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JP2012197388A - ポリエチレン樹脂又はポリプロピレン樹脂の接着性に優れた湿気硬化型接着剤組成物及びそれを用いた被接着物又は接着方法 - Google Patents

ポリエチレン樹脂又はポリプロピレン樹脂の接着性に優れた湿気硬化型接着剤組成物及びそれを用いた被接着物又は接着方法 Download PDF

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JP2012197388A
JP2012197388A JP2011063679A JP2011063679A JP2012197388A JP 2012197388 A JP2012197388 A JP 2012197388A JP 2011063679 A JP2011063679 A JP 2011063679A JP 2011063679 A JP2011063679 A JP 2011063679A JP 2012197388 A JP2012197388 A JP 2012197388A
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和裕 伊豫
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Abstract

【課題】 ポリエチレン樹脂又はポリプロピレン樹脂の接着性に優れた接着剤組成物であって、これらの樹脂への接着性や硬化速度を損なうことなく、低粘度の接着剤組成物を得ること、及びそれを用いた被接着物又は接着方法を提供すること。
【解決手段】
架橋性珪素基を分子内に有する硬化性樹脂(A)、粘着付与樹脂(B)、分子量1000未満のアルキルアルコキシルシラン化合物又はアリールアルコキシルシラン化合物である反応性希釈剤(C)及び三フッ化ホウ素錯体(D)を含有することを特徴とする、ポリエチレン樹脂及び/又はポリプロピレン樹脂を接着するための湿気硬化型接着剤組成物を用いる。
【選択図】 なし

Description

本発明は、ポリエチレン樹脂又はポリプロピレン樹脂に対して良好な接着性を有する湿気硬化型接着剤組成物及びそれを用いた被接着物又は接着方法に関するものである。
主鎖が有機重合体であり、その分子内に分子間架橋可能な架橋性珪素基を有する硬化性樹脂は、アルコキシシリル基等の架橋性珪素基が大気中の水分で加水分解し架橋する、いわゆる湿気硬化型ポリマーであり、シーリング材、接着剤、粘着剤、塗料等のベースポリマーとして幅広く利用されている(特許文献1〜4)。
特に近年ではこれらの湿気硬化型ポリマーを用いた湿気硬化型接着剤に関心が集まっているが、このような湿気硬化型接着剤をポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂といったいわゆる難接着材料に対して接着させようという試みがなされている。
このような試みとしては、例えば、(A)加水分解性の珪素含有官能基を有する重合体、(B)粘着付与剤、(C)アクリル系重合体、及び(D)硬化触媒を含有することを特徴とする硬化性組成物(特許文献5)や、架橋可能な加水分解性シリル基を有し、実質的にアルキル基が炭素数1〜8の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体単位と、アルキル基が炭素数10以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体単位とからなる共重合体(A)、および架橋可能な加水分解性シリル基を有するポリオキシアルキレン重合体(B)からなる湿気硬化性樹脂組成物、および塩素化ポリオレフィン樹脂を含有してなる、ことを特徴とするポリオレフィン接着用接着剤組成物(特許文献6)等の技術が知られている。
特開昭52−73998号公報 特許第3030020号公報 特許第3343604号公報 特表2005−514504号公報 特開2004−115780号公報 特開2007−269935号公報
しかし、上記特許文献5に開示される硬化性組成物においては、粘着付与樹脂を配合することによって系全体の粘度が上昇し、実質的に接着剤として使用可能な硬化性組成物を得ることは極めて困難であった。また、仮に特許文献5に開示される硬化性組成物を接着剤として使用可能な粘度に調製しようとすると可塑剤や希釈剤を多量に配合する必要が生じ、結果としてポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂に対する接着強さは低下してしまう結果となった。
また、上記特許文献6に開示されるポリオレフィン接着用接着剤組成物は塩素化ポリオレフィンを必須成分として含有するものであるため、貯蔵中に塩素化ポリオレフィンから塩酸が発生し、これに伴い接着剤の貯蔵安定性が低下したり、ひどい場合には貯蔵中に容器が冒されてしまうこともあった。
本発明が解決しようとする主たる課題は、ポリエチレン樹脂又はポリプロピレン樹脂の接着性に優れた接着剤組成物であって、これらの樹脂への接着性や硬化速度を損なうことなく、低粘度の接着剤組成物を得ること、及びそれを用いた被接着物又は接着方法を提供することである。また、これらの課題に加えて、さらにはより安全性が高く、透明な接着剤硬化皮膜が得られるような湿気硬化型接着剤組成物を提供することである。
