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JP2014009332A - ポリカーボネートの製造方法 - Google Patents

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JP2014009332A JP2012148567A JP2012148567A JP2014009332A JP 2014009332 A JP2014009332 A JP 2014009332A JP 2012148567 A JP2012148567 A JP 2012148567A JP 2012148567 A JP2012148567 A JP 2012148567A JP 2014009332 A JP2014009332 A JP 2014009332A
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Abstract

【課題】色相および機械物性などの優れた特性を持つポリカーボネートを、安定した品質で、かつ高い歩留まりで製造する方法を提供する。
【解決手段】特定ジヒドロキシ化合物を含むジヒドロキシ化合物と、炭酸ジエステルと、重合触媒とを連続的に反応器に供給し、重縮合してポリカーボネートを製造する方法であって、前記反応器は少なくとも直列に複数器接続されるものであり、最終重合反応器の反応条件が特定の条件を満たすことを特徴とするポリカーボネートの製造方法にて製造する。
【選択図】なし

Description

本発明は、熱安定性、耐光性、機械的強度、光学特性などに優れたポリカーボネートの透明性や色相を向上させ、かつ異物量を低減したポリカーボネートを、効率的かつ安定的に製造する方法、及び該製造方法によって得られるポリカーボネートペレットを提供するものである。
ポリカーボネートは一般的にビスフェノール類をモノマー成分とし、透明性、耐熱性、機械的強度等の優位性を生かし、電気・電子部品、自動車用部品、光学記録媒体、レンズ等の光学分野等でいわゆるエンジニアリングプラスチックとして広く利用されている。
従来のポリカーボネートは、石油資源から誘導される原料を用いて製造されるが、近年、石油資源の枯渇が危惧されており、植物などのバイオマス資源から得られる原料を用いたポリカーボネートの提供が求められている。また、二酸化炭素排出量の増加、蓄積による地球温暖化が気候変動などをもたらすことが危惧されていることからも、使用後に廃棄処分をしてもカーボンニュートラルな植物由来モノマーを原料としたポリカーボネートの開発が求められている。
かかる状況下、バイオマス資源から得られるジヒドロキシ化合物であるイソソルビド(ISB)をモノマー成分とし、炭酸ジエステルとのエステル交換により、副生するモノヒドロキシ化合物を減圧下で留去しながら、ポリカーボネートを得る方法が提案されている(例えば特許文献1〜4参照)。ISBから得られるポリカーボネートは優れた光学特性を有しており、光学材料として有用に用いることができることが知られている。
また、近年、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン(
BHEPF)のようなフルオレン構造を側鎖に有するジヒドロキシ化合物から誘導された共重合ポリカーボネートが報告されており、特に脂肪族ジヒドロキシ化合物との共重合ポリカーボネートは複屈折や光弾性係数が小さいなど、優れた光学特性を有することが示されている(特許文献5、6参照)。
ところが、上記のようなアルコール性ヒドロキシ基を有するジヒドロキシ化合物は、従来のポリカーボネートに使用されてきたビスフェノール類に比べると熱安定性が低く、高温下で行う重縮合反応中の熱分解により樹脂が着色する問題があった。
この問題を解決するために、連続式の重合プロセスを採用し、さらに重合効率を向上させるために横型反応器を用いて、より少ない熱履歴で重合反応を行い、得られるポリマーの品質を改良する方法が提案されている(特許文献7参照)。
国際公開第04/111106号パンフレット 特開2006−232897号公報 特開2006−28441号公報 特開2009−91404号公報 特開2005−54144号公報 特開2007−70392号公報 特開2009−161745号公報
横型反応器の特長として、高粘度の樹脂の製造に対応できることや、プラグフロー反応器であることから反応の押し切りが可能となり、成形加工時にブリードアウトやガス発生の問題となり得る低分子量成分を低減できることが挙げられる。ところが、本発明者らの検討により、従来のビスフェノールAなどの芳香族ポリカーボネートとは異なり、本発明のようにアルコール性ヒドロキシ基を有するジヒドロキシ化合物を用いたポリカーボネートでは、横型反応器のプラグフロー性の保持が難しく、分子量や残存低分子成分などのポリカーボネートの品質を安定的に制御することが難しい問題があることが判明した。
これは本発明のポリカーボネートが、重合終盤で非常に速い速度で分子量が上昇する反応特性を有していることが理由として考えられる。重縮合反応は平衡反応であり、通常は減圧下で反応を行い、脱離成分を系外に除去することで反応を促進させるが、アルコール性ヒドロキシ基はフェノール性ヒドロキシ基よりも平衡定数が大きいために、真空度をあまり上げなくても反応が進行しやすい。このような要因から、真空度が低い状態で重縮合反応を行っているとモノヒドロキシ化合物などの低分子成分の残存量が増加するという問題が生じる。一方で、残存低分子成分を低減するために反応器の圧力を下げると、反応が促進されて重合速度の制御が難しくなり、反応液の溶融粘度が上がりすぎてしまうことがある。溶融粘度が上がると流動性が低下し、プラグフロー性の低下を招きやすくなる。また、最終反応器の入口部分では反応液の溶融粘度は比較的低く、炭酸ジエステルより副生するモノヒドロキシ化合物が多量に含有されているため、反応液が激しく発泡することがある。この発泡によっても反応液の流動が乱れ、プラグフロー性を保持することが困難となる。
また、本発明のポリカーボネートは高温下で着色しやすいために、着色を抑制するには反応温度を低下させることが有効であるが、一方で、実用的な機械物性を得るためには十分な分子量まで重合を進行させる必要があるため、重合終盤の反応液は非常に高粘度になる。そのため、特に最終反応器の出口付近では反応液の流動性が低くなる。極端な場合、攪拌軸に溶融樹脂が巻きついて垂れ落ちなくなってしまい、反応器から溶融樹脂を一定の流量で抜き出すことが難しくなる。反応器から溶融樹脂が抜き出されなくなると、ペレット化が途中で途切れてしまい、製造の歩留まりが悪化する問題点も見出された。
さらに、このようにペレット化が停止し、再びペレット化を復旧するための作業を行うと、ペレット化工程をクリーンルームで隔離していても、作業後は一時的に樹脂に含有される異物量が増加するという問題も見出された。特に光学材料に用いられる場合は、異物は製品の致命的な欠陥になり得るため、樹脂の加工または部材の組み立ての段階での歩留まりも悪化することにつながる。
このように、本発明のポリカーボネートの品質や生産性を満足させるためには、非常に狭い条件範囲に反応条件を合わせ込まなければならず、わずかな条件の乱れによっても最適条件範囲を逸脱してしまい、品質や運転状態が大きく乱れやすい。
そこで本発明は、従来のポリカーボネートで原料として用いられるビスフェノール類と比較して、熱安定性や重合特性が異なるアルコール性ヒドロキシ基を有するジヒドロキシ化合物を用いたポリカーボネートの製造にあたり、以上のような複数の問題を解決し、色相および機械物性などの優れた特性を持つポリカーボネートを、安定した品質で製造する方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、前記の課題に鑑みて鋭意検討を行った結果、特定の製造方法を用いることにより、アルコール性ジヒドロキシ化合物を重合してなり、均一化された特性を持つポリカーボネートを製造することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち本発明は以下を要旨とする。
(1)少なくともアルコール性ヒドロキシ基を有するジヒドロキシ化合物を含むジヒドロキシ化合物と、炭酸ジエステルと、重合触媒とを連続的に反応器に供給し、重縮合してポリカーボネートを製造する方法であって、前記反応器は少なくとも直列に複数器接続されるものであり、最終重合反応器の反応条件が下記条件(A)から(E)のすべてを満たすことを特徴とするポリカーボネートの製造方法。
(A)最終重合反応器が内部に複数の水平回転軸を有する横型攪拌反応器である。
(B)最終重合反応器出口におけるポリカーボネートの溶融粘度が1500Pa・s以
上、4500Pa・s以下である。
(C)下記式(1)で表されるSVの値が0.3以上、1.9以下である。
SV[hr−1]=Q[kg/hr]/W[kg] (1)
Q:最終重合反応器の反応液処理量
W:最終重合反応器内の反応液量
(D)下記式(2)で表されるLVの値が0.7以上、12以下である。
LV[m/hr]=L[m]/θ[hr] (2)
L:最終重合反応器の入口出口間距離「m」
θ:最終重合反応器の滞留時間
(E)前記Qが55kg/hr以上である。
(2)前記最終重合反応器において、下記式(3)を満たすことを特徴とする(1)に記載のポリカーボネートの製造方法。
2000 ≦ ωμ ≦ 6000 (3)
ω:攪拌回転数[rpm]
μ:最終重合反応器出口における反応液の溶融粘度[Pa・s]
(3)前記ωが0.5以上、4以下である(1)又は(2)に記載のポリカーボネートの製造方法。
(4)前記最終重合反応器の一つ前の反応器の出口における反応液の溶融粘度が100Pa・s以上、1000Pa・s以下である(1)乃至(3)のいずれか1項に記載のポリカーボネートの製造方法。
(5)前記最終重合反応器の一つ前の反応器の出口において、前記炭酸ジエステルより生成するモノヒドロキシ化合物が反応液中に0.5wt%以上、3wt%以下含有することを特徴とする(1)乃至(4)のいずれか1項に記載のポリカーボネートの製造方法。
(6)前記最終重合反応器と、最終重合反応器の一つ前の反応器の内圧の差が1kPa以上、10kPa以下であること(1)乃至(5)のいずれか1項に記載のポリカーボネートの製造方法。
(7)前記最終重合反応器の内温が260℃以下であることを特徴とする(1)乃至(6)のいずれか1項に記載のポリカーボネートの製造方法。
(8)直列に接続されている反応器の数が4器以下であることを特徴とする(1)乃至(7)のいずれか1項に記載のポリカーボネートの製造方法。
(9)前記アルコール性ヒドロキシ基を有するジヒドロキシ化合物が構造の一部に下記式(4)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物である(1)乃至(8)のいずれか1項に記載のポリカーボネートの製造方法。
Figure 2014009332
(但し、上記式(4)で表される部位が−CH−OHの一部を構成する部位である場合
を除く。)
(10)前記式(4)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物が、オキシアルキレングリコール類、主鎖に芳香族基に結合したエーテル基を有するジヒドロキシ化合物、環状エーテル構造を有するジヒドロキシ化合物である(1)乃至(9)のいずれか1項に記載のポリカーボネートの製造方法。
(11)前記式(4)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物が、下記構造式(5)で表される化合物である(1)乃至(10)のいずれか1項に記載のポリカーボネートの製造方法。
Figure 2014009332
(12)前記式(5)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物が、下記構造式(6)で表されるジヒドロキシ化合物である(1)乃至(10)のいずれか1項に記載のポリカーボネートの製造方法。
Figure 2014009332
(上記一般式(6)中、R1〜R4はそれぞれ独立に、水素原子、置換若しくは無置換の炭素数1〜20のアルキル基、置換若しくは無置換の炭素数6〜20のシクロアルキル基、または、置換若しくは無置換の炭素数6〜20のアリール基を表し、XとXはそれぞれ独立に、置換若しくは無置換の炭素数2〜10のアルキレン基、置換若しくは無置換の炭素数6〜20のシクロアルキレン基、または、置換若しくは無置換の炭素数6〜20のアリーレン基を表す。m及びnはそれぞれ独立に1〜5の整数である。)
(13)前記最終重合反応器の一つ前の反応器の出口における反応液中の二重結合末端構造の量をX(mol/ton)、前記最終重合反応器の出口における反応液中の二重結合末端構造の量をY(mol/ton)とした場合に、下記式(7)を満たす(1)乃至(12)のいずれか1項に記載のポリカーボネートの製造方法。
Y−X ≦ 6 かつ X ≦ 5 (7)
(14)前記最終重合反応器の出口における反応液中の全ヒドロキシ末端基の量が10mol/ton以上50mol/ton以下である(1)乃至(13)のいずれか1項に記載のポリカーボネートの製造方法。
(15)前記重合触媒が、長周期型周期表第2族の金属からなる群及びリチウムより選ばれる少なくとも1種の金属化合物である(1)乃至(14)のいずれか1項に記載のポリカーボネートの製造方法。
(16)反応に用いられる全ジヒドロキシ化合物のうち、フェノール性ヒドロキシ基を有するジヒドロキシ化合物が10mol%以下である(1)乃至(15)のいずれか1項に記載のポリカーボネートの製造方法。
(17)重縮合により得られたポリカーボネートを、固化させることなく溶融状態のままフィルターに供給して濾過する工程を含む(1)乃至(16)のいずれか1項に記載のポリカーボネートの製造方法。
(18)重縮合により得られたポリカーボネート、又は、それを上記フィルターで濾過した樹脂を、ダイスヘッドからストランドの形態で吐出し、冷却後、カッターを用いてペレット化する工程を含む(1)乃至(17)のいずれか1項に記載のポリカーボネートの製造方法。
(19)(18)に記載の方法により製造されたポリカーボネートペレット。
(20)25μm以上の異物が500個/m以下である(19)に記載のポリカーボネートペレット。
本発明によれば、熱安定性、耐候性、機械的強度、光学特性などに優れ、異物の少ないポリカーボネートを、均一な溶融粘度で効率的かつ安定的に製造する方法及び該製造方法によって得られるポリカーボネートペレットを提供することが可能となる。
図1は、本発明にかかるポリカーボネートの製造方法の例を示す全体工程図である。 図2は、2軸メガネ型攪拌翼の斜視図である。 図3は、横型攪拌反応器の例を示す平面模式図である。
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を超えない限り、以下の内容に限定されない。なお、本明細書において、「〜」という表現を用いた場合、その前後の数値または物理値を含む意味で用いることとする。
