JP2014230685A - 歯周組織形成用材料 - Google Patents
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Abstract
【課題】歯周組織の欠損部に移植することにより、歯周組織を効果的に再生可能な材料を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、歯根膜由来幹細胞の培養上清濃縮物を含む、歯周組織形成用材料
に関する。
【選択図】図1
【解決手段】本発明は、歯根膜由来幹細胞の培養上清濃縮物を含む、歯周組織形成用材料
に関する。
【選択図】図1
Description
本発明は、歯周組織の修復又は再生に利用できる材料及びキットに関する。
従来、歯周病治療は、病原菌に感染した部位を対症療法による手段で対処することにより行われてきた。しかし、歯周病は大きな組織崩壊を伴うので、自然修復は難しく、治療後の組織再生が問題となる。現在までに、ゴアテックス膜もしくはポリ乳酸膜などの人工材料を用いた再生療法が開発され、一部の臨床ケースではその有効性が示されている。
しかし、人工材料のみでは再生能力に限界があるため、近年では、細胞成長因子や異種動物より抽出製造された生理活性物質と人工材料とを併用した歯周組織再生療法が開発されている。しかし、生理活性物質を用いた場合、欠損の少ない部位にその有効性を示すことができるが、大きな組織崩壊を伴うケースについては、その欠損部を補うまでには至っていない。また、創傷部位の細胞のみに生理活性物質を作用させ、組織修復の全てを託すことにも限界がある。
特許文献1には、ヒト又は動物の線維芽細胞を無血清培養して得られる培養上清を精製して産生させた細胞外マトリックス濃縮液を歯周病治療剤として、及びGTR(組織再生誘導)法の遮断膜として使用することが記載されている。しかし、細胞外マトリックス濃縮液が線維芽細胞の増殖を促進することが確認されているだけで、歯周組織欠損部に移植した場合の歯周組織の再生能については確認されていない。
本発明者らは、線維芽細胞を無血清培養して得られる培養上清の濃縮物を、歯周組織の欠損部に移植しても、歯周組織が再生されないことを確認した。
本発明者らはまた、細胞の培養上清濃縮物をコラーゲンスポンジ等に含浸して歯周組織の欠損部に移植する系では、切開部縫合後に体勢の変化や咀嚼などの通常の活動であっても縫合部位から培養上清濃縮物が漏れ出し、歯周組織を効果的に再生できないという問題があることを見出した。
したがって、本発明は、歯周組織の欠損部に移植することにより、歯周組織を効果的に再生可能な材料を提供することを目的とする。
本発明者らは、歯根膜由来幹細胞の培養上清濃縮物を歯周組織の欠損部に移植することにより、歯周組織を再生できることを見出した。本発明者らはさらに、歯根膜由来幹細胞の培養上清濃縮物をコラーゲンスポンジ等の多孔質担体に含浸させ、少なくとも一部を被覆層で被覆し、歯周組織の欠損部に移植することにより、培養上清濃縮物の漏れ出しを抑制でき、歯周組織を効果的に再生できることを見出した。
すなわち、本発明は以下を包含する。
(1)歯根膜由来幹細胞の培養上清濃縮物を含む、歯周組織形成用材料。
(2)さらに多孔質担体を含み、培養上清濃縮物が多孔質担体に含浸されている、(1)記載の歯周組織形成用材料。
(3)多孔質担体の少なくとも一部を被覆する被覆層をさらに含む、(2)記載の歯周組織形成用材料。
(4)被覆層がフィブリンを含む、(3)記載の歯周組織形成用材料。
(5)多孔質担体がコラーゲンスポンジである、(2)〜(4)のいずれかに記載の歯周組織形成用材料。
(6)歯周組織形成用キットであって、
歯根膜由来幹細胞の培養上清濃縮物を含浸させるための多孔質担体と、