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究の結果、架橋性珪素基を分子内に有する硬化性樹脂に対して、粘着付与樹脂を配合するとともに特定の反応性希釈剤を配合することによって、上記課題を解決できることを知見し、本発明を完成するに至った。本発明は、以下の第1〜第7の発明から構成される。
すなわち、第1の発明は、架橋性珪素基を分子内に有する硬化性樹脂(A)、粘着付与樹脂(B)、分子量1000未満のアルキルアルコキシルシラン化合物又はアリールアルコキシルシラン化合物である反応性希釈剤(C)及び三フッ化ホウ素錯体(D)を含有することを特徴とする、ポリエチレン樹脂及び/又はポリプロピレン樹脂を接着するための湿気硬化型接着剤組成物に関するものである。
上記硬化性樹脂(A)に対して、粘着付与樹脂を配合するとともに、特定の反応性希釈剤を配合することによって、ポリエチレン樹脂又はポリプロピレン樹脂への接着性や硬化速度を損なうことなく、低粘度の接着剤組成物が得られる。
第2の発明は、上記反応性希釈剤(C)が、下記一般式(1)で表される化合物であることを特徴とする、第1の発明に係る湿気硬化型接着剤組成物に関するものである。
SiR (OR4−n ・・・ (1)
ただし、Rは炭素数1〜8の分岐していてもよい直鎖状又は環状のアルキル基若しくはフェニル基であり、Rはメチル基又はエチル基であり、nは1又は2である。
反応性希釈剤(C)が上記一般式で表される化合物であると、特にポリエチレン樹脂又はポリプロピレン樹脂への接着性や硬化速度を損なうことなく、低粘度の接着剤組成物が得られる。
第3の発明は、上記粘着付与樹脂(B)が、スチレン共重合体樹脂、テルペン系樹脂、石油系樹脂、ロジンエステル系樹脂からなる群から選ばれる1種以上であることを特徴とする、第1又は第2の発明に係る湿気硬化型接着剤組成物に関するものである。
粘着付与樹脂(B)として上記のものを用いると、硬化性樹脂(A)との相溶性に優れることから、さらに一段の密着性が得られるとともに、透明な接着剤硬化皮膜が得られる接着剤組成物を得ることができる。
第4の発明は、上記硬化性樹脂(A)100質量部に対して、上記反応性希釈剤(C)を0.5〜20質量部含有することを特徴とする、第1〜第3の発明に係る湿気硬化型接着剤組成物に関するものである。
反応性希釈剤(C)の配合量が上記の範囲内であると、特にポリエチレン樹脂又はポリプロピレン樹脂への接着性や硬化速度を損なうことなく、低粘度の接着剤組成物が得られるので好ましい。
第5の発明は、上記硬化性樹脂(A)100質量部に対して、上記粘着付与樹脂(B)を10〜70質量部含有することを特徴とする、第1〜第4のいずれかの発明に係る湿気硬化型接着剤組成物に関するものである。
粘着付与樹脂(B)の配合量が上記の範囲内であると、特にポリエチレン樹脂又はポリプロピレン樹脂への接着性や硬化速度を損なうことなく、低粘度の接着剤組成物が得られるので好ましい。
第6の発明は、湿気硬化型接着剤組成物の硬化皮膜(厚さ3mm)のHAZE値が30以下であることを特徴とする、第1〜第5のいずれかの発明に係る湿気硬化型接着剤組成物に関するものである。
硬化皮膜のHAZE値(測定方法は後に詳述する)が上記範囲であると、被着材として透明乃至半透明のポリエチレン樹脂又はポリプロピレン樹脂を接着した際に接着部分や、接着後のはみ出し部の硬化皮膜が、その意匠性を損なうことがなく好ましい。
第7の発明は、第1〜第6のいずれかの発明に係る湿気硬化型接着剤組成物の硬化物が接着剤層を構成し、被接着材料がポリエチレン樹脂又はポリプロピレン樹脂である被接着物に関するものである。
第7の発明は、第1〜第6のいずれかの発明に係る湿気硬化型接着剤組成物を用いた、ポリエチレン樹脂又はポリプロピレン樹脂の接着方法に関するものである。
第1〜第6のいずれかの発明に係る湿気硬化型接着剤組成物は、いわゆる難接着材料であるポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂に対して、特に良好な密着性を有することから、これらの用途に対して好適に用いることができる。
本発明に係る湿気硬化型接着剤組成物は、ポリエチレン樹脂又はポリプロピレン樹脂の接着性に優れた接着剤組成物であって、これらの樹脂への接着性や硬化速度を損なうことなく、低粘度の接着剤組成物が得られるという効果を奏する。また、本発明に係る湿気硬化型接着剤組成物は、さらにはより安全性が高く、透明な接着剤皮膜が得られるという、さらなる効果を奏することもできる。
以下、本発明を実施するための最良の形態を、詳細に説明する。なお、本発明はこれらの例示にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加え得ることは勿論である。
[硬化性樹脂(A)について]
本発明における硬化性樹脂(A)は、架橋性珪素基を分子内に有する常温で液状の硬化性樹脂である。硬化性樹脂(A)が有する架橋性珪素基は、従来公知の加水分解性基である、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、アミノオキシ基、メルカプト基、アルケニルオキシ基、ハロゲン基などを有する架橋性珪素基が利用できるが、これらの中でも、高反応性及び低臭性などの点から、下記一般式(2)で表されるアルキルアルコキシシリル基が最も好適に用いられる。
