JP2011064012A - ブレース、耐震構造及び建築物 - Google Patents
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Abstract
【課題】引張力に対して効果的に抵抗することが可能なブレース、このブレースを有する耐震構造、及びこのブレースを有する建築物を提供する。
【解決手段】ブレース10は、コンクリートによって形成されたブレース本体12と、緊張材14とを有している。ブレース本体12は架構18内に斜めに配設され、緊張材14は、ブレース本体12へプレストレスを導入すると共に架構18とブレース本体12の端部とを圧着接合する。よって、ブレース本体12に作用する引張力が大きくなって圧縮応力が0になったときに、架構18に対するブレース本体12の端部の圧着接合が解放され、ブレース本体12に発生するひび割れを防ぐことができる。
【選択図】図1
【解決手段】ブレース10は、コンクリートによって形成されたブレース本体12と、緊張材14とを有している。ブレース本体12は架構18内に斜めに配設され、緊張材14は、ブレース本体12へプレストレスを導入すると共に架構18とブレース本体12の端部とを圧着接合する。よって、ブレース本体12に作用する引張力が大きくなって圧縮応力が0になったときに、架構18に対するブレース本体12の端部の圧着接合が解放され、ブレース本体12に発生するひび割れを防ぐことができる。
【選択図】図1
Description
本発明は、架構内に配設するコンクリート製のブレース、このブレースを有する耐震構造、及びこのブレースを有する建築物に関する。
建築物に設けられる耐震要素として、建築物を構成する架構内に配設されるブレースが広く用いられている。
ブレースの中でも鉄筋コンクリート製のブレースは、圧縮剛性が高く経済性に優れた部材である。しかし、引張り応力が作用したときに生じるひび割れによって剛性が低下してしまう物理的特性を有しているので、一般的に、引張力に対して抵抗しない構成として用いられている。
ブレースの中でも鉄筋コンクリート製のブレースは、圧縮剛性が高く経済性に優れた部材である。しかし、引張り応力が作用したときに生じるひび割れによって剛性が低下してしまう物理的特性を有しているので、一般的に、引張力に対して抵抗しない構成として用いられている。
図18に示すように、特許文献1のコンクリートブレース300では、コンクリートに対するアンボンド加工を施された鉄筋302がコンクリートブレース300内に配設されている。さらに、コンクリートブレース300には、コンクリート断面に対する引張力伝達遮断部304が設けられている。
これにより、コンクリートブレース300に生じる圧縮力はコンクリートに負担され、引張力は鉄筋302に負担されるので、コンクリートブレース300に生じる引張力によるコンクリートのひび割れの発生を防止することができる。
しかし、引張力は鉄筋302のみによって負担されるので、コンクリートブレース300に生じる引張力に対する十分な抵抗が期待できない。
しかし、引張力は鉄筋302のみによって負担されるので、コンクリートブレース300に生じる引張力に対する十分な抵抗が期待できない。
本発明は係る事実を考慮し、引張力に対して効果的に抵抗することが可能なブレース、このブレースを有する耐震構造、及びこのブレースを有する建築物を提供することを課題とする。
請求項1に記載の発明は、構造物を構成する架構内に斜めに配設されるコンクリート製のブレース本体と、前記ブレース本体へプレストレスを導入すると共に該プレストレスの導入によって前記架構と前記ブレース本体の端部とを圧着接合する緊張材と、を有する。
請求項1に記載の発明では、ブレースが、ブレース本体と緊張材とを有している。ブレース本体は、コンクリートによって形成され、構造物を構成する架構内に斜めに配設される。緊張材は、ブレース本体へプレストレスを導入すると共にこのプレストレスの導入によって架構とブレース本体の端部とを圧着接合する。
ブレース本体は架構内に斜めに配設されているので、架構に外力(地震等により生じる水平力)が作用して架構がせん断変形(層間変形)したときに、この外力の向きによって、ブレースは軸方向に圧縮力又は引張力を受ける。以下、ある向きの外力に対して、軸方向に圧縮力を受けるように配設されているブレースを「圧縮側ブレース」とし、軸方向に引張力を受けるように配設されているブレースを「引張側ブレース」とする。
すなわち、架構に作用する外力の向きによって、1つのブレースが、圧縮側ブレースになったり、引張側ブレースになったりする。
すなわち、架構に作用する外力の向きによって、1つのブレースが、圧縮側ブレースになったり、引張側ブレースになったりする。
よって、ブレースが圧縮側ブレースとなる場合、ブレースの受ける圧縮力にブレース本体が抵抗する。ブレース本体はコンクリートによって形成されているので、鋼製のブレースに比べて高い圧縮剛性及び座屈耐力を得ることができる。
また、ブレースが引張側ブレースとなる場合、ブレースの受ける引張力は、緊張材により導入されているプレストレス(ブレース本体に作用する圧縮力)によってキャンセルされるので、引張側ブレースは圧縮側ブレースと同等の剛性を有し、引張力に抵抗することができる。
このように、引張側ブレースには引張力が作用するが、この引張力は緊張材により導入されているプレストレスによってキャンセルされるので、引張側ブレース(ブレース本体)に部材応力としての引張応力は生じない。
このように、引張側ブレースには引張力が作用するが、この引張力は緊張材により導入されているプレストレスによってキャンセルされるので、引張側ブレース(ブレース本体)に部材応力としての引張応力は生じない。
そして、ブレース本体に生じている圧縮応力は引張力が大きくなると共に小さくなり、この圧縮応力が0になったときに、架構とブレース本体の端部とが離間する。すなわち、架構に対するブレース本体の端部の圧着接合が解放される。これによって、ブレース本体に引張応力が発生することがないので、ブレース本体に発生するひび割れを防ぐことができる。なお、圧着接合が解放された後は、引張側ブレースに作用する引張力を緊張材が負担する。
