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JP5455932B2 - ガス発生器 - Google Patents

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Description

本発明は、自動車等に搭載される乗員保護装置としてのエアバッグ装置に組み込まれるガス発生器に関し、より特定的には、長尺円柱状の外形を有するガス発生器に関する。
従来、自動車等の乗員の保護の観点から、乗員保護装置であるエアバッグ装置が普及している。エアバッグ装置は、車両等衝突時に生じる衝撃から乗員を保護する目的で車両等に装備されるものであり、車両等衝突時に瞬時にエアバッグを膨張および展開させることにより、展開されたエアバッグで乗員の体を受け止めるものである。ガス発生器は、このエアバッグ装置に組み込まれ、車両等衝突時に瞬時にガスを発生させてエアバッグを膨張および展開させる機器である。
ガス発生器には、車両等に対する設置位置や出力等の仕様に基づき、種々の構成のものが存在している。その一つに、「シリンダ型」と呼ばれる構造のガス発生器が存在する。シリンダ型ガス発生器は、その外形が長尺円柱状であり、サイドエアバッグ装置や助手席用のエアバッグ装置等に好適に組み込まれる。なお、長尺円柱状の外形を有するガス発生器としては、このシリンダ型ガス発生器以外にも、いわゆるT字型ガス発生器と呼ばれるもの等が存在している。
一般に、シリンダ型ガス発生器においては、ハウジングの軸方向の一端部に点火器および伝火薬等が配置され、軸方向の略中央部にガス発生剤が収容されるガス発生剤収容室が設けられ、軸方向の他端部にフィルタが収容されるフィルタ室およびガス噴出口が設けられる。上記構成のシリンダ型ガス発生器においては、点火器が作動することによって生じた火炎が伝火薬の燃焼を介してガス発生剤に伝達され、これによりガス発生剤が燃焼して高温高圧の燃焼ガスが発生する。発生した高温高圧の燃焼ガスは、ハウジングの軸方向に沿ってガス発生剤収容室からフィルタ室に流入し、フィルタを通過してガス噴出口よりハウジングの外部へと噴出される。ガス噴出口から噴出された燃焼ガスは、その後エアバッグの膨張および展開に利用される。
上記構成のシリンダ型ガス発生器の具体的な構造が開示された文献としては、たとえば特開2005−313812号公報(特許文献1)や特開平11−78766号公報(特許文献2)等がある。これら公報には、両端が閉塞された長尺円筒状のハウジングの内部に仕切り板を配置することにより、ハウジングの内部の空間をガス発生剤が配置されるガス発生剤収容室とフィルタが配置されるフィルタ室とに区画されたシリンダ型ガス発生器が開示されている。当該シリンダ型ガス発生器においては、ハウジングの軸方向に沿って延びる中空部を有するフィルタが利用され、フィルタ室を規定する部分のハウジングの周壁に燃焼ガスを噴出するためのガス噴出口が設けられている。
特開2005−313812号公報 特開平11−78766号公報
ここで、ガス発生剤収容室とフィルタ室とを区画する仕切り板には、ガス発生器が作動した場合にガス発生剤収容室にて発生する高温高圧の燃焼ガスの推力に耐え、これによりガス発生剤収容室の内圧を高く維持するための圧力隔壁としての機能が求められる。仕切り板が圧力隔壁として機能するということは、高温高圧の燃焼ガスが直接フィルタに吹き付けられてフィルタが破損することを防止することにもつながる。
上記機能を発揮すべく、上述した特開2005−313812号公報および特開平11−78766号公報に開示のガス発生器においては、ハウジングの周壁の所定位置を内側に向けてかしめることでハウジングに内挿された仕切り板を軸方向に固定し、これにより上述した機能が仕切り板によって発揮されるようにしている。しかしながら、これら公報に開示の如くの仕切り板の取付け構造を採用した場合には、仕切り板の取付けのためにハウジングにかしめ加工を実施することが別途必要になったり、ハウジングによってのみ支持された仕切り板に意図しない変形が生じることを防止すべく仕切り板を肉厚に形成したりすることが必要になり、ガス発生器の短尺化や小径化、軽量化を図る上で障害となっていた。また、上記かしめ加工を施す作業も比較的煩雑であるため、製造コストが増大する原因にもなっていた。
したがって、本発明は、上述の問題を解決すべくなされたものであり、性能を低下させることなく小型軽量化が可能でかつ製造が容易なガス発生器を提供することを目的とする。
本発明に基づくガス発生器は、ハウジングと、仕切り部材と、点火器(点火手段)とを備えている。上記ハウジングは、ガス発生剤が収容されたガス発生剤収容室およびフィルタが収容されたフィルタ室を内部に含む長尺筒状の部材からなる。上記仕切り部材は、上記ハウジングに内挿され、上記ハウジングの内部の空間を軸方向に上記ガス発生剤収容室と上記フィルタ室とに区画している。上記点火器は、上記ハウジングに組付けられ、作動することで上記ガス発生剤を燃焼させるための火炎を発生するものである。上記ハウジングは、上記フィルタ室を規定する部分にガスを噴出するためのガス噴出口を有しており、上記フィルタは、上記ハウジングの軸方向に沿って延び、少なくとも上記ガス発生剤収容室側の端面に達する中空部を有する部材からなる。上記仕切り部材は、上記フィルタの上記ガス発生剤収容室側の端面を覆う環状板部と、上記環状板部の内周縁から上記フィルタの上記中空部内に向けて連続して延び、上記フィルタの上記端面寄りの内周面を覆うとともに当該内周面に接触する筒状部と、上記筒状部の内周面によって規定され、上記ガス発生剤収容室と上記フィルタ室とを連通する単一の連通孔とを含んでいる。上記本発明に基づくガス発生器にあっては、上記筒状部の径方向における寸法および上記筒状部によって覆われた部分の上記フィルタの内周面の径方向における寸法が、上記環状板部から遠ざかるにつれて変化していることにより、上記連通孔の開口面積が、上記環状板部から遠ざかるにつれて変化している。
上記本発明に基づくガス発生器にあっては、上記筒状部が、上記環状板部から遠ざかるにつれて上記連通孔の開口面積が減少または増加するように徐々に縮径または拡径していることが好ましい。
上記本発明に基づくガス発生器にあっては、上記仕切り部材が、上記ハウジングに嵌合されているか、あるいは遊嵌されていることが好ましい。
上記本発明に基づくガス発生器にあっては、上記フィルタが、内部に空隙が含まれるように金属線材を円筒状に巻き回し、必要に応じて焼結処理したものか、あるいは内部に空隙が含まれるように金属線材を円筒状に押し固めたものであることが好ましい。
上記本発明に基づくガス発生器にあっては、上記仕切り部材と上記フィルタとを上記ハウジングの軸方向に沿って当該軸方向と直交する面に投影した場合に、上記フィルタの投影領域の内縁が、上記仕切り部材の投影領域の内縁よりも内側に位置していないことが好ましい。
上記本発明に基づくガス発生器にあっては、上記ガス発生剤が、上記ハウジングの内部に挿入されることで上記ガス発生剤収容室内に位置するた第1密閉容器に封入されていることが好ましい。
上記本発明に基づくガス発生器は、さらに、上記点火器が作動することによって生じる火炎を上記ガス発生剤に伝達するための伝火薬を備えていることが好ましく、その場合に、上記伝火薬が、上記ハウジングの内部に挿入された第2密閉容器に封入されていることが好ましい。
上記本発明に基づくガス発生器にあっては、上記点火器が、上記ハウジングの内部の空間に面するように上記ハウジングの軸方向の一端部に配置され、上記フィルタが、上記ハウジングの内部の空間のうち、上記ハウジングの軸方向の他端部寄りの位置に配置され、上記ガス発生剤が、上記フィルタが配置された位置よりも上記ハウジングの上記一端部寄りの位置に配置されていることが好ましい。
上記本発明に基づくガス発生器にあっては、上記点火器が、上記ハウジングの内部の空間に面するように上記ハウジングの軸方向の一端部に配置され、上記ガス発生剤が、上記ハウジングの内部の空間のうち、上記ハウジングの軸方向の他端部寄りの位置に配置され、上記フィルタが、上記ガス発生剤が配置された位置よりも上記ハウジングの上記一端部寄りの位置に配置されていてもよい。
本発明によれば、性能を低下させることなく小型軽量化が可能でかつ製造が容易なガス発生器とすることができる。
本発明の実施の形態1におけるシリンダ型ガス発生器の外観構造を示す正面図および右側面図である。 本発明の実施の形態1におけるシリンダ型ガス発生器の内部構造を示す模式断面図である。 本発明の実施の形態1におけるシリンダ型ガス発生器の要部拡大断面図である。 本発明の実施の形態2におけるシリンダ型ガス発生器の要部拡大断面図である。 本発明の実施の形態3におけるシリンダ型ガス発生器の内部構造を示す模式断面図である。 本発明の実施の形態3における第1変形例に係るシリンダ型ガス発生器の内部構造を示す模式断面図である。 本発明の実施の形態3における第2変形例に係るシリンダ型ガス発生器の内部構造を示す模式断面図である。 本発明の実施の形態4におけるシリンダ型ガス発生器の内部構造を示す模式断面図である。
