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JP2014149105A - 空気調和機 - Google Patents

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JP2014149105A
JP2014149105A JP2013016944A JP2013016944A JP2014149105A JP 2014149105 A JP2014149105 A JP 2014149105A JP 2013016944 A JP2013016944 A JP 2013016944A JP 2013016944 A JP2013016944 A JP 2013016944A JP 2014149105 A JP2014149105 A JP 2014149105A
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Yasutaka Yoshida
康孝 吉田
Kenji Togusa
健治 戸草
Kenji Matsumura
賢治 松村
Hiroki Ota
裕樹 太田
Michiko Endo
道子 遠藤
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Hitachi Appliances Inc
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Hitachi Appliances Inc
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Abstract

【課題】電力消費を抑制しつつ快適性も向上できる空気調和機を得る。
【解決手段】空気調和機は、回転周波数を制御可能な圧縮機、室外熱交換器及び前記室外熱交換器に送風する室外ファンを有する室外機と、室内熱交換器及び前記室内熱交換器に送風する室内ファンを有する室内機とを備え、前記室外機と前記室内機とを配管接続し、封入された冷媒を循環させて冷凍サイクルを構成する。また、予熱運転の要否を判定し、予熱運転を実施する場合にはその予熱運転制御を行なう演算装置を備え、この演算装置は、予熱運転をした場合の消費電力量505及び506と、予熱運転しなかった場合の消費電力量504を予め計算し、その計算結果を基に予熱運転の要否を判定するように構成されている。
【選択図】図3

Description

本発明は、予熱運転を行うことのできる空気調和機に関する。
近年、省エネルギ化の推進が一層要望されており、空気調和機においても省エネルギ化を実現するための様々な工夫が為されている。例えば、新規に建築される商用店舗では、テナントの種別が分らないため、過剰容量の空気調和機が設置されることが多い。そのため、定格運転よりも低い低負荷運転をすることが多くなり、低負荷運転での効率の高い空気調和機が開発されている。
しかし、近年のオフィスでは、部屋の断熱性が高くなっている上に、OA機器のような内部発熱機器が設置されていて内部発熱負荷が高くなっていることも多い。このため、夏場は勿論、春季や秋季においても冷房運転が必要となり、冬場の暖房負荷も小さくなっている。空気調和機は、一般に、冷房負荷を基準にしてその容量が選定されるため、空気調和機の容量は大きくなる。このため、空気調和機に対する暖房負荷は更に小さくなり、暖房運転時の通常消費電力はかなり小さくなる。
ところが、通年24時間使用のオフィス以外では、例えば、平日においては、空気調和機やOA機器は使用し、週末は不使用となる場合が多い。この場合の暖房期間では、週末に室温は低下し、オフィスの壁や床など熱容量が大きいものの温度が低下する。このため、週初めの空気調和機の起動時においては、暖房負荷が非常に大きくなっている。従って、空気調和機起動時の暖房運転の消費電力量は、一日全体に占める割合が非常に大きなものとなる。このような例はオフィス以外の空調場でも多く、特に寒冷地では顕著である。
更に、始業時など、空調が必要な時間と同時に空気調和機を起動する場合には、快適性を確保するため、空気調和機のフル運転が必要である。空気調和機は、一般に、フル運転では効率が良くないため、起動時の消費電力量が大きくなる。
