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JP2012079637A - 燃料電池 - Google Patents

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JP2012079637A JP2010226219A JP2010226219A JP2012079637A JP 2012079637 A JP2012079637 A JP 2012079637A JP 2010226219 A JP2010226219 A JP 2010226219A JP 2010226219 A JP2010226219 A JP 2010226219A JP 2012079637 A JP2012079637 A JP 2012079637A
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Yuji Ishikawa
裕司 石川
Masahiro Shiozawa
方浩 塩澤
Hiroaki Takeuchi
弘明 竹内
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Soken Inc
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Nippon Soken Inc
Toyota Motor Corp
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Abstract

【課題】燃料電池に係る種々の運転状態において、電解質膜および触媒電極における含水状態を適切化し、燃料電池性能を高める。
【解決手段】燃料電池は、高分子電解質を備える電解質膜20と、触媒を担持した導電性粒子と高分子電解質とが混在して成る多孔質なアノード21と、触媒を担持した導電性粒子と高分子電解質とが混在して成る多孔質なカソード22と、を備える。電解質膜20が備える高分子電解質の最大膨潤時における単位体積当たりの吸水量は、カソード22が備える高分子電解質の最大膨潤時における単位体積当たりの吸水量と等しく、且つ、アノード21が備える高分子電解質の最大膨潤時における単位体積当たりの吸水量よりも少ない。アノード21が備える高分子電解質が、燃料電池の発電停止後に吸収可能である水の量は、カソード22の細孔内に存在可能な水の量よりも多い。
【選択図】図1

Description

本発明は、燃料電池に関するものである。
固体高分子形燃料電池では、高分子電解質から成る電解質膜は、充分な湿潤状態となることにより、高いプロトン伝導性を実現できる。また、電解質膜上に設けられた触媒電極が高分子電解質を備える場合には、触媒電極が備える高分子電解質もまた、充分な湿潤状態であることが、電池性能を確保するために重要となる。ただし、触媒電極内の水分量が過剰となる場合には、触媒電極内に生じる液水によって、電気化学反応に供されるガスの通り道が塞がれ、電池性能が不十分となる可能性がある。そのため、電解質膜および触媒電極における含水状態を良好に調節することが、充分な電池性能を得る上で重要である。
従来、電解質膜および触媒電極における含水状態を良好に調節するための構成の一つとして、アノードのイオン交換容量を、電解質膜およびカソードのイオン交換容量よりも高くする構成が提案されている(例えば、特許文献1参照)。このような構成とすることで、カソード側からアノード側へと水を移動させ、アノードの乾燥を防ぐと共に、カソードで水が過剰となる状態の抑制を図っている。
特開2005−174764号公報 特開2004−349180号公報
しかしながら、アノードのイオン交換容量とカソードのイオン交換容量との関係を規定するだけでは、例えば、間に介在する電解質膜のイオン交換容量の影響を受けることにより、カソード側からアノード側への水移動の状態が、所望の状態とはならない場合があり得る。燃料電池においては、温度条件を含む運転状態が様々に変化する場合であっても、電解質膜および触媒電極における含水状態を適切化し、燃料電池性能を高く維持できることが望まれていた。
本発明は、上述した従来の課題を解決するためになされたものであり、燃料電池に係る種々の運転状態において、電解質膜および触媒電極における含水状態を適切化し、燃料電池性能を高めることを目的とする。
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実施することが可能である。
[適用例1]
燃料電池であって、
高分子電解質を備える電解質膜と、
前記電解質膜の一方の面上に形成され、触媒を担持した導電性粒子と高分子電解質とが混在して成る多孔質なアノードと、
前記電解質膜の他方の面上に形成され、触媒を担持した導電性粒子と高分子電解質とが混在して成る多孔質なカソードと、
を備え、
前記電解質膜が備える高分子電解質の最大膨潤時における単位体積当たりの吸水量は、前記カソードが備える高分子電解質の最大膨潤時における単位体積当たりの吸水量と等しく、且つ、前記アノードが備える高分子電解質の最大膨潤時における単位体積当たりの吸水量よりも少なく、
前記アノードが備える高分子電解質が吸収可能である水の量が、前記カソードの細孔内に存在可能な水の量よりも多いことを特徴とする
燃料電池。