これらにより、請求項1のブレースは、軸方向に作用する圧縮力及び引張力に対して効果的に抵抗することができる。さらに、地震等の外力が無くなれば、緊張材によってブレース本体に導入されているプレストレスの作用により、せん断変形(層間変形)を起こした架構が元の位置に復元されることが期待できる。
また、ブレース本体に導入するプレストレスの大きさの設定によって、架構に対するブレース本体の端部の圧着接合が解放されるタイミングを変えることができる。
また、架構とブレース本体の端部とが圧着接合されているので、架構に発生する層せん断力をブレースによって伝達することが可能となる。そして、架構に発生する層せん断力の一部又は全部をブレースによって負担することができるので、架構にブレースが無い場合と比べて、架構を構成する柱・梁や、柱・スラブ等に求められる設計耐力を小さくすることができる。
請求項2に記載の発明は、前記ブレース本体は、分割ブレース部材を軸方向に複数つないで構成されている。
請求項2に記載の発明では、複数の分割ブレース部材を軸方向につないで、ブレース本体を構成している。
よって、小さな部材(分割ブレース部材)単位で搬送を行うことが可能になるので、搬送を容易に行うことができる。
よって、小さな部材(分割ブレース部材)単位で搬送を行うことが可能になるので、搬送を容易に行うことができる。
また、つなぎ合わせる分割ブレース部材の数を変えることによって、さまざまな長さのブレース本体を構成することが可能になる。これにより、部材(分割ブレース部材)の標準化を図ることができる。
請求項3に記載の発明は、前記架構に所定値以上のせん断力が発生したときに前記圧着接合が解放されるように、前記ブレース本体へ導入するプレストレスの大きさが設定されている。
請求項3に記載の発明では、架構に所定値以上のせん断力が発生したときに圧着接合が解放されるように、ブレース本体へ導入するプレストレスの大きさが設定されているので、架構に所定値以上のせん断力が発生するまでは、圧縮側及び引張側ブレースは軸方向に作用する圧縮力及び引張力に対して効果的に抵抗することが可能となる。よって、架構に高い面内剛性を付与することができ、架構に発生するせん断変形(層間変形)を抑制することができる。
また、架構に所定値以上のせん断力が発生したときに、圧縮側ブレースにおいては、ブレース本体が圧縮側ブレースの軸方向に作用する圧縮力に抵抗し、架構に高い面内剛性を付与することができる。また、引張側ブレースにおいては、架構に対するブレース本体の端部の圧着接合が解放されるので、ブレース本体に引張応力が発生することがない。これにより、ブレース本体に発生するひび割れを防ぐことができる。なお、圧着接合が解放された後は、引張側ブレースに作用する引張力を緊張材が負担する。
請求項4に記載の発明は、前記ブレース本体は、プレキャスト部材である。
請求項4に記載の発明では、コンクリート成形品であるブレース本体をプレキャスト化することにより、ブレース本体の品質を向上させることができる。また、部材(ブレース本体)の標準化によって、低コスト化を図ることができる。
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4の何れか1項に記載のブレースと、前記架構と、を有する耐震構造である。
請求項5に記載の発明では、軸方向に作用する圧縮力及び引張力に対して効果的に抵抗することができるブレースを有する耐震構造とすることができる。
請求項6に記載の発明は、前記ブレースは複数配設され、複数の前記ブレースの少なくとも1つが左右一方に傾いており、複数の前記ブレースの少なくとも1つが左右他方に傾いている。
請求項6に記載の発明では、架構内に複数のブレースが配設されている。そして、これらのブレースのうち、少なくとも1つが左右一方に傾いており、少なくとも1つが左右他方に傾いている。
よって、架構に発生するせん断変形(層間変形)が左右どちらの方向に生じても、必ず圧縮側ブレースを存在させることができる。これにより、圧縮側ブレースの有する高い圧縮剛性によって、架構に効果的に面内剛性を付与することができる。
また、架構内に圧縮側ブレースと引張側ブレースとが存在することになるので、架構に付与される面内剛性は、架構自体が付与する面内剛性に各ブレースの付与する面内剛性を足し合わせた値となる。これにより、架構のせん断変形(層間変形)が小さいときには高い面内剛性が付与され、架構のせん断変形(層間変形)が大きいときには低い面内剛性が付与される。
例えば、大地震(再現期間500年程度の地震)において架構に対するブレース本体の圧着接合が解放されるように、ブレース本体に導入するプレストレスの大きさを設定した場合、架構のせん断変形(層間変形)が小さい中小地震(再現期間50年程度の地震)においてブレースは高い面内剛性を架構に付与することができる。これによって、架構を有する建築物の変形を抑制し、仕上げ材、外装材、家具等の損傷を防止することができる。
また、架構のせん断変形(層間変形)が大きい大地震においては、引張側ブレースの圧着接合が解放されるため、ブレースは中小地震のときより低い面内剛性を架構に付与する。これによって、架構を有する建築物の固有周期を長くして入力地震動を低減することができる。
また、架構を有する建築物の固有周期を長くすることにより建築物の変形を増大させ、ダンパー(鋼材ダンパー、オイルダンパー等)を別途設置してこのダンパーにより地震エネルギーの吸収を図ることができる。
また、架構を有する建築物の固有周期を長くすることにより建築物の変形を増大させ、ダンパー(鋼材ダンパー、オイルダンパー等)を別途設置してこのダンパーにより地震エネルギーの吸収を図ることができる。
請求項7に記載の発明は、前記架構内に線状部材が斜めに配設され、前記ブレースが左右一方に傾いており、前記線状部材が左右他方に傾いている。
請求項7に記載の発明では、架構内に線状部材が斜めに配設されている。そして、ブレースは左右一方に傾いており、線状部材は左右他方に傾いている。
