以下、本発明を詳細に説明する。
本発明者らが、低温定着が可能な単色ブラックトナーのベタ黒定着画像において、濃度ムラ及び明度ムラが発生するメカニズムを鋭意検討した結果、定着時に記録材表面繊維の凹凸面に由来した、異なる2点の発生理由があることが分かった。
一般の普通紙上にベタ黒単色画像を出力した場合、定着工程前の未定着画像は紙繊維の凸面上にトナーが比較的均一に載っている面と、紙繊維の凹面上にトナーがまばらに入り込んだ部分が存在することが顕微鏡により観察される。低温定着性に優れたトナーの樹脂特性は、一般的に低温領域においても十分低い溶融粘度を示す様に設計されている。従って定着温度が高目に振れると、それに伴って溶融粘度が更に感度良く低下する傾向を示す。
定着ニップ内において、定着部材表面と確実に接触する紙繊維凸面に載ったブラックトナーは、十分な熱量が与えられるために容易に溶融し、溶融粘度が低い故に紙繊維内部に深く浸透していく。その結果、定着ニップを通過した後の繊維凸面を覆うトナー層の厚みが
薄くなるため、紙繊維に沿って濃度が白く透けて見える明度ムラを生じることになる。
一方、繊維凹部のまばらなトナーが定着ニップ部を通過する際には、凸部繊維の立体障害により、一部定着部材表面と接触できない面が存在する。この面に存在するトナーは定着部材表面から非接触で熱を受けることになるが、ニップを通過する微小な時間に数個のトナーが互いに熱によって凝集し、凹部をまばらに埋めていたトナーのカバーリング面積が小さくなる現象が確認された。この、互いの距離が近いトナーが収縮するように凝集する現象は、カバーリング面積の低下を及ぼすだけでなく、粒状を残した不完全な状態で定着されるため、十分な平滑面を形成できず濃淡ムラを更に助長することになる。
即ち、低温定着性を有する従来のトナーにおいてベタ黒画像の濃度ムラを改善するには、紙繊維凸部における溶融トナーの過剰な染み込みと、紙繊維凹部におけるトナーの凝集及び粒状維持を解消するといった、2点の課題を克服する必要があることが分かった。
この問題は、従来の定着温度で従来トナーを用いた定着画像においては全く見られなかった現象である。
本発明者らは、トナーの動的粘弾性と上記濃度ムラ発生メカニズムとの関係を詳細に検討することにより、低温定着性を損なうこと無く濃度及び明度の均一なベタ黒再現性に優れたブラックトナーを発明するに到った。
本発明のブラックトナーは、少なくともスチレン系結着樹脂、カーボンブラック、ワックス成分、極性を有するスチレン系樹脂を含有するトナー粒子と、無機微粉体とを有するブラックトナーであって、該トナーの動的粘弾性試験により測定した損失弾性率G”の極大値が50℃以上62℃以下に存在し、少なくとも損失正接tanδの極小値を示す温度(P1)が120℃以上155℃以下に存在し、損失正接の極小値tanδ(P1)が0.50以上5.00以下であり、P1における貯蔵弾性率の値G’(P1)が7.0×102Pa以上1.0×104Pa以下であり、P1−20℃における貯蔵弾性率の値をG’(P1−20)、P1+20℃における貯蔵弾性率の値をG’(P1+20)とした場合、{LogG’(P1−20)−LogG’(P1)}<{LogG’(P1)−LogG’(P1+20)}の関係を満たすことを特徴とする。
以下、本発明の特徴を、図1に示す本発明のトナーの動的粘弾性プロファイルを用いて説明する。
図1は、本発明のブラックトナーの一例である、周波数1Hzの正弦振動波を加えながら昇温速度2℃/minで30℃から200℃まで測定した動的粘弾性プロファイルである。
本発明のトナーの最大の特徴は、損失弾性率G”の極大値が50℃以上62℃以下に存在し、且つ損失正接tanδが120℃以上155℃以下に極小値を存在することにある。損失弾性率G”の極大値が示す温度は、一般に樹脂の動的粘弾性試験におけるガラス転移温度(Tg)として扱われる値であり、示差走査熱量計(DSC)により求められる樹脂(Tg)とは厳密には異なる。本発明においては、低温定着性と現像特性により相関性の見られた動的粘弾性試験におけるG”の極大値が示す温度を必須物性値として取り扱う。
本発明における損失弾性率G”の極大値が示す温度は、現像品質を損なわず且つ低温定着性にも優れ、広い温度域で安定した定着性能を示す基礎となる樹脂特性である。
損失弾性率G”の極大値が50℃に満たない場合、度重なる現像動作に伴うストレスや、過酷な環境に放置された場合、トナーの現像特性が劣ることがある。
一方、損失弾性率G”の極大値が62℃を越えると低温定着性が損なわれる。
尚、本発明における損失弾性率G”の更に好ましい値は52℃以上60℃以下であり、より安定した耐オフセット性及びベタ黒画像の再現性が得られ、高い光沢度を有する低温定着特性を示せる。
本発明のトナーは、損失正接tanδの温度プロファイルにおいて、120℃以上155℃以下の温度域に極小値を有することが必須条件である。この損失正接tanδの極小値の出現は、貯蔵弾性率G’の緩和現象に由来するものであり、例えばトナーを構成する樹脂成分に微架橋構造を導入したり、フィラー効果を有する物質を添加することにより達成される。
本発明においては、損失弾性率G”の極大値出現温度と貯蔵弾性率G’の緩和特性を特定の状態に制御することで、優れた低温定着性とベタ黒濃度均一性の双方を満足できることを見出した。
本発明のトナーの貯蔵弾性率G’は、緩和点(P1)を境に急激な弾性率の特性変化を生じることが特徴である。緩和点(P1)に到達するまでの温度領域においては、貯蔵弾性率G’を一定の弾性率で維持する所謂ゴム状態の特性を有しており、紙繊維凸部で起こる定着染み込み現象に対して弾性率を維持し溶融粘度の低下を抑える効果が働き抑止できる。また、この貯蔵弾性率G’の維持特性は、紙繊維凹部におけるまばらに存在するトナーの凝集収縮現象に対しても、急激な溶融による凝集のきっかけを防げる効果があることも分かった。
一方、緩和点(P1)以降の速やかな貯蔵弾性率G’の低下特性は、低温定着性を可能にする必須特性である。また、紙繊維凹部の現象に対しても、凝集を免れた孤立トナーを速やかに且つばらつき無く溶融状態に移行させる効果を有するため、粒状感の無い平滑な定着画像が得られ、低温定着性トナー特有の問題であった濃度ムラを解消できる。
本発明における緩和点(P1)は、トナーの動的粘弾性プロファイルにおいてtanδの極小値として定義される値であり、120℃以上155℃以下に有することが必須である。
貯蔵弾性率G’に緩和特性を有するトナーであっても、緩和点(P1)が120℃に満たない場合はベタ黒画像の定着濃度ムラを解消する効果が発現せず、一方155℃を超える場合は低温定着が達成できない。
尚、本発明において緩和点(P1)の更に好ましい出現温度は125℃以上150℃以下であり、定着可能温度域の広く、きれいなベタ画像を与える低温定着性トナーが得られる。
本発明の効果である、低温定着性とベタ黒濃度均一性を有効に発揮するための緩和特性の大きさは、緩和点P1に対して20℃低温側の貯蔵弾性率の値をG’(P1−20)、緩和点P1に対して20℃高温側の貯蔵弾性率の値をG’(P1+20)とした時に、{LogG’(P1−20)−LogG’(P1)}<{LogG’(P1)−LogG’(P1+20)}の関係を満たし、且つ損失正接tanδが緩和点(P1)において示す極小値の値をtanδ(P1)とした時に、tanδ(P1)が0.50以上5.00以下であり、更に緩和点(P1)における貯蔵弾性率の値をG’(P1)とした時に、G’(P1)が7.0×102Pa以上1.0×104Pa以下であることが必須である。
これは、損失正接tanδの極小値が示す緩和点(P1)を境にした前後20℃の温度におけるG’の変化量が、指数関数において傾きの変化を有する物性変化を示す事で始めて上記効果が発現するということを意味する。
更に本発明において好ましい貯蔵弾性率G’の変化量は、0.05<{LogG’(P1)−LogG’(P1+20)}−{LogG’(P1−20)−LogG’(P1)}<0.40の関係で示せる。
{LogG’(P1)−LogG’(P1+20)}−{LogG’(P1−20)−LogG’(P1)}の値を上記範囲内に制御することで、更に安定した低温定着性と優れたベタ黒品質の両立が可能になる。
動的粘弾性における損失正接tanδとは、tanδ=G”/G’と定義される損失弾性率と貯蔵弾性率の比を表すパラメーターである。
定着ニップ内において、定着基材である紙上の未定着画像は、紙繊維の凹凸による影響で、微小な時間に圧力分布の異なる条件下で熱を受けることになる。
このような状況下で良好な定着品質を達成するためには、一定の貯蔵弾性率G’を維持した上で、弾性的な性質と粘性的な性質のバランスを制御することが重要になる。
緩和点(P1)におけるG’(P1)が7.0×102Paに満たないと、弾性率が小さく粘度低下を抑えられないため、ベタ黒画像の明度ムラ及び濃度ムラの発生頻度が高まる。
一方G’(P1)が1.0×104Paを超える場合、弾性率が高いために溶融粘度を十分低くすることができず、低温定着性や高いグロスを再現することが難しくなる。