適用例1に記載の燃料電池によれば、カソードからアノードへと電解質膜を介して水を移動させることができる。このとき、カソードから電解質膜に対しては、水が移動し過ぎることがないため、カソードの含水量の低下に起因する電池性能の低下を抑制することができる。また、カソードの細孔内に滞留する水を、アノードが備える高分子電解質によって吸収することができるため、燃料電池に係る種々の運転状態において、カソードに水が滞留することに起因する不都合を抑制することができる。
[適用例2]
適用例1記載の燃料電池であって、前記アノードが備える高分子電解質は、前記燃料電池の発電中には、前記アノードの環境湿度に応じた量の水を含有しており、前記アノードが備える高分子電解質が吸収可能である水の量とは、発電状態にある前記燃料電池が発電を停止した後に、前記アノードが備える高分子電解質がさらに吸収可能な水の量である燃料電池。適用例2に記載の燃料電池によれば、カソードの細孔内に滞留する水を、燃料電池の停止時に、アノードが備える高分子電解質によって吸収することができる。そのため、燃料電池の停止時にカソードに水が滞留することがなく、氷点下の低温条件において燃料電池を再起動する場合であっても、支障なく発電を開始することが可能となる。
[適用例3]
適用例2記載の燃料電池であって、前記アノードが備える高分子電解質が吸収可能である水の量とは、前記燃料電池が定常状態で発電を行なうときの、前記アノードが備える高分子電解質における平均的な含水量を、前記アノードが備える高分子電解質が最大限に吸水した状態での含水量から減じた値である燃料電池。適用例3に記載の燃料電池によれば、定常状態で発電している燃料電池を発電停止した時に、カソードに形成される細孔内が水で満たされている場合であっても、発電停止後に、カソード内の水をアノードが備える高分子電解質によって吸収することができる。
[適用例4]
適用例1ないし3いずれか記載の燃料電池であって、前記電解質膜が備える高分子電解質と、前記アノードが備える高分子電解質と、前記カソードが備える高分子電解質とは、主鎖および側鎖の構成単位である原子団が共通しており、前記電解質膜が備える高分子電解質のEW値は、前記カソードが備える高分子電解質のEW値と等しく、且つ、前記アノードが備える高分子電解質のEW値よりも大きい燃料電池。適用例4に記載の燃料電池によれば、各電極および電解質膜が備える高分子電解質として、主鎖および側鎖の構成単位である原子団が共通している高分子電解質を用いる場合には、EW値が所定の関係を示すように高分子電解質を選択することで、各高分子電解質の最大膨潤時における単位体積当たりの吸水量について、所望の関係を満たすことができる。また、このとき、カソードが備える高分子電解質と、電解質膜が備える高分子電解質とは、同一の高分子電解質とすることができる。
本発明は、上記以外の種々の形態で実現可能であり、例えば、燃料電池の製造方法あるいは、燃料電池の設計方法などの形態で実現することが可能である。
単セル10の概略構成を表わす断面模式図である。 電極の製造工程の概略を表わす説明図である。 MEA30およびガス拡散層23,24が積層されている様子を拡大して示す断面模式図である。 本実施例の燃料電池と比較例1の燃料電池の出力電圧を比較した結果を表わすグラフである。 氷点下で再起動した時の燃料電池の出力電流の変化を示すグラフである。 氷点下で再起動した時の燃料電池の積算発熱量を示すグラフである。
A.燃料電池の構成:
図1は、本発明の好適な一実施例としての燃料電池を構成する単セル10の概略構成を表わす断面模式図である。単セル10は、電解質膜20と、電解質膜20の各々の面上に形成された電極であるアノード21およびカソード22と、電極を形成した上記電解質膜20を両側から挟持するガス拡散層23,24と、ガス拡散層23,24のさらに外側に配設されたガスセパレータ25,26と、を備えている。
本実施例の燃料電池は、固体高分子型燃料電池であり、電解質膜20は、固体高分子材料、例えばパーフルオロカーボンスルホン酸を備えるフッ素系樹脂により形成されたプロトン伝導性のイオン交換膜であり、湿潤状態で良好な電気伝導性を示す。アノード21およびカソード22は、触媒金属を担持した導電性粒子と、電解質膜20を構成する高分子電解質と同様にプロトン伝導性を示す高分子電解質と、を備えている。触媒金属としては、例えば、白金(Pt)や、白金合金を用いることができる。触媒金属を担持する導電性粒子としては、例えば、カーボン粒子を用いることができる。本実施例では、アノード21およびカソード22が備える高分子電解質として、電解質膜20を構成する高分子電解質と同種の高分子電解質を用いている。電解質膜20と、アノード21およびカソード22とは、MEA(膜−電極接合体、Membrane Electrode Assembly)30を構成している。MEA30の詳しい構成、および製造方法については、後に詳述する。
ガス拡散層23,24は、ガス透過性を有する導電性部材、例えば、カーボンペーパやカーボンクロス、あるいは金属メッシュや発泡金属によって形成することができる。本実施例のガス拡散層23,24は、いずれも、平坦な板状部材として形成されている。このようなガス拡散層24は、電気化学反応に供されるガスの流路になると共に、集電を行なう。
