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JP2010143782A - 融液組成制御一方向凝固結晶成長装置および結晶成長方法 - Google Patents

融液組成制御一方向凝固結晶成長装置および結晶成長方法 Download PDF

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JP2010143782A JP2008321825A JP2008321825A JP2010143782A JP 2010143782 A JP2010143782 A JP 2010143782A JP 2008321825 A JP2008321825 A JP 2008321825A JP 2008321825 A JP2008321825 A JP 2008321825A JP 2010143782 A JP2010143782 A JP 2010143782A
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Abstract

【課題】大形で均一組成、歪みの小さな分解溶融型あるいは非調和組成物質の単結晶を高い歩留まりで成長させる方法を提供する。
【解決手段】成長結晶3の形状を規定する容器1内に種子結晶2と成長結晶3の大部分または一部となる組成の初期原料を収納し、るつぼ1を加熱して初期原料の全てと種子結晶2の一部を加熱融解して初期融液4とし、その後未融解種子結晶部2を種子として結晶成長を開始(種子付け)し、融液4を徐々に一方向から凝固させて所望の組成および形状の単結晶3を成長させる結晶成長方法において、初期融液4の組成と異なる組成の追加融液9を結晶成長工程で連続的にまたは間欠的にあるいは一時的に追加する方法と手段を適用して、初期原料融解と種子付け工程、結晶本体成長工程、結晶成長終了工程全ての結晶成長工程で必要かつ最適な融液組成を実現し一方向凝固結晶成長を実現する。
【選択図】図1

