JP3603676B2 - シリコン連続鋳造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、太陽電池用シリコン鋳塊等の製造に使用されるシリコン連続鋳造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、太陽電池用シリコンウエーハはシリコンの一方向性凝固鋳塊を薄くスライスすることにより製造されている。ここで、シリコンウエーハの品質及びコストはシリコン鋳塊の品質及びコストに支配される。このため、シリコンウエーハの品質を上げ、コストを下げるには、高品質なシリコンの一方向性凝固鋳塊を安価に製造する必要があり、この方法として、電磁誘導加熱を用いたシリコンの連続鋳造方法が、本出願人により実用化されている。
【0003】
電磁誘導加熱を用いたシリコンの連続鋳造方法では、図6に示すように、誘導コイル2内に配置され、且つ、軸方向の少なくとも一部が周方向で分割された導電性の無底ルツボ3が使用される。操業では、無底ルツボ3内に供給されたシリコン原料が、誘導コイル2に供給される高周波電力により無底ルツボ3を介して誘導加熱溶解され、そのシリコン融液22を凝固させつつ無底ルツボ3の下方へ抜き出すと共に、無底ルツボ3内への原料供給を続けることにより、シリコンの一方向性凝固鋳塊20(以下、単にシリコン鋳塊という)が連続的に製造される。
【0004】
この方法では、無底ルツボ3を軸方向の少なくとも一部で周方向に分割したことにより、無底ルツボ3内のシリコン原料が電磁誘導加熱により溶解されるだけでなく、この溶解により生じたシリコン融液22と無底ルツボ3との間に反発力が生じ、この間の接触が軽減されることにより、シリコン鋳塊12の引き抜きが容易となり、且つ無底ルツボ3によるシリコン鋳塊20の汚染が低減される。
【0005】
このようなシリコンの連続鋳造方法では、無底ルツボ内に供給されるシリコン原料は、製品品質の点からは不純物の少ない高級なものが要求されるが、高級なシリコン原料は高価であるため、製造コストの点からは不純物の比較的多い低級なものが求められる。この矛盾を解消する方法として、無底ルツボ内のシリコン融液の液面にプラズマガスを吹き付けることにより、鋳造過程でシリコンの精製を行う方法が、特開平4−130009号公報により提示されている。
【0006】
この方法は、電磁誘導加熱とプラズマガスによる精製を併用したものであるが、電磁誘導加熱を使用しないプラズマガスによる精製方法も、特開平11−49510号公報等により提示されている。
【0007】
電磁誘導加熱による溶解とプラズマガスによる精製を併用したシリコンの連続鋳造方法では、プラズマは精製機能だけでなく、無底ルツボ内のシリコン原料の溶解のための有効な加熱源としての機能も有する。電磁誘導加熱による連続鋳造では、無底ルツボ内のシリコン原料の初期溶解等を行うために二次加熱源が必要とされる。この二次加熱源としては例えば電子ビームが使用されていたが、電子ビーム加熱はチャンバ内の減圧を必要とするのに対し、プラズマ加熱は常圧での操業が可能である。このようなプラズマ加熱の有利さに着目して、本出願人はプラズマ、特に移行式プラズマアークを二次加熱源として併用する電磁誘導鋳造方法の開発を進めている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、シリコン鋳塊の太陽電池としての性能を向上させるには、シリコンの融点である1420℃から1100℃までの温度領域で、シリコン鋳塊の製造時における温度勾配をできるだけ小さく制御するのが有効である。これに関連して、本出願人は「太陽電池に供される多結晶シリコン鋳塊を一方向凝固により製造する際に、シリコンが1420℃から1200℃までの温度域を通過するときの温度勾配を15〜25℃/cmの範囲内に制御することを特徴とする太陽電池用多結晶シリコン鋳塊の製造方法」を特開平4−342496号公報により提示している。
