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JP2010160934A - 燃料電池システムおよび電子機器 - Google Patents

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JP2010160934A JP2009001545A JP2009001545A JP2010160934A JP 2010160934 A JP2010160934 A JP 2010160934A JP 2009001545 A JP2009001545 A JP 2009001545A JP 2009001545 A JP2009001545 A JP 2009001545A JP 2010160934 A JP2010160934 A JP 2010160934A
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Abstract

【課題】アノード極での反応により発生した生成ガスを、カソード極の空気と混合されることなく、外部へ排出することができ、高出力化および出力安定性向上が実現された燃料電池システムおよびこれを備える電子機器を提供する。
【解決手段】燃料電池スタックとガス集約部を備え、燃料電池スタックの単位電池のアノード極とガス集約部とは、燃料電池スタックに設けられる生成ガス排出用流路によって連通している燃料電池システムおよびこれを備える電子機器である。燃料電池スタックは、好ましくはカソード極、電解質膜、アノード極およびアノード集電層をこの順で備える2以上の単位電池を同一平面上に配置してなる燃料電池層を1以上含み、ガス集約部は、内部に空洞部を有し、空洞部と連通する開口部を備える。また、空洞部と少なくとも1つの燃料電池層が有するすべての単位電池のアノード極とが生成ガス排出用流路によって連通していることが好ましい。
【選択図】図1

Description

本発明は、出力向上および安定性向上が可能な燃料電池システムおよびこれを搭載した電子機器に関する。
近年、情報化社会を支える携帯電子機器の小型電源として、単独の発電装置として高い発電効率が得られる可能性を秘めていることから、燃料電池に対する期待が高まっている。燃料電池は、アノード極で燃料(たとえば水素、メタノール、エタノール、ヒドラジン、ホルマリン、ギ酸など)を酸化し、カソード極で空気中の酸素を還元するという電気化学反応を利用し、携帯電子機器等に電子を供給する化学電池である。
多種ある燃料電池の中でも、電解質膜としてプロトン交換したイオン交換膜を用いる固体高分子型燃料電池(Polymer Electrolyte Membrane Fuel Cell;以下、「PEMFC」という。)は、100℃以下の低温動作においても高い発電効率が得られ、リン酸型燃料電池や固体酸化物型燃料電池等の高温で動作させる燃料電池に比べて外部から熱を与える必要がなく、大掛かりな補機類を必要としないことから、小型電源として実用化の可能性を秘めている。
このようなPEMFCに供給される燃料としては、高圧ガスボンベを用いた水素ガスや、有機液体燃料を改質器により分解して得られる水素ガスと二酸化炭素ガスとの混合ガス等が用いられる。
PEMFCのアノード極にメタノール水溶液を供給し、メタノール水溶液から直接プロトンと電子とを取り出すことにより発電を行なう直接メタノール型燃料電池(Direct Methanol Fuel Cell;以下、「DMFC」という。)は、改質器を必要としないことから、PEMFC以上に小型電源として実用化の可能性を秘めている。さらには、大気圧下で液体であるメタノール水溶液を燃料として用いていることから、高圧ガスボンベを用いることなく、高い体積エネルギ密度を有した燃料を簡易容器で取り扱うことができ、小型電源として安全性に優れるとともに、燃料容器を小さくすることが可能である。そのため、DMFCは、携帯電子機器の小型電源への応用、特に携帯電子機器用の2次電池代替用途という観点から注目が集まっている。
DMFCでは、アノード極およびカソード極でそれぞれ以下のような反応が起きる。
アノード極:CH3OH+H2O→CO2+6H++6e-
カソード極:O2+4H++4e-→2H2
このように、DMFCにおいては、アノード極側で二酸化炭素が気体として生成し、カソード極側では水が生成する。
従来、DMFCにおいては、反応で生成した二酸化炭素ガスを、燃料であるアノード極側のメタノール水溶液の流れに乗せて排出させ、排出される二酸化炭素ガスとメタノール水溶液との混合物を分離するために、別途、気液分離装置などを設けて、分離されたメタノール水溶液を再度燃料として活用することが行なわれてきた。しかし、この場合、燃料電池システムが大型化、重量化してしまうという問題点がある。
この課題に対して、特許文献1は、膜電極アセンブリの燃料極チャンバに設けられた気体透過性層を備える、システム外部に受動的に二酸化炭素を排出可能なDMFCが開示されている。気体透過性層を設けることにより、気液分離装置が不要となり、また、反応で生成した二酸化炭素を燃料極区画から取り除くことができるため、燃料極での反応を妨害し得る二酸化炭素の蓄積を避けることができる。
特表2005−518646号公報
しかしながら、上記特許文献1に記載の膜電極アセンブリにおいて、気体透過性層を介して取り除かれた二酸化炭素は、燃料極区画からは除去されるが、燃料電池システム外部へどのようにして二酸化炭素を排出するかについては記載されていない。燃料電池システム内に二酸化炭素が滞留すると、特に、カソード極(空気極)で反応に使用される空気を供給する方法として、電力消費を抑えるために極力補機を使用せずに受動的な空気供給を行なうパッシブ型燃料電池においては、燃料極区画から除去した二酸化炭素がカソード極(空気極)の空気と混合することにより出力が低下することが課題となる。
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、アノード極(燃料極)での反応により発生した二酸化炭素等の生成ガスを、カソード極(空気極)の空気と混合されることなく、燃料電池システム外部へ排出することができ、もって、高出力化および出力安定性向上が実現された燃料電池システムおよび当該燃料電池システムを備える電子機器(燃料電池搭載電子機器)を提供することである。
本発明は、燃料電池スタックとガス集約部とを備え、燃料電池スタックが有する単位電池のアノード極とガス集約部とは、燃料電池スタックに設けられる生成ガス排出用流路によって連通している燃料電池システムを提供する。本発明において燃料電池スタックは、少なくとも1つの単位電池を含む。本発明の燃料電池スタックにおいて、燃料電池スタックは、好ましくは、カソード極、電解質膜、アノード極およびアノード集電層をこの順で備える2以上の単位電池を同一平面上に配置してなる燃料電池層を1以上含み、ガス集約部は、好ましくは、内部に空洞部を有する中空体であって、該空洞部と連通する開口部を備える。ガス集約部は、単位電池の発電により発生する生成ガスを集約するためのものであり、その開口部は、ガス集約部に集約された生成ガスを、燃料電池システム外部へ排出するためのものである。ここで、本発明の燃料電池システムにおいて、ガス集約部が有する空洞部と、燃料電池層のうち、少なくとも1つの燃料電池層が有するすべての単位電池のアノード極とは、燃料電池スタックに設けられる生成ガス排出用流路によって連通していることが好ましい。
本発明において、燃料電池スタックは、2以上の単位電池を同一平面上に配置してなる燃料電池層と、1以上のスペーサからなるスペーサ層とを、該単位電池のアノード集電層が該スペーサに接するように積層してなる燃料電池を1以上含み、ガス集約部が有する空洞部と、少なくとも1つの燃料電池層が有するすべての単位電池のアノード極とは、該燃料電池の内部に設けられる生成ガス排出用流路によって連通していることが好ましい。
本発明の1つの好ましい形態において、ガス集約部は、少なくとも1つのスペーサ層が有するすべてのスペーサの端部と接続されており、上記生成ガス排出用流路は、単位電池のアノード集電層を厚み方向に貫通する貫通孔と、該貫通孔と連通し、かつ、ガス集約部と接続される端部まで延びる、スペーサに形成される流路と、から構成される。
また、本発明の別の好ましい形態において、ガス集約部は、少なくとも1つの燃料電池層が有するすべての単位電池の端部と接続されており、上記生成ガス排出用流路は、単位電池のアノード極に接するようにアノード集電層内に形成され、ガス集約部と接続される端部まで延びる流路から構成される。このように、生成ガス排出用流路が単位電池内に設けられる場合には、燃料電池スタックは、必ずしもスペーサ層を有していなくともよい。燃料電池スタックがスペーサ層を有しない場合、燃料電池スタックは、2以上の単位電池を同一平面上に配置してなる1つの燃料電池層からなるか、またはこのような燃料電池層を2以上積層することにより構成される。
本発明の燃料電池システムにおいて、燃料電池スタックは、上記燃料電池を2以上積層してなり、ガス集約部は、該燃料電池スタックが有するすべてのスペーサの端部、または燃料電池スタックが有するすべての単位電池の端部と接続されており、ガス集約部が有する空洞部と、該燃料電池スタックが有するすべての単位電池のアノード極とが、各燃料電池の内部に設けられる生成ガス排出用流路によって連通していることが好ましい。また、燃料電池スタックを構成する燃料電池層は、2以上の単位電池を同一平面上に隙間を設けて配置してなることが好ましい。
本発明の燃料電池システムは、1または2以上のガス集約部を備えていてもよいが、ガス集約部のすべては、燃料電池スタックの1つの側面に隣接して配置されることが好ましい。
ガス集約部は、上記開口部と接続される中空状の生成ガス誘導路を備えていることが好ましい。このような生成ガス誘導路は、ガス集約部に集約された生成ガスの燃料電池システムにおける排出位置を調整するのに好適である。
ガス集約部は、上記生成ガス誘導路におけるガス集約部の開口部側とは反対側の開口(ガス排出口)に、有害成分除去フィルタ(排出される生成ガス中の有害成分を除去するためのフィルタ)を備えていてもよい。また、生成ガス誘導路の内壁面は、撥水処理が施されていてもよい。
本発明の燃料電池システムが備える燃料電池スタックにおいて、スペーサ層は、2以上のスペーサを同一平面上に隙間を設けて配置してなるものであってよい。この場合、該燃料電池スタックに含まれる燃料電池において、燃料電池層が有する2以上の単位電池と、スペーサ層が有する2以上のスペーサとは、交差するように配置されることが好ましい。
また、本発明は、上記の燃料電池システムを備える電子機器(燃料電池搭載電子機器)を提供する。燃料電池システムのガス集約部が上記生成ガス誘導路を備える場合において、該生成ガス誘導路は、内部に空洞部を形成した電子機器を構成するいずれかの構成部材からなっていてもよい。
本発明の燃料電池システムを備える電子機器において、生成ガス誘導路におけるガス集約部の開口部側とは反対側の開口(ガス排出口)は、電子機器の外縁に配置されることが好ましい。また、当該開口(ガス排出口)は、電子機器の裏側(当該電子機器の使用時において、その使用者が対向する側とは反対側)に配置されることが好ましい。
本発明の電子機器において、燃料電池システムは、電子機器内において、電子機器外部から、燃料電池システムが備える燃料電池スタックの外面の少なくとも一部へ、空気を供給可能な位置に配置され、燃料電池システムのガス集約部は、電子機器外部から空気が供給される燃料電池スタックの当該外面とは、異なる外面に隣接して配置されることが好ましい。本発明の電子機器は、たとえば、上記燃料電池システムまたは燃料電池スタックを収容する電池収容室を備えるものであってよい。かかる場合、当該電池収容室に上記燃料電池システムまたは燃料電池スタックを搭載することにより、本発明の電子機器(燃料電池搭載電子機器)が構築される。電池収容室は、その内部と電子機器外部とを連通する開口を有していることが好ましい。このような開口は、電池収容室内に収容された燃料電池スタックに空気を供給するための空気取り込み口となる。
