図1は本発明の画像除去装置の要部構成を示す概略断面図である。同図に示す本発明の画像除去装置は、電子写真方式等の画像形成装置により画像が形成された後で不要になった被記録材上に形成された画像を熱転写するためのローラ型の剥離部材11と、剥離部材11と摺動し、剥離部材11の周速よりも速い速度で表面が移動すると共にローラ内部に加熱ヒータ12を有するローラ型のクリーニング部材13とを含んで構成され、剥離部材の表層には第1の熱可塑性組成物層14が形成されている。剥離部材11に転写された画像形成物質を剥離部材11からクリーニング部材13に転移して除去する。そして、本発明の画像除去装置の特徴は、クリーニング部材13に転移させた画像形成物質を、単に廃棄対象として除去、回収してしまうのではなく、クリーニング部材13上の第2の熱可塑性組成物層として残して形成し、剥離部材11上の第1の熱可塑性組成物層14の厚みを制御するためのものとして利用する点である。第2の熱可塑性組成物層15の厚みを所定値に維持するための厚み制御部材16がクリーニング部材13の表面と所定のギャップDを開けて配置されている。なお、厚み制御部材16には加熱ヒータ17を必要に応じて取り付ける。
このような構成を有する本発明の画像除去装置における厚み制御部材16は、特許文献3、4で開示されているような剥離部材の表面に形成された熱可塑性組成物層の厚みを直接制御しようとするものではなく、転移クリーニング方式のクリーニング部材13上の第2の熱可塑性組成物層15の厚みDを制御することで剥離部材11上の第1の熱可塑性組成物層14の厚みD’を間接的に制御しようとするものである。なお、厚み制御部材16は、図1の(a)に示すようなブレード状のものや図1の(b)に示すようなローラ型のものでもよい。
以下、クリーニング部材の表面に第2の熱可塑性組成物層を形成し、その厚みを制御することが剥離部材の第1の熱可塑性組成物層の厚みを制御することに繋がる理由を以下に説明する。
先ず、図2に示すように、速度、温度、加圧状態などの各プロセス条件を維持して、両方の回転体を接触させたままにしておくと、線速の遅い側から速い側に熱可塑性組成物がなくなるまで転移され続けるのではなく、それぞれ熱可塑性組成物層が平衡状態になって維持される条件が存在する。つまり、剥離部材11上の第1の熱可塑性組成物層14の厚みD’も、クリーニング部材13上の第2の熱可塑性組成物層15の厚みDも、それぞれの厚みを維持して変化しなくなる。
ここで、回転体として、表層に第1の熱可塑性組成物層14が形成されたローラ型の剥離部材11と、ローラ型のクリーニング部材15を例にして説明する。なお、接触前のクリーニング部材15には第2の熱可塑性組成物層15は形成されていないものとする。図3の(a)は接触開始からの第1の熱可塑性組成物層の厚みの変化を示す特性図である。同図からわかるように、接触するとすぐにローラ型の剥離部材上の第1の熱可塑性組成物層の厚みが薄くなり、時間の経過に伴い厚みの変化が小さくなり、やがて平衡状態で維持される。一方、ローラ型のクリーニング部材側には、接触するとすぐにローラ型の剥離部材から転移した熱可塑性組成物が第2の熱可塑性組成物層を形成し、徐々に厚くなるが、最終的にはある厚みで変化しなくなる。更に、どの厚みで平衡状態になるかは、上記のようなクリーニングプロセスに関係する様々な条件の組合せで決まることもわかっている。ローラ型の剥離部材の周速度Vpを一定にし、速度以外の条件も固定して、ローラ型のクリーニング部材の周速度Vcのみを変えると、剥離部材の第1の熱可塑性組成物層の厚みも変わる。通常Vcが大きい方が転移量が増え、剥離部材側の第1の熱可塑性組成物層の厚みは小さくなる。この厚みの違いを、速度比Vc/Vpでプロットしたものを図3の(b)に示す。更に、速度比Vc/Vpが10倍を超えるように設定すると、ほとんど除去されてしまう場合も発生する。
実際には熱可塑性組成物の材料特性などにより異なるため数値は一例に過ぎないが、上記現象は熱可塑性組成物層に約10〜1000μm程度の一般的な画像形成物質を用いた場合などには、ローラ型のクリーニング部材の加熱温度を100〜150℃程度、ローラ型の剥離部材の周速度を5〜100mm/s、ローラ型のクリーニング部材の周速度をローラ型の剥離部材の周速度に対して2〜5倍程度、ニップ幅が1〜10mm程度の各範囲で調整すれば、確認することができる。
次に、クリーニング部材側の第2の熱可塑性組成物層の厚みを変化させると剥離部材側の第1の熱可塑性組成物層の厚みにも影響することについて概説する。一旦平衡状態に落ち着いた状態で、片方の厚みが変化するような処理を行うと、もう一方の厚みも影響される。この現象を利用すれば、厚みを調整、維持することが可能である。例えば、図4の(a)に示すようなローラ型の剥離部材11とローラ型のクリーニング部材13の表面にはそれぞれ第1、第2の熱可塑性組成物層14、15が一定の厚み(tc0、tp0)で形成され、平衡状態に保たれているとする。次に、図4の(a)の平衡状態から、図4の(b)に示すように加熱したブレード状の厚み制御部材16をローラ型のクリーニング部材13とは所定の距離G(G<tc0)に配置するようにすると、ローラ型のクリーニング部材13上の第2の熱可塑性組成物層15の厚みtc0は、強制的にギャップGとほぼ同じ厚みのtc1(tc1<tc0)になる。第1、第2の熱可塑性組成物層14、15の厚みは新しい平衡状態に移ろうとし、ローラ型の剥離部材11側の第1の熱可塑性組成物層14の厚みtpも変化してtp1(tp1<tp0)で安定する。この新しい平衡状態(tc1、tp1)では、剥離部材11に熱可塑性組成物である画像形成物質が転写されて第1の熱可塑性組成物層14の厚みが一時的に厚くなったとしても、第2の熱可塑性組成物層15の厚みは、ギャップG=tc1以上に厚くなることができないために、ローラ型のクリーニング部材13への転移を繰り返すうちに、剥離部材11は転写される前の厚みtp1に収束に向かう結果となる。
そして、この状態で図4の(c)に示すようにローラ型のクリーニング部材13側に、加熱したブレード状の厚み制御部材16を押付けて、転移した第2の熱可塑性組成物を全て除去するような処理を施すと、最終的にローラ型の剥離部材11の第1の熱可塑性組成物層14はローラ型のクリーニング部材13を介して全て除去されてしまうという結果になる。これは、クリーニングローラ側の熱可塑性組成物が除去される(平衡状態のときよりも薄くなる)とバランスをとろうとするために、新たな熱可塑性組成物が剥離ローラ側からすぐに転移して供給されようとするために起こると考えられる。
以上説明したように、ローラ型の剥離部材とローラ型のクリーニング部材の表面に熱可塑性組成物層がともに形成され、存在するような平衡状態となる条件下で、ローラ型のクリーニング部材上の第2の熱可塑性組成物層を常に所定の厚みに保つことができる構成としておけば、剥離部材上の第1の熱可塑性組成物層の厚みも所定の厚みに維持することができる。更には、速度パラメータVcを中心とした諸条件を微調整することで、第1の熱可塑性組成物層を精度良く所定の厚みに設定できる。
図5は本発明の第1の実施の形態に係る画像除去装置の全体構成を示す概略断面図である。同図において、図1と同じ参照符号は同じ構成要素を示す。同図に示す本実施の形態の画像除去装置10において、電子写真方式等の画像形成装置により画像が形成された後で不要になった被記録材21が画像形成面を下向きにして給紙カセット22にセットされている。なお、被記録材21としては、後述するような予め画像形成物質に対する定着性を低下する組成物が塗布されているリユーザブル被記録材を用いる。そして、被記録材21は給紙カセット22から給紙コロ23によって1枚ずつ分離給送され、搬送ローラ対24を介してローラ型の剥離部材11とローラ型の加圧部材25のニップ部に搬送される。なお、ローラ型の加圧部材25の内部には被記録材21上の熱可塑性の画像形成物質、および剥離部材の第1の熱可塑性組成物層を加熱して軟化状態にする加熱ヒータ26を有している。そして、ローラ型の加圧部材25によって被記録材21の画像形成された面と剥離部材11とを重ねて加圧し、加圧後にブレード状の分離手段27によって剥離部材11と被記録材21は分離される。分離して再生された被記録材21は排紙ガイド28によって搬送ローラ対29にガイドされて排紙トレー30に排出される。更に、除去された画像形成物質は、第1の熱可塑性組成物層の一部となるが、クリーニング部材13は剥離部材11上の第1の熱可塑性組成物層の余剰分を剥離部材11から転移する。そして、上述したように、厚み制御部材16によってクリーニング部材13上の転移して形成した第2の熱可塑性組成物層の厚みを所定範囲から超えないように維持される。厚み制御部材16で通過しなかった熱可塑性組成物は回収手段としての回収容器31に回収される。
