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JP5354935B2 - 高分子電解組成物及びその用途 - Google Patents

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JP5354935B2 JP2008054914A JP2008054914A JP5354935B2 JP 5354935 B2 JP5354935 B2 JP 5354935B2 JP 2008054914 A JP2008054914 A JP 2008054914A JP 2008054914 A JP2008054914 A JP 2008054914A JP 5354935 B2 JP5354935 B2 JP 5354935B2
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Description

本発明は、固体高分子電解質型燃料電池用の電解質材料として好適な、高分子電解質組成物及びその用途に関するものである。
燃料電池は、電池内で、水素、メタノール等を電気化学的に酸化することにより、燃料の化学エネルギーを、直接、電気エネルギーに変換して取り出すものであり、クリーンな電気エネルギー供給源として注目されている。特に、固体高分子電解質型燃料電池は、他と比較して低温で作動することから、自動車代替動力源、家庭用コジェネレーションシステム、携帯用発電機等として期待されている。
このような固体高分子電解質型燃料電池は、電極触媒層とガス拡散層とが積層されたガス拡散電極がプロトン交換膜の両面に接合された膜電極接合体を少なくとも備えている。ここでいうプロトン交換膜は、高分子鎖中にスルホン酸基、カルボン酸基等の強酸性基を有し、プロトンを選択的に透過する性質を有する組成物からなる膜である。このようなプロトン交換膜に使用される組成物としては、化学的安定性の高いナフィオン(登録商標、デュポン社製)に代表されるパーフルオロ系プロトン組成物を用いたプロトン交換膜が好適に用いられる。
燃料電池の運転時においては、アノード側のガス拡散電極に燃料(例えば、水素)、カソード側のガス拡散電極に酸化剤(例えば、酸素や空気)がそれぞれ供給され、両電極間が外部回路で接続されることにより、燃料電池の作動が実現される。具体的には、水素を燃料とした場合、アノード触媒上で水素が酸化されてプロトンが生じる。このプロトンは、アノード触媒層内のプロトン伝導性ポリマーを通った後、プロトン交換膜内を移動し、カソード触媒層内のプロトン伝送性ポリマーを通ってカソード触媒上に達する。一方、水素の酸化によりプロトンと同時に生じた電子は、外部回路を通ってカソード側ガス拡散電極に到達する。カソード触媒上では、上記プロトンと酸化剤中の酸素とが反応して水素が生成される。そして、このとき電気エネルギーが取り出される。
この際、プロトン交換膜は、ガスバリア隔壁としての役割も果たす必要がある。プロトン交換膜のガス透過率が高いと、アノード側水素のカソード側へのリークおよびカソード側酸素のアノード側へのリーク、すなわち、クロスリークが発生する。クロスリークが発生すると、いわゆるケミカルショートの状態となって良好な電圧が取り出せなくなる外、アノード側水素とカソード側酸素が反応して過酸化水素が発生しプロトン交換膜を劣化させるという問題がある。
過酸化水素によるプロトン交換膜の劣化を抑制する方法として、高分子電解質膜中に金属酸化物(例えば、酸化マンガン、酸化コバルト等)を分散配合する方法(特許文献1)、高分子電解質膜中にヒドロキシラジカルの酸化還元電位よりも低い電位で還元剤として働き、かつ、過酸化水素が還元剤として働く酸化還元電位よりも高い電位よりも高い電位で酸化剤として働く酸化還元サイクルを有する化合物(N−ヒドロキシフタルイミド)を配合する方法(特許文献2)や高分子電解質膜中にラジカルトラップ剤(フェノール性水酸基を有する化合物)を配合する方法(特許文献3)等が開示されている。
一方、高分子電解質中に無機多孔質粒子を配合した高分子電解質膜が開示されている(特許文献4、5)。
特開2001−118591号公報 特開2006−49263号公報 特開2000−223135号公報 特開平9−251857号公報 特開平6−111827号公報
しかしながら、上記特許文献1〜特許文献2及び特許文献5に開示された方法では、過酸化水素分解物質の酸性、耐熱性が不充分であるために過酸化水素分解能の持続性の観点から、なお改善の余地があった。特許文献3に開示された方法では、ラジカルトラップ剤がラジカルを捕捉した後に再生しないため、過酸化水素トラップの持続性や添加量の観点から、なお改善の余地があった。特許文献4に開示された方法では、過酸化水素を効率的に接触分解させるための高分子電解質中への分散性の観点から、なお改善の余地があった。
そこで、本発明はこのような問題点を解決する為に発明されたもので、高分子電解質組成物によって過酸化水素を長期的に効率よく分解し、高分子電解質膜の劣化を抑制することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決する為に鋭意検討した結果、過酸化水素を接触分解する金属酸化物の一次粒子径を1nm〜50nmに調整し、それを高分子電解質中に配合することで、上記の課題が達成出来ることを見出し、本発明を完成した。
すなわち本発明は、以下の高分子電解質組成物、高分子電解質溶液、高分子電解質膜、及び固体高分子電解質型燃料電池である。
1)イオン交換当量が0.5〜3.0ミリ当量/gの高分子電解質(A成分)と過酸化水素分解能を有する金属酸化物(B成分)を含有し、
前記A成分が下記式[1]で表される重合体であり、
前記A成分と前記B成分の質量比(A/B)が95/5〜99.99/0.01、かつ前記B成分の一次粒子径が1nm〜50nmである高分子電解質組成物であって、上記A成分に上記B成分を混合・分散させてなることを特徴とする高分子電解質組成物。
−[CF2CX12]a−[CF2−CF(−O−(CF2−CF(CF23))b−Oc
−(CFR1)d−(CFR2)e−(CF2)f−X4)]g− [1]
(式中、X1、X2及びX3は、それぞれ独立にハロゲン元素または炭素数1以上3以下のパーフルオロアルキル基である。aおよびgは、0≦a<1、0<g≦1、a+g=1である。bは0である。cは0または1である。d、eおよびfは、それぞれ独立に0以上6以下の整数(ただし、d+e+fは0に等しくない)である。R1及びR2は、それぞれ独立にハロゲン元素、炭素数1以上10以下のパーフルオロアルキル基またはフルオロクロロアルキル基である。X4はCOOZ、SO3Z、PO32またはPO3HZである。)
ここで、Zは水素原子、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子またはアミン類(NH4、NH3 1 、NH2 1 2 、NH 1 2 3 、N 1 2 3 4 )である。
また 1 2 3 及び 4 はアルキル基またはアレーン基である。
2)前記B成分がチタニアあるいはジルコニアである1)に記載の高分子電解質組成物。3)さらに溶媒を含む1)又は2)に記載の高分子電解質組成物。
4)1)又は2)に記載の高分子電解質組成物からなる高分子電解質膜。
5)1)又は2)に記載の高分子電解質組成物から構成される電極触媒層。
6)4)に記載の高分子電解質膜を用いてなる膜電極接合体。
7)5)に記載の電極触媒層を用いてなる膜電極接合体。
8)さらに4)に記載の高分子電解質膜を用いてなる7)の膜電極接合体。
9)6)〜8)のいずれかに記載の膜電極接合体を用いてなる高分子電解質型燃料電池。
本発明の高分子電解質組成物は、良好な過酸化水素分解能を有する。