尚、G’(P1)の更に好ましい範囲は8.0×102Pa以上8.0×103Pa以下であり、低温定着特性と濃く冴えたべた黒画像の再現性及び高い画像光沢度を示すことができ、画像品質の向上に特に優れる。
緩和点(P1)における極小値tanδ(P1)が0.50に満たない場合、粘性挙動が弾性挙動に対して小さく弾性挙動の振る舞いに支配されてしまうため、低温定着性や高い光沢度の再現性が損なわれる。
一方、極小値tanδ(P1)が5.00を超える場合、弾性挙動に対して粘性挙動の性質が大きいため、定着時の紙繊維への溶融染み込み性を抑えられずに明度ムラを生ずる。
尚、本発明において、上記で説明した特徴の動的粘弾性に制御する方法は、スチレン系メインバインダーのガラス転移温度と分子量を低目に抑え、かつ極性を有するスチレン系樹脂とカーボンブラックの諸物性や配合比率を調整することにより達成される。
即ち、本来溶融粘度の低い樹脂組成に、極性を有するスチレン系樹脂とカーボンブラックを添加することで、構造的な強度を補い、弾性率の緩和現象を生じさせるものである。
具体的な作用としては、カーボンブラックの種類と添加量の加減により溶融粘度を調整でき、損失弾性率G”を高めに維持することが可能になる。また、極性を有するスチレン系樹脂の酸価や水酸基価及びTgをコントロールすることで、緩和点の出現温度や貯蔵弾性率G’の値を制御することができる。
本発明のトナーが示す動的粘弾性を満足することで、従来の低温定着性トナーの欠点であった溶融粘度の温度変化に対する著しい低下が抑制され、紙繊維への染み込みやトナー同士が瞬時に凝集する現象が抑えられ、低温定着性とベタ黒品質の両立が達成される。
以下、本発明の効果を更に安定して発揮できる好ましい物性値について説明する。
本発明のトナーは、先に説明したトナーの動的粘弾性プロファイルにおいて緩和点(P1)が示す貯蔵弾性率G’(P1)と、緩和点(P1)より20℃低温側の貯蔵弾性率G’が示すG’(P1−20)との関係が、
0.10≦{LogG’(P1−20)−LogG’(P1)}≦0.65
より好ましい範囲は、
0.15≦{LogG’(P1−20)−LogG’(P1)}≦0.60
の関係を満たすことが好ましい。
{LogG’(P1−20)−LogG’(P1)}の関係は、緩和点(P1)に到達する直前の温度域における貯蔵弾性率G’の特性をG’の変化量として表した値であり、トナーを構成する樹脂の架橋状態や構造制御により異なる特性を示す。
{LogG’(P1−20)−LogG’(P1)}の値が0.1に満たない場合、特に高速プロセス条件において定着ニップ通過時間が短くなった場合、トナーの溶融状態で弾性成分の影響が強く現れ光沢度が小さくなる場合がある。
一方、{LogG’(P1−20)−LogG’(P1)}の値が0.65を超える場合、トナーの溶融状態での弾性が不足し、ベタ黒画像の均一性が損なわれる恐れがある。
本発明のトナーは、先に説明したトナーの動的粘弾性プロファイルにおいて緩和点(P1)より20℃高温側で示す貯蔵弾性率G’(P1+20)の値が、1.0×102Pa以上5.0×103Pa以下、より好ましくは1.0×102Pa以上1.0×103Pa以下であることが好ましい。
緩和点(P1)より20℃高温の貯蔵弾性率G’特性を、一定範囲内に維持させることで、低温定着性とベタ黒画像品質の両立をより安定させることができる。
貯蔵弾性率G’(P1+20)の値が1.0×102Paに満たない場合、定着温度が高温側に振れたときのオフセット性が劣ることがある。
一方、貯蔵弾性率G’(P1+20)の値が5.0×103Paを超える場合、最低定着可能温度が高目になることや、光沢度が低くなることがある。
本発明のトナーは、先に説明したトナーの動的粘弾性プロファイルにおいて緩和点(P1)が示す損失正接tanδ(P1)と、緩和点(P1)より20℃高温で示す損失正接tanδ(P1+20)との関係{tanδ(P1+20)−tanδ(P1)}が、0.10以上3.00以下、より好ましくは0.20以上2.00以下であることが好ましい。
{tanδ(P1+20)−tanδ(P1)}の関係は、緩和点通過前のゴム状態における弾性成分と粘性成分のバランスと、緩和点より20℃高温時における溶融状態の弾性成分と粘性成分のバランスの変化量を示すものである。
{tanδ(P1+20)−tanδ(P1)}の関係が0.10に満たない場合、特に未定着画像のトナー載り量が多いときに一部粒状を残した定着画像が得られる時があり、光沢度の低下及び定着性の悪化に繋がり好ましく無い。
一方、{tanδ(P1+20)−tanδ(P1)}の関係が3.00を超える場合、著しい溶融粘度の低下が原因で、オフセットやベタ黒定着画像の品質低下に繋がる恐れがあり好ましくない。
本発明のトナーは、先に説明したトナーの動的粘弾性プロファイルにおいて、緩和点(P1)とその前後20℃における貯蔵弾性率G’の値をそれぞれ、G’(P1)、G’(P1−20)、G’(P1+20)とした時に、
{G’(P1)/G’(P1+20)−G’(P1−20)/G’(P1)}>1.0
更に好ましくは、
{G’(P1)/G’(P1+20)−G’(P1−20)/G’(P1)}<6.0
の関係を満たすことが好ましい。
{G’(P1)/G’(P1+20)−G’(P1−20)/G’(P1)}の関係は、緩和点(P1)の直後における貯蔵弾性率の変化の割合から緩和点(P1)の直前における貯蔵弾性率の変化の割合を引いた値を示したものであり、緩和点の前後において弾性成分が示す変化特性を定義したものである。
{G’(P1)/G’(P1+20)−G’(P1−20)/G’(P1)}の値を1.0より大きい値に制御することで、最低定着可能温度を更に低くすることや、高い光沢度が得られる傾向があるため好ましい。
一方、{G’(P1)/G’(P1+20)−G’(P1−20)/G’(P1)}の値が6.0を超えないように制御することで、ベタ黒画像の明度ムラ及び濃度ムラや耐オフセット性を更に高めることができ好ましい。
尚、上記で説明した本発明のトナーが示す更に好ましい動的粘弾特性へ制御する手段としては、トナーを構成する樹脂成分の架橋構造や分子量分布を工夫する方法、動的粘弾特性の異なる数種類の樹脂をブレンドする方法、樹脂成分中にフィラー効果を発現する添加剤を加えて粘弾特性を変化させる方法、トナー粒子を例えばコアシェル構造として構造的に粘弾特性を変化させる方法、或いはこれらの複合方法等で制御することができる。
これらの中でも、トナーを構成する樹脂成分の架橋構造や分岐密度を制御する方法が粘弾性の制御に優れ、最も安定した低温定着特性と耐久現像特性を示すことができ好ましい。
本発明のトナーは、オルトジクロロベンゼン(ODCB)可溶成分の高温GPC−RALLS−粘度計分析によって測定される絶対分子量Mwが4.0×104以上2.0×105以下であり、
該分析における絶対分子量(Mw)の常用対数(log〔Mw〕)が5.00以上の樹脂成分(s)の粘度Iv(s)の常用対数(log[Iv(s)])を、絶対分子量Mw(s)の常用対数(log[Mw(s)])に対してプロットした際の傾きa(s)が0.30以上、0.70以下であり、該分析における粘度計が検出したクロマトグラムの全樹脂成分(a)の粘度Iv(a)の常用対数(log[Iv(a)])を、絶対分子量Mw(a)の常用対数(log[Mw(a)])に対してプロットした際の傾きをa(a)としたとき、a(s)/a(a)が0.20以上0.80以下であることが好ましい。
高温GPC−RALLS−粘度計分析においては、直鎖型ポリマーと分岐型ポリマーの分布情報が得られる。一般に、高分子は分子量が大きくなるに従って、その構造の嵩高さの影響で粘度が上昇する。また、同一分子量の高分子で分岐度の異なる高分子の粘度を比較した場合、分岐度が高くなる程分子の広がりが抑制され回転半径も小さくなるためその粘度が低下する。従って、単一モノマーの繰り返し構造からなる高分子において、粘度Ivの常用対数(log[Iv])を、絶対分子量Mwの常用対数(log[Mw])に対してプロットした場合、リニアな直線関係が得られる。直鎖状高分子が示す直線の傾きに対して、分岐型高分子の傾きは小さくなるので、この関係を利用することにより、分子量分布における分岐型ポリマーの分布状態を大凡掴むことができる。
一般的に、絶対分子量の小さい高分子の熱的特性は、高分子の分子鎖同士の絡まりが緩いため、分岐構造を導入しても熱が与えられると自由運動が比較的活発に行われ、弾性率を維持することが難しいとされている。
しかし本発明においては、樹脂成分に分岐構造を導入することで、高次に発達したストラクチャー構造を持つカーボンブラックや相互作用で共に存在する極性樹脂とメインバインダーの分岐構造が局所的な絡み合いを生じるものと考えられる。
トナー粒子中に多数存在するカーボンブラックを介した上記絡み合い構造は、メインバインダーの柔軟な架橋点として作用すると考えられ、温度上昇に伴う粘性低下に抗してゴム状弾性状態を高温域までシフトさせることが可能になる。