【0009】
1420℃から1100℃までの温度領域での温度勾配の低減が太陽電池の性能向上に有効な理由は、シリコンが1420℃から1100℃までの温度領域を通過する際に太陽電池の変換効率を悪化させる多くの結晶欠陥が発生し、この温度領域で温度勾配を小さくすれば結晶内部に発生する熱応力が緩和され、結晶欠陥の発生が抑制されることなどにある。
【0010】
特開平4−342496号公報では、この凝固直後の鋳塊の温度勾配が制御されているが、ここにおける温度勾配は、シリコン鋳塊の軸方向における温度勾配である。本発明者らによるその後の研究によると、現実に熱応力を決定しているのは、シリコン鋳塊の半径方向の温度勾配であり、鋳塊中心部と鋳塊表層部の温度差をできるだけ高温部で0で近づけるのが、性能向上のために必要であることが判明した。
【0011】
無底ルツボを使用するシリコンの連続鋳造方法で、凝固直後のシリコン鋳塊の半径方向の温度勾配を小さくするには、凝固直後の鋳塊の側面からの放熱量を抑える必要がある。このためには、凝固直後の鋳塊の側面を保温するのが有効であり、具体的には無底ルツボの冷却部であるコイル下端からルツボ下端までの長さを短縮するのが有効である。しかし、このような保温強化を行うと、無底ルツボ下での鋳塊肌温度が上昇し、ある一定温度以上になると凝固シェルの破断による湯漏れが発生する。このため、鋳塊上方から投入される熱量が決まれば、湯漏れを発生させない範囲において、側面からの放熱が可能な最小放熱量は自ずと決まる。
【0012】
電磁誘導加熱による連続鋳造方法の場合、シリコン融液の凝固は誘導コイルの下端レベルから始まる。投入するシリコン原料を溶解するのに必要な熱量は誘導加熱のみにより供給されるので、他の加熱方法を用いる場合に比べて電磁力によるシリコン融液の対流が顕著となり、その結果、下方への熱流速が増大し、固液界面が下方へ深く窪んだ凹形状となる。更に、鋳造速度を速くした場合、誘導加熱量が増えるために熱対流が顕著になり、かつ下方への熱流速が増えるために、固液界面の凹形状は顕著となる。その結果、中心部温度が長時間低下せず、凝固直後の鋳塊の半径方向の温度勾配が増大する。
【0013】
加えて、固液界面の凹形状が顕著であると、凝固シェルが薄くなるため、凝固直後の鋳塊側面を保温することは難しく、その側面からの放熱量を増やために、無底ルツボの冷却部である誘導コイル下端からルツボ下端までの長さを大きくすることが行われる。その結果、ルツボ表面に広い範囲で対面した凝固直後の鋳塊は、奪熱が促進され、更に顕著な品質劣化を生じる。
【0014】
これに加え、電磁誘導加熱の場合は、誘導電流はルツボ内面に面するシリコン融液の表面近傍を流れるため、ジュール熱の殆どはこの表面近傍で生じる。このため、シリコン融液中に投入された追加原料は、その融液の表面近傍に移動して始めて溶解し、融液中央部には未溶解の原料が島状に残ることになる。また、溶融シリコンに働く電磁力のために、その上面は上方へ盛り上がり、誘導コイルから離れる。このため、溶解出力の増大が原料の溶解能力の増大に効果的に寄与しない。従って、追加原料の溶解性が十分とは言えない。
【0015】
本出願人は、前述した通り、プラズマ、特に移行式プラズマアークを二次加熱源として併用する電磁誘導鋳造方法の開発を進めている。この開発研究の過程で、移行式プラズマアークの併用は、電磁誘導加熱に伴う上述の諸問題を解決するのに非常に有効なことが判明した。
【0016】
