JP2012249547A - 細胞培養用基材及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
足場依存性の細胞を接着させた状態で培養でき、少ない細胞数からでも均一な大きさのスフェロイドを、コラーゲンゲルやマグネタイトなどの添加物を用いることなく大量に培養できる細胞培養用基材とその製造方法を提供する。
【解決手段】
基材の表面に、深さ100乃至500μm、内径100乃至1000μmの凹陥部が複数設けられた構造を有する細胞培養用基材であって、さらに、最頻ピッチが2nm乃至10μmの連続した凹凸構造を有する細胞培養用基材。
【選択図】 図1
Description
特許文献3の方法は、マイクロウェルプレートを用いて簡単にスフェロイドを培養できる点で優れているが、非接着性の培養シャーレを用いている以上、足場依存性の細胞の増殖は期待できない。また、足場が無い状況は、必ずしも生体内の状況に近いとは言えず、必ずしも満足できるものではなかった。
すなわち、本発明の第1は、基材の表面に、深さ100乃至500μm、内径100乃至1000μmの凹陥部が複数設けられた構造を有する細胞培養用基材であって、さらに、最頻ピッチが2nm乃至10μmの連続した凹凸構造を有することを特徴とする細胞培養用基材である。
本発明の細胞培養用基材は、例えばシャーレやマイクロウェルプレート(6穴、12穴、24穴、48穴、96穴、384穴等)、フラスコ、チェンバースライドといった、培地や細胞懸濁液を保持可能なものである。培養面積やマイクロウェルプレートの外寸、穴数は特に限定するものではないが、シャーレであれば、直径60mmまたは90mm、深さ15mmまたは20mmが一般的であり、マイクロウェルプレートであれば、86mm×128mmのプレートに前述の穴数を保有するものが一般的である。本発明の細胞培養用基材の形状、厚みあるいは外寸は、目的とする細胞培養や生化学的な検査等のために開発された種々公知の自動培養装置や自動測定装置に合わせて、適宜設定することが出来、一つのシャーレやウェルを敷居で区切り、複数の培養やアッセイを可能にしたものにも使用することが出来る。
また、本発明の細胞培養用基材はフィルムやシート状の形態でも良く、フィルムやシート状の該細胞培養用基材を適当な大きさに切り取り、シャーレやマイクロウェル内に敷いた上に培地や細胞懸濁液を入れて使用することが出来る。
該凹陥部の底面は、重力方向に対して水平な面であっても良いが、播種された細胞が沈降して一カ所に集まることにより、細胞相互が接着してスフェロイドを形成し易くなることや、スフェロイド同士の癒着を防ぐ障壁を設けることが好ましい為、各凹陥部の底面は、中央部に向かって深くなるように傾斜していることが好ましい。すなわち、特に限定するものではないが、中央に向かって深くなるように傾斜した凹陥部の縦断面の形状としては、図1−Aのような半円、図1−BのようなU字型、図1−C、のようなV字型、図1−Dのような上部が立ち上がったV字型、あるいは図1−Eのような中央部を短い底辺とする逆台形等を例示することが出来る。
凹陥部の底が水平な面でなく、中央部に向かって深くなるように傾斜している場合、この傾斜の傾きの目安として、底面の最浅部分と最深部分における凹陥の深さの差の、凹陥部の内径に対する比率は、特に限定するものではないが、好ましい範囲としては0.01〜5.0である。 即ち、0.01未満であると底面の深さの差によって細胞が最深部に集められる効果が小さく、また、スフェロイド同士の癒着を防ぐ障壁としての役割に乏しく、5.0を超えると底面に連続した凹凸構造を設ける際の加工性が悪くなる。
また、シリコン基材や石英基材を用いる場合など、基材表面に塗布したレジスト樹脂層の上からレーザー描画装置を用いて凹陥部の形に抜けたレジストパターンを形成し、該レジストパターンの上から蒸着などの適当な方法で金属膜をつけて、不要部の金属膜をレジスト樹脂ごと剥がして所望のパターンの金属マスクを設け(リフトオフ法)、該金属マスクを用いたドライエッチングにより凹陥部を作製する方法も知られている。
