JP2012051766A - シリコンインゴットの連続鋳造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】鋳造されたインゴットが不純物で汚染されるのを低減できるとともに、冷却ルツボの内面が損傷するのを軽減できるシリコンインゴットの連続鋳造方法を提供する。
【解決手段】軸方向の一部が周方向で複数に分割された無底の冷却ルツボ7を誘導コイル8内に配置し、誘導コイル8による電磁誘導加熱により、冷却ルツボ7内に溶融シリコン13を形成し、冷却ルツボ7から引き下げながら凝固させてシリコンインゴット3を連続鋳造する方法において、冷却ルツボ7として、その内面7aのうちの溶融シリコンの外面13aおよびシリコンインゴットの外面3aと対向する部分7bに、Ni−B合金めっきが施されたものを用いることを特徴とするシリコンインゴットの連続鋳造方法である。
【選択図】図1
【解決手段】軸方向の一部が周方向で複数に分割された無底の冷却ルツボ7を誘導コイル8内に配置し、誘導コイル8による電磁誘導加熱により、冷却ルツボ7内に溶融シリコン13を形成し、冷却ルツボ7から引き下げながら凝固させてシリコンインゴット3を連続鋳造する方法において、冷却ルツボ7として、その内面7aのうちの溶融シリコンの外面13aおよびシリコンインゴットの外面3aと対向する部分7bに、Ni−B合金めっきが施されたものを用いることを特徴とするシリコンインゴットの連続鋳造方法である。
【選択図】図1
Description
本発明は、太陽電池用基板の素材であるシリコンインゴットの連続鋳造方法に関し、さらに詳しくは、鋳造されたインゴットが不純物で汚染されるのを低減できるとともに、無底の冷却ルツボの内面が損傷するのを軽減できるシリコンインゴットの連続鋳造方法に関する。
近年、CO2排出による地球温暖化問題やエネルギー資源の枯渇問題が深刻化しており、それらの問題の対応策の一つとして、無尽蔵に降りそそぐ太陽光エネルギーを活用する太陽光発電が注目されている。太陽光発電は、太陽電池を使用して太陽光エネルギーを直接電力に変換する発電方式であり、太陽電池の基板には、多結晶のシリコンウェーハを用いるのが主流である。
太陽電池用の多結晶シリコンウェーハは、一方向性凝固のシリコンインゴットを素材とし、このインゴットをスライスして製造される。このため、太陽電池の普及を図るには、シリコンウェーハの品質を確保するとともに、コストを低減する必要があり、その前段階で、高品質のシリコンインゴットを安価に製造することが要求される。
多結晶のシリコンインゴットに対する品質の要求では、特にシリコンインゴットに含有される不純物の濃度が重要となる。これは、シリコンインゴットから切り出された多結晶シリコンウェーハがMoやFe、Cuといった不純物で汚染されると、ウェーハを太陽電池として用いた際に光電変換効率を悪化させるからである。例えば非特許文献1では、多結晶シリコンウェーハにおける不純物濃度と光電変換効率との関係が示されている。
図2は、多結晶シリコンウェーハにおける不純物濃度と相対変換効率との関係を示す図である。同図は、非特許文献1、532頁に記載されるFig3を引用したものであり、P型の多結晶シリコンウェーハを用いた太陽電池において、不純物であるMo、Fe、Cu、C、OおよびAlの濃度と相対変換効率の関係を示す。同図から、いずれの不純物もそれぞれ特定の濃度を超えると相対変換効率が低下することが確認される。
また、非特許文献2には、太陽電池用の単結晶シリコンウェーハに関するものであるが、不純物濃度と光電変換効率との関係が示されている。
図3は、単結晶シリコンウェーハにおける不純物濃度と相対変換効率との関係を示す図である。同図は、非特許文献2、105頁に記載される図2−4−12を引用したものであり、P型の単結晶シリコンウェーハを用いた太陽電池において、不純物であるTa、Mo、Nd、Zr、W、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Al、Ni、CuおよびPの濃度と相対変換効率の関係を示す。同図から、いずれの不純物もそれぞれ特定の濃度を超えると相対変換効率が低下することが確認される。
