JP2014074209A - 二相系ステンレス鋼材および二相系ステンレス鋼管 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】フェライト相とオーステナイト相とからなる二相系ステンレス鋼材であって、所定量のC、Si、Mn、P、S、Al、Ca、Ni、Cr、Mo、N、Vを含有し、残部がFeおよび不可避的不純物であって、Cr+3.3Mo+16N≧40、V−2.5N<−0.2なる関係を満足することを特徴とする。
【選択図】なし
Description
前記のように、二相系ステンレス鋼材が、所定量のCo、Tiのうちの1種または2種、または、Bを含有することによって、耐食性、熱間加工性が一層向上した。
前記のように、二相系ステンレス鋼管が、前記の二相系ステンレス鋼材で構成されることによって、耐食性、熱間加工性が向上する。
本発明に係る二相系ステンレス鋼材の実施形態について詳細に説明する。
本発明の二相系ステンレス鋼材は、フェライト相とオーステナイト相とからなる二相系ステンレス鋼材であって、前記二相系ステンレス鋼材の成分組成は、C、Si、Mn、P、S、Al、Ca、Ni、Cr、Mo、N、Vを所定量含有し、Cr+3.3Mo+16N≧40、V−2.5N<−0.2なる関係を満足し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる。以下、各構成について説明する。
本発明の二相系ステンレス鋼材は、フェライト相とオーステナイト相の二相からなるものである。フェライト相とオーステナイト相からなる二相系ステンレス鋼材においては、CrやMoなどのフェライト相安定化元素はフェライト相に濃縮し、NiやNなどのオーステナイト相安定化元素はオーステナイト相に濃縮する傾向にある。このとき、フェライト相のオーステナイト相に対する面積率が30%未満または70%を超える場合には、Cr、Mo、Ni、Nなどの耐食性に寄与する元素のフェライト相とオーステナイト相における濃度差異が大きくなりすぎて、フェライト相とオーステナイト相のいずれか耐食性に劣る側が選択腐食されて耐食性が劣化する傾向が大きくなる。したがって、フェライト相とオーステナイト相との比率も最適化することが推奨され、フェライト相の面積率は、耐食性の観点から30〜70%が好ましく、40〜60%がさらに好ましい。このようなフェライト相とオーステナイト相の面積率は、フェライト相安定化元素とオーステナイト相安定化元素の含有量を調整することによって適正化することが可能である。
(C:0.1質量%以下)
Cは、オーステナイト相を安定化させ、二相系ステンレス鋼材の強度を向上させる。しかし、C量が0.1質量%を超えると、炭化物が析出し耐孔食性が劣化するので、C量は0.1質量%以下(ただし、0質量%は含まれないことが好ましい)とした。
Siは、溶製時に脱酸剤として使用される。このような効果を得るためには、Si量が0.1質量%以上である必要がある。しかし、Siは金属間化合物の生成を促進する効果があるため、Si量が2.0質量%を超えると耐食性および熱間加工性が低下する。したがって、Si量は0.1〜2.0質量%とした。好ましくは、0.1〜0.4質量%である。
Mnは、脱酸元素であると同時に、Nの固溶量を増加させる効果がある。このような効果を得るためには、Mn量が0.1質量%以上である必要がある。しかし、Mn量が2.0質量%を超えると、粗大な硫化物系介在物が析出し、耐孔食性、割れ性が劣化する。そのため、Mn量は0.1〜2.0質量%とした。好ましくは0.1〜1.0質量%である。
Pは、溶製時に混入する不純物であり、耐食性や熱間加工性を劣化させるため、P量は0.04質量%以下、好ましくは0.03質量%以下とした。しかし、P量の過度の低減は、製造コストの上昇をもたらすので、P量は0.015質量%以上が好ましい。
Sは、Pと同様に溶製時に混入する不純物であり、Mn等と結合して硫化物系介在物を形成させると共に、耐食性や熱間加工性を劣化させる。したがって、S量は0.01質量%以下、好ましくは0.003質量%以下である。
Alは、脱酸元素であり、溶製時の酸素量低減に必要な元素である。このような効果を得るためには、Al量が0.001質量%以上である必要がある。しかし、Al量が0.05質量%を超えると、酸化物系介在物を生成し耐孔食性に悪影響を及ぼす。そのため、Al量は0.001〜0.05質量%とした。好ましくは0.001〜0.02質量%である。
