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JP2011165652A - 燃料電池用インターコネクタの製造方法および燃料電池用インターコネクタ - Google Patents

燃料電池用インターコネクタの製造方法および燃料電池用インターコネクタ Download PDF

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JP2011165652A JP2010262695A JP2010262695A JP2011165652A JP 2011165652 A JP2011165652 A JP 2011165652A JP 2010262695 A JP2010262695 A JP 2010262695A JP 2010262695 A JP2010262695 A JP 2010262695A JP 2011165652 A JP2011165652 A JP 2011165652A
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coating
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film
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Yuya Takuwa
雄也 宅和
Shuichi Inoue
修一 井上
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Osaka Gas Co Ltd
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Osaka Gas Co Ltd
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Abstract

【課題】より均一な保護膜を備えたインターコネクタを、ディップコート法により生産性よく安価に製造する技術を提供する。
【解決手段】インターコネクタ用基材11に、スラリー状の塗膜形成材料をディップコートすることにより保護膜12を形成する燃料電池用インターコネクタの製造方法であって、インターコネクタ用基材11上に塗膜形成材料の塗膜をディップコートする塗膜形成工程の後、塗膜が完全に乾燥する完全乾燥時間経過前に、塗膜上に新たな塗膜を重ねてディップコートする重ね塗り工程をくり返し、複数回重ねてディップコートされた塗膜を乾燥させることにより保護膜12を形成する。
【選択図】図3

Description

本発明は、燃料電池用インターコネクタの製造方法および燃料電池用インターコネクタに関する。
インターコネクタの製造は、燃料電池セルの製造技術の中で最も重要かつ困難なプロセスの一つである。また、燃料電池のインターコネクタは、空気極側から燃料極側までの広範囲の酸素分圧下において安定かつ十分な電子伝導性を有し、熱膨張率が電解質の材料とほぼ等しく、かつ、他の電池構成物質と1,273Kにおいても反応しないものでなければならない。
そこで、インターコネクタ用基材に高温下でも酸化劣化しにくい半導体材料からなる保護膜を設ける技術が知られている。
インターコネクタの保護膜は、例えば、ウエットコ−ティング法或いは、ドライコーティング法によって形成することができる。ウエットコ−ティング法としては、スクリーン印刷法、電気泳動(EPD)法、ドクターブレード法、スプレーコート法、インクジェット法、スピンコ−ト法、ディップコート法等が例示できる。また、ドライコーティング法としては、例えば蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、化学気相成長(CVD)法、電気化学気相成長(EVD)法、イオンビーム法、レーザーアブレーション法、大気圧プラズマ成膜法、減圧プラズマ成膜法、溶射法等が例示できる。
しかし、ドライコーティング法として、CVD・EVD法や溶射法等は、保護膜形成のためのプロセスが複雑であったり、保護膜の組成が安定しないという欠点があるため、これらの方法に代えて、レーザーアブレーション法により保護膜を形成することも考えられている。(特許文献1)