なお、アノード21とガス拡散層23との間、あるいは、カソード22とガス拡散層24との間には、撥水性物質を備える撥水層を設けることとしても良い。撥水層は、例えば、カーボン粒子とフッ素樹脂などの撥水性物質とを含有する混合液である撥水層インクを作製し、ガス拡散層23,24を構成する導電性部材、あるいはMEAの表面に塗布し、乾燥・焼成を行なうことによって形成することができる。このような撥水層を設けることにより、電極からガス拡散層への排水を促進したり、電解質膜の乾燥を抑制することによって、電池性能の向上を図ることが可能になる。
ガスセパレータ25,26は、ガス不透過な導電性部材、例えば、圧縮カーボンや、ステンレス鋼等から成る金属製部材によって形成される。ガスセパレータ25,26は、それぞれ所定の凹凸形状を有している。この凹凸形状によって、ガスセパレータ25とガス拡散層23との間には、水素を含有する燃料ガスが流れる単セル内燃料ガス流路47が形成される。また、上記凹凸形状によって、ガスセパレータ26とガス拡散層24との間には、酸素を含有する酸化ガスが流れる単セル内酸化ガス流路48が形成される。
さらに、単セル10の外周部には、単セル内燃料ガス流路47および単セル内酸化ガス流路48におけるガスシール性を確保するために、ガスケット等のシール部材が配置されている(図示せず)。また、本実施例の燃料電池は、単セル10を複数積層したスタック構造を有しているが、このスタック構造の外周部には、単セル10の積層方向と平行であって燃料ガスあるいは酸化ガスが流通する複数のガスマニホールドが設けられている(図示せず)。これら複数のガスマニホールドのうちの燃料ガス供給マニホールドを流れる燃料ガスは、各単セル10に分配され、電気化学反応に供されつつ各単セル内燃料ガス流路47内を通過し、その後、燃料ガス排出マニホールドに集合する。同様に、酸化ガス供給マニホールドを流れる酸化ガスは、各単セル10に分配され、電気化学反応に供されつつ各単セル内酸化ガス流路48内を通過し、その後、酸化ガス排出マニホールドに集合する。
B.電極の製造工程:
図2は、本実施例の燃料電池における電極(アノード21およびカソード22)の製造工程の概略を表わす説明図である。電極を作製する際には、まず、触媒金属を担持する導電性粒子として、カーボン粒子(カーボン粉末)を用意する(ステップS100)。ここでは、種々のカーボン粒子を選択可能であり、例えば、カーボンブラックやグラファイトを用いることができる。
次に、ステップS100で用意したカーボン粒子上に、触媒金属(ここでは白金(Pt))を液中で担持させる(ステップS110)。Ptを担持させるには、上記カーボン粒子を、Pt化合物の溶液中に分散させて、含浸法や共沈法、あるいはイオン交換法を行なえばよい。Pt化合物の溶液としては、例えば、テトラアンミン白金塩溶液やジニトロジアンミン白金溶液や白金硝酸塩溶液、あるいは塩化白金酸溶液などを用いることができる。このとき、カーボン粒子重量に対する担持された触媒金属の重量の割合、すなわち、触媒担持率は、例えば、60〜80wt%とすることができる。
ステップS110において、Pt化合物溶液中にカーボン粒子を分散させてカーボン粒子にPtを担持させると、次にこれを乾燥・焼成する(ステップS120)。これによって、Pt微粒子を分散担持するカーボン粒子が得られる。例えば、含浸法による場合には、カーボン粒子を、上記した量のPtを含有する溶液中に分散させた後に、溶媒を蒸発させて乾燥し、還元処理(還元雰囲気下での焼成)を行なえばよい。
その後、ステップS120で得たPt担持カーボン粒子を、適当な水及び有機溶媒中に分散させると共に、既述したプロトン伝導性を有する電解質を含有する電解質溶液(例えば、Aldrich Chemical社、Nafion Solution、Nafionは登録商標)をさらに混合して、触媒インクを作製する(ステップS130)。そして、作製した触媒インクを電解質膜20上に塗布する(ステップS140)。
触媒インクの電解質膜20上への塗布は、例えば、ドクターブレード法により行なうことができる。また、触媒インクを用いた電解質膜20上へのスクリーン印刷により行なうこととしてもよい。あるいは、スプレー印刷法や、インクジェット法により行なうこともできる。さらに、触媒インクを塗布する他の方法として、触媒インクを他の基材(例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリテトラフルオロエチレン(PTFE)から成る基材)上に塗布した後に、この塗布した触媒インクを電解質膜20に熱圧転写し、その後基材を剥離して除去する方法も可能である。また、ガス拡散層24上に触媒インクを塗布後、このガス拡散層24と電解質膜20とを熱圧接合しても良い。
その後、塗布した触媒インクを乾燥させて(ステップS150)、有機溶媒を除去することにより、内部に微細な細孔を有する多孔質なアノード21あるいはカソード22が完成する。
C.MEA30の具体的構成:
図3は、MEA30およびガス拡散層23,24が積層されている様子を拡大して示す断面模式図である。図3では、ガス拡散層23,24における電極側の表面に、撥水層27,28が設けられている様子が表わされている。本実施例の燃料電池では、アノード21が備える高分子電解質のEW値(以下、アノードのEW値ともいう):Aと、電解質膜20が備える高分子電解質のEW値(以下、電解質膜のEW値ともいう):Bと、カソード22が備える高分子電解質のEW値(以下、カソードのEW値ともいう):Cとが、以下に示す(1)式の関係を満たすことを特徴としている。なお、EW(Equivalent Weight)値とは、高分子電解質におけるイオン交換基(スルホン酸基)の等量重量、すなわち、イオン交換基の単位量(1mol)当たりの固体高分子電解質全体の乾燥重量の値をいう。さらに、本実施例の燃料電池では、カソード22の細孔内に存在可能な水の容量(以下、カソード細孔内に存在可能な水容量ともいう)WCA_voidoと、アノード21が備える高分子電解質における吸水容量(以下、アノード電解質の吸水容量ともいう)WAN_Iとが、以下に示す(2)式の関係を満たすことを特徴としている。以下に、各特徴について、さらに詳しく説明する。
A < B = C …(1)
CA_voido < WAN_I …(2)
C1.各層が備える高分子電解質のEW値の関係について:
EW値とは、高分子電解質におけるイオン交換基(スルホン酸基)の等量重量、すなわち、イオン交換基の単位量(1mol)当たりの高分子電解質全体の乾燥重量の値をいう。そのため、同種の主鎖および側鎖を有する電解質であれば、EW値が小さいほど、高分子電解質全体に対するスルホン酸基の割合が高くなる。ここで、高分子電解質は、所定の主鎖に、スルホン酸基を持つ繰り返し単位(側鎖)が結合された構造を有しており、このスルホン酸基によってプロトン伝導性が実現される。また、高分子電解質内をプロトンが移動する際には、プロトンは、所定の数の水分子と水和した状態で、スルホン酸基とイオン交換しながら移動する。したがって、同種の主鎖および側鎖を有する高分子電解質であれば、EW値が小さいほど、プロトン伝導性が高く、含有可能な水の量が多い(吸水性が高い)と評価することができる。
本実施例では、アノード21が備える高分子電解質と、電解質膜20が備える高分子電解質と、カソード22が備える高分子電解質とのいずれも、パーフルオロ構造を有する同様の主鎖を備えている。すなわち、いずれの高分子電解質も、フッ素系樹脂の主鎖と、端部にスルホン酸基を有する側鎖と、を備えている。そして、アノード21が備える高分子電解質のEW値(アノードのEW値):Aと、電解質膜20が備える高分子電解質のEW値(電解質膜のEW値):Bと、カソード22が備える高分子電解質のEW値(カソードのEW値):Cとが、既述した(1)式の関係を満たしている。具体的には、本実施例では、アノード21が備える高分子電解質として、EW値が600の高分子電解質を用いており、電解質膜20およびカソード22が備える高分子電解質として、EW値が1000の高分子電解質を用いている。
したがって、電解質膜20が備える高分子電解質と、カソード22が備える高分子電解質とは、同様の吸水性を有しており、アノード21が備える高分子電解質は、上記した他の高分子電解質に比べて、より高い吸水性を有している。そのため、電解質膜20とカソード22の間では、含水量の差に基づいて水が移動するため、両者の含水量を等しくする方向に水が移動しようとする力が働く。また、電解質膜20とアノード21との間では、含水量の差を超えて、電解質膜20からアノード21へと積極的に水が移動しようとする力が働く。
燃料電池が発電する際には、電気化学反応の進行に伴って水が生じる。本実施例の燃料電池では、生じた水は、カソード22が備える高分子電解質における単位体積当たりの含水量と、電解質膜20が備える高分子電解質における単位体積当たりの含水量とが、一様になるように、カソード22から電解質膜20へと移動する。そして、さらに、電解質膜20からアノード21へと、含水量の差を超えて、積極的に水が移動する。このように、カソード22で生じた生成水を、積極的にアノード21へと供給可能になるため、通常の発電時においては、カソード22に生成水が滞留することに起因して酸化ガスの流通が抑制される不都合、いわゆるフラッディングを抑制することができる。また、アノード21の含水量が低下することに起因する電池性能の低下を抑制することができる。
このような、カソード22で生じた生成水を積極的にアノード21へと供給することによる効果は、燃料電池に供給するガスにおける加湿量が少なく、燃料電池の温度が比較的高い運転状態の時に、特に顕著に得られる。図4は、本実施例の燃料電池と、比較例1の燃料電池との各々を用いて、無加湿状態の燃料ガスおよび酸化ガス供給し、運転温度を次第に上昇させつつ一定の電流密度で発電させた時の、出力電圧を比較した結果を表わすグラフである。
ここで、比較例1の燃料電池は、アノードのEW値:Aと、電解質膜のEW値:Bと、カソードのEW値:Cと、の関係が、「A=B=C」である点を除けば、実施例の燃料電池と同様の構成を有している。また、図4に示す本実施例の燃料電池および比較例1の燃料電池は、単セルとして構成されており、電流密度1.6A/cm2にて、充分量の燃料ガスおよび酸化ガスを供給しつつ、60℃〜80℃へと運転温度を変化させて、電圧を測定した。
図4に示すように、本実施例の燃料電池では、広い温度範囲で、安定した出力電圧を得ることができた。すなわち、ガスによる水分の持ち去り量が増加する高温運転時であっても、各層が備える高分子電解質において充分な湿潤状態を保ち、高い電池性能を維持できたと考えられる。これに対して、比較例1の燃料電池では、運転温度が高温になると、急激に電圧が低下して、充分な発電性能を得られなくなった。このような比較例1における電池性能の低下は、ガスによる水分の持ち去り量が増加する高温運転時に、アノードが備える高分子電解質における含水量が不足したことが主要な原因と考えられる。
