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JP2011178594A - 第13族金属窒化物結晶の製造方法、該製造方法により得られる第13族金属窒化物結晶および半導体デバイスの製造方法 - Google Patents

第13族金属窒化物結晶の製造方法、該製造方法により得られる第13族金属窒化物結晶および半導体デバイスの製造方法 Download PDF

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JP2011178594A JP2010043368A JP2010043368A JP2011178594A JP 2011178594 A JP2011178594 A JP 2011178594A JP 2010043368 A JP2010043368 A JP 2010043368A JP 2010043368 A JP2010043368 A JP 2010043368A JP 2011178594 A JP2011178594 A JP 2011178594A
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Abstract

【課題】工業的に安価な方法で、成長表面に凹凸がなく良質の第13族金属窒化物結晶を製造する方法を提供する。
【解決手段】溶融塩中に窒素元素と第13族金属元素とを含む溶液において、シード上に第13族金属窒化物結晶を成長させる第13族金属窒化物結晶の製造方法であって、該シードの主面が半極性面である第13族金属窒化物結晶の製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、窒化ガリウム(GaN)結晶等の第13族金属の窒化物結晶の製造方法、該製造方法により得られる第13族金属窒化物結晶および該製造方法を用いた半導体デバイスの製造方法に関する。
窒化ガリウム(GaN)に代表される第13族金属元素と窒素元素との化合物結晶は、発光ダイオード、レーザダイオード、高周波対応の電子デバイス等で使用される物質として有用である。GaNの場合、実用的な結晶の製造方法としては、サファイア基板または炭化珪素等のような基板上にMOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)
法により気相エピタキシャル成長を行う方法が提案されている(例えば、非特許文献1参照)。
しかし、上記方法では、格子定数および熱膨張係数の異なる異種基板上にGaN結晶をエピタキシャル成長させるため、得られるGaN結晶には多くの格子欠陥が存在する。そのような格子欠陥が多く存在するGaN結晶を電子素子として用いた場合、電子素子の動作に悪影響を与え、青色レーザ等の応用分野で用いるためには満足すべき性能を発現することはできない。このため、近年、基板上に成長したGaNの結晶の品質の改善、GaNの塊状単結晶の製造技術の確立が強く望まれている。
現在、気相法によるヘテロエピタキシャルGaN結晶成長法では、GaN結晶の欠陥を減らすために、複雑かつ長い工程が必要とされている。最近では、液相法によるGaNの単結晶化について精力的な研究がなされており、窒素とGaとを高温高圧下で反応させる高圧法(非特許文献2参照)が提案されているが、過酷な反応条件のため工業的に実施することは困難である。
そこで、反応条件をより低圧化させたGaN結晶成長方法の報告が多くなされている。ナトリウムフラックス法(特許文献1、非特許文献3参照)は、Ga融液にアルカリ金属を添加した合金融液においてGaと窒素を反応させてGaN結晶を生成させるGaN結晶の製造方法であるが、この合金融液に溶解する窒素量またはGaN量が非常に小さいため、GaN結晶を大型化することが困難とされている。
