JP2014009332A - ポリカーボネートの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】特定ジヒドロキシ化合物を含むジヒドロキシ化合物と、炭酸ジエステルと、重合触媒とを連続的に反応器に供給し、重縮合してポリカーボネートを製造する方法であって、前記反応器は少なくとも直列に複数器接続されるものであり、最終重合反応器の反応条件が特定の条件を満たすことを特徴とするポリカーボネートの製造方法にて製造する。
【選択図】なし
Description
従来のポリカーボネートは、石油資源から誘導される原料を用いて製造されるが、近年、石油資源の枯渇が危惧されており、植物などのバイオマス資源から得られる原料を用いたポリカーボネートの提供が求められている。また、二酸化炭素排出量の増加、蓄積による地球温暖化が気候変動などをもたらすことが危惧されていることからも、使用後に廃棄処分をしてもカーボンニュートラルな植物由来モノマーを原料としたポリカーボネートの開発が求められている。
BHEPF)のようなフルオレン構造を側鎖に有するジヒドロキシ化合物から誘導された共重合ポリカーボネートが報告されており、特に脂肪族ジヒドロキシ化合物との共重合ポリカーボネートは複屈折や光弾性係数が小さいなど、優れた光学特性を有することが示されている(特許文献5、6参照)。
この問題を解決するために、連続式の重合プロセスを採用し、さらに重合効率を向上させるために横型反応器を用いて、より少ない熱履歴で重合反応を行い、得られるポリマーの品質を改良する方法が提案されている(特許文献7参照)。
このように、本発明のポリカーボネートの品質や生産性を満足させるためには、非常に狭い条件範囲に反応条件を合わせ込まなければならず、わずかな条件の乱れによっても最適条件範囲を逸脱してしまい、品質や運転状態が大きく乱れやすい。
即ち本発明は以下を要旨とする。
(1)少なくともアルコール性ヒドロキシ基を有するジヒドロキシ化合物を含むジヒドロキシ化合物と、炭酸ジエステルと、重合触媒とを連続的に反応器に供給し、重縮合してポリカーボネートを製造する方法であって、前記反応器は少なくとも直列に複数器接続されるものであり、最終重合反応器の反応条件が下記条件(A)から(E)のすべてを満たすことを特徴とするポリカーボネートの製造方法。
(A)最終重合反応器が内部に複数の水平回転軸を有する横型攪拌反応器である。
(B)最終重合反応器出口におけるポリカーボネートの溶融粘度が1500Pa・s以
上、4500Pa・s以下である。
(C)下記式(1)で表されるSVの値が0.3以上、1.9以下である。
Q:最終重合反応器の反応液処理量
W:最終重合反応器内の反応液量
(D)下記式(2)で表されるLVの値が0.7以上、12以下である。
LV[m/hr]=L[m]/θ[hr] (2)
L:最終重合反応器の入口出口間距離「m」
θ:最終重合反応器の滞留時間
(E)前記Qが55kg/hr以上である。
(2)前記最終重合反応器において、下記式(3)を満たすことを特徴とする(1)に記載のポリカーボネートの製造方法。
ω:攪拌回転数[rpm]
μ:最終重合反応器出口における反応液の溶融粘度[Pa・s]
(3)前記ωが0.5以上、4以下である(1)又は(2)に記載のポリカーボネートの製造方法。
(4)前記最終重合反応器の一つ前の反応器の出口における反応液の溶融粘度が100Pa・s以上、1000Pa・s以下である(1)乃至(3)のいずれか1項に記載のポリカーボネートの製造方法。
(5)前記最終重合反応器の一つ前の反応器の出口において、前記炭酸ジエステルより生成するモノヒドロキシ化合物が反応液中に0.5wt%以上、3wt%以下含有することを特徴とする(1)乃至(4)のいずれか1項に記載のポリカーボネートの製造方法。
(6)前記最終重合反応器と、最終重合反応器の一つ前の反応器の内圧の差が1kPa以上、10kPa以下であること(1)乃至(5)のいずれか1項に記載のポリカーボネートの製造方法。
(7)前記最終重合反応器の内温が260℃以下であることを特徴とする(1)乃至(6)のいずれか1項に記載のポリカーボネートの製造方法。
(8)直列に接続されている反応器の数が4器以下であることを特徴とする(1)乃至(7)のいずれか1項に記載のポリカーボネートの製造方法。
(9)前記アルコール性ヒドロキシ基を有するジヒドロキシ化合物が構造の一部に下記式(4)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物である(1)乃至(8)のいずれか1項に記載のポリカーボネートの製造方法。
を除く。)
(10)前記式(4)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物が、オキシアルキレングリコール類、主鎖に芳香族基に結合したエーテル基を有するジヒドロキシ化合物、環状エーテル構造を有するジヒドロキシ化合物である(1)乃至(9)のいずれか1項に記載のポリカーボネートの製造方法。
(11)前記式(4)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物が、下記構造式(5)で表される化合物である(1)乃至(10)のいずれか1項に記載のポリカーボネートの製造方法。
(13)前記最終重合反応器の一つ前の反応器の出口における反応液中の二重結合末端構造の量をX(mol/ton)、前記最終重合反応器の出口における反応液中の二重結合末端構造の量をY(mol/ton)とした場合に、下記式(7)を満たす(1)乃至(12)のいずれか1項に記載のポリカーボネートの製造方法。
(14)前記最終重合反応器の出口における反応液中の全ヒドロキシ末端基の量が10mol/ton以上50mol/ton以下である(1)乃至(13)のいずれか1項に記載のポリカーボネートの製造方法。
(15)前記重合触媒が、長周期型周期表第2族の金属からなる群及びリチウムより選ばれる少なくとも1種の金属化合物である(1)乃至(14)のいずれか1項に記載のポリカーボネートの製造方法。
(16)反応に用いられる全ジヒドロキシ化合物のうち、フェノール性ヒドロキシ基を有するジヒドロキシ化合物が10mol%以下である(1)乃至(15)のいずれか1項に記載のポリカーボネートの製造方法。
(17)重縮合により得られたポリカーボネートを、固化させることなく溶融状態のままフィルターに供給して濾過する工程を含む(1)乃至(16)のいずれか1項に記載のポリカーボネートの製造方法。
(18)重縮合により得られたポリカーボネート、又は、それを上記フィルターで濾過した樹脂を、ダイスヘッドからストランドの形態で吐出し、冷却後、カッターを用いてペレット化する工程を含む(1)乃至(17)のいずれか1項に記載のポリカーボネートの製造方法。
(19)(18)に記載の方法により製造されたポリカーボネートペレット。
(20)25μm以上の異物が500個/m2以下である(19)に記載のポリカーボネートペレット。
本発明のポリカーボネートの製造方法は、少なくともアルコール性ヒドロキシ基を有するジヒドロキシ化合物を含むジヒドロキシ化合物と、炭酸ジエステルと、重合触媒とを連続的に反応器に供給し、重縮合してポリカーボネートを製造する方法であって、前記反応器は少なくとも直列に複数器接続されるものであり、最終重合反応器の反応条件が下記条件(A)から(E)のすべてを満たすことを特徴とするポリカーボネートの製造方法である。
(A)最終重合反応器が内部に複数の水平回転軸を有する横型攪拌反応器である。
(B)最終重合反応器出口におけるポリカーボネートの溶融粘度が1500Pa・s以
上、4500Pa・s以下である。
(C)下記式(1)で表されるSVの値が0.3以上、1.9以下である。
Q:最終重合反応器の反応液処理量
W:最終重合反応器内の反応液量
(D)下記式(2)で表されるLVの値が0.7以上、12以下である。
LV[m/hr]=L[m]/θ[hr] (2)
L:最終重合反応器の入口出口間距離「m」
θ:最終重合反応器の滞留時間
(E)前記Qが55kg/hr以上である。
なお、以下において、1器目の反応器を第1反応器、2器目の反応器を第2反応器、3器目の反応器を第3反応器、……以降同様に反応器の順番を含めて称する。
