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JP2011219681A - シラン架橋樹脂の製造方法及び電線・ケーブルの製造方法 - Google Patents

シラン架橋樹脂の製造方法及び電線・ケーブルの製造方法 Download PDF

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JP2011219681A
JP2011219681A JP2010092513A JP2010092513A JP2011219681A JP 2011219681 A JP2011219681 A JP 2011219681A JP 2010092513 A JP2010092513 A JP 2010092513A JP 2010092513 A JP2010092513 A JP 2010092513A JP 2011219681 A JP2011219681 A JP 2011219681A
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silane
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gel fraction
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JP2010092513A
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Shingo Ashihara
新吾 芦原
Toshiharu Goto
敏晴 後藤
Daisuke Shanai
大介 社内
Akinari Nakayama
明成 中山
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Hitachi Cable Ltd
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Hitachi Cable Ltd
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Abstract

【課題】成形後のシラン架橋樹脂の変形を防止するとともに、成形後にシラン架橋樹脂中から徐々に水分を放出させて段階的に架橋反応を進行させることができるシラン架橋樹脂の製造方法を提供する。
【解決手段】ベース樹脂にシラン化合物及び架橋触媒を添加し、成形機を用いてシラン架橋樹脂を製造する方法において、ベース樹脂に水分放出剤を添加するとともに、前記成形機より排出された直後のシラン架橋樹脂の水分含有量を500ppm以下とするものである。
【選択図】図1

Description

本発明は、架橋反応を促進するために脱水作用を有する鉱物等が添加されたシラン架橋樹脂の製造方法及び電線・ケーブルの製造方法に関するものである。
樹脂やゴム材料の耐熱性を向上させる手段の一つとして、分子鎖同士を化学的に結合する架橋という方法が広く用いられている。
架橋材料の中でも架橋ポリエチレンは電線・ケーブルの被覆材料などに使用されている汎用性の高い材料の一つである。架橋ポリエチレンを製造する際の架橋方法は、大きく有機過酸化物架橋、電子線架橋、シラン架橋の3種類に分けることができる。このうち、有機過酸化物や電子線を用いた架橋方法では、有機過酸化物の熱分解や電子線の照射のために比較的大規模な設備が必要となる。また、電子線による架橋ポリエチレンは架橋の均一性保持のために薄肉の電線にその適用が限られているのが現状であり、有機過酸化物を用いた製造では押出被覆と架橋が同一工程で進行するために設備の大きさに応じて押出速度が制限されてしまう。
一方、シラン架橋は高温高湿の恒温槽内あるいは工場内に保管するだけでも架橋が進行するため設備は比較的小規模にすることができ、また押出速度の制限も比較的少ない。このため、特に600V程度の低圧架橋ポリエチレン電力ケーブルなどでは、1970年代以降、有機過酸化物からシラン架橋への切り替えが拡大している。