本発明のポリカーボネートの製造方法は、少なくともアルコール性ヒドロキシ基を有するジヒドロキシ化合物を含むジヒドロキシ化合物と、炭酸ジエステルと、重合触媒とを連続的に反応器に供給し、重縮合してポリカーボネートを製造する方法であって、前記反応器は少なくとも直列に複数器接続されるものであり、最終重合反応器の反応条件が下記条件(A)から(E)のすべてを満たすことを特徴とするポリカーボネートの製造方法である。
(A)最終重合反応器が内部に複数の水平回転軸を有する横型攪拌反応器である。
(B)最終重合反応器出口におけるポリカーボネートの溶融粘度が1500Pa・s以
上、4500Pa・s以下である。
(C)下記式(1)で表されるSVの値が0.3以上、1.9以下である。
SV[hr−1]=Q[kg/hr]/W[kg] (1)
Q:最終重合反応器の反応液処理量
W:最終重合反応器内の反応液量
(D)下記式(2)で表されるLVの値が0.7以上、12以下である。
LV[m/hr]=L[m]/θ[hr] (2)
L:最終重合反応器の入口出口間距離「m」
θ:最終重合反応器の滞留時間
(E)前記Qが55kg/hr以上である。
本発明の製造方法においては、少なくとも直列に連結された2器の反応器を用いる2段階以上の多段工程で、上記特定ジヒドロキシ化合物を含むジヒドロキシ化合物と、炭酸ジエステルとを、重合触媒の存在下で反応させる(溶融重縮合)ことによりポリカーボネートが製造される。
なお、以下において、1器目の反応器を第1反応器、2器目の反応器を第2反応器、3器目の反応器を第3反応器、……以降同様に反応器の順番を含めて称する。
また、本明細書において「反応器」とは、ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルを混合した後の工程で、後述する反応温度まで加熱する加熱装置を有し、意図的なエステル交換反応を起こすための装置をいい、原料を事前に混合したり溶解させたりすることを主な目的とする溶解槽、または反応液を移送するための配管は、たとえそこでわずかながら反応が進行していたとしても、前記の反応器には含まれない。なお、本発明において、「最終重合反応器」とは、最も下流に備えられた反応器であり、内部に複数の水平回転軸を有する横型攪拌反応器である。
<ポリカーボネートの製造工程概要>
本発明の製造方法にかかる製造方法の各工程について説明する。本発明の製造方法は、原料モノマーとして、イソソルビド(ISB)等のアルコール性ヒドロキシ基を有するジヒドロキシ化合物を含むジヒドロキシ化合物と、ジフェニルカーボネート(DPC)等の炭酸ジエステルをそれぞれ溶融状態にて混合して原料混合溶融液を調製し(原料調製工程)、これらの化合物を重合触媒の存在下、溶融状態で複数の反応器を用いて多段階で重縮合反応をさせる(重縮合工程)ことによって行われる。
前記反応ではモノヒドロキシ化合物が副生するため、該モノヒドロキシ化合物を反応系から除去することによって反応を進行させ、ポリカーボネートを生成させる。炭酸ジエステルとしてDPCを用いた場合、該モノヒドロキシ化合物はフェノールとなり、減圧下で該フェノールを除去して反応を進行させる。
<原料調製工程>
ポリカーボネートの原料として使用する、アルコール性ヒドロキシ基を有するジヒドロキシ化合物を含むジヒドロキシ化合物、及び炭酸ジエステルは、窒素またはアルゴン等の不活性ガスの雰囲気下、バッチ式、半回分式または連続式の攪拌槽型の装置を用いて、原料混合溶融液として調製するか、又は、反応槽にこれらを独立に投下する。
溶融混合の温度は、例えば、前記特定ジヒドロキシ化合物としてISBを用いると共に、後記するような脂環式炭化水素のジヒドロキシ化合物を用い、炭酸ジエステルとしてDPCを用いる場合は、80℃〜180℃の範囲が好ましく、より好ましくは90℃〜120℃の範囲から選択される。
また、前記原料混合溶融液に酸化防止剤を添加してもよい。通常知られるヒンダードフェノール系酸化防止剤および/またはリン系酸化防止剤を添加することで、原料調製工程での原料の保存安定性を向上するとともに、重合中での着色を抑制することにより、得られる樹脂の色相を改善することができる。
使用する重合触媒は、予め水溶液として準備することが好ましい。触媒水溶液の濃度は特に限定されず、触媒の水に対する溶解度に応じて任意の濃度に調整することができる。また、水に代えて、アセトン、アルコール、トルエンまたはフェノール等の他の溶媒を選択することもできる。
なお、重合触媒の具体例については後記する。この重合触媒の溶解に使用する水の性状は、含有される不純物の種類ならびに濃度が一定であれば特に限定されないが、通常、蒸留水または脱イオン水等が好ましく用いられる。
前記した反応器での反応について説明する。
<前段反応工程>
先ず、上記ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとの混合物を、溶融下に、竪型攪拌反応器に供給して、好ましくは温度130℃〜230℃で重縮合反応を行い、副生するモノヒドロキシ化合物を留出させ、オリゴマーを生成させる。
この反応は、好ましくは1槽以上、より好ましくは2槽〜6槽の多槽方式で連続的に行われ、副生するモノヒドロキシ化合物の理論量の40%から95%を留出させることが好ましい。反応温度は、130℃〜230℃が好ましく、より好ましくは150℃〜220℃であり、圧力は1kPa〜40kPaであることが好ましい。
多槽方式の連続反応の場合、各槽の温度を上記範囲内で順次上げ、各槽の圧力を上記範囲内で順次下げることが好ましい。平均滞留時間は0.1〜10時間が好ましく、より好ましくは0.5〜5時間、更に好ましくは0.5〜3時間である。温度が高すぎると熱分解が促進され、異種構造または着色成分の生成が増加し、樹脂の品質の悪化を招く可能性がある。一方、温度が低すぎると反応速度が低下するために生産性が低下するおそれがある。
本発明で用いる溶融重縮合反応は平衡反応であるため、副生するモノヒドロキシ化合物を反応系外に除去することで反応が促進されるので、反応器の内圧は減圧状態にすることが好ましい。圧力は1kPa以上40kPa以下であることが好ましく、より好ましくは2kPa以上、30kPa以下である。なお、本明細書における圧力とは、真空を基準に表した、いわゆる絶対圧力を指す。
圧力が高すぎるとモノヒドロキシ化合物が留出しないために反応性が低下し、低すぎると未反応のジヒドロキシ化合物または炭酸ジエステルなどの原料が留出するため、原料モル比がずれて所望の分子量まで到達しないなど、反応の制御が難しくなり、また、原料原単位が悪化してしまうおそれがある。
<後段反応工程>
前段の重縮合工程で得られたオリゴマーを次の反応器に供給して、好ましくは200℃〜260℃の内温で重縮合反応を行い、ポリカーボネートを得る。この反応は好ましくは1器以上、より好ましくは1〜3器の横型攪拌反応器を用いて連続的に行われる。
反応温度は、好ましくは210〜260℃、より好ましくは220〜250℃である。圧力は、0.01kPa〜13.3kPaが好ましく、より好ましくは0.01kPa〜2kPaである。特に最終重合反応器においては、圧力は0.01kPa〜5kPaが好ましく、0.03kPa〜3kPaがさらに好ましく、0.05kPa〜1.5kPaが特に好ましい。平均滞留時間は、0.1〜10時間が好ましく、より好ましくは0.5〜5時間、更に好ましくは0.5〜2時間である。
重縮合工程後、ポリカーボネート中の未反応原料、もしくは反応副生物であるモノヒドロキシ化合物を脱揮除去する工程、熱安定剤、離型剤若しくは色剤等を添加する工程、または得られたポリカーボネートを所定の粒径のペレットに形成する工程等を適宜追加してもよい。
前記の反応器で発生するフェノール等のモノヒドロキシ化合物は、タンクに収集しておき、資源有効活用の観点から、必要に応じ、精製を行って回収した後、DPCまたはビスフェノールA等の原料として再利用することが好ましい。本発明の製造方法において、副生モノヒドロキシ化合物の精製方法に特に制限はないが、蒸留法を用いることが好ましい。
<反応器>
本発明で使用する反応器は公知のいかなるものでもよく、熱油またはスチームを加熱媒体としたジャケット形式の反応器、または内部にコイル状の伝熱管を有する反応器等が用いられる。例えば、竪型攪拌反応器および横型撹拌反応器が挙げられる。具体例としては、攪拌槽型反応器、薄膜反応器、遠心式薄膜蒸発反応器、表面更新型二軸混練反応器、二軸横型攪拌反応器、濡れ壁式反応器、自由落下させながら重合する多孔板型反応器、およびワイヤーに沿わせて落下させながら重合するワイヤー付き多孔板型反応器等が挙げられる。前段反応工程では竪型攪拌反応器を用いるのが好ましく、後段反応工程では脱揮性能に優れ、高粘度の反応液にも対応できる横型攪拌反応器を用いることが好ましい。
本発明にかかる製造方法の反応方式は連続式が用いられる。反応器は、1器または複数器の竪型攪拌反応器、及びこれに続く少なくとも1器の横型攪拌反応器が用いられる。これらの反応器は直列に設置され、連続的に処理が行われる。本発明のポリカーボネートの製造方法としては、直列につながる反応器の数は4器以下であることが好ましい。本発明のポリカーボネートは十分な重合速度を有するため、4器以下で所望とする分子量に到達させることができる。5器以上であると、各反応器を接続する配管の容積が大きくなってしまい、そこでの熱劣化による品質の低下が無視できなくなるため、好ましくない。
前記の反応器と次の反応器との連結は、直接配管のみで連結してもよいし、必要に応じて、予熱器等を介して行ってもよい。配管は二重管式等で反応液を冷却固化させることなく移送ができ、ポリマー側に気相がなく、かつデッドスペースを生じないものが好ましい。
前記のそれぞれの反応器を加熱する加熱媒体の温度の上限は280℃であることが好ましく、より好ましくは275℃、特に好ましくは270℃である。加熱媒体の温度が高すぎると、反応器壁面での熱劣化が促進され、異種構造や分解生成物の増加、または色調の悪化等の不具合を招くことがある。加熱媒体の温度の下限は、上記反応温度が維持可能な温度であれば特に制限されない。
本発明における反応器においては前段と後段とに関わらず、ポリカーボネートの色調の観点から、反応装置を構成する機器、配管などの構成部品の原料モノマーまたは重合液に接する部分(以下「接液部」と称する)の表面材料は、接液部の全表面積の少なくとも90%以上を占める割合で、ニッケル含有量10重量%以上のステンレス、ガラス、ニッケル、タンタル、クロムおよびテフロン(登録商標)のうち1種または2種以上から構成されていることが好ましい。
本発明においては、接液部の表面材料が上記物質から構成されていればよく、上記物質と他の物質とからなる張り合わせ材料、あるいは上記物質を他の物質にメッキした材料などを表面材料として用いることができる。
前記の竪型攪拌反応器とは、垂直回転軸と、該垂直回転軸に取り付けられた攪拌翼とを具備した反応器である。攪拌翼の形式としては、例えば、タービン翼、パドル翼、ファウドラー翼、アンカー翼、フルゾーン翼[神鋼パンテック(株)製]、サンメラー翼[三菱重工業(株)製]、マックスブレンド翼[住友重機械工業(株)製]、ヘリカルリボン翼およびねじり格子翼[(株)日立製作所製]等が挙げられる。
また、前記の横型攪拌反応器とは、内部に複数本設けられた攪拌翼の回転軸が横型(水平方向)で、当該回転軸に対してほぼ垂直に延びる複数枚の攪拌翼を有しており、それぞれの水平回転軸に設けられた攪拌翼は、好ましくはセルフクリーニング性を持つように配されたものである。
攪拌翼の形式としては、例えば、円板型およびパドル型等の一軸タイプの攪拌翼、並びにHVR、SCR、N−SCR[三菱重工業(株)製]、バイボラック[住友重機械工業(株)製]、メガネ翼および格子翼[(株)日立製作所製]等の二軸タイプの攪拌翼が挙
げられる。その他、例えば、車輪型、櫂型、棒型および窓枠型などの攪拌翼が挙げられる。
このような攪拌翼が、回転軸あたり少なくとも2段以上設置されており、この攪拌翼により反応液をかき上げ、又は押し広げて反応液の表面更新を行う。また、横型反応器の水平回転軸の長さをLとし、攪拌翼の回転直径をDとしたときにL/Dが好ましくは1〜15、より好ましくは2〜14である。
本発明で製造するポリカーボネートも従来のポリカーボネートと同様に、反応の進行とともに反応液の粘度が上昇してくるため、多槽方式の各反応器においては、重縮合反応の進行とともに副生するモノヒドロキシ化合物(DPCを用いた場合はフェノールとなる。)をより効果的に系外に除去し、また、反応液の流動性を確保するために、上記の反応条件内で、段階的により高温、より高真空に設定することが好ましい。
本発明の製造方法においては、最終段の横型攪拌反応器の反応条件が、得られる樹脂の品質だけでなく、製造の歩留まり、または樹脂中の異物量など様々な観点から重要な影響を与え得る。
前記最終重合反応器では、得られるポリカーボネートが十分な機械的特性を有する程度に分子量を向上させる必要があるため、前記最終重合反応器の出口における反応液の溶融粘度は1500Pa・s以上が好ましく、より好ましくは1800Pa・s以上、さらに好ましくは2000Pa・s以上である。
一方で、溶融粘度を上げすぎると、反応液の流動性が損なわれ、また、攪拌機モーターの負荷が増大することから、溶融粘度は4500Pa・s以下であることが好ましく、4200Pa・s以下であることがさらに好ましく、4000Pa・s以下であることが特に好ましい。
最終重合反応器の出口における反応液の溶融粘度は、最終重合反応器の温度、圧力若しくは滞留時間などの反応条件や触媒量を調節したり、末端基バランスを調節したりすることにより制御することができる。末端基バランスは炭酸ジエステルとジヒドロキシ化合物との仕込みモル比、または前段反応での未反応モノマーの留出量を制御することにより調節される。
なお、本明細書において溶融粘度とは、キャピラリーレオメーター[東洋精機(株)製]を用いて反応液の温度と同じ温度で測定された、剪断速度91.2s−1における溶融粘度を示す。
本発明では最終重合反応器には横型反応器が用いられるが、横型反応器内のプラグフロー性を安定化させるためには、反応液の流速を所定の範囲に調節することが効果的である。下記式(1)で表されるSVの値が0.3以上、1.9以下であることを特徴としている。
SV[hr−1]=Q[kg/hr]/W[kg] (1)
Q:最終重合反応器の反応液処理量
W:最終重合反応器内の反応液量
上記のSVは最終重合反応器における反応液の空間速度を示す数値である。一般的には、カラム内を流れる流体の空間速度はカラム内を流れる流体の流量とカラムの容積から下記式で計算される。
流量[m/hr]/カラム容積[m
カラム体積[m]=カラム断面積[m]×長さ[m]=1/4π×(カラム直径[m])×長さ[m]
(カラムが円筒形の場合)
本発明のポリカーボネートの重合反応においては、最終重合反応器は反応液で充満されておらず、空隙が存在するため、本明細書のSVは最終重合反応器内部を流れる反応液の平均空間速度を表すものとする。