本発明の製造方法にかかる製造方法の各工程について説明する。本発明の製造方法は、原料モノマーとして、イソソルビド(ISB)等のアルコール性ヒドロキシ基を有するジヒドロキシ化合物を含むジヒドロキシ化合物と、ジフェニルカーボネート(DPC)等の炭酸ジエステルをそれぞれ溶融状態にて混合して原料混合溶融液を調製し(原料調製工程)、これらの化合物を重合触媒の存在下、溶融状態で複数の反応器を用いて多段階で重縮合反応をさせる(重縮合工程)ことによって行われる。
ポリカーボネートの原料として使用する、アルコール性ヒドロキシ基を有するジヒドロキシ化合物を含むジヒドロキシ化合物、及び炭酸ジエステルは、窒素またはアルゴン等の不活性ガスの雰囲気下、バッチ式、半回分式または連続式の攪拌槽型の装置を用いて、原料混合溶融液として調製するか、又は、反応槽にこれらを独立に投下する。
また、前記原料混合溶融液に酸化防止剤を添加してもよい。通常知られるヒンダードフェノール系酸化防止剤および/またはリン系酸化防止剤を添加することで、原料調製工程での原料の保存安定性を向上するとともに、重合中での着色を抑制することにより、得られる樹脂の色相を改善することができる。
なお、重合触媒の具体例については後記する。この重合触媒の溶解に使用する水の性状は、含有される不純物の種類ならびに濃度が一定であれば特に限定されないが、通常、蒸留水または脱イオン水等が好ましく用いられる。
前記した反応器での反応について説明する。
先ず、上記ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとの混合物を、溶融下に、竪型攪拌反応器に供給して、好ましくは温度130℃〜230℃で重縮合反応を行い、副生するモノヒドロキシ化合物を留出させ、オリゴマーを生成させる。
この反応は、好ましくは1槽以上、より好ましくは2槽〜6槽の多槽方式で連続的に行われ、副生するモノヒドロキシ化合物の理論量の40%から95%を留出させることが好ましい。反応温度は、130℃〜230℃が好ましく、より好ましくは150℃〜220℃であり、圧力は1kPa〜40kPaであることが好ましい。
圧力が高すぎるとモノヒドロキシ化合物が留出しないために反応性が低下し、低すぎると未反応のジヒドロキシ化合物または炭酸ジエステルなどの原料が留出するため、原料モル比がずれて所望の分子量まで到達しないなど、反応の制御が難しくなり、また、原料原単位が悪化してしまうおそれがある。
前段の重縮合工程で得られたオリゴマーを次の反応器に供給して、好ましくは200℃〜260℃の内温で重縮合反応を行い、ポリカーボネートを得る。この反応は好ましくは1器以上、より好ましくは1〜3器の横型攪拌反応器を用いて連続的に行われる。
反応温度は、好ましくは210〜260℃、より好ましくは220〜250℃である。圧力は、0.01kPa〜13.3kPaが好ましく、より好ましくは0.01kPa〜2kPaである。特に最終重合反応器においては、圧力は0.01kPa〜5kPaが好ましく、0.03kPa〜3kPaがさらに好ましく、0.05kPa〜1.5kPaが特に好ましい。平均滞留時間は、0.1〜10時間が好ましく、より好ましくは0.5〜5時間、更に好ましくは0.5〜2時間である。
前記の反応器で発生するフェノール等のモノヒドロキシ化合物は、タンクに収集しておき、資源有効活用の観点から、必要に応じ、精製を行って回収した後、DPCまたはビスフェノールA等の原料として再利用することが好ましい。本発明の製造方法において、副生モノヒドロキシ化合物の精製方法に特に制限はないが、蒸留法を用いることが好ましい。
本発明で使用する反応器は公知のいかなるものでもよく、熱油またはスチームを加熱媒体としたジャケット形式の反応器、または内部にコイル状の伝熱管を有する反応器等が用いられる。例えば、竪型攪拌反応器および横型撹拌反応器が挙げられる。具体例としては、攪拌槽型反応器、薄膜反応器、遠心式薄膜蒸発反応器、表面更新型二軸混練反応器、二軸横型攪拌反応器、濡れ壁式反応器、自由落下させながら重合する多孔板型反応器、およびワイヤーに沿わせて落下させながら重合するワイヤー付き多孔板型反応器等が挙げられる。前段反応工程では竪型攪拌反応器を用いるのが好ましく、後段反応工程では脱揮性能に優れ、高粘度の反応液にも対応できる横型攪拌反応器を用いることが好ましい。
前記のそれぞれの反応器を加熱する加熱媒体の温度の上限は280℃であることが好ましく、より好ましくは275℃、特に好ましくは270℃である。加熱媒体の温度が高すぎると、反応器壁面での熱劣化が促進され、異種構造や分解生成物の増加、または色調の悪化等の不具合を招くことがある。加熱媒体の温度の下限は、上記反応温度が維持可能な温度であれば特に制限されない。
前記の竪型攪拌反応器とは、垂直回転軸と、該垂直回転軸に取り付けられた攪拌翼とを具備した反応器である。攪拌翼の形式としては、例えば、タービン翼、パドル翼、ファウドラー翼、アンカー翼、フルゾーン翼[神鋼パンテック(株)製]、サンメラー翼[三菱重工業(株)製]、マックスブレンド翼[住友重機械工業(株)製]、ヘリカルリボン翼およびねじり格子翼[(株)日立製作所製]等が挙げられる。
攪拌翼の形式としては、例えば、円板型およびパドル型等の一軸タイプの攪拌翼、並びにHVR、SCR、N−SCR[三菱重工業(株)製]、バイボラック[住友重機械工業(株)製]、メガネ翼および格子翼[(株)日立製作所製]等の二軸タイプの攪拌翼が挙
げられる。その他、例えば、車輪型、櫂型、棒型および窓枠型などの攪拌翼が挙げられる。
本発明で製造するポリカーボネートも従来のポリカーボネートと同様に、反応の進行とともに反応液の粘度が上昇してくるため、多槽方式の各反応器においては、重縮合反応の進行とともに副生するモノヒドロキシ化合物(DPCを用いた場合はフェノールとなる。)をより効果的に系外に除去し、また、反応液の流動性を確保するために、上記の反応条件内で、段階的により高温、より高真空に設定することが好ましい。
前記最終重合反応器では、得られるポリカーボネートが十分な機械的特性を有する程度に分子量を向上させる必要があるため、前記最終重合反応器の出口における反応液の溶融粘度は1500Pa・s以上が好ましく、より好ましくは1800Pa・s以上、さらに好ましくは2000Pa・s以上である。
最終重合反応器の出口における反応液の溶融粘度は、最終重合反応器の温度、圧力若しくは滞留時間などの反応条件や触媒量を調節したり、末端基バランスを調節したりすることにより制御することができる。末端基バランスは炭酸ジエステルとジヒドロキシ化合物との仕込みモル比、または前段反応での未反応モノマーの留出量を制御することにより調節される。
本発明では最終重合反応器には横型反応器が用いられるが、横型反応器内のプラグフロー性を安定化させるためには、反応液の流速を所定の範囲に調節することが効果的である。下記式(1)で表されるSVの値が0.3以上、1.9以下であることを特徴としている。
Q:最終重合反応器の反応液処理量
W:最終重合反応器内の反応液量
上記のSVは最終重合反応器における反応液の空間速度を示す数値である。一般的には、カラム内を流れる流体の空間速度はカラム内を流れる流体の流量とカラムの容積から下記式で計算される。
流量[m3/hr]/カラム容積[m3]
カラム体積[m3]=カラム断面積[m2]×長さ[m]=1/4π×(カラム直径[m])2×長さ[m]
本発明のポリカーボネートの重合反応においては、最終重合反応器は反応液で充満されておらず、空隙が存在するため、本明細書のSVは最終重合反応器内部を流れる反応液の平均空間速度を表すものとする。
適切なプラグフロー性を保持するには、SVは0.3以上であり、0.55以上であることが好ましく、さらには0.6以上が好ましく、0.7以上が特に好ましい。また、重合反応を進行させるために必要な反応時間は確保しなければならず、また、高粘度である反応液の流動性の限界もあるため、SVは1.9以下であり、1.8以下が好ましく、特に1.6以下が好ましく、1.5以下であることが最も好ましい。
LV[m/hr]=L[m]/θ[hr] (2)
L:最終重合反応器の入口出口間距離「m」
θ:最終重合反応器の滞留時間
上記のLVは最終重合反応器における反応液の線速度を示す数値である。一般的にはカラム内を流れる流体の線速度はカラム内を流れる流体の流量とカラムの断面積から、下記式で計算される。