−SiR3−z(OR′) ・・・式(2)
(但し、Rは炭素数1〜10個のアルキル基を、R′は炭素数1〜6のアルキル基を、zは1、2又は3を、それぞれ示す)
上記アルキルアルコシキシリル基は、珪素原子に加水分解性基であるアルコキシ基(OR′)が1〜3個結合すると共に、アルキル基(R)が2〜0個結合しているものである。そして、この珪素原子には、残りの結合手を介して主鎖が結合している。ここで、アルコキシ基(OR′)としては、取り扱いの容易さ、入手の容易さ等の観点から、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基(すなわち、R′が炭素数1〜4のアルキル基)であることが好ましい。また、加水分解性基(OR′)の数としては、硬化速度を高めたい場合は3個(z=3)が好ましく、硬化物に柔軟性を付与したい場合は2個(z=2)又は1個(z=1)が好ましい。また、アルキル基(R)としては、メチル基やエチル基等の炭素数1〜10個のアルキル基が一般的に用いられる。
硬化性樹脂(A)の分子量は特に制限されないが、数平均分子量で1,000〜80,000が好ましく、1,500〜60,000がより好ましく、2,000〜40,000が特に好ましい。分子量が1,000を下回ると、架橋密度が高くなり過ぎることから得られる塗膜(硬化物)が脆い物性となる場合があり、分子量が80,000を上回ると、粘度が高くなり作業性が悪くなるため溶剤や可塑剤が多量に必要になるなど配合が制限される場合がある。
硬化性樹脂(A)の主鎖骨格としては、ポリオキシアルキレン、ビニル重合体(例えば、ポリアクリレート、ポリメタクリレート及びこれらの共重合体等)、飽和炭化水素重合体、不飽和炭化水素重合体、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリジメチルシロキサン等のシリコーン樹脂及び変成シリコーン樹脂に一般的に用いられている主鎖骨格から選ばれる1種以上の骨格が採用される。特に、本質的にポリオキシアルキレン及び/又はポリ(メタ)アクリル酸エステルであることが、入手の容易さや硬化物(接着剤皮膜)の物性の点から好ましく、特にはポリ(メタ)アクリル酸エステルであるものを含有すると、ポリエチレン樹脂又はポリプロピレン樹脂以外の種々の被着材に対して良好な密着性が発揮されるとともに、耐久性に優れた硬化物(接着剤皮膜)を形成することから好ましい。また、主鎖骨格がポリオキシアルキレンである場合には、主鎖が、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとの共重合体であると、接着剤皮膜の内部硬化性が高くなる傾向にあることから好ましい。ここで、「本質的に」とは、該構造がポリマー(A)の主鎖骨格である繰り返し単位の主要素であることを意味する。また、ポリマー(A)の中に該構造が単独で含まれていてもよいし、2種以上含まれていてもよい。本願では「アクリル酸」と「メタクリル酸」とを併せて「(メタ)アクリル酸」と表記することがある。
硬化性樹脂(A)の市販品としては、シリコーン樹脂又は変成シリコーン樹脂として多数販売されている。例えば、カネカ社製のサイリルシリーズ、カネカMSポリマーシリーズ、MAシリーズ、EPシリーズ、SAシリーズ、ORシリーズ、旭硝子社製のエクセスターシリーズ、デグサジャパン社製のシラン変性ポリアルファオレフィン、信越化学工業社製のKCシリーズ、KRシリーズ、X−40シリーズ、東亞合成社製のXPRシリーズ、綜研化学社製のアクトフローシリーズ等が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
また、本発明では、硬化性樹脂(A)として、分子内に架橋性珪素基を有し、かつ、分子内に特定の極性基を含有する硬化性樹脂を好適に用いることができる。ここで、特定の極性基とは、ウレタン結合基、チオウレタン結合基、尿素結合基、チオ尿素結合基、置換尿素結合基、置換チオ尿素結合基、アミド結合基、スルフィド結合基、ヒドロキシル基、第一級アミノ基、第二級アミノ基及び第三級アミノ基等の酸素原子、窒素原子、硫黄原子を含有する結合基又は官能基等を指す。このような極性基を架橋性珪素基の近傍に導入すると、後述する三フッ化ホウ素錯体(D)がより有効に働くため、硬化性樹脂の硬化能が発揮されやすいため好ましい。
特に、これらの特定極性基の中では、ウレタン結合基、チオウレタン結合基、尿素結合基、チオ尿素結合基、置換尿素結合基、置換チオ尿素結合基、アミド結合基、第一級アミノ基、第二級アミノ基及び第三級アミノ基等の含窒素極性基を有するものが好ましく、ウレタン結合基(−NHCOO−)、尿素結合基(−NHCONH−)、置換尿素結合基(−NHCONR"−;R"=有機基)を有するものであることが最も好ましい。
分子内に架橋可能な反応性珪素基を有し、かつ、分子内にこれらの特定極性基を含有する硬化性樹脂は、従来公知の方法で合成することができる。例えば、特許第3030020号公報記載の方法や、特開2005−54174号公報、特開2005−139452号公報、特表2005−501146号公報、WO2010/004948等に記載の方法が挙げられる。
[粘着付与樹脂(B)について]