歯根膜由来幹細胞の培養上清濃縮物を含浸させた多孔質担体を被覆する被覆層を形成するための材料と、
を含む前記キット。
(1)歯根膜由来幹細胞の培養上清濃縮物を含む、歯周組織形成用材料。
(2)さらに多孔質担体を含み、培養上清濃縮物が多孔質担体に含浸されている、(1)記載の歯周組織形成用材料。
(3)多孔質担体の少なくとも一部を被覆する被覆層をさらに含む、(2)記載の歯周組織形成用材料。
(4)被覆層がフィブリンを含む、(3)記載の歯周組織形成用材料。
(5)多孔質担体がコラーゲンスポンジである、(2)〜(4)のいずれかに記載の歯周組織形成用材料。
(6)歯周組織形成用キットであって、
歯根膜由来幹細胞の培養上清濃縮物を含浸させるための多孔質担体と、
歯根膜由来幹細胞の培養上清濃縮物を含浸させた多孔質担体を被覆する被覆層を形成するための材料と、
を含む前記キット。
本発明により、欠損した歯周組織を効果的に再生可能な材料及びキットが提供され、組織崩壊を伴う歯周病の治療が可能となる。
本発明において歯根膜由来幹細胞を採取する動物は、歯根膜を有する動物であれば特に限定されないが、好ましくは哺乳動物(例、ヒト、マウス、ラット、サル、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ等)であり、より好ましくはヒトである。また、歯根膜由来幹細胞は、移植治療を受ける動物個体と同一の個体から採取したものが好ましいが、移植治療を受ける動物個体と同一の種に属する別の個体から採取したものでもよい。
歯根膜由来幹細胞の調製方法は、当技術分野で公知の方法で実施でき、特に制限されない。例えば、歯根から剥離した歯根膜を破砕し、破砕した歯根膜組織を用いて、outgrowth法や、消化酵素を用いる方法などを実施できる。用いる消化酵素としては、マトリクスメタロプロテインナーゼ(例えば、コラーゲナーゼ)、トリプシン、キモトリプシン、パパイン、ペプシン、プロテインナーゼK、ディスパーゼ、カルボキシペプチダーゼ、カルパイン及びスブチリシンが挙げられるが、これらに限定されない。なお、酵素消化法としては、段階的酵素消化法を用いることが望ましい。
組織を破砕する方法は、当該技術分野において公知であり、例えば、ミンチにする、ミキサーにかける等が含まれる。歯根膜組織を破砕することにより、結果として、浮遊する歯根膜細胞と歯根膜組織の組織混合物が生じる。組織混合物を1つ又は複数の篩、例えば、50μm〜500μmまでの範囲の様々な孔径のストレイナーにかけることで、又は遠心分離にかけることで、あるいはこれらを組み合わせることで、浮遊している歯根膜細胞から組織を分離することが可能である。例えば、歯根膜組織混合物を繰り返し徐々に小さな孔径のメッシュに通すことで、最後には、ほぼ全ての組織を除去し、歯根膜細胞懸濁液(例えば、単細胞懸濁液)を取得することができる。
歯根膜細胞懸濁液は、歯根膜由来幹細胞以外に、一つ又は複数のその他の歯根膜由来細胞種、例えば、上皮細胞、線維芽細胞、骨芽細胞、破骨細胞、セメント芽細胞を含んでいてもよい。歯根膜由来幹細胞以外の歯根膜由来細胞は、1回又は複数回の洗浄、遠心分離、密度勾配遠心分離、溶出、ポジティブセレクション及びネガティブセレクションなど、すでに確立している方法を用いて分離することができる。
得られた歯根膜由来幹細胞を培養容器に播種して培養し、60〜80%コンフルエントになったら、PBSで洗浄し、培地交換を行いながら、37℃、5%CO2、飽和水蒸気条件下で24〜72時間インキュベートする。培地としては無血清培地を用いることが好ましい。無血清培地を用いることにより、血清中に含まれる定義不可能な因子の影響を除外でき、プリオンなどの混入やアレルギーの発生、未知の感染症などの危険性を極力排除し、安全性のより高い材料を提供できるという利点がある。
