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JP2010241615A - 圧電磁器組成物 - Google Patents

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JP2010241615A
JP2010241615A JP2009089249A JP2009089249A JP2010241615A JP 2010241615 A JP2010241615 A JP 2010241615A JP 2009089249 A JP2009089249 A JP 2009089249A JP 2009089249 A JP2009089249 A JP 2009089249A JP 2010241615 A JP2010241615 A JP 2010241615A
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Atsushi Sasaki
淳 佐々木
Masaya Kawabe
雅也 川辺
Takatoshi Hashimoto
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NEC Tokin Corp
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Abstract


【課題】 鉛を含有せず、キュリー点の値と圧電特性の両方が優れた圧電磁器組成物を提供する。
【解決手段】 化学式:xBaTiO3−y(Bi0.5Na0.5)TiO3−zMNbO3(ただしx、y、zが0.50≦x≦0.95、0.04≦y≦0.45、0.01≦z≦0.10、x+y+z=1、x,y,zは化学当量、Mは1価の金属元素)にて表されるペロブスカイト構造化合物を含むことを特徴とする圧電磁器組成物とする。この組成範囲の3成分からなる圧電磁器組成物とすることにより、キュリー点と圧電定数d33の両方の値がともに優れた圧電磁器組成物を得ることができる。
【選択図】 なし

Description

本発明は圧電磁器組成物に関し、とくにチタン酸バリウムを含有し、鉛(Pb)を含まない圧電磁器組成物に関する。
従来、アクチュエータや超音波モータなどの駆動素子などに用いられる圧電磁器組成物としては、2成分で構成されるPZT(PbTiO3−PbZrO3)系セラミックスや、3成分で構成されるPCM(PbTiO3−PbZrO3−Pb(Mg0.5Nb0.5)TiO3)系セラミックスが主に用いられてきた。しかし、これらの圧電磁器組成物はいずれも鉛を主成分とするものであり、原料比では酸化鉛に換算して60wt%以上となる鉛成分が含まれている。しかしながら、鉛が環境中に拡散すると様々な汚染を引き起こす可能性が指摘されており、このため鉛を一切含有せず、しかも圧電特性に優れた圧電磁器組成物の開発が求められていた。
鉛を含有しない圧電磁器組成物としては、特許文献1に記載の組成の材料が知られている。この圧電磁器組成物は、正方晶系ペロブスカイト構造化合物であるチタン酸バリウムBaTiO3、菱面晶系ペロブスカイト構造化合物であるチタン酸ビスマスナトリウム(Bi0.5Na0.5)TiO3、および斜方晶系ペロブスカイト構造化合物であるニオブ酸ナトリウムNaNbO3などからなる、互いに結晶構造の異なる3成分により構成される圧電磁器組成物である。特許文献1は、これら3成分のBaTiO3、(Bi0.5Na0.5)TiO3、NaNbO3の含有量をそれぞれ特定の範囲とすることにより、鉛を含有しない組成でありながら、圧電磁器組成物としての圧電特性を向上させたことを特徴としている。
特開2002−220280号公報
特許文献1における、前記BaTiO3、(Bi0.5Na0.5)TiO3、NaNbO3の3成分からなる圧電磁器組成物は、以下の式(1)に示される組成範囲のものである。
xBaTiO3−y(Bi0.5Na0.5)TiO3−zNaNbO3 (1)