また、始業時の快適性を確保するため、空調が必要な始業時よりも前に、空気調和機の予熱運転を実施し、室温を設定温度まで上げ、始業時点での寒さを軽減することも行われている。しかし、予熱運転は余分な時間に行われるため、予熱運転を行なわない場合よりも更に消費電力量が増大する。そこで、特許文献1(特開平2−251041号公報)や特許文献2(特開昭64−23049号公報)に記載のような解決策がとられている。
特許文献1に記載のものでは、予熱運転でのエネルギ消費を抑制するため、予熱温度を低めに設定しておき、非空調状態から、空調状態へ中間段階を経て到達させるようにしている。
また、特許文献2に記載のものでは、据え付け先の空調場で、運転を実施したデータを元に、最小電力となる前倒し時間を設定、修正し、予熱運転(前倒し運転)を開始する時間を設定するようにしている。
特開平2−251041号公報 特開昭64−23049号公報
上記特許文献1及び2のものでは、予熱運転をすることを前提とし、予熱運転を行う場合のエネルギ消費の抑制を行うようにしてはいるものの、予熱運転を行なうこと自体の是非についての配慮は為されていない。
即ち、予熱運転をすることで快適性は向上できるものの、それによって消費電力も増大する。そして、消費電力が増大する割には快適性はわずかしか上昇しない場合がある。このような予熱運転を行う場合のデメリットに対する配慮が為されていない。
また、予熱運転を行なうことにより、快適性を確保できるだけでなく、空気調和機の起動時における消費電力量自体を低減できる場合もある。しかし、従来の空気調和機においては、予熱運転を実施した際の消費電力量を考慮して予熱運転の要否を判断するという配慮は為されていない。
本発明の目的は、電力消費を抑制しつつ快適性も向上できる空気調和機を得ることにある。
上記目的を達成するために、本発明は、回転周波数を制御可能な圧縮機、室外熱交換器及びこの室外熱交換器に送風する室外ファンを有する室外機と、室内熱交換器及びこの室内熱交換器に送風する室内ファンを有する室内機とを備え、前記室外機と前記室内機とを配管接続し、封入された冷媒を循環させて冷凍サイクルを構成する空気調和機であって、予熱運転の要否を判定し、予熱運転を実施する場合にはその予熱運転制御を行なう演算装置を備え、前記演算装置は、予熱運転をした場合の消費電力量と、予熱運転しなかった場合の消費電力量を予め計算し、その計算結果を基に予熱運転の要否を判定することを特徴とする。
本発明によれば、電力消費を抑制しつつ快適性も向上できる空気調和機を得ることができる効果が得られる。
本発明の空気調和機の実施例1を示す冷凍サイクル系統図。 空気調和機において予熱運転を行なわない通常起動運転をした場合(a)の暖房負荷の変化と、予熱運転をした場合(b)の暖房負荷の変化を示す図。 空気調和機において予熱運転を行なわない通常起動運転をした場合(a)の圧縮機回転数の変化と、予熱運転をした場合(b)の圧縮機回転数の変化を示す図。 本発明の空気調和機が設置される空調場の例を示す模式図。 本発明の空気調和機の実施例1における予熱運転要否を判定するフローチャート。
以下、本発明の空気調和機の具体的実施例を図面に基づいて説明する。
本発明の空気調和機の実施例1を図1〜図5により説明する。
図1は、本発明の空気調和機の実施例1を示す冷凍サイクル系統図である。この図1を用いて本実施例の空気調和機の全体構成を説明する。
本実施例における空気調和機は、複数台の室外機11,1Nと、複数台の室内機211,21Mが、液側接続配管15とガス側接続配管16で接続されて閉回路を構成している。この閉回路の中には冷媒が封入されている。
前記室外機11,1Nにはそれぞれ、インバータにより回転周波数を可変できる圧縮機21,2N、四方弁(可逆弁)61,6N、室外空気と熱交換を行なう室外熱交換器31,3N、該室外熱交換器31,3Nの冷媒流量を調整するために電子膨張弁などで構成された室外膨張弁81,8N、過冷却熱交換器101,10N、受液器71,7N、アキュムレータ51,5Nなどが配管接続されて設けられている。また、冷媒の一部を分岐させて前記過冷却熱交換器101,10Nを通過させた後、前記圧縮機21,2Nの吸込側に戻すためのバイパス回路が設けられており、このバイパス回路には室外パイパス膨張弁91,9Nが設けられている。
41,4Nは前記室外熱交換器31,3Nに送風するための室外ファン、251,25Nは前記圧縮機の周波数を操作するインバータ圧縮機周波数操作器、261,26Nは前記室外ファンの送風能力を操作する室外ファン送風能力操作器、271,27Nは前記室外膨張弁の開度を操作する室外膨張弁開度操作器、281,28Nは室外バイパス膨張弁操作器、291,29Nは四方弁操作器である。
