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JP2007026819A - 電極−膜接合体 - Google Patents

電極−膜接合体 Download PDF

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JP2007026819A
JP2007026819A JP2005205658A JP2005205658A JP2007026819A JP 2007026819 A JP2007026819 A JP 2007026819A JP 2005205658 A JP2005205658 A JP 2005205658A JP 2005205658 A JP2005205658 A JP 2005205658A JP 2007026819 A JP2007026819 A JP 2007026819A
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electrode catalyst
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淳司 川井
Toshitaka Otsuki
敏敬 大月
Takanobu Yamamoto
貴信 山本
Satoshi Komatsu
敏 小松
Kaoru Fukuda
薫 福田
Ryoichiro Takahashi
亮一郎 高橋
Hiroshi Shinkai
洋 新海
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JSR Corp
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Honda Motor Co Ltd
JSR Corp
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Abstract

【課題】
高温条件下においても適切な湿潤状態に維持することができる高分子電解質膜を有し、発電特性に優れた電極−膜接合体を提供すること。
【解決手段】
本発明に係る電極−膜接合体は、イオン交換樹脂膜と、触媒担持カーボンおよびイオン交換樹脂を含むアノード側電極触媒層と、触媒担持カーボンおよびイオン交換樹脂を含むカソード側電極触媒層とを有し、アノード側電極触媒層を構成するバインダー成分のイオン交換容量が、カソード側電極触媒層を構成するバインダー成分のイオン交換容量より大きいこと、および/または、アノード側電極触媒層を構成するイオン交換樹脂からなる膜の含水率が、カソード側電極触媒層を構成するイオン交換樹脂からなる膜の含水率より高いことを特徴とする。
【選択図】 なし

Description

本発明は、固体高分子型燃料電池などを構成する電極−膜接合体に関する。
固体高分子型燃料電池は、発電を担う反応の起こるアノード電極およびカソード電極と、アノード電極およびカソード電極間のプロトン伝導体となる固体高分子電解質膜とがセパレータで挟まれたセルをユニットとして構成されている。
上記電極は、ガス拡散の促進および集電を行う電極基材と、実際に電気化学反応場となる触媒層とから構成されている。具体的には、アノード電極では、触媒層で燃料ガスが反応してプロトンおよび電子を生じ、電子は電極基材に伝導し、プロトンは電極電解質を移動し固体高分子電解質膜へと伝導する。一方、カソード電極では、触媒層で酸化ガスと、固体高分子電解質膜から伝導してきたプロトンと、電極基材から伝導してきた電子とが反応して水を生成する。
上記のような固体高分子型燃料電池に用いられる高分子固体電解質膜および電極中の電解質としては、ナフィオン(登録商標、デュポン社製)に代表されるパーフルオロ系電解質や種々の炭化水素系電解質が知られているが、これらは、いずれもプロトン伝導性を発現するために水を必要とする。また、固体高分子型燃料電池は、電池の作動温度が高くなるほど、発電効率が高くなることが知られている。
そのため、高温条件下で燃料電池を作動させることにより、燃料電池の運転条件がドライ条件になると、電解質の含水率が低下して電気伝導度が低下し、燃料電池の出力を低下させる原因となる。一方、燃料電池の運転条件がウエット条件になると、過剰の水が電極内に滞留し、固体高分子電解質膜の内部をプロトンが伝導する際、プロトンに同伴して水もカソード側に移動し、さらに、カソードでは、電極反応により水が生成する。そのため、カソード電極中の水の排出性が不十分であると、フラッディングが発生し、燃料電池の出力を低下させる原因となる。
したがって、固体高分子型燃料電池において、高い出力を得るためには、高温条件下で電極−膜接合体を適切な湿潤状態に維持する必要があるが、従来の技術(たとえば、特許文献1参照)では十分なものが得られていない。
特開2000−353528号公報
本発明の課題は、高温条件下においても適切な湿潤状態に維持することができる高分子電解質膜を有し、発電特性に優れた電極−膜接合体を提供することにある。
本発明者らは、上記従来技術における問題点に鑑み鋭意検討した。その結果、アノード側電極触媒層を構成するバインダー成分のイオン交換容量を、カソード側電極触媒層を構成するバインダー成分のイオン交換容量より大きくするか、あるいは、アノード側電極触媒層を構成するイオン交換樹脂からなる膜の含水率を、カソード側電極触媒層を構成するイオン交換樹脂からなる膜の含水率より大きくすることにより、電極−膜接合体が適切な湿潤状態に維持され、発電特性を向上できることを見出した。
すなわち、本発明に係る電極−膜接合体は、イオン交換樹脂膜と、触媒担持カーボンおよびイオン交換樹脂を含むアノード側電極触媒層と、触媒担持カーボンおよびイオン交換樹脂を含むカソード側電極触媒層とを有し、アノード側電極触媒層を構成するバインダー成分のイオン交換容量が、カソード側電極触媒層を構成するバインダー成分のイオン交換容量より大きいこと、および/または、アノード側電極触媒層を構成するイオン交換樹脂からなる膜の含水率が、カソード側電極触媒層を構成するイオン交換樹脂からなる膜の含水率より高いことを特徴とする。
また、本発明の電極−膜接合体は、前記アノード側電極触媒層を構成するバインダー成分のイオン交換容量が、カソード側電極触媒層を構成するバインダー成分のイオン交換容量より大きく、さらに、前記イオン交換樹脂膜のイオン交換容量が、前記カソード側電極触媒層を構成するバインダー成分のイオン交換容量より大きいこと、および/または、前記イオン交換樹脂膜のイオン交換容量が、前記アノード側電極触媒層を構成するバインダー成分のイオン交換容量より小さいことが好ましい。
前記イオン交換樹脂膜を構成するイオン交換樹脂、前記アノード側電極触媒層を構成するイオン交換樹脂および前記カソード側電極触媒層を構成するイオン交換樹脂のうち少なくとも1つが、スルホン酸基もしくはリン酸基からなるイオン伝導成分を有する特定のポリマーセグメント(A)と、イオン伝導成分を有しない特定のポリマーセグメント(B)とが共有結合しているブロック共重合体であることが好ましい。
本発明の電極−膜接合体は、高温条件下においても適切な膨潤状態を維持することができる。したがって、本発明の電極−膜接合体を用いれば、優れた発電特性を発揮する燃料電池が得られる。
以下、本発明に係る電極−膜接合体について詳細に説明する。
本発明の電極−膜接合体は、イオン交換樹脂膜と、該樹脂膜の両面に形成された、触媒担持カーボンおよびイオン交換樹脂を含むアノード側電極触媒層およびカソード側電極触媒層とからなる。
そして、本発明に係る第1の電極−膜接合体は、上記アノード側電極触媒層を構成するバインダー成分(以下「アノード側バインダー成分」ともいう。)のイオン交換容量が、上記カソード側電極触媒層を構成するバインダー成分(以下「カソード側バインダー成分」ともいう。)のイオン交換容量より大きいことを特徴とする。なお、電極触媒層を構成するバインダー成分とは、後述する電極触媒層を構成する成分のうち、触媒持カーボンおよび炭素繊維を除くイオン交換樹脂および必要に応じて用いられる分散剤やイオン交換基を有しない樹脂などを含む混合物を意味し、イオン交換容量は、このバインダー成分からなる膜を形成して測定する。
また、上記電極−膜接合体は、上記イオン交換樹脂膜のイオン交換容量が、カソード側バインダー成分のイオン交換容量より大きいことが好ましく、さらに、該イオン交換樹脂膜のイオン交換容量が、アノード側イオン交換樹脂のイオン交換容量より小さいことがより好ましい。
このようにイオン交換樹脂膜を構成するイオン交換樹脂、アノード側バインダー成分およびカソード側バインダー成分のイオン交換容量に傾斜を作ることで、電極−膜接合体の湿潤状態を適切に保つことができ、発電特性が向上する。また、それぞれのイオン交換容量の差は、0.05meq/g以上、好ましくは0.1meq/g以上である。イオン交換
容量の差が上記範囲未満であると、上記効果を十分に発揮できないことがある。