ただし0<x≦0.40、0.40<y≦0.99、0<z<0.20、x+y+z=1
一般に特許文献1に記載の圧電磁器組成物が含有する3成分のうち(Bi0.5Na0.5)TiO3を多く含む化合物はキュリー点が比較的高いことが知られており、またBaTiO3を多く含む化合物は圧電特性の指標の一つである圧電定数d33や電気機械結合係数krの値が比較的高いことが知られている。従って、これらの3成分の含有比率を最適化することにより、圧電磁器組成物として使用するに際して十分に高いキュリー点を有し、なおかつ圧電特性についても優れ、さらに鉛を含有しない圧電磁気組成物を作製することができると期待される。
ここで式(1)から分かるように、特許文献1に記載の圧電磁器組成物は含有する3成分のうち、(Bi0.5Na0.5)TiO3を最も多く含む化合物である。以下、圧電磁器組成物が最も多く含有する化合物をその主成分、それ以外の化合物を副成分と称する。特許文献1に記載された一連の実施例によると、いずれの実施例においても菱面晶系のペロブスカイト構造化合物である(Na0.5Bi0.5)TiO3の含有量が卓越した結晶組成について実験している。つまり特許文献1はキュリー点の高い化合物である(Na0.5Bi0.5)TiO3を主成分として、これにBaTiO3およびNaNbO3などを副成分として添加したものであり、あくまで(Na0.5Bi0.5)TiO3を主成分とする化合物の範囲内において圧電特性の向上を図ったものと考えることができる。
前記のように(Na0.5Bi0.5)TiO3はキュリー点については比較的高い化合物であるが、一方で圧電定数d33などの圧電特性においてはさほど高い値は得られない。ここで、一般に圧電磁器組成物を使用する上では圧電特性の値は大きければ大きいほどよく、ユーザから望まれる圧電定数の向上に対する要求には上限がない。しかしながら、特許文献1のように圧電特性がさほど高くない化合物を主成分として、他の化合物を副成分として添加することで圧電特性の向上を図る方法では、圧電定数d33などの特性向上において自ずと限界があり、ユーザが望むような高い圧電定数d33などを示す圧電磁器組成物を得ることは困難であった。
上記の課題を解決するために、本発明では圧電磁器組成物の圧電特性を向上させる手法を転換して、特許文献1の場合とは異なるアプローチをとることにより、圧電定数d33などの圧電特性において、従来よりも高い値を示す圧電磁器組成物を得るに至ったものである。
圧電磁器組成物に必要とされるキュリー点の値は、通常はそれを用いる製品の使用温度によって決定される。ここで、圧電磁器組成物の主要な用途であるアクチュエータ、超音波モータなどの駆動素子などとして用いられる場合は、キュリー点が120℃以上であることが一般的に必要な条件である。ここで30℃のマージンを見込んで、キュリー点が150℃以上の圧電磁器組成物を提供することができるならば、多くの場合は実用上問題がない。従ってキュリー点の値が150℃以上であることが、前記課題を解決する圧電磁器組成物が満たすべき条件となる。
以上を踏まえて発明者らが鋭意努力した結果、特許文献1で用いた(Na0.5Bi0.5)TiO3に代えて、圧電特性に優れた化合物である、BaTiO3を圧電磁器組成物の主成分として選択する構成とするに至った。そして、この主成分に対して(Na0.5Bi0.5)TiO3およびMNbO3(Mは1価の金属元素)などを副成分として添加することにより、BaTiO3におけるキュリー点が低いという問題を解決し、キュリー点の値が150℃以上となる圧電磁器組成物を実現することができることを見いだした。この方針に基づいて実際に作製した圧電磁器組成物は、使用温度範囲の面では問題がなく、しかも特許文献1に記載の圧電磁器組成物と比較して、より優れた圧電特性が得られるものであることが判明した。