また、321,32Nは圧縮機吸入温度検知器、331,33Nは圧縮機吐出温度検知器、341,34Nは過冷却熱交換器出口温度検知器、351,35Nは室外熱交換器液温度検知器、361,36Nは室外気温を検知する室外気温検知器、371,37Nは前記圧縮機への吸入圧力を検知する圧縮機吸入圧力検知器、381,38Nは前記圧縮機の吐出圧力を検知する圧縮機吐出圧力検知器である。
前記室内機211,21Mは空気調和の対象となる各利用部(各室内)421,42Mにそれぞれ設けられている。また、前記室内機211,21Mにはそれぞれ、室内空気と熱交換を行う室内熱交換器221,22M、該室内熱交換器の冷媒流量を調整するために電子膨張弁などで構成された室内膨張弁241,24Mが順次配管で接続されている。231,23Mは前記室内熱交換器221,22Mに送風するための室内ファン、301,30Mは前記室内ファンの送風能力を操作する室内ファン送風能力操作器、311,31Mは前記室内膨張弁の開度を操作する室内膨張弁開度操作器、391,39Mは室内(利用部)温度を検知する室内機吸込温度検知器、401,40Mは前記室内(利用部)への吹出空気温度を検知する前記室内機吹出温度検知器である。前記各利用部421,42Mには、それぞれの室内の温度設定値を記憶したり或いは好みの室温に設定するための利用部温度設定器(リモコン等)411,41Mが設けられている。
前記各室外機11,1Nの液側配管111,11Nは室外機液側分岐部13で合流されて前記液側接続配管15に接続され、ガス側配管121,12Nは室外機ガス側分岐部14で合流されて前記ガス側接続配管16に接続されている。
一方、前記各室内機211,21Mの液側配管191,19Mは室内機側液側分岐部17で合流されて前記液側接続配管15に接続され、ガス側配管201,20Mは室内機側ガス側分岐部18で合流されて前記ガス側接続配管16に接続されている。
このように前記各室外機11,11Nと前記各室内機211,21Mが配管接続されることにより閉回路が構成され、この閉回路中に封入された冷媒が循環することで冷凍サイクルが為される。
なお、43は空気調和機全体を制御する制御演算装置(演算装置)で、この制御演算装置43は、除霜運転の制御や除霜開始判定なども実施し、更に暖房運転開始時における予熱運転の要否を判定し、予熱運転を実施する場合にはその制御も行なうように構成されているものである。本実施例では、一つの制御演算装置で、これらの判定や予熱運転制御を行うようにしているが、複数の演算装置により、前記判定や予熱運転制御を行うようにしても良い。
また、図1に示した本実施例の空気調和機では、2台の室外機と2台の室内機を接続して構成されているが、これらの接続台数はそれぞれ2台に限られるものではなく、それぞれ1台でも、3台以上でも良い。更に、前記室外機に設けられているアキュムレータ51,5N、受液器71,7N及び過冷却熱交換器101,10Nなどは必ずしも必要なものではなく、これらの機器を備えていないものでも本実施例は同様に実施できる。また、本実施例では、前記圧縮機21,2Nとして回転周波数を制御可能なインバータ圧縮機を採用しているが、各室外機に備えられる圧縮機は複数台でも良い。
次に、上記空気調和機において、暖房運転開始時における予熱運転制御について詳細に説明する。前述したように、予熱運転を行なうことにより、快適性を確保できるだけでなく、空気調和機の起動時における消費電力量自体を低減できる場合があることを説明したが、以下、その原理を図2及び図3により説明する。
図2は、空気調和機において予熱運転を行なわない通常起動運転をした場合(a)の暖房負荷の変化と、予熱運転をした場合(b)の暖房負荷の変化を示す図である。また、図3は、空気調和機において予熱運転を行なわない通常起動運転をした場合(a)の圧縮機回転数の変化と、予熱運転をした場合(b)の圧縮機回転数の変化を示す図である。
図2において、(a)(b)の各図における横軸は時刻を示し、縦軸は暖房負荷を示している。そして、(a)図は予熱運転をしない通常起動運転における時刻の経過に対する暖房負荷の変化を示し、(b)図は予熱運転をする場合の時刻の経過に対する暖房負荷の変化を示している。なお、図2における縦軸の暖房負荷は消費電力と考えることもでき、時々刻々連続的に変わるものであるが、分かり易くするため、図2では、一定時間毎のステップで暖房負荷(消費電力)の変化を表現している。