本発明における粘着付与樹脂(B)は、本発明の湿気硬化型接着剤組成物の硬化皮膜に対して適度な粘着性を与え、ポリエチレン樹脂又はポリプロピレン樹脂の接着性を向上させる。粘着付与樹脂(B)としては、硬化性樹脂(A)と相溶するものを用いるのが好ましいが、特に限定することなく使用することができる。具体例としては、スチレン共重合体樹脂、テルペン系樹脂、石油系樹脂(例えば、C5炭化水素樹脂、C9炭化水素樹脂、C5・C9炭化水素共重合樹脂等及びこれらの水添樹脂)、ロジンエステル系樹脂及びこれらの水添樹脂、フェノール樹脂、変性フェノール樹脂(例えば、カシューオイル変性フェノール樹脂、ロジンフェノール樹脂、重合ロジン、重合ロジンエステル、トール油変性フェノール樹脂等)、テルペンフェノール樹脂、キシレン−フェノール樹脂、シクロペンタジエン−フェノール樹脂、クマロンインデン樹脂、DCPD樹脂、キシレン樹脂、低分子量ポリスチレン系樹脂等が挙げられる。
これらの中でも、硬化性樹脂(A)との相溶性に優れることによりさらに一段の密着性が得られるため、スチレン共重合体樹脂、テルペン系樹脂、石油系樹脂、ロジンエステル系樹脂からなる群から選ばれる1種以上であるのが好ましい。また、さらに透明な接着剤硬化皮膜が得られることからこれらの中でもスチレン共重合体樹脂を用いるのが特に好ましい。これらは単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
常温で固形の粘着付与樹脂を用いる場合には、硬化性樹脂(A)や他の液状成分とともに加熱溶融させながら混練することで均一な湿気硬化型接着剤組成物を得ることができる。溶剤等で粘着付与樹脂(B)を溶解して、硬化性樹脂(A)等と混練後、溶剤を除去しても構わないが、より環境に優しい無溶剤型の湿気硬化型接着剤組成物が得られることから、前者の加熱溶融による製造方法のほうが好ましい。また、製造方法の観点から、粘着付与樹脂(B)の融点としては80〜150℃(好ましくは100〜120℃)の常温固体状の粘着付与樹脂を用いるのが好ましい。常温液状又は半固形の粘着付与樹脂を用いると、接着剤皮膜の硬化後にブリードアウト(滲み出し)等の問題を生じることがある。
さらに、粘着付与樹脂(B)としては、分子構造内に酸基を持たないものが好ましい。これは、粘着付与樹脂が酸基を有していると、後述する三フッ化ホウ素錯体(D)の硬化促進効果を阻害してしまうことがあるためである。
粘着付与樹脂(B)の配合割合は、硬化性樹脂(A)100質量部に対して10〜70質量部(特に好ましくは20〜50質量部)である。粘着付与樹脂の含有量が10質量部未満であると、ポリエチレン樹脂又はポリプロピレン樹脂への接着性が不十分となることがあり、70質量部を越えると硬化性樹脂(A)の割合が相対的に減少するために硬化速度が損なわれたり、硬化皮膜の耐熱性が低下したりする傾向にある。
[反応性希釈剤(C)について]
本発明における反応性希釈剤(C)は、分子量1000未満のアルキルアルコキシルシラン化合物又はアリールアルコキシルシラン化合物である。反応性希釈剤(C)を配合することによって、ポリエチレン樹脂又はポリプロピレン樹脂への接着性や硬化速度を損なうことなく、低粘度の接着剤組成物が得られる。なお、本発明における反応性希釈剤(C)は、その分子内に、アルコキシシリル基以外の反応性基(すなわち、アミノ基、エポキシ基、ビニル基、イソシアネート基、メルカプト基)を含有しないものである。
反応性希釈剤(C)としては、上記一般式(1)で表される化合物であると、特にポリエチレン樹脂又はポリプロピレン樹脂への接着性や硬化速度を損なうことなく、低粘度の接着剤組成物が得られることから好ましい。
上記一般式(1)で表される化合物としては、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン等が挙げられるが、これらの限定されるものではない。
反応性希釈剤(C)は市販品を用いてもよい。このような市販品としては、例えば、KBM13、KBM22、KBM103、KBM202SS、KBE13、KBE22、KBE103,KBE202、KBM3063、KBM3033、KBE3063、KBM3103、KBM3103C(以上、信越化学工業社製商品名)、Z−6187、Z−6265、Z−6582(以上、ダウコーニング社製商品名)、Dynasylan9116、Dynasylan9165、Dynasylan9265(以上、エボニック社製商品名)等がある。
反応性希釈剤(C)の配合割合は、硬化性樹脂(A)100質量部に対して0.5〜20質量部(特に好ましくは2〜10質量部)である。反応性希釈剤の含有量が0.5質量部未満であると、希釈効果が十分でなく湿気硬化型接着剤組成物自体の粘度が高くなってしまい作業性に劣ることがあり、20質量部を越えるとポリエチレン樹脂又はポリプロピレン樹脂への接着性が不十分となったり、硬化性樹脂(A)の割合が相対的に減少するために硬化速度が損なわれたりすることがある。
[三フッ化ホウ素錯体(D)について]
本発明における三フッ化ホウ素錯体(D)は、三フッ化ホウ素とルイス塩基との錯体化合物であり、硬化性樹脂(A)に含まれる架橋性珪素基を縮合反応させることで、硬化性樹脂(A)を硬化させる触媒化合物である。上記三フッ化ホウ素錯体(D)の具体例としては、例えば、三フッ化ホウ素のアミン錯体、アルコール錯体、エーテル錯体、チオール錯体、スルフィド錯体、カルボン酸錯体、水錯体等が例示される。上記三フッ化ホウ素錯体の中では、入手の容易さ及び配合のしやすさから、アルコール錯体又はアミン錯体が好ましく、特に、安定性と触媒活性を兼ね備えたアミン錯体が最も好ましい。