Description

本発明は、ブリッジマン法あるいは温度勾配凝固法と呼称されている一方向凝固法による主として酸化物単結晶育成技術分野に関わる。
特に分解溶融型の物質として温度と融液組成および結晶組成との関係(相図)が示される二元系以上の複雑な組成からなる物質の単結晶育成に関わる。
本発明は、融液組成を任意に制御しながら、一方向凝固法により大形で高品質な単結晶を育成するための結晶成長装置および結晶成長方法に関わる。
本発明は、主としてKTaO(KT)やKNbO(KN)の二元系酸化物単結晶育成に関わる。さらに、ランガサイト(LGS)、ランガテイト(LGT)等三元系以上の複雑な組成の酸化物単結晶育成にも拡張・適用することもできる。
垂直ブリッジマン(Vertical Bridgman:VB)法は使用するるつぼの形状で結晶形状が決まることから直径制御が不要で、低温度勾配下で成長結晶にやさしい温度環境下で結晶成長を行うことが可能であることから、大形の揃った結晶形状でかつ内部応力の少ない高品質な単結晶の育成が可能な結晶成長方法として期待されており、実際に化合物半導体のGaAsの製造に活用されている。また、育成が容易なフェライトのような全率固溶体においても、原料を供給しながら育成するVB法が使用されている。
例えば、特開昭62−148390号公報 例えば、川崎製鉄技報34(2002)3、116―119
しかしながら、VB法の適用は、育成容易な結晶でのみ実現しているのが実状で、結晶の成長方法として最も一般的である従来の回転引き上げ(Czochoralski:CZ)法でも原理的に難しいとされる分解溶融型の結晶での実用化は実現に至っていない。
分解溶融で優れた特性を有する結晶としてタンタル酸カリウム(KT)やニオブ酸カリウム(KN)、チタン酸リン酸カリウム(KTP)、ランガサイト(LGS)、ランガテイト(LGT)、Al置換ランガテイト(LGTA)などがある。
Jounal of Crystal Growth 267(2004)150 日本結晶成長学会誌Vol.32、No.4 日本結晶成長学会誌Vol.33、No.4
これらの材料に対して、垂直ブリッジマン(VB:Vertical Bridgeman)法による検討が行われている。
特開2005−219952号公報 特開2007−131470号公報 特開2007−223832号公報 特開2007−99579号公報 Jounal of Crystal Growth 304(2007)4 The 4th Asian Conference on Crystal Growth and Crystal Technology P−23EV−I−2−7
しかしながら、分解溶融型の単結晶を得るための従来のVB法に関連する作製技術には、次のような解決すべき課題があった。すなわち、分解溶融型物質の単結晶をVB法で育成する場合、種子結晶が融点以下の温度でも一部が溶解することから、単結晶種子付けが非常に難しいことが大きな課題として残されていた。
また、分解溶融型の単結晶のVB法に関連した、結晶の均一性を高める技術として、特許文献5において、組成の違う原料を積み重ねて、種子結晶に近い原料のランタン(La)およびタンタル(Ta)の含有量を減らすことで、異相の発生を抑制し均質結晶が育成できるとされている。しかしながら、容器の上部が高温で、下部が低温といえども、液体の対流や拡散を完全になくすことはできない。そのため、原料を溶解した後、数十分から1時間程度で終了するような結晶育成には有効であるが、育成時間が数時間以上に渡る場合には活用することが出来ない。
特開2007−238417号公報
一方で、VB法で均一結晶を得るための従来技術として、原料を供給しながら育成するVB法がフェライトで使用されている。しかしながら、本従来技術は、育成が容易なフェライトのような全率固溶体に有効であるが、その技術を育成が難しい分解溶融結晶に単純に横展開することはできない。
特開昭62−148390号公報 川崎製鉄技報34(2002)3、116―119 など
本発明は、上記したような課題を解決することを目的とした酸化物単結晶の製造方法に関するものであり、成長結晶の形状を規定する容器(以下るつぼと呼称)内に種子結晶と、成長結晶の大部分または一部となる組成の原料(初期原料)を収納し、該るつぼを加熱して該初期原料の全てと種子結晶の一部を融解して初期融液とし、その後未融解種子結晶部を種子として該初期融液を徐々に凝固させて所望の組成および形状の単結晶を成長させる結晶成長方法において、初期融液の組成と異なる組成の一定量の追加原料を間欠的にまたは連続的にあるいは一度にるつぼ内融液に追加する手段を備えたことを特徴とする融液組成制御一方向凝固結晶成長装置および結晶成長方法である。
この場合、上記した単結晶を成長させる装置は、ほぼ垂直軸対称性のるつぼおよび発熱体を適用し、該るつぼ下部に配置した種子結晶側から上部融液側に向かって一方向凝固する結晶成長形態であることが好ましい。また、上記の追加原料は固体であっても融液であってもよく、母体融液4の高さや、求められる結晶品質により使い分けることができる。
図1は、本発明の課題解決手段の一例として、VB法結晶育成用ホットゾ−ンに新たに追加原料供給機能を付加した融液組成制御一方向凝固結晶成長装置のホットゾ−ン構造の模式図を示す。
図3はVB法による単結晶成長の基本的な結晶育成工程を示す説明図である。図3において、主発熱体5によって実現された炉内温度分布12の下で最初に行う原料融解工程では、種子結晶2および初期原料13を収納したるつぼ1を上方に徐々に押し上げ(図3(b))、初期原料13の上部が育成結晶物質の融点(Tm)以上になるまで上昇すると初期原料13の一部が融解(図3(c))する。次に種子付け工程では、さらにるつぼ1を押し上げ種子結晶2の一部を融解した状態でるつぼ1の押し上げを停止し、種子結晶2と融液の境界面(種子付け界面)を安定させ種子付けを完了する(図3(d))。引き続き結晶育成工程では、種子付け工程で停止していたるつぼ1を所望の速度で下方へ引き下げを開始し、その後一定の速度でるつぼ1の下降を継続する。この場合、るつぼ1の下降に伴って成長結晶3の部分を増加させながら結晶育成工程が進行する(図3(e))。最後に結晶育成終了工程では、るつぼ1内融液4を全部結晶化させて、結晶育成を終了する。
本発明は、上述のようなVB法結晶育成基本工程において、図1の上部に新たに設置構成した補助発熱体7によって実現した追加融液9または追加原料11を適宜追加し、母体融液4の融液組成を精密に制御することで、所望の組成そして大きさ、および結晶品質を実現するものである。以下に代表的な分解溶融型物質であるKT結晶の育成を例にあげて発明の詳細について説明する。尚、以下はKT単結晶育成を例にして詳述したが、同様の相図を有するKN結晶をはじめ同類の他の単結晶成長にも本発明の思想や手法、技術は適用できることは論を待たない。
図4及びその拡大図である図5に代表的な分解溶融型物質であるKTに関するKO−Ta系の相図の概念図を示す。分解溶融型というのは、この図からわかるとおり、結晶組成、即ちKOが50mol%近傍の組成に関して、結晶が分解する温度が、液相線よりも低い温度に存在するというものである。