このようにシラン架橋は他の架橋方法に比べて安価な製造を可能とする方法ではあるものの、その中でも架橋反応を進行させるための恒温槽の設置、維持費用やケーブルの出し入れに要する工数は製造コストや作業者の負担が大きい要素となっている。また、高圧用ケーブルなど樹脂厚の厚いものは架橋反応に必要な水が内部まで浸透しにくいなどの理由からシラン架橋はあまり適用されない。
特許文献1には、シラン架橋性絶縁用樹脂組成物中の水分含有量を規定することにより、シラン水架橋を促進させ、生産性の向上、設備コストの低減を図ることが記載されている。特許文献1に記載の発明は、水分含有量の調整をホッパードライヤーを用いて行うものであり、成形機に導入される前にホッパーにて組成物の水分含有量を規定の値に調整するものである。
特開2009−70611号公報
しかしながら、特許文献1に記載のように、成形機に導入される前にホッパーにて組成物の水分含有量を規定の値に調整し、シラン水架橋を促進させた場合、架橋度の進行が従来よりも早くなることにより、成形機から排出された時点での架橋度が従来よりも高いことが考えられる。このように、成形機から排出された直後の架橋度が高いと、後に排出された樹脂組成物を用いて電線やケーブルを製造しようとする際に、架橋によって生じた歪みにより被覆された樹脂組成物に変形が生じてしまうおそれがある。
そこで本発明の目的は、成形機より排出されたシラン架橋樹脂の架橋の進行をある程度抑えて、成形後のシラン架橋樹脂の変形を防止するとともに、成形後にシラン架橋樹脂中から徐々に水分を放出させて段階的に架橋反応を進行させることができるシラン架橋樹脂の製造方法及び電線・ケーブルの製造方法を提供することにある。
上記課題を達成すべく請求項1の発明は、ベース樹脂にシラン化合物及び架橋触媒を添加し、成形機を用いてシラン架橋樹脂を製造する方法において、前記ベース樹脂に水分放出剤を添加するとともに、前記成形機より排出された直後のシラン架橋樹脂中の水分含有量を500ppm以下とすることを特徴とするシラン架橋樹脂の製造方法である。
請求項2の発明は、シラン架橋樹脂中の水分含有量は、その成形温度或いは前記水分放出剤の添加量により調整する請求項1に記載のシラン架橋樹脂の製造方法である。
請求項3の発明は、前記水分放出剤が、鉱物又は鉱物様化合物である請求項2に記載のシラン架橋樹脂の製造方法である。
請求項4の発明は、前記水分放出剤の配合量が、前記シラン架橋樹脂100質量部中0.025質量部以上1.0質量部以下である請求項3に記載のシラン架橋樹脂の製造方法である。
請求項5の発明は、前記ベース樹脂に前記シラン化合物を反応させてシラングラフト樹脂を作製し、他方、前記架橋触媒及び前記水分添加剤を含むマスターバッチを作製し、前記シラングラフト樹脂に前記マスターバッチを添加してシラン架橋樹脂を成形する請求項1〜4いずれかに記載のシラン架橋樹脂の製造方法である。
請求項6の発明は、請求項1に記載のシラン架橋樹脂の製造方法により得られたシラン架橋樹脂を導体の外周に被覆したことを特徴とする電線・ケーブルの製造方法である。
本発明によれば、成形機より排出されたシラン架橋樹脂の架橋の進行をある程度抑えて、成形後のシラン架橋樹脂の変形を防止するとともに、成形後にシラン架橋樹脂中から徐々に水分を放出させて段階的に架橋反応を進行させることができる。
本発明に係るシラン架橋樹脂被覆ケーブルの製造に使用した装置の模式図を示したものである。
以下、本発明の好適な一実施の形態を添付図面に基づいて詳述する。
本発明は、ベース樹脂にシラン化合物及び架橋触媒を添加し、成形機を用いてシラン架橋樹脂を製造する方法において、ベース樹脂に水分子を放出する物質(水分放出剤)を添加するとともに、成形機より排出された直後のシラン架橋樹脂中の水分含有量を500ppm以下とすることで、成形機より排出されたシラン架橋樹脂の架橋の進行をある程度抑えて、成形後のシラン架橋樹脂の変形を防止するものである。また、予めベース樹脂に水分放出剤を添加することにより、成形機から排出された直後のシラン架橋樹脂中の水分含有量をある程度抑えたとしても、成形後にシラン架橋樹脂中に徐々に水分を放出させることができ、段階的に架橋反応を進行させることができる。