以下、本発明の実施の形態について、図を参照して詳細に説明する。なお、以下に示す実施の形態においては、サイドエアバッグ装置等に好適に組み込まれるいわゆるシリンダ型ガス発生器に本発明を適用した場合を例示して説明を行なう。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1におけるシリンダ型ガス発生器の外観構造を示す図であり、図1(A)は正面図、図1(B)は右側面図である。また、図2は、本発明の実施の形態1におけるシリンダ型ガス発生器の内部構造を示す図であり、図1(A)および図1(B)に示すII−II線に沿った模式断面図である。まず、これら図1(A)、図1(B)および図2を参照して、本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1Aの外観構造および内部構造について説明する。
図1(A)、図1(B)および図2に示すように、本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1Aは、長尺略円柱状の外形を有しており、外殻部材としてのハウジング10を有している。ハウジング10は、円筒状部材11、閉塞部材14およびホルダ20を含んでいる。円筒状部材11は、軸方向の両端に開口を有する長尺の円筒状の部材からなる。閉塞部材14は、所定の厚みを有する円盤状の部材からなり、円筒状部材11の軸方向の一方の開口を閉塞している。閉塞部材14は、その周面に後述するかしめ固定のための溝14aを有している。このかしめ固定のための溝14aは、閉塞部材14の周面に周方向に沿って延びるように環状に形成されている。ホルダ20は、円筒状部材11の軸方向と同方向に沿って延びる貫通部22を有する筒状の部材からなり、円筒状部材11の軸方向の他方の開口を閉塞している。ホルダ20は、その外周面の所定位置に後述するかしめ固定のための溝21を有している。このかしめ固定のための溝21は、ホルダ20の外周面に周方向に沿って延びるように環状に形成されている。
これら円筒状部材11、閉塞部材14およびホルダ20は、いずれもステンレス鋼や鉄鋼、アルミニウム合金、ステンレス合金等の金属製の部材からなり、かしめ固定によってそれぞれが連結および固定されている。具体的には、円筒状部材11の一方の開口端に閉塞部材14の一部が内挿された状態で、閉塞部材14の周面に設けられた溝14aに対応する部分の円筒状部材11の周壁を径方向内側に縮径させて当該溝14aに係合させることにより、円筒状部材11に対する閉塞部材14のかしめ固定が行なわれ、円筒状部材11の他方の開口端にホルダ20の一部が内挿された状態で、ホルダ20の外周面に設けられた溝21に対応する部分の円筒状部材11の周壁を径方向内側に縮径させて当該溝21に係合させることにより、円筒状部材11に対するホルダ20のかしめ固定が行なわれる。
これらかしめ固定は、いずれも円筒状部材11の周壁を径方向内側に向かって均等に縮径させる八方かしめと呼ばれるかしめ固定である。この八方かしめを行なうことにより、円筒状部材11の周壁には、かしめ部13a,13bが設けられることになる。上記八方かしめを利用すれば、かしめ固定する2つの部材間に特にシール部材を介装させずとも気密性を相当程度確保することができる。
なお、円筒状部材11を有底円筒状の部材にて構成することにより、閉塞部材14を省略することも可能である。その場合には、円筒状部材11の開口端を閉塞するようにホルダ20を円筒状部材11にかしめ固定することにより、これら円筒状部材11とホルダ20とによってハウジング10が構成されることになる。
図2に示すように、円筒状部材11、閉塞部材14およびホルダ20によって規定されるシリンダ型ガス発生器1Aの内部の空間には、点火室15、ガス発生剤収容室16およびフィルタ室17が設けられている。点火室15、ガス発生剤収容室16およびフィルタ室17は、ハウジング10の内部に収容配置された後述するカップ状部材25や仕切り板40によってハウジング10の内部の空間が区画されることによって形成されている。ここで、本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1Aにおいては、点火室15が、ハウジング10の軸方向の一端部寄りの位置に設けられ、フィルタ室17が、ハウジング10の軸方向の他端部寄りの位置に設けられ、ガス発生剤収容室16が、フィルタ室17よりもハウジング10の上記一端部寄りの位置に設けられている。
点火室15は、ホルダ20およびカップ状部材25によって主として規定され、ハウジング10のホルダ20寄りの部分(図中の右側の部分)に設けられている。ホルダ20の貫通部22内には、点火器(スクイブ)30が配置されており、ホルダ20と点火器30との間には、樹脂成形部24が位置している。カップ状部材25は、内部に空間を有する有底筒状の部材からなり、その内部の空間が点火器30の点火部31に面するようにホルダ20に接触配置されている。
上述の樹脂成形部24は、点火器30をホルダ20に固定するための部位であり、ホルダ20の表面と点火器30の表面とにそれぞれ固着している。樹脂成形部は24は、たとえばインサート成形によって形成され、その原材料としては、エポキシ樹脂等に代表される熱硬化性樹脂や、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリアミド樹脂(たとえばナイロン6やナイロン66等)、ポリプロピレンスルフィド樹脂、ポリプロピレンオキシド樹脂等に代表される熱可塑性樹脂等が利用可能である。
点火器30は、後述するガス発生剤52を燃焼させるために火炎を発生させるための装置であり、点火部31と端子ピン32とを含んでいる。点火部31は、その内部に作動時において着火する点火薬と、この点火薬を燃焼させるための抵抗体とを含んでいる。端子ピン32は、点火薬を着火させるために点火部31に接続されている。より具体的には、点火器30は、一対の端子ピン32が挿通されてこれを保持する基部と、基部上に取付けられたスクイブカップとを備えており、スクイブカップ内に挿入された端子ピン32の先端を連結するように抵抗体(ブリッジワイヤ)が取付けられ、この抵抗体を取り囲むようにまたはこの抵抗体に接するようにスクイブカップ内に点火薬が充填されている。抵抗体としては一般にニクロム線等が利用され、点火薬としては一般にZPP(ジルコニウム・過塩素酸カリウム)、ZWPP(ジルコニウム・タングステン・過塩素酸カリウム)、鉛トリシネート等が利用される。スクイブカップは、一般に金属製またはプラスチック製である。
衝突を検知した際には、端子ピン32を介して抵抗体に所定量の電流が流れる。抵抗体に所定量の電流が流れることにより、抵抗体においてジュール熱が発生し、この熱を受けて点火薬が燃焼を開始する。燃焼により生じた高温の火炎は、点火薬を収納しているスクイブカップを破裂させる。抵抗体に電流が流れてから点火器30が作動するまでの時間は、抵抗体にニクロム線を利用した場合には3ミリ秒以下である。
図2に示すように、点火室15のうちのカップ状部材25、ホルダ20および点火器30等によって規定される空間(すなわちカップ状部材25の内部の空間)には、第2密閉容器70が収容されている。第2密閉容器70は、有底筒状のカップ部71と、当該カップ部71の開口を閉塞するキャップ部72とを含んでおり、これらカップ部71とキャップ部72とが組み合わされて接合されることにより、その内部に形成される収容空間73が当該第2密閉容器70の外部から気密に封止されている。カップ部71およびキャップ部72としては、プレス加工等によって成形された銅やアルミニウム、銅合金、アルミニウム合金等の金属薄板(箔)が利用される。また、カップ部71とキャップ部72との接合には、ろう付けや接着等が好適に用いられる。
第2密閉容器70の収容空間73には、複数の粒状の伝火薬27が充填されている。伝火薬27は、点火器30が作動することによって生じた火炎によって点火され、燃焼することによって熱粒子を発生する。伝火薬27としては、後述するガス発生剤52を確実に燃焼開始させることができるものであることが必要であり、一般的には、B/KNO3等に代表される金属粉/酸化剤からなる組成物などが用いられる。伝火薬27は、粉状のものや、バインダによって所定の形状に成型されたもの等が利用される。バインダによって成型された伝火薬の形状としては、たとえば顆粒状、円柱状、シート状、球状、単孔円筒状、多孔円筒状、タブレット状など種々の形状がある。
カップ状部材25の底壁には、開口部25aが複数設けられており、当該開口部25aは、点火室15とガス発生剤収容室16とを連通している。また、カップ状部材25のホルダ20側の開口端には、外側に向けてフランジ部が形成されている。当該フランジ部は、ホルダ20の軸方向端面と、円筒状部材11に設けられたかしめ部13cによって挟持されており、これによりカップ状部材25がハウジング10に固定されている。なお、カップ状部材25をハウジング10に固定するためのかしめには、上述の八方かしめが利用される。