従って、本発明の動的粘弾性を好適に達成する樹脂組成としては、絶対分子量の重量平均分子量(Mw)を4.0×104以上2.0×105以下とし、且つこのサイズの高分子に分岐を有する高分子を含有するものが好ましい。
分岐構造を有する樹脂組成にすることで、定着時における樹脂粘度と弾性率を良好な値に制御することができ、良好な定着性能と高い画像光沢度が得られる。
また、本発明の動的粘弾性を達成する上で更に好ましい樹脂組成は、分岐構造を有する高分子が高分子量側に多く分布する樹脂組成であることが好ましい。
高分子量成分の分岐度が多いと構造的な強度をより高めることができ、またそれらは絶対分子量が小さい組成であるが故に、温度上昇に対して粘度低下が著しく速やかな緩和特性を示すため、よりきれいなベタ黒画像を達成することができる。
尚、分岐度に分布を有する樹脂組成の動的粘弾性に及ぼす作用は、貯蔵弾性率G’の緩和点(P1)に達するまでの維持特性と、緩和点以降の溶融粘度の変化度合い、即ち損失正接tanδの変化を制御することができる。
本発明における絶対分子量(Mw)の常用対数(log〔Mw〕)が5.00以上の樹脂成分(s)とは、本発明の好ましい絶対分子量であるMwが4.0×104以上2.0×105以下のMw分布において、高分子量側の抽出成分を意味している。
この高分子量側の抽出成分において、粘度Iv(s)の常用対数(log[Iv(s)])を絶対分子量Mw(s)の常用対数(log[Mw(s)])に対してプロットした際の傾きa(s)を、高分子量成分が示す分岐度合いの指標として定義する。
本発明のトナーが構成する樹脂成分の分岐度合いa(s)を0.30以上0.70以下とすることで、架橋成分が有効に働き、高い画像光沢性と低温定着特性の両立が安定して図られる。
また、本発明における分岐度の分布は、ODCBに可溶な全分子量成分(a)が示す分岐度に対する、上記で説明した高分子量側の成分(s)が示す分岐度の割合として求めた値と定義する。
すなわち、粘度計が検出したクロマトグラムの全樹脂成分(a)の粘度Iv(a)の常用対数(log[Iv(a)])を、絶対分子量Mw(a)の常用対数(log[Mw(a)])に対してプロットした際の傾きをa(a)としたとき、a(s)/a(a)として求めた値を示す。
a(s)/a(a)の値を0.20以上0.80以下、より好ましくは0.35以上0.70以下、更に好ましくは0.30以上0.60以下とすることで、低温定着において樹脂の架橋成分の分布が有効に働き、定着可能な温度領域を更に広げることができる。
更に、本発明のトナーの全樹脂成分(a)が示す傾きa(a)は、0.50以上1.40以下であることが好ましい。
全樹脂成分が示す分岐度a(a)を上記範囲が示す状態に制御することで、更に定着可能温度領域を広げることができ、定着品質の安定性を高めることができる。
本発明における、粘度Ivの常用対数(log[Iv])を絶対分子量(Mw)の常用対数(log[Mw])に対してプロットした際の傾きaの求め方は、本体付属の解析ソフトでMark−Houwink−Sakurada Plotsを行い、任意の分析範囲を指定することで求められる(図2参照)。
尚、本発明のトナーを構成する樹脂成分の分子量及び分岐度分布を制御するには、予め分子量と分岐度を制御した複数種の樹脂成分を、必要に応じて相溶化剤を用いて、ブレンドする方法や、重合法によってモノマーを重合して直接、トナー粒子を製造する場合に、水素引き抜き効果の高い開始剤を選択し、添加方法や活性条件を調整することで架橋反応やグラフト重合をコントロールして分岐を制御する方法を挙げることができる。また、モノマー種の選択や、架橋剤の添加によっても制御することができる。
本発明のトナーは、トナーのTHF不溶分が10.0質量%以下であることが好ましい。
THF不溶成分を構成する樹脂は、高度に架橋が進んだ所謂超高分子成分であり、このような成分は定着時においてオフセット性を高める効果を有するが、10.0質量%以下に抑えることで、より安定した低温定着特性と高い光沢度を示すことができる。
本発明のトナーは、トナーのTHF可溶成分のGPC測定による最大ピーク分子量が1.0万以上3.0万以下に存在することが好ましい。
THF可溶成分が示す最大ピーク分子量は、定着時における溶融粘度のベースとなる重要なファクターの一つである。最大ピーク分子量を上記範囲とすることで、優れたオフセット性とより平滑なベタ黒画像の定着品質を再現することができる。
本発明のトナーは、スチレン系の結着樹脂に加え、更に極性を有するスチレン系樹脂を必須成分として含有する。
本発明の特徴的な動的粘弾性挙動は、トナー粒子を構成する低いガラス転移点を有するメインバインダー中に、極性基を有する比較的高いガラス転移点を有する樹脂と、カーボンブラックを均一に分散することで達成されると考えている。
本発明のトナーの特徴的な動的粘弾性挙動は、溶融時の著しい粘度低下を抑制し且つ弾性率を一定温度まで維持する特性と、一定温度以降の温度においては速やかな弾性率の緩和現象を有するものである。理由は必ずしも明らかにはなっていないが、本発明者らは極性樹脂の添加と上記特性発現の因果関係を以下のように考えている。
一般にカーボンブラックの表面には多数の官能機が存在することが知られているが、それらの官能基と極性基を有する樹脂とは水素結合等の相互作用により近い距離で存在すると考えられる。
カーボンブラックの高次ストラクチャー構造と、極性樹脂とが絡まった状態を形成し、且つそれらがトナー粒子を構成するメインバインダー中に均一に分散された状態においては、以下の特性を発現すると本発明者らは予想している。
即ち、メインバインダーの溶融状態において、極性樹脂の熱的特性が部分的に機能することや、カーボンブラック本来のフィラー効果が樹脂との絡まりにより強化されることにより、構造体としての働きが強くなるものと考えている。
従って、上記構造的な因子によって、一定温度に達するまでは溶融粘度及び貯蔵弾性率の維持機能が働き、またそれ以降の温度においては速やかに溶融状態に移行するものと推測している。
上記機能を効果的に発現させるためには、メインバインダー成分と添加する極性樹脂との間にある程度の相溶性があることが必要である。
本発明のトナー粒子の構成成分は、スチレン系のメインバインダー樹脂とスチレン系の極性基を有する樹脂を用いることが必須であり、優れた相溶性を示すことで温度変化に対して極めて敏感な粘弾性変化を発現することができる。
また、本発明において極性基を有する樹脂の含有は、下記に説明する別の効果もあると推測している。
一般に、従来の低温定着特性に優れるトナーは結着樹脂のガラス転移点を低く設定せざるを得ないため、保管や輸送時或いは現像機内において熱やストレスを受けた場合、離型剤等の添加剤が粒子表面にブリードアウトし易い傾向を有していた。
離型剤等のブリードアウトが発生すると、トナー粒子の表面性も変化するため、帯電量の低下、ひいては現像品質の低下を引き起こす。従って、低温定着性を有するトナーには、定着品質と共に、現像品質を維持できる耐久性の向上も、求められる性能である。
この課題に対して、スチレン系の結着樹脂とカーボンブラックと極性基を有するスチレン系樹脂をトナー粒子の必須構成成分として用いた場合、トナー粒子が含有する離型剤のブリードアウトを抑える効果があることが確認された。
その理由は必ずしも明確にはなっていないが、本発明者らは以下の理由によるものと考えている。
カーボンブラック粒子の表面に存在すると言われている極性基と極性樹脂の極性基が相互作用により親和性を示し、その結果カーボンブラックの極性が弱められる。
極性が弱められたカーボンブラックは、添加される離型剤との親和力が相対的に強くなるため、離型剤由来のブリードアウト成分のカーボンブラックによる補足効果が高まることによるものと推測している。
本発明のトナーを構成するスチレン系の結着樹脂としては、スチレン系樹脂をベースとしたアクリル系樹脂やアクリル酸系樹脂との共重合体が適している。共重合体とすることで、本発明の動的粘弾性挙動を達成するための樹脂設計の自由度が増すと共に、現像安定性にも優れた効果を発揮する。
本発明のトナーが含有する、極性を有するスチレン樹脂は、Mwが8000以上50000以下、酸価又は水酸基価が3mgKOH/g以上30mgKOH/g以下であり、トナー粒子を構成する結着樹脂成分に対して3.0質量部以上30.0質量部以下含有することが好ましい。
極性基を有するスチレン系樹脂のMwを上記範囲内とすることで、スチレン系の結着樹脂との相溶性に優れるため、定着特性と現像特性の効果をより効果的に発揮できる。
極性基を有するスチレン系樹脂の酸価又は水酸基価を上記範囲とすることで、カーボンブラックとの親和力が好適に機能するため、定着品質及び耐久現像性が更に優れる。
また、極性基を有するスチレン系樹脂の含有量を上記範囲とすることで、広い定着可能温度領域において、より安定した定着品質を得ることができる。
