JP2010221745A - 車両制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】車両制御装置において、エンジンと発電用回転電機と走行用回転電機の間で動力分配を行なう車両について、坂道後進を十分に行うことを可能とすることである。
【解決手段】エンジン28と、回転電機24,26と、動力分配機構30とを含む車両制御システム8における車両制御装置40は、車両の傾斜度θを取得する傾斜度取得処理部42と、シフトポジションを取得するシフトポジション取得処理部44と、蓄電装置12のSOC値を取得するSOC取得処理部46と、シフトポジションが後進レンジであるRレンジであって、傾斜度θが予め定めた傾斜度閾値θth以上のときに、充電開始SOC値と充電終了SOC値とをそれぞれ通常の場合よりも低い値に設定変更するSOC閾値変更処理部50とを含んで構成される。
【選択図】図1
【解決手段】エンジン28と、回転電機24,26と、動力分配機構30とを含む車両制御システム8における車両制御装置40は、車両の傾斜度θを取得する傾斜度取得処理部42と、シフトポジションを取得するシフトポジション取得処理部44と、蓄電装置12のSOC値を取得するSOC取得処理部46と、シフトポジションが後進レンジであるRレンジであって、傾斜度θが予め定めた傾斜度閾値θth以上のときに、充電開始SOC値と充電終了SOC値とをそれぞれ通常の場合よりも低い値に設定変更するSOC閾値変更処理部50とを含んで構成される。
【選択図】図1
Description
本発明は、車両制御装置に係り、特にエンジンと発電用回転電機と走行用回転電機の間で動力分配を行なう車両における車両制御装置に関する。
回転電機をエンジンと共に搭載する車両では、エンジンと回転電機との間で動力分配が行なわれる。この場合、回転電機に接続される電源回路に含まれる蓄電装置も含め、車両全体の燃費向上等を考慮し、車両の様々な運行状態に応じた動力分配が行なわれる。
本発明に関連する技術として、特許文献1には、出力軸が固定できる内燃機関と2つの電動機とを備える車両の制御方法として、エンジンの異常等の他に、シフトポジションが後進走行用のRポジションであって所定の勾配以上のとき、バッテリの残容量であるSOCが閾値以上のときに、クラッチをオンにする条件を満たすとしてエンジンのクランクシャフトを固定して2つの電動機で走行し、クラッチをオンにする条件を満たさないときは、エンジンと2つの電動機で走行する制御を行うことが述べられている。
特許文献1に述べられているように、車両の運行状態は様々なものがあって、例えば、坂道における後進状態等においても、蓄電装置を含めた動力分配がその状況に応じて行なわれる。
坂道における後進状態では、車両としては、ある程度の傾斜度の坂道であれば、適当な走行持続距離が有することが望ましい。このようなときに、回転電機で坂道後進をすることを考えると、ある程度の傾斜度で適当な走行持続距離を確保するには、蓄電装置にその条件を満たす程度の充電が行われていることが必要である。仮に、蓄電装置に十分な充電量がないときには、エンジンが始動されて発電が行なわれる。
ところで、走行用の回転電機の駆動力で後進運転を行なっているときに、発電用の回転電機を駆動するためにエンジンを始動させると、動力分配機構によって走行用の回転電機の駆動力に、エンジンによる駆動力が分配されて車両の車軸に出力されることになる。このときに、エンジンによる駆動力の分配が走行用の回転電機の駆動力をアシストするほうこうであればよいが、動力分配の機構によっては、後進運転のときに、エンジンの駆動力の分配が走行用の回転電機の駆動力に対し逆向きに分配されることが生じる。
このように動力分配が行なわれると、エンジンが始動されることで、車軸における駆動力は、エンジンが始動されないときに比較して小さなものとなるので、十分な坂道後進ができなくなることが生じる。
本発明の目的は、エンジンと発電用回転電機と走行用回転電機の間で動力分配を行なう車両について、坂道後進を十分に行うことを可能とする車両制御装置を提供することである。
