[エレベーターの構成]
図1は、本発明の一実施例に係るエレベーターの概略構成図である。なお、図1中に示す点線矢印は、制御信号及び各種検出器の検出信号の流れを示す。
(1)エレベーターの全体構成
エレベーター100は、乗客等を運搬する乗りかご101と、釣合錘102と、ロープ103と、巻上機104と、モータ105(電動機)と、ブレーキ106とを備える。さらに、エレベーター100は、電流検出器107と、速度検出器108(RE:Rotary Encoder)と、駆動装置109とを備える。なお、駆動装置109の内部構成については、後で詳述する。
ロープ103は、巻上機104に巻き付けられ、ロープ103の一方の端部には乗りかご101が連結され、ロープ103の他方の端部には釣合錘102が連結される。また、巻上機104は、モータ105と機械的に連結される。そして、この例のエレベーター100では、巻上機104及びモータ105を回転駆動することにより、乗りかご101及び釣合錘102のそれぞれを対称的に昇降駆動する。なお、この例では、モータ105として、永久磁石型同期電動機を用いる。
ブレーキ106は、駆動装置109内の後述の運転制御回路30に電気的に接続され、運転制御回路30から入力される指令信号に基づいて、モータ105の駆動を制御する。例えば、乗りかご101及び釣合錘102の昇降駆動時には、運転制御回路30からブレーキ106に釈放指令信号が入力される。
電流検出器107は、モータ105とそれに電気的に接続された駆動装置109内の後述のインバータ16との間に流れる電流値を検出する。また、速度検出器108は、モータ105の回転速度を検出する。さらに、図1には示さないが、エレベーター100は、乗りかご101の積載量を検出する荷重検出器も備え、該荷重検出器は乗りかご101に設置される。これらの検出器はいずれも、駆動装置109内の後述の運転制御回路30に電気的に接続され、各検出器の検出結果は、運転制御回路30に出力される。そして、本実施例では、運転制御回路30は、これらの検出器の検出結果に基づいて、乗りかご101の運転速度制御を行う。
(2)駆動装置の構成
駆動装置109は、図1に示すように、商用電源開閉器11と、コンバータ12と、平滑コンデンサ13と、回生電力消費回路14と、電圧検出器15と、インバータ16とを備える。また、駆動装置109は、バッテリ20(非常用電源)と、充電器21と、バッテリ開閉器22と、ダイオード23と、停電検出器24と、非常用コンデンサ開閉器25(継電器)と、非常用コンデンサ26と、運転制御回路30(制御部)とを備える。なお、本実施例では、主に、商用電源開閉器11、バッテリ20、充電器21、バッテリ開閉器22、ダイオード23、非常用コンデンサ開閉器25、及び、非常用コンデンサ26により、エレベーター自動着床装置110が構成される。
商用電源開閉器11は、AC200V三相の商用電源150(買電電源)とコンバータ12との間に設けられる。また、商用電源開閉器11は、運転制御回路30に電気的に接続され、運転制御回路30から入力される制御信号に基づいて、商用電源開閉器11のオン/オフ動作が制御される。具体的には、商用電源150が平常時である場合には、商用電源開閉器11はオン状態となり、商用電源150からコンバータ12に交流電力が供給される。一方、商用電源150の停電時には、商用電源開閉器11はオフ状態となる。
コンバータ12は、商用電源150から商用電源開閉器11を介して供給された交流電力を直流電力に変換(整流)し、該変換した直流電力を平滑コンデンサ13及びインバータ16に出力する。
平滑コンデンサ13は、コンバータ12に並列接続され、モータ105の力行運転時には、コンバータ12から出力された直流電力を充電するとともに、該直流電力(脈流)を平滑する。また、平滑コンデンサ13は、モータ105の回生運転時には、インバータ16から出力された直流電力を充電する。なお、平滑コンデンサ13に直流電力が充電されると、蓄えられる電力量(W=CV2/2:Cは平滑コンデンサ13の静電容量)の増加とともに、平滑コンデンサ13の両端間に発生する直流電圧V(以下、平滑コンデンサ電圧という)も上昇する。
回生電力消費回路14は、トランジスタ等からなる回生開閉器14aと、それに直列接続された回生抵抗器14bとを有する。また、回生電力消費回路14は、平滑コンデンサ13に並列接続される。なお、回生開閉器14aは、運転制御回路30に電気的に接続され、運転制御回路30から入力される制御信号に基づいて、回生開閉器14aのオン/オフ動作が制御される。
回生電力消費回路14は、モータ105の回生運転時に、モータ105からインバータ16を介して戻された直流電力(回生電力)による平滑コンデンサ13への過充電を防止するための回路である。この回生電力消費回路14では、モータ105の回生運転時にモータ105から戻された直流電力が平滑コンデンサ13に充電され、平滑コンデンサ電圧が所定値を超えると、回生開閉器14aがオン状態となり、回生抵抗器14bで回生電力が消費される。これにより、平滑コンデンサ13への過充電(平滑コンデンサ13における過電圧の発生)が防止され、コンバータ12やインバータ16などの装置を保護することができる。
電圧検出器15は、平滑コンデンサ13に並列接続され、平滑コンデンサ電圧を検出する。また、電圧検出器15は、運転制御回路30に電気的に接続され、検出した平滑コンデンサ電圧(検出結果)を運転制御回路30に出力する。運転制御回路30は、電圧検出器15から入力される平滑コンデンサ電圧(検出結果)に基づいて、回生電力消費回路14内の回生開閉器14aをオン/オフ制御する。