適切なプラグフロー性を保持するには、SVは0.3以上であり、0.55以上であることが好ましく、さらには0.6以上が好ましく、0.7以上が特に好ましい。また、重合反応を進行させるために必要な反応時間は確保しなければならず、また、高粘度である反応液の流動性の限界もあるため、SVは1.9以下であり、1.8以下が好ましく、特に1.6以下が好ましく、1.5以下であることが最も好ましい。
さらに、横型反応器におけるプラグフロー性を安定化させるには、下記式(2)で表されるLVの値が0.7以上、12以下となるように反応液の流速を調節することを特徴としている。
LV[m/hr]=L[m]/θ[hr] (2)
L:最終重合反応器の入口出口間距離「m」
θ:最終重合反応器の滞留時間
上記のLVは最終重合反応器における反応液の線速度を示す数値である。一般的にはカラム内を流れる流体の線速度はカラム内を流れる流体の流量とカラムの断面積から、下記式で計算される。
流量[m/hr]/カラム断面積[m
(カラムが円筒形の場合)
前述のSVと同様に、本明細書において、LVは最終重合反応器内部を流れる反応液の平均線速度を表すものとする。上記(2)式は上記のカラム内を流れる流体の線速度の式を以下のように変形して用いた。
流量[m/hr]/カラム断面積[m
→ 最終重合反応器の反応液量[m]/(最終重合反応器の滞留時間[hr]×最終重合反応液の平均断面積[m])=最終重合反応器の入口出口間距離[m]/最終重合反応器の滞留時間[hr]
前記の最終重合反応器の反応液処理量Qは、反応器内の反応液の流動性を安定させるため、または生産性の観点から、55kg/hr以上であることを特徴としている。反応液処理量が少なくなると、反応液の流動が安定せず、反応液壁面で局所過熱によって樹脂が熱劣化を受けやすくなったり、反応器中の滞留時間が長くなりすぎることがある。反応液処理量はさらに60kg/hr以上が好ましく、65kg/hr以上が特に好ましい。
前述のとおり、本発明にかかる前記アルコール性ジヒドロキシ基を有するジヒドロキシ化合物を含むジヒドロキシ化合物を重縮合して得られるポリカーボネートは、従来の芳香族ポリカーボネートよりも熱安定性が低く、特に色調に対する温度感度が高いため、流動性が確保できる範囲で最終重合反応器の内温は極力低くすることが好ましい。最終重合反応器の内温が260℃以下であることが好ましく、さらには255℃以下であることが好ましく、特には250℃以下であることが好ましい。
一方、反応温度を下げると反応液の溶融粘度が高くなり、あまりに粘度が上がり過ぎると、反応液が攪拌軸に巻きついて垂れ落ちなくなる場合がある。最終重合反応器内部に複数の水平回転軸を有する横型反応器を用いた場合に、反応器から安定的に反応液を抜き出すには、反応液の溶融粘度に応じて、攪拌翼の回転数を適切に設定する必要があり、攪拌翼の回転数は、下記式(3)の範囲に設定することが好ましい。
2000≦ωμ≦6000 (3)
ω:攪拌翼回転数[rpm]
μ:横型反応器出口における反応液の溶融粘度[Pa・s]
ωμは好ましくは2000以上であり、一方、好ましくは6000以下である。なお、この条件は攪拌翼の軸径に依存しないため、反応スケールに関わらない。ωμを6000以下とすることにより、攪拌軸に反応液が巻きつくのを防ぎ、ペレット化工程において歩留まりを向上させるとともに、樹脂中の異物が増加するのを抑制することができる。ωμを2000以上とすることにより、十分な攪拌効率が得られ、反応液中の残存低分子成分の量を低減させるとともに、反応液が反応器壁面に滞留するのを抑制し色調の悪化を防ぐことができる。ωμは2100以上、5000以下がさらに好ましく、2200以上、4000以下が特に好ましい。
ωμを制御する方法としては、例えば、横型反応器の温度を一定のまま圧力を低下させて、反応液の分子量を上げる場合は、反応液の溶融粘度μが上昇し、ωμが大きくなるため、分子量の上昇に伴って攪拌翼回転数ωを低下させることで、ωμを好ましい範囲に収めることができる。
前記横型反応器の攪拌回転数を高くしすぎると、反応液が攪拌軸に絡みつきやすくなるため、前記ωは4以下であることが好ましい。さらには3以下であることが好ましく、2以下であることが特に好ましい。一方、回転数が低すぎると、プラグフロー性が低下し、また、攪拌効率が低下することから、反応液中の低分子成分の脱揮効率が低下するため、ωの下限は0.5以上であることが好ましい。
反応液が反応器出口に一定流量で流れなくなると、反応液中に気泡をかみこむことがあり、ペレット化工程において、気泡を含有するストランドが切れて、ペレット化が停止する事態を招く。さらには、ペレット化を復旧するためにストランドをカッターにつなぐ作業が発生するため、衣服の繊維または砂埃などに起因する異物が製品中に混入するおそれがある。
炭酸ジエステルより副生するモノヒドロキシ化合物をはじめとする低分子量成分の含有量を低減するためには、最終重合反応器の圧力を極力低く保持することが好ましいが、最終重合反応器の一つ前の反応器との圧力差が大きくなると、最終重合反応器入口において反応液が激しく発泡し、攪拌翼に絡みついた反応液の上部を伝って出口に流れ込むために、分子量の制御ができなくなったり、真空ポンプに接続する配管に発泡した反応液が巻き上がって、配管を閉塞させたりする問題が生じるおそれがある。この問題を防ぐには、最終重合反応器の一つ前の反応器において、反応液の溶融粘度を十分に上げておき、反応液中のモノヒドロキシ化合物を十分に減らしておくことが有効である。本発明においては、最終重合反応器の一つ前の反応器出口における反応液の溶融粘度は、100Pa・s以上が好ましく、さらに140Pa・s以上が好ましく、特に180Pa・s以上が好ましい。
一方、溶融粘度が高すぎると、最終重合反応器での流動性が低下してしまい、滞留時間が過剰に長くなることにつながり、得られるポリカーボネートの色調などの品質が悪化するため、最終重合反応器の一つ前の反応器出口における反応液の溶融粘度は、1000Pa・s以下が好ましく、さらには800Pa・s以下が好ましい。最終重合反応器の一つ前の反応器の出口における反応液の溶融粘度は、前段反応の温度もしくは圧力、または触媒量などを適宜調節することで、所望の溶融粘度に制御にすることができる。
最終重合反応器の一つ前の反応器の出口において、反応液に含有されるモノヒドロキシ化合物の量は3wt%以下が好ましく、さらに2wt%以下がより好ましく、特には1.5wt%以下が好ましい。なお、含まれるモノヒドロキシ化合物の量は少ないほど好ましく、0wt%であることが理想であるが、実際には不可能であり、通常は500ppm以
上である。
モノヒドロキシ化合物の含有量を低減するには、最終重合反応器の一つ前の反応器において、圧力を低下させる、滞留時間を長くするなどの方法があるが、反応液の粘度が上昇しすぎないように、反応条件を調節することが好ましい。反応液の流動性と、反応液中のモノヒドロキシ化合物の残存量をバランスさせるには、最終重合反応器の内圧と最終重合反応器の一つ前の反応器の内圧は1kPa以上の差を持たせることが好ましい。より好ましくは1.5kPa以上である。一方、圧力差が大きすぎると、最終重合反応器の入口での反応液の発泡が激しくなることがあるため、前記の両反応器の圧力差は10kPa以下であることが好ましい。より好ましくは8kPa以下である。
前記アルコール性ヒドロキシ基を有するジヒドロキシ化合物をモノマーに用いたポリカーボネートは、熱分解により二重結合末端を生成する。この末端基の量はポリカーボネートの熱履歴を示す指標となり、より高温、長時間反応を行うほど、二重結合末端の量が増加する。
前記最終重合反応器の一つ前の反応器の出口における反応液中の二重結合末端基の量と、前記最終重合反応器の出口での反応液中の二重結合末端基の量は下記式(7)を満たす範囲であることが好ましい。また、この二重結合末端基の生成量が少ないほど熱履歴が少ないことを示すため、Y−Xの値は、5.8以下が好ましく、5.5以下が特に好ましい。なお、式(3)におけるX、Yの値は、最終重合反応器の一つ前の反応器、最終重合反応器のそれぞれについて、反応温度、反応時間を適宜設定することにより制御することができる。
Y−X ≦ 6 かつ X ≦ 5 (7)
X:最終重合反応器の一つ前の反応器の出口における反応液中の二重結合末端構造の量[mol/ton]
Y:最終重合反応器出口における反応液中の二重結合末端構造の量[mol/ton]
二重結合末端の具体的な例としては、例えば、ISBからは下記構造式(7)または(7´)の末端基が生成する。また、1,4−シクロヘキサンジメタノール(CHDM)からは下記構造式(8)または(8´)の末端基が生成する。一般構造式で示すと、下記構造式(9)で表されるヒドロキシ基を有するジヒドロキシ化合物からは、下記構造式(10)で表される二重結合末端が生成する。
本発明における二重結合末端構造の量とは、樹脂中に含有される下記構造式(7)、(7´)、(8)(8´)でそれぞれ表される末端構造の合計量を表す。二重結合末端の生成量はポリカーボネートのH NMR測定によって求められる。
Figure 2014009332
なお、構造式(9)および(10)において、R,R,Rはそれぞれ水素原子又は置換基を有していてもよいアルキル基である。
前記炭酸ジエステルとして、ジフェニルカーボネートまたはジトリルカーボネート等の置換ジフェニルカーボネートを用い、本発明のポリカーボネートを製造する場合は、モノヒドロキシ化合物であるフェノールまたは置換フェノールが副生し、ポリカーボネート中に残存することは避けられない。しかし、これらのフェノールまたは置換フェノールといったモノヒドロキシ化合物は成形加工時の臭気の原因となる場合がある。なお、これらモノヒドロキシ化合物は、用いる原料により置換基を有していてもよく、例えば、炭素数が5以下であるアルキル基などを有していてもよい。
このようなモノヒドロキシ化合物をはじめとする、樹脂中の残存低分子成分を低減するには、前記最終重合反応器の圧力を極力低くして、留去することが効果的である。しかし、アルコール性ヒドロキシ基を有するジヒドロキシ化合物をモノマーに用いたポリカーボネートは、従来のビスフェノールAをモノマーに用いた芳香族ポリカーボネートと比べて、反応の平衡定数が大きいために、後段反応における分子量上昇速度が速い。そのため、圧力を低下させると反応が促進されすぎるために反応の制御が難しくなる。
本発明の製造方法においては、通常、ヒドロキシ末端の量と、下記構造式(11)で表されるフェニルカーボネート末端の量とが等量の時に反応速度は最大となるが、あえてヒドロキシ末端の量を減らし、フェニルカーボネート末端の量を増やすことで、粘度上昇速度を緩やかにして、最終重合反応器の圧力を低下させることが可能となる。さらに、ヒドロキシ末端が少ないほど、樹脂を溶融滞留させた時の着色が低減するなど、得られるポリカーボネートの熱安定性が向上する効果もある。
Figure 2014009332
このような末端基のバランスは、反応に用いられる全ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルの仕込みのモル比により制御することが可能であり、全ジヒドロキシ化合物に対して、炭酸ジエステルのモル比が0.990以上1.030以下であることが好ましく、より好ましくは0.995以上であり、より好ましくは1.25以下である。
前記上限以下とすることにより、後段反応において末端ヒドロキシ末端が消失するのを防ぎ、所望の分子量まで到達させることができる。前記下限以上とすることにより、ヒドロキシ末端が増加するのを防ぎ、得られる樹脂の熱安定性が向上する。
このように末端バランスを制御することで、前記最終重合反応器における粘度上昇速度を制御することが可能となり、前記最終重合反応器の圧力を低下できる。前記最終重合反応器の圧力は1kPa以下が好ましく、より好ましくは0.7kPa以下、特に好ましくは0.5kPa以下である。なお、圧力は低いほど好ましいが、10Paで減圧の限界となることが多い。
このようにして、本発明で重縮合して得られるポリカーボネートのヒドロキシ末端基の量は、前記最終重合反応器の出口において50mol/ton以下であることが好ましい。さらに好ましくは45mol/ton以下、特に好ましくは40mol/ton以下である。
得られるポリカーボネートが有するヒドロキシ末端基の量は少ないほど熱安定性の観点からは好ましいが、ヒドロキシ末端が完全に消失すると、反応が頭打ちとなって所望の分子量に到達しないおそれもあるため、ヒドロキシ末端は10mol/ton以上含むことが好ましい。
ヒドロキシ末端基は、前述の全ジヒドロキシ化合物に対する炭酸ジエステルの仕込みのモル比により制御することができる。炭酸ジエステルの仕込み量を増やすことで、ヒドロキシ末端基の量は低下する。
このようにして重合速度を制御することで、最終重合反応器の圧力を高真空に近い条件で重合することが可能となる。最終重合反応器出口における反応液中において、反応液中に含まれるモノヒドロキシ化合物は2000ppm以下であることが好ましく、さらに好
ましくは1500ppm以下、特に好ましくは1000ppm以下である。ただし、工業的に完全に除去することは困難であり、モノヒドロキシ化合物の含有量の下限は通常1ppmである。
<重縮合反応以降の工程>
本発明で重縮合して得られるポリカーボネートは、上述の重縮合反応を行った後、溶融状態のまま、フィルターに通して異物を濾過することが好ましい。特に、樹脂中に含まれる低分子量成分の除去、または熱安定剤等の添加混練を実施するため、重縮合で得られた樹脂を押出機に導入し、次いで押出機から排出された樹脂をフィルターを用いて濾過することが好ましい。
本発明の製造方法において、重縮合して得られるポリカーボネートを、フィルターを用いて濾過する方法としては、例えば、次のような方法が挙げられる。濾過に必要な圧力を発生させるために、前記最終重合反応器からギアポンプまたはスクリュー等を用いて溶融状態で抜き出し、フィルターで濾過する方法、前記最終重合反応器から溶融状態で一軸または二軸の押出機に樹脂を供給し、溶融押出した後、フィルターで濾過し、ストランドの形態で冷却固化させて、回転式カッター等でペレット化する方法、又は、前記最終重合反応器から溶融状態で一軸または二軸の押出機に樹脂を供給し、溶融押出しした後、一旦ストランドの形態で冷却固化させてペレット化し、該ペレットを再度押出機に導入してフィルターで濾過し、ストランドの形態で冷却固化させて、ペレット化する方法、および最終重合反応器から溶融状態で抜き出し、押出機を通さずにストランドの形態で冷却固化させて一旦ペレット化させた後に、一軸または二軸の押出機にペレットを供給し、溶融押出しした後、フィルターで濾過し、ストランドの形態で冷却固化させてペレット化させる方法等である。
中でも熱履歴を最小限に抑え、色相の悪化または分子量の低下等、熱劣化を抑制するためには、前記最終重合反応器から溶融状態で一軸または二軸の押出機に樹脂を供給し、溶融押出しした後、直接フィルターで濾過し、ストランドの形態で冷却固化させて、回転式カッター等でペレット化する方法が好ましい。以下、具体的に説明する。
