JP2012212523A - 膜電極複合体、及び固体高分子電解質型燃料電池 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】高分子電解質膜と、その高分子電解質膜を両側から挟む、アノード触媒層と、カソード触媒層と、を備える膜電極接合体であって、前記アノード触媒層及び前記カソード触媒層は、それぞれ、導電性粒子とその上に担持された電極触媒粒子とを含む複合粒子と、高分子電解質と、を含み、前記カソード触媒層における前記高分子電解質の25℃における水中含水率が、前記アノード触媒層における前記高分子電解質の25℃における水中含水率よりも大きい、膜電極接合体。
【選択図】なし
Description
このような固体高分子電解質型燃料電池は、電極触媒層とガス拡散層とが積層されたガス拡散電極がプロトン交換膜の両面に接合した膜電極接合体を少なくとも備えている。ここでいうプロトン交換膜は、高分子鎖中にスルホン酸基、カルボン酸基等の強酸性基を有し、プロトンを選択的に透過する性質を有する材料である。このようなプロトン交換膜としては、化学的安定性の高いナフィオン(登録商標、デュポン社製)に代表されるパーフルオロ系プロトン交換膜が好適に用いられる。
(1)高分子電解質膜と、その高分子電解質膜を両側から挟む、アノード触媒層と、カソード触媒層と、を備える膜電極接合体であって、前記アノード触媒層及び前記カソード触媒層は、それぞれ、導電性粒子とその上に担持された電極触媒粒子とを含む複合粒子と、高分子電解質と、を含み、前記カソード触媒層における前記高分子電解質の25℃における水中含水率が、前記アノード触媒層における前記高分子電解質の25℃における水中含水率よりも大きい、膜電極接合体。
(2)高分子電解質膜と、その高分子電解質膜を両側から挟む、アノード触媒層と、カソード触媒層と、を備える膜電極接合体であって、前記アノード触媒層及び前記カソード触媒層は、それぞれ、導電性粒子とその上に担持された電極触媒粒子とを含む複合粒子と、高分子電解質と、を含み、前記カソード触媒層における前記高分子電解質の当量重量が、前記アノード触媒層における前記高分子電解質の当量重量よりも小さい、膜電極接合体。
(3)前記カソード触媒層における前記高分子電解質の当量重量が、前記アノード触媒層における前記高分子電解質の当量重量よりも、100〜1000小さい、(1)又は(2)の膜電極接合体。
(4)前記カソード触媒層における前記高分子電解質の当量重量が、250〜1000である、(1)〜(3)のいずれか1つの膜電極接合体。
(5)前記カソード触媒層における前記高分子電解質が、パーフルオロカーボンスルホン酸樹脂であり、前記パーフルオロカーボンスルホン酸樹脂は、下記一般式(1):
−(CF2−CFZ)− (1)
(式中、Zは、H、Cl、F又は炭素数1〜3のパーフルオロアルキル基を示す。)
で表される繰り返し単位と、下記一般式(2):
−(CF2−CF(−O−(CF2)m−SO3H))− (2)
(式中、mは1〜12の整数である。)
で表される繰り返し単位と、を有する共重合体である、(1)〜(4)のいずれか1つの膜電極接合体。
(6)(1)〜(5)のいずれか1つの膜電極接合体を備える固体高分子電解質型燃料電池。
ここで、式(2A)中、Xは、フッ素原子又は炭素数1〜3のパーフルオロアルキル基を示し、nは0〜5の整数であり、mは0〜12の整数である。ただし、nとmとは同時に0にならない。Wは加水分解によりSO3Hに転換し得る官能基である。
CF2=CFZ (1A)
ここで、式(1A)中、Zは、水素原子、塩素原子、フッ素原子又は炭素数1〜3のパーフルオロアルキル基を示す。
−(CF2−CFZ)− (1)
で表される繰り返し単位と、下記一般式(2B):
−(CF2−CF(−O−(CF2CFXO)n−(CF2)m−SO3H))− (2B)