また、GaN粉末とアルカリ金属ハロゲン化物の混合物を加熱し、GaN結晶を作成する方法も提案されているが(特許文献2参照)、アルカリ金属ハロゲン化物へのGaNの溶解度は小さく、かつ窒素を安定に溶解させるために高圧で結晶成長を行う必要があるため、この方法は工業的に結晶成長を行う上で不利である。また、非特許文献4にもGaN粉末とアルカリ金属ハロゲン化物の混合物を用い、GaNシードの極性面への結晶成長が報告されているが、特許文献2と同様の問題を抱え、かつ成長速度が遅いため工業的に不利であるという問題がある。
また特許文献3にはリチウムの化合物を補助溶融剤として用いると記載されているが、この文献では溶融塩を用いた溶液を用いておらず、合金融液からの結晶成長であるため非特許文献3等と同様の問題を抱えている。
このような問題に対処する技術として、LiGaNなどの複合金属窒化物をイオン性溶媒に溶解した溶液または融液を作成し、その溶液や融液中でGaNの結晶を成長させる方法が提案されている(特許文献4参照)。ここでは、気相法で作成したGaN薄膜の
シード上にGaNの結晶を成長させた具体例が記載されている。
特開2005−306709号公報 特開2005−112718号公報 中国特許公開第1288079号公報 特開2007−84422号公報
Jpn. J. Appl. Phys. 37 (1998) 309〜312頁 J. Crystal Growth 178 (1997) 174〜188頁 J. Crystal Growth Vol. 260 (2004) 327〜330頁 J. Crystal Growth Vol. 310 (2008) 3934〜3940頁
本発明者らが特許文献4に記載される方法を種々検討したところ、シード上に成長した結晶の成長表面の凹凸が発生するという新たな課題を見出すに至った。
特許文献4に記載される方法は、低圧または常圧において良質な結晶を製造できることから工業的に有利であるという利点を有するが、得られる結晶の成長表面の凹凸が大きいと、電子素子の基板等に利用する際には凹凸の有する部分をすべて研磨して取り除く必要が生じ、利用効率が低下してしまうという問題がある。
このような従来技術の問題点に鑑みて、本発明者らは、工業的に有利で安価な方法で、成長表面に凹凸がなく良質の第13族金属窒化物結晶の製造方法を提供することを本発明の目的として検討を進めた。
本発明者らは種々の検討を重ねた結果、溶融塩中に窒素元素と第13族金属元素を含む溶液中において、シード上に第13族金属窒化物結晶を成長させる際に、シードの成長面の極性を選択することにより、第13族金属窒化物結晶の成長表面の凹凸を少なくできることを見出し、以下の本発明を提供するに至った。
[1]溶融塩中に窒素元素と第13族金属元素とを含む溶液において、シード上に第13族金属窒化物結晶を成長させる第13族金属窒化物結晶の製造方法であって、該シードの主面が半極性面である、第13族金属窒化物結晶の製造方法。
[2]第13族金属元素と第13族以外の金属元素とを含有する複合金属窒化物を溶融塩に溶解して前記溶液を得る工程を有する、[1]に記載の第13族金属窒化物結晶の製造方法。
[3]前記シードの主面が第13族金属窒化物結晶で構成されている、[1]または[2]に記載の第13族金属窒化物結晶の製造方法。
[4]前記シードの主面が(hkil)面であって、hとkはh+k≠0を満たす整数、iはi=−(h+k)となる整数、lは正の整数である、[1]〜[3]のいずれか一項に記載の第13族金属窒化物結晶の製造方法。
[5]前記溶融塩が、第13族金属窒化物結晶の原料とならない溶融塩である、[1]〜[4]のいずれか一項に記載の第13族金属窒化物結晶の製造方法。
[6][1]〜[5]のいずれか一項に記載の第13族金属窒化物結晶の製造方法により得られる、第13族金属窒化物結晶。
[7][1]〜[5]のいずれか一項に記載の第13族金属窒化物結晶の製造方法により、基板上に第13族金属窒化物結晶を製造する工程を有することを特徴とする半導体デバ
イスの製造方法。
本発明の製造方法によれば、工業的に安価な方法で、成長表面に凹凸がなく、不純物が少なく、結晶性の優れた第13族金属窒化物結晶を製造することができる。また、工業的に安価な方法で、本発明の半導体デバイスの製造方法によれば、パワーICや高周波に対応可能な良質の半導体デバイスを製造することが可能である。