また、レーザーアブレーション法を採用すると、CVD・EVD法や溶射法に比べて、製造コストが高くなるため、現実的には、安価に保護膜を製造できる技術として、ウエットコ−ティング法が採用される場合が多い。
特開平05−174853号公報
ところが、ウェットコーティング法として代表的なディップコート法を採用すると、後にも示すように、インターコネクタ用基材に対する保護膜の厚みを一定に制御することが困難である。インターコネクタの保護膜の厚さが不均一であると、その耐久性が低下し、燃料電池の性能そのものに悪影響を及ぼす懸念がある。
そこで、本発明は、より均一な保護膜を備えたインターコネクタを、ディップコート法により生産性よく安価に製造する技術を提供することにある。
本発明者らは、ディップコート法によりインターコネクタ用基材に形成される塗膜は、インターコネクタ用基材の面部で膜厚大となり、乾燥が遅く、側部、角部で膜厚小となり、乾燥が早いという経験則に基き、ディップコート法について鋭意研究した結果、塗膜を重ね塗りして保護膜を形成する際に、十分乾燥した塗膜上の部位に新たな塗膜を塗布すると、塗膜の膜厚が増加するのに対して、十分乾燥していない塗膜上の部位に新たな塗膜を塗布すると、塗膜の膜厚があまり増加しないという現象が発生していることを見出した。
これは、新たな塗膜が、十分乾燥していない下の塗膜とともに流動する傾向にあることから、十分乾燥していない塗膜上で保持される新たな塗膜形成材料が、十分乾燥した塗膜上で保持される新たな塗膜形成材料よりも少なくなることに由来する。また、塗膜は、膜厚の薄い部分ほど乾燥が早く、逆に厚い部分ほど乾燥が遅い。そのため、重ね塗りの回数を重ねるほど膜厚の薄い部分と厚い部分との比率が減少し(1に近づき)、より均一な膜厚に近づくのである。
本発明は上記知見に基づきなされたものであって、以下の特徴構成を備える。
〔構成1〕
本発明の特徴構成は、インターコネクタ用基材に、スラリー状の塗膜形成材料をディップコートすることにより保護膜を形成する場合に、
前記インターコネクタ用基材上に前記塗膜形成材料の塗膜をディップコートする塗膜形成工程の後、前記塗膜が完全に乾燥する完全乾燥時間経過前に、前記塗膜上に新たな塗膜を重ねてディップコートする重ね塗り工程をくり返し、複数回重ねてディップコートされた塗膜を乾燥させることにより前記保護膜を形成する点にある。
〔作用効果1〕
つまり、上記知見に基づけば、インターコネクタ用基材上に形成される塗膜は、まず、主にインターコネクタ用基材両面部に厚く付着し(この厚さを仮にd1とする)、側部と角部に薄く付着する(この厚さを仮にd2とする)。この比(rとする、r=d1/d2)が1に近いほど、塗膜はインターコネクタとして均一な厚さの保護膜を形成するものであることになる。
この塗膜を完全に乾燥する完全乾燥時間経過後に、もう一度スラリー状の塗膜形成材料をディップコートすることにより塗膜を形成すると、単純に塗膜の厚さは全体で均等に増加する(d1/d2は、ほとんど変らない)。これに対して、この塗膜を完全に乾燥する完全乾燥時間経過前に、もう一度、スラリー状の塗膜形成材料をディップコートすることにより塗膜を形成すると、塗膜の厚さが薄い角部では乾燥が進んでいるため、塗膜がd2に近い厚さ分増加する(a*d2(a≒1))。これに対して塗膜の厚さが厚い面部では乾燥が進みにくいため、乾燥度の低い塗膜は、塗膜形成材料の流動に伴い、減肉されるため、塗膜上に形成される塗膜は、d1より小さい量だけ厚みを増す(b*d1(b<a))。すると、塗膜を重ね塗りするほど(k回とする)膜厚D1,D2は、
角部:D2=d2+(a*d2)*(k−1)
面部:D1=d1+(b*d1)*(k−1) ただし(d2<d1)、(b<a)
となる。
したがって、それらの比率(Rとする)は、
R=D1/D2=(d1*(1+b(k−1)))/(d2*(1+a(k−1)))
となり、kを増加させるほど、
R=(d1/d2)*(b/a)
に近づく。つまり、b<aであるから、Rは単調に減少し、rよりも小さな値に近づくことになる。
そのため、塗膜が完全に乾燥する完全乾燥時間経過前に、前記塗膜上に新たな塗膜を重ねてディップコートする重ね塗り工程をくり返すと、前記インターコネクタ用基盤に形成される塗膜の厚さが均一になり、均質な保護膜が形成されるため、燃料電池用インターコネクタとして好適なものを製造することができる。