よって、線状部材によって架構に面内剛性を付与することが可能になり、架構の面内剛性を向上させることができる。また、線状部材はブレースよりも比較的簡単に配設することができるので、架構に面内剛性を容易に付与させることができる。
よって、線状部材によって架構に面内剛性を付与することが可能になり、架構の面内剛性を向上させることができる。また、線状部材はブレースよりも比較的簡単に配設することができるので、架構に面内剛性を容易に付与させることができる。
また、架構に付与する面内剛性の一部を線状部材が負担するので、ブレースの負担する圧縮耐力及び引張耐力を低減することができる。これによって、ブレース本体の断面積を小さくしたり、ブレース本体に生じさせるプレストレス量を小さくしたりすることができる。ブレース本体の断面積を小さくできれば低コスト化を図ることができ、また、ブレース本体の運搬作業や設置作業が行い易くなる。
請求項8に記載の発明は、前記緊張材と前記線状部材とは連結されており、前記線状部材に引張力を付与する緊張手段が前記架構内に設けられている。
請求項8に記載の発明では、緊張材と線状部材とが連結されている。また、緊張手段が架構内に設けられている。緊張手段は、線状部材に引張力を付与する。
よって、緊張手段による一回の緊張作業で、ブレース本体と線状部材とに同時にプレストレスを導入することができ、作業手間を低減することができる。
よって、緊張手段による一回の緊張作業で、ブレース本体と線状部材とに同時にプレストレスを導入することができ、作業手間を低減することができる。
また、架構内で緊張手段による緊張作業を行うことが可能なので、新築工事においては、ブレースが配設された架構の上階の架構の施工完了を待たずに、緊張作業を行う(ブレース本体にプレストレスを導入する)ことができる。
また、架構内で緊張手段による緊張作業を行うことが可能なので、緊張作業のために別途作業空間を確保しなくてよい。
また、架構内で緊張手段による緊張作業を行うことが可能なので、緊張作業のために別途作業空間を確保しなくてよい。
請求項9に記載の発明は、請求項1〜4の何れか1項に記載のブレースを有する建築物である。
請求項9に記載の発明では、圧縮力及び引張力に対して効果的に抵抗することができるブレースを有する建築物を構築することができる。
本発明は上記構成としたので、引張力に対して効果的に抵抗することが可能なブレース、このブレースを有する耐震構造、及びこのブレースを有する建築物を提供することができる。
図面を参照しながら、本発明のブレース、耐震構造及び建築物を説明する。なお、本実施形態では、鉄筋コンクリート造の建築物に本発明を適用した例を示すが、鉄骨造、鉄骨鉄筋コンクリート造、CFT造(Concrete-Filled Steel Tube:充填形鋼管コンクリート構造)、それらの混合構造など、さまざまな構造や規模の建築物に対して適用することができる。
まず、本発明の第1の実施形態について説明する。
図1の正面図に示すように、第1の実施形態の耐震構造62は、ブレース10と架構18とを有し、ブレース10は、ブレース本体12と緊張材としてのPC鋼材14とを有している。
ブレース本体12はコンクリートによって形成されており、構造物としての鉄筋コンクリート造の建築物16を構成する架構18内に斜めに配設されている。架構18は、鉛直部材20A、20Bと、水平部材22A、22Bとによって構成されている。例えば、鉛直部材20A、20Bとしては、鉄筋コンクリート造の柱や壁の場合が考えられ、水平部材22A、22Bとしては、鉄筋コンクリート造の梁や床スラブの場合が考えられる。
図1、及び図1のA−A断面図である図2(a)に示すように、ブレース本体12は四角柱状に形成されている。ブレース本体12には、このブレース本体12を材軸方向に貫通する貫通孔24が形成されている。貫通孔24は、ブレース本体12の横断面において略中央に位置し、ブレース本体12に管材26を埋設することにより形成されている。すなわち、管材26の内空間を貫通孔24としている。
なお、第1の実施形態では、一例として、PC鋼材14を複数のPC鋼より線を束ねた構成の緊張材とするが、図2(a)では、PC鋼材14の横断面を簡略化して描いている。
なお、第1の実施形態では、一例として、PC鋼材14を複数のPC鋼より線を束ねた構成の緊張材とするが、図2(a)では、PC鋼材14の横断面を簡略化して描いている。
図1に示すように、斜めに配置されたブレース本体12の右上と左下の端面には、鋼製のプレート28、30が固定されている。プレート28、30の平面略中央には、貫通孔24と連通する貫通孔32、34が形成されている。
架構18の右上と左下のコーナー部内側には、この架構18と一体となるようにコンクリート造の接合部40、42が設けられている。また、図1に示すように、ブレース本体12が架構18内に配置された状態においてプレート28、30と対向するように、鋼製のプレート36、38が接合部40、42に固定されている。
接合部40、42及びこの接合部40、42と一体となる架構18には、接合部40、42及びこの接合部40、42と一体となる架構18を斜めに貫通する貫通孔44、46が形成されている。また、プレート36、38の平面略中央には、貫通孔44、46と連通する貫通孔48、50が形成されている。
そして、貫通孔46、50、34、24、32、48、44は、図1に示すようにブレース本体12が架構18内に配置された状態において、左下から右上に向かってこの順に配置されると共に連通した挿入孔52を形成する。
図1、及び接合部40付近を拡大した図3(a)に示すように、PC鋼材14は、挿入孔52の全長に渡って配置され、緊張された状態で定着具54、56により両端が架構18に固定されている。これにより、PC鋼材14は、ブレース本体12へプレストレスを導入すると共にこのプレストレスの導入によって架構18(プレート36、38)とブレース本体12の端部(プレート28、30)とを圧着接合する。すなわち、第1の実施形態では、プレート36、28によって架構18(接合部40)とブレース本体12の右上端部とを圧着接合する圧着部58が構成され、プレート38、30によって架構18(接合部42)とブレース本体12の左下端部とを圧着接合する圧着部60が構成されている。