すなわち、本発明は金属酸化物を微細化することで、高分子電解質組成物中での分散性を向上させたものである。また、金属酸化物を微細化することで比表面積を増加し、過酸化水素分解反応点の飛躍的な増加させたものである。さらに、本発明では燃料電池運転時の耐溶出性(耐熱性、耐酸性等)が高い金属酸化物を用いた場合、長期の燃料電池運転においても、過酸化水素分解能を維持することが出来る他、膜から金属酸化物が溶出することで生じるクラックの発生を防止することが可能となる。
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することが出来る。
本発明は、イオン交換当量が0.5〜3.0ミリ当量/gの高分子電解質(A成分)と過酸化水素分解能を有する金属酸化物(B成分)を含有し、前記A成分と前記B成分の質量比(A/B)が50/50〜99.99/0.01、かつ前記B成分の一次粒子径が1nm〜50nmである高分子電解質組成物である。
(高分子電解質(A成分))
本発明で用いられる高分子電解質(A成分)はイオン交換容量が0.5〜3.0ミリ当量/gのイオン交換基を有する高分子化合物である。ここで、イオン交換当量を3.0ミリ当量/g以下とすることは、高分子電解質膜として利用した際に、高分子電解質膜が燃料電池運転中の高温高加湿下で膨潤が低減されるため好ましい。膨潤が低減されることは、高分子電解質膜の強度の低下や、しわが発生して電極から剥離したりするなどの問題、さらには、ガス遮断性が低下する問題を低減し得る。逆に、イオン交換容量を0.5ミリ当量/g以上とすることは、得られた高分子電解質膜を備えた燃料電池の発電能力を良好に維持し得る。したがって、高分子電解質(A成分)のイオン交換当量は、より好ましくは0.65〜2.0ミリ当量/g、さらに好ましくは0.8〜1.5ミリ当量/gである。
高分子電解質(A成分)としては、例えば、イオン交換基を有するパーフルオロカーボン高分子化合物や、分子内に芳香環を有する炭化水素系高分子化合物にイオン交換基を導入したものなどが好ましく、化学的安定性の観点から、イオン交換基を有するパーフルオロカーボン高分子化合物が特に好ましい。
ここで、分子内に芳香環を有する炭化水素系高分子化合物としては、具体的には、例えば、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンエーテル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリチオエーテルエーテルスルホン、ポリチオエーテルケトン、ポリチオエーテルエーテルケトン、ポリベンゾイミダゾール、ポリベンゾオキサゾール、ポリオキサジアゾール、ポリベンゾオキサジノン、ポリキシリレン、ポリフェニレン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリアセン、ポリシアノゲン、ポリナフチリジン、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリフェニレンスルホン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリエステルイミド、ポリアミドイミド、ポリアリレート、芳香族ポリアミド、ポリスチレン、ポリエステル、ポリカーボネート等が挙げられる。
中でも、分子内に芳香環を有する炭化水素系高分子化合物としては、耐熱性や耐酸化性、耐加水分解性の観点から、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンエーテル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリチオエーテルエーテルスルホン、ポリチオエーテルケトン、ポリチオエーテルエーテルケトン、ポリベンゾイミダゾール、ポリベンゾオキサゾール、ポリオキサジアゾール、ポリベンゾオキサジノン、ポリキシリレン、ポリフェニレン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリアセン、ポリシアノゲン、ポリナフチリジン、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリフェニレンスルホン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリエステルイミドが好ましい。なお、これらに導入するイオン交換基は、例えば、スルホン酸基、スルホンイミド基、スルホンアミド基、カルボン酸基、リン酸基等が好ましく、特にスルホン酸基が好ましい。
またイオン交換基を有するパーフルオロカーボン高分子化合物としては、パーフルオロカーボンスルホン酸樹脂、パーフルオロカーボンカルボン酸樹脂、パーフルオロカーボンスルホンイミド樹脂、パーフルオロカーボンスルホンアミド樹脂、パーフルオロカーボンリン酸樹脂、またはこれら樹脂のアミン塩、金属塩等が挙げられる。
より具体的には、下記一般式[1]で表される重合体が挙げられる。
-[CF2CX1X2]a-[CF2-CF(-O-(CF2-CF(CF2X3))b-Oc-(CFR1)d-(CFR2)e-(CF2)f-X4)]g- [1]
(式中、X、X及びXは、それぞれ独立にハロゲン元素または炭素数1以上3以下のパーフルオロアルキル基である。aおよびgは、0≦a<1、0<g≦1、a+g=1である。bは0以上8以下の整数である。cは0または1である。d、eおよびfは、それぞれ独立に0以上6以下の整数(ただし、d+e+fは0に等しくない)である。R及びRは、それぞれ独立にハロゲン元素、炭素数1以上10以下のパーフルオロアルキル基またはフルオロクロロアルキル基である。XはCOOZ、SOZ、POまたはPOHZである。)
ここで、Zは水素原子、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子またはアミン類(NH、NH、NH、NHR、NR)である。またR、R、R及びRはアルキル基またはアレーン基である。
中でも、下記一般式[2]または[3]で表されるパーフルオロカーボンスルホン酸ポリマーもしくはその金属塩が特に好ましい。
-[CF2CF2]a-[CF2-CF(-O-CF2-CF(CF3))b-O-(CF2)c-SO3X]]d- [2]
(式中、aおよびdは、0≦a<1、0≦d<1、a+d=1である。bは1以上8以下の整数である。cは0以上10以下の整数である。Xは水素原子またはアルカリ金属原子である。)
-[CF2CF2]e-[CF2-CF(-O-(CF2)f-SO3Y)]g- [3]
(式中、eおよびgは、0≦e<1、0≦g<1、e+g=1である。fは0以上10以下の整数である。Yは水素原子またはアルカリ金属原子である。)
本実施の形態において用いられるイオン交換基を有するパーフルオロカーボン高分子化合物は、例えば、下記一般式[4]に示される前駆体ポリマーを重合した後、アルカリ加水分解、酸処理等を行って製造することが出来る。
-[CF2CX1X2]a-[CF2-CF(-O-(CF2-CF(CF2X3))b-Oc-(CFR1)d-(CFR2)e-(CF2)f-X5)]g- [4]
(式中、X、X及びXは、それぞれ独立にハロゲン元素または炭素数1以上3以下のパーフルオロアルキル基である。aおよびgは0≦a<1,0<g≦1,a+g=1である。bは0以上8以下の整数である。cは0または1である。d、eおよびfはそれぞれ独立に0以上6以下の整数(ただし、d+e+fは0に等しくない)である。RおよびRはそれぞれ独立にハロゲン元素、炭素数1以上10以下のパーフルオロアルキル基またはフルオロクロロアルキル基である。XはCOOR、CORまたはSOである。ここで、Rは炭素数1〜3の炭化水素系アルキル基である。Rはハロゲン元素である。)