インバータ16は、平滑コンデンサ13に並列接続され、モータ105の力行運転時には、平滑コンデンサ13に充電された直流電力を三相交流電力に変換し、該変換した三相交流電力をモータ105に出力する。これにより、モータ105が回転され、巻上機104が駆動される。一方、モータ105の回生運転時(モータ105が発電機として作用する場合)には、インバータ16は、モータ105から供給される回生電力(交流電力)を直流電力に変換し、該変換した直流電力を平滑コンデンサ13に出力する。なお、インバータ16は、運転制御回路30に電気的に接続され、このようなインバータ16の動作は、運転制御回路30から入力される速度指令信号等の制御信号に基づいて制御される。
バッテリ20は、商用電源150が停電した際に利用される直流電源であり、停電時には平滑コンデンサ13に並列接続される。また、充電器21は、商用電源150に電気的に接続され、商用電源150から供給された交流電力を用いて、バッテリ20を充電する。なお、バッテリ20は、平常時には、充電器21により充電されている。
バッテリ開閉器22及びダイオード23は、バッテリ20の正極側端子と平滑コンデンサ13の一方の端子との間に設けられる。そして、バッテリ開閉器22の一方の端子は、バッテリ20の正極側端子に接続され、バッテリ開閉器22の他方の端子はダイオード23のアノードに接続される。また、ダイオード23のカソードは平滑コンデンサ13の一方の端子に接続される。
バッテリ開閉器22は、運転制御回路30に接続され、運転制御回路30から入力される制御信号に基づいて、バッテリ開閉器22のオン/オフ動作が制御される。また、ダイオード23は、回生運転時に平滑コンデンサ13の電圧が高くなり、平滑コンデンサ13が設けられた主回路からバッテリ20に電流が逆流することを防止するためのダイオードである。このダイオード23の機能によりバッテリ20が保護される。
停電検出器24は、商用電源開閉器11の入力端に設けられ、該入力端における交流電力の供給状況をモニタする。また、停電検出器24は、運転制御回路30に電気的に接続され、モニタ結果を運転制御回路30に出力する。運転制御回路30は、このモニタ結果に基づいて、停電が発生したか否かを判別する。
非常用コンデンサ開閉器25及び非常用コンデンサ26の直列回路は、平滑コンデンサ13に並列接続される。そして、該直列回路の非常用コンデンサ開閉器25側の端子は、ダイオード23のカソード及び平滑コンデンサ13の一方の端子に接続される。また、該直列回路の非常用コンデンサ26側の端子は、バッテリ20の負極側端子及び平滑コンデンサ13の他方の端子に接続される。
非常用コンデンサ開閉器25は、運転制御回路30に接続され、主に、自動着床運転時(救出運転時)に、運転制御回路30から入力される制御信号に基づいて、非常用コンデンサ開閉器25のオン/オフ動作が制御される。これにより、非常用コンデンサ26及び平滑コンデンサ13間の接続(並列接続)/切り離しが制御される。
非常用コンデンサ26は、自動着床運転において、乗りかご101を所定の階に着床(停止)させる際に発生するバッテリ20の電圧降下を抑制して、運転制御回路30の誤動作を防止するために設けられたコンデンサである。なお、非常用コンデンサ26の容量は、任意に設定することができる。ただし、後述のように、非常用コンデンサ26で蓄えられた電力を消費する期間(後述の図4A〜4J中の停止期間(t9〜t10))は短期間であるので、非常用コンデンサ26の容量は平滑コンデンサ13の容量より小さい値で設定することができる。例えば、非常用コンデンサ26の容量を平滑コンデンサ13の容量の数分の1程度の容量に設定することができる。
運転制御回路30は、例えばCPU(Central Processing Unit)やメモリ等をLSI(Large-scale Integration)チップに集積した回路(マイコン)で構成され、エレベーター100の運転動作全般を制御する。それゆえ、本実施例では、後述の自動着床運転における各部の動作制御も運転制御回路30により行われる。なお、運転制御回路30は、商用電源150及びバッテリ20に電気的に接続され、平常運転時には、商用電源150を動力源(駆動電源)とし、商用電源150の停電時(自動着床運転時)にはバッテリ20を動力源とする。
[エレベーターの運転動作]
次に、本実施例のエレベーター100の運転動作の概要を説明する。
(1)平常時の運転動作
まず、上記構成のエレベーター100における平常時の運転動作について説明する。平常時には、運転制御回路30は、制御信号を商用電源開閉器11、バッテリ開閉器22及び非常用コンデンサ開閉器25に出力して、商用電源開閉器11をオン状態にし、かつ、バッテリ開閉器22及び非常用コンデンサ開閉器25をオフ状態にする。これにより、商用電源150からコンバータ12に三相交流電力が供給され、コンバータ12は、供給された三相交流電力を直流電力に変換する。そして、コンバータ12で変換された直流電力が、平滑コンデンサ13に充電される。
次いで、エレベーター100に運転指令が発せられた場合には、運転制御回路30は、インバータ16に制御信号を出力して、平滑コンデンサ13に蓄えられた直流電力を可変電圧・可変周波数の三相交流電力に変換するとともに、ブレーキ106を釈放する。この結果、インバータ16で変換された可変電圧・可変周波数の三相交流電力により、乗りかご101及び釣合錘102は、互いに対称方向に昇降駆動される。