〔構成2〕
また、前記塗膜形成材料が、導電性セラミック材料を主成分とし、バインダ、溶媒を含有するものであることが好ましい。
〔作用効果2〕
塗膜形成材料としては、バインダ及び溶媒を含有すれば、これをスラリー状の塗膜形成可能な物性のものとすることができる。また、前記塗膜形成材料を塗膜形成容易なものとするためには、適度な粘度と溶媒の揮発性を有することが望ましい。
前記スラリーを形成するための溶媒としては、水、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、メトキシプロパノール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチルなど種々の溶媒を、単独もしくは混合して用いることが出来る。
前記バインダとしては、アクリル樹脂、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドンなどを用いることが出来る。
〔構成3〕
前記導電性セラミック材料が、スピネル系酸化物、ペロブスカイト系酸化物から選ばれる少なくとも1種以上を主成分とするものであることが好ましい。
これらの具体的な例としては、スピネル系酸化物として、NiCo24、ZnCo24、FeMn24、NiMn24、CoMn24、MnFe24、MnNi24、MnCo24、TiCo24、ZnFe24、FeCo24、CoFe24、MgCo24、Co34、ZnMn24、Co1.5Mn1.54等、ペロブスカイト系酸化物としては、LaM
nO3、LaFeO3、LaCoO3、(La,Sr)MnO3、(La,Sr)CoO3
(La,Sr)FeO3、(La,Sr)(Co,Fe)O3等が挙げられる。
〔作用効果3〕
塗膜形成材料としては、導電性セラミック材料を主成分とすれば、燃料電池用インターコネクタの導電性を確保することができ、これをスラリー状の塗膜形成可能な物性のものとすることができる。
前記導電性セラミック材料としては、スピネル系酸化物、ペロブスカイト系酸化物などによって形成することができ、これらのうちの1種を単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。これらの導電性セラミック材料は、塗膜形成時の取り扱いに優れ、かつ、比較的汎用的で安価であるとともに、高い耐熱耐久性、導電性等の優れた物性を有するので好ましい。
〔構成4〕
また、前記導電性セラミック材料の粒径が0.2μm〜1.0μmであることが好ましい。
〔作用効果4〕
導電性セラミック材料の粒径は細かすぎると、形成した塗膜を乾燥して保護膜とする際に、ひび割れの発生が生じやすくなり、大きすぎると好適な粘度に調製することが困難になるため0.2μm〜1.0μmが好ましい。
〔構成5〕
さらに、前記塗膜形成材料の粘度が25mPa・s以上80mPa・s以下であることが好ましい。
〔作用効果5〕
また、前記塗膜形成材料の粘度は、低過ぎると、塗膜厚が薄くなりすぎ、重ね塗り回数を多くせねばならず、作業性が低下するとともに、重ね塗りしたとしても角部の塗膜が十分な厚さに達しない。逆に、粘度が高すぎると、塗膜が厚くなりすぎ、乾燥時にひび割れ等の不良を発生させやすくなってしまう。そのため、25mPa・s以上80mPa・s以下が好ましい。
〔構成6〕
また、前記溶媒がイソプロパノール、メトキシプロパノールから選ばれる少なくとも一種を主成分とするものであることが好ましい。
〔作用効果6〕
前記塗膜形成材料を塗膜形成容易なものとするためには、適度な粘度と溶媒の揮発性を有することが望ましいが、前記バインダの量および種類、導電性セラミック材料の粒径を選択することによって粘度を調整することができ、また、前記溶媒を選択することによって、揮発性を調整することが出来る。従って、前記溶媒としては、特に、イソプロパノール、メトキシプロパノールから選ばれる少なくとも一種を主成分とするものが好ましい。
〔構成7〕
また、前記バインダがヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、エチルセルロースから選ばれる少なくとも一種を主成分とするものであることが好ましい。