本発明において押出機の形態は限定されるものではないが、通常は一軸または二軸の押出機が用いられる。中でも後述の脱揮性能の向上または添加剤の均一な混練のためには二軸の押出機が好ましい。この場合、軸の回転方向は異方向であっても同方向であってもよいが、混練性能の観点からは同方向が好ましい。押出機の使用によりフィルターへのポリカーボネートの供給を安定させることができる。
また、上記の通り重縮合させて得られたポリカーボネート中には、通常、色相または熱安定性、さらにはブリードアウト等により製品に悪影響を与える可能性のある原料モノマーや、エステル交換反応で副生するモノヒドロキシ化合物、またはポリカーボネートオリゴマー等の低分子量化合物が残存しているが、ベント口を有する押出機を用い、好ましくはベント口から真空ポンプ等を用いて減圧にすることにより、これらを脱揮除去することも可能である。また、押出機内に水等の揮発性液体を導入して、脱揮を促進することもできる。ベント口は1つであっても複数であってもよいが、好ましくは2つ以上である。
さらに、前記の押出機中で、通常知られている、熱安定剤、中和剤、紫外線吸収剤、離型剤、着色剤、帯電防止剤、滑剤、潤滑剤、可塑剤、相溶化剤または難燃剤等を添加し、混練することも出来る。
本発明においては、重縮合して得られたポリカーボネート中のヤケまたはゲル等の異物を除去するためフィルターで濾過するとよい。中でも、残存モノマーまたは副生フェノール等を減圧脱揮により除去し、熱安定剤または離型剤等の添加剤を混合するために、ポリカーボネートを前記の押出機で押出した後、フィルターで濾過することが好ましい。
このフィルターの形態としては、キャンドル型、プリーツ型またはリーフディスク型等公知のものが使用できるが、中でもフィルターの格納容器に対する濾過面積が大きく取れるリーフディスク型が好ましく、また、濾過面積が大きく取れるように複数組み合わせて用いるのが好ましい。
本発明において用いるフィルターは、保持部材(リテイナーとも言う)に、濾過部材(以下、メディアと言うことがある)を組み合わせて構成されており、それらフィルターが(場合によっては複数枚・複数個)格納容器に格納されたユニット(フィルターユニットと言うこともある)の形式で用いられる。
本発明においては、前記フィルターの差圧(圧力損失)が小さくなるように、複数の目開きのメディアを重ね合わせ、樹脂の侵入方向から順に目開きが細かくなっているタイプが好ましく、フィルター表面にゲルを破砕する目的で金属製のパウダーを焼結したタイプのものを使用することもできる。
前記のフィルターのメディアの材質としては、得られるポリカーボネートの濾過に必要な強度と耐熱性を有している限り制限はないが、中でも鉄の含有量が少ないSUS316またはSUS316L等のステンレス系が好ましい。織りの種類としては、例えば、平織、綾織、平畳織および綾畳織等、異物の捕集部分が規則正しい織り状になっているものの他、不織布タイプも挙げられる。本発明においては、ゲルの捕集能力の高い不織布タイプ、中でも不織布を構成する鋼線どうしを焼結させて固定したタイプが好ましい。
本発明において前記のフィルターの目開きは、99%の濾過精度として、好ましくは50μm以下、より好ましくは40μm以下、更に好ましくは20μm以下、異物を特に低減させたい場合には10μm以下が好ましい。
また、目開きが小さくなるとフィルターでの圧力損失が増大して、フィルターの破損を招いたり、剪断発熱によりポリカーボネートが劣化したりする可能性があるため、99%の濾過精度として、1μm以上であることが好ましい。
尚、ここで99%の濾過精度として定義される目開きとは、ISO16889(2008年)に準拠して決定された下記式(12)で表されるβχ値が1000の場合のχの値を言う。
βχ=(χμmより大きい1次側の粒子数)/(χμmより大きい2次側の粒子数) (12)
(ここで1次側とはフィルターでの濾過前、2次側とは濾過後を示す。)
なお、前記したフィルターのうち、ステンレス等の鉄製分を含むフィルターは、200℃を超える高温での濾過の際に樹脂を劣化させる傾向があるため、使用前に不動態化処理しておくことが好ましい。
不動態化処理としては、例えば、フィルターを硝酸等の酸に浸漬させたり、フィルターに酸を通液させたりして表面に不動態を形成させる方法、および水蒸気または酸素存在下で焙焼(加熱)処理する方法、並びにこれらを併用する方法等が挙げられる。中でも硝酸処理と焙焼の両方を実施することが好ましい。
この焙焼の温度は350℃〜500℃が好ましく、より好ましくは350℃〜450℃であり、焙焼時間は3時間〜200時間が好ましく、より好ましくは5時間〜100時間である。焙焼の温度が低すぎたり、時間が短すぎたりすると不動態の形成が不充分になり、濾過時にポリカーボネートを劣化させる傾向がある。一方、焙焼の温度が高すぎたり、時間が長すぎたりすると、フィルターメディアの損傷が激しくなり、必要な濾過精度が出なくなる可能性がある。
また、前記の硝酸で処理する際の硝酸の濃度は、5重量%〜50重量%が好ましく、よ
り好ましくは10重量%〜30重量%、処理時の温度は、5℃〜100℃が好ましく、より好ましくは50℃〜90℃、処理時間は、5分〜120分が好ましく、より好ましくは10分〜60分である。
硝酸の濃度が低すぎたり、処理温度が低すぎたり、処理時間が短すぎたりすると不動態の形成が不充分になり、硝酸の濃度が高すぎたり、処理温度が高すぎたり、処理時間が長すぎたりするとフィルターメディアの損傷が激しくなり、必要な濾過精度が出なくなる可能性がある。
尚、本発明の製造方法で使用される前記フィルターの格納容器の材質は、樹脂の濾過に耐えられる強度と耐熱性を有している限り制限はないが、好ましくは鉄の含有量が少ないSUS316またはSUS316L等のステンレス系である。
また、前記のフィルターの格納容器は、ポリカーボネートの供給口と排出口が実質的に水平に配置されていても、実質的に垂直に配置されていても、斜めに配置されていてもよいが、フィルター格納容器内でのガスおよびポリカーボネートの滞留を抑制し、ポリカーボネートの劣化を防ぐためには、ポリカーボネートの供給口がフィルター格納容器の下部に設置され、排出口が上部に配置されていることが好ましい。
更には、本発明の製造方法においては、前記フィルターへのポリカーボネートの供給量を安定化させるために、前記押出機と前記フィルターの間にギアポンプを配置するのが好ましい。ギアポンプの種類についての制限はないが、中でもシール部にグランドパッキンを用いない自己循環型が異物低減の観点から好ましい。
本発明において、ポリカーボネートが直接外気と触れるストランド化、ペレット化の際には、外気からの異物混入を防止するために、好ましくはJISB 9920(2002年)に定義されるクラス7、更に好ましくはクラス6より清浄度の高いクリーンルーム中で実施することが好ましい。
前記フィルターで濾過されたポリカーボネートは、冷却固化させ、回転式カッター等でペレット化されるが、そのペレット化の際、空冷または水冷等の冷却方法を使用するのが好ましい。空冷の際に使用する空気は、へパフィルター等で空気中の異物を事前に取り除いた空気を使用し、空気中の異物の再付着を防ぐのが好ましい。
水冷を使用する際は、イオン交換樹脂等で水中の金属分を取り除き、さらに水用フィルターにて、水中の異物を取り除いた水を使用することが好ましい。用いる水用フィルターの目開きは、99%除去の濾過精度として10〜0.45μmであることが好ましい。
<重縮合反応より前の工程>
一方、本発明の製造方法においては、異物をより低減させるために、原料モノマーを重縮合前にフィルターで濾過するのも有効である。以下、このフィルターを原料フィルターとする。
尚、その際の前記原料フィルターの形状としては、バスケットタイプ、ディスクタイプ、リーフディスクタイプ、チューブタイプ、フラット型円筒タイプまたはプリーツ型円筒タイプ等のいずれの型式であってもよい。中でもコンパクトで濾過面積が大きく取れるプリーツタイプのものが好ましい。
また、前記原料フィルターを構成する濾材としては、金属ワインド、積層金属メッシュ、金属不織布または多孔質金属板等のいずれでもよい。濾過精度の観点から、積層金属メッシュまたは金属不織布が好ましく、中でも金属不織布を焼結して固定したタイプのものが好ましい。
前記原料フィルターの材質についての制限は特になく、金属製または樹脂製セラミック製等を使用することができるが、耐熱性または着色低減の観点からは、鉄含有量80%以下である金属製フィルターが好ましく、中でもSUS304、SUS316、SUS31
6LまたはSUS310S等のステンレス鋼製が好ましい。
前記原料モノマーの濾過の際には、濾過性能を確保しながら前記原料フィルターの寿命を延ばすためには、複数のフィルターユニットを用いることが好ましく、中でも上流側のユニット中のフィルターの目開きをC[μm]、下流側のユニット中のフィルターの目開きをD[μm]とした場合に、少なくとも1つの組み合わせにおいて、CはDより大きい(C>D)ことが好ましい。この条件を満たした場合は、フィルターがより閉塞しにくくなり、前記原料フィルターの交換頻度の低減を図ることができる。
前記原料フィルターの目開きは特に制限はないが、少なくとも1つのフィルターにおいては、99%の濾過精度として10μm以下であることが好ましく、フィルターが複数配置されている場合には、最上流側において好ましくは8以上、更に好ましくは10以上であり、その最下流側において好ましくは2以下、更に好ましくは1以下である。尚、ここで言う前記原料フィルターの目開きも、上述した、ISO16889(2008年)に準拠して決定されるものである。
また、本発明において、原料を前記原料フィルターに通過させる際の原料流体の温度に制限はないが、低すぎると原料が固化し、高すぎると熱分解等の不具合があるため、100℃〜200℃であることが好ましく、より好ましくは100℃〜150℃である。
さらに、本発明においては、複数種用いる原料のうち、いずれの原料を濾過してもよいし、全てを濾過してもよく、その方法は、限定されるものではなく、ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルの原料混合物を濾過してもよいし、別々に濾過した後に混合してもよい。また、本発明の製造法においては、重縮合反応の途中の反応液をフィルターで濾過することもできる。
<原料と触媒>
以下、本発明のポリカーボネートに使用可能な原料、触媒について説明する。
(ジヒドロキシ化合物)
本発明のポリカーボネートの製造に用いられるジヒドロキシ化合物は、アルコール性ヒドロキシ基を有するジヒドロキシ化合物を含む。前記アルコール性ヒドロキシ基を有するジヒドロキシ化合物の中でも、構造の一部に下記式(4)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物(以降、特定ジヒドロキシ化合物と称する。)が用いられるのが好ましい。
Figure 2014009332
(但し、上記式(4)で表される部位が−CH−OHの一部を構成する部位である場合がも除く。)
構造の一部に前記式(4)で表される部位を有する特定ジヒドロキシ化合物としては、具体的には、オキシアルキレングリコール類、芳香族基に結合したエーテル基を主鎖中に有するジヒドロキシ化合物、環状エーテル構造を有するジヒドロキシ化合物等が挙げられる。これらのジヒドロキシ化合物は、重合反応性が良好であり、得られるポリカーボネートの耐熱性や光学特性なども優れている。一方で、従来のポリカーボネートで用いられる芳香族ジヒドロキシ化合物と比較して熱安定性が劣ることから、着色しやすい欠点もあるため、安定的に品質の良好なポリカーボネートが得られる本発明の製造方法が有効に用いられる。
前記のオキシアルキレングリコール類としては、例えば、ジエチレングリコール、トリ
エチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコールまたはポリプロピレングリコール等が挙げられる。
前記の主鎖に芳香族基に結合したエーテル基を有するジヒドロキシ化合物としては、例えば、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−メチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシプロポキシ)−3−メチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−イソプロピルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−イソブチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−tert−ブチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−シクロヘキシルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−フェニルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3,5−ジメチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−tert−ブチル−6−メチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(3−ヒドロキシ−2,2−ジメチルプロポキシ)フェニル]フルオレン、2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル]プロパン、1,3−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ビフェニルおよびビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]スルホン等が挙げられる。
得られるポリカーボネートの光学特性や耐熱性、機械物性の観点からは、前記の芳香族基に結合したエーテル基を主鎖中に有するジヒドロキシ化合物の中でも、下記構造式(6)で表されるジヒドロキシ化合物を用いるのが好ましい。入手及び製造のしやすさや前述の性能から特に好ましいのは、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレンである。
Figure 2014009332
(上記一般式(6)中、R1〜R4はそれぞれ独立に、水素原子、置換若しくは無置換の炭素数1〜20のアルキル基、置換若しくは無置換の炭素数6〜20のシクロアルキル基、または、置換若しくは無置換の炭素数6〜20のアリール基を表し、XとXはそれぞれ独立に、置換若しくは無置換の炭素数2〜10のアルキレン基、置換若しくは無置換の炭素数6〜20のシクロアルキレン基、または、置換若しくは無置換の炭素数6〜20のアリーレン基を表す。m及びnはそれぞれ独立に1〜5の整数である。)
