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JP2012037683A - 光学部材及びこれを備えた液晶パネル並びに液晶表示装置 - Google Patents

光学部材及びこれを備えた液晶パネル並びに液晶表示装置 Download PDF

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JP2012037683A JP2010176867A JP2010176867A JP2012037683A JP 2012037683 A JP2012037683 A JP 2012037683A JP 2010176867 A JP2010176867 A JP 2010176867A JP 2010176867 A JP2010176867 A JP 2010176867A JP 2012037683 A JP2012037683 A JP 2012037683A
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Takashi Shiraishi
貴志 白石
Hideki Hayashi
秀樹 林
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Sumitomo Chemical Co Ltd
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Sumitomo Chemical Co Ltd
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Abstract

【課題】集光フィルムと他の光学フィルムを貼合した後においてプリズム形状やレンズ形状の変形が少なく、得られる液晶パネルや液晶表示装置に輝度むらが生じにくい光学部材及びこれを備えた液晶パネル並びに液晶表示装置を提供する。
【解決手段】プリズム形状又はレンズ形状を表面に有する集光フィルム25と、偏光フィルム21とが貼合圧力を付与して積層された偏光板20であって、積層後における集光フィルム21の厚み分布において、最大膜厚み(Hmax)及び最小膜厚み(Hmin)の差(Hdif)が平均膜厚み(Have)に対して5%以下である。厚み分布を5%以下に抑えることで、輝度比を10%以下とし、輝度むらを大幅に抑制することができる。
【選択図】図2

Description

本発明は、光学部材及びこれを備えた液晶パネル並びに液晶表示装置に関し、特に、プリズム状又はレンズ状の集光フィルムを備えた光学部材及びこれを備えた液晶パネル並びに液晶表示装置に関する。
液晶表示装置は、消費電力が少ない、低電圧で動作する、軽量で薄型であるなどの特徴があるため、これらの特徴を生かして、各種の表示用デバイスに用いられている。特に、液晶テレビの市場拡大は著しく、また、低コスト化の要求も著しい。
通常の液晶表示装置は、冷陰極管やLEDを用いた面光源素子、光拡散板、1つ又は複数の拡散シート、集光シート、液晶セルに偏光板が貼合された液晶パネルなどにより構成されている。近年、壁掛け可能な大画面液晶テレビ用途などにおいて、液晶表示装置の薄型化の要求が顕在化しているが、この場合、液晶表示装置の薄型化に対応して、これに使用する部材の薄肉化、部材点数削減が必要となる。
一般的な液晶表示装置では、偏光板とバックライトとの間にプリズムシート(「集光シート」ともいう)を配置することで、バックライトからの光を液晶セルに向けて輝度向上を図っている。しかしながら、偏光板とバックライトとの間にプリズムシートを設ける場合、プリズムシートと偏光板との接触を防止するために、これらの部材間に一定のスペースを設ける必要があった。このため、液晶パネルやこれを備えた液晶表示装置が厚くなるという不都合があった。
そこで従来、偏光板のバックライト側の表面に集光性プリズム構造を有する保護フィルム(以下、「集光フィルム」という)を設ける技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。この技術によれば、偏光板とは別にプリズムシートを設けたり、偏光板とプリズムシートとの間にスペースを設ける必要がないため、構成部品数を減らしたり、液晶表示装置を薄型化したりすることが可能となる。
ところで、保護フィルム等の樹脂フィルムが偏光フィルムに貼合された偏光板を製造する際、シート・トゥ・シート貼合やシート・トゥ・ロール貼合(ロール・トゥ・シート貼合ともいう)などの方式が用いられている。シート・トゥ・シート貼合方式は、偏光フィルムと樹脂フィルムをいずれも枚葉体にチップカットして貼合する方式である。一方、シート・トゥ・ロール貼合方式は、偏光フィルムと樹脂フィルムのうち一方がロール状フィルムで、もう一方のフィルムを枚葉体にチップカットしてこのロール状フィルムに貼合する方式である。
その他の方式として、ロール状の偏光フィルムとロール状の樹脂フィルムを貼合するロール・トゥ・ロール貼合方式も知られている。本発明の発明者らも、以前、ロール状の直線偏光板と、光学補償機能を発現する塗料を塗布したロール状の光学補償フィルムとを、それぞれの長手方向を略平行にしてロール・トゥ・ロール貼合方式で積層させる技術を開発している(例えば、特許文献2参照)。
このロール・トゥ・ロール貼合方式では、貼り合わせ部に気泡が入りこんで密着性が低下するなどの問題が生じやすい。そこで、長尺の光学フィルムにおいて幅方向中央の領域の厚みを幅方向両端の領域の厚みよりも厚くなるように、厚み分布を意図的に不均一とする技術が知られている(例えば、特許文献3参照)。このように厚み分布を不均一にすることで、ロール・トゥ・ロール貼合した際に貼り合わせ部に気泡が入りにくく、光学フィルム間の密着性が良好な樹脂フィルムを提供することが可能になる。
特開2005−17355号公報 特開2007−155970号公報 特開2006−175616号公報
上述したようなロール・トゥ・ロール貼合方式で偏光フィルムや位相差フィルムなどを貼合する場合、一般に、複数の光学フィルムを積層した状態で2つの貼合ロールで狭圧して貼合圧力を付加することで、2つのフィルムを接着させる。
しかしながら、上述したようなプリズム形状を有する集光フィルムの場合、表面にプリズム状やレンズ状の凹凸があることから、貼合ロールで貼合圧力を付与すると、プリズム形状やレンズ形状が潰れてしまうという不都合がある。特に、上述した特許文献3のように、長尺の光学フィルムに不均一な厚み分布をもたせる技術をそのまま集光フィルムに適用した場合、集光フィルムのうち厚みの大きい部分は貼合圧力が高すぎてプリズム形状やレンズ形状が潰れやすく、一方で厚みの小さい部分は貼合圧力が低いためプリズム形状やレンズ形状の潰れが少ない。このため、プリズム形状やレンズ形状が潰れて変形した領域については光抜けが発生し、その部分については暗くなり、その他の部分は明るくなり、輝度むらが発生するという問題がある。
本発明の目的は、プリズム状又はレンズ状の表面形状を有する集光フィルムを備えた光学部材であって、輝度むらが生じにくい光学部材を提供することである。
さらに、本発明の他の目的は、このような光学部材を用いて輝度むらが生じにくく光学特性が良好な液晶パネル及び液晶表示装置を提供することである。
発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、集光フィルムの厚み分布と輝度むらとの間に相関関係があり、集光フィルムの厚み分布を特定の値よりも小さくすることで、輝度むらを大幅に低下させることができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、上記課題は、本発明の光学部材によれば、プリズム形状又はレンズ形状を表面に有する集光フィルムと、他の光学フィルムとを貼合圧力を付与して積層した光学部材であって、前記積層後における前記集光フィルムの厚み分布において、最大膜厚み及び最小膜厚みの差が平均膜厚みに対して5%以下であることにより解決される。
また、前記集光フィルムの前記プリズム形状又は前記レンズ形状は、一つのプリズム又はレンズの斜面の終点から隣り合う次のプリズム又はレンズの斜面の始点に至る距離が、前記稜線のピッチ間隔に対して30%以下となるように形成されていることが好ましい。
なお、前記集光フィルムは、熱可塑性樹脂で構成されると好適である。
この場合、前記熱可塑性樹脂は、ポリプロピレン系樹脂からなることが好ましい。
さらにこの場合、前記ポリプロピレン系樹脂は、実質的にプロピレンの単独重合体からなると好適である。
あるいは、前記ポリプロピレン系樹脂は、10重量%以下のエチレンユニットを含有するプロピレンとエチレンとの共重合体からなるものでもよい。
また、前記集光フィルムは、活性エネルギー線硬化性樹脂で構成されると好適である。
さらにまた、前記光学部材のうち前記集光フィルム側の面とは反対側の面に、光学補償フィルム又は保護フィルムが積層されていることが好ましい。
また、前記集光フィルムの前記プリズム形状又は前記レンズ形状を有する面に、プロテクトフィルムを有すると好適である。
さらに、前記他の光学フィルムが偏光フィルムであり、前記光学部材が偏光板であることが好ましい。
また、液晶表示装置の液晶セルとバックライトとの間に配置されて用いられると好適である。
上記課題は、本発明の液晶パネルによれば、液晶セルと、上記のいずれかに記載の光学部材とが積層された液晶パネルであって、前記液晶セルと、前記他の光学フィルムと、前記集光フィルムとがこの順で積層されていることにより解決される。
上記課題は、本発明の液晶表示装置によれば、バックライトと、上記に記載の液晶パネルとが対向するように配置された液晶表示装置であって、前記液晶パネルは、前記集光フィルムの前記プリズム形状又は前記レンズ形状が前記バックライトに対向するように配置されていることにより解決される。
この場合、正面輝度分布が最大輝度に対して10%以内に収まると好適である。
本発明の光学部材によれば、貼合後における集光フィルムの厚み分布を5%以下とすることで、集光フィルムのプリズム形状やレンズ形状の変形を少なくし、輝度むらを抑制することが可能となる。また、本発明の液晶パネルや液晶表示装置によれば、輝度むらの少ない光学部材を備えることで、光学特性の優れた液晶パネルや液晶表示装置を提供することが可能となる。