また、基材の表面に、各種公知の手段を用いて微細隔壁を設けたり、その他マイクロハニカム構造を形成する方法などを用いて、多数の凹陥部を設けた基材を得ることが出来る。
本発明の連続した凹凸構造は、個々の凹陥部の底面上に2以上の突起が連なって、凹凸が連続して存在する構造であり、凹凸構造が細胞と接触する部位が細胞の足場として機能する。
連なった2以上の突起により構成される、連続した凹凸構造は、隣り合う2つの突起の間隔(ピッチ)によって特徴付けられる。ピッチが培養される細胞よりも大きい場合は、突起の間隙に細胞が落ち込み、スフェロイドが形成されにくくなる。また、ピッチが小さすぎる場合は、平面として認識され、スフェロイドを形成せずに扁平状に接着し、増殖する。従って、連続した凹凸構造のピッチは、培養する細胞よりも小さく、且つ扁平に接着し、増殖しない大きさであることが望ましい。従って、本発明における凹陥部の底面に設けられる連続した凹凸構造の最頻ピッチは2nm乃至10μmであり、好ましくは、0.1乃至5.0μmである。また、該突起の最頻ピッチに対する最頻高さの比は、0.5乃至10が好ましく、より好ましくは1.0乃至5.0である。
エッチングを利用した方法としては、凹陥部を設けた基材上にフォトレジスト樹脂を塗布し、電子線描画や干渉露光によって目的とする微小凹凸構造に対応するパターンを形成する、フォトリソグラフィー法の他、凹陥部を設けた基材面に単粒子膜を形成させてエッチングマスクとする方法を挙げることができる。 フォトレジスト樹脂を塗布する方法では、塗布されたフォトレジスト樹脂が凹陥部を埋めるために均一な膜厚を得る事が難しいなどの問題がある。 一方、単粒子膜エッチングマスクを設ける方法は、凹陥部の底面が水平でない場合においても行えるという利点から、本発明においては、凹陥部を設けた基材面に単粒子膜を形成させて単粒子膜エッチングマスクとする方法が、とりわけ好適に用いられる。
また、粒子間のピッチは、面方向に隣り合う2つの粒子の頂点間の距離であり、最頻ピッチはこれらの最頻値である。粒子が球形であれば、隣り合う粒子の頂点間距離は、隣り合う粒子の中心間の距離に等しい。
単粒子膜エッチングマスクが設けられた凹陥部の底面において無作為に選択された領域で、一辺が粒子間の最頻ピッチの5乃至40倍の凹陥部の底面に平行な正方形の領域について、原子間力顕微鏡イメージを得る。 例えば、粒子径300nmの粒子を用いた単粒子膜の場合、1.5μm×1.5μm乃至12μm×12μmの領域のイメージを得る。
次に、このイメージをフーリエ変換により波形分離し、FFT像(高速フーリエ変換像)を得、FFT像のプロファイルにおける0次ピークから1次ピークまでの距離を求める。
こうして求められた距離の逆数がこの領域における最頻ピッチである。
このような処理を無作為に選択された合計25カ所以上の同面積の領域について同様に行い、各領域における最頻ピッチを求める。こうして得られた25カ所以上の領域における最頻ピッチの平均値が、該単粒子膜エッチングマスクの最頻ピッチである。
この際、各領域は、少なくとも1mm離れて選択されることが好ましく、より好ましくは5mm〜1cm離れて選択される。
具体的には、溶剤中に粒子が分散した分散液を水槽内の液面に滴下する滴下工程と、溶剤を揮発させることにより粒子からなる単粒子膜を形成する単粒子膜形成工程と、単粒子膜を凹陥部を設けた基材上に移し取る移行工程とを有する方法により基材の凹陥部の底面に配置できる。この方法は、単層化の精度、操作の簡便性、大面積化への対応、再現性などを兼ね備え、例えばNature, Vol.361, 7 January, 26(1993)などに記載されている液体薄膜法や、いわゆる粒子吸着法に比べて非常に優れ、工業生産レベルにも対応できる。本発明は必ずしもこの方法に限定されるものではないが、以下にこの方法をより具体的に説明する。