上記前駆体ポリマーは、例えば、フッ化オレフィン化合物とフッ化ビニル化合物とを共重合させることにより製造し得る。
ここで、フッ化ビニル化合物としては、例えば、CF2=CFO(CF2z−SO2F,CF2=CFOCF2CF(CF3)O(CF2z−SO2F,CF2=CF(CF2z−SO2F,CF2=CF(OCF2CF(CF3))z−(CF2z-1−SO2F,CF2=CFO(CF2z−CO2R,CF=CFOCF2CF(CF3)O(CF2z−CO2R,CF2=CF(CF2z−CO2R,CF2=CF(OCF2CF(CF3))z−(CF22−CO2R(Zは1〜8の整数を、Rは炭素数1〜3の炭化水素系アルキル基を表す)等が挙げられる。
そして、上記のような前駆体ポリマーは、公知の手段により合成することができる。このような合成方法としては、特に限定されるものではないが、以下のような方法を挙げることが出来る。
(i)含フッ素炭化水素などの重合溶媒を使用し、この重合溶媒に充填溶解した状態でフッ化ビニル化合物とフッ化オレフィンのガスとを反応させて重合が行われる方法(溶液重合)。上記含フッ素炭化水素としては、例えば、トリクロロトリフルオロエタン、1、1、1、2、3、4、4、5、5、5−デカフロロペンタンなど、「フロン」と総称される化合物群を好適に使用することが出来る。
(ii)含フッ素炭化水素などの溶媒を使用せず、フッ化ビニル化合物そのものを重合溶剤として用いてフッ化ビニル化合物の重合が行われる方法(塊状重合)。
(iii)界面活性剤の水溶液を重合溶媒として用い、この重合溶媒に充填溶解した状態でフッ化ビニル化合物とフッ化オレフィンガスとを反応させて重合が行われる方法(乳化重合)。
(iv)界面活性剤およびアルコールなどの助乳化剤の水溶液を用い、この水溶液に充填乳化した状態でフッ化ビニル化合物とフッ化オレフィンのガスとを反応させて重合が行われる方法(ミニエマルジョン重合、マイクロエマルジョン重合)。
(v)懸濁安定剤の水溶液を用い、この水溶液に充填懸濁した状態でフッ化ビニル化合物とフッ化オレフィンのガスとを反応させて重合が行われる方法(懸濁重合)。
本発明の形態においては、前駆体ポリマーの重合度の指標としてメルトマスフローレート(以下「MFR」と略称する)を使用することが出来る。本実施の形態において、前駆体ポリマーのMFRは、0.01以上が好ましく、0.1以上がより好ましく、0.3以上が更に好ましい。MFRの上限は限定されないが、100以下が好ましく、10以下がより好ましく、5以下が更に好ましい。MFRを0.01以上100以下とすることにより、成膜等の成型加工を良好に行うことが出来る。
以上のようにして作製された前駆体ポリマーは、塩基性反応液体中で加水分解処理され、温水などで十分に水洗され、酸処理される。この酸処理によってパーフルオロカーボンスルホン酸樹脂前駆体はプロトン化され、SOH体となる。
(金属酸化物(B成分))
本実施の形態に用いられる金属酸化物(B成分)は過酸化水素分解能を有し、かつ一次粒子径が1nm〜50nmである金属酸化物である。
ここで金属酸化物(B成分)の一次粒子径とは、溶媒中の金属酸化物(B成分)の含有量が1質量%となるように分散液を調整し、動的光散乱粒度分布計(大塚電子製)を用いて測定される平均粒子径をいう。
本発明でいう過酸化水素分解能とは、金属酸化物(B成分)が過酸化水素と接触した際に、水と酸素に分解することをいう。
過酸化水素分解能を有する金属酸化物としては、例えば、ジルコニア(ZrO)、チタニア(TiO)、シリカ(SiO)、アルミナ(Al)、酸化鉄(Fe,FeO,Fe),酸化銅(CuO、CuO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化イットリウム(Y)、酸化ニオブ(Nb)、酸化モリブデン(MoO)、酸化インジウム(In,InO)、酸化スズ(SnO)、酸化タンタル(Ta)、酸化タングステン(WO、W)、酸化鉛(PbO,PbO)、酸化ビスマス(Bi)、酸化セリウム(CeO、Ce)、酸化アンチモン(Sb、Sb)、酸化ゲルマニウム(GeO,GeO)、酸化ランタン(La)、酸化ルテニウム(RuO)等が挙げられる。これら金属酸化物は、単独で用いても、混合物を用いても良いし、例えば、スズ添加酸化インジウム(ITO)、アンチモン添加酸化スズ(ATO)、酸化アルミニウム亜鉛(ZnO・Al)等に挙げられる複合酸化物を用いても良い。
本発明の形態に用いられる金属酸化物(B成分)は、燃料電池の運転時における(熱や酸・アルカリ等による)金属酸化物のイオン化による溶出性を防止し、過酸化水素分解能を持続させる観点から、ジルコニア(ZrO)、チタニア(TiO)、酸化イットリウム(Y)、酸化タンタル(Ta)が好ましく、ジルコニア(ZrO)、チタニア(TiO)がより好ましい。特に好ましい金属酸化物(B成分)は、ジルコニア(ZrO)である。
本実施の形態に用いられる金属酸化物(B成分)は、分散性の観点より、少なくとも1つ以上の反応性官能基を有する表面修飾剤により表面が修飾されていることが好ましい。
金属酸化物(B成分)の表面修飾剤としては、1つ以上の反応性官能基を有することが必要であり、この反応性官能基としては、炭素−炭素二重結合またはケイ素−水素結合を有することが好ましく、アルコキシル基、ヒドロキシル基、ビニル基、スチリル基、アクリル基、メタクリル基、アクリロイル基、エポキシ基の群から選択される1種または2種以上の反応性官能基であることが好ましい。本発明において特に好ましいのは、炭素−炭素二重結合またはケイ素−水素結合を有するもののうち、シランカップリング剤、変性シリコーン、界面活性剤の群から選択された1種または2種以上である。
シランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリクロルシラン、ビニルトフェノキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリクロルシラン、3−グリシドキシプロピルトリフェノキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、p−スチリルトリエトキシシラン、p−スチリルトリクロルシシラン、p−スチリルトリフェノキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリクロルシラン、3−アクリロキシプロピルトリフェノキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリクロルシラン、3−メタクリロキシプロピルトリフェノキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、アリルトリクロルシシラン、アリルトリフェノキシシラン等が挙げられる。
また、ビニルエチルジメトキシシラン、ビニルエチルジエトキシシラン、ビニルエチルジクロルシラン、ビニルエチルジフェノキシシラン、3−グリシドキシプロピルエチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルエチルジクロルシラン、3−グリシドキシプロピルエチルジフェノキシシラン、p−スチリルエチルジメトキシシラン、p−スチリルエチルジエトキシシラン、p−スチリルトリエチルジクロルシシラン、p−スチリルエチルジフェノキシシラン、3−アクリロキシプロピルエチルジメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルエチルジエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルエチルジクロルシラン、3−アクリロキシプロピルエチルジフェノキシシラン、3−メタクリロキシプロピルエチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルエチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルエチルジクロルシラン、3−メタクリロキシプロピルエチルジフェノキシシラン、アリルエチルジメトキシシラン、アリルエチルジエトキシシラン、アリルエチルジクロルシシラン、アリルエチルジフェノキシシラン等も挙げられる。