なお、カソード側から電解質膜を介してアノードへと生成水を供給するための構成としては、アノードのEW値:Aと、電解質膜のEW値:Bと、カソードのEW値:Cと、の関係を、「A<B<C」とする構成も考えられる。しかしながら、各EW値の関係を「A<B<C」とする構成では、本実施例の燃料電池に比べて、カソードから電解質膜への水の移動が、より積極的に行なわれる。そのため、例えば、燃料電池に供給するガスにおける加湿量が少なく、且つ、発電量が少ない(生成水量が少ない)時には、カソードで生じた生成水が電解質膜に移動することにより、カソードが備える高分子電解質が水分不足となり、電池性能が低下する場合が考えられる。より具体的には、上記「A<B<C」とする構成では、例えば、無加湿あるいは低加湿で燃料電池を発電させる場合であって、負荷変動によって一時的に発電量が減少する時に、カソードの水分不足に起因する電池性能の低下が起こり得る。
これに対して、本実施例の燃料電池によれば、各EW値の関係を「A<B=C」とすることで、カソード22から電解質膜20への、含水量の差を超えた積極的な水分移動は生じない。そのため、無加湿あるいは低加湿で燃料電池を発電させる場合であって、負荷変動によって一時的に発電量が減少する時であっても、カソード22が備える高分子電解質が直ちに水分不足となることはない。したがって、カソードの水分不足に起因する電池性能の低下を抑制することができる。
C2.カソードに存在可能な水の容量とアノードの吸水容量の関係について:
既述したように、本実施例の燃料電池では、カソード22の細孔内に存在可能な水の容量(カソード細孔内に存在可能な水容量)WCA_voidoと、アノード21が備える高分子電解質における吸水容量(アノード電解質の吸水容量)WAN_Iとが、(2)式の関係を満たしている。ここで、カソード細孔内に存在可能な水容量WCA_voidoとは、白金担持カーボン粒子と高分子電解質とから成るカソード22において、白金担持カーボン粒子と高分子電解質とによって占められていない空隙部分(カソードの細孔)に存在可能な水の容量をいう。また、アノード電解質の吸水容量WAN_Iとは、アノード21が備える高分子電解質が吸水することが可能な水の容量をいう。より具体的には、燃料電池の発電停止後に、アノード21が備える高分子電解質が吸水することが可能な水の容量をいう。すなわち、アノード21が備える高分子電解質は、燃料電池の発電中には、アノード21の環境湿度に応じた量の水を含有しており、このようなアノードを備える燃料電池が発電を停止した後に、アノードが備える高分子電解質が、さらに吸収可能な水の量をいう。
カソード細孔内に存在可能な水容量WCA_voido(単位はg)を導出するための式を、(3)〜(9)式として以下に示す。また、アノード電解質の吸水容量WAN_I(単位はg)を導出するための式を、(10)〜(12)式として以下に示す。さらに、(3)〜(12)式で用いた各パラメータの意味を、表1に示す。
Figure 2012079637
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本実施例の燃料電池では、アノード21とカソード22とは同じ面積に形成されているものとしており、(3)式に示したカソード細孔内に存在可能な水容量WCA_voidoと、(10)式に示したアノード電解質の吸水容量WAN_Iは、共に、各電極の単位面積当たり(1cm2当たり)の値を示している。
(3)式に示すように、カソード細孔内に存在可能な水容量WCA_voidoは、カソードの単位面積当たりの細孔容積Vvoidoに基づいて求められる。カソードの細孔容積Vvoidoは、(4)〜(7)式に示すように、カソードの単位面積当たりの見かけ上の体積Vclから、カソード中の単位面積当たりのカーボン体積Vcおよびカソード中の単位面積当たりの電解質体積Viを減算することによって求められる。
また、アノード電解質の吸水容量WAN_Iは、(10)〜(11)式に示すように、放置後の単位面積当たりのアノード内電解質の含水量Hsoakから、発電後(発電停止直後)の単位面積当たりのアノード内電解質の含水量HSTOPを減算することによって求められる。ここで、放置後とは、燃料電池の発電停止後に、カソード22側からアノード21側へと水が移動するための充分な時間が経過した後のことをいう。
表1に示したパラメータの内、各電極における目付量(x、α)とは、各電極1cm2当たりに配置されている電極構成材料の重量(白金担持カーボン粒子の重量と電極中の電解質の重量の合計)を表わす。カソード22の厚みtCA_CLは、例えば、SEM(走査電子顕微鏡)を用いて測定すればよく、例えば、2〜10μmとすることができる。各電極におけるN/C(y、β)とは、高分子電解質/カーボン比率であり、各電極が備えるカーボン粒子の重量に対する高分子電解質重量の比を表わす。カソード中のカーボン体積Vcとカソード中の電解質体積Viは、それぞれ、カソード22の単位面積(1cm2)当たりに配置されている、カーボン粒子の平均的な体積、あるいは、高分子電解質の平均的な体積を表わす。また、カーボン重量Mcと電解質重量Miは、それぞれ、カソード22の単位面積(1cm2)当たりに配置されている、カーボン粒子の平均的な重量、あるいは、高分子電解質の平均的な重量を表わす。