実施例1、2、及び比較例1で用いた反応装置を説明するための概略図である。 実施例1で得られたGaN結晶の断面のCL−SEM写真である。 実施例2で得られたGaN結晶の断面のCL−SEM写真である。 比較例1で得られたGaN結晶の断面のCL−SEM写真である。 実施例3で得られたGaN結晶の断面のCL−SEM写真である。
以下に、本発明の第13族金属窒化物結晶の製造方法、および半導体デバイスの製造方法について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の代表例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。
なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。また第13族金属は、周期表第13族金属を意味する。
本発明の第13族金属窒化物結晶の製造方法は、溶融塩中に窒素元素と第13族金属元素とを含む溶液において、シード上に第13族金属窒化物結晶を成長させる方法であって、該シードの主面が半極性面である製造方法である。
[第13族金属窒化物結晶]
本発明の製造方法により得られる第13族金属窒化物結晶は、第13族金属を含むナイトライドであれば特に限定されず、例えば窒素ガリウム(GaN)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化インジウム(InN)などの単独金属のナイトライド、または窒化ガリウム・インジウム(GaInN)、窒化ガリウム・アルミニウム(GaAlN)等の固溶体組成のナイトライドが挙げられる。好ましくは第13族金属として少なくともガリウム(Ga)を含む結晶、特に好ましくはGaN結晶の製造方法として好適に用いることができる。
第13属金属窒化物結晶は、塊状、棒状、板状のシードを用いて、これらのシード上に結晶成長させて得られたものが、結晶性が良好であり、十分なサイズを得やすいことから好ましい。
[溶融塩]
本発明の製造方法では溶融塩中に窒素元素と第13族金属元素とを含む溶液を用いる。
ここで、溶融塩とは常温で固体の塩を高温で融解させたものである。溶融塩の種類は、シード上での結晶のエピタキシャル成長を阻害しないものであれば良く、例えば、ハロゲン化物、炭酸塩、硝酸塩、イオウ化物等を挙げることができる。一般には、第13族金属元素を金属イオンとして安定に溶解させる能力が高いことから、ハロゲン化物を用いることが好ましい。具体的には、溶融塩がLiCl、KCl、NaCl、CsCl、MgCl2、CaCl2、SrCl2、BaCl2、AlCl、GaCl、LiBr、KBr、N
aBr、CsBr、LiF、KF、NaF、AlF、GaF、LiI、NaI、KI、CsI、CaI2、BaI2等の金属ハロゲン化物であることが好ましく、LiCl、KCl、NaCl、CsCl、MgCl2、CaCl2、SrCl2、BaCl2およびそれらの混合塩のいずれかであると、溶液の融点が下がるため好ましい。溶液の融点が下がると、結晶成長を比較的低温で行うことが可能になるため、得られる結晶の結晶性や工業的な実施の面で好ましい。
また、窒素元素を窒化物イオンとして溶解させる能力の高いことから、アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属を含む塩を用いることが好ましい。具体的には、溶融塩がLi、Na、K等のアルカリ金属塩および/またはMg、Ca、Sr等のアルカリ土類金属を含む塩からなる溶融塩であることが好ましく、LiCl、KCl、NaCl、CsCl、LiNCl、MgCl2、CaCl2、SrCl2、BaCl2などが挙げられる。
また溶融塩は、原料の溶解度を調整して結晶成長速度を適切に制御するために、得られる第13族金属窒化物結晶の原料とならない溶融塩であることが好ましい。つまり、第13族金属元素および窒素元素を含まない塩であればよく、例えばLiCl、KCl、NaCl、CsCl、MgCl2、CaCl2、SrCl2、BaCl2などが挙げられる。