さらに、ビニルジエチルメトキシシラン、ビニルジエチルエトキシシラン、ビニルジエチルクロルシラン、ビニルジエチルフェノキシシラン、3−グリシドキシプロピルジエチルメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルジエチルエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルジエチルクロルシラン、3−グリシドキシプロピルジエチルフェノキシシラン、p−スチリルジエチルメトキシシラン、p−スチリルジエチルエトキシシラン、p−スチリルジエチルクロルシシラン、p−スチリルジエチルフェノキシシラン、3−アクリロキシプロピルジエチルメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルジエチルエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルジエチルクロルシラン、3−アクリロキシプロピルジエチルフェノキシシラン、3−メタクリロキシプロピルジエチルメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルジエチルエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルジエチルクロルシラン、3−メタクリロキシプロピルジエチルフェノキシシラン、アリルジエチルメトキシシラン、アリルジエチルエトキシシラン、アリルジエチルクロルシシラン、アリルジエチルフェノキシシラン等も挙げられる。
変性シリコーンとしては、エポキシ変性シリコーン、エポキシ・ポリエーテル変性シリコーン、メタクリル変性シリコーン、フェノール変性シリコーン、メチルスチリル変性シリコーン、アクリル変性シリコーン、アルコキシ変性シリコーン、メチルハイドロジェンシリコーン等が挙げられる。
界面活性剤としては、非イオン系界面活性剤が好適に用いられる。
非イオン系界面活性剤としては、例えば、アクリル酸、クロトン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等の不飽和脂肪酸等が挙げられる。
上記の表面修飾剤を用いて金属酸化物(B成分)の表面を修飾する方法としては、湿式法、乾式法等が挙げられる。
湿式法とは、表面修飾剤と金属酸化物(B成分)を溶媒に投入し混合することにより、金属酸化物(B成分)の表面を修飾する方法である。
乾式法とは、表面修飾剤と乾燥した金属酸化物(B成分)をミキサー等の乾式混合機に投入し混合することにより、金属酸化物(B成分)の表面を修飾する方法である。
この表面が修飾された金属酸化物(B成分)の修飾部分の質量比は、高分子電解質(A成分)との混合性の観点から、金属酸化物(B成分)全体量の5質量%〜200質量%であることが好ましく、より好ましくは10質量%〜100質量%、さらに好ましくは20質量%〜100質量%である。
本実施の形態に用いられる金属酸化物(B成分)の一次粒子径は、過酸化水素分解能および分散性のバランスから1nm〜50nmの範囲が好適である。金属酸化物(B成分)の一次粒子径は、小さいほど高分子電解質組成物中での金属酸化物(B成分)の分散性が向上するが、金属酸化物(B成分)の結晶性が低下し過酸化水素分解能が低下する。逆に、金属酸化物(B成分)の一次粒子径が大きい場合は、良好な過酸化水素分解能を有するが、高分子電解質組成物中での金属酸化物(B成分)の分散性が悪くなる。したがって、金属酸化物(B成分)の一次粒子径のより好ましい範囲は1nm〜30nmであり、特に好ましくは2nm〜20nmである。
高分子電解質(A成分)と金属酸化物(B成分)の質量比(A/B)は、耐久性と伝導性のバランスの観点から、(A/B)=50/50〜99.99/0.01でありる、(A/B)=70/30〜99.99/0.01が好ましく、(A/B)=80/20〜99.9/0.1がより好ましく、(A/B)=95/5〜99.5〜0.5がさらに好ましい。
また金属酸化物(B成分)を混合・分散させる場合には、凝集を抑制する観点から、溶媒に分散させて用いるのが好ましい。
分散液中の金属酸化物(B成分)の含有率は、1質量%〜70質量%が好ましく、より好ましくは1質量%〜50質量%、さらに好ましくは5質量%〜30質量%である。分散液中の金属酸化物(B成分)の含有率を1質量%〜70質量%とすることで、金属酸化物(B成分)が溶媒中でゲルや沈殿を生じることなく、良好な分散状態を維持することができる。
ここで、分散溶媒としては、基本的には、水、有機溶媒、液状の樹脂モノマー、液状の樹脂オリゴマーのうち少なくとも1種以上を含有したものが挙げられる。
上記の有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、2−プロパノール、ブタノール、オクタノール等のアルコール類、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン等のエステル類、ジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル(メチルセロソルブ)、エチレングリコールモノエチルエーテル(エチルセロソルブ)、エチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトン、シクロヘキサノン等のケトン類、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素、ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類が好適に用いられ、これらの溶媒のうち1種または2種以上を用いることができる。
(添加剤)
本発明の高分子電解質組成物は、上記高分子電解質(A成分)および金属酸化物(B成分)に加えて、耐久性を向上させる目的でポリアゾール化合物(C成分)やチオエーテル化合物(D成分)等を添加しても良い。これら添加剤は、1種類で用いても良いし、2種以上を混合して用いることもできる。
(ポリアゾール化合物(C成分))
ポリアゾール化合物(C成分)としては、例えば、ポリイミダゾール系化合物、ポリベンズイミダゾール系化合物、ポリベンゾビスイミダゾール系化合物、ポリベンゾオキサゾール系化合物、ポリオキサゾール系化合物、ポリチアゾール系化合物、ポリベンゾチアゾール系化合物等の環内に窒素元素を1個以上含む複素五員環を構成要素とする化合物の重合体が挙げられる。なお、複素五員環には、窒素以外に酸素、イオウ等を含むものであっても構わない。
また、上記C成分の分子量は、GPC測定を行った場合の重量平均分子量として、300〜500,000(ポリスチレン換算)のものが好ましい。
上記複素五員環を構成要素とする化合物としては、例えば、p−フェニレン基、m−フェニレン基、ナフタレン基、ジフェニレンエーテル基、ジフェニレンスルホン基、ビフェニレン基、ターフェニル基、2,2−ビス(4−カルボキシフェニレン)ヘキサフルオロプロパン基等の2価の芳香族基が複素五員環と結合した化合物を用いることが耐熱性を得る観点から好ましい。具体的には、上記C成分として、ポリベンズイミダゾールが好ましく用いられる。