無血清培地としては、例えば、199培地、BME培地(BME−Earle、BME−Hanks)、Ames’培地、Ham’s F10培地、Ham’s F12培地、HAT培地、L−15培地、McCoy5a培地、RPMI1629倍地、RPMI1640培地、α−MEM培地、MEM培地(MEM−Earle、MEM−Hanks)、D−MEM培地(低グルコース(1.0g/Lグルコース)、高グルコース(4.5g/Lグルコース))やCD培地(Chemically−Defind)が挙げられる。
培養上清は、当技術分野で公知の方法で調製できる。例えば、得られた培養液を遠心処理し、適当な孔径のストレイナー(又はフィルター)にかけることで、培養上清を得ることができる。ここで遠心処理は、例えば、100〜300×gで3〜10分間実施する。培養上清の濃縮は、当技術分野で公知の方法で実施できる。例えば、ゲル濾過法、限外濾過法、透析法、凍結乾燥等が挙げられ、これらは単独でも、また適宜組合せて使用することもできる。
ゲル濾過法による場合には、寒天ゲル、デキストランゲル、ポリアクリルアミドゲル等が使用可能である。例えばデキストランゲルを使用する場合、「Sephadex G−25」(ファルマシア社製)などを用いることができる。
限外濾過法による場合には、分画分子量が約3〜100kDa(カットオフ値)の濾過膜を使用する。限外濾過膜非透過画分を培養上清の濃縮物として採取する。透析法による場合には、培養上清中の低分子解離イオンを速やかに透析し得る電気透析法が好適である。非透析液中を培養上清の濃縮物として採取する。
培養上清の濃縮倍率は、移植時の液体状態において、好ましくは1〜100倍、より好ましくは20〜50倍である。濃縮により、治癒促進効果を期待できる。
歯根膜由来幹細胞の培養上清濃縮物には、細胞は含まれていないが、細胞外マトリックス(コラーゲン、プロテオグリカン、フィブロネクチン、ラミニンなど)、IL−6、MCP−1、MIF、SERPIN E1、RANTES、SDF−1等が含まれている。さらに、IGF−1、VEGF、TGF−β1、HGFも含まれていると考えられる。
細胞を含まない培養上清濃縮物を移植することにより、免疫拒絶、GVHDのリスクを低減でき、投与時の操作を簡素化することができる。培養上清濃縮物は、保存が可能であり、凍結しておけば劣化することなく長期間保存することができる。また、細胞移植では自家移植が望ましいため、健常部位から侵襲的な手法で採らなくてはならないのに対し、培養上清濃縮物の移植にはその必要がない。さらに、培養上清濃縮物の移植においては、高容量の投与が可能である。
本発明の歯根膜由来幹細胞の培養上清濃縮物を、歯周組織欠損部に移植することにより、欠損した歯周組織、特に歯根膜、歯槽骨、セメント質を形成及び再生することができる。歯周組織欠損部に移植する培養上清濃縮物の量は、欠損部の大きさに基づき適宜決定される。例えば、ヒト歯周病患者の場合は、通常50〜500μl、好ましくは100〜200μlである。移植する培養上清濃縮物の量は、例えば、歯周病治療で使われるエムドゲインの量に基づいて決定することができる。
本発明の歯周組織形成用材料において培養上清濃縮物は、少なくとも使用時において流動性を有していればよく、使用前においては、粉状ないし固形状であってもよい。使用前において凍結状態又は凍結乾燥状態であってもよく、それにより、長期の保存が可能となり、また、使用前の取り扱いも容易となる。凍結した状態又は凍結乾燥した状態として調製した場合には、使用時に所望の流動性を有する状態にする。凍結状態の場合には、解凍することにより凍結前の状態に戻される。このとき、生理食塩水等を加えて所望の流動性に調整することもできる。他方、凍結乾燥状態の場合には、生理食塩水等の溶媒を加えることにより、凍結乾燥処理前の流動性又は所望の流動性を有する状態にする。