本発明に係る車両制御装置は、エンジンと発電用回転電機と走行用回転電機の間で動力分配を行なう車両の車両制御装置であって、路面の勾配斜度による車両の傾斜度を取得する傾斜度取得手段と、シフトポジションを取得するシフトポジション取得手段と、回転電機用蓄電装置の充電状態であるSOC値を取得するSOC取得手段と、SOC値が予め定めた充電開始SOC値以下に低下するとエンジンを始動して発電用回転電機による強制充電を開始し、予め定めた充電終了SOC値以上に上昇すると強制充電を終了する制御を行う充放電制御部と、シフトポジションが後進レンジであって、傾斜度が予め定めた傾斜度閾値以上のときに、充電開始SOC値を通常の場合よりも低い値に設定変更する変更手段と、を備えることを特徴とする。
また、本発明に係る車両制御装置において、変更手段は、さらに、充電終了SOC値を通常の場合よりも低い値に設定変更することが好ましい。
上記構成により、車両制御装置は、シフトポジションが後進レンジであって、傾斜度が予め定めた傾斜度閾値以上のときに、充電開始SOC値を通常の場合よりも低い値に設定変更する。これにより、蓄電装置を充電するために行われるエンジンの始動時期を遅らせることができ、エンジン始動による車軸への駆動力分配時期を遅らせて、坂道後進の走行持続距離を延ばすことができる。
また、車両制御装置において、変更手段は、さらに、充電終了SOC値を通常の場合よりも低い値に設定変更するので、強制充電の期間が不必要に長くなることを抑制できる。
以下に図面を用いて、本発明に係る実施の形態につき、詳細に説明する。以下では、車両制御システムの対象として、エンジンと2つの回転電機とが動力分配機構によって動力分配が行なわれる車両を説明するが、具体的な構成は例示であって、これ以外の構成要素を付加するものであってもよい。例えば、動力分配機構にさらに減速機構を設けるものとしてもよい。また、回転電機に接続される電源回路についても、説明する構成にさらにシステムメインリレー、DC/DCコンバータ等を付加するものとしてもよい。
以下では、全ての図面において同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、本文中の説明においては、必要に応じそれ以前に述べた符号を用いるものとする。
図1は、エンジンと回転電機とを搭載する車両についての車両制御システム8の構成を示す図である。ここでは、傾斜度θの坂道の路面4において車両6が登坂後進、つまり、後進しながら坂道を登る状況が示されている。
車両制御システム8は、車両6の駆動のための駆動ブロック10と、駆動ブロックの構成要素の動作を全体として制御する車両制御装置40とを含んで構成される。
駆動ブロック10は、大別して、蓄電装置12を含む電源回路と、これに接続される2つの回転電機24,26と、エンジン28と、回転電機24,26とエンジン28との間の動力分配を行って車軸32に駆動力を出力する動力分配機構30とを含んで構成される。
蓄電装置12を含む電源回路は、回転電機24,26と接続される回路であり、回転電機24,26が駆動モータとして機能するときにこれに電力を供給し、あるいは回転電機24,26が発電機として機能するときは回生電力を受け取って蓄電装置12を充電する機能を有する。電源回路は、2次電池である蓄電装置12と、蓄電装置12側の平滑コンデンサ14と、電圧変換器16と、インバータ20,22側の平滑コンデンサ18と、インバータ20,22とを含んで構成される。
蓄電装置12としては、例えば、約200Vの端子電圧を有するリチウムイオン組電池あるいはニッケル水素組電池、またはキャパシタ等を用いることができる。
電圧変換器16は、蓄電装置12側の電圧をリアクトルのエネルギ蓄積作用を利用して例えば約650Vに昇圧する機能を有する回路である。なお、電圧変換器16は双方向機能を有し、インバータ20,22側からの電力を蓄電装置12側に充電電力として供給するときには、インバータ20,22側の高圧を蓄電装置12に適した電圧に降圧する作用も有する。
蓄電装置12側の平滑コンデンサ14と、インバータ20,22側の平滑コンデンサ18は、それぞれの側における電圧、電流の変動を抑制し平滑化する機能を有する。