本発明によれば、アノード極(燃料極)での反応により発生した二酸化炭素等の生成ガスを、カソード極(空気極)の空気と混合されることなく、燃料電池システム外部へ排出することが可能であり、これにより、生成ガスの混合によりカソード極(空気極)の酸素分圧が低下することを効果的に防止し得る。したがって、本発明によれば、出力密度が高く、出力安定性が向上された燃料電池システムを提供することができる。
このような本発明の燃料電池システムは、電子機器、とりわけ携帯電子機器の電源として好適に適用することができる。
本発明の燃料電池システムの好ましい一例を模式的に示す斜視図である。 図1に示される燃料電池システムを構成する燃料電池スタックを模式的に示す斜視図である。 図2に示される燃料電池スタックのIII−III線における断面図である。 本発明の燃料電池システムを構成する燃料電池スタックの別の好ましい一例を示す断面図である。 図4に示される燃料電池スタックにおいて用いられるアノード集電層の一部を模式的に示す図である。 本発明の燃料電池システムを備える電子機器の好ましい一例を模式的に示す斜視図である。 本発明の燃料電池システムを備える電子機器の好ましい別の一例を模式的に示す図である。 図7に示される電子機器が備える燃料電池システム(生成ガス誘導路を含む)を模式的に示す図である。 実施例1で作製したアノード集電層を示す断面図である。 実施例1で作製したスペーサを示す断面図である。 実施例1で作製した燃料電池の単位を概略的に示す上面図である。
以下、本発明の燃料電池システムおよび電子機器を実施の形態を示してより詳細に説明する。
<<第1の実施形態>>
図1は、本発明の燃料電池システムの好ましい一例を模式的に示す斜視図である。図1に示される燃料電池システム100は、複数の単位電池103を含む燃料電池スタック101と、単位電池の発電により発生する生成ガス(たとえば、燃料としてメタノール水溶液を用いた場合、主として二酸化炭素)を集約するためのガス集約部102との複合体である。このようなガス集約部102を備える燃料電池システム100において、燃料電池スタック101の各単位電池103のアノード極で発生した二酸化炭素等の生成ガスは、燃料電池スタック101内に形成された生成ガス排出用流路(図1において図示せず)を通ってガス集約部102に集約される。集約された生成ガスは、ガス集約部102が有する開口部104に接続された生成ガス誘導路105の末端開口(ガス排出口106)から、燃料電池システム100の外部へ排出される。一方、各単位電池103のカソード極に供給される空気は、燃料電池スタック101の外面(上下面および側面)のうち、ガス集約部102が隣接して設置されていない、いずれか1以上の外面から燃料電池スタック101内部に取り込まれる。
ネルンストの式からも明らかなように、カソード極(空気極)側の酸素分圧が低下すると、単位電池の標準起電力が低下し、燃料電池の出力低下を招く。本実施形態の燃料電池システム100の構成によれば、各単位電池103のアノード極で発生した二酸化炭素等の生成ガスを、カソード極の空気と混合されることなく、燃料電池システム100の外部に排出することができるため、カソード極での酸素分圧の低下による出力低下を防止することが可能となる。また、分離された生成ガスに含有される、メタノール水蒸気がカソード極側へ流入することで生じる内部電流による出力低下も防止することが可能となる。以下、本実施形態の燃料電池システム100を構成する燃料電池スタック101およびガス集約部102について詳細に説明する。
<燃料電池スタック>
(1)燃料電池スタックの構造
図2は、図1に示される燃料電池システム100を構成する燃料電池スタック101を模式的に示す斜視図である。図2を参照して、燃料電池スタック101は、長辺と短辺を有する3つの短冊状の単位電池103を、同一平面上に、各単位電池103の間に隙間130が形成されるように配置してなる第1の燃料電池層110と、長辺と短辺を有する4つの短冊状のスペーサ107を、同一平面上に、各スペーサ107の間に隙間140が形成されるように配置してなる第1のスペーサ層115と、第1の燃料電池層110と同じ構造を有する第2の燃料電池層120と、第1のスペーサ層115と同じ構造を有する第2のスペーサ層125と、をこの順で積層してなる。第1の燃料電池層110と第2の燃料電池層120との間に第1のスペーサ層115を介在させることにより、2つの燃料電池層は、離間して配置されることとなり、当該2つの燃料電池層の間に空間部(当該空間部は、スペーサ間に形成される隙間140を含む。)が形成される。
燃料電池スタック101に用いられている単位電池103は、長辺と短辺を有する短冊形状、より具体的には直方体形状である。第1の燃料電池層110および第2の燃料電池層120において、3つの単位電池103は、同一平面内に、その長辺同士が対向するように、かつ、隣り合う単位電池間に隙間130が形成されるように、平行または略平行に離間して配置されている。同様に、燃料電池スタック101に用いられているスペーサ107は、長辺と短辺を有する短冊形状、より具体的には直方体形状である。第1のスペーサ層115および第2のスペーサ層125において、4つのスペーサ107は、同一平面内に、その長辺同士が対向するように、かつ、隣り合うスペーサ間に隙間140が形成されるように、平行または略平行に離間して配置されている。
第1の燃料電池層110とこれに隣接する第1のスペーサ層115とは、第1の燃料電池層110が有する単位電池103と、第1のスペーサ層115が有するスペーサ107とが交差するように積層され、好ましくは、直交または略直交するように積層される。これにより、スペーサ107と単位電池103とが接触する面積を小さくすることができ、単位電池103が直接、上記空間部に露出する面積を大きくすることができる。このため、単位電池103のカソード極への、空気中の酸素の供給抵抗をより低減させることができ、出力特性を良好に維持することができる。第1のスペーサ層115とこれに隣接する第2の燃料電池層120、および、第2の燃料電池層120とこれに隣接する第2のスペーサ層125についても同様である。また、本実施形態の燃料電池スタック101において、第1の燃料電池層110と第2の燃料電池層120とは、第1の燃料電池層110が有する単位電池103の直下に、第2の燃料電池層120を構成する単位電池103が配置されるように積層されている。第1のスペーサ層115と第2のスペーサ層125についても同様である。
また、第1の燃料電池層110を構成する単位電池103はすべて、そのアノード極側が第1のスペーサ層115に対向するように配置されている(図2において図示せず)。同様に、第2の燃料電池層120を構成する単位電池103はすべて、そのアノード極側が第2のスペーサ層125に対向するように配置されている。かかる構成により、すべての単位電池103のアノード集電層は、隣接するスペーサ層を構成するスペーサと接することとなる。なお、本明細書中においては、このような燃料電池層とこれに隣接して配置されたスペーサ層との積層体を「燃料電池」(スペーサ一体型燃料電池)と称する。「燃料電池」は、燃料電池スタックを構成するユニットとして好適に用いることができる。
さらに、後で詳細を述べるように、燃料電池スタック101は、単位電池103のアノード極で発生した二酸化炭素等の生成ガスが、スペーサ107に形成された排出流路を介してガス集約部102に導入されるように構成されている。好ましくは、スペーサ107はそれぞれ、ガス集約部と接続することができるよう、少なくとも一端が、隣接する燃料電池層から突き出るように配置される。
以上のような構造を有する燃料電池スタック101は、たとえば次のような利点を有する。
(a)第1の燃料電池層110の単位電池103のアノード極で発生した生成ガスが、第2の燃料電池層120の単位電池103のカソード極近傍に排出されることを抑制、防止できる。これにより、第2の燃料電池層120の単位電池103のカソード極への酸素の供給阻害を起こすことがなく、単位電池の高い出力特性を維持することができる。
(b)第1の燃料電池層110および第2の燃料電池層120が有する複数の隙間130、ならびに、第1のスペーサ層115および第2のスペーサ層125が有する隙間140は3次元的に互いに連通し、空気の拡散性が良好であることから、燃料電池スタック101の内部に位置する単位電池103のカソード極にまで、効率よく空気を供給することができる。すなわち、燃料電池スタック101内に入った空気を、連通した隙間130および隙間140を通して、燃料電池スタック101の内部まで、自然対流または拡散によって供給させることができる。
(c)燃料電池スタック101内での空気の自然拡散性が良好である。発電に起因する熱によって温められた燃料電池スタック101内の空気は、対流により、連通した隙間130および隙間140を通って、燃料電池スタック101の外部へ放出されるとともに、燃料電池スタック101の側面や上下面から空気が効率的に吸入される。したがって、空気供給のためのエアポンプ、ファン等の補機を必ずしも必要とせず、このことは、燃料電池スタック101を用いた燃料電池システム100の小型化を可能とする。また、エアポンプ、ファン等の補機を用いる場合においても、燃料電池スタック101内部まで空気を供給するために必要な風力を低減させることができる。このことは、補機の低消費電力や小型化を可能とする。
本実施形態における燃料電池スタック101は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において種々の変形が施されてもよい。たとえば、燃料電池スタックが有する燃料電池層およびスペーサ層の数は特に制限されず、少なくとも1つの燃料電池層と1つのスペーサ層(すなわち、1つの燃料電池)を有していればよい。また、燃料電池層内の単位電池の数およびスペーサ層内のスペーサの数も特に制限されず、それぞれ1以上あればよい。燃料電池層内の単位電池の数は、好ましくは2以上である。スペーサの数は、燃料電池スタック内部への空気の供給効率等に鑑みると、2以上とし、これらのスペーサを、同一平面内に、スペーサ間に隙間が形成されるように配置することが好ましい。
また、各単位電池およびスペーサの形状は、直方体形状に制限されるものではなく、たとえば、断面形状が円形や楕円形のものであってもよい。ただし、燃料電池層が有する隙間とスペーサ層が有する隙間とが3次元的に連通するように、かつ燃料電池スタックを安定性よく構築するためには、単位電池およびスペーサは、長辺と短辺を有する短冊形状を有していることが好ましい。
さらに、第1の燃料電池層110と第2の燃料電池層120とは、第1の燃料電池層110が有する単位電池103の直下に、第2の燃料電池層120を構成する単位電池103が配置されるように積層される必要は必ずしもなく、たとえば、第1の燃料電池層110が有する単位電池103の直下に、第2の燃料電池層の隙間130が配置されるように積層されてもよい。第1のスペーサ層115と第2のスペーサ層125についても同様である。
(2)単位電池およびスペーサの構造
次に、本実施形態の燃料電池スタック101が備える単位電池103およびスペーサ107の構造について説明する。図3は、図2に示される燃料電池スタック101のIII−III線における断面図である。図3に示されるように、第1の燃料電池層110および第2の燃料電池層120を構成する単位電池103は、カソード極204、電解質膜202、アノード極203およびアノード集電層205をこの順で備えている。より具体的には、単位電池103は、電解質膜202と、電解質膜202の一方の表面に配置されたアノード極203と、電解質膜202の他方の表面に配置されたカソード極204と、アノード極203の電解質膜202に対向する面とは反対の面に接して配置されたアノード集電層205とから構成される。
上記したように、本実施形態の燃料電池スタック101が備える単位電池103の形状は、好ましくは長辺と短辺を有する短冊形状であり、より好ましくは、直方体形状である。燃料電池スタック101の最上面または最下面の隙間130から燃料電池スタック101内部へ流入した空気は、燃料電池層間の空間部を単位電池103の短辺方向に向かって対流または拡散することによって単位電池103のカソード極204へと供給される。このため、空気供給における移動距離を短くする観点から、単位電池103の短辺の長さは、10mm以下とすることが好ましく、5mm以下とすることがより好ましい。これにより空気の供給抵抗を低減させ、ファンやブロワーなどの補機を用いないパッシブ空気供給においても、空気供給不足による出力低下を抑制することができる。
