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JP2013101759A - 絶縁電線及びそれを用いた、電機コイル、モータ - Google Patents

絶縁電線及びそれを用いた、電機コイル、モータ Download PDF

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JP2013101759A JP2011243512A JP2011243512A JP2013101759A JP 2013101759 A JP2013101759 A JP 2013101759A JP 2011243512 A JP2011243512 A JP 2011243512A JP 2011243512 A JP2011243512 A JP 2011243512A JP 2013101759 A JP2013101759 A JP 2013101759A
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Yuji Hatanaka
悠史 畑中
Masaaki Yamauchi
雅晃 山内
Kengo Yoshida
健吾 吉田
Masataka Shinami
正隆 志波
Junichi Imai
惇一 今井
Jun Sugawara
潤 菅原
Toru Shimizu
亨 清水
Hideaki Saito
秀明 齋藤
Yudai Furuya
雄大 古屋
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Sumitomo Electric Wintec Inc
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Sumitomo Electric Industries Ltd
Sumitomo Electric Wintec Inc
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Abstract

【課題】絶縁層を低誘電率化してコロナ放電開始電圧を高くできると共に、耐溶接性及び耐加工性に優れる絶縁電線、及びそれを用いた電機コイル、モータを提供する。
【解決手段】導体及び該導体を被覆する2層以上の絶縁層を有する絶縁電線であって、前記絶縁層の最も外側にある第1の絶縁層は、4、4’−ジアミノジフェニルエーテルとピロメリット酸二無水物とを反応して得られる第1のポリイミド前駆体を主成分とする第1のポリイミド樹脂ワニスを1回塗布、焼き付けして形成されたものであり、前記最外層に接する第2の絶縁層は、芳香族ジアミンと芳香族テトラカルボン酸二無水物とを反応して得られ、イミド化後のイミド基濃度が33.0%未満である第2のポリイミド前駆体を主成分とするポリイミド樹脂ワニスを複数回塗布、焼き付けして形成されたものである絶縁電線。
【選択図】図1

Description

本発明は絶縁電線およびそれを用いた電機コイル、モータに関し、特に耐コロナ放電特性及び耐溶接性に優れる絶縁電線に関する。
モータ等のコイル用巻線として用いられる絶縁電線において、導体を被覆する絶縁層(絶縁皮膜)には、優れた絶縁性、導体に対する密着性、耐熱性、機械的強度等が求められている。絶縁層を形成する樹脂としてはポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエステルイミド樹脂等がある。
また適用電圧が高い電気機器、例えば高電圧で使用されるモータ等では、電気機器を構成する絶縁電線に高電圧が印加され、その絶縁皮膜表面で部分放電(コロナ放電)が発生しやすくなる。コロナ放電の発生により局部的な温度上昇やオゾンやイオンの発生が引き起こされやすくなり、その結果絶縁電線の絶縁被膜に劣化が生じることで早期に絶縁破壊を起こし、電気機器の寿命が短くなる。高電圧で使用される絶縁電線には上記の理由によりコロナ放電開始電圧の向上も求められており、そのためには絶縁層の誘電率を低くすることが有効であることが知られている。
