以下、本発明の一実施の形態について、図を参照して詳細に説明する。なお、以下に示す一実施の形態は、サイドエアバッグ装置に組み込まれるいわゆるシリンダ型ガス発生器に本発明を適用した場合を例示するものである。
図1は、本発明の一実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器の外観構造を示す図であり、図1(A)は、正面図、図1(B)は右側面図である。また、図2は、本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器の内部構造を示す図であり、図1(A)および図1(B)に示すII−II線に沿った模式断面図である。また、図3は、図2に示す第1密閉容器および第2密閉容器のハウジングへの組付け前の状態を示す模式断面図であり、図3(A)は、第1密閉容器を、図3(B)は、第2密閉容器をそれぞれ示している。以下においては、これら図1ないし図3を参照して、本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1の外観構造および内部構造について説明する。
図1(A)、図1(B)および図2に示すように、本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1は、長尺円柱状の外形を有しており、軸方向の両端が閉塞されてなる外殻部材としてのハウジングを有している。外殻部材としてのハウジングは、周壁部11および底壁部12を有する一端が閉塞された有底円筒状の第1ハウジング部材10と、第1ハウジング部材10の軸方向と同方向に沿って延びる貫通部23を有する筒状の第2ハウジング部材20とを含んでいる。第2ハウジング部材20は、その外周面の所定位置に後述するかしめ固定のための溝21を有しており、当該溝21は、第2ハウジング部材20の外周面に周方向に沿って延びるように環状に形成されている。
第2ハウジング部材20は、第1ハウジング部材10の開口端を閉塞するように第1ハウジング部材10に固定されている。具体的には、第1ハウジング部材10の開口端に第2ハウジング部材20の一部が内挿された状態で、当該第2ハウジング部材20の外周面に設けられた溝21に対応する部分の第1ハウジング部材10の周壁部11を径方向内側に縮径させて当該溝21に係合させることにより、第2ハウジング部材20が第1ハウジング部材10に対してかしめ固定されている。これにより、ハウジングの軸方向の一端部が、第2ハウジング部材20によって構成されることになり、ハウジングの軸方向の他端部が、第1ハウジング部材10の底壁部12によって構成されることになる。
当該かしめ固定は、第1ハウジング部材10の周壁部11を径方向内側に均等に縮径される八方かしめと呼ばれるかしめ固定である。この八方かしめを行なうことにより、第1ハウジング部材10の周壁部11には、かしめ部14が設けられることになる。上記八方かしめを利用すれば、かしめ固定する第1ハウジング部材10および第2ハウジング部材20の間に特にシール部材を介装させずとも、ハウジング内部の気密性を相当程度に確保することができる。
第1ハウジング部材10は、ステンレス鋼や鉄鋼、アルミニウム合金、ステンレス合金等の金属製の部材にて構成されていてもよいし、SPCEに代表される圧延鋼板をプレス加工することで有底円筒状に成形された金属製のプレス成形品にて構成されていてもよい。第1ハウジング部材10を圧延鋼板のプレス成形品で構成する場合には、ステンレス鋼や鉄鋼等の金属製の部材を用いた場合に比べて安価にかつ容易に第1ハウジング部材10を形成することができるとともに、大幅な軽量化が可能になる。一方、第2ハウジング部材20は、ステンレス鋼や鉄鋼、アルミニウム合金、ステンレス合金等の金属製の部材にて構成されている。
また、第1ハウジング部材10および第2ハウジング部材20によって構成されるハウジングの内部の空間には、仕切り部材40が配置されている。この仕切り部材40は、ハウジングの内部の空間を軸方向に作動ガス生成室とフィルタ室とに区画するものである。作動ガス生成室は、ハウジングの軸方向の略中央部に位置しており、内部に後述する第1密閉容器80が収容されている。フィルタ室は、ハウジングの軸方向の他端部側(すなわち、第1ハウジング部材10の底壁部12側)に位置しており、内部に後述するフィルタ70が収容されている。
図2に示すように、ハウジングの軸方向の一端部(すなわち、第2ハウジング部材20寄りの部分)には、点火手段としての点火器(スクイブ)30および伝火薬(エンハンサ)61が配置されている。点火手段としての点火器30および伝火薬61は、後述するガス発生剤62を燃焼させるための火炎を発生させるためのものであり、このうちの伝火薬61は、第2密閉容器90に収容されている。当該点火器30および第2密閉容器90が収容された部分のハウジング内部の空間は、点火室に相当する。すなわち、点火室は、ハウジングの軸方向の一端部寄りの部分に位置しており、第1ハウジング部材10の周壁部11と、第2ハウジング部材20と、後述する第1密閉容器80とによって規定される。