上記三フッ化ホウ素のアミン錯体に用いられるアミン化合物としては、アンモニア、モノエチルアミン、トリエチルアミン、ピペリジン、アニリン、モルホリン、シクロヘキシルアミン、n−ブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、グアニジン、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、N−メチル−3,3′−イミノビス(プロピルアミン)、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンジアミン、ペンタエチレンジアミン、1,2−ジアミノプロパン、1,3−ジアミノプロパン、1,2−ジアミノブタン、1,4−ジアミノブタン、1,9−ジアミノノナン、ATU(3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン)、CTUグアナミン、ドデカン酸ジヒドラジド、ヘキサメチレンジアミン、m−キシリレンジアミン、ジアニシジン、4,4′−ジアミノ−3,3′−ジエチルジフェニルメタン、ジアミノジフェニルエーテル、3,3′−ジメチル−4,4′−ジアミノジフェニルメタン、トリジンベース、m−トルイレンジアミン、o−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、メラミン、1,3−ジフェニルグアニジン、ジ−o−トリルグアニジン、1,1,3,3−テトラメチルグアニジン、ビス(アミノプロピル)ピペラジン、N−(3−アミノプロピル)−1,3−プロパンジアミン、ビス(3−アミノプロピル)エーテル、ハンツマン社製ジェファーミン等の複数の第一級アミノ基を有する化合物、ピペラジン、シス−2,6−ジメチルピペラジン、シス−2,5−ジメチルピペラジン、2−メチルピペラジン、N,N′−ジ−t−ブチルエチレンジアミン、2−アミノメチルピペリジン、4−アミノメチルピペリジン、1,3−ジ−(4−ピペリジル)−プロパン、4−アミノプロピルアニリン、ホモピペラジン、N,N′−ジフェニルチオ尿素、N,N′−ジエチルチオ尿素、N−メチル−1,3−プロパンジアミン等の複数の第二級アミノ基を有する化合物、更に、メチルアミノプロピルアミン、エチルアミノプロピルアミン、エチルアミノエチルアミン、ラウリルアミノプロピルアミン、2−ヒドロキシエチルアミノプロピルアミン、1−(2−アミノエチル)ピペラジン、N−アミノプロピルピペラジン、3−アミノピロリジン、1−o−トリルビグアニド、2−アミノメチルピペラジン、N−アミノプロピルアニリン、エチルアミンエチルアミン、2−ヒドロキシエチルアミノプロピルアミン、ラウリルアミノプロピルアミン、2−アミノメチルピペリジン、4−アミノメチルピペリジン、式HN(CNH)H(n≒5)で表わされる化合物(商品名:ポリエイト、東ソー社製)、N−アルキルモルホリン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7、6−ジブチルアミノ−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン−5、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、ピリジン、N−アルキルピペリジン、1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン、7−メチル−1,5,7
−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン等の複環状第三級アミン化合物等の他、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、4−アミノ−3−ジメチルブチルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−3−[アミノ(ジプロピレンオキシ)]アミノプロピルトリエトキシシラン、(アミノエチルアミノメチル)フェネチルトリエトキシシラン、N−(6−アミノヘキシル)アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−11−アミノウンデシルトリエトキシシラン等のアミノシラン化合物が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。上記三フッ化ホウ素のアミン錯体は、市販されており本発明ではそれらを用いることができる。上市販品としては、エアプロダクツジャパン株式会社製のアンカー1040、アンカー1115、アンカー1170、アンカー1222、BAK1171等が挙げられる。
上記三フッ化ホウ素錯体(D)は、所望の硬化速度等を得るために適宜選択すればよい。また、上記三フッ化ホウ素錯体(D)は1種単独で使用してもよいし2種以上併用してもよい。上記三フッ化ホウ素錯体(D)の配合量としては、硬化性樹脂(A)100質量部に対して、0.01〜10質量部が好ましく、0.05〜5.0質量部がより好ましく、0.1〜2.0質量部が特に好ましい。0.01質量部を下回ると硬化促進効果が十分ではない場合があり、10質量部を上回ると貯蔵安定性が悪くなるなどの問題が起こる場合がある。
[その他の成分]