ポリイミド樹脂は絶縁電線の絶縁層として汎用されている樹脂の中では特に耐熱性に優れている。また誘電率が低く機械特性にも優れるため、要求特性の高い絶縁電線の絶縁層として用いられている。たとえば特許文献1には耐熱区分がC種(180℃以上のクラス)のエナメル線として、導体直上にポリイミド樹脂エナメル皮膜層が塗布焼付けされているエナメル線が開示されている。
また特許文献2には芳香族エーテル構造を有するポリイミド樹脂が記載されている。具体的には、4,4’−オキシジフタル酸二無水物(ODPA)等の芳香族エーテル構造を有する酸無水物と、芳香族エーテル構造を有するジアミン及びフルオレン構造を有するジアミンとを反応させてポリイミド前駆体を合成している。芳香族エーテル構造を有する酸無水物及びジアミンを用いることで可とう性を向上している。またこのような構造のポリイミド樹脂は低誘電率でありコロナ発生抑制に優れた絶縁皮膜を得ることができる、と記載されている。
特開平9−198932号公報 特開2010−67408号公報
上記のようにポリイミド樹脂は耐熱性、機械的特性、電気特性に優れる材料であるが、一般的なポリイミド樹脂の誘電率は3.0〜3.5であり、コロナ放電開始電圧を向上するためにはさらに低誘電率とすることが求められている。
また、自動車用のモータ等に用いられるコイルに絶縁電線を使用する場合、短尺の絶縁電線の端末を溶接して繋ぎ合わせて長尺のコイルを形成する方法が採られることがある。溶接はTIG溶接等の電気溶接で行われ、一定の電流を通電することで溶接部の温度を上げて導体同士を接続する。溶接時の効率を上げるため、より高電流の通電で溶接可能な絶縁電線が求められているが、例えば絶縁皮膜の耐熱性が低い場合や導体と絶縁皮膜との密着力が悪い場合には、溶接部の近傍において絶縁皮膜が剥離したり(皮膜浮き)、ブリスタと呼ぶような絶縁皮膜中の発泡が生じる。
本発明は上記の問題に鑑みてなされたものであり、絶縁層を低誘電率化してコロナ放電開始電圧を高くできると共に、耐溶接性に優れる絶縁電線、及びそれを用いた電機コイル、モータを提供することを課題とする。
本発明は、導体及び該導体を被覆する2層以上の絶縁層を有する絶縁電線であって、前記絶縁層の最も外側にある第1の絶縁層は、4、4’−ジアミノジフェニルエーテルとピロメリット酸二無水物とを反応して得られる第1のポリイミド前駆体を主成分とする第1のポリイミド樹脂ワニスを1回塗布、焼き付けして形成されたものであり、前記最外層に接する第2の絶縁層は、芳香族ジアミンと芳香族テトラカルボン酸二無水物とを反応して得られ、イミド化後のイミド基濃度が33.0%未満である第2のポリイミド前駆体を主成分とするポリイミド樹脂ワニスを複数回塗布、焼き付けして形成されたものである絶縁電線である(請求項1)。
本発明者らはポリイミドのイミド基濃度に着目し、極性の高いイミド基の濃度を下げることでポリイミドの誘電率を低下できることを見いだした。なお絶縁電線の皮膜に汎用されている一般的なポリイミド樹脂はピロメリット酸二無水物と4,4’−ジアミノジフェニルエーテルとを重合して得られるポリイミド前駆体(ポリアミック酸)をイミド化して得られるもので、イミド基濃度は36.6%である。
イミド基濃度を低くすると、誘電率が低下するのみでなくイミド化後のポリイミドの溶解性が向上し層間密着力が向上する。しかしイミド基濃度を低くしたポリイミドは一般的なポリイミド樹脂と比べると耐熱性が若干低下する。そこで、耐熱性に優れる一般的なポリイミドからなる層(第1の絶縁層)を絶縁皮膜の最外層に設けると共に、この最外層に接する内層の絶縁層(第2の絶縁層)をイミド基濃度が低く誘電率が低いポリイミドで形成することで、絶縁層の誘電率を低くしてコロナ放電開始電圧を高くできると共に、耐溶接性に優れる絶縁電線が得られることを見いだした。
イミド基濃度はポリイミド前駆体をイミド化した後のポリイミド樹脂において、
(イミド基部分の分子量)/(全ポリマーの分子量)×100 (%)
で計算される値である。ポリイミド前駆体は芳香族ジアミンと芳香族テトラカルボン酸二無水物とを反応して得られるので各モノマー(芳香族ジアミン又は芳香族テトラカルボン酸二無水物)の分子量が大きくなるとイミド基濃度は低くなる。ポリイミド前駆体を構成する芳香族ジアミンと芳香族テトラカルボン酸二無水物とを任意に選択してイミド基濃度を33.0%未満とする。