水よりも比重の小さい有機溶剤中に、目的とする連続した凹凸構造の最頻ピッチに対応する平均粒子径を有する粒子を分散し、粒子分散液を調製する。ここで用いる有機溶剤としてクロロホルム、メタノール、エタノール、メチルエチルケトン、又はこれらの混合物に例示されるような、疎水性で、高い揮発性を有するものが好ましく、粒子は表面が疎水化されたものを用いることが好ましい。 また、水槽(トラフ)を用意し、これに、その液面上で粒子を展開させるための液体(以下、下層水とも呼ぶ。)として水を入れる。
そして、該粒子分散液を下層水の液面に滴下する(滴下工程)。すると、分散媒である溶剤が揮発するとともに、粒子が下層水の液面上に単層で展開し、2次元的に最密充填した単粒子膜を形成することができる(単粒子膜形成工程)。
このように、粒子として疎水性のものを選択した場合には、溶剤としても疎水性のものを選択する必要がある。一方、その場合、下層水は親水性である必要があり、通常、上述したように水を使用する。このように組み合わせることによって、後述するように、粒子の自己組織化が進行し、2次元的に最密充填した単粒子膜が形成される。ただし、粒子および溶剤として親水性のものを選択してもよく、その場合には、下層水として、疎水性の液体を選択する。
界面活性剤としては、臭素化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、臭素化デシルトリメチルアンモニウムなどのカチオン性界面活性剤、ドデシル硫酸ナトリウム、4−オクチルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどのアニオン性界面活性剤が好適に使用できる。また、アルカンチオール、ジスルフィド化合物、テトラデカン酸、オクタデカン酸なども使用できる。
液中で行う場合には、例えば、クロロホルム、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、エチルエチルケトン、トルエン、ヘキサン、シクロヘキサン、酢酸エチル、酢酸ブチルなどの1種以上からなる揮発性有機溶剤中に、疎水化対象の粒子を加えて分散させ、その後、界面活性剤を混合してさらに分散を続ければよい。このようにあらかじめ粒子を分散させておき、それから界面活性剤を加えると、表面をより均一に疎水化することができる。このような疎水化処理後の分散液は、そのまま、滴下工程において下層水の液面に滴下するための分散液として使用できる。
疎水化対象の粒子と界面活性剤の比率は、疎水化対象の粒子の質量に対して、界面活性剤の質量が1/3〜1/15倍の範囲が好ましい。
また、こうした疎水化処理の際には、処理中の分散液を撹拌したり、分散液に超音波照射したりすることも粒子分散性向上の点で効果的である。
金属アルコキシシランとしては、モノメチルトリメトキシシラン、モノメチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシランなどが挙げられる。
疎水化対象の粒子と金属アルコキシシランの比率は、疎水化対象の粒子の質量に対して、金属アルコキシシランの質量が1/10〜1/100倍の範囲が好ましい。
超音波照射は、粒子の最密充填化(ランダム配列を6方最密化する)の他に、ナノ粒子分散液調製時に発生しやすい粒子の軟凝集体を破壊する効果、一度発生した点欠陥、線欠陥、または結晶転移などもある程度修復する効果を得ることが出来る。
一方、喫水線が粒子群の頂点にくる場合、すなわち、粒子が液面下に潜ってしまう場合には、このような自己組織化は起こらず、単粒子膜は形成されない。よって、粒子と下層水は、一方が疎水性である場合には他方を親水性にして、粒子群が液面下に潜ってしまわないように調節される。