即ち、鋳造途中の原料溶解にプラズマ加熱を併用すると、電磁誘導加熱の負担を軽減でき、その負担軽減により、電磁力による溶融シリコンの熱対流が抑制され、下方への熱流速が抑制されることにより、固液界面が平坦化され、その凹形状が緩和される。その結果、凝固直後のシリコン鋳塊の半径方向の温度勾配が低減する。また、凝固シェルが厚くなるため、鋳塊側面の保温強化が可能になり、この保温強化によっても半径方向の温度勾配が低減する。
【0017】
特に、移行式プラズマアークの場合は、シリコンの鋳造に必要な大出力を得やすい上に、アーク電流が対極であるシリコン鋳塊を流れ、これによるジュール熱により、凝固直後のシリコン鋳塊を内部から保温する効果も期待できる。また、電磁誘導加熱で問題となる追加原料の溶解性の向上も期待できる。
【0018】
しかしながら、移行式プラズマ加熱を電磁誘導加熱と併用してシリコンの連続鋳造を行う場合、プラズマ電流の通電経路に関連して以下の問題を生じることも合わせて明らかとなった。
【0019】
移行式プラズマアークで無底ルツボ内に供給されるシリコン原料を加熱溶解する場合、無底ルツボ内に上方からプラズマアークトーチを挿入し、そのトーチと無底ルツボ内のシリコン融液との間にプラズマアークを発生させる。このプラズマアークの発生のため、トーチをプラズマ電源の一方の極に接続し、他方の極を、無底ルツボの下方に引き出されるシリコン鋳塊と電気的に接続して給電を行う必要がある。
【0020】
鋳塊側の給電構造については、シリコン鋳塊の下方に連結された引き抜き棒に鋳塊側のプラズマ用電極を取り付けることが、特開平11−49510号公報に記載されている。しかし、無底ルツボから引き出されるシリコン鋳塊は、シリコン融液と接する頭頂部から、プラズマ用電極が接触する給電部までの間で、鋳塊自身が抵抗体となってプラズマ電流によるジュール熱を発生する。太陽電池用シリコンの比抵抗は常温で0.5Ωcmから2.0Ωcm程度であるが、加熱状態では高抵抗で、融点(1410℃)から下がるにつれてその比抵抗は大きくなり、500℃から300℃の間では特に高抵抗である。
【0021】
鋳塊側のプラズマ用電極を引き抜き棒に取り付けると、シリコン鋳塊は全長にわたって発熱を生じるが、連続鋳造では鋳塊の全長は一定しないので、発熱が不安定となる。これは鋳塊品質に重大な悪影響を与える。
【0022】
鋳造の進行に伴ってシリコン鋳塊の全長が増大した場合は、シリコン鋳塊の頭頂部から給電部までの通電距離が長くなり、電気抵抗が増大するため、鋳塊上のシリコン融液に十分な溶解熱を与えるためにはプラズマ電源の出力(電圧)を非常に大きくしなければならない。この電圧増大は、鋳造時の熱効率を悪化させ、高品質なシリコン鋳塊を安価に製造する上で非常に大きな問題となる。
【0023】
チャンバ高を抑え、且つ長い鋳塊長を確保しようとすると、給電部はチャンバの下方に位置することになる。チャンバの下方で給電を行うと、シリコン鋳塊は温度が下がらないままチャンバの外に引き出され、急激な温度変化により表面割れを生じる危険性がある。連続鋳造の継続のためには一定長さを鋳造するごとにチャンバの下方でシリコン鋳塊を切断する必要があるが、切断部の温度が高くなくなるため、切断刃が温度的に耐えられず、切断が困難になる危険性もある。
【0024】
本発明の目的は、移行式プラズマアークによるプラズマ加熱を使用する場合に問題となる、鋳塊通電に伴う電力ロス及び鋳塊発熱を安定的に抑え、これにより、高品質なシリコン鋳塊の経済的な製造を可能にするシリコン連続鋳造方法を提供することにある。
【0025】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明のシリコン連続鋳造方法は、シリコン原料を溶解する加熱源として少なくとも移行式プラズマアークを用い、この加熱源により無底ルツボ内に形成されたシリコン融液を下方へ降下させて凝固させることにより、無底ルツボからシリコン鋳塊を連続的に取り出すシリコン連続鋳造方法において、移行式プラズマアークを発生させるための鋳塊側のプラズマ用電極を、鋳塊温度が500℃以上900℃以下となる位置で鋳肌に接触させるものである。