上記バインダー成分のイオン交換容量の調整方法としては、特に限定されないが、たとえば、各電極触媒層を構成するイオン交換樹脂のイオン交換容量を調整する方法、バインダー成分中におけるイオン交換樹脂の含有量を調整する方法などにより調整することができる。なお、イオン交換樹脂のイオン交換容量を調整する方法については後述する。
本発明に係る第2の電極−膜接合体は、上記アノード側電極触媒層を構成するイオン交換樹脂からなる膜(以下「アノード側樹脂膜」ともいう。)の含水率(重量%)が、上記カソード側電極触媒層を構成するイオン交換樹脂からなる膜(以下「カソード側樹脂膜」ともいう。)の含水率(重量%)よりも高いことを特徴とする。
また、上記電極−膜接合体におけるアノード側樹脂膜の含水率とカソード側樹脂膜の含水率との差は、5〜100重量%、好ましくは20〜95重量%、より好ましくは50〜90重量%である。この範囲内にあれば電極−膜接合体を適切な湿潤状態に維持することが可能となり、発電性能が良好となる。なお、それぞれのイオン交換樹脂からなる膜の含水率は10〜400重量%にて制御することが好ましい。
なお、本発明において、電極触媒層を構成するイオン交換樹脂からなる膜の含水率(ΔW)は、95℃の純水中に24時間浸漬後の膜重量をW1とし、W1を測定後、120℃で2時間真空乾燥させた後の膜重量をW2とし、下記式:
ΔW=(W1/W2−1)×100(重量%)
により算出される。
アノード側樹脂膜およびカソード側樹脂膜の含水率を制御する方法としては、特に限定はされないが、たとえば、イオン交換樹脂のイオン交換容量により制御する方法、イオン交換樹脂の分子量により制御する方法などを挙げることができる。すなわち、イオン交換容量が大きくなるほど、イオン交換樹脂膜の含水率も高くなる傾向にあり、また、イオン交換樹脂の分子量が大きくなるほど、イオン交換樹脂膜の含水率は低くなる傾向にある。
また、本発明においては、上記アノード側バインダー成分のイオン交換容量が、上記カソード側バインダー成分のイオン交換容量よりも大きく、かつ、上記アノード側樹脂膜の含水率が、上記カソード側樹脂膜の含水率よりも高い電極−膜接合体も好ましい。
[電極触媒層]
本発明の電極−膜接合体を構成する電極触媒層は、下記電極ペースト組成物を用いて形成される。
〔電極ペースト組成物〕
上記電極触媒層(アノード側およびカソード側)を形成する際に用いられる電極ペースト組成物は、触媒を担持したカーボン、イオン交換樹脂および有機溶媒を含有し、必要に応じて、分散剤、炭素繊維、水、イオン交換基を有しない樹脂などを含有する。
<触媒を担持したカーボン>
上記電極ペースト組成物に用いられる触媒としては、白金または白金合金が用いられる。白金合金を使用すると、電極触媒としての安定性や活性をさらに付与させることもできる。このような白金合金としては、白金以外の白金族の金属(ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム)、鉄、コバルト、チタン、金、銀、クロム、マンガン、モリブデン、タングステン、アルミニウム、ケイ素、レニウム、亜鉛およびスズから選ばれる1種以上と白金との合金が好ましく、該白金合金には白金と合金化される金属と
の金属間化合物が含有されていてもよい。
上記触媒を担持するカーボンとしては、オイルファーネスブラック、チャネルブラック、ランプブラック、サーマルブラック、アセチレンブラックなどのカーボンブラックが、電子伝導性と比表面積の大きさから好ましく用いられる。また、天然の黒鉛、ピッチ、コークス、ポリアクリロニトリル、フェノール樹脂、フラン樹脂などの有機化合物から得られる人工黒鉛や炭素などを用いてもよい。
上記オイルファーネスブラックとしては、キャボット社製「バルカンXC−72」、「バルカンP」、「ブラックパールズ880」、「ブラックパールズ1100」、「ブラックパールズ1300」、「ブラックパールズ2000」、「リーガル400」、ライオン社製「ケッチェンブラックEC」、三菱化学社製「#3150、#3250」などが挙げられる。また、上記アセチレンブラックとしては電気化学工業社製「デンカブラック」などが挙げられる。
これらのカーボンの形態としては、粒子状のほか、繊維状も用いることができる。また、カーボンに担持される触媒の量としては、有効に触媒活性が発揮できる量であれば特に制限されるものではないが、担持量がカーボン重量に対して、0.1〜9.0g-metal/g-carbon、好ましくは0.25〜2.4g-metal/g-carbonの範囲である。
<イオン交換樹脂>
上記電極ペースト組成物に用いられるイオン交換樹脂は、特に限定されず、パーフルオロ系電解質や炭化水素系電解質などを用いることもできるが、耐熱性および機械的強度の向上の観点から、イオン伝導成分含有芳香族系ポリマーを好適に用いることができる。
イオン伝導成分含有芳香族系ポリマーとしては、好ましくは、スルホン酸基もしくはリン酸基からなるイオン伝導成分を有するポリマーセグメント(A)と、イオン伝導成分を有しないポリマーセグメント(B)とが共有結合しているブロック共重合体であり、より好ましくは、芳香環を結合基で共有結合させた構造を主鎖骨格に有するポリアリーレンであり、特に好ましくは、下記一般式(A)で表される構成単位(以下、「構成単位(A)」または「スルホン酸ユニット」ともいう。)と、下記一般式(B)で表される構成単位(以下、「構成単位(B)」または「疎水性ユニット」ともいう。)とを含む下記一般式(C)で表されるスルホン酸基を有するポリアリーレンである。
(スルホン酸ユニット)
Figure 2007026819
上記式(A)中、Yは、−CO−、−SO2−、−SO−、−CONH−、−COO−
、−(CF2i−(iは1〜10の整数を示す。)または−C(CF32−を示す。これらの中では、−CO−および−SO2−が好ましい。
Zは、独立に直接結合、−(CH2j−(jは1〜10の整数を示す。)、−C(CH32−、−O−または−S−を示す。これらの中では、直接結合および−O−が好ましい
Arは、−SO3H、−O(CH2pSO3Hまたは−O(CF2pSO3H(pは1〜
12の整数を示す。)で表される置換基を有する芳香族基を示す。芳香族基としては、たとえば、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基などが挙げられる。これらの中では、フェニル基およびナフチル基が好ましい。また、Arは、−SO3H、
−O(CH2pSO3Hまたは−O(CF2pSO3Hで表される置換基を少なくとも1個有していることが必要であり、ナフチル基である場合には2個以上有することが好ましい。
mは0〜10、好ましくは0〜2の整数であり、nは0〜10、好ましくは0〜2の整数であり、kは1〜4の整数を示す。
上記構成単位(A)の好ましい構造としては、上記式(A)において、
(1)m=0、n=0であり、Yが−CO−であり、Arが置換基として−SO3Hを有
するフェニル基である構造、
(2)m=1、n=0であり、Yが−CO−であり、Zが−O−であり、Arが置換基として−SO3Hを有するフェニル基である構造、
(3)m=1、n=1、k=1であり、Yが−CO−であり、Zが−O−であり、Arが置換基として−SO3Hを有するフェニル基である構造、
(4)m=1、n=0であり、Yが−CO−であり、Arが置換基として2個の−SO3
Hを有するナフチル基である構造、
(5)m=1、n=0であり、Yが−CO−であり、Zが−O−であり、Arが置換基として−O(CH24SO3Hを有するフェニル基である構造
などを挙げることができる。
(疎水性ユニット)
Figure 2007026819
上記式(B)中、AおよびDは、それぞれ独立に直接結合、−CO−、−SO2−、−
SO−、−CONH−、−COO−、−(CF2i−(iは1〜10の整数を示す。)、−(CH2j−(jは1〜10の整数を示す。)、−CR’2−、シクロヘキシリデン基
、フルオレニリデン基、−O−または−S−を示す。これらの中では、直接結合、−CO−、−SO2−、−CR’2−、シクロヘキシリデン基、フルオレニリデン基および−O−が好ましい。なお、R’は脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基またはハロゲン化炭化水素基を示し、たとえば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、プロピル基、オクチル基、デシル基、オクタデシル基、フェニル基、トリフルオロメチル基などが挙げられる。
Bは独立に酸素原子または硫黄原子を示し、酸素原子が好ましい。
1〜R16は、それぞれ独立に水素原子、フッ素原子、アルキル基、一部もしくは全部
がハロゲン化されたハロゲン化アルキル基、アリル基、アリール基、ニトロ基またはニト
リル基を示す。
上記R1〜R16におけるアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチ
ル基、アミル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基などが挙げられる。ハロゲン化アルキル基としては、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、パーフルオロプロピル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロペンチル基、パーフルオロヘキシル基などが挙げられる。アリル基としては、プロペニル基などが挙げられる。アリール基としては、フェニル基、ペンタフルオロフェニル基などが挙げられる。
sおよびtは、それぞれ0〜4の整数を示す。rは0または1以上の整数を示し、上限は通常100、好ましくは1〜80である。
上記構成単位(B)の好ましい構造としては、上記式(B)において、
(1)s=1、t=1であり、Aが−CR’2−、シクロヘキシリデン基またはフルオレ
ニリデン基であり、Bが酸素原子であり、Dが−CO−または−SO2−であり、R1〜R16が水素原子またはフッ素原子である構造、
(2)s=1、t=0であり、Bが酸素原子であり、Dが−CO−または−SO2−であ
り、R1〜R16が水素原子またはフッ素原子である構造、
(3)s=0、t=1であり、Aが−CR’2−、シクロヘキシリデン基またはフルオレ
ニリデン基であり、Bが酸素原子であり、R1〜R16が水素原子、フッ素原子またはニト
リル基である構造
などが挙げられる。
(ポリマー構造)
Figure 2007026819
上記式(C)中、A、B、D、Y、Z、Ar、k、m、n、r、s、tおよびR1〜R16は、上記式(A)および(B)中で定義した通りであり、xおよびyは、x+y=10
0モル%とした場合のモル比を示す。
本発明で特に好ましく用いられるスルホン化ポリアリーレンは、上記構成単位(A)、すなわちxのユニットを0.5〜99.999モル%、好ましくは10〜99.99モル%の割合で含有し、上記構成単位(B)、すなわちyのユニットを99.5〜0.001モル%、好ましくは90〜0.01モル%の割合で含有している。
(スルホン化ポリアリーレンの製造方法)
上記スルホン化ポリアリーレンの製造方法としては、たとえば、下記に示すA法、B法およびC法が挙げられる。
(A法)たとえば、特開2004−137444号公報に記載の方法で、上記構成単位(A)となりうるスルホン酸エステル基を有するモノマーと、上記構成単位(B)となりうるモノマーまたはオリゴマーとを共重合させ、スルホン酸エステル基を有するポリアリーレンを製造し、このスルホン酸エステル基を脱エステル化してスルホン酸基に変換する方法。
(B法)たとえば、特開2001−342241号公報に記載の方法で、上記式(A)で表される骨格を有するが、スルホン酸基およびスルホン酸エステル基を有しないモノマーと、上記構成単位(B)となりうるモノマーまたはオリゴマーとを共重合させ、得られた共重合体をスルホン化剤を用いてスルホン化する方法。
(C法)上記式(A)中のArが、−O(CH2pSO3Hまたは−O(CF2pSO3Hで表される置換基を有する芳香族基である場合には、たとえば、特開2005−60625号公報に記載の方法で、上記構成単位(A)となりうる前駆体のモノマーと、上記構成単位(B)となりうるモノマーまたはオリゴマーとを共重合させ、次いで、アルキルスルホン酸またはフッ素置換されたアルキルスルホン酸を導入する方法。
上記A法で用いることができる、上記構成単位(A)となりうるスルホン酸エステル基を有するモノマーとしては、たとえば、特開2004−137444号公報、特開2004−345997号公報、特開2004−346163号公報に記載されているスルホン酸エステル類を挙げることができる。
上記B法で用いることができる、上記構成単位(A)となりうるスルホン酸基およびスルホン酸エステル基を有しないモノマーとしては、たとえば、特開2001−342241号公報、特開2002−293889号公報に記載されているジハロゲン化物を挙げることができる。
上記C法で用いることができる、上記構成単位(A)となりうる前駆体のモノマーとしては、たとえば、特開2005−36125号公報に記載されているジハロゲン化物を挙げることができる。
また、いずれの方法においても用いられる、上記構成単位(B)となりうるモノマーまたはオリゴマーとしては、
上記式(B)においてr=0の場合、たとえば、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンズアニリド、2,2−ビス(4−クロロフェニル)ジフルオロメタン、2,2−ビス(4−クロロフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、4−クロロ安息香酸−4−クロロフェニルエステル、ビス(4−クロロフェニル)スルホキシド、ビス(4−クロロフェニル)スルホン、2,6−ジクロロベンゾニトリルなどが挙げられる。これらの化合物において、塩素原子が臭素原子またはヨウ素原子に置き換わった化合物なども用いることができる。
上記式(B)においてr=1の場合、たとえば、特開2003−113136号公報に記載の化合物を挙げることができる。
上記式(B)においてr≧2の場合、たとえば、特開2004−137444号公報、特開2004−244517号公報、特開2004−346164号公報、特願2003−348523号、特願2003−348524号、特願2004−211739号、特願2004−211740号に記載の化合物を挙げることができる。
スルホン酸基を有するポリアリーレンを得るためには、まず、上記構成単位(A)となりうるモノマーと、上記構成単位(B)となりうるモノマーまたはオリゴマーとを、触媒の存在下で共重合させ、前駆体のポリアリーレンを得ることが必要である。この共重合を行う際に用いられる触媒は、遷移金属化合物を含む触媒系であり、この触媒系は、(i)遷移金属塩および配位子となる化合物、または、配位子が配位された遷移金属錯体(銅塩を含む)と、(ii)還元剤とを必須成分とし、さらに、重合速度を上げるために「塩」を添加してもよい。これらの触媒成分の具体例、各成分の使用割合、反応溶媒、濃度、温度、時間等の重合条件は、たとえば、特開2001−342241号公報に記載されている条件を採用することができる。
本発明で用いられるスルホン化ポリアリーレンは、上記のようにして得られた前駆体のポリアリーレンを、スルホン酸基を有するポリアリーレンに変換することにより得ることができる。この方法としては、下記の3通りの方法がある。
(a法)上記A法で得られた、前駆体のスルホン酸エステル基を有するポリアリーレンを、特開2004−137444号公報に記載の方法で脱エステル化する方法。
(b法)上記B法で得られた前駆体のポリアリーレンを、特開2001−342241号公報に記載の方法でスルホン化する方法。
(c法)上記C法で得られた前駆体のポリアリーレンに、特開2005−60625号公報に記載の方法で、アルキルスルホン酸基を導入する方法。
上記のような方法により製造される、上記式(C)で表されるスルホン化ポリアリーレンのイオン交換容量は、通常、0.3〜5meq/g、好ましくは0.5〜3meq/g、さらに好ましくは0.8〜2.8meq/gである。イオン交換容量が上記範囲よりも低いと、プロトン伝導度が低くなり発電性能が低下する傾向にある。一方、イオン交換容量が上記範囲を超えると、耐水性が大幅に低下してしまうことがあるため好ましくない。
上記イオン交換容量は、たとえば、上記構成単位(A)となりうる前駆体のモノマーおよび上記構成単位(B)となりうるモノマーまたはオリゴマーの種類、使用割合、組み合わせを変えることにより、調整することができる。具体的には、上記構成単位(A)と上記構成単位(B)の仕込み割合を変えることにより、調整することが好ましい。このようにしてイオン交換容量を調整することにより、アノード側電極触媒層およびカソード側電極触媒層に適したイオン交換樹脂を得ることができる。
このようにして得られるスルホン酸基を有するポリアリーレンの分子量は、ゲルパーミエションクロマトグラフィ(GPC)によるポリスチレン換算重量平均分子量で、1万〜100万、好ましくは2万〜80万である。分子量は、たとえば、重合停止剤として4−クロロベンゾフェノンを添加する方法などにより調整することができ、これによりアノード側電極触媒層およびカソード側電極触媒層に適したイオン交換樹脂を得ることもできる。
<有機溶媒>
上記電極ペースト組成物に用いられる有機溶媒としては、エタノール、n−プロピルアルコール、2−プロパノール、2−メチル−2−プロパノール、2−ブタノール、n−ブチルアルコール、2−メチル−1−プロパノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、2−メチル−1−ブタノール、3−メチル−1−ブタノール、2−メチル−2−ブタノール、3−メチル−2−ブタノール、2,2−ジメチル−1−プロパ
ノール、シクロヘキサノール、1−ヘキサノール、2−メチル−1−ペンタノール、2−メチル−2−ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール、2−エチル−1−ブタノー