なお、ローラ型の剥離部材11、もしくはローラ型の加圧部材25を図示していない駆動手段で回転させると、両者の摩擦力によりほぼ等速で連れ回りを行い、被記録材21も両者との摩擦や、主に剥離部材との接着により、保持されながら搬送される。加熱加圧位置では、剥離部材11の第1の熱可塑性組成物層14と画像が形成された被記録材21は十分に密着される。加熱加圧位置から分離位置まで、被記録材21はしばらく剥離部材11と接触したまま移動した後、分離手段27により分離される。分離位置では、画像形成物質の内部凝集破壊や、熱可塑性組成物層との界面での分離がおきにくい温度まで下げる必要がある。特に、剥離部材11をローラ形状にした場合には、冷却できるように加熱手段は剥離部材側には内蔵しない方がよい。このようにして、画像形成物質が被記録材21に残留せずに剥離部材11に転写される。
また、剥離部材11の最表面には第1の熱可塑性組成物層14が形成されている。第1の熱可塑性組成物層14は、加熱によって熱可塑性を示すとともに画像形成物質に対して接着性を示している。加熱により軟化すると、加圧等により塑性変形できるので、被記録材21の凹凸や画像自体に高低が存在しても満遍なく密着できる。その効果を十分得るためには、第1の熱可塑性組成物層を軟化点以上に加熱することと、塑性変形するように被記録材21と重ねたときに十分加圧することが必要となる。第1の熱可塑性組成物層14の厚みは、前述のように適正範囲が存在する。熱可塑性組成物の種類や使用条件などによって異なるが、5〜200μm程度の一定厚みに維持できるのがよく、さらに20〜100μm程度に維持できると画像除去性能及び被記録材との分離性が非常に良好なものとなる。熱可塑性組成物層の材質は、画像形成物質とSP値が近いものを選んだ方が接着力は強くなる。具体的な材質例は後述する。一方で、被記録材21と分離しやすくするには、予め適度な量の離型剤を含有させておくことにより適度な離型性を示すことができる。特に、画像形成物質のバインダーと同一の樹脂を主成分とするもので構成するのが好ましい。更に、近年主流である画像形成物質がワックス等の離型剤を含んでいる場合にも、同一のワックス成分が分散して含むように形成しているとよい。これは、画像形成物質の転写やクリーニングを繰り返すうちに、熱可塑性組成物層の成分と画像形成物質とが混在した状態になり、剥離部材表面の物性に少なからず影響する。そこで、近い成分とすることで、剥離部材表面の物性変化を最小とすることができ、長期間、画像除去特性が安定するという効果があるからである。なお、後述する実施例のように、第1の熱可塑性組成物層を画像形成物質そのもので形成することも可能である。被記録材上に全面単色べた画像などを画像形成して、次に剥離部材に熱転写すれば、形成することができる。
更に、剥離部材11にはゴム弾性体層が設けられている。弾性体層は加圧したときに変形して、確実に必要なニップ幅(送り方向に2〜20mm程度)を形成する。加熱と加圧するのに十分な時間が確保されるような役割を持つとともに、断熱効果が期待される。ゴム硬度20〜60°でシリコーンソリッドゴム、シリコーン発泡体など耐熱性の高い材質で厚さ1〜10mm程度のようなものが好ましい。弾性体層の表面には熱可塑性組成物保持層が形成されている。耐熱性のあるポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン等の樹脂フィルムチューブなどからなり、第1の熱可塑性組成物層が冷却しても脱落しにくいように保持する接着層としての作用があるものを選定する。また、クリーニング部材と直接摺動する場合も配慮して、耐磨耗性がある材質の方がよい。保持層の厚みは20〜100μm程度でよい。基材は、剥離部材がローラ形状である場合には、画像形成装置などで加圧、定着ローラなどに用いられるようなアルミ材やSUS材などの金属円筒体でよい。
以上説明した実施の形態における剥離部材はローラ形状とした場合の例を示したが、本発明のクリーニング方式は、剥離部材を無端ベルト構造とした場合であっても、同様に適用することが可能である。ただし、剥離部材をローラとすれば、ベルトと比較して構造が簡素であるために画像除去手段を小型にしやすい、基材の耐久性の確保が容易である、曲率が変わらないために熱可塑性組成物層が剥がれて脱落しにくいなど点でメリットがある。
また、図5のローラ型の加圧手段25は、剥離部材11にバネ等の付勢手段で一定の圧力(片側で20〜200N程度)で押付け、上記ニップを形成するようにする。中空構造のアルミ材やSUS材などの金属円筒体でよく、剥離部材上の熱可塑性組成物層と被記録材上の画像形成物質を加熱するための加熱手段が内蔵されている。また、図示していないが、接触式か非接触式の温度センサを設けて、温度制御できるようにしておくのが好ましい。画像形成物質の熱特性にもよるが、一般的な電子写真画像形成装置の画像形成物質に対しては、加熱加圧位置では被記録材上の画像形成物質が65〜130℃に加熱されるように設定されることが好ましく、加圧ローラ表面の温度としては80〜180℃、特に90〜150℃に保つことが好ましい。更に、加圧手段25の表面に剥離部材11から熱可塑性組成物の一部が転写することを防止するために、加圧手段の最表面には耐熱性がある非粘着層を形成するのがよい。例えばフッ素樹脂を含浸させたり、塗布したりして形成する。
更に、図5の分離手段27は、被記録体21を傷めずに、被記録体21と熱可塑性組成物層とを確実に分離するための機械的な作用を及ぼす機構であればよい。例として、被記録材21のほとんど印字に使われない両サイドの各10mm程度の余白を利用した機械的な強制分離機構でもよい。熱可塑性組成物層の幅を被記録材21の幅よりも狭くし、剥離部材21の所定の位置から、被記録材21の両サイドの角度を変えて、強制的に分離するようなガイド板を設ける方法である。ガイド板により、一部を強制的に分離することで、紙自体の剛性により、強制分離箇所をキッカケとし分離は全体へと拡がる。分離された先端部は、分離角度が90°〜120°程度に屈曲するように配置した分離板の上面をスライドし、被記録材21の後端部まで確実に分離される。また、図示していないが、一部を強制的に分離する手段としてガイド板の代わりに複数の分離爪を設置しても同様の効果が得られる。剥離部材11の表面にバネなどの付勢手段により当接させた分離爪によって、被記録材21の先頭部を剥離部材11から分離する方法などでもよい。
また、図5のクリーニング部材13はローラ構造とした場合の構成例を示したが、剥離部材11のクリーニング位置は、図5で示した分離位置の後であって加熱加圧位置の前になる。クリーニング部材13はローラ型の剥離部材11に対して軸を平行にして配置され、図示していないバネなどの付勢手段により、剥離部材11に所定の加圧力で当接している。連続して通紙されたとき、すなわち画像形成物質が転写され、剥離部材11上の第1の熱可塑性組成物層が速く厚くなるような状況下を想定すると、時間あたりの転移する量を大きくした方がよいため、ローラ型のクリーニング部材13の周速をローラ型の剥離部材11の周速に対して、高速で回転するように駆動するのが好ましい。一方で、あまりクリーニング部材13を高速で回転させると、転移する量が大きくなりすぎ、剥離部材11に残らない結果となってしまう。よって、従来技術で開示されている通り、2〜5倍程度の速度比が好ましい。例えば剥離部材11側を60mm/sとした場合には、クリーニング部材13側は120〜300mm/sに設定すればよい。従動側のギア比で調節する構成とすれば、ローラ型の剥離部材11と駆動源を共通にすることができる。また、剥離部材11とクリーニング部材13を加圧したときに形成するニップが大きいほど、同じ周速度でも転移する量が大きくなる傾向がある。更に、ローラ型の剥離部材11とローラ型のクリーニング部材13の回転方向は、接触位置では(連れ回り方向とは)逆方向に向かうように回転するようにした方が、平滑な面を得られやすい。連れ回り方向にすると、糸曳き現象などが発生するために、凹凸になる場合がある。