流量[m3/hr]/カラム断面積[m2]
前述のSVと同様に、本明細書において、LVは最終重合反応器内部を流れる反応液の平均線速度を表すものとする。上記(2)式は上記のカラム内を流れる流体の線速度の式を以下のように変形して用いた。
流量[m3/hr]/カラム断面積[m2]
→ 最終重合反応器の反応液量[m3]/(最終重合反応器の滞留時間[hr]×最終重合反応液の平均断面積[m2])=最終重合反応器の入口出口間距離[m]/最終重合反応器の滞留時間[hr]
ω:攪拌翼回転数[rpm]
μ:横型反応器出口における反応液の溶融粘度[Pa・s]
前記横型反応器の攪拌回転数を高くしすぎると、反応液が攪拌軸に絡みつきやすくなるため、前記ωは4以下であることが好ましい。さらには3以下であることが好ましく、2以下であることが特に好ましい。一方、回転数が低すぎると、プラグフロー性が低下し、また、攪拌効率が低下することから、反応液中の低分子成分の脱揮効率が低下するため、ωの下限は0.5以上であることが好ましい。
上である。
前記最終重合反応器の一つ前の反応器の出口における反応液中の二重結合末端基の量と、前記最終重合反応器の出口での反応液中の二重結合末端基の量は下記式(7)を満たす範囲であることが好ましい。また、この二重結合末端基の生成量が少ないほど熱履歴が少ないことを示すため、Y−Xの値は、5.8以下が好ましく、5.5以下が特に好ましい。なお、式(3)におけるX、Yの値は、最終重合反応器の一つ前の反応器、最終重合反応器のそれぞれについて、反応温度、反応時間を適宜設定することにより制御することができる。
X:最終重合反応器の一つ前の反応器の出口における反応液中の二重結合末端構造の量[mol/ton]
Y:最終重合反応器出口における反応液中の二重結合末端構造の量[mol/ton]
二重結合末端の具体的な例としては、例えば、ISBからは下記構造式(7)または(7´)の末端基が生成する。また、1,4−シクロヘキサンジメタノール(CHDM)からは下記構造式(8)または(8´)の末端基が生成する。一般構造式で示すと、下記構造式(9)で表されるヒドロキシ基を有するジヒドロキシ化合物からは、下記構造式(10)で表される二重結合末端が生成する。
本発明における二重結合末端構造の量とは、樹脂中に含有される下記構造式(7)、(7´)、(8)(8´)でそれぞれ表される末端構造の合計量を表す。二重結合末端の生成量はポリカーボネートの1H NMR測定によって求められる。
前記炭酸ジエステルとして、ジフェニルカーボネートまたはジトリルカーボネート等の置換ジフェニルカーボネートを用い、本発明のポリカーボネートを製造する場合は、モノヒドロキシ化合物であるフェノールまたは置換フェノールが副生し、ポリカーボネート中に残存することは避けられない。しかし、これらのフェノールまたは置換フェノールといったモノヒドロキシ化合物は成形加工時の臭気の原因となる場合がある。なお、これらモノヒドロキシ化合物は、用いる原料により置換基を有していてもよく、例えば、炭素数が5以下であるアルキル基などを有していてもよい。
前記上限以下とすることにより、後段反応において末端ヒドロキシ末端が消失するのを防ぎ、所望の分子量まで到達させることができる。前記下限以上とすることにより、ヒドロキシ末端が増加するのを防ぎ、得られる樹脂の熱安定性が向上する。
得られるポリカーボネートが有するヒドロキシ末端基の量は少ないほど熱安定性の観点からは好ましいが、ヒドロキシ末端が完全に消失すると、反応が頭打ちとなって所望の分子量に到達しないおそれもあるため、ヒドロキシ末端は10mol/ton以上含むことが好ましい。
このようにして重合速度を制御することで、最終重合反応器の圧力を高真空に近い条件で重合することが可能となる。最終重合反応器出口における反応液中において、反応液中に含まれるモノヒドロキシ化合物は2000ppm以下であることが好ましく、さらに好
ましくは1500ppm以下、特に好ましくは1000ppm以下である。ただし、工業的に完全に除去することは困難であり、モノヒドロキシ化合物の含有量の下限は通常1ppmである。
本発明で重縮合して得られるポリカーボネートは、上述の重縮合反応を行った後、溶融状態のまま、フィルターに通して異物を濾過することが好ましい。特に、樹脂中に含まれる低分子量成分の除去、または熱安定剤等の添加混練を実施するため、重縮合で得られた樹脂を押出機に導入し、次いで押出機から排出された樹脂をフィルターを用いて濾過することが好ましい。
本発明において押出機の形態は限定されるものではないが、通常は一軸または二軸の押出機が用いられる。中でも後述の脱揮性能の向上または添加剤の均一な混練のためには二軸の押出機が好ましい。この場合、軸の回転方向は異方向であっても同方向であってもよいが、混練性能の観点からは同方向が好ましい。押出機の使用によりフィルターへのポリカーボネートの供給を安定させることができる。
本発明においては、重縮合して得られたポリカーボネート中のヤケまたはゲル等の異物を除去するためフィルターで濾過するとよい。中でも、残存モノマーまたは副生フェノール等を減圧脱揮により除去し、熱安定剤または離型剤等の添加剤を混合するために、ポリカーボネートを前記の押出機で押出した後、フィルターで濾過することが好ましい。
本発明において用いるフィルターは、保持部材(リテイナーとも言う)に、濾過部材(以下、メディアと言うことがある)を組み合わせて構成されており、それらフィルターが(場合によっては複数枚・複数個)格納容器に格納されたユニット(フィルターユニットと言うこともある)の形式で用いられる。
前記のフィルターのメディアの材質としては、得られるポリカーボネートの濾過に必要な強度と耐熱性を有している限り制限はないが、中でも鉄の含有量が少ないSUS316またはSUS316L等のステンレス系が好ましい。織りの種類としては、例えば、平織、綾織、平畳織および綾畳織等、異物の捕集部分が規則正しい織り状になっているものの他、不織布タイプも挙げられる。本発明においては、ゲルの捕集能力の高い不織布タイプ、中でも不織布を構成する鋼線どうしを焼結させて固定したタイプが好ましい。
また、目開きが小さくなるとフィルターでの圧力損失が増大して、フィルターの破損を招いたり、剪断発熱によりポリカーボネートが劣化したりする可能性があるため、99%の濾過精度として、1μm以上であることが好ましい。
βχ=(χμmより大きい1次側の粒子数)/(χμmより大きい2次側の粒子数) (12)
(ここで1次側とはフィルターでの濾過前、2次側とは濾過後を示す。)
なお、前記したフィルターのうち、ステンレス等の鉄製分を含むフィルターは、200℃を超える高温での濾過の際に樹脂を劣化させる傾向があるため、使用前に不動態化処理しておくことが好ましい。
この焙焼の温度は350℃〜500℃が好ましく、より好ましくは350℃〜450℃であり、焙焼時間は3時間〜200時間が好ましく、より好ましくは5時間〜100時間である。焙焼の温度が低すぎたり、時間が短すぎたりすると不動態の形成が不充分になり、濾過時にポリカーボネートを劣化させる傾向がある。一方、焙焼の温度が高すぎたり、時間が長すぎたりすると、フィルターメディアの損傷が激しくなり、必要な濾過精度が出なくなる可能性がある。
り好ましくは10重量%〜30重量%、処理時の温度は、5℃〜100℃が好ましく、より好ましくは50℃〜90℃、処理時間は、5分〜120分が好ましく、より好ましくは10分〜60分である。
硝酸の濃度が低すぎたり、処理温度が低すぎたり、処理時間が短すぎたりすると不動態の形成が不充分になり、硝酸の濃度が高すぎたり、処理温度が高すぎたり、処理時間が長すぎたりするとフィルターメディアの損傷が激しくなり、必要な濾過精度が出なくなる可能性がある。
また、前記のフィルターの格納容器は、ポリカーボネートの供給口と排出口が実質的に水平に配置されていても、実質的に垂直に配置されていても、斜めに配置されていてもよいが、フィルター格納容器内でのガスおよびポリカーボネートの滞留を抑制し、ポリカーボネートの劣化を防ぐためには、ポリカーボネートの供給口がフィルター格納容器の下部に設置され、排出口が上部に配置されていることが好ましい。