本発明は以上の方針に基づいて具体的な組成を決定したものであり、BaTiO3、(Na0.5Bi0.5)TiO3およびMNbO3(Mは1価の金属元素)の3成分のペロブスカイト構造化合物からなる圧電磁器組成物である。これら3成分の化合物の中では主成分であるBaTiO3が含有量の最も多い組成であって、その含有量はモル当量で0.5以上である。本発明によれば、キュリー点の値が150℃以上と実用上問題とならない値であり、しかも従来よりも圧電特性が優れた圧電磁器組成物を提供することができる。なお圧電特性の優劣を評価するためには複数の指標が存在するが、本発明ではユーザからの特性向上の要求が高い指標である、圧電定数d33の値をその評価のために使用している。なお本発明の圧電磁器組成物において副成分である前記のMNbO3に含有されるM(1価の金属元素)としては、特許文献1に記載のあるナトリウム(Na)の他に、カリウム(Ka)や、NaとKaとを共添加した化合物も好適に用いることができる。
即ち、本発明は、酸素以外の構成元素が、
化学式:xBaTiO3−y(Bi0.5Na0.5)TiO3−zMNbO3(ただしx、y、zが0.50≦x≦0.95、0.04≦y≦0.45、0.01≦z≦0.10、x+y+z=1、x,y,zは化学当量、Mは1価の金属元素)
にて表される比率で含まれる組成であることを特徴とする圧電磁器組成物である。
また、本発明は、前記MがNaおよびKから選択される1種以上の金属元素であることを特徴とする圧電磁器組成物である。
前記MがNa、K、およびNa0.50.5から選択されるいずれかであることを特徴とする圧電磁器組成物である。
本発明によれば、BaTiO3、(Na0.5Bi0.5)TiO3およびMNbO3(Mは1価の金属元素)の3成分のペロブスカイト構造化合物からなる圧電磁器組成物であって、このうちBaTiO3を主成分として、副成分である他の2種類の化合物よりも多くの割合で含有される組成とする。具体的には、前記3成分のペロブスカイト構造化合物の含有量をそれぞれx,y,zとしたとき、0.50≦x≦0.95、0.04≦y≦0.45、0.01≦z≦0.10、x+y+z=1、x,y,zは化学当量、とする組成範囲である。こうして作製された圧電磁器組成物は、鉛を含まず、キュリー点の値が150℃以上と実用上問題とならない十分に高い値であり、しかも従来よりも圧電特性が優れた圧電磁器組成物である。具体的には、本発明により、圧電特性の指標である圧電定数d33の値がとくに優れた圧電磁器組成物を提供することができる。
表1の実施例および比較例の各組成を表す三元図。 表2の実施例および比較例の各組成を表す三元図。 表3の実施例および比較例の各組成を表す三元図。
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
本発明における圧電磁器組成物は、酸素以外の構成元素が、以下の式(2)にて表される比率で含まれる組成範囲のものである。
xBaTiO3−y(Bi0.5Na0.5)TiO3−zMNbO3 (2)
(ただしx、y、zが0.50≦x≦0.95、0.04≦y≦0.45、0.01≦z≦0.10、x+y+z=1、x,y,zは化学当量、Mは1価の金属元素)
前記組成の圧電磁器組成物において、主成分はBaTiO3であり、(Bi0.5Na0.5)TiO3およびMNbO3は副成分である。主成分であるBaTiO3はキュリー点の値は高くないものの、圧電特性においては優れた値を示す化合物である。本発明はこの主成分に対してキュリー点の高い化合物である(Bi0.5Na0.5)TiO3を添加することにより、キュリー点の値の向上を図ったものである。
ここで(Bi0.5Na0.5)TiO3とともに添加されるMNbO3は、キュリー点の値や圧電特性において、他の2種類の化合物に比べて単独では特段の優れた特性を示すものではない。しかし主成分のBaTiO3が正方晶系、副成分の(Bi0.5Na0.5)TiO3が菱面晶系であるのに対し、MNbO3は、斜方晶系のペロブスカイト構造化合物であるという結晶構造の相違がある。このため3つ目の成分としてMNbO3を添加することにより、本発明の圧電磁器組成物は、構造中に結晶構造が異なる領域どうしが互いに接してできる境界面を多く有するようになると考えられる。この境界面の存在は、圧電特性を向上させる上で有効であるということが判明しており、この3つ目の成分を添加することにより、圧電定数d33を含む圧電特性の値を増加させることができる。なお前記Mは1価の金属元素であるが、KもしくはNaとすることが好適であり、またKとNaとを任意の割合で共添加した場合も好適である。