Caは、鋼中に不純物として含まれるSやOと結合して粒界に偏析するのを抑制して熱間加工性を向上させる効果がある。このような効果を得るためには、Ca量が0.0005質量%以上である必要がある。しかし、Ca量が0.020質量%を超えると、酸化物系介在物量が増加し耐食性が劣化する。そのため、Ca量は0.0005〜0.020質量%とした。好ましくは0.002〜0.020質量である。
Niは、オーステナイト生成元素であり、二相系構造を維持して鋼材に耐食性を発現させる効果がある。このような効果を得るためには、Ni量が3質量%以上である必要がある。しかし、Ni量が10質量%を超えると、オーステナイト相が多くなりすぎて、強度が低下する。そのため、Ni量は3〜10質量%とした。好ましくは5〜8質量%である。
Crは、フェライト生成元素であり、二相系構造を維持して鋼材に耐食性を発現させる効果がある。このような効果を得るためには、Cr量が23質量%以上である必要がある。しかし、Cr量が28質量%を超えると、σ相等の金属間化合物の生成を助長し、耐食性および熱間加工性が低下する。そのため、Cr量は23〜28質量%とした。好ましくは24〜26質量%である。
Moは、フェライト生成元素であり、鋼材の耐孔食性・耐割れ性を改善させる効果がある。このような効果を得るためには、Mo量が2質量%以上である必要がある。しかしMo量が5質量%を超えると、σ相等の金属間化合物の生成を助長し、耐食性および熱間加工性が低下する。そのため、Mo量は2〜5質量%とした。 好ましくは2〜4質量%である。
Nは、オーステナイト生成元素であり、σ相の生成感受性を増加させずに耐食性を向上させる効果がある。このような効果を得るためには、N量が0.2質量%以上である必要がある。しかし、N量が0.4質量%を超えると、窒化物が形成され靭性や耐食性が低下する。また、熱間加工性を劣化させ、鍛造・圧延時に耳割れや表面欠陥を生じさせる。そのため、N量は0.2〜0.4質量%とした。
Vは、粗大な酸化物系介在物の生成を抑制し、耐食性を向上させる効果がある。このような効果を得るためには、V量は0.1質量%以上である必要がある。しかし、V量が0.6質量%を超えると、窒化物が形成され、組織中のN濃度が減少し耐食性が低下する。そのため、V量は0.1〜0.6質量%とした。
(Cr+3.3Mo+16N)は、鋼材の耐食性を表す指標として従来知られている耐孔食性指数(PRE:Pitting Resistance Equivalent)である。本発明では、PRE≧40とすることによって、組織中のCr量、Mo量、N量のバランスが適切なものとなり、鋼材の耐食性および強度が向上する。
二相系ステンレス鋼材では、前記したように、Vは酸化物系介在物を微細化するが、V量が多いと窒化物の生成を促進すると共に、組織中のN濃度も低下させる。そして、粗大な窒化物の生成とN濃度の低下によって、耐食性が低下する。したがって、V量とN量のバランスを適切に制御することが重要である。そこで、V量とN量とのバランスを鋭意検討した結果、V−2.5N<−0.2となるように制御することで、窒化物の生成を抑制しつつ、微細な酸化物系介在物を形成させることができることを見出した。具体的には、V量とN量とがV−2.5N<−0.2を満足することによって、Al、Ca、Vのいずれかを含む酸化物系介在物、および、窒化物を平均長径で10μm以下、平均アスペクト比で50以下に制御できると共に、長径が1μm以上の酸化物系介在物および窒化物の数密度を10個/mm2以下に制御できる。それにより、二相系ステンレス鋼材の耐食性および熱間加工性が向上する。
不可避的不純物は、溶製時に不可避的に混入するO等の不純物であり、二相系ステンレス鋼材の諸特性を害さないものである。また、不可避的不純物は、その含有量を合計で0.1質量%以下、好ましくは0.09質量%以下に抑えることが好ましく、それによって、本発明の耐食性発現効果を極大化することができる。
Co, Tiは、いずれも耐食性を向上させる効果がある。このような効果を得るためには、Co量は0.01質量%以上、Ti量も0.01質量%である必要がある。しかし、Co量が4.0質量%を超えると、または、Ti量が0.5質量%を超えると、金属間化合物の析出を助長して、耐食性および熱間加工性が低下する。そのため、Co:0.01〜4.0質量%、Ti:0.01〜0.5質量%とした。なお、Co、Tiのうちの1種または2種を含有できる。