点火器30は、第2ハウジング部材20の貫通部23に内挿されてかしめ固定されている。より詳細には、第2ハウジング部材20は、ハウジングの内部の空間に面する側の端部にかしめ部24を有しており、点火器30が貫通部23に内挿されて第2ハウジング部材20に当て留めされた状態で当該かしめ部24をかしめることにより、点火器30が第2ハウジング部材20に挟持されて点火器30が第2ハウジング部材20に固定されている。
点火器30は、火炎を発生させるための点火装置であり、基部31と、点火部32と、端子ピン33とを含んでいる。基部31は、一対の端子ピン33を挿通・保持するための部位であり、点火部32に隣接して設けられている。点火部32は、その内部に作動時において着火する点火薬と、この点火薬を燃焼させるための抵抗体とを含んでいる。端子ピン33は、点火薬を着火させるために点火部32に接続されている。より詳細には、点火器30においては、基部31によって保持された一対の端子ピン33が点火部32内に挿入され、その先端を連結するように抵抗体(ブリッジワイヤ)が取付けられ、この抵抗体を取り囲むようにまたはこの抵抗体に接するように点火部32内に点火薬が充填されている。抵抗体としては一般にニクロム線やプラチナおよびタングステンを含む合金製の抵抗線等が利用され、点火薬としては一般にZPP(ジルコニウム・過塩素酸カリウム)、ZWPP(ジルコニウム・タングステン・過塩素酸カリウム)、鉛トリシネート等が利用される。また、点火部32を囲うスクイブカップは、一般に金属製またはプラスチック製である。
衝突を検知した際には、端子ピン33を介して抵抗体に所定量の電流が流れる。抵抗体に所定量の電流が流れることにより、抵抗体においてジュール熱が発生し、この熱を受けて点火薬が燃焼を開始する。燃焼により生じた高温の火炎は、点火薬を収納しているスク
イブカップを破裂させる。抵抗体に電流が流れてから点火器30が作動するまでの時間は、抵抗体にニクロム線を利用した場合には3ミリ秒以下である。
上述したように、伝火薬61は、第2密閉容器90に収容されている。第2密閉容器90は、有底筒状のカップ部91と、当該カップ部91の開口を閉塞するキャップ部92とを含んでおり、ハウジングの軸方向の一端部寄りの位置に点火器30に連接するように内挿されている。第2密閉容器90においては、カップ部91とキャップ部92とが組み合わされて接合されており、これにより第2密閉容器90の内部に形成される収容空間93が当該第2密閉容器90の外部から気密に封止されている。カップ部91およびキャップ部92としては、銅やアルミニウム、銅合金、アルミニウム合金等の金属薄板(箔)をプレス加工等することで成形された金属部材や、射出成形やシート成形等を行なうことで形成された樹脂部材等が利用される。また、カップ部91とキャップ部92との接合には、ろう付けや接着、巻き締め等が好適に用いられる。
伝火薬61は、点火器30が作動することによって生じた火炎によって点火され、燃焼することによって熱粒子を発生する。伝火薬61としては、後述するガス発生剤62を確実に燃焼開始させることができるものであることが必要であり、一般的には、B/KNO3等に代表される金属粉/酸化剤からなる組成物など、後述するガス発生剤62よりも燃焼速度が速くかつ高発熱性の組成物が用いられる。伝火薬61は、粉状のものや、バインダによって所定の形状に成型されたもの等が利用される。バインダによって成型された伝火薬の形状としては、たとえば顆粒状、円柱状、シート状、球状、単孔円筒状、多孔円筒状、タブレット状など種々の形状がある。
なお、第2密閉容器90と第2ハウジング部材20との間でかつ点火器30の点火部32を取り巻く部分の点火室には、第1クッション材63が配置されている。当該第1クッション材63は、後述する各種の内部構成部品をハウジングの内部において軸方向に固定するための部材であり、同時に上述した内部構成部品の軸方向長さのばらつきを吸収するための部材でもある。したがって、第1クッション材63は、上述した第2密閉容器90と第2ハウジング部材20とによってハウジングの軸方向に挟み込まれて固定されている。第1クッション材63としては、たとえばセラミックスファイバの成型体や発泡シリコン等が利用可能である。
図2に示すように、作動ガス生成室は、第1ハウジング部材10の周壁部11、第2密閉容器90および仕切り部材40によって規定され、当該作動ガス生成室には、上述したように第1密閉容器80が配置されている。第1密閉容器80は、有底筒状のカップ部81と、当該カップ部81の開口を閉塞するキャップ部82とを含んでおり、ハウジングの内部の空間に内挿されている。第1密閉容器80においては、カップ部81とキャップ部82とが組み合わされて接合されることにより、第1密閉容器80の内部に形成される収容空間83が当該第1密閉容器80の外部から気密に封止されている。カップ部81およびキャップ部82としては、銅やアルミニウム、銅合金、アルミニウム合金等の金属薄板(箔)をプレス加工等することで成形された金属部材や、射出成形やシート成形等を行なうことで形成された樹脂部材等が利用される。また、カップ部81とキャップ部82との接合には、ろう付けや接着、巻き締め等が好適に用いられる。