シラン架橋樹脂の架橋反応を進行するための一般的な手段としては、架橋剤(シラン化合物およびラジカル発生剤)や架橋触媒、その他酸化防止剤などの添加剤を配合した樹脂を押出機や射出成形機などを用いて成形した後、シラン架橋樹脂を高温高湿雰囲気や温水中に一定時間保管する方法がとられる。すなわち熱や水を樹脂外部から内部へと供給することで架橋反応を進める方法がとられる。
本発明は、この方式とは異なり、前記したように、ベース樹脂に水分子を放出する物質(水分放出剤)を予め仕込むことで樹脂内部から均一に架橋を促進するものである。また、水分放出剤の量や成形温度をコントロールすることで成形直後のシラン架橋樹脂中の水分含有量が500ppm以下となるように抑制し、成形後に徐々に水を放出させ段階的に架橋反応を促進することができる。成形後には樹脂中で放出された水が大気中の水分を引き寄せる効果も期待できる。ただし、シラン架橋樹脂中の水分含有量が500ppmを超えてしまうと、成形機排出直後の架橋反応が過剰に進行することにより、シラン架橋樹脂の変形が生じたり、成形中に架橋反応が過剰に進行することでヤケ(局部的な架橋物)が発生する可能性が高くなる。
ここで、シラン架橋樹脂の原料となるベース樹脂は、ポリエチレン、ポリプロピレン、塩素化ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、エチレン−プロピレンゴム、あるいはエチレン−オクテンゴム等より選択されるオレフィン系樹脂やこれらを用いた共重合体などの単独または2種以上をブレンドしたものとすることができる。
架橋剤としては、シラン化合物やシラン化合物を樹脂にグラフトするためのラジカル発生剤が用いられる。シラン化合物は、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランのようなビニル基を有する有機シランが用いられる。シラン化合物をポリオレフィンにグラフトするためのラジカル発生剤は、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ−m−イソプロピル)ベンゼンのようなジアルキルパーオキサイド、m−(t−ブチルペルオキシイソプロピル)−イソプロピルベンゼン、p−(t−ブチルペルオキシイソプロピル)−イソプロピルベンゼン、ジクミル等のラジカル発生剤を単独あるいは、2種以上組み合わせたものが用いられる。
架橋触媒としては、マグネシウムやカルシウムなどのII族、コバルト、鉄などのVIII族、もしくは錫、亜鉛、チタン等の元素や金属化合物、オクチル酸またはアジピン酸の金属塩、アミン系化合物、酸などが挙げられる。より具体的には、ジブチル錫ジラウリレート、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジオクタエート、酢酸第一錫、カプリル酸第一錫、ナフテン酸鉛、カプリル酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、エチルアミン、ジブチルアミン、ヘキシルアミン、ピリジン、硫酸、塩酸などの無機酸、トルエンスルホン酸、酢酸、ステアリン酸、マレイン酸などの有機酸が使用される。
シラン架橋樹脂中の水分含有量は、その成形温度或いは水分放出剤の添加量により調整することが好ましい。ここで、本発明に記載の成形温度や押出温度とは、成形機(押出機)のシリンダの温度を意味し、シリンダ壁面の温度を測定することにより導き出すことができる。また、水分放出剤の配合量は、シラン架橋樹脂100質量部中0.025〜1.0質量部が好ましく、より好ましくは0.025〜0.6質量部である。0.025質量部より少ないと、架橋反応の促進が不十分となり、1.0質量部より多いとシラン架橋樹脂中に水分が放出され過ぎてしまい、成形機排出後の架橋反応が過剰となり、シラン架橋樹脂の変形が生じる可能性がある。
水分放出剤としては、特に天然に産出される鉱物やこれと同様の組成をもつ化合物(鉱物様化合物)を用いる。また、これらの鉱物や化合物は、分子中に結晶水(層間水なども含む)などの水分子を有するものや、あるいは水酸化物のように加熱すると水分子を放出する構造水を有するものである。また、シラン架橋樹脂の成形温度において効果的に水分子を放出するものがより好ましい。