【0026】
本発明のシリコン連続鋳造方法では、プラズマ加熱の使用により、電磁力によるシリコン融液の対流が抑制され、固液界面が平坦化される。この平坦化により、鋳塊側面の保温強化も可能になる。鋳塊側面の保温強化とは、例えば冷却部である誘導コイル下端から無底ルツボ下端までの長さを短縮することである。これらにより、太陽電池としての品質に重大な影響を及ぼす凝固直後のシリコン鋳塊の半径方向の温度勾配が低減し、その品質が向上する。
【0027】
特に、プラズマが移行式プラズマであるため、シリコン溶解における熱効率、出力を高く設定することが可能となり、かつプラズマガスの消費量も少なくできる。更に、シリコン鋳塊を流れるプラズマ電流によるジュール熱による凝固直後の鋳塊の保温も期待できる。
【0028】
そして本発明のシリコン連続鋳造方法では、このような移行式プラズマアークによる高効率なプラズマ加熱を使用するにもかかわらず、鋳塊側のプラズマ用電極を、鋳塊温度が500℃以上900℃以下となる位置、好ましくは定位置で鋳肌に接触させるため、電極接触位置より下方での顕著な電圧降下が回避されることにより、プラズマ電力の消費量が大幅に抑制される。また、電極接触位置より下方での顕著なジュール発熱が回避されることにより、鋳塊をチャンバから引き出すときの温度が大幅に下がり、鋳塊の表面割れや切断刃の異常な消耗等が防止される。
【0029】
即ち、鋳塊中の電圧降下の増大を引き出し方向で見た場合、電圧降下は鋳塊温度が600℃程度まで下がった領域から急激に増大し始め、500℃程度で300V(16cm角鋳塊の場合)に達し、その先でも急増を続ける(図5参照)。電圧降下が300Vを超えると、鋳塊自身の発熱が顕著となり、鋳塊温度が下がらなくなる。また、その大きな電圧降下を補うために電源電圧を高める必要がある。鋳塊側のプラズマ用電極を、鋳塊温度が500℃以上の領域で鋳肌に接触させれば、この顕著な電圧降下及びジュール発熱が回避される。但し、電極接触位置における鋳塊温度が900℃を超えると、電極の熱変形や熱軟化のため給電が困難となる。なお、本発明での鋳塊温度は表面温度である。
【0030】
鋳塊側のプラズマ用電極は、本発明では高温の鋳肌に接触し、且つ鋳肌との間で相対的な移動を生じるので、耐熱性及び高温耐磨耗性を考慮する必要がある。この観点から、鋳塊側のプラズマ用電極としては、金属の弾性力により鋳肌に弾性的に接触するものや、金属、グラファイト等の導電体からなるローラが好ましい。
【0031】
無底ルツボ内にシリコン融液を形成する加熱源としては、電磁誘導加熱とプラズマアーク加熱を併用したものが好ましい。鋳造中、固液界面の凹化防止のために電磁誘導出力は抑制されるが、これを0にすると、無底ルツボとシリコン融液の間に働く反発力がなくなり、シリコン鋳塊の引き抜き性が悪化する。即ち、鋳造中は、プラズマアーク加熱を主とし、電磁誘導加熱は、シリコン鋳塊の引き抜き可能な電磁力を発生させるのに必要な最小の出力とするのが、最も好ましい形態である。
【0032】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は本発明のシリコン連続鋳造方法を実施するのに適した連続鋳造装置の構成図、図2は同連続鋳造装置の給電部の詳細構成図である。
【0033】
連続鋳造装置は、図1に示すように、太陽電池用のシリコン鋳塊20の連続製造に使用される。鋳造雰囲気を保持するためのチャンバ1内には、誘導コイル2と組み合わされた角筒状の無底ルツボ3が配置されると共に、無底ルツボ3の下方に連続して保温用のヒータ4が配置されている。