第1密閉容器80の収容空間83には、ガス発生剤62と、区画部材50と、第2クッション材64とが収容されている。より詳細には、第1密閉容器80の第2密閉容器90が位置する側の端部部分には、第2クッション材64が配置されており、当該第2クッション材64が配置された部分を除く部分に、ガス発生剤62および区画部材50が配置されている。
区画部材50は、内部に中空部55を有する一端が閉塞された有底円筒状の部材にて構成されており、フランジ部51と、円筒状部52と、底部53とを有している。フランジ部51は、第1密閉容器80の仕切り部材40側の端部(すなわち、第2クッション材64が配置されていない側の端部)に配置されている。円筒状部52は、フランジ部51の内周縁から連続して延び、第1密閉容器80の仕切り部材40側の端部から作動ガス生成室の内部に向けて突出して位置している。底部53は、円筒状部52から連続して延び、円筒状部52の第2密閉容器90側の端部を閉塞している。なお、底部53は、上述した第2クッション材64と所定の距離もって離間して配置されている。
ここで、作動ガス生成室のうち、区画部材50の中空部55を除く部分には、上述したガス発生剤62が収容されている。すなわち、ガス発生剤62は、作動ガス生成室のうち、区画部材50の円筒状部52を取り巻く空間と、区画部材50と第2クッション材64との間に位置する空間とに収容されている。
ガス発生剤62は、点火器30によって点火された伝火薬61が燃焼することによって生じた熱粒子によって着火され、燃焼することによってガスを発生させるものである。ガス発生剤62は、一般に燃料と酸化剤と添加剤とを含む成型体として形成される。燃料としては、たとえばトリアゾール誘導体、テトラゾール誘導体、グアニジン誘導体、アゾジカルボンアミド誘導体、ヒドラジン誘導体等またはこれらの組み合わせが利用される。具体的には、たとえばニトログアニジンや硝酸グアニジン、シアノグアニジン、5−アミノテトラゾール等が好適に利用される。また、酸化剤としては、たとえば塩基性硝酸銅等の塩基性硝酸塩や、過塩素酸アンモニウムや過塩素酸カリウム等の過塩素酸塩、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、アンモニアから選ばれたカチオンを含む硝酸塩等が利用される。硝酸塩としては、たとえば硝酸ナトリウム、硝酸カリウム等が好適に利用される。また、添加剤としては、バインダやスラグ形成剤、燃焼調整剤等が挙げられる。バインダとしては、たとえばヒドロキシプロピレンメチルセルロース等のセルロース誘導体や、カルボキシメチルセルロースの金属塩、ステアリン酸塩等の有機バインダや、合成ヒドロキシタルサイト、酸性白土等の無機バインダが好適に利用可能である。スラグ形成剤としては窒化珪素、シリカ、酸性白土等が好適に利用可能である。また、燃焼調整剤としては、金属酸化物、フェロシリコン、活性炭、グラファイト等が好適に利用可能である。
ガス発生剤62の成型体の形状には、顆粒状、ペレット状、円柱状、ディスク状など様々な形状のものがある。また、成型体内部に孔を有する有孔状(たとえば単孔筒形状や多孔筒形状等)の成型体も利用される。これらの形状は、シリンダ型ガス発生器1が組み込まれるエアバッグ装置の仕様に応じて適宜選択されることが好ましく、たとえばガス発生剤62の燃焼時において作動ガスの生成速度が時間的に変化する形状を選択するなど、仕様に応じた最適な形状を選択することが好ましい。また、ガス発生剤62の形状の他にもガス発生剤62の線燃焼速度、圧力指数などを考慮に入れて成型体のサイズや充填量を適宜選択することが好ましい。
区画部材50の円筒状部52には、第1連通孔54が周方向および軸方向に沿って複数個設けられている。第1連通孔54は、ガス発生剤62が収容された空間と区画部材50の中空部55とを連通させるための孔であり、区画部材50の底部53には設けられていない。
区画部材50は、作動時において上述した中空部55とガス発生剤62が収容された空間との間に圧力差を生じさせるための圧力隔壁として機能するものであり、所定の強度をもった部材にて構成されている。具体的には、区画部材50は、たとえばステンレス鋼や鉄鋼、アルミニウム合金、ステンレス合金等の金属製の部材にて構成されている。
第2クッション材64は、成型体からなるガス発生剤62が振動等によって破砕されることを防止するための破砕防止部材に相当し、好適にはセラミックスファイバの成型体や発泡シリコン等が利用される。この第2クッション材64は、作動時において伝火薬61の燃焼によって開口または分断し、場合によっては焼失する。