さらに、最外層である第1の絶縁層は、4、4’−ジアミノジフェニルエーテルとピロメリット酸二無水物とを反応して得られる第1のポリイミド前駆体を主成分とする第1のポリイミド樹脂ワニスを1回塗布、焼付けして形成したものとする。ポリイミド皮膜はポリイミド前駆体樹脂を溶剤に溶解したワニス(ポリイミド樹脂ワニス)を導体上に塗布、焼付けして形成する。焼付け時の熱によってポリイミド前駆体であるポリアミック酸がイミド化してポリイミドとなる。一度の塗布、焼付け工程では数μm程度の薄い皮膜しか形成できないため、通常塗布、焼付け工程を複数回繰り返して所定の厚み(数10μm程度)のポリイミド皮膜を形成する。そのため2回目以降の工程では前回の工程で形成されたポリイミド層の上にポリイミド樹脂ワニスを塗布することとなる。この時、ポリイミドワニスに含まれる溶剤が下層(前回の工程で形成されたポリイミド層)を若干溶解することで層間のなじみが良くなり層間の密着力が得られる。しかし焼付けてイミド化したポリイミドはポリアミドイミド等の他の樹脂と比べると溶剤への溶解性が低く、ワニスを塗布した際に下層がほとんど溶解しない。従って層間の密着力(接着力)が低下し、皮膜に大きな変形を起こすような加工を行うと層間の剥離に起因して皮膜が破壊される。また溶接時の熱により急激な温度変化が生じた場合に皮膜剥離する可能性がある。
塗布、焼付け工程を1回のみとして形成した単層のポリイミド層ではこのような層間の剥離に起因する問題は生じない。また最外層のポリイミド層(第1の絶縁層)の下層には、イミド基濃度が低く溶剤への溶解性が良好なポリイミドを使用しているため、最外層のポリイミド層と、その下層のポリイミド層(第2の絶縁層)との間の密着力も良好となり、耐加工性が良好となると共に溶接時の皮膜浮きも防ぐことができる。
前記芳香族テトラカルボン酸二無水物はピロメリット酸二無水物(以下、PMDA)であると好ましい(請求項2)。ピロメリット酸二無水物は比較的分子量が小さく剛直な構造である。イミド基濃度を調整するためには、芳香族ジアミン、芳香族テトラカルボン酸のいずれかを分子量の大きいものとすることが考えられるが、分子量の大きい芳香族テトラカルボン酸を使用すると耐熱性が低下するため、酸成分は分子量の小さいPMDAを選択し、分子量の大きい芳香族ジアミンを用いてイミド基濃度を調整する方が耐熱性が向上し、好ましい。分子量の大きい芳香族ジアミンとしては、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(ODA)、2,2−ビス[4−(アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、及び1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン等が例示される。
前記ポリイミド前駆体のイミド化後のイミド基濃度は20.0%以上とすることが好ましい(請求項3)。イミド基濃度を低くすると誘電率が低下する。しかしイミド基濃度を低くするとポリイミドの耐熱性が低下するため、耐熱性の観点からはイミド基濃度を20.0%以上とすることが好ましい。さらに好ましくは25.0%以上である。
前記第1の絶縁層の厚みは1μm以上10μm以下であり、前記第2の絶縁層の厚みは10μm以上150μm以下であると好ましい(請求項4)。第1の絶縁層を構成するポイミド樹脂は第2の絶縁層を構成するポリイミド樹脂に比べると誘電率が高いので、絶縁層全体の厚みに対する第1の絶縁層の厚みの割合が大きくなると、絶縁層全体の誘電率が高くなり電気特性が低下する。一方、第1の絶縁層の厚みが10μmよりも小さいと、耐溶接性が低下する。
請求項5に記載の発明は、上記の絶縁電線を捲線してなる電機コイルである。また請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の電機コイルを有するモータである。耐溶接性に優れた絶縁電線を使用していることから良好にコイルの加工が可能であり、占積率の高いコイルが得られる。また高電圧が印加された場合でも絶縁皮膜の劣化が起こりにくいので、寿命を長くすることが可能である。なお、絶縁電線を捲線してなる電機コイルは、長尺の絶縁電線を捲線したものだけでなく、セグメントコイルのような短尺の絶縁電線を溶接して繋げてコイル状にしたものも含む。