この場合、本願発明の製造方法は、溶融塩に窒素元素および/または第13族金属元素を含む化合物を第13族金属窒化物結晶の原料として溶解し、窒素元素と第13族金属元素とを含む溶液を得る工程を有する。
溶融塩中に窒素元素と第13族金属元素とを含む溶液において、溶融塩に対する窒素元素の溶解度および第13族金属元素の溶解度を制御するために、溶融塩として複数の塩の混合物を用いることもできる。複数の塩の混合物の溶融塩は、2種類以上の塩を別々の固体として反応系内に導入し、加熱溶融させて作製することも可能であるが、混合塩たとえばLiClとNaClの混合塩の固体を加熱溶融させて作製することが、系内の均一性の観点から望ましい。
本発明で用いる溶融塩は、ハロゲン化リチウムと、ハロゲン化ナトリウム、ハロゲン化カリウムおよびハロゲン化セシウムからなる群より選択される1つ以上のハロゲン化物とからなるものであることが好ましく、ハロゲン化リチウムと、ハロゲン化ナトリウムまたはハロゲン化カリウムとからなるものであることがより好ましく、ハロゲン化リチウムとハロゲン化ナトリウムからなるものであることがさらに好ましい。
ハロゲン化ナトリウム、ハロゲン化カリウムおよびハロゲン化セシウムからなる群より選択される1つまたは複数のハロゲン化物の合計含有率は溶融塩の全体量に対して5〜85モル%が好ましく、15〜60モル%がさらに好ましい。これらのハロゲン化物の含有率が5モル%以上である場合には、結晶の成長速度が速い点で好ましい。また合計含有率が85モル%以下であると、雑晶の発生が少なく、シード上での結晶の成長速度が速くなる点で好ましい。
上記溶融塩に水等の不純物が含まれている場合は、予め溶融塩を精製しておくことが望ましい。精製方法は特に限定されないが、例えば溶融塩に反応性気体を吹き込むなどの方法が挙げられる。反応性気体としては、例えば、塩化水素、ヨウ化水素、臭化水素、塩化アンモニウム、臭化アンモニウム、ヨウ化アンモニウム、塩素、臭素、ヨウ素等を挙げることができ、塩化物の溶融塩に対しては、特に塩化水素を用いることが好ましい。
[溶液の組成]
第13族金属窒化物結晶を成長させる溶液は、溶融塩中に窒素元素と第13族金属元素とを含む溶液であり、上記の溶融塩の他に、第13族金属元素と窒素元素を含む。
第13族金属元素と窒素元素は、第13族金属や第13族金属元素を含む化合物、窒素ガスや窒素元素を含む化合物をそれぞれ溶融塩に溶解させることにより溶液中に存在させることができる。ここで溶液中に含まれる第13族金属元素は、結晶成長させようとしている第13族金属窒化物結晶の第13族金属元素である。したがって、GaN結晶を成長させようとしている場合は、溶融塩中にGaかGa化合物を溶解させる。
第13族金属元素を含む化合物としては、ハロゲン化物、窒化物などが挙げられる。具体的にはGaCl、GaF、GaN、LiGaF、NaGaFなどが挙げられる。中でも高温での安定性の観点から、GaN、LiGaF、NaGaFが好ましい。
窒素元素を含む化合物としては、例えばアンモニアやアンモニア塩、金属アミド、金属窒化物が挙げられる。窒化物としては、LiN、Ca、Mg、Sr、Baなどのアルカリ金属またはアルカリ土類金属の窒化物を例示することができる。溶融塩の主成分としてLiClを用いる場合には、窒化物としてLiNを採用することが好ましい。
これらの窒化物を溶解させることにより、後述する複合金属窒化物の溶解度を増加させることもできる。その際、溶液中に存在する窒素元素と第13族金属元素の比率は、窒素欠陥の少ない結晶を効率よく成長させるために窒素元素/第13族金属元素(モル比)で1〜30とすることが好ましく、より好ましくは1〜15、さらに好ましくは2〜10である。このような範囲となるように窒素元素を含む物質を溶解させることが好ましい。
[複合窒化物]
第13族金属窒化物結晶を成長させる溶液は、溶媒である溶融塩に第13族金属と第13族以外の金属元素とを含有する複合金属窒化物を溶解することによっても作成することができる。