ここで、ローラ型のクリーニング部材13の構造としては、熱可塑性組成物層も含めると、図1に示すように、表層から熱可塑性組成物層15、中空構造の基材、内蔵する加熱ヒータ12で構成すればよい。基材としては、アルミニウムやステンレス、セラミックのような材質からなり、表面性状はできるだけ凹凸がなく平滑性が高い形状の剛体が好ましい。なお、ここでの剛体とは、ゴムなどの弾性体を有さない部材で、外力に対する撓みなどの変形量が数〜数十ミクロンオーダーの小さいものを示す。また、ローラ型のクリーニング部材13は、厚み制御部材16によって精度良く厚みを制御するためには、剥離部材11とは異なり、厚みのある弾性体層を持たない剛体ローラにした方がよい。表層は、ローラ型の剥離部材11同様に熱可塑性組成物層が冷却しても剥離しにくいように保持する接着層としての作用がある材質がよく、さらに剥離部材と摺動するためにある程度の耐磨耗性を有するものが好ましい。基材がアルミニウムの場合であればアルマイト処理等を施してもよい。基材は中空構造にして加熱ヒータ12を内蔵した方がスペース効率がよい。加圧ローラと同様にヒータを温度制御するようにしておく。剥離部材11の画像除去条件や、熱可塑性組成物層や画像形成物質の熱特性にもよるが、一般的な電子写真式の画像形成装置の画像形成物質を扱う場合に対しては、クリーニング部材13の温度は、ローラ型の剥離部材11の表面温度よりも10〜40℃くらい高い温度に加熱されることが好ましい。上記条件で示した数値は代表的な好ましい例であり、この範囲に限定するものではない。実際には使用する画像形成物質の粘弾性、クリーニング時の温度、加圧力条件などによって、剥離部材11上の第1の熱可塑性組成物層14の厚みが所定の範囲になるような最適化が求められる。また、ローラ構造を例に説明したが、無端ベルトとしても本発明を適用することができる。
また、クリーニング部材13上の第2の熱可塑性組成物層15はローラ型のクリーニング部材の製造工程において予め形成しておいてもよいが、剥離部材11から第1の熱可塑性組成物層14の組成物を含む、画像形成物質を転移することによって形成することも可能である。転移クリーニング処理を繰り返すうちに、第1の熱可塑性組成物層14、第2の熱可塑性組成物層15及び画像形成物質が混ざり合った状態になる。剥離部材11の場合と同様に第2の熱可塑性組成物層15の材質は、前述のような画像形成物質の主成分、及び剥離部材11の第1の熱可塑性組成物層14と同一の材質が好ましい。
更に、ローラ型のクリーニング部材13には、厚み制御部材16との隙間によって第2の熱可塑性組成物層15が所定の厚みに制御されている。前述したように、第2の熱可塑性組成物層15の厚みと、クリーニング条件をコントロールすることにより、剥離部材11上に残る第1の熱可塑性組成物層14の厚みも設定することができる。クリーニング条件のうち、特に剥離部材11に対するローラ型のクリーニング部材13の周速度(速度比)は、厚みを左右する重要なパラメータとなるだけでなく、速度を変化させても、剥離部材11側の加熱温度や、搬送速度にはほとんど影響しないため、最終調整を行うパラメータとして適している。よって、剥離部材11上の第1の熱可塑性組成物層14を目標の厚みにするためには、クリーニング部材13上の第2の熱可塑性組成物層15の厚みと、剥離部材11の搬送速度に対するクリーニング部材13の速度比とで最終調整を行い、厚み制御部材16との隙間やクリーニング部材13を駆動するギア比などを設定するのが好ましい。
また、図1の厚み制御部材16はブレード状のものであり、加熱ヒータ17が取り付けられている。例えば、ステンレス製の金属ブレードにセラミックヒータ、ラバーヒータなどを固定して形成される。厚み制御部材16の軸方向の長さは少なくとも剥離部材11の画像領域をカバーできる幅が必要になる。加熱して軟化した熱可塑性組成物層を所定高さ以上通過しないように全幅を規制するために、厚み制御部材16には回転方向に撓むような外力が加わる。よって、変形で隙間が不均一にならないように、しっかり固定されることが必要となる。上述したように、厚み制御部材16を通過したクリーニング部材13上の第2の熱可塑性組成物層15の厚みが均一であると、剥離部材11上の第1の熱可塑性組成物層14の厚みも均一になる傾向がある。また、ローラ型のクリーニング部材13の表面、及び隙間を挟んで対向する厚み制御部材16の端面形状を、できるだけ平滑な面のもので形成すれば、剥離部材11上の第1の熱可塑性組成物層14の表面も平滑な面としやすい。更に、ブレード状の厚み制御部材16の配置は、図6の(a)のようにローラ型のクリーニング部材13の軸と平行になるように配置すれば、第2の熱可塑性組成物層15の厚みを制御する機能としては十分であるが、例えば上記隙間が所定の厚さになるようにローラ型のクリーニング部材13の曲面形状に合わせて、形状を設計し、図6の(b)のようにローラ型のクリーニング部材13の軸に対して少し斜めに傾けて配置してもよい。更に、図6の(c)のようにブレード状の厚み制御部材16の中央部を回転の先頭にし、両サイドを後方に配置するような形状にしてもよい。こうすることによって、ブレードでせき止められた第2の熱可塑性組成物層の余剰分がブレードの端部へと送られ、後述する回収手段で回収しやすくなるという効果がある。なお、第2の熱可塑性組成物層15の厚みを制御するという機能を得るということにおいては、板状のブレードに限る必要はない。図1の(b)に示すように、厚み制御部材16として、ローラ形状のような回転体であってもよい。回転体の場合は、回転体の表面を介してクリーニング部材13の反対側に搬送されないように画像形成物質や熱可塑性組成物層の組成物を付着しにくい方がよいので、表面を撥トナー性の材質でコーティング加工するのが好ましい。また、加熱ヒータ17を取り付ける例を示したが、クリーニング部材13からの熱を効率よく厚み制御部材16に伝達することができれば、必ずしも、なければいけないという構成ではない。
次に、厚み制御部材とクリーニング部材との間に一定の隙間を形成する方法の例を説明する。ブレード状の厚み制御部材であれば、図7の(a)に示すように厚み制御に寄与する端面が真直ぐな形状のブレードの端部にスペーサ41を設け、厚み制御部材16側をスペーサ41に突き当てるようにしてややバネ定数の大きな付勢手段42により加圧する。このように、ローラ型のクリーニング部材13の表面に直接突き当てるようにすれば、スペーサ41の間には均一な隙間が形成できる。スペーサ41は簡易的にポリイミドなどの耐熱性の樹脂シート材でも実現可能であり、クリーニング部材13に対して摺動するので、クリーニング部材に対して摩擦係数が小さく、耐熱性と耐磨耗性を備えたものがよい。また、厚み制御部材16がローラ型であれば、図7の(b)に示すように、ローラ型の厚み制御部材16とローラ型のクリーニング部材13を保持するベアリング間に精度のよいスペーサ41を設け、厚み制御部材16側をスペーサ41に突き当てるように、ややバネ定数の大きな付勢手段42により加圧するようにしてもよい。何れにしても、ローラ型のクリーニング部材13と厚み制御部材16との端面の距離が、一定になるように固定されることが重要である。距離はクリーニングプロセス条件や画像形成物質の特性によって、設定されるものであるが、例えば剥離部材11の厚みを5〜200μm程度の場合であれば、クリーニング部材13の厚みも同等ものでよく、位置調整可能な範囲でよい。
なお、厚み制御部材16によって通過できなかった熱可塑性組成物層の余剰分はせき止められ、ブレードとクリーニングローラとが作る隙間の上流側に溶融した状態で一時的に滞留する熱可塑性組成物の滞留部を形成する。図1のように厚み制御部材16に取り付けられた加熱ヒータ17により滞留部の流動性が高い状態に保っておけば、滞留している量が大きくなった段階で、自重で図5の回収手段として回収容器31の中に落下する。一方、図6の(b)、(c)のような形状を有する厚み制御部材16を用いることにより、熱可塑性組成物はクリーニング部材13の端部に寄せられる。端部に寄せられた熱可塑性組成物は、厚み制御部材16を非粘着処理した場合には、ほとんど厚み制御部材側に付着することはない。領域外に移動させた熱可塑性組成物を、小さなエリアで効率よく回収できるようになる。ただし、滞留量が多い時には自重で落下するときが出てくるので、回収容器31は全域をカバーする方がよい。また、図8に軸端部での回収装置の具体例を示す。ローラ型のクリーニング部材13の軸端部にはみ出した熱可塑性組成物は切断手段43によって切断され、重力等で落下して回収容器31で回収される。回収容器31に加熱手段を設け、定期的に破片を溶融化処理するようにできると、容器内の空隙率が下がり、収容効率が向上する。切断手段43としては、図8のような回転刃でローラ型のクリーニング部材13の端部にはみ出した熱可塑性組成物を切り落とすとよい。はみ出した部分はすぐに冷却して固まった状態になるので、固定刃にしてもスペース的には優位であり、図示していないが歯車や回転ブラシなどの打撃を加えるような手段でもよい。