本発明によれば、絶縁層を低誘電率としてコロナ放電開始電圧を高くできると共に、耐溶接性に優れる絶縁電線、及びそれを用いた電機コイル、モータを得ることができる。
本発明の絶縁電線の一例を示す断面模式図である。 誘電率の測定方法を説明する模式図である。 本発明のコイルの一例を示す模式図である。 本発明のモータの一例を示す模式図である。 耐溶接性の試験方法を示す模式図である。
本発明の絶縁電線の絶縁層の最外層となる第1の絶縁層には、汎用のポリイミド樹脂を使用する。具体的には、4、4’−ジアミノジフェニルエーテルとピロメリット酸二無水物とを反応して得られる第1のポリイミド前駆体を主成分とする第1のポリイミド樹脂ワニスを、後述する第2の絶縁層の外側に1回塗布、焼き付けして第1のポリイミド樹脂からなる第1の絶縁層を形成する。第1のポリイミド樹脂のイミド基濃度は36.6%となる。このような構成のポリイミド樹脂は、後述する第2のポリイミド樹脂に比べて導体密着力、耐熱性に優れている。4、4’−ジアミノジフェニルエーテルとピロメリット酸二無水物と縮合重合反応は、後述する第2のポリイミド前駆体の合成と同様の条件で行うことができる。第1のポリイミド樹脂ワニスには、メラミン等の密着向上剤や反応性低分子、相容化剤等を添加しても良い。
本発明の絶縁電線の第2の絶縁層には、イミド基濃度が33.0%未満のポリイミド樹脂を使用する。ポリイミド樹脂からなる第2の絶縁層は、芳香族ジアミンと芳香族テトラカルボン酸二無水物とを反応して得られる第2のポリイミド前駆体(ポリアミック酸)を主成分とするポリイミド樹脂ワニスを前記第1の絶縁層上に塗布、焼き付けして形成する。芳香族ジアミンと芳香族テトラカルボン酸二無水物との縮合重合反応は、従来のポリイミド前駆体の合成と同様な条件にて行うことができる。
芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、ピロメリット酸二無水物(PMDA)、4,4’−オキシジフタル酸二無水物(ODPA)、3,4,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、ビシクロ(2,2,2)−オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボンキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフリル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸二無水物等が例示される。
また、イミド基濃度を下げるため、分子量が大きい下記式(1)で示されるビスフェノールAジフタル酸二無水物(BPADA)を使用しても良い。これらの芳香族テトラカルボン酸二無水物は1種を用いても2種以上を併用しても良い。
Figure 2013101759
この中でもピロメリット酸二無水物(PMDA)は低分子量で剛直な構造を持つため、ポリイミド樹脂の耐熱性を向上できる点で好ましい。
芳香族ジアミンとしては、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(ODA)、4,4’−メチレンジアニリン(MDA)、2,2−ビス[4−(アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BAPP)、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン(TPE−Q)、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン(TPE−R)、1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]シクロヘキサン(4−APBZ)、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン(3−APB)、1,5−ビス(3−アミノフェノキシ)ナフタレン(1,5−BAPN)等が例示される。