なお、この際、運転制御回路30は、速度検出器108で検出されたモータ105の回転数を取得するとともに、電流検出器107により検出されたモータ105への供給電流値を取得する。そして、これらの検出結果に基づいて、運転制御回路30は、ブレーキ106を励磁/釈放させたり、モータ105の回転数及びトルクをV/F制御したりして、乗りかご101の動きを制御する。なお、モータ電圧はモータ回転数、すなわち、乗りかご101の速度に比例し、モータ電流はモータトルクに比例する。
(2)停電時の運転動作
次に、本実施例における自動着床運転時の動作概要を説明する。自動着床運転時には、運転制御回路30は、乗りかご101に設けられた荷重検出器(不図示)の検出結果(検出信号)に基づいて、モータ105を軽負荷方向(回生運転側)に運転し、乗りかご101を昇降させる。具体的には、運転制御回路30は、停電時における乗りかご101の積載量が定格積載量の50%以下である場合には乗りかご101を上昇運転し、積載量が定格積載量の50%以上である場合には乗りかご101を下降運転する。
また、乗りかご101の積載量が定格積載量の50%付近である場合には、乗りかご101及び釣合錘102の走行ロスやモータ損失などにより、バッテリ20の供給電力を用いた自動着床運転(力行運転)が行われる。一方、乗りかご101の積載量が定格積載量の0%又は100%付近である場合には、起動時及び停止時を除いて、モータ105からインバータ16側に電力(回生電力)が戻ってくるので、自動着床運転は回生運転となる。
また、自動着床運転において、乗りかご101の停止時には、後述のように力行運転となり、停止動作に必要な駆動電力が、自動着床運転の起動時における駆動電力より大きくなる場合がある。例えば、乗りかご101の積載量が定格積載量の100%付近である場合には、停止時の慣性モーメントが大きくなり(モータ損失が大きくなり)、停止時に必要な駆動電力も大きくなる。この場合には、停止動作時に、平滑コンデンサ電圧が低下し、バッテリ20の出力電圧が、運転制御回路30を正常動作させるための下限電圧より小さくなり、運転制御回路30が誤動作する可能性がある。なお、この問題点については、後述の比較例でより詳細に説明する。
それゆえ、本実施例では、この問題を解消するために、自動着床運転においてモータ105が回生運転されている期間に、非常用コンデンサ26に回生電力を蓄積する。そして、乗りかご101の停止時に、非常用コンデンサ26に蓄積された電力を平滑コンデンサ13に放電して平滑コンデンサ電圧の低下を抑制し、これにより、運転制御回路30の誤動作を防止する。このようなエレベーター100の自動着床運転動作における各部の動作は、後で図面を参照しながら、詳述する。
なお、本実施例では、自動着床運転中に商用電源150が復旧した場合であっても、運転制御回路30は、自動着床運転が終了するまで、商用電源開閉器11をオフした状態を維持し、電源がバッテリ20から商用電源150に切り替わらないようにする。
また、例えば、停電発生時の乗りかご101の積載量が定格積載量の0%付近である場合には、乗りかご101の停止時に発生する慣性モーメントも小さくなるので、停止動作に必要な駆動電力も大きくならない。それゆえ、この場合には、非常用コンデンサ26に蓄積された電力を用いることなく、従来と同様にして、自動着床運転を行ってもよい。また、例えば、停電発生時の乗りかご101の積載量が定格積載量の0%付近である場合にも、停電発生時の乗りかご101の積載量に関係なく、上述した非常用コンデンサ開閉器25のオン/オフ制御を行って、自動着床運転を行ってもよい。
[比較例]
ここで、従来の一般的なエレベーター(比較例)における自動着床運転時の各部の動作を説明しながら、停止動作時に発生し得る上述した運転制御回路30の誤動作の問題についてより詳細に説明する。
図2は、比較例のエレベーター200の概略構成図である。なお、図2に示す比較例のエレベーター200において、図1に示す本実施例のエレベーター100と同様の構成には、同じ符号を付して示し、同じ構成についての説明は省略する。
図2と、図1との比較から明らかなように、本実施例のエレベーター100の構成は、従来の一般的なエレベーター200において、非常用コンデンサ開閉器25及び非常用コンデンサ26を追加した構成になる。また、比較例のエレベーター200における、それ以外の構成は、本実施例のエレベーター100の対応する構成と同様である。
次に、図面を参照しながら、比較例のエレベーター200における自動着床運転時の各部の動作について説明する。図3A〜3Hは、比較例のエレベーター200の自動着床運転時における各部の動作を示すタイムチャートであり、図3A〜3Hに示す各部の動作は、運転制御回路30により制御される。
なお、図3Aは、乗りかご101の運転速度の時間変化特性を示す図である。図3Bは、ブレーキ106に入力する電流(ブレーキ電流)の時間変化特性を示す図である。図3Cは、モータ105の損失(モータ損失)の時間変化特性を示す図である。図3Dは、モータ105の発電電力(モータ発電電力)の時間変化特性を示す図である。
図3Eは、自動着床運転期間におけるエレベーター200の運転電力(力行/回生電力)の時間変化を示す図であり、図3Cに示すモータ損失の時間変化特性と、図3Dに示すモータ発電電力の時間変化特性とを足し合わせた特性図である。なお、ここでは、図3Eに示すように、モータ105が力行モードで運転されている場合の運転電力(力行電力)を正の値とし、回生モードで運転されている場合の運転電力(回生電力)を負の値とする。