ここで圧電特性を評価する指標としては、アクチュエータや超音波モータなどの駆動素子といった圧電磁器組成物の用途を勘案すると、分極軸と同一方向に直流電界を印加した場合の分極軸方向の変位を示す指標である、圧電定数d33の値に着目することが適切である。圧電定数d33は印加した直流電界に対する単位長さあたりの圧電変位の大きさを表す量であり、このときの分極軸の方向は、圧電磁器組成物を用いて各種の圧電デバイスを作製したときに、多くの場合に変位を取り出す向きである。従って、この向きの圧電特性を表す指標である圧電定数d33の値は、圧電磁器組成物を用いて作製する製品の特性について検討する際に重要な指標となる。以上を踏まえ、本発明では作製した圧電磁器組成物の評価方法として、そのキュリー点(Tc)の値と圧電定数d33の値の2つの指標を評価することとしている。
また、本発明の圧電磁器組成物がこれらの指標について満たすべき値は、キュリー点が150℃、圧電定数d33が200pC/Nである。このうちキュリー点の満たすべき値が150℃であるのは前記の理由のためである。一方、圧電定数d33が満たすべき値が200pC/Nであるのは、副成分を加えない、単体のBaTiO3の圧電定数d33の値が測定の結果、200pC/Nであったことによる。この単体のBaTiO3のキュリー点の値は120℃であって不十分な値であるが、キュリー点の値を改善した本発明の圧電磁器組成物が、圧電定数d33の値において、この単体のBaTiO3の値を下回るようでは圧電特性の改善の効果が得られたと認定することはできない。従って、本発明の圧電磁器組成物が満たすべき圧電定数d33の最低値をこの200pC/Nに定めて、本発明ではキュリー点および圧電定数d33の両方において、単体のBaTiO3の場合を上回ることをその目標とした。
(実施例1)
前記式(2)で表される本発明の圧電磁器組成物において、前記MNbO3に含まれる1価の金属元素MをK(カリウム)とした場合の、本発明における圧電磁器組成物を以下の方法により作製した。まず出発原料として、いずれも純度99.9%以上のBaCO3、TiO2、Na2CO3、Bi23、K2CO3、Nb25をそれぞれ用意し、これらを所定の比率となるように混合した。具体的には最終的な圧電磁器組成物の組成が0.95BaTiO3−0.04(Bi0.5Na0.5)TiO3−0.01KNbO3となるように、各々の出発原料の比率を化学量論的に配合した。
次いでこれらの混合物を、ボールミルを用いて20時間混合した。得られた粉末状の混合物を900℃の条件で1時間保持して仮焼を行い、その後ボールミルにより20時間粉砕を行った。次に、バインダーとしてポリビニルアルコールを加えて造粒し、さらに1ton/cm2の圧力を加え、直径20mm、厚さ1mmの円板状に加圧成形した。この円板状の成形体を温度1200℃にて2時間保持して焼成を行った。これにより得られた焼結体の両面に銀電極をそれぞれ設け、100℃に保持したシリコンオイル中で4kv/mmの直流電圧を電極間に加え、厚さ方向に分極して円板状の圧電磁器組成物を作製して実施例1とした。なお、この方法にて作製した圧電磁器組成物の試料数は5個である。
ここで圧電磁器組成物を作製する際の前記の仮焼および焼成の温度は、昇温条件を変更しつつ昇温実験を繰り返し行うことにより得られた最適値である。前記の仮焼が900℃、焼成が1200℃の昇温条件の場合に、BaTiO3−(Bi0.5Na0.5)TiO3−KNbO3の3元系の化合物からなる圧電磁器組成物が作製されて、なおかつキュリー点や圧電定数d33の値は最も大きくなる。なお、得られた焼結体が実際に3相の化合物となっていることは、X線回折装置による解析によって確認している。