厚み分布の異なる集光フィルムを示した断面模式図である。 本発明の一実施形態における偏光板の断面模式図である。 偏光板を用いた液晶パネル及び液晶表示装置の断面模式図である。 集光フィルムの斜視部分断面図である。 集光フィルムの断面模式図である。 偏光フィルムに集光フィルムを貼合する工程を示した断面模式図である。 実施例で使用した枚葉サンプルを撮像した写真である。 枚葉サンプルの厚み分布と輝度比の値を等高線状に示したグラフである。 枚葉サンプルの厚み分布と輝度比の関係を示したグラフである。
以下、本発明の一実施形態について、図を参照して説明する。なお、本発明は以下に説明する部材や配置等によって限定されず、これらの部材等は本発明の趣旨に沿って適宜改変することができる。以下、本発明の光学部材の一例として、偏光板を挙げて説明を行う。
本発明の光学部材は、集光フィルムと他の光学フィルムとを貼合ロールなどを用いて貼合圧力を付与して積層したものである。後述するように、本発明は、この積層後における集光フィルムの厚み分布を5%以下とすることを特徴としている。すなわち、図1で示す最大膜厚み(Hmax)と最小膜厚み(Hmin)の差(Hdif)が平均膜厚み(Have)に対して5%以下である。これにより、光学部材の輝度比を小さくし、輝度むらを少なくすることが可能となる。
なお、以下の説明では、まず偏光板(光学部材)や液晶パネルなどの全体構成と個別の構成について説明し、次にこれらの製造方法について説明する。そして、説明の後半で、本発明の特徴である積層後の集光フィルムの厚み分布と輝度むらとの関係について説明する。まず、光学部材の一例である偏光板やこれを用いて液晶パネルなどについて説明する。
<偏光板(光学部材)>
図2は、本発明の一実施形態における偏光板を示す図面であり、偏光板の断面模式図を示している。この図に示すように、偏光板20は、偏光フィルム21と、この偏光フィルム21の一方の面に積層され、プリズム形状又はレンズ形状を表面に有する集光フィルム25と、を少なくとも備えている。偏光板20は、本発明の光学部材に相当し、偏光フィルム21は他の光学フィルムに相当する。
本実施形態では更に、偏光フィルム21の面のうち集光フィルム25が積層される側とは反対側の面に透明樹脂フィルム23が積層された層構成を有している。なお、本発明において透明樹脂フィルム23は必須の構成要素ではない。
<液晶パネル及び液晶表示装置>
図3は、本発明の液晶パネル2及びこれを適用した液晶表示装置1の基本的な層構成の一例を示す概略断面図である。この図に示すように、偏光板20は、液晶セル40に貼合され、液晶パネル2の構成部品として用いられる。液晶パネル2は、液晶表示装置1の構成部材となる。液晶パネル2は、液晶セル40と、液晶セル40の背面側に貼合された偏光板20と、液晶セル40の視認側に貼合された偏光板30とにより構成されている。液晶表示装置1は、液晶パネル2と、バックライト10と、光拡散板50とにより構成される。液晶表示装置1において、液晶パネル2は、偏光板20がバックライト10側となるように、すなわち、集光フィルム25が光拡散板50と対向するように配置される。偏光板20と偏光板30は、それぞれ粘着剤層27を介して液晶セル40に貼合されている。ここで、背面側とは、液晶パネル2を液晶表示装置1に搭載した際のバックライト10側を意味する。また、視認側とは、液晶パネル2を液晶表示装置1に搭載した際のバックライト10とは反対側を意味する。
光拡散板50は、バックライト10からの光を拡散させる機能を有する光学部材であって、例えば、熱可塑性樹脂に光拡散剤である粒子を分散させて光拡散性を付与したもの、熱可塑性樹脂フィルムの表面に凹凸を形成して光拡散性を付与したもの、熱可塑性樹脂フィルムの表面に粒子が分散された樹脂組成物の塗布層を設け、光拡散性を付与したものなどであり得る。その厚みは、0.1〜5mm程度とすることができる。
光拡散板50と液晶パネル2との間には、輝度向上シート(反射型偏光フィルムである(「DBEF」など))、光拡散シートなど、他の光学機能性を示すシート又はフィルムを配置することもできる。他の光学機能性を示すシート又はフィルムは、必要に応じて2枚以上、複数種類配置することも可能である。以下に、背面側の偏光板20を構成する各フィルムについて説明する。
(1)偏光フィルム
偏光フィルム21は、自然光を直線偏光に変換する機能を有する部材である。偏光フィルム21としては、一軸延伸されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムに二色性色素を吸着配向させたものを用いることができる。ポリビニルアルコール系樹脂としては、ポリ酢酸ビニル系樹脂をケン化したものを用いることができ、ポリ酢酸ビニル系樹脂としては、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルのほか、酢酸ビニルとこれに共重合可能な他の単量体との共重合体などが例示される。酢酸ビニルに共重合可能な他の単量体としては、例えば、不飽和カルボン酸類、オレフィン類、ビニルエーテル類、不飽和スルホン酸類、アンモニウム基を有するアクリルアミド類などが挙げられる。
ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度は、通常85〜100モル%程度であり、好ましくは98モル%以上である。ポリビニルアルコール系樹脂は変性されていてもよく、例えば、アルデヒド類で変性されたポリビニルホルマールやポリビニルアセタールなども使用し得る。ポリビニルアルコール系樹脂の重合度は、通常1,000〜10,000程度であり、好ましくは1,500〜5,000程度である。
このようなポリビニルアルコール系樹脂を製膜したものが、偏光フィルム21の原反フィルムとして用いられる。ポリビニルアルコール系樹脂を製膜する方法は、特に限定されるものではなく、公知の方法で製膜することができる。ポリビニルアルコール系原反フィルムの厚みは特に限定されないが、例えば10〜150μm程度である。
偏光フィルム21は、通常、このようなポリビニルアルコール系樹脂フィルムを一軸延伸する工程、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを二色性色素で染色することにより二色性色素を吸着させる工程、二色性色素が吸着されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムをホウ酸水溶液で処理する工程、ホウ酸水溶液による処理後に水洗する工程、を経て製造される。
ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの一軸延伸は、二色性色素による染色の前、染色と同時、又は染色の後に行うことができる。一軸延伸を染色の後で行う場合には、この一軸延伸は、ホウ酸処理の前に行ってもよいし、ホウ酸処理中に行ってもよい。もちろん、ここに示した複数の段階で一軸延伸を行うこともできる。一軸延伸には、周速の異なるロール間で一軸に延伸する方法や、熱ロールを用いて一軸に延伸する方法などが採用できる。また、一軸延伸は、大気中で延伸を行う乾式延伸であってもよいし、水等の溶剤を用い、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを膨潤させた状態で延伸を行う湿式延伸であってもよい。延伸倍率は、通常3〜8倍程度である。
ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの延伸方向は、長尺状の偏光フィルム21の長手方向に平行な方向としている。このため、偏光フィルム21の吸収軸は、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの延伸方向、すなわち長尺状の偏光フィルム21の長手方向に平行な方向となる。
ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの二色性色素による染色は、例えば、二色性色素を含有する水溶液にポリビニルアルコール系樹脂フィルムを浸漬する方法により行うことができる。二色性色素として、具体的にはヨウ素や二色性染料が用いられる。なお、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムは、染色処理の前に水に浸漬して膨潤させる処理を施しておくことが好ましい。
二色性色素としてヨウ素を用いる場合は、通常、ヨウ素及びヨウ化カリウムを含有する水溶液に、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを浸漬して染色する方法が採用される。この水溶液におけるヨウ素の含有量は、水100重量部あたり、通常0.01〜1重量部程度であり、ヨウ化カリウムの含有量は、水100重量部あたり、通常0.5〜20重量部程度である。染色に用いる水溶液の温度は、通常20〜40℃程度である。また、この水溶液への浸漬時間(染色時間)は、通常20〜1,800秒程度である。
一方、二色性色素として二色性染料を用いる場合は、通常、水溶性二色性染料を含む水溶液に、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを浸漬して染色する方法が採用される。この水溶液における二色性染料の含有量は、水100重量部あたり、通常1×10−4〜10重量部程度であり、好ましくは1×10−3〜1重量部程度である。この水溶液は、硫酸ナトリウムなどの無機塩を染色助剤として含有していてもよい。染色に用いる二色性染料水溶液の温度は、通常20〜80℃程度である。また、この水溶液への浸漬時間(染色時間)は、通常10〜1,800秒程度である。
二色性色素による染色後のホウ酸処理は、染色されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムをホウ酸含有水溶液に浸漬することにより行うことができる。ホウ酸含有水溶液におけるホウ酸の含有量は、水100重量部あたり、通常2〜15重量部程度であり、好ましくは5〜12重量部程度である。二色性色素としてヨウ素を用いる場合、このホウ酸含有水溶液はヨウ化カリウムを含有することが好ましい。ホウ酸含有水溶液におけるヨウ化カリウムの含有量は、水100重量部あたり、通常0.1〜15重量部程度であり、好ましくは5〜12重量部程度である。ホウ酸含有水溶液への浸漬時間は、通常60〜1,200秒程度であり、好ましくは150〜600秒程度、更に好ましくは200〜400秒程度である。ホウ酸含有水溶液の温度は、通常50℃以上であり、好ましくは50〜85℃、より好ましくは60〜80℃である。