図2に示すように、仕切り部材40は、ハウジングの内部の空間を軸方向に作動ガス生成室とフィルタ室とに区画している。仕切り部材40は、ハウジングの内部の空間において上述した第1密閉容器80に接するように配置されており、環状板部41と、筒状突出部42と、第2連通孔43とを有している。環状板部41は、第1密閉容器80に接してハウジングの軸と直交するように配置されている。筒状突出部42は、環状板部41の内周縁から連続して延び、上述した第1密閉容器80から遠ざかる方向に向けて突出して位置している。第2連通孔43は、筒状突出部42によって規定され、区画部材50の中空部55とフィルタ室とを連通するための孔である。
仕切り部材40は、ハウジングに対して嵌合または遊嵌されており、ハウジングには、当該仕切り部材40を固定するためのかしめ加工は施されていない。ここで、嵌合とは、いわゆる圧入固定を含むものであり、仕切り部材40の環状板部41の外周端がハウジングの内周面に接触した状態で取付けられた状態を言う。また、遊嵌とは、仕切り部材40の環状板部41の外周端とハウジングの内周面とが全周にわたって必ずしも接触しておらず、多少の隙間(あそび)をもって内挿された状態を言う。
仕切り部材40は、後述するフィルタ70の作動ガス生成室側の端部に取付けられており、フィルタ70と上述したガス発生剤62を収容する第1密閉容器80とによって挟み込まれることでハウジングの内部において支持されている。なお、仕切り部材40は、たとえばステンレス鋼や鉄鋼、アルミニウム合金、ステンレス合金等の金属製の板状部材をプレス加工等することによって形成される。
図2に示すように、フィルタ室は、第1ハウジング部材10の周壁部11および底壁部12と、仕切り部材40とによって規定され、当該フィルタ室には、フィルタ70が配置されている。フィルタ室は、仕切り部材40を介して作動ガス生成室に隣接して設けられ、作動ガス生成室よりもハウジングの他端部側(すなわち、第1ハウジング部材10の底壁部12側)に位置している。
フィルタ70は、ハウジングの軸方向と同方向に延び、その軸方向端面に達する中空連通部71を有する円筒状の部材からなり、その軸方向の作動ガス生成室側の端面が仕切り部材40に当接しており、他方の端面が第1ハウジング部材10の底壁部12に当接している。また、フィルタ70の外周面は、第1ハウジング部材10の周壁部11の内周面に当接している。このような円筒状の部材からなるフィルタ70を利用すれば、作動時においてフィルタ室を流動する作動ガスの流動抵抗が低く抑えられ、効率的な作動ガスの流動が実現可能となる。
フィルタ70は、たとえばステンレス鋼や鉄鋼等の金属線材あるいは金属線材を編み込んだ網材を巻き回したものやプレス加工することによって押し固めたもの等が利用される。網材としては、具体的にはメリヤス編みの金網や平織りの金網、クリンプ織りの金属線材の集合体等が利用される。このように金属線材を円筒状に巻き回したり押し固めたりしてなるフィルタ70は、その内部に空隙が含まれることになり、上述した作動ガスの流動を可能にする。フィルタ70は、作動ガス生成室にて生成された作動ガスがこのフィルタ70中を通過する際に、当該作動ガスが有する高温の熱を奪い取ることによってこれを冷却する冷却手段として機能するとともに、作動ガス中に含まれる残渣(スラグ)等を除去する除去手段としても機能する。
図2に示すように、フィルタ室を規定する部分の第1ハウジング部材10の周壁部11には、ガス噴出口13が設けられている。このガス噴出口13は、シリンダ型ガス発生器1の内部において生成された作動ガスを外部に放出するための孔であり、第1ハウジング部材10の周壁部11の周方向および軸方向に沿って複数個設けられている。
なお、シリンダ型ガス発生器1の第2ハウジング部材20が配置された側の端部には、雌型コネクタ(不図示)が取付けられる。より詳細には、第2ハウジング部材20に設けられた凹部22にシリンダ型ガス発生器1とは別途設けられる衝突検知センサからの信号を伝達するハーネスの雄型コネクタが接続される雌型コネクタが取付けられる。雌型コネクタには、必要に応じてショーティングクリップ(不図示)が取付けられる。このショーティングクリップは、シリンダ型ガス発生器1の搬送時等において静電放電等によってシリンダ型ガス発生器1が誤動作することを防止するために取付けられるものであり、エアバッグ装置への組付け段階においてハーネスの雄型コネクタが雌型コネクタに挿し込まれることによってその端子ピン33への接触が解除されるものである。
次に、以上において説明したシリンダ型ガス発生器1の作動時における動作について図2を参照して説明する。本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1が組み込まれたエアバッグ装置が搭載された車両が衝突した場合には、車両に別途設けられた衝突検知手段によって衝突が検知され、これに基づいて点火器30が作動する。点火器30が作動すると、点火薬の燃焼によって点火部32内の圧力が上昇し、これによって点火部32が破裂し、火炎が点火部32の外部へと流出する。