この中でも2,2−ビス[4−(アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BAPP)、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン(TPE−R)、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン(TPE−Q)は分子量が大きく、イミド基濃度を低減できるため好ましく使用できる。これらの芳香族ジアミンとODA、MDA等の分子量の小さい芳香族ジアミンとを組み合わせて使用することで、イミド基濃度を調整できる。
芳香族テトラカルボン酸二無水物、芳香族ジアミンは、イミド化後のイミド基濃度が33.0%未満となるように選択する。イミド基濃度はポリイミド前駆体をイミド化した後のポリイミド樹脂において、
(イミド基部分の分子量)/(全ポリマーの分子量)×100
で計算される値である。具体的には以下の方法でイミド基濃度を計算する。
芳香族テトラカルボン酸二無水物、芳香族ジアミンの分子量からユニット単位でのイミド基濃度を計算する。例えば下記式(2)で示されるポリイミドの場合、イミド基濃度は
イミド基分子量=70.03×2=140.06
ユニット分子量=894.96となるため、
イミド基濃度(%)=(140.06)/(894.96)×100=15.6%
となる。
Figure 2013101759
上記の芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンを混合して反応させる。芳香族ジアミンの合計量(当量)と、芳香族テトラカルボン酸二無水物の合計量(当量)を約1:1とすると反応が良好に進行して好ましい。それぞれの材料を混合し、有機溶媒中で加熱して反応させてポリイミド前駆体樹脂を得る。
有機溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン等の非プロトン性極性有機溶媒が使用できる。これらの有機溶媒は単独で用いても2種以上を組み合わせても良い。
有機溶媒の量は、芳香族テトラカルボン酸二無水物、芳香族ジアミンを均一に分散させることができる量であれば良く特に制限されないが、通常これらの成分の合計量100質量部あたり100質量部〜1000質量部(樹脂濃度で10%〜50%程度となるように)使用する。有機溶媒量を少なくするとできあがったポリイミド樹脂ワニスの固形分量が多くなりコスト低減に有効である。
第2のポリイミド樹脂ワニスには顔料、染料、無機又は有機のフィラー、潤滑剤、密着向上剤等の各種添加剤や反応性低分子、相溶化剤等を添加しても良い。密着向上剤としてメラミンを添加すると、導体との密着力を向上できる。さらに本発明の趣旨を損ねない範囲で他の樹脂を混合して使用することもできる。
上記のポリイミド樹脂ワニスを導体上に塗布、焼付けして第1の絶縁層及び第2の絶縁層を形成する。焼付け工程でポリイミド前駆体樹脂がイミド化してポリイミドとなる。塗布、焼付けは通常の絶縁電線の製造と同様に行うことができる。例えば導体又は絶縁層を被覆した導体に第2のポリイミド樹脂ワニスを塗布した後、設定温度を350〜500℃とした炉内を1パス当たり5〜10秒間通過させて焼付ける作業を複数回繰り返して第2の絶縁層を形成する。塗布、焼付け工程の繰り返し回数を多くすることで厚みを増すことができる。さらに、第2の絶縁層の上に、第1のポリイミド樹脂ワニスを1回塗布、焼付けして第1の絶縁層を形成する。第1の絶縁層は、絶縁層全体の最外層とする。第1の絶縁層及び第2の絶縁層の厚みは任意にすることができるが、第1の絶縁層の厚みは1μm以上10μm以下、第2の絶縁層の厚みは10μm以上150μm以下とすることが好ましい。
導体としては銅や銅合金、アルミニウム等を使用できる。導体の大きさやその断面形状は特に限定されないが、丸線の場合は導体径が100μm〜5mmのものが、平角線の場合は一辺の長さが500μm〜5mmのものが一般に使用される。