上記極性基を有するスチレン系樹脂のガラス転移温度は80℃以上120℃以下であることが好ましい。本発明のトナー粒子が含有する、極性基を有するスチレン系樹脂のガラス転移温度を上記温度内とすることで、本発明のスチレン系の結着樹脂との相溶効果と構造的な弾性率の補強効果を高めることができ、優れた低温定着性能を示すことができる。
尚、本発明の極性基を有するスチレン系樹脂の具体例としては、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体等が挙げられる。
また、本発明の極性基を有するスチレン系樹脂が、水酸基価を有するものである場合、例えば下記の構造式で示される繰り返し単位(I)を少なくとも有するビニル重合体であることが好ましい。
(式中、R
1は(CH
2)n,n=1〜4、或いは炭素数が1〜6のアルキル基であり、繰り返し単位(I)は複数種類であっても良い。)
本発明において、少なくとも上記の構造式で示される繰り返し単位(I)を持つ重合体組成物を用いる場合、繰り返し単位(I)は複数種類存在しても良い。上記の構造式において、R1は(CH2)n ,n=1〜4、或いは炭素数が1〜6のアルキル基を示す。
繰り返し単位(I)としては、例えばヒドロキシメチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、3−ヒドロキシプロピルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシイソブチルメタクリレート等の重合物等をあげることができる。
上記繰り返し単位(I)を持つ重合体組成物としては、例えばスチレン−ヒドロキシメチルメタクリレート共重合体、α−メチルスチレン−2−ヒドロキシエチルメタクリレート共重合体、スチレン−α−メチルスチレン−2−ヒドロキシエチルメタクリレート共重合体、スチレン−2−ヒドロキシエチルメタクリレート−メタクリル酸−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−n−ブチルアクリレート−2−ヒドロキシエチルメタクリレート−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−α−メチルスチレン−2−ヒドロキシエチルメタクリレート−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−α−メチルスチレン−2−ヒドロキシエチルメタクリレート−メタクリル酸−メタクリル酸メチル共重合体等をあげることができる。
本発明のトナー粒子は、スルホン酸基、スルホン酸塩基又はスルホン酸エステル基を有する重合体または共重合体を含有することが好ましい。
上記樹脂成分は、スチレン系の結着樹脂中への、スチレン系の極性樹脂やその他の極性を有する内添剤の分散性を高める働きを示すため、それらの樹脂を含有することで、低温定着品質と帯電安定性を更に高めることができる。
特に、本発明の必須成分である極性基を有する樹脂の分散性が悪い場合、帯電環境特性が悪化する弊害が見られるため、帯電制御能力に優れ、且つ分散助剤としても働く上記樹脂の存在は、現像性の向上に非常に有効である。
本発明のスルホン酸基、スルホン酸基塩又はスルホン酸エステル基を有する重合体を製造するための単量体としては、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−メタクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ビニルスルホン酸、メタクリルスルホン酸やそれらのアルキルエステルが挙げられる。
本発明に用いられるスルホン酸基、スルホン酸基塩又はスルホン酸エステル基を含有する重合体は、上記単量体の単独重合体であっても構わないが、上記単量体と他の単量体との共重合体であっても構わない。上記単量体と共重合体をなす単量体としては、ビニル系重合性単量体があり、先の結着樹脂成分の説明で例示した単官能性重合性単量体或いは多官能性重合性単量体を使用することが出来る。
上記スルホン酸基等を有する重合体は、重合性単量体又は結着樹脂100質量部に対し0.01乃至5.0質量%を含有することが好ましい。より好ましくは、0.1乃至3.0質量%である。
上記スルホン酸基等を有する重合体が0.01乃至5.00質量%の場合には、トナー構成成分の分散効果をより安定して発揮することができ、定着品質及び帯電安定効果に優れる。
本発明のトナー粒子は、水系媒体中で製造されたものであることが好ましい。
水系媒体中で製造すると、トナー粒子を構成する物質のトナー粒子間組成均一性が高まるため、より優れた定着性能と現像特性を発現できる。
水系媒体中でトナー粒子を製造する方法としては、以下の方法が挙げられる。トナー必須成分から構成される乳化液を水系媒体中で凝集させる乳化凝集法;有機溶媒中にトナー必須成分を溶解させた後、水系媒体中で造粒後有機溶媒を揮発させる懸濁造粒法;トナー必須成分を溶解させた重合性単量体を直接水系媒体中で造粒後重合する懸濁重合法や乳化重合法;その後シード重合を利用しトナーに外層を設ける方法;界面重縮合や液中乾燥に代表されるマイクロカプセル法。
特に、本発明のトナーを懸濁重合法を用いて製造する場合、構成成分のSP値の違いにより、必須成分である極性基を有するスチレン系樹脂がトナー粒子の再外殻を形成する。この、所謂コアシェル構造を有するトナーは、再外殻を形成する樹脂により低いガラス転移点を有するコア粒子のブロッキング機能が働くため、低温定着品質と帯電性能の双方を更に高めることができる。
本発明のブラックトナーは、着色剤としてカーボンブラックを必須成分として含有する。本発明におけるカーボンブラックの働きは、着色剤としての機能に加えて、先に説明した極性樹脂との相互作用により構造的な強度を高める機能も有するため、本発明の動的粘弾挙動を達成する上で必須となる成分である。
本発明者らの検討によると、全容は必ずしも解明されて無いが、結着樹脂中にカーボンブラックを均一に分散させた樹脂組成においては、低温定着プロセスにおいて粘性の維持と僅かに弾性的な性質を高める所謂フィラー効果を有することが確認された。
この効果は従来の定着プロセスに対応したトナーにおいては、樹脂特性の粘弾性挙動の影響が大きいために検出し難いものであった。
しかし、低分子量成分を主成分とする溶融特性が低粘度を示すトナーにおいては、溶融状態で僅かな弾性成分として機能することが確認された。
この性質は、単に低分子量成分を示す樹脂中にカーボンブラックを分散させるだけでは有効となる弾性率は発現せず、結着樹脂成分の架橋密度や極性樹脂或いは離型剤の存在等、複雑な相互作用により再現する効果であることがわかっている。
本発明のトナーが含有するカーボンブラックは、平均一次粒子径が10nm以上100nm以下、DBP吸油量が35ml/100g以上170ml/100g以下、pHが5.0以上10.0以下であって、トナー粒子に対する含有量が5.0質量%以上12.0質量%以下であることが好ましい。
カーボンブラックを上記物性及び添加量にすることで、フィラー効果による構造的な強度を高める働きや、離型剤のブリードアウト成分を捕捉する効果がより安定して機能するため、定着可能温度域を更に広げることや、耐久現像特性を高めることができる。
また、本発明のトナーを懸濁重合法により製造する場合においては、上記カーボンブラックの示す重合阻害性をうまく利用することで、低分子量成分の量と架橋成分量を所望の分布に導く制御も可能であり、低温定着品質を更に高めることができる。
カーボンブラックの一次粒径が10nmに満たない場合、このようなカーボンブラックは凝集性が高く、また離型剤に取り込まれる傾向も示すため、トナー粒子中での分散性に劣り、着色力が低くなることがある。
一方、100nmを超える場合、トナー粒子中での構造体としての機能が弱く、また着色力自体も低い傾向を示し好ましく無い。
カーボンブラックのDBP吸油量が35ml/100gに満たない場合、カーボンブラックの高次構造が比較的小さい傾向を示すため、フィラー効果が小さく損失弾性率G”を維持する効果が弱まる。
一方、170ml/100gを超える場合、ワックス成分との親和力が強まりワックスを取り込む傾向を示すため、定着時に速やかなワックスの染み出しができず、離型効果が損なわれることがある。
カーボンブラックのpHが5.0に満たない場合、このようなカーボンブラックは表面官能基が多いため、重合トナーに用いた場合にメインバインダーの重合阻害因子となり、分子量制御が難しくなる。
一方、カーボンブラックのpHが10.0を超える場合、官能基が少く極性樹脂との親和力に劣るため、フィラー効果が小さくなる。
本発明のブラックトナーを、少なくともイエロートナーと、マゼンタトナーと、シアントナーと、からなるフルカラー画像形成方法に適用する場合、各色トナーの動的粘弾性試験により測定した損失弾性率G”の極大値がいずれも50℃以上62℃以下に存在し、ブラックトナーの損失正接(tanδ)の極小値を示す温度(P1)の前後10℃の温度領域における損失正接tanδの値がいずれもブラックトナーのtanδよりも大きく且つ0.70以上、10.00以下であることが好ましい。