実施例1の各試料について、キュリー点(Tc)の値(℃)と圧電定数d33の値(pC/N)の測定をそれぞれ行った。ここでキュリー点の値はLCRメータによって圧電磁器組成物の容量の温度特性を測定し、その際のピーク温度から決定した。また圧電定数d33の値はd33メータにより測定した。これにより得られた測定値を表1に実施例1として示す。なお表1に示した実施例1の値は5個の試料に関する測定値の平均値である。表1のx、y、zの項目は、各条件におけるBaTiO3、(Bi0.5Na0.5)TiO3、KNbO3の含有量である。またMは1価の金属元素の種類を示すもので、表1の場合はK(カリウム)である。
(実施例2〜6、比較例1〜10)
実施例1と同様に、1価の金属元素をKとした場合の、本発明における圧電磁器組成物を作製した。実施例1の場合とは、各々の出発原料の比率が各実施例、比較例においてそれぞれ異なっている。出発原料の混合、仮焼後の粉砕、造粒、加圧成形、銀電極の形成、分極の各々の工程は実施例1の場合と全く同じである。ただし仮焼および焼成の際の温度条件は実施例1とは異なっており、それぞれの組成比率において、昇温条件を変更しつつ昇温実験を繰り返し行って得られた最適値とした。具体的には、仮焼温度は800℃〜1100℃、焼成温度は1100℃〜1400℃の範囲の中の最適値である。なお、作製した圧電磁器組成物の試料数は、各実施例、比較例ともに実施例1の場合と同じく5個である。
これらの各実施例、比較例において、実施例1の場合と同じくキュリー点(Tc)の値(℃)と圧電定数d33の値(pC/N)の測定をそれぞれ行った。これにより得られた各々の測定値を表1に示す。なお表1に示した各実施例、比較例の値は5個の試料に関する測定値の平均値である。また比較例1〜3においてはMNbO3に相当する化合物の添加量がゼロであるので、金属元素Mの項目には「−」と記入している。なお比較例1は単体のBaTiO3の場合であり、その圧電定数d33の値は前記のように200pC/Nである。
表1によると、本発明の範囲内の組成である実施例1〜6の場合は、いずれもキュリー点の値が150℃以上、かつ圧電定数d33の値が200pC/N以上であり、良好な値が得られていることが分かる。一方、本発明の組成範囲を外れた組成の比較例1〜9の場合は、キュリー点もしくは圧電定数d33の値のいずれかが前記条件を満たしておらず、圧電磁器組成物として不十分な特性しか得られていないことが分かる。これらの実施例および比較例により、本発明の組成範囲の圧電磁器組成物はそれ以外の組成では得られない、とくに優れたキュリー点の値と圧電特性とを有するものといえる。
また、実施例1〜6、比較例1〜10の各々の3元系の圧電磁器組成物の組成を図1に示した。図1は、BaTiO3−(Bi0.5Na0.5)TiO3−KNbO3の3元系の化合物に関する三元図であり、実施例1〜6を「○」、比較例1〜10を「×」としてそれぞれ示している。また図1の右下の直線で囲まれた領域は本発明の組成の範囲を示したものである。実施例1〜6はいずれもこの領域の内部もしくは境界線上に位置しているが、各実施例ではキュリー点および圧電定数d33の値の双方で良好な値が得られている。逆にこの領域の外に位置する比較例1〜9の場合は、キュリー点と圧電定数d33の値の双方が共に良好な値となることはない。このように、図1からも本発明の組成範囲の圧電磁器組成物が、それ以外の組成の場合と比べて優れた温度特性および圧電特性を示すことが分かる。
(実施例7〜13、比較例11〜21)
前記実施例1〜6、比較例1〜10とは異なり、前記MNbO3に含まれる1価の金属元素MをNa(ナトリウム)とした場合の、本発明における圧電磁器組成物を作製した。出発原料にK2CO3が含まれないことを除けば、作成条件は出発原料の混合に始まり、仮焼、仮焼後の粉砕、造粒、加圧成形、焼成、銀電極の形成、分極の各々の工程も含めて前記実施例および比較例の場合と全く同じである。またこの際の仮焼温度は800℃〜1100℃、焼成温度は1100℃〜1400℃の範囲の中の最適値である。なお、作製した圧電磁器組成物の試料数は、各実施例、比較例ともに5個とした。