したがって、太陽電池用の多結晶シリコンウェーハでは、不純物による汚染を可能な限り低減することが望まれる。このため、多結晶シリコンウェーハの素材となるシリコンインゴットにおいて、不純物による汚染を可能な限り低減することが要求される。
これらのコストや品質の要求に対応できる方法として、電磁誘導を利用した連続鋳造方法であるEMC法(Electromagnetic Casting法、電磁鋳造法)が実用化されている。
図4は、従来のEMC法に用いられる連続鋳造装置(以下、単に「EMC炉」ともいう。)の構成を示す模式図である。同図に示すように、EMC炉はチャンバー1を備える。チャンバー1は、内部を外気から隔離し鋳造に適した不活性ガス雰囲気に維持する二重壁構造の水冷容器である。チャンバー1の上壁には、開閉可能なシャッター2を介し、図示しない原料供給装置が連結されている。チャンバー1は、上部の側壁に不活性ガス導入口5が設けられ、下部の側壁に排気口6が設けられている。
チャンバー1内には、無底の冷却ルツボ7、誘導コイル8およびアフターヒーター9が配置されている。無底の冷却ルツボ7は、融解容器としてのみならず、鋳型としても機能し、熱伝導性および電気伝導性に優れた金属(例えば、銅)製の角筒体で、チャンバー1内に吊り下げられている。この冷却ルツボ7は、軸方向の一部が、複数の短冊状の素片により、周方向で複数に分割される。また、冷却ルツボ7は、内部を流通する冷却水によって強制冷却される。
誘導コイル8は、冷却ルツボ7を囲繞するように、冷却ルツボ7と同芯に周設され、図示しない電源装置に接続されている。アフターヒーター9は、冷却ルツボ7と同芯に、冷却ルツボ7の下方に複数連設され、冷却ルツボ7から引き下げられるシリコンインゴット3を加熱して、その軸方向に適切な温度勾配を与えつつ、長時間かけて室温まで冷却する。
また、チャンバー1内には、原料供給装置に連結されたシャッター2の下方に原料導入管11が取り付けられている。シャッター2の開閉に伴って、粒状や塊状のシリコン原料12が原料供給装置から原料導入管11内に供給され、冷却ルツボ7内に装入される。
チャンバー1の底壁には、アフターヒーター9の下方に、インゴット3を抜き出すための引出し口4が設けられ、この引出し口4はガスでシールされている。インゴット3は、引出し口4を貫通して下降する支持台15によって支えられながら引き下げられる。
冷却ルツボ7の真上には、プラズマトーチ14が昇降可能に設けられている。プラズマトーチ14は、図示しないプラズマ電源装置の一方の極に接続され、他方の極は、インゴット3側に接続されている。このプラズマトーチ14は、下降させて冷却ルツボ7内に挿入された状態で使用される。
このようなEMC炉を用いたEMC法では、無底の冷却ルツボ7内にシリコン原料12を装入し、誘導コイル8に交流電流を印加するとともに、下降させたプラズマトーチ14に通電を行う。このとき、冷却ルツボ7を構成する短冊状の各素片が互いに電気的に分割されていることから、誘導コイル8による電磁誘導に伴って各素片内で渦電流が発生し、冷却ルツボ7の内壁の渦電流が冷却ルツボ7内に磁界を発生させる。これにより、冷却ルツボ7内のシリコン原料は電磁誘導加熱されて融解し、溶融シリコン13が形成される。また、プラズマトーチ14とシリコン原料、さらには溶融シリコン13との間にプラズマアークが発生し、そのジュール熱によっても、シリコン原料が加熱されて融解し、電磁誘導加熱の負担を軽減して効率良く溶融シリコン13が形成される。