また、表1に示したパラメータの内、発電後のアノード内電解質の1スルホン酸基当たりの水分子吸着数λSTOPとは、燃料電池の発電を停止した直後に、アノード21が備える高分子電解質において1つのスルホン酸基に吸着している水分子の平均的な数を表わす。このような水分子の数は、アノードが備える高分子電解質のEW値や、発電停止時におけるアノードが配置される雰囲気中の湿度等によって変動する値である。発電後のアノード内電解質の1スルホン酸基当たりの水分子吸着数λSTOPは、例えば、燃料電池が定常状態で発電を行なうときの、アノード内電解質における1スルホン酸基当たりの平均的な水分子吸着数とすることができる。本実施例では、水分子吸着数λSTOPは、アノードが備える高分子電解質のEW値や、燃料電池が定常状態で発電するときのアノードが配置される雰囲気中の湿度に基づく推定値として、10個としている。以上より、(11)式に示した発電後のアノード内電解質の含水量HSTOPは、燃料電池が定常状態で発電を行なうときの、アノードが備える高分子電解質における平均的な含水量ということができる。
また、表1に示したパラメータの内、放置後のアノード内電解質の1スルホン酸基当たりの水分子吸着数λsoakとは、本実施例の燃料電池において、燃料電池の発電停止後に、カソード22側からアノード21側へと水が移動するための充分な時間が経過した後に、アノードが備える高分子電解質において1つのスルホン酸基に吸着している水分子の平均的な数を表わす。このような水分子の数は、アノードが備える高分子電解質のEW値や、放置後のアノードが配置される雰囲気中の湿度等によって変動する値である。放置後のアノード内電解質の1スルホン酸基当たりの水分子吸着数λsoakは、例えば、アノード内電解質が最大吸水状態であるときの、アノード内電解質における1スルホン酸基当たりの水分子吸着数とすることができる。本実施例では、水分子吸着数λsoakは、アノードが備える高分子電解質における最大吸水時の状態に基づく推定値として、20個としている。以上より、(12)式に示した放置後のアノード内電解質の含水量Hsoakは、アノードが備える高分子電解質が最大限に吸水した状態での含水量とすることができる。
既述した(2)式の関係を満たす燃料電池を作製するには、カソード細孔内に存在可能な水容量WCA_voidoとアノード電解質の吸水容量WAN_Iの内の少なくとも一方の値を調節すればよい。ここで、カソード細孔内に存在可能な水容量WCA_voidoの値を調節するには、カソードの細孔容積Vvoidoを調節すればよい((3)式参照)。カソードの細孔容積Vvoidoを調節するには、カソード22における目付量xや、カソード22における高分子電解質/カーボン比率yや、カソード22の厚みを調節すればよい((4)〜(9)式参照)。また、アノード電解質の吸水容量WAN_Iの値を調節するには、アノード21における目付量αや、アノード21における高分子電解質/カーボン比率βや、アノードのEW値:A(表1に示すγ)を調節すればよい((10)〜(12)式参照)。
既述したように、本実施例の燃料電池では、アノードのEW値:Aと、電解質膜のEW値:Bと、カソードのEW値:Cとが、(1)式の関係を満たしており、カソード22から、電解質膜20を介してアノード21へと、液水が移動する。このとき、本実施例の燃料電池では、上記(1)式の関係に加えて、さらに、(2)式の関係を満たしているため、カソード22の細孔内に存在する液水の全量を、アノード21が備える高分子電解質によって吸収することが可能になる。
以上のように構成された本実施例の燃料電池によれば、種々の発電条件において、良好に電池性能を維持することができる。具体的には、(1)式および(2)式の関係を満たすことにより、特に、氷点下のような低温条件下で燃料電池を起動する際に、電極内に残留する液水に起因する不都合を抑制することができる。以下、氷点下における起動性に係る効果についてさらに説明する。
燃料電池の発電が停止して、新たな生成水の発生やガスの供給が停止されると、各層が含有する水の量と、各層のEW値とに基づいて、含有する水の量が多くEW値が大きいカソード22から、含有する水の量が少なくEW値が小さいアノード21へと液水が移動する。このような燃料電池の発電停止時において、カソード22の細孔全体が、生成水を含む液水で満たされており、発電停止後に、このような液水の全てがアノード21側に移動したとしても、本実施例の燃料電池では、移動した液水の全てを、アノード21が備える高分子電解質によって吸収することが可能になる。
そのため、本実施例の燃料電池によれば、燃料電池の発電を停止した後に、氷点下で再起動する際に、再起動時の電極内において、実質的に液水が滞留しない状態にすることができる。すなわち、電極の細孔が液水で塞がれる状態で燃料電池を起動することを抑制できる。そのため、再起動時の温度条件が氷点下であっても、カソード内における酸化ガスの流れが、細孔内に滞留する液水や氷によって妨げられることがない。カソード内における酸化ガスの流通が、滞留する液水や氷によって妨げられる場合には、再起動時に発電を開始しようとしても、電極の触媒に供給される酸素量が不足して、電極内において、連続的に充分に電気化学反応が開始されない部位が生じる可能性がある。このような部位が生じると、電気化学反応が開始されても、充分な反応が連続して起こらないことにより、発熱量が不十分となり、新たに生じた生成水が凍結し、さらにガスの流れが抑制されて、起動に係る性能が低下する場合がある。これに対して、本実施例の燃料電池によれば、電極内における液水や氷の滞留が抑えられるため、良好に連続的に電気化学反応を開始することができ、発電で生じた熱を利用して、氷点下であっても支障なく再起動することができる。