同様に、図3においても、(a)(b)の各図における横軸は時刻を示し、縦軸は圧縮機回転数と室内温度を示している。そして、(a)図は予熱運転をしない通常起動運転における時刻の経過に対する圧縮機回転数と室内温度の変化を示し、(b)図は予熱運転をする場合の時刻の経過に対する圧縮機回転数と室内温度の変化を示している。なお、図3における縦軸の圧縮機回転数は概ね消費電力と考えることもでき、時々刻々連続的に変わるものであるが、分かり易くするため、図3でも、一定時間毎のステップで圧縮機回転数(消費電力)の変化を表現している。
上記図2(a)に示すように、予熱運転をしない通常起動運転では、ステップ2である始業時から暖房運転を開始するが、空気調和機の起動運転時の暖房負荷501は、前述した通り、オフィス(室内)の空気温度を上昇させるだけでなく、オフィス(部屋)の壁や床などの温度も上昇させる必要があるので、非常に大きくなる。これは、一般的に蓄熱負荷と呼ばれている。但し、一旦、壁や床の温度が上昇した後は、蓄熱負荷がなくなり、暖房負荷は、貫流熱負荷がほぼ大勢を占めるので、凡そ室外気温により決まると考えて良い。これは図2(b)に示す予熱運転をする場合における暖房負荷502も同じである。
従って、上記図2に示すステップ3以降の暖房負荷503は、図2(a)に示す通常起動運転する場合も、図2(b)に示す予熱運転する場合も同じになる。
次に、図2(b)に示す予熱運転をする場合について説明する。予熱運転する場合でも、ステップ1(予熱運転時)の暖房負荷は、通常起動運転する場合のステップ2と同様に大きくなる。先ず、ステップ1で予熱運転を開始するが、この時はまだ始業前であるため、快適性を考えて圧縮機を、フル運転する必要はない。即ち、図3(a)のAに示すように、始業時から圧縮機をフル運転(最大回転数で運転)する必要はない。
従って、図3(b)に示すように、ステップ1で予熱運転する場合には、「遅くとも始業時に室内温度が設定温度Tになっていれば良い」ということを条件にして、最も効率の良い運転、即ちBに示す高効率運転をすれば良い。また、図3(b)のステップ2では、Cに示すように、負荷と釣合う能力での運転となる。
空気調和機は、最高効率運転時と、フル運転時とでは、それらの効率が2倍近く異なるので、できるだけ効率の良い運転ポイントを活用して、ステップ1の予熱運転を実施すれば、消費電力量を低減することが可能となる。従って、図3(a)に示す通常起動運転する場合のステップ2における消費電力量504より、(b)に示す予熱運転する場合のステップ1における消費電力量505に、同ステップ2の消費電力量506を加えた消費電力量の方が小さくなる場合がある。このような場合には、予熱運転をする方が、快適性も良く、且つ省エネルギにもなる。これが、予熱運転実施による消費電力量低減の原理である。
図4は本発明の空気調和機が設置される空調場の例を示す模式図である。
この図4は、オフィスなどの空調場と、その周りから受ける熱負荷を表しており、空気調和機の能力は(Q(t))、室温は(T(t))、室外気温は(T(t))で表している。この空調場に関して、数学的なモデルを考える。本来は、空調場は、空間的な広がりを持った分布定数系としてモデリングするべきであるが、ここでは、本発明における本質的な原理に影響を及ぼさないこと、また計算が簡単になる利点があるので、集中定数系で説明する。また、前述したように、蓄熱負荷があるので、室温と壁の温度を独立に別々にモデリングしても良いが、方程式が一つ増えるだけで原理的には変わらないため、室温と壁の温度を一つのモデルとして取り扱う。
今、時刻をt、室温をT(t)、室外気温をT(t)、オフィスの室温の動きに影響を及ぼす空気と壁や床の合計熱容量をC、放熱量の係数をq、外気導入量の係数を q、空気調和機の暖房能力をQ(t)とすれば、これらの関係は数1の方程式で表すことができる。
Figure 2014149105
また、放熱量の係数qや外気導入量の係数qは一つに纏められるので、それをKと表記する。即ち、数2とする。
Figure 2014149105
この数2から上記数1は次の数3ように表せる。
Figure 2014149105
ここで、この空調場のパラメータである合計熱容量Cや外気導入量の係数q、放熱量の係数qがどの位の値を持つか、前もって知っておく必要がある。しかし、オフィスの材質や換気量などから見積もらなくても、例えば特開平9−21574号公報に開示されているシステム同定法などを用いて、空気調和機を運転しながら前記各係数などを推定することができる。