また、上記C成分は、下記の一般的な変性方法を用いて、イオン交換基が導入されたポリアゾール系化合物であっても良い。このような変性ポリアゾール系化合物としては、アミノ基、四級アンモニウム基、カルボキシル基、スルホン酸基、ホスホン酸基等を1種以上導入したポリアゾール系化合物が挙げられる。なお、アニオン性のイオン交換基をポリアゾール系化合物に導入することは、本実施の形態の高分子電解質組成物全体のイオン交換容量を増加させることができ、結果的に燃料電池運転時の高い出力を得ることができるため、有用である。上記変性ポリアゾール化合物のイオン交換容量は0.1〜3.5ミリ当量/gであることが好ましい。
ポリアゾール系化合物(C成分)の変性方法は、特に限定されないが、例えば、発煙硫酸、濃硫酸、無水硫酸およびその錯体、プロパンサルトン等のスルトン類、α−ブロモトルエンスルホン酸、クロロアルキルスルホン酸等を用いて、ポリアゾール化合物にイオン交換基を導入する方法や、ポリアゾール系化合物のモノマー合成時にイオン交換基を含有させて重合する方法等が挙げられる。
またポリアゾール系化合物(C成分)は、高分子電解質(A成分)相に島状に分散していることが好適である。ここで、「島状に分散している」とは、染色処理を施さずにTEM観察を行った場合に、高分子電解質(A成分)相の中にポリアゾール系化合物(C成分)を含む相が粒子状に分散した状態を意味する。このような状態で分散することは、ポリアゾール系化合物(C成分)を主体とする部分が高分子電解質(A成分)を主体とする部分に均一に微分散していることを表しており、耐久性の観点から好ましい。
さらに、上記A成分と上記C成分とは、例えば、イオン結合して酸塩基のイオンコンプレックスを形成している状態を形成していても良いし、共有結合している状態であってもよい。即ち、例えば、上記A成分中のスルホン酸基と、上記C成分中のイミダゾール基、オキサゾール基、チアゾール基等の各反応基に含まれる窒素原子とは、イオン結合や共有結合を生じていてもよい。
なお、上記イオン結合や共有結合が生じているか否かについては、フーリエ変換赤外分光計(Fourier−Transform Infrared Spectrometer)(以下、FT−IRとする)を用いて確認することができる。
例えば、上記A成分としてパーフルオロカーボンスルホン酸樹脂、上記C成分としてポリ[2,2’(m−フェニレン)−5,5’−ベンゾイミダゾール](以下PBIとする)を使用してFT−IRによる測定を行った場合、上記A成分中のスルホン基とPBI中のイミダゾール基の化学結合に由来するシフトした吸収ピークが、1458cm−1付近、1567cm−1付近、1634cm−1付近に認められる。
また、PBIを添加した高分子電解質膜を作成し、その膜について動的粘弾性試験を行うと、室温から200℃の昇温過程で得られる損失正接(Tanδ)のピーク温度(Tg)が、PBIを添加しない高分子電解質膜に比較して高くなる。このようなTgの上昇は、高分子電解質膜の耐熱性の向上や機械強度の向上を実現させ得ることから好ましい。
(チオエーテル化合物(D成分))
チオエーテル化合物(D成分)としては、−(R−S)−(Sはイオウ原子、Rは炭化水素基、nは1以上の整数)の化学構造を含む化合物であって、例えば、ジメチルチオエーテル、ジエチルチオエーテル、ジプロピルチオエーテル、メチルエチルチオエーテル、メチルブチルチオエーテルのようなジアルキルチオエーテル、テトラヒドロチオフェン、テトラヒドロアピランのような環状チオエーテル、メチルフェニルスルフィド、エチルフェニルスルフィド、ジフェニルスルフィド、ジベンジルスルフィドのような芳香族チオエーテル等が挙げられる。これらは単量体で用いても良いし、例えばポリフェニレンスルフィド(PPS)のような重合体で用いても良い。
チオエーテル化合物(D成分)は、耐久性の観点からn≧10の重合体(オリゴマー、ポリマー)であることが好ましく、n≧1,000の重合体であることがより好ましい。特に好ましいチオエーテル化合物(D成分)は、ポリフェニレンスルフィド(PPS)である。
ここでポリフェニレンスルフィドについて説明する。
本実施の形態において用いられるポリフェニレンスルフィドは、パラフェニレンスルフィド骨格を好ましくは70モル%以上、より好ましくは90モル%以上有するポリフェニレンスルフィドである。
上記ポリフェニレンスルフィドの製造方法は、特に限定されないが、例えば、ハロゲン置換芳香族化合物(p−ジクロルベンゼン等)を硫黄と炭酸ソーダの存在下で重合させる方法、極性溶媒中でハロゲン置換芳香族化合物を硫化ナトリウムあるいは硫化水素ナトリウムと水酸化ナトリウムの存在下で重合させる方法、または極性溶媒中でハロゲン置換芳香族化合物を硫化水素と水酸化ナトリウムあるいはナトリウムアミノアルカノエートの存在下で重合させる方法、p−クロルチオフェノールの自己縮合等が挙げられる。中でもN−メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒やスルホラン等のスルホン系溶媒中で硫化ナトリウムとp−ジクロルベンゼンを反応させる方法が好適に用いられる。
また、ポリフェニレンスルフィドの有する−SX基(Sはイオウ原子、Xはアルカリ金属または水素原子である)の含有量は、通常10μmol/g以上10,000μmol/g以下、好ましくは15μmol/g以上10,000μmol/g以下、より好ましくは20μmol/g以上10,000μmol/g以下である。
−SX基濃度が上記範囲にあるということは、反応活性点が多いことを意味する。−SX基濃度が上記範囲を満たすポリフェニレンスルフィドを用いることで、本実施の形態の高分子電解質(A成分)との混和性が向上することにより分散性が向上し、高温低加湿条件下でより高い耐久性が得られると考えられる。
また、チオエーテル化合物(D成分)は、末端に酸性官能基を導入したものも好適に用いることが出来る。導入する酸性官能基としては、スルホン酸基、リン酸基、カルボン酸基、マレイン酸基,無水マレイン酸基,フマル酸基,イタコン酸基,アクリル酸基,メタクリル酸基が好ましく、スルホン酸基が最も好ましい。
なお、酸性官能基の導入方法は特に限定されず、一般的な方法を用いて実施される。例えば、スルホン酸基の導入については、無水硫酸、発煙硫酸などのスルホン化剤を用いて公知の条件で実施することが出来る。例えば、K.Hu, T.Xu, W.Yang, Y.Fu, Journal of Applied Polymer Science, Vol.91,や、 E.Montoneri, Journal of Polymer Science: Part A: Polymer Chemistry, Vol.27, 3043−3051(1989)に記載の条件で実施できる。
また、導入した酸性官能基を金属塩またはアミン塩に置換したものも好適に用いられる。金属塩としてはナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩が好ましい。
さらに、チオエーテル化合物(D成分)を粉末状で用いる場合、チオエーテル化合物(D成分)の平均粒子径は、高分子電解質(A成分)中の分散性が向上することで高寿命化等の効果を良好に実現させる観点から、0.01〜2.0μmであることが好ましく、0.01〜1.0μmがより好ましく、0.01〜0.5μmがさらに好ましく、0.01〜0.1μmが最も好ましい。
チオエーテル化合物(D成分)を高分子電解質(A成分)中に微分散させる方法としては、例えば、高分子電解質(A成分)等との溶融混練時に高せん断を与えて粉砕及び微分散させる方法、高分子電解質溶液を得た後、その溶液を濾過し粗大チオエーテル化合物(D成分)粒子を除去し、濾過後の溶液を用いる方法、等が挙げられる。溶融混練を行う場合に好適に用いられるポリフェニレンスルフィドの溶融粘度(フローテスターを用いて、300℃、荷重196N、L/D(L:オリフィス長、D:オリフィス内径)=10/1で6分間保持した値)は、成形加工性の観点から、1〜10,000ポイズであり、さらに好ましくは100〜10,000ポイズである。