以上の説明ように、下層水としては、表面自由エネルギーが比較的大きく、生成した粒子の最密充填配置が液面上に安定的に持続しやすいため、水が好ましく用いられる。
単粒子膜形成工程により液面上に形成された単粒子膜を、ついで、単層状態のままエッチング対象物である凹陥部を設けた基材面上に移し取る。
粒子のサイズと比較すると、凹陥部は非常に大きな凹凸構造であるが、単粒子膜は見事に形状に追従しながら基材に設けられた凹陥部の底面を単層で被覆することが出来る。すなわち、表面が平面でなくても2次元的な最密充填状態を維持しつつ凹凸形状に追従し、その面形状を変形させ、完全に被覆することが可能である。
これは、凹凸形状に追従する際、単粒子膜内では粒子結晶面での滑り現象が起き、その形状を2次元から3次元へ自在に変形させることによるものと考えられる。
上記各方法によっても、特別な装置を使用せずに単粒子膜を、凹陥部を設けた基材面上に移し取ることができるが、より大面積の単粒子膜であっても、その2次元的な最密充填状態を維持したまま凹陥部を設けた基材面上に移し取りやすい点で、移行工程においては、いわゆるLBトラフ法を採用することが好ましい(Journal of Materials and Chemistry, Vol.11, 3333 (2001)、Journal of Materials and Chemistry, Vol.12, 3268 (2002)など参照。)
ここで単粒子膜は、単粒子膜形成工程により液面上ですでに単層の状態に形成されているため、移行工程の温度条件(下層水の温度)や基材の引き上げ速度などが多少変動しても、移行工程において単粒子膜が崩壊して多層化するなどのおそれはない。なお、下層水の温度は、通常、季節や天気により変動する環境温度に依存し、ほぼ10〜30℃程度である。
具体的には、気相エッチングを開始すると、単粒子膜を構成している各粒子の隙間をエッチングガスが通り抜けて基材の表面に到達し、その部分に溝が形成され、各粒子に対応する位置にそれぞれ円柱が現れる。
引き続き気相エッチングを続けると、粒子も徐々にエッチングされて小さくなると同時に、基材面の溝もさらに深くなり、各円柱は次第に円錐台となっていく。
そして、最終的には各粒子はエッチングにより消失し、それとともに凹陥部を設けた基材面に多数の円錐状の微細突起が形成され、頂上と底部がくり返す連続した凹凸構造が形成される。
単粒子膜エッチングマスクを構成する粒子や基材の材質などに応じて、上記エッチングガスの1種以上を適宜使用することができる。
また、比較的柔らかいポリエステル樹脂製の基材を用いる場合などには、単粒子膜エッチングマスクを構成する粒子としてコロイダルシリカ粒子を選択してこれらを組み合わせ、エッチングガスとして、Arなどの不活性ガスを用いることで、ポリエステル樹脂製の基材を選択的に物理エッチングすることができる。
また、電場のバイアスを数十から数百Wに設定すると、プラズマ状態にあるエッチングガス中の正電荷粒子は、加速されて高速でほぼ垂直に基材の面に入射する。これにより、基材に対して反応性を有する気体を用いた場合は、垂直方向の物理化学エッチングの反応速度を高めることができる。
基材の材質とエッチングガスの種類の組み合わせによるが、気相エッチングでは、プラズマによって生成したラジカルによる等方性エッチングも並行して起こる。このラジカルによるエッチングは化学エッチングであり、エッチング対象物のどの方向にも等方的にエッチングが起こる。ラジカルは電荷を持たないためバイアスパワーの設定でエッチング速度をコントロールすることは出来ず、エッチングガスの濃度(流量)で調節することが出来る。 しかしながら、荷電粒子による異方性エッチングを行うためにはある程度のガス圧を維持しなければならず、反応性ガスを用いる限りラジカルの影響を無くすことはできない。 そこで、基材を冷却してラジカルの反応速度を遅くする手法が広く用いられており、その機構を備えた装置も多く上梓されており、これらを利用することが好ましい。