第1の燃料電池層110と第2の燃料電池120との間には、上述のようにスペーサ107から構成される第1のスペーサ層115が介在しており、第1の燃料電池層110は、第1のスペーサ層115を構成するスペーサ107と第1の燃料電池層110を構成する単位電池103のアノード集電層205とが接するように、第1のスペーサ層115上に積層されている。これら第1の燃料電池層110と第1のスペーサ層115とが、燃料電池スタック101において、1つの「燃料電池」の単位を形成している。同様に、第2の燃料電池層120と第2のスペーサ層125(図3において図示せず)とが1つの燃料電池の単位を形成している。第2の燃料電池層120を構成する単位電池103はいずれも、そのカソード極204が第1のスペーサ層115に対向するように配置されている。
ここで、本実施形態における燃料電池スタック101においては、燃料電池スタック101が有するすべての単位電池103のアノード極203で発生した生成ガスを後述するガス集約部に誘導できるよう、各「燃料電池」の単位ごとに、ガス集約部が有する空洞部と、各燃料電池の燃料電池層が有するすべての単位電池103のアノード極203とを連通させる「生成ガス排出用流路」をその内部に備えている。本実施形態において、生成ガス排出用流路は、図3を参照して、各燃料電池の燃料電池層(第1の燃料電池層110および第2の燃料電池層120のそれぞれ)が有するすべての単位電池103のアノード集電層205を厚み方向に貫通する貫通孔206と、貫通孔206と連通し、その一端がスペーサ107の端部まで延びる、スペーサ107に形成された排出流路207と、から構成されている。後述するように、排出流路207が形成されているスペーサ107の端部は、ガス集約部に接続されており、これにより、ガス集約部が有する空洞部と、各燃料電池の燃料電池層が有するすべての単位電池103のアノード極203とが連通される。
なお、本実施形態においては、スペーサ107に形成される排出流路207は、直方体形状のスペーサ107における、スペーサ107に接して配置される単位電池103のアノード集電層205に対向する表面に形成された、スペーサ107の長手方向に延びる(スペーサの長辺と平行または略平行に延びる)溝から構成されている。かかる溝の開口のうち、単位電池103によって塞がれていない部分(単位電池103間に形成された隙間130に接する部分)は、アノード極で発生した生成ガスが燃料電池スタック内部に漏れ出さないよう、ガス透過防止層150によって封止されている(図2および3参照)。
以下、本発明に用いられる単位電池を構成する構成部材およびスペーサについてより詳細な説明を行なう。
(電解質膜)
電解質膜(図3における電解質膜202)は、プロトン伝導性を有し、かつ電気的絶縁性を有する材質であれば特に限定されないが、好ましくは従来公知の適宜の高分子膜、無機膜またはコンポジット膜からなる。高分子膜としては、たとえばパーフルオロスルホン酸系電解質膜(ナフィオン(NAFION(登録商標):デュポン社製)、ダウ膜(ダウ・ケミカル社製)、アシプレックス(ACIPLEX(登録商標):旭化成社製)、フレミオン(登録商標:旭硝子社製)のほか、ポリスチレンスルホン酸、スルホン化ポリエーテルエーテルケトンなどの炭化水素系電解質膜などが挙げられる。無機膜としては、たとえば、リン酸ガラス、硫酸水素セシウム、ポリタングストリン酸、ポリリン酸アンモニウムなどからなる膜が挙げられる。また、コンポジット膜としては、たとえばゴアセレクト膜(ゴアセレクト(登録商標):ゴア社製)が挙げられる。
燃料電池スタック(またはこれに含まれる単位電池)が、その使用環境において100℃付近もしくはそれ以上の温度になる場合には、低含水時でも高いイオン伝導性を有する、スルホン化ポリイミド、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)、スルホン化ポリベンゾイミダゾール、ホスホン化ポリベンゾイミダゾール、硫酸水素セシウム、ポリリン酸アンモニウム、イオン性液体(常温溶融塩)等の材料を用い、これを膜化したものを電解質膜として用いることが好ましい。
電解質膜は、プロトン伝導率が10-5S/cm以上であることが好ましく、パーフルオロスルホン酸ポリマーや炭化水素系ポリマーなどのプロトン伝導率が10-3S/cm以上の高分子電解質膜を用いることがより好ましい。
(アノード極およびカソード極)
アノード極(図3におけるアノード極203)は、燃料の酸化を促進する触媒を備えており、該触媒上で燃料が酸化反応を起こすことにより、プロトンと電子を生成する。また、カソード極(カソード極204)は、酸化剤の還元を促進する触媒を備えており、該触媒上で酸化剤がプロトンと電子を取り込み、還元反応が起きる。なお、本発明の燃料電池システムに供給される燃料は、メタノール、エタノール等のアルコール類;ジメチルエーテル等のエーテル類;ギ酸等のカルボン酸類;ギ酸メチル等のエステル類;ジメトキシメタン等のアセタール類、および、これらの水溶液などを挙げることができる。なお、これらの例示された燃料はいずれも常温で液体であるが、これらの液体燃料を気化させ、ガスとして供給してもよい。本発明において、燃料は1種のみを用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。体積あたりのエネルギ密度および活性化過電圧の観点からは、上記のなかでも、メタノールまたはその水溶液が好ましく用いられる。
アノード極およびカソード極としては、たとえば、触媒を担持した担持体と電解質とを含む触媒層と、触媒層上に積層された多孔質基材との積層構造を用いることができる。この場合、アノード触媒層におけるアノード触媒は、たとえばメタノールと水とから、プロトンと電子とを生成する反応速度を促進させる機能を有し、電解質は、生成したプロトンを電解質膜へ伝導する機能を有し、アノード担持体は生成した電子をアノード多孔質基材へ導電する機能を有する。また、アノード多孔質基材は、それが有する空隙により、メタノールと水をアノード触媒層へ供給することが可能であり、また、アノード担持体からアノード集電層へ電子を導電する機能を有する。
一方、カソード触媒層におけるカソード触媒は、酸素とプロトンと電子とから、水を生成する反応速度を促進する機能を有し、電解質は、電解質膜からカソード触媒近傍にプロトンを伝導する機能を有し、カソード担持体は、カソード多孔質基材からカソード触媒に電子を導電する機能を有する。また、カソード多孔質基材は、それが有する空隙により、酸素をカソード触媒層へ供給することが可能であり、また、外部配線(図示せず)またはスペーサからカソード触媒層へ電子を導電する機能を有する。
なお、アノード担持体およびカソード担持体は、電子伝導の機能を有するが、触媒も電子伝導性を有するため、必ずしも担持体を設ける必要はない。また、アノード多孔質基材およびカソード多孔質基材も必ずしも設ける必要はなく、この場合、アノード触媒層およびカソード触媒層は電解質膜に直接形成され、アノード触媒層はアノード集電層と、カソード触媒層は外部配線(図示せず)またはスペーサと電子の授受を行なう。
アノード触媒およびカソード触媒としては、たとえば、Pt、Ru、Au、Ag、Rh、Pd、Os、Irなどの貴金属;Ni、V、Ti、Co、Mo、Fe、Cu、Zn、Sn、W、Zrなどの卑金属;これら貴金属または卑金属の酸化物、炭化物および炭窒化物;ならびに、カーボンが例示できる。これら材料の、単独もしくは2種類以上の組み合わせを触媒として用いることができる。アノード触媒およびカソード触媒は必ずしも同種類のものに限定されず、異なる物質を用いることができる。
アノード触媒層およびカソード触媒層に用いられる担持体は、電気伝導性の高い炭素系材料であることが好ましく、たとえば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック(登録商標)、アモルファスカーボン、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーンなどが例示される。また、これらの炭素系材料のほか、Pt、Ru、Au、Ag、Rh、Pd、Os、Irなどの貴金属;Ni、V、Ti、Co、Mo、Fe、Cu、Zn、Sn、W、Zrなどの卑金属;ならびに、これら貴金属または卑金属の酸化物、炭化物、窒化物および炭窒化物などを用いることもできる。これら材料の、単独もしくは2種類以上の組み合わせを担持体として用いることができる。また、プロトン伝導性を付与した材料、具体的には硫酸化ジルコニア、リン酸ジルコニウムなどを、担持体として用いてもよい。
本発明におけるアノード触媒層に用いられる担持体は、表面が親水性であることが好ましい。表面を親水化する方法しては、表面をカルボキシル基やヒドロキシル基などの親水性の官能基で修飾させる方法を好ましく用いることができる。具体例としては、カーボン表面のグラフト重合による表面修飾やシランカップリング剤による表面修飾などが挙げられる。これにより、アノード触媒層がメタノール水溶液をその細孔内に保持するため、燃料やプロトンの拡散がより良好になるとともに、生成ガス排出用流路から進入し得る酸素がアノード触媒まで到達する量を少なくすることができ、酸素がアノード触媒層で反応することにより生じる出力特性の低下を防ぐことができる。
アノード触媒層およびカソード触媒層に用いられる電解質は、プロトン伝導性を有し、かつ電気的絶縁性を有する材質であれば特に限定されないが、メタノール等の燃料によって溶解しない固体もしくはゲルであることが好ましい。具体的には、スルホン酸、リン酸基などの強酸基やカルボキシル基などの弱酸基を有する有機高分子が好ましい。かかる有機高分子として、含有パーフルオロカーボン(ナフィオン(デュポン社製))、カルボキシル基含有パーフルオロカーボン(フレミオン(旭化成社製))、ポリスチレンスルホン酸共重合体、ポリビニルスルホン酸共重合体、イオン性液体(常温溶融塩)、スルホン化イミド、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)などが例示される。また、上述したプロトン伝導性を付与した担持体を用いる場合には、該担持体がプロトン伝導を行なうため、必ずしも電解質は必要ではない。
アノード触媒層およびカソード触媒層の厚みは、プロトン伝導の抵抗および電子伝導の抵抗を小さくし、燃料(たとえばメタノール水溶液)または酸化剤(たとえば酸素)の拡散抵抗を低減するために、それぞれ0.2mm以下とすることが好ましい。また、燃料電池スタックとしての出力を向上させるためには十分な触媒を担持させる必要があるため、それぞれ少なくとも0.1μm以上とすることが好ましい。
アノード多孔質基材およびカソード多孔質基材は、導電性の材料からなることが好ましく、たとえばカーボンペーパー、カーボンクロス、金属発泡体、金属焼結体、金属繊維の不織布などを用いることができる。金属発泡体、金属焼結体、金属繊維の不織布に用いられる金属としては、Pt、Ru、Au、Ag、Rh、Pd、Os、Irなどの貴金属;Ni、V、Ti、Co、Mo、Fe、Cu、Zn、Sn、W、Zrなどの卑金属;ならびに、これら貴金属または卑金属の酸化物、炭化物、窒化物および炭窒化物が例示できる。アノード多孔質基材およびカソード多孔質基材が設けられる場合、アノード多孔質基材は、アノード極におけるアノード集電層側(電解質膜側と反対側)に配置され、カソード多孔質基材は、カソード極における単位電池外側(電解質膜側と反対側)に配置される。
なお、本明細書中においては、上記電解質膜とこれを挟持するアノード極およびカソード極との複合体を「膜電極複合体(MEA)」と称することがある。
(アノード集電層)
アノード集電層(図3におけるアノード集電層205)は、アノード極と電子の授受を行なう機能を有する。本実施形態においてアノード集電層は、燃料をアノード極に供給するための燃料流路208と、アノード極における反応により生じる生成ガスを排出するための生成ガス排出用流路の一部である貫通孔206とを備える。