第13族金属と第13族以外の金属元素とを含有する複合金属窒化物は、第13族金属の窒化物粉体と第13族金属以外の金属の窒化物粉体(例えばLi3N、Ca32)とを
混合した後、温度を上げて固相反応させるなどの方法により得ることができる。第13族金属としては、Ga、Al、In、GaAl、GaIn等を好ましい例として挙げることができる。また、第13族以外の金属元素としては、Li、Na、Ca、Sr、Ba、Mg等を挙げることができ、中でもLi、Ca、Ba、Mgを好ましい元素として挙げることができる。
好ましい複合金属窒化物としては、溶融塩への溶解度が高いことからLi3GaN2、Ca3Ga24、Ba3Ga24、Mg3GaN3、CaGaN等の第13族金属とアルカリ金属またはアルカリ土類金属との複合金属窒化物を挙げることができ、Li3GaN2がより好ましい。Li3GaN2を用いる場合には、Li3GaN2に含まれている不純物であるLiNを除去したり、逆にLiNを添加したりしてあらかじめLiNの含有量を調節しておくことが、窒素欠陥の少ない窒化物結晶を得る点で好ましい。
本発明では、2種類以上の複合金属窒化物を用いてもよい。
本発明の製造方法で用いられる複合金属窒化物は、通常第13族金属と第13族以外の金属との合金をつくっておき、窒素雰囲気中で加熱することによっても容易に作製できる。例えばLi3GaN2は、Ga−Li合金を窒素雰囲気中で600〜800℃で加熱処理することによって作製することができる。通常、アモノサーマル法等では、目的の第13族金属窒化物結晶の微粉または微結晶を合成し、これを溶媒に溶解するが、こうしたプロセスから較べると、非常に容易に原料を作ることができ、工業的な価値は大きい。また、複合金属窒化物は化学的に合成された結晶性のものでなくともよく、例えば、それらの合金からなるターゲットを反応性スパッターにより、窒素プラズマとの反応で作製したサファイア基板や石英等の基板上に生成した化学量論組成からずれた混合窒化物膜であってもよい。こうしたドライプロセスで作られた複合金属窒化物薄膜は、溶融塩と接触させておくと、窒化物薄膜から溶融塩へ窒化物が少しずつ溶解し、界面付近に拡散支配の窒化物溶解相を形成でき、シードをこの界面付近に置くことによって容易に結晶成長が達成できる。また、ドライプロセスを用いる特徴としては、化学的に合成が難しいような窒化物でも容易に作製ができることが挙げられる。なお、ここでは固体状の複合金属窒化物の合成法を説明したが、本発明では溶液中で2種の窒化物を反応させて溶液中に溶解した複合金属窒化物を合成し、そのまま結晶成長に用いても構わない。
窒化物などの窒素元素を含む化合物を溶融塩中に添加する際には、反応系内に酸素または水分が入らないように、添加する物質および添加時に反応系内に同伴される気相に酸素または水分が入らないように操作することが好ましい。
[シード]
本発明の製造方法では、シードの主面が半極性面であるシード上に第13族金属窒化物結晶を成長させる。シードの主面とは、シードの総表面積に対してその面の占める表面積が最も広い面を意味する。例えば、シードが板状の場合には2つの主面が存在する場合が考えられるが、そのうちいずれか一方の主面が半極性面であればよい。
使用するシードの種類は特に限定されず、目的の第13族金属窒化物結晶と同じであってもよいし、サファイア、SiC、ZnO等の異種結晶であってもよい。好ましいのは、シードの主面が第13族金属窒化物結晶で構成されている場合であり、さらに好ましくはシードとして第13族金属窒化物結晶または基板を用いる場合である。シードの形状は特に制限されず、塊状であっても、平板状であっても、棒状であってもよい。
また、ホモエピタキシャル成長用のシードであってもよいし、ヘテロエピタキシャル成長用のシードであってもよい。具体的には、気相成長させたGaN、InGaN、AlGaN等の13族金属窒化物のシードを挙げることができる。また、サファイア、シリカ、ZnO、BeO等の金属酸化物や、SiC、Si等の珪素含有物や、GaAs等の気相成長法等で基板として用いられる材料を挙げることもできる。これらのシードの材料は、本発明で成長させる第13族金属窒化物結晶の格子定数にできるだけ近いものを選択することが好ましい。