次に、本発明の第1の実施形態の作用及び効果について説明する。
図1で示したように、ブレース本体12は架構18内に斜めに配設されているので、図4(a)、(b)に示すように、架構18に外力(地震等により生じる水平力P)が作用して架構18がせん断変形(層間変形)した場合、この外力(水平力P)の向きによってブレース10は軸方向に圧縮力F1又は引張力F2を受ける。以下、ある向きの外力に対して、軸方向に圧縮力を受けるように配設されているブレースを「圧縮側ブレース」とし、軸方向に引張力を受けるように配設されているブレースを「引張側ブレース」とする。
図4(a)には、架構18内に右に傾いて配設されているブレース10が示され、左向き(架構18の右から左へ向かう方向)の水平力Pが作用する架構18が示されている。この場合、ブレース10は軸方向に圧縮力F1を受ける圧縮側ブレースとなる。
図4(b)には、架構18内に右に傾いて配設されているブレース10が示され、右向き(架構18の左から右へ向かう方向)の水平力Pが作用する架構18が示されている。この場合、ブレース10は軸方向に引張力F2を受ける引張側ブレースとなる。
このように、架構18に作用する外力の向きによって、1つのブレースが、圧縮側ブレースになったり、引張側ブレースになったりする。
図4(b)には、架構18内に右に傾いて配設されているブレース10が示され、右向き(架構18の左から右へ向かう方向)の水平力Pが作用する架構18が示されている。この場合、ブレース10は軸方向に引張力F2を受ける引張側ブレースとなる。
このように、架構18に作用する外力の向きによって、1つのブレースが、圧縮側ブレースになったり、引張側ブレースになったりする。
地震等の外力により架構18がせん断変形(層間変形)して、ブレース10が圧縮側ブレース10となった場合(図1においては、架構18が左方向にせん断変形(層間変形)する(左に傾く)ときに、ブレース10は圧縮側ブレース10となる。)、ブレース10の受ける圧縮力にブレース本体12が抵抗する。ブレース本体12はコンクリートによって形成されているので、鋼製のブレースに比べて高い圧縮剛性及び座屈耐力を得ることができる。
また、地震等の外力により架構18がせん断変形(層間変形)して、ブレース10が引張側ブレース10となった場合(図1においては、架構18が右方向にせん断変形(層間変形)する(右に傾く)ときに、ブレース10は引張側ブレース10となる。)、ブレース10の受ける引張力は、PC鋼材14により導入されているプレストレス(ブレース本体12に作用する圧縮力)によってキャンセルされるので、引張側ブレース10は圧縮側ブレース10と同等の剛性を有し、引張力に抵抗することができる。
このように、引張側ブレース10には引張力が作用するが、この引張力は緊張材としてのPC鋼材14により導入されているプレストレスによってキャンセルされるので、引張側ブレース10(ブレース本体12)に部材応力としての引張応力は生じない。
そして、接合部40付近を拡大した図3(b)に示すように、ブレース本体12に生じている圧縮応力は引張力が大きくなると共に小さくなり、この圧縮応力が0になったときに、架構18(プレート36、38)とブレース本体12の端部(プレート28、30)とが離間する。すなわち、架構18に対するブレース本体12の端部の圧着接合(圧着部58、60)が解放される。これによって、ブレース本体12に引張応力が発生することがないので、ブレース本体12に発生するひび割れを防ぐことができる。なお、圧着接合が解放された後は、引張側ブレース10に作用する引張力を緊張材としてのPC鋼材14が負担する。
これらにより、ブレース10は、軸方向に作用する圧縮力及び引張力に対して効果的に抵抗することができる。さらに、地震等の外力が無くなれば、PC鋼材14によってブレース本体12に導入されているプレストレスの作用により、せん断変形(層間変形)を起こした架構18が元の位置に復元されることが期待できる。
また、架構18(プレート36、38)とブレース本体12の端部(プレート28、30)とが圧着接合されているので、架構18に発生する層せん断力をブレース10によって伝達することが可能となる。そして、架構18に発生する層せん断力の一部又は全部をブレース10で負担することができるので、ブレースが無い場合に比べて、架構18を構成する柱・梁や、柱・床スラブ等に求められる設計耐力を小さくすることができる。
また、ブレース本体12に導入するプレストレスの大きさの設定によって、架構18に対するブレース本体12の端部の圧着接合(圧着部58、60)が解放されるタイミングを変えることができる。
例えば、架構18に所定値以上のせん断力が発生したときに圧着接合(圧着部58、60)が解放されるように、ブレース本体12へ導入するプレストレスの大きさを設定してもよい。
図5(a)は、図1で示した架構18において、架構18に生じるせん断変形(層間変形)に対して架構18に作用するせん断力を示したグラフである。横軸δが、架構18に生じるせん断変形(層間変形)の値であり、縦軸Qが、架構18に作用するせん断力の値である。
横軸δにおいて、架構18の右方向のせん断変形(架構18が右に傾く場合)を正とし、架構18の左方向のせん断変形(架構18が左に傾く場合)を負とする。また、縦軸Qにおいて、ブレース10に圧縮力を作用させるせん断力を正とし、ブレース10に引張力を作用させるせん断力を負とする。
架構18に生じるせん断変形(層間変形)によって架構18に作用するせん断力の内、ブレース本体12が負担するせん断力の特性は図5(b)のグラフのようになり、PC鋼材14が負担するせん断力の特性は図5(c)のグラフのようになり、架構18(柱・梁架構、又は柱・スラブ架構)自体が負担するせん断力の特性は図5(d)のグラフのようになる。すなわち、図5(a)に示したせん断力の値は、図5(b)〜(d)のせん断力の値を足し合わせた値となっている。