次に、本発明の画像除去装置の起動シーケンスの一例について図5を用いて概説する。
(a) ローラ型の剥離部材11とローラ型の加圧手段25は接触しており、かつ画像除去動作時の加圧は解除された状態であることを確認し、剥離部材11と加圧部材25の回転、さらに加圧部材25に内蔵された加熱ヒータ26による加熱を開始する。接触している状態とは、いずれかの部材が駆動されたときに、もう一方は連れ回りをして、加圧部材25から熱が伝わる状態を示す。
(b) 剥離部材11及び加圧手段25が所定の温度になったら、画像除去動作時に必要とする加圧を加える。なお、所定の温度とは、ニップを通過したときに弾性体層が圧縮して表面の曲率が変わるために起こりうる第1の熱可塑性組成物層14の亀裂や剥落の回避を考慮したものであり、これらが生じない程度に軟化し、保持層との接着力が高められた温度のことである。
(c) 剥離部材11とクリーニング部材13は加圧が解除された状態、より好ましくは接触していない状態であることを確認し、クリーニング部材13と厚み制御部材16に設置された加熱ヒータ12、17による加熱を開始する。
(d) クリーニング部材13と厚み制御部材16とが所定の温度に上昇してから、ローラ型のクリーニング部材13の回転を開始する。両部材間で前回停止したときの回収途中の熱可塑性組成物が冷却されて固着した状態であることも考えられるので、十分流動性が高まった段階で回転が許可される。
(e) 剥離部材11が画像除去可能な温度に到達し、かつクリーニング部材13がクリーニング可能な温度にそれぞれ到達したら、クリーニング部材13を剥離部材11に接触させ、加圧する。
(f) 加圧後、各熱可塑性組成物層の厚みが安定したら起動動作が完了する。安定したかどうかは、加圧後の経過時間の等で管理すればよい。
なお、剥離部材11の加熱とクリーニング部材13の加熱は、どちらを先に行ってもよく、また同時に行っても構わない。
このような起動シーケンスにより、弾性体を有する部材からの熱可塑性組成物層の剥落や、規制部材とクリーニング部材との固着による問題を回避し、起動をスムーズに行うことができる。
次に、本発明の画像除去装置の停止シーケンスの一例について図5を用いて概説する。
(a) 剥離部材11とクリーニング部材13の加圧状態を解除し、離間させる。接触させたまま、回転や加熱を停止すると、第1、第2の熱可塑性組成物層14、15の厚みのバランスが変化するだけでなく、剥離部材11とクリーニング部材13が冷却して接触箇所が固着する場合があり、それにより次の起動時に余計な影響を残さないことを考慮したものである。
(b) 剥離部材11と加圧部材25の加圧を解除し、同時に加圧部材25に内蔵された加熱ヒータ26を切る。
(c) 剥離部材11(または加圧部材25でもよい)が所定の温度まで冷却されたことを確認し、剥離部材11と加圧部材25の回転を停止する。なお、所定の温度とは、第1の熱可塑性組成物層14が塑性変形しなくなるまで下がったときの温度であり、次回起動した時にできるだけ第1の熱可塑性組成物層14の厚みが均一に保たれることを考慮している。
(d) クリーニング部材13の回転を停止し、クリーニング部材13と厚み制御部材16の加熱ヒータ17を切る。可能であれば、これらの停止はクリーニング部材13と厚み制御部材16の上流部に形成されている熱可塑性組成物の滞留部がなくなるのを待ってから行うのが好ましい。
なお、クリーニング動作のみを停止させたいときには、上記停止シーケンスの(a)と(d)のみを行えばよい。
ここで、本発明で使用するのに好適な被記録材について概説する。
本発明では、剥離部材の表面に熱可塑性組成物層を形成する場合には、従来から提案されているような、画像形成物質(トナーなど)に対して、定着性を低下する組成物が表面近傍に付与されているリユーザブル被記録材を用いることが好ましい。ここで用いられるリユーザブル被記録材は、枚葉のシート状のものを対象としている。図9に示すように、被記録材には、画像除去装置では消去されない第1の識別マーク51と、画像形成装置又は画像除去装置で書き換え可能な第2の識別マーク52が設けられている。第1の識別マーク51は主としてユーザや装置がリユーザブル記録材と、一般の用紙とを識別するために設けられ、例として被記録材の一部に切り欠きや穴を設けたり、染料や顔料で被記録材全体を着色したり、消去不能な文字や記号、コード情報を印刷する方法が挙げられる。第2の識別マーク52としては、主としてリユース回数や画像形成装置の機種情報などの付加情報管理に用い、文字や記号、コード情報などを画像形成物質で印刷する方法や、埋め込んだICチップに情報を書き込む方法などが挙げられる。また、画像除去性を向上させるために、セルロース繊維を主体とする紙を基材とする場合には、その表面近傍に片面付着量1.5g/m2以上の画像形成物質の定着性を低下せしめる化合物を含む組成物を付着させ、ベック平滑度計による平滑度が90秒以上とした被記録材を使用することができる。
本発明が適用対象とする、最表面に熱可塑性組成物層を形成した剥離部材を有する画像除去装置に、上記のリユーザブル被記録材でない一般の用紙が誤って通紙されると、剥離部材から分離できずにジャムを引き起こしてしまうばかりか、剥離部材を破損してしまうような重大な問題につながる恐れがある。よって、少なくとも第1の識別マーク51を有するリユーザブル被記録材を用いて、画像除去装置には識別マークを読み取る検出手段を搭載し、識別マークが検出された時のみに画像除去を許可する手段と、識別できなかった場合は全て一般の用紙であると識別して別経路で排除するような手段が必要となる。これにより上記のような問題が回避できる。
以上説明したように、本実施の形態の画像除去装置によれば、クリーニング部材の表面に所定の厚みの熱可塑性組成物層が維持されるようにしているので、転移クリーニング方式を使うことにより、剥離部材側の熱可塑性組成物層も確実に層を残すことができる。ローラ型のクリーニング部材は回転振れや偏心がなく精度を出しやすい剛体で構成され、ブレード状の厚み制御部材を通過した熱可塑性組成物層が厚みムラのない均一な層となるために、剥離部材側の熱可塑性組成物層も厚みムラのない均一なものが得られる。一方、転移クリーニング方式は定圧式であるために、厳密な部材精度は必要とせず、弾性体層を有するローラ型の剥離部材とすることができる。十分なニップが形成でき、画像除去品質を高めやすい。更にはローラとすることで、画像除去手段を小型にしやすい、曲率が変わらないために熱可塑性組成物層が剥がれて脱落しにくいなど点でメリットがある。すなわち、良好な画像除去特性と紙分離特性を長期にわたって維持することができる。
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。上述の第1の実施の形態における構成に加え、隙間をなくしたり、設定した隙間を形成したり切り替えることができるギャップ有無切り替え手段を設けても良い。図4の(c)に示すように、ブレード状の厚み制御部材16などをローラ型のクリーニング部材13の表面に隙間がないように押付けると、第2の熱可塑性組成物層15は完全に規制されてしまって形成されないために、剥離部材11側の第1の熱可塑性組成物層14が全て転移して除去されてしまう。熱可塑性組成物層は、高分子材料であるために加熱や摺動による機械的なストレースが加わることで、必ずしも物性が維持されるとは限らないなど、通常の転移クリーニングを所定時間繰り返した後には、リフレッシュ(再形成)する必要性がある場合も存在する。特に大量に画像除去が行われるような装置においては、累積するストレースが大きいと考えられるので、一度全てを除去するモードを有する方が好ましい。