シラン架橋されるベース樹脂がポリエチレンであり、シラン架橋ポリエチレンに対する水分放出剤としては、特にハイドロタルサイトが好ましい。ここで、ハイドロタルサイトとは一般式[M2+ 1-x3+ x(OH)2][An- x/n・mH2O](M2+とM3+はそれぞれ2価と3価の金属イオン、An-は層間に存在する陰イオン)で表される天然または合成化合物を指すものとする。シラン架橋ポリエチレンの成形可能な温度範囲はベースのポリエチレンにもよるが120〜350℃程度であり、ハイドロタルサイトは200〜220℃付近で層間水由来の脱水ピークを有するため、特に効果的な組み合わせと考える。つまり、ハイドロタルサイト以外にも、例えば水酸化アルミニウム(300℃付近で結晶水の脱水)、水酸化マグネシウム(350℃付近で結晶水の脱水)などのシラン架橋ポリエチレンの成形可能温度範囲で水分子を放出する物質は有効な組み合わせとなりうる。
本発明において、成形機から排出されたシラン架橋樹脂は、水分放出剤を含んでいるので、水分放出剤から徐々に水分が放出され、段階的に、均一に架橋反応が進行し、シラン架橋樹脂製造物となる。
シラン架橋樹脂製造物は、電線・ケーブルの絶縁体やシースなどの被覆材料に適用される。特に、本発明により製造されたシラン架橋樹脂製造物は、樹脂厚の厚い高圧用電力ケーブルの被覆材として用いることにより優れた効果を発揮する。
シラン架橋樹脂は、ベース樹脂、シラン化合物、架橋触媒及び水分放出剤等を同時に混合して製造しても良いし、或いは、ベース樹脂にシラン化合物を反応させてシラングラフト樹脂を作製し、他方、架橋触媒及び水分添加剤等を含むマスターバッチを作製し、これらを混合して成形機に供給して製造しても良い。
次に、マスターバッチを用いて製造したシラン架橋樹脂被覆ケーブルについて説明する。
シラン架橋樹脂被覆ケーブルを図1に示す直径40mmの単軸押出機を用いて製造した。製造は2工程に分けて行った。
1工程目では、ベース樹脂と架橋剤(シラン化合物とラジカル発生剤)を160℃〜200℃で混練、反応させることで樹脂をシラングラフト処理してシラングラフト樹脂を得る。
2工程目では、まず架橋触媒、酸化防止剤、水分放出剤としてハイドロタルサイトを6インチの小型ロール機を用いてポリエチレンに練り込んだマスターバッチを用意し、1工程目で作製したシラングラフト樹脂とドライブレンドする。次に、これを押出機1のホッパ2から投入し、スクリュにより混練しながらクロスヘッド(ダイス)3から樹脂を押し出し、送出機4から送り出された導体8上に被覆してケーブル9を作製した。押出機1内での滞留時間は2分30秒程度であり、押出機1のシリンダの温度は160〜200℃に設定した。ケーブル9を冷却水槽5にて水冷した後、引取機6を介して、巻取機7にて回収した。
次に、回収したケーブルの押出直後の水分含有量を測定し、また、架橋度を測定するためにケーブルのゲル分率を測定した。
回収したケーブルは20cm程度の長さに切り分けて25℃に管理された保管庫内で保管した。定期的にケーブル導体から被覆されたシラン架橋樹脂を剥ぎ取り、1mm厚に切断してゲル分率を測定した。ここで、ゲル分率とは樹脂の架橋度を表す指標であり、樹脂を金網などの中に入れて特定の溶剤で溶かしたとき、溶かされずに金網内に残存している部分(ゲル)の質量と、溶剤で溶かす前の初期の質量の百分率で次のように表される。
ゲル分率(%)=(乾燥後のゲルの質量(g)/初期の質量(g))×100
また、ゲル分率とあわせて3mm角(1mm厚)に切断したシラン架橋樹脂1.5gに含まれる水分含有量をカールフィッシャー水分量測定器により測定した。
以上から、成形直後のシラン架橋樹脂中の水分含有量を500ppm以下とすることで、成形機より排出されたシラン架橋樹脂の架橋の進行をある程度抑えて、成形後のシラン架橋樹脂の変形を防止できることがわかった。また、成形後に十分な架橋反応速度が得られることがわかった。
以下に、本発明の実施例1〜14及び比較例1〜6について説明する。
本実施例1〜14及び比較例1〜6では、シラングラフトさせたポリエチレン(シラングラフトPE)とマスターバッチとを用い、600VのCV(シラン架橋ポリエチレン絶縁)ケーブル(導体公称断面積は38mm2、被覆厚は1.2mm)を作製した。