図5(b)〜(d)に示されている横軸δ及び縦軸Qの意味は、図5(a)と同様である。なお、説明をわかり易くするために、架構18にせん断変形(層間変形)が生じた際に、ひび割れや部材降伏の発生によって架構18の剛性が変化しないものと仮定する。また、図5(a)〜(d)に示されたグラフの傾きなどは、建築物に求められる設計条件に応じて適宜設定するものであり、図5(a)〜(d)は一例である。
図5(b)〜(d)に示されている横軸δ及び縦軸Qの意味は、図5(a)と同様である。なお、説明をわかり易くするために、架構18にせん断変形(層間変形)が生じた際に、ひび割れや部材降伏の発生によって架構18の剛性が変化しないものと仮定する。また、図5(a)〜(d)に示されたグラフの傾きなどは、建築物に求められる設計条件に応じて適宜設定するものであり、図5(a)〜(d)は一例である。
図5(a)に示すように、架構18に所定値以上のせん断力が発生するまでの領域64(せん断力Qが−Q0以上+Q0以下の領域)において、圧縮側ブレース10は軸方向に作用する圧縮力に対して効果的に抵抗することが可能であり、引張側ブレース10は軸方向に作用する引張力に対して効果的に抵抗することが可能なので、架構18に高い面内剛性を付与することができる。これによって、架構18に発生するせん断変形(層間変形)を抑制することができる。
また、架構18に所定値以上のせん断力が発生したときに、圧縮側ブレース10(領域64の左側の領域)においては、ブレース本体12が圧縮側ブレース10の軸方向に作用する圧縮力に抵抗し、架構に高い面内剛性を付与することができる。また、引張側ブレース(領域64の右側の領域)においては、架構18に対するブレース本体12の圧着接合(圧着部58、60)が解放されるので、ブレース本体12に引張応力が発生することがない。これにより、ブレース本体12に発生するひび割れを防ぐことができる。
所定値は、必要とする耐震性に応じて適宜決めればよい。例えば、中小地震(再現期間50年程度の地震)を建築物16が受けた際に架構18に発生するせん断力の値としてもよいし、大地震(再現期間500年程度の地震)を建築物16が受けた際に架構18に発生するせん断力の値としてもよい。
以上、本発明の第1の実施形態について説明した。
なお、第1の実施形態では、緊張材をPC鋼材14とした例を示したが、緊張材は、ブレース本体12にプレストレスを確実に加えられ、且つ架構18に対してブレース本体12の端部を圧着接合できる線状の部材であればよい。線状の部材とは、一定の横断面を有する細長い部材を意味する。例えば、緊張材として、PC鋼線、PC鋼より線、PC鋼棒等のPC鋼材を用いてもよい。
また、第1の実施形態では、ブレース本体12を四角柱状とした例を示したが、必要とする圧縮剛性及び座屈耐力が得られれば、他の形状としてもよい。
また、緊張材としてのPC鋼材14を、ブレース本体12の横断面において略中央に配置した例を示したが、ブレース本体12へプレストレスを導入すると共にこのプレストレスの導入によって架構18とブレース本体12の端部とを圧着接合することができれば、PC鋼材14は他の配置であってもよい。
また、緊張材としてのPC鋼材14を、ブレース本体12の横断面において略中央に配置した例を示したが、ブレース本体12へプレストレスを導入すると共にこのプレストレスの導入によって架構18とブレース本体12の端部とを圧着接合することができれば、PC鋼材14は他の配置であってもよい。
また、ブレース本体や緊張材は、複数の部材によって構成してもよい。例えば、図1のA−A断面図の変形例である図2(b)〜(e)のようにしてもよい。図2(b)〜(e)では、PC鋼材14の横断面を簡略化して描いている。
また、第1の実施形態で示したブレース本体12をプレキャスト部材としてもよい。コンクリート成形品であるブレース本体12をプレキャスト化すれば、ブレース本体12の品質を向上させることができる。また、部材(ブレース本体12)の標準化によって、低コスト化を図ることができる。
近年の低層倉庫、ショッピングセンター、物流施設等の建築物においては、耐震補強を施す箇所が多くなるので、耐震要素となる部材の標準化が有効となる。
近年の低層倉庫、ショッピングセンター、物流施設等の建築物においては、耐震補強を施す箇所が多くなるので、耐震要素となる部材の標準化が有効となる。
また、第1の実施形態では、挿入孔52にPC鋼材14を配置した例を示したが、挿入孔52の内壁とPC鋼材14との間の隙間に硬化材を充填してもよい。
また、第1の実施形態では、プレート36、28によって圧着部58を構成し、プレート38、30によって圧着部60を構成した例を示したが、プレート36、28、38、30を設けずに、ブレース本体12の端面と接合部40、42とが直接接触するようにしてもよい。この場合、ブレース本体12の端面と接合部40、42とがスムーズに離間するように、ブレース本体12の端面や接合部40、42の接触面にペンキ等を塗布してもよい。
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
第2の実施形態の説明において、第1の実施形態と同じ構成のものは、同符号を付すると共に、適宜省略して説明する。
図6の正面図に示すように、第2の実施形態の耐震構造66では、構造物としての鉄筋コンクリート造の建築物68を構成する架構18内に2つのブレース10が配設されている。2つのブレース10のうちの一方が右に傾いており、他方が左に傾いている。以下の説明では、右に傾いているブレース10をブレース10Aとし、左に傾いているブレース10をブレース10Bとする。
図6の正面図に示すように、第2の実施形態の耐震構造66では、構造物としての鉄筋コンクリート造の建築物68を構成する架構18内に2つのブレース10が配設されている。2つのブレース10のうちの一方が右に傾いており、他方が左に傾いている。以下の説明では、右に傾いているブレース10をブレース10Aとし、左に傾いているブレース10をブレース10Bとする。
ブレース10A、10B、接合部40、42、及び圧着部58、60の構成は、図1で示した耐震構造62のものと同じなので説明を省略する。ブレース10Bは、ブレース10Aの奥側に配置され、ブレース10Aと交差している。