インバータ20,22は、交流電力と直流電力との間の電力変換を行う回路である。インバータ20,22は、車両制御装置40の制御の下で作動する複数のスイッチング素子を含んで構成される。2つのインバータ回路のうち1つは第1の回転電機(MG1)24の作動用のMG1インバータであり、もう1つは第2の回転電機(MG2)26の作動用のMG2インバータである。
第1の回転電機(MG1)24を発電機として機能させるときには、MG1インバータは、第1の回転電機(MG1)24からの交流3相回生電力を直流電力に変換し、蓄電装置側に充電電流として供給する交直変換機能を有する。また、第2の回転電機(MG2)26の作動用のMG2インバータ22は、車両が力行のとき、蓄電装置側からの直流電力を交流3相駆動電力に変換し、第2の回転電機(MG2)26に駆動電力として供給する直交変換機能と、車両が制動のとき、逆に第2の回転電機(MG2)26からの交流3相回生電力を直流電力に変換し、蓄電装置側に充電電流として供給する交直変換機能とを有する。
上記のように、車両6の駆動源としては、エンジン28と、蓄電装置12とを動力源とし、第1の回転電機(MG1)24と第2の回転電機(MG2)26とを備える。
エンジン28は、複数の気筒を有する内燃機関で、第1の回転電機24と第2の回転電機26とともに車両の駆動源を構成する。エンジン28は、動力分配機構30等を介して車両の駆動軸である車軸32を駆動し、車両の走行を行わせる機能と共に、第1の回転電機24を発電機として用いて発電を行わせ、蓄電装置12を充電する機能を有する。
2つの回転電機24,26は、車両に搭載されるモータ・ジェネレータ(MG)であって、基本的に同様の構成を有し、共に、蓄電装置12から電力が供給されるときはモータとして機能し、エンジン28による駆動時、あるいは車両の制動時には発電機として機能することができる3相同期型回転電機である。
2つの回転電機24,26の役割分担として、第1の回転電機(MG1)24を主に発電用の回転電機、第2の回転電機(MG2)26を走行用の回転電機とすることができる。このようにすることで、第1の回転電機(MG1)24は、エンジン28によって駆動されて発電機として用いられ、発電された電力をMG1インバータ20、電圧変換器16を介して蓄電装置12に供給するものとして用いられる。また、第2の回転電機(MG2)26は、車両走行のために用いられ、力行時には蓄電装置12から直流電力の供給を受けて電圧変換器16、MG2インバータ22を介して変換された交流電力によってモータとして機能して車両の駆動軸である車軸32を駆動し、制動時には発電機として機能して回生エネルギを回収し、MG2インバータ22、電圧変換器16を介して蓄電装置12に供給するものとできる。
動力分配機構30は、エンジン28と第1の回転電機24と第2の回転電機26との間で動力を分配する機能を有するもので、プラネタリ機構を用いることができる。図1の例では2つのプラネタリ機構が用いられている。
第1のプラネタリ機構においては、エンジン28と第1の回転電機24との間に第1のプラネタリ機構が設けられ、そのサンギヤ(S1)に第1の回転電機24の出力軸が接続され、遊星歯車のキャリア(C1)にエンジン28の出力軸が接続される。そして、リングギヤ(R1)は、次の第2のプラネタリ機構のリングギヤ(R2)と共に、車軸32に接続される。
第2のプラネタリ機構においては、そのサンギヤ(S2)に第2の回転電機26の出力軸が接続され、遊星歯車のキャリア(C2)は固定位置とされる。そして、上記のように、そのリングギヤ(R2)は、第1のプラネタリ機構のリングギヤ(R1)と共通接続されて、車軸32に接続される。なお、動力分配機構30の作用については、後に詳述する。
図1において、車両6に設けられる傾斜度センサ34は、路面の勾配斜度に対応する車両の傾斜度θを検出する機能を有する。検出された傾斜度θは、適当な信号線で車両制御装置40に伝送される。かかる傾斜度センサ34として、例えば、適当な加速度計を利用することができる。
車両6に設けられるシフトポジション検出部36は、シフトレバーのシフト位置であるシフトポジションを検出する機能を有する。特にここでは、シフトレバーが後進レンジであるRレンジにあるか否かに関する情報を適当な信号線を介して車両制御装置40に伝送する機能を有する。