点火部32の破裂後において、点火部32を取り巻く空間の温度と圧力は上昇し、第2密閉容器90が溶融または破裂する。これにより、第2密閉容器90内に収容された伝火薬61は、点火器30が作動することによって生じた火炎によって点火されて燃焼し、多量の熱粒子を発生させる。発生した多量の熱粒子は、第1密閉容器80のキャップ部82を溶融または破裂させ、第2クッション材64を開口または分断し、ガス発生剤62へと至る。
ガス発生剤62へと達した熱粒子は、点火器30が位置する側から順次ガス発生剤62を着火して燃焼させ、多量の作動ガスを生成させる。このようにして生成された作動ガスは、区画部材50に設けられた第1連通孔54を通過して区画部材50の中空部55に流入し、その先に位置する第1密閉容器80のカップ部81を破裂させ、仕切り部材40に設けられた第2連通孔43を経由してフィルタ室へと流入する。
フィルタ室に流れ込んだ作動ガスは、フィルタ70の中空連通部71内を経由してフィルタ70へと進入し、当該フィルタ70中を通過することで所定の温度にまで冷却されてガス噴出口13からシリンダ型ガス発生器1の外部へと噴出される。ガス噴出口13から噴出された作動ガスは、エアバッグの内部に導かれてエアバッグを膨張・展開させる。
ここで、本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1にあっては、ガス発生剤62の燃焼の初期段階においては、区画部材50の底部53と第2クッション材64との間に位置する部分のガス発生剤62が第2密閉容器90が位置する側から順次燃焼し、作動ガス生成室の中空部55を除く部分の内圧が急速に上昇してガス発生剤62の燃焼が促進され、未燃焼のガス発生剤62によって作動ガスの流動が阻害されることなく作動ガスが区画部材50の円筒状部52に設けられた第1連通孔54を経由して中空部55へと流入する。そして、ガス発生剤62の燃焼の初期段階が完了した後は、区画部材50の円筒状部52を取り巻く空間に位置する部分のガス発生剤62が第2密閉容器90が位置する側から順次燃焼し、作動ガス生成室の中空部55を除く部分の内圧を維持しつつ安定的に作動ガスが生成され、未燃焼のガス発生剤62によって生成された作動ガスの流動が阻害されることなく作動ガスが区画部材50の円筒状部52に設けられた第1連通孔54を経由して中空部55へと流入する。したがって、本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1の如くの構成を採用することにより、区画部材50の機能によって未燃焼のガス発生剤が作動ガスの流動抵抗になることが未然に防止されることになり、出力特性に優れたシリンダ型ガス発生器とできる。
次に、本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1の組み立て手順について説明する。まず、図3(A)に示すように、カップ部81およびキャップ部82からなる第1密閉容器80を準備し、当該第1密閉容器80のカップ部81に、区画部材50、ガス発生剤62および第2クッション材64の順でこれらを収容配置する。そして、カップ部81の開口をキャップ部82にて閉塞するとともに、当該キャップ部82をカップ部81に接合する。次に、図3(B)に示すように、カップ部91およびキャップ部92からなる第2密閉容器90を準備し、当該第2密閉容器90のカップ部91に、伝火薬61を収容配置する。そして、カップ部91の開口をキャップ部92にて閉塞するとともに、当該キャップ部92をカップ部91に接合する。
次に、図2を参照して、第1ハウジング部材10に区画部材50が組付けられたフィルタ70を内挿して固定する。つづいて、フィルタ70および区画部材50が組付けられた第1ハウジング部材10に対して、上述したガス発生剤62等が収容された第1密閉容器80を内挿して固定する。このとき、第1密閉容器80は、第1ハウジング部材10の周壁部11に対して圧入固定される。また、第1密閉容器80は、その端面が区画部材50に当て留めされることになる。
つづいて、第1ハウジング部材10に対して、上述した伝火薬61が収容された第2密閉容器90を内挿して固定する。このとき、第2密閉容器90は、第1ハウジング部材10の周壁部11に対して圧入固定される。つづいて、点火器30および第1クッション材63が組付けられた第2ハウジング部材20を第1ハウジング部材10に内挿する。そして、第1ハウジング部材10と第2ハウジング部材20とのかしめ固定を行なう。以上により、図1および図2に示す如くの構成のシリンダ型ガス発生器1の組み立てが完了する。