次に、この空気調和機の圧縮機回転数をr(t)、消費電力をW(t)としたとき、空気調和機の能力Q(t)及び前記消費電力W(t)は次の数4で示す特性を持っているものとする。
Figure 2014149105
ここで、q,qは、空気調和機の能力と圧縮機回転数の関係が一次関数で表現される場合の傾きと切片、w,wは空気調和機の消費電力と圧縮機回転数の関係が一次関数で表現される場合の傾きと切片である。q,q,w,wは室内外温度によっても値が異なるので、実際には室温Tと外気温度Tの関数となるが、ここでは表記上省略する。また、正確には、空気調和機自体の動特性があるため、空気調和機の能力と圧縮機回転数の関係、及び空気調和機の消費電力と圧縮機回転数の関係は微分方程式により表されるが、ここでは簡便性のため、数4のように代数式で表記する。
次に、予熱運転をする際、空気調和機をどのような運転すれば良いか、つまりどのような圧縮機回転数で運転すれば良いかについて説明する。予熱運転をしない通常起動運転では、快適性の面から、圧縮機をフル運転で運転しなければならない。それに対し、予熱運転する場合には、始業時刻までに時間的な裕度があるため、種々の運転方法を採用できる。
このように、予熱運転の制御に関しては種々の設計方法があるが、ここでは最適制御と呼ばれる標準的な予熱運転制御を用いた設計を行う。この最適制御は、制御規範を設定し、その制御規範が最大や最小となる制御量(圧縮機回転数)r(t)を見つける方法である。先ず、制御規範(指標)をJとし、数5のように定義する。
Figure 2014149105
ここで、tfは予熱運転を終了する最終時刻(図3(b)参照)、Tは設定温度である。またl、m、nは正の定数であり、設計者の好みにより、決めることができる。この規範の意味するところを考えると、積分の中は、偏差T−T(の二乗)の値と、消費電力Wを足したものであり、偏差は快適性の指標、消費電力はその名の通り省エネ性の指標である。一般に、偏差を小さくしたいと思えば消費電力が大きくなり、トレードオフの関係になるが、できればどちらも小さくしたい。そこで、二つの和である規範Jを最小化することで、快適性も保ち、省エネ性も確保できる制御を見つけることができる。従って、l、m、nは、重み係数と考えることができる。
また、積分の外は、終端条件、即ち予熱運転の最終時刻tfの時点での偏差T−T(の二乗)であり、数5は終端条件も考慮に入れた制御規範Jとなっている。そして、この制御規範Jを最小にする最適制御を行なえば良い。即ち、前記最終時刻tfでの偏差もできるだけ小さくなっているという要求も考慮に入れた制御を行う。
この制御規範Jを最小にする最適制御の数学解は1960年代に既に求まっており、数6の形で表される。
Figure 2014149105
ここでK、K、K、αはリッカチ方程式の解より求まる定数である。詳細は省略する。
この形で表される最適制御は、状態量フィードバックであるため、この制御を印加された状態量、つまり室温の動きは、机上で計算することができる。上記数6の制御が加えられた場合の状態量T(t)は、前記数3より、次の数7で表せるので、その解は数8のように求めることができる。
Figure 2014149105
Figure 2014149105
ここで、Φ(t,s)は、数1や数3のような微分方程式に対して、時刻がsからtに移る際の、推移マトリクス或いは推移関数と呼ばれるもので、今回の具体的な形は、数9で表される。
Figure 2014149105
前述した数8の中に出てくる数の幾つかは、時間と共に変化する時間の関数ではあるが、T(t)を除けば、全て事前に計算可能な値である。もし、室外気温T(t)が、予熱運転内の短い時間では、大きく変わらない一定の値T(t)=Tである、とした場合、全て既知の値となる。従って、数6で表される最適制御を受けたT(t)の動きは予め計算することができるので、上記の数4と数6により、消費電力W(t)、或いは次の数10により消費電力量Epreを計算できる。
Figure 2014149105
この数10で求められる値Epreが、予熱運転を実施した場合の消費電力量である。
次に、予熱運転をせず、通常運転をした場合の消費電力量を考える。この場合、先に説明した通り、快適性の面から、設定温度になるまではフル運転をしなければならないため、圧縮機回転数は、r(t)=rMAXとなる。その際の室温の挙動Ti_convは、数1及び数4から次の数11で求めることができる。