これらの各実施例、比較例において、前記実施例および比較例の場合と同じくキュリー点(Tc)の値(℃)と圧電定数d33の値(pC/N)の測定をそれぞれ行った。これにより得られた各々の測定値を表2に示す。なお表2に示した各実施例、比較例の値は5個の試料に関する測定値の平均値である。また表2における1価の金属元素Mの種類はいずれもNa(ナトリウム)である。
表2によると、本発明の範囲内の組成である実施例7〜13の場合は、いずれもキュリー点の値が150℃以上、かつ圧電定数d33の値が200pC/N以上であり、良好な値が得られていることが分かる。一方、本発明の組成範囲を外れた組成の比較例11〜21の場合は、キュリー点もしくは圧電定数d33の値のいずれかが前記条件を満たしておらず、圧電磁器組成物として不十分な特性しか得られていないことが分かる。これらの実施例および比較例により、本発明の組成範囲の圧電磁器組成物はそれ以外の組成では得られない、とくに優れたキュリー点の値と圧電特性とを有するものといえる。
なお、表2の比較例11〜13はいずれも特許文献1に記載された組成であり、主成分は(Bi0.5Na0.5)TiO3であって、その含有量が卓越していることが特徴である。比較例11〜13においてはキュリー点の値は291℃〜320℃と非常に高いものの、圧電定数d33の値は95pC/N〜127pC/Nであり、本発明において条件とした200pC/N以上を満足するものではない。従って、先行特許1に記載の方法では、本発明で目標とした圧電磁器組成物が満たすべき条件を得ることはできない。
また、実施例7〜13、比較例11〜21の各々の3元系の圧電磁器組成物の組成を図2に示した。図2は、BaTiO3−(Bi0.5Na0.5)TiO3−NaNbO3の3元系の化合物に関する三元図であり、実施例7〜13を「○」、比較例11〜21を「×」としてそれぞれ示している。また図2の右下の直線で囲まれた領域は本発明の請求範囲の組成を示したものである。実施例7〜13はいずれもこの領域の内部もしくは境界線上に位置しているが、各実施例ではキュリー点および圧電定数d33の値の双方で良好な値が得られている。逆にこの領域の外に位置する比較例11〜21の場合は、キュリー点と圧電定数d33の値の双方が共に良好な値となることはない。このように、図2からも本発明の組成範囲の圧電磁器組成物が、それ以外の組成の場合と比べて優れた優れた温度特性および圧電特性を示すことが分かる。
(実施例14〜19、比較例22〜30)
前記各実施例、比較例とは異なり、前記MNbO3に含まれる1価の金属元素MをKとNaの共添加であるK0.5Na0.5とした場合の、本発明における圧電磁器組成物を作製した。作成条件は出発原料の混合に始まって、仮焼、仮焼後の粉砕、造粒、加圧成形、焼成、銀電極の形成、分極の各々の工程も含めて前記実施例および比較例の場合と全く同じである。またこの際の仮焼温度は800℃〜1100℃、焼成温度は1100℃〜1400℃の範囲の中の最適値である。なお、作製した圧電磁器組成物の試料数は、各実施例、比較例ともに5個とした。
これらの各実施例、比較例において、前記実施例および比較例の場合と同じくキュリー点(Tc)の値(℃)と圧電定数d33の値(pC/N)の測定をそれぞれ行った。これにより得られた各々の測定値を表3に示す。なお表3に示した各実施例、比較例の値は5個の試料に関する測定値の平均値である。また表3における1価の金属元素Mの種類はいずれもK0.5Na0.5である。
表3によると、本発明の範囲内の組成である実施例14〜19の場合は、いずれもキュリー点の値が150℃以上、かつ圧電定数d33の値が200pC/N以上であり、良好な値が得られていることが分かる。一方、本発明の組成範囲を外れた組成の比較例22〜30の場合は、キュリー点もしくは圧電定数d33の値のいずれかが前記条件を満たしておらず、圧電磁器組成物として不十分な特性しか得られていないことが分かる。これらの実施例および比較例により、本発明の組成範囲の圧電磁器組成物はそれ以外の組成では得られない、とくに優れたキュリー点の値と圧電特性とを有するものといえる。