以上において説明した本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1においては、ガス発生剤62が第1密閉容器80によって密閉されて収容された状態で作動ガス生成室に配置され、伝火薬61が第2密閉容器90によって密閉されて収容された状態で点火室に配置されている。そのため、ハウジングに対してガス発生剤62や伝火薬61を気密に封止するためのシール処理を特に行なう必要がなく、その結果Oリングやシールテープ等の脆弱な部材を用いてハウジングの各部をシール処理することが不要となり、ガス発生剤62や伝火薬61の吸湿を防止するためのシール処理が大幅に容易化することになる。したがって、上記構成を採用することにより、組み立ての際の作業性を飛躍的に向上させることができ、製造コストを低く抑制することが可能なシリンダ型ガス発生器とすることができる。
また、本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1においては、ガス発生剤62を第1密閉容器80に収容するに際し、作動ガス生成室に配置されることとなる区画部材50および第2クッション材64をガス発生剤62とともに第1密閉容器80に予め収容配置する構成としているため、これら部材をサブアセンブリ化した状態でハウジングに対して一度に組付けることが可能である。したがって、上記構成を採用することにより、組み立て作業をさらに容易化することができ、製造コストをさらに低く抑制することが可能なシリンダ型ガス発生器とすることができる。
また、本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1とすることにより、上述したようにガス発生剤62や伝火薬61を気密に封止するためのシール処理をハウジングに対して施す必要がなくなるため、その分だけハウジングの外形を小型化(すなわち小径化や短尺化)することができたり、その分だけハウジングの肉厚を増して耐圧性を向上させることができたりするため、結果として小型化や高耐圧化に有利な構造のシリンダ型ガス発生器とすることができる。なお、本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1の構成は、特にハウジングの外径を15mm以上20mm以下とする場合に好適となる。
また、シリンダ型ガス発生器においては、安全性の観点から、外部からシリンダ型ガス発生器に熱が加わった場合にガス発生剤よりも先に伝火薬が発火するように構成されていることが求められる。そのため、通常は、ガス発生剤の自然発火点よりも伝火薬の自然発火点が低くなるように薬剤が調製されたり、オートイグニッション剤が伝火薬に混合されたりすることで、伝火薬が先に発火するように構成されている。ここで、本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1においては、第2密閉容器90が第1ハウジング部材10に圧入されることで固定されており、組付け後において第2密閉容器90の外周面と第1ハウジング部材10の内周面とが直接当接した状態にある。したがって、外部からの熱がハウジングを介して伝火薬61に効率的に伝達されることになり、上述した安全性の観点からもより好ましい構成となっていると言える。
ところで、本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1においては、作動ガス生成室とフィルタ室とを仕切る仕切り部材40の筒状突出部42が、環状板部41から遠ざかるにつれて(作動ガス生成室から遠ざかり、筒状突出部42の先端に向かうにつれて)、当該筒状突出部42によって規定される第2連通孔43の開口面積が減少するように徐々に縮径した円錐板状の形状にて構成されるとともに、ハウジングに対して嵌合または遊嵌されている。したがって、第1ハウジング部材10には、当該仕切り部材40を固定するためのかしめ加工は施されていない。そのため、本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1にあっては、その組み立てが従来に比して容易に行なえることになる。以下においては、仕切り部材40がこのような組付け構造を採用した場合にも、十分に圧力隔壁として機能する理由について説明する。
図4は、本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器の仕切り部材が設けられた位置の近傍を拡大した要部拡大断面図であり、図4(A)は、シリンダ型ガス発生器の作動開始直後の状態を示す図であり、図4(B)は、作動開始から所定時間経過後の状態を示す図である。なお、図4(A)および図4(B)中においては、作動ガスの流動方向を矢印Gで示すとともに、作動ガス生成室の具体的な図示は省略している。
図4(A)に示すように、シリンダ型ガス発生器1が作動した作動開始直後においては、作動ガス生成室にて生成された高温高圧の作動ガスの推力(すなわち、作動ガス生成室の内圧の上昇に伴って生じる圧力)を受け、仕切り部材40の環状板部41が、ハウジングの軸方向に沿ってフィルタ70側に向けての力(図中矢印Aにて示す力)を受ける。これにより、仕切り部材40の環状板部41は、フィルタ70側に向けて移動を開始し、仕切り部材40とハウジングとによって囲まれたフィルタ70の部分(すなわち、フィルタ70の作動ガス生成室側の端部近傍部分、図中に示す領域B1に含まれる部分)が、当該環状板部41が移動することによってハウジングの軸方向に沿って圧縮されることになる。