蓄電装置12に接続されるSOC算出部38は、蓄電装置12が過充電、過放電にならないように、蓄電装置12の充電状態であるSOC値を時々刻々算出する機能を有する。具体的には、電圧変換器16、インバータ20,22を介して蓄電装置12に出入りする電力に基づいて、蓄電装置12の充電容量に対する現在の充電量を算出する。SOC値は、この充電容量に対する現在の充電量の比である残充電量で示すことができる。算出されたSOC値は、適当な信号線を介して車両制御装置40に伝送される。
車両制御装置40は、上記の各要素の作動を全体として制御する機能を有する。例えば、エンジン28の作動を制御する機能、2つの回転電機24,26の作動を制御する機能、電圧変換器16、インバータ20,22の作動を制御する機能、動力分配機構30の作動を制御する機能、蓄電装置12に対する充放電を制御する機能等を有する。
かかる車両制御装置40は、車両の搭載に適した制御装置、例えば車載用コンピュータによって構成することができる。車両制御装置40を1つのコンピュータで構成することもできるが、必要な処理速度が各構成要素によって異なること等を考慮し、複数のコンピュータにこれらの機能を分担させることもできる。例えば、エンジン28の作動を制御する機能をエンジン電気制御ユニット(Electrical Control Unit:ECU)に分担させ、2つの回転電機24,26の作動を制御する機能をMG−ECUに分担させ、電圧変換器16、インバータ20,22の作動を制御する機能をPCU(Power Control Unit)、蓄電装置12の充放電をバッテリECUに分担させ、これらと動力分配機構30を含む全体を統合ECUで制御する等の構成とすることもできる。
図1において、車両制御装置40は、これらの機能のうち、特に、車両6が坂道後進の状態のとき駆動を十分なものとする制御機能を有する。そのために、路面の勾配斜度による車両の傾斜度θを取得する傾斜度取得処理部42と、シフトポジションを取得するシフトポジション取得処理部44と、蓄電装置12の充電状態であるSOC値を取得するSOC取得処理部46と、SOC値が予め定めた充電開始SOC値以下に低下するとエンジンを始動して発電用回転電機による強制充電を開始し、予め定めた充電終了SOC値以上に上昇すると強制充電を終了する制御を行う充放電制御処理部48と、シフトポジションが後進レンジであるRレンジであって、傾斜度θが予め定めた傾斜度閾値θth以上のときに、充電開始SOC値と充電終了SOC値とをそれぞれ通常の場合よりも低い値に設定変更するSOC閾値変更処理部50とを含んで構成される。
これらの機能は、ソフトウェアを実行することで実現でき、具体的には、車両制御プログラムの中のSOC設定パートを実行することで実現できる。これらの機能の一部をハードウェアによって実現するものとしてもよい。
上記構成の作用、特に車両制御装置40の各機能について以下に詳細に説明する。最初に図2から図4を用いて車両6の坂道後進状態のときの様子について説明し、次に、図5,6を用いて車両6が坂道後進の状態のとき駆動を十分なものとする制御機能について説明する。
図2は、車両6が第2の回転電機26によって坂道後進するときにおいて、SOC値と走行持続距離との関係を説明する図である。図2の横軸はSOC値、縦軸は走行持続距離で、ここでは傾斜度をパラメータで示してある。この場合の走行持続距離とは、Rレンジで坂道をそのときのSOC値でどの程度持続して登坂できるかを示す走行距離である。走行持続距離L0は車両の目標仕様で設定される。図2に示されるように、この目標仕様であるL0を達成するための蓄電装置12の残充電量であるSOC値は、傾斜度が大きくなるほど大きな値となる。
すなわち、坂道の勾配斜度が大きくなるほど、同じSOC値であれば走行持続距離は短くなり、走行持続距離を目標仕様であるL0とすると、傾斜度θが大きいほど、必要なSOC値は大きな値となる。車両制御装置40は、図2のような特性図を参照し、傾斜度θが与えられると、走行持続距離L0を達成するために必要なSOC値を求め、現在のSOC値と比較する。