アノード集電層に用いられる好適な材質としては、カーボン材料;導電性高分子;Au、Pt、Pd等の貴金属;Ti、Ta、W、Nb、Ni、Al、Cr、Ag、Cu、Zn、Su等の金属;Si;これら貴金属、金属またはSiの窒化物、炭化物および炭窒化物等;ならびに、ステンレス、Cu−Cr、Ni−Cr、Ti−Pt等の合金等を挙げることができる。より好ましくは、Pt、Ti、Au、Ag、Cu、NiおよびWからなる群より選ばれる少なくとも1つの元素を含む。かかる元素を含むことにより、アノード集電層の比抵抗が小さくなるため、アノード集電層の抵抗による電圧低下を軽減し、より高い発電特性を得ることが可能となる。Cu、Ag、Zn等の、酸性雰囲気下で耐腐食性に乏しい金属を用いる場合には、Au、Pt、Pd等の耐腐食性を有する貴金属および金属材質や、導電性高分子、導電性窒化物、導電性炭化物、導電性炭窒化物、導電性酸化物等を表面コーティングとして用いることができる。これにより、単位電池およびこれを用いた燃料電池スタックの寿命を延ばすことができる。
本実施形態においてアノード集電層205は、その層厚方向に貫通している貫通孔206を有する。アノード極203で生成した二酸化炭素等の生成ガスは気泡となり、大きくなったところで貫通孔206からスペーサ107の排出流路207へ排出される。当該貫通孔により、生成ガスは、排出流路207に最短の距離で排出されるため、生成ガスの排出効率を向上させることができる。
貫通孔の断面形状は、特に制限されず、たとえば円状、楕円状、四角状、三角状等とすることができる。貫通孔の内径は、10μm〜1mmの範囲とすることが好ましい。また、貫通孔は、1つの単位電池に対して2以上設けられることが好ましく、この場合、貫通孔間の距離(ピッチ)は、100μm〜10mmの範囲とすることが好ましい。メタノール水溶液等の燃料の漏れを防止する観点からは、貫通孔の内径は、500μm未満とすることが好ましい。また、二酸化炭素等の生成ガスの排出効率の観点からは、貫通孔の内径は100μm以上であり、貫通孔間の距離は1mm未満であることがより好ましい。貫通孔の数およびその断面積は、アノード集電層の電気抵抗およびアノード集電層とアノード極との接触面積等を考慮して決定することが好ましい。貫通孔は、たとえば上記した材質からなる板あるいは箔に、エッチング等により貫通する穴を設けることにより形成することができる。なお、貫通孔が複数設けられる場合、当該複数の貫通孔は、互いに連通していてもよい。
貫通孔の内壁面は、撥水処理が施されていることが好ましい。貫通孔の内壁面が撥水性を備えることにより、貫通孔が燃料等の液体によって塞がれることによる生成ガスの排出不良を防ぐことができる。貫通孔内壁面の撥水処理は、フッ素樹脂等の撥水性材料含有物の塗布やプラズマグラフト重合処理やイオンビーム改質処理や電子線照射処理などにより行なうことができる。
また、図3に示されるように、貫通孔206内に、気液分離層209を充填することも好ましい。気液分離層209を設けることにより、燃料がスペーサ107の排出流路207に漏洩することを防止できる。気液分離層209は、水、メタノール水溶液等の液体に対して不透過性であり、気体に対して透過性であって気液分離能を有する多孔質性材料からなる。また、気液分離層209を構成する材料は、アノード極203からアノード集電層205へ効率良く電子伝導を行なうという観点から、導電性を有していることが好ましい。気液分離層209に用いる材料としては、気液分離能を有する材料と、導電性を有する材料との混合物を用いることができる。このような混合材料としては、PTFE(Polytetrafluoroethylene)、PVDF(Polyvinylidenfluolide)等のフッ素系高分子と、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、アモルファスカーボン、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーンなどとの混合物を挙げることができる。
燃料流路は、アノード極に燃料を供給するための流路であり、上記貫通孔とは別途に形成されている。これにより、燃料の供給と生成ガスの排出とを分離して行なうことができる。このように、アノード集電層205は、燃料の供給および生成ガスの排出の両機能を兼ね備えている。このことは、単位電池、ひいては燃料電池スタックの小型化、薄型化、および軽量化に寄与する。
燃料流路の形状は特に制限されず、たとえばその断面形状は、図3に示されるように四角形状である。燃料流路は、アノード集電層の、アノード極側の面に形成された1または2以上の溝として構成することができる。燃料流路は、通常、単位電池の長手方向に延び(単位電池の長辺と平行または略平行に延び)、その一端は、燃料が収容された燃料タンク等に接続できるよう、アノード集電層の端部まで延び、その他端は、燃料漏れが生じないよう封止される。燃料流路の末端と燃料タンクとは、燃料が漏れ出さない限りにおいて任意の態様で接続され得る。燃料流路の幅および断面積は、それぞれ好ましくは0.1〜1mm、0.01〜1mm2である。燃料流路の幅および断面積は、アノード集電層の電気抵抗およびアノード集電層とアノード極との接触面積等を考慮して決定することが好ましい。燃料供給方法としては、燃料流路が液体燃料で充填される方法であれば特に限定はなく、ポンプで送液する方法や、カートリッジ内の加圧された液体の圧力を利用して送液する方法、燃料流路内の毛管力で送液する方法などが挙げられる。
アノード極とアノード集電層とが接触していない領域の長さは、1つの単位電池において、最大で1mm未満であることが好ましい。また、アノード極とアノード集電層とが接触する面積は、アノード極のアノード集電層側表面積の20%以上であることが好ましい。アノード極とアノード集電層との間に別の層を介在させる場合においても同様である。
図3に示される単位電池103のように、アノード極203とアノード集電層205との間には、燃料流路208のアノード極203側の面を覆うようにして形成された燃料透過層210を設けることが好ましい。燃料透過層は、燃料流路208からアノード極203へ供給される燃料の流量を制御するための層である。燃料透過層は、たとえば、PTFE、PVDF等のフッ素系高分子やシリコーン樹脂等の合成樹脂、ポリメチルメタクリレート、ポリヒドロキシエチルメタクリレート、ポリジメチルアクリルアミド、ポリグリセロールメタクリレート、ポリビニルピロリドンなどの高分子材料の1種もしくは2種以上を用いて作製された膜、または、該高分子材料からなり、キャスティング等により均一に制御された孔径を有する厚み方向に貫通する複数の貫通孔を備えた層(フィルム)から構成することができる。
なお、本発明において、単位電池は、カソード極、電解質膜、アノード極およびアノード集電層をこの順で含むが、これらのほか、必要に応じて他の構成部材を含んでいてもよい。他の構成部材としては、特に限定されず、たとえば、カソード集電層、セパレータ、上記燃料透過層などが挙げられる。
(スペーサ)
スペーサ(図3におけるスペーサ107)は、燃料電池層の間に配置されるスペーサ層を構成する部材である。図2および図3を参照して、たとえば、第1のスペーサ層115は、第1の燃料電池層110と第2の燃料電池層120との間に配置される。第1のスペーサ層115を構成するスペーサ107は、第1の燃料電池層110を構成する単位電池103のアノード集電層205および第2の燃料電池層120を構成する単位電池103のカソード極204に接するように配置される。このようなスペーサ層を介在させることにより、2つの燃料電池層は、離間して配置されることとなり、当該2つの燃料電池層の間に空間部(当該空間部は、スペーサ間に形成される隙間140を含む。)が形成される。かかる空間部は、燃料電池スタック内部に位置する単位電池のカソード極への空気(酸素)供給を向上させる。本実施形態において、スペーサ107は、アノード極における反応により生じる生成ガスを、後述するガス集約部へ誘導するための生成ガス排出用流路の一部である排出流路207を備えている。
スペーサを構成する材料は、燃料電池スタックに外力が加わっても燃料電池層間の空間部を確保できる程度の強度を保つものであれば特に限定はないが、導電性材料であることが好ましい。導電性材料を用いることによって、他に外部配線を用いることなく、燃料電池層同士を直列接続することができるため、燃料電池スタックの小型化に有利となる。スペーサを構成する材料としては、アノード集電層と同様の材料を用いることが好ましく、たとえば、カーボン材料;導電性高分子;Au、Pt、Pd等の貴金属;Ti、Ta、W、Nb、Ni、Al、Cr、Ag、Cu、Zn、Su等の金属;Si;これら貴金属、金属またはSiの窒化物、炭化物、炭窒化物等;ならびに、ステンレス、Cu−Cr、Ni−Cr、Ti−Pt等の合金等を挙げることができる。より好ましくは、Pt、Ti、Au、Ag、Cu、NiおよびWからなる群より選ばれる少なくとも一つの元素を含む。かかる元素を含むことにより、スペーサの比抵抗が小さくなるため、スペーサの抵抗による電圧低下を軽減し、より高い発電特性を得ることが可能となる。Cu、Ag、Zn等の、酸性雰囲気下で耐腐食性に乏しい金属を用いる場合には、Au、Pt、Pd等の耐腐食性を有する貴金属および金属材質や、導電性高分子、導電性窒化物、導電性炭化物、導電性炭窒化物、導電性酸化物等を表面コーティングとして用いることができる。これにより、燃料電池、ひいては燃料電池スタックの寿命を延ばすことができる。
本実施形態において、スペーサ107の形状は、燃料電池層間に空気(酸素)が供給される空間部を確保することを可能とし、スペーサ107に形成される排出流路207とスペーサ107に隣接するアノード集電層205の貫通孔206とを連通させることができれば特に限定はないが、当該空間部の厚さを均一に確保し、当該空間部の容積を大きくするために、スペーサを隣接する単位電池と交差(好ましくは直交)させて配置したときに、スペーサの少なくとも一端が、隣接する燃料電池層から突き出し得る長辺長さを有する短冊状、特には柱状であることが好ましい。柱状の断面形状は特に制限されず、たとえば、楕円状、四角状等とすることができる。スペーサ107が導電性材料からなり、スペーサ107が電気的接続の役割を果たす場合は、スペーサ107の形状は直方体状であることが好ましい。スペーサ107を直方体形状とすることによって、スペーサ107とこれに隣接する燃料電池層の単位電池とを面同士で接触させることができるため、電気的な接触抵抗を低減させることができる。また、スペーサの形状を直方体形状とすることにより、アノード集電層が有する貫通孔とスペーサが有する排出流路とを隙間なく連通させやすくなり、生成ガスの漏洩を効果的に防止することができる。
スペーサが長辺と短辺とを有する短冊形状(特には直方体形状)を有している場合において、スペーサの幅(短辺の長さ)は、アノード集電層に形成された貫通孔を覆うことが可能な大きさであれば特に限定はないが、燃料電池スタックの構造強度を保つために、0.5mm以上が好ましく、空間部への酸素供給を行なわれやすくするために、5mm以下であることが好ましい。スペーサの厚み(スペーサ層の厚み)は、スペーサによって形成される空間部内への酸素供給を行なわれやすくするために、0.1mm以上が好ましく、燃料電池スタックの大型化を防ぐために、5mm以下であることが好ましい。スペーサの厚み(スペーサ層の厚み)は、0.2mm〜1mm以下であることがより好ましい。
1つのスペーサ層内におけるスペーサの数は、空間部を確保することができれば特に限定はないが、燃料電池スタックに外力が加わっても空間部を安定的に確保するために、2以上であることが好ましい。
また、アノード極での生成ガスの排出抵抗を低減させるために、スペーサと隣接する燃料電池層のスペーサ側表面のスペーサとの接触面積は、当該スペーサ側表面全体の20%以上であることが好ましく、空間部内への酸素供給の抵抗低減を図るために、80%以下であることが好ましい。