本発明の歯周組織形成用材料は、さらに多孔質担体を含み、培養上清濃縮物が多孔質担体に含浸されていることが好ましい。培養上清濃縮物を多孔質担体に含浸させて移植することにより、有効成分である培養上清濃縮物を、そのまま移植する場合と比較して、より長期にわたり安定的に患部、すなわち歯周組織欠損部に保持させることができる。また、より多くの量の培養上清濃縮物を歯周組織欠損部に保持させることができる。
本発明において用いられる多孔質担体は、培養上清濃縮物を液体状態で吸収することにより保持可能なものであれば特に制限されないが、歯周組織欠損部に移植する観点から、生体親和性であることが好ましい。さらに、生体吸収性であることがさらに好ましい。移植後、再度手術等により多孔質担体を取り除く必要がなく、患者の負担が少ないからである。
また、スポンジのように柔軟な材料が好ましい。スポンジのように柔軟な材料であれば、培養上清濃縮物の吸収能に優れ、また移植後に患者に与える違和感が少ないからである。また、患部(移植部位)の形状に柔軟にあわせることができる点でも好ましい。
多孔質担体として、好ましくは、コラーゲンスポンジを用いることができる。コラーゲンスポンジは、火傷治療、止血剤、あるいは皮膚、軟骨、及び脂肪組織などの再生誘導足場材料として臨床に広く用いられている生体親和性材料である。コラーゲンスポンジは、コラーゲン溶液をホモジナイザーで発泡させた後、真空凍結乾燥を行うことにより容易に製造することができる。また、スポンジ作製時に化学試薬、熱、電子線、γ線などにより架橋処理を行ってもよい。コラーゲンスポンジの製造は、既に公知の方法を用いることができる。コラーゲンの動物種、採取する部位などに特に限定されるものではなく、いずれのコラーゲンでも、その作製方法に関係なく利用可能である。2種類以上のコラーゲンを混合したものでも、この目的に用いることができる。
多孔質担体の材料としては、コラーゲンの他、ゼラチン、アルブミン、フィブリンなどのタンパク質、ヒアルロン酸、キチン、キトサン、アルギン酸カルシウム、カラゲニン、寒天などの多糖類、あるいは、それらの化学誘導体、それらの混合物などを用いることができる。
多孔質担体は、移植すべき歯周組織欠損部の形状及びサイズに合わせて、種々の形状及びサイズに予め成形することが好ましい。例えば、粒状、円・角柱状、シート状、ディスク状、スティック状、ロッド状等の形状で製造することができる。ヒト歯周病患者の場合も、多孔質担体の形状及びサイズは、移植すべき歯周組織欠損部の形状及びサイズに合わせて決定されるが、シート状及びディスク状の形状が好ましく、シート状の場合は一辺が10〜20mmで、他辺が10〜20mmの長方形又は正方形のシートであって、シートの厚みが1〜2mmのものが好ましい。培養上清濃縮物をこのような形状及びサイズの多孔質担体に含浸させて移植することにより、ヒト歯周病患者における歯周組織欠損部にフィットさせることができ、より効果的に歯周組織の形成を促進することができる。
本発明者らは、ヒト歯周病患者の歯周組織欠損部に、培養上清濃縮物を含浸させた多孔質担体を移植した結果、切開部縫合後に体勢の変化や咀嚼などの通常の活動であっても縫合部位から培養上清濃縮物が漏れ出し、歯周組織を効果的に再生できないという問題があることを見出した。そして、多孔質担体の少なくとも一部を被覆する被覆層をさらに設けることにより、体勢の変化や咀嚼などの通常の活動によって縫合部位から培養上清濃縮物が漏れ出すことを抑制できることを見出した。
培養上清濃縮物の漏れ出しを抑制する観点から、被覆層は、培養上清濃縮物を含浸させた多孔質担体を歯周組織欠損部に移植した場合に、多孔質担体の露出する面(移植部位に接触する面の反対側の面)の好ましくは全面を被覆するように形成することが好ましい。被覆層の形成は、移植前に行ってもよく、移植後に行ってもよい。