ブラックトナーとカラートナーの動的粘弾性を上記範囲内とすることで、フルカラー画像を構成する2次色や3次色と、単色のブラックトナーが示す光沢度の値を近づけることができ、グロスバランス及び発色性に優れたフルカラー定着画像を得ることができる。
また、出力画像によっては、カラートナーの3次色によりブラックを再現する所謂プロセスブラックを用いるケースも考えられる。
そのようなケースにおいても、単色ブラックとプロセスブラックの質感の違いを限りなく近づける制御が可能であるため、フルカラー画像の表現力を更に高めることができる。
カラートナーの損失弾性率G”の極大値を、いずれも50℃以上62℃以下にすることで、フルカラー画像における高発色性及び高光沢度が十分発揮され、かつ本発明のブラックトナーの低温定着性及びベタ黒画像品質にも優れたフルカラー定着画質が得られる。
ブラックトナーの損失正接(tanδ)の極小値を示す温度(P1)の前後10℃の温度領域において、カラートナーの損失正接tanδの値をブラックトナーのtanδの値よりも大きく且つ0.70以上10.00以下とすることで、ブラックトナーのベタ黒品質と、カラートナーの複数色による混色性を、低温定着プロセスにおいてバランス良く発揮することができ、色空間再現性にも優れたフルカラー画像が得られる。
次に、本発明の効果をより安定して発揮するための好ましい構成について説明する。
本発明のトナーの示差走査熱量計(DSC)により求めたガラス転移温度(Tg)は、40℃以上、60℃以下であることがより好ましい。
上記温度範囲とすることで、本発明のトナーの動的粘弾特性を好ましいプロファイルに制御することが容易になり、安定した低温定着性能を示すことができる。
本発明のトナーは、重量平均粒径(D4)が4.5μm以上8.0μm以下であることが好ましい。トナーの重量平均粒径(D4)を上記値の範囲内とすることで、帯電分布の安定性が更に高まるため、使用環境条件が変化してもカブリが少なくドット再現性に優れた現像特性を満足することができる。
本発明のトナーの平均円形度は、画像処理解像度512×512画素(1画素あたり0.37μm×0.37μm)のフロー式粒子像測定装置によって計測された円形度を、0.200乃至1.000の円形度範囲に800分割して解析されたものであり、0.960以上0.995以下であることが好ましい。
フロー式粒子像分析装置「FPIA−3000」(シスメックス社製)の測定原理は、流れている粒子を静止画像として撮像し、画像解析を行うというものである。試料チャンバーへ加えられた試料は、試料吸引シリンジによって、フラットシースフローセルに送り込まれる。フラットシースフローに送り込まれた試料は、シース液に挟まれて扁平な流れを形成する。フラットシースフローセル内を通過する試料に対しては、1/60秒間隔でストロボ光が照射されており、流れている粒子を静止画像として撮影することが可能である。また、扁平な流れであるため、焦点の合った状態で撮像される。粒子像はCCDカメラで撮像され、撮像された画像は512×512の画像処理解像度(一画素あたり0.37×0.37μm)で画像処理され、各粒子像の輪郭抽出を行い、粒子像の投影面積Sや周囲長L等が計測される。
次に、上記面積Sと周囲長Lを用いて円相当径と円形度を求める。円相当径とは、粒子像の投影面積と同じ面積を持つ円の直径のことであり、円形度Cは、円相当径から求めた円の周囲長を粒子投影像の周囲長で割った値として定義され、次式で算出される。
円形度C=2×(π×S)1/2/L
粒子像が円形の時に円形度は1になり、粒子像の外周の凹凸の程度が大きくなればなるほど円形度は小さい値になる。各粒子の円形度を算出後、円形度0.200乃至1.000の範囲を800分割し、得られた円形度の相加平均値を算出し、その値を平均円形度とする。
トナーの平均円形度が0.960以上である場合、特に高速一成分現像システムにおいては歪な粒子が引き起こす現像ブレード融着等の弊害を抑止する効果が働くため、耐久特性に優れる。一方、平均円形度が0.995以下である場合は、潜像担持体上に残った所謂転写残トナーのブレードクリーニング性が高まるため好ましい。
以下に、本発明で用いられる材料について説明する。
本発明のトナー粒子の結着樹脂としては、ポリスチレン、ポリビニルトルエンなどのスチレン及びその置換体の単重合体;スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−ビニルナフタリン共重合体、スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、スチレン−アクリル酸オクチル共重合体、スチレン−アクリル酸ジメチルアミノエチル共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタクリル酸ブチル共重合体、スチレン−メタクリル酸ジメチルアミノエチル共重合体、スチレン−ビニルメチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルエチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルメチルケトン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸エステル共重合体などのスチレン系共重合体;ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルブチラール、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリアクリル酸樹脂、ロジン、変性ロジン、テルペン樹脂、フェノール樹脂、脂肪族または脂環族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂などが単独或いは混合して使用できるが、スチレン系共重合体が必ずトナー粒子の主成分(構成樹脂成分における最も多く含有する樹脂)となるように含有する。
本発明のトナーを重合方法で製造する際に用いられる重合性単量体としては、ラジカル重合が可能なビニル系重合性単量体が用いられる。前記ビニル系重合性単量体としては、単官能性重合性単量体或いは多官能性重合性単量体を使用することが出来る。単官能性重合性単量体としては、スチレン;α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、ο−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレンのようなスチレン誘導体;メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、iso−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、iso−ブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、n−アミルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリレート、n−ノニルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ベンジルアクリレート、ジメチルフォスフェートエチルアクリレート、ジエチルフォスフェートエチルアクリレート、ジブチルフォスフェートエチルアクリレート、2−ベンゾイルオキシエチルアクリレートのようなアクリル系重合性単量体;メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、iso−プロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、iso−ブチルメタクリレート、tert−ブチルメタクリレート、n−アミルメタクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、n−オクチルメタクリレート、n−ノニルメタクリレート、ジエチルフォスフェートエチルメタクリレート、ジブチルフォスフェートエチルメタクリレートのようなメタクリル系重合性単量体;メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、安息香酸ビニル、ギ酸ビニルのようなビニルエステル;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテルのようなビニルエーテル;ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、ビニルイソプロピルケトンのようなビニルケトンが挙げられる。