本実施形態において、スペーサ107は、アノード極における反応により生じる生成ガスを、後述するガス集約部へ誘導するための生成ガス排出用流路の一部である排出流路207を備える。本実施形態の燃料電池スタックに含まれる各燃料電池において、スペーサは、燃料電池層に対して、燃料電池層を構成するすべての単位電池のアノード集電層に形成された貫通孔とスペーサの排出流路とが連通するように、典型的には、スペーサの排出流路が該貫通孔のスペーサ側開口の直下に位置するように配置される。
スペーサ107に形成される排出流路207の形状は、スペーサ107に隣接するアノード集電層205の貫通孔206と連通可能であり、スペーサ107の、ガス集約部と接続される端部まで延びている限り特に限定はないが、たとえば、スペーサ107の一表面(アノード集電層と接する側の表面)に形成された、スペーサの長手方向に延びる(長辺と平行または略平行に延びる)1または2以上の溝から構成することができる。この場合、溝の断面形状は、特に制限されないが、たとえば四角形状とすることができる。アノード集電層と接する側の表面における当該溝の位置は特に制限されず、たとえば当該表面の中央または中央近傍とすることができる。また、中空状スペーサを用い、中空状スペーサとアノード集電層205の貫通孔206との接合部に、貫通孔206とスペーサの中空部とを連通させる連通孔を設けることで、当該スペーサの中空部および連通孔を排出流路とすることもできる。なお、ガス集約部と接続される側とは反対側の端部における上記溝または中空部末端は、生成ガスが当該端部から流出しないよう封止される。排出流路207の幅および断面積は、それぞれ、好ましくは0.1〜1mm、0.01〜1mm2である。スペーサに導電性材料を用いる場合は、スペーサ107の電気抵抗およびスペーサ107とアノード集電層205との接触面積等を考慮して排出流路207の幅および断面積を決定することが好ましい。排出流路207は、エッチング加工、プレス加工、切削加工などによって形成することができる。
また、排出流路207は、その内部に、貫通孔206から排出される生成ガス中の有機化合物成分を燃焼させるための触媒を備えていることが好ましい。このような触媒を備えることによって、排出された二酸化炭素等の生成ガスに含まれる有機化合物を空気中の酸素と反応させ、燃焼させることができる。これにより、主にメタノールの蒸気からなる有機化合物の、燃料電池システム外部への排出量を低減させることができる。また、燃焼時に発生する熱を単位電池に伝えることにより、触媒反応を活性化させることができ、発電効率を向上させることができる。有機化合物燃焼触媒としては、好ましくはPtの微粒子が用いられ、該触媒は担持体に担持されていることが好ましい。耐熱性向上のため、金属、金属酸化物などの多孔質体を担持体として用いることが好ましい。
スペーサの排出流路207が、スペーサ107におけるアノード集電層205と接する側の表面に形成された1または2以上の溝から構成される場合、当該溝の開口のうち、単位電池103によって塞がれていない部分(単位電池103間に形成された隙間130に接する部分)は、アノード極で発生した生成ガスが燃料電池スタック内部に漏れ出さないよう、ガス透過防止層150によって封止される(図2および3参照)。ガス透過防止層は、たとえば、スペーサを構成する材料と同じあるいは同等の金属のほか、ニトリルゴム、シリコーンゴム、アクリルゴム、アチレンブタジエンゴム、フッ素ゴム、エチレンプロピレンゴムなどの合成ゴム、天然ゴム等の材料から構成することができ、耐薬品性、耐熱性およびスペーサとのシール性能の点からは、スペーサを構成する材料と同じあるいは同等の金属を用いることが好ましい。
ここで、スペーサ107は、スペーサ107と隣接するアノード集電層205と一体化されていることが好ましい。すなわち、燃料電池スタックの燃料電池の単位を構成する燃料電池層とスペーサ層とは、一体化されていることが好ましい。「一体化」とは、外部から圧力を加えなくとも分離しない状態のことをいい、具体的には化学結合やアンカー効果や粘着力等により接合された状態のことをいう。スペーサ107とアノード集電層205とが一体化されることによって、スペーサ107とアノード集電層205との接合面の気密度が向上し、生成ガスが該接合面から漏洩することを防ぐことができる。その結果、生成ガスが該接合面からカソード極近傍へ漏洩することを防ぐことができるため、生成ガスの漏洩による酸素供給阻害を防ぎ、燃料電池スタックの高い出力を維持することができる。スペーサ107とアノード集電層205の一体化方法としては、熱硬化性樹脂等の接着剤を用いた接着、その他に拡散接合、超音波接合、レーザー溶接などが挙げられる。同様に、燃料電池スタックの機械的安定性、電気的接続性を考慮すると、燃料電池スタックを構成する燃料電池同士もまた、一体化されることが好ましい。導電性のスペーサを用い、各燃料電池を直列接続する場合、燃料電池同士の一体化は、たとえば導電性の接着剤を用いて行なうことができる。
<ガス集約部>
図1に示されるように、本実施形態の燃料電池システム100は、燃料電池スタック101の単位電池103の発電により発生する生成ガスを集約するためのガス集約部102を備える。集約された生成ガスは、ガス集約部102が有する開口部104に接続された生成ガス誘導路105の末端開口(ガス排出口106)から、燃料電池システム100の外部へ排出される。
ガス集約部102の構成は、燃料電池スタック101の単位電池103の発電により発生する生成ガスを集約することができ、集約された生成ガスを燃料電池システム100の外部へ排出することができる限り特に制限されないが、図1に示される燃料電池システム100のように、内部に空洞部を有する中空体から構成することができる。この場合、当該空洞部が生成ガスを集約するための部位となり、ガス集約部の外表面に設けられる開口部104は、当該空洞部と連通される。ガス集約部の外形形状は特に制限されない。なお、生成ガス誘導路105の末端開口(ガス排出口106)から生成ガスを排出するのではなく、生成ガス誘導路を設けず、開口部から直接、生成ガスを排出するようにしてもよい。ガス集約部における開口部の位置は特に制限されないが、特に、開口部から直接、生成ガスを排出する場合には、排出された生成ガスが燃料電池スタックに取り込まれないような位置である必要があり、たとえば、開口部は、燃料電池スタックが位置する方向とは異なる方向に向けられる。
ガス集約部102を構成する材料は、難気体透過性を有していれば特に限定されないが、高分子基材、無機基材、金属基材を用いることが好ましい。さらには軽量であり絶縁性であるという観点から、シリコン樹脂、ポリカーボネート樹脂、フェノール樹脂、ポリオレフィン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂のいずれかからなる材料を用いることがより好ましい。
本実施形態の燃料電池システム100において、ガス集約部102は、燃料電池スタック101が有するすべてのスペーサ107の、排出流路207が末端まで形成されている端部と接続されている。これにより、ガス集約部102の空洞部と、燃料電池スタック101が有するすべての単位電池103のアノード極203とが、燃料電池スタック101を構成する各燃料電池の内部に設けられる上記生成ガス排出用流路によって連通される。ガス集約部とスペーサの接続方法としては、たとえばガス集約部である中空体の側面にスペーサを差し込むための穴を設けておき、当該穴にスペーサを差し込み、接続部分の外周をシール材で封止する方法が挙げられる。また、燃料電池スタックを搭載する電子機器に、あらかじめ柔軟性を有する(たとえばゴム状の)壁面を備えるガス集約部を形成しておき、当該柔軟性を有する壁面に燃料電池スタックのスペーサを突き刺し、接続部分の外周を封止するようにしてもよい。この場合、燃料電池システムは、当該電子機器内において構築される。なお、本実施形態においては、1つのガス集約部が燃料電池スタックが備えるすべてのスペーサに接続されている必要はない。たとえば、燃料電池スタックを構成する燃料電池ごとに、ガス集約部を設けるようにしてもよい。この場合、典型的には、1つの燃料電池が有するすべてのスペーサに1つのガス集約部が接続され、燃料電池スタックに含まれる燃料電池の数と同じ数のガス集約部が設けられる。また、本実施形態においては、燃料電池スタックは、少なくとも1つの燃料電池の単位を有しており、燃料電池スタックが有する少なくとも1つのスペーサ層が有するすべてのスペーサの端部にガス集約部が接続されていればよい。
本発明の燃料電池システムは、1または2以上のガス集約部を有していてもよいが、好ましくは、ガス集約部のすべては、図1に示される燃料電池システム100のように、燃料電池スタックの外面のうち、1つの側面に隣接して配置されることが好ましい。これにより、燃料電池スタックへの空気取り入れ面を多く確保することができる。また、燃料電池スタックを電子機器に搭載した際、燃料電池スタックの空気取り入れ面とならない燃料電池スタックの外面の中から、ガス集約部の設置面が選択されることが好ましい。これにより、ガス集約部が燃料電池スタックへの空気供給の妨げにならないため、より出力密度の高い、安定した燃料電池システムを提供することが可能となる。
本実施形態の燃料電池システム100は、図1に示されるように、ガス集約部102の開口部104と接続され、ガス集約部に集約された生成ガスの燃料電池システムにおける排出位置を調整するための中空状の生成ガス誘導路105を備えている。この場合、生成ガス誘導路105におけるガス集約部102の開口部104側とは反対側の開口が生成ガスの排出口(図1におけるガス排出口106)となる。このような生成ガス誘導路は、特に、燃料電池システムを備える電子機器における生成ガスの排出位置を調整する上で有利である。ただし、ガス集約部が有する開口部(図1における開口部104)から直接、生成ガスを排出することも可能である。生成ガス誘導路を構成する材料は、ガス集約部と同様とすることができる。また、生成ガス誘導路の長さ、外形形状および断面形状は、特に制限されず、長さおよび外形形状等は、所望される生成ガスの排出口位置に応じて決定される。
生成ガス誘導路は、そのガス集約部の開口部側とは反対側の開口(ガス排出口)に、排出される生成ガス中の有害成分を除去するためのフィルタ(有害成分除去フィルタ)を備えていてもよい。このようなフィルタを設けることにより、万が一、反応で有害な副生成物が生じ、ガス集約部を介してガス排出口に到達した場合においても、フィルタによって除去されるため安全性が向上する。また、ガス排出口が燃料電池システムを備える電子機器の外縁に位置にするように生成ガス誘導路を構成すると、フィルタの交換が容易になるため有利である。
また、生成ガス誘導路の内壁面は、撥水処理が施されていてもよい。アノード極からの温かい生成ガス(生成ガスは、たとえば燃料であるメタノール蒸気を含み得る。)が排出流路で冷やされ、生成ガス誘導路の内壁面で結露した場合においても、液滴は壁面を伝って下部へ流れやすくなるため、電子機器の使用状態において、外部に液滴が漏れることを防止することが可能となる。生成ガス誘導路の内壁面の撥水処理は、上記した、アノード集電層に設けられる貫通孔の撥水処理と同様とすることができる。
生成ガス誘導路が延びる方向は、特に制限されないが、燃料電池スタックが位置する方向とは異なる方向に延びることが好ましい。また、生成ガス誘導路は、燃料電池システムの使用時または燃料電池システムを備える電子機器の使用時において、生成ガス誘導路のガス排出口が上方に向くように、ガス集約部に備えられていることが好ましい。
<<第2の実施形態>>
図4は、本発明の燃料電池システムを構成する燃料電池スタックの別の好ましい一例を示す断面図である。図4は、図3と同様、本実施形態に係る燃料電池スタック201の一部のみを示す断面図である。燃料電池スタック201は、長辺と短辺を有する複数の短冊状の単位電池303を、同一平面上に、各単位電池303の間に隙間330が形成されるように配置してなる第1の燃料電池層310と、長辺と短辺を有する複数の短冊状のスペーサ407を、同一平面上に、各スペーサ507の間に隙間が形成されるように配置してなる第1のスペーサ層と、第1の燃料電池層310と同じ構造を有する第2の燃料電池層320と、第1のスペーサ層と同じ構造を有する第2のスペーサ層(図4において図示せず)と、をこの順で積層してなる。用いられている単位電池303およびスペーサ507の外形形状は、上記第1の実施形態と同様である。