なお、本実施例の燃料電池によれば、MEA30の構成によって、電極内に液水が滞留しない状態を確保しているため、発電停止時に、カソードに滞留する液水の除去を目的としたカソードの掃気等の特別の処理の実行を、削減し、あるいは不要とすることができる。そのため、発電停止時にカソードに残留する液水量を抑えることに起因する電池構成の複雑化を抑制することができる。また、掃気等の動作に起因して、燃料電池システム全体のエネルギ効率が低下することがない。
氷点下における起動性に係る効果についての実験結果を、以下に示す。図5、図6は、本実施例の燃料電池と、比較例2の燃料電池について、同様の条件で一定時間発電を行なわせた後に発電を停止させ、その後、環境温度を−10℃に設定して、再起動させた結果を示す。ここで、比較例2の燃料電池は、実施例の燃料電池と類似する構成を有しており、アノードのEW値:Aと、電解質膜のEW値:Bと、カソードのEW値:Cと、の関係が、実施例の燃料電池と同様に、(1)式「A<B=C」を満たす点で共通している。しかしながら、カソード細孔内に存在可能な水容量WCA_voidoと、アノード電解質の吸水容量WAN_Iとの関係が、(2)式ではなく、以下に示す(13)式を満たす点で異なっている。すなわち、カソードの細孔内に存在可能な水を、アノードが備える高分子電解質によって充分に吸水できない構成となっている。
CA_voido > WAN_I …(13)
図5、図6では、各燃料電池として単セルを用いており、再起動時には、充分量の燃料ガスおよび酸化ガスを供給しつつ、一定の出力電圧となるように出力制御を行なっている。図5、図6において、横軸は、再起動後の経過時間を表わす。また、図5における縦軸は、各燃料電池の出力電流を表わし、図6における縦軸は、積算発熱量Qを表わす。積算発熱量Qは、理論起電力(1.48V)に対する電圧ロスが、全て発熱分であるとして、出力電流(I)と出力電圧(V)とに基づいて、以下に示す(14)式に基づいて求めた値である。
Figure 2012079637
図5に示すように、実施例の燃料電池は、氷点下で再起動した場合であっても、安定した出力を得ることができた。そして、図6に示すように、再起動後の積算発熱量は、時間と共に安定して増加した。これに対して、比較例2の燃料電池では、再起動後次第に出力電流が低下して、しばらくすると、発電を継続することができなくなった。その結果、積算発熱量も、低い値に留まった。このように、(1)式および(2)式を満たす本実施例の燃料電池が、氷点下における再起動性に優れていることが確認された。
なお、燃料電池の発電停止後におけるカソード側からアノード側への水の移動は、電極および電解質膜の各層における含水量の差に基づいて水が移動しようとする力と、各層のEW値の差に起因して生じる吸水力とが、MEA全体として釣り合った安定状態になるまで進行する。そのため、カソードからの排水性を充分に確保するためには、アノードのEW値:Aと、電解質膜のEW値:BおよびカソードのEW値:Cとの差を、充分に確保する必要がある。また、EW値を大きくし過ぎると、プロトン伝導性が不十分となる可能性があり、EW値を小さくし過ぎると、高分子電解質の強度が不十分となる可能性がある。そのため、カソードからアノードへと水を移動させる駆動力を充分に確保しつつ、燃料電池の性能低下を抑制できるよう、各層のEW値を適宜設定すればよい。
また、本実施例の燃料電池によれば、氷点下での再起動時だけでなく、既述したように、種々の運転状態において、電池性能を向上させることができる。すなわち、通常の発電時には、カソード側からアノード側へと液水を移動させることにより、カソード22におけるフラッディングを抑制することができる。また、アノード21の水不足に起因する電池性能の低下を抑制することができる。さらに、無加湿あるいは低加湿状態の酸化ガスおよび/または燃料ガスを用いる場合や、さらに運転温度が高温になる場合、あるいは発電量が少ないために生成水量が少ない場合であっても、(1)式を満たすことにより、アノード21およびカソード22における水分不足を抑制することができる。
なお、本実施例では、アノード21およびカソード22が備える高分子電解質と、電解質膜20を構成する高分子電解質とは、同種の高分子電解質(同種の主鎖および側鎖を有する電解質)を用いている。そのため、(1)式を満たすためには、カソード22が備える高分子電解質と、電解質膜20を構成する高分子電解質とは、共通する同一の樹脂を用いれば良い。したがって、全ての層において異なる高分子電解質を用いる場合に比べて、製造に要する材料の種類を削減することができる。これにより、製造コストを削減することが可能になる。
D.変形例:
なお、この発明は上記の実施例や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
D1.変形例1:
実施例では、本実施例では、アノード21およびカソード22が備える高分子電解質と、電解質膜20を構成する高分子電解質とは、同種の高分子電解質、すなわち、主鎖および側鎖の構成単位である原子団が同じ電解質を用いたが、異なる構成とすることもできる。異なる種類の高分子電解質を組み合わせて用いる場合であっても、アノードが備える高分子電解質の最大膨潤時における単位体積当たりの吸水量:Dと、電解質膜が備える高分子電解質の最大膨潤時における単位体積当たりの吸水量:Eと、カソードが備える高分子電解質の最大膨潤時における単位体積当たりの吸水量:Fとが、以下の(15)式の関係を満たせば良い。高分子電解質膜の最大膨潤時とは、高分子電解質が、最大限に吸水した状態を指す。
D > E = F …(15)
同種の高分子電解質同士であれば、EW値が小さいほど、最大膨潤時における単位体積当たりの吸水量は多くなる。これに対して、異種の高分子電解質間では、EW値の大小関係が、高分子電解質の吸水性の強弱を必ずしも反映しない場合があり得る。しかしながら、(15)式を満たす限りにおいて、用いる高分子電解質の種類の異同に関わりなく、実施例と同様に、カソード側からアノード側への水の移動を確保することができる。すなわち、異種の高分子電解質を備える場合であっても、カソードと電解質膜との間に、水移動の抵抗として、高分子電解質の吸水力の違いに起因する抵抗が実質的に存在せず、また、アノードと電解質膜の間では、高分子電解質の吸水力の違いに起因して、電解質膜側からアノード側へと積極的に水が移動する性質を有していればよい。そして、さらに(2)式を満たすことにより、実施例と同様の効果を得ることができる。
なお、異なる種類の高分子電解質を組み合わせた燃料電池としては、例えば、電解質膜を構成する高分子電解質として、炭化水素系(脂肪族炭化水素の主鎖を備える)の高分子電解質を用い、電極が備える高分子電解質として、フッ素系樹脂を用いる構成を挙げることができる。このような場合にも、各々の層を構成する高分子電解質の最大膨潤時における単位体積当たりの吸水量が(15)式を満たすように、用いる高分子電解質を選択すれば、本願発明を適用することができる。
D2.変形例2:
実施例では、電解質膜20は、高分子電解質を成膜して成る構成としたが、異なる構成としても良い。例えば、多孔質の基材を用い、基材内部の細孔内に高分子電解質を充填することによって、電解質膜を構成しても良い。このような構成としても、電解質膜が備える高分子電解質の最大膨潤時における単位体積当たりの吸水量と、各電極が備える高分子電解質の最大膨潤時における単位体積当たりの吸水量とが、(15)式の関係を満たせば、本願発明を適用できる。最大膨潤時における単位体積当たりの吸水量の違いに起因して生じる水移動の駆動力、あるいは、最大膨潤時における単位体積当たりの吸水量の違いに起因する水移動の際の抵抗は、各層が備える高分子電解質同士が接触していれば、実施例と同様に生じ得るからである。
10…単セル
20…電解質膜
21…アノード
22…カソード
23,24…ガス拡散層
25,26…ガスセパレータ
27,28…撥水層
30…MEA
47…単セル内燃料ガス流路
48…単セル内酸化ガス流路

Claims (4)

  1. 燃料電池であって、
    高分子電解質を備える電解質膜と、
    前記電解質膜の一方の面上に形成され、触媒を担持した導電性粒子と高分子電解質とが混在して成る多孔質なアノードと、
    前記電解質膜の他方の面上に形成され、触媒を担持した導電性粒子と高分子電解質とが混在して成る多孔質なカソードと、
    を備え、
    前記電解質膜が備える高分子電解質の最大膨潤時における単位体積当たりの吸水量は、前記カソードが備える高分子電解質の最大膨潤時における単位体積当たりの吸水量と等しく、且つ、前記アノードが備える高分子電解質の最大膨潤時における単位体積当たりの吸水量よりも少なく、
    前記アノードが備える高分子電解質が吸収可能である水の量が、前記カソードの細孔内に存在可能な水の量よりも多いことを特徴とする
    燃料電池。
  2. 請求項1記載の燃料電池であって、
    前記アノードが備える高分子電解質は、前記燃料電池の発電中には、前記アノードの環境湿度に応じた量の水を含有しており、
    前記アノードが備える高分子電解質が吸収可能である水の量とは、発電状態にある前記燃料電池が発電を停止した後に、前記アノードが備える高分子電解質がさらに吸収可能な水の量である
    燃料電池。
  3. 請求項2記載の燃料電池であって、
    前記アノードが備える高分子電解質が吸収可能である水の量とは、前記燃料電池が定常状態で発電を行なうときの、前記アノードが備える高分子電解質における平均的な含水量を、前記アノードが備える高分子電解質が最大限に吸水した状態での含水量から減じた値である
    燃料電池。
  4. 請求項1ないし3いずれか記載の燃料電池であって、
    前記電解質膜が備える高分子電解質と、前記アノードが備える高分子電解質と、前記カソードが備える高分子電解質とは、主鎖および側鎖の構成単位である原子団が共通しており、
    前記電解質膜が備える高分子電解質のEW値は、前記カソードが備える高分子電解質のEW値と等しく、且つ、前記アノードが備える高分子電解質のEW値よりも大きい
    燃料電池。
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