前記の環状エーテル構造を有するジヒドロキシ化合物としては、例えば、下記式(5)で表されるジヒドロキシ化合物、下記式(13)および下記式(14)で表されるスピログリコール等が挙げられる。
なお、前記の「環状エーテル構造を有するジヒドロキシ化合物」の「環状エーテル構造」とは、環状構造中にエーテル基を有し、環状鎖を構成する炭素が脂肪族炭素である構造
からなるものを意味する。
Figure 2014009332
ただし、前記式(5)で表されるジヒドロキシ化合物としては、例えば、立体異性体の関係にある、イソソルビド(ISB)、イソマンニドおよびイソイデットが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの特定ジヒドロキシ化合物の中でも、入手のし易さ、ハンドリング、重合時の反応性および得られるポリカーボネートの色相の観点から、式(5)、(13)または(14)で表されるジヒドロキシ化合物に代表される、環状エーテル構造を有するジヒドロキシ化合物が好ましく、上記式(5)で表されるジヒドロキシ化合物または下記式(13)で表されるスピログリコール等の環状エーテル構造を2つ有するジヒドロキシ化合物がさらに好ましく、上記式(5)で表されるジヒドロキシ化合物等の、糖由来の環状エーテル構造を2つ有するジヒドロキシ化合物である無水糖アルコールが特に好ましい。
これらの特定ジヒドロキシ化合物のうち、芳香環構造を有しない特定ジヒドロキシ化合物を用いることがポリカーボネートの耐光性の観点から好ましい。中でも植物由来の資源として豊富に存在し、容易に入手可能な種々のデンプンから製造されるソルビトールを脱水縮合して得られる上記式(5)で表されるジヒドロキシ化合物等の無水糖アルコールが、入手及び製造のし易さ、耐光性、光学特性、成形性、耐熱性およびカーボンニュートラルの面から最も好ましい。
これらの特定ジヒドロキシ化合物は、得られるポリカーボネートの要求性能に応じて、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明のポリカーボネートは、上記の特定ジヒドロキシ化合物以外のジヒドロキシ化合物(以下「その他のジヒドロキシ化合物」と称す場合がある。)に由来する構造単位を含んでいてもよい。前記その他のジヒドロキシ化合物としては、例えば、直鎖脂肪族炭化水素のジヒドロキシ化合物、直鎖分岐脂肪族炭化水素のジヒドロキシ化合物、脂環式炭化水素のジヒドロキシ化合物および芳香族ビスフェノール類等が挙げられる。
前記の直鎖脂肪族炭化水素のジヒドロキシ化合物としては、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、1,5−ヘプタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,10−デカンジオールおよび1,12−ドデカンジオール等が挙げられる。
前記の直鎖分岐脂肪族炭化水素のジヒドロキシ化合物としては、例えば、ネオペンチルグリコールおよびヘキシレングリコール等が挙げられる。
前記の脂環式炭化水素のジヒドロキシ化合物としては、例えば、1,2−シクロヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、ペンタシクロペンタデカンジメタノール、2,6−デカリンジメタノール、1,5−デカリンジメタノール、2,3−デカリンジメタノール、2,3−ノルボルナンジメタノール、2,5−ノルボルナンジメタノール、1,3−アダマンタンジメタノール、リモネンなどのテルペン化合物から誘導されるジヒドロキシ化合物等が挙げられる。
前記の芳香族ビスフェノール類としては、例えば、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジエチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−(3,5−ジフェニル)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,4’−ジヒドロキシ−ジフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−5−ニトロフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、2,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジクロロジフェニルエーテル、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ−2−メチル)フェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンおよび9,9−ビス(4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)フルオレン等が挙げられる。
これらの前記その他のジヒドロキシ化合物も、得られるポリカーボネートの要求性能に応じて、単独で前記特定ジヒドロキシ化合物と併用してもよく、2種以上を組み合わせた上で前記特定ジヒドロキシ化合物と併用してもよい。中でも、ポリカーボネートの耐光性や光学特性の観点からは、分子構造内に芳香環構造を有しないジヒドロキシ化合物、即ち脂肪族炭化水素のジヒドロキシ化合物または脂環式炭化水素のジヒドロキシ化合物が好ましく、これらを併用してもよい。
前記したうち、このように耐光性に適した脂肪族炭化水素のジヒドロキシ化合物としては、特に1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ヘプタンジオールまたは1,6−ヘキサンジオール等の炭素数3〜6で両末端にヒドロキシ基を有する直
鎖脂肪族炭化水素のジヒドロキシ化合物が好ましい。
脂環式炭化水素のジヒドロキシ化合物としては、特に1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノールまたはトリシクロデカンジメタノールが好ましく、より好ましいのは1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノールまたは1,4−シクロヘキサンジメタノールなどのシクロヘキサン構造を有するジヒドロキシ化合物であり、最も好ましいのは1,4−シクロヘキサンジメタノールである。
これら前記その他のジヒドロキシ化合物を、前記特定ジヒドロキシ化合物と併用することにより、ポリカーボネートの柔軟性の改善や耐熱性の向上、および成形性の改善などの効果を得ることも可能である。
ただし、前記その他のジヒドロキシ化合物に由来する構造単位の含有割合が多過ぎると、機械的物性の低下または耐熱性の低下を招くことがあるため、全てのジヒドロキシ化合物に由来する構造単位のモル数に対する、前記その他のジヒドロキシ化合物に由来する構造単位の割合は、好ましくは80mol%以下、更に好ましくは70mol%以下、特に好ましくは60mol%以下である。一方、好ましくは10mol%以上、更に好ましくは15mol%以上、特に好ましくは20mol%以上である。
アルコール性ヒドロキシ基を有するジヒドロキシ化合物を多く用いるほど、重合反応の制御が難しくなるため、本発明の方法は、フェノール性ヒドロキシ基を有するジヒドロキシ化合物が少ないほど有用に用いられる。本発明においては、反応に用いる全ジヒドロキシ化合物のうち、フェノール性ヒドロキシ基を有するジヒドロキシ化合物は10mol%以下であることが好ましい。8mol%以下がさらに好ましく、5mol%以下が特に好ましい。
本発明の全てのジヒドロキシ化合物は、還元剤、抗酸化剤、脱酸素剤、光安定剤、制酸剤、pH安定剤または熱安定剤等の安定剤を含んでいてもよい。特に酸性下で本発明の特定ジヒドロキシ化合物は変質しやすいことから、塩基性安定剤を含むことが好ましい。
塩基性安定剤としては、例えば、長周期型周期表(Nomenclature of Inorganic Chemistry IUPAC Recommendations2005)における1族または2族の金属の水酸化物、炭酸塩、リン酸塩、亜リン酸塩、次亜リン酸塩、硼酸塩および脂肪酸塩、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルエチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルメチルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、トリブチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリブチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、テトラフェニルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド、メチルトリフェニルアンモニウムヒドロキシドおよびブチルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド等の塩基性アンモニウム化合物、ジエチルアミン、ジブチルアミン、トリエチルアミン、モルホリン、N−メチルモルホリン、ピロリジン、ピペリジン、3−アミノ−1−プロパノール、エチレンジアミン、N−メチルジエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、4−アミノピリジン、2−アミノピリジン、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン、4−ジエチルアミノピリジン、2−ヒドロキシピリジン、2−メトキシピリジン、4−メトキシピリジン、2−ジメチルアミノイミダゾール、2−メトキシイミダゾール、イミダゾール、2−メルカプトイミダゾール、2−メチルイミダゾールおよびアミノキノリン等のアミン系化合物、並びにジ−(tert−ブチル)アミンおよび2,2,6,6−テトラメチルピペリジン等のヒンダードアミン系化合物が挙げられる。安定剤の中でも安定化の効果からはテトラメチルアンモニウムヒドロキシド、イミダゾールまたはヒンダードアミン
系化合物が好ましい。
これら塩基性安定剤の、本発明で用いる全てのジヒドロキシ化合物中の含有量に特に制限はないが、本発明で用いる前記の特定ジヒドロキシ化合物は酸性状態では不安定であるので、上記の安定剤を含む特定ジヒドロキシ化合物の水溶液のpHが7以上となるように安定剤を添加することが好ましい。
少なすぎると本発明の特定ジヒドロキシ化合物の変質を防止する効果が得られない可能性があり、多すぎると本発明の特定ジヒドロキシ化合物の変性を招く場合があるので、本発明で用いるそれぞれのジヒドロキシ化合物に対して、0.0001重量%〜1重量%であることが好ましく、より好ましくは0.001重量%〜0.1重量%である。
これら塩基性安定剤を本発明で用いるジヒドロキシ化合物に含めたままポリカーボネートの製造原料として用いると、塩基性安定剤自体が重合触媒となり、重合速度または品質の制御が困難になるだけでなく、樹脂色相の悪化を招いてしまう。
このため、特定ジヒドロキシ化合物または前記その他のジヒドロキシ化合物のうち塩基性安定剤を有するものについては、ポリカーボネートの製造原料として使用する前に塩基性安定剤をイオン交換樹脂または蒸留等で除去することが好ましい。
また、本発明で用いられる特定ジヒドロキシ化合物は、酸素によって徐々に酸化されやすいので、保管または製造時の取り扱いの際には、酸素による分解を防ぐため、水分が混入しないようにし、また、脱酸素剤を用いたり、窒素雰囲気下にしたりすることが好ましい。
(炭酸ジエステル)
本発明のポリカーボネートは、上述した特定ジヒドロキシ化合物を含むジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとを原料として、エステル交換反応により重縮合させて得ることができる。
用いられる炭酸ジエステルとしては、通常、下記式(15)で表されるものが挙げられる。これらの炭酸ジエステルは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
Figure 2014009332
前記式(15)において、AおよびAは、それぞれ置換もしくは無置換の炭素数1〜18の脂肪族炭化水素基または置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基であり、AとAとは同一であっても異なっていてもよい。AおよびAの好ましいものは置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基であり、より好ましいのは無置換の芳香族炭化水素基である。
前記式(15)で表される炭酸ジエステルとしては、例えば、ジフェニルカーボネート(DPC)およびジトリルカーボネート等の置換ジフェニルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート並びにジ−t−ブチルカーボネート等が挙げられる。中でも好ましくはジフェニルカーボネートまたは置換ジフェニルカーボネートであり、特に好ましくはジフェニルカーボネートである。
なお、炭酸ジエステルは、塩化物イオンなどの不純物を含む場合があり、重合反応を阻害したり、得られるポリカーボネートの色相を悪化させたりする場合があるため、必要に応じて、蒸留などにより精製したものを使用することが好ましい。
また、上記の炭酸ジエステルの一部を、その50モル%以下、好ましくは30モル%以下の量のジカルボン酸又はそのエステルで置換しても良い。このようなジカルボン酸又はそのエステルとしては、テレフタル酸、イソフタル酸、コハク酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などのジカルボン酸、およびそれらのメチルエステル体、フェニルエステル体等が用いられる。炭酸ジエステルの一部を、ジカルボン酸又はそのエステルで置換した場合、当該ポリカーボネート樹脂を、ポリエステルカーボネート樹脂と称する場合がある。
(エステル交換反応触媒)
本発明のポリカーボネートは、上述のようにアルコール性ヒドロキシ基を有するジヒドロキシ化合物を含むジヒドロキシ化合物と、前記式(15)で表される炭酸ジエステルをエステル交換反応させて製造する。より詳細には、エステル交換させ、副生するモノヒドロキシ化合物等を系外に除去することによって得られる。
前記エステル交換反応の際には、エステル交換反応触媒存在下で重縮合を行うが、本発明のポリカーボネートの製造時に使用し得るエステル交換反応触媒(以下、単に触媒、重合触媒と言うことがある)は、反応速度または重縮合して得られるポリカーボネートの色調に非常に大きな影響を与え得る。