ル、1−メチルシクロヘキサノール、2−メチルシクロヘキサノール、3−メチルシクロヘキサノール、4−メチルシクロヘキサノール、1−オクタノール、2−オクタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、ジオキサン、ブチルエーテル、フェニルエーテル、イソペンチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、ビス(2−メトキシエチル)エーテル、ビス(2−エトキシエチル)エーテル、シネオール、ベンジルエチルエーテル、アニソール、フェネトール、アセタール、メチルエチルケトン、2−ペンタノン、3−ペンタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、2−ヘキサノン、4−メチル−2−ペンタノン、2−ヘプタノン、2,4−ジメチル−3−ペンタノン、2−オクタ
ノン、γーブチロラクトン、酢酸−n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸sec-ブチル、酢酸ペンチル、酢酸イソペンチル、3−メトキシブチルアセタート、酪酸メチル、酪酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−(メトキシメトキシ)エタノール、2−イソプロポキシエタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、ジメチルスルホキシド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、テトラメチル尿素、トルエン、キシレン、ヘプタン、オクタンなどの炭化水素系有機溶媒、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセロールなどの多価アルコール系有機溶媒などを挙げることができる。
上記有機溶媒は、1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよいが、イオン交換樹脂の溶解性の観点から、好ましくは、水溶性の非プロトン性双極子有機溶媒を含有していること、より好ましくは、水溶性の非プロトン性双極子有機溶媒を10%以上含有していることが望ましい。
上記水溶性の非プロトン性双極子有機溶媒としては、たとえば、ジメチルアセアミド、ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド、テトラメチル尿素、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、γ―ブチロラクトンなどが挙げられる。
<分散剤>
本発明で用いられる電極ペースト組成物には、必要に応じてさらに分散剤を添加してもよい。このような分散剤としては、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤などを挙げることができる。
上記アニオン界面活性剤としては、たとえば、オレイン酸・N−メチルタウリン、オレイン酸カリウム・ジエタノールアミン塩、アルキルエーテルサルフェート・トリエタノールアミン塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェート・トリエタノールアミン塩、特殊変成ポリエーテルエステル酸のアミン塩、高級脂肪酸誘導体のアミン塩、特殊変成ポリエステル酸のアミン塩、高分子量ポリエーテルエステル酸のアミン塩、特殊変成燐酸エステルのアミン塩、高分子量ポリエステル酸アミドアミン塩、特殊脂肪酸誘導体のアミドアミン塩、高級脂肪酸のアルキルアミン塩、高分子量ポリカルボン酸のアミドアミン塩、ラウリン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウムラウリル硫酸エステルナトリウム塩、セチル硫酸エステルナトリウム塩、ステアリル硫酸エステルナトリウム塩、オレイル硫酸エステルナトリウム塩、ラウリルエーテル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、油溶性アルキルベンゼンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、高級アルコールリン酸モノエステルジナトリウム塩、高級アルコールリン酸ジエステルジナトリウム塩、ジアルキルジチオリン酸亜鉛などが挙げられる。
上記カチオン界面活性剤としては、たとえば、ベンジルジメチル{2−[2−(P−1
,1,3,3−テトラメチルブチルフェノオキシ)エトキシ]エチル}アンモニウムクロ
ライド、オクタデシルアミン酢酸塩、テトラデシルアミン酢酸塩、オクタデシルトリメチルアンモニウムクロライド、牛脂トリメチルアンモニウムクロライド、ドデシルトリメチルアンモニウムクロライド、ヤシトリメチルアンモニウムクロライド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロライド、ベヘニルトリメチルアンモニウムクロライド、ヤシジメチルベンジルアンモニウムクロライド、テトラデシルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、ジオレイルジメチルアンモニウムクロライド、1−ヒドロキシエチル−2−牛脂イミダゾリン4級塩、2−ヘプタデセニル−ヒドロキシエチルイミダゾリン、ステアラミドエチルジエチルアミン酢酸塩、ステアラミドエチルジエチルアミン塩酸塩、トリエタノールアミンモノステアレートギ酸塩、アルキルピリジウム塩、高級アルキルアミンエチレンオキサイド付加物、ポリアクリルアミドアミン塩、変成ポリアクリルアミドアミン塩、パーフルオロアルキル第4級アンモニウムヨウ化物などが挙げられる。
上記両性界面活性剤としては、たとえば、ジメチルヤシベタイン、ジメチルラウリルベタイン、ラウリルアミノエチルグリシンナトリウム、ラウリルアミノプロピオン酸ナトリウム、ステアリルジメチルベタイン、ラウリルジヒドロキシエチルベタイン、アミドベタイン、イミダゾリニウムベタイン、レシチン、3−[ω−フルオロアクカノイルーN−エ
チルアミノ]−1−プロパンスルホン酸ナトリウム、N−[3−(パーフルオロオクタンスルホンアミド)プロピル]−N,N−ジメチル−N−カルボキシメチレンアンモニウムベ
タインなどが挙げられる。
上記非イオン界面活性剤としては、たとえば、ヤシ脂肪酸ジエタノールアミド(1:2型)、ヤシ脂肪酸ジエタノールアミド(1:1型)、牛脂肪酸ジエタノールアミド(1:2型)、牛脂肪酸ジエタノールアミド(1:1型)、オレイン酸ジエタノールアミド(1:1型)、ヒドロキシエチルラウリルアミン、ポリエチレングリコールラウリルアミン、ポリエチレングリコールヤシアミン、ポリエチレングリコールステアリルアミン、ポリエチレングリコール牛脂アミン、ポリエチレングリコール牛脂プロピレンジアミン、ポリエチレングリコールジオレイルアミン、ジメチルラウリルアミンオキサイド、ジメチルステアリルアミンオキサイド、ジヒドロキシエチルラウリルアミンオキサイド、パーフルオロアルキルアミンオキサイド、ポリビニルピロリドン、高級アルコールエチレンオキサイド付加物、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物、脂肪酸エチレンオキサイド付加物、ポリプロピレングリコールエチレンオキサイド付加物、グリセリンの脂肪酸エステル、ペンタエリスリットの脂肪酸エステル、ソルビットの脂肪酸エステル、ソルビタンの脂肪酸エステル、砂糖の脂肪酸エステルなどが挙げられる。
上記分散剤は、1種単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中では、好ましくは塩基性基を有する界面活性剤であり、より好ましくはアニオン性もしくはカチオン性の界面活性剤であり、さらに好ましくは分子量5千〜3万の界面活性剤である。電極用ペースト組成物に上記分散剤を添加すると、保存安定性および流動性に優れ、塗工時の生産性が向上する。
<炭素繊維>
上記電極ペースト組成物は、必要に応じて、さらに炭素繊維を含有してもよい。このような炭素繊維しては、レーヨン系炭素繊維、PAN系炭素繊維、リグニンポバー系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、気相成長炭素繊維などを用いることができ、これらの中では気相成長炭素繊維が好ましい。
電極ペースト組成物にこのような炭素繊維をさらに添加すると、電極触媒層中の細孔容積が増加するため、燃料ガスや酸素ガスの拡散性が向上し、また、生成する水によるフラッディングなどを改善でき、発電性能が向上する。
<水>
上記電極ペースト組成物には、必要に応じてさらに水を添加してもよい。水を添加することにより、触媒ペースト組成物を調製する際の発熱を低減する効果がある。
<イオン交換基を有しない樹脂>