また、図3Fは、平滑コンデンサ電圧の時間変化特性を示す図である。図3Gは、バッテリ20から出力される電流値(バッテリ電流)の時間変化特性を示す図である。そして、図3Hは、バッテリ20から出力される直流電圧値(バッテリ電圧)の時間変化特性を示す図である。
なお、ここでは、停電発生時の乗りかご101の積載量が定格積載量の100%であり、乗りかご101が、1階と2階との間の走行中に停電が発生し、図2に示すように、両階の間に停止した場合を考える。この場合には、運転制御回路30は、自動着床運転により、乗りかご101を停止位置から下降させて、1階に着床(停止)させる。また、この場合、起動時及び停止時を除いて、自動着床運転は回生モードで行われる。
商用電源150の停電が発生すると、運転制御回路30は、ブレーキ電流(図3B参照)をオフし、ブレーキ106をかけて乗りかご101を停止させる。その後、運転制御回路30は、自動着床運転を開始する。
この例では、まず、運転制御回路30は、時刻t0で自動着床運転を開始(起動)し、その後、時刻t1で乗りかご101の運転速度が第1の所定速度V1になるまで、乗りかご101を加速する(図3A参照)。
この加速期間(t0〜t1)では、時刻t0において、運転制御回路30は、商用電源開閉器11をオフ状態にし、かつ、バッテリ開閉器22をオン状態にする。これにより、バッテリ20から平滑コンデンサ13に直流電力が供給される。また、この際、運転制御回路30は、ブレーキ電流をオンし、ブレーキ106を開放する。なお、ブレーキ電流は、その後、自動着床運転が終了するまで(時刻t10まで)、オン状態が維持される(図3B参照)。
なお、時刻t0では、運転制御回路30は、バッテリ20及び平滑コンデンサ13から、インバータ16を介して、モータ105に電流(モータ電流)を流して、モータ105にトルクを与え、運転速度が0に維持されるように制御する。それゆえ、この際、乗りかご101の積載量(この例では100%)と釣合錘102とのアンバランス量を相殺して乗りかご101を停止させるために必要なトルクをモータ105に発生させるようなモータ電流(トルクに比例)がモータ105に流れる。この結果、時刻t0では、モータ105には、[モータ電流の2乗]×[モータ105の巻線抵抗]で算出されるモータ損失が発生する(図3C参照)。なお、自動着床運転中は、モータ105を駆動するので、図3Cに示すように、モータ損失は、この後、自動着床運転が終了するまで(時刻t10まで)、略一定値で発生する。
また、加速期間(t0〜t1)において、乗りかご101の積載量と釣合錘102とのアンバランス・トルクを利用して乗りかご101を下降させ、その後、運転速度が上昇すると、モータ発電電力の絶対値も大きくなる(図3D参照)。そして、モータ損失がモータ発電電力により相殺されると、その後は、モータ105からインバータ16を介して電力が戻り、乗りかご101の運転モードは力行モードから回生モードに切り替わる(図3E参照)。それゆえ、自動着床運転起動時の力行運転の期間は、図3Eに示すように、短期間となる。
上述した加速期間中の力行運転におけるモータ105の駆動に必要となる電力は、平滑コンデンサ13からインバータ16を介してモータ105に供給されるので、平滑コンデンサ電圧は、加速期間において一旦低下する。しかしながら、加速期間中には、バッテリ20から平滑コンデンサ13に電力が供給されるので、平滑コンデンサ電圧は、加速期間内の所定時刻から上昇し始める(図3F参照)。また、加速期間中には、所定のバッテリ電流が流れ(図3G参照)、バッテリ電圧は低下する(図3H参照)。なお、通常、平滑コンデンサ13としては、容量の十分大きいコンデンサを用いるので、加速期間における平滑コンデンサ電圧の低下量も小さく、バッテリ電圧の低下量も小さくなる。
次いで、時刻t1において、乗りかご101の運転速度が第1の所定速度V1に達すると、その後、運転制御回路30は、時刻t5に達するまで、乗りかご101の速度を第1の所定速度V1に維持しながら(図3A参照)、乗りかご101を下降させる。
この定速期間(t1〜t5)、乗りかご101の運転速度は一定であるので、モータ発電電力は一定となり(図3D参照)、発生する回生電力も一定となる(図3E参照)。
また、定速期間中は回生運転となるので、モータ105からインバータ16を介して戻る電力は、平滑コンデンサ13に充電される。それゆえ、定速期間では、時間とともに、平滑コンデンサ電圧は徐々に上昇し(図3F参照)、蓄えられる電力量(W=CV2/2)も増加する。
そして、時刻t2において、平滑コンデンサ電圧が所定の上限電圧値Vonに達すると、運転制御回路30は、回生電力による平滑コンデンサ13の過充電を防止するため、回生開閉器14aをオンし、回生抵抗器14bで回生電力を消費させる。この結果、図3Fに示すように、時刻t2以降、平滑コンデンサ電圧は低下する。
その後、時刻t3において、平滑コンデンサ電圧が所定の下限電圧値Voffまで低下すると、運転制御回路30は、回生開閉器14aをオフする。この結果、回生電力が平滑コンデンサ13に充電され、平滑コンデンサ電圧が上昇する。その後、時刻t4において、平滑コンデンサ電圧が所定の上限電圧値Vonに再度達すると、運転制御回路30は、再度、回生開閉器14aをオンする。この結果、回生抵抗器14bで回生電力が消費され、平滑コンデンサ電圧は再度低下する。