そこで、第2の実施の形態のように、ギャップの有無を切り替える具体的な構成例としては、ギャップの形成が第1の実施の形態のスペーサを用いた方法であれば、スペーサを挿入/退避させるように可動できる構造にしておけばよい。スペーサの退避時には、付勢手段によって、クリーニング部材とブレード部材が全幅で当接する。このように、ギャップ有無の切り替えができるだけで、通常の熱可塑性組成物層を残すクリーニングと、全て除去するためのクリーニングとを、使い分けることができるようになる。別のクリーニング手段を設けるよりも、構成が簡素化できる。
次に、本発明の第3の実施の形態の構成について説明する。第1の実施の形態のような軸端部の固定位置で、クリーニング部材と厚み制御部材に一定の間隔を設ける方法ではなく、図10に示すように、クリーニング部材13の表面を凹凸パターンによるギャップ形成構造として、規制部材16とは単純に当接することにより、クリーニング部材13の表面の第2の熱可塑性組成物層15が維持される形態としている。それ以外の、画像除去装置の全体構成、剥離部材は、前述の実施形態と同じである。また規制部材の当接面は平坦な形状であることも、変わりがない。ただし、第1の実施の形態のように軸の端部にスペーサを設けるようなギャップ形成手段は必要としない。図10の(b)に示すように、ローラ型のクリーニング部材13の表面は、凹凸構造になっており、凹部には一定量の熱可塑性組成物が保持できるようになっている。ローラ型のクリーニング部材13の表面の凸部は、平坦な厚み制御部材を突き当てたときに、ギャップとして作用し、厚み制御部材が凹部内の熱可塑性組成物が掻き出されることはない。そして、凸部には熱可塑性組成物がほとんど保持できないため、場所により深さ(厚み)が異なるが、ローラ型のクリーニング部材を回転した時の平均深さが均一になるようにしておく。
なお、ローラ型のクリーニング部材の凹凸パターンの例としては、図11の(a)に示したような螺旋溝、図11の(b)に示したような格子状のアヤメ溝を加工したものが挙げられる。基材を金属ローラとした場合には旋盤などで切削加工して形成できる。溝内に熱可塑性組成物を保持するために、軸方向への搬送効果はほとんど無視できる形状がよい。すなわち、螺旋溝であれば条数を1もしくはそれに近い小さな値とし、ピッチは数mm以下の程度の細かなものとした方がよい。図11の(b)のアヤメ溝の方は、条数を小さくするとともにできるだけ左右の螺旋溝を同じ形状で加工した方がよい。また、図11の(c)に示すような不連続な溝としてもよい。円周上に密に並んだ突起を有する円盤を押付ける(ローレット加工)などにより、螺旋状に同じ形状の凹部が密に並んだ形状が形成できる。溝の形状(模様)は必ずしも上記の例で限定されるものではないが、容易に製作でき、凹部に必要な厚みの熱可塑性組成物が保持できることが好ましく、凹部周囲の凸部の面積は小さい方が好ましいと言える。また、厚み制御部材に均等に当たるように、凸部は密に存在している方がよい。螺旋溝を利用して凹部を形成する場合には、剥離部材の表面に確実に熱可塑性組成物層を残すためには、部分的に不連続にしておく方がよい。ローラ型の剥離部材上の特定箇所に凸部しか当たらないような状態になると、その部分の第1の熱可塑性組成物層は残らない結果となるため、ローラ型のクリーニング部材を回転した時に凸部の当接位置は軸方向に移動するような形状にした方がよい。また、凸部の高さに相当する溝の深さとしては50〜500μm程度の加工可能な範囲でよいが、剥離部材上の第1の熱可塑性組成物層を最適な厚みに残すには、溝の平均的な深さに左右されるので、クリーニング部材の周速度で微調整してローラ型のクリーニング部材の周速度を設定するとよい。ローラ型のクリーニング部材の素材は、前述の実施の形態と同じように、耐熱性の高いものがよい。更に、加熱された画像形成物質及び熱可塑性組成物と接着性のある材質である必要があり、冷却されても剥がれることなく、接着性が保持されることが好ましい。また、厚み制御部材の形状は、第1の実施の形態のように、表面が平坦面で構成される加熱ブレードや加熱ローラと同様のものでよい。クリーニング部材に直接当たるので、機械的に磨耗しないような構造や材質を選定することが必要である。例えば、第1の実施の形態のブレード状の厚み制御部材の表面に、耐熱耐磨耗性の樹脂フィルムを被覆するようにする。また、ローラ型のクリーニング部材の凸部との荷重が多くの箇所に分散した方がよいので、クリーニング部材のローラの曲面に倣う形状の凹曲面を持つ厚めのブロック部材としてもよい。
次に、本発明の第4の実施の形態の構成について説明する。画像除去装置を安価に構成するには、第1の実施の形態で挙げた例のようにギア比を固定して、単一の駆動手段(モータ)から駆動力を分配して伝達する構成とするのが好ましいといえる。一方で、設置スペースに余裕があり、多少のコストアップが許される場合であれば、複数の駆動手段やコントロール手段を備えていた方がよい。例えば、一般的な事務機とは異なり、開発用の試験装置や、大量の紙のリユースを一括で行うような用途であれば、複数機種の熱可塑性組成物質に対して最適条件に調整できる必要があったり、高いコントロール精度が要求されたりする場合がある。
本実施の形態では、第1〜第3の実施の形態において、剥離部材上の第1の熱可塑性組成物層の厚み制御手段として、速度比をコントロールする手段を有している。具体的には剥離部材とクリーニング部材とは独立した駆動手段で回転できるようにし、少なくともクリーニング部材側の回転速度を変更できるように入力手段を有している。前述した通り、剥離部材に対するローラ型のクリーニング部材の周速度(速度比)は、厚みを左右する重要なパラメータとなるだけでなく、変化させても剥離部材側の加熱温度や、搬送速度にはほとんど影響しないため調整パラメータとして適している。また、スペーサの交換などによるギャップ調整よりも、容易であるといえる。より精度よく第1の熱可塑性組成物層の厚みが設定できる。
図12は別の発明の一実施の形態に係る画像形成装置の構成を示す概略断面図である。同図に示す本実施の形態の画像形成装置100は、電子写真式記録プロセスにより画像を形成する画像形成部110を有し、上述した本発明の画像除去装置を有する画像除去部150が画像形成装置の筐体内に納められている一例である。なお、画像形成部110はタンデム型デジタルカラー電子写真式の公知のものである。すなわち、画像形成部110において、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(Bk)の画像が、それぞれ別の感光体111〜114上に形成され、それらの各ステーションで形成された粉体熱可塑性組成物でなる画像は中間転写体115にバイアス電圧が印加された転写ローラ116〜119によって転写される。中間転写体115に転写された画像は、更に被記録材トレー120又は121から搬送される被記録材122又は123に、バイアス電圧が印加された転写ローラ124により二次転写される。被記録材上に形成されたトナー像画像は、定着ローラ125と加圧ローラ126からなる定着手段127で加熱定着される。画像が定着された被記録材は、排紙ローラ対128を経て、排紙トレー129上に排出される。
なお、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(Bk)、それぞれの画像形成ステーションは、下記のような公知の電子写真装置の要素よりなる。金属等の導電性基体の上に光導電体層やその保護層が設けられたドラムまたはベルト状の感光体111〜114、図示していない帯電ローラやワイヤ帯電器などから構成される感光体111〜114を均一に帯電する手段、形成したい画像に従って均一に帯電された感光体111〜114を露光するための露光手段、露光手段により画像に従って形成された静電潜像を粉体トナーを用いて可視画像にする磁気ローラやトナー搬送ローラを内部に有する現像器119〜122、感光体111〜114上に形成されたトナー像を中間転写体115に転写するための導電性ローラ116〜119、転写後の感光体に残留する粉体トナーを除去するためのクリーニング手段(図示せず)等を含んで構成されている。