本発明に係る湿気硬化型接着剤組成物には、本発明の効果(ポリエチレン樹脂又はポリプロピレン樹脂の接着性、低粘度、透明性等)を損なわない範囲においてその他の成分として従来公知の任意の化合物乃至物質を配合することができる。例えば、本発明で用いる硬化性樹脂(A)以外の各種の樹脂(例えば、エポキシ樹脂、アクリル系樹脂等)、三フッ化ホウ素錯体(D)以外の硬化触媒、接着性付与成分(例えば、塩素化ポリオレフィン樹脂、アミノシラン化合物、エポキシシラン化合物、メルカプトシラン化合物、(メタ)アクリルシラン化合物、イソシアネートシラン化合物、ビニルシラン化合物等のシランカップリング剤等)、親水性又は疎水性シリカ系粉体、アクリル樹脂粉末、炭酸カルシウム等の充填剤、アマイドワックス等の揺変剤、酸化カルシウム等の脱水剤、希釈剤、可塑剤、難燃剤、オリゴマー、老化防止剤、紫外線吸収剤、顔料、乾性油等を配合することができる。
上記その他の硬化触媒としては、有機スズ化合物を用いることもできるが、その場合にはその含有量は湿気硬化型接着剤組成物全質量部に対して0〜1000ppm未満とすることが、昨今の有機スズ化合物の規制の面からは好ましい。
また、従来ポリエチレン樹脂又はポリプロピレン樹脂に対する接着性付与成分として用いられている塩素化ポリオレフィン樹脂を配合する場合には、その配合量は硬化性樹脂(A)100質量部あたり0.01〜0.1質量部程度でよい。配合量が多すぎると脱塩酸の問題があるとともに、硬化皮膜が着色することから不具合を生じることがある。
さらに、透明な湿気硬化型接着剤組成物を得るためには、上記充填剤を配合しない、又は、シリカ系粉末又はアクリル樹脂粉末等の透明に影響を与えづらい充填剤を少量配合する。
[湿気硬化型接着剤組成物について]
本発明に係る湿気硬化型接着剤組成物は、水分の存在下で、架橋性珪素基同士が縮重合することによって硬化するものである。したがって、1液性の組成物として使用する場合、保管乃至搬送中は、空気(空気中の水分)と接触しないよう、気密に密封した状態で取り扱われる。そして、使用時には開封して任意の箇所に適用すれば、空気中の水分と接触して反応硬化する。2液性の湿気硬化型接着剤組成物として使用する場合は、少なくとも上記硬化性樹脂(A)と上記三フッ化ホウ素錯体(D)とを別々に供給し、使用時にこれらを混合することで、上述の湿気硬化反応が進行し硬化する。
本発明の湿気硬化型接着剤組成物の製造方法として一例を挙げれば、混合撹拌機がついた密閉式容器に硬化性樹脂(A)、粘着付与樹脂(B)、必要に応じて充填剤等を所定量秤量し、減圧状態で加熱しながら混合し、材料中の水分を除去した後、反応性希釈剤(C)、三フッ化ホウ素錯体(D)、接着性付与成分等のその他の成分を添加して均一になるまで撹拌混合することで得られる。上記の製造工程においては、上述のとおり湿気硬化型接着剤組成物は水分の存在下で架橋性珪素基同士が縮重合反応を起こすため、窒素気流下又は減圧下で撹拌混合することが好ましい。また、本発明の粘着付与樹脂(B)は、上述のとおり常温で固形状のものを用いるのが好ましいから、粘着付与樹脂(B)を予め有機溶剤等の溶媒に溶解して混合後不要な溶媒を除去する方法によっても製造できる。しかし、硬化性樹脂(A)に粘着付与樹脂(B)を配合したものを加熱脱水することにより、粘着付与樹脂の溶融と均質混合とを同時に行う方法であると、溶媒の除去工程を省略し、いわゆる無溶剤形の湿気硬化型接着剤組成物が得られることから好ましい。
また、本発明に係る湿気硬化型接着剤組成物は、その硬化皮膜が透明であることが好ましい。被着材であるポリエチレン樹脂又はポリプロピレン樹脂を用いた成形品は、その多くが透明乃至半透明で用いられることがあるため、湿気硬化型接着剤組成物自体も透明であることが意匠性の面からも好まれるためである。
ここで、本発明における「透明」について説明する。本発明においては「透明」と「光透過性」とをほぼ同意義のものとして用いる。「光透過性」とは、ある部材が光を透過する性質のことであり、光を100%近く透過する透明状態と、光を透過する度合いが0%より高く100%未満である半透明状態とを含むものである。特に本発明では、透明乃至半透明のポリエチレン樹脂又はポリプロピレン樹脂を接着した際に接着部分や、接着後のはみ出し部の硬化皮膜が、その意匠性を損なわない程度(硬化皮膜について使用者がその存在が気にならない程度)に光を透過する性質を意味する。本明細書においては、光透過性とは、透明状態、半透明状態、意匠性を損なわない程度に光を透過する性質、などを含むものとして用いる。
透明性を評価する一つの指針としてHAZE(ヘイズ)値を用いてもよい。HAZE値とは視覚的な透明性・曇りの度合を表す値であり、ある試験片(通常はフィルム状)に可視光を照射したときの拡散光線透過率を全光線透過率で割ったものを百分率で表したもの(下式)で、数値が小さいほど透明性が高い事を示す。
HAZE(%)=([拡散透過率]/[全光線透過率])×100
HAZE値の測定は、例えば日本電色工業株式会社製の色彩・濁度同時測定器「COH−400」を用いて測定すれば容易に得ることができる。例えば、樹脂の製法や成形条件にもよるがポリエチレン樹脂(フィルム)のHAZE値は一般的に2〜15%程度、ポリプロピレン樹脂(フィルム)のHAZE値は2〜5%程度である。
本発明の湿気硬化型接着剤組成物は、該湿気硬化型接着剤組成物の硬化皮膜(厚さ3mm)のHAZE値が30以下(特に好ましくは20以下)であることが好ましい。HAZE値が30を上回ると、透明乃至半透明のポリエチレン樹脂又はポリプロピレン樹脂を接着した際に接着部分や、接着後のはみ出し部の硬化皮膜が、その意匠性を損なうことがある。