ここで、フィルタ70の内部には、フィルタ70が金属線材または金属線材を編み込んだ網材を巻き回したりあるいはプレス加工することで押し固めたりすることで形成された結果生じる空隙が存在するが、図4(B)に示すように、上記環状板部41の移動に伴って当該空隙の容積は減少し、金属線材は当該領域B1においてさらに密に充填された状態となるとともに、ハウジングの径方向に沿って広がろうとして仕切り部材40の筒状突出部42をハウジングの径方向に沿って内側に向けて押し込もうとする力を発生させる。しかしながら、仕切り部材40の筒状突出部42には、上述した内圧の上昇に伴ってハウジングの大略径方向に沿って外側に向けての力(図中矢印Cにて示す力)が加わっているため、仕切り部材40の筒状突出部42をハウジングの径方向に沿って内側に向けて押し込もうとする力は当該力に押し負け、その反力(図中矢印Dで示す力)がハウジングとフィルタ70との接触部分(図中において示す領域E)に加わることになる。これにより、当該ハウジングとフィルタ70との接触部分において摩擦力が発生し、当該摩擦力が仕切り部材40がさらにフィルタ70側に向けて移動することを抑制するブレーキ力となる。
ここで、上記反力(図中矢印Dで示す力)は、ハウジングの径方向および軸方向と交差する方向に向けて作用する力となるため、ハウジングの広い範囲に仕切り部材40の移動を防止する高いブレーキ力として作用することになり、当該ブレーキ力に基づいて仕切り部材40の移動量は僅かで留まることになる。したがって、移動後の仕切り部材40とこれに伴って押し固められた部分のフィルタ70とによって実質的に圧力隔壁としての機能が確保されることになり、作動ガス生成室の内圧が高く維持されるとともにフィルタ70の破損が防止されることになる。したがって、ハウジングにかしめ加工を施して仕切り部材40を固定せずとも、仕切り部材40が圧力隔壁として十分に機能することになる。
また、本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1においては、仕切り部材40の筒状突出部42が、フィルタ70の作動ガス生成室側の端部近傍のみを覆うように構成されている。したがって、図4(B)中に示す領域B2に位置する部分のフィルタ70の内部には、十分な空隙が形成された状態が維持されることになり、上述した仕切り部材40の移動および変形の影響を受けることなく当該部分においてスムーズに作動ガスが流動することが可能となる。したがって、フィルタ70の有する作動ガスの冷却機能およびスラグ捕集機能が損なわれることもない。
さらに、本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1においては、仕切り部材40とフィルタ70とをハウジングの軸方向に沿って当該軸と直交する面に投影した場合に、フィルタ70の投影領域の内縁が仕切り部材40の投影領域の内縁よりも内側に位置しないように構成されている。すなわち、作動ガス生成室側から仕切り部材40およびフィルタ70を平面視した場合に、フィルタ70が仕切り部材40によって完全に覆い隠されるように仕切り部材40およびフィルタ70の相対的な位置関係が調節されている。このように構成することにより、仕切り部材40の第2連通孔43を通過した高温高圧の作動ガスは、フィルタ70の内周面を沿って流動することになるため、作動ガスが直接フィルタ70に吹き付けられる割合を大幅に低減することができる。
なお、本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1においては、作動時において仕切り部材40が上述した領域B1に位置する部分のフィルタ70によって保持されることになるため、当該仕切り部材40のみによって作動ガスの推力に耐え得るように仕切り部材40を設計する必要がなく、その厚みを従来に比して小さくすることができる。具体的には、一般的なシリンダ型ガス発生器の仕様を考慮した場合には、仕切り部材40として鉄鋼材を利用した場合にその厚みを概ね0.7mm以上とすれば足りる。
以上において説明したように、本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1の如くの構成を採用することにより、仕切り部材40の取付けのためにハウジングにかしめ加工を実施することが必要なくなるという効果や仕切り部材40を薄型化できるという効果が得られる。そのため、シリンダ型ガス発生器1全体として見た場合に、性能を低下させることなく、小型軽量化することが可能になる。また、上記構成を採用することにより、仕切り部材40をハウジングにかしめ加工する作業も不要となり、製造コストを削減することもできる。したがって、性能を低下させることなく小型軽量化が可能でかつ製造が容易なシリンダ型ガス発生器とすることができる。