また、現像器に用いる熱可塑性組成物のトナーには離型剤としてワックスを含んでおり、定着ローラ125には、シリコンオイルを付与しない方式ようにすることが好ましい。ワックスを含有する熱可塑性組成物を用いると、特に下流側の熱可塑性組成物層を有する剥離部材との分離性が向上する。これらの画像形成構成要素に加えて、必要に応じて適当な公知の要素を加えることができる。例えば、画像を転写した後の感光体111〜114上の電荷を除くために、交流帯電器や光照射器などの除電手段を設けたり、感光体上に形成された粉体画像を被記録材に転写する前に均一に帯電するためのコロナ放電器を設けたり、感光体への帯電電圧を検知する手段と帯電器に印加する電圧をコントロールする手段を設けて、環境変動や繰り返し使用による劣化があっても感光体に帯電する表面電位を一定に保つような制御手段などを設けることができる。逆に、画像転写後の感光体上のトナー除去が必要ない場合には、クリーニングを除くことができる。
そして、中間転写ベルト115は、ローラ130、131を内接するように設けられており、図示されていないテンション付加機構により、適当な張力が与えられている。また、中間転写ベルト115には、必要に応じて、ブラシ、ローラ等、その表面に付着した粉体を除去する手段、被記録材に画像を転写した後の中間転写ベルトに残留する電荷を除電したり、かつ均一にするための除電手段、帯電手段を設けることもできる。
図12の画像形成部110では、2つの被記録材収納容器120、121を有し、被記録材収納容器120には、上質紙などの一般の被記録材122が収納され、被記録材収納容器121には、画像形成物質に対する定着性を低下する組成物が付与されたリユーザブル被記録材123が収納されている。更に、サイズの異なる被記録材や、使用できる紙種を増やすためや、送り方向(縦送り、横送り)の異なる被記録材を収納するために、被記録材の収納容器の数を増やすことができる。また、ユーザは、図12においては操作パネル(図示せず)や、画像形成装置と接続されたコンピュータ(図示せず)に接続されているディスプレーに表示されるユーザインタフェースにおいて、リユーザブル被記録材123に画像形成を行う第1の画像形成モードで画像形成をするか、上質紙などの一般の被記録材122に画像形成を行う第2の画像形成モードで画像を形成するかを選択することができるように制御手段、表示手段、制御ソフト、ボタンなどの入力手段等が設けられる。
詳細には、第1の画像形成モードは、ユーザが予め被記録材を再生することを前提にして印字する時に選択する画像形成モードであって、操作パネルやユーザインタフェースにおいて、例えば「リユース」、「ペーパーリユース」、「リユースモード」、「専用紙」、「再使用紙」「省資源」、「短期閲覧」、「短期使用」などと表示されるボタンや選択肢を設けることで選択される。第1の画像形成モードでは、給紙カセッ121からリユーザブル被記録材123が被記録材搬送路132を経て供給され、リユーザブル被記録材123上に画像が形成される。
ここで、上述した本発明の画像除去装置では、被記録材と熱可塑性組成物との間の接着力を低下するための、例えば画像除去促進液を供給する手段等を設けていないので、一般の被記録材が混入すると、剥離部材と被記録材とを分離することは不可能になり、必然的に被記録材の搬送ジャムが発生したり、剥離部材に修復不能の障害が生じたりする。
そこで、本実施の形態の画像形成装置100では、リユーザブル被記録材に付され、リユーザブル被記録材であることを識別する識別情報の有無を読み取るセンサ133が設けられている。この識別情報をリユーザブル被記録材に付する例としては、図13の(a),(b)の1つ又は複数の切欠き201や図13の(c),(d)の1つ又は複数の穴202が被記録材200に予め設けられていたり、図13の(e)のバーコード203が印刷されていたりする。そして、センサ133は、これらの識別情報の有無を判断するための情報を検知し、図示していない印字制御手段に信号を送信する。印字制御手段は、例え第1の画像形成モード印字の指令が出されても、前記の識別情報が付されていない被記録材上には、第1の画像形成モードの印字は実行せず、識別情報が付されていない被記録材を、そのまま排紙トレー129に排出したり、第1の画像形成モードの印字に不適切な被記録材が供給されたことをユーザに通知するための情報を操作パネルやディスプレーやなどに表示する処理を実行する。
このように画像形成装置にリユーザブル被記録材を識別する識別情報を光学的に検出するセンサを設けることにより、第1の画像形成モードで印字される被記録材に、熱可塑性組成物に対する定着性を低下せしめたリユーザブル被記録材上では無い一般の被記録材が混入することを防止することができる。よって、画像形成装置において、被記録材の搬送ジャムの発生、及び剥離部材に修復不能の障害の問題の発生を未然に防ぐことができる。
なお、リユーザブル被記録材であることを識別する他の手段として、上記のように可視的な情報を付与する他に、読出し・書込みが可能な接触式又は無接触式のICチップが被記録材に予め埋め込まれ、このICチップにリユーザブル被記録材であることなどの識別情報を記憶し、当該ICチップに記憶された識別情報を読み出して被記録材がリユーザブル被記録材であるか否かを識別する方法がある。
また、第1の画像形成モードを優先モードとして、ユーザは何も操作しないで、自動的に第1の画像形成モードが選択された状態となるように制御し、ユーザが第2の画像形成モードで画像を形成する場合にのみに、第2の画像形成モードを選択するように設定することもできる。
図12のようなカラー画像形成装置において、第1の画像形成モードで画像形成がされたことを示す識別マークは全ての色で形成される必要はなく、画像除去装置が読み取り可能に形成されることが重要である。多色で形成した場合には、色ずれなどにより画像除去装置で読み取りが困難になる場合もある。例えば、黒色だけで識別パターン形成することにより、色ずれの問題はなく、コントラストも大きいために、画像除去装置において、読み取りが容易になる。
一方、操作パネルやユーザインタフェースにおいて、第2の画像形成モードが選択されると、給紙カセット120から、上質紙などの一般の被記録材122が供給され、その被記録材上に画像が形成される。第2の画像形成モードでは、第2の画像形成モードで画像が形成されたことを示す情報は、被記録材上に記録されない。第2の画像形成モードは、操作パネルやユーザインタフェースにおいて、例えば「定着モード」、「高定着」、「フィクスモード」、「普通紙」、「新紙」、「文書保管」、「外部配布」などと表示されるボタンや選択肢を設けることで選択される。
また、一方、本実施の形態の画像形成装置100における画像除去部150は、画像を除去しようとするリユーザブル被記録材134を収納する被記録材収納容器135と、リユーザブル被記録材134を上述の本発明の画像除去装置136へと送り出す給紙ローラ対137と、第1の画像形成モードで印字されたことを示す識別情報を検知するためのセンサ138と、第1の画像形成モードで印字されたことを示す識別情報が検出されなかった被記録材134を被記録材収納容器139に搬送する搬送手段140と、画像除去処理したリユーザブル被記録材を画像形成装置の被記録材収納容器121に搬送するための搬送手段141とを含んで構成されている。
この画像形成装置100では、画像除去装置136に供給されようとしている被記録材に、第1の画像形成モードで印字されたことを示す識別情報が検知されない場合には、図示していない分岐手段と制御手段により、被記録材は搬送手段140により被記録材は被記録材収納容器139に搬送され、画像除去装置136には搬送されない。
このように画像形成部110と画像除去部150とを同一の画像形成装置に第1の画像形成モードで印字したことを識別する情報を記録する手段を設け、画像除去装置に第1の画像形成モードで画像を形成した識別情報を読み取り画像除去処理を制御する手段を設けたことにより、画像除去装置で発生するジャムや剥離部材の破損などの画像除去装置や画像形成装置の障害発生の問題を解決できるとともに、画像除去の品質を確保することができる。すなわち、本発明の画像除去装置は、特定の被記録材、特定の画像形成物質、第1の画像形成モードを印字したことを識別する手段を付与する特定の画像形成装置種と組み合わせて使用することにより、安定した画像除去特性、剥離部材と被記録材との分離特性が得られる。
また、リユーザブル被記録材も熱可塑性組成物との接着力が一定となるように、リユーザブル被記録材も特定のものをシステムとして用いることにより、安定した画像除去特性や剥離部材と被記録材の分離特性が得られる。