シラングラフトPEは、40mm単軸押出機で、シリンダの温度をホッパ側から吐出側にかけて160℃−200℃−200℃に設定し、ポリエチレン(PE)、架橋剤(シラン化合物とラジカル発生剤)及び酸化防止剤を混練、反応させて作製した。このシラングラフトPEの材料と配合を表1に示す。
Figure 2011219681
マスターバッチは、架橋触媒、酸化防止剤、水分放出剤を6インチの小型ロール機を用い、表2に示す配合でポリエチレンに練り込んで作製した。
Figure 2011219681
シラングラフトPE95質量部にマスターバッチ5質量部をドライブレンドし、図1で説明した40mm単軸押出機を使用し、ケーブルを作製した。押出温度はシリンダの温度をホッパ側から吐出側にかけて150℃−150℃−150℃(実施例1,13、比較例1)または160℃−170℃−170℃(実施例2〜4,14、比較例2)または160℃−210℃−210℃(実施例5〜8、比較例3,4)または160℃−250℃−250℃(実施例9〜12、比較例5,6)に設定した。表2での押出温度は、吐出側のシリンダ温度(150℃、170℃、210℃、250℃)を示したものである。
表2は、この各押出温度ごとに分けて各実施例と比較例を示し、かつその押出温度ごとにマスターバッチ中のハイドロタルサイト配合量を変化させた例を示したものである。
表2の評価は、押出外観、水分含有量(水分量)及びゲル分率について行った。
押出外観:
押出外観の評価は、押出時に絶縁体(シラン架橋ポリエチレン)の表面粗さと発泡の有無を観察して行った。表面粗さについては、目視でブルームを評価し、ブルームが発生しなかったものを「良」とし、発生したものを「不良」とした。また、手触りで表面平滑性を評価し、十分に平滑(変形無し)であると判断したものを「良」とし、そうでないものを「不良」とした。発泡については絶縁体断面をルーペで観察することにより有無を確認した。
水分量(ppm):
水分量は、絶縁体1.5gに含まれる水分量をカールフィッシャー水分量測定器により測定し、これをppmで表示した。測定は、押出直後、押出7日後、押出21日後に行い、その水分量(ppm)の変化を示した。
ゲル分率(%):
ゲル分率は、押出直後、押出7日後、押出21日後に測定した。このゲル分率(%)から架橋速度の比較を行った。架橋速度の合否判断は、押出7日後のゲル分率が20%以上であれば合格、20%未満であれば不合格とした。
判定:表面平滑性が良好かつ押出7日後のゲル分率が20%以上であれば合格(○)とし、表面平滑性が不良或いは押出7日後のゲル分率が20%未満であれば不合格(×)とした。
表2より、実施例1では押出時の絶縁体表面は十分に平滑であることを確認した。また、絶縁体に発泡は見られなかった。ケーブル押出直後に測定した絶縁体中の水分量は60ppm、ゲル分率は9%、押出7日後では水分量66ppm、ゲル分率21%、押出21日後では水分量68ppm、ゲル分率57%となり、時間の経過につれて水分量、ゲル分率ともに増加した。比較例1と比べると、押出21日後のゲル分率はほぼ同じであるが、押出直後と7日後は実施例1の方が、水分量、ゲル分率ともに高くなっていることから、絶縁体中ではハイドロタルサイトが徐々に水分子を放出したり大気中の水分子を吸水するなどして架橋反応が促進された結果、架橋速度が上がったものと思われる。
表2より、実施例2では押出時の絶縁体表面は十分に平滑であることを確認した。また、絶縁体に発泡は見られなかった。ケーブル押出直後に測定した絶縁体中の水分量は103ppm、ゲル分率は8%、押出7日後では水分量130ppm、ゲル分率22%、押出21日後では水分量155ppm、ゲル分率58%となり、時間の経過につれて水分量、ゲル分率ともに増加した。比較例2と比べると、押出21日後のゲル分率はほぼ同じであるが、押出直後と7日後は実施例2の方が、水分量、ゲル分率ともに高くなっていることから、絶縁体中ではハイドロタルサイトが徐々に水分子を放出したり大気中の水分子を吸水するなどして架橋反応が促進された結果、架橋速度が上がったものと思われる。