図2に示すように、ガス発生剤収容室16は、円筒状部材11、後述する仕切り板40およびカップ状部材25によって規定され、ハウジング10の略中央部に設けられている。ガス発生剤収容室16には、第1密閉容器80が収容されている。第1密閉容器80は、有底筒状のカップ部81と、当該カップ部81の開口を閉塞するキャップ部82とを含んでおり、これらカップ部81とキャップ部82とが組み合わされて接合されることにより、その内部に形成される収容空間83が当該第1密閉容器80の外部から気密に封止されている。カップ部81およびキャップ部82としては、プレス加工等によって成形された銅やアルミニウム、銅合金、アルミニウム合金等の金属薄板(箔)が利用される。また、カップ部81とキャップ部82との接合には、ろう付けや接着等が好適に用いられる。
第1密閉容器80の収容空間83には、複数の粒状のガス発生剤52と多孔板18とクッション材51が収容されている。より詳細には、第1密閉容器80の収容空間83のうちのフィルタ室17側の端部部分には、多孔板18が配設されており、第1密閉容器80の収容空間83のうちの点火室15側の端部部分には、クッション材51が配設されている。そして、複数の粒状のガス発生剤52は、これら多孔板18とクッション材51との間に位置するように、第1密閉容器80の収容空間83内に充填されている。
ガス発生剤52は、点火器30によって点火された伝火薬27が燃焼することによって生じた熱粒子によって着火され、燃焼することによってガスを発生させるものである。ガス発生剤52は、一般に燃料と酸化剤と添加剤とを含む成型体として形成される。燃料としては、たとえばトリアゾール誘導体、テトラゾール誘導体、グアニジン誘導体、アゾジカルボンアミド誘導体、ヒドラジン誘導体等またはこれらの組み合わせが利用される。具体的には、たとえばニトログアニジンや硝酸グアニジン、シアノグアニジン、5−アミノテトラゾール等が好適に利用される。また、酸化剤としては、たとえばアルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、アンモニアから選ばれたカチオンを含む硝酸塩等が利用される。硝酸塩としては、たとえば硝酸ナトリウム、硝酸カリウム等が好適に利用される。また、添加剤としては、バインダやスラグ形成剤、燃焼調整剤等が挙げられる。バインダとしては、たとえばカルボキシメチルセルロースの金属塩、ステアリン酸塩等の有機バインダや、合成ヒドロキシタルサイト、酸性白土等の無機バインダが好適に利用可能である。スラグ形成剤としては窒化珪素、シリカ、酸性白土等が好適に利用可能である。また、燃焼調整剤としては、金属酸化物、フェロシリコン、活性炭、グラファイト等が好適に利用可能である。
粒状に成形されたガス発生剤52の成型体の形状には、顆粒状、ペレット状、円柱状、ディスク状など様々な形状のものがある。また、有孔状(たとえば単孔円筒形状や多孔円筒形状等)の成型体も利用される。これらの形状は、シリンダ型ガス発生器1Aが組み込まれるエアバッグ装置の仕様に応じて適宜選択されることが好ましく、たとえばガス発生剤52の燃焼時においてガスの生成速度が時間的に変化する形状を選択するなど、仕様に応じた最適な形状を選択することが好ましい。また、ガス発生剤52の形状の他にもガス発生剤52の線燃焼速度、圧力指数などを考慮に入れて成型体のサイズや充填量を適宜選択することが好ましい。成型体としては、たとえば直径2.0mm〜3.5mm程度、厚さ1.0mm〜1.6mm程度のペレット状のものとすることができる。
クッション材51は、成型体からなるガス発生剤52が振動等によって破砕されることを防止するための破砕防止部材に相当し、好適にはセラミックスファイバの成型体や発泡シリコン等が利用される。このクッション材51は、作動時において伝火薬27の燃焼によって開口または分断し、場合によっては焼失する。
多孔板18は、複数の貫通孔18aが設けられた板状の部材からなり、その中央部がホルダ20側に向けて突出するように湾曲している。多孔板18に設けられた貫通孔18aは、いずれもガス発生剤52の外形よりも小さく形成されている。多孔板18は、フィルタ室17にガス発生剤52が進入することを防止するための進入防止部材に相当し、好適にはステンレス鋼や鉄鋼、アルミニウム合金、ステンレス合金等の金属製の部材が用いられる。また、多孔板18は、作動時において多孔板18を通過する燃焼ガスの流れを整流する作用も有している。貫通孔18aの直径としては、たとえば1.5mm〜2.5mm程度とされることが好ましい。
上述したように、本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1Aにおいては、第1密閉容器80および第2密閉容器70にガス発生剤52および伝火薬27をそれぞれ封入した構成であるため、予めこれら薬剤を密閉容器に封入しておくことにより、シリンダ型ガス発生器1Aの組立作業が容易化するのみならず、別途ハウジング10に気密処理を施すことも不要になり、部品点数の削減と構成の簡素化が可能になる。また、本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1Aにおいては、ガス発生剤52に加え、多孔板18およびクッション材51を第1密閉容器80に予め封入した構成であるため、シリンダ型ガス発生器1Aの組立作業がさらに容易化する効果も得られる。
仕切り板40は、ハウジング10の内部の空間を軸方向にガス発生剤収容室16とフィルタ室17とに区画するための仕切り部材に相当し、ハウジング10の内部の空間において上述した第1密閉容器80に接するように配置されている。仕切り板40は、ハウジング10の軸と直交する主面を有する環状板部41と、当該環状板部41の内周縁から上述した第1密閉容器80から遠ざかる方向に向けて連続して延びる筒状部42と、当該筒状部42によって規定され、ガス発生剤収容室16とフィルタ室17とを連通する連通孔43とを含んでいる。なお、仕切り板40の詳細な構成や組付け構造等については、後述することとする。
フィルタ室17は、円筒状部材11、閉塞部材14および仕切り板40によって規定され、ハウジング10の閉塞部材14寄りの部分(図中の左側の部分)に設けられている。フィルタ室17には、フィルタ60が収容されている。フィルタ60は、ハウジング10の軸方向と同方向に延び、その軸方向端面に達する中空部61を有する円筒状の部材からなり、その軸方向のガス発生剤収容室16側の端面が仕切り板40に当接しており、他方の端面が閉塞部材14に当接している。また、フィルタ60の外周面は、円筒状部材11の内周面に当接している。このような円筒状の部材からなるフィルタ60を利用すれば、作動時においてフィルタ室17を流動する燃焼ガスの流動抵抗が低く抑えられ、効率的な燃焼ガスの流動が実現可能となる。
フィルタ60は、たとえばステンレス鋼や鉄鋼等の金属線材あるいは金属線材を編み込んだ網材を巻き回したものやプレス加工することによって押し固めたもの等が利用される。網材としては、具体的にはメリヤス編みの金網や平織りの金網、クリンプ織りの金属線材の集合体等が利用される。このように金属線材を円筒状に巻き回したり押し固めたりしてなるフィルタ60は、その内部に空隙が含まれることになり、上述した燃焼ガスの流動を可能にする。なお、フィルタ60として金属線材を円筒状に巻き回したものを使用する場合には、金属線材を巻き回した後に焼結処理を行なうことが好ましい。フィルタ60は、ガス発生剤収容室16にて発生した燃焼ガスがこのフィルタ60中を通過する際に、当該燃焼ガスが有する高温の熱を奪い取ることによってこれを冷却する冷却部として機能するとともに、燃焼ガス中に含まれる残渣(スラグ)等を除去する除去部としても機能する。
フィルタ室17を規定する部分の円筒状部材11の周壁には、ガス噴出口12が設けられている。このガス噴出口12は、シリンダ型ガス発生器1Aの内部において発生した燃焼ガスを外部に放出するための孔であり、円筒状部材11の周方向および軸方向に沿って複数個設けられている。たとえば、円筒状部材11の外径が20.0mmでかつ内径が16.6mmである場合には、円筒状部材11に直径2.5mm〜3.5mm程度の孔が合計8個設けられることで、ガス噴出口12が構成される。
閉塞部材14は、フィルタ室17を規定する部分の主面の中央部に当該フィルタ室17側に向けて突出するように形成された凸部14bを有している。凸部14bは、たとえば冷間鍛造によって閉塞部材14を成形する際に形成される部位であり、フィルタ60の中空部61に挿し込まれることによってフィルタ60を位置決めして保持するための部位である。また、閉塞部材14のフィルタ室17を規定する部分の主面には、上記凸部14bに加え、凹部14cが設けられている。凹部14cは、たとえば冷間鍛造によって閉塞部材14を成形する際に形成される部位であり、フィルタ60の中空部61を通過して吹き付けられた燃焼ガスに含まれるスラグを捕集するための部位である。吹き付けられた燃焼ガスに含まれるスラグは、凹部14cの表面に付着することで当該凹部14c内に捕集され、凹部14cの外部へと流出することが抑制される。
なお、シリンダ型ガス発生器1Aのホルダ20が配置された側の端部には、雌型コネクタ(不図示)が取付けられる。この雌型コネクタは、シリンダ型ガス発生器1Aとは別途設けられる衝突検知センサからの信号を伝達するハーネスの雄型コネクタが接続される部位である。雌型コネクタには、必要に応じてショーティングクリップ(不図示)が取付けられる。このショーティングクリップは、シリンダ型ガス発生器1Aの搬送時等において静電放電等によってシリンダ型ガス発生器1Aが誤動作することを防止するために取付けられるものであり、エアバッグ装置への組付け段階においてハーネスの雄型コネクタが雌型コネクタに挿し込まれることによってその端子ピン32への接触が解除されるものである。