〔作用効果7〕
前記バインダとしては、アクリル樹脂、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドンなどを用いることが出来るが、特に、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、エチルセルロースを用いた場合、好適な保護膜を形成することが後述の実施例より確認されている。
〔構成8〕
また、前記バインダがヒドロキシプロピルセルロースであり、前記溶媒がイソプロパノールであり、前記完全乾燥時間が大気開放条件で300秒〜1200秒に調製してあることが好ましい。
〔作用効果8〕
前記完全乾燥時間は、前記塗膜形成材料を適度な乾燥状態で、適度な膜厚を有する塗膜を形成することが望ましく、また、ある程度の期間を見越して次の塗膜を重ね塗りする時間的余裕を持って乾燥硬化することが好ましい。つまり、塗膜を重ね塗りする乾燥時間を適切に設定容易にするには、ある程度長い必要性があり、逆に、あまり長すぎると、塗膜形成作業性が低下するため、長過ぎるのも好ましくない。したがって、例えば、前記バインダがヒドロキシプロピルセルロースであり、前記溶媒がイソプロパノールである場合には、前記完全乾燥時間が300秒〜1200秒に調製してあることが好ましい。
〔構成9〕
また、前記塗膜が完全に乾燥する完全乾燥時間経過前の状態が、前記塗膜を完全に乾燥させるのに要する完全乾燥時間時間の1/30〜1/8だけ前記塗膜を乾燥させた状態であることが好ましい。
〔作用効果9〕
前記塗膜が完全に乾燥する完全乾燥時間経過前の状態は、塗膜の厚い部分があまり乾燥しておらず、かつ、塗膜の薄い部分の乾燥が完了しつつある時期に設定するのが好ましいため、前記塗膜を完全に乾燥させるのに要する完全乾燥時間時間の1/30〜1/8だけ前記塗膜を乾燥させた状態が好適であるといえる。具体的には、前記バインダがヒドロキシプロピルセルロースであり、前記溶媒がイソプロパノールである場合で、前記完全乾燥時間が600秒であるときには、20秒〜80秒程度で好適な状態を得ることが出来る。
〔構成10〕
前記バインダがヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルピロリドンから選ばれる少なくとも一種を主成分とするものであり、前記溶媒がメトキシプロパノールであり、前記完全乾燥時間が大気開放条件で300秒〜1400秒に調製してあることが好ましい。
〔作用効果10〕
前記完全乾燥時間は、先述のように適切な長さに設定される事が望ましい。そこで、前記バインダがヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルピロリドンから選ばれる少なくとも一種を主成分とするものであり、前記溶媒がメトキシプロパノールである場合には、前記完全乾燥時間が300秒〜1400秒に調製してあることが好ましい。
〔構成11〕
前記塗膜が完全に乾燥する完全乾燥時間経過前の状態が、前記塗膜を完全に乾燥させるのに要する完全乾燥時間時間の1/70〜1/8だけ前記塗膜を乾燥させた状態であることが好ましい。
〔作用効果11〕
前記塗膜が完全に乾燥する完全乾燥時間経過前の状態は、前述のように適切な時期により設定される事が望ましい。具体的には、前記バインダがヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルピロリドンから選ばれる少なくとも一種を主成分とするものであり、前記溶媒がメトキシプロパノールである場合で、前記完全乾燥時間が1400秒であるときには、20秒〜180秒程度で好適な状態を得ることが出来る。
〔構成12〕
また、上記燃料電池用インターコネクタの製造方法により製造された燃料電池用インターコネクタは、前記保護膜の最厚部と最薄部との厚さ比(最厚部の厚さ/最薄部の厚さ)が、3以下であることが好ましい。
〔作用効果12〕
つまり、上記燃料電池用インターコネクタの製造方法により製造された燃料電池用インターコネクタは、インターコネクタ用基材に対して膜厚を均一に形成しやすいので、生産性良く物性にムラの無い良質な燃料電池用インターコネクタとすることが出来る。その保護膜の膜厚は均質で適度な厚さを有することが望まれるわけであるが、前記保護膜の最厚部と最薄部との厚さ比(最厚部の厚さ/最薄部の厚さ)が、3以下としておくことによって、実用的に十分均質といえる高品質な燃料電池用インターコネクタを安価に提供することができるようになった。