定速期間中の時刻t2以降では、運転制御回路30は、上述した回生電力消費回路14のオン/オフ動作を繰り返す。それゆえ、定速期間において、時刻t2以降は、回生電力消費回路14のオン期間(図3F中のSw_on)とオフ期間(Sw_off)とが繰り返され、平滑コンデンサ電圧は、上限電圧値Von及び下限電圧値Voff間の電圧で略周期的に変化する。
なお、定速期間中では回生運転が行われ、バッテリ20から平滑コンデンサ13に電力が供給されないので、バッテリ電流が流れず(図3G参照)、バッテリ電圧も低下しない(図3H参照)。
次いで、時刻t5において、運転制御回路30は、乗りかご101の減速動作を開始する。その後、運転制御回路30は、乗りかご101の運転速度が第2の所定速度V2になるまで(時刻t7になるまで)、乗りかご101を減速する(図3A参照)。
この減速期間(t5〜t7)では、乗りかご101の運転速度が低下するので、それに伴い、モータ発電電力の絶対値(回生電力)も低下する(図3D参照)。この結果、減速期間内の途中の時刻t6において、モータ発電電力がモータ損失により相殺され、それ以降は、乗りかご101の運転モードは回生モードから力行モードに切り替わる(図3E参照)。それゆえ、時刻t6以降、平滑コンデンサ13からインバータ16を介してモータ105に電力が供給されるので、平滑コンデンサ電圧は急激に降下し始める(図3F参照)。
次いで、時刻t7において、乗りかご101の運転速度が第2の所定速度V2に達すると、その後、運転制御回路30は、時刻t9に達するまでの短期間、乗りかご101の速度を第2の所定速度V2に維持しながら(図3A参照)、乗りかご101を下降させる。なお、この定速期間は、乗りかご101を所定の着床位置に精度良く停止させるために設けられる。
この定速期間(t7〜t9)では、力行運転が行われるので(図3E参照)、この期間も平滑コンデンサ13からインバータ16を介してモータ105に電力が供給される。それゆえ、時刻t7以降も、平滑コンデンサ電圧は降下し続ける(図3F参照)。そして、時刻t8において、平滑コンデンサ電圧がバッテリ電圧と同じ値になると、時刻t8以降は、バッテリ20から平滑コンデンサ13にバッテリ電流が流れ(図3G参照)、バッテリ電圧が低下する(図3H参照)。
そして、時刻t9において、運転制御回路30は、乗りかご101の停止動作を開始する。その後、運転制御回路30は、乗りかご101の運転速度が零になるまで(時刻t10まで)、乗りかご101を減速する(図3A参照)。
この停止動作では、モータ発電電力の絶対値(回生電力)が時間とともにさらに低下する(図3D参照)。さらに、この停止動作では、乗りかご101の慣性モーメントも発生するので、自動着床運転の起動時(時刻t0)より大きなトルクをモータ105に与える必要がある。それゆえ、この停止動作の期間では、モータ損失も増加し(図3C参照)、エレベーター200の運転電力(力行電力)もさらに上昇する(図3E参照)。
それゆえ、停止期間(t9〜t10)では、平滑コンデンサ13からモータ105に供給する電力も増大するので、平滑コンデンサ電圧は、さらに低下する。この結果、この停止期間(時刻t9以降)では、バッテリ20から平滑コンデンサ13に流れるバッテリ電流が増大し(図3G参照)、バッテリ電圧がさらに低下する(図3H参照)。
比較例のエレベーター200では、上述のようにして自動着床運転を行い、乗りかご101が1階に停止すると、自動着床運転が停止される。なお、この自動着床運転後、エレベーター200の運転は、平常時の運転に切り替えられる。
しかしながら、比較例の自動着床運転では、上述のように、停止動作時(t9〜t10)には、力行運転となり、バッテリ20に蓄積された電力を消費する。この力行運転期間は短期間であり、消費電力も小さいが、バッテリ電流が大きくなるので、バッテリ20の内部抵抗によるバッテリ電圧の降下量が大きくなる。特に、乗りかご101の積載量が定格積載量の100%であり、下降運転を行う場合には、停止動作時の慣性モーメントが最大となるので、バッテリ電圧の降下量も最大となる。
そして、自動着床運転時には運転制御回路30の動力源はバッテリ20であるので、停止動作時に、バッテリ電圧が、運転制御回路30を正常動作させるための下限電圧Vthより小さくなると(図3Hの状態になると)、運転制御回路30が誤動作する。
この場合、モータ105は、停止直前でトルクを喪失し、乗りかご101の速度が増加し、乗りかご101が着床階を行き過ぎる。ただし、この際、運転制御回路30は誤動作するものの、停止時(時刻t10)にはブレーキ電流は零になるので(図3B参照)、ブレーキ106が作動してモータ105を拘束する。それゆえ、比較例において、停止動作時に運転制御回路30が誤動作した場合であっても、乗りかご101は、着床階を行き過ぎるが、停止する。しかしながら、この場合、乗りかご101を所定の着床位置(正常位置)に停止させることができないので、乗りかご101の床と、着床階との間に段差(床段差)が発生する。
なお、バッテリ20の内部抵抗はバッテリ容量が大きくなるほど小さくなる関係があるので、上述した比較例の自動着床運転時における問題を解消するための手法としては、大容量のバッテリ20を使用する手法が考えられる。しかしながら、この場合には、バッテリ20のサイズも大きくなるので、その配置スペースも大きくなるという問題が生じる。また、この場合、バッテリ20の価格も高くなると問題が生じる。
それに対して、本実施例のエレベーター100では、平滑コンデンサ13と並列接続可能な非常用コンデンサ26を設け、両者間の接続状態を非常用コンデンサ開閉器25でオン/オフ制御することにより、上記各種問題を解消する。