現在のSOC値がL0達成に必要なSOC値よりも高ければ、そのまま第2の回転電機26に蓄電装置12から電力を供給して、坂道後進を第2の回転電機26の駆動力で実行させる。逆に、現在のSOC値がL0達成に必要なSOC値よりも低いときは、エンジン28を始動させて第1の回転電機24によって発電された電力を蓄電装置12に供給し、必要なSOC値まで残充電量を高めることを実行させる。
図3は、坂道後進の際にエンジン始動による影響を説明する図である。図3の横軸は路面4の勾配斜度で、実際には車両6の傾斜度センサ34の検出値である傾斜度θと同じものである。縦軸は車軸32において坂道を登坂するときに必要な駆動力がとられている。図3において、破線は、車両6が坂道で停車時の状態から登坂を行なうときに必要な発進時登坂必要駆動力60である。実線は、車両6が坂道ですでに登坂中で、その登坂動作状態を維持して登坂を続けるときに必要な航続時登坂必要駆動力62である。図3に示されるように、同じθであれば、発進時登坂必要駆動力60の方が航続時登坂必要駆動力62
よりも大きくなる。
よりも大きくなる。
第2の回転電機26の駆動力の設定は、図2で説明した走行持続距離L0の目標仕様と、そのときの傾斜度θ0とを参照し、第2の回転電機26の駆動力のみでこの目標を達成できるように行なわれる。すなわち、図3において、θ=θ0としたときの発進時登坂必要駆動力60を満たすように、第2の回転電機26の駆動力が設定される。図3では、枠でMG2として、そのときの駆動力が示されている。このときの前提は、蓄電装置12から十分な電力供給が第2の回転電機26に対し行なわれていることである。
ところで、図2において、この傾斜度θ0と走行持続距離L0を達成するために必要なSOC値であるSOC(θ0)よりも蓄電装置12の現在のSOC値が低いと、上記のようにエンジン28が始動する。したがって、車軸32には、第2の回転電機26による駆動力と、エンジン28の駆動力が第1のプラネタリ機構によってリング(R1)に分配される駆動力とが出力される。
そのとき、図1の構成の動力分配機構30においては、エンジン28によってリング(R1)に分配される駆動力が、第2の回転電機26によってリング(R2)に出力される駆動力を低下させるように作用する。図3では、枠で、MG2・エンジンとして、その駆動力が示されているが、先ほどの枠のMG2の駆動力よりも低い値となることが示されている。
図4はその様子について、共線図を用いて説明する図である。図4の上段は、エンジン28が作動していない状態で、第2の回転電機26の駆動力のみで車軸32が駆動されているときの共線図であり、下段は、上段の状態においてさらにエンジン28が始動して第1の回転電機24を発電するときの共線図である。共線図は縦軸に回転数をとり、横軸に動力分配機構30の各要素をそれぞれの歯車の歯数比に応じた間隔で配置したものである。
図4では、第1のプラネタリ機構のサンギヤ(S1)、キャリア(C2)、リング(R1)と、第2のプラネタリ機構のリング(R2)、キャリア(C2)、サンギヤ(S2)がこの順序で横軸上に配置されていることが示されている。そして上記のように、R1とR2とは共通として車軸32に接続される。車軸32側の共通軸はプロペラシャフト(P)と呼ばれるので、図4では、P=R1=R2としてそのことが示されている。
なお、図4は模式図であって、実際の歯数比で各要素が横軸上に配置されているものではない。よく知られているように、このような共線図において、複数の要素の間の回転数の関係は、それらの要素の回転数の位置を結んだときに直線となる。
図4の上段は、エンジン28が始動していない状態であるときの共線図である。ここでは、第2のプラネタリ機構においてキャリア(C2)が固定位置であるので、サンギヤ(S2)の第2の回転電機26の回転数と、リング(R2)における回転数との関係は、キャリア(C2)の回転数=0として、サンギヤ(S2)、キャリア(C2)、リング(R2)とが一直線となる関係となる。
したがって、車軸32と接続されるプロペラシャフト(P)の駆動力に相当するトルクは、サンギヤ(S2)における第2の回転電機26のトルクTMG2と、第のプラネタリ機構における歯数比とから計算され、図4ではこれをTR(MG2)として示してある。このTR(MG2)に対応する駆動力が、プロペラシャフト(P)の出力として車軸32に伝達されることになる。