Figure 2014149105
また、消費電力量Econvも、同様に次の数12で求めることができる。
Figure 2014149105
但し、tはステップ2が終わる時刻である(図3参照)。
上述したように、予熱運転制御を行う場合と、行わない場合の消費電力がそれぞれ求まったので、次に予熱運転を行うかどうかを判定する。もし、予熱運転を行う場合の消費電力量が、行わない場合のそれよりも小さい場合、つまり、次の数13が成り立つ場合、予熱運転を実行すれば良い。
Figure 2014149105
また、予熱運転を行う場合の消費電力量と通常起動運転をする場合の消費電力量の差異ΔEを次の数14で定義しておく。
Figure 2014149105
以上が、予熱運転を行う場合の制御方法と、予熱運転を実施すべきか否かの判定の考え方の骨子である。
しかし、単純に消費電力量だけで予熱運転の要否を決定すると、僅かな消費電力量の差異で、快適性の高い予熱運転を断念する事態が発生する。従って、消費電力量だけでなく、快適性に関する指標も採り入れ、消費電力量だけで判断しかねる場合は、快適性指標も考慮に入れておくと便利である。以下、快適性に関する指標も取り入れた制御について説明する。
先ず、予熱運転制御を実施した場合の始業時刻(実質的には、予熱運転最終時刻tf)の室温Ti_pre(tf)は次の数15により計算できる。
Figure 2014149105
同様に、通常起動運転した場合の始業時刻の室温Ti_conv(tf)は、空気調和機を運転していないので、次の数16で求めることができる。
Figure 2014149105
次に快適性の指標である偏差を計算する。ここで偏差とは、制御規範を真似て、設定温度との差(の二乗)の積分値とし、これが小さい程快適性に富む。予熱運転した場合は、始業時刻から、ステップ2が終了する時刻t(図3(b)参照)までの偏差Jcomf_preは次の数17となる。
Figure 2014149105
これに対し、通常起動運転した場合は、始業時は空気調和機が運転する前の温度であり、快適性の偏差Jcomf_convは数17と同様に、次の数18のように計算することができる。
Figure 2014149105
従って、「どの程度快適性が異なるか」を表す偏差の差異ΔJcomfは、次の数19で表せる。
Figure 2014149105
この差異を後で用いることにより、仮に消費電力量だけで判断ができない場合でも、補助情報として役立てることができる。
数13が成立する場合、即ち予熱運転を実施した場合の消費電力量の方が小さければ予熱運転を開始することに問題はない。しかし、もし通常起動運転の方が消費電力量が小さい場合には以下を考慮する。
先ず、数14で定義される消費電力量の差異ΔEが予め設定した許容量ΔEtolよりも小さい場合、まだ予熱運転を行う余地がある、と判断する。次に、数19で表される快適性の指標の差異ΔJcomfが、予め設定した判定値ΔJtolよりも大きい場合、「もし通常起動運転すると、消費電力量は、許容値よりも小さい差異でしか有利にならず、快適性指標が非常に悪化する」或いは「もし予熱運転を実施すると、消費電力量の増加は許容値内に収まり、快適性指標が大幅に改善する」と判断する。
従って、数13が成立しない場合、即ち予熱運転を実施した場合の消費電力量の方が通常起動運転した場合の消費電力量よりも大きい場合であっても、数14で定義される消費電力量の差異ΔEが予め設定した許容量ΔEtolよりも小さい場合には、数19で表される快適性の指標の差異ΔJcomfを求め、この差異ΔJcomfが予め設定した判定値ΔJtolよりも大きい場合には、予熱運転を実施する。これにより、僅かな消費電力量の差異で、快適性を大幅に改善することができる。
以上説明した判定をすることで、予熱運転をすべきか否かの判定をすることができる。
次に、以上説明した判定の手順を、図5に示すフローチャートにより説明する。
空気調和機が停止して待機している状態から、空気調和機に備えられている時間管理機能により、予熱運転を行うかどうか判断する時刻になった場合(ステップS1)、まず外気温度を計測し(ステップS2)、その値を基に、予め決めてあった重み係数(数5に示すl,m,n)を用いて、上述した最適制御を用いた場合の制御量、及び予熱運転を実施した場合の消費電力量Epreを数10により計算する(ステップS3)。続いて、ステップS4に移り、予熱運転制御を行わず通常起動運転をした場合の消費電力量Econvを数12により計算する。