溶融シリコン13は、冷却ルツボの内面7aの渦電流に伴って生じる磁界と、溶融シリコン13の表面に発生する電流との相互作用により、溶融シリコンの外面13aの内側法線方向に力(ピンチ力、同図の黒塗り矢印参照)を受ける。このため、冷却ルツボの内面7aと溶融シリコンの外面13aとは、非接触の状態に保持される。
無底の冷却ルツボ7内でシリコン原料12を融解させながら、溶融シリコン13を支える支持台15を徐々に下降させると、誘導コイル8の下端から遠ざかるにつれて誘導磁界が小さくなることから、発熱量およびピンチ力が減少し、さらに冷却ルツボ7からの冷却により、溶融シリコンの外面13aおよびインゴットの外面3aから凝固が進行する。そして、支持台15の下降に伴ってシリコン原料12を連続的に装入し、融解および凝固を継続することにより、溶融シリコン13が一方向に凝固し、インゴット3を連続して鋳造することができる。
このようなEMC法によれば、溶融シリコンの外面13aと無底の冷却ルツボの内面7aとの接触が軽減されるため、その接触に伴う冷却ルツボ7からの不純物の汚染が防止され、高品質のインゴット3を得ることができる。しかも、連続鋳造であることから、安価に一方向凝固されたインゴット3を製造することが可能になる。
しかし、EMC法によりシリコンインゴット連続鋳造する際の冷却ルツボとインゴットの間隔は非常に小さく、引き下げ軸に垂直な断面において、鋳造されたインゴットの寸法と冷却ルツボの内面寸法はほぼ同じである。このため、支持台を引き下げる昇降装置の精度に起因し、支持台に支えられたインゴットの外面が冷却ルツボの内面と局所的に接触して不純物が付着する場合がある。この場合、付着した不純物は、アフターヒーターを用いた冷却過程でインゴットの外面から内部に拡散してインゴットを汚染する。
また、鋳造されるインゴットと冷却ルツボが局所的に接触すると、冷却ルツボの内面が損傷し、一つの冷却ルツボで連続鋳造することができるインゴットの本数が減少し、すなわち、冷却ルツボの寿命が縮まるという問題もある。
このように鋳造されるインゴットと冷却ルツボとが局所的に接触することにより、インゴットが不純物で汚染されるとともに、冷却ルツボが損傷する問題に関し、従来から種々の提案がなされており、例えば特許文献1がある。特許文献1では、内面にシリコンコーティングが施された冷却ルツボを用いるインゴットの連続鋳造方法が提案されている。特許文献1では、冷却ルツボの内面にシリコンコーティングが施されることから、インゴットが不純物で汚染されるのを低減できるとともに、冷却ルツボが損傷するのを軽減できるとしている。
しかし、シリコンインゴットを連続鋳造する際、冷却ルツボの内面に施されたシリコンコーティングは、溶融シリコンに作用するピンチ力を減少させるとともに、誘導加熱の表皮効果によって高温となる。このため、溶融シリコンがシリコンコーティングと局所的に接触するのが多発するとともに、接触した際にシリコンコーティングが溶融シリコンに融着する。その結果、冷却ルツボの内面に施されたシリコンコーティングは部分的に剥離し易い。
また、シリコンコーティングが施された冷却ルツボを複数本のインゴットの連続鋳造に用いると、3本目以降のインゴットの連続鋳造では、鋳造されるインゴットが、シリコンコーティングが剥離して露出した冷却ルツボの内面と接触して不純物で汚染される場合がある。このため、従来のシリコンインゴットを連続鋳造方法では、冷却ルツボからの不純物によりインゴットが汚染されるのをさらに低減するとともに、冷却ルツボが損傷するのをさらに軽減したいという要望がある。
Revue Phys, Appl.22(1987)、J.Fally,E.Fabre,B.Chabot著、532頁、Fig.3
太陽光発電光学、山田興一,小宮山宏著、日経BP社(2002年10月7日初版発行)、85頁、図2−4−12