多官能性重合性単量体としては、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、2,2’−ビス(4−(アクリロキシ・ジエトキシ)フェニル)プロパン、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、2,2’−ビス(4−(メタクリロキシ・ジエトキシ)フェニル)プロパン、2,2’−ビス(4−(メタクリロキシ・ポリエトキシ)フェニル)プロパン、トリメチロールプロパントリメタクリレート、テトラメチロールメタンテトラメタクリレート、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタリン、ジビニルエーテル等が挙げられる。
本発明においては、前記した単官能性重合性単量体を単独で或いは2種以上組み合わせて、又は前記した単官能性重合性単量体と多官能性重合性単量体を組み合わせて使用することができる。多官能性重合性単量体は架橋剤としても作用するため、樹脂成分の分岐度を調整することで所望の動的粘弾を再現する方法として有効である。
本発明のトナーは、結着樹脂成分の分子量及び分岐度を制御する手段として、結着樹脂の合成時に架橋剤を用いることが好ましい。
本発明に用いられる架橋剤としては、2官能の架橋剤として、以下のものが挙げられる。ジビニルベンゼン、ビス(4−アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、エチレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,5−ペンタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール#200、#400、#600の各ジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ポリエステル型ジアクリレート(MANDA日本化薬)、及び上記のジアクリレートをジメタクリレートに代えたもの。
多官能の架橋剤としては、以下のものが挙げられる。ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、オリゴエステルアクリレート及びそのメタクリレート、2,2−ビス(4−メタクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、ジアリルフタレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート及びトリアリルトリメリテート。これらの架橋剤の添加量は、前記単量体100質量部に対して、好ましくは0.02乃至2.00質量部、より好ましくは0.05乃至1.00質量部である。
本発明のトナーが、結着樹脂の分子量及び分岐度を制御するために用いることのできる重合開始剤としては、油溶性開始剤及び/又は水溶性開始剤が用いられる。好ましくは、重合反応時の反応温度における半減期が0.5乃至30時間のものである。また重合性単量体100質量部に対し0.5乃至20質量部の添加量で重合反応を行うと、通常、分子量1万乃至10万の間に極大を有する重合体を得ることができる。
重合開始剤としては、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスイソブチロニトリル如きのアゾ系またはジアゾ系重合開始剤;ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、クメンヒドロパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド如きの過酸化物系重合開始剤等が例示できる。
本発明においては、所望の粘弾特性に制御す一つの手段として、結着樹脂の分岐度を制御する方法が効果的である。
結着樹脂の分岐度を制御する上で最も好ましい開始剤の選択及び条件としては、水素引き抜き効果の高い開始剤を重合反応初期時に活性状態で用いる方法が挙げられる。水素引き抜き能の高い開始剤としては、有機過酸化物系の開始剤が好ましく、t−ブトキシラジカルを発生するパーブチル系の有機過酸化物の使用が最も好ましい。また、本発明における開始剤の活性状態の好ましい雰囲気とは、例えば開始剤の10時間半減期温度より10℃以上高い温度での重合状態等が挙げられる。
更に、本発明のトナーを構成する樹脂成分としては、平均分子量を低分子量に制御し、その分子量分布内において高分子側の成分のみの分岐度を高めたものを用いることが好ましい。そのような樹脂成分は、定着溶融時における分子鎖の絡まりによる弾性維持と鎖長が短いことによる速やかな弾性緩和が発現し易く、最も低温定着性と定着品質の向上に優れる。そのような樹脂成分を得る方法は、例えば上記で述べた水素引き抜き能力の高い開始剤を活性状態で使用し、且つ重合反応の途中に追加添加することで達成される。
本発明においては、結着樹脂を構成する重合性単量体の重合度を制御する手段として、公知の連鎖移動剤、重合禁止剤等を更に添加し用いることも可能である。
本発明においては、低温での定着プロセスにおける離型効果と高い光沢度を再現させるために、ワックス成分を含有することが必須である。
本発明に用いられるワックスとしては以下のものが挙げられる。パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラクタム如きの石油系ワックス及びその誘導体;モンタンワックス及びその誘導体;フィッシャートロプシュ法による炭化水素ワックス及びその誘導体;ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスの如きポリオレフィンワックス及びその誘導体、カルナバワックス、キャンデリラワックスの如き天然ワックス及びその誘導体。誘導体としては酸化物や、ビニル系モノマーとのブロック共重合物、グラフト変性物などが挙げられる。さらには、以下のものが挙げられる。高級脂肪族アルコール;ステアリン酸、パルミチン酸の如きの脂肪酸;酸アミドワックス;エステルワックス;硬化ヒマシ油及びその誘導体;植物系ワックス;動物性ワックス。これらの中でも特に、低温定着時における離型性に優れるという観点からエステルワックス及び炭化水素ワックスが好ましい。更に本発明のトナーにおいては、動的粘弾性を制御する上で結着樹脂中におけるワックス成分の分散状態も効いてくるため、単分散性に優れる炭化水素系ワックスの含有が最も好ましい。
該ワックスは結着樹脂100質量部に対し4乃至25質量部を含有させることが好ましい。ワックスが4乃至25質量部の場合には、トナーの加熱加圧時に適度なワックスのブリード性を持てることにより、優れた離型効果を発揮する。また、現像器内でトナーが受ける様々なストレスにより、ワックスがトナー表面に染み出すことも抑えられ、トナー個々の均一な摩擦帯電性を得ることができる。
本発明のブラックトナーを、フルカラー画像形成プロセスに適用する場合、他色のトナーは、各々着色力を付与するために着色剤を必須成分として含有する。
本発明に好ましく使用される着色剤として、以下の有機顔料または染料、無機顔料が挙げられる。
シアン系着色剤としての有機顔料又は有機染料としては、銅フタロシアニン化合物及びその誘導体、アントラキノン化合物、塩基染料レーキ化合物が利用できる。具体的には、以下のものが挙げられる。C.I.ピグメントブルー1、C.I.ピグメントブルー7、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:1、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー15:4、C.I.ピグメントブルー60、C.I.ピグメントブルー62、C.I.ピグメントブルー66。
マゼンタ系着色剤としての有機顔料又は有機染料としては、以下のものが挙げられる。縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アントラキノン、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、ペリレン化合物。具体的には、以下のものが挙げられる。C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド3、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド6、C.I.ピグメントレッド7、C.I.ピグメントバイオレット19、C.I.ピグメントレッド23、C.I.ピグメントレッド48:2、C.I.ピグメントレッド48:3、C.I.ピグメントレッド48:4、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド81:1、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド146、C.I.ピグメントレッド150、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド169、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド184、C.I.ピグメントレッド185、C.I.ピグメントレッド202、C.I.ピグメントレッド206、C.I.ピグメントレッド220、C.I.ピグメントレッド221、C.I.ピグメントレッド254。