ホウ酸処理後のポリビニルアルコール系樹脂フィルムは、通常、水洗処理される。水洗処理は、例えば、ホウ酸処理されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムを水に浸漬することにより行うことができる。水洗処理における水の温度は、通常5〜40℃程度であり、浸漬時間は、通常1〜120秒程度である。
水洗後は乾燥処理が施されて、偏光フィルム21が得られる。乾燥処理は、熱風乾燥機や遠赤外線ヒーターを用いて行うことができる。乾燥処理の温度は、通常30〜100℃程度であり、好ましくは50〜80℃である。乾燥処理の時間は、通常60〜600秒程度であり、好ましくは120〜600秒である。
こうしてポリビニルアルコール系樹脂フィルムに、一軸延伸、二色性色素による染色とホウ酸処理が施され、偏光フィルム21が得られる。偏光フィルム21の厚みは、例えば2〜40μm程度とすることができる。
(2)集光フィルム
集光フィルム25は、後述するバックライト10から出射する光を液晶セル40に集光する輝度向上機能を有するとともに、偏光フィルム21を保護する保護機能も兼ねた部材である。集光フィルム25の一方の面は、プリズム状又はレンズ状の表面形状を有している。集光フィルム25は、バックライト10から斜めに出射する光をプリズム形状やレンズ形状の斜面の部分で変角し、液晶セル40に向けて反射することで、液晶セル40に集光している。
図2や図3に示すように、通常、集光フィルム25は、プリズム状又はレンズ状の表面形状を有する面とは反対側の面が偏光フィルム21に対向するように偏光フィルム21の上に積層された、所謂「下向きプリズム」が使用される。一方で、プリズム状又はレンズ状の表面形状を有する面が偏光フィルム21に対向するように配置される「上向きプリズム」も使用可能である。
このような上向きプリズムでは、プリズム形状又はレンズ形状の稜線R(プリズム形状又はレンズ形状の高さhが最も高い頂端部のなす線)で偏光フィルム21と接着剤などを用いて接着するが、偏光フィルム21の平面に対して線で接するため、ある程度接着力の高い接着剤を使用することが好ましい。また、プリズム形状又はレンズ形状の頂端部を平らにして偏光フィルム21と接着しやすくすることも可能であるが、平らな部分が広くなりすぎると、この平らな部分が暗くなり、液晶パネル2に筋状のしま模様ができて視認性が悪化するため、可能な限り線で接するようにすることが好ましい。
本発明において、「プリズム形状」とは、図4(a)に示すような三角形形状(ただし、一部に曲線を含んでいてもよい)を平行移動させた軌跡で示されるライン状の突起の複数を平行又は略平行に配置した形状を意味する。また、「レンズ形状」とは、図4(b)に示すような半円弧形状などの曲面から形成される凸形状(ただし、一部に直線を含んでいてもよい)を平行移動させた軌跡で示されるライン状の突起の複数を平行又は略平行に配置した形状を意味する。
図4(a)は、プリズム形状を表面に有する集光フィルム25(以下、プリズムシートともいう)の一例を示す斜視部分断面図である。また、図5(a)と(b)は、プリズム形状を表面に有する集光フィルム25の断面模式図である。プリズム形状の稜線Rのピッチ間隔P(隣り合うライン状突起の稜線R間の最短距離)は、1μm以上70μm以下が好ましく、10μm以上50μmがより好ましい。ピッチ間隔Pが70μmを超えると、液晶セル40のカラーフィルターが有する規則的なマトリックス構造との干渉により強いモアレが発生し、視認性が悪化する。また、ピッチ間隔Pが70μmを超える場合、相対的にライン状突起の高さhが高くなるため、シート部材の厚みが増し、偏光板20の薄型化の観点から好ましくない。一方、ピッチ間隔Pが1μm未満であると、光の回折が生じ、液晶表示装置1の視認性に悪影響を与える可能性がある。また、ピッチ間隔Pが1μm未満であるプリズムシートは、プリズム形状の成形が困難であり、製造上の観点から好ましくない。
プリズムシートが有するライン状突起において、断面三角形形状における頂点の角度(頂角θa)は、10〜120°以下の範囲とすることができるが、好ましくは30〜100°である。断面三角形形状のライン状突起の高さhは、例えば10〜200μmとすることができるが、好ましくは15〜100μmである。断面三角形形状における二辺は、同じ長さであってもよいし、異なる長さを有していてもよい。また、プリズムシートが有するライン状突起の高さhは、すべて同じであってもよいし、異なっていてもよい。
さらに、プリズムシートが有する複数のライン状突起は、図5(a)に示すように連続して配置されていてもよく、図5(b)に示すように一定の間隔を設けて配置されてもよい。図5(b)のように一定の間隔を空けてプリズム形状を配置する場合、1つのプリズムの斜面の終点から隣り合う次のプリズムの斜面の始点に至る距離Lが、プリズム形状の稜線Rのピッチ間隔Pに対して30%以下となることが好ましい。距離Lがピッチ間隔Pに対して30%を超えると、プリズムどうしの間隔が広くなりすぎるため、プリズム間を通過する光が多くなり、反対にプリズム形状又はレンズ形状の斜面で反射して液晶セル40に向かう光が少なくなる。このため、集光フィルム25により輝度向上機能が低下したり、プリズム間の領域とプリズム部分とで明暗のしま模様が生じたりするため好ましくない。なお、複数のライン状突起は、同じピッチ間隔Pで配置されることが好ましい。
図4(b)は、レンズ形状を表面に有する集光フィルム25(以下、レンズシートともいう)の一例を示す概略斜視図である。また、図5(c)は、レンズ形状を表面に有する集光フィルム25の断面模式図である。これらの図に示されるレンズシートを有するレンズ形状は、レンチキュラーレンズと呼ばれているものである。このようなレンズシートにおいても、上記と同様の理由から、レンズ形状の稜線Rのピッチ間隔P(隣り合うライン状突起の稜線R間の最短距離)は、1μm以上70μm以下が好ましく、10μm以上50μmがより好ましい。
レンズシートが有するライン状突起の高さhは、例えば5〜100μmとすることができる。ライン状突起の高さhは、すべて同じであってもよいし、異なっていてもよい。さらに、レンズシートが有する複数のライン状突起は、連続して配置されていてもよく、一定の間隔を設けて配置されてもよい。複数のライン状突起は、同じピッチ間隔Pで配置されることが好ましい。
集光フィルム25の厚みHは、特に制限されないが、例えば20μm以上200μm以下程度とすることができ、好ましくは30μm以上100μm以下である。ここでいう集光フィルム25の厚みHとは、集光フィルム25の一方の面を構成する平坦面(ライン状突起がある面とは反対側の面)からプリズム形状やレンズ形状における頂点までの最短距離を意味する。
また集光フィルム25は、JIS L 1096に準処して測定されるガーレ法剛軟度が300mgf以下であることが好ましく、より好ましくは250mgf以下である。このように、剛軟度が小さい集光フィルム25を使用することにより、得られる偏光板20の剛性が低減されるため、液晶セル40に貼合する際のハンドリング性を向上させることができる。
プリズム形状又はレンズ形状を表面に有する集光フィルム25は、熱可塑性樹脂にプリズム形状やレンズ形状を熱転写する製造方法や、樹脂フィルム状に紫外線などで硬化する活性エネルギー線硬化性樹脂でプリズム形状やレンズ形状を賦形する製造方法などが挙げられる。
前者の熱可塑性樹脂に熱転写する製造方法としては、例えば、以下の方法が挙げられる。まず、熱可塑性樹脂を溶融混練し、これをTダイからフィルム状に吐出する。続いて、プリズム状又はレンズ状の形状が刻設された転写型を備えたロール(以下、転写ロールとも称する)と、表面が平坦なロールとによってフィルム状シートを挟圧し、冷却固化することでフィルム状シートの表面にプリズム形状又はレンズ形状を形成する。この製造方法によれば、プリズム形状又はレンズ形状の稜線Rのピッチ間隔Pなど、突起形状が精密に制御されたシート部材を生産性良く製造することができる。
このような熱可塑性樹脂としては、透明性や透湿性、生産性の観点から、ポリプロピレン系樹脂等のオレフィン系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、メタクリル酸メチル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン系共重合体又はアクリロニトリル−スチレン共重合体を用いることが好ましい。このうち特に、ポリプロピレン系樹脂として、実質的にプロピレンの単独重合体からなる樹脂や、10重量%以下のエチレンユニットを含有するプロピレンとエチレンとの共重合体からなる樹脂などが挙げられる。熱可塑性樹脂は、必要に応じて、紫外線吸収剤や酸化防止剤、可塑剤等の添加剤を含有することができる。
また、後者の活性エネルギー線硬化性樹脂を使用した賦形による製造方法としては、例えば以下の方法が挙げられる。まず、ポリエステルフィルムなどのシート状基材を用意し、このシート状基材の表面にプリズム状又はレンズ状のパターンを形成した転写型を配置してシート状基材との間に活性エネルギー線硬化性樹脂を流し込む。そして、シート状基材を搬送しながらシート状基材側から活性エネルギー線を照射して樹脂組成物を硬化することで、シート状基材の表面にプリズム形状又はレンズ形状を形成する。
このような活性エネルギー線硬化性樹脂としては、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、エステル系(メタ)アクリレートなどのアクリレート系化合物や、ポリエンとポリチオールとからなるエンチオール系化合物などと、ラジカル性光重合開始剤とを含む樹脂組成物や、エポキシ化合物、オキセタン化合物、ビニルエーテル化合物などと、カチオン性光重合開始剤とを含む樹脂組成物などが挙げられる。この中で、特に、ウレタン(メタ)アクリレート化合物と、エステル系(メタ)アクリレート化合物と、ラジカル性光重合開始剤とを含む樹脂組成物が好ましい。
以上のような集光フィルム25は、市販品として容易に入手することができる。このような集光フィルム25の市販品としては、3M社の「BEF」や、三菱レイヨン(株)の「ダイヤアート」などが挙げられる。