以上において説明した本実施の形態においては、伝火薬61が第2密閉容器90に収容されてなるシリンダ型ガス発生器1を例示して説明を行なったが、必ずしもこのように構成されている必要はなく、伝火薬61は、第1ハウジング部材10および第2ハウジング部材20からなるハウジングに直接充填された構成とされていてもよい。ただし、その場合には、伝火薬61が吸湿することを防止するための気密処理が、ハウジングの所定部位に別途施されていることが必要である。
また、以上において説明した本実施の形態においては、ガス発生剤62の燃焼を促進させるために伝火薬61が装填されてなるシリンダ型ガス発生器1を例示して説明を行なったが、当該伝火薬61は必ずしも必須の構成ではなく、燃焼開始のためのガス発生剤62の感度を向上させること等によって伝火薬61の装填を不要とすることも可能である。また、伝火薬61をシリンダ型ガス発生器1に装填する構成を採用する場合にも、当該伝火薬61を点火器30に一体化させて組付けることも可能である。
また、以上において説明した本実施の形態においては、ガス発生剤62等が収容された第1密閉容器80および伝火薬61が収容された第2密閉容器90をそれぞれハウジングに圧入固定してなるシリンダ型ガス発生器1を例示して説明を行なったが、必ずしもそのように構成されている必要はなく、第1密閉容器80および第2密閉容器90は、それぞれハウジングに遊嵌されていてもよい。ただし、その場合には、上述した第1クッション材63等を利用してこれら第1密閉容器80および第2密閉容器90がハウジングの軸方向に固定されていることが必要である。
また、以上において説明した本実施の形態においては、第1ハウジング部材10として圧延鋼板をプレス成形してなるプレス成形品にて構成した場合を例示して説明を行なったが、これに代えて、第1ハウジング部材10を引き抜き成形してなるシームレス管や電縫管の軸方向端部の一方をクロージング処理してなる成形品にて構成してもよい。
また、以上において説明した本実施の形態においては、第1ハウジング部材10と第2ハウジング部材20とをかしめ固定することで連結してなるシリンダ型ガス発生器1を例示して説明を行なったが、第1ハウジング部材10と第2ハウジング部材20との固定に溶接を利用することも当然に可能である。
また、以上において説明した本実施の形態においては、点火器30として、抵抗体としてのニクロム線等を熱源として利用するものを例示して説明を行なったが、いわゆる半導体ブリッジ(Semiconductor Bridge)を熱源として利用する点火器を使用することも可能である。
また、以上において説明した本実施の形態においては、仕切り部材40の筒状突出部42の形状を先端に向かうにつれて縮径した形状とした場合を例示して説明を行なったが、当該筒状突出部42の形状を先端に向かうにつれて拡径した形状とすることも可能である。このように構成した場合には、第2連通孔43の開口面積が環状板部41から遠ざかるにつれて徐々に増加するようになるが、この場合にも、シリンダ型ガス発生器1が作動した際にハウジングとフィルタ70との接触部分において摩擦力が発生し、当該摩擦力が仕切り部材40がさらにフィルタ70側に向けて移動することを抑制するブレーキ力となり、上述した効果が得られることになる。
また、以上において説明した本実施の形態においては、仕切り部材40の筒状突出部42の形状を円錐板状とした場合を例示して説明を行なったが、当該筒状突出部42の形状はこれに限定されるものではなく、たとえば断面の形状が湾曲状とされていてもよい。いずれにせよ、筒状突出部42の形状としては、内圧の上昇に伴って筒状突出部42に加わる力がハウジングの径方向および軸方向のいずれにも交差する方向に作用するような形状とされていればよく、当該筒状突出部42の内周面がハウジングの軸方向と平行に配置されていなければよい。
加えて、以上において説明した本実施の形態においては、本発明をサイドエアバッグ装置に組み込まれるシリンダ型ガス発生器に適用した場合を例示して説明を行なったが、本発明の適用対象はこれに限られるものではなく、助手席用エアバッグ装置やカーテンエアバッグ装置、ニーエアバッグ装置等に組み込まれるシリンダ型ガス発生器や、シリンダ型ガス発生器と同様に長尺状のガス出力部を有するいわゆるT字型のガス発生器にもその適用が可能である。
このように、今回開示した上記一実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではない。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲によって画定され、また特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。