次に、本発明の第2の実施形態の作用及び効果について説明する。
第2の実施形態では、図6に示すように、架構18に発生するせん断変形(層間変形)が左右どちらの方向に生じても、必ず圧縮側ブレース10を存在させることができる。これにより、圧縮側ブレース10の有する高い圧縮剛性によって、架構に効果的に面内剛性を付与することができる。
また、架構18内に圧縮側ブレース10と引張側ブレース10とが存在することになるので、架構18に付与される面内剛性は、架構18(柱・梁架構、又は柱・スラブ架構)自体が付与する面内剛性に各ブレース本体12及び各PC鋼材14の付与する面内剛性を足し合わせた値となる。これにより、架構18のせん断変形(層間変形)が小さいときには高い面内剛性が付与され、架構18のせん断変形(層間変形)が大きいときには低い面内剛性が付与される。
このことを先に説明した図5(b)〜(d)と図7(a)〜(c)とを用いて具体的に説明する。図7(a)〜(c)に示す横軸δ及び縦軸Qの意味は、図5(a)と同様である。
図6に示す架構18に生じるせん断変形(層間変形)によって架構18に作用するせん断力の内、ブレース10Aのブレース本体12、ブレース10AのPC鋼材14、架構18(柱・梁架構、又は柱・スラブ架構)自体が負担するせん断力の特性は、図5(b)、(c)、(d)のグラフとそれぞれ同じである。
また、図6に示す架構18に生じるせん断変形(層間変形)によって架構18に作用するせん断力の内、ブレース10Bのブレース本体12が負担するせん断力の特性は、図7(a)のようになり、ブレース10BのPC鋼材14が負担するせん断力の特性は、図7(b)のようになる。
よって、圧縮側ブレース10と引張側ブレース10とが存在する図6の架構18においては、図5(b)〜(d)、及び図7(a)、(b)の値を全て足し合わせた、図7(c)のせん断変形−せん断力特性が得られる。
図7(c)では、架構18のせん断変形(層間変形)が小さい領域64において、高い面内剛性が付与される。また、架構18のせん断変形(層間変形)が大きい、領域64の右側及び左側の領域において、低い面内剛性が付与される(領域64内の実線の傾きよりも領域64外の実線の傾きが小さくなる)。
この原理を利用して、例えば、大地震(再現期間500年程度の地震)において架構18に対するブレース本体12の端部の圧着接合(圧着部58、60)が解放されるように、ブレース本体12に導入するプレストレスの大きさを設定した場合、架構18のせん断変形(層間変形)が小さい中小地震(再現期間50年程度の地震)においてブレース10は高い面内剛性を架構18に付与することができる。これによって、架構18を有する建築物68の変形を抑制し、仕上げ材、外装材、家具等の損傷を防止することができる。
また、架構18のせん断変形(層間変形)が大きい大地震においては、引張側ブレース10の圧着接合が解放されるため、ブレース10は中小地震のときより低い面内剛性を架構18に付与する。これによって、架構18を有する建築物68の固有周期を長くして入力地震動を低減することができる。
また、架構18を有する建築物68の固有周期を長くすることにより建築物68の変形を増大させ、ダンパー(鋼材ダンパー、オイルダンパー等)を別途設置してこのダンパーにより地震エネルギーの吸収を図ることができる。
以上、本発明の第2の実施形態について説明した。
なお、第2の実施形態では、架構18内に2つのブレース10A、10Bを配設した例を示したが、3つ以上のブレース10を架構18内に配設してもよい。この場合には、複数のブレース10のうち、少なくとも1つを左右一方に傾いて配設し、少なくとも1つを左右他方に傾いて配設すればよい。
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。
第3の実施形態の説明において、第1の実施形態と同じ構成のものは、同符号を付すると共に、適宜省略して説明する。
図8の正面図に示すように、第3の実施形態の耐震構造70では、構造物としての鉄筋コンクリート造の建築物72を構成する架構18内に、ブレース10と線状部材としてのPC鋼材74とが配設されている。ブレース10は右に傾いて配設され、PC鋼材74は左に傾いて配設されている。
PC鋼材74の端部は、ブレース10に設けられているPC鋼材14と同様の方法で、定着具54、56によって架構18に固定されている。
図8の正面図に示すように、第3の実施形態の耐震構造70では、構造物としての鉄筋コンクリート造の建築物72を構成する架構18内に、ブレース10と線状部材としてのPC鋼材74とが配設されている。ブレース10は右に傾いて配設され、PC鋼材74は左に傾いて配設されている。
PC鋼材74の端部は、ブレース10に設けられているPC鋼材14と同様の方法で、定着具54、56によって架構18に固定されている。
図8及び図9(a)の斜視図に示すように、PC鋼材74は、ブレース10(ブレース本体12)の奥側に配置され、ブレース10と交差している。
次に、本発明の第3の実施形態の作用及び効果について説明する。
第3の実施形態では、図8に示すように、線状部材としてのPC鋼材74によって架構18に面内剛性を付与することが可能になり、架構18の面内剛性を向上させることができる。また、PC鋼材74はブレース10よりも比較的簡単に配設することができるので、架構18に面内剛性を容易に付与させることができる。
線状部材にPC鋼材を用いれば、PC鋼材の断面が小さくてもヤング係数がコンクリートの10倍程度はあるので、PC鋼材が座屈しなければ、コンクリートによって形成されたブレース本体12と同等の軸剛性を得ることは可能である。
PC鋼材74の両端が架構18に固定されている状態において、PC鋼材74は緊張されていてもよいし、緊張されていなくてもよい。PC鋼材74に緊張力を与えておけば、PC鋼材74に圧縮力が作用した場合おいても所定の大きさの圧縮力が作用するまでは圧縮座屈せずに軸剛性を保持することができる。