次に、以上において説明したシリンダ型ガス発生器1Aの作動時における動作について説明する。本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1Aが組み込まれたエアバッグ装置が搭載された車両が衝突した場合には、車両に別途設けられた衝突検知部によって衝突が検知され、これに基づいて点火器30が作動する。点火器30が作動すると、点火薬の燃焼によって点火部31内の圧力が上昇し、これによって点火部31が破裂し、火炎が点火部31の外部へと流出する。
点火部31の破裂後において、点火室15内の温度と圧力は上昇し、第2密閉容器70が溶融または破裂する。これにより、第2密閉容器70内に収容された伝火薬27は、点火器30が作動することによって生じた火炎によって点火されて燃焼し、多量の熱粒子を発生させる。発生した多量の熱粒子は、カップ状部材25に設けられた開口部25aを経由してガス発生剤収容室16へと至る。
ガス発生剤収容室16へと達した熱粒子は、第1密閉容器80のキャップ部82を溶融または破裂させ、クッション材51を開口または分断し、ガス発生剤52へと至る。これにより、ガス発生剤52が着火されて燃焼し、多量の燃焼ガスが発生する。発生した燃焼ガスは、多孔板18に設けられた貫通孔18aを通過し、その先に位置する第1密閉容器80のカップ部81を破裂させ、仕切り板40に設けられた連通孔43を経由してフィルタ室17へと流入する。
フィルタ室17に流れ込んだ燃焼ガスは、フィルタ60の中空部61内をハウジング10の軸方向に沿って流動し、その後流動方向を変えてフィルタ60に進入し、当該フィルタ60を経由することで所定の温度にまで冷却され、ガス噴出口12からシリンダ型ガス発生器1Aの外部へと噴出される。ガス噴出口12から噴出された燃焼ガスは、エアバッグの内部に導かれてエアバッグを膨張および展開させる。
図3は、本発明の実施の形態1におけるシリンダ型ガス発生器の仕切り板が設けられた位置の近傍を拡大した要部拡大断面図であり、図3(A)は、シリンダ型ガス発生器の作動開始直後の状態を示す図であり、図3(B)は、作動開始から所定時間経過後の状態を示す図である。次に、これら図3(A)および図3(B)を参照して、仕切り板40の構成、組付け構造および当該仕切り板40が圧力隔壁として機能する理由について詳細に説明する。
まず、図3(A)を参照して、本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1Aの仕切り板40の構成および組付け構造について詳説する。上述したように、本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1Aの仕切り板40は、環状板部41と、筒状部42と、連通孔43とを有している。環状板部41は、フィルタ60のガス発生剤収容室16側の端面を覆っており、筒状部42は、環状板部41の内周縁からフィルタ60の中空部61内に向けて連続して延び、フィルタ60の上記端面寄りの内周面を覆っている。連通孔43は、筒状部42の内周面によって規定され、ガス発生剤収容室16とフィルタ室17とを連通している。そして、上記筒状部42は、環状板部41から遠ざかるにつれて(ガス発生剤収容室16から遠ざかり、筒状部42の先端に向かうにつれて)連通孔43の開口面積が減少するように徐々に縮径する円錐板状の形状にて構成されている。
仕切り板40は、円筒状部材11に対して嵌合または遊嵌されており、円筒状部材11には、当該仕切り板40を固定するためのかしめ加工は施されていない。ここで、嵌合とは、いわゆる圧入固定を含むものであり、仕切り板40の環状板部41の外周端が円筒状部材11の内周面に接触した状態で取付けられた状態を言う。また、遊嵌とは、仕切り板40の環状板部41の外周端と円筒状部材11の内周面とが全周にわたって必ずしも接触しておらず、多少の隙間(あそび)をもって内挿された状態を言う。
仕切り板40は、フィルタ60のガス発生剤収容室16側の端部に取付けられており、フィルタ60と上述したガス発生剤52を収容する第1密閉容器80とによって挟み込まれることで円筒状部材11の内部において支持されている。なお、仕切り板40は、たとえばステンレス鋼や鉄鋼、アルミニウム合金、ステンレス合金等の金属製の板状部材をプレス加工等することによって形成される。
次に、図3(A)および図3(B)を参照して、本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1Aにおいて、上述した如くの仕切り板40の構成および組付け構造を採用した場合にも、仕切り板40がガス発生剤収容室16の内圧を維持しかつフィルタ60の破損を防止する圧力隔壁として機能する理由について説明する。なお、図3(A)および図3(B)中においては、燃焼ガスの流動方向を矢印Gで示している。
図3(A)に示すように、シリンダ型ガス発生器1Aが作動した作動開始直後においては、ガス発生剤収容室16にて生成された高温高圧の燃焼ガスの推力(すなわち、ガス発生剤収容室16の内圧の上昇に伴って生じる圧力、図中矢印Aにて示す力)を受け、仕切り板40の環状板部41が、円筒状部材11の軸方向に沿ってフィルタ60側に向けての力を受ける。これにより、仕切り板40の環状板部41は、フィルタ60側に向けて移動を開始し、仕切り板40と円筒状部材11とによって囲まれたフィルタ60の部分(すなわち、フィルタ60のガス発生剤収容室16側の端部近傍部分、図中に示す領域R1に含まれる部分)が、当該環状板部41が移動することによって円筒状部材11の軸方向に沿って圧縮されることになる。
ここで、フィルタ60の内部には、金属線材または金属線材を編み込んだ網材を巻き回したりあるいはプレス加工することで押し固めたりすることで形成された空隙が存在するが、図3(B)に示すように、上記環状板部41の移動に伴って当該空隙の容積は減少し、金属線材は当該領域R1においてさらに密に充填された状態となるとともに、円筒状部材11の径方向に沿って広がろうとして仕切り板40の筒状部42を円筒状部材11の径方向に沿って内側に向けて押し込もうとする力を発生させる。しかしながら、仕切り板40の筒状部42には、上述した内圧の上昇に伴って円筒状部材11の大略径方向に沿って外側に向けての力(図中矢印B1にて示す力)が加わっているため、仕切り板40の筒状部42を円筒状部材11の径方向に沿って内側に向けて押し込もうとする力は当該力に押し負け、その反力(図中矢印C1で示す力)が円筒状部材11とフィルタ60との接触部分(図中において示す領域D1)に加わることになる。これにより、当該円筒状部材11とフィルタ60との接触部分において摩擦力が発生し、当該摩擦力が仕切り板40がさらにフィルタ60側に向けて移動することを抑制するブレーキ力となる。
ここで、上記反力(図中矢印C1で示す力)は、円筒状部材11の径方向および軸方向と交差する方向に向けて作用する力となるため、円筒状部材11の広い範囲に仕切り板40の移動を防止する高いブレーキ力として作用することになり、当該ブレーキ力に基づいて仕切り板40の移動量は僅かで留まることになる。したがって、移動後の仕切り板40とこれに伴って押し固められた部分のフィルタ60とによって実質的に圧力隔壁としての機能が確保されることになり、ガス発生剤収容室16の内圧が高く維持されるとともにフィルタ60の破損が防止されることになる。したがって、円筒状部材11にかしめ加工を施して仕切り板40を固定せずとも、仕切り板40が圧力隔壁として十分に機能することになる。
また、本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1Aにおいては、仕切り板40の筒状部42が、フィルタ60のガス発生剤収容室16側の端部近傍のみを覆うように構成されている。したがって、図3(B)中に示す領域R2に位置する部分のフィルタ60の内部には、十分な空隙が形成された状態が維持されることになり、上述した仕切り板40の移動および変形の影響を受けることなく当該部分においてスムーズに燃焼ガスが流動することが可能となる。したがって、フィルタ60の有する燃焼ガスの冷却機能およびスラグ捕集機能が損なわれることもない。
さらに、本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1Aにおいては、仕切り板40とフィルタ60とを円筒状部材11の軸方向に沿って当該軸と直交する面に投影した場合に、フィルタ60の投影領域の内縁が仕切り板40の投影領域の内縁よりも内側に位置しないように構成されている。すなわち、ガス発生剤収容室16側から仕切り板40およびフィルタ60を平面視した場合に、フィルタ60が仕切り板40によって完全に覆い隠されるように仕切り板40およびフィルタ60の相対的な位置関係が調節されている。このように構成することにより、仕切り板40の連通孔43を通過した高温高圧の燃焼ガスは、フィルタ60の内周面を沿って流動することになるため、燃焼ガスが直接フィルタ60に吹き付けられる割合を大幅に低減することができる。