以下、第13族金属窒化物としてGaNを例にとり、シードの極性と溶融塩中に窒素元素と第13族金属元素とを含む溶液(以下、単に「溶液」と称することがある)中におけるGaN結晶の成長層の平面性の関係について説明するが、本発明はGaN結晶の製造方法に限定されるものではない。
GaN結晶における極性面とは、表面にGaまたはNのどちらか一方のみが配列している面である。極性面は、表面に存在する原子の偏りにより表面が電気的に正または負に帯電している。非極性面とは、GaとNが表面に同数存在している面であり、表面は電気的に中性である。半極性面とは、表面のGaとNが両方存在しているが存在比が1:1ではない面であり、このため極性面と比べ表面の帯電が少ない。
溶液中でGaN結晶の成長を行う場合において、溶融塩は一部もしくは全て電離して陽イオンと陰イオンとして存在しており、これにより溶液は電荷を帯びているため、成長中のGaN結晶は帯電している極性面、または半極性面を表面に形成しやすいと考えられる。そのため、非極性面を主面とするシードを用いると、結晶成長が進行するにつれて溶液中で形成されやすい極性面または半極性面が混在して現れることになり、結果としてGaN結晶の成長表面に凹凸が多く現れて平坦性が悪くなると推察される。それに対して、極性面または半極性面を主面とするシードを用いると、元来形成しやすい面から結晶成長がスタートするため、シードの主面と同一の面を保ったまま結晶成長し、GaN結晶の成長表面の平坦性が維持されるものと考えられる。
しかしながら、極性面では、例えばGaのみが配列している場合、GaNが成長するためにはN原子が供給されなければならないが、GaとNが双方存在している溶液中ではN原子のみを面に高濃度に供給するような溶液組成の偏りは生じにくい。そのため極性面では半極性面に比べて成長速度が著しく遅くなると推察される。
このことから、本発明の製造方法では、シードの主面が半極性面であるシード上に第13族金属窒化物結晶を成長させる。
ウルツ鉱型第13族金属窒化物結晶のシードを用いた場合、半極性面は(hkil)面であって、hとkはh+k≠0を満たす整数、iはi=−(h+k)となる整数、lは0以外の整数で示される面であれば限定されず、例としては(10−1−1)面、(20−2−1)面、(10−1−2)面、(10−11)面、(20−21)面、(10−12)面、(11−22)面、(11−2−2)面が挙げられる。結晶の成長表面がより平坦になりやすいことから、さらに好ましくは(hkil)面であって、hとkはh+k≠0を満たす整数、iはi=−(h+k)となる整数、lは正の整数で示される面である。例としては(10−11)面、(20−21)面、(10−12)面、(11−22)面が挙げられる。さらに最も好ましくは(10−11)面、(20−21)面を使用するとよい。
[反応容器]
本発明で用いる反応容器は、本発明の製造方法における反応を阻害しないものであれば特に制限されないが、熱的および化学的に安定な金属、酸化物、窒化物、炭化物を主成分とする反応容器であることが好ましい。周期表第4族元素(Ti、Zr、Hf)を含む金属であることが好適であり、好ましくはTiを用いる場合である。
また、90重量%以上が前記第4族元素である金属を用いることが好ましい。さらに好ましくは、99重量%以上が前記第4族元素である金属を用いることである。
また、これらの反応容器の部材の表面は、前記周期表第4族元素の窒化物からなることが好ましく、後述する窒化処理方法によってあらかじめ窒化物を形成することが好適である。
[窒化処理方法]
本発明において、窒化処理とは前記反応容器の部材の少なくとも表面を窒化する工程のことを指す。結晶成長の前にあらかじめ部材を窒化処理しておき、溶液または融液と接触する部材の表面に強固かつ安定な窒化物を形成しておくことが好ましい。また、部材の割れにくさや機械的な強度を考慮して、窒化物を窒化膜の形態で形成してもよい。