[被接着材料について]
被着材であるポリエチレン樹脂又はポリプロピレン樹脂としては、従来公知の高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、超低密度ポリエチレン(VLDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超高分子量ポリエチレン(UHMW−PE)、アイソタクチックポリプロピレン、シンジオタクチックポリプロピレン、アタクチックポリプロピレン、エチレンとプロピレンとのブロックコポリマー、ランダムコポリマー(エチレンとの共重合体、ブテン−1との二元共重合体、エチレン/ブテン−1との三元共重合体(ターポリマー))が例示される。本発明の湿気硬化型接着剤組成物は、これらのポリエチレン樹脂又はポリプロピレン樹脂を接着するために用いられるものである。
以下、本発明を実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。本発明の湿気硬化型接着剤組成物は、硬化性樹脂(A)、粘着付与樹脂(B)、反応性希釈剤(C)及び三フッ化ホウ素錯体(D)を含有することにより、従来難接着材料として捉えられてきたポリエチレン樹脂又はポリプロピレン樹脂に対する接着性に優れた接着剤組成物が得られ、しかもこれらの樹脂への接着性や硬化速度を損なうことなく低粘度で、さらにはより安全性が高く、透明な接着剤硬化皮膜が得られるとの知見に基づくものとして捉えられるべきものである。
[原料の準備]
湿気硬化型接着剤組成物を調製するにあたって、以下の原料を準備した。
・硬化性樹脂(A):
反応容器内で、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン(206.4質量部)を窒素雰囲気下室温で撹拌しながら、アクリル酸メチル(172.2質量部、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシランに対して2モル当量)を1時間かけて滴下し、さらに50℃で7日間反応させることで、分子内にメチルジメトキシシリル基及び第二級アミノ基を有するシラン化合物SE−1を得た。
別の反応容器内で、PMLS4012(旭硝子株式会社製商品名、ポリオキシプロピレンポリオール、数平均分子量10,000、100質量部)、イソホロンジイソシアネート(4.83質量部)及びニッカオクチックスジルコニウム12%(T)(日本化学産業株式会社製商品名、2−エチルヘキサン酸ジルコニル化合物溶液(Zr含有率=約12質量%)、PMLS4012に対してジルコニウム金属換算で20ppm)を仕込み、窒素雰囲気下にて撹拌混合しながら、80℃で3時間反応させることで、主鎖がオキシアルキレン重合体でありその分子内にイソシアネート基を有するウレタン系樹脂U−1を得た。
さらに、上記シラン化合物SE−1(8.39質量部)を添加し、窒素雰囲気下にて撹拌混合しながら、上記ウレタン系樹脂U−1中のイソシアネート基と上記シラン化合物SE−1中の第二級アミノ基とを80℃で1時間反応させることで、主鎖がオキシアルキレン重合体でありその分子内にウレタン基、活性水素が1個置換されたウレア基、及び、メチルジメトキシシリル基を有する硬化性樹脂(A−1)を得た。反応終了後、IR測定を行ったところイソシアネート基に帰属される特性吸収(2265cm−1)は観測されなかった。
・粘着付与樹脂(B):
粘着付与樹脂(B)として、「FTR8120」(三井化学株式会社製商品名/スチレン共重合体樹脂/軟化点120℃)、「KRISTALEX1120」(イーストマンケミカル社製商品名/α−メチルスチレン系共重合体樹脂/軟化点120℃)を準備した。
・反応性希釈剤(C):
反応性希釈剤(C)として、「KBM202SS」(信越化学工業株式会社製商品名/ジフェニルジメトキシシラン)、「KBM103」(信越化学工業株式会社製商品名/フェニルトリメトキシシラン)、「KBM3063」(信越化学工業株式会社製商品名/ヘキシルトリメトキシシラン)、「Z−6187」(ダウコーニング社製商品名/シクロヘキシルメチルジメトキシシラン)を準備した。
・三フッ化ホウ素錯体(D):
三フッ化ホウ素錯体(D)として、三フッ化ホウ素モノエチルアミン錯体(BF3−MEAと略す場合がある)を準備した。
・その他成分:
その他の成分として、「KBM903」(信越化学工業株式会社製商品名/3−アミノプロピルトリメトキシシラン/シランカップリング剤)、「メザモール」(LANXESS株式会社製商品名/アルキルスルフォン酸フェニルエステル/可塑剤)、「スーパークロン814HS」(日本製紙ケミカル株式会社製商品名/塩素化ポリオレフィン樹脂)、JR600E(テイカ株式会社製商品名/酸化チタン粉末)を準備した。
[湿気硬化型接着剤組成物の調製]
(実施例1〜15、比較例1〜3)
表1〜3に示す配合割合(質量部)で、硬化性樹脂(A)、粘着付与樹脂(B)、配合しているものでは酸化チタン粉末を撹拌機付きの密閉式反応容器(プラネタリーミキサー)に投入し、常温常圧で10分間混練りした。その後、60mmHg以下の減圧下、100〜120℃で加熱しながら1時間撹拌混合した。これを冷却しながらさらに撹拌混合を1時間続け、窒素にて解圧後、得られたペースト状スラリーに対して反応性希釈剤(C)、三フッ化ホウ素錯体(D)、シランカップリング剤及び配合しているものでは可塑剤を添加し、湿気を遮断した密閉条件下で混練りすることで、湿気硬化型接着剤組成物を得た。得られた湿気硬化型接着剤組成物は、湿気を遮断する密閉容器に充填した。