また、本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1Aにおいては、上述したように、ガス発生剤52が第1密閉容器80に封入され、当該第1密閉容器80が仕切り板40の環状板部41に当て留めされている。このように構成することにより、仕切り板40の環状板部41の外周面と円筒状部材11の内周面との接触部分(仕切り板40を円筒状部材11に遊嵌した場合には、当該仕切り板40の環状板部41の外周面と円筒状部材11の内周面との間に生じる隙間)が第1密閉容器80によって覆われることになるため、作動時においても燃焼ガスが当該部分から漏れ出してフィルタ60を経由することなくガス噴出口12より外部へと放出されることが防止可能となる。したがって、上記構成を採用することにより、安定したガス出力が得られるシリンダ型ガス発生器とすることができる。
なお、本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1Aにおいては、作動時において仕切り板40が上述した領域R1に位置する部分のフィルタ60によって保持されることになるため、当該仕切り板40のみによって燃焼ガスの推力に耐え得るように仕切り板40を設計する必要がなく、その厚みを従来に比して小さくすることができる。具体的には、一般的なシリンダ型ガス発生器の仕様を考慮した場合には、仕切り板40として鉄鋼材を利用した場合にその厚みを概ね0.7mm以上とすれば足りる。
以上において説明したように、本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1Aの如くの構成を採用することにより、仕切り板40の取付けのためにハウジング10にかしめ加工を実施することが必要なくなり、また仕切り板40を薄型化することもできる。そのため、シリンダ型ガス発生器全体として見た場合に、性能を低下させることなく、従来に比して短尺化や小径化、軽量化することが可能になる。また、上記構成を採用することにより、仕切り板40をハウジング10にかしめ加工する作業も不要となり、製造コストを削減することもできる。したがって、性能を低下させることなく小型軽量化が可能でかつ製造が容易なシリンダ型ガス発生器とすることができる。
(実施の形態2)
図4は、本発明の実施の形態2におけるシリンダ型ガス発生器の仕切り板が設けられた位置の近傍を拡大した要部拡大断面図であり、図4(A)は、シリンダ型ガス発生器の作動開始直後の状態を示す図であり、図4(B)は、作動開始から所定時間経過後の状態を示す図である。本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1Bは、上述した本発明の実施の形態1におけるシリンダ型ガス発生器1Aと仕切り板40の構造および組付け構造のみにおいて相違しており、他の部分については同様であるため、当該他の部分についてはその説明を省略する。なお、図4(A)および図4(B)中においては、燃焼ガスの流動方向を矢印Gで示している。
図4(A)に示すように、本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1Bの仕切り板40は、環状板部41と、筒状部42と、連通孔43とを有している。環状板部41は、フィルタ60のガス発生剤収容室16側の端面を覆っており、筒状部42は、環状板部41の内周縁からフィルタ60の中空部61内に向けて連続して延び、フィルタ60の上記端面寄りの内周面を覆っている。連通孔43は、筒状部42の内周面によって規定され、ガス発生剤収容室16とフィルタ室17とを連通している。そして、上記筒状部42は、環状板部41から遠ざかるにつれて(ガス発生剤収容室16から遠ざかり、筒状部42の先端に向かうにつれて)連通孔43の開口面積が増加するように徐々に拡径する円錐板状の形状にて構成されている。
仕切り板40は、円筒状部材11に対して嵌合または遊嵌されており、円筒状部材11には、当該仕切り板40を固定するためのかしめ加工は施されていない。ここで、嵌合とは、いわゆる圧入固定を含むものであり、仕切り板40の環状板部41の外周端が円筒状部材11の内周面に接触した状態で取付けられた状態を言う。また、遊嵌とは、仕切り板40の環状板部41の外周端と円筒状部材11の内周面とが全周にわたって必ずしも接触しておらず、多少の隙間(あそび)をもって内挿された状態を言う。
仕切り板40は、フィルタ60のガス発生剤収容室16側の端部に取付けられており、フィルタ60と上述したガス発生剤52を収容する第1密閉容器80とによって挟み込まれることで円筒状部材11の内部において支持されている。なお、仕切り板40は、たとえばステンレス鋼や鉄鋼、アルミニウム合金、ステンレス合金等の金属製の板状部材をプレス加工等することによって形成される。
本実施の形態の如くの仕切り板40の構成および組付け構造を採用した場合にも、上述の実施の形態1におけるシリンダ型ガス発生器1Aとした場合と同様に、仕切り板40がガス発生剤収容室16の内圧を維持しかつフィルタ60の破損を防止する圧力隔壁として機能する。以下においては、その理由について詳説する。
図4(A)に示すように、シリンダ型ガス発生器1Bが作動した作動開始直後においては、ガス発生剤収容室16にて生成された高温高圧の燃焼ガスの推力(すなわち、ガス発生剤収容室16の内圧の上昇に伴って生じる圧力、図中矢印Aにて示す力)を受け、仕切り板40の環状板部41が、円筒状部材11の軸方向に沿ってフィルタ60側に向けての力を受ける。これにより、仕切り板40の環状板部41は、フィルタ60側に向けて移動を開始し、仕切り板40と円筒状部材11とによって囲まれたフィルタ60の部分(すなわち、フィルタ60のガス発生剤収容室16側の端部近傍部分、図中に示す領域R1に含まれる部分)が、当該環状板部41が移動することによって円筒状部材11の軸方向に沿って圧縮されることになる。
ここで、フィルタ60の内部には、金属線材または金属線材を編み込んだ網材を巻き回したりあるいはプレス加工することで押し固めたりすることで形成された空隙が存在するが、図4(B)に示すように、上記環状板部41の移動に伴って当該空隙の容積は減少し、金属線材は当該領域R1においてさらに密に充填された状態となるとともに、円筒状部材11の径方向に沿って広がろうとして仕切り板40の筒状部42を円筒状部材11の径方向に沿って内側に向けて押し込もうとする力を発生させる。しかしながら、仕切り板40の筒状部42には、上述した内圧の上昇に伴って円筒状部材11の大略径方向に沿って外側に向けての力(図中矢印B2にて示す力)が加わっているため、仕切り板40の筒状部42を円筒状部材11の径方向に沿って内側に向けて押し込もうとする力は当該力に押し負け、その反力(図中矢印C2で示す力)が円筒状部材11とフィルタ60との接触部分(図中において示す領域D2)に加わることになる。これにより、当該円筒状部材11とフィルタ60との接触部分において摩擦力が発生し、当該摩擦力が仕切り板40がさらにフィルタ60側に向けて移動することを抑制するブレーキ力となる。
ここで、上記反力(図中矢印C2で示す力)は、円筒状部材11の径方向および軸方向と交差する方向に向けて作用する力となるため、円筒状部材11の広い範囲に仕切り板40の移動を防止する高いブレーキ力として作用することになり、当該ブレーキ力に基づいて仕切り板40の移動量は僅かで留まることになる。したがって、移動後の仕切り板40とこれに伴って押し固められた部分のフィルタ60とによって実質的に圧力隔壁としての機能が確保されることになり、ガス発生剤収容室16の内圧が高く維持されるとともにフィルタ60の破損が防止されることになる。したがって、円筒状部材11にかしめ加工を施して仕切り板40を固定せずとも、仕切り板40が圧力隔壁として十分に機能することになる。
また、本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1Bにおいては、仕切り板40の筒状部42が、フィルタ60のガス発生剤収容室16側の端部近傍のみを覆うように構成されている。したがって、図4(B)中に示す領域R2に位置する部分のフィルタ60の内部には、十分な空隙が形成された状態が維持されることになり、上述した仕切り板40の移動および変形の影響を受けることなく当該部分においてスムーズに燃焼ガスが流動することが可能となる。したがって、フィルタ60の有する燃焼ガスの冷却機能およびスラグ捕集機能が損なわれることもない。
さらに、本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1Bにおいては、仕切り板40とフィルタ60とを円筒状部材11の軸方向に沿って当該軸と直交する面に投影した場合に、フィルタ60の投影領域の内縁が仕切り板40の投影領域の内縁よりも内側に位置しないように構成されている。すなわち、ガス発生剤収容室16側から仕切り板40およびフィルタ60を平面視した場合に、フィルタ60が仕切り板40によって完全に覆い隠されるように仕切り板40およびフィルタ60の相対的な位置関係が調節されている。このように構成することにより、仕切り板40の連通孔43を通過した高温高圧の燃焼ガスは、フィルタ60の内周面を沿って流動することになるため、燃焼ガスが直接フィルタ60に吹き付けられる割合を大幅に低減することができる。