集光フィルム25のうち偏光フィルム21と反対側の面には、プリズム状又はレンズ状の表面形状を保護する目的でプロテクトフィルム26を積層してもよい。プロテクトフィルム26は、保管、運搬などの過程で集光フィルム25の表面形状に損傷等が生じることを防止するための保護フィルムである。偏光フィルム21を液晶セル40に貼合して液晶パネル2を製造する際には、プロテクトフィルム26は集光フィルム25から剥離される。
プロテクトフィルム26を形成する樹脂材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体などが挙げられる。このうち特に、フィッシュアイが少なく、歩留まりが良好なポリエチレンテレフタレートが好ましい。
[プロテクトフィルム]
集光フィルム25をロール状に巻くにあたっては、そのプリズム状又はレンズ状の表面にプロテクトフィルム26を貼合し、使用時までそのプリズム状又はレンズ状の表面を保護しておくことが好ましい。このために用いられるプロテクトフィルム26は、一般に、基材フィルム26aの表面に粘着剤層26bが形成されたものであり、その粘着剤層26bが集光フィルム25のプリズム状又はレンズ状の表面と接触するように貼合される。
プロテクトフィルム26を構成する基材フィルム26aは、透明樹脂からなるものであれば特に限定されない。このような透明樹脂としては、例えば、ポリメタクリル酸メチルに代表されるアクリル系樹脂、ポリプロピレンやポリエチレンに代表されるオレフィン系樹脂、ポリブチレンテフタレートやポリエチレンテフタレートに代表されるポリエステル系樹脂などが挙げられる。特に、後述するゴム系粘着剤との密着性の観点からは、オレフィン系樹脂を基材フィルム26aとすることが好ましい。
基材フィルム26aの厚みは特に制限されないが、加工性の観点より10μm以上200μm以下の範囲とすることが好ましく、さらには15μm以上100μm以下、とりわけ20μm以上70μm以下の範囲とすることがより好ましい。基材フィルム26aの厚みがあまり小さいと、表面保護性や、集光フィルム25からプロテクトフィルム26を剥離するときの強度が不十分になりやすい。一方で、その厚みがあまり大きいと、取扱い性やコスト面で不利になりやすい。
[プロテクトフィルムを構成する粘着剤]
プロテクトフィルム26を構成する粘着剤層26bは、ゴム系粘着剤やアクリル系粘着剤など、公知の再剥離用粘着剤であることができる。特に、プリズム面への密着性の観点より、ゴム系粘着剤を採用することが好ましい。アクリル系粘着剤では、プリズム面への密着性が弱いため、集光フィルム25のプリズム状又はレンズ状の表面にプロテクトフィルム26を貼合したとき、プロテクトフィルム26に浮き剥がれを生じる可能性がある。
ゴム系粘着剤としては、例えば、天然ゴム又は合成ゴムを粘着剤成分とするもの、天然ゴム又は合成ゴムである二重結合を有するゴムにメタクリル酸メチル等のアクリル成分がグラフト重合された変性ゴムを粘着剤成分とするもの、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体又はその水素添加物のようなゴム弾性を示す共重合体を粘着剤成分とするものなどが挙げられる。
(3)透明樹脂フィルム
透明樹脂フィルム23は、偏光フィルム21の表面に貼合されるフィルムであり、液晶パネル2や液晶表示装置1に要求される特性に応じて種々の性質を有するフィルムを採用することができる。透明樹脂フィルム23の例としては、例えば偏光フィルム21の表面を保護するための保護フィルムや、液晶表示装置1の視野角特性の不具合を解消するための位相差フィルムなどを採用することができる。保護フィルムとしては、例えばヘイズ値が0.5%以下であり、かつ面内位相差値が30nm未満である無配向性フィルムを採用することができる。また、位相差フィルムとしては、面内位相差値が30〜200nmの範囲にあり、厚み方向位相差値が30〜350nmの範囲にある二軸性位相差フィルムを採用することができる。ここでいう面内位相差値R及び厚み方向位相差値Rthは、波長590nmにおける値であり、以下同様である。
透明樹脂フィルム23は、JIS L 1096に準処して測定されるガーレ法剛軟度が350mgf以下であることが好ましく、200mgf以下であることがより好ましく、更には150mgf以下であることが一層好ましい。このように、剛軟度が小さい透明樹脂フィルム23を使用することにより、得られる偏光板20の剛性が低減されるため、液晶セル40に貼合する際のハンドリング性を向上させることができる。
透明樹脂フィルム23を構成する樹脂材料は特に限定されない。このような樹脂材料の例としては、メタクリル酸メチル系樹脂等の(メタ)アクリル系樹脂〔(メタ)アクリル系樹脂とは、メタクリル系樹脂又はアクリル系樹脂を意味する〕、オレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、セルロース系樹脂、スチレン系樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン系共重合樹脂、アクリロニトリル・スチレン系共重合樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、変性ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリエステル系樹脂(例えば、ポリブチレンテレフタレート系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂等)、ポリスルホン系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、エポキシ系樹脂、オキセタン系樹脂を挙げることができる。これらの樹脂は、透明性や偏光フィルム21との接着性を阻害しない範囲で、添加物を含有することができる。
(3−1)二軸性位相差フィルム
透明樹脂フィルム23としては、上述したように位相差フィルムを採用することができる。このような位相差フィルムとしては、上述した樹脂材料からなる未延伸フィルムを延伸して位相差を発現させ、透明樹脂フィルム23としたものが挙げられる。また、液晶のような配向する材料を基材に塗工し、配向させることで位相差を発現させ、固定化することによって、位相差フィルムとする方法もある(例えば、特開2004−272202号公報の実施例4、又は特開2004−233872号公報の実施例3に記載の、透明支持体上に棒状液晶性化合物を含む光学異方性層を形成する方法)。特に、逐次二軸延伸により二軸方向の複屈折性を発現させたものが好ましい。このときの延伸倍率は、縦方向及び横方向のうち、光軸を発現させる方向(延伸倍率が大きい方向であって、遅相軸となる方向)で1.1〜10倍程度、それと直交する方向(延伸倍率が小さい方向であって、進相軸となる方向)で1.1〜7倍程度の範囲から、必要とする位相差値に合わせて、適宜選択すればよい。フィルムの横方向に光軸を発現させてもよいし、縦方向に光軸を発現させてもよい。かかる位相差特性が付与された酢酸セルロース系樹脂フィルムの市販品としては、KC4FR−1(コニカミノルタオプト(株)製)、KC4HR−1(コニカミノルタオプト(株)製)などが挙げられる。
次に、透明樹脂フィルム23の位相差値について説明する。フィルムの面内遅相軸方向の屈折率をn、面内進相軸方向(遅相軸と面内で直交する方向)の屈折率をn、厚み方向の屈折率をn、厚みをdとしたときに、面内位相差値R及び厚み方向位相差値Rthは、それぞれ下式(I)及び(II)で定義される。
=(n−n)×d (I)
th =[(n+n)/2−n]×d (II)
さらに、透明樹脂フィルム23は、その屈折率に関して、下式(III):
>n>n (III)
の関係を満たすものである。
本発明において、透明樹脂フィルム23には、面内位相差値Rが30〜200nmの範囲にあり、厚み方向位相差値Rthが30〜350nmの範囲にあるものを用いるが、この範囲から、適用される液晶表示装置1に要求される特性に合わせて、適宜位相差値を選択すればよい。面内位相差値Rは、好ましくは100nm以下であり、厚み方向位相差値Rthは、好ましくは80nm以上、200nm以下である。
面内位相差値Rの精度は、中心値±7nm以内、好ましくは中心値±5nm以内であり、厚み方向位相差値Rthの精度は、中心値±15nm以内、好ましくは中心値±10nm以内である。これらの値の精度が上記範囲を超えると、適用される液晶表示装置1の視覚特性が低下する傾向にある。
透明樹脂フィルム23におけるフィルム面内の遅相軸角度は、実質的に0°又は90°である。この角度から遅相軸がずれると、偏光板20と偏光板30をクロスニコルの状態にしたときに光漏れが発生し、液晶表示装置1に適用したときに、正面コントラストなどの視覚特性が大幅に低下する傾向にある。また、遅相軸の精度は、中心値±0.7°以内であることが好ましく、中心値±0.5°以内であることがより好ましい。ここで光漏れとは、偏光フィルム21の二軸位相差フィルム23に対する軸精度、あるいは偏光板20の液晶セル40に対する軸精度が悪い場合、液晶表示装置1が黒表示するときに表示域全面から光が漏れる現象をいう。上記のように、透明樹脂フィルム23における遅相軸のずれを小さくし、したがって遅相軸と偏光フィルム21の吸収軸とのなす角度のずれも小さくすることにより、また液晶セル40の表裏両面に貼合される偏光板(偏光板20及び偏光板30)の軸精度を高め、両偏光板の吸収軸がなす角度の90°からのずれを小さくすることにより、光漏れを低減させることができる。
透明樹脂フィルム23を偏光フィルム21に接着するにあたり、両者の軸関係は、目的とする液晶表示装置1における視野角特性や色変化特性を考慮したうえで最適なものを選べばよい。正面コントラストが重要視される大型液晶テレビ用途においては、透明樹脂フィルム23の遅相軸と偏光フィルム21の吸収軸とが、略平行又は略直交の関係となるように配置することが多い。ここで、「略平行又は略直交」とは、完全に平行又は直交である場合のほか、±10°程度の範囲内で平行又は直交の関係からずれている場合を含む。角度のずれは、好ましくは±5°以内、より好ましくは±2°以内である。透明樹脂フィルム23の遅相軸と偏光フィルム21の吸収軸とは、完全に平行又は直交の関係にあることが好ましい。
(3−2)無配向性フィルム
透明樹脂フィルム23としては、上述したように保護フィルムを採用することができる。このような保護フィルムとしては、面内や厚み方向に実質的に位相差がない無配向性フィルムを採用することができる。無配向性フィルムとは、樹脂材料を膜状に製膜した、延伸されていない樹脂フィルム(未延伸フィルム)を意味する。