表2より、実施例3では押出時の絶縁体表面は十分に平滑であることを確認した。また、絶縁体に発泡は見られなかった。ケーブル押出直後に測定した絶縁体中の水分量は315ppm、ゲル分率は12%、押出7日後では水分量360ppm、ゲル分率31%、押出21日後では水分量427ppm、ゲル分率59%となり、時間の経過につれて水分量、ゲル分率ともに増加した。比較例2や実施例2と比べると、押出21日後のゲル分率はほぼ同じであるが、押出直後と7日後は実施例3の方が、水分量、ゲル分率ともに高くなっていることから、絶縁体中ではハイドロタルサイトが徐々に水分子を放出したり大気中の水分子を吸水するなどして架橋反応が促進された結果、架橋速度が上がったものと思われる。
表2より、実施例4では押出時の絶縁体表面は十分に平滑であることを確認した。絶縁体中には一部発泡が見られた。発泡に関しては架橋発泡体への適用などが考えられることやダイスを低温化して樹脂の粘度を高くすることで抑制もできるので特に問題にはならない。ケーブル押出直後に測定した絶縁体中の水分量は383ppm、ゲル分率は14%、押出7日後では水分量487ppm、ゲル分率34%、押出21日後では水分量537ppm、ゲル分率59%となり、時間の経過につれて水分量、ゲル分率ともに増加した。比較例2や実施例2,3と比べると、押出21日後のゲル分率はほぼ同じであるが、押出直後と7日後は実施例4の方が、水分量、ゲル分率ともに高くなっていることから、絶縁体中ではハイドロタルサイトが徐々に水分子を放出したり大気中の水分子を吸水するなどして架橋反応が促進された結果、架橋速度が上がったものと思われる。
表2より、実施例5では押出時の絶縁体表面は十分に平滑であることを確認した。また、絶縁体に発泡は見られなかった。ケーブル押出直後に測定した絶縁体中の水分量は64ppm、ゲル分率は9%、押出7日後では水分量90ppm、ゲル分率25%、押出21日後では水分量105ppm、ゲル分率59%となり、時間の経過につれて水分量、ゲル分率ともに増加した。比較例3と比べると、押出21日後のゲル分率はほぼ同じであるが、押出直後と7日後は実施例5の方が、水分量、ゲル分率ともに高くなっていることから、絶縁体中ではハイドロタルサイトが徐々に水分子を放出したり大気中の水分子を吸水するなどして架橋反応が促進された結果、架橋速度が上がったものと思われる。
表2より、実施例6では押出時の絶縁体表面は十分に平滑であることを確認した。また、絶縁体に発泡は見られなかった。ケーブル押出直後に測定した絶縁体中の水分量は110ppm、ゲル分率は13%、押出7日後では水分量173ppm、ゲル分率30%、押出21日後では水分量216ppm、ゲル分率58%となり、時間の経過につれて水分量、ゲル分率ともに増加した。比較例3や実施例5と比べると、押出21日後のゲル分率はほぼ同じであるが、押出直後と7日後は実施例6の方が、水分量、ゲル分率ともに高くなっていることから、絶縁体中ではハイドロタルサイトが徐々に水分子を放出したり大気中の水分子を吸水するなどして架橋反応が促進された結果、架橋速度が上がったものと思われる。
表2より、実施例7では押出時の絶縁体表面は十分に平滑であることを確認した。また、絶縁体に発泡は見られなかった。ケーブル押出直後に測定した絶縁体中の水分量は395ppm、ゲル分率は14%、押出7日後では水分量400ppm、ゲル分率39%、押出21日後では水分量469ppm、ゲル分率58%となり、時間の経過につれて水分量、ゲル分率ともに増加した。比較例3や実施例5,6と比べると、押出21日後のゲル分率はほぼ同じであるが、押出直後と7日後は実施例7の方が、水分量、ゲル分率ともに高くなっていることから、絶縁体中ではハイドロタルサイトが徐々に水分子を放出したり大気中の水分子を吸水するなどして架橋反応が促進された結果、架橋速度が上がったものと思われる。
表2より、実施例8では押出時の絶縁体表面は十分に平滑であることを確認した。絶縁体中には一部発泡が見られた。発泡に関しては架橋発泡体への適用などが考えられることやダイスを低温化して樹脂の粘度を高くすることで抑制もできるので特に問題にはならない。ケーブル押出直後に測定した絶縁体中の水分量は490ppm、ゲル分率は17%、押出7日後では水分量587ppm、ゲル分率45%、押出21日後では水分量637ppm、ゲル分率59%となり、時間の経過につれて水分量、ゲル分率ともに増加した。比較例3や実施例5,6,7と比べると、押出21日後のゲル分率はほぼ同じであるが、押出直後と7日後は実施例8の方が、水分量、ゲル分率ともに高くなっていることから、絶縁体中ではハイドロタルサイトが徐々に水分子を放出したり大気中の水分子を吸水するなどして架橋反応が促進された結果、架橋速度が上がったものと思われる。