また、架構18に付与する面内剛性の一部をPC鋼材74が負担するので、ブレース10の耐力を低減することができる。これによって、ブレース本体12の断面積を小さくしたり、ブレース本体12に生じさせるプレストレス量を小さくしたりすることができる。ブレース本体12の断面積を小さくできれば低コスト化を図ることができ、また、ブレース本体12の運搬作業や設置作業が行い易くなる。
以上、本発明の第3の実施形態について説明した。
なお、第3の実施形態では、ブレース10が右に傾いて配設され、PC鋼材74が左に傾いて配設されている例を示したが、ブレース10が左右一方に傾いて配設され、線状部材としてのPC鋼材74が左右他方に傾いて配設されていればよい。
また、第3の実施形態では、ブレース10(ブレース本体12)とPC鋼材74とが、図9(a)に示すように交差する例を示したが、ブレース10(ブレース本体12)とPC鋼材74とを他の方法で交差させてもよい。
例えば、図9(b)の斜視図に示すように、ブレース10(ブレース本体12)を挟むように2つのPC鋼材74を配設してもよいし、図9(c)の斜視図に示すように、ブレース本体12に貫通穴76を形成し、この貫通穴76にPC鋼材74を通すようにしてもよい。
例えば、図9(b)の斜視図に示すように、ブレース10(ブレース本体12)を挟むように2つのPC鋼材74を配設してもよいし、図9(c)の斜視図に示すように、ブレース本体12に貫通穴76を形成し、この貫通穴76にPC鋼材74を通すようにしてもよい。
また、第3の実施形態では、線状部材にPC鋼材74を用いれば、コンクリートによって形成されたブレース本体12と同等の軸剛性を得ることが可能であることを説明したが、あえて線状部材の軸剛性をブレース本体12の軸剛性よりも小さくして耐震構造の耐震性に方向性を持たせてもよい。
図10(a)、(b)の立面図に示すように、線状部材としてのPC鋼材74の軸剛性がブレース本体12の軸剛性よりも小さい耐震構造78を、偏在荷重を有する建築物80、82に適用してもよい。このようにすれば、線状部材(PC鋼材74)の断面を無駄に大きくしなくてよいので、低コスト化を図ることができる。なお、図10(a)に示す耐震構造78は、架構18の左方向へのせん断変形(層間変形)に対して高い面内剛性を付与することができるものであり、図10(b)に示す耐震構造78は、架構18の右方向へのせん断変形(層間変形)に対して高い面内剛性を付与することができるものである。
図10(a)の建築物80では、2〜4階の構造物の一部が左に張り出しているので、建築物80には半時計回りのモーメントが作用する。よって、架構18には、左方向に大きなせん断変形(層間変形)が作用するので、耐震構造78が効果的に機能する。
図10(b)の建築物82では、建築物82の左に配置された地盤86から建築物82へ右方向の土圧が作用する。よって、架構18には、右方向に大きなせん断変形(層間変形)が作用するので、耐震構造78が効果的に機能する。
また、第3の実施形態では、線状部材としてのPC鋼材74と、ブレース10に設けられるPC鋼材14とを別部材とした例を示したが、図11の立面図に示すように、緊張材としてのPC鋼材14と、線状部材としてのPC鋼材74とを連結して1本の緊張材92A〜92Dとしてもよい。
例えば、緊張材92Cの一部を柱内部に配置するようにすれば、柱をプレストレス部材とすることができる。
例えば、緊張材92Cの一部を柱内部に配置するようにすれば、柱をプレストレス部材とすることができる。
また、例えば、1つの架構18内に配設されるPC鋼材14と、PC鋼材74とを連結して緊張材92Bとし、架構18内に設けられている緊張手段94によって緊張材92B(PC鋼材14、74)に引張力を付与してもよい。
このようにすれば、緊張手段94による一回の緊張作業で、ブレース本体12とPC鋼材74とに同時にプレストレスを導入することができ、作業手間を低減することができる。
このようにすれば、緊張手段94による一回の緊張作業で、ブレース本体12とPC鋼材74とに同時にプレストレスを導入することができ、作業手間を低減することができる。
また、架構18内で緊張手段94による緊張作業を行うことが可能なので、新築工事においては、ブレース10が配設された架構18の上階の架構の施工完了を待たずに、緊張作業を行う(ブレース本体12にプレストレスを導入する)ことができる。
また、架構18内で緊張手段94による緊張作業を行うことが可能なので、緊張作業のために別途作業空間を確保しなくてよい。
また、架構18内で緊張手段94による緊張作業を行うことが可能なので、緊張作業のために別途作業空間を確保しなくてよい。
また、第3の実施形態では、線状部材をPC鋼材74とした例を示したが、必要とする軸剛性が得られる線状の部材や軸状の部材であればよく、例えば、PC鋼線、PC鋼より線、PC鋼棒等のPC鋼材や、H型鋼、C型鋼等の型鋼としてもよいし、炭素繊維によって形成してもよい。
次に、本発明の第4の実施形態とその作用及び効果について説明する。
第4の実施形態の説明において、第1の実施形態と同じ構成のものは、同符号を付すると共に、適宜省略して説明する。
図12の立面図に示すように、第4の実施形態では、ブレース10が左右対称となるように、建築物16に耐震構造62が配置されている。図13(a)の平面図に示すように、ブレース10は、地震により建築物16に作用する水平力Pの方向と直交する仮想線98に対して線対称となり、且つブレース10の材軸が水平力Pの方向と平行となるように配置されている。
図12の立面図に示すように、第4の実施形態では、ブレース10が左右対称となるように、建築物16に耐震構造62が配置されている。図13(a)の平面図に示すように、ブレース10は、地震により建築物16に作用する水平力Pの方向と直交する仮想線98に対して線対称となり、且つブレース10の材軸が水平力Pの方向と平行となるように配置されている。
なお、ブレース10は少なくとも一対配置されていればよい。また、図13(b)の平面図に示すように、一対のブレース10の材軸の両方が一直線上になくてもよい。説明の都合上、図13(a)、(b)には、ブレース本体12、圧着部58、60、及び接合部40、42のみが示されている。