[各種評価試験]
得られた各湿気硬化型接着剤組成物について、以下の各種評価を行った。結果は、処方とともに表1〜3に示している。
・粘度の測定:
各湿気硬化性樹脂組成物の粘度(回転数10回転/分)は、23℃±2℃の条件下でB型粘度計を用いて測定した。
・硬化速度の測定:
各湿気硬化性樹脂組成物の硬化性を比較した。硬化性の比較はタックフリー時間を用いて行った。タックフリー時間は、各硬化性樹脂組成物を23±2℃相対湿度50±5%の雰囲気に暴露した直後を開始時間とし、表面に硬化皮膜が形成されるまでの時間とした。硬化皮膜が形成された時間は、指触により暴露された各湿気硬化性樹脂組成物の表面を触って指に各湿気硬化性樹脂組成物がつかなくなる時間とした。
・HAZE値の測定:
1mm厚のアクリル板に、3mm厚で樹脂組成物を充填し、23±2℃相対湿度50±5%の雰囲気下で7日養生した後、色彩・濁度同時測定器「COH−400」(日本電色工業株式会社製)を用いて測定したHAZE値を「HAZE値(%)」とした。硬化後のHAZE値が30以下であれば実用上十分な透明性を有しているものと判断できる。
・接着強さの測定:
幅25mm×長さ150mm×厚さ3mmのポリプロピレン板(新神戸電機製/神戸ポリシートPP−007)をアルコール拭きにより脱脂した。その後、当該ポリプロピレン板及び帆布(ポスコ株式会社製/チェリーダイア9号綿帆布)の双方に塗布量130g/m(=0.013g/cm)で接着剤を塗布した後直ちにはり合わせて圧締し、23±2℃相対湿度50±5%の雰囲気下で7日間養生した。得られた試験体をはく離速度200mm/分で180度方向に帆布を引っ張り、180度はく離試験を行い、はく離接着強さの平均値を測定した。得られた接着強さの平均値が5N/25mm以上であれば実用上十分な接着強さを有しているものと判断できる。
表1に示すように、本発明の構成要素を備えた湿気硬化型接着剤組成物(実施例1〜7)は、ポリプロピレン樹脂に対して実用上十分な接着強さを有するとともに、硬化速度、粘度ともに実用上問題ない接着剤組成物となっている。また、有機スズ化合物や揮発性溶剤を含有しないことからより安全性が高く、実用上十分な透明な接着剤硬化皮膜が得られることもわかる。
表2に示すように、本発明の構成要素を備えた湿気硬化型接着剤組成物(実施例8〜15)は、ポリプロピレン樹脂に対して実用上十分な接着強さを有するとともに、硬化速度、粘度ともに実用上問題ない接着剤組成物となっている。
表3に示すように、本発明の構成要素を欠く湿気硬化型接着剤組成物(比較例1〜3)は、ポリプロピレン樹脂への接着強さが低かったり、粘度が高くて作業性が悪い等の不具合が見られる。
本発明に係る湿気硬化型接着剤組成物は、ポリエチレン樹脂又はポリプロピレン樹脂の接着性に優れた接着剤組成物であって、これらの樹脂への接着性や硬化速度を損なうことなく、低粘度の接着剤組成物が得られることから産業上非常に有用である。

Claims (8)

  1. 架橋性珪素基を分子内に有する硬化性樹脂(A)、粘着付与樹脂(B)、分子量1000未満のアルキルアルコキシルシラン化合物又はアリールアルコキシルシラン化合物である反応性希釈剤(C)及び三フッ化ホウ素錯体(D)を含有することを特徴とする、ポリエチレン樹脂及び/又はポリプロピレン樹脂を接着するための湿気硬化型接着剤組成物。
  2. 上記反応性希釈剤(C)が、下記一般式(1)で表される化合物であることを特徴とする、請求項1に記載の湿気硬化型接着剤組成物。
    SiR (OR4−n ・・・ (1)
    ただし、Rは炭素数1〜8の分岐していてもよい直鎖状又は環状のアルキル基若しくはフェニル基であり、Rはメチル基又はエチル基であり、nは1又は2である。
  3. 上記粘着付与樹脂(B)が、スチレン共重合体樹脂、テルペン系樹脂、石油系樹脂、ロジンエステル系樹脂からなる群から選ばれる1種以上であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の湿気硬化型接着剤組成物。
  4. 上記硬化性樹脂(A)100質量部に対して、上記反応性希釈剤(C)を0.5〜20質量部含有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の湿気硬化型接着剤組成物。
  5. 上記硬化性樹脂(A)100質量部に対して、上記粘着付与樹脂(B)を10〜70質量部含有することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の湿気硬化型接着剤組成物。
  6. 湿気硬化型接着剤組成物の硬化皮膜(厚さ3mm)のHAZE値が30以下であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の湿気硬化型接着剤組成物。
  7. 請求項1〜6のいずれか一項に記載の湿気硬化型接着剤組成物の硬化物が接着剤層を構成し、被接着材料がポリエチレン樹脂又はポリプロピレン樹脂である被接着物。
  8. 請求項1〜6のいずれか一項に記載の湿気硬化型接着剤組成物を用いた、ポリエチレン樹脂又はポリプロピレン樹脂の接着方法。
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