固体酸化物燃料電池の概略図 固体酸化物燃料電池のインターコネクタの使用形態を示す図 保護膜を形成したインターコネクタ試験片の断面図 インターコネクタ上に形成した塗膜を乾燥するときの塗膜重量の経時変化を示すグラフ
以下に、本発明の固体酸化物燃料電池(SOFC)用インターコネクタの製造方法およびSOFC用インターコネクタを説明する。尚、以下に好適な実施例を記すが、これら実施例は、本発明をより具体的に例示するために記載されたものであって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々変更が可能であり、本発明は、以下の記載に限定されるものではない。
<固体酸化物型燃料電池>
本発明に係るSOFC用インターコネクタ及びその製造方法の実施の形態について、図面に基づいて説明する。
図1及び図2に示すSOFC用セルCは、酸化物イオン電導性の固体酸化物の緻密体からなる電解質膜30の一方面側に、酸化物イオン及び電子電導性の多孔体からなる空気極31を接合すると共に、同電解質膜30の他方面側に電子電導性の多孔体からなる燃料極32を接合してなる単セル3を備える。
更に、SOFC用セルCは、この単セル3を、空気極31又は燃料極32に対して電子の授受を行うと共に空気及び水素を供給するための溝2が形成された一対の電子電導性の合金又は酸化物からなるインターコネクタ1により、適宜外周縁部においてガスシール体を挟持した状態で挟み込んだ構造を有する。そして、空気極31側の上記溝2が、空気極31とインターコネクタ1とが密着配置されることで、空気極31に空気を供給するための空気流路2aとして機能し、一方、燃料極32側の上記溝2が、燃料極32とインターコネクタ1とが密着配置されることで、燃料極32に水素を供給するための燃料流路2bとして機能する。
尚、上記SOFC用セルCを構成する各要素で利用される一般的な材料について説明を加えると、例えば、上記空気極31の材料としては、LaMO3(例えばM=Mn,Fe,Co)中のLaの一部をアルカリ土類金属AE(AE=Sr,Ca)で置換した(La,AE)MO3のペロブスカイト型酸化物を利用することができ、上記燃料極32の材料としては、Niとイットリア安定化ジルコニア(YSZ)とのサーメットを利用することができ、更に、電解質膜30の材料としては、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)を利用することができる。
更に、これまで説明してきたSOFC用セルCでは、インターコネクタ1の材料としては、電子電導性及び耐熱性の優れた材料であるLaCrO3系等のペロブスカイト型酸化物や、フェライト系ステンレス鋼であるFe−Cr合金や、オーステナイト系ステンレス鋼であるFe−Cr−Ni合金や、ニッケル基合金であるNi−Cr合金などのように、Crを含有する合金又は酸化物が利用されている。
そして、複数のSOFC用セルCが積層配置された状態で、複数のボルト及びナットにより積層方向に押圧力を与えて挟持され、セルスタックとなる。
このセルスタックにおいて、積層方向の両端部に配置されたインターコネクタ1は、燃料流路2b又は空気流路2aの一方のみが形成されるものであればよく、その他の中間に配置されたインターコネクタ1は、一方の面に燃料流路2bが形成され他方の面に空気流路2aが形成されるものを利用することができる。尚、かかる積層構造のセルスタックでは、上記インターコネクタ1をセパレータと呼ぶ場合がある。
このようなセルスタックの構造を有するSOFCを一般的に平板型SOFCと呼ぶ。本実施形態では、一例として平板型SOFCについて説明するが、本願発明は、その他の構造のSOFCについても適用可能である。