EMC法によるシリコンインゴットの連続鋳造方法では、前述のとおり、鋳造されるインゴットと冷却ルツボとが局所的に接触することにより、インゴットが不純物で汚染されるとともに、冷却ルツボが損傷する問題がある。前掲の特許文献1で提案されるシリコンインゴットの連続鋳造方法では、冷却ルツボの内面に施されたシリコンコーティングが部分的に剥離し易い。このため、複数本のインゴットの連続鋳造に用いると、鋳造されるインゴットが、シリコンコーティングが剥離して露出した冷却ルツボの内面と接触して不純物で汚染される場合がある。
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、鋳造されるインゴットと冷却ルツボとが局所的に接触し、鋳造されたインゴットが不純物で汚染されるのを低減できるとともに、冷却ルツボの内面が損傷するのを軽減できるシリコンインゴットの連続鋳造方法を提供することを目的としている。
本発明者らは、上記課題を解決するため、種々の試験を行い、鋭意検討を重ねた結果、EMC法によりシリコンインゴットを連続鋳造する際、冷却ルツボとして、その内面にNi−B合金めっきが施されたものを用いることにより、鋳造されたインゴットが不純物で汚染されるのを低減できるとともに、冷却ルツボの内面が損傷するのを軽減できることを知見した。
本発明は、上記の知見に基づいて完成したものであり、下記のシリコンインゴットの連続鋳造方法を要旨としている。
軸方向の一部が周方向で複数に分割された無底の冷却ルツボを誘導コイル内に配置し、前記誘導コイルによる電磁誘導加熱により、前記冷却ルツボ内に溶融シリコンを形成し、前記冷却ルツボから引き下げながら凝固させてシリコンインゴットを連続鋳造する方法において、前記冷却ルツボとして、その内面のうちの前記溶融シリコンの外面および前記シリコンインゴットの外面と対向する部分に、Ni−B合金めっきが施されたものを用いることを特徴とするシリコンインゴットの連続鋳造方法である。
本発明のシリコンインゴットの連続鋳造方法は、内面にNi−B合金めっきが施された冷却ルツボを用いることから、鋳造されるインゴットと冷却ルツボとが局所的に接触し、鋳造されたインゴットが不純物で汚染されるのを低減できるとともに、冷却ルツボの内面が損傷するのを軽減できる。
以下に、本発明のシリコンインゴットの連続鋳造方法を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明のシリコンインゴットの連続鋳造方法を説明する模式図である。同図では、EMC炉が備える無底の冷却ルツボ7および誘導コイル8と、溶融シリコン13と、鋳造されるインゴット3とを示す。同図では、冷却ルツボの内面のうち、Ni−B合金めっきが施される部分7bを、クロスハッチングを施して模式的に示す。
本発明のシリコンインゴットの連続鋳造方法は、軸方向の一部が周方向で複数に分割された無底の冷却ルツボ7を誘導コイル8内に配置し、誘導コイル8による電磁誘導加熱により、冷却ルツボ7内に溶融シリコン13を形成し、冷却ルツボから引き下げながら凝固させてシリコンインゴットを連続鋳造する方法において、冷却ルツボ7として、その内面のうちの溶融シリコンの外面13aおよびシリコンインゴットの外面3aと対向する部分7bに、Ni−B合金めっきが施されたものを用いることを特徴とする。
冷却ルツボの内面にNi−B合金めっきを施す場合、鋳造されるインゴットとNi−B合金めっきが施された冷却ルツボの内面とが局所的に接触し、鋳造されたインゴットがNiおよびBで汚染される懸念がある。ここで、Ni−B合金めっきは、冷却ルツボに多用される銅より高硬度かつ高融点である。このため、鋳造されるインゴットとNi−B合金めっきが施された冷却ルツボの内面とが局所的に接触した場合、インゴットの外面にNi−B合金めっきは、ほとんど付着しない。
その結果、後述する実施例に示すように、鋳造されたインゴットにおけるNi濃度は、従来法で鋳造されたインゴットと同程度となり、インゴットがNiで汚染される懸念は払拭できる。また、Bはドーパントとして添加される元素であることから、B濃度が鋳造されたインゴットから切り出されたウェーハにおける光電変換効率に与える影響は、不純物に比べて小さい。このため、鋳造されたインゴットにおいてB濃度が僅かに増加しても、鋳造されたインゴットおよび切り出されたウェーハの品質を同程度に維持することができる。