表2より、実施例9では押出時の絶縁体表面は十分に平滑であることを確認した。また、絶縁体に発泡は見られなかった。ケーブル押出直後に測定した絶縁体中の水分量は66ppm、ゲル分率は10%、押出7日後では水分量102ppm、ゲル分率25%、押出21日後では水分量110ppm、ゲル分率59%となり、時間の経過につれて水分量、ゲル分率ともに増加した。比較例5と比べると、押出21日後のゲル分率はほぼ同じであるが、押出直後と7日後は実施例9の方が、水分量、ゲル分率ともに高くなっていることから、絶縁体中ではハイドロタルサイトが徐々に水分子を放出したり大気中の水分子を吸水するなどして架橋反応が促進された結果、架橋速度が上がったものと思われる。
表2より、実施例10では押出時の絶縁体表面は十分に平滑であることを確認した。また、絶縁体に発泡は見られなかった。ケーブル押出直後に測定した絶縁体中の水分量は110ppm、ゲル分率は12%、押出7日後では水分量153ppm、ゲル分率30%、押出21日後では水分量220ppm、ゲル分率58%となり、時間の経過につれて水分量、ゲル分率ともに増加した。比較例5や実施例9と比べると、押出21日後のゲル分率はほぼ同じであるが、押出直後と7日後は実施例10の方が、水分量、ゲル分率ともに高くなっていることから、絶縁体中ではハイドロタルサイトが徐々に水分子を放出したり大気中の水分子を吸水するなどして架橋反応が促進された結果、架橋速度が上がったものと思われる。
表2より、実施例11では押出時の絶縁体表面は十分に平滑であることを確認した。また、絶縁体に発泡は見られなかった。ケーブル押出直後に測定した絶縁体中の水分量は355ppm、ゲル分率は14%、押出7日後では水分量410ppm、ゲル分率38%、押出21日後では水分量477ppm、ゲル分率59%となり、時間の経過につれて水分量、ゲル分率ともに増加した。比較例5や実施例9,10と比べると、押出21日後のゲル分率はほぼ同じであるが、押出直後と7日後は実施例11の方が、水分量、ゲル分率ともに高くなっていることから、絶縁体中ではハイドロタルサイトが徐々に水分子を放出したり大気中の水分子を吸水するなどして架橋反応が促進された結果、架橋速度が上がったものと思われる。
表2より、実施例12では押出時の絶縁体表面は十分に平滑であることを確認した。絶縁体中には一部発泡が見られた。発泡に関しては架橋発泡体への適用などが考えられることやダイスを低温化して樹脂の粘度を高くすることで抑制もできるので特に問題にはならない。ケーブル押出直後に測定した絶縁体中の水分量は496ppm、ゲル分率は16%、押出7日後では水分量597ppm、ゲル分率44%、押出21日後では水分量638ppm、ゲル分率57%となり、時間の経過につれて水分量、ゲル分率ともに増加した。比較例5や実施例9,10,11と比べると、押出21日後のゲル分率はほぼ同じであるが、押出直後と7日後は実施例12の方が、水分量、ゲル分率ともに高くなっていることから、絶縁体中ではハイドロタルサイトが徐々に水分子を放出したり大気中の水分子を吸水するなどして架橋反応が促進された結果、架橋速度が上がったものと思われる。
表2より、実施例13では絶縁体表面にハイドロタルサイトがブルームしたが他の特性は満足しており、判定は○とした。
表2より、実施例14では実施例13と同様に絶縁体表面にハイドロタルサイトがブルームしたが他の特性は満足しており、判定は○とした。
これらの実験結果により、ハイドロタルサイトを増量することにより架橋速度の増加が可能となることが示された。このことは、ハイドロタルサイトから放出された水やハイドロタルサイトが吸水した水が架橋反応を促進しているためと推定される。また、押出温度をハイドロタルサイトの層間水放出ピーク域である200〜220℃程度に設定することで、より少量のハイドロタルサイトで多量の水分子を樹脂中に仕込むことができ、架橋速度も効果的に上げることができる。押出時の水分量を増やすことで樹脂を発泡させることができ、架橋発泡体材料への展開も期待できる。ダイス温度を下げて樹脂の粘度を上げることで発泡を抑えることも可能と考える。