なお、本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1Bにおいては、作動時において仕切り板40が上述した領域R1に位置する部分のフィルタ60によって保持されることになるため、当該仕切り板40のみによって燃焼ガスの推力に耐え得るように仕切り板40を設計する必要がなく、その厚みを従来に比して小さくすることができる。具体的には、一般的なシリンダ型ガス発生器の仕様を考慮した場合には、仕切り板40として鉄鋼材を利用した場合にその厚みを概ね0.7mm以上とすれば足りる。
加えて、本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1Bの如くの構成を採用した場合には、ハウジング10にフィルタ60を組付けるに先立ってフィルタ60に仕切り板40を予め組付けて固定しておくことが可能になるため、ハウジング10に対して直接組付ける必要のある組付部品の部品点数を削減することが可能となり、当該組付作業の容易化と製造コストの削減が図られることになる。
(実施の形態3)
図5は、本発明の実施の形態3におけるシリンダ型ガス発生器の内部構造を示す図である。次に、この図5を参照して、本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1Cについて説明する。なお、上述した本発明の実施の形態1におけるシリンダ型ガス発生器1Aと同様の部分については図中同一の符号を付し、その説明はここでは繰り返さない。
図5に示すように、本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1Cは、長尺略円柱状の形状を有しており、外殻部材としてのハウジング10を有している。ハウジング10は、円筒状部材11、閉塞部材14およびホルダ20を含んでいる。これら円筒状部材11、閉塞部材14およびホルダ20によって規定されるシリンダ型ガス発生器1Cの内部の空間には、ガス発生剤収容室16およびフィルタ室17が設けられており、当該空間には、主として点火器30、伝火薬27、ガス発生剤52およびフィルタ60が収容配置されている。ガス発生剤収容室16およびフィルタ室17は、ハウジング10の内部に収容配置された仕切り板40によってハウジング10の内部の空間が区画されることによって形成されている。
ここで、上述した本発明の実施の形態1におけるシリンダ型ガス発生器1Aは、ハウジング10の軸方向に沿って一端部側から他端部側に向けて点火器30、ガス発生剤52、フィルタ60の順でこれら部品が配置されてなるものであったが、本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1Cは、ハウジング10の軸方向に沿って一端部側から他端部側に向けて点火器30、フィルタ60、ガス発生剤52の順でこれら部品が配置されてなるものである。すなわち、本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1Cにおいては、点火器30が、ハウジング10の軸方向の一端部寄りの位置に配置され、ガス発生剤収容室16が、ハウジング10の軸方向の他端部寄りの位置に設けられ、フィルタ室17が、ガス発生剤収容室16よりもハウジング10の上記一端部寄りの位置に設けられている。
ハウジング10の軸方向の一端部を構成するホルダ20の中空部22内には、点火器(スクイブ)30が配置されている。ホルダ20と点火器30との間には、樹脂成型部24が位置しており、当該樹脂成形部24を介した点火器30のホルダ20への組付け構造は、上述した実施の形態1におけるシリンダ型ガス発生器1Aのそれと同様である。
ハウジング10の内部の空間のうち、ホルダ20に隣接する領域には、フィルタ室17が形成されており、当該フィルタ室17には、フィルタ60が配置されている。フィルタ室17は、円筒状部材11、ホルダ20および仕切り板40によって主として規定され、ハウジング10の略中央部に設けられている。フィルタ60は、ハウジング10の軸方向と同方向に延びる中空部61を有する円筒状の部材からなり、その一方の軸方向端部がホルダ20に押し当てられて当接するとともに、当該軸方向端部においてその中空部61によって点火器30の点火部31を受け入れている。フィルタ60が配置された領域に対応する部分の円筒状部材11の周壁には、ガス噴出口12が円筒状部材11の周方向および軸方向に沿って複数個(たとえば、直径2.5mm〜3.5mmの孔が6個〜15個程度)設けられている。
仕切り板40は、ハウジング10の内部の空間を軸方向にガス発生剤収容室16とフィルタ室17とに区画するための仕切り部材に相当し、ガス発生剤収容室16とフィルタ室17との境界部分に上述したフィルタ60に接するように配置されている。仕切り板40は、上述した本発明の実施の形態1におけるシリンダ型ガス発生器1Aの場合と同様に、ハウジング10の軸と直交する主面を有する環状板部41と、当該環状板部41の内周縁から上述した第1密閉容器80から遠ざかる方向に向けて連続して延びる筒状部42と、当該筒状部42によって規定され、ガス発生剤収容室16とフィルタ室17とを連通する連通孔43とを含んでいる。
環状板部41は、フィルタ60のガス発生剤収容室16側の端面を覆っており、筒状部42は、環状板部41の内周縁からフィルタ60の中空部61内に向けて連続して延び、フィルタ60の上記端面寄りの内周面を覆っている。連通孔43は、筒状部42の内周面によって規定され、ガス発生剤収容室16とフィルタ室17とを連通している。そして、上記筒状部42は、環状板部41から遠ざかるにつれて(ガス発生剤収容室16から遠ざかり、筒状部42の先端に向かうにつれて)連通孔43の開口面積が減少するように徐々に縮径する円錐板状の形状にて構成されている。
仕切り板40は、円筒状部材11に対して嵌合または遊嵌されており、円筒状部材11には、当該仕切り板40を固定するためのかしめ加工は施されていない。ここで、嵌合とは、いわゆる圧入固定を含むものであり、仕切り板40の環状板部41の外周端が円筒状部材11の内周面に接触した状態で取付けられた状態を言う。また、遊嵌とは、仕切り板40の環状板部41の外周端と円筒状部材11の内周面とが全周にわたって必ずしも接触しておらず、多少の隙間(あそび)をもって内挿された状態を言う。
仕切り板40は、フィルタ60のガス発生剤収容室16側の端部に取付けられており、フィルタ60と伝火薬27を収容する第2密閉容器70とによって挟み込まれることで円筒状部材11の内部において支持されている。
ハウジング10の内部の空間のうち、ホルダ20が位置する側とは反対側のフィルタ60に隣接する領域には、ガス発生剤収容室16が形成されている。ガス発生剤収容室16は、円筒状部材11、閉塞部材14および仕切り板40によって主として規定され、ハウジング10の閉塞部材14寄りの部分(図中の左側部分)に設けられている。このガス発生剤収容室16には、フィルタ60が位置する側から順に、複数の粒状の伝火薬27が封入された第2密閉容器70、複数の粒状のガス発生剤52が封入された第1密閉容器80およびクッション材53が配置されており、これら第2密閉容器70、第1密閉容器80およびクッション材53は、いずれも円筒状部材11に内挿されている。
第1密閉容器80の収容空間83には、上述した複数の粒状のガス発生剤52に加えてクッション材51が収容されている。より詳細には、第1密閉容器80の収容空間83のうち、閉塞部材14が位置する側の端部部分にクッション材51が配設されており、第1密閉容器80の残る収容空間83を充填するように複数の粒状のガス発生剤52が収容されている。
ガス発生剤収容室16のうち、第1密閉容器80の外部でかつ第1密閉容器80と閉塞部材14との間に配置されたクッション材53は、上述した各種の内部構成部品をハウジング10内部において軸方向に固定するための部材であり、同時に上述した内部構成部品の軸方向長さのばらつきを吸収するための部材でもある。クッション材53は、ハウジング10の軸方向の他端部を構成する閉塞部材14と、第1密閉容器80とによって挟み込まれている。クッション材53としては、たとえばセラミックスファイバの成型体や発泡シリコン等が利用可能である。
次に、以上において説明したシリンダ型ガス発生器1Cの作動時における動作について説明する。本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1Cが組み込まれたエアバッグ装置が搭載された車両が衝突した場合には、車両に別途設けられた衝突検知手段によって衝突が検知され、これに基づいて点火器30が作動する。点火器30が作動すると、点火薬の燃焼によって点火部31内の圧力が上昇し、これによって点火部31が破裂し、火炎が点火部31の外部へと流出する。
点火部31から外部へと吹き出した火炎は、フィルタ60の中空部61を経由し、第2密閉容器70に達してこれを溶融または破裂させる。これにより、第2密閉容器70内に収容された伝火薬27は、点火器30が作動することによって生じた火炎によって点火されて燃焼し、多量の熱粒子を発生させる。