被覆層を形成する材料は特に限定されないが、患部及び多孔質担体に形状を合わせた後、被覆材として機能させる観点から、粘性及び流動性を有し、一定時間経過後に固化するものが好ましい。
被覆層を形成する材料として、例えば、フィブリン、ポリビニルアルコール(PVA)、コラーゲン、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ヒアルロン酸、紙、ラバー、レジン、ゴアテックスメンブレン、チタンメッシュシートなどが挙げられる。
フィブリンは、フィブリン糊として、フィブリノゲンにトロンビンなどの複数の薬剤を配合して糊状にし、出血箇所の閉鎖、骨折片の固定、末梢神経や微小血管の吻合、腱接着や腱縫合の補強、臓器創傷部の接着などに用いられる。本発明において被覆層を形成する場合、培養上清濃縮物を含浸させた多孔質担体の少なくとも一部、好ましくは移植後の露出面に、フィブリノゲン及びトロンビンを適用することにより、フィブリンの被覆層を形成することができる。フィブリノゲン及びトロンビンは、予め混合してから適用してもよいし、それぞれ適用することにより混合してもよい。
ポリビニルアルコール(PVA)は、細胞非接着性であるためGTR法の遮断膜としての機能を期待でき、さらに、接着力、造膜性及び皮膜強度が高いことからも好ましい。
被覆層は、GTR(組織再生誘導)法における遮断膜と同様の機能を発揮する観点からも好ましい。GTR法とは、GTR用遮断膜を歯根表面に固定し、遮断膜と歯根表面間の空隙内に歯根膜細胞と骨芽細胞のみを再生、増殖させる方法である。歯周組織は、セメント質、歯根膜及び歯槽骨により構成され、咀嚼機能を支持する重要な役割を果たしている。特に、歯根膜は、セメント質と歯槽骨を結合するコラーゲン繊維束(シャーピー繊維)により強大な咬合力に耐え得るため、重要な役割を果たしている。しかし、歯周組織においては、上皮細胞が最も増殖が速いため、歯周病で歯周組織が破壊された場合、代わりに上皮細胞が歯根面を覆ってしまう。GTR法は、遮断膜により、上皮細胞を排除することで、結合組織の再生を促す。即ち、GTR法は、歯根膜の再生を待つ治療法であり、失われた歯周組織に新生セメント質を形成させ、結合組織性の付着を得ることができる。
本発明の歯周組織形成用材料を歯周組織欠損部に移植する場合も、移植後に切開部を縫合すると、歯周組織が再生される前に上皮細胞が歯根面を覆ってしまうおそれがある。しかし、被覆層を設けることにより、これがGTR法における遮断膜と同様の機能を発揮し、上皮細胞を排除することできる。したがって、歯根膜の再生を待って、新生セメント質を形成させ、結合組織の再生を促すことができる。GTR法における遮断膜としての機能を発揮させるためには、被覆層は、好ましくは少なくとも60日間、より好ましくは少なくとも120日間、生体に吸収されることなく移植部位に残留し、上皮細胞を排除できるものであることが好ましい。
本発明はまた、歯周組織形成用キットに関する。本発明のキットは、
歯根膜由来幹細胞の培養上清濃縮物を含浸させるための多孔質担体と、
歯根膜由来幹細胞の培養上清濃縮物を含浸させた多孔質担体を被覆する被覆層を形成するための材料(例えば、フィブリノゲンとトロンビン)と、
を含む。
歯根膜由来幹細胞の培養上清濃縮物を含浸させるための多孔質担体と、
歯根膜由来幹細胞の培養上清濃縮物を含浸させた多孔質担体を被覆する被覆層を形成するための材料(例えば、フィブリノゲンとトロンビン)と、
を含む。
本発明の歯周組織形成用の材料及びキットは、上記の成分の他、安定化剤、保存剤、pH調整剤等を含んでいてもよい。また、成長因子、特に骨誘導因子(BMP)、FGF−2、PDGF−BBを含ませることもできる。