本発明において、ポリカーボネートが直接外気と触れるストランド化、ペレット化の際には、外気からの異物混入を防止するために、好ましくはJISB 9920(2002年)に定義されるクラス7、更に好ましくはクラス6より清浄度の高いクリーンルーム中で実施することが好ましい。
水冷を使用する際は、イオン交換樹脂等で水中の金属分を取り除き、さらに水用フィルターにて、水中の異物を取り除いた水を使用することが好ましい。用いる水用フィルターの目開きは、99%除去の濾過精度として10〜0.45μmであることが好ましい。
一方、本発明の製造方法においては、異物をより低減させるために、原料モノマーを重縮合前にフィルターで濾過するのも有効である。以下、このフィルターを原料フィルターとする。
尚、その際の前記原料フィルターの形状としては、バスケットタイプ、ディスクタイプ、リーフディスクタイプ、チューブタイプ、フラット型円筒タイプまたはプリーツ型円筒タイプ等のいずれの型式であってもよい。中でもコンパクトで濾過面積が大きく取れるプリーツタイプのものが好ましい。
前記原料フィルターの材質についての制限は特になく、金属製または樹脂製セラミック製等を使用することができるが、耐熱性または着色低減の観点からは、鉄含有量80%以下である金属製フィルターが好ましく、中でもSUS304、SUS316、SUS31
6LまたはSUS310S等のステンレス鋼製が好ましい。
さらに、本発明においては、複数種用いる原料のうち、いずれの原料を濾過してもよいし、全てを濾過してもよく、その方法は、限定されるものではなく、ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルの原料混合物を濾過してもよいし、別々に濾過した後に混合してもよい。また、本発明の製造法においては、重縮合反応の途中の反応液をフィルターで濾過することもできる。
以下、本発明のポリカーボネートに使用可能な原料、触媒について説明する。
(ジヒドロキシ化合物)
本発明のポリカーボネートの製造に用いられるジヒドロキシ化合物は、アルコール性ヒドロキシ基を有するジヒドロキシ化合物を含む。前記アルコール性ヒドロキシ基を有するジヒドロキシ化合物の中でも、構造の一部に下記式(4)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物(以降、特定ジヒドロキシ化合物と称する。)が用いられるのが好ましい。
構造の一部に前記式(4)で表される部位を有する特定ジヒドロキシ化合物としては、具体的には、オキシアルキレングリコール類、芳香族基に結合したエーテル基を主鎖中に有するジヒドロキシ化合物、環状エーテル構造を有するジヒドロキシ化合物等が挙げられる。これらのジヒドロキシ化合物は、重合反応性が良好であり、得られるポリカーボネートの耐熱性や光学特性なども優れている。一方で、従来のポリカーボネートで用いられる芳香族ジヒドロキシ化合物と比較して熱安定性が劣ることから、着色しやすい欠点もあるため、安定的に品質の良好なポリカーボネートが得られる本発明の製造方法が有効に用いられる。
エチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコールまたはポリプロピレングリコール等が挙げられる。
前記の主鎖に芳香族基に結合したエーテル基を有するジヒドロキシ化合物としては、例えば、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−メチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシプロポキシ)−3−メチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−イソプロピルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−イソブチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−tert−ブチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−シクロヘキシルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−フェニルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3,5−ジメチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−tert−ブチル−6−メチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(3−ヒドロキシ−2,2−ジメチルプロポキシ)フェニル]フルオレン、2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル]プロパン、1,3−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ビフェニルおよびビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]スルホン等が挙げられる。
前記の環状エーテル構造を有するジヒドロキシ化合物としては、例えば、下記式(5)で表されるジヒドロキシ化合物、下記式(13)および下記式(14)で表されるスピログリコール等が挙げられる。
からなるものを意味する。
これらの特定ジヒドロキシ化合物の中でも、入手のし易さ、ハンドリング、重合時の反応性および得られるポリカーボネートの色相の観点から、式(5)、(13)または(14)で表されるジヒドロキシ化合物に代表される、環状エーテル構造を有するジヒドロキシ化合物が好ましく、上記式(5)で表されるジヒドロキシ化合物または下記式(13)で表されるスピログリコール等の環状エーテル構造を2つ有するジヒドロキシ化合物がさらに好ましく、上記式(5)で表されるジヒドロキシ化合物等の、糖由来の環状エーテル構造を2つ有するジヒドロキシ化合物である無水糖アルコールが特に好ましい。
本発明のポリカーボネートは、上記の特定ジヒドロキシ化合物以外のジヒドロキシ化合物(以下「その他のジヒドロキシ化合物」と称す場合がある。)に由来する構造単位を含んでいてもよい。前記その他のジヒドロキシ化合物としては、例えば、直鎖脂肪族炭化水素のジヒドロキシ化合物、直鎖分岐脂肪族炭化水素のジヒドロキシ化合物、脂環式炭化水素のジヒドロキシ化合物および芳香族ビスフェノール類等が挙げられる。
前記の脂環式炭化水素のジヒドロキシ化合物としては、例えば、1,2−シクロヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、ペンタシクロペンタデカンジメタノール、2,6−デカリンジメタノール、1,5−デカリンジメタノール、2,3−デカリンジメタノール、2,3−ノルボルナンジメタノール、2,5−ノルボルナンジメタノール、1,3−アダマンタンジメタノール、リモネンなどのテルペン化合物から誘導されるジヒドロキシ化合物等が挙げられる。
鎖脂肪族炭化水素のジヒドロキシ化合物が好ましい。
脂環式炭化水素のジヒドロキシ化合物としては、特に1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノールまたはトリシクロデカンジメタノールが好ましく、より好ましいのは1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノールまたは1,4−シクロヘキサンジメタノールなどのシクロヘキサン構造を有するジヒドロキシ化合物であり、最も好ましいのは1,4−シクロヘキサンジメタノールである。
ただし、前記その他のジヒドロキシ化合物に由来する構造単位の含有割合が多過ぎると、機械的物性の低下または耐熱性の低下を招くことがあるため、全てのジヒドロキシ化合物に由来する構造単位のモル数に対する、前記その他のジヒドロキシ化合物に由来する構造単位の割合は、好ましくは80mol%以下、更に好ましくは70mol%以下、特に好ましくは60mol%以下である。一方、好ましくは10mol%以上、更に好ましくは15mol%以上、特に好ましくは20mol%以上である。