一般に、高い品質の結晶育成を行うために、結晶育成を開始する前に、融液となる原料粉末を完全に融かす、ソーキングと呼ばれる工程が必要となる。CZ法などの方式では、種子結晶を原料粉末と空間的に切り離すことが可能であるため、分解溶融型の結晶育成においても、分解温度より十分低い温度の場所に種子結晶を避難させておくことでソーキング工程は可能となる。しかしながら、VB法においては、種子結晶と原料粉末が終始接触した状態にあるため、結晶が分解もしくは融ける温度以上に温度を上げることは出来ず、液相線が種子結晶の分解温度よりも高い分解溶融型の場合にはソーキングはできない。即ち、KTの場合、初期融液は図5の点P(x=x)よりKOの濃度が高い状態にする必要がある。しかしながら、るつぼ1内に充填する種子結晶2はほぼ化学量論組成のKTを適用することから、育成時の融液組成もほぼ化学量論組成であるO点、即ち図5におけるx=x≒0の状態とすることが最も好ましい。そこで、初期融液は図5の点P(x=x)よりKOの濃度が高い状態にしておき、ソーキング工程の直後に一時的に追加する追加原料組成を概略K1−xTa1+x(0<x≦0.1)とすることで融液をO点(x=x≒0)に近づけることができる。ここでxの値は初期融液量および追加融液量との関係で決定される数値となる。
次に結晶本体部の結晶成長工程における追加原料の追加に関しては、育成したい結晶の特性(必要とする組成とその均一性など)によって、複数の工程が考えられる。例えば調和組成から均一組成の結晶育成を行う場合は、結晶成長開始後の早い時期に、K1−xTa1+x(0<x≦0.1)の追加融液を一時的あるいは間欠的に追加し、十分混合後の母体融液の組成が図5の相図におけるO(x=x)となるように調整して追加工程を終了する。この場合、成長するKT結晶の組成はK1−xoTa1+xoで、調和組成での成長と同様の一定の均一組成の単結晶を育成することが可能となる。
前期母体融液の組成を種子付け工程後特別な追加融液を追加しないで、即ち図5におけるP点の状態のままで結晶本体の結晶成長を行ことも可能である。この場合、結晶成長後半になって母体融液の組成は徐々にKリッチの方向へ移動し(融点も下降)、最終固化部において母体融液は概略Q点となり、融液組成はK0.67Ta1.333となり、ついには複数の異相が固化・凝集して結晶成長を終了する。この異相は育成結晶に応力を加え、結晶の内部歪やクラックを発生させてしまう。そのため、結晶成長の終了時に融液の組成を異相が発生しない状態にすることが必要となる。
一方で、本発明により所定の追加融液を結晶成長に伴って連続的に追加することにより、図5の相図においてP点(x=x)からO点(x=x)の範囲で均一な母体融液組成から所望の均一組成のKT単結晶を育成することも可能であることは相図の解析・検討からも明らかである。
本発明は、上記の種子結晶がニオブ酸カリウム(KNbO)またはタンタル酸カリウム(KTaO)等で代表される分子式ABOで示されかつ分解溶融型の固溶体結晶である場合に適している。その場合、初期原料組成がA1+x1−x(0≦x<0.2)で、追加原料組成がA1−x1+x(0≦x≦0.2)であり、初期原料の融解終了時あるいは融解終了直前または直後の状況下において、一時的、あるいは一度に、該追加原料をるつぼ内融液に追加する工程を有することが望ましい。
さらに、追加原料を追加して種子付け工程を終了し、その後の結晶本体成長工程において、前記追加原料とは異なる第2の追加原料組成(A1−x1+x(0≦x≦0.02))の固体または融液を結晶成長の進行と連動させて連続的にるつぼ内融液に追加する工程を有することが望ましい。また、結晶成長の終了工程において、各々の結晶成長工程歴に応じて最適な第3の追加原料組成(A1+x1−x(0≦x≦0.2))の融液を一時的にるつぼ内融液に追加する工程を有することが望ましい。
さらに本発明は、種子結晶が分子式A0.50.514で示され、かつ分解溶融型の三元系あるいは擬三元系酸化物の固溶体結晶である場合にも有効となる。
上記の種子結晶の分子式A0.50.514において、Aがランタン、Bがガリウム、CおよびDが珪素である場合には、初期原料組成が化学式LaGaSiO14に0より多く、2mol%以下の過剰成分を加えた状態で、第1の追加原料組成が化学式LaGaSiO14から該過剰成分を差し引いた状態であり、初期原料の融解終了時あるいは融解終了直前または直後の状況下において、一時的、あるいは一度に、該追加原料をるつぼ内融液に追加する工程を有することが望ましい。また、追加原料を追加して種子付け工程を終了し、その後の結晶本体成長工程において、前記追加原料とは異なる原料組成、すなわち化学式LaGaSiO14に0より多く、2mol%以下の過剰成分を加えた状態の、最適な第2の追加原料組成の固体または液体を結晶成長の進行と連動させて連続的にるつぼ内融液に追加する工程を有することが望ましい。さらに、結晶成長の終了工程において、化学式LaGaSiO14に0より多く、2mol%以下の過剰成分を加えた状態の、最適な第3の追加原料組成の融液を一時的にるつぼ内融液に追加する工程を有することが望ましい。このAがランタン、Bがガリウム、CおよびDが珪素である場合における過剰成分とはLa、Ga、Siの何れかの成分を指す。もちろん、結晶に何らかの添加物が必要な場合は、その添加物の成分も過剰成分に含まれることになる。また、第1、第2および第3の追加原料組成における最適な状態とは、上記した組成制御の思想を満足するような状態を示す。
また、上記の種子結晶の分子式A0.50.514において、Aがランタン、Bがガリウム、Cがガリウム、Dがタンタルである場合には、初期原料組成が化学式LaGa5.5Ta0.514に0より多く、2mol%以下の過剰成分を加えた状態で、第1の追加原料組成が化学式LaGa5.5Ta0.514から該過剰成分を差し引いた状態であり、初期原料の融解終了時あるいは融解終了直前または直後の状況下において、一時的、あるいは一度に、該追加原料をるつぼ内融液に追加する工程を有することが望ましい。また、追加原料を追加して種子付け工程を終了し、その後の結晶本体成長工程において、前記追加原料とは異なる原料組成、すなわち、化学式LaGa5.5Ta0.514に0より多く、2mol%以下の過剰成分を加えた状態の、最適な第2の追加原料組成の固体または液体を結晶成長の進行と連動させて連続的にるつぼ内融液に追加する工程を有することが望ましい。さらに、結晶成長の終了工程において、化学式LaGa5.5Ta0.514に0より多く、2mol%以下の過剰成分を加えた状態の、最適な第3の追加原料組成の融液を一時的にるつぼ内融液に追加する工程を有することが望ましい。このAがランタン、Bがガリウム、Cがガリウム、Dがタンタルの場合における過剰成分とはLa、Ga、Taの何れかの成分を指す。もちろん、結晶に何らかの添加物が必要な場合は、その添加物の成分も過剰成分に含まれることになる。この第1、第2および第3の追加原料組成における最適な状態とは、上記した組成制御の思想を満足するような状態を示す。
結晶成長部分、即ち成長結晶3と母体融液4の境界部分における上下方向の温度勾配は、結晶を安定成長させるために0.1℃/mm以上で5℃/mm以下の範囲である必要がある。さらに結晶品質を考えると0.25℃/mm以上で2℃/mm以下、望ましくは0.5℃/mm以上で1℃/mm以下の値が適切であることを経験的に確認している。
一方で、VB法は高い生産性が必要な場合に有効な手段であるため、ある程度の速さの成長速度で所望の結晶品質を有する結晶製造を実現させる必要がある。しかしながら、分解溶融を示す相図の結晶成長においては、成長速度を高めるとセル成長と呼ばれる不安定成長が生じ、結晶内に溶液過剰成分の取り込みなどの欠陥を生じる。
セル成長の生じやすさは成長速度に比例し、温度勾配に反比例するとされているため、材料による補正係数を用いることで、その発生条件を次のような式で表すことが出来る。