で表される繰り返し単位とを有する共重合体であると好ましい。ここで、式(1)中、Zは上記式(1A)におけるものと同義であり、式(2B)中、Xはフッ素原子又はCF3であり、nは0〜5の整数であり、mは0〜12の整数である。ただし、nとmとは同時に0にならない。パーフルオロカーボンスルホン酸樹脂が上記構造を有する共重合体であると、膜電極接合体は高性能を有し、かつ燃料電池運転中に生成する過酸化水素ラジカルへの耐性が強くなる傾向にある。
また、カソード触媒層におけるパーフルオロカーボンスルホン酸樹脂は、上記一般式(1)で表される繰り返し単位と、下記一般式(2):
−(CF2−CF(−O−(CF2)m−SO3H))− (2)
で表される繰り返し単位とを有する共重合体であると好ましい。ここで、式中、mは1〜12の整数である。パーフルオロカーボンスルホン酸樹脂が上記構造を有する共重合体であると、含水率が高くなり、かつプロトン伝導性が向上する傾向にある。
以下、各工程について説明する。
工程1では、パーフルオロカーボンスルホン酸樹脂を溶媒に溶解又は懸濁して高分子電解質溶液であるパーフルオロカーボンスルホン酸樹脂溶液を得る。なお、パーフルオロカーボンスルホン酸樹脂溶液には、パーフルオロカーボンスルホン酸樹脂を溶媒に懸濁して得られるパーフルオロカーボンスルホン酸樹脂懸濁液も包含される。パーフルオロカーボンスルホン酸樹脂溶液の状態として、より具体的には、液体中に液体粒子がコロイド粒子又はそれよりも粗大な粒子として分散して乳状をなす乳濁液、液体中に固体粒子がコロイド粒子又は顕微鏡で見える程度の粒子として分散した懸濁液、巨大分子が分散した状態のコロイド状液体、多数の小分子が分子間力で会合して形成された親液コロイド分散系であるミセル状液体も包含される。パーフルオロカーボンスルホン酸樹脂溶液は、これらのうちの1種の状態であってもよく、2種以上を組み合わせた状態であってもよい。
工程2では、パーフルオロカーボンスルホン酸樹脂溶液と上述の複合粒子と溶媒とを混合した混合液すなわち燃料電池用電極触媒組成物(以下「電極触媒組成物」ともいう。)を得る。それらの混合は常法により行われ、溶媒中のパーフルオロカーボンスルホン酸樹脂溶液及び複合粒子の分散性を向上させるために、様々な装置を用いてそれらの分散処理を行ってもよい。上記装置としては、例えば、ホモジナイザー、ボールミル、超音波処理、加圧分散処理が挙げられる。
工程3では、上記混合液を用いて高分子電解質膜上に電極触媒層を形成させ、膜電極接合体を得る。本実施形態の膜電極接合体は、パーフルオロカーボンスルホン酸樹脂溶液と複合粒子とを含有する混合液である電極触媒組成物を、高分子電解質膜上に塗布して電極触媒層を形成させ、更に乾燥及び熱処理を施すことで得られる。あるいは、上記電極触媒組成物を基材上、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)シート上に塗布して、更に乾燥及び熱処理を施して電極触媒層を得た後、その電極触媒層を高分子電解質膜に積層して接合することによって、本実施形態の膜電極接合体が得られる。この場合、電極触媒層と高分子電解質膜とをその積層方向に100〜200℃で加熱プレスすることにより、それらを接合することができる。
高分子電解質を25℃の水中に1時間静置後、水中から取り出し、表面の水滴を拭き取った後秤量した(含水質量)。次いで、高分子電解質を160℃で乾燥させ、乾燥後の質量を秤量した(乾燥質量)。乾燥質量に対する含水質量の質量増加率を算出し、25℃水中含水率とした。25℃水中含水率の数値が高いほど含水性が高いことを示す。
高分子電解質を、25℃で飽和NaCl水溶液30mLに浸漬し、攪拌しながら30分間放置した。次いで、その飽和NaCl水溶液中のプロトンを、フェノールフタレインを指示薬として0.01N水酸化ナトリウム水溶液を用いて中和滴定した。中和滴定後に得られたスルホン酸基の対イオンがナトリウムイオンの状態となっている電解質膜を純水ですすぎ、更に真空乾燥した後に秤量した。中和に要した水酸化ナトリウムの物質量をM(mmol)、スルホン酸基の対イオンがナトリウムイオンの状態となっている電解質膜の質量をW(mg)とし、下記式(A)より当量重量EW(g/eq)を求めた。