【0034】
シリコン鋳塊20は、電磁誘導加熱とプラズマ加熱の併用により無底ルツボ3内で連続的に製造され、チャンバ1の下方に設けられた鋳塊支持装置6,6・・により、ヒータ4による保温を受けつつチャンバ1の下方へ引き出される。
【0035】
無底ルツボ3は、電磁誘導加熱のため、水冷銅等の導電材料からなり、且つ、上部を残して周方向に複数に分割されている。無底ルツボ3内には、チャンバ1の外に設けられた原料ホッパ5からダクトを介してシリコン原料21が投入される。その投入原料を誘導コイル2と共同して加熱溶解するために、無底ルツボ3内には上方からプラズマアークトーチ7が垂直に挿入されている。
【0036】
プラズマアークトーチ7は移行式で、プラズマ電源8の陰極に接続されている。プラズマ電源8の陽極は、鋳塊側のプラズマ用電極10と接続されている。この電極10は、無底ルツボ3から下方に引き出されるシリコン鋳塊20の鋳肌に定位置で接触する。電極10の接触位置は、鋳塊温度が900〜500℃となるチャンバ1内である。
【0037】
電極10の詳細構造は、図2に示すように、シリコン鋳塊20の鋳肌に対向するベース部材11の対向面に、電極10として複数の接触片12,12・・を植設固定した構造になっている。
【0038】
ベース部材11は、銅などの導電性金属からなり、内部を流通する冷却水により強制的に冷却されると共に、前述したプラズマ電源8の陽極に電気的に接続されている。電極10として複数の接触片12,12・・は、弾力性を兼ね備えたバネ鋼等の導電性金属からなる水平薄板であり、シリコン鋳塊20の移動方向である上下方向に所定の間隔で並列した状態で、シリコン鋳塊20の鋳肌に弾性的に接触している。接触位置は、前述したとおり、鋳塊温度が900〜500℃となるチャンバ1内である。
【0039】
次に、この連続鋳造装置を使用してシリコン鋳塊20を連続的に製造する方法について説明する。
【0040】
まず、無底ルツボ3内に下方からダミー材を挿入し、その上に載せた初期原料を、プラズマアークトーチ7を用いて溶解し、無底ルツボ3内にシリコン融液22を形成する。次いで、誘導コイル2によりシリコン融液22に電磁力を付与し、この状態でシリコン融液22を徐々に降下させて凝固させる。これと同時に、シリコン融液22にシリコン原料21を追加投入し、その追加原料を誘導コイル2による電磁誘導加熱とプラズマアークトーチ7によるプラズマ加熱との併用により溶解する。
【0041】
この操作を続けることにより、無底ルツボ3からシリコン鋳塊20が連続的に引き出される。このシリコン鋳塊20は、下方のヒータ4で保温されつつ更に降下を続け、チャンバ1の下方へ引き出される。チャンバ1の下方に所定長のシリコン鋳塊20が製造されると、チャンバ1の直下で回転式の切断刃9によりシリコン鋳塊20を切断する。
【0042】
この鋳造中、電極10としての接触片12,12・・は、シリコン鋳塊20の下降に伴って下方に撓み、その下降を阻害したり破損を生じることなく鋳肌の高温部(900〜500℃)に弾性的に接触して、シリコン鋳塊20に確実な給電を行う。これにより、プラズマ電流は、プラズマ電源8の陽極−電極10−シリコン鋳塊20−シリコン融液22−プラズマアークトーチ7−プラズマ電源8の陰極の順に流れ、ここに直流回路を形成する。この結果、シリコン鋳塊20では、電極10の接触位置から頭頂部にかけての高温部にのみ限定的にプラズマ電流が流れる。
【0043】