用いられる触媒としては、製造されたポリカーボネートの透明性、色相、耐熱性、熱安定性、及び機械的強度を満足させ得るものであれば限定されない。例えば、長周期型周期表における1族または2族(以下、単に「1族」、「2族」と表記する。)の金属化合物、並びに塩基性ホウ素化合物、塩基性リン化合物、塩基性アンモニウム化合物およびアミン系化合物等の塩基性化合物が挙げられる。好ましくは1族金属化合物及び/又は2族金属化合物が使用される。
前記の1族金属化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化セシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素リチウム、炭酸水素セシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、炭酸セシウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸リチウム、酢酸セシウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸セシウム、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム、水素化ホウ素リチウム、水素化ホウ素セシウム、フェニル化ホウ素ナトリウム、フェニル化ホウ素カリウム、フェニル化ホウ素リチウム、フェニル化ホウ素セシウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸リチウム、安息香酸セシウム、リン酸水素2ナトリウム、リン酸水素2カリウム、リン酸水素2リチウム、リン酸水素2セシウム、フェニルリン酸2ナトリウム、フェニルリン酸2カリウム、フェニルリン酸2リチウム、フェニルリン酸2セシウム、ナトリウム、カリウム、リチウム、セシウムのアルコレート、フェノレート、ビスフェノールAの2ナトリウム塩、2カリウム塩、2リチウム塩および2セシウム塩等が挙げられる。中でも重合活性と得られるポリカーボネートの色相の観点から、リチウム化合物が好ましい。
前記の2族金属化合物としては、例えば、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化マグネシウム、水酸化ストロンチウム、炭酸水素カルシウム、炭酸水素バリウム、炭酸水素マグネシウム、炭酸水素ストロンチウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸ストロンチウム、酢酸カルシウム、酢酸バリウム、酢酸マグネシウム、酢酸ストロンチウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸マグネシウムおよびステアリン酸ストロンチウム等が挙げられる。中でもマグネシウム化合物、カルシウム化合物またはバリウム化合物が好ましく、重合活性と得られるポリカーボネートの色相の観点から、マグネシウム化合物及び/又はカルシウム化合物が更に好ましく、最も好ましくはカルシウム化合物である。
なお、前記の1族金属化合物及び/又は2族金属化合物と共に、補助的に、塩基性ホウ素化合物、塩基性リン化合物、塩基性アンモニウム化合物、アミン系化合物等の塩基性化合物を併用することも可能であるが、1族金属化合物及び/又は2族金属化合物のみを使用することが特に好ましい。
前記の塩基性リン化合物としては、例えば、トリエチルホスフィン、トリ−n−プロピルホスフィン、トリイソプロピルホスフィン、トリ−n−ブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィンおよび四級ホスホニウム塩等が挙げられる。
前記の塩基性アンモニウム化合物としては、例えば、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルエチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルメチルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、トリブチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリブチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、テトラフェニルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド、メチルトリフェニルアンモニウムヒドロキシドおよびブチルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド等が挙げられる。
前記のアミン系化合物としては、例えば、4−アミノピリジン、2−アミノピリジン、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン、4−ジエチルアミノピリジン、2−ヒドロキシピリジン、2−メトキシピリジン、4−メトキシピリジン、2−ジメチルアミノイミダゾール、2−メトキシイミダゾール、イミダゾール、2−メルカプトイミダゾール、2−メチルイミダゾール、アミノキノリンおよびグアニジン等が挙げられる。
上記重合触媒の使用量は、重合に使用した全ジヒドロキシ化合物1mol当たり0.1μmol〜300μmolが好ましく、より好ましくは0.5μmol〜100μmolである。
中でも長周期型周期表における2族からなる群及びリチウムより選ばれた少なくとも1種の金属を含む化合物を用いる場合、特にはマグネシウム化合物及び/またはカルシウム化合物を用いる場合は、金属量として、前記全ジヒドロキシ化合物1mol当たり、0.1μmol以上が好ましく、より好ましくは0.3μmol以上、特に好ましくは0.5μmol以上とする。また上限としては、20μmol以下が好ましく、より好ましくは10μmol以下であり、さらに好ましくは3μmol以下で、特に好ましくは1.5μmol以下である。
触媒量が少なすぎると、重合速度が遅くなるため、所望の分子量のポリカーボネートを得ようとするにはその分だけ重合温度を高くせざるを得なくなる。そのために、得られたポリカーボネートの色相が悪化する可能性が高くなり、また、未反応の原料が重合途中で揮発してジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルのモル比率が崩れ、所望の分子量に到達しない可能性がある。一方、重合触媒の使用量が多すぎると、好ましくない副反応を併発し、得られるポリカーボネートの色相の悪化または成形加工時の樹脂の着色を招く可能性がある。
ただし、1族金属の中でもナトリウム、カリウムまたはセシウムは、ポリカーボネート中に多く含まれると色相に悪影響を及ぼす可能性がある。そして、これらの金属は使用する触媒からのみではなく、原料または反応装置から混入する場合がある。
出所にかかわらず、ポリカーボネート中のこれらの金属の化合物の合計量は、金属量として、前記全ジヒドロキシ化合物1mol当たり、2μmol以下が好ましく、より好ましくは1μmol以下、さらに好ましくは0.5μmol以下である。
<製造装置の一例>
次に、図1を用いて、本実施の形態が適用される本発明の製造方法の一例を具体的に説明する。以下に説明する製造装置、原料または触媒は本発明の実施態様の一例であり、本発明は以下に説明する例に限定されるものではない。
図1は、本発明の製造方法で用いる製造装置の一例を示す図である。図1に示す製造装置において、本発明のポリカーボネートは、原料の前記ジヒドロキシ化合物及び炭酸ジエステルを調製する原料調製工程と、これらの原料を溶融状態で複数の反応器を用いて重縮合反応させる重縮合工程を経て製造される。重縮合工程で生成した留出液は凝縮器12a、12b、12c、12dにて液化して留出液回収タンク14aに回収される。
重縮合工程後、重合反応液中の未反応原料若しくは反応副生物を脱揮除去する工程、熱安定剤、離型剤若しくは色剤等を添加する工程、またはポリカーボネートを所定の粒径のペレットに形成する工程を経て、ポリカーボネートのペレットが成形される。
なお、以下は原料のジヒドロキシ化合物としてイソソルビド(ISB)と1,4−シクロヘキサンジメタノール(CHDM)を、原料の炭酸ジエステルとしてジフェニルカーボネート(DPC)をそれぞれ用い、また、触媒として酢酸カルシウムを用いた場合を例示して説明する。ISBは前記の特定ジヒドロキシ化合物に該当する。
まず、原料調製工程において、窒素ガス雰囲気下、所定の温度で調製されたDPCの溶融液が、原料供給口1aから原料混合槽2aに連続的に供給される。また、窒素ガス雰囲気下で計量されたISBの溶融液、CHDMの溶融液が、それぞれ原料供給口1b、1cから、原料混合槽2aに連続的に供給される。そして、原料混合槽2a内でこれらは混合され、原料混合溶融液が得られる。
次に、得られた原料混合溶融液は、原料供給ポンプ4a、原料フィルター5aを経由して第1竪型攪拌反応器6aに連続的に供給される。また、原料触媒として、酢酸カルシウム水溶液が、原料混合溶融液の移送配管途中の触媒供給口1dから連続的に供給される。
図1の製造装置の重縮合工程においては、第1竪型攪拌反応器6a、第2竪型攪拌反応器6b、第3竪型攪拌反応器6c、第4横型攪拌反応器6dが直列に設けられる。各反応器では液面レベルを一定に保ち、重縮合反応が行われ、第1竪型攪拌反応器6aの槽底より排出された重合反応液は第2竪型攪拌反応器6bへ、続いて、第3竪型攪拌反応器6cへ、第4横型攪拌反応器6dへと順次連続供給され、重縮合反応が進行する。
各反応器における反応条件は、重縮合反応の進行とともに高温、高真空、低攪拌速度となるようにそれぞれ設定することが好ましい。図1の装置を用いた場合、第4横型攪拌反応器6dが本発明における最終重合反応器に相当し、第3竪型攪拌反応器6cが最終重合反応器の一つ前の反応器に相当する。
第1竪型攪拌反応器6a、第2竪型攪拌反応器6b及び第3竪型攪拌反応器6cには、マックスブレンド翼7a、7b、7cがそれぞれ設けられる。また、第4横型攪拌反応器6dには、2軸メガネ型攪拌翼7dが設けられる。第3竪型攪拌反応槽6cの後には移送する反応液が高粘度になるため、ギアポンプ4bが設けられる。
第1竪型攪拌反応器6aと第2竪型攪拌反応器6bは、供給熱量が特に大きくなることがあるため、加熱媒体の温度が過剰に高温にならないように、それぞれ内部熱交換器8a、8bが設けられる。
なお、これらの4器の反応器には、それぞれ、重縮合反応により生成する副生物等を排出するための留出管11a、11b、11c、11dが取り付けられる。第1竪型攪拌反応器6aと第2竪型攪拌反応器6bについては留出液の一部を反応系に戻すために、還流冷却器9a、9bと還流管10a、10bがそれぞれ設けられる。還流比は反応器の圧力
と、還流冷却器の加熱媒体の温度とをそれぞれ適宜調整することにより制御可能である。
前記の留出管11a、11b、11c、11dは、それぞれ凝縮器12a、12b、12c、12dに接続し、また、各反応器は、減圧装置13a、13b、13c、13dにより、所定の減圧状態に保たれる。
尚、本実施の形態においては、各反応器にそれぞれ取り付けられた凝縮器12a、12b、12c、12dから、フェノール(モノヒドロキシ化合物)等の副生物が連続的に液化回収される。また、第3竪型攪拌反応器6cと第4横型竪型攪拌反応器6dにそれぞれ取り付けられた凝縮器12c、12dの下流側にはコールドトラップ(図示せず)が設けられ、副生物が連続的に固化回収される。
所定の分子量まで上昇させた反応液は第4横型攪拌反応器6dから抜き出され、ギアポンプ4cにより二軸押出機15aに移送される。二軸押出機には真空ベントが具備されており、ポリカーボネート中の残存低分子成分を除去する。また、必要に応じて酸化防止剤、光安定剤、着色剤または離型剤などが添加される。
二軸押出機15aからギアポンプ4dによりポリマーフィルター15bに樹脂が供給され、異物が濾過される。フィルターを通った樹脂はダイスヘッドからストランド状に抜き出され、ストランド冷却槽16aで水により樹脂を冷却した後、ストランドカッター16bでペレットにされる。ペレットは空送ブロワー16cにより、気力輸送されて、製品ホッパー16dに送られる。計量器16eで所定量の製品が製品袋16fに梱包される。
<連続製造装置における溶融重縮合の開始>
本実施の形態では、ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとのエステル交換反応に基づく重縮合は、以下の手順に従い開始される。
先ず、図1に示す連続製造装置において、直列に接続された4器の反応器(第1竪型攪拌反応器6a、第2竪型攪拌反応器6b、第3竪型攪拌反応器6c、第4横型攪拌反応器6d)を、予め、所定の内温と圧力とにそれぞれ設定する。ここで、各反応器の内温、加熱媒体の温度と圧力とは、特に限定されないが、以下のように設定することが好ましい。
(第1竪型攪拌反応器6a)
内温:130℃〜230℃、圧力:10kPa〜40kPa、加熱媒体の温度140℃〜240℃ 、還流比0.01〜10
(第2竪型攪拌反応器6b)
内温:150℃〜230℃、圧力:8kPa〜40kPa、加熱媒体の温度160℃〜240℃、還流比0.01〜5
(第3竪型攪拌反応器6c)
内温:170℃〜230℃、圧力:1kPa〜10kPa、加熱媒体の温度180℃〜240℃
(第4横型攪拌反応器6d)
内温:210℃〜260℃、圧力:0.01kPa〜3kPa、加熱媒体の温度210〜260℃
次に、別途、原料混合槽2aにて窒素ガス雰囲気下、前記ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとを、所定のモル比で混合し、原料混合溶融液を得る。
続いて、前述した4器の反応器の内温と圧力が、それぞれの設定値の±5%の範囲内に達した後に、別途、原料混合槽2aで調製した原料混合溶融液を、第1竪型攪拌反応器6a内に連続供給する。また、原料混合溶融液の供給開始と同時に、第1竪型攪拌反応器6a内に触媒供給口1dから触媒を連続供給し、エステル交換反応を開始する。
エステル交換反応が行われる第1竪型攪拌反応器6aでは、重合反応液の液面レベルは、所定の平均滞留時間になるように一定に保たれる。第1竪型攪拌反応器6a内の液面レ
ベルを一定に保つ方法としては、通常、液面計等で液レベルを検知しながら槽底部のポリマー排出ラインに設けたバルブ(図示せず)の開度を制御する方法が挙げられる。
続いて、重合反応液は、第1竪型攪拌反応器6aの槽底から排出され、第2竪型攪拌反応器6bへ、続いて第2竪型攪拌反応器6bの槽底から排出され、第3竪型攪拌反応器6cへ逐次連続供給される。前記前段反応工程において、副生するフェノールの理論量に対して50%から95%が留出され、オリゴマーが生成する。
次に、前記前段反応工程で得られたオリゴマーをギアポンプ4bにより移送し、横型攪拌反応器6dに供給して、後述するような後段反応を行なうのに適した温度・圧力条件下で、副生するフェノールおよび一部未反応モノマーを、留出管11dを介して系外に除去してポリカーボネートを生成させる。