上記電極ペースト組成物は、必要に応じて、さらにイオン交換基を有しない樹脂を含有してもよい。このような樹脂としては、上記有機溶媒に溶解もしくは分散するものであれば特に限定されないが、撥水性の高い樹脂であることが好ましい。たとえば、含フッ素共重合体、シランカップリング剤、シリコーン樹脂、ワックス、ポリホスファゼンなどを挙げることができ、これらの中では、含フッ素共重合体が好ましい。
上記含フッ素共重合体としては、前記有機溶媒に溶解もしくは分散するものであれば特に限定されないが、たとえば、フッ化ビニリデン系の共重合体、分子内に脂肪族環構造を有するパーフルオロカーボン重合体、含フッ素オレフィオンと炭化水素系オレフィンとの共重合体、含フッ素アクリレートとアクリレートまたは/およびメタクリレートとの共重合体などを挙げることができる。これらのイオン交換基を有しない樹脂を用いることで、触媒層中の湿潤状態を適切に維持できる。
<組成>
本発明の電極−膜接合体を構成する電極触媒層は、上記触媒担持カーボンを20〜90重量%、好ましくは40〜85重量%の範囲で含有し、上記イオン交換樹脂を5〜60重量%、好ましくは10〜50重量%の範囲で含有し、必要に応じて用いられる分散剤を0〜10重量%、好ましくは0〜3重量%の範囲で含有し、また、必要に応じて用いられる炭素繊維を0〜20重量%、好ましくは1〜10重量%の範囲で含有し、必要に応じて用いられるイオン交換基を有しない樹脂は0〜20重量%、好ましくは1〜10重量%で含有することが好ましい(なお、これらの合計を100重量%とする)。
触媒担持カーボンの含有量が、上記範囲よりも低いと、電極反応率が低下することがあり、上記範囲を超えると、プロトン伝導性効率が低下する恐れがあるとともに、電極触媒層中に発電性能に十分な細孔容積を確保できない傾向にある。イオン交換樹脂の含有量が、上記範囲よりも低いと、プロトン伝導度が低下する傾向にあるとともに、バインダーとしての役割を果たせなくなり電極を形成できないことがあり、一方、上記範囲を超えると、電極中の細孔容積が減少する傾向にある。
分散剤の含有量が上記範囲内にあると、保存安定性に優れた電極ペーストが得られるとともに、分散性に優れた電極触媒層が得られる。炭素繊維が上記範囲内にあると、細孔容積が適度に確保され、排水性が良好になり発電出力が向上する。イオン交換基を有しない樹脂の含有量が上記範囲内にあると、触媒層中の湿潤状態を適切に維持でき、発電出力が向上する。
したがって、上記電極ペースト組成物において、上記触媒担持カーボン、イオン交換樹脂、分散剤、炭素繊維およびイオン交換基を有しない樹脂は、電極触媒層を形成したときに、上記組成となる量で配合される。また、上記電極触媒ペースト組成物を調製する際に用いられる有機溶媒の使用量は、該ペースト組成物全体を100重量%とした場合に、5〜95重量%、好ましくは15〜90重量%であり、必要に応じて用いられる水の使用量は、0〜70重量%、好ましくは2〜30重量%である。
有機溶媒の使用量が上記範囲内にあると、組成物がペースト状となりハンドリングに好適である。水の使用量が上記範囲内にあると、触媒ペースト調製時の発熱を効率的に低減
できる。
<調製方法>
上記電極ペースト組成物は、たとえば、上記各成分を所定の割合で混合し、従来公知の方法で混練することにより調製することができる。各成分の混合順序は特に限定されないが、たとえば、全ての成分を混合して一定時間攪拌を行うか、分散剤以外の成分を混合して一定時間攪拌を行った後、必要に応じて分散剤を添加して一定時間攪拌を行うことが好ましい。また、必要に応じて、有機溶媒の量を調整して、組成物の粘度を調整してもよい。
〔電極触媒層の形成方法〕
本発明の電極−膜接合体を構成する電極触媒層は、上記電極ペースト組成物を、電極基材、転写基材または後述するイオン交換樹脂膜上に塗布し、乾燥することにより形成することができる。
上記電極ペースト組成物の塗布方法としては、刷毛塗り、筆塗り、バーコーター塗布、ナイフコーター塗布、ドクターブレード法、スクリーン印刷、スプレー塗布などが挙げられる。
上記電極基材としては、燃料電池に一般に用いられる電極基材、たとえば、導電性物質を主たる構成材とする多孔質導電シートなどを、特に限定されることなく用いることができる。また、上記転写基材としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)のシート、または、表面を離型剤処理したガラス板や金属板などを用いることができる。
上記導電性物質としては、ポリアクリロニトリルからの焼成体、ピッチからの焼成体、黒鉛および膨張黒鉛などの炭素材、ステンレススチール、モリブデン、チタンなどが挙げられる。上記導電性物質の形態は、繊維状または粒子状など特に限定されないが、好ましくは繊維状導電性無機物質(無機導電性繊維)、特に好ましくは炭素繊維である。
無機導電性繊維を用いた多孔質導電シートとしては、織布および不織布のいずれの構造も使用可能である。織布としては、平織、斜文織、朱子織、紋織、綴織などを特に限定されることなく用ることができる。また、不織布としては、抄紙法、ニードルパンチ法、スパンボンド法、ウォータージェットパンチ法、メルトブロー法などの方法で製造されたものを特に限定されることなく用いることができる。また、無機導電性繊維を用いた多孔質導電シートは編物であってもよい。
このような布帛として特に炭素繊維を用いる場合、耐炎化紡績糸を用いた平織物を炭化または黒鉛化した織布、耐炎化糸をニードルパンチ法やウォータージェットパンチ法などによる不織布加工をした後に、炭化もしくは黒鉛化した不織布、耐炎化糸、炭化糸または黒鉛化糸を用いた抄紙法によるマット不織布などが好ましい。たとえば、東レ製カーボンペーパーTGPシリーズ、SOシリーズ、E−TEK社製カーボンクロスなどが好ましく用いられる。
多孔質導電シートには、導電性向上のために、補助剤としてカーボンブラックなどの導電性粒子や、炭素繊維などの導電性繊維を添加することも好ましい。
上記のようにして塗布された塗膜の厚さ(すなわち電極触媒層の厚さ)は特に制限されないが、触媒として担持された金属が、コーティングの単位面積当り、0.05〜4.0mg/cm2、好ましくは0.1〜2.0mg/cm2の範囲で電極触媒層中に存在することが望ましい。この範囲にあれば充分に高い触媒活性が発揮されるとともに、効率的にプロトンを取り出すことができる。
上記電極ペースト組成物の塗布後の溶媒の除去は、乾燥温度20〜180℃、好ましくは50〜160℃で、乾燥時間5〜180分、好ましくは30〜120分で行う。また、必要に応じて、水浸漬により除去することもできる。水浸漬の条件としては、水浸漬温度が5〜120℃、好ましくは15〜95℃であり、水浸漬時間が1分〜72時間、好ましくは5分〜48時間である。
このようにして得られる電極触媒層の細孔容積は、0.1〜3.0mL/g−(電極触媒層)、好ましくは0.2〜2.0mL/g−(電極触媒層)である。細孔容積が上記範囲を超えると、機械的特性が低下する傾向にあるとともに、電子伝導およびプロトン伝導経路が切断され、発電性能が低下することがある。一方、細孔容積が上記範囲よりも低いと、水の排出性が悪く、発電性能が低下することがある。
[イオン交換樹脂膜]
本発明の電極−膜接合体を構成するイオン交換樹脂膜としては、特に限定されず、公知のイオン交換樹脂膜(プロトン伝導膜)を用いることができるが、該イオン交換樹脂膜を構成する成分として、上記電極ペースト組成物中に含まれるイオン交換樹脂を用いることが好ましい。このイオン交換樹脂のイオン交換容量は、0.3〜5.0meq/g、好ま
しくは0.5〜4.0meq/gであることが望ましい。
上記イオン交換樹脂膜は、たとえば、上記イオン交換樹脂と、上記電極ペースト組成物で用いられる有機溶媒として例示したものと同様の有機溶媒とを含む組成物を調製し、この組成物を基体上に流延してフィルム状に成形するキャスティング法などにより製造することができる。なお、前記組成物は、イオン交換樹および有機溶媒以外に、硫酸、リン酸などの無機酸、カルボン酸を含む有機酸、適量の水などを含んでもよい。
上記組成物中のポリマー濃度は、イオン交換樹脂の分子量にもよるが、通常、5〜40重量%、好ましくは7〜25重量%である。ポリマー濃度が前記範囲よりも低いと、厚膜化し難く、また、ピンホールが生成しやすくなる傾向にあり、一方、上記範囲を超えると、溶液粘度が高すぎてフィルム化し難く、また、表面平滑性に欠けることがある。
上記組成物の溶液粘度は、共重合体の分子量や、ポリマー濃度にもよるが、通常、2,
000〜100,000mPa・s、好ましくは3,000〜50,000mPa・sであ
る。溶液粘度が上記範囲よりも低いと、加工中の溶液の滞留性が悪く、基体から流れてしまうことがあり、一方、上記範囲を超えると、高粘度過ぎて、ダイからの押し出しができず、流延法によるフィルム化が困難となることがある。
上記組成物は、たとえば、上記各成分を所定の割合で混合し、従来公知の方法、例えばウエーブローター、ホモジナイザー、ディスパーサー、ペイントコンディショナー、ボールミルなどの混合機を用いて混合することにより調製することができる。