また、Ni−B合金めっきは、冷却ルツボで多用される銅より高硬度かつ高融点であることから、冷却ルツボの内面にNi−B合金めっきを施すことにより、鋳造されるインゴットとNi−B合金めっきが施された冷却ルツボ内面とが局所的に接触した場合、冷却ルツボの内面が損傷するのを軽減できる。このため、本発明のシリコンインゴットの連続鋳造方法は、一つの冷却ルツボで鋳造が可能なインゴットの本数を増加させる、すなわち、冷却ルツボの寿命を延ばすことができる。
さらに、Ni−B合金めっきは、シリコンコーティングに比べて冷却ルツボに対する付着性が優れることから、冷却ルツボの内面に施されたNi−B合金めっきが剥離するのを抑制できる。このため、本発明のシリコンインゴットの連続鋳造方法は、Ni−B合金めっきが施された冷却ルツボを複数本のインゴットの連続鋳造に用いた場合に、鋳造されるインゴットが露出した冷却ルツボの内面と接触して不純物で汚染されるのを抑制できる。
前述のとおり、溶融シリコンの外面またはインゴットの外面と冷却ルツボの内面とは、その間隔が非常に小さいことから、局所的に接触するおそれがある。ここで、通常、シリコンインゴットの連続鋳造では、シリコン原料の装入量等を調整することにより、溶融シリコンの上面が、冷却ルツボの上面から所定の深さに位置するように制御しつつ連続鋳造を行う。このため、冷却ルツボの内面において、上面から所定の深さまでの部分は、溶融シリコンまたはインゴットと接触する可能性が低い。
したがって、本発明のシリコンインゴットの連続鋳造方法では、前記図1に示すように、Ni−B合金めっきは、冷却ルツボの内面7aのうち、溶融シリコンの外面13aおよびシリコンインゴットの外面3aと対向する部分7bに施す。また、本発明のシリコンインゴットの連続鋳造方法は、冷却ルツボの内面の全面にNi−B合金めっきを施すことを妨げない。
冷却ルツボの内面に施されたNi−B合金めっきの膜厚は、0.1〜2.0mmとするのが好ましい。Ni−B合金めっきの膜厚が0.1mm未満であると、Ni−B合金めっきが損傷して冷却ルツボの内面が露出する場合があり、鋳造されるインゴットと接触して汚染するおそれがある。一方、膜厚が2.0mmを超えるNi−B合金めっきを冷却ルツボの内面に施すのは困難であり、Ni−B合金めっきを施すのに要するコストが上昇して製造歩留りを悪化させる。
本発明のシリコンインゴットの連続鋳造方法の効果を確認するため、下記の試験を行った。
[試験条件]
本試験では、前記図4に示す連続鋳造装置を用い、EMC法によりシリコンインゴットを連続鋳造した。この際、冷却ルツボ7として、前記図1に示すように、内面のうちの溶融シリコンの外面13aおよびシリコンインゴットの外面3aと対向する部分7bに、Ni−B合金めっきが施された銅製の冷却ルツボを用いた。冷却ルツボの内面に施されたNi−B合金めっきの膜厚は0.8mmとした。インゴットのサイズは、引き下げ軸に垂直な断面の寸法を、縦2個、横3個の正方形ウェーハを切り出すことができる寸法とし、引き下げ長さを7000mmとした。
本試験では、前記図4に示す連続鋳造装置を用い、EMC法によりシリコンインゴットを連続鋳造した。この際、冷却ルツボ7として、前記図1に示すように、内面のうちの溶融シリコンの外面13aおよびシリコンインゴットの外面3aと対向する部分7bに、Ni−B合金めっきが施された銅製の冷却ルツボを用いた。冷却ルツボの内面に施されたNi−B合金めっきの膜厚は0.8mmとした。インゴットのサイズは、引き下げ軸に垂直な断面の寸法を、縦2個、横3個の正方形ウェーハを切り出すことができる寸法とし、引き下げ長さを7000mmとした。