塩基性安定剤としては、例えば、長周期型周期表(Nomenclature of Inorganic Chemistry IUPAC Recommendations2005)における1族または2族の金属の水酸化物、炭酸塩、リン酸塩、亜リン酸塩、次亜リン酸塩、硼酸塩および脂肪酸塩、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルエチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルメチルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、トリブチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリブチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、テトラフェニルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド、メチルトリフェニルアンモニウムヒドロキシドおよびブチルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド等の塩基性アンモニウム化合物、ジエチルアミン、ジブチルアミン、トリエチルアミン、モルホリン、N−メチルモルホリン、ピロリジン、ピペリジン、3−アミノ−1−プロパノール、エチレンジアミン、N−メチルジエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、4−アミノピリジン、2−アミノピリジン、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン、4−ジエチルアミノピリジン、2−ヒドロキシピリジン、2−メトキシピリジン、4−メトキシピリジン、2−ジメチルアミノイミダゾール、2−メトキシイミダゾール、イミダゾール、2−メルカプトイミダゾール、2−メチルイミダゾールおよびアミノキノリン等のアミン系化合物、並びにジ−(tert−ブチル)アミンおよび2,2,6,6−テトラメチルピペリジン等のヒンダードアミン系化合物が挙げられる。安定剤の中でも安定化の効果からはテトラメチルアンモニウムヒドロキシド、イミダゾールまたはヒンダードアミン
系化合物が好ましい。
少なすぎると本発明の特定ジヒドロキシ化合物の変質を防止する効果が得られない可能性があり、多すぎると本発明の特定ジヒドロキシ化合物の変性を招く場合があるので、本発明で用いるそれぞれのジヒドロキシ化合物に対して、0.0001重量%〜1重量%であることが好ましく、より好ましくは0.001重量%〜0.1重量%である。
このため、特定ジヒドロキシ化合物または前記その他のジヒドロキシ化合物のうち塩基性安定剤を有するものについては、ポリカーボネートの製造原料として使用する前に塩基性安定剤をイオン交換樹脂または蒸留等で除去することが好ましい。
また、本発明で用いられる特定ジヒドロキシ化合物は、酸素によって徐々に酸化されやすいので、保管または製造時の取り扱いの際には、酸素による分解を防ぐため、水分が混入しないようにし、また、脱酸素剤を用いたり、窒素雰囲気下にしたりすることが好ましい。
本発明のポリカーボネートは、上述した特定ジヒドロキシ化合物を含むジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとを原料として、エステル交換反応により重縮合させて得ることができる。
用いられる炭酸ジエステルとしては、通常、下記式(15)で表されるものが挙げられる。これらの炭酸ジエステルは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
なお、炭酸ジエステルは、塩化物イオンなどの不純物を含む場合があり、重合反応を阻害したり、得られるポリカーボネートの色相を悪化させたりする場合があるため、必要に応じて、蒸留などにより精製したものを使用することが好ましい。
また、上記の炭酸ジエステルの一部を、その50モル%以下、好ましくは30モル%以下の量のジカルボン酸又はそのエステルで置換しても良い。このようなジカルボン酸又はそのエステルとしては、テレフタル酸、イソフタル酸、コハク酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などのジカルボン酸、およびそれらのメチルエステル体、フェニルエステル体等が用いられる。炭酸ジエステルの一部を、ジカルボン酸又はそのエステルで置換した場合、当該ポリカーボネート樹脂を、ポリエステルカーボネート樹脂と称する場合がある。
本発明のポリカーボネートは、上述のようにアルコール性ヒドロキシ基を有するジヒドロキシ化合物を含むジヒドロキシ化合物と、前記式(15)で表される炭酸ジエステルをエステル交換反応させて製造する。より詳細には、エステル交換させ、副生するモノヒドロキシ化合物等を系外に除去することによって得られる。
用いられる触媒としては、製造されたポリカーボネートの透明性、色相、耐熱性、熱安定性、及び機械的強度を満足させ得るものであれば限定されない。例えば、長周期型周期表における1族または2族(以下、単に「1族」、「2族」と表記する。)の金属化合物、並びに塩基性ホウ素化合物、塩基性リン化合物、塩基性アンモニウム化合物およびアミン系化合物等の塩基性化合物が挙げられる。好ましくは1族金属化合物及び/又は2族金属化合物が使用される。
前記の塩基性リン化合物としては、例えば、トリエチルホスフィン、トリ−n−プロピルホスフィン、トリイソプロピルホスフィン、トリ−n−ブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィンおよび四級ホスホニウム塩等が挙げられる。
中でも長周期型周期表における2族からなる群及びリチウムより選ばれた少なくとも1種の金属を含む化合物を用いる場合、特にはマグネシウム化合物及び/またはカルシウム化合物を用いる場合は、金属量として、前記全ジヒドロキシ化合物1mol当たり、0.1μmol以上が好ましく、より好ましくは0.3μmol以上、特に好ましくは0.5μmol以上とする。また上限としては、20μmol以下が好ましく、より好ましくは10μmol以下であり、さらに好ましくは3μmol以下で、特に好ましくは1.5μmol以下である。
出所にかかわらず、ポリカーボネート中のこれらの金属の化合物の合計量は、金属量として、前記全ジヒドロキシ化合物1mol当たり、2μmol以下が好ましく、より好ましくは1μmol以下、さらに好ましくは0.5μmol以下である。
次に、図1を用いて、本実施の形態が適用される本発明の製造方法の一例を具体的に説明する。以下に説明する製造装置、原料または触媒は本発明の実施態様の一例であり、本発明は以下に説明する例に限定されるものではない。
図1は、本発明の製造方法で用いる製造装置の一例を示す図である。図1に示す製造装置において、本発明のポリカーボネートは、原料の前記ジヒドロキシ化合物及び炭酸ジエステルを調製する原料調製工程と、これらの原料を溶融状態で複数の反応器を用いて重縮合反応させる重縮合工程を経て製造される。重縮合工程で生成した留出液は凝縮器12a、12b、12c、12dにて液化して留出液回収タンク14aに回収される。
なお、以下は原料のジヒドロキシ化合物としてイソソルビド(ISB)と1,4−シクロヘキサンジメタノール(CHDM)を、原料の炭酸ジエステルとしてジフェニルカーボネート(DPC)をそれぞれ用い、また、触媒として酢酸カルシウムを用いた場合を例示して説明する。ISBは前記の特定ジヒドロキシ化合物に該当する。
図1の製造装置の重縮合工程においては、第1竪型攪拌反応器6a、第2竪型攪拌反応器6b、第3竪型攪拌反応器6c、第4横型攪拌反応器6dが直列に設けられる。各反応器では液面レベルを一定に保ち、重縮合反応が行われ、第1竪型攪拌反応器6aの槽底より排出された重合反応液は第2竪型攪拌反応器6bへ、続いて、第3竪型攪拌反応器6cへ、第4横型攪拌反応器6dへと順次連続供給され、重縮合反応が進行する。
第1竪型攪拌反応器6a、第2竪型攪拌反応器6b及び第3竪型攪拌反応器6cには、マックスブレンド翼7a、7b、7cがそれぞれ設けられる。また、第4横型攪拌反応器6dには、2軸メガネ型攪拌翼7dが設けられる。第3竪型攪拌反応槽6cの後には移送する反応液が高粘度になるため、ギアポンプ4bが設けられる。