窒化処理方法は表面に形成される窒化物が安定であれば特に限定はないが、例えば前記反応容器の部材を700℃以上の窒素雰囲気下において加熱保持することで、前記部材表面に安定な窒化膜を形成することができる。
更には、高温下でアルカリ金属窒化物やアルカリ土類金属窒化物を窒化剤として使用して前記部材表面を窒化することも可能であり、好ましくはアルカリ金属ハロゲン化物やアルカリ土類金属ハロゲン化物と前記アルカリ金属窒化物やアルカリ土類金属窒化物との混合融液中に保持することで、安定な窒化膜を形成することができる。また、実際に結晶成長を行なう条件と同様の条件下に部材を保持することで、簡便に窒化処理を行なうこともできる。
[反応温度、反応圧力]
反応容器内において第13族金属窒化物結晶を成長させる際の温度は、原料及び溶融塩の分解や蒸発を抑え、且つ、成長速度を速くできることから、通常200〜1000℃で
あり、好ましくは400〜850℃、より好ましくは600〜800℃である。また、第13族金属窒化物結晶を成長させる際の反応容器内の圧力は、条件によって適宜選択することができとくに限定されないが、製造装置が簡便になり工業的に有利に製造できることから、通常10MPa以下であり、好ましくは3MPa以下、さらに好ましくは0.3MPa以下、より好ましくは0.11MPa以下であって、通常0.01MPa以上、より好ましくは0.09MPa以上である。特に結晶成長速度を速くしたい場合には、0.0
9MPa以下とすることも好ましい。
[半導体デバイスの製造方法]
本発明の製造方法は、半導体デバイスの製造方法における第13族金属窒化物結晶を製造する工程に用いることができる。その他の工程における原料、製造条件および装置は一般的な半導体デバイスの製造方法で用いられる原料、条件および装置をそのまま適用できる。本発明の製造方法によれば、パワーIC、高周波対応可能な半導体デバイス等を製造することができる。
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
(実施例1)
固体のLiGaN 1.44gを外径34mm、内径30mm、高さ200mmの窒化処理を施したTi製の反応容器に入れ、次いで溶媒として8.64gのNaClと20.16gのLiClとを炭化タングステン製乳鉢でよく粉砕混合し、Ti製の反応容器に入れた。固体のLiGaNは篩を使用して、600μm以上2mm以下の粒径のものを選んで使用した。Ti製反応容器の窒化処理は事前に28.8gのLiClと0.10gのLiNをTi製反応容器に入れて窒素雰囲気下で745℃、2時間熱することにより施した。
次にTi製の反応容器(5)を石英製反応管(4)内にセットし、石英製反応管のガス導入口(1)およびガス排気口(2)を閉状態にした。これらの操作は全てArボックス中で行った。
次に、石英製反応管(4)をArボックスから取り出し、電気炉(3)にセットした。この石英製反応管(4)にガス導入管をつなぎ、導入管中を減圧にした後、石英製反応管のガス導入口(1)を開いて石英製反応管(4)内を減圧にしてからNで大気圧まで復圧し、石英製反応管(4)内をN雰囲気とした。その後、石英製反応管(4)のガス排気口(2)を開き、Nを100ccmで流通させた。
次に、電気炉の加熱を開始し、Ti製の反応容器(5)の内部が室温から745℃になるまで1時間で昇温し、NaCl及びLiClを溶融させて溶融塩とし、該溶融塩に原料(7)であるLiGaNが溶解して溶液を形成した。745℃で7時間保持した後、シード保持棒(8)の先端に取り付けたシード(6)を反応容器(5)中の溶液(9)に浸漬し、シードを100rpmにて回転させて結晶成長を開始した。反応容器(5)の底には、溶液の溶解度を越えている分のLiGaNが固体状で存在していた。シードには(10−11)面を主面とするGaN基板を用いた。
745℃にて70時間結晶成長させた後、シード(6)を溶液(9)から引き上げてから炉の加熱を止め、石英製反応管(4)を急冷した。
シード(6)を石英製反応管(4)から取り出したところ、シード上にGaN成長層が
形成されたGaN結晶が得られた。