無配向性フィルムは、位相差を有していないため、二軸性位相差フィルムのように液晶表示装置1の視野角を広げる機能はないが、二軸性位相差フィルムのように延伸処理を行う必要がないため製造コストが低い。したがって、後述する二軸性位相差フィルムを2枚採用した場合と比較して、液晶表示装置1の製造コストをより低くすることができる。
また、無配向性フィルムは、延伸処理を行わないことで、膜厚が厚くなるため透明樹脂フィルム23のハンドリング性が良好になる。このような透明樹脂フィルム23は、上記樹脂組成物を製膜して得られた未延伸フィルム(原反フィルム)から得ることができる。
上述した樹脂材料は、任意の方法で製膜して未延伸フィルムとする。この未延伸フィルムは、透明で実質的に面内位相差がないものが好ましい。製膜方法としては、例えば、溶融樹脂を膜状に押し出して製膜する押出成形法、有機溶剤に溶解させた樹脂を平板上に流延した後で溶剤を除去して製膜する溶剤キャスト法などを採用することができる。
なお、厚み方向の位相差値Rthの観点では、透明樹脂フィルム23の厚みが薄いほうが、位相差値を低減できるため好ましい。具体的には、透明樹脂フィルム23の厚みは15〜45μmのものが好ましい。偏光板20のハンドリング性だけでなく、透明樹脂フィルム23自体のハンドリング性も考慮すると、35〜45μmのものがより好ましい。
(4)接着剤層
偏光フィルム21への集光フィルム25及び透明樹脂フィルム23の貼合、積層は、通常、図示しない接着剤層を介してなされる。偏光フィルム21の両面に設けられる接着剤層を形成する接着剤は、同種であってもよく、異種であってもよい。
速硬化性及びこれに伴う偏光板20の生産性向上の観点から、接着剤層を形成する好ましい接着剤の例として、活性エネルギー線の照射で硬化する活性エネルギー線硬化性接着剤を挙げることができる。このような活性エネルギー線硬化性接着剤の例として、例えば、紫外線や可視光などの光エネルギーで硬化する光硬化性接着剤が挙げられる。光硬化性接着剤としては、例えば、光硬化性エポキシ樹脂と光カチオン重合開始剤を含む硬化性組成物などを挙げることができる。特に、集光フィルム25としてポリプロピレン系樹脂が使用される場合、上述したとおりポリプロピレン系樹脂フィルムは透湿度が低いため、後述する水系接着剤を使用した場合に水抜けが悪く、接着剤の水分によって偏光フィルム21の損傷や偏光性能の劣化などを引き起こす場合がある。したがって、このような透湿度の低い樹脂フィルムを接着する場合には、光硬化性樹脂が好ましい。
また、接着剤として、接着剤層を薄くする観点から、水系接着剤、すなわち、接着剤成分を水に溶解した、又は接着剤成分を水に分散させた接着剤を用いることもできる。例えば、主成分としてポリビニルアルコール系樹脂又はウレタン樹脂を用いた水系組成物が、好ましい水系接着剤として挙げられる。
接着剤の主成分としてのポリビニルアルコール系樹脂は、部分ケン化ポリビニルアルコールや完全ケン化ポリビニルアルコールのほか、カルボキシル基変性ポリビニルアルコール、アセトアセチル基変性ポリビニルアルコール、メチロール基変性ポリビニルアルコール、アミノ基変性ポリビニルアルコールなどの、変性されたポリビニルアルコール系樹脂であってもよい。接着剤の主成分がポリビニルアルコール系樹脂である水系接着剤は、ポリビニルアルコール系樹脂の水溶液として調製されることが多い。水系接着剤中のポリビニルアルコール系樹脂の濃度は、水100重量部に対して、通常1〜10重量部程度であり、好ましくは1〜5重量部である。
主成分としてポリビニルアルコール系樹脂を含む水系接着剤には、接着性を向上させるために、グリオキザールや水溶性エポキシ樹脂などの硬化性成分又は架橋剤を添加することが好ましい。水溶性エポキシ樹脂としては、例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンのようなポリアルキレンポリアミンと、アジピン酸のようなジカルボン酸との反応で得られるポリアミドポリアミンに、エピクロロヒドリンを反応させて得られるポリアミドポリアミンエポキシ樹脂を挙げることができる。かかるポリアミドポリアミンエポキシ樹脂の市販品としては、住化ケムテックス(株)から販売されている「スミレーズレジン 650」及び「スミレーズレジン 675」、日本PMC(株)から販売されている「WS−525」などがあり、これらを好適に用いることができる。これら硬化性成分又は架橋剤の添加量は、ポリビニルアルコール系樹脂100重量部に対して、通常1〜100重量部であり、好ましくは1〜50重量部である。その添加量が少ないと、接着性向上効果が小さくなり、一方でその添加量が多いと、接着剤層が脆くなる傾向にある。
接着剤の主成分としてウレタン樹脂を用いる場合、適当な水系接着剤の例として、ポリエステル系アイオノマー型ウレタン樹脂とグリシジルオキシ基を有する化合物との混合物を挙げることができる。ここでいうポリエステル系アイオノマー型ウレタン樹脂とは、ポリエステル骨格を有するウレタン樹脂であって、その中に少量のイオン性成分(親水成分)が導入されたものである。かかるアイオノマー型ウレタン樹脂は、乳化剤を使用せずに直接、水中で乳化してエマルジョンとなるため、水系接着剤として好適である。ポリエステル系アイオノマー型ウレタン樹脂それ自体は公知である。例えば、特開平7−97504号公報には、フェノール系樹脂を水性媒体中に分散させるための高分子分散剤の例としてポリエステル系アイオノマー型ウレタン樹脂が記載されており、また特開2005−070140号公報及び特開2005−181817号公報には、ポリエステル系アイオノマー型ウレタン樹脂とグリシジルオキシ基を有する化合物との混合物を接着剤として、ポリビニルアルコール系樹脂からなる偏光フィルムにシクロオレフィン系樹脂フィルムを接合する形態が示されている。
偏光フィルム21の表面に、接着剤を用いて集光フィルム25と透明樹脂フィルム23を貼合する方法としては、従来公知の方法を用いることができる。例えば、流延法、マイヤーバーコート法、グラビアコート法、カンマコーター法、ドクタープレート法、ダイコート法、ディップコート法、噴霧法などにより、偏光フィルム21及び/又はこれに貼合されるフィルムの接着面に接着剤を塗布し、両者を重ね合わせる方法が挙げられる。流延法とは、被塗布物であるフィルムを、概ね垂直方向、概ね水平方向、又は両者の間の斜め方向に移動させながら、その表面に接着剤を流下して拡布させる方法である。
上記方法により接着剤を塗布した後、偏光フィルム21とそれに貼合されるフィルムとをニップロールなどにより挟んで貼合することにより両者が接合される。また、偏光フィルム21とそれに貼合されるフィルムとの間に接着剤を滴下した後、この積層体をロール等で加圧して均一に押し広げる方法も好適に使用することができる。この場合、ロールの材質としては金属やゴム等を用いることが可能である。さらに、偏光フィルム21とそれに貼合されるフィルムとの間に接着剤を滴下した後、この積層体をロールとロールとの間に通し、加圧して押し広げる方法も好ましくは採用される。この場合、これらのロールは同じ材質であってもよく、異なる材質であってもよい。
なお、乾燥あるいは硬化前における、ニップロール等を用いて貼り合わされた後の接着剤層の厚みは、5μm以下であることが好ましく、また0.01μm以上であることが好ましい。
偏光フィルム21及び/又はそれに貼合されるフィルムの接着表面には、接着性を向上させるために、プラズマ処理、コロナ処理、紫外線照射処理、フレーム(火炎)処理、ケン化処理などの表面処理を適宜施してもよい。ケン化処理としては、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムのようなアルカリの水溶液に浸漬する方法が挙げられる。
水系接着剤を介して接合された積層体は、通常、乾燥処理が施され、接着剤層の乾燥、硬化が行われる。乾燥処理は、例えば熱風を吹き付けることにより行うことができる。乾燥温度は、通常40〜100℃程度の範囲から選択され、好ましくは60〜100℃である。乾燥時間は、例えば20〜1,200秒程度である。乾燥後の接着剤層の厚みは、通常0.001〜5μm程度であり、好ましくは0.01μm以上、また好ましくは2μm以下、更に好ましくは1μm以下である。接着剤層の厚みが大きくなりすぎると、偏光板20の外観不良となりやすい。
乾燥処理の後、室温以上の温度で少なくとも半日、通常は1日以上の養生を施して十分な接着強度を得てもよい。かかる養生は、典型的には、ロール状に巻き取られた状態で行われる。好ましい養生温度は、30〜50℃の範囲であり、より好ましくは35℃以上、45℃以下である。養生温度が50℃を超えると、ロール巻き状態において、いわゆる「巻き締まり」が起こりやすくなる。なお、養生時の湿度は、特に限定されないが、相対湿度が0%RH〜70%RH程度の範囲となるように選択されることが好ましい。養生時間は、好ましくは1〜10日程度、より好ましくは2〜7日程度である。
一方、光硬化性接着剤を用いて偏光フィルム21とそれに貼合されるフィルムとを接合する場合には、これらのフィルムを接合後、活性エネルギー線を照射することによって光硬化性接着剤を硬化させる。活性エネルギー線の光源は特に限定されないが、波長400nm以下に発光分布を有する活性エネルギー線が好ましく、具体的には、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウェーブ励起水銀灯、メタルハライドランプ等が好ましく用いられる。
光硬化性接着剤への光照射強度は、該光硬化性接着剤の組成によって適宜決定され、特に限定されないが、重合開始剤の活性化に有効な波長領域の照射強度が0.1〜6000mW/cmであることが好ましい。該照射強度が0.1mW/cm以上である場合、反応時間が長くなりすぎず、6000mW/cm以下である場合、光源から輻射される熱及び光硬化性接着剤の硬化時の発熱による光硬化性エポキシ樹脂の黄変や偏光フィルム21の劣化を生じるおそれが少ない。光硬化性接着剤への光照射時間は、硬化させる光硬化性接着剤ごとに制御されるものであって特に限定されないが、上記の照射強度と照射時間との積として表される積算光量が10〜10000mJ/cmとなるように設定されることが好ましい。光硬化性接着剤への積算光量が10mJ/cm以上である場合、重合開始剤由来の活性種を十分量発生させて硬化反応をより確実に進行させることができ、10000mJ/cm以下である場合、照射時間が長くなりすぎず、良好な生産性を維持できる。なお、活性エネルギー線照射後の接着剤層の厚みは、通常0.001〜5μm程度であり、好ましくは0.01μm以上、更に好ましくは0.1μm以上である。