図4の下段は、図2で説明したように、その傾斜度θ0では目標とする走行持続距離L0を達成できないとして、エンジン28が始動されて第1の回転電機24が駆動される場合の共線図である。ここでは、エンジン28の出力するトルクTEが、第1のプラネタリ機構の歯数比に応じて、サンギヤ(S1)の第1の回転電機24と、リング(R2)とに分配される。ここでも共線図が直線関係となるように、サンギヤ(S1)においては、分配されたトルクTS(E)に対応する発電トルクTMG1が発生するように第1の回転電機24の作動が制御される。
図4の下段において示されるように、リング(R1)に分配されるトルクTR(E)は、先ほどのリング(R2)に出力されるトルクTR(MG2)と方向が逆になる。このことから、リング(R1)とリング(R2)を共通に接続するプロペラシャフト(P)におけるトルクは、先ほどのトルクTR(MG2)よりも小さな値となる。すなわち、エンジン28を第1の回転電機24の発電のために始動すると、始動しないときのプロペラシャフト(P)に出力されるトルクよりも小さなトルクしか出力されないことになる。つまり、車軸32における駆動力が低下することになる。
以上で、車両6の坂道後進状態のときの様子、特に第1の回転電機24の発電のためにエンジン28を始動すると、車軸32における駆動力が低下することについて説明したので、次に、図5,6を用いて車両6が坂道後進の状態のとき駆動を十分なものとする制御機能について説明する。
図5は、坂道後進を含めて、車両制御の全体の手順を示すフローチャートである。各手順は、車両制御プログラムのSOC設定パートの各処理手順に対応する。
はじめに、シフトポジションSPと、車両6の傾斜度θと、SOC値とを取得する(S10)。この工程は、車両制御装置40のシフトポジション取得処理部44、傾斜度取得処理部42、SOC取得処理部46の機能によって実行される。具体的には、シフトポジション検出部36、傾斜度センサ34、SOC算出部38から伝送される各データをそれぞれ取得する。
取得されたシフトポジションSPのデータについて、Rレンジであるか否かが判断される(S12)。Rレンジは車両6が後進するときにユーザによって設定されるシフトポジションである。S12の判断が肯定されないときはS10に戻り、適当なサンプリングタイムをおいて再びシフトポジションSPが取得される。
S12において判断が肯定されると、傾斜度θが予め定めた傾斜度閾値θthか否かが判断される(S14)。傾斜度閾値θthは車両6の仕様等から設定される。例えば、θthを10度から15度程度とすることができる。
S14で判断が否定されるときは、通常の後進状態と判断され、強制充電に関するSOC閾値が通常の範囲として設定されたものが用いられる(S16)。強制充電に関するSOC閾値とは、充電開始閾値と、充電終了閾値とがある。充電開始閾値とは、SOC値が予め定めた充電開始SOC値以下に低下するとエンジン28を始動して発電用回転電機による強制充電を開始するときの充電開始SOC値のことである。充電終了閾値とは、SOC値が予め定めた充電終了SOC値以上に上昇すると強制充電を終了するときの充電終了SOC値のことである。
強制充電に関する閾値を通常範囲に設定されたものを用いるとは、通常走行、つまり、前進走行等を含め、車両6において予め標準的に設定されている充電開始閾値と充電終了閾値とを用いる意味である。SOC閾値の通常範囲としては、例えば、充電開始閾値を40%、充電終了閾値を50%等とすることができる。勿論、車両6の仕様等で、これ以外の範囲をSOC閾値の通常範囲としてもよい。
S14で判断が肯定されると、傾斜度がきつい後進状態であるので、強制充電に関するSOC閾値が通常範囲よりも低い低下範囲に設定される(S18)。この設定は、S14で判断が肯定されたときにSOC閾値の範囲が変更されるもので、例外的で一時的なものである。この工程は、車両制御装置40のSOC閾値変更処理部50の機能によって実行される。