EW=(W/M)−22 (A)
日本ベル(株)社製の高分子膜水分量試験装置MSB−AD−V−FC(商品名)を用いて、高分子電解質のプロトン伝導度を測定した。
高分子電解質の前駆体のMFRは、ASTM規格D1238に従って、270℃、荷重2.16kgの条件下で、MELT INDEXER TYPE C−5059D(商品名、東洋精機社製)を用いて測定した。MFRの単位として、押し出された前駆体の質量を10分間当たりのグラム数で表した。
膜電極接合体の電池特性を調べるため、下記のような燃料電池評価を実施した。まず、アノード側ガス拡散層とカソード側ガス拡散層とを対向させて、それらの間に膜電極接合体を挟み込み、評価用セルに組み込んだ。アノード側及びカソード側のガス拡散層として、カーボンペーパー(GDL35BC,SGLカーボン社製)を用いた。この評価用セルを評価装置(東陽テクニカ(株))に設置して以下の条件1及び2で評価した。
(条件1)セル温度80℃、アノード加湿温度60℃、カソード無加湿
(条件2)セル温度90℃、アノード加湿温度60℃、カソード無加湿
水素ガスは、水バブリング方式により加湿して評価用セルへ供給した。空気ガスは、空気ガスボンベから直接ガスを評価用セルへ供給した。各条件下、評価用セルを0.25A/cm2の電圧で30分間保持した後、電圧、抵抗を測定した。このとき、ガス流量は、水素ガスの利用率が75%、空気ガスの利用率が55%になるように設定した。
(パーフルオロカーボンスルホン酸樹脂前駆体の作製)
ステンレス製攪拌式オートクレーブに、C7F15COONH4の10%水溶液と純水とを仕込み、十分に真空、窒素置換を行った後、テトラフルオロエチレン(CF2=CF2)(以下、「TFE」と略記する。)ガスを導入して、ゲージ圧力で0.7MPaまで昇圧した。引き続いて、過硫酸アンモニウム水溶液を注入して重合を開始した。重合により消費されたTFEを補給するため、連続的にTFEガスを供給してオートクレーブの圧力を0.7MPaに保持するようにし、かつ、供給したTFEに対して、質量比で2.00倍に相当する量のCF2=CFO(CF2)2−SO2Fを連続的に供給して重合を行った。こうして、パーフルオロカーボンスルホン酸樹脂前駆体のペレットを得た。また、供給するCF2=CFO(CF2)2−SO2Fの質量比を2.00から0.70に変更する以外は上記と同様にして、別のパーフルオロカーボンスルホン酸樹脂前駆体のペレットを得た。
上述のようにして得られたパーフルオロカーボンスルホン酸樹脂前駆体のペレットを準備した。それらのペレットを、水酸化カリウム(15質量%)とメチルアルコール(50質量%)とを溶解した水溶液中で、80℃で20時間接触させて、加水分解処理を行った。その後、それらのペレットを水溶液から取り出して、60℃の水中に5時間浸漬して、水から取り出した。次に、それらのペレットを、60℃の2N塩酸水溶液に1時間浸漬させる処理を、毎回塩酸水溶液を更新して5回繰り返した後、イオン交換水で水洗、乾燥した。これにより、互いに異なるEWを有する、−(CF2−CF2)−で表される繰り返し単位と、−(CF2−CF(−O−(CF2)2−SO3H))−で表される繰り返し単位とを有するパーフルオロカーボンスルホン酸樹脂A1及びA2のペレットを得た。
Pt担持カーボン(田中貴金属社製、商品名「TEC10E40E」、Pt36.4質量%担持)1.00gに対し、20質量%パーフルオロカーボンスルホン酸樹脂溶液AS1又はAS2を2.0g、エタノールを8.4g添加した後、ホモジナイザーでよく混合して電極インクを得た。樹脂溶液AS1から得られた電極インクをBS1、樹脂溶液AS2から得られた電極インクをBS2とする。
電極インクBS1をスクリーン印刷法にて高分子電解質膜(商品名「イオン交換膜−SF7203」、20μm、旭化成イーマテリアルズ株式会社製)の一面に塗布し、これをカソード触媒層とした。その高分子電解質膜の他面に電極インクBS2をスクリーン印刷法にて塗布し、これをアノード触媒層とした。塗布量は、カソード触媒層においてPt担持量及びポリマー担持量が共に0.3mg/cm2となるように、また、アノード触媒層においてPt担持量及びポリマー担持量が共に0.2mg/cm2となるように調整した。塗布後、室温下で1時間、空気中140℃で5分間熱処理を行うことにより、高分子電解質膜と、それを挟むアノード触媒層とカソード触媒層とを備える膜電極接合体を得た。