第1の燃料電池層310とこれに隣接する第1のスペーサ層とは、第1の燃料電池層310が有する単位電池303と、第1のスペーサ層が有するスペーサ507とが交差するように(より詳しくは、直交または略直交するように)積層されている。第1のスペーサ層とこれに隣接する第2の燃料電池層320、および、第2の燃料電池層320とこれに隣接する第2のスペーサ層についても同様である。
図4に示されるように、第1の燃料電池層310および第2の燃料電池層320を構成する単位電池303は、カソード極404、電解質膜402、アノード極403およびアノード集電層405をこの順で備えている。より具体的には、単位電池303は、電解質膜402と、電解質膜402の一方の表面に配置されたアノード極403と、電解質膜402の他方の表面に配置されたカソード極404と、アノード極403の電解質膜402に対向する面とは反対の面に接して配置されたアノード集電層405とから構成される。
第1の燃料電池層310は、第1のスペーサ層を構成するスペーサ507と第1の燃料電池層310を構成する単位電池303のアノード集電層405とが接するように、第1のスペーサ層上に積層されており、第1の燃料電池層310を構成する単位電池303はすべて、そのアノード極403側が第1のスペーサ層に対向するように配置されている。第1の燃料電池層310と第1のスペーサ層とが、燃料電池スタック201において、1つの「燃料電池」の単位を形成している。第2の燃料電池層320を構成する単位電池303はいずれも、そのカソード極404が第1のスペーサ層に対向するように配置されている。同様に、第2の燃料電池層320を構成する単位電池303はすべて、そのアノード極403側が第2のスペーサ層に対向するように配置されており、第2の燃料電池層320と第2のスペーサ層とが、燃料電池スタック201において、1つの「燃料電池」の単位を形成している。
ここで、本実施形態における燃料電池スタック201においては、燃料電池スタック201が有するすべての単位電池303のアノード極403で発生した生成ガスをガス集約部(図4において図示せず)に誘導できるよう、上記第1の実施形態と同様、各「燃料電池」の単位ごとに、ガス集約部が有する空洞部と、各燃料電池の燃料電池層が有するすべての単位電池303のアノード極403とを連通させる「生成ガス排出用流路」をその内部に備えている。そして、本実施形態において、生成ガス排出用流路は、図4を参照して、各燃料電池の燃料電池層(第1の燃料電池層310および第2の燃料電池層320のそれぞれ)が有するすべての単位電池303のアノード集電層405に形成された排出流路407から構成されている。排出流路407は、単位電池303の端部まで延びており、排出流路407が形成されている単位電池303の端部は、ガス集約部に接続されている。これにより、ガス集約部が有する空洞部と、各燃料電池の燃料電池層が有するすべての単位電池303のアノード極403とが連通される。なお、単位電池303はそれぞれ、ガス集約部と接続することができるよう、少なくとも一端が、隣接するスペーサ層から突き出るように配置される。また、単位電池303の、ガス集約部と接続される側とは反対側の端部においては、生成ガスが漏洩しないよう、排出流路407の末端は封止される。
図5は、本実施形態の燃料電池スタックにおいて用いられるアノード集電層の一部を模式的に示す図であり、図5(a)は上面図(アノード極側表面を示す)、図5(b)は斜視図である。図5に示されるように、本実施形態におけるアノード集電層405は、単位電池のアノード極に燃料を供給するための燃料流路408と、燃料流路408とは別途に形成された、アノード極における反応により生じる生成ガスを排出するための生成ガス排出用流路としての排出流路407とを備える。燃料流路408の構造は、上記第1の実施形態と同様である。
排出流路407は、燃料流路408と同様に、アノード極との接合面に形成されたアノード集電層405の長手方向に延びる(長辺と平行または略平行に延びる)1または2以上の溝から構成することができる。これにより、単位電池303において、排出流路407は、アノード極403と接することとなり、アノード極403で発生した生成ガスを排出流路407に排出可能となる。排出流路407の幅および断面積は、それぞれ、好ましくは0.1〜1mm、0.01〜1mm2である。アノード集電層405内において、排出流路407は、燃料流路408と平行または略平行に配置させることができる。
上記したように、本実施形態において、各単位電池303は、その一方の端部において、排出流路407とガス集約部の空洞部とが連通されるよう、ガス集約部と接続される。したがって、排出流路407は、アノード集電層405におけるガス集約部と接続される側の端部まで延び、一方、その反対側の端部においては、生成ガスが漏洩しないよう、排出流路の末端は封止される。同様に、燃料流路408は、燃料が収容された燃料タンク等に接続できるよう、アノード集電層の一方の端部まで延び、他方の端部において、燃料漏れが生じないよう封止される。ここで、図5に示されるように、アノード集電層のガス集約部に接続される側の端部(排出流路が端面まで形成されている側の端部)と、燃料が収容された燃料タンク等に接続される側の端部(燃料流路が端面まで形成されている側の端部)とは異なることが好ましい。このような構成にすることによって、排出流路407とガス集約部とを接続する際に、燃料流路408から燃料がガス集約部内に漏洩することを抑止することが可能となる。
燃料供給方法としては、燃料流路408が液体燃料で充填される方法であれば特に限定はなく、ポンプで送液する方法や、カートリッジ内の加圧された液体の圧力を利用して送液する方法、燃料流路内の毛管力で送液する方法などが挙げられる。
本実施形態において、単位電池303は、上記第1の実施形態と同様、アノード極403とアノード集電層405との間に、燃料流路408のアノード極403側の面を覆うようにして形成された燃料透過層410を備えている(図4参照)。燃料流路408に供給された液体燃料は、燃料透過層410を透過し、アノード極403で消費される。アノード極403で生成した二酸化炭素等の生成ガスは気泡となり、大きくなったところで排出流路407から排出される。排出流路407から排出された生成ガスは、ガス集約部にて集約され、ガス集約部が有する開口部または生成ガス誘導路のガス排出口から、燃料電池システムの外部へ排出される。
また、図4に示されるように、排出流路407内に、気液分離層409を設けることも好ましい。気液分離層409を設けることにより、燃料が排出流路407に漏洩することを防止できる。気液分離層409は、水、メタノール水溶液等の液体に対して不透過性であり、気体に対して透過性であって気液分離能を有する多孔質性材料からなる。また、気液分離層409を構成する材料は、アノード極403からアノード集電層405へ効率良く電子伝導を行なうという観点から、導電性を有していることが好ましい。気液分離層409に用いる材料としては、気液分離能を有する材料と、導電性を有する材料との混合物を用いることができる。このような混合材料としては、PTFE(Polytetrafluoroethylene)、PVDF(Polyvinylidenfluolide)等のフッ素系高分子と、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、アモルファスカーボン、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーンなどとの混合物を挙げることができる。
気液分離層を排出流路内に設ける場合において、気液分離層は、排出流路の深さ方向(アノード集電層の厚み方向)全体にわたって充填されてもよいが、少なくとも、アノード極に接するように形成されていればよい。また、気液分離層は、排出流路407の開口を塞ぐように、アノード集電層405表面に形成してもよい。気液分離層を設けることによって、排出流路407への燃料の浸入による生成ガスの外部への排出不良を防ぐことができ、安定した燃料電池スタックの出力特性を得ることができる。また、燃料が排出流路407を通り、燃料電池スタック外部へ漏洩することも防げるため、燃料電池スタックの信頼性も向上させることができる。
なお、本実施形態においても、1つのガス集約部が燃料電池スタックが備えるすべての単位電池に接続されている必要はない。たとえば、燃料電池スタックを構成する燃料電池ごとに、ガス集約部を設けるようにしてもよい。この場合、典型的には、1つの燃料電池が有するすべての単位電池に1つのガス集約部が接続され、燃料電池スタックに含まれる燃料電池の数と同じ数のガス集約部が設けられる。また、本実施形態においては、燃料電池スタックは、少なくとも1つの燃料電池の単位を有しており、燃料電池スタックが有する少なくとも1つの燃料電池層が有するすべての単位電池の端部にガス集約部が接続されていればよい。
本実施形態の燃料電池システムにおけるその他の構成および燃料電池システムの変形例については、上記第1の実施形態と同様とすることができる。
また、本実施形態の好ましい変形例として、燃料電池スタックがスペーサを有しない構成を挙げることができる。この場合、燃料電池スタックは、2以上の単位電池を、同一平面上に、好ましくは隙間を設けて配置してなる燃料電池層を1以上含む。燃料電池スタックが2以上の燃料電池層を備える場合、これらの燃料電池層は、一の燃料電池層を構成する単位電池のアノード極が、これに隣接する燃料電池層を構成する単位電池のカソード極と対向するように、好ましくは燃料電池層間に空間が形成されるように積層される。たとえば、ガス集約部である中空体の側面に、燃料電池層を構成する各単位電池の一端を差し込むための穴を、燃料電池スタックを構成する単位電池の数と同じ数だけ設けておき、当該穴に単位電池を差し込み、接続部分の外周をシール材で封止することで、各燃料電池層の間に空間が形成された、スペーサを有しない燃料電池システムを構築することができる。この場合、一の燃料電池層とこれに隣接する燃料電池層とは、たとえば、外部配線を介して電気的に直列接続される。単位電池の形状は、上記第1および第2の実施形態と同様とすることができる。上記のような燃料電池スタックを用いる場合、単位電池の内部構造は、図4に示したものと同様とすることができる。
<<第3の実施形態>>
図6は、本発明の燃料電池システムを備える電子機器の好ましい一例(携帯用途のノート型パーソナルコンピュータ)を模式的に示す斜視図である。図6に示される電子機器(ノート型パーソナルコンピュータ)600は、本発明に係る燃料電池システムまたは燃料電池スタックを搭載するための部位(空洞部からなる電池収容室)を有しており、当該部位に燃料電池システムまたは燃料電池スタック601を搭載可能となっている。搭載する燃料電池システム、燃料電池スタックは、それぞれ、たとえば図1、図2に記載のものを用いることができる。ただし、後述するように、電子機器に生成ガス誘導路が設けられる場合には、搭載される燃料電池システムは、生成ガス誘導路を有していなくてもよい。本発明の燃料電池システムを構成するガス集約部は、典型的には、搭載される燃料電池スタックにあらかじめ接合されており、かかる燃料電池システムを上記部位に組み込むことにより、燃料電池システムを備える電子機器が構築される。ただし、ガス集約部を電子機器に設けておき、上記部位に燃料電池スタックを組み込むことにより、電気機器内に燃料電池システムを構築してもよい。
図6に示されるように、電子機器600は、好ましくは、搭載される燃料電池システムが備えるガス集約部の開口部に接続される生成ガス誘導路605を備える。生成ガス誘導路605は、たとえば、電子機器600を構成するいずれかの構成部材(図6に示される例においては、ディスプレイ602が設けられている部材)の内部に空洞部を形成することにより形成することができる。生成ガス誘導路605の燃料電池システムまたは燃料電池スタック601を搭載するための部位側の開口は、燃料電池システムを当該部位に搭載する場合においては、当該開口と、ガス集約部の開口部とが接続可能な位置に配置される。電子機器600に搭載された燃料電池システムまたは燃料電池スタック601から排出された二酸化炭素等の生成ガスは、生成ガス誘導路605を通り、ガス排出口606から電子機器600の外部へ排出される。これにより、燃料電池スタックの各単位電池のアノード極で発生した生成ガスを、カソード極の空気と混合されることなく、電子機器600の外部に排出することができるため、カソード極での酸素分圧の低下による出力低下を防止することが可能となる。また、分離された二酸化炭素に含有される、メタノール水蒸気がカソード極側へ流入することで生じる内部電流による出力低下も防止することが可能となる。