本発明の細胞培養用基材は、上記のような方法により、シート状基材またはシャーレやマイクロウェルプレートなどの培養容器の底面に、直接凹陥部および連続した凹凸構造を賦形して製造することが出来る。フィルムやシート状の基材に賦形して製造された、フィルムやシート状の該細胞培養用基材は、これを適当な大きさに切り取り、シャーレやマイクロウェル内に敷いた上に培地や細胞懸濁液を入れて使用することが出来るものであり、生産性や利便性の点で好ましく用いられる。
本発明における細胞培養用基材の材質としては、ポリスチレン、アクリル樹脂、ポリイミド、シクロオレフィン系樹脂、酸化アルミニウム、シリコン、ガラス、石英ガラスより選らばれる材料は、培養される細胞に対して有害な影響を及ぼさないものであることから、とりわけ好ましく用いることが出来る。また、これらの材料は必要に応じて二種以上を組み合わせて用いることも出来る。
本発明の細胞培養用基材を用いて培養されたスフェロイドは、均一な大きさのスフェロイドであり、以下のような種々の用途に有用に用いることが出来る。薬剤のスクリーニングの為に用いる場合は、本発明の細胞培養用基材で細胞を培養し、スフェロイドを形成させた後、薬剤候補物質を添加し、細胞の形態学的または生化学的な指標を解析することで、細胞に対して何らかの薬理効果を有するものをスクリーニングすることができる。また、適切な細胞、生化学的な指標を用いることで、化学物質の安全性の評価にも使用することが出来る。
<石英基板Aの作成>
厚さ1mmの平坦な石英基板に、スピンコーティング法(2000rpm)により、ネガ型レジスト樹脂(東京応化工業製NR-0006B)を厚さ500nmとなる様に塗布した。 次いで、レジスト樹脂塗布層上に、半導体レーザー(He−Cd線源:波長442nm)で、直径400μmのドットを各ドット間の最短距離が100μmになるように、500μm間隔の正方格子状に配置したドットパターンを描画した。 次に、現像液で直径400μmのドット以外の部分の石英表面が露出するように、露光部以外のレジスト樹脂を溶解除去し、現像されたレジスト樹脂のドットパターンが設けられた石英基板の表面から、真空蒸着装置を用いてNi蒸着を行い、約200nmの厚さのNi層を設けた。 次いで、溶剤で直径400μmのドットパターン状のレジスト樹脂を金属層ごと除去(リフトオフ)し、直径400μmのドットパターンで多数の孔の開いたNi層のエッチングマスクが形成された石英基板を得た。
Malvern Instruments Ltd 社製 Zetasizer Nano-ZSによる粒子動的光散乱法で求めた粒度分布をガウス曲線にフィッティングさせて得られるピークから平均粒径および粒径の変動係数を求めた、平均粒子径2.05μm(変動係数2.5%)の球形コロイダルシリカの5.0質量%水分散体(分散液)を孔径5.0μmφのメンブランフィルターでろ過し、メンブランフィルターを通過した分散液に濃度1.0質量%のフェニルトリエトキシシランの加水分解物水溶液を加え、約40℃で5時間反応させた。この際、フェニルトリエトキシシランの質量がコロイダルシリカ粒子の質量の0.02倍となるように分散液と加水分解水溶液とを混合した。 次に、反応終了後の分散液に、この分散液の体積の3倍の体積のメチルエチルケトンを加えて十分に攪拌して疎水化されたコロイダルシリカを油相抽出し、疎水化コロイダルシリカ分散液を得た。