図1は本発明の絶縁電線の一例を示す断面模式図である。断面が平角形状の導体3の外側に導体3を被覆する第2の絶縁層1、及び第2の絶縁層を被覆する第1の絶縁層2(最外層)がある。第2の絶縁層1はイミド基濃度が33.0%未満のポリイミド樹脂からなり、第1の絶縁層2は汎用のポリイミド樹脂(イミド基濃度36.6%)からなる。なお本発明の絶縁電線はこの形状に限定されるものではなく、例えば第2の絶縁層1の下層(導体直上)に、別の樹脂からなる絶縁層を形成しても良い。また第2の絶縁層1は、複数のポリイミド樹脂から形成しても良い。例えばイミド基濃度の異なる2種類のポリイミド樹脂を順次塗布、焼き付けして第2の絶縁層1を形成しても良い。
図2(a)は本発明の電機コイルの一例を示す模式図であり、図2(b)は図2(a)のA−A’断面図である。磁性材料からなるコア13の外側に絶縁電線11を捲線して電機コイル12が形成される。コアと電機コイルからなる部材は、モータのロータやステータとして使用される。例えば図3に示すように、コア13と電機コイル12とからなる分割ステータ14を複数組み合わせて環状に配置したステータ15を、モータの構成部材として使用する。
次に、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明する。なお本発明の範囲はこの実施例のみに限定されるものではない。
(第1のポリイミド樹脂ワニスの作製)
芳香族ジアミンである4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(ODA)94.3gを803gのN−メチルピロリドンに溶解させた後、芳香族テトラカルボン酸二無水物であるピロメリット酸二無水物(PMDA)102.7gを加えて窒素雰囲気下室温で1時間撹拌した。その後60℃で20時間撹拌し反応を終え、室温まで冷却して第1のポリイミド樹脂ワニスを得た。なおイミド基濃度は36.6%である。
(第2のポリイミド樹脂ワニスAの作製)
芳香族ジアミンである4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(ODA)48.9gと2,2−ビス[4−(アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BAPP)60.1gを806gのN−メチルピロリドンに溶解させた後、芳香族テトラカルボン酸二無水物であるピロメリット酸二無水物(PMDA)85.1gを加えて窒素雰囲気下室温で1時間撹拌した。その後60℃で20時間撹拌し反応を終え、室温まで冷却してポリイミド樹脂ワニスを得た。なおBAPPとODAとのモル比は37.5:62.5でありイミド基濃度は30.4%である。
(第2のポリイミド樹脂ワニスBの作製)
芳香族ジアミンである4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(ODA)16.7gと2,2−ビス[4−(アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BAPP)102.6gを808gのN−メチルピロリドンに溶解させた後、芳香族テトラカルボン酸二無水物であるピロメリット酸二無水物(PMDA)72.7gを加えて窒素雰囲気下室温で1時間撹拌した。その後60℃で20時間撹拌し反応を終え、室温まで冷却してポリイミド樹脂ワニスを得た。なおなおBAPPとODAとのモル比は75:25でありイミド基濃度は25.9%である。
(実施例1〜2、比較例1〜3)
(絶縁電線の作製)
厚み2.0mm、幅3.0mmの平角導体の表面に、表1に示す皮膜構成となるように上記の樹脂ワニスを常法により塗布、焼き付けして第1の絶縁層及び第2の絶縁層を形成し、絶縁電線を作製した。第2の絶縁層は導体直上に、樹脂ワニスを塗布、焼付けする工程を複数回行って形成している。また第1の絶縁層は第2の絶縁層の外側にポリイミド樹脂ワニスを塗布、焼付けする工程を1回行って形成している。また比較例3の絶縁電線は、第1の絶縁層は、ポリイミド樹脂ワニスを塗布、焼付けする工程を2回行って形成している。なお表中、第1のポリイミド樹脂ワニスからなる絶縁層はPI−1、第2のポリイミド樹脂ワニスAからなる絶縁層はPI−2A、第2のポリイミド樹脂ワニスBからなる絶縁層はPI−2Bと表記している。
(誘電率の測定)