比較例1では、内面にコーティングまたはめっきが施されていない、銅製の冷却ルツボを用いた。比較例2では、内面に膜厚0.8mmのシリコンコーティングが施された銅製の冷却ルツボを用いた。本発明例および比較例ともに、冷却ルツボは、上部を残して周方向で複数の短冊状の素片に分割され、隣接する素片の間隔が0.3mmのものを用いた。
本発明例および比較例ともに、シリコンインゴットの引き下げ速度を1.6mm/min、誘導コイルの平均周波数を30kHzおよび誘導コイルの電力を350kWとした。ここで、誘導コイルの平均周波数は、1本のインゴットを連続鋳造する際に誘導コイルで周波数を測定して出力し、それを平均したものである。
本発明例および比較例ともに、それぞれ一つの冷却ルツボを用いて複数本のインゴットを連続鋳造した。この際、1本のインゴットの連続鋳造が完了する都度、冷却ルツボの内面の性状を目視で観察するとともに、隣接する素片の間隔を測定した。冷却ルツボが有する素片と素片との間隔のうち、一部分でも隣接する素片の間隔が1.0mm以上となった時点で、同一の冷却ルツボによるインゴットの連続鋳造を終了した。
本発明例および比較例ともに、鋳造されたインゴットの不純物による汚染を評価するため、全てのインゴットの外面表層部におけるCuおよびNi濃度を測定した。鋳造されたインゴットの外面から10mmの位置でインゴットを切断して鋳肌面を除去し、インゴットを分割して分割インゴットとした後、所定のインゴットからサンプル板を採取し、その後、サンプル板から試験片を切り出して行った。
図5は、シリコンインゴットから得られる試験片を示す模式図であり、同図(a)はシリコンインゴットを分割する位置を、同図(b)はサンプル板から切り出された試験片の位置をそれぞれ示す。同図(a)に示すように、鋳肌面を除去したインゴット20を引き下げ軸に平行な面において縦2個、横3個に分割し、引き下げ軸方向を長手方向とする6個の分割インゴット21とした。本実施例では、斜線を付した位置の2個の分割インゴット21を用い、ボトム側から1000mm、3000mmおよび5000mmの位置から厚さ2mmのサンプル板を採取した。
同図(b)では、2個の分割インゴットから採取された2枚のサンプル板22と、サンプル板から試験片として切り出される部分23(ハッチングを施した部分)とを示す。また、2個の分割インゴットから採取された2枚のサンプル板22のインゴットでの位置を示すため、インゴットの外面20aを二点鎖線で示す。同図(b)に示すように、2個の分割インゴット21から採取されたサンプル板22において、インゴットの外面20a側に位置するサンプル板の外周から一辺の長さが20mmの正方形状の試験片23を切り出した。切り出された各試験片23について全溶解解析を行い、CuおよびNi濃度を測定し、インゴットの外面表層部におけるCuおよびNi濃度とした。
表1に、冷却ルツボの内面に施した処理、鋳造されたインゴットの本数、並びに、鋳造されたインゴットの外面表層部におけるCuおよびNi濃度の最大値をそれぞれ示す。ここで、表1に示すCuおよびNi濃度は、比較例1を基準(1.0)とした相対値である。また、インゴットの外面表層部におけるCuおよびNi濃度の最大値は、得られた複数の試験片で測定された値の最大値である。
[試験結果]
表1に示す結果から、内面に表面処理が施されていない銅製の冷却ルツボを用いた比較例1では、3本のインゴットの連続鋳造が完了した時点で、冷却ルツボが消耗して隣接する素片の間隔が一部で1.0mm以上となった。
表1に示す結果から、内面に表面処理が施されていない銅製の冷却ルツボを用いた比較例1では、3本のインゴットの連続鋳造が完了した時点で、冷却ルツボが消耗して隣接する素片の間隔が一部で1.0mm以上となった。