発生した多量の熱粒子は、第1密閉容器80に達してこれを溶融または破裂させる。これにより、ガス発生剤52が着火されて燃焼し、多量の燃焼ガスが発生する。発生した燃焼ガスは、フィルタ60の中空部61内をハウジング10の軸方向に沿って流動し、その後流動方向を変えてフィルタ60に進入し、当該フィルタ60を経由することで所定の温度にまで冷却され、ガス噴出口12からシリンダ型ガス発生器1Cの外部へと噴出される。ガス噴出口12から噴出された燃焼ガスは、エアバッグの内部に導かれてエアバッグを膨張および展開させる。
以上において説明した本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1Cとした場合にも、上述した本発明の実施の形態1におけるシリンダ型ガス発生器1Aとした場合と同様の効果を得ることができる。すなわち、本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1Cの如くとすることにより、作動時において仕切り板40が圧力隔壁として十分に機能することになり、ガス発生剤収容室16の内圧が高く維持されてガス発生剤52の燃焼が促進される効果が得られる。
また、本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1Cとした場合には、ガス発生剤52が収容された領域のうちの点火器30側の端部からガス発生剤52の燃焼を開始させることができるため、作動初期において燃焼ガスが生成される位置とフィルタ60との間の距離を近くすることができるばかりでなく、生成された燃焼ガスの流動が未燃焼のガス発生剤等によって阻害されることも防止でき、生成された燃焼ガスを直ちにフィルタ60が収容された領域に流入させ、その後フィルタ60を経由させてガス噴出口12からハウジング10の外部へと噴出させるようにすることもできる。
なお、本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1Cの如く、フィルタ室17を点火器30とガス発生剤収容室16との間に配置した構成を採用した場合にも、ガス発生剤収容室16とフィルタ室17との境界部分に配置される仕切り部材として、上述した本発明の実施の形態2の如くの仕切り板40を採用することができる。当該本発明の実施の形態2の如くの仕切り板40を採用した場合には、ハウジング10にフィルタ60を組付けるに先立ってフィルタ60に仕切り板40を予め組付けて固定しておくことが可能になるため、ハウジング10に対して直接組付ける必要のある組付部品の部品点数を削減することが可能となり、当該組付作業の容易化と製造コストの削減が図られることになる。
図6および図7は、本実施の形態における第1および第2変形例に係るシリンダ型ガス発生器の内部構造を示す模式断面図である。次に、これら図6および図7を参照して、本実施の形態にける第1および第2変形例に係るシリンダ型ガス発生器1D,1Eについて詳説する。
図6に示すように、第1変形例に係るシリンダ型ガス発生器1Dは、ガス発生剤収容室16に収容配置される第1密閉容器80および第2密閉容器70の構成において上述の本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1Cと相違している。具体的には、上述の本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1Cにおいては、ガス発生剤52が収容された第1密閉容器80と伝火薬27が収容された第2密閉容器70とを別々に構成し、これをハウジング10の内部において軸方向に並べて配置した構成としていたが、本変形例に係るシリンダ型ガス発生器1Dにおいては、伝火薬27が収容された第2密閉容器70をガス発生剤52が収容された第1密閉容器80の内部に封入している。ここで、第1密閉容器80のキャップ部82は、第2密閉容器70のカップ部を兼用している。このように構成することにより、上述の本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1Cとした場合に得られる効果に加え、さらに組立作業を容易化できる効果を得ることができる。
図7に示すように、第2変形例に係るシリンダ型ガス発生器1Eは、上述した第1変形例に係るシリンダ型ガス発生器1Dと粉砕防止部材としてのクッション材51が配置された位置において相違している。具体的には、上述した第1変形例に係るシリンダ型ガス発生器1Dにおいては、クッション材51が第1密閉容器80の閉塞部材14側の端部に配置された構成としていたが、本変形例に係るシリンダ型ガス発生器1Eにおいては、これを第1密閉容器80のフィルタ60側の端部に配置している。このように構成した場合にも、図7に示すようにクッション材51の略中央部に開口部を設けることにより、作動初期において生成される燃焼ガスの流動がクッション材51によって阻害されることが防止できるため、上述した第2変形例に係るシリンダ型ガス発生器1Dとした場合と同様の効果を得ることができる。
(実施の形態4)
図8は、本発明の実施の形態4におけるシリンダ型ガス発生器の内部構造を示す模式断面図である。以下においては、この図8を参照して、本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1Fの内部構造について説明する。なお、上述した本発明の実施の形態3におけるシリンダ型ガス発生器1Cと同様の部分については図中同一の符号を付し、その説明はここでは繰り返さない。
図8に示すように、本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1Fは、ガス発生剤収容室16の内部の所定位置に多孔板18を有している。多孔板18は、有底筒状の形状を有しており、その底板部18bに複数の貫通孔18aを有している。多孔板18は、ガス発生剤52が収容された第1密閉容器80と伝火薬27が収容された第2密閉容器70との間に底板部18bが位置するように円筒状部材11に内挿されており、その周壁部18cの先端が仕切り板40に当て留めされている。
多孔板18に設けられた貫通孔18aは、いずれもガス発生剤52の外形よりも小さく形成されている。多孔板18は、フィルタ室17にガス発生剤52が進入することを防止するための進入防止部材に相当し、好適にはステンレス鋼や鉄鋼、アルミニウム合金、ステンレス合金等の金属製の部材が用いられる。また、多孔板18は、作動時において多孔板18を通過する燃焼ガスの流れを整流する作用も有している。
以上において説明した本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1Fの如くの構成を採用することにより、上述した本発明の実施の形態3におけるシリンダ型ガス発生器1Cとした場合の効果に加え、作動時においてガス発生剤52が多孔板18によって堰き止められてフィルタ室17側に移動することが防止できる効果が得られる。したがって、ガス発生剤52が収容された部分のガス発生剤収容室16の内圧を高く維持することができ、ガス発生剤52の燃焼をさらに促進することができる。また、その一方で、多孔板18の底板部18bをガス発生剤52が収容された第1密閉容器80と伝火薬27が収容された第2密閉容器70との間に配置することで、点火器30による伝火薬27の着火が当該多孔板18によって阻害されることもないため、着火性能が低下することもない。したがって、上記構成を採用することにより、高性能でかつガス出力の調整が容易に行なえるシリンダ型ガス発生器とすることができる。
以下においては、本発明による効果を確認するために行なった検証試験の内容および結果について説明する。以下にその詳細を示す検証試験においては、上述した本発明の実施の形態1および2におけるシリンダ型ガス発生器1A,1Bをそれぞれ実施例1および2として実際に試作し、これと比較するための比較例についても実際に試作してその結果を比較した。なお、比較例に係るシリンダ型ガス発生器においては、仕切り板の環状板部と筒状部とが成す角のうちその小さい方の角(内角)を90°とし、実施例1に係るシリンダ型ガス発生器においては、当該内角を94°とし、実施例2に係るシリンダ型ガス発生器においては、当該内角を86°とした。
実施例1,2および比較例に係るシリンダ型ガス発生器においては、上述した内角以外の条件がすべて同一となるようにした。ここで、仕切り板の材質としては、鉄鋼材(SS400)を使用し、その厚みを0.8mmとし、環状板部の外径をφ16.4mmとした。なお、筒状部の軸方向長さは4mmであり、筒状部の最小内径はいずれもφ8mmである。また、この仕切り板が取付けられるフィルタとしては、銅めっきが施された鉄線(SWRM4)をメリヤス編みしたものをプレスによって押し固めて密度を4.0g/ccとしたものを使用し、軸方向長さは31mmであり、仕切り板が内挿される部分以外の中空部の内径はφ8mmである。また、フィルタの仕切り板の筒状部が内挿される部分の形状は、仕切り板の筒状部の形状とほぼ合致する形状とし、仕切り板のフィルタに対する取付けは、フィルタの中空部に仕切り板の筒状部に内挿しただけの遊嵌により行なった。なお、ガス発生器の寸法は、外径20.0mm、内径16.6mm、全長122.0mmとした。