溶液の過剰成分濃度 < G/R × N

G:結晶成長部分における温度勾配(℃/mm)
R:結晶成長速度(mm/h)
N:補正係数
この補正係数Nは、育成溶液の粘性など材料特有の成長状態の差を示すもので、KTやKNで5、LGSやLGTで1程度の値となることが実験経験的に確認されている。また、これらの結晶に、他の元素を添加するような場合においても、その偏析係数が1に近い場合は、この補正係数の値が有為的な大きさで変化することはない。
VB法は高い生産性が必要な場合に有効な手段であり、実用上、最低0.5mm/hr以上の成長速度が必要となる。その場合、式(1)から、KTやKNの場合はメルト中の過剰成分の濃度は10mol%以下、LGSやLGTの場合は2mol%以下である必要がある。
一方で、電子デバイスといった高い生産性が要求される用途においては、1mm/hr以上、望ましくは1.5mm/hr以上の成長レートが必要となる。
その場合、KTやKNにおいてはメルト中の過剰成分の濃度は、1mm/hr以上において5mol%以下、1.5mm/hr以上において3.3mol%以下とする必要がある。
また、LGSやLGTの場合においては、1mm/hr以上において5mol%以下、1mol%以下、1.5mm/hr以上において0.66mol%以下とする必要がある。
本発明は、大形で高品質単結晶成長技術として半導体結晶製造分野で多用され実績のあるブリッジマン法あるいは温度勾配凝固法結晶育成技術に関して特に垂直ブリッジマン(VB)法を、分解溶融型物質の融液からの単結晶成長あるいは調和融液組成以外の融液からの単結晶成長等に適用する場合の従来のVB法に内在する課題に解決を与えるものである。
本発明の改良VB法結晶育成装置および育成制御方法の実現・実施により、上述のように複雑な融液組成と結晶組成の関係(相図)を示す各種の酸化物系単結晶が工業的・量産的に製造が可能になり、従来電気電子応用デバイスおよび光応用デバイス分野で強いニ−ズがあっても実現できなかったあるいは実現できても非常に高価の結晶として実用には供されなかった多数の単結晶材料の実現が可能になる。
以下、本発明の最良の形態について詳細に説明する。なお、本発明の製造方法は、下記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、行い得る変更、改良等を施した種々の形態にて実施することができる。
原料の調合として、結晶育成に必要な成分、例えばKTであればKCOとTa、KNであればKCOとNb、LGSであればLa、Ga、SiO、LGTであればLa、Ga、Taなどの原料粉末を準備し、適切な初期原料組成および追加原料組成となるように秤量する。
次に秤量した原料を800℃以上の温度で焼結し、各々を静水圧でラバープレス成形し、原料塊を作製する。使用する材料の純度は、用途によって異なるが、電子デバイスや光デバイス用途に対しては4N以上であることが望ましい。また、結晶への元素添加や元素置換を行う場合は、秤量の段階でその添加あるいは置換元素を加えておくことが望ましい。
さらに、追加原料については、更に二次焼結として1000℃以上の温度で焼結して、粉砕し、大きさが50ミクロン以上500ミクロンのサイズの範囲で分級する工程が加わる。もちろん、図2に示すような、追加原料を塊で使用する場合にはこの分級の工程は不要となる。
図1は本発明に用いた育成炉を模式的に示すものである。先ず、るつぼ1内の底部に種子結晶2を充填し、この種子結晶上に初期原料13を充填する。次に、種子結晶2と初期原料13を充填したるつぼ1を主発熱体5、6の内部に配し、底部をるつぼ駆動部により支持する。次に、るつぼ1の上部に補助るつぼ8あるいは追加原料棒14を位置させる。るつぼ1や補助るつぼ8は、白金製が望ましいが、白金−ロジウムのような合金でもよく、さらには、その他の貴金属やモリブデン、炭素といった反応性の低い材料であってもよい。
図1の本発明に関わる原料供給機構を付加した融液組成制御一方向凝固結晶成長装置のホットゾ−ン構造模式図において、補助発熱体7は主発熱体5、6とは独立に補助るつぼ9を加熱出来る構成とし、該補助発熱体の加熱温度の変化は主発熱体の加熱で実現される結晶育成るつぼ1内の母体融液4や成長結晶3の温度や熱の流れに出来るだけ影響を与えないような構造であることがより好ましい。
追加融液8の追加方法に関しては、従来追加原料容器10から固形の原料を直接母体融液に投下する方法が適用されているが、本発明に関わる原料の追加方法は、一旦補助るつぼ8に固形の追加原料を所定の量、所定の速度で、連続的に投下し、補助発熱体からの加熱によって融液となし、かつ融解後の融液温度が母体融液と適正な温度関係に調節された後に適正量が連続的にあるいは間欠的にまたは一時的に母体融液に滴下されるものである。
勿論、該補助発熱体を新たに設けずに主発熱体の上部を活用することも可能である。また、原料供給としては、図2に示されるように追加原料棒14をぶらさげるタイプでも可能であり、求められる結晶品質により使い分けることができる。
また、補助るつぼ8の底部の中央部に1本ないし複数本の中空のパイプを配することで、このパイプからるつぼ1内へ追加原料9を滴下することができる。この補助るつぼ8の底部に設置するパイプの上端は、補助るつぼ8の底面に対して、5mm程度上に位置させることが望ましい。もちろん、上記のようなパイプを使用せずに、単に補助るつぼ8の底に穴を開けるだけでも供給は可能であり、補助るつぼ8の形状や供給の必要精度、温度条件によって使い分けることができる。
次に、結晶育成工程を示す図3のとおり、最初に行う原料融解工程として、図3(b)に示されるように、種子結晶2および初期原料13を収納したるつぼ1を上方に徐々に押し上げる。これにより、るつぼ1の温度が炉内温度分布12に従って上昇し、図3(c)に示されるように、初期原料13の一部の融解が行われる。図3(d)に示されるように、初期原料13が十分に融解し、さらに種子結晶2の一部を融解した状態で、るつぼ1の押上げを停止し種子付け工程を行う。引き続き結晶育成工程では、種子付け工程で停止させていたるつぼ1を下方へ引き下げを開始する。これにより、図3(e)に示されるように、るつぼ1を下降させるに従って成長結晶3の部分を増加させながら結晶育成工程が進行する。
図3(d)もしくは図3(e)の適当なタイミングにおいて、適当なスピードで追加原料13を補助るつぼ8へ供給し、融解して追加融液9として、母体融液4へ滴下させる。特に、追加融液を追加し種子付けを実現する工程においては、種子付け界面近傍の温度および温度分布を適正な状態に制御・管理の下で、初期原料の融解終了時あるいは融解終了直前または直後と判断される時点に、出来るだけ短時間で行うことがより好ましく、一時的に該追加原料をるつぼ内融液に追加することが好ましく、その後初期融液と追加融液が十分混合した時点を種子付け工程が終了したと判断し、この種子付け工程を確認して後、るつぼ1を規定の速度で下降を開始し、結晶本体の一方向凝固結晶成長工程に移行する。
結晶育成工程におけるるつぼ1の回転に関しては、従来の一定方向に一定の回転を与える回転条件に加えて、追加融液が間欠的あるいは一時的に多量に追加された場合、追加融液と母体融液の攪拌混合を促進することを目的に、回転速度の加速、減速あるいは回転方向の逆転などの制御を行うことが望ましい。
最終的に全ての融液が結晶化した時点で、るつぼ1の下降を停止し、炉内温度を室温まで降下する。十分に結晶の温度が下がった段階で、炉から結晶を取り出し、機械的、あるいは化学的にるつぼ1を除去し、結晶インゴットを取り出して終了となる。
以下に本発明の実施例を示す。
(実施例1)KT単結晶を本発明による方法で育成した。材料純度4NのKO、Taの原料粉末を準備し、初期原料組成が、K1.02Ta0.98の融液原料と、追加原料組成がKTaOの追加原料と、第2の追加原料としてK0.8Ta1.2を各々混合した。次に、各々の原料を約800℃の大気中で焼結し、各々を約98MPaの静水圧でラバープレス成形し、原料塊を作製した。このうち、KTaOとK0.8Ta1.2原料塊を、追加用原料として、更に二次焼結として約1000℃の大気中で焼結し、粉砕し、大きさが50ミクロン以上500ミクロンのサイズの範囲で分級した。次に、VB法による単結晶育成を行った。
るつぼ1は、白金製の茶筒形を使用し、そのディメンションとしては、直径10mm〜1インチφ、長さ100mm、厚さ0.1mmとした。補助るつぼ8は白金製の円筒形を使用し、そのディメンションとしては、1.5インチφ×50mmh、厚さ1mmを使用した。この補助るつぼ8の底部中央部に内径4mmφの中空パイプを配した。
るつぼ1内部には、下部に種子結晶2としてKT単結晶を充填し、この種子結晶上に初期原料13(作製したK1.02Ta0.98の原料からなる原料塊を)を充填した。結晶育成工程を示す図2において、最初に行う原料融解工程では、図2(b)に示されるように、種子結晶2および初期原料13を収納したるつぼ1を上方に徐々に押し上げる。これにより、るつぼ1の温度が炉内温度分布12に従って上昇し、図2(c)に示されるように、初期原料13の一部の融解が行われる。図2(d)に示されるように、初期原料13が十分に融解し、さらに種子結晶2の一部を融解した状態で、るつぼ1の押上げを停止し種子付け工程を行う。引き続き結晶育成工程では、種子付け工程で停止させていたるつぼ1を0.5〜1.0mm/hの速度で下方へ引き下げを開始する。この際、るつぼ1を下降させるとともに、同時に、順方向(又は順方向と逆方向へ交互)に0〜30rpmの回転速度により回転させた。
結晶成長開始直後に、追加原料組成がKTaOの追加原料13を補助るつぼ8へ供給し、融解して追加融液9として、母体融液4へ滴下させた。この際、追加原料13の供給は、成長結晶3の成長速度に合わせて、単位時間当たり一定量ずつ連続的に供給した。
そして、融液が所定の固化率95%になった時点で、KTaO組成の追加原料13の連続的供給を停止し、これに変わって第2の追加組成であるK0.8Ta1.2を追加し、母体融液4の組成がKTaOに達した時点で停止する。その後、全ての融液を結晶化させて、るつぼ1の下降を停止する。この後、1〜3℃/minの冷却速度により、炉内温度を降下させる。得られたKT結晶は結晶終端部に異相がなく、結晶色は95%の固化率の範囲で赤褐色であった。また肉眼での種子付け部分を観察したが、クラックや介在物がない良好な種子付けができていることを確認した。
(実施例2)本発明を用いたKT単結晶育成において、材料純度4NのKO、Taの原料粉末を準備し、初期原料組成が、K1.1Ta0.9の融液原料と、追加原料組成がKTaOの追加原料と、第2の追加原料としてK0.8Ta1.2を各々混合した。次に、各々の原料を約800℃の大気中で焼結し、各々を約98MPaの静水圧でラバープレス成形し、原料塊を作製した。このうち、KTaOとK0.8Ta1.2原料塊を、追加用原料として、更に二次焼結として約1000℃の大気中で焼結し、粉砕し、大きさが50ミクロン以上500ミクロンのサイズの範囲で分級した。初期原料組成をK1.1Ta0.9、種子結晶をKT単結晶とし、他は実施例1と同様に育成を行った。得られた単結晶は、異相がなく結晶色は95%の固化率の範囲で白色であった。また肉眼での種子付け部分を観察したが、クラックや介在物がない良好な種子付けができていることを確認した。
(実施例3)本発明を用いたKT単結晶育成において、材料純度4NのKO、Taの原料粉末を準備し、初期原料組成が、K1.16Ta0.84の融液原料と、追加原料組成がKTaOの追加原料と、第2の追加原料としてK0.8Ta1.2を各々混合した。次に、各々の原料を約800℃の大気中で焼結し、各々を約98MPaの静水圧でラバープレス成形し、原料塊を作製した。このうち、KTaOとK0.8Ta1.2原料塊を、追加用原料として、更に二次焼結として約1000℃の大気中で焼結し、粉砕し、大きさが50ミクロン以上500ミクロンのサイズの範囲で分級した。初期原料組成をK1.16Ta0.84、種子結晶をKT単結晶とし、他は実施例1と同様に育成を行った。得られた単結晶は、異相がなく結晶色は95%の固化率の範囲で濃紺色であった。また肉眼での種子付け部分を観察したが、クラックや介在物がない良好な種子付けができていることを確認した。
(比較例)比較のために、母体融液組成を種子付け工程後、特別な追加融液を追加しないで結晶成長を行った。母体融液組成として、K1.02Ta0.98、K1.1Ta0.9、K1.16Ta0.84を用い、追加融液を追加しない以外は実施例1と同様にしてKT単結晶の製造を行った。各実験で得られた結晶をそれぞれ比較例1、比較例2、比較例3とする。
KT単結晶は、母体融液組成が異なると得られる結晶色が異なることが知られている。図5によれば、融液のKOが51〜52モル%のとき結晶色は赤褐色、52〜65モル%のときは無色透明、65〜67モル%のときは濃紺色となる。
比較例1のKT単結晶の色は、育成長が長くなるに従い、赤褐色、無色透明、濃紺色と変化し、終端部に異相が固化していた。比較例2のKT単結晶の色は、種子付け直後が無色透明であるのが比較例1と異なっているが、育成長が長くなるに従い、濃紺色と変化し終端部に異相が固化していた。比較例3のKT単結晶の色は、種子付け直後から終端部まで濃紺色の結晶であり、終端部に異相が固化していた。これらの結果は、原料追加を行わない場合、育成長が長くなるに従い、母体融液の組成が徐々にKリッチ方向にシフトし、育成終端部ではKOが67モル%の共晶組成になって育成終了することを示している。
次に、KT単結晶育成においての本発明が適用できる組成範囲について実験を行った。初期母体融液組成K1+xTa1−xにおいて、x=−0.1、0、0.1、0.19、0.2の5種類、追加原料組成K1−xTa1+xにおいて、x=−0.1、0、0.1、0.2、0.21の5種類について、全ての組み合わせを実施例1と同様にしてKT単結晶の製造を行った。その際、第2の追加組成は、K0.8Ta1.2に固定した。
表1に全ての組み合わせによる育成結果を示す。種子付けが良好であり均一結晶が得られた場合を○、種子付けで不具合が生じたものおよび不均一結晶が得られた場合を×と表記した。表1の結果から、初期母体組成がK1+xTa1−x(0≦x<0.2)であり、追加原料組成がK1−xTa1+x(0≦x≦0.2)の範囲で育成することで、異相のない均一な結晶が得られることがわかった。