なお、これらの4器の反応器には、それぞれ、重縮合反応により生成する副生物等を排出するための留出管11a、11b、11c、11dが取り付けられる。第1竪型攪拌反応器6aと第2竪型攪拌反応器6bについては留出液の一部を反応系に戻すために、還流冷却器9a、9bと還流管10a、10bがそれぞれ設けられる。還流比は反応器の圧力
と、還流冷却器の加熱媒体の温度とをそれぞれ適宜調整することにより制御可能である。
尚、本実施の形態においては、各反応器にそれぞれ取り付けられた凝縮器12a、12b、12c、12dから、フェノール(モノヒドロキシ化合物)等の副生物が連続的に液化回収される。また、第3竪型攪拌反応器6cと第4横型竪型攪拌反応器6dにそれぞれ取り付けられた凝縮器12c、12dの下流側にはコールドトラップ(図示せず)が設けられ、副生物が連続的に固化回収される。
二軸押出機15aからギアポンプ4dによりポリマーフィルター15bに樹脂が供給され、異物が濾過される。フィルターを通った樹脂はダイスヘッドからストランド状に抜き出され、ストランド冷却槽16aで水により樹脂を冷却した後、ストランドカッター16bでペレットにされる。ペレットは空送ブロワー16cにより、気力輸送されて、製品ホッパー16dに送られる。計量器16eで所定量の製品が製品袋16fに梱包される。
本実施の形態では、ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとのエステル交換反応に基づく重縮合は、以下の手順に従い開始される。
先ず、図1に示す連続製造装置において、直列に接続された4器の反応器(第1竪型攪拌反応器6a、第2竪型攪拌反応器6b、第3竪型攪拌反応器6c、第4横型攪拌反応器6d)を、予め、所定の内温と圧力とにそれぞれ設定する。ここで、各反応器の内温、加熱媒体の温度と圧力とは、特に限定されないが、以下のように設定することが好ましい。
内温:130℃〜230℃、圧力:10kPa〜40kPa、加熱媒体の温度140℃〜240℃ 、還流比0.01〜10
(第2竪型攪拌反応器6b)
内温:150℃〜230℃、圧力:8kPa〜40kPa、加熱媒体の温度160℃〜240℃、還流比0.01〜5
(第3竪型攪拌反応器6c)
内温:170℃〜230℃、圧力:1kPa〜10kPa、加熱媒体の温度180℃〜240℃
(第4横型攪拌反応器6d)
内温:210℃〜260℃、圧力:0.01kPa〜3kPa、加熱媒体の温度210〜260℃
次に、別途、原料混合槽2aにて窒素ガス雰囲気下、前記ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとを、所定のモル比で混合し、原料混合溶融液を得る。
エステル交換反応が行われる第1竪型攪拌反応器6aでは、重合反応液の液面レベルは、所定の平均滞留時間になるように一定に保たれる。第1竪型攪拌反応器6a内の液面レ
ベルを一定に保つ方法としては、通常、液面計等で液レベルを検知しながら槽底部のポリマー排出ラインに設けたバルブ(図示せず)の開度を制御する方法が挙げられる。
次に、前記前段反応工程で得られたオリゴマーをギアポンプ4bにより移送し、横型攪拌反応器6dに供給して、後述するような後段反応を行なうのに適した温度・圧力条件下で、副生するフェノールおよび一部未反応モノマーを、留出管11dを介して系外に除去してポリカーボネートを生成させる。
水平回転軸が2本以上ある場合、それぞれの水平回転軸に設けられた攪拌翼は、互いに衝突しないように、水平位置をずらして配してある。このような攪拌翼により反応液をかき上げ、または押し広げて反応液の表面更新を行なう。
前記横型攪拌反応器6dとして、2軸メガネ型攪拌翼7dを有する攪拌機の例を図2及び図3に示す。図2は2軸メガネ型攪拌翼7dの斜視図であり、図3はそれを収めた横型攪拌反応器6dを上から見た模式図である。
前記後段反応工程における反応温度は、200〜260℃であることが好ましく、より好ましくは210〜250℃の範囲であり、反応圧力は、0.01kPa〜13.3kPaであることが好ましく、より好ましくは0.03kPa〜3kPa、さらに好ましくは0.05kPa〜2kPaPaである。
本実施の形態では、図1に示す連続製造装置において、4器の反応器の内温と圧力が所定の数値に達した後に、原料混合溶融液と触媒とが予熱器を介して連続供給され、エステル交換反応に基づく溶融重縮合が開始される。
このようにして重縮合して得られる本発明のポリカーボネートの分子量は、還元粘度で表すことができ、0.20dL/g以上であることが好ましく、0.30dL/g以上であることがより好ましく、一方、1.20dL/g以下であることが好ましく、1.00
dL/g以下であることがより好ましく、0.80dL/g以下であることがさらに好ましい。
なお、一般的に「フィルム」とは、長さ及び幅に比べて厚さが極めて小さく、最大厚さが任意に限定されている薄く平らな製品をいい、通常はロールの形で供給されるものであり、一般的に「シート」とは、JISにおける定義上、薄く、その厚さが長さと幅のわりには小さく平らな製品をいう。しかしながら、「シート」と「フィルム」との間の境界は定かではなく、本発明において文言上両者を区別する必要はないので、本明細書において「フィルム」と称する場合であっても、「シート」をも含む概念として用いることとする。
本願発明が効果を奏する理由としては、以下のとおり推察される。すなわち、本願発明のように、アルコール性ヒドロキシ基を有するジヒドロキシ化合物を原料に用いる場合、従来の芳香族ジヒドロキシ化合物とは異なる反応特性や熱安定性を有するため、反応条件の制御範囲が従来とは異なり、また、非常に範囲も狭くなる。その対応策として、横型攪拌反応器を用いる場合、反応液の流速を特定範囲に制御することにより、反応が制御しやすくなるため、最適反応条件において安定して製造を行うことができるようになる。結果として、得られるポリカーボネートの品質や生産性の向上、品質の安定化といった効果が得られることにつながる。
なお、以下の実施例の記載の中で用いた化合物の略号は次の通りである。
・ISB:イソソルビド[ロケットフルーレ社製、商品名:POLYSORB]
・CHDM:1,4−シクロヘキサンジメタノール[新日本理化(株)製、商品名:SKY CHDM]
・BHEPF:9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン[大阪ガスケミカル(株)製]
・DEG:ジエチレングリコール[三菱化学(株)製]
・DPC:ジフェニルカーボネート[三菱化学(株)製]
反応液と留出液、およびポリカーボネートの組成分析と物性の評価は次の方法により行った。
試料約0.5gを精秤し、塩化メチレン5mLに溶解した後、総量が25mLになるようにアセトンを添加した。溶液を0.2μmディスクフィルターでろ過して、液体クロマトグラフィーにてフェノールの定量を行った後、含有量を算出した。用いた装置または条件は、次のとおりである。
・装置:(株)島津製作所製
システムコントローラ:CBM−20A
ポンプ:LC−20AD
カラムオーブン:CTO−10ASvp
検出器:SPD−M20A
分析カラム:Cadenza CD−18 4.6mmΦ×250mm
オーブン温度:40℃
・検出波長:220nm
・溶離液:A液:0.1%リン酸水溶液、B液:アセトニトリル
A/B=40/60(vol%)からA/B=0/100(vol%)まで10分間でグラジエント
・流量:1mL/min
・試料注入量:10μL
ポリカーボネート30mgを秤取し、重クロロホルム約0.7mLに溶解し、これを内径5mmのNMR用チューブに入れ、1H NMRスペクトルを測定した。ポリカーボネ
ートを構成する各ジヒドロキシ化合物に由来するヒドロキシ末端基と二重結合末端基、および各ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位に基づくシグナルの強度比より全ヒドロキシ末端基、および二重結合末端基の量を定量した。用いた装置または条件は、次のとおりである。
・装置:日本電子社製JNM−AL400(共鳴周波数400MHz)
・測定温度:常温
・緩和時間:6秒
・積算回数:512回