比較例1はハイドロタルサイトが架橋速度に与える効果を確認するための比較配合である。押出時の絶縁体表面は十分に平滑であり、絶縁体に発泡は見られなかった。ただし、ケーブル押出7日後に測定した絶縁体のゲル分率は15%であった。これよりハイドロタルサイトが添加されなければ十分な架橋速度は得られないことが分かった。
比較例2は比較例1同様ハイドロタルサイトが架橋速度に与える効果を確認するための比較配合である。押出時の絶縁体表面は十分に平滑であり、絶縁体に発泡は見られなかった。ただし、ケーブル押出7日後に測定した絶縁体のゲル分率は16%であった。これよりハイドロタルサイトが添加されなければ十分な架橋速度は得られないことが分かった。
比較例3は比較例1,2同様ハイドロタルサイトが架橋速度に与える効果を確認するための比較配合である。押出時の絶縁体表面は十分に平滑であり、絶縁体に発泡は見られなかった。ただし、ケーブル押出7日後に測定した絶縁体のゲル分率は18%であった。これよりハイドロタルサイトが添加されなければ十分な架橋速度は得られないことが分かった。
比較例4では絶縁体表面がひどくざらつくとともに、大きな外径変動が見られた。これはハイドロタルサイトから放出される多量の水が架橋反応を促進したために押出中にヤケ(局部的な架橋体)を発生させたことや発泡が過剰となり変形や凹凸が現れたことが原因として考えられる。これより押出時には樹脂中の水分量を600ppm程度以下に抑制する必要があると考えられる。
比較例5は比較例1,2,3同様ハイドロタルサイトが架橋速度に与える効果を確認するための比較配合である。押出時の絶縁体表面は十分に平滑であり、絶縁体に発泡は見られなかった。ただし、ケーブル押出7日後に測定した絶縁体のゲル分率は18%であった。これよりハイドロタルサイトが添加されなければ十分な架橋速度は得られないことが分かった。
比較例6では比較例4と同様に絶縁体表面がひどくざらつくとともに、大きな外径変動が見られた。これはハイドロタルサイトから放出される多量の水が架橋反応を促進したために押出中にヤケ(局部的な架橋体)を発生させたことや発泡が過剰となり変形や凹凸が現れたことが原因として考えられる。これより押出時には樹脂中の水分量を600ppm程度以下に抑制する必要があると考えられる。
以上より、本発明を用いれば、恒温槽内で熱や水蒸気により強制的に架橋反応を促進させずに、自然放置した場合でも、架橋速度をある程度増加させることが可能である。つまり、製品によっては、製造から出荷までの時間などが調整できれば、恒温槽を不要とすることができる。また、従来の外部から強制的に水を樹脂中に入れ込む方法とは異なり、シラン架橋樹脂内部から水を供給できるので、高圧ケーブルなど比較的樹脂厚が厚いものについても均一に架橋を促進することができる。さらに放出される水分量を増やし発泡させることで、架橋発泡体への展開も期待できる。

Claims (6)

  1. ベース樹脂にシラン化合物及び架橋触媒を添加し、成形機を用いてシラン架橋樹脂を製造する方法において、前記ベース樹脂に水分放出剤を添加するとともに、前記成形機より排出された直後のシラン架橋樹脂中の水分含有量を500ppm以下とすることを特徴とするシラン架橋樹脂の製造方法。
  2. シラン架橋樹脂中の水分含有量は、その成形温度或いは前記水分放出剤の添加量により調整する請求項1に記載のシラン架橋樹脂の製造方法。
  3. 前記水分放出剤が、鉱物又は鉱物様化合物である請求項2に記載のシラン架橋樹脂の製造方法。
  4. 前記水分放出剤の配合量が、前記シラン架橋樹脂100質量部中0.025質量部以上1.0質量部以下である請求項3に記載のシラン架橋樹脂の製造方法。
  5. 前記ベース樹脂に前記シラン化合物を反応させてシラングラフト樹脂を作製し、他方、前記架橋触媒及び前記水分添加剤を含むマスターバッチを作製し、前記シラングラフト樹脂に前記マスターバッチを添加してシラン架橋樹脂を成形する請求項1〜4いずれかに記載のシラン架橋樹脂の製造方法。
  6. 請求項1に記載のシラン架橋樹脂の製造方法により得られたシラン架橋樹脂を導体の外周に被覆したことを特徴とする電線・ケーブルの製造方法。
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