[本実施例における自動着床運転時の運転制御動作]
次に、図面を参照しながら、本実施例のエレベーター100における自動着床運転時の各部の動作について説明する。図4A〜4Jは、本実施例のエレベーター100の自動着床運転時における各部の動作を示すタイムチャートであり、図4A〜4Jに示す各部の動作は、運転制御回路30により制御される。
なお、図4Aは、乗りかご101の運転速度の時間変化特性を示す図である。図4Bは、ブレーキ106に入力する電流(ブレーキ電流)の時間変化特性を示す図である。図4Cは、モータ105の損失(モータ損失)の時間変化特性を示す図である。図4Dは、モータ105の発電電力(モータ発電電力)の時間変化特性を示す図である。図4Eは、自動着床運転期間におけるエレベーター100の運転電力(力行/回生電力)の時間変化特性を示す図であり、図4Cに示すモータ損失の時間変化特性と、図4Dに示すモータ発電電力の時間変化特性とを足し合わせた特性図である。図4Fは、平滑コンデンサ電圧の時間変化特性を示す図である。図4Gは、バッテリ20から出力されるバッテリ電流の時間変化特性を示す図である。図4Hは、バッテリ電圧の時間変化を示す図である。
また、図4Iは、非常用コンデンサ開閉器25をオン/オフ制御するための制御信号の時間変化特性を示す図である。そして、図4Jは、非常用コンデンサ26の両端間の電圧(以下、非常用コンデンサ電圧という)の時間変化特性を示す図である。
なお、本実施例においても、上記比較例と同様に、停電発生時の乗りかご101の積載量が定格積載量の100%であり、乗りかご101が、1階と2階との間の走行中に停電が発生し、図1に示すように、両階の間に停止した場合を考える。それゆえ、本実施例においても、運転制御回路30は、自動着床運転により、乗りかご101を停止位置から下降させて、1階に着床(停止)させる。また、本実施例では、自動着床運転前に非常用コンデンサ26に予め所定の電力が蓄積されている例を説明する。
また、図4Aと図3Aとの比較から明らかなように、本実施例においても比較例と同様にして、乗りかご101の運転速度を制御し、乗りかご101を着床させる。
すなわち、運転制御回路30は、自動着床運転開始(起動)時の時刻t0から時刻t1までの期間(加速期間)で乗りかご101の運転速度を零から第1の所定速度V1に上昇させる。次いで、運転制御回路30は、時刻t1から時刻t5まで期間(定速期間)、運転速度を第1の所定速度V1で一定にして、乗りかご101を下降運転する。次いで、運転制御回路30は、時刻t5から時刻t7の期間(減速期間)で、乗りかご101の運転速度を第1の所定速度V1から第2の所定速度V2まで減速する。そして、運転制御回路30は、時刻t7から時刻t9までの期間、運転速度を第2の所定速度V2で一定にして、乗りかご101を下降運転した後、時刻t9から時刻t10の期間(停止期間)で運転速度を第2の所定速度V2から零まで減速する。
それゆえ、本実施例における、自動着床運転期間中のブレーキ電流(図4B)、モータ損失(図4C)、モータ発電電力(図4D)及びモータ105の駆動電力(図4E)の各時間変化特性も、上記比較例の対応する特性と同様になる。それゆえ、ここでは、図4A〜4Eの詳細な説明は省略する。
本実施例では、自動着床運転が開始された後、運転制御回路30は、まず、運転速度の加速期間(t0〜t1)において、商用電源開閉器11をオフ状態にし、かつ、バッテリ開閉器22をオン状態にする。また、この際、運転制御回路30は、時刻t0において、非常用コンデンサ開閉器25をオン状態にする(図4I参照)。
これにより、非常用コンデンサ26が平滑コンデンサ13と並列接続された状態になり、バッテリ20から平滑コンデンサ13及び非常用コンデンサ26に電力が供給される。また、本実施例では、非常用コンデンサ開閉器25は、この後、減速動作が開始されるまで(時刻t5まで)、オン状態が維持される(図4I参照)。
なお、本実施例においても、上記比較例と同様に、加速期間(t0〜t1)中には運転速度が時間とともに上昇するので、乗りかご101の運転モードは、加速期間中に力行モードから回生モードに切り替わる(図4E参照)。それゆえ、加速期間には、平滑コンデンサ電圧は、加速動作の開始時から一旦低下するが、所定時刻から上昇し始める(図4F参照)。
また、加速期間(t0〜t1)中には、平滑コンデンサ13と並列接続された非常用コンデンサ26の非常用コンデンサ電圧も平滑コンデンサ電圧と同様に変化する(図4I参照)。さらに、加速期間中には、上記比較例と同様に、バッテリ20から平滑コンデンサ13及び非常用コンデンサ26に電力が供給されるので、所定のバッテリ電流が流れ(図4G参照)、バッテリ電圧は低下する(図4H参照)。なお、通常、平滑コンデンサ13としては、容量の十分大きいコンデンサを用いるので、加速期間中の平滑コンデンサ電圧の低下量も小さく、バッテリ電圧の低下量も小さくなる。
次いで、自動着床運転が定速期間(t1〜t5)の運転になると、モータ105の運転モードは回生モードであるので、平滑コンデンサ電圧(図4F)、バッテリ電流(図4G)及びバッテリ電圧(図4H)は、上記比較例と同様に変化する。例えば、この期間において、平滑コンデンサ電圧は、該平滑コンデンサ電圧が所定の上限電圧値Vonに達する時刻t2まで、上昇し続ける。そして、時刻t2以降では、回生電力消費回路14のオン/オフ制御により、平滑コンデンサ電圧は、上限電圧値Von及び下限電圧値Voff(最小値)間で上昇及び下降を繰り返す(略周期的に変化する)。