高分子電解質(A成分)とチオエーテル化合物(D成分)の質量比(A/D)は、(A/D)=60/40〜99.99/0.01であることが好ましく、(A/D)=70/30〜99.95/0.05がより好ましく、(A/D)=80/20〜99.9/0.1がさらに好ましく、(A/D)=90/10〜99.5/0.5が最も好ましい。A成分の質量比を60以上とすることにより、良好なイオン伝導性が実現され得、良好な電池特性が実現され得る。一方、D成分の質量比を40以下とすることにより、高温低加湿条件での電池運転における耐久性が向上し得る。
また、ポリアゾール化合物(C成分)とチオエーテル化合物(D成分)の質量比(C/D)は、(C/D)=1/99〜99/1である。化学的安定性と耐久性(分散性)のバランスの観点から、(C/D)=5/95〜95/5がより好ましく、(C/D)=10/90〜90/10がさらに好ましく、(C/D)=20/80〜80/20が最も好ましい。
さらに、ポリアゾール化合物(C成分)とチオエーテル化合物(D成分)の合計質量が高分子電解質膜中に占める割合は、0.01〜50質量%が好ましい。イオン伝導性と耐久性(分散性)のバランスの観点から、0.05〜45質量%がより好ましく、0.1〜40質量%がさらに好ましく、0.2〜35質量%が特に好ましく、0.3〜30質量%が最も好ましい。
また、本発明の高分子電解質組成物は、高分子電解質溶液、高分子電解質膜、および高分子電解質バインダー等の形態で使用することができる。
(高分子電解質溶液)
本発明の高分子電解質組成物は、その組成物を構成する各成分をそれぞれ同時にまたは別々に溶解又は分散した後、混合することにより、高分子電解質溶液として用いても良い。
本発明の高分子電解質溶液は、そのまま、あるいは濾過、濃縮等の工程を経た後、単独あるいは他の電解質溶液と混合して、高分子電解質膜や電極バインダー等の材料として用いることができる。
高分子電解質溶液の製造方法について説明する。高分子電解質溶液の製造方法は、特に限定されず、(1)高分子電解質(A成分)を溶媒に溶解または分散させた溶液を得た後、その液に金属酸化物(B成分)を分散させて得ても良いし、(2)まず、溶融押し出し、延伸等の工程を経ることにより高分子電解質(A成分)と金属酸化物(B成分)を混合し、その混合物を溶媒に溶解または分散させた液を得ても良い。高分子電解質溶液の製造方法としては、例えば、まず、高分子電解質前駆体からなる成形物を塩基性反応液体中に浸漬し、加水分解する。この加水分解処理により、上記高分子電解質前駆体は高分子電解質(A成分)に変換される。
次に、加水分解処理された上記成形物を温水などで十分に水洗し、その後、酸処理を行う。
酸処理に使用する酸は、特に限定されないが、塩酸、硫酸、硝酸等の鉱酸類やシュウ酸、酢酸、ギ酸、トリフルオロ酢酸等の有機酸類が好ましい。この酸処理によって高分子電解質前駆体はプロトン化され、SOH体となる。
上記のように酸処理された上記成形物(プロトン化された高分子電解質を含む成形物)は、上記A成分を溶解又は懸濁させ得る溶媒(樹脂との親和性が良好な溶媒)に溶解又は懸濁される。このような溶媒としては、例えば、水やエタノール、メタノール、n−プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、グリセリンなどのプロトン性有機溶媒や、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンなどの非プロトン性溶媒等が挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を併用することができる。特に、1種の溶媒を用いる場合、水単独が好ましい。また、2種類以上を併用する場合、水とプロトン性有機溶媒との混合溶媒が特に好ましい。
溶解又は懸濁する方法は、特に限定されない。例えば、上記溶媒中にそのまま溶解又は分散させても良いが、大気圧下またはオートクレーブ等で密閉加圧した条件のもとで、0〜250℃の温度範囲で溶解又は分散されるのが好ましい。特に、溶媒としてプロトン性有機溶媒を用いる場合、水とプロトン性有機溶媒の混合比は、溶解方法、溶解条件、高分子電解質の種類、総固形分濃度、溶解温度、攪拌速度等に応じて適宜選択できるが、水に対するプロトン性有機溶媒の質量の比率は、水1に対してプロトン性有機溶媒0.1〜10が好ましく、特に好ましくは水1に対して該有機溶媒0.1〜5である。
なお、A成分の溶解・懸濁液には、乳濁液(液体中に液体粒子がコロイド粒子あるいはそれより粗大な粒子として分散して乳状をなすもの)、懸濁液(液体中に固体粒子がコロイド粒子あるいは顕微鏡で見える程度の粒子として分散したもの)、コロイド状液体(巨大分子が分散した状態)、ミセル状液体(多数の小分子が分子間力で会合して出来た親液コロイド分散系)等の1種又は2種以上が含まれる。
また、金属酸化物(B成分)は、分散性の観点から、A成分の溶解・懸濁液に添加・混合されるのが好ましい。金属酸化物(B成分)の添加・混合方法としては、特に制限は無いが、粉末状の場合、そのまま添加しても良いし、上記A成分の溶媒・懸濁に用いた溶媒にB成分を分散させた状態で添加・混合しても良い。
また、高分子電解質溶液は、成形方法や用途に応じて、濃縮したり、濾過することが可能である。濃縮の方法としては特に限定されない。例えば、加熱し、溶媒を蒸発させる方法や、減圧濃縮する方法等がある。高分子電解質溶液を塗工用溶液として使用する場合、高分子電解質溶液の固形分率は、高すぎると粘度が上昇し、取り扱い難くなり、また低すぎると生産性が低下する観点から、0.5〜50質量%が好ましい。濾過の方法としては、特に限定ないが、例えば、フィルターを用いて、加圧濾過する方法が代表的に挙げられる。フィルターについては、90%捕集粒子径が粒子の平均粒子径の10倍〜100倍の濾材を使用することが好ましい。この濾材としては紙製、金属製等が挙げられる。特に濾材が紙の場合は、90%捕集粒子径が粒子の平均粒子径の10〜50倍であることが好ましい。金属製フィルターを用いる場合は、90%捕集粒子径が粒子の平均粒子径の50〜100倍であることが好ましい。当該90%捕集粒子径を平均粒径の10倍以上に設定することは、送液するときに必要な圧力が高くなりすぎることを抑制したり、フィルターが短期間で閉塞してしまうことを抑制し得る。一方、平均粒径の100倍以下に設定することは、フィルムで異物の原因となるような粒子の凝集物や樹脂の未溶解物を良好に除去する観点から好ましい。
(高分子電解質膜)
本実施の形態において、高分子電解質膜の膜厚は、1μm以上500μm以下であることが好ましく、より好ましくは2μm以上100μm以下、最も好ましくは5μm以上50μm以下である。膜厚を1μm以上とすることは、水素と酸素の直接反応のような不都合を低減し得る点、燃料電池製造時の取り扱い時や燃料電池運転中に差圧・歪み等が生じても、膜の損傷等が発生しにくいという点で好ましい。一方、膜厚を500μm以下とすることは、イオン透過性を維持し、固体高分子電解質膜としての性能を維持する観点から好ましい。
高分子電解質膜の製造方法について説明する。高分子電解質膜の成形方法は、特に限定されず、高分子電解質溶液を用いてキャスト製膜しても良いし、溶融押し出し、延伸等の工程を経ることにより成形しても良い。溶融押し出しにより成形を行う場合、成形性の観点から、高分子電解質前駆体および金属酸化物(B成分)の混合物を溶融混練後、押し出し成形して膜を形成し、その後、塩基性反応液体中に浸漬し、加水分解するのが好ましい。この加水分解処理により、上記高分子電解質前駆体は高分子電解質(A成分)に変換される。