○:種子付けが良好でかつ均一結晶が得られた場合
×:良好な結晶が得られなかった場合(種子付けの不具合、もしくは結晶が不均一)
次に、KT単結晶育成においての結晶成長終了工程での第2の追加組成の範囲について調べた。初期母体組成および追加組成を実施例1と同様とし、結晶成長終了工程での第2の追加原料の組成K1−xTa1+xとして、x=−0.1、0、0.1、0.2、0.21の5種類について、その他の条件は実施例1と同様として育成を行った。
表2に第2の追加組成についての結果を示す。結晶終端部に異相が生じなかった場合を○、結晶終端部に異相が生じていた場合を×と表記した。表2の結果から、第2の追加原料組成がK1−xTa1+x(0≦x≦0.2)の範囲で育成することで、結晶終端部に異相のない結晶育成ができることを確認した。

○:結晶終端部に異相が生じなかった場合
×:結晶終端部に異相が生じていた場合
本発明により、種子付けが良好であり、結晶の固化率95%の範囲で組成が均一であり、かつ結晶終端部に異相が生じないKT単結晶の育成に成功した。
(実施例4)本発明により非調和融解組成のランガサイト単結晶の育成を行った。純度4NのLa、Ga、SiOの原料粉末を準備し、初期原料組成が、LaGa5.04Si0.9814の融液原料と、追加原料組成がLaGaSiO14の追加原料と、第2の追加原料としてLaGa4.9Si1.0514を各々混合した。次に、各々の原料を約1300℃の大気中で焼結し、各々を約98MPaの静水圧でラバープレス成形し、原料塊を作製した。このうち、LaGaSiO14とLaGa4.9Si1.0514原料塊を、追加用原料として、更に二次焼結として約1400℃の大気中で焼結し、粉砕し、大きさが50ミクロン以上500ミクロンのサイズの範囲で分級した。初期原料組成をLaGa5.04Si0.9814、種子結晶をランガサイト単結晶とし、他は実施例1と同様に育成を行った。得られた単結晶は、種子付けも良好で、終端部に異相がなかった。肉眼で観察したところ、結晶全体にクラックがないことを確認した。また、クロスニコルで結晶の内部応力を確認したところ、非常に少ないことを確認した。
(比較例4)比較のために、母体融液組成を種子付け工程後、特別な追加融液を追加しないで結晶成長を行った。母体融液組成として、LaGaSiO14を用い、追加融液を追加しない以外は実施例4と同様にしてランガサイト単結晶の製造を行った。本実験で得られた結晶を比較例4とする。得られた単結晶は、固化率30%の部分から結晶終端まで結晶の縁に白色の異相が付着しており、異相部分から多数のクラックが生じていた。
実施例4と比較例4を比較することにより、本発明により非調和融解組成のランガサイト単結晶の育成においても、クラックがなく、内部応力の少ない高品質な単結晶の育成に成功した。
(実施例5)本発明により非調和融解組成のランガテイト単結晶の育成を行った。純度4NのLa、Ga、Taの原料粉末を準備し、初期原料組成が、La2.98Ga5.52Ta0.514の融液原料と、追加原料組成がLaGa5.5Ta0.514の追加原料と、第2の追加原料としてLa3.1Ga5.4Ta0.514を各々混合した。次に、各々の原料を約1300℃の大気中で焼結し、各々を約98MPaの静水圧でラバープレス成形し、原料塊を作製した。このうち、LaGa5.5Ta0.514とLa3.1Ga5.4Ta0.514原料塊を、追加用原料として、更に二次焼成として約1400℃の大気中で焼結し、粉砕し、大きさが50ミクロン以上500ミクロンのサイズの範囲で分級した。初期原料組成をLa2.98Ga5.52Ta0.514、種子結晶をランガテイト単結晶とし、他は実施例1と同様に、LaGa5.5Ta0.514からなる組成の第一追加原料およびLa3.1Ga5.4Ta0.514からなる組成の第2の追加原料を用いて単結晶育成を行った。得られた単結晶は、種子付けも良好で、終端部に異相がなかった。肉眼で観察したところ、結晶全体にクラックがないことを確認した。また、クロスニコルで結晶の内部応力を確認したところ、非常に少ないことを確認した。
(比較例5)比較のために、母体融液組成を種子付け工程後、特別な追加融液を追加しないで結晶成長を行った。母体融液組成として、LaGa5.5Ta0.514を用い、追加融液を追加しない以外は実施例5と同様にしてランガテイト単結晶の製造を行った。各実験で得られた結晶を比較例5とする。得られた単結晶は、固化率30%の部分から結晶終端まで結晶の縁に白色の異相が付着しており、異相部分から多数のクラックが生じていた。
実施例5と比較例5を比較することにより、本発明によりランガテイト単結晶の育成においても、クラックがなく、内部応力の少ない高品質なランガテイト単結晶の育成に成功した。
次に、ランガテイト単結晶育成においての本発明が適用できる組成範囲について実験を行った。初期母体融液組成La3−xGa5.5+xTa0.514において、x=0.01、0.02、0.1、0.19、0.2の5種類、追加原料組成La3+xGa5.5―xTa0.514において、x=−0.1、0、0.1、0.19、0.2の5種類について、全ての組み合わせを実施例5と同様にしてランガテイト単結晶の製造を行った。その際、第2の追加組成は、La3.1Ga5.4Ta0.514に固定した。
表3に全ての組み合わせによる育成結果を示す。種子付けが良好であり均一結晶が得られた場合を○、種子付けで不具合が生じたものおよび不均一結晶が得られた場合を×と表記した。表3の結果から、初期原料組成がLa3−xGa5.5+xTa0.514(0.01<x<0.2)であり、追加原料組成がLa3+xGa5.5−xTa0.514(0≦x<0.2)の範囲で育成することで、異相のない均一な結晶が得られることがわかった。