得られた各絶縁電線について絶縁層の誘電率を測定した。図2に示すように絶縁電線の表面3カ所に銀ペーストを塗布して測定用のサンプルを作製した(塗布幅は両端2カ所が10mm、中央部分が100mmである)。導体と銀ペースト間の静電容量をLCRメータで測定し、測定した静電容量の値と被膜の厚みから誘電率を算出した。なお測定は温度30℃、湿度50%の条件で行った。
(層間密着力の測定)
得られた絶縁電線の絶縁層に絶縁層の途中まで0.5mm幅の切れ込みを入れ、180°剥離試験により層間密着力を測定した。
(耐溶接性の評価)
得られた各絶縁電線について耐溶接性を評価した。図5に評価方法の模式図を示す。導体21と絶縁皮膜22とからなる絶縁電線23を100mm長さに切断して試験片とし、各試験片の一方の端末から4.5mmの長さにわたって絶縁皮膜を剥離した。絶縁皮膜を剥離した側の端末の端部から2.5mmの部分を、断面寸法が1.5mm×2.0mmのクロム銅製アース棒25で挟み込み、試験片の端末の端部から1.25mm離れた位置(図5中のtが1.25mm)に溶接トーチ24の先端位置を合わせ、TIG溶接機により通電を行った。通電時間は0.3秒とし、通電電流は80A、90A、100Aとした。通電後の各試験片における通電部近傍の表面を目視で観察し、皮膜の浮きや発泡(ブリスタ)の発生が起こらず良好に溶接可能な通電電流の最大値を求めた。以上の評価結果を表1に示す。
Figure 2013101759
絶縁層の最外層である第1の絶縁層にイミド基濃度の高い第1のポリイミドを使用し、第1の絶縁層の内側に接する第2の絶縁層にイミド基濃度の低い第2のポリイミドAを使用した実施例1の絶縁電線は、最外層を設けなかった比較例1と比べると耐溶接性が向上している。また絶縁皮膜全体の誘電率は2.9と低いため、耐コロナ放電開始電圧を高くできることが予想される。同様に、絶縁層の最外層である第1の絶縁層にイミド基濃度の高い第1のポリイミドを使用し、第1の絶縁層の内側に接する第2の絶縁層にイミド基濃度の低い第2のポリイミドBを使用した実施例2の絶縁電線は、最外層を設けなかった比較例2と比べると耐溶接性が向上している。また絶縁皮膜全体の誘電率は2.7と低いため、耐コロナ放電開始電圧を高くできることが予想される。また実施例1と実施例2との比較により、イミド基濃度を下げることで絶縁層の誘電率が低下することがわかる。比較例3の絶縁電線は、誘電率、耐溶接性ともに良好であるが、最外層の第1の絶縁層を複数回の塗布、焼付けで形成しているため、層間密着力が低下しており耐加工性が悪い。
1 第2の絶縁層
2 第1の絶縁層
3 導体
11絶縁電線
12電機コイル
13コア
14分割ステータ
15ステータ
21導体
22絶縁皮膜
23絶縁電線
24溶接トーチ
25アース棒

Claims (6)

  1. 導体及び該導体を被覆する2層以上の絶縁層を有する絶縁電線であって、前記絶縁層の最も外側にある第1の絶縁層は、4、4’−ジアミノジフェニルエーテルとピロメリット酸二無水物とを反応して得られる第1のポリイミド前駆体を主成分とする第1のポリイミド樹脂ワニスを1回塗布、焼き付けして形成されたものであり、前記最外層に接する第2の絶縁層は、芳香族ジアミンと芳香族テトラカルボン酸二無水物とを反応して得られ、イミド化後のイミド基濃度が33.0%未満である第2のポリイミド前駆体を主成分とするポリイミド樹脂ワニスを複数回塗布、焼き付けして形成されたものである絶縁電線。
  2. 前記芳香族テトラカルボン酸二無水物がピロメリット酸二無水物である、請求項1に記載の絶縁電線。
  3. 前記ポリイミド前駆体のイミド化後のイミド基濃度が20.0%以上である、請求項1又は2に記載の絶縁電線。
  4. 前記第1の絶縁層の厚みが1μm以上10μm以下であり、前記第2の絶縁層の厚みが10μm以上150μm以下である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の絶縁電線。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の絶縁電線を捲線してなる電機コイル。
  6. 請求項5に記載の電機コイルを有するモータ。
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