図6に、このSOC閾値の範囲の変更の様子を示す。図6において(a)は通常状態にけるSOC閾値で、斜線を付した範囲が通常範囲に相当する。ここでは、上記のように充電開始閾値を40%、充電終了閾値を50%としてある。(b)は、S14で判断が肯定されてS18において変更されたSOC閾値で、斜線を付した範囲が低下範囲である。ここでは、低下範囲として、通常範囲を5%低下させた例が示されている。すなわち、充電開始閾値が35%、充電終了閾値が45%として示されている。
勿論、これ以外の設定によって低下範囲を定めてもよい。例えば、充電開始閾値を通常の場合より10%低下させてもよく、充電終了閾値を通常の場合と同じとしてもよい。好ましくは、充電開始閾値と充電終了閾値との間の値を通常範囲の場合と同じとして、全体を適当に低下させることがよい。これによって、坂道後進において、エンジン28の始動による車軸32における駆動力の低下を遅らせて目標の走行持続距離を達成することができると共に、強制充電が開始しても通常と同じ%だけの追加充電を行ったときに充電を終了させることができ、燃費向上に寄与できる。
再び図5に戻り、S16,S18によっていずれかの範囲でSOC閾値が設定されると、現在のSOC値がその設定されたSOC閾値と比較される。まず、現在のSOC値が充電開始のSOC閾値未満であるか否かが判断される(S20)。判断が肯定されると強制充電が開始される(S22)。具体的には、エンジン28が始動し、第1の回転電機24が発電開始する。
S20で判断が否定されると、次に現在のSOC値が充電終了のSOC閾値を超えるか否かが判断される(S24)。判断が肯定されると強制充電が終了される(S26)。具体的には、エンジン28が停止し、第1の回転電機24の発電が終了する。判断が否定されるときは、第1の回転電機24がエンジン28によって駆動されて発電し、蓄電装置12がちょうど充電中であるときである。
このようにして、設定されたSOC閾値と現在のSOC値とが比較されて、蓄電装置12に関する充放電が制御される。これらの工程は、SOC算出部38によって算出された現在のSOC値に基づいて、車両制御装置40の充放電制御処理部48の機能によって実行される。
したがって、上記構成によって、車両6が坂道後進の状態で、坂道が予め定めた勾配斜度以上であるときは、SOC閾値を通常のものより低めに設定されることで、エンジン28の始動による車軸32における駆動力の低下を遅らせて、坂道後進走行において目標の走行持続距離を達成することができる。
本発明に係る車両制御装置は、エンジンと回転電機とを搭載する車両の駆動制御に利用できる。
4 路面、6 車両、8 車両制御システム、10 駆動ブロック、12 蓄電装置、14,18 平滑コンデンサ、16 電圧変換器、20,22 インバータ、24,26 回転電機、28 エンジン、30 動力分配機構、32 車軸、34 傾斜度センサ、36 シフトポジション検出部、38 SOC算出部、40 車両制御装置、42 傾斜度取得処理部、44 シフトポジション取得処理部、46 SOC取得処理部、48 充放電制御処理部、50 閾値変更処理部、60 発進時登坂必要駆動力、62 航続時登坂必要駆動力。
Claims (2)
- エンジンと発電用回転電機と走行用回転電機の間で動力分配を行なう車両の車両制御装置であって、
シフトポジションを取得するシフトポジション取得手段と、
回転電機用蓄電装置の充電状態であるSOC値を取得するSOC取得手段と、
SOC値が予め定めた充電開始SOC値以下に低下するとエンジンを始動して発電用回転電機による強制充電を開始し、予め定めた充電終了SOC値以上に上昇すると強制充電を終了する制御を行う充放電制御部と、
路面の勾配斜度による車両の傾斜度を取得する傾斜度取得手段と、
シフトポジションが後進レンジであって、傾斜度が予め定めた傾斜度閾値以上のときに、充電開始SOC値を通常の場合よりも低い値に設定変更する変更手段と、
を備えることを特徴とする車両制御装置。 - 請求項1に記載の車両制御装置において、
変更手段は、さらに、充電終了SOC値を通常の場合よりも低い値に設定変更することを特徴とする車両制御装置。
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