上記基体としては、通常の溶液キャスティング法に用いられる基体であれば特に限定されず、たとえばプラスチック製や金属製などの基体が用いられ、好ましくは、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムなどの熱可塑性樹脂からなる基体が用いられる。また、上記電極触媒層を基体として用いることもできる。
上記キャスティング法による製膜後、30〜160℃、好ましくは50〜150℃の温度で、3〜180分、好ましくは5〜120分間乾燥することにより、イオン交換樹脂膜(プロトン伝導膜)を得ることができる。その乾燥膜厚は、通常、10〜100μm、好ましくは20〜80μmである。乾燥後、膜中に溶媒が残存する場合は、必要に応じて、
水抽出により脱溶媒することもできる。なお、上記イオン交換樹脂膜には、イオン交換樹脂以外に、硫酸やリン酸などの無機酸、カルボン酸を含む有機酸、適量の水などが含まれてもよい。
[電極−膜接合体の製造方法]
本発明に係る電極−膜接合体は、上記イオン交換樹脂膜の両面に、上記電極触媒層を形成することにより製造することができる。
上記イオン交換樹脂膜の両面に電極触媒層を形成する方法としては、たとえば、
上記電極ペースト組成物をイオン交換樹脂膜上に直接塗布し、乾燥することにより形成する方法、
上記電極ペースト組成物を電極基材上に塗布し、乾燥することにより電極触媒層を有する電極を作製し、得られた電極とイオン交換樹脂膜とを、電極触媒層側がイオン交換樹脂膜に接するようにしてホットプレス等により接合する方法、
上記電極ペースト組成物を他の基材(転写基材)上に塗布して電極触媒層をいったん形成した後、イオン交換樹脂膜または電極基材上に転写する方法
などが挙げられる。
上記ホットプレスの条件は、温度が30℃〜200℃、好ましくは40℃〜180℃であり、圧力が5〜300kg/cm2、好ましくは10〜180kg/cm2であり、時間が30秒〜60分間、好ましくは1分間〜30分間である。上記範囲内の条件でホットプレスを行うことにより、電極層と膜の接合性が良好となる。
また、上記電極触媒層上にカーボンペーパーなどのガス拡散層を接合する場合は、上記と同様のホットプレス条件により、電極触媒層とガス拡散層とを接合することができる。
[実施例]
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、イオン交換容量、分子量および含水率の測定は以下のようにして行った。
1.イオン交換容量
イオン交換樹脂膜および各電極触媒層を構成するバインダー成分からなる膜を作製し、所定量を秤量してTHF/水の混合溶剤に溶解したフェノールフタレインを指示薬とし、NaOHの標準液を用いて滴定を行い、中和点からイオン交換容量を求めた。
2.分子量
スルホン酸基を有しないポリアリーレンの分子量は、溶剤としてテトラヒドロフラン(THF)を用い、GPCによってポリスチレン換算の分子量を求めた。スルホン酸基を有するポリアリーレンの分子量は、臭化リチウムと燐酸を添加したN−メチル−2−ピロリドン(NMP)を溶離液として用い、GPCによってポリスチレン換算の分子量を求めた。
3.含水率
イオン交換樹脂からなる膜から切り取りとった2×3cmの小片膜を、95℃×24時間の条件で純水に浸漬した後、小片膜を取り出し重量W1を測定した。次に、120℃×
2時間の条件にて真空乾燥させた後の小片膜の重量W2を測定した。このW1およびW2
ら、次式により含水率ΔWを求めた。
ΔW=(W1/W2−1)×100(重量%)
<合成例A1>
(1)疎水性ユニットの合成
攪拌機、温度計、Dean-stark管、窒素導入管および冷却管を取りつけた1Lの三口フラスコに、4,4’−ジクロロジフェニルスルホン29.8g(104mmol)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン37.4g(111mmol)および炭酸カリウム20.0g(145mmol)をはかりとった。フラスコ内を窒素置換した後、スルホラン168mLおよびトルエン84mLを加えて攪拌し、オイルバスを用いて反応液を150℃で加熱還流させた。反応によって生成する水はDean-stark管にトラップした。3時間後、水の生成がほとんど認められなくなったところで、トルエンをDean-stark管から系外に除去した。徐々に反応温度を200℃に上げ、5時間攪拌を続けた後、4,4’−ジクロロベンゾフェノン7.5g(30mmol)を加え、さらに8時間反応させた。反応液を放冷後、トルエン100mLを加えて希釈した。反応液に不溶の無機塩を濾過し、濾液をメタノール2Lに注いで生成物を沈殿させた。沈殿した生成物を濾過して乾燥後、テトラヒドロフラン250mLに溶解し、これをメタノール2Lに注いで再沈殿させた。沈殿した白色粉末を濾過して乾燥することにより、目的の化合物56gを得た。GPCで測定した数平均分子量(Mn)は10,500であった。得られた化合物は、下記式(I)で表されるオリゴマーであることを確認した。
Figure 2007026819
(2)スルホン化ポリアリーレンの合成
攪拌機、温度計および窒素導入管を取りつけた1Lの三口フラスコに、3−(2,5−ジクロロベンゾイル)ベンゼンスルホン酸ネオペンチル135.5g(338mmol)、(1)で得られたオリゴマー(Mn10,500)44.5g(4.2mmol)、ビス(トリフェニルホスフィン)ニッケルジクロリド6.71g(10.3mmol)、ヨウ化ナトリウム1.54g(10.3mmol)、トリフェニルホスフィン35.9g(136mmol)および亜鉛53.7g(820mmol)をはかりとり、乾燥窒素置換した。ここにN,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)430mLを加え、反応温度を80℃に保持しながら3時間攪拌を続けた後、DMAc730mLを加えて希釈し、不溶物を濾過した。
得られた溶液を攪拌機、温度計および窒素導入管を取り付けた2Lの三口フラスコに入れ、115℃に加熱攪拌し、臭化リチウム44g(506mmol)を加えた。7時間攪拌後、反応液をアセトン5Lに注いで生成物を沈殿させた。次いで、1N塩酸、純水の順に洗浄後、乾燥して目的の重合体124gを得た。得られた重合体の重量平均分子量(Mw)は170,000であった。得られた重合体は、式(II)で表されるスルホン化ポリマー(以下「ポリマー(II)」ともいう。)と推定される。このポリマー(II)のイオン交換容量は2.3meq/gであった。
Figure 2007026819
〔実施例1〕
<アノード電極ペーストの調製>
50mLのポリボトルに直径10mmのジルコニアボール(株式会社ニッカトー製「YTZボール」)25gを入れ、白金担持カーボン粒子(田中貴金属工業株式会社製、Pt:48重量%担持)1.53g、蒸留水0.88g、NMP12.47gおよび合成例1のポリマー(II)と同様の構造を有し、イオン交換容量が2.4meq/cm2のポリマーの15wt%NMP溶液4.59gを加え、ペイントシェーカーで60分間攪拌することにより、アノード電極ペーストAを得た。
<カソード電極ペーストの調製>
50mLのポリボトルに直径10mmのジルコニアボール(株式会社ニッカトー製「YTZボール」)25gを入れ、白金担持カーボン粒子(田中貴金属工業株式会社製、Pt:48重量%担持)1.53g、蒸留水0.88g、NMP12.47g、合成例1のポリマー(II)と同様の構造を有し、イオン交換容量が2.2meq/cm2のポリマーの15wt%NMP溶液4.59gおよび気相法炭素繊維(昭和電工社製「VGCF」)0.1gを加え、ペイントシェーカーで60分間攪拌することにより、カソード電極ペーストBを得た。
<電極の製造>
上記のようにして得られたアノード電極ペーストAを、撥水処理されたカーボンペーパー(東レ製)にドクターブレードにより塗布し、120℃で60分間乾燥することにより、Pt量が0.2mg/cm2となるアノード電極Aを形成した。また、上記のようにして得られたカソード電極ペーストBを撥水処理されたカーボンペーパー(東レ製)にドクターブレードにより塗布し、120℃で60分間乾燥することにより、Pt量が0.5mg/cm2となるカソード電極Bを形成した。
<燃料電池の作製>
合成例1のポリマー(II)からなる膜厚50μmのイオン交換樹脂膜を、電極触媒層が膜に接するようにして、上記のようにして得られたアノード電極Aおよびカソード電極Bで挟み、圧力100kg/cm2下、160℃×15分の条件でホットプレス成形して
電極−膜接合体を作製した。得られた電極−膜接合体を2枚のチタン製の集電体で挟み、さらにその外側にヒーターを配置し、有効面積25cm2の評価用燃料電池を作製した。
〔実施例2〕
<アノード電極ペーストの調製>
合成例1のポリマー(II)と同様の構造を有し、イオン交換容量が2.2meq/c
2のポリマーを用いたこと以外は、実施例1と同様にしてアノード電極ペーストCを得
た。
<カソード電極ペーストの調製>
合成例1のポリマー(II)と同様の構造を有し、イオン交換容量が2.1meq/c
2のポリマーを用いたこと以外は、実施例1と同様にしてカソード電極ペーストDを得