(B:0.001〜0.01質量%)
Bは、熱間加工性を向上させる効果がある。このような効果を得るためには、B量は0.001質量%以上である必要がある。しかし、B量が0.01質量%を超えると、熱間加工性を低下させる。そのため、B量は0.001〜0.01質量%とした。
本発明の二相系ステンレス鋼材は、通常のステンレス鋼の量産に用いられている製造設備および製造方法によって製造することができる。例えば、転炉あるいは電気炉にて溶解した溶鋼に対して、AOD法やVOD法などによる精錬を行って成分調整した後、連続鋳造法や造塊法などの鋳造方法で鋼塊とする。得られた鋼塊を1000℃〜1200℃程度の温度域にて熱間加工を行い、次いで冷間加工を行って所望の寸法形状にすることができる。
本発明に係る二相系ステンレス鋼管の実施形態について説明する。
本発明の二相系ステンレス鋼管は、前記二相系ステンレス鋼材からなるもので、通常のステンレス鋼管の量産に用いられる製造設備および製造方法によって製造することができる。例えば、丸棒を素材とした押出製管やマンネスマン製管、板材を素材として成形後に継ぎ目を溶接する溶接製管などによって、所望の寸法にすることができる。また、二相系ステンレス鋼管の寸法は、鋼管が使用される油井管、化学プラント、アンビリカルチューブ等に応じて適宜設定することができる。なお、二相系ステンレス鋼管は、海水淡水化プラント、LNG気化器等にも使用できる。
電極アーク加熱機能を備える溶鋼処理設備によって、表1に示す成分組成の鋼(残部はFeおよび不可避的不純物)をそれぞれ溶製し、50kgの丸鋳型(本体:約φ140×320mm)を用いて鋳造した。また、各鋼の組織についてPRE=Cr+3.3Mo+16N、V−2.5Nを算出した結果も表1に示す。なお、表1において、空欄は該当成分が含有されていないことを示す。
凝固した鋼塊を1200℃まで加熱し同温度で熱間鍛造を施し、その後切断し、1100℃で30分保持の固溶化熱処理を施し、水冷して600×120×60mmの鍛鋼品(No.A1〜A5、B1〜B5)に仕上げた。
(耐孔食性の評価)
JIS G 0577に基づき孔食電位測定で行った。まず、試料表面をSiC#600研磨紙で湿式研磨し、超音波洗浄した後50℃の30%硝酸に1時間浸漬し不働態化処理をした。次に、試料にスポット溶接で導線を取り付け試験面積10mm×10mmを残してエポキシ樹脂で被覆した。その試料を80℃に保持した20%NaCl水溶液中に10分間浸漬した後、自然電位からアノード方向に20mV/minの掃引速度で分極し、電流密度が100μA/cm2を超えた最も貴な電位を孔食電位Vc’100とした。また、参照電極には飽和カロメル電極(SCE)を用い、Ar脱気しながら実施した。その結果を表3に示す。なお、孔食電位VC’100が600mV以上のものを耐孔食性が良好と評価した。
(熱間加工性の評価)
前記鍛鋼品の表面を目視にて観察し、表面欠陥の有無を観察した。その結果を表3に示す。
Claims (4)
- フェライト相とオーステナイト相とからなる二相系ステンレス鋼材であって、前記二相系ステンレス鋼材の成分組成は、
C:0.1質量%以下、
Si:0.1〜2.0質量%、
Mn:0.1〜2.0質量%、
P:0.04質量%以下、
S:0.01質量%以下、
Al:0.001〜0.05質量%、
Ca:0.0005〜0.020質量%、
Ni:3〜10質量%、
Cr:23〜28質量%、
Mo:2〜5質量%、
N:0.2〜0.4質量%、
V:0.1〜0.6質量%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物であって、
Cr+3.3Mo+16N≧40、V−2.5N<−0.2なる関係を満足することを特徴とする二相系ステンレス鋼材。 - 前記成分組成が、さらにCo:0.01〜4.0質量%、Ti:0.01〜0.5質量%のうちの一種または2種を含むことを特徴とする請求項1に記載の二相系ステンレス鋼材。
- 前記成分組成が、さらにB:0.001〜0.01質量%を含むことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の二相系ステンレス鋼材。
- 請求項1ないし請求項3のうちのいずれか一項に記載の二相系ステンレス鋼材からなることを特徴とする二相系ステンレス鋼管。
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