前記横型攪拌反応器6dは、1本または2本以上の水平な回転軸を有し、当該回転軸から垂直方向に延びる円板型、車輪型、櫂型、棒型または窓枠型などの攪拌翼を1種または2種以上を組み合わせて、回転軸あたり少なくとも水平方向に2段以上設置されている。
水平回転軸が2本以上ある場合、それぞれの水平回転軸に設けられた攪拌翼は、互いに衝突しないように、水平位置をずらして配してある。このような攪拌翼により反応液をかき上げ、または押し広げて反応液の表面更新を行なう。
その形状は、それら水平回転軸の長さをLとし、攪拌翼の回転直径をDとしたときにL/Dが1〜15である。なお、本明細書中、上記「反応液の表面更新」という語は、液表面の反応液が液表面下部の反応溶液と入れ替わることを意味する。
前記横型攪拌反応器6dとして、2軸メガネ型攪拌翼7dを有する攪拌機の例を図2及び図3に示す。図2は2軸メガネ型攪拌翼7dの斜視図であり、図3はそれを収めた横型攪拌反応器6dを上から見た模式図である。
攪拌翼21A、21Bは互いに90度の位相差の関係にあり、それぞれの軸22A、22Bは逆回転している。これにより、それぞれの攪拌翼21A、21Bの先端部分が、相手方の攪拌翼21B、21Aに密着した樹脂をこそげ落としながら回転していく。このような攪拌翼21A、21Bが、軸方向に複数枚連ねられている。
前記後段反応工程における反応温度は、200〜260℃であることが好ましく、より好ましくは210〜250℃の範囲であり、反応圧力は、0.01kPa〜13.3kPaであることが好ましく、より好ましくは0.03kPa〜3kPa、さらに好ましくは0.05kPa〜2kPaPaである。
本発明の製造方法において、横型攪拌反応器6dを、装置構造上、2軸ベント式押出機と比較してホールドアップが大きいものを用いることにより、反応液の滞留時間を適切に設定でき、かつ剪断発熱を抑制されることによって温度を下げることができ、より色調の改良された、機械的性質の優れたポリカーボネートを得ることが可能となる。
本実施の形態では、図1に示す連続製造装置において、4器の反応器の内温と圧力が所定の数値に達した後に、原料混合溶融液と触媒とが予熱器を介して連続供給され、エステル交換反応に基づく溶融重縮合が開始される。
これにより、各反応器における重合反応液の平均滞留時間は、溶融重縮合の開始直後から定常運転時と同等となる。その結果、重合反応液は必要以上の熱履歴を受けることがなく、得られるポリカーボネート中に生じるゲルまたはヤケ等の異物が低減する。また色調も良好となる。
このようにして重縮合して得られる本発明のポリカーボネートの分子量は、還元粘度で表すことができ、0.20dL/g以上であることが好ましく、0.30dL/g以上であることがより好ましく、一方、1.20dL/g以下であることが好ましく、1.00
dL/g以下であることがより好ましく、0.80dL/g以下であることがさらに好ましい。
ポリカーボネートの還元粘度が低すぎると成形品の機械強度が低くなる可能性があり、大きすぎると、成形する際の流動性が低下し、生産性または成形性を低下する傾向がある。尚、前記の還元粘度は、溶媒として塩化メチレンを用い、ポリカーボネート濃度を0.6g/dLに精密に調製し、温度20.0℃±0.1℃でウベローデ粘度計を用いて測定した値である。
また、本発明の製造方法により、異物の少ないポリカーボネートが得られる。具体的には、本発明のポリカーボネートから成形された厚さ35μm±5μmのフィルムに含まれる最大長が25μm以上の異物が、好ましくは500個/m以下、より好ましくは300個/m以下、最も好ましくは200個/m以下とすることができる。
なお、一般的に「フィルム」とは、長さ及び幅に比べて厚さが極めて小さく、最大厚さが任意に限定されている薄く平らな製品をいい、通常はロールの形で供給されるものであり、一般的に「シート」とは、JISにおける定義上、薄く、その厚さが長さと幅のわりには小さく平らな製品をいう。しかしながら、「シート」と「フィルム」との間の境界は定かではなく、本発明において文言上両者を区別する必要はないので、本明細書において「フィルム」と称する場合であっても、「シート」をも含む概念として用いることとする。
本発明のポリカーボネートは、射出成形法、押出成形法または圧縮成形法等の通常知られている方法で成形物にすることができる。ポリカーボネートの成形方法は特に限定されないが、成形品形状に合わせて適切な成形法が選択される。成形品がフィルムまたはシートの形状である場合は押出成形法が好ましく、射出成形法では成形品の自由度が得られる。
また、本発明のポリカーボネートは、種々の成形を行う前に、必要に応じて、熱安定剤、中和剤、紫外線吸収剤、離型剤、着色剤、帯電防止剤、滑剤、潤滑剤、可塑剤、相溶化剤または難燃剤等の添加剤を、タンブラー、スーパーミキサー、フローター、V型ブレンダー、ナウターミキサー、バンバリーミキサーまたは押出機などで混合することもできる。
さらに、本発明のポリカーボネートは、例えば、芳香族ポリカーボネート、芳香族ポリエステル、脂肪族ポリエステル、ポリアミド、ポリスチレン、ポリオレフィン、アクリル、アモルファスポリオレフィン、ABSおよびASなどの合成樹脂、ポリ乳酸およびポリブチレンスクシネートなどの生分解性樹脂、並びにゴムなどの1種又は2種以上と混練して、ポリマーアロイとしても用いることもできる。
<本願発明が効果を奏する理由>
本願発明が効果を奏する理由としては、以下のとおり推察される。すなわち、本願発明のように、アルコール性ヒドロキシ基を有するジヒドロキシ化合物を原料に用いる場合、従来の芳香族ジヒドロキシ化合物とは異なる反応特性や熱安定性を有するため、反応条件の制御範囲が従来とは異なり、また、非常に範囲も狭くなる。その対応策として、横型攪拌反応器を用いる場合、反応液の流速を特定範囲に制御することにより、反応が制御しやすくなるため、最適反応条件において安定して製造を行うことができるようになる。結果として、得られるポリカーボネートの品質や生産性の向上、品質の安定化といった効果が得られることにつながる。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例により限定されるものではない。なお、以下の実施例における各種の製造条件や評価結果の値は、本発明の実施態様における上限又は下限の好ましい値としての意味をもつものであり、好ましい範囲は前記した上限又は下限の値と、下記実施例の値又は実施例同士の値との組み合わせで規定される範囲であってもよい。
なお、以下の実施例の記載の中で用いた化合物の略号は次の通りである。
・ISB:イソソルビド[ロケットフルーレ社製、商品名:POLYSORB]
・CHDM:1,4−シクロヘキサンジメタノール[新日本理化(株)製、商品名:SKY CHDM]
・BHEPF:9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン[大阪ガスケミカル(株)製]
・DEG:ジエチレングリコール[三菱化学(株)製]
・DPC:ジフェニルカーボネート[三菱化学(株)製]
反応液と留出液、およびポリカーボネートの組成分析と物性の評価は次の方法により行った。
1)反応液中のモノヒドロキシ化合物(フェノール)含有量
試料約0.5gを精秤し、塩化メチレン5mLに溶解した後、総量が25mLになるようにアセトンを添加した。溶液を0.2μmディスクフィルターでろ過して、液体クロマトグラフィーにてフェノールの定量を行った後、含有量を算出した。用いた装置または条件は、次のとおりである。
・装置:(株)島津製作所製
システムコントローラ:CBM−20A
ポンプ:LC−20AD
カラムオーブン:CTO−10ASvp
検出器:SPD−M20A
分析カラム:Cadenza CD−18 4.6mmΦ×250mm
オーブン温度:40℃
・検出波長:220nm
・溶離液:A液:0.1%リン酸水溶液、B液:アセトニトリル
A/B=40/60(vol%)からA/B=0/100(vol%)まで10分間でグラジエント
・流量:1mL/min
・試料注入量:10μL
2)ポリカーボネート中の全ヒドロキシ末端基量と二重結合末端基量の測定
ポリカーボネート30mgを秤取し、重クロロホルム約0.7mLに溶解し、これを内径5mmのNMR用チューブに入れ、H NMRスペクトルを測定した。ポリカーボネ
ートを構成する各ジヒドロキシ化合物に由来するヒドロキシ末端基と二重結合末端基、および各ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位に基づくシグナルの強度比より全ヒドロキシ末端基、および二重結合末端基の量を定量した。用いた装置または条件は、次のとおりである。
・装置:日本電子社製JNM−AL400(共鳴周波数400MHz)
・測定温度:常温
・緩和時間:6秒
・積算回数:512回
本発明で例示するISBとCHDMの共重合ポリカーボネートの場合のH NMRの
解析は以下のとおり行う。次のピークの積分値を算出する。
(a):5.6−4.8ppm:全ISB構造単位由来(プロトン数:3、分子量:17
2.14)
(b):2.2−0.5ppm:全CHDM構造単位由来(プロトン数:10、分子量:170.21)
(c):4.4ppm:ISBのヒドロキシ末端基由来(プロトン数:1、分子量:173.14)
(d):3.6−3.5ppm:ISBのヒドロキシ末端基由来(プロトン数:1、分子量:173.14)とCHDMのヒドロキシ末端基由来(プロトン数:2、分子量:171.21)
(e):3.5−3.4ppm:CHDMのヒドロキシ末端基由来(プロトン数:2、分子量:171.21)とISB二重結合末端基由来(プロトン数:1、分子量:155.13)
(f):2.6ppm:ISBのヒドロキシ末端基由来(プロトン数:1、分子量:173.14)
(g):6.7−6.5ppm:ISB二重結合末端基由来(プロトン数:1、分子量:155.13)
(h)2.3ppm:CHDM二重結合末端基由来(プロトン数:2、分子量:153.20)
各構造のモル数に相当する値
・全ISB構造単位:(a)積分値/3=(a´)
・全CHDM構造単位:(b)積分値/10=(b´)
・ISBのヒドロキシ末端基:(c)積分値+(f)積分値=(c´)
・CHDMのヒドロキシ末端基:{(d)積分値−(f)積分値}/2+{(e)積分値−(g)積分値)/2=(d´)
・ISB二重結合末端基:(g)積分値=(e´)
・CHDM二重結合末端基:(h)積分値/2=(f´)
各末端基の量(単位:mol/ton)
・ISBのヒドロキシ末端基量:(c´)/(g´)×1000000
・CHDMのヒドロキシ末端基量:(δ´)/(g´)×1000000
・ISB二重結合末端基量:(e´)/(g´)×1000000
・CHDM二重結合末端基量:(f´)/(g´)×1000000
ただし、(g´)=(a´)×172.14+(b´)×170.21とする。
3)還元粘度
溶媒として塩化メチレンを用い、0.6g/dLの濃度のポリカーボネート溶液を調製した。森友理化工業社製ウベローデ型粘度管を用いて、温度20.0℃±0.1℃で測定を行い、溶媒の通過時間tと溶液の通過時間tから次式より相対粘度ηrelを求め、ηrel=t/t
相対粘度から次式より比粘度ηspを求めた。
ηsp=(η−η)/η=ηrel−1
比粘度を濃度C(g/dL)で割って、還元粘度ηsp/Cを求めた。この値が高いほど分子量が大きい。
4)ポリカーボネートのペレットYI値
ポリカーボネートの色相は、ASTM D1925に準拠して、ペレットの反射光におけるYI値(イエローインデックス値)を測定して評価した。装置はコニカミノルタ社製分光測色計CM−5を用い、測定条件は測定径30mm、SCEを選択した。シャーレ測定用校正ガラスCM−A212を測定部にはめ込み、その上からゼロ校正ボックスCM−A124をかぶせてゼロ校正を行い、続いて内蔵の白色校正板を用いて白色校正を行った。
白色校正板CM−A210を用いて測定を行い、L*が99.40±0.05、a*が0.03±0.01、b*が−0.43±0.01、YIが−0.58±0.01となることを確認した。ペレットの測定は、内径30mm、高さ50mmの円柱ガラス容器にペレットを40mm程度の深さまで詰めて測定を行った。ガラス容器からペレットを取り出してから再度測定を行う操作を2回繰り返し、計3回の測定値の平均値を用いた。YI値が小さいほど樹脂の黄色味が少なく、色調に優れることを意味する。
5)ポリカーボネート中の異物の定量
Tダイを具備した20mm径の一軸押出機のバレル設定温度を、ペレットの供給側から210℃、220℃、230℃、230℃、220℃とし、冷却ロールを用いて厚さ35μm±5μmのフィルムを成形し、Optical Control System社製、Film Quality Testing System(型式FSA100)を使用し、1m当たりの25μm以上の異物数を測定した。24時間運転中に3時間おきにポリカーボネートペレットをサンプリングし、8回測定した平均値を用いた。
6)溶融粘度の測定
80℃で5時間、真空乾燥した試料を用いて、キャピラリーレオメーター[東洋精機(株)製]で測定を行った。反応温度と同じ温度に加熱して、剪断速度9.12〜1824sec−1間で溶融粘度を測定し、91.2sec−1における溶融粘度の値を用いた。第3竪型攪拌反応器出口の試料はダイス径1mmφ×40mmLのオリフィスを使用し、第4横型攪拌反応器出口の試料はダイス径1mmφ×10mmLのオリフィスを使用した。
[実施例1]
前述した図1に示すように、竪型攪拌反応器3器及び横型攪拌反応器1器を有する連続製造装置により、以下の条件でポリカーボネートを製造した。原料調製工程にて窒素ガス雰囲気下、ISBとCHDMとDPCとを一定のモル比(ISB/CHDM/DPC=0.500/0.500/1.010)で混合し、120℃に加熱して、原料混合溶融液を得た。
続いて、この原料混合溶融液を、140℃に加熱した原料導入管を介して、所定温度・圧力の±5%の範囲内に制御した第1竪型攪拌反応器6a内に連続供給し、平均滞留時間が90分になるように、槽底部のポリマー排出ラインに設けたバルブ(図示せず)の開度を制御しつつ、液面レベルを一定に保った。また、上記原料混合溶融液の供給開始と同時に、第1竪型攪拌反応器6a内に触媒供給口1dから触媒として酢酸カルシウム水溶液を、全ジヒドロキシ成分1molに対し、1.5μmolの割合で連続供給した。
第1竪型攪拌反応器6aの槽底から排出された重合反応液は、引き続き、第2竪型攪拌反応器6b、第3竪型攪拌反応器6c、第4横型攪拌反応器6d(2軸メガネ翼、L/D=4)に、逐次、連続供給された。各反応器とも所定の平均滞留時間となるように液面レベルを制御した。
第4横型攪拌反応器6dの攪拌回転数は1.0rpmに設定し、反応液を安定的に抜き出せる範囲で極力液量が少なくなるように調節したところ、滞留時間は90分、SVは0.67、LVは0.80となった。目標還元粘度を0.64から0.67に設定したところ、圧力の調整範囲は0.1kPaから0.3kPaであり、運転状態は安定していた。反応器出口の溶融粘度は3790Pa・sであった。