このようにして、常に最も適切な組み合わせで使用されることで、画像除去の部分は、長期にわたって、確実に画像除去性能を維持するとともに、使用されるリユーザブル被記録材は、繰り返し使用可能回数が著しく向上する。また、前述したように、画像除去部剥離部材の熱可塑性組成物層には、熱可塑性組成物質と同一のバインダーを主成分とし、同一の離型材を含むようにするとよい。離型材を有することは画像除去時に被記録材を剥離部材から分離する際に、分離不良を起こさずに、安定した分離特性を得ることができ、主成分を同一にすることは、繰り返しの使用の中で混ざったとしても、剥離部材表面の物性変化を最小とすることができ、長期間、画像除去特性が安定するという効果がある。
第1の画像形成モードが手動また自動で選択されて画像を形成する場合には、第1の画像形成モードで画像形成がされたことを示す識別マークを形成する。識別マークは、他の画像情報と同様に、除去可能な画像形成プロセスにより印字される。すなわち、電子写真方式の画像形成方法による画像形成装置であれば、識別パターン信号発生手段により、レーザ、LEDの発光や液晶などのシャッター素子の開閉が制御され、感光体上に識別パターンの静電潜像が形成されたのち、現像装置で現像されて可視の識別パターンが形成される。
図14は別の発明の一実施の形態に係る画像形成除去システムのシステム構成を示す概略図である。同図に示すように、本実施の形態の画像形成除去システムは、複数の画像形成装置300−1〜n(nは2以上の整数)と、少なくとも1台の画像除去装置10とからなる。つまり、本システムは、画像形成装置と画像除去装置とが別体となったシステムである。本実施の形態の画像形成除去システムによれば、特定のリユーザブル被記録材、複数の画像形成装置、画像除去装置をシステムとして使用することにより、画像の除去特性や被記録材と剥離部材との分離特性が安定した状態で、同一のリユーザブル被記録材を繰り返し使用できる。
図15は別の発明の一実施の形態に係る画像形成除去システムの別のシステム構成を示す概略図である。同図に示すように、本実施の形態の画像形成除去システムは、複数の画像形成装置300−1〜n(nは2以上の整数)と、図12に示すような画像除去部を有する少なくとも1台の画像形成装置100とからなる。つまり、本システムは、画像形成装置と画像除去装置とが一体となったシステムである。本実施の形態の画像形成除去システムによれば、特定のリユーザブル被記録材、複数の画像形成装置、画像除去装置をシステムとして使用することにより、画像の除去特性や被記録材と剥離部材との分離特性が安定した状態で、同一のリユーザブル被記録材を繰り返し使用できる。
以下、具体的な実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例で挙げられた条件に限定されるものではない。
下記の実施例に使用した被記録材は、下記のような処方により画像形成物質との定着性を低下させている。オレフィン−無水マレイン酸重合体ケン化物25重量%水溶液 1重量部、ポリビニルアルコール10重量%水溶液 10重量部を混合し、塗布液を調合した。この塗布液を片面の乾燥塗布量が2.3g/m2となるように、市販の普通紙(リコー コピー用紙 Type6200)の両面にワイヤバーを用いて塗布し、120℃、5分間の乾燥を行い、スーパーキャレンダで平滑化処理を行い、リユーザブル被記録材を得た。
この被記録材を使用し、imagio Neo C285を用いて、階調画像、2次色及び単色のべた画像、文字画像を有するフルカラーパターンを印字し、画像サンプルを作成した。またサンプルの印字画像は鮮明なものであった。なお、画像形成物質は、離型剤にワックス成分を重量パーセントで5〜10%程度含む、ポリエステルを主成分としたオイルレス重合トナーである。
<実施例1>
図1の(a)に示したクリーニング部材を搭載した図5の画像除去装置を用いて画像サンプルの画像除去を行った。画像除去条件は下記のとおりとした。
(1)画像除去条件
・剥離部材
図2に示すような3層構造、直径40mmのローラ。
第1の熱可塑性組成物層・・・画像形成物質を初期平均厚みtp=30μm程度に加熱定着させたもの
中間層・・・50μmのポリイミドフィルムチューブ
弾性体層・・・シリコーンゴム発泡体、硬度40°。
・剥離条件
加圧ローラ設定温度・・・120℃(ハロゲンヒータによる加熱)
ローラ型の剥離部材周速度(被記録部材の搬送速度)Vp・・・40mm/s
・クリーニング部材
アルミニウム製、直径30mmのローラ。
表面は平坦面(凹凸加工はなし)
・クリーニングプロセス条件
ローラ型のクリーニング部材の設定温度・・・140℃程度(ハロゲンヒータによる加熱)
速度Vc・・・120mm/s(カウンター方向)、剥離ローラとの周速比は、Vc/Vp=3(倍)
第2の熱可塑性組成物層・・・画像形成物質を剥離ローラから転移させて形成したもの
・厚み制御部材(ローラ型のクリーニング部材とブレード状の厚み制御部材とが形成する間隔は約50μm程度に設定)
厚み1mm、幅230mmのSUS製ブレード(表面は非粘着加工)、ブレード面は軸方向に平面
ギャップ形成は、ブレード両端部5mmに厚み50μmの樹脂製のスペーサを取付け、当接する。
クリーニングローラ面の接線に対して角度45°、ローラの最下面に配置する。
ラバーヒータで約140℃に加熱する。
・回収装置
図8の(a)の自重落下式
(2)評価結果
上記の条件で、画像サンプルの画像除去を行ったところ、良好に画像除去できることが確認された。被記録材上の画像は元の画像が判別できないレベルまで完全に除去されていた。約1000枚の画像除去を行ったが、画像除去性能は初期性能を維持し、低下しなかった。使用したリユーザブル被記録材は約50枚で平均20回繰り返して画像を形成したが、得られた画像に顕著な変化はなく、鮮明な画像を維持していた。
画像除去を繰り返したローラ型の剥離部材上の第1の熱可塑性組成物層は画像形成物質と混在した状態(色で判断)になっていたが、表面はムラのない平滑面で、厚みは適正範囲(約30〜100μm)を維持していたものと推測される。一方、転移を繰り返したローラ型のクリーニング部材上の第2の熱可塑性組成物層の厚みもほぼ厚み制御部材とローラ型のクリーニング部材とで形成される間隔と同じものであると推測される。動作中には、厚み制御部材の上流位置に、画像形成物質を含む熱可塑性組成物の滞留部が形成されていることが観察され、熱可塑性組成物が多く滞留したところから、回収容器の中に自重で落下した。特に、問題となるトラブルはなかった。
<比較例1>
上記実施例1で使用した装置から厚み制御部材のみを取り外して、ローラ型のクリーニング部材に転移したものを全く回収しない条件で同じ画像サンプルを用いて画像除去を行った。
(1)画像除去条件
剥離部材、剥離条件、クリーニング部材、クリーニング条件は上記実施例1と同一にした。厚み制御部材、回収装置はなしとした。
(2)評価結果
画像サンプルを繰り返し画像除去していくと、剥離部材の表面に画像形成物質が堆積していき、第1の熱可塑性組成物層の厚みが徐々に増すことが観察された。ローラ型のクリーニング部材側の第2の熱可塑性組成物層の厚みも、徐々に厚くなっていった。約50枚通紙したところ、紙皺が発生する場合が観察され、最終的にはリユーザブル被記録材が剥離部材から分離できないような分離不良が発生した。
<比較例2>
上記実施例1で使用した装置から、厚み制御部材の両端部のスペーサを取り外して、ほとんどギャップを設けない構成とした。同じ画像サンプルを用いて画像除去を行った。
(1)画像除去条件
剥離部材の構成、剥離条件、クリーニング部材の構成、クリーニングプロセス条件、回収装置は上記実施例と同一にした。
・厚み制御部材(ローラ型のクリーニング部材とブレード状の厚み制御部材とが形成する間隔は約50μm程度に設定)
厚み1mm、幅230mmのSUS製ブレード(表面は非粘着加工)、ブレード面は軸方向に平面。
ギャップ形成はしないで当接する。
ローラ型のクリーニング部材のローラ表面を傷つけないように、当接面にPIテープを貼り付けた。
クリーニングローラ面の接線に対して角度45°、ローラの最下面に配置する。
ラバーヒータで約140℃に加熱する。
(2)評価結果