さらに、上記成形物は、前記塩基性反応液体中で加水分解処理された後、温水などで十分に水洗され、その後、酸処理が行われる。
酸処理に使用する酸は、特に限定されないが、塩酸、硫酸、硝酸等の鉱酸類やシュウ酸、酢酸、ギ酸、トリフルオロ酢酸等の有機酸類が好ましい。この酸処理によって高分子電解質前駆体はプロトン化され、SOH体となる。
また、高分子電解質膜は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−ペルフルオロ(アルコキシビニルエーテル)共重合体(PFA)、ポリエチレン、ポリプロピレン等の多孔体、繊維、織布、不織布等の多孔シートや、シリカ、アルミナ等の無機ウィスカ、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエチレン、ポリプロピレン製の有機フィラー等で補強されていても良い。
さらに、高分子電解質膜は架橋剤や紫外線、電子線、放射線等を用いて架橋することもできる。
本発明の高分子電解質膜は、成形後、熱処理が施されることが好ましい。熱処理により高分子電解質の結晶化が促進され、高分子電解質膜の機械的強度が安定化され得る。またポリアゾール化合物(C成分)やチオエーテル化合物(D成分)等の添加剤の結晶物部分と高分子固体電解質部分とが強固に接着され、その結果、機械的強度が安定化され得る。熱処理温度は、好ましくは120℃以上300℃以下、更に好ましくは140℃以上250℃以下、最も好ましくは160℃以上230℃以下である。熱処理温度を120℃以上とすることは、結晶物部分と電解質組成物部分との間の密着力向上に寄与し得る。一方、熱処理温度を300℃以下とすることは、高分子電解質膜の特性を維持する観点から好適である。熱処理の時間は、熱処理温度にもよるが、好ましくは5分以上3時間以下、更に好ましくは10分以上2時間以下である。
(膜電極接合体)
本実施の形態の高分子電解質膜は、膜電極接合体、乃至固体高分子電解質型燃料電池の構成部材として使用することができる。高分子電解質膜の両面にアノードとカソードの2種類の電極触媒層が接合したユニットは、膜電極接合体(以下「MEA」と略称することがある)と呼ばれる。電極触媒層のさらに外側に一対のガス拡散層を対向するように接合したものについても、MEAと呼ばれる場合がある。
電極触媒層は、触媒金属の微粒子とこれを担持した導電剤とから構成され、必要に応じて撥水剤が含まれる。電極に使用される触媒としては、水素の酸化反応及び酸素の還元反応を促進する金属であれば良く、白金、金、銀、パラジウム、イリジウム、ロジウム、ルテニウム、鉄、コバルト、ニッケル、クロム、タングステン、マンガン、バナジウム、およびこれらの合金等が挙げられ、その中では、主として白金が用いられる。
MEAの製造方法としては、例えば、次のような方法が行われる。まず、電極用バインダーイオン交換樹脂をアルコールと水の混合溶液に溶解したものに、電極物質となる白金担持カーボンを分散させてペースト状にする。これをPTFEシートに一定量塗布して乾燥させる。次に、PTFEシートの塗布面を向かい合わせにして、その間に高分子電解質膜を挟み込み、100℃〜200℃で熱プレスにより転写接合してMEAを得ることができる。電極用バインダーは一般にイオン交換樹脂を溶媒(アルコールや水等)に溶解したものが使用されるが、燃料電池運転時の耐久性の観点から、本発明の高分子電解質組成物を含有することが好ましい。
(固体高分子電解質型燃料電池)
上記で得られたMEA、場合によっては更に一対のガス拡散電極が対向した構造のMEAは、更にバイポーラプレートやバッキングプレート等の一般的な固体高分子電解質型燃料電池に用いられる構成成分と組み合わされて、固体高分子電解質型燃料電池が構成される。
バイポーラプレートとは、その表面に燃料や酸化剤等のガスを流すための溝を形成させたグラファイトと樹脂との複合材料、または金属製のプレート等を意味する。バイポーラプレートは、電子を外部負荷回路へ伝達する機能の他、燃料や酸化剤を電極触媒近傍に供給する流路としての機能を持っている。こうしたバイポーラプレートの間にMEAを挿入して複数積み重ねることにより、燃料電池が製造される。
以下、実施例によりさらに具体的に説明するが、本実施の形態はこれらの実施例のみに限定されるものではない。実施例等における各種物性の測定方法および評価方法は次の通りである。
(1)イオン交換容量
イオン交換基の対イオンがプロトンの状態となっている高分子電解質膜、およそ2〜20cmを、25℃、飽和NaCl水溶液30mlに浸漬し、攪拌しながら30分間放置した。次いで、飽和NaCl水溶液中のプロトンを、フェノールフタレインを指示薬として0.01N水酸化ナトリウム水溶液として中和滴定した。中和後に得られた、イオン交換基の対イオンがナトリウムイオンの状態となっている高分子電解質膜を、純水ですすぎ、更に真空乾燥して秤量した。中和に要した水酸化ナトリウムの物質量をM(mmol)、イオン交換基の対イオンがナトリウムイオンの高分子電解質膜の重量をW(mg)とし、下記式により当量重量EW(g/eq)を求めた。
EW=(W/M)−22
更に、得られたEW値の逆数をとって1000倍とすることにより、イオン交換容量(ミリ当量/g)を算出した。
(2)膜厚
高分子電解質膜を23℃、50%RHの恒温恒湿室内で1時間以上静置した後、膜厚計(東洋精機製作所製、商品名:B−1)を用いて測定を行った。
(3)金属酸化物(B成分)の過酸化水素分解能
金属酸化物0.01gを計量(金属酸化物を溶媒に分散した場合は、正味の金属酸化物重量が0.01gとなるように調整)し、過酸化水素水(和光純薬製、過酸化水素濃度:約30質量%、製品番号:084−07441)10mlに浸漬し、静置した。浸漬液を目視で観察し、以下のように評価を行った。
・浸漬した液中に気泡が発生(過酸化水素が分解されて酸素が析出)した。気泡の発生が100時間以上継続した。:優れている(記号「◎」で表示)。
・浸漬した液中に気泡が発生(過酸化水素が分解されて酸素が析出)した。気泡の発生が100時間未満であった。:良好である(記号「○」で表示)。
・浸漬した液中に気泡が発生しなかった。:不良である(記号「×」で表示)。
(4)高分子電解質膜の過酸化水素分解能
イオン交換基の対イオンがプロトンの状態となっている高分子電解質膜を50mm×50mmを切り出した後、過酸化水素水(和光純薬製、過酸化水素濃度:約30質量%、製品番号:084−07441)10mlに浸漬し、静置した。浸漬液を目視で観察し、(3)金属酸化物(B成分)の過酸化水素分解能と同様に評価を行った。
(5)金属酸化物(B成分)の一次粒子径
溶媒中の金属酸化物(B成分)の含有量が1質量%となるように分散液を調整し、動的光散乱粒度分布計(大塚電子製)を用いて測定を行った。
(6)OCV加速試験
高温低加湿条件下における高分子電解質膜の耐久性を加速的に評価するため、以下のようなOCV加速試験を実施した。ここでいう「OCV」とは、開回路電圧(Open Circuit Voltage)を意味する。このOCV加速試験は、OCV状態に保持することで高分子電解質膜の化学的劣化を促進させることを意図した加速試験であり、この試験による高分子電解質膜の化学的劣化の一因として過酸化水素が挙げられている。(OCV加速試験の詳細は、平成14年度新エネルギー・産業技術開発機構委託研究「固体高分子型燃料電池の研究開発(膜加速評価技術の確立等に関するもの)」旭化成(株)成果報告書p.55〜57に記載されている。)本発明では、OCV試験におけるセル寿命が長いほど、過酸化水素による高分子電解質膜の劣化が少ないとみなし、高分子電解質膜の過酸化水素分解能を判断する基準として用いた。