本発明の歯周組織形成用材料及び歯周組織形成用キットは、歯周病の治療を始め、歯科インプラント、嚢胞、抜歯窩、骨延長部、又は顎裂部骨移植部位等に適用することができる。
本発明はまた、歯周組織を形成する方法及び歯周病の治療方法に関する。本発明の方法は、
歯根膜由来幹細胞の培養上清濃縮物を多孔質担体に含浸させる工程と、
歯根膜由来幹細胞の培養上清濃縮物を含浸させた多孔質担体を、患者の歯周組織欠損部に移植する工程と、
移植した多孔質担体の露出面を被覆層で被覆する工程と
を含む。
歯根膜由来幹細胞の培養上清濃縮物を多孔質担体に含浸させる工程と、
歯根膜由来幹細胞の培養上清濃縮物を含浸させた多孔質担体を、患者の歯周組織欠損部に移植する工程と、
移植した多孔質担体の露出面を被覆層で被覆する工程と
を含む。
被覆層としてフィブリン層で被覆する場合は、多孔質担体の露出面にフィブリノゲン及びトロンビンを別々に又は予め混合してから添加することにより、被覆層を形成することができる。
以下に実施例を示して、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲は実施例の範囲に限定されるものではない。
(実施例1)歯根膜由来幹細胞(PDLSC)の調製
10〜30歳代からの健康な患者から、歯列矯正のために抜歯した第一小臼歯又は智歯(第三大臼歯)を得た。抗生物質を添加したα−MEM培地で30秒間の洗浄を5回行った。歯根表面から歯科用スケーラー及びメスを用いて歯根膜を剥離し、細切(細かく破砕)した。3mg/mlコラーゲナーゼ及び4mg/mlディスパーゼを添加したα−MEM培地10ml中で、37℃で30〜60分インキュベートした。続いて、180×gで5分間遠心し、得られたペレットを10%FBS添加α−MEM培地にて洗浄した。さらに300×gで5分間遠心し、得られたペレットを10%FBS添加α−MEM培地で再懸濁し、孔径70μmのセルストレイナーを通して培養ディッシュに播種した。
10〜30歳代からの健康な患者から、歯列矯正のために抜歯した第一小臼歯又は智歯(第三大臼歯)を得た。抗生物質を添加したα−MEM培地で30秒間の洗浄を5回行った。歯根表面から歯科用スケーラー及びメスを用いて歯根膜を剥離し、細切(細かく破砕)した。3mg/mlコラーゲナーゼ及び4mg/mlディスパーゼを添加したα−MEM培地10ml中で、37℃で30〜60分インキュベートした。続いて、180×gで5分間遠心し、得られたペレットを10%FBS添加α−MEM培地にて洗浄した。さらに300×gで5分間遠心し、得られたペレットを10%FBS添加α−MEM培地で再懸濁し、孔径70μmのセルストレイナーを通して培養ディッシュに播種した。
(実施例2)歯根膜由来幹細胞(PDLSC)の培養上清濃縮物の調製
実施例1で得られたPDLSCを10cmディッシュで70%コンフルエントになるまで培養し、PBSで洗浄後、培地を10ml無血清DMEM(低グルコース:L−グルコース1.0g/l)に交換した。48時間インキュベート後、上清を回収し、180×gで5分間遠心した。上清を孔径0.2μmのフィルターでフィルトレーションし、PDLSC培養上清(PDLSC−CM)を得た。Amicon Ultra−15(Millipore)を用い、上記PDLSC−CMを30倍濃縮した。
実施例1で得られたPDLSCを10cmディッシュで70%コンフルエントになるまで培養し、PBSで洗浄後、培地を10ml無血清DMEM(低グルコース:L−グルコース1.0g/l)に交換した。48時間インキュベート後、上清を回収し、180×gで5分間遠心した。上清を孔径0.2μmのフィルターでフィルトレーションし、PDLSC培養上清(PDLSC−CM)を得た。Amicon Ultra−15(Millipore)を用い、上記PDLSC−CMを30倍濃縮した。