活性エネルギー線の照射によって光硬化性接着剤を硬化させる場合、偏光フィルム21の偏光度、透過率及び色相、並びに透明樹脂フィルム23及び集光フィルム25の透明性などの偏光板20の諸機能が低下しない条件で硬化を行うことが好ましい。
<偏光板の製造方法>
以下、図6を参照して偏光板20の製造方法の一実施形態を詳しく説明する。この製造方法では、偏光フィルム21の一方の面に、接着剤を介して集光フィルム25を貼合し、偏光フィルム21の他方の面に、接着剤を介して透明樹脂フィルム23を貼合して、偏光板20を製造する。偏光板20の製造方法は、原料フィルム搬送工程(A)と、貼合工程(B)と、硬化工程(C)とを備える。
原料フィルム搬送工程(A)では、偏光フィルム21が一定方向に搬送されるとともに、その一方の面に集光フィルム25が供給され、他方の面には透明樹脂フィルム23が供給される。原料フィルム搬送工程(A)の途中で、接着剤塗布装置12により、集光フィルム25の偏光フィルム21へ貼合される面に接着剤を塗布し、またもう一つの接着剤塗布装置13により、透明樹脂フィルム23の偏光フィルム21へ貼合される面に接着剤を塗布することができる。
貼合工程(B)は、集光フィルム25の外側(プリズム形状又はレンズ形状を有する面側)に接触する第1の貼合ロール15と、偏光フィルム21の外側に接触する第2の貼合ロール16とで、集光フィルム25/偏光フィルム21/透明樹脂フィルム23の積層体を挟みながら行われる。第1の貼合ロール15及び第2の貼合ロール16は、それぞれが接触するフィルムの搬送方向に回転しており、図中の曲線矢印は、その回転方向を示している。
硬化工程(C)は、上の貼合工程(B)で得られた積層体に、接着剤を硬化させるためのエネルギーを硬化装置18から供給し、偏光フィルム21と集光フィルム25の間、及び偏光フィルム21と透明樹脂フィルム23の間にある接着剤を硬化させるための工程である。これらの各工程について、順に説明を進めていく。
[原料フィルム搬送工程(A)]
原料フィルム搬送工程(A)では、ロール状に巻かれた偏光フィルム21から長尺状の偏光フィルム21が繰り出される。偏光フィルム21の一方の面側には、同じくロール状に巻かれた集光フィルム25から繰り出される長尺状の集光フィルム25が供給され、他方の面側には、ロール状に巻かれた透明樹脂フィルム23から繰り出される長尺状の透明樹脂フィルム23が供給される。
集光フィルム25、透明樹脂フィルム23の搬送速度は、その製造装置に適した値に定めればよく、特に制限されないが、通常、前の工程で製造され、搬送されてくる偏光フィルム21の搬送速度に合わせた速度とされる。偏光板20の品種や品質に制約されない限り、その搬送速度が大きいほうが貼合工程(B)において単位時間あたりにフィルムにかかる圧力が小さくなる。このため、集光フィルム25のプリズム形状又はレンズ形状が潰れにくく、光学特性が良好となる。また、搬送速度が大きいほうが、タクトタイムが速くなるため生産性の観点から好ましい。搬送速度としては、具体的には、例えば1〜100m/分程度に設定することができる。
それぞれのフィルムが搬送される方向は、搬送工程の最後に、集光フィルム25と透明樹脂フィルム23とで偏光フィルム21を挟むようになればよい。その途中段階では、例えば、偏光フィルム21の搬送方向に対して、集光フィルム25及び/又は透明樹脂フィルム23が、図示のように垂直に向かう方向へ搬送される部分があってもよいし、偏光フィルム21の搬送方向に対して、集光フィルム25及び/又は透明樹脂フィルム23が平行に搬送される部分があってもよい。また製造装置の配置上の制約がある場合には、集光フィルム25及び/又は透明樹脂フィルム23が、一旦偏光フィルム21の搬送方向と逆方向へ繰り出されてから、適当なロールによって偏光フィルム21の片面へ向かうように方向転換されて搬送されてもよいし、偏光フィルム21が搬送される横手方向から垂直方向を含む適当な角度で繰り出されてから、適当なロールによって偏光フィルム21の片面へ向かうように方向転換されて搬送されてもよい。
[プロテクトフィルム貼合工程]
図示は省略するが、集光フィルム25は、偏光フィルム21に貼合される面とは反対側にプロテクトフィルムが積層された状態で、原料フィルム搬送工程(A)に供することができる。集光フィルム25は、表面のプリズム形状又はレンズ形状が潰れたり、損傷したりしやすいため、表面形状を保護する目的で、このようなプロテクトフィルムを積層して供給することは有効である。この場合、集光フィルム25は、プロテクトフィルムを貼合するプロテクトフィルム貼合工程を経た後、原料フィルム搬送工程(A)に供される。
プロテクトフィルムが貼合された集光フィルム25は、集光フィルム25側でやや凸となる正カールで、かつカール量が10mm以下となるものであることが好ましい。ここで、カール量とは、凸面を下にして平面上に置いたときに、フィルムの角部又は辺がその面から浮き上がる高さを意味する。プロテクトフィルムを貼合した集光フィルム25のカール量がこの範囲内にあると、得られる偏光板20のカール量をより好ましい範囲に調整することができる。
[接着剤塗布工程]
偏光フィルム21と集光フィルム25の貼合は、接着剤を介して行われる。接着剤は、原料フィルム搬送工程(A)中の任意の段階で、偏光フィルム21と集光フィルム25との貼合面の少なくとも一方に塗布することができる。図6では、集光フィルム25の貼合面に接着剤を塗布しているが、例えば、偏光フィルム21の貼合面に接着剤を塗布することもできる。
また、集光フィルム25と偏光フィルム21が貼合ロール15,16によって貼合される直前に、偏光フィルム21又は集光フィルム25の貼合面に接着剤を塗布することもできる。ただ、操作性などの観点からは、図6に示すように、貼合直前ではなく集光フィルム25の貼合面にあらかじめ接着剤を塗布しておくことが好ましい。すなわち、原料フィルム搬送工程(A)には、その後の貼合工程(B)に備えて、集光フィルム25と偏光フィルム21が一定の隙間をもって搬送される部分が存在するので、その部分で接着剤を塗布しておくことが好ましい。
そこで、好ましくは、原料フィルム搬送工程(A)の途中に接着剤塗布工程が設けられる。接着剤は、この接着剤塗布工程において、集光フィルム25のうち偏光フィルム21へ貼合される面に塗布される。図6には、接着剤塗布装置12によって、集光フィルム25の貼合面に接着剤を塗布するように構成した例が示されている。
集光フィルム25や偏光フィルム21の貼合面は、接着剤が塗布される前に、コロナ処理、プラズマ処理、紫外線照射処理、又は電子線照射処理のような表面活性化処理が施されてもよい。また、それぞれのフィルムは、必要に応じて洗浄及び乾燥処理を経ていてもよいし、易接着処理剤や表面改質剤などの塗布とそれに引き続く乾燥処理を経ていてもよい。
接着剤塗布装置12の構造や塗布方法は特に限定されるものでなく、必要量の接着剤を均一に塗布できる装置と方法を採用すればよい。例えば、ドクターブレード、ワイヤーバー、ダイコーター、カンマコーター、グラビアコーターなど、各種の塗工方式が採用できる。
[貼合工程(B)]
原料フィルム搬送工程(A)において、偏光フィルム21を挟むようにその両側から供給される集光フィルム25は、引き続く貼合工程(B)において、集光フィルム25の外側に接触する第1の貼合ロール15と、偏光フィルム21の外側に接触する第2の貼合ロール16により貼合される。
この貼合工程において、第1の貼合ロール15と第2の貼合ロール16による貼合圧力は、0.3MPa〜5.0MPa以下の範囲が好ましい。貼合圧力が高すぎると、貼合の際に集光フィルム25のプリズム形状又はレンズ形状が押しつぶされて形状が崩れてしまいやすくなるため好ましくない。一方、貼合圧力が低すぎると、フィルムどうしが十分に接着せずに剥がれやすくなるため好ましくない。
この貼合工程(B)においては、第1の貼合ロール15の周速よりも第2の貼合ロール16の周速を早くして貼合を行うことが好ましい。このようにすることで、得られる偏光板20は、偏光フィルム21の側が若干凸状になり、集光フィルム25の側が若干凹状になる、いわゆる正カール状となる。このような正カール状となった偏光板20は、偏光フィルム21の側が凸状となっているため、位相差フィルムなど他のフィルムや液晶セル40などに貼合する際に貼合面に気泡などが入りにくくなるため好ましい。
一方で、偏光フィルム21側の凸状が大きくなりすぎる、すなわち正カールのカール量が大きくなりすぎると、偏光板20の四隅側が浮き上がりやすくなるため、端部に気泡が入りやすくなったり、他のフィルムや液晶セル40に偏光板20を貼合した後で端部側からはがれやすくなったりするため好ましくない。したがって、具体的には、第1の貼合ロール15の周速度に対する第2の貼合ロール16の周速度の比が1.0105以上1.0118以下となるように周速度に差をつけて行われることが好ましい。この周速度の関係は、集光フィルム25の外側に接触する第1の貼合ロール15の周速度をR、偏光フィルム21の外側に接触する第2の貼合ロール16の周速度をRとして、以下の式(1)を満たす。
1.0105≦R/R≦1.0118 (1)
この周速度の比で規定されるそれぞれの貼合ロール15,16の周速度の差により、集光フィルム25には収縮応力が、偏光フィルム21には引張応力がそれぞれ付与された状態で、次の硬化工程(C)へと搬送され、接着剤が硬化される。その硬化後、それぞれの応力解放に伴って偏光板20が歪み、カールとなる。偏光フィルム21の外側に接触する第2の貼合ロール16の周速度Rを、集光フィルム25の外側に接触する第1の貼合ロール15の周速度Rよりやや大きくし、両者の比が上記の範囲となるように設定することによって、得られる偏光板20のカール量が適切に制御される。