ドライエッチングで複合微細構造が表面に形成された石英基板Bから、ニッケルを用いた電鋳法で複製用のモールド(金型またはスタンパーとも呼ぶ)を作製した。 即ち、先ず直径400μmの凹陥部の内面にピラー上面の直径500nm、高さ500nmの微細構造体が最頻ピッチ2μmで形成された複合微細構造が表面に形成された石英基板Bの表面にニッケルの無電解めっきを行い、厚さ約100nmの導電層を形成し、次いで、該導電層に電極を接続してスルファミン酸ニッケル浴中で電解めっきを行って、ニッケル金属層の厚さを1100μmまで増加させた、その後石英基板からニッケル金属層を剥離して、石英基板Bの表面に形成された複合微細構造が、金属表面に転写された反転構造のモールド(凸)を得、スタンパーBを作成した。
次に、上記スタンパーBを用いたナノインプリント法により、上記、複合微細構造を培養用シャーレ(IWAKI製組織培養用ディッシュ1020-100)上に転写した。 構造転写は熱式インプリント法によって行った。即ち、90℃、4MPaの圧力で接触させて軟化したポリスチレン樹脂をスタンパー形状に追従させる工程、圧力を維持したままポリスチレン樹脂をガラス転移温度以下に冷却する工程、冷却後、常圧に戻しポリスチレン樹脂を複合微細構造体のスタンパーから剥離する工程を順次行い、直径400μmの半球状の凹陥部の内面に、ピラー上面の直径500nm、高さ500nmの微細構造体が最頻ピッチ2μmで形成された連続した凹凸構造が形成された複合微細構造を表面に持つ、実施例1の細胞培養用シャーレを得た。
<石英基板Cの作成>
直径400μmの凹陥部が表面に形成された石英基板Aに代えて、凹陥部を設けていない、表面が平坦な厚さ1mmの石英基板を使用した以外は実施例1と同様にして、ピラー上面の直径500nm、高さ500nmの微細構造体が最頻ピッチ2μmで形成された、連続した凹凸構造が表面に形成された石英基板Cを得た。
複合微細構造が表面に形成された石英基板Bに代えて、連続した凹凸構造が表面に形成された石英基板Cを用い、スルファミン酸ニッケル浴中で電解めっきを行って厚さを増加させたニッケル金属層の厚さは500μmとした以外は、実施例1と同様にして、石英基板Cの表面に形成された連続した凹凸構造が、金属表面に転写された反転構造のスタンパーCを作成した。
上記スタンパーCを用いてナノインプリント法により上記微細構造体の転写を培養用シャーレ(IWAKI製組織培養用ディッシュ1020-100)上に行った。構造転写は実施例1と同様に熱式インプリント法によって行い、ピラー上面の直径500nm、高さ500nmの微細構造体が最頻ピッチ2μmで形成された連続した凹凸構造が表面に形成された微細構造を表面に持つ、比較例1の細胞培養用シャーレを得た。
<石英基板Dの作成>
石英基板A上に残留した金属薄膜を硝酸で除去し、直径400μm、深さ200μmの半球状の凹陥部が表面に形成された石英基板Dを得た。
<スタンパーDの作成>
複合微細構造が表面に形成された石英基板Dに代えて、直径400μm、深さ200μmの半球状の凹陥部が表面に形成された石英基板Dを用いた以外は、実施例1と同様にして、石英基板Dの表面に形成された直径400μm、深さ200μmの凹陥部の構造が、金属表面に転写された反転構造のスタンパーDを作成した。
上記スタンパーDを用いてナノインプリント法により上記微細構造体の転写を培養用シャーレ(IWAKI製組織培養用ディッシュ1020-100)上に行った。構造転写は実施例1と同様に熱式インプリント法によって行い、直径400μmの半球状の凹陥部が表面に形成された、比較例2の細胞培養用シャーレを得た。
培養用シャーレ(IWAKI製組織培養用ディッシュ1020-100)を、比較例3の細胞培養用シャーレとした。
<細胞培養試験>