また、この定速期間(t1〜t5)において、非常用コンデンサ26は、平滑コンデンサ13と並列接続されているので、非常用コンデンサ電圧も平滑コンデンサ電圧と同様に変化する(図4I参照)。すなわち、定速期間には、非常用コンデンサ26もまた、平滑コンデンサ13と同様に、回生電力により充電され、時刻t2以降、非常用コンデンサ電圧は略周期的に上昇及び下降を繰り返す。なお、定速期間中の運転モードは回生モードであるので、バッテリ電流は流れず(図4G参照)、バッテリ電圧も低下しない(図4H参照)。
次いで、自動着床運転が減速期間(t5〜t7)の運転になると、減速期間内の途中の時刻t6で乗りかご101の運転モードは回生モードから力行モードに切り替わる(図4E参照)ので、時刻t6以降、平滑コンデンサ電圧は急激に降下し始める(図4F参照)。
また、本実施例では、減速動作を開始する時刻t5(第1のタイミング)において、運転制御回路30は、非常用コンデンサ開閉器25をオフ状態にし(図4I参照)、非常用コンデンサ26を平滑コンデンサ13から切り離す。なお、この非常用コンデンサ開閉器25のオフ状態は、図4Iに示すように、停止動作の開始時刻(時刻t9)まで維持される。それゆえ、この動作により、減速開始時(時刻t5)の非常用コンデンサ電圧に対応する十分大きな電力量(W=CV2/2)が、停止動作の開始時刻(時刻t9)まで、非常用コンデンサ26に温存される。
次いで、乗りかご101の運転速度が第2の所定速度V2に減速された後の定速期間(t7〜t9)では、上記比較例と同様に、平滑コンデンサ電圧は下降し続ける。そして、平滑コンデンサ電圧がバッテリ電圧と同じ値になる時刻t8以降では、バッテリ20から平滑コンデンサ13にバッテリ電流が流れ(図4G参照)、バッテリ電圧が低下する(図4H参照)。
そして、時刻t9(第2のタイミング)において、運転制御回路30は、乗りかご101の停止動作を開始するが、本実施例では、この際に、非常用コンデンサ開閉器25をオン状態にする(図4I参照)。これにより、非常用コンデンサ26が平滑コンデンサ13と再度並列接続される。そして、非常用コンデンサ26が放電され、減速動作開始時(時刻t5)に非常用コンデンサ26に温存(蓄積)された電力が平滑コンデンサ13に供給される。
その結果、本実施例では、停止動作開始時(時刻t9)に、平滑コンデンサ電圧が上昇する(図4F参照)。そして、この際、平滑コンデンサ電圧は、バッテリ電圧より高くなるので、バッテリ電流がバッテリ20から平滑コンデンサ13に流れなくなり(図4G参照)、バッテリ電圧が上昇する(図4H参照)。
そして、時刻t9以降では、平滑コンデンサ13からインバータ16を介してモータ105に電力が供給されるので、平滑コンデンサ電圧は、時間とともに低下する(図4F参照)。また、平滑コンデンサ13に並列接続された非常用コンデンサ26の非常用コンデンサ電圧も、平滑コンデンサ電圧と同様に、低下する(図4J参照)。その後、運転制御回路30は、乗りかご101の運転速度が零になるまで(時刻t10まで)、乗りかご101を減速する(図4A参照)。
上述のように、本実施例では、停止期間(t9〜t10)において、平滑コンデンサ13からインバータ16(モータ105)に出力される電力は、非常用コンデンサ26に蓄えられた電力により補充される。それゆえ、この停止期間において、バッテリ電圧は低下せず、運転制御回路30を正常動作させるための下限電圧Vthより高くなる(図4H参照)。
そして、時刻t10において、乗りかご101が停止されると、運転制御回路30は、バッテリ開閉器22及び非常用コンデンサ開閉器25をオフし、商用電源開閉器11をオンする。本実施例では、上述のようにして自動着床運転が行われ、乗りかご101が1階に停止すると、自動着床運転が停止される。なお、この自動着床運転後、エレベーター100の運転は、平常時の運転に切り替えられる。
上述のように、本実施例の自動着床運転の制御手法では、回生運転期間中に、非常用コンデンサ26に電力を蓄積し、乗りかご101の停止動作時には、非常用コンデンサ26に蓄積された電力を用いてモータ105の駆動電力を補充する。これにより、停止動作時におけるバッテリ電圧の低下を抑制することができ、運転制御回路30の誤動作を防止することができる。
また、本実施例では、乗りかご101の停止動作時に、非常用コンデンサ26に蓄積された電力を用いてモータ105の駆動電力を補充するので、バッテリ20の容量は大きくなくてもよい。さらに、非常用コンデンサ26に蓄積された電力を放電する期間(停止期間)も短期間であるので、非常用コンデンサ26の容量も小さくすることができる。
すなわち、本実施例のエレベーター100では、自動着床運転時において運転制御回路30を誤動作させることなく、小容量のバッテリ20を使用することができる。さらに、本実施例では、小容量のバッテリ20を使用することができるので、バッテリ20の配置スペースを小さくすることができ、低価格も実現することができる。
[各種変形例]
本発明に係るエレベーター及びエレベーター自動着床装置は、上記実施例に限定されず、例えば、次のような各種変形例も含まれる。
(1)変形例1
上記実施例では、自動着床運転中に非常用コンデンサ開閉器25をオフするタイミング(第1のタイミング:非常用コンデンサ26の蓄積電力を温存開始するタイミング)を、減速開始時(図4A〜4J中の時刻t5)としたが、本発明はこれに限定されない。