このように、本発明の燃料電池システムを電子機器に搭載する場合、あるいは燃料電池スタックを電子機器に搭載し、本発明の燃料電池システムを備える電子機器を構築する場合においては、本発明の電子機器は、燃料電池システムまたは燃料電池スタックを収容する電池収容室を備えるものとすることが好ましく、電池収容室を構成する面には、電池収容室の内部と電子機器外部とを連通する開口が設けられていることが好ましい。電池収容室の好ましい例を具体的に示すと、電池収容室は、電子機器を構成するいずれかの構成部材の内部に、電池収容室の少なくとも一面が電子機器外部に面するように形成されており、この電子機器外部に面する面に上記開口が形成されているか、または当該面が壁面を有していない。より好ましくは、電池収容室は、空気供給効率向上の観点から、複数の上記開口を有するか、および/または壁面を有しない側面を2以上有している(後者については図6を参照)。このような壁面を有しない側面は、燃料電池システムまたは燃料電池スタックを搭載するための入り口として使用することができるため、壁面を有しない側面を少なくとも1つ有することが好ましい。搭載された燃料電池システムまたは燃料電池スタックが使用者の手に触れないよう、壁面を有しない側面には、たとえば、スリット状または格子状のカバーを設けることが好ましい。以上のように、電子機器が電池収容室を備える場合、ガス集約部は、燃料電池スタックが有する外面のうち、上記燃料電池システムまたは燃料電池スタックを搭載するための電池収容室が有する側面であって、燃料電池スタックに空気を供給するための上記開口が開いている側面または壁面を有しない側面以外の側面側に位置することとなる外面に隣接して設置されることが好ましい。図6に示される燃料電池システムを備える電子機器においては、横2面(図6に示される2つの空気供給面)において、上記燃料電池システムまたは燃料電池スタックを搭載するための部位に空気供給用の開口が設けられており、ガス集約部は、この2つの空気供給面側に位置しない燃料電池スタックの外面に隣接して設けられている。これにより、外部からの空気供給の経路を阻害することなく、ガス集約部を設置することが可能となる。
生成ガス誘導路605の電子機器における位置および生成ガス誘導路605の末端に位置するガス排出口606の電子機器における位置は特に制限されず、電子機器の種類等に応じて所望される位置とすることができるが、たとえばガス排出口は、電子機器において概して、次のような位置に配置することが好ましい。
(i)ガス排出口は、燃料電池システムまたは燃料電池スタックを搭載するための部位の側面に形成された、燃料電池スタックに空気を供給するための開口(空気供給面)からできるだけ離れた位置に設けることが好ましい。これにより、カソード極に供給される空気中にアノード極からの生成ガスが混合することによる出力低下を抑制することが可能となる。
(ii)ガス排出口は、電子機器の外縁に配置されることが好ましい。これにより、ガス排出口に上記したフィルタが設けられる場合、フィルタの交換が容易となる。
(iii)ガス排出口は、電子機器の使用者が、その使用時において、不快を感じない場所に配置することが好ましい。たとえば、電子機器のディスプレイなど、使用する電子機器において使用者が向かい合う面の裏側にガス排出口を設けることが好ましい。
(iv)ガス排出口は、電子機器の使用時において、燃料電池スタックよりも上部となるような位置に配置することが好ましい。これにより、アノード極からの温かい生成ガスが生成ガス誘導路で冷やされ、その内壁面で結露した場合においても、液滴は内壁面を伝って下部へ導かれるため、電子機器の使用状態において、電子機器外部に液滴が漏れることを防止することが可能となる。
図7は、本発明の燃料電池システムを備える電子機器の好ましい別の一例(携帯電話機)を模式的に示す斜視図であり、図7(a)は側面図、図7(b)は背面図である。図7に示される電子機器(携帯電話機)700は、本発明に係る燃料電池システムまたは燃料電池スタックを搭載するための部位を有しており、当該部位に燃料電池システムまたは燃料電池スタック701を搭載可能となっている。また、図6に示される電子機器600と同様に、電子機器に生成ガス誘導路705が設けられており、その末端がガス排出口706となっている。
図8は、図7に示される電子機器700が備える燃料電池システム701a(生成ガス誘導路705を含む)を模式的に示す図であり、図8(a)は背面図(図7(b)と同じ方向から見た図)、図8(b)は側面図(図7(a)と同じ方向から見た図)である。図8に示されるように、燃料電池システム701aを構成する燃料電池スタック701bは、上記第1の実施形態と同様、長辺と短辺を有する複数の短冊状の単位電池803を、同一平面上に、各単位電池803の間に隙間が形成されるように配置してなる燃料電池層と、長辺と短辺を有する複数の短冊状のスペーサ807を、同一平面上に、各スペーサ807の間に隙間が形成されるように配置してなるスペーサ層と、を交互に積層してなり、スペーサ807には、アノード集電層の貫通孔と連通する排出流路907が形成されている。また、燃料電池システム701aは、各スペーサ807に接続されたガス集約部802を備えており、ガス集約部802とスペーサ807の排出流路907とは連通している。また、ガス集約部802の空洞部と連通する開口部に、生成ガス誘導路705が接続されている。
燃料電池システムを備える電子機器700において、単位電池803のアノード極で発生した生成ガスは、スペーサ807に形成された排出流路907を通ってガス集約部802に集約され、ガス排出口706から電子機器の外部へ排出される。
図7に示される電子機器700においては、横3面と下部1面の計4面が空気供給面となっており(図8(a)参照)、ガス集約部802は、燃料電池スタック701bの上部面側(空気供給面とならない面側)に設けられている。これにより、外部からの空気供給の経路を阻害することなく、ガス集約部を設置することが可能となる。
図7に示される電子機器700においても、ガス排出口706は、電子機器700における上記好ましい位置に配置されることが好ましい。より好ましくは、ガス排出口706は、電子機器の一番上部でかつ前面に備えられたディスプレイの裏側(図7(b)が示す面)に備えられる。これにより、使用者が電子機器を使用する場合において、手で持つ際にガス排出口が塞がることを防止することができ、かつ使用者が不快を感じない場所から排出することが可能となる。
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<実施例1>
以下の手順で燃料電池システムを作製した。
(1)膜電極複合体の作製
まず、電解質膜として、幅25mm×長さ25mm、厚さが約175μmのNafion(登録商標)117(デュポン社製)を用意した。次に、Pt担持量が32.5質量%で、Ru担持量が16.9質量%のPt粒子とRu粒子とカーボン粒子とからなる触媒担持カーボン粒子(田中貴金属社製TEC66E50)と、20質量%のNafion(登録商標)を含むアルコール溶液(アルドリッチ社製)と、イソプロパノールと、アルミナボールと、を質量比で0.5:1.5:1.6:100の割合でテフロン容器に入れ、攪拌脱機を用いて500rpmで50分間の混合を行なうことにより、アノード触媒ペーストを作製した。
また、Pt担持量が46.8質量%のPt粒子とカーボン粒子とからなる触媒担持カーボン粒子(田中貴金属社製TEC10E50E)を用いたこと以外はアノード触媒ペーストと同様にしてカソード触媒ペーストを作製した。
続いて、アノード極の基材(アノード多孔質基材)として、外形が23mm×23mmで、片面にフッ素系の樹脂と炭素粒子からなる層で撥水処理されたカーボンペーパー(SGLカーボン社製:25BC)を用い、カーボンペーパーの撥水処理が施されている面に、上記アノード触媒ペーストを触媒担持量が2mg/cm2となるように、幅23mm×長さ23mmの正方形状の開口部を有するスクリーン印刷版を用いて、カーボンペーパーのマイクロポーラスレイヤーが形成されている面の全面にスクリーン印刷した。その後、スクリーン印刷されたアノード触媒ペーストを室温にて乾燥させて、約50μmの厚さの触媒層を有するアノード極を作製した。また、アノード極と同様にして、カーボンペーパー(SGLカーボン社製:25BC)に上記カソード触媒ペーストをスクリーン印刷し、約50μmの厚さの触媒層を有するカソード極を形成した。
ついで、上記の電解質膜を用い、電解質膜を挟んで、電解質膜の中心でアノード極とカソード極が重なり、アノード触媒層とカソード触媒層が電解質膜と接するようにして、下からアノード極、電解質膜、カソード極の順に積層した。50mm×50mmの正方形型の貫通穴を有する100mm×100mm、厚さ0.30mmの額縁状のテフロンスペーサ(テフロン(登録商標))の該貫通穴に、この積層体を設置した。これらを100mm×100mm、厚み3mmのステンレス板で挟んだ後、ステンレス板の厚み方向に130℃、5kgf/cm2で2分間熱圧着し、アノード極と電解質膜とカソード極とが一体化された膜電極複合体を作製した。作製した膜電極複合体を、外形2mm×25mm、電極部2mm×23mmとなるようにトリミングナイフで切断して、短冊状の膜電極複合体を作製した。
(2)アノード集電層の作製
図9に示されるアノード集電層905を次のようにして作製した。幅2mm、長さ25mm、厚さ300μmの耐硫酸性ステンレスSUS316L製平板に、エッチング加工により、直径300μmの貫通孔906を、長辺方向に3000μmピッチで、長辺と平行になるように空けることにより、当該平板の長辺と平行に延びる2列の貫通孔の列を形成した。ステンレス平板の短辺より3000μmのところから貫通孔906を形成した。同時にエッチング加工により、200μmの深さで、幅が800μmの溝を掘り、燃料流路1007を形成した。貫通孔906の端と、溝のエッジ間の間隔を左右それぞれ150μmずつ設けた。
次に、厚さ45μmのレジスト樹脂からなるドライフィルムをアノード集電層905に全面ホットラミネートし、フォトレジストマスクを用いて、露光後、現像、350℃でキュアーすることにより燃料透過層910を形成した(図9参照)。燃料透過層910は、燃料流路1007の幅800μmに対し、950μmの幅を有しており、燃料流路1007の溝を塞ぐように形成した。この際、燃料透過層910が左右75μmずつ溝からはみ出るようにした。ついで、燃料透過層910の真ん中に、10μm幅の複数の開孔を600μmピッチで、長手方向に一列に設けた(図示せず)。
(3)単位電池の作製
下からアノード集電層905、燃料透過層910、膜電極複合体(アノード極側が燃料透過層910側となるように積層)の順に積層した。50mm×50mmの正方形型の貫通穴を有する100mm×100mm、厚さ0.6mmの額縁状のテフロンスペーサ(テフロン(登録商標))の該貫通穴に、この積層体を設置した。これらを100mm×100mm、厚み3mmのステンレス板で挟んだ後、ステンレス板の厚み方向に130℃、5kgf/cm2で2分間熱圧着し、積層体を一体化し、単位電池を作製した。同様の方法により総数10個の単位電池を作製した。
(4)スペーサの作製
図10に示されるスペーサ1100を次のようにして作製した。外形1×20mm、厚み600μm、空隙率80%のチタン繊維焼結体(ベキニット社製)に、外形1×20mm、厚み100μmのチタン箔を外形が重なるように積層し、放電プラズマ焼結法によりチタン繊維焼結体とチタン箔を接合した。この接合体のチタン箔側に、深さ100μm、幅500μmの溝からなる排出流路1101を、接合体の中心に形成するとともに、接合体の総厚みが400μmとなるように、プレス成形してスペーサ1100を作製した。