このような高温部では、比抵抗が比較的小さいため、プラズマ電流による電圧降下が小さい。このため、電圧降下を補うための電源電圧の増大が僅かとなり、電力消費量が抑制される。通電による発熱量も少ないため、チャンバ1から引き出されるときの鋳塊温度が、プラズマ加熱を行わない場合と大差ないレベルまで下がり、引き出し時の熱衝撃による鋳塊の表面割れが防止される。切断刃9によりシリコン鋳塊20を切断する場合も、切断部の温度が低下するので、切断刃9の異常な損耗が防止される。また、頭頂部から接触位置までの距離が一定で、この間の総抵抗が変化しないため、鋳造の進行に伴う発熱量の変化が生じない。このため、発熱量の変動に起因する品質低下も防止される。
【0044】
図3及び図4は別の給電部の詳細構成図である。
【0045】
図3では、ベース部材11の対向面側に電極10としてのローラ13が取付けられている。ローラ13をシリコン鋳塊20の鋳肌に押しつけるために、ベース部材11はスプリング14によって対向面側へ付勢されている。ローラ13は、銅等の軟らかい導電性金属からなり、シリコン鋳塊20の下降に伴って回転するように、鋳肌に平行な水平軸15にて回転自在に支持されている。
【0046】
また図4では、ローラ13の外周面に弾力性を有する複数の接触片12,12・・が周方向に所定の間隔で植設されている。
【0047】
いずれの給電構造の場合も、電極10は、シリコン鋳塊20の下降を阻害することなく、また損傷を生じることなく、高温の鋳肌に接触して、シリコン鋳塊20に確実な給電を行う。
【0048】
図5はシリコン鋳塊に接触する電極の接触位置が鋳塊の軸方向温度分布に与える影響を、16cm角鋳塊(鋳造速度2mm/分)の場合について示す図表である。
【0049】
図中、破線はプラズマ用電極を鋳塊に接触させない場合、即ちプラズマ加熱を行わない無通電の場合の軸方向の温度分布を示す。右下がりの太線はプラズマ用電極を頭頂部から6m以上離れたチャンバ外の約500℃の位置で鋳肌に接触させた場合の軸方向の温度分布を示す。また、右上がりの太線は、参考のために、後者の場合の鋳塊中の電圧降下を示したものである。
【0050】
プラズマ加熱を行わない無通電の場合は、シリコン融液と接する頭頂部の1410℃を最高として、頭頂部からの距離が増大するにつれて鋳塊温度がスムーズに低下し、チャンバから引き出される約4mの位置での鋳塊温度は200℃となる。この温度では、チャンバから引き出しても熱衝撃による鋳塊の表面割れは発生しない。また、チャンバの下方で鋳塊を切断する場合も切断刃の異常な損耗は生じない。
【0051】
ところが、プラズマ加熱を行う場合に、電極を頭頂部から6m以上離れたチャンバ外の約500℃の位置で鋳肌に接触させると、チャンバ内では鋳塊の温度低下が非常に遅くなる。特に、5mから先では殆ど温度が低下しない。その結果、チャンバから引き出される4mの位置でも、鋳塊温度は600℃を維持する。この理由は、5mの位置で鋳塊温度が500℃となり、これより先では鋳塊中の電圧降下が300Vを超え、プラズマ電流によるジュール熱の発生が顕著になることである。
【0052】
このような高温の状態で鋳塊をチャンバから引き出すと、熱衝撃による表面割れを生じる危険性が高い。また、チャンバの下方で鋳塊を切断する場合は切断刃の異常な損耗が生じる。更に、5mから先での電圧降下を補うために、電源電圧をかなり上げる必要があり、これによる電力ロスが問題になる。
【0053】
これらに対し、電極を500℃以上の位置で鋳肌に接触させた▲1▼〜▲4▼では、細線で示されるように、接触位置より先で鋳塊温度が急激に低下する。その結果、チャンバから引き出される4mの位置では、500℃の位置で接触させた▲4▼の場合でも、鋳塊温度は400℃まで低下し、900℃及び800℃の各位置で接触させた▲1▼及び▲2▼の場合は、無通電の場合と殆ど変わらない300℃以下まで鋳塊の温度低下が進む。
【0054】
このため、プラズマ加熱を行うにもかかわらず、その加熱に伴う電力ロスの問題及び鋳塊加熱の問題が解決される。