(実施例3)ラット歯周組織欠損モデルへの移植
SDラット8週齢♂をイソフルランにより麻酔し、頬部を剃毛した後、ポビドンヨード(イソジン(登録商標))で術野を消毒した。下顎骨下縁の皮膚を横方向に1.5cm切開し、開瞼器で術野を固定し、筋膜を剥離し、咬筋を剖出した。咬筋を切断し、下顎骨を露出させ、歯科用のラウンドバーを用い2×3mmの大きさで、下顎第1臼歯の歯根面が露出するまで下顎骨骨体を切削した。歯根膜、セメント質及び、象牙質の一部を削り取った。CT像(レントゲン写真)と写真を図1に示す。
SDラット8週齢♂をイソフルランにより麻酔し、頬部を剃毛した後、ポビドンヨード(イソジン(登録商標))で術野を消毒した。下顎骨下縁の皮膚を横方向に1.5cm切開し、開瞼器で術野を固定し、筋膜を剥離し、咬筋を剖出した。咬筋を切断し、下顎骨を露出させ、歯科用のラウンドバーを用い2×3mmの大きさで、下顎第1臼歯の歯根面が露出するまで下顎骨骨体を切削した。歯根膜、セメント質及び、象牙質の一部を削り取った。CT像(レントゲン写真)と写真を図1に示す。
欠損部に実施例2で調製した30倍濃縮PDLSC−CMを10μl乗せた。10分程度浸した後アスピレートし、再度10μlの30倍濃縮PDLSC−CMを乗せ、PDLSC−CMが保持されるようアテロコラーゲンスポンジ(高研)を欠損部に充填した(図2)。さらに、欠損部全体が覆われるよう、生体組織接着剤・血漿分画製剤ボルヒール(フィブリノゲン及びトロンビン)を添加することにより、移植部位におけるアテロコラーゲンスポンジの露出面をフィブリンで被覆し(図3)、咬筋、皮膚を縫合した。対照として、濃縮PDLSC−CMの代わりに濃縮無血清DMEM(low glucose)培地10μlを用いたもの、比較例として、濃縮PDLSC−CMの代わりにヒト皮膚由来線維芽細胞から同様に調製した培養上清濃縮物を用いたものについても、同様に、アテロコラーゲンスポンジともにラット歯周組織欠損モデルへ移植しフィブリンで被覆した。
4週間経過後、ラットを屠殺し、下顎骨を切り出してマイクロCTスキャナで手術部位の観察を行った。得られたCT像から、画像解析ソフトを用い、露出している歯根表面の面積を測定した。結果を図4及び5に示す。
図4及び図5の結果から、歯根膜由来幹細胞の培養上清濃縮物を移植した場合は、対照と比較して、露出した歯根表面の面積が少なかった。したがって歯根膜由来幹細胞の培養上清濃縮物が歯周組織欠損部における歯周組織の再生に寄与したことが確認された。
一方、皮膚由来線維芽細胞の培養上清濃縮物を移植した場合は、対照と比較して、露出した歯根表面の面積に差はなく、したがって皮膚由来線維芽細胞の培養上清濃縮物は歯周組織欠損部における歯周組織の再生に寄与しないことが確認された。
Claims (6)
- 歯根膜由来幹細胞の培養上清濃縮物を含む、歯周組織形成用材料。
- さらに多孔質担体を含み、培養上清濃縮物が多孔質担体に含浸されている、請求項1記載の歯周組織形成用材料。
- 多孔質担体の少なくとも一部を被覆する被覆層をさらに含む、請求項2記載の歯周組織形成用材料。
- 被覆層がフィブリンを含む、請求項3記載の歯周組織形成用材料。
- 多孔質担体がコラーゲンスポンジである、請求項2〜4のいずれか1項記載の歯周組織形成用材料。
- 歯周組織形成用キットであって、
歯根膜由来幹細胞の培養上清濃縮物を含浸させるための多孔質担体と、
歯根膜由来幹細胞の培養上清濃縮物を含浸させた多孔質担体を被覆する被覆層を形成するための材料と、
を含む前記キット。
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