実施例1、比較例1、比較例2、比較例3の細胞培養用シャーレを用い、HepG2(DSファーマバイオメディカル社製)を培養した。即ち、Non Essential Amino Acids(NEAA, MP Biomedicals社製)を1%、ウシ胎児血清(DSファーマバイオメディカル社製)を10%、ペニシリン-ストレプトマイシン溶液(和光純薬製)を1%添加したMEM・E培地(MP Biomedicals社製)に、HepG2細胞を懸濁し、実施例1、比較例1、2、及び3の細胞培養用シャーレに、1×103cells/cm2となるように細胞を播種した。37℃、5%CO2の条件下で5日間培養後、位相差顕微鏡(ニコン社製)を用いて細胞の形態を観察してスフェロイド同士の癒着の有無を確認した。 また、各試験区において任意に選択した5個のスフェロイドの最大径を測定し、平均値及び標準偏差を求め、スフェロイドの形成状況および均一性を評価した。結果を表1に示した。
以上の結果から、基材の表面に、深さ100乃至500μm、内径100乃至1000μmの凹陥部が複数設けられた構造を有する細胞培養用基材であって、さらに、最頻ピッチが2nm乃至10μmの連続した凹凸構造を有する本発明の細胞培養用基材である実施例1の細胞培養用シャーレを用いることにより、これらの特徴を有さない比較例1乃至3の細胞培養用シャーレと比較して、スフェロイド同士を癒着させることなく成長させることが出来、均一な大きさのスフェロイドを培養可能であることがわかった。
Claims (8)
- 基材の表面に、深さ100乃至500μm、内径100乃至1000μmの凹陥部が複数設けられた構造を有する細胞培養用基材であって、さらに、最頻ピッチが2nm乃至10μmの連続した凹凸構造を有することを特徴とする細胞培養用基材。
- 前記、最頻ピッチが2nm乃至10μmの連続した凹凸構造の、最頻高さが2nm乃至10μmであり、且つ最頻ピッチに対する最頻高さの比が0.5乃至10であることを特徴とする請求項1に記載の細胞培養用基材。
- 前記、最頻ピッチが2nm乃至10μmの連続した凹凸構造の、突起の形状が、上端から下端面に向けて拡径する錐体、上端面から下端面に向けて拡径する錐台、および柱体より選ばれる形状であることを特徴とする請求項1または請求項2の何れかに記載の細胞培養用基材。
- 前記、深さ100乃至500μm、内径100乃至1000μmの凹陥部が、中央部に向かって深くなっていることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の細胞培養用基材。
- 前記、基材が、ポリスチレン、アクリル樹脂、ポリイミド、シクロオレフィン系樹脂、酸化アルミニウム、シリコン、ガラス、石英ガラスのいずれかより選ばれた一種以上の材料よりなることを特徴とする前記請求項1乃至4の何れかに記載の細胞培養用基材。
- 前記、深さ100乃至500μm、内径100乃至1000μmの凹陥部が複数設けられた構造を有する基材の、該凹陥部の底面に単粒子膜エッチングマスクを配置する工程、該エッチングマスクを用いてドライエッチング法により、最頻ピッチが2nm乃至10μm、且つ、該最頻ピッチにおける、最頻高さの該最頻ピッチに対する比が0.5乃至10である凹凸構造を形成する工程を順次有することを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の細胞培養用基材の製造方法。
- 前記、凹陥部の底面に単粒子膜エッチングマスクを配置する工程が、水よりも低比重の揮発性溶剤中に粒子を分散した分散液を水槽内の水面上に滴下する滴下工程と、前記揮発性溶剤を揮発させて、該水槽内の水面上に前記粒子からなる単粒子膜を形成する単粒子膜形成工程、及び該単粒子膜を、凹陥部が複数設けられた構造を有する基材の表面上に移し取る移行工程とを順次有することを特徴とする請求項6に記載の細胞培養用基材の製造方法。
- 前記、請求項6または7の何れかに記載の製造方法であって、前記、連続した凹凸構造と凹陥部を鋳型とするインプリント技術により、材料の表面に前記、連続した凹凸構造と凹陥部を設けることを特徴とする細胞培養用基材の製造方法。
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