これらの計算の際、外気温度は、大きく変化しないと仮定し、ステップS2で計測した時の値を用いる。次に、ステップS5では、予熱運転を実施した場合の消費電力量Epreと通常起動運転をした場合の消費電力量Econvを比較する。ここで、予熱運転を実施した場合の消費電力量Epreの方が小さい場合(Yの場合)には、予熱運転した方が、快適性、省エネ性共に良い結果が得られると予測できるので、ステップS6に移り、予熱運転制御を開始する。
前記ステップS5で通常起動運転をしたときの消費電力Econvの方が小さい場合(Nの場合)には、予熱運転をしない方が省エネ性は良いことになる。しかし、消費電力量の差異が予め定めた許容値以内であり、且つ予熱運転をした場合としなかった場合の快適性の差異が大きい場合には、予熱運転をした方が良いと考えられる。そこで、ステップS7に移り、まず上記数14に示した消費電力量の差異ΔEを計算する。次に、ステップS8では、前記計算した消費電力量の差異ΔEが予め定めた許容値ΔEtol以内かどうかを比較する。このステップS8で、消費電力量の差異ΔEが許容値ΔEtolを超える場合(Nの場合)には、予熱運転を諦めて、通常起動運転を実施する(ステップS11)。
また、前記ステップS8で、消費電力量の差異ΔEが許容値ΔEtol以内の場合(Yの場合)には、ステップS9に移って、上述した数19により、快適性の指標の差異ΔJcomfを計算する。そして、この指標の差異Jcomfが、予め定めた判定値ΔJtol以上かどうかを比較し(ステップS10)、判定値以上の場合(Yの場合)には、予熱運転した場合に対して、通常起動運転をした場合の快適性が著しく悪いということなので、ステップS6に移って予熱運転を実行する。
前記ステップS10における判定で、快適性の指標の差異ΔJcomfが判定値以下の場合(Nの場合)には、予熱運転をしても快適性の向上は小さいと考えて、通常起動運転を実施する(ステップS11)。以上で判定を終了する。
以上説明した手順により、予熱運転をすべきか否かの判定をすることで、消費電力を抑制しつつ、快適性を向上できる空気調和機を得ることができる。
なお、上述した実施例では、暖房運転を中心に説明したが、原理的には冷房運転する場合も同様であり、冷房運転では省エネ性から予冷運転制御を必要とされる場合はそれ程多くはないが、上述した数式を使用した計算と、図5に示したものと同様の手順により冷房運転の場合にも同様に実現できる。
以上説明したように、本実施例は、予熱運転の要否を判定すると共に予熱運転を実施する場合にはその予熱運転制御を行なう制御演算装置を備え、前記制御演算装置は、予熱運転をした場合の消費電力量と、予熱運転しなかった場合の消費電力量を予め計算し、その計算結果を基に予熱運転の実施要否を判定ようにしている。従って、予熱運転をすることで、省エネルギになる場合には、予熱運転を実施することで、快適性を確保し且つ省エネルギにもなる運転を実現できる。
また、予熱運転を行うことにより、省エネルギにならない場合であっても、消費電力量の差異が許容値以内で、且つ予め定めた判定値以上に快適性を向上できる場合には、消費電力を抑制しつつ、快適性を確保することができる効果が得られる。
更に、予熱運転を行う場合には、その予熱運転終了時に、丁度、室温が設定温度になるように制御すれば、快適性をより向上することができる。
なお、本発明は上述した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上述した実施例では、一つの前記制御演算装置43により、予熱運転の要否判定と予熱運転制御を行うようにしているが、本発明はこのような形態に限定されるものではなく、予熱運転の要否判定をする演算装置と、予熱運転制御を行う演算装置を別々の演算装置で構成するような形態も本発明に含まれるものである。
また、前記制御演算装置43は、空気調和機の外部に設置されているものには限られず、室外機11,1Nや室内機211,21M、或いはリモコンなどの利用部温度設定器411,41Mなどに設けるようにしても良い。そして、各機能を実現するプログラム、各判定値(閾値)や各測定値、各設定時間等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、または、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。