イエロー系着色剤としての有機顔料又は有機染料としては、縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アントラキノン化合物、アゾ金属錯体、メチン化合物、アリルアミド化合物に代表される化合物が用いられる。具体的には、以下のものが挙げられる。C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー15、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー62、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー83、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー94、C.I.ピグメントイエロー95、C.I.ピグメントイエロー97、C.I.ピグメントイエロー109、C.I.ピグメントイエロー110、C.I.ピグメントイエロー111、C.I.ピグメントイエロー120、C.I.ピグメントイエロー127、C.I.ピグメントイエロー128、C.I.ピグメントイエロー129、C.I.ピグメントイエロー147、C.I.ピグメントイエロー151、C.I.ピグメントイエロー154、C.I.ピグメントイエロー155、C.I.ピグメントイエロー168、C.I.ピグメントイエロー174、C.I.ピグメントイエロー175、C.I.ピグメントイエロー176、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー181、C.I.ピグメントイエロー191、C.I.ピグメントイエロー194。
これらの着色剤は、単独又は混合し更には固溶体の状態で用いることができる。本発明のトナーに用いられる着色剤は、色相角、彩度、明度、耐光性、OHP透明性、トナー中の分散性の点から選択される。
該着色剤は、好ましくは結着樹脂100質量部に対し1乃至20質量部添加して用いられる。
本発明において重合法を用いてトナーを得る場合には、着色剤の持つ重合阻害性や水相移行性に注意を払う必要があり、好ましくは、表面改質、例えば、重合阻害のない物質による疎水化処理を着色剤に施しておいたほうが良い。特に、染料は、重合阻害性を有しているものが多いので使用の際に注意を要する。染料系を表面処理する好ましい方法としては、あらかじめこれら染料の存在下に重合性単量体を重合せしめる方法が挙げられ、得られた着色重合体を単量体系に添加する。
本発明のトナーにおいては、前述で説明した帯電制御性に優れるスルホン酸基、スルホン酸塩基又はスルホン酸エステル基を有する重合体または共重合体の他に、更に必要に応じて荷電制御剤をトナー粒子と混合して用いることも可能である。
特に、前述のスルホン酸基、スルホン酸塩基又はスルホン酸エステル基を有する重合体または共重合体の帯電特性は帯電量を維持する機能に優れるため、これらの樹脂と立ち上がり特性に優れた荷電制御剤を併用して用いた場合、更に安定した現像特性が得られる。
荷電制御剤としては、公知のものが利用でき、特に摩擦帯電スピードが速く、かつ、一定の摩擦帯電量を安定して維持できる荷電制御剤が好ましい。さらに、トナーを直接重合法により製造する場合には、重合阻害性が低く、水系分散媒体への可溶化物が実質的にない荷電制御剤が特に好ましい。
荷電制御剤の例として、トナーを負荷電性に制御するものとしては、有機金属化合物、キレート化合物が挙げられる。モノアゾ金属化合物、アセチルアセトン金属化合物、芳香族オキシカルボン酸、芳香族ダイカルボン酸、オキシカルボン酸及びダイカルボン酸系の金属化合物が挙げられる。他には、芳香族オキシカルボン酸、芳香族モノ及びポリカルボン酸及びその金属塩、無水物、エステル類、ビスフェノールの如きフェノール誘導体類が挙げられる。さらに、尿素誘導体、含金属サリチル酸系化合物、含金属ナフトエ酸系化合物、ホウ素化合物、4級アンモニウム塩、カリックスアレーン、樹脂系帯電制御剤が挙げられる。
また、荷電制御剤の例として、トナーを正荷電性に制御するものとしては、以下のものが挙げられる。ニグロシン及び脂肪酸金属塩によるニグロシン変性物;グアニジン化合物;イミダゾール化合物;トリブチルベンジルアンモニウム−1−ヒドロキシ−4−ナフトスルフォン酸塩、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレートの如き4級アンモニウム塩、及びこれらの類似体であるホスホニウム塩等のオニウム塩及びこれらのレーキ顔料;トリフェニルメタン染料及びこれらのレーキ顔料(レーキ化剤としては、りんタングステン酸、りんモリブデン酸、りんタングステンモリブデン酸、タンニン酸、ラウリン酸、没食子酸、フェリシアン化物、フェロシアン化物);高級脂肪酸の金属塩;樹脂系荷電制御剤。
本発明のトナーは、これら荷電制御剤を単独で或いは2種類以上組み合わせて含有することができる。
これら荷電制御剤の中でも、本発明の効果を十分に発揮するためには、含金属サリチル酸系化合物が好ましく、特にその金属がアルミニウムもしくはジルコニウムが好ましい。最も好ましい荷電制御剤としては、3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸アルミニウム化合物である。
荷電制御剤の好ましい配合量は、結着樹脂100質量部に対して0.01乃至20質量部、より好ましくは0.5乃至10質量部である。しかしながら、本発明のトナーには、荷電制御剤の添加は必須ではなく、トナーの層厚規制部材やトナー担持体との摩擦帯電を積極的に利用することでトナー中に必ずしも荷電制御剤を含ませる必要はない。
本発明のトナーを懸濁重合法において製造する場合、重合性単量体にワックス、極性樹脂及び着色剤(更に必要に応じて重合開始剤、架橋剤、帯電制御剤、その他の添加剤)を均一に溶解または分散せしめて重合性単量体組成物とする。その後、この重合性単量体組成物を分散安定剤を含有する水系媒体中に適当な撹拌器を用いて分散し、そして重合反応を行わせ、所望の粒径を有するトナー粒子を得るものである。上記トナー粒子は重合終了後、公知の方法によって濾過、洗浄、乾燥を行い、必要により流動性向上剤を混合し表面に付着させることで、本発明のトナーを得ることができる。
尚、重合反応を効率的に進行させる方法として、反応容器内の溶存酸素を管理することが好ましい。溶存酸素が少なければ重合反応は効率化する。その結果、現像耐久性や定着性に悪影響を及ぼす低分子量成分の生成を抑制でき、安定した性能を発揮できる。
水系分散媒体調製時に使用する分散剤としては、公知の無機系及び有機系の分散剤を用いることができる。
具体的には、無機系の分散剤としては、以下のものが挙げられる。リン酸三カルシウム、リン酸マグネシウム、リン酸アルミニウム、リン酸亜鉛、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、メタケイ酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、ベントナイト、シリカ、アルミナが挙げられる。また、有機系の分散剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、ゼラチン、メチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩、デンプン。
また、市販のノニオン、アニオン、カチオン型の界面活性剤の利用も可能である。この様な界面活性剤としては、以下のものが挙げられる。ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、ペンタデシル硫酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、オレイン酸カルシウム。
本発明のトナーに用いられる水系分散媒体調製時に使用する分散剤としては、無機系の難水溶性の分散剤が好ましく、しかも酸に可溶性である難水溶性無機分散剤を用いることが好ましい。
また、本発明においては、難水溶性無機分散剤を用い、水系分散媒体を調製する場合に、これらの分散剤の使用量は重合性ビニル系単量体100質量部に対して、0.2乃至2.0質量部であることが好ましい。また、本発明においては、重合性単量体組成物100質量部に対して300乃至3,000質量部の水を用いて水系分散媒体を調製することが好ましい。
本発明において、上記のような難水溶性無機分散剤が分散された水系分散媒体を調製する場合には、市販の分散剤をそのまま用いて分散させてもよい。また、細かい均一な粒度を有する分散剤粒子を得るために、水の如き液媒体中で、高速撹拌下、上記したような難水溶性無機分散剤を生成させて水系分散媒体を調製してもよい。例えば、リン酸三カルシウムを分散剤として使用する場合、高速撹拌下でリン酸ナトリウム水溶液と塩化カルシウム水溶液を混合してリン酸三カルシウムの微粒子を形成することで、好ましい分散剤を得ることができる。