よって、第4の実施形態の建築物16では、架構18に発生するせん断変形(層間変形)が左右どちらの方向に生じても、ブレース10によって各層に設計耐力上必要な層せん断耐力を付与させることができる。
以上、本発明の第4の実施形態について説明した。
なお、第4の実施形態では、第1の実施形態の耐震構造62を左右対称に配置した例を示したが、第2の実施形態の耐震構造66や第3の実施形態の耐震構造70を左右対称に配置してもよい。第3の実施形態の建築物72に耐震構造70が左右対称に配置されている例を図14の立面図に示す。
以上、本発明の第1〜第4の実施形態について説明した。
なお、第1〜第4の実施形態では、ブレース本体12が1つの部材である例を示したが、図15(a)、(b)の正面図に示すように、複数の分割ブレース部材102、104を軸方向につないで、ブレース本体12を構成してもよい。このようにすれば、小さな部材(分割ブレース部材102、104)単位で搬送を行うことが可能になるので、搬送を容易に行うことができる。
また、つなぎ合わせる分割ブレース部材102、104の数を変えることによって、さまざまな長さのブレース本体12を構成することが可能になる。これにより、部材(分割ブレース部材102、104)の標準化を図ることができる。
また、第1〜第4の実施形態では、架構18とブレース本体12の端部とを圧着接合するために圧着部58、60を設けた例を示したが、圧着部58、60の一方のみを設けて、他方においてはブレース本体12の端部と架構18とを一体化させてもよい。また、図15(a)、(b)においては、ブレース本体12の両端部を架構18と一体化させてもよい。
また、第1〜第4の実施形態では、ブレース本体12をプレキャスト部材とする例を示したが、ブレース本体12を現場打ちコンクリート部材としてもよい。
また、第1〜第4の実施形態で示したブレース10は架構内に斜めに配設されていればよく、図16(a)、(b)の正面図に示すように、逆V字状やV字状に配設してもよい。
また、第1〜第4の実施形態では、本発明のブレース10を架構18に設けることにより、架構18に高い面内剛性を付与できることを説明したが、他の効果も期待できる。
ここで、図17(a)の立面図に示すように、建築物108において、一般的な鉄骨ブレース110が配設された架構112の間に境界梁106が設けられている場合、鉄骨ブレース110が境界梁106から作用する引張力を負担するので、境界梁106の端部114の変形が固定され(境界梁106の端部114の固定度が変わらず)、境界梁106には大きな応力が発生する。特に境界梁106が短スパンの場合にこの応力は過大となる。
これに対して、図17(b)の立面図に示すように、ブレース10を有する架構18を境界梁106の両側に設けることにより、境界梁106の端部114の固定度が緩和され、それに応じた応力で境界梁106の設計を行うことが可能となる。
以上、本発明の第1〜第4の実施形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものでなく、第1〜第4の実施形態を組み合わせて用いてもよいし、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
10 ブレース
12 ブレース本体
14 PC鋼材(緊張材)
16、68、72、80、82 建築物
18 架構
62、66、70、78 耐震構造
74 PC鋼材(線状部材)
94 緊張手段
102、104 分割ブレース部材
12 ブレース本体
14 PC鋼材(緊張材)
16、68、72、80、82 建築物
18 架構
62、66、70、78 耐震構造
74 PC鋼材(線状部材)
94 緊張手段
102、104 分割ブレース部材
Claims (9)
- 構造物を構成する架構内に斜めに配設されるコンクリート製のブレース本体と、
前記ブレース本体へプレストレスを導入すると共に該プレストレスの導入によって前記架構と前記ブレース本体の端部とを圧着接合する緊張材と、
を有するブレース。 - 前記ブレース本体は、分割ブレース部材を軸方向に複数つないで構成されている請求項1に記載のブレース。
- 前記架構に所定値以上のせん断力が発生したときに前記圧着接合が解放されるように、前記ブレース本体へ導入するプレストレスの大きさが設定されている請求項1又は2に記載のブレース。
- 前記ブレース本体は、プレキャスト部材である請求項1〜3の何れか1項に記載のブレース。
- 請求項1〜4の何れか1項に記載のブレースと、
前記架構と、
を有する耐震構造。 - 前記ブレースは複数配設され、
複数の前記ブレースの少なくとも1つが左右一方に傾いており、複数の前記ブレースの少なくとも1つが左右他方に傾いている請求項5に記載の耐震構造。 - 前記架構内に線状部材が斜めに配設され、
前記ブレースが左右一方に傾いており、前記線状部材が左右他方に傾いている請求項5に記載の耐震構造。 - 前記緊張材と前記線状部材とは連結されており、
前記線状部材に引張力を付与する緊張手段が前記架構内に設けられている請求項7に記載の耐震構造。 - 請求項1〜4の何れか1項に記載のブレースを有する建築物。
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JP2015063882A (ja) * | 2013-08-27 | 2015-04-09 | 山本 泰稔 | 耐震補強工法用鋼板及び該耐震補強工法用鋼板を使用する既設建物の耐震補強構造 |
CN107700706A (zh) * | 2017-11-10 | 2018-02-16 | 东北林业大学 | 一种新型压杆拉索钢竹组合剪力墙 |
CN112065137A (zh) * | 2020-09-15 | 2020-12-11 | 广西贵港建设集团有限公司 | 一种建筑物防震支撑机构 |
-
2009
- 2009-09-17 JP JP2009215999A patent/JP2011064012A/ja active Pending
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