上記実施例1と異なり、スタートすると剥離部材上の第1の熱可塑性組成物層はローラ型のクリーニング部材側に転移され、厚みが薄くなり、すぐにほとんどポリイミドフィルムが剥き出しになってしまった。ローラ型のクリーニング部材上の第2の熱可塑性組成物層は形成されない。この状態で画像サンプルを通紙すると、大部分の画像除去ができたが、画像の中間色の薄い画像部分などが部分的に除去できない箇所が見られた。熱可塑性組成物層がないポリイミドフィルムだけでは、被記録材上の熱可塑性組成物質と接触できない箇所が発生するためであると考えられる。また、画像からローラ型の剥離部材上に転写された画像形成物質も、すぐにクリーニング部材へと転移し、ブレード状の厚み制御部材で掻き取られ回収容器に回収されるので、最終的にはローラ型の剥離部材上には残らない結果となった。
<実施例2>
上記実施例1と基本構成と条件は同じ。第3の実施の形態で説明したような、クリーニング部材として溝を形成した金属ローラを用いた。クリーニング部材の表面形状以外は比較例2と近い。
(1)画像除去条件(実施例1と異なる項目のみ記載する)
・クリーニング部材
アルミニウム製、直径30mmのローラ
連続した螺旋溝を切削加工したもの、図11の(a)のタイプ
溝深さ0.2mm程度、ピッチ0.5mm、1条(螺旋の傾きは小さい)
・厚み制御部材
厚み1mm、幅230mmのSUS製ブレード(表面は非粘着加工)、規制面は軸方向に平面
ブレード当接面全幅に厚み50μmの耐熱耐磨耗性樹脂テープ(ポリイミドなど)を貼り付け、当接する。
クリーニングローラ面の接線に対して角度45°、ローラの最下面に配置する。
ラバーヒータで約140℃に加熱する
・その他項目は実施例1と同じ
(2)評価結果
上記の条件で、画像サンプルの画像除去を行ったところ、実施例1同様に良好に画像除去できることが確認された。被記録材上の画像は元の画像が判別できないレベルまで完全に除去され、約1000枚の画像除去を行ったが、画像除去性能は初期性能を維持し、低下は見られなかった。使用したリユーザブル被記録材は約50枚で平均20回繰り返して画像を形成したが、得られた画像に顕著な変化はなく、鮮明な画像を維持していた。
なお、剥離部材の表面層に用いることのできる熱可塑性樹脂の例としては、カルボン酸として、テレフタル酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ブラシル酸、ピロメリット酸、シトラコン酸、グルタコン酸、メサコン酸、イタコン酸、テラコン酸、フタル酸、イソフタル酸、ヘミメリト酸、メロファン酸、トリメシン酸、プレーニト酸、トリメリット酸などの1種または2種以上を用い、多価アルコールとしては、ビスフェノールA、水添ビスフェノールA、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルジオール、ヘキサメチレンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール、ペンタグリセロール、ペンタエリトリトール、シクロヘキサンジオール、シクロペンタンジオール、ピナコール、グリセリン、エーテル化ジフェノール、カテコール、レゾルシノール、ピロガロール、ベンゼントリオール、フロログルシノール、ベンゼンテトラオールなどの1種または2種以上を用いて縮重合したポリエステル樹脂、ポリスチレン、ポリ−p−クロロスチレン、ポリビニルトルエンなどのスチレン及びその置換体の重合体;スチレン−p−クロロスチレン共重合体、スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−ビニルナフタリン共重合体、スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、スチレン−アクリル酸オクチル共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタクリル酸ブチル共重合体、スチレン−グリシジルメタクリレート共重合体、スチレン−ジメチルアミノエチルメタクリレート共重合体、スチレン−ジエチルアミノエチルメタクリレート共重合体、スチレン−ジエチルアミノプロピルアクリレート共重合体、スチレン−エチレングリコールメタクリレート共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ビニルメチルケトン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−アクリロニトリル−インデン共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸エステル共重合体などのスチレン系共重合体;ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、エポキシ樹脂、エポキシポリオール樹脂、ポリウレタン、ポリアミド、ポリビニルブチラール、ポリアクリル酸樹脂、ロジン、変性ロジン、テルペン樹脂、脂肪族叉は脂環族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂等を挙げることができる。
また、熱可塑性組成物層に添加する離型剤の具体例としては、フッ素系、シリコン系の高分子化合物、長鎖アルキル基を側鎖に有する有機高分子化合物、カルナバワックス、モンタンワックス、密ロウ、パラフィンワックス、ミクロクリスタリンワックス、高級アルキルアルコール類、高級脂肪酸類、高級脂肪酸のエステル類、高級アルキルアミド類、などの60〜110℃に融点を持つ、ワックス類を挙げることができる。
更に、定着性を低下せしめる化合物の例として、シリコン樹脂、シランカップリング剤、フッ素樹脂、オレフィン樹脂、界面活性剤、サイズ剤、ワックスなどが挙げられる。紙に界面活性剤を付与したリユーザブル被記録材の例は、例えば、特開平10−74025号公報に開示されており、フッ素系界面活性剤、シリコン系界面活性剤、分子中に炭素数の総数が8個以上の直鎖あるいは分岐しているアルキル基を含有する界面活性剤を付与した紙を用いることが好ましい。熱可塑性組成物質との定着性を低下するために被記録材に含ませることのできるフッ素系界面活性剤の具体例は、フロロアルキルカルボン酸塩、フロロアルキルスルホン酸塩等のアニオン系、フロロアルキル導入ベタイン等の両性系、ノニオン系、カチオン系等である。シリコン系界面活性剤の具体例は、例えば、エポキシ変性、アルキル変性、アラルキル変性、アミノ変性、カルボキシル変性、アルコール変性、フッ素変性、ポリエーテル変性、等のシリコンオイルである。分子中に炭素数の総数が8個以上の直鎖あるいは分岐しているアルキル基を含有する界面活性剤の例は、アルキルカルボン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルリン酸エステル塩等のアニオン系、アルキルアミン塩、アルキルアミン誘導体、4級アンモニウム塩、イミダゾリン、イミダゾリウム塩等のカチオン系、ベタイン等の両性系等である。シリコン化合物を表面に付与した被記録材の例は、特許文献6、7などに開示されている。
本発明において、特に好ましく用いられる被記録材は、画像形成物質との定着性を低下せしめる化合物として、オレフィン−無水マレイン酸重合体を用いた被記録材である。オレフィン−無水マレイン酸重合体のオレフィン成分として、特に、α位に二重結合を有し、炭素数10〜炭素数20のオレフィン単量体を用いて重合させた高分子化合物を用いることにより、被記録材の繰り返し使用に画像形成物質との定着性を低下せしめる化合物の剥離部材や被記録材内部等へ移行を防止し、繰り返し使用回数を多くすることができる。また、被記録材の基材の凹凸を小さくするような目止めをする化合物としては、炭酸カルシウム、酸化チタン、酸化亜鉛、硫酸バリウム等の白色顔料やラテックス、スチレン−ブタジエン重合体エマルジョン、アクリル樹脂、ポリビニルアルコール、でんぷん、酢酸ビニル重合体エマルジョン、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸、アラビアゴム等の高分子化合物が挙げられ、これらの高分子化合物と顔料とを混合して、紙の上に目止め層を設けることもできる。上記高分子化合物に加えて、上記画像形成物質の定着性を低下せしめる化合物や顔料を混合して紙に塗布することもできる。
なお、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内の記載であれば多種の変形や置換可能であることは言うまでもない。