貼合ロール15,16を構成する表面の材質は、ステンレス鋼、銅合金、及びクロムメッキ処理品のような金属類;ポリウレタン、ポリフルオロエチレン、及びシリコーンのようなゴム類;酸化クロム、酸化ケイ素、酸化ジルコニウム又は酸化アルミニウムを溶射して得られるセラミック類などであってもよい。なかでも、集光フィルム25の外側に接触する第1の貼合ロール15はゴムロールとし、偏光フィルム21の外側に接触する第2の貼合ロール16は金属ロールとすることが好ましい。すなわち、プリズム形状又はレンズ形状の表面凹凸があり、比較的薄肉で剛性が弱い集光フィルム25には、表面に弾性のあるゴムロールを当て、一般に集光フィルム25よりも比較的剛性が高い偏光フィルム21側には、金属ロールを当てる。このようにすることにより、両者の周速度の差によって生じる応力を、効果的かつ均一にフィルムへ与えることができる。
[硬化工程(C)]
貼合工程(B)から搬送されてくる集光フィルム25/接着剤(図示せず)/偏光フィルム21の順で貼合された積層体は、硬化工程(C)において、上記の接着剤が硬化され、集光フィルム25が偏光フィルム21に接着されて、偏光板20となる。図6では、貼合ロール15,16によって貼合された積層体が硬化装置18へ送り込まれ、そこで硬化処理が施されるようになっている。硬化処理は、接着剤の種類に応じて、活性エネルギー線の照射、加熱、又は乾燥により行うことができる。
接着剤としては、上述した活性エネルギー線の照射により硬化する接着剤組成物、特に、エポキシ化合物とカチオン重合開始剤を含有するものを用いることが好ましい。この場合、硬化工程(C)は、活性エネルギー線の照射により行われる。接着剤の硬化に用いられる活性エネルギー線は、例えば、波長が1pm〜10nmのX線、波長が10〜400nmの紫外線、波長が400〜800nmの可視光線などであってもよい。なかでも、取扱いの容易さ、硬化性接着剤組成物の調製の容易さ及びその安定性、並びにその硬化性能の観点から、紫外線が好ましく用いられる。紫外線の光源には、例えば、波長400nm以下に発光分布を有する、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウェーブ励起水銀灯、メタルハライドランプなどを用いることができる。
紫外線の照射強度は、接着剤の種類や照射時間によって決定されるものであり、特に制限されないが、例えば、開始剤の活性化に有効な波長領域の照射強度が0.1〜300mW/cmとなるように設定することが好ましく、更には1〜200mW/cmとなるように設定することがより好ましい。硬化性接着剤組成物への光照射強度が0.1mW/cmを下回ると、硬化反応時間が長くなって、照射時間を長くしなければ硬化しなくなるので、生産性の面で不利になる。一方、光照射強度が300mW/cmを超えると、ランプから輻射される熱及び硬化性接着剤組成物の重合時の発熱により、硬化性接着剤組成物の黄変や偏光フィルム21の劣化を生じることがある。
紫外線の照射時間も、接着剤の種類や照射強度によって決定されるものであり、特に制限されないが、例えば、照射強度と照射時間の積で表される積算光量が10〜5,000mJ/cmとなるように設定することが好ましく、更には50〜1,000mJ/cmとなるように設定することがより好ましい。硬化性接着剤組成物への積算光量が10mJ/cmを下回ると、開始剤由来の活性種の発生が十分でなく、得られる接着剤層の硬化が不十分となる傾向にある。一方、積算光量が5,000mJ/cmを超えると、照射時間が非常に長くなるので、生産性の面で不利になる。
硬化工程(C)を活性エネルギー線の照射により行う場合、硬化された接着剤層の厚みは、通常1μm以上、また50μm以下であるが、適度の接着力を保って偏光板20を薄くする観点から、20μm以下が好ましく、更には10μm以下がより好ましい。
上述した製造方法では、偏光フィルム21と集光フィルム25の2枚のフィルムを積層する方法について説明している。図2のような透明樹脂フィルム23を備えた偏光板20を製造する場合、貼合ロール15,16で3枚のフィルムを同時に貼合するようにしてもよい。
以下、この製造方法について具体的に説明すると、まず図6の貼合装置において偏光フィルム21のうち集光フィルム25が貼合される面とは反対側の面側にロール状の透明樹脂フィルム23を配置する。そして、このロール状の透明樹脂フィルム23から長尺状の透明樹脂フィルム23を繰り出し、透明樹脂フィルム23と偏光フィルム21が貼合される面のうちいずれかに接着剤塗布装置(不図示)などを用いて接着剤を塗布する。反対側の面には、上述した実施形態と同様に集光フィルム25と偏光フィルム21が貼合される面のうちいずれかに接着剤塗布装置12を用いて接着剤を塗布する。塗布後においては、集光フィルム25/偏光フィルム21/透明樹脂フィルム23の積層体に対して第1の貼合ロール15,第2の貼合ロール16で貼合圧力を付与して貼合する。貼合後の積層体に対して硬化装置18で接着剤を硬化させて偏光板(3層構造)を製造する。
<積層後の厚み分布と輝度比>
以下、図1を参照して本発明の特徴である集光フィルム25の厚み分布について説明する。この図は、集光フィルム25の断面模式図であり、膜厚のばらつきを模式的に示している。本発明では、以下の式に示す集光フィルム25の厚み分布が5%以下である点を特徴としている。すなわち、偏光板20の最も膜厚の大きい最大膜厚み(Hmax)と最も膜厚の小さい最小膜厚み(Hmin)の差(Hdif)が、膜厚の平均値である平均膜厚み(Have)に対して5%以下である。ここで、集光フィルム25の厚み分布は、偏光フィルム21と貼合した後における積層後の集光フィルム25の厚み分布を示している。
Figure 2012037683
このように、積層後の集光フィルム25の厚み分布が5%以下であれば、輝度むらを大幅に低下させることができる。具体的には、液晶パネル2を正面から見たときの輝度比がおおむね10%以内に収まるようにすることが可能となる。ここで輝度比とは、偏光板20の明暗のコントラストを表す指標であり、偏光板20を正面から見たときに最も明るい場所の輝度(最大輝度:(Bmax))と任意の場所での輝度(B)との差に対する、最大輝度(Bmax)の比率を意味する。輝度比は、以下の式で表すことができる。
Figure 2012037683
この輝度比が小さいほど、最大輝度を示す領域(明るい領域)に対して輝度の低い領域(暗い領域)が少ないことを意味しており、コントラスト比が小さく、輝度むらが少ないといえる。反対に、輝度比が大きいほど、明るい領域に対して暗い領域が多いことを意味しており、コントラスト比が大きく、輝度むらが多いといえる。
経験的に、輝度比が10%を超えると、目視による偏光板20の輝度むらが大きくなり、液晶パネル2の表示むらとして認識され、視認性が悪化する。発明者らは、上述した厚み分布を5%以下に抑えることで、輝度比を10%以下とし、これにより輝度むらを少なくすることができ、反対に厚み分布が5%を超えると、輝度比が急激に大きくなり輝度むらが多くなることを実験的に確認して本発明を完成させた。
次に、積層後の集光フィルム25の厚み分布を5%以下とすることにより輝度むらを低減できる理由について考察する。偏光板20は、2つの貼合ロール15,16などを用いて偏光フィルム21と集光フィルム25を貼合することで製造されるが、この貼合の際に、膜厚の厚い部分ではプリズム形状又はレンズ形状に大きな貼合圧力がかかり、プリズム形状やレンズ形状が潰れやすくなる。集光フィルム25は、バックライト10などの光源から斜めに出射する光をプリズム形状又はレンズ形状の斜面で変角して液晶セル40に向けて出射するが、プリズム形状やレンズ形状が潰れて変形すると、光源からの光が変角されずに直進する現象、いわゆる光抜けが生じやすくなる。
一方、膜厚の薄い部分では、貼合の際にかかる貼合圧力が小さいため、プリズム形状又はレンズ形状が潰れにくい。このため、膜厚の厚い部分は光抜けにより暗く表示され、反対に膜厚の薄い部分は明るく表示され、このことが輝度むらの原因となると考えられる。
積層後の集光フィルム25の厚み分布が5%を超える領域は、貼合前の段階からもともと集光フィルム25の膜厚が厚い領域であると考えられる。このため、集光フィルム25と偏光フィルム21に貼合圧力を付与して積層する際に、大きな貼合圧力がかかり、プリズム形状又はレンズ形状が変形しやすい。反対に、積層後の集光フィルム25の厚み分布が5%以下の領域は、もともと集光フィルム25の膜厚が薄い領域であると考えられる。このため、集光フィルム25と偏光フィルム21に貼合圧力を付与して積層する際に過大な貼合圧力がかからず、プリズム形状又はレンズ形状が変形しにくいと考えられる。
このように、積層後の集光フィルム25の厚み分布を5%以下とすると、集光フィルム25の膜厚がおおむね均一になり、膜厚の厚い部分と薄い部分の差が少なくなる。このため、厚みの厚い部分でプリズム形状又はレンズ形状が潰れにくくなり、その結果、得られる偏光板20に輝度むらが少なく、視認性が良好となると考えられる。反対に、後述する実施例で実験データを示すように、集光フィルム25の厚み分布が5%を超えると、輝度比が急激に大きくなり、輝度むらが顕著になる。この5%を境になぜ輝度比が急激に大きくなるのかについての理由は明確ではないが、5%を境に輝度むらが大きく変化することは実施例からも明らかである。このことから、厚み分布5%は、臨界的意義を有する数値であるといえる。
なお、厚み分布は5%以下(すなわち0〜5.0%)であればよいが、輝度むらを低減させる点からは厚み分布がゼロに近いほど好ましい。実際には、厚み分布がゼロ、すなわち完全に均一な厚みの集光フィルム25というものは製造が困難なことから、好ましくは厚み分布が4.0%以下、より好ましくは3.0%以下である。
次に、厚み分布5%以下の光学部材(偏光板20)を得る方法について説明する。製造過程で得られた偏光板が厚み分布5%を超える領域を含む場合、厚み分布5%を超える領域をカットして残りの領域を偏光板20として使用することが好ましい。この残りの領域は、どの部分でも厚み分布が5%以下となるため、輝度比が10%以下となり、輝度むらが少なく良好な光学特性を示す偏光板20となる。
具体的には、膜厚測定装置を用いて積層後の偏光板20に対して複数個所の膜厚を測定する。具体的には、例えば縦横の複数個所をマトリックス状に分割して厚み分布を測定する。そして、この厚み分布測定の結果、厚み分布が5%を超える領域については輝度むらの多い領域としてカットし、それ以外の領域については輝度むらの少ない領域として使用する。
上述した実施形態では、他の光学フィルムとして偏光フィルム21を用いた例について説明した。しかしながら、貼合圧力を付与して積層するものであれば、他の光学フィルムとしては偏光フィルム21に限定されない。例えば、他の光学フィルムとしてトリアセチルセルロース系樹脂フィルムなどの保護フィルムや位相差フィルムなどを用い、これに集光フィルムを貼合して積層した構成であってもよい。