【0055】
なお、500℃を超える位置で電極を鋳肌に接触させた▲5▼の場合は、接触位置より先での温度低下が不十分であり、500℃の位置から接触位置までの間の急激な電圧降下により、電力ロスが過大となり、鋳塊をチャンバ外に引き出す時点での鋳塊温度も十分に下がらない。
【0056】
【発明の効果】
以上に説明したとおり、本発明のシリコン連続鋳造方法は、無底ルツボ内にシリコン融液を形成するための加熱源として移行式プラズマアークを使用することにより、誘導加熱で問題となる固液界面の凹形状を緩和し、これを平坦化する。また、この平坦化により、無底ルツボの冷却部の縮小を可能にし、これにより凝固直後の鋳塊側面の保温強化を可能にする。これらにより、高速鋳造の場合も、凝固直後の鋳塊の半径方向の温度勾配を軽減し、太陽電池としての品質を向上させる。
【0057】
しかも、プラズマ用電極を鋳塊温度が900〜500℃の範囲内となる鋳肌に接触させることにより、移行式プラズマアークで大きな問題となる鋳塊のジュール発熱を安定的に抑制し、鋳塊割れや切断刃の異常損耗を防止する。また、顕著な電圧降下に伴うプラズマ電源の電力ロスを抑制し、熱効率を高める。
【0058】
従って、本発明のシリコン連続鋳造方法によれば、高品質なシリコン鋳塊が能率よく低コストで製造される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のシリコン連続鋳造方法を実施するのに適した連続鋳造装置の構成図である。
【図2】同連続鋳造装置の給電部の詳細構成図である。
【図3】別の給電構造を示す給電部の詳細構成図である。
【図4】更に別の給電構造を示す給電部の詳細構成図である。
【図5】シリコン鋳塊に接触する電極の接触位置が鋳塊の軸方向温度分布に与える影響を示す図表である。
【図6】電磁誘導加熱を用いたシリコン連続鋳造方法の概念図である。
【符号の説明】
1 チャンバ
2 誘導コイル
3 無底ルツボ
4 保温炉
5 原料ホッパ
6 鋳塊支持装置
7 プラズマアークトーチ
8 プラズマ電源
9 切断刃
10 プラズマ用電極
20 シリコン鋳塊
21 シリコン原料
22 シリコン融液
Claims (4)
- シリコン原料を溶解する加熱源として少なくとも移行式プラズマアークを用い、この加熱源により無底ルツボ内に形成されたシリコン融液を下方へ降下させて凝固させることにより、無底ルツボからシリコン鋳塊を連続的に取り出すシリコン連続鋳造方法において、移行式プラズマアークを発生させるための鋳塊側のプラズマ用電極を、鋳塊温度が500℃以上900℃以下となる位置で鋳肌に接触させることを特徴とするシリコン連続鋳造方法。
- 軸方向の少なくとも一部が周方向で複数に分割された無底ルツボを誘導コイル内に配置し、該誘導コイルによる電磁誘導加熱と前記移行式プラズマアークによるプラズマ加熱の併用により、無底ルツボ内にシリコン融液を形成することを特徴とする請求項1に記載のシリコン連続鋳造方法。
- 前記プラズマ用電極は金属であり、該金属の弾性力により鋳肌に弾性的に接触する構成であることを特徴とする請求項1又は2に記載のシリコン連続鋳造方法。
- 前記プラズマ用電極は導電性のローラであることを特徴とする請求項1又は2に記載のシリコン連続鋳造方法。
Priority Applications (1)
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---|---|---|---|
JP18786299A JP3603676B2 (ja) | 1999-07-01 | 1999-07-01 | シリコン連続鋳造方法 |
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