また、実施例14〜19、比較例22〜30の各々の3元系の圧電磁器組成物の組成を図3に示した。図3は、BaTiO3−(Bi0.5Na0.5)TiO3−K0.5Na0.5NbO3の3元系の化合物に関する三元図であり、実施例14〜19を「○」、比較例22〜30を「×」としてそれぞれ示している。また図3の右下の直線で囲まれた領域は本発明の請求範囲の組成を示したものである。実施例14〜19はいずれもこの領域の内部もしくは境界線上に位置しているが、各実施例ではキュリー点および圧電定数d33の値の双方で良好な値が得られている。逆にこの領域の外に位置する比較例22〜30の場合は、キュリー点と圧電定数d33の値の双方が共に良好な値となることはない。このように、図3からも本発明の組成範囲の圧電磁器組成物が、それ以外の組成の場合と比べて優れた優れた温度特性および圧電特性を示すことが分かる。
Figure 2010241615
Figure 2010241615
Figure 2010241615
表1〜表3によると、MNbO3に含まれる1価の金属元素Mが、K、Naおよび両者の共添加のいずれの場合においても、x、y、zがそれぞれ0.50≦x≦0.95、0.04≦y≦0.45、0.01≦z≦0.10の範囲で、圧電定数d33の値が200pC/N以上、キュリー点の値が150℃以上となった。また前記xが0.50より小さい場合は圧電定数d33の値が200pC/Nよりも小さくなり、逆にxが0.95より大きい場合はキュリー点の値が低下した。また前記yが0.50以上の場合はxが0.50より小さくなることから圧電定数d33の値が小さくなり、yが0.04より小さい場合はキュリー点の値が低下した。さらに前記zが0.10より大きい場合は圧電定数d33の値に低下が見られた。このように、前記実施例および比較例によれば、圧電定数d33の値とキュリー点の値の両方を良好な特性とするためには、圧電磁器組成物が含有する3成分の組成を本発明の組成範囲内とすることが必要である。
なお、前記各実施例、比較例は、前記MがK、Na、もしくはK0.5Na0.5のいずれかの場合に関するものである。前記各実施例ではKとNaをそれぞれ単独に添加した場合も、共添加の場合も、ともに良好な結果が得られている。ここでKとNaとを共添加した場合にとくに悪化傾向が見られないことから、KとNaとを任意の比率で共添加した場合にも、やはり良好な圧電磁器組成物を提供することができると考えられる。
以上説明したように、本発明に係る圧電磁器組成物においては、いずれも鉛を含まない化合物である、BaTiO3、(Bi0.5Na0.5)TiO3、およびMNbO3(Mは1価の金属元素)の3成分のペロブスカイト構造化合物からなるものとするとともに、それぞれの含有量を特定の組成範囲に限定するものとする。これにより、圧電定数d33の値が200pC/N以上、キュリー点の値が150℃以上の優れた特性を有する圧電磁器組成物を提供することができる。また、上記説明は、本発明の実施の形態について説明するためのものであって、これによって特許請求の範囲に記載の発明を限定するものではない。また、本発明の各部構成は上記実施の形態に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能である。

Claims (3)

  1. 酸素以外の構成元素が、
    化学式:xBaTiO3−y(Bi0.5Na0.5)TiO3−zMNbO3(ただしx、y、zが0.50≦x≦0.95、0.04≦y≦0.45、0.01≦z≦0.10、x+y+z=1、x,y,zは化学当量、Mは1価の金属元素)
    にて表される比率で含まれる組成であることを特徴とする圧電磁器組成物。
  2. 前記MがNaおよびKから選択される1種以上の金属元素であることを特徴とする請求項1に記載の圧電磁器組成物。
  3. 前記MがNa、K、およびNa0.50.5から選択されるいずれかであることを特徴とする請求項2に記載の圧電磁器組成物。
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