また、上述した実施形態では、光学部材として偏光板20の例を挙げて説明した。しかしながら、光学部材としては、偏光板に限定されず、他の光学機能を有する部材であってもよい。例えば、集光フィルムに拡散フィルムを積層させた光学部材や、導光体に集光フィルムを積層させた光学部材などであってもよい。
また、集光フィルム25と他の光学フィルムを貼合する方法も、上述した貼合ロールによる方法に限定されない。貼合圧力を付与して貼合する方法であれば、例えば、エアーシリンダなどからフィルムにエアーを吹き付けて貼合圧力をかけて積層する方法などが挙げられる。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されない。例中、含有量ないし使用量を表す「%」や「部」は、特記ない限り重量基準である。
[実施例1]
(a)集光フィルムの調製
ポリプロピレン(実質的にプロピレンの単独重合体)を溶融押出しし、Tダイの吐出口下方に配置された賦型ロールと表面が平坦なタッチロールとの間に挟んで冷却固化させ、さらに平坦面を冷却ロールに接触させることにより、上記賦型ロールと接触した面にプリズム形状が賦形された厚さ100μmのプリズムフィルム(集光フィルム)を作製した。ここで用いた賦型ロールは、断面が三角形のV字溝がロールの周方向に平行に設けられ、その形状がそのまま樹脂フィルムに転写されると、図5に示すとおり、フィルムのプリズム形状谷部に相当する部分に平坦部を有し、プリズムのピッチ間隔Pが33μm、プリズムのライン状突起の高さhが21μm、プリズムの頂角θaが65°になるものである。
(b)枚葉サンプルの調製
上記(a)で調製した集光フィルムを逆プリズムに配置し、枚葉サンプルを切り出した。枚葉サンプルのサイズはA4サイズであり、長手方向に半裁(200mm×100mm)して使用した。得られた枚葉サンプルを、貼合圧力2.0MPa、貼合速度1m/分で貼合ロールを通過させた。枚葉サンプルを貼合ロールに通過させる際のリードフィルムには、PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムを使用した。貼合装置は、直径305mmの金属ロールと直径305mmの金属ロール(表面粗さは共にRa0.1以下)を用いた。貼合ロール通過後のサンプルを、ノートパソコン「VAIO」(ソニー社製)の液晶セル越しに観察した。図7は、この液晶セル越しに枚葉サンプルを観察した状態を撮影した写真である。
(c)枚葉サンプルの厚み測定
貼合ロール通過後の枚葉サンプルを、図7に示すように縦横20mm間隔で縦4箇所(S1〜S4)、横6箇所(1〜6)のマトリックス状に分割し、交点(S1−1〜S4−6)の24箇所について厚み測定を行った。厚み測定は、DIGIMICRO STAND MS−5C(Nikon社製)を用いて行った。
この厚み測定の結果を以下の表1に示す。この表の数値は、各交点における実際の膜厚を示しており、単位はμmである。
Figure 2012037683
表1の結果に基づいて、以下の式を用いて厚み分布を計算した。なお、厚み分布の最小値=最小膜厚み(Hmin)は101.3μm(交点S4−3の値)、平均膜厚み(Have)は106.4μmである。
Figure 2012037683
計算の結果、得られた厚み分布を表2に示す。
Figure 2012037683
(d)枚葉サンプルの輝度測定
厚み測定後の枚葉サンプルを、ノートパソコン「VAIO」(ソニー社製)の液晶セルに貼合し、液晶表示装置に実装した。実装後の枚葉サンプルの上記交点ごとに輝度測定を行った。輝度測定は、分光放射輝度計:SR−UL1R(トプコンテクノハウス社製)を使用した。
この輝度測定の結果を以下の表3に示す。この表の数値は、各交点における実際の輝度を示しており、単位はcd/mである。
Figure 2012037683
表3の結果に基づいて、以下の式を用いて輝度比を計算した。なお、最大輝度(Bmax)は5105cd/m(交点S3−4の値)である。
Figure 2012037683
計算の結果、得られた輝度比を表4に示す。
Figure 2012037683
図8は厚み分布と輝度比を等高線で表したグラフであり、図8(a)は表2の厚み分布を、図8(b)は表4の輝度比を表している。この図の2箇所の丸は、図7のS2−2とS3−2の丸に対応している。図8(a)の下側は厚み分布の小さな領域であり、上側は厚み分布の大きな領域である。一方、図8(b)の下側は輝度比の小さい領域であり、上側は輝度比の大きい領域である。このように、厚み分布と輝度比とは相関があり、厚み分布が大きいほど輝度比が大きく、厚み分布が小さいほど輝度比が小さいことがわかる。
図9は、厚み分布を横軸に、輝度比を縦軸に各交点をプロットしたグラフである。上述したように、厚み分布と輝度比には相関があり、グラフの左下へ向かうほど厚み分布が小さく、輝度比も小さくなる。反対にグラフの右上へ向かうほど厚み分布が大きく、輝度比も大きくなる。図中の矢印は、各交点の値から求めた近似曲線である。また、この近似曲線と輝度比10%の交点での厚み分布を求めると、5%となる。すなわち、厚み分布5%以下では、輝度比10%以下となり、輝度むらが少ないが、反対に、厚み分布5%を超えると輝度比は10%を超え、輝度むらが多くなる。またこの近似曲線から、厚み分布5%を超えると、輝度比は急激に高くなり、輝度むらが多くなることがわかる。
このことは、表2の厚み分布と表4の輝度比の具体的数値を見ても明らかである。すなわち、表4から、S3−2〜S3−6とS4−1〜S4−6では輝度比が10%以下と小さいが、表2からこれらの領域に対応する厚み分布の値をみると、ほぼ5%以下となっている。表4から、反対にそれ以外の領域では輝度比が10%を大きく超え、おおよそ20〜50%となっているが、表2から、その領域では厚み分布は5%を超えており、おおむね7〜8%となっている。すなわち、厚み分布が5%をわずかに超えると、輝度比が10%を大きく超え、輝度むらが急激に多くなっていることがわかる。このように、厚み分布5%を境に、輝度比が急激に変化することから、この厚み分布5%という値は臨界的意義を有しているといえる。
次に、4つの交点S3−3,S3−4,S4−3,S4−4を結ぶ四角形に枚葉サンプルをカットする。この領域は、厚み分布の最大値=最大膜厚み(Hmax)が105.2μm(S3−3)、厚み分布の最小値=最小膜厚み(Hmin)が101.3μm(S4−3)であり、その差(Hdif)が3.9μm、平均膜厚み(Have)が103.5μmとなる。この結果をもとに、4つの交点のすべてで厚み分布を計算すると、3.8μm(S3−2)、3.6μm(S3−23)、0μm(S4−2)、1.1μm(S4−3)となる。すなわち、このカットした枚葉サンプルの厚み分布は、最大でも3.8%(S3−2)であり、どの領域でも5%以下となる。
1 液晶表示装置、2 液晶パネル、10 バックライト、12 接着剤塗布装置、15 第1の貼合ロール、16 第2の貼合ロール、18 硬化装置、20 偏光板(光学部材)、21 偏光フィルム(他の光学フィルム)、23 透明樹脂フィルム、25 集光フィルム、26 プロテクトフィルム、26a 基材フィルム、26b 粘着剤層、27 粘着剤層、30 偏光板、40 液晶セル、50 光拡散板、R 集光フィルムの稜線、θa 頂角、h ライン状突起の高さ、P ピッチ間隔、L 1つのプリズムの斜面の終点から隣り合う次のプリズムの斜面の始点に至る距離、H 集光フィルムの厚み、Hmax 最大膜厚み、Hmin 最小膜厚み、Have 平均膜厚み、Hdif 最大膜厚みと最小膜厚みの差

Claims (14)

  1. プリズム形状又はレンズ形状を表面に有する集光フィルムと、他の光学フィルムとを貼合圧力を付与して積層した光学部材であって、
    前記積層後における前記集光フィルムの厚み分布において、最大膜厚み及び最小膜厚みの差が平均膜厚みに対して5%以下であることを特徴とする光学部材。
  2. 前記集光フィルムの前記プリズム形状又は前記レンズ形状は、一つのプリズム又はレンズの斜面の終点から隣り合う次のプリズム又はレンズの斜面の始点に至る距離が、前記稜線のピッチ間隔に対して30%以下となるように形成されている、請求項1に記載の光学部材。
  3. 前記集光フィルムは、熱可塑性樹脂で構成される、請求項1〜2記載の光学部材。
  4. 前記熱可塑性樹脂は、ポリプロピレン系樹脂からなる、請求項1〜3のいずれかに記載の光学部材。
  5. 前記ポリプロピレン系樹脂は、実質的にプロピレンの単独重合体からなる、請求項1〜4のいずれかに記載の光学部材。
  6. 前記ポリプロピレン系樹脂は、10重量%以下のエチレンユニットを含有するプロピレンとエチレンとの共重合体からなる、請求項1〜5のいずれかに記載の光学部材。
  7. 前記集光フィルムは、活性エネルギー線硬化性樹脂で構成される、請求項1又は2に記載の光学部材。
  8. 前記光学部材のうち前記集光フィルム側の面とは反対側の面に、光学補償フィルム又は保護フィルムが積層されている、請求項1〜7のいずれかに記載の光学部材。
  9. 前記集光フィルムの前記プリズム形状又は前記レンズ形状を有する面に、プロテクトフィルムを有する、請求項1〜8のいずれかに記載の光学部材。
  10. 前記他の光学フィルムが偏光フィルムであり、前記光学部材が偏光板である、請求項1〜9のいずれかに記載の光学部材。
  11. 液晶表示装置の液晶セルとバックライトとの間に配置されて用いられる、請求項1〜10のいずれかに記載の光学部材。
  12. 液晶セルと、請求項1〜11のいずれかに記載の光学部材とが積層された液晶パネルであって、
    前記液晶セルと、前記他の光学フィルムと、前記集光フィルムとがこの順で積層されていることを特徴とする液晶パネル
  13. バックライトと、請求項12に記載の液晶パネルとが対向するように配置された液晶表示装置であって、
    前記液晶パネルは、前記集光フィルムの前記プリズム形状又は前記レンズ形状が前記バックライトに対向するように配置されていることを特徴とする液晶表示装置。
  14. 正面輝度分布が最大輝度に対して10%以内に収まる、請求項13に記載の液晶表示装置。
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