第4横型攪拌反応器6dから抜き出された反応液は、ギアポンプ4cにより押出機15aに移送された。該押出機[(株)日本製鋼所製:2軸押出機LABOTEX30HSS
−32:L/D=32]は3つのベント口を有し、真空ポンプを用いてベント口より脱揮を行った。この時のベント部の圧力は絶対圧力で1kPa以下であった。
押出機16dの樹脂の排出側にギアポンプ4cを配置し、さらにその下流に、格納容器内部に外径112mm、内径38mm、99%の濾過精度として20μmであるリーフディスクフィルター[日本ポール(株)製]を20枚装着したポリマーフィルター15bを配置した。ポリマーフィルターの排出側には、ストランド化するためのダイを装着した。
排出される樹脂はストランドの形態で水冷、固化させた後、回転式カッターでペレット化した。ストランド化からペレット化までの工程はクリーンルーム内で実施された。続いて、ペレットは気力移送によって、製品ホッパー16dに送られた。
ポリカーボネートの製造中に、ギアポンプ4bの後に取り付けられたバルブから最終重合反応器の1つ前の反応器の出口に該当する反応液を、ギアポンプ4cの後に取り付けられたバルブから最終重合反応器の出口に該当する反応液を、ストランドカッター16bの後でペレットをそれぞれサンプリングし、前述の分析方法により各種分析を実施した。
上記の反応条件にて、24時間運転を実施したところ、24時間中にストランドの切断は起こらず、ペレット化が停止した回数は0回であった。これらの結果をまとめて表−1に示した。
[実施例2]
第4横型攪拌反応器6dの攪拌回転数を3.0rpmとし、実施例1と同じ液量に合わせ、それ以外は実施例1と同様に行った。最終重合反応器出口付近で反応液が攪拌軸に巻きつき、反応液が反応器出口に一定流量で流れこまなくなった。24時間運転を実施したところ、24時間中にストランドが切断して、ペレット化が停止した回数は5回であった。ポリカーボネート中の異物量は650個/mとなり、実施例1よりも悪化した。また、移送される反応液に空気が混入したため、色調も悪化した。
[実施例3]
第3縦型攪拌反応器の滞留時間を15分、圧力を7.0kPaとした以外は実施例1と同様に行った。最終重合反応器の一つ前の反応器の反応率を低下させたため、最終重合反応器入口において反応液が激しく発泡した。そのため、最終重合反応器の圧力を1kPa以下まで下げることができず、所定の還元粘度である0.64から0.67まで重合を進行させることができなかった。また、圧力を十分に下げることができなかったため、ポリカーボネート中のモノヒドロキシ化合物の残存量も多くなった。
[実施例4]
実施例1よりも大型の反応設備を用いて、同様の条件で行った。第4横型反応器6dにおいて、反応液を安定的に抜き出せる範囲で極力液量が少なくなるように調節したところ、滞留時間は80分、SVは0.75、LVは3.78となった。ペレット化が停止したり、反応液が激しく発泡することもなく、反応液の流動状態は安定しており、非常に良好な品質のポリカーボネートを安定的に製造することができた。
[比較例1]
実施例2において、最終重合反応器出口からの反応液の抜き出しが安定化するまで液量を増加させた。滞留時間は120分、SVは0.50、LVは0.60となった状態で反応液の抜き出しが安定化し、24時間中のペレット化の停止回数は0回となった。所定の分子量範囲に収まるように運転条件を調整したところ、最終重合反応器の圧力を0.3kPaから1.2kPaの間で動かす必要があり、実施例1よりも変動が大きくなった。また、滞留時間が増加したために、得られたポリカーボネートの色調も悪化した。
[実施例5]
ジヒドロキシ化合物として、ISB、BHEPF、DEGを用い、モル比でISB/BHEPF/DEG/DPC=0.348/0.490/0.162/1.005となるように原料混合液を調製した。触媒として酢酸マグネシウム水溶液を、全ジヒドロキシ成分1molに対し、15μmolの割合で連続供給した。各反応器の反応条件は表−1に示すとおりとした。
第4横型攪拌反応器6dの攪拌回転数は1.0rpmに設定し、反応液を安定的に抜き出せる範囲で極力液量が少なくなるように調節したところ、滞留時間は90分、SVは0.67、LVは0.80となった。目標還元粘度を0.40から0.43に設定したところ、圧力の調整範囲は0.3kPaから0.5kPaであり、運転状態は安定していた。反応器出口の溶融粘度は2340Pa・sであった。
重合後は実施例1と同様に、反応液を押出機で脱揮処理、ポリマーフィルターで濾過をして、ペレット化を行った。上記の反応条件にて、24時間運転を実施したところ、24時間中にストランドの切断は起こらず、ペレット化が停止した回数は0回であり、ポリカーボネート中の異物も少なくなった。これらの結果をまとめて表−1に示した。
[実施例6]
第3縦型攪拌反応器の滞留時間を15分、圧力を15.0kPaとした以外は実施例5と同様に行った。最終重合反応器の一つ前の反応器の反応率を低下させたため、最終重合反応器入口において反応液が激しく発泡した。そのため、最終重合反応器の圧力を1kPa以下まで下げることができず、所定の還元粘度である0.40から0.43まで重合を進行させることができなかった。また、圧力を十分に下げることができなかったため、ポリカーボネート中のモノヒドロキシ化合物の残存量も多くなった。
[実施例7]
実施例5よりも大型の反応設備を用いて、同様の条件で行った。第4横型反応器6dにおいて、反応液を安定的に抜き出せる範囲で極力液量が少なくなるように調節したところ、滞留時間は100分、SVは0.60、LVは3.02となった。ペレット化が停止したり、反応液が激しく発泡することもなく、反応液の流動状態は安定しており、非常に良好な品質のポリカーボネートを安定的に製造することができた。
[比較例2]
実施例5において、第4横型攪拌反応器6dの攪拌回転数を3.0rpmとし、最終重合反応器出口からの反応液の抜き出しが安定化するまで液量を増加させた。滞留時間は120分、SVは0.50、LVは0.60となった状態で反応液の抜き出しが安定化し、24時間中のペレット化の停止回数は0回となった。所定の分子量範囲に収まるように運転条件を調整したところ、最終重合反応器の圧力を0.5kPaから1.5kPaの間で動かす必要があり、実施例5よりも変動が大きくなった。また、滞留時間が増加したために、得られたポリカーボネートの色調も悪化した。
[参考例1]
モノマーとしてビスフェノールAを用いた従来の芳香族ポリカーボネートの製造例を表―1に示した。本発明のポリカーボネートよりも高い反応温度で重合しても色調は良好であり、最終重合反応器出口における溶融粘度も低いために、安定的に反応液を抜き出し、ペレット化することができた。
Figure 2014009332
[まとめ]
表−1に示すように、本発明のポリカーボネートの製造方法に規定するように、最終重合反応器における反応液の流速を適切に設定することで、ポリカーボネートの品質や生産
性を向上できるとともに、安定した品質のポリカーボネートが得られる利点もある。特に、実施例1および実施例4はいずれも比較例1および2と比べてペレットYIが低く、色調が良好であった。同様に実施例5および実施例7は比較例2と比べてペレットYIが低く、色調が良好であった。
1a 原料(炭酸ジエステル)供給口
1b、1c 原料(ジヒドロキシ化合物)供給口
1d 触媒供給口
2a 原料混合槽
3a アンカー型攪拌翼
4a 原料供給ポンプ
4b、4c、4d ギアポンプ
5a 原料フィルター
6a 第1竪型反応槽
6b 第2竪型反応槽
6c 第3竪型反応槽
6d 横型反応器
7a、7b、7c マックスブレンド翼
7d 2軸メガネ型攪拌翼
8a、8b 内部熱交換器
9a、9b 還流冷却器
10a、10b 還流管
11a、11b、11c、11d 留出管
12a、12b、12c、12d 凝縮器
13a、13b、13c、13d 減圧装置
14a 留出液回収タンク
15a 二軸押出機
15b ポリマーフィルター
16a ストランド冷却槽
16b ストランドカッター
16c 空送ブロワー
16d 製品ホッパー
16e 計量器
16f 製品袋(紙袋、フレキシブルコンテナーバッグなど)

Claims (20)

  1. 少なくともアルコール性ヒドロキシ基を有するジヒドロキシ化合物を含むジヒドロキシ化合物と、炭酸ジエステルと、重合触媒とを連続的に反応器に供給し、重縮合してポリカーボネートを製造する方法であって、前記反応器は少なくとも直列に複数器接続されるものであり、最終重合反応器の反応条件が下記条件(A)から(E)のすべてを満たすことを特徴とするポリカーボネートの製造方法。
    (A)最終重合反応器が内部に複数の水平回転軸を有する横型攪拌反応器である。
    (B)最終重合反応器出口におけるポリカーボネートの溶融粘度が1500Pa・s以上、4500Pa・s以下である。
    (C)下記式(1)で表されるSVの値が0.55以上、1.9以下である。
    SV[hr−1]=Q[kg/hr]/W[kg] (1)
    Q:最終重合反応器の反応液処理量
    W:最終重合反応器内の反応液量
    (D)下記式(2)で表されるLVの値が0.7以上、12以下である。
    LV[m/hr]=L[m]/θ[hr] (2)
    L:最終重合反応器の入口出口間距離「m」
    θ:最終重合反応器の滞留時間
    (E)前記Qが55kg/hr以上である。
  2. 前記最終重合反応器において、下記式(3)を満たすことを特徴とする請求項1に記載のポリカーボネートの製造方法。
    2000 ≦ ωμ ≦ 6000 (3)
    ω:攪拌回転数[rpm]
    μ:最終重合反応器出口における反応液の溶融粘度[Pa・s]
  3. 前記ωが0.5以上、4以下である請求項1又は2に記載のポリカーボネートの製造方法。
  4. 前記最終重合反応器の一つ前の反応器の出口における反応液の溶融粘度が100Pa・s以上、1000Pa・s以下である請求項1乃至3のいずれか1項に記載のポリカーボネートの製造方法。
  5. 前記最終重合反応器の一つ前の反応器の出口において、前記炭酸ジエステルより生成するモノヒドロキシ化合物が反応液中に0.5wt%以上、3wt%以下含有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のポリカーボネートの製造方法。
  6. 前記最終重合反応器と、最終重合反応器の一つ前の反応器の内圧の差が1kPa以上、10kPa以下であること請求項1乃至5のいずれか1項に記載のポリカーボネートの製造方法。
  7. 前記最終重合反応器の内温が260℃以下であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載のポリカーボネートの製造方法。
  8. 直列に接続されている反応器の数が4器以下であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載のポリカーボネートの製造方法。
  9. 前記アルコール性ヒドロキシ基を有するジヒドロキシ化合物が構造の一部に下記式(4)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物である請求項1乃至8のいずれか1項に記載のポリカーボネートの製造方法。
    Figure 2014009332
    (但し、上記式(4)で表される部位が−CH−OHの一部を構成する部位である場合を除く。)
  10. 前記式(4)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物が、オキシアルキレングリコール類、芳香族基に結合したエーテル基を主鎖中に有するジヒドロキシ化合物、環状エーテル構造を有するジヒドロキシ化合物である請求項1乃至9のいずれか1項に記載のポリカーボネートの製造方法。
  11. 前記式(4)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物が、下記構造式(5)で表される化合物である請求項1乃至10のいずれか1項に記載のポリカーボネートの製造方法。
    Figure 2014009332
  12. 前記式(5)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物が、下記構造式(6)で表されるジヒドロキシ化合物である請求項1乃至10のいずれか1項に記載のポリカーボネートの製造方法。
    Figure 2014009332
    (上記一般式(6)中、R1〜R4はそれぞれ独立に、水素原子、置換若しくは無置換の炭素数1〜20のアルキル基、置換若しくは無置換の炭素数6〜20のシクロアルキル基、または、置換若しくは無置換の炭素数6〜20のアリール基を表し、XとXはそれぞれ独立に、置換若しくは無置換の炭素数2〜10のアルキレン基、置換若しくは無置換の炭素数6〜20のシクロアルキレン基、または、置換若しくは無置換の炭素数6〜20のアリーレン基を表す。m及びnはそれぞれ独立に1〜5の整数である。)
  13. 前記最終重合反応器の一つ前の反応器の出口における反応液中の二重結合末端構造の量をX(mol/ton)、前記最終重合反応器の出口における反応液中の二重結合末端構造の量をY(mol/ton)とした場合に、下記式(7)を満たす請求項1乃至12のいずれか1項に記載のポリカーボネートの製造方法。
    Y−X ≦ 6 かつ X ≦ 5 (7)
  14. 前記最終重合反応器の出口における反応液中の全ヒドロキシ末端基の量が10mol/ton以上50mol/ton以下である請求項1乃至13のいずれか1項に記載のポリカーボネートの製造方法。
  15. 前記重合触媒が、長周期型周期表第2族の金属からなる群及びリチウムより選ばれる少なくとも1種の金属化合物である請求項1乃至14のいずれか1項に記載のポリカーボネートの製造方法。
  16. 反応に用いられる全ジヒドロキシ化合物のうち、フェノール性ヒドロキシ基を有するジヒドロキシ化合物が10mol%以下である請求項1乃至15のいずれか1項に記載のポリカーボネートの製造方法。
  17. 重縮合により得られたポリカーボネートを、固化させることなく溶融状態のままフィルターに供給して濾過する工程を含む請求項1乃至16のいずれか1項に記載のポリカーボネートの製造方法。
  18. 重縮合により得られたポリカーボネート、又は、それを上記フィルターで濾過した樹脂を、ダイスヘッドからストランドの形態で吐出し、冷却後、カッターを用いてペレット化する工程を含む請求項1乃至17のいずれか1項に記載のポリカーボネートの製造方法。
  19. 請求項18に記載の方法により製造されたポリカーボネートペレット。
  20. 25μm以上の異物が500個/m以下である請求項19に記載のポリカーボネートペレット。
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