そして、このようなSOFC用セルCを備えたSOFCの作動時には、図2に示すように、空気極31に対して隣接するインターコネクタ1に形成された空気流路2aを介して空気を供給すると共に、燃料極32に対して隣接するインターコネクタ1に形成された燃料流路2bを介して水素を供給し、例えば800℃程度の作動温度で作動する。すると、空気極31においてO2が電子e-と反応してO2-が生成され、そのO2-が電解質膜30を通って燃料極32に移動し、燃料極32において供給されたH2がそのO2-と反応してH2Oとe-とが生成されることで、一対のインターコネクタ1の間に起電力Eが発生し、その起電力Eを外部に取り出し利用することができる。
<インターコネクタ>
前記インターコネクタ1は、図1、図3に示すように、インターコネクタ用基材11の表面に保護膜12を設けて構成してある。そして、前記各セル3の間に空気流路2a、燃料流路2bを形成しつつ接続可能にする溝板状に形成してある。
前記保護膜12は、導電性セラミック材料を含有する塗膜形成用材料を、前記インターコネクタ用基材11にディップコートすることにより保護膜12を厚膜として形成してある。
<保護膜>
導電性セラミック材料粉末を、バインダとともに溶媒中に分散させ、スラリー状の塗膜形成材料を形成する。この塗膜形成用材料を、前記インターコネクタ用基材上に前記塗膜形成材料の塗膜をディップコートする塗膜形成工程を行う。その後、前記塗膜が完全に乾燥する完全乾燥時間経過前に、前記塗膜上に新たな塗膜を重ねてディップコートする重ね塗り工程をくり返し、複数回重ねてディップコートされた塗膜を乾燥させることにより前記保護膜12を形成する。
以下に前記保護膜12の具体的な製造方法を詳述するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものでは無い。
〔実施例1〜5〕
<塗膜形成材料>
導電性セラミック材料粉末を、バインダとともに溶媒中に分散させ、スラリー状の塗膜形成材料を形成する。具体的には、導電性セラミック材料粉末として粒径1.0μmのスピネル系酸化物粉末15gを溶媒としてのイソプロパノール50mlに分散させ、バインダとしてヒドロキシプロピルセルロースを添加したスラリーを調製した。このスラリーの粘度は、室温(25℃)で40mPa・sであった。
<インターコネクタ用基材>
インターコネクタ用基材11として、面部の長さが0.5〜2mm、側部の長さがその半分となるような複数の櫛からなる、ステンレス製の櫛状試験片を用いて塗膜形成工程を行った。
<塗膜形成工程>
塗膜形成工程は、ディップコーター(株式会社アイデン社製DC4200)を用い室温にて行った。試験片は吊り下げ保持した状態で、前記スラリー中に浸漬した後、引き上げ速度36mm/sで引き上げることにより塗膜を形成した。得られた塗膜は、完全乾燥させるのに大気開放状態(25℃、62%RH)で約600秒(完全乾燥時間)要した。尚、本発明において完全乾燥と言うのは、図4に示す塗膜が基材上に保持された重量m1と、その塗膜の焼成時の重量m2との関係から、塗膜の重量減少速度が十分遅くなって、ほぼ一定の重量になったとみなすことが出来る状態をいい、本発明では、(m3−m2)/(m1−m2)<0.05となるようなw=m3を与える時間tを完全乾燥時間として決定した。
上記塗膜形成工程で得られた塗膜を完全乾燥時関経過前に、前記塗膜上に新たな塗膜を重ねてディップコートする重ね塗り工程をくり返し、10回重ねてディップコートされた塗膜を乾燥させることにより、前記試料片に保護膜を形成した。得られた保護膜は、電気炉内で1000℃、2時間加熱して、溶媒及びバインダを完全に除去し焼成した。完全乾燥時間経過前の乾燥時間としては、10秒、20秒、40秒、60秒、80秒(この順に実施例1〜5とする)で試験を行った結果を順に表1(1)〜(5)に示す。尚、比較例として、完全乾燥させた塗膜を5度重ね塗りした結果を表1(10)に示す。
保護膜12の厚さの評価は、図3に示す様に、保護膜12を形成したインターコネクタ用基材11の試験片を横断し、面部に相当する図中a,bの保護膜12の厚さの平均(x)を圧延面膜厚、側部に相当するc,dの保護膜12の厚さの平均(y)を側面膜厚、角部に相当するe,f,g,hの保護膜12の厚さの平均(z)をエッジ膜厚として評価した。
〔実施例6〕
実施例3における導電性セラミック材料粉末の粒径を、0.2μmに変更して保護膜を形成した結果を表1(6)に示す。
〔実施例7〕