○:種子付けが良好でかつ均一結晶が得られた場合
×:良好な結晶が得られなかった場合(種子付けの不具合、もしくは結晶が不均一)
次に、ランガテイト単結晶育成においての結晶成長終了工程での第2の追加組成の範囲について調べた。初期母体組成および追加組成を実施例6と同様とし、結晶成長終了工程での第2の追加原料の組成La3+xGa5.5−xTa0.514として、x=0.01、0.02、0.15、0.19、0.2の5種類について、その他の条件は実施例5と同様として育成を行った。
表4に第2の追加組成についての結果を示す。結晶終端部に異相が生じなかった場合を○、結晶終端部に異相が生じていた場合を×と表記した。表4の結果から、第2の追加原料組成がLa3+xGa5.5−xTa0.514(0.01<x<0.2)の範囲で育成することで、結晶終端部に異相のない結晶育成ができることを確認した。

○:結晶終端部に異相が生じなかった場合
×:結晶終端部に異相が生じていた場合
本発明により、種子付けが良好であり、結晶の固化率95%の範囲で組成が均一であり、かつ結晶終端部に異相が生じないランガテイト単結晶の育成に成功した。
(実施例6)本発明により非調和融解組成のランガテイト単結晶の育成を行った。純度4NのLa、Ga、Taの原料粉末を準備し、初期原料組成が、La3.12Ga5.38Ta0.514の融液原料と、追加原料組成がLaGa5.5Ta0.514の追加原料と、第2の追加原料としてLa2,9Ga5.6Ta0.514を各々混合した。次に、各々の原料を約1300℃の大気中で焼結し、各々を約98MPaの静水圧でラバープレス成形し、原料塊を作製した。このうち、LaGa5.5Ta0.514とLa2,9Ga5.6Ta0.514原料塊を、追加用原料として、更に二次焼成として約1400℃の大気中で焼結し、粉砕し、大きさが50ミクロン以上500ミクロンのサイズの範囲で分級した。初期原料組成をLa3.12Ga5.38Ta0.514、種子結晶をランガテイト単結晶とし、他は実施例1と同様に、LaGa5.5Ta0.514からなる組成の第一追加原料およびLa2,9Ga5.6Ta0.514からなる組成の第2の追加原料を用いて単結晶育成を行った。得られた単結晶は、種子付けも良好で、終端部に異相がなかった。肉眼で観察したところ、結晶全体にクラックがないことを確認した。また、クロスニコルで結晶の内部応力を確認したところ、非常に少ないことを確認した。
次に、ランガテイト単結晶育成においての本発明が適用できる組成範囲について実験を行った。初期母体融液組成La3+xGa5.5−xTa0.514において、x=0.01、0.02、0.1、0.19、0.2の5種類、追加原料組成La3−xGa5.5+xTa0.514において、x=−0.1、0、0.1、0.19、0.2の5種類について、全ての組み合わせを実施例6と同様にしてランガテイト単結晶の製造を行った。その際、第2の追加組成は、La2,9Ga5.6Ta0.514に固定した。
表5に全ての組み合わせによる育成結果を示す。種子付けが良好であり均一結晶が得られた場合を○、種子付けで不具合が生じたものおよび不均一結晶が得られた場合を×と表記した。表5の結果から、初期原料組成がLa3+xGa5.5−xTa0.514(0.01<x<0.2)であり、追加原料組成がLa3−xGa5.5+xTa0.514(0≦x<0.2)の範囲で育成することで、異相のない均一な結晶が得られることがわかった。

○:種子付けが良好でかつ均一結晶が得られた場合
×:良好な結晶が得られなかった場合(種子付けの不具合、もしくは結晶が不均一)
次に、ランガテイト単結晶育成においての結晶成長終了工程での第2の追加組成の範囲について調べた。初期母体組成および追加組成を実施例7と同様とし、結晶成長終了工程での第2の追加原料の組成La3−xGa5.5+xTa0.514として、x=0.01、0.02、0.15、0.19、0.2の5種類について、その他の条件は実施例6と同様として育成を行った。
表6に第2の追加組成についての結果を示す。結晶終端部に異相が生じなかった場合を○、結晶終端部に異相が生じていた場合を×と表記した。表6の結果から、第2の追加原料組成がLa3−xGa5.5+xTa0.514(0.01<x<0.2)の範囲で育成することで、結晶終端部に異相のない結晶育成ができることを確認した。

