹脂組成物。
  6. 半導体封止用途に用いられる請求項4または請求項5に記載のエポキシ樹脂組成物。
  7. 請求項4または請求項5に記載のエポキシ樹脂組成物及びシート状の繊維基材からなるプリプレグ。
  8. 請求項4〜6のいずれか一項に記載のエポキシ樹脂組成物、または前項(7)に記載のプリプレグを硬化してなる硬化物。
  9. 請求項1〜3に記載のエポキシ樹脂の製造方法であって、150℃以上で結晶を融解し、50℃以下にて急冷することを特徴とする製造方法。
  10. 請求項9に記載のエポキシ樹脂の製造方法であって、エポキシ樹脂(b)を得た後、水洗後にエピハロヒドリンを回収し、その後の工程における樹脂を150℃以上で結晶を融解し、50℃以下にて急冷することを特徴とする製造方法。
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