本発明のトナー粒子には流動化剤として無機微粉体が外添されている。
本発明のトナー粒子に添加する無機微粉体としては、シリカが好ましく、個数平均一次粒径が4乃至80nmのシリカ微粉体が好ましい。本発明において個数平均一次粒径が上記範囲にあることで、トナーの流動性が向上すると共に、トナーの保存安定性も良好になる。
無機微粉体の個数平均一次粒径は、次のようにして測定される。
個数平均一次粒子径は、走査電子顕微鏡で観察し視野中の100個の無機微粉体の粒子径を測定して平均粒子径を求める。
またシリカと酸化チタン、アルミナまたはそれらの複酸化物の如き微粉体を併用することができる。シリカと併用する該無機微粉体の中でも酸化チタンが好ましい。
上記無機微粉体のシリカの例としては、ケイ素ハロゲン化物の蒸気相酸化により生成された乾式シリカ又はヒュームドシリカと称される乾式シリカ、及び水ガラスから製造される湿式シリカの両者が含まれる。無機微粉体としては、表面及びシリカ微粉体の内部にあるシラノール基が少なく、またNa2O、SO3 2-の製造残滓の少ない乾式シリカの方が好ましい。また乾式シリカは、製造工程において例えば、塩化アルミニウム、塩化チタンの如き他の金属ハロゲン化合物をケイ素ハロゲン化合物と共に用いることによって、シリカと他の金属酸化物の複合微粉体を得ることも可能である。シリカはそれらも包含する。
無機微粉体は、トナーの流動性改良及びトナー母粒子の摩擦帯電の均一化のために添加される。無機微粉体を疎水化処理することによって、トナーの摩擦帯電量の調整、環境安定性の向上、高湿環境下での特性の向上等の機能を付与することができるので、疎水化処理された無機微粉体を用いることが好ましい。トナーに添加された無機微粉体が吸湿すると、トナーとしての摩擦帯電量が低下し、現像性や転写性の低下が生じ易くなる。
無機微粉体の疎水化処理の処理剤としては、以下のものが挙げられる。未変性のシリコーンワニス、各種変性シリコーンワニス、未変性のシリコーンオイル、各種変性シリコーンオイル、シラン化合物、シランカップリング剤、その他有機ケイ素化合物、有機チタン化合物。これらの如き処理剤は単独で或いは併用して用いられても良い。
その中でも、シリコーンオイルにより処理された無機微粉体が好ましい。より好ましくは、無機微粉体をカップリング剤で疎水化処理すると同時或いは処理した後に、シリコーンオイルにより処理したシリコーンオイル処理された疎水化処理無機微粉体が高湿環境下でもトナー粒子の摩擦帯電量を高く維持し、選択現像性を低減する上でよい。
次に本発明のトナーを用いることのできる画像形成方法及び画像形成装置の一例を、図3及び図4を用いて説明する。
図3及び図4は、本発明のトナーを用いて画像形成を行うのに好適な、非磁性一成分接触現像方式を採用したタンデム型のカラーLBP(カラーレーザープリンタ)及びプロセスカートリッジの断面図であるが、本発明のトナーはなんらこれらの装置への使用に限定されるものではない。
<プロセスカートリッジ>
図3は、本発明のトナーを用いた画像形成方法に好適に用いることのできる、プロセスカートリッジ7(以下、「カートリッジ」ともいう。)の断面模式図である。
カートリッジ7は、感光体ドラム1と、帯電手段2及びクリーニング手段6を備えたクリーナユニット50と、感光体ドラム1に形成された静電潜像を現像する現像手段4を有する現像ユニット4Aとを有する。クリーナユニット50を構成するクリーニング枠体31には、感光体ドラム1が軸受部材(不図示)を介して回転自在に取り付けられている。
感光体ドラム1には、感光体ドラム1の外周面に設けられた感光層を一様に帯電させるための帯電ローラー2、転写後に感光体ドラム1上に残った現像剤(残留トナー)を除去するためのクリーニングブレード60が接触している。クリーニングブレード60によって感光体ドラム1表面から除去されたトナー(除去トナー)は、クリーニング枠体31に設けられた除去トナー収納室35に納められる。
現像ユニット4Aは、トナーを収容する現像枠体45(45a、45b、45e)を有しており、現像ローラー40(矢印Y方向に回転)が軸受部材を介して回転自在に現像枠体45に支持されている。また、現像ローラー40と接触してトナー供給ローラー43(矢印Z方向に回転)とトナー規制部材44がそれぞれ設けられている。さらに現像枠体45には収容されたトナーを撹拌するとともにトナー供給ローラー43に搬送するためのトナー搬送機構42が設けられている。
そして、現像ユニット4Aがクリーナユニット50に対して揺動自在に支持されている。すなわち、現像枠体45の両端に設けた結合穴47、48とクリーナユニット50のクリーニング枠体31両端に設けた支持穴(不図示)を合わせ、クリーナユニット50両端からピン(不図示)を差し込んでいる。
また、支持穴を回転軸中心として現像ローラー40が感光体ドラム1に接触するように加圧バネ(不図示)によって現像ユニット4Aが常に付勢されている。
現像時には、トナー容器41内に収納されたトナーがトナー攪拌機構42によってトナー供給ローラー43へ搬送される。トナー供給ローラー43が、現像ローラー40との摺擦によって現像ローラー40にトナーを供給し、現像ローラー40上にトナーを付着させる。現像ローラー40上に付着されたトナーは、現像ローラー40の回転にともなってトナー規制部材44のところに至る。そして、トナー規制部材44がトナーを規制して所定のトナー薄層を形成し、所望の帯電電荷量を付与する。現像ローラー40上で薄層化されたトナーは、現像ローラー40の回転につれて、感光体ドラム1と現像ローラー40とが接近した現像部に搬送される。そして、現像部において、電源(不図示)から現像ローラー40に印加した現像バイアスにより、感光体ドラム1の表面に形成されている静電潜像に付着して、潜像を現像化する。静電潜像の現像化に寄与せずに現像ローラー40の表面に残留したトナーは、現像ローラー40の回転にともなって現像枠体45内に戻される。そして、トナー供給ローラー43との摺擦部で現像ローラー40から剥離、回収される。回収されたトナーは、トナー攪拌機構42により残りのトナーと撹拌混合される。
ここで現像ローラー40には弾性ローラーを用い、これを感光体ドラム1表面と接触させる方法を用いることができる。一般にトナー担持体と感光体が接触する現像方式においては、トナーの破損、変形が生じやすくなるが、本発明記載のトナーを用いた場合にはこうした変化を効果的に抑制することが出来るため、好ましい。
トナー担持体と感光体が接触する現像方式では、トナーを介して感光体と感光体表面に対向する弾性ローラー間に働く電界によって現像が行われる。従って弾性ローラー表面或いは表面近傍が電位を持ち、感光体表面とトナー担持体表面の狭い間隙で電界を有する必要性がある。このため、弾性ローラーの弾性ゴムが中抵抗領域に抵抗制御されて感光体表面との導通を防ぎつつ電界を保つか、または導電性ローラーの表面層に薄層の絶縁層を設ける方法が利用できる。さらには、該導電性ローラー上に感光体表面に対向する側を絶縁性物質により被覆した導電性樹脂スリーブ或いは、絶縁性スリーブで感光体に対向しない側に導電層を設けた構成も可能である。また、トナー担持体として剛体ローラーを用い、感光体をベルトの如きフレキシブルな物とした構成も可能である。トナー担持体としてのローラーの抵抗値としては102乃至109Ω・cmの範囲が好ましい。
トナー担持体の表面形状としては、その表面粗さRa(μm)を0.1乃至3.0となるように設定すると、高画質及び高耐久性を両立できる。該表面粗さRaはトナー搬送能力及びトナー帯電能力と相関する。該トナー担持体の表面粗さRaが3.0を超えると、該トナー担持体上のトナー層の薄層化が困難となるばかりか、トナーの帯電性が改善されないので画質の向上は望めない。3.0以下にすることでトナー担持体表面のトナーの搬送能力を抑制し、該トナー担持体上のトナー層を薄層化すると共に、該トナー担持体とトナーの接触回数が多くなるため、該トナーの帯電性も改善されるので相乗的に画質が向上する。一方、表面粗さRaが0.1よりも小さくなると、トナーコート量の制御が難しくなる。
本発明において、トナー担持体の表面粗さRaは、日本工業規格(JIS)B06014.2.1項に定める算術平均粗さである。本発明においては、表面粗さ測定器(小坂研究所社製サーフコーダSE3500)を用い、トナー担持体表面の任意の1点より、トナー担持体回転軸と平行となる方向に測定を行った。なお、カットオフ値は0.8mm、測定長さは2.5mm、測定速度は0.1mm/秒とした。
図3のプロセスカートリッジを用いた画像形成方法においては、トナー担持体は感光体の周速同方向に回転しているが、逆方向に回転していてもよい。その回転が同方向である場合、トナー担持体の周速を感光体の周速に対し1.05乃至3.0