○:結晶終端部に異相が生じなかった場合
×:結晶終端部に異相が生じていた場合
本発明により、種子付けが良好であり、結晶の固化率95%の範囲で組成が均一であり、かつ結晶終端部に異相が生じないランガテイト単結晶の育成に成功した。
(実施例7)本発明により非調和融解組成のLGTA単結晶の育成を行った。純度4NのLa、Ga、Ta、Alの原料粉末を準備し、初期原料組成が、La3.12Ga5.18Al0.2Ta0.514の融液原料と、追加原料組成がLaGa5.25Al0.25Ta0.514の追加原料と、第2の追加原料としてLa2,9Ga5.35Al0.25Ta0.514を各々混合した。次に、各々の原料を約1300℃の大気中で焼結し、各々を約98MPaの静水圧でラバープレス成形し、原料塊を作製した。このうち、LaGa5.25Al0.25Ta0.514とLa2,9Ga5.35Al0.25Ta0.514原料塊を、追加用原料として、更に二次焼成として約1400℃の大気中で焼結し、粉砕し、大きさが50ミクロン以上500ミクロンのサイズの範囲で分級した。初期原料組成をLa3.12Ga5.18Al0.2Ta0.514、種子結晶をランガテイト単結晶とし、他は実施例1と同様に、LaGa5.25Al0.25Ta0.514からなる組成の第一追加原料およびLa2,9Ga5.35Al0.25Ta0.514からなる組成の第2の追加原料を用いて単結晶育成を行った。得られた単結晶は、種子付けも良好で、終端部に異相がなかった。肉眼で観察したところ、結晶全体にクラックがないことを確認した。また、クロスニコルで結晶の内部応力を確認したところ、非常に少ないことを確認した。
(比較例6)比較のために、母体融液組成を種子付け工程後、特別な追加融液を追加しないで結晶成長を行った。母体融液組成として、LaGa5.25Al0.25Ta0.514を用い、追加融液を追加しない以外は実施例7と同様にしてランガテイト単結晶の製造を行った。得られた単結晶は、固化率30%の部分から結晶終端まで結晶の縁に白色の異相が付着しており、異相部分から多数のクラックが生じていた。
実施例7と比較例6を比較することにより、本発明によりランガテイト単結晶の育成においても、クラックがなく、内部応力の少ない高品質なランガテイト単結晶の育成に成功した。
次に、LGTA単結晶育成においての本発明が適用できる組成範囲について実験を行った。初期母体融液組成La3+xGa5.3−xAl0.2Ta0.514において、x=0.01、0.02、0.1、0.19、0.2の5種類、追加原料組成La3−xGa5.25+xAl0.25Ta0.514において、x=−0.1、0、0.1、0.19、0.2の5種類について、全ての組み合わせを実施例7と同様にしてLGTA単結晶の製造を行った。その際、第2の追加組成は、La2,9Ga5.35Al0.25Ta0.514に固定した。
表7に全ての組み合わせによる育成結果を示す。種子付けが良好であり均一結晶が得られた場合を○、種子付けで不具合が生じたものおよび不均一結晶が得られた場合を×と表記した。表7の結果から、初期原料組成がLa3+xGa5.3−xAl0.2Ta0.514(0.01<x<0.2)であり、追加原料組成がLa3−xGa5.25+xAl0.25Ta0.514(0≦x<0.2)の範囲で育成することで、異相のない均一な結晶が得られることがわかった。

○:種子付けが良好でかつ均一結晶が得られた場合
×:良好な結晶が得られなかった場合(種子付けの不具合、もしくは結晶が不均一)
次に、LGTA単結晶育成においての結晶成長終了工程での第2の追加組成の範囲について調べた。初期母体組成および追加組成を実施例7と同様とし、結晶成長終了工程での第2の追加原料の組成La3−xGa5.25+xAl0.25Ta0.514として、x=0.01、0.02、0.15、0.19、0.2の5種類について、その他の条件は実施例7と同様として育成を行った。
表8に第2の追加組成についての結果を示す。結晶終端部に異相が生じなかった場合を○、結晶終端部に異相が生じていた場合を×と表記した。表8の結果から、第2の追加原料組成がLa3−xGa5.25+xAl0.25Ta0.514(0.01<x<0.2)の範囲で育成することで、結晶終端部に異相のない結晶育成ができることを確認した。

○:結晶終端部に異相が生じなかった場合
×:結晶終端部に異相が生じていた場合
本発明により、種子付けが良好であり、結晶の固化率95%の範囲で組成が均一であり、かつ結晶終端部に異相が生じないLGTA単結晶の育成に成功した。
(実施例8)本発明により非調和融解組成のLGTA単結晶の育成を行った。純度4NのLa、Ga、Ta、Alの原料粉末を準備し、初期原料組成が、La2.95Ga5.35Al0.2Ta0.514の融液原料と、追加原料組成がLaGa5.25Al0.25Ta0.514の追加原料と、第2の追加原料としてLa3.1Ga5.15Al0.25Ta0.514を各々混合した。次に、各々の原料を約1300℃の大気中で焼結し、各々を約98MPaの静水圧でラバープレス成形し、原料塊を作製した。このうち、LaGa5.25Al0.25Ta0.514とLa3.1Ga5.15Al0.25Ta0.514原料塊を、追加用原料として、更に二次焼成として約1400℃の大気中で焼結し、粉砕し、大きさが50ミクロン以上500ミクロンのサイズの範囲で分級した。初期原料組成をLa2.95Ga5.35Al0.2Ta0.514、種子結晶をランガテイト単結晶とし、他は実施例1と同様に、LaGa5.25Al0.25Ta0.514からなる組成の第一追加原料およびLa3.1Ga5.15Al0.25Ta0.514からなる組成の第2の追加原料を用いて単結晶育成を行った。得られた単結晶は、種子付けも良好で、終端部に異相がなかった。肉眼で観察したところ、結晶全体にクラックがないことを確認した。また、クロスニコルで結晶の内部応力を確認したところ、非常に少ないことを確認した。
次に、LGTA単結晶育成においての本発明が適用できる組成範囲について実験を行った。初期母体融液組成La3−xGa5.3+xAl0.2Ta0.514において、x=0.01、0.02、0.1、0.19、0.2の5種類、追加原料組成La3+xGa5.25−xAl0.25Ta0.514において、x=−0.1、0、0.1、0.19、0.2の5種類について、全ての組み合わせを実施例8と同様にしてLGTA単結晶の製造を行った。その際、第2の追加組成は、La3.1Ga5.15Al0.25Ta0.514に固定した。
表9に全ての組み合わせによる育成結果を示す。種子付けが良好であり均一結晶が得られた場合を○、種子付けで不具合が生じたものおよび不均一結晶が得られた場合を×と表記した。表9の結果から、初期原料組成がLa3―xGa5.3+xAl0.2Ta0.514(0.01<x<0.2)であり、追加原料組成がLa3+xGa5.25−xAl0.25Ta0.514(0≦x<0.2)の範囲で育成することで、異相のない均一な結晶が得られることがわかった。