内面にシリコンコーティングが施された銅製の冷却ルツボを用いた比較例2では、3本のインゴットの連続鋳造が完了した時点でシリコンコーティングの一部が剥離しているのが確認され、6本のインゴットの連続鋳造が完了した時点で、冷却ルツボが消耗して隣接する素片の間隔が一部で1.0mm以上となった。また、比較例2では、鋳造されたインゴットの外面表層部における不純物濃度の最大値は、比較例1を基準(1.0)とした場合にCu濃度が0.4、Ni濃度が1.0であった。
内面にNi−B合金めっきが施された銅製の冷却ルツボを用いた本発明例1では、20本のインゴットの連続鋳造が完了した時点で、冷却ルツボが消耗して隣接する素片の間隔が一部で1.0mm以上となった。また、20本のインゴットの連続鋳造が完了した時点で行った冷却ルツボの内面性状の観察では、Ni−B合金めっきの剥離は確認されなかった。
本発明例1では、鋳造されたインゴットの外面表層部におけるCu濃度の最大値は0.1未満となり、比較例1および2と比べ、大きく低下した。したがって、本発明のシリコンインゴットの連続鋳造方法により、鋳造されるインゴットが、シリコンコーティングが剥離して露出した冷却ルツボの内面と接触して不純物で汚染されるのを低減できることが確認できた。また、本発明例1では、鋳造されたインゴットの外面表層部におけるNi濃度の最大値は1.0となり、比較例1および2と同程度であった。したがって、鋳造されたインゴットにおいて、Ni−B合金めっきによる汚染が発生しないことが確認できた。
これらから、本発明のシリコンインゴットの連続鋳造方法は、内面にNi−B合金めっきが施された冷却ルツボを用いることにより、鋳造されたインゴットが不純物で汚染されるのを低減できるとともに、冷却ルツボの内面が損傷するのを軽減できることが明らかになった。
本発明のシリコンインゴットの連続鋳造方法は、内面にNi−B合金めっきが施された冷却ルツボを用いることにより、鋳造されたインゴットが不純物で汚染されるのを低減できるとともに、冷却ルツボの内面が損傷するのを軽減できる。
したがって、本発明のシリコンインゴットの連続鋳造方法を、太陽電池用ウェーハの製造に適用すれば、製造歩留りを向上できるとともに、太陽電池の品質向上に大きく寄与することができる。
1:チャンバー、 2:シャッター、 3:シリコンインゴット、
3a:シリコンインゴットの外面、 4:引出し口、 5:不活性ガス導入口、
6:排気口、 7:無底冷却ルツボ、 7a:冷却ルツボの内面、
7b:Ni−B合金めっき部、 8:誘導コイル、 9:アフターヒーター、
11:原料導入管、 12:シリコン原料、 13:溶融シリコン、
13a:溶融シリコンの外面、 14:プラズマトーチ、 15:支持台
20:シリコンインゴット、 20a:シリコンインゴットの外面、
21:分割シリコンインゴット、 22:サンプル板、 23:試験片
3a:シリコンインゴットの外面、 4:引出し口、 5:不活性ガス導入口、
6:排気口、 7:無底冷却ルツボ、 7a:冷却ルツボの内面、
7b:Ni−B合金めっき部、 8:誘導コイル、 9:アフターヒーター、
11:原料導入管、 12:シリコン原料、 13:溶融シリコン、
13a:溶融シリコンの外面、 14:プラズマトーチ、 15:支持台
20:シリコンインゴット、 20a:シリコンインゴットの外面、
21:分割シリコンインゴット、 22:サンプル板、 23:試験片
Claims (1)
- 軸方向の一部が周方向で複数に分割された無底の冷却ルツボを誘導コイル内に配置し、前記誘導コイルによる電磁誘導加熱により、前記冷却ルツボ内に溶融シリコンを形成し、前記冷却ルツボから引き下げながら凝固させてシリコンインゴットを連続鋳造する方法において、前記冷却ルツボとして、その内面のうちの前記溶融シリコンの外面および前記シリコンインゴットの外面と対向する部分に、Ni−B合金めっきが施されたものを用いることを特徴とするシリコンインゴットの連続鋳造方法。
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