解析は以下のとおり行う。次のピークの積分値を算出する。
(a):5.6−4.8ppm:全ISB構造単位由来(プロトン数:3、分子量:17
2.14)
(b):2.2−0.5ppm:全CHDM構造単位由来(プロトン数:10、分子量:170.21)
(c):4.4ppm:ISBのヒドロキシ末端基由来(プロトン数:1、分子量:173.14)
(d):3.6−3.5ppm:ISBのヒドロキシ末端基由来(プロトン数:1、分子量:173.14)とCHDMのヒドロキシ末端基由来(プロトン数:2、分子量:171.21)
(e):3.5−3.4ppm:CHDMのヒドロキシ末端基由来(プロトン数:2、分子量:171.21)とISB二重結合末端基由来(プロトン数:1、分子量:155.13)
(f):2.6ppm:ISBのヒドロキシ末端基由来(プロトン数:1、分子量:173.14)
(g):6.7−6.5ppm:ISB二重結合末端基由来(プロトン数:1、分子量:155.13)
(h)2.3ppm:CHDM二重結合末端基由来(プロトン数:2、分子量:153.20)
・全ISB構造単位:(a)積分値/3=(a´)
・全CHDM構造単位:(b)積分値/10=(b´)
・ISBのヒドロキシ末端基:(c)積分値+(f)積分値=(c´)
・CHDMのヒドロキシ末端基:{(d)積分値−(f)積分値}/2+{(e)積分値−(g)積分値)/2=(d´)
・ISB二重結合末端基:(g)積分値=(e´)
・CHDM二重結合末端基:(h)積分値/2=(f´)
各末端基の量(単位:mol/ton)
・ISBのヒドロキシ末端基量:(c´)/(g´)×1000000
・CHDMのヒドロキシ末端基量:(δ´)/(g´)×1000000
・ISB二重結合末端基量:(e´)/(g´)×1000000
・CHDM二重結合末端基量:(f´)/(g´)×1000000
ただし、(g´)=(a´)×172.14+(b´)×170.21とする。
溶媒として塩化メチレンを用い、0.6g/dLの濃度のポリカーボネート溶液を調製した。森友理化工業社製ウベローデ型粘度管を用いて、温度20.0℃±0.1℃で測定を行い、溶媒の通過時間t0と溶液の通過時間tから次式より相対粘度ηrelを求め、ηrel=t/t0
相対粘度から次式より比粘度ηspを求めた。
ηsp=(η−η0)/η0=ηrel−1
比粘度を濃度C(g/dL)で割って、還元粘度ηsp/Cを求めた。この値が高いほど分子量が大きい。
ポリカーボネートの色相は、ASTM D1925に準拠して、ペレットの反射光におけるYI値(イエローインデックス値)を測定して評価した。装置はコニカミノルタ社製分光測色計CM−5を用い、測定条件は測定径30mm、SCEを選択した。シャーレ測定用校正ガラスCM−A212を測定部にはめ込み、その上からゼロ校正ボックスCM−A124をかぶせてゼロ校正を行い、続いて内蔵の白色校正板を用いて白色校正を行った。
Tダイを具備した20mm径の一軸押出機のバレル設定温度を、ペレットの供給側から210℃、220℃、230℃、230℃、220℃とし、冷却ロールを用いて厚さ35μm±5μmのフィルムを成形し、Optical Control System社製、Film Quality Testing System(型式FSA100)を使用し、1m2当たりの25μm以上の異物数を測定した。24時間運転中に3時間おきにポリカーボネートペレットをサンプリングし、8回測定した平均値を用いた。
80℃で5時間、真空乾燥した試料を用いて、キャピラリーレオメーター[東洋精機(株)製]で測定を行った。反応温度と同じ温度に加熱して、剪断速度9.12〜1824sec−1間で溶融粘度を測定し、91.2sec−1における溶融粘度の値を用いた。第3竪型攪拌反応器出口の試料はダイス径1mmφ×40mmLのオリフィスを使用し、第4横型攪拌反応器出口の試料はダイス径1mmφ×10mmLのオリフィスを使用した。
前述した図1に示すように、竪型攪拌反応器3器及び横型攪拌反応器1器を有する連続製造装置により、以下の条件でポリカーボネートを製造した。原料調製工程にて窒素ガス雰囲気下、ISBとCHDMとDPCとを一定のモル比(ISB/CHDM/DPC=0.500/0.500/1.010)で混合し、120℃に加熱して、原料混合溶融液を得た。
第4横型攪拌反応器6dの攪拌回転数は1.0rpmに設定し、反応液を安定的に抜き出せる範囲で極力液量が少なくなるように調節したところ、滞留時間は90分、SVは0.67、LVは0.80となった。目標還元粘度を0.64から0.67に設定したところ、圧力の調整範囲は0.1kPaから0.3kPaであり、運転状態は安定していた。反応器出口の溶融粘度は3790Pa・sであった。
−32:L/D=32]は3つのベント口を有し、真空ポンプを用いてベント口より脱揮を行った。この時のベント部の圧力は絶対圧力で1kPa以下であった。
押出機16dの樹脂の排出側にギアポンプ4cを配置し、さらにその下流に、格納容器内部に外径112mm、内径38mm、99%の濾過精度として20μmであるリーフディスクフィルター[日本ポール(株)製]を20枚装着したポリマーフィルター15bを配置した。ポリマーフィルターの排出側には、ストランド化するためのダイを装着した。
ポリカーボネートの製造中に、ギアポンプ4bの後に取り付けられたバルブから最終重合反応器の1つ前の反応器の出口に該当する反応液を、ギアポンプ4cの後に取り付けられたバルブから最終重合反応器の出口に該当する反応液を、ストランドカッター16bの後でペレットをそれぞれサンプリングし、前述の分析方法により各種分析を実施した。
上記の反応条件にて、24時間運転を実施したところ、24時間中にストランドの切断は起こらず、ペレット化が停止した回数は0回であった。これらの結果をまとめて表−1に示した。
第4横型攪拌反応器6dの攪拌回転数を3.0rpmとし、実施例1と同じ液量に合わせ、それ以外は実施例1と同様に行った。最終重合反応器出口付近で反応液が攪拌軸に巻きつき、反応液が反応器出口に一定流量で流れこまなくなった。24時間運転を実施したところ、24時間中にストランドが切断して、ペレット化が停止した回数は5回であった。ポリカーボネート中の異物量は650個/m2となり、実施例1よりも悪化した。また、移送される反応液に空気が混入したため、色調も悪化した。
第3縦型攪拌反応器の滞留時間を15分、圧力を7.0kPaとした以外は実施例1と同様に行った。最終重合反応器の一つ前の反応器の反応率を低下させたため、最終重合反応器入口において反応液が激しく発泡した。そのため、最終重合反応器の圧力を1kPa以下まで下げることができず、所定の還元粘度である0.64から0.67まで重合を進行させることができなかった。また、圧力を十分に下げることができなかったため、ポリカーボネート中のモノヒドロキシ化合物の残存量も多くなった。
実施例1よりも大型の反応設備を用いて、同様の条件で行った。第4横型反応器6dにおいて、反応液を安定的に抜き出せる範囲で極力液量が少なくなるように調節したところ、滞留時間は80分、SVは0.75、LVは3.78となった。ペレット化が停止したり、反応液が激しく発泡することもなく、反応液の流動状態は安定しており、非常に良好な品質のポリカーボネートを安定的に製造することができた。
実施例2において、最終重合反応器出口からの反応液の抜き出しが安定化するまで液量を増加させた。滞留時間は120分、SVは0.50、LVは0.60となった状態で反応液の抜き出しが安定化し、24時間中のペレット化の停止回数は0回となった。所定の分子量範囲に収まるように運転条件を調整したところ、最終重合反応器の圧力を0.3kPaから1.2kPaの間で動かす必要があり、実施例1よりも変動が大きくなった。また、滞留時間が増加したために、得られたポリカーボネートの色調も悪化した。
ジヒドロキシ化合物として、ISB、BHEPF、DEGを用い、モル比でISB/BHEPF/DEG/DPC=0.348/0.490/0.162/1.005となるように原料混合液を調製した。触媒として酢酸マグネシウム水溶液を、全ジヒドロキシ成分1molに対し、15μmolの割合で連続供給した。各反応器の反応条件は表−1に示すとおりとした。