○:種子付けが良好でかつ均一結晶が得られた場合
×:良好な結晶が得られなかった場合(種子付けの不具合、もしくは結晶が不均一)
次に、LGTA単結晶育成においての結晶成長終了工程での第2の追加組成の範囲について調べた。初期母体組成および追加組成を実施例8と同様とし、結晶成長終了工程での第2の追加原料の組成La3+xGa5.25−xAl0.25Ta0.514として、x=0.01、0.02、0.15、0.19、0.2の5種類について、その他の条件は実施例8と同様として育成を行った。
表10に第2の追加組成についての結果を示す。結晶終端部に異相が生じなかった場合を○、結晶終端部に異相が生じていた場合を×と表記した。表10の結果から、第2の追加原料組成がLa3+xGa5.25−xAl0.25Ta0.514(0.01<x<0.2)の範囲で育成することで、結晶終端部に異相のない結晶育成ができることを確認した。

○:結晶終端部に異相が生じなかった場合
×:結晶終端部に異相が生じていた場合
本発明により、種子付けが良好であり、結晶の固化率95%の範囲で組成が均一であり、かつ結晶終端部に異相が生じないLGTA単結晶の育成に成功した。
本発明に関わる改良したVB法結晶育成用ホットゾ−ン構造の模式図 原料棒ぶら下げ方式の改良VB法結晶育成用ホットゾ−ン構造の模式図 VB法の基本的な結晶育成工程の説明図 2CO3-Ta25系の相図 図4のKOが50mol%近傍の詳細を拡大した模式図
符号の説明
1 るつぼ
2 種子結晶
3 成長結晶
4 母体融液
5 主発熱体(1)
6 主発熱体(2)
7 補助発熱体
8 補助るつぼ
9 追加融液
10 原料追加容器
11 追加原料
12 炉内温度分布
13 初期原料
14 追加原料棒

Claims (13)

  1. 成長結晶の形状を規定する容器(以下るつぼと呼称)内に種子結晶と、成長結晶の大部分または一部となる組成の原料(初期原料)を収納し、該るつぼを加熱して該初期原料の全てと種子結晶の一部を融解して初期融液とし、その後未融解種子結晶部を種子として該初期融液を徐々に凝固させて所望の組成および形状の単結晶を成長させる結晶成長方法において、初期融液の組成と異なる組成の一定量の追加原料を間欠的にまたは連続的に、あるいは一度にるつぼ内融液に追加する手段を備えたことを特徴とする融液組成制御一方向凝固結晶成長装置および結晶成長方法。
  2. 請求項1において、単結晶を成長させる装置が、ほぼ垂直軸対称性のるつぼおよび発熱体を適用し、該るつぼ下部に配置した種子結晶側から上部融液側に向かって一方向凝固する結晶成長形態であることを特徴とする融液組成制御一方向凝固法結晶成長装置および結晶成長方法。
  3. 請求項1乃至2において、種子結晶がニオブ酸カリュウム(KNbO)またはタンタル酸カリュウム(KTaO)等で代表される分子式ABOで示され、かつ分解溶融型の固溶体結晶であって、初期原料組成がA1+x1−x(0≦x<0.2)で、追加原料組成がA1−x1+x(0≦x≦0.2)であり、初期原料の融解終了時あるいは融解終了直前または直後の状況下において、連続的あるいは間欠的、もしくは一度に該追加原料をるつぼ内融液に追加する工程を有することを特徴とする融液組成制御一方向凝固結晶成長装置および結晶成長方法。
  4. 請求項3において、追加原料を追加して種子付け工程を終了し、その後の結晶本体成長工程において、前期追加原料とは異なる第2の追加原料組成(A1−x1+x(0≦x≦0.02))の固体または融液を結晶成長の進行と連動させて連続的あるいは間欠的にるつぼ内融液に追加する工程を有することを特徴とする融液組成制御一方向凝固結晶成長装置および結晶成長方法。
  5. 請求項3または請求項4において、各々の結晶成長終了工程において、各々の結晶成長工程歴に応じて最適な第3の追加原料組成(A1+x1−x(0≦x≦0.2))の融液をるつぼ内融液に追加する工程を有することを特徴とする融液組成制御一方向凝固結晶成長装置および結晶成長方法。
  6. 請求項1乃至2において、種子結晶が分子式A0.50.514で示され、かつ分解溶融型の三元系あるいは擬三元系酸化物の固溶体結晶であることを特徴とする融液組成制御一方向凝固結晶成長装置および結晶成長方法。
  7. 請求項6において、Aがランタン、Bがガリウム、CおよびDが珪素であり、初期原料組成が化学式LaGaSiO14に0より多く、2mol%以下の過剰成分を加えた状態で、追加原料組成が化学式LaGaSiO14から該過剰成分を差し引いた状態であり、初期原料の融解終了時あるいは融解終了直前または直後の状況下において、連続的あるいは間欠的、もしくは一度に該追加原料をるつぼ内融液に追加する工程を有することを特徴とする融液組成制御一方向凝固結晶成長装置および結晶成長方法。
  8. 請求項7において、追加原料を追加して種子付け工程を終了し、その後の結晶本体成長工程において、前記追加原料とは異なる、該結晶の化学式LaGaSiO14に0より多く、2mol%以下の過剰成分を加えた状態の、最適な第2の追加原料組成の固体または液体を結晶成長の進行と連動させて連続的あるいは間欠的にるつぼ内融液に追加する工程を有することを特徴とする融液組成制御一方向凝固結晶成長装置および結晶成長方法。
  9. 請求項7または請求項8において、各々の結晶成長工程履歴に応じて、化学式LaGaSiO14に0より多く、2mol%以下の過剰成分を加えた状態の、最適な第3の追加原料組成の融液をるつぼ内融液に追加する工程を有することを特徴とする融液組成制御一方向凝固結晶成長装置および結晶成長方法。
  10. 請求項6において、Aがランタン、Bがガリウム、Cがガリウム、Dがタンタルであり、初期原料組成が化学式LaGa5.5Ta0.514に0より多く、2mol%以下の過剰成分を加えた状態で、追加原料組成が化学式LaGa5.5Ta0.514から該過剰成分を差し引いた状態であり、初期原料の融解終了時あるいは融解終了直前または直後の状況下において、連続的あるいは間欠的、もしくは一度に該追加原料をるつぼ内融液に追加する工程を有することを特徴とする融液組成制御一方向凝固結晶成長装置および結晶成長方法。
  11. 請求項10において、追加原料を追加して種子付け工程を終了し、その後の結晶本体成長工程において、前記追加原料とは異なる、化学式LaGa5.5Ta0.514に0より多く、2mol%以下の過剰成分を加えた状態の、最適な第2の追加原料組成の固体または液体を結晶成長の進行と連動させて連続的あるいは間欠的にるつぼ内融液に追加する工程を有することを特徴とする融液組成制御一方向凝固結晶成長装置および結晶成長方法。
  12. 請求項10または請求項11において、各々の結晶成長工程履歴に応じて、化学式LaGa5.5Ta0.514に0より多く、2mol%以下の過剰成分を加えた状態の、最適な第3の追加原料組成の融液をるつぼ内融液に追加する工程を有することを特徴とする融液組成制御一方向凝固結晶成長装置および結晶成長方法。
  13. 請求項10乃至12において、結晶構成成分の一部をアルミニウムで置換したことを特徴とする融液組成制御一方向凝固結晶成長装置および結晶成長方法。
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