(5)燃料電池単位の作製
単位電池の長辺を対向させ、対向する長辺同士の間に1mmの隙間を設けて、平面上に5個配置して第1の燃料電池層を作製した。次に、スペーサ1100の排出流路1101を形成している面であって、排出流路1101以外の部位に導電性ペースト(タムラ化研製:CARBOLLOID MRX―713J)をスクリーン印刷法により、塗布厚が30μm厚となるように塗布した。スペーサ1100を第1の燃料電池層の単位電池と直交させ、かつ、アノード集電層905の貫通孔906とスペーサ1100の排出流路1101面が重なるように2mmピッチで、計7本のスペーサ1100を、各スペーサの端が6mmずつ同じ方向にはみだすように配置して積層した。スペーサ1100と第1の燃料電池層が重ならない部分には、あらかじめ50μm厚のポリイミド粘着テープを積層しておくことで、ガス透過防止層を付与した。50mm×50mmの正方形型の貫通穴を有する100mm×100mm、厚さ1mmの額縁状のテフロンスペーサ(テフロン(登録商標))の該貫通穴に、この積層体を設置した。これらを100mm×100mm、厚み3mmのステンレス板で挟んだ後、ステンレス板の厚み方向に130℃、5kgf/cm2で30分間熱圧着し、積層体を一体化し、第1の燃料電池層と、7本のスペーサ1100からなるスペーサ層の積層体である燃料電池の単位を作製した。図11は、得られた燃料電池単位を概略的に示す上面図である。図11においては、アノード集電層905の貫通孔906と、スペーサ1100の排出流路1101との位置関係が明確に把握できるよう、第1の燃料電池層を構成する単位電池のアノード集電層を示している。
(6)燃料電池スタックの作製
第1の燃料電池層と同様にして、上記単位電池を用いて第2の燃料電池層を作製した。次に、上記の第1の燃料電池層とスペーサ層との積層体からなる燃料電池のスペーサ表面(第1の燃料電池層が積層されている側とは反対側の表面)に、導電性ペースト(タムラ化研製:CARBOLLOID MRX―713J)をスクリーン印刷法により、塗布厚が30μm厚となるように塗布した。次に、上記燃料電池単位のスペーサ層を介して、第1の燃料電池層の単位電池と第2の燃料電池層の単位電池とが同じ位置に重なり、第2の燃料電池層を構成する単位電池のカソード極とスペーサ1100とが対向するようにして、当該燃料電池単位に第2の燃料電池層を積層した。50mm×50mmの正方形型の貫通穴を有する100mm×100mm、厚さ1.5mmの額縁状のテフロンスペーサ(テフロン(登録商標))の該貫通穴に、この積層体を設置した。これらを100mm×100mm、厚み3mmのステンレス板で挟んだ後、ステンレス板の厚み方向に130℃、5kgf/cm2で30分間熱圧着し、積層体を一体化し、上から第1の燃料電池層、スペーサ1100からなるスペーサ層、第2の燃料電池層を順に積層した積層体を作製した。
続いて、上記燃料電池単位の作製方法と同様にして、第2の燃料電池層のアノード集電層に7本のスペーサ1100を積層し一体化し、燃料電池層とスペーサ層とを、それぞれ2層ずつ交互に積層してなる燃料電池スタックを作製した。なお、一体化において、額縁状のテフロンスペーサ(テフロン(登録商標))は厚み1.9mmのものを使用した。
(7)燃料電池システムの作製
外径360μmφ(内径150μmφ)のテフロンチューブ(テフロン(登録商標))を燃料流路1007の端部から燃料流路に挿入し、該チューブと燃料流路1007端部の隙間をエポキシ樹脂で埋め、乾燥させることで燃料供給の接続部を作製した。
次に、燃料電池層が配置されていない各スペーサ(計14本)のはみだした端部を、それぞれ、内径1.6mmφ(外径3.2mmφ)のタイゴンチューブ(商標)へ挿入し、隙間をエポキシ樹脂で埋め、乾燥させることで当該チューブとスペーサ1100の排出流路1101とをそれぞれ連結した。当該チューブと連結しない排出流路の他方の端部を、生成ガスが排出されないように、エポキシ樹脂を塗布し乾燥することで封止した。
次に、横2面が空気供給用の開口として開いている、外形幅3cm×奥行き3cm×高さ1cmのアクリル筐体内に、上記の燃料電池スタックを入れ、生成ガスがアクリル筐体の外部へ排出されるよう、各スペーサに連結された上記チューブの先端を、空気供給用の開口が無い面を貫通させ、各チューブの先端をアクリル筐体の外部へ引き出した。アクリル筐体における空気供給用の開口が無い面の外部側に、当該開口が無い面に隣接するように、ガス集約部として、外形が直方体形状であり、内部に空洞部を有するアクリルからなる中空部材を設置した。この中空部材は、その側面に設けられ、上記空洞部に連通する、集約された生成ガスを排出するための開口(ガス排出口)を備えており、また、当該ガス排出口が設けられた側面とは反対側の側面に突起状のコネクタを複数有している。当該コネクタに各チューブの先端を接続して、各チューブの内部とガス集約部の空洞部とを連通させた。
ポンプを用いて、3Mのメタノール水溶液を0.5cc/minの速度で、上記テフロンチューブ(テフロン(登録商標))から供給して発電評価を行なったところ、5分後に出力密度40mW/cm2が得られた。10分後の出力密度は同様に40mW/cm2であった。
<比較例1>
アクリル筐体の外部へ生成ガスを排出するための上記チューブおよびガス集約部を設けず、かつスペーサの排出流路の端部の封止を行なわなかった他は実施例1と同様にして燃料電池スタックを作製した。このとき、排出流路の両端部はアクリル筐体内にあるため、排出流路からの生成ガスはアクリル筐体内へ排出される。
実施例1と同様の条件で発電評価を行なったところ、5分後に出力密度35mW/cm2が得られた。10分後の出力密度は23mW/cm2まで低下した。実施例1の燃料電池スタックは、本発明に係るガス集約部を有するものではないが、ガス集約部を設けた場合においても実施例1の燃料電池スタックと同等の効果が得られることは容易に理解され、したがって、実施例1と比較例1の比較より、最大出力密度、安定性の両面において、本発明の燃料電池システムの発電特性が優れていることが理解される。
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
100,701a 燃料電池システム、101,201,701b 燃料電池スタック、102,802 ガス集約部、103,303,803 単位電池、104 開口部、105,605,705 生成ガス誘導路、106,606,706 ガス排出口、107,507,807,907,1100 スペーサ、110,310 第1の燃料電池層、115 第1のスペーサ層、120,320 第2の燃料電池層、125 第2のスペーサ層、130,140,330 隙間、150 ガス透過防止層、202,402 電解質膜、203,403 アノード極、204,404 カソード極、205,405,905 アノード集電層、206,906 貫通孔、207,407,907,1101 排出流路、208,408,1007 燃料流路、209,409 気液分離層、210,410,910 燃料透過層、600,700 電子機器、601,701 燃料電池システムまたは燃料電池スタック、602 ディスプレイ。

Claims (18)

  1. 燃料電池スタックとガス集約部とを備え、
    前記燃料電池スタックが有する単位電池のアノード極と前記ガス集約部とは、前記燃料電池スタックに設けられる生成ガス排出用流路によって連通している燃料電池システム。
  2. カソード極、電解質膜、アノード極およびアノード集電層をこの順で備える2以上の単位電池を同一平面上に配置してなる燃料電池層を1以上含む燃料電池スタックと、
    内部に空洞部を有する中空体であって、前記空洞部と連通する開口部を備えるガス集約部と、を備え、
    前記ガス集約部が有する前記空洞部と、前記燃料電池層のうち、少なくとも1つの燃料電池層が有するすべての単位電池のアノード極とは、前記燃料電池スタックに設けられる生成ガス排出用流路によって連通している請求項1に記載の燃料電池システム。
  3. 前記燃料電池スタックは、2以上の前記単位電池を同一平面上に配置してなる燃料電池層と、1以上のスペーサからなるスペーサ層とを、前記単位電池のアノード集電層が前記スペーサに接するように積層してなる燃料電池を1以上含み、
    前記ガス集約部が有する前記空洞部と、前記少なくとも1つの燃料電池層が有するすべての単位電池のアノード極とは、前記燃料電池の内部に設けられる生成ガス排出用流路によって連通している請求項2に記載の燃料電池システム。
  4. 前記ガス集約部は、少なくとも1つのスペーサ層が有するすべてのスペーサの端部と接続されており、
    前記生成ガス排出用流路は、
    前記単位電池のアノード集電層を厚み方向に貫通する貫通孔と、
    前記貫通孔と連通し、かつ、前記ガス集約部と接続される前記端部まで延びる、前記スペーサに形成される流路と、
    から構成される、請求項3に記載の燃料電池システム。
  5. 前記ガス集約部は、少なくとも1つの燃料電池層が有するすべての単位電池の端部と接続されており、
    前記生成ガス排出用流路は、前記単位電池のアノード極に接するように前記アノード集電層内に形成され、前記ガス集約部と接続される前記端部まで延びる流路から構成される、請求項2または3に記載の燃料電池システム。
  6. 前記燃料電池スタックは、前記燃料電池を2以上積層してなり、
    前記ガス集約部は、前記燃料電池スタックが有するすべてのスペーサの端部、または前記燃料電池スタックが有するすべての単位電池の端部と接続されており、
    前記ガス集約部が有する前記空洞部と、前記燃料電池スタックが有するすべての単位電池のアノード極とが、各燃料電池の内部に設けられる生成ガス排出用流路によって連通している請求項3〜5のいずれかに燃料電池システム。
  7. 前記燃料電池層は、2以上の前記単位電池を同一平面上に隙間を設けて配置してなる請求項2〜6のいずれかに記載の燃料電池システム。
  8. 1または2以上の前記ガス集約部を備え、
    前記ガス集約部のすべては、前記燃料電池スタックの1つの側面に隣接して配置される請求項2〜7のいずれかに記載の燃料電池システム。
  9. 前記ガス集約部は、前記開口部と接続される中空状の生成ガス誘導路を備える請求項2〜8のいずれかに燃料電池システム。
  10. 前記生成ガス誘導路における前記開口部側とは反対側の開口に、有害成分除去フィルタを備える請求項9に記載の燃料電池システム。
  11. 前記生成ガス誘導路の内壁面は、撥水処理が施されている請求項9または10に記載の燃料電池システム。
  12. 前記スペーサ層は、2以上のスペーサを同一平面上に隙間を設けて配置してなり、
    前記燃料電池において、前記燃料電池層が有する2以上の単位電池と、前記スペーサ層が有する2以上のスペーサとは、交差するように配置される請求項3〜11のいずれかに燃料電池システム。
  13. 請求項1〜12のいずれかに記載の燃料電池システムを備える電子機器。
  14. 請求項9〜11のいずれかに記載の燃料電池システムを備え、
    前記生成ガス誘導路は、内部に空洞部を形成した電子機器を構成するいずれかの構成部材からなる電子機器。
  15. 前記生成ガス誘導路における前記開口部側とは反対側の開口は、電子機器の外縁に配置される請求項14に記載の電子機器。
  16. 前記生成ガス誘導路における前記開口部側とは反対側の開口は、電子機器の裏側に配置される請求項14または15に記載の電子機器。
  17. 前記燃料電池システムは、電子機器内において、電子機器外部から前記燃料電池スタックの外面の少なくとも一部へ、空気を供給可能な位置に配置されており、
    前記ガス集約部は、電子機器外部から空気が供給される燃料電池スタックの前記外面とは、異なる外面に隣接して配置される請求項13〜16のいずれかに記載の電子機器。
  18. 前記燃料電池システムまたは前記燃料電池スタックを収容する電池収容室を備え、
    前記電池収容室は、前記電池収容室の内部と電子機器外部とを連通する開口を有する請求項17に記載の電子機器。
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