まず、アノード側ガス拡散電極とカソード側ガス拡散電極を向い合わせ、電極触媒層を介して高分子電解質膜を挟み込み、評価用セルに組み込んだ。ガス拡散電極としては、米国DE NORA NORTH AMERICA社製ガス拡散電極ELAT(登録商標)(Pt担持量0.4mg/cm、以下同じ)を用いた。なお、電極触媒層は、ガス拡散電極の表面に、5質量%のパーフルオロスルホン酸ポリマー溶液(商品名:SS−910、旭化成製、当量質量(EW):910、溶媒組成(質量比):エタノール/水=50/50)を塗布した後、大気雰囲気中、140℃で乾燥・固定化して形成した。ポリマー担持量は0.8mg/cmであった。
この評価用セルを評価装置(東陽テクニカ製燃料電池評価システム890CL)にセットして昇温した後、アノード側に水素ガス、カソード側に空気ガスを200cc/minで流してOCV状態に保持した。ガス加湿には水バブリング方式を用い、水素ガス、空気ガスともに加湿してセルへ供給した。
試験条件としては、セル温度100℃で行った。ガス加湿温度は50℃(湿度12%RHに相当)とし、また、アノード側とカソード側の両方を無加圧(大気圧)とした。
[実施例1]
(高分子電解質溶液の作成)
高分子電解質(A成分)の前駆体である、テトラフルオロエチレン、及びCF=CFO(CF−SOFから得られたパーフルオロスルホン酸樹脂前駆体(加水分解・酸処理後のEW:730)ペレットを、水酸化カリウム(15質量%)とメチルアルコール(50質量%)を溶解した水溶液中に、80℃で20時間接触させて、加水分解処理を行った。その後、60℃水中に5時間浸漬した。次に60℃の2N塩酸水溶液に1時間浸漬させる処理を、毎回塩酸水溶液を更新して5回繰り返した後、イオン交換水で水洗、乾燥した。これにより、スルホン酸基(SOH)を有する高分子電解質(A成分)のペレットを得た。
このペレットをエタノール水溶液(水:エタノール=50.0:50.0(質量比))と共に5Lオートクレーブ中に入れて密閉し、翼で攪拌しながら160℃まで昇温して5時間保持した。その後、オートクレーブを自然冷却して、5質量%の均一なパーフルオロスルホン酸樹脂溶液を作製した。
次に、この溶液100gに金属酸化物(B成分)として10質量%ジルコニア水溶液(住友大阪セメント製、金属酸化物の一次粒子径:10nm)を0.5g添加し、(A/B)=99/1(質量比)となるよう調整した(溶液[FS−1])。
(高分子電解質膜の作成)
この溶液[FS−1]をスターラーを用いて充分に攪拌した後、80℃にて減圧濃縮して、キャスト溶液を得た。
上記キャスト液21gを直径15.4cmのシャーレに流し込み、ホットプレート上にて60℃1時間及び80℃1時間の乾燥を行い、溶媒を除去した。次に、シャーレをオーブンに入れ160℃で1時間熱処理を行った。その後、オーブンから取り出し、冷却したシャーレにイオン交換水を注いで膜を剥離させ、膜厚約30μmの高分子電解質膜を得た。次に、60℃の2N塩酸水溶液に3時間浸漬した後、イオン交換水で水洗、乾燥して高分子電解質膜(EW:790、イオン交換容量:1.27)を得た。
この高分子電解質膜の過酸化水素分解能を評価したところ、優れていた。結果を表1に示す。
[実施例2]
(電極触媒層の作成)
金属酸化物(B成分)の添加量を17gとした以外は実施例1と同様にして、高分子電解質溶液[FS−2]を作成した。この溶液に触媒(Pt担持カーボン、Pt/C(カーボン)=10/90(質量比))4gを添加し、ホモジナイザー(アズワン製)を用いて充分に攪拌した。次に、この溶液をスクリーン印刷法により、テフロン(登録商標)シートに塗布し、160℃のオーブン内で1時間乾燥し、35mm角の電極触媒層を得た。
この高分子電解質膜の過酸化水素分解能を評価したところ、優れていた。結果を表1に示す。
[実施例3]
(OCV加速試験)
実施例1で作成した高分子電解質膜を用いてOCV加速試験を行った。セル寿命は100時間以上であり、優れた耐久性を示した。
[比較例1]
(高分子電解質溶液の作成)
金属酸化物(B成分)を添加しなかった以外は実施例1と同様にして、固形分濃度5質量%の均一な溶液を作製した。
(高分子電解質膜の作成)
この溶液21gを実施例1と同様にしてキャストし、膜厚約30μmの高分子電解質膜を得た。次に、60℃の2N塩酸水溶液に3時間浸漬した後、イオン交換水で水洗、乾燥して高分子電解質膜(EW:720、イオン交換容量:1.39)を得た。
この高分子電解質膜の過酸化水素分解能を評価したところ、不良であった。結果を表1に示す。
[比較例2]
(OCV加速試験)
比較例1で作成した高分子電解質膜を用いてOCV加速試験を行った。セル寿命は48時間であり、十分な耐久性が得られなかった。
[比較例3]
(高分子電解質溶液の作成)
金属酸化物(B成分)をジルコニア粉末(共立マテリアル製、金属酸化物の一次粒子径200nm)0.05gとした以外は実施例1と同様にして、固形分濃度5質量%の均一な溶液を作製した(溶液[FS−3])。
(高分子電解質膜の作成)
この溶液[FS−3]をスターラーを用いて十分に攪拌した後、80℃にて減圧濃縮して、キャスト溶液を得ようと試みたが、金属酸化物が直ぐに沈殿し、均一な溶液を得ることが出来なかった。
Figure 0005354935

Claims (9)

  1. イオン交換当量が0.5〜3.0ミリ当量/gの高分子電解質(A成分)と過酸化水素分解能を有する金属酸化物(B成分)を含有し、
    前記A成分が下記式[1]で表される重合体であり、
    前記A成分と前記B成分の質量比(A/B)が95/5〜99.99/0.01、かつ前記B成分の一次粒子径が1nm〜50nmである高分子電解質組成物であって、上記A成分に上記B成分を混合・分散させてなることを特徴とする高分子電解質組成物。
    −[CF2CX12]a−[CF2−CF(−O−(CF2−CF(CF23))b−Oc
    −(CFR1)d−(CFR2)e−(CF2)f−X4)]g− [1]
    (式中、X1、X2及びX3は、それぞれ独立にハロゲン元素または炭素数1以上3以下のパーフルオロアルキル基である。aおよびgは、0≦a<1、0<g≦1、a+g=1である。bは0である。cは0または1である。d、eおよびfは、それぞれ独立に0以上6以下の整数(ただし、d+e+fは0に等しくない)である。R1及びR2は、それぞれ独立にハロゲン元素、炭素数1以上10以下のパーフルオロアルキル基またはフルオロクロロアルキル基である。X4はCOOZ、SO3Z、PO32またはPO3HZである。)
    ここで、Zは水素原子、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子またはアミン類(NH4、NH3 1 、NH2 1 2 、NH 1 2 3 、N 1 2 3 4 )である。
    また 1 2 3 及び 4 はアルキル基またはアレーン基である。
  2. 前記B成分がチタニアあるいはジルコニアである請求項1に記載の高分子電解質組成物。
  3. さらに溶媒を含む請求項1又は2に記載の高分子電解質組成物。
  4. 請求項1又は2に記載の高分子電解質組成物からなる高分子電解質膜。
  5. 請求項1又は2に記載の高分子電解質組成物から構成される電極触媒層。
  6. 請求項4に記載の高分子電解質膜を用いてなる膜電極接合体。
  7. 請求項5に記載の電極触媒層を用いてなる膜電極接合体。
  8. さらに請求項4に記載の高分子電解質膜を用いてなる請求項7の膜電極接合体。
  9. 請求項6〜8のいずれかに記載の膜電極接合体を用いてなる高分子電解質型燃料電池。
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