実施例4における溶媒を、メトキシプロパノールに変更して、同様に保護膜を形成した結果を表1(7)に示す。尚、ここで用いたスラリーは、塗膜を形成した際に、得られた塗膜が、完全乾燥させるのに大気開放状態(25℃、62%RH)で約1400秒(完全乾燥時間)要するものであった。
〔実施例8〕
実施例2におけるバインダを、エチルセルロースに変更して、同様に保護膜を形成した結果を表1(8)に示す。尚、ここで用いたスラリーは、塗膜を形成した際に、得られた塗膜が、完全乾燥させるのに大気開放状態(25℃、62%RH)で約1400秒(完全乾燥時間)要するものであった。
〔実施例9〕
実施例2におけるバインダを、ポリビニルピロリドンに変更し、導電性セラミック材料粉末の粒径を0.5μmに変更して、同様に保護膜を形成した結果を表1(9)に示す。尚、ここで用いたスラリーは、塗膜を形成した際に、得られた塗膜が、完全乾燥させるのに大気開放状態(25℃、62%RH)で約1400秒(完全乾燥時間)要するものであった。
Figure 2011165652
〔結果〕
実施例1〜5、比較例より、塗膜が完全に乾燥する完全乾燥時間経過前に、前記塗膜上に新たな塗膜を重ねてディップコートする重ね塗り工程をくり返し、複数回重ねてディップコートされた塗膜を得ると、完全乾燥させて重ね塗り工程を行うのに比べて、膜厚比があまりおおきくならない状態で、薄くて強固な保護膜12を形成できることがわかった。尚、乾燥時間が20秒の例では、10回の重ね塗りでもエッジ膜厚が十分に厚くなっていないことから、さらに重ね塗りが必要であることがわかり、より簡便に保護膜12を形成するには、20秒以上の乾燥を行うことが好ましいことがわかる。また、80秒の例では、圧延面膜厚も初期の比率で増加していることがわかり、比率を低下させる効果が十分でないため、80秒以下の乾燥にとどめることが好ましいことがわかる。これは、エッジ部の乾燥が他の部分よりも進んだ状態は、塗膜形成工程における試料片の引き上げ操作直後では、全ての部分で未乾燥であるため、塗膜の形成度に差が見られず、また、十分乾燥した状態でも、全ての部分の乾燥度に差が見られなくなるため、塗膜の形成度に差が見られなくなることによると考えられ、この間の条件下では、塗膜の重ね塗りを繰り返す毎に、比率が低下している(前記保護膜12の最厚部(圧延面)と最薄部(エッジ)との厚さ比(x/z)が、4.5から3以下に低下している)ものと考えられる。
尚、上述の実施例1〜5では、約600秒で完全乾燥する塗膜を、20秒〜80秒の乾燥時間で重ね塗りすることが好ましい結果となった。また、このときの目安としては、上述の結果より、前記塗膜を完全に乾燥させるのに要する完全乾燥時間の1/30〜1/8だけ前記塗膜を乾燥させた状態が好ましいと考えられる。尚、同様の乾燥特性を有するスラリーを用いて塗膜を形成する場合、同様の時間条件で保護膜が形成できる。
また、実施例2、6、9より、導電性セラミック材料の粒径が、0.2μm、0.5μm、1.0μmのいずれの場合であっても、溶媒が同じであれば完全乾燥時間もほぼ同じで、塗膜を形成する際の作業性、乾燥時の強度等についても良好であることが分かった。尚、粒径が細かくなるほど、ひび割れの発生が生じやすくなり、大きすぎると好適な粘度に調製することが困難になるため0.2μm〜1.0μmが好ましい。
さらに、実施例4、7より、塗膜形成材料を調製するための溶媒は、イソプロパノールであってもメトキシプロパノールであっても得られる保護膜の膜厚比率に大きな差はなく、いずれであっても良好に用いることができることが確認された。従って、これらと同等の溶媒であれば、水、エタノール、プロパノール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチルなど種々の溶媒を、単独もしくは混合して用いることが出来ることがわかる。
また、さらに、実施例7〜9より、塗膜形成材料を調製するためのバインダは、ヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルピロリドンのいずれであっても得られる保護膜の膜厚比率に大きな差はなく、いずれであっても良好に用いることができることが確認された。従って、これらと同等の物性を示す例えばアクリル樹脂等のバインダであれば、適宜好適に用いることができることがわかる。
1 :インターコネクタ