カソード触媒層及びアノード触媒層を形成するための電極インクに両方ともBS2を用いたこと以外は実施例1と同様にして膜電極接合体を作製し、燃料電池評価を行った。その結果、電圧は、条件1で0.701V、条件2で0.540Vとなり、カソード無加湿条件において実施例1に比べて電圧が低下した。そのときの抵抗は、条件1で198mΩ・cm2、条件2で544mΩ・cm2であり、実施例1に比べて抵抗が増大した。
カソード触媒層及びアノード触媒層を形成するための電極インクに両方ともBS1を用いたこと以外は実施例1と同様にして膜電極接合体を作製し、燃料電池評価を行った。その結果、電圧は、条件1で0.708V、条件2で0.558となり、カソード無加湿条件において実施例1に比べて電圧が低下した。そのときの抵抗は、条件1で201mΩ・cm2、条件2で548mΩ・cm2であり、実施例1に比べて抵抗が増大した。
カソード触媒層の電極インクにBS2を、アノード触媒層の電極インクにBS1を用いたこと以外は実施例1と同様にして膜電極接合体を作製し、燃料電池評価を行った。その結果、電圧は、条件1で0.684V、条件2で0.321となり、カソード無加湿条件において実施例1に比べて電圧が低下した。そのときの抵抗は、条件1で206mΩ・cm2、条件2で1050mΩ・cm2であり、実施例1に比べて抵抗が増大した。
Claims (6)
- 高分子電解質膜と、その高分子電解質膜を両側から挟む、アノード触媒層と、カソード触媒層と、を備える膜電極接合体であって、
前記アノード触媒層及び前記カソード触媒層は、それぞれ、導電性粒子とその上に担持された電極触媒粒子とを含む複合粒子と、高分子電解質と、を含み、
前記カソード触媒層における前記高分子電解質の25℃における水中含水率が、前記アノード触媒層における前記高分子電解質の25℃における水中含水率よりも大きい、膜電極接合体。 - 高分子電解質膜と、その高分子電解質膜を両側から挟む、アノード触媒層と、カソード触媒層と、を備える膜電極接合体であって、
前記アノード触媒層及び前記カソード触媒層は、それぞれ、導電性粒子とその上に担持された電極触媒粒子とを含む複合粒子と、高分子電解質と、を含み、
前記カソード触媒層における前記高分子電解質の当量重量が、前記アノード触媒層における前記高分子電解質の当量重量よりも小さい、膜電極接合体。 - 前記カソード触媒層における前記高分子電解質の当量重量が、前記アノード触媒層における前記高分子電解質の当量重量よりも、100〜1000小さい、請求項1又は2に記載の膜電極接合体。
- 前記カソード触媒層における前記高分子電解質の当量重量が、250〜1000である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の膜電極接合体。
- 前記カソード触媒層における前記高分子電解質が、パーフルオロカーボンスルホン酸樹脂であり、前記パーフルオロカーボンスルホン酸樹脂は、下記一般式(1):
−(CF2−CFZ)− (1)
(式中、Zは、水素原子、塩素原子、フッ素原子又は炭素数1〜3のパーフルオロアルキル基を示す。)
で表される繰り返し単位と、下記一般式(2):
−(CF2−CF(−O−(CF2)m−SO3H))− (2)
(式中、mは1〜12の整数である。)
で表される繰り返し単位と、を有する共重合体である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の膜電極接合体。 - 請求項1〜5のいずれか1項に記載の膜電極接合体を備える固体高分子電解質型燃料電池。
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