第3縦型攪拌反応器の滞留時間を15分、圧力を15.0kPaとした以外は実施例5と同様に行った。最終重合反応器の一つ前の反応器の反応率を低下させたため、最終重合反応器入口において反応液が激しく発泡した。そのため、最終重合反応器の圧力を1kPa以下まで下げることができず、所定の還元粘度である0.40から0.43まで重合を進行させることができなかった。また、圧力を十分に下げることができなかったため、ポリカーボネート中のモノヒドロキシ化合物の残存量も多くなった。
実施例5よりも大型の反応設備を用いて、同様の条件で行った。第4横型反応器6dにおいて、反応液を安定的に抜き出せる範囲で極力液量が少なくなるように調節したところ、滞留時間は100分、SVは0.60、LVは3.02となった。ペレット化が停止したり、反応液が激しく発泡することもなく、反応液の流動状態は安定しており、非常に良好な品質のポリカーボネートを安定的に製造することができた。
実施例5において、第4横型攪拌反応器6dの攪拌回転数を3.0rpmとし、最終重合反応器出口からの反応液の抜き出しが安定化するまで液量を増加させた。滞留時間は120分、SVは0.50、LVは0.60となった状態で反応液の抜き出しが安定化し、24時間中のペレット化の停止回数は0回となった。所定の分子量範囲に収まるように運転条件を調整したところ、最終重合反応器の圧力を0.5kPaから1.5kPaの間で動かす必要があり、実施例5よりも変動が大きくなった。また、滞留時間が増加したために、得られたポリカーボネートの色調も悪化した。
モノマーとしてビスフェノールAを用いた従来の芳香族ポリカーボネートの製造例を表―1に示した。本発明のポリカーボネートよりも高い反応温度で重合しても色調は良好であり、最終重合反応器出口における溶融粘度も低いために、安定的に反応液を抜き出し、ペレット化することができた。
表−1に示すように、本発明のポリカーボネートの製造方法に規定するように、最終重合反応器における反応液の流速を適切に設定することで、ポリカーボネートの品質や生産
性を向上できるとともに、安定した品質のポリカーボネートが得られる利点もある。特に、実施例1および実施例4はいずれも比較例1および2と比べてペレットYIが低く、色調が良好であった。同様に実施例5および実施例7は比較例2と比べてペレットYIが低く、色調が良好であった。
1b、1c 原料(ジヒドロキシ化合物)供給口
1d 触媒供給口
2a 原料混合槽
3a アンカー型攪拌翼
4a 原料供給ポンプ
4b、4c、4d ギアポンプ
5a 原料フィルター
6a 第1竪型反応槽
6b 第2竪型反応槽
6c 第3竪型反応槽
6d 横型反応器
7a、7b、7c マックスブレンド翼
7d 2軸メガネ型攪拌翼
8a、8b 内部熱交換器
9a、9b 還流冷却器
10a、10b 還流管
11a、11b、11c、11d 留出管
12a、12b、12c、12d 凝縮器
13a、13b、13c、13d 減圧装置
14a 留出液回収タンク
15a 二軸押出機
15b ポリマーフィルター
16a ストランド冷却槽
16b ストランドカッター
16c 空送ブロワー
16d 製品ホッパー
16e 計量器
16f 製品袋(紙袋、フレキシブルコンテナーバッグなど)
Claims (20)
- 少なくともアルコール性ヒドロキシ基を有するジヒドロキシ化合物を含むジヒドロキシ化合物と、炭酸ジエステルと、重合触媒とを連続的に反応器に供給し、重縮合してポリカーボネートを製造する方法であって、前記反応器は少なくとも直列に複数器接続されるものであり、最終重合反応器の反応条件が下記条件(A)から(E)のすべてを満たすことを特徴とするポリカーボネートの製造方法。
(A)最終重合反応器が内部に複数の水平回転軸を有する横型攪拌反応器である。
(B)最終重合反応器出口におけるポリカーボネートの溶融粘度が1500Pa・s以上、4500Pa・s以下である。
(C)下記式(1)で表されるSVの値が0.55以上、1.9以下である。
SV[hr−1]=Q[kg/hr]/W[kg] (1)
Q:最終重合反応器の反応液処理量
W:最終重合反応器内の反応液量
(D)下記式(2)で表されるLVの値が0.7以上、12以下である。
LV[m/hr]=L[m]/θ[hr] (2)
L:最終重合反応器の入口出口間距離「m」
θ:最終重合反応器の滞留時間
(E)前記Qが55kg/hr以上である。 - 前記最終重合反応器において、下記式(3)を満たすことを特徴とする請求項1に記載のポリカーボネートの製造方法。
2000 ≦ ωμ ≦ 6000 (3)
ω:攪拌回転数[rpm]
μ:最終重合反応器出口における反応液の溶融粘度[Pa・s] - 前記ωが0.5以上、4以下である請求項1又は2に記載のポリカーボネートの製造方法。
- 前記最終重合反応器の一つ前の反応器の出口における反応液の溶融粘度が100Pa・s以上、1000Pa・s以下である請求項1乃至3のいずれか1項に記載のポリカーボネートの製造方法。
- 前記最終重合反応器の一つ前の反応器の出口において、前記炭酸ジエステルより生成するモノヒドロキシ化合物が反応液中に0.5wt%以上、3wt%以下含有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のポリカーボネートの製造方法。
- 前記最終重合反応器と、最終重合反応器の一つ前の反応器の内圧の差が1kPa以上、10kPa以下であること請求項1乃至5のいずれか1項に記載のポリカーボネートの製造方法。
- 前記最終重合反応器の内温が260℃以下であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載のポリカーボネートの製造方法。
- 直列に接続されている反応器の数が4器以下であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載のポリカーボネートの製造方法。
- 前記式(4)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物が、オキシアルキレングリコール類、芳香族基に結合したエーテル基を主鎖中に有するジヒドロキシ化合物、環状エーテル構造を有するジヒドロキシ化合物である請求項1乃至9のいずれか1項に記載のポリカーボネートの製造方法。
- 前記式(5)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物が、下記構造式(6)で表されるジヒドロキシ化合物である請求項1乃至10のいずれか1項に記載のポリカーボネートの製造方法。
- 前記最終重合反応器の一つ前の反応器の出口における反応液中の二重結合末端構造の量をX(mol/ton)、前記最終重合反応器の出口における反応液中の二重結合末端構造の量をY(mol/ton)とした場合に、下記式(7)を満たす請求項1乃至12のいずれか1項に記載のポリカーボネートの製造方法。
Y−X ≦ 6 かつ X ≦ 5 (7) - 前記最終重合反応器の出口における反応液中の全ヒドロキシ末端基の量が10mol/ton以上50mol/ton以下である請求項1乃至13のいずれか1項に記載のポリカーボネートの製造方法。
- 前記重合触媒が、長周期型周期表第2族の金属からなる群及びリチウムより選ばれる少なくとも1種の金属化合物である請求項1乃至14のいずれか1項に記載のポリカーボネートの製造方法。
- 反応に用いられる全ジヒドロキシ化合物のうち、フェノール性ヒドロキシ基を有するジヒドロキシ化合物が10mol%以下である請求項1乃至15のいずれか1項に記載のポリカーボネートの製造方法。
- 重縮合により得られたポリカーボネートを、固化させることなく溶融状態のままフィルターに供給して濾過する工程を含む請求項1乃至16のいずれか1項に記載のポリカーボネートの製造方法。
- 重縮合により得られたポリカーボネート、又は、それを上記フィルターで濾過した樹脂を、ダイスヘッドからストランドの形態で吐出し、冷却後、カッターを用いてペレット化する工程を含む請求項1乃至17のいずれか1項に記載のポリカーボネートの製造方法。
- 請求項18に記載の方法により製造されたポリカーボネートペレット。
- 25μm以上の異物が500個/m2以下である請求項19に記載のポリカーボネートペレット。
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