更に、上述した実施例は本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、実施例の構成の一部について、他の構成の追加、削除、置換をすることが可能である。
11,1N…室外機、21,2N…圧縮機、31,3N…室外熱交換器、
41,4N…室外ファン、51,5N…アキュムレータ、
61,6N…四方弁(可逆弁)、71,7N…受液器、
81,8N…室外膨張弁、91,9N…室外バイパス膨張弁、
101,10N…過冷却熱交換器、111,11N…液側配管、
121,12N…ガス側配管、
13…室外機側液側分岐部、14…室外機側ガス側分岐部、
15…液側接続配管、16…ガス側接続配管、
17…室内機側液側分岐部、18…室内機側ガス側分岐部、
191,19M…室内機側液側配管、201,20M…室内機側ガス側配管、
211,21M…室内機、221,22M…室内熱交換器、
231,23M…室内ファン、241,24M…室内膨張弁、
251,25N…インバータ圧縮機周波数操作器、
261,26N…室外ファン送風能力操作器、
271,27N…室外膨張弁開度操作器、
281,28N…室外バイパス膨張弁開度操作器、
291,29N…四方弁操作器、301,30M…室内ファン送風能力操作器、
311,31M…室内膨張弁開度操作器、
321,32N…圧縮機吸入温度検知器、
331,33N…圧縮機吐出温度検知器、
341,34N…過冷却熱交換器出口温度検知器、
351,35N…室外熱交換器液温度検知器、
361,36N…室外気温検知器、361、36N…圧縮機吸入圧力検知器、
381,38N…圧縮機吐出圧力検知器、
391,39M…室内機吸込温度検知器、
401,40M…室内機吹出温度検知器、
411,41M…利用部温度設定器、421,42M…利用部(室内)、
43…制御演算装置(演算装置)、
501…通常起動運転をする場合の起動運転時の暖房負荷、
502…予熱運転をする場合における暖房負荷、
503…ステップ3以降の暖房負荷、
504…通常起動運転をする場合の起動運転時(ステップ2)の消費電力量、
505…予熱運転をする場合の起動運転時(ステップ1)の消費電力量、
506…予熱運転をする場合のステップ2の消費電力量。

Claims (5)

  1. 回転周波数を制御可能な圧縮機、室外熱交換器及びこの室外熱交換器に送風する室外ファンを有する室外機と、室内熱交換器及びこの室内熱交換器に送風する室内ファンを有する室内機とを備え、前記室外機と前記室内機とを配管接続し、封入された冷媒を循環させて冷凍サイクルを構成する空気調和機であって、
    予熱運転の要否を判定し、予熱運転を実施する場合にはその予熱運転制御を行なう演算装置を備え、
    前記演算装置は、予熱運転をした場合の消費電力量と、予熱運転しなかった場合の消費電力量を予め計算し、その計算結果を基に予熱運転の要否を判定する
    ことを特徴とする空気調和機。
  2. 請求項1に記載の空気調和機であって、
    室外気温を検知する室外気温検知器を備え、
    前記演算装置は、前記室外気温検知器で計測された値に基づいて、予熱運転をした場合の消費電力量と、予熱運転しなかった場合の消費電力量を計算する
    ことを特徴とする空気調和機。
  3. 請求項1または2に記載の空気調和機であって、
    前記演算装置は、予熱運転をした場合の消費電力量が予熱運転をしなかった場合の消費電力量よりも小さいと予測される場合には予熱運転を実施する
    ことを特徴とする空気調和機。
  4. 請求項1または2に記載の空気調和機であって、
    前記演算装置は、予熱運転を行った場合の消費電力量が、予熱運転を行わない場合の消費電力量よりも大きいと予測される場合でも、その消費電力量の差異が予め定めた許容値以下である場合には、更に予熱運転をした場合の快適性と予熱運転しなかった場合の快適性を比較し、その快適性の差異が予め定めた判定値以上の場合に予熱運転を実施する
    ことを特徴とする空気調和機。
  5. 請求項1または2に記載の空気調和機であって、
    前記演算装置は、予熱運転を実施する際、予熱運転の最終時刻の時点での偏差も考慮に入れた制御規範を最小にする最適制御を行う
    ことを特徴とする空気調和機。
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