得られたGaN結晶を温水に投入して、NaClやLiClなどの付着している塩を溶解させた。GaN結晶の重量は、結晶成長前のシードの重量に比べて12.6wt%増加し、シードの主面にGaN結晶からなるGaN成長層ができていた。GaN成長層を含むGaN結晶の断面をカソードルミネッセンス−走査型電子顕微鏡(CL−SEM)で観察したところ、図2に示す成長表面が平坦なGaN成長層が確認できた。
(実施例2)
シードとして(20−21)面を主面とするGaN基板を用いた点を除いて、実施例1と同じ方法でシード上にGaN成長層が形成されたGaN結晶を得た。GaN結晶の重量は、結晶成長前のシードの重量に比べて15.3wt%増加し、シードの主面にGaN結晶からなるGaN成長層ができていた。GaN成長層を含むGaN結晶の断面をCL−SEMで観察したところ、図3に示す成長表面が平坦なGaN成長層が確認できた。
(実施例3)
固体のLi3GaN2を2.88gとし、溶媒を11.52gのNaClと17.28gのLiClとして、溶液を形成した後の745℃での保持を10.5時間、シードを浸漬して結晶成長させる時間を304時間とした以外は、実施例1と同じ方法でシード上にGaN成長層が形成されたGaN結晶を得た。GaN結晶の重量は、結晶成長前のシードの重量に比べて61.9wt%増加し、シードの主面にGaN結晶からなるGaN成長層ができていた。GaN成長層を含むGaN結晶の断面をCL−SEMで観察したところ、図5に示す成長表面が平坦なGaN成長層が確認できた。
(比較例1)
シードとして(10−20)面を主面とするGaN基板を用いた点を除いて、実施例1と同じ方法でシード上にGaN成長層が形成されたGaN結晶を得た。GaN結晶の重量は、結晶成長前のシードの重量に比べて12.1wt%増加し、シードの主面にGaN結晶からなるGaN成長層ができていた。GaN成長層を含むGaN結晶の断面をCL−SEMで観察したところ、図4に示すような、成長表面に鋸歯状の凹凸が確認できた。
本発明の第13族金属窒化物結晶の製造方法によれば、半導体デバイスに応用するのに十分なサイズを有する第13族金属窒化物結晶を安価な装置を用いて工業的に有利な方法で製造することができる。したがって、本発明は産業上の利用可能性が高い。
1 ガス導入口
2 ガス排出口
3 電気炉
4 石英製反応管
5 反応容器
6 シード
7 原料
8 シード保持棒
9 溶液

Claims (7)

  1. 溶融塩中に窒素元素と第13族金属元素とを含む溶液において、シード上に第13族金属窒化物結晶を成長させる第13族金属窒化物結晶の製造方法であって、該シードの主面が半極性面であることを特徴とする、第13族金属窒化物結晶の製造方法。
  2. 第13族金属元素と第13族以外の金属元素とを含有する複合金属窒化物を溶融塩に溶解して前記溶液を得る工程を有する、請求項1に記載の第13族金属窒化物結晶の製造方法。
  3. 前記シードの主面が第13族金属窒化物結晶で構成されている、請求項1または2に記載の第13族金属窒化物結晶の製造方法。
  4. 前記シードの主面が(hkil)面であって、hとkはh+k≠0を満たす整数、iはi=−(h+k)となる整数、lは正の整数である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の第13族金属窒化物結晶の製造方法。
  5. 前記溶融塩が、第13族金属窒化物結晶の原料とならない溶融塩である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の第13族金属窒化物結晶の製造方法。
  6. 請求項1〜5のいずれか一項に記載の第13族金属窒化物結晶の製造方法により得られる、第13族金属窒化物結晶。
  7. 請求項1〜5のいずれか一項に記載の第13族金属窒化物結晶の製造方法により、基板上に第13族金属窒化物結晶を製造する工程を有することを特徴とする半導体デバイスの製造方法。
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