た。
<電極の製造>
上記のようにして得られたアノード電極ペーストCおよびカソード電極ペーストDを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、アノード電極Cおよびカソード電極Dを得た。
<燃料電池の作製>
上記のようにして得られたアノード電極Cおよびカソード電極Dを用いたこと以外は、実施例1と同様にして評価用燃料電池を作製した。
〔比較例1〕
<カソード電極ペーストの調製>
合成例1のポリマー(II)と同様の構造を有し、イオン交換容量が2.4meq/c
2のポリマーを用いたこと以外は、実施例1と同様にしてカソード電極ペーストEを得
た。
<電極層の製造>
得られたカソード電極ペーストEを用いたこと以外は、実施例1と同様にしてカソード電極Eを得た。
<燃料電池の作製>
上記のようにして得られたカソード電極Eと、実施例2で得られたアノード電極Cとを用いたこと以外は、実施例1と同様にして評価用燃料電池を作製した。
〔比較例2〕
<アノード電極ペーストの調製>
合成例1のポリマー(II)と同様の構造を有し、イオン交換容量が2.1meq/c
2のポリマーを用いたこと以外は、実施例1と同様にしてアノード電極ペーストFを得
た。
<電極の製造>
上記のようにして得られた得ノード電極ペーストEを用いたこと以外は、実施例1と同様にしてアノード電極Fを得た。
<燃料電池の作製>
上記のようにして得られたアノード電極Fと、実施例1で得られたカソード電極Bとを用いたこと以外は、実施例1と同様にして評価用燃料電池を作製した。
〔評価〕
実施例1および2、比較例1および2で得られた評価用燃料電池のの温度を80℃に保ち、湿度100%RHにおいて、水素および空気を背圧0.2MPa一定の条件で供給し
、電流密度0.1A/cm2および1.0A/cm2のときの端子間電圧を測定した。結果を表1に示す。
Figure 2007026819
表1に示されるように、アノード電極を構成するスルホン化ポリマーのイオン交換容量が、カソード電極を構成するスルホン化ポリマーのイオン交換容量よりも大きい実施例1および2における燃料電池の性能は、アノード電極を構成するスルホン化ポリマーのイオン交換容量が、カソード電極を構成するスルホン化ポリマーのイオン交換容量よりも小さい比較例1および2よりも優れている。
<合成例2>
撹拌羽根、温度計および窒素導入管を取り付けた1000mLの3口フラスコに、3−(2,5−ジクロロベンゾイル)ベンゼンスルホン酸ネオペンチル90.3g(225mmol)、2,5−ジクロロベンゾフェノン69.1g(275mmol)、4−クロロベンゾフェノン1.08g(5mmol)、ビス(トリフェニルホスフィン)ニッケルジクロリド9.81g(15mmol)、よう化ナトリウム2.25g(15mmol)、トリフェニルホスフィン52.5g(200mmol)および亜鉛78.4g(1200mmol)を加えた。フラスコ内を2時間真空乾燥した後、乾燥窒素置換し、脱水したジメチルアセトアミド(DMAc)373mLを加え、反応温度が90℃を超えないように制御しながら、3時間重合を行った。次いで、DMAc1400mLを加えて重合溶液を希釈した。不溶物をろ過し、ろ液を10Lのメタノールに注いで重合体を沈殿させた。沈殿した重合体を真空乾燥することにより、ポリアリーレン120gを得た。GPCで求めた生成物の数平均分子量(Mn)は39,000、重量平均分子量(Mw)は153,000であった。
撹拌羽根、温度計および窒素導入管を取り付けた300mLの3口フラスコに、上記のようにして得られたポリアリーレン(Mn:39,000)120g、DMAc970mLおよび臭化リチウム29.3g(338mmol)を加え、120℃で7時間撹拌した。反応液を5Lのアセトンに注いで重合体を沈殿させ、得られた重合体を、蒸留水/濃塩酸溶液(3.0L/0.37L)で2度処理した。その後、洗浄水のpHが中性になるまで蒸留水で洗浄し、70℃で12時間乾燥することにより、スルホン化ポリアリーレン100gを得た。このポリマーのイオン交換容量は2.0meq/g、重量平均分子量(Mw)は116,000であった。
<合成例3>
(1)疎水性ユニットの合成
攪拌機、温度計、Dean-stark管、窒素導入管および冷却管を取り付けた1Lの三口フラスコに、2,6−ジクロロベンゾニトリル44.5g(259mmol)、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン102.0g(291mmol)および炭酸カリウム52.3g(379mmol)をはかりとった。フラスコ内を窒素置換した後、スルホラン366mLおよびトルエン183mLを加えて攪拌し、オイルバスを用いて反応液
を150℃で加熱還流させた。反応によって生成する水はDean-stark管にトラップした。3時間後、水の生成がほとんど認められなくなったところで、トルエンをDean-stark管から系外に除去した。徐々に反応温度を200℃に上げ、3時間攪拌を続けた後、2,6−ジクロロベンゾニトリル16.7g(97mmol)を加え、さらに5時間反応させた。反応液を放冷後、トルエン100mLを加えて希釈した。反応液に不溶の無機塩を濾過し、濾液をメタノール2Lに注いで生成物を沈殿させた。沈殿した生成物を濾過、乾燥後、テトラヒドロフラン250mLに溶解し、これをメタノール2Lに注いで再沈殿させた。沈殿した白色粉末を濾過して乾燥することにより、目的物118gを得た。GPCで測定した数平均分子量(Mn)は7,300であった。得られた化合物は下記式(III)で表
されるオリゴマーであることを確認した。
Figure 2007026819
(2)高含水率スルホン化ポリアリーレンの合成
攪拌機、温度計および窒素導入管を取り付けた1Lの三口フラスコに、3−(2,5−ジクロロベンゾイル)ベンゼンスルホン酸ネオペンチル207.5g(517mmol)、(1)で得られたオリゴマー(Mn7,300)57.5g(7.88mmol)、ビス(トリフェニルホスフィン)ニッケルジクロリド10.3g(15.8mmol)、ヨウ化ナトリウム2.36g(15.8mmol)、トリフェニルホスフィン55.1g(210mmol)および亜鉛82.4g(1260mmol)をはかりとり、乾燥窒素置換した。ここにN,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)720mLを加え、反応温度を80℃に保持しながら3時間攪拌を続けた後、DMAc1360mLを加えて希釈し、不溶物を濾過した。
得られた溶液を、攪拌機、温度計および窒素導入管を取り付けた2Lの三口フラスコに入れた。115℃に加熱攪拌し、臭化リチウム98.8g(1140mmol)を加えた。7時間攪拌後、アセトン5Lに注いで生成物を沈殿させた。次いで、1N塩酸、純水の順で洗浄後、乾燥して目的の重合体223gを得た。得られた重合体の重量平均分子量(Mw)は142,000であった。得られた重合体は式(IV)で表されるスルホン化ポリマーと推定される。このポリマーのイオン交換容量は2.4meq/gであった。また、このポリマーからなる膜の含水率は115%であった。
Figure 2007026819
(3)低含水率スルホン化ポリアリーレンの合成
攪拌機、温度計および窒素導入管を取り付けた1Lの三口フラスコに、3−(2,5−ジクロロベンゾイル)ベンゼンスルホン酸ネオペンチル152.4g(380mmol)、(1)で得られたオリゴマー(Mn7,300)147.2g(20.17mmol)、ビス(トリフェニルホスフィン)ニッケルジクロリド10.5g(16.1mmol)、ヨウ化ナトリウム1.80g(12.1mmol)、トリフェニルホスフィン42.0g(160mmol)および亜鉛62.8g(960mmol)をはかりとり、乾燥窒素置換した。ここにN,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)850mLを加え、反応温度を80℃に保持しながら3時間攪拌を続けた後、DMAc1870mLを加えて希釈し、不溶物を濾過した。
得られた溶液を攪拌機、温度計および窒素導入管を取り付けた2Lの三口フラスコに入れた。115℃に加熱攪拌し、臭化リチウム99.0g(1002mmol)を加えた。7時間攪拌後、アセトン5Lに注いで生成物を沈殿させた。次いで、1N塩酸、純水の順で洗浄後、乾燥して目的の重合体223gを得た。得られた重合体の重量平均分子量(Mw)は145,000であった。得られた重合体の構造は上記式(IV)で表されるスルホン化ポリマーと同様であると推定される。このポリマーのイオン交換容量は1.5meq/gであった。また、このポリマーからなる膜の含水率は40%であった。
〔実施例3〕
<アノード電極ペーストの調製>
50mLのポリボトルに直径10mmのジルコニアボール(株式会社ニッカトー製「YTZボール」)25gを入れ、白金担持カーボン粒子(田中貴金属工業株式会社製、Pt:48重量%担持)1.53g、蒸留水0.88g、NMP12.47gおよび合成例3の(2)のポリマーの15wt%NMP溶液4.59gを加え、ペイントシェーカーで60分間攪拌することにより、アノード電極ペーストGを得た。