以上の条件にて実際にシリンダ型ガス発生器を作動させ、仕切り板が圧力隔壁として機能しているか、すなわちフィルタに意図しない変形が生じていないかの確認を行なった。その結果、実施例1,2においては、仕切り板の移動量(すなわち、作動前と作動後における仕切り板のフィルタ側に向けての移動量)は、いずれも僅かに1mm以下であることが確認され、当該仕切り板と円筒状部材との間に囲まれた部分のフィルタが圧縮されていることが確認された。これに対し、比較例においては、仕切り板の移動量が4.5mm異常となり、フィルタの軸方向の全体にわたって大きな歪が生じていることが分かった。
以上の結果より、上述した本発明の実施の形態1および2におけるシリンダ型ガス発生器のように、仕切り板の形状としては、環状板部から連続して延びる筒状部が当該環状板部から遠ざかるにつれて連通孔の開口面積が変化するように(すなわち、断面積が軸方向において一様な直管形状とならないように)縮径または拡径していることが、仕切り板が圧力隔壁として機能するための必須条件であることが分かる。すなわち、比較例の如く仕切り板の筒状部の形状を直管形状とした場合には、内圧の上昇に伴って仕切り板の筒状部に加わる力が円筒状部材の径方向に沿って発生し、その結果、円筒状部材とフィルタとの接触部分に加わる仕切り板に対するブレーキ力も局所的に小さいものとなってしまい、当該ブレーキ力が不足して仕切り板の移動が停止せずにフィルタが大きく破損してしまう結果を招いているものと推察される。したがって、上述した本発明の実施の形態1および2におけるシリンダ型ガス発生器の如くの構成とすることにより、仕切り板をかしめ固定せずとも仕切り板が圧力隔壁として機能することがはじめて実現されるようになることが確認された。
以上において説明した本発明の実施の形態1ないし4においては、仕切り板の筒状部の形状を円錐板状とした場合を例示して説明を行なったが、当該筒状部の形状はこれに限定されるものではなく、たとえば断面の形状が湾曲状とされた筒状部としてもよい。いずれにせよ、筒状部の形状としては、内圧の上昇に伴って筒状部に加わる力が円筒状部材の径方向および軸方向のいずれにも交差する方向に作用するような形状とされていればよく、当該筒状部の内周面がハウジングの軸方向と平行に配置されていなければよい。
また、上記本発明の実施の形態1および2においては、軸方向の両端にまで達する中空部が形成されたフィルタを使用したシリンダ型ガス発生器を例示して説明を行なったが、フィルタの形状としては、少なくともガス発生剤収容室側の端面にまで達する中空部が形成されたものであればその使用が可能であり、閉塞部材側の端面にまで中空部が達していない形状のフィルタを使用することも可能である。
また、上記本発明の実施の形態1ないし4においては、伝火薬およびガス発生剤が密閉容器に収容されてなるシリンダ型ガス発生器を例示して説明を行なったが、これら伝火薬およびガス発生剤は、必ずしも密閉容器に収容されている必要はなく、カップ状部材や円筒状部材に直接充填されて収容されていてもよい。ただし、その場合には、これら伝火薬やガス発生剤が吸湿しないように、ハウジング自体に別途気密処理を施すことが必要になる。
また、上記本発明の実施の形態1ないし4においては、ガス発生剤の燃焼を促進させるために伝火薬が装填されてなるシリンダ型ガス発生器を例示して説明を行なったが、当該伝火薬は必ずしも必須の構成ではなく、燃焼開始のためのガス発生剤の感度を向上させること等によって伝火薬の装填を不要とすることも可能である。また、伝火薬をシリンダ型ガス発生器に装填する構成を採用する場合にも、当該伝火薬を点火器に一体化させて組付けることも可能である。
また、上記本発明の実施の形態1ないし4においては、本発明をサイドエアバッグ装置に組み込まれるシリンダ型ガス発生器に適用した場合を例示して説明を行なったが、本発明の適用対象はこれに限られるものではなく、助手席用エアバッグ装置に組み込まれるシリンダ型ガス発生器や、シリンダ型ガス発生器と同様に長尺状のガス出力部を有するいわゆるT字型のガス発生器にもその適用が可能である。
なお、上記本発明の実施の形態1ないし4において示したシリンダ型ガス発生器の特徴的な構成は、装置構成上、許容される範囲で当然に相互に組み合わせることが可能である。
このように、今回開示した上記各実施の形態およびその変形例はすべての点で例示であって、制限的なものではない。本発明の技術的範囲は請求の範囲によって画定され、また請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
1A〜1F シリンダ型ガス発生器、10 ハウジング、11 円筒状部材、12 ガス噴出口、13a〜13c かしめ部、14 閉塞部材、14a 溝、14b 凸部、14c 凹部、15 点火室、16 ガス発生剤収容室、17 フィルタ室、18 多孔板、18a 貫通孔、18b 底板部、18c 周壁部、20 ホルダ、21 溝、22 貫通部、24 樹脂成形部、25 カップ状部材、25a 開口部、27 伝火薬、30 点火器、31 点火部、32 端子ピン、40 仕切り板、41 環状板部、42 筒状部、43 連通孔、51 クッション材、52 ガス発生剤、60 フィルタ、61 中空部、70 第2密閉容器、71 カップ部、72 キャップ部、73 収容空間、80 第1密閉容器、81 カップ部、82 キャップ部、83 収容空間。

Claims (11)

  1. ガス発生剤が収容されたガス発生剤収容室およびフィルタが収容されたフィルタ室を内部に含む長尺筒状のハウジングと
    前記ハウジングに内挿され、前記ハウジングの内部の空間を軸方向に前記ガス発生剤収容室と前記フィルタ室とに区画する仕切り部材と
    前記ハウジングに組付けられ、作動することで前記ガス発生剤を燃焼させるための火炎を発生する点火器とを備え、
    前記ハウジングは、前記フィルタ室を規定する部分にガスを噴出するためのガス噴出口を有し、
    前記フィルタは、前記ハウジングの軸方向に沿って延び、少なくとも前記ガス発生剤収容室側の端面に達する中空部を有する部材からなり、
    前記仕切り部材は、前記フィルタの前記ガス発生剤収容室側の端面を覆う環状板部と、前記環状板部の内周縁から前記フィルタの前記中空部内に向けて連続して延び、前記フィルタの前記端面寄りの内周面を覆うとともに当該内周面に接触する筒状部と、前記筒状部の内周面によって規定され、前記ガス発生剤収容室と前記フィルタ室とを連通する単一の連通孔とを含み、
    前記筒状部の径方向における寸法および前記筒状部によって覆われた部分の前記フィルタの内周面の径方向における寸法が、前記環状板部から遠ざかるにつれて変化していることにより、前記連通孔の開口面積が、前記環状板部から遠ざかるにつれて変化している、ガス発生器。
  2. 前記筒状部は、前記環状板部から遠ざかるにつれて前記連通孔の開口面積が減少するように徐々に縮径している、請求項1に記載のガス発生器。
  3. 前記筒状部は、前記環状板部から遠ざかるにつれて前記連通孔の開口面積が増加するように徐々に拡径している、請求項1に記載のガス発生器。
  4. 前記仕切り部材が、前記ハウジングに嵌合されている、請求項1から3のいずれかに記載のガス発生器。
  5. 前記仕切り部材が、前記ハウジングに遊嵌されている、請求項1から3のいずれかに記載のガス発生器。
  6. 前記フィルタは、内部に空隙が含まれるように金属線材を円筒状に押し固めたものである、請求項1から5のいずれかに記載のガス発生器。
  7. 前記仕切り部材と前記フィルタとを前記ハウジングの軸方向に沿って当該軸方向と直交する面に投影した場合に、前記フィルタの投影領域の内縁が、前記仕切り部材の投影領域の内縁よりも内側に位置していない、請求項1から6のいずれかに記載のガス発生器。
  8. 前記ガス発生剤は、前記ハウジングの内部に挿入されることで前記ガス発生剤収容室内に位置する第1密閉容器に封入されている、請求項1から7のいずれかに記載のガス発生器。
  9. 前記点火器が作動することによって生じる火炎を前記ガス発生剤に伝達するための伝火薬をさらに備え、
    前記伝火薬は、前記ハウジングの内部に挿入された第2密閉容器に封入されている、請求項1から8のいずれかに記載のガス発生器。
  10. 前記点火器は、前記ハウジングの内部の空間に面するように前記ハウジングの軸方向の一端部に配置され、
    前記フィルタは、前記ハウジングの内部の空間のうち、前記ハウジングの軸方向の他端部寄りの位置に配置され、
    前記ガス発生剤は、前記フィルタが配置された位置よりも前記ハウジングの前記一端部寄りの位置に配置されている、請求項1から9のいずれかに記載のガス発生器。
  11. 前記点火器は、前記ハウジングの内部の空間に面するように前記ハウジングの軸方向の一端部に配置され、
    前記ガス発生剤は、前記ハウジングの内部の空間のうち、前記ハウジングの軸方向の他端部寄りの位置に配置され、
    前記フィルタは、前記ガス発生剤が配置された位置よりも前記ハウジングの前記一端部寄りの位置に配置されている、請求項1から9のいずれかに記載のガス発生器。
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