11 :インターコネクタ用基材
12 :保護膜
2 :溝
2a :空気流路
2b :燃料流路
3 :単セル
30 :電解質膜
31 :空気極
32 :燃料極
C :SOFC用セル

Claims (12)

  1. インターコネクタ用基材に、スラリー状の塗膜形成材料をディップコートすることにより保護膜を形成する燃料電池用インターコネクタの製造方法であって、
    前記インターコネクタ用基材上に前記塗膜形成材料の塗膜をディップコートする塗膜形成工程の後、前記塗膜が完全に乾燥する完全乾燥時間経過前に、前記塗膜上に新たな塗膜を重ねてディップコートする重ね塗り工程をくり返し、複数回重ねてディップコートされた塗膜を乾燥させることにより前記保護膜を形成する燃料電池用インターコネクタの製造方法。
  2. 前記塗膜形成材料が、導電性セラミック材料を主成分とし、バインダ、溶媒を含有する請求項1に記載の燃料電池用インターコネクタの製造方法。
  3. 前記導電性セラミック材料が、スピネル系酸化物、ペロブスカイト系酸化物から選ばれる少なくとも1種以上を主成分とするものである請求項2に記載の燃料電池用インターコネクタの製造方法。
  4. 前記導電性セラミック材料の粒径が0.2μm〜1.0μmである請求項2又は3に記載の燃料電池用インターコネクタの製造方法。
  5. 前記塗膜形成材料の粘度が25mPa・s以上80mPa・s以下である請求項2〜4のいずれか一項に記載の燃料電池用インターコネクタの製造方法。
  6. 前記溶媒がイソプロパノール、メトキシプロパノールから選ばれる少なくとも一種を主成分とするものである請求項2〜5のいずれか一項に記載の燃料電池用インターコネクタの製造方法。
  7. 前記バインダがヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、エチルセルロースから選ばれる少なくとも一種を主成分とするものである請求項2〜6のいずれか一項に記載の燃料電池用インターコネクタの製造方法。
  8. 前記バインダがヒドロキシプロピルセルロースであり、前記溶媒がイソプロパノールであり、前記完全乾燥時間が大気開放条件で300秒〜1200秒に調製してある請求項2〜5のいずれか一項に記載の燃料電池用インターコネクタの製造方法。
  9. 前記塗膜が完全に乾燥する完全乾燥時間経過前の状態が、前記塗膜を完全に乾燥させるのに要する完全乾燥時間時間の1/30〜1/8だけ前記塗膜を乾燥させた状態である請求項8に記載の燃料電池用インターコネクタの製造方法。
  10. 前記バインダがヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルピロリドンから選ばれる少なくとも一種を主成分とするものであり、前記溶媒がメトキシプロパノールであり、前記完全乾燥時間が大気開放条件で300秒〜1400秒に調製してある請求項2〜5のいずれか一項に記載の燃料電池用インターコネクタの製造方法。
  11. 前記塗膜が完全に乾燥する完全乾燥時間経過前の状態が、前記塗膜を完全に乾燥させるのに要する完全乾燥時間時間の1/70〜1/8だけ前記塗膜を乾燥させた状態である請求項10に記載の燃料電池用インターコネクタの製造方法。
  12. 請求項1〜11のいずれか一項に記載の燃料電池用インターコネクタの製造方法により製造され、前記保護膜の最厚部と最薄部との厚さ比(最厚部の厚さ/最薄部の厚さ)が、3以下である燃料電池用インターコネクタ。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2013054975A (ja) * 2011-09-06 2013-03-21 Magunekusu Kk 燃料電池セパレータのコーティング材及びコーティング方法
JP2013229317A (ja) * 2012-03-29 2013-11-07 Osaka Gas Co Ltd 固体酸化物形燃料電池用セルおよび燃料電池用セル間接続部材
JP2015088446A (ja) * 2013-09-27 2015-05-07 大阪瓦斯株式会社 セル間接続部材接合構造およびセル間接続部材接合方法

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