<カソード電極ペーストの調製>
50mLのポリボトルに直径10mmのジルコニアボール(株式会社ニッカトー製「YTZボール」)25gを入れ、白金担持カーボン粒子(田中貴金属工業株式会社製、Pt:48重量%担持)1.53g、蒸留水0.88g、NMP12.47g、合成例2の(3)のポリマーの15wt%NMP溶液4.59gおよび気相法炭素繊維(昭和電工社製「VGCF」)0.1gを加え、ペイントシェーカーで60分間攪拌することにより、カソード電極ペーストHを得た。
<電極の形成>
上記のようにして得られたアノード電極ペーストGを撥水処理されたカーボンペーパー
(東レ製)にドクターブレードにより塗布し、120℃で60分間乾燥することにより、Pt量が0.2mg/cm2となるアノード電極Gを形成した。また、上記のようにして得られたカソード電極ペーストHを撥水処理されたカーボンペーパー(東レ製)にドクターブレードにより塗布し、120℃で60分間乾燥することにより、Pt量が0.5mg/
cm2となるカソード電極Hを形成した。
<燃料電池の作製>
合成例2のポリマーからなる膜厚50μmのイオン交換樹脂膜を、電極触媒層が膜に接するようにして、上記のようにして得られたアノード電極Gおよびカソード電極Hで挟み、圧力100kg/cm2下、160℃×15分の条件でポットプレス成形して電極−膜
接合体を作製した。得られた電極−膜接合体を2枚のチタン製の集電体で挟み、さらにその外側にヒーターを配置し、有効面積25cm2の評価用燃料電池を作製した。
〔比較例3〕
<アノード電極ペーストの調製>
合成例2の(3)のポリマーを用いたこと以外は、実施例3と同様にしてアノード電極ペーストIを得た。
<電極層の製造>
上記のようにして得られたアノード電極ペーストIを用いたこと以外は、実施例3と同様にしてアノード電極Iを得た。
<燃料電池の作製>
上記のようにして得られたアノード電極Iと、実施例3で得られたカソード電極Hとを用いたこと以外は、実施例3と同様にして評価用燃料電池を作製した。
〔比較例4〕
<カソード電極ペーストの調製>
合成3の(2)のポリマーを用いたこと以外は、実施例3と同様にしてカソード電極ペーストJを得た。
<電極層の製造>
上記のようにして得られたカソード電極ペーストJを用いたこと以外は、実施例3と同様にしてカソード電極Jを得た。
<燃料電池の作製>
上記のようにして得られたカソード電極Jと、比較例3で得られたアノード電極Iとを用いたこと以外は、実施例3と同様にして評価用燃料電池を作製した。
〔評価〕
実施例3、比較例3および4で作製した評価用燃料電池の温度を80℃に保ち、背圧0.2MPa一定の条件で、アノードに水素を、カソードに空気を供給し、アノード湿度5
0%RH/カソード湿度50%RHと、アノード湿度100%RH/カソード湿度100%RHの2条件について、電流密度0.1A/cm2および1.0A/cm2のときの端子間電圧を測定した。結果を表2に示す。
Figure 2007026819
表2に示されるように、アノード側樹脂膜の含水率が、カソード側樹脂膜の含水率よりも高い実施例3における燃料電池の性能は、比較例3および4における燃料電池の性能よりも優れている。

Claims (10)

  1. イオン交換樹脂膜と、触媒担持カーボンおよびイオン交換樹脂を含むアノード側電極触媒層と、触媒担持カーボンおよびイオン交換樹脂を含むカソード側電極触媒層とを有する電極−膜接合体であって、
    アノード側電極触媒層を構成するバインダー成分のイオン交換容量が、カソード側電極触媒層を構成するバインダー成分のイオン交換容量より大きいこと、および/または、
    アノード側電極触媒層を構成するイオン交換樹脂からなる膜の含水率が、カソード側電極触媒層を構成するイオン交換樹脂からなる膜の含水率より高いこと
    を特徴とする電極−膜接合体。
  2. イオン交換樹脂膜と、触媒担持カーボンおよびイオン交換樹脂を含むアノード側電極触媒層と、触媒担持カーボンおよびイオン交換樹脂を含むカソード側電極触媒層とを有する電極−膜接合体であって、
    アノード側電極触媒層を構成するバインダー成分のイオン交換容量が、カソード側電極触媒層を構成するバインダー成分のイオン交換容量より、0.05meq/g以上大きいことを特徴とする電極−膜接合体。
  3. 前記イオン交換樹脂膜のイオン交換容量が、前記カソード側電極触媒層を構成するバインダー成分のイオン交換容量より大きいことを特徴とする請求項2に記載の電極−膜接合体。
  4. 前記イオン交換樹脂膜のイオン交換容量が、前記アノード側電極触媒層を構成するバインダー成分のイオン交換容量より小さいことを特徴とする請求項2または3に記載の電極−膜接合体。
  5. イオン交換樹脂膜と、触媒担持カーボンおよびイオン交換樹脂を含むアノード側電極触媒層と、触媒担持カーボンおよびイオン交換樹脂を含むカソード側電極触媒層とを有する電極−膜接合体であって、
    アノード側電極触媒層を構成するイオン交換樹脂からなる膜の含水率(重量%)が、カソード側電極触媒層を構成するイオン交換樹脂からなる膜の含水率(重量%)より、5〜100重量%高いことを特徴とする電極−膜接合体。
  6. 前記イオン交換樹脂膜を構成するイオン交換樹脂、前記アノード側電極触媒層を構成するイオン交換樹脂および前記カソード側電極触媒層を構成するイオン交換樹脂のうち少なくとも1つが、スルホン酸基もしくはリン酸基からなるイオン伝導成分を有するポリマーセグメント(A)と、イオン伝導成分を有しないポリマーセグメント(B)とが共有結合しているブロック共重合体であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の電極−膜接合体。
  7. 前記イオン交換樹脂膜を構成するイオン交換樹脂、前記アノード側電極触媒層を構成するイオン交換樹脂および前記カソード側電極触媒層を構成するイオン交換樹脂のうち少なくとも1つが、芳香環を結合基で共有結合させた構造を主鎖骨格に有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の電極−膜接合体。
  8. 前記イオン交換樹脂膜を構成するイオン交換樹脂、前記アノード側電極触媒層を構成するイオン交換樹脂および前記カソード側電極触媒層を構成するイオン交換樹脂のうち少なくとも1つが、下記一般式(A)で表される構成単位と、下記一般式(B)で表される構成単位とを含むスルホン化ポリアリーレンであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の電極−膜接合体。
    Figure 2007026819
    [式(A)中、Yは、−CO−、−SO2−、−SO−、−CONH−、−COO−、−
    (CF2i−(iは1〜10の整数を示す。)または−C(CF32−を示し、
    Zは、独立に直接結合、−(CH2j−(jは1〜10の整数を示す。)、−C(CH3
    2−、−O−または−S−を示し、
    Arは、−SO3H、−O(CH2pSO3Hまたは−O(CF2pSO3H(pは1〜1
    2の整数を示す。)で表される置換基を有する芳香族基を示し、
    mは0〜10の整数を示し、nは0〜10の整数を示し、kは1〜4の整数を示す。]
    Figure 2007026819
    [式(B)中、AおよびDは、それぞれ独立に直接結合、−CO−、−SO2−、−SO
    −、−CONH−、−COO−、−(CF2i−(iは1〜10の整数を示す。)、−(CH2j−(jは1〜10の整数を示す。)、−CR’2−(R’は脂肪族炭化水素基、
    芳香族炭化水素基またはハロゲン化炭化水素基を示す。)、シクロヘキシリデン基、フルオレニリデン基、−O−または−S−を示し、
    Bは独立に酸素原子または硫黄原子を示し、
    1〜R16は、それぞれ独立に水素原子、フッ素原子、アルキル基、一部もしくは全部が
    ハロゲン化されたハロゲン化アルキル基、アリル基、アリール基、ニトロ基またはニトリル基を示し、
    sおよびtは、それぞれ0〜4の整数を示し、rは0または1以上の整数を示す。]
  9. 前記アノード側電極触媒層を構成するイオン交換樹脂および前記カソード側電極触媒層を構成するイオン交換樹脂が、上記一般式(A)で表される構成単位と、上記一般式(B)で表される構成単位とを含むスルホン化ポリアリーレンであることを特徴とする請求項8に記載の電極−膜接合体。
  10. 前記イオン交換樹脂膜を構成するイオン交換樹脂、前記アノード側電極触媒層を構成するイオン交換樹脂および前記カソード側電極触媒層を構成するイオン交換樹脂が、上記一般式(A)で表される構成単位と、上記一般式(B)で表される構成単位とを含むスルホン化ポリアリーレンであることを特徴とする請求項8に記載の電極−膜接合体。
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