この非常用コンデンサ開閉器25をオフするタイミングは、例えば非常用コンデンサ26の容量等の条件に応じて任意に設定することができる。また、自動着床運転中の停止動作時に、運転制御回路30が誤動作しない程度の十分な電力(電圧)が非常用コンデンサ26に蓄積されているタイミングであれば任意のタイミングで非常用コンデンサ開閉器25をオフすることができる。
例えば、上記実施例では、図4J中に示す非常用コンデンサ電圧の変化特性において、定速期間中(回生運転中)の時刻t2以降では、回生抵抗器14bによる回生電力の消費動作により、非常用コンデンサ電圧が略周期的に変化する。このように非常用コンデンサ電圧が変化する場合には、この変化期間において、運転制御回路30は、上記実施例のように、非常用コンデンサ電圧が最小値より大きな電圧値となるタイミングで非常用コンデンサ開閉器25をオフすることが好ましい。この場合には、非常用コンデンサ26に、より大きな電力量(W=CV2/2)を蓄積することができ、停止動作時の誤動作をより確実に防止することができる。
また、例えば非常用コンデンサ26の容量によっては、非常用コンデンサ電圧が図4J中の時刻t2〜t5の期間における最小値であっても、運転制御回路30が誤動作しない程度の十分な電力が非常用コンデンサ26に蓄積される場合もある。この場合には、定速期間中(回生運転中)の時刻t2〜t5までの非常用コンデンサ電圧が略周期的に変動する期間において、運転制御回路30は、任意のタイミングで非常用コンデンサ開閉器25をオフすることができる。
さらに、例えば非常用コンデンサ26の容量等の条件に関係なく、自動着床運転の減速動作に連動して、減速動作開始から予め決められた所定のタイミングで非常用コンデンサ開閉器25をオフするようにしてもよい。なお、該所定のタイミングが減速動作開始時である場合には上記実施例と同じ動作となる。このような制御手法では、自動着床運転の制御がより簡易になる。
(2)変形例2
上記実施例では、自動着床運転中の停止動作開始時(図4A〜4J中の時刻t9)に非常用コンデンサ開閉器25をオンして非常用コンデンサ26に蓄積された電力を放電する例を説明したが、本発明はこれに限定されない。
非常用コンデンサ26に蓄積された電力を放電するタイミング(第2のタイミング:非常用コンデンサ開閉器25をオンするタイミング)は、例えば非常用コンデンサ26の容量等の条件に応じて任意に設定することができる。また、自動着床運転中の停止動作時に、運転制御回路30が誤動作しない駆動電圧(バッテリ電圧)を運転制御回路30に供給できる条件であれば、非常用コンデンサ26の電力を放電するタイミングを任意に設定することができる。
例えば、上記条件を満たす範囲内であれば、非常用コンデンサ26の電力を放電するタイミングを停止動作開始時の前又は後に設定してもよい。また、例えば、バッテリ開閉器22の入力端の電圧、すなわち、バッテリ電圧を運転制御回路30でモニタし、バッテリ電圧が所定の閾値以下になったタイミングで、運転制御回路30が非常用コンデンサ開閉器25をオンするようにしてもよい。
また、例えば、非常用コンデンサ26の容量等の条件に関係なく、自動着床運転の停止動作に連動して、停止動作開始から予め決められた所定のタイミングで予め非常用コンデンサ26にオンするようにしてもよい。なお、停止動作開始時に非常用コンデンサ開閉器25をオンした場合には上記実施例と同じ動作となる。このような制御手法では、自動着床運転の制御がより簡易になる。
(3)変形例3
上記実施例では、自動着床運転期間(図4A〜4J中の時刻t0〜t10の期間)以外の期間(平常動作期間)では、非常用コンデンサ開閉器25をオフする例を説明したが、本発明はこれに限定されない。
例えば、平常動作期間においても、非常用コンデンサ開閉器25をオンして非常用コンデンサ26に回生電力を充電するようにしてもよい。なお、非常用コンデンサ26の容量値が大きく、その影響により、平常時の動作特性が変化する可能性がある場合には、上記実施例のように、平常動作期間中は非常用コンデンサ開閉器25をオフすることが好ましい。
(4)変形例4
上記実施例では、エレベーター100の動作全般を制御する運転制御回路30により、自動着床運転の制御も行う例を説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、運転制御回路30とは別に、自動着床運転専用の制御回路を新たに設けてもよい。この場合、例えば停電時に運転制御回路30が故障しても、自動着床運転を実施することができる。
以上、本発明の実施例及び各種変形例に係るエレベーター、及び、エレベーター自動着床装置を説明したが、本発明は上記実施例及び各種変形例に限定されるものではない。特許請求の範囲に記載した本発明の要旨を逸脱しない限りその他種々の応用例、変形例を取り得ることは勿論である。例えば、上述した実施例は本発明を分かりやすく説明するために装置及びシステムの構成を詳細且つ具体的に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることは可能であり、更にはある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることも可能である。また、上記の各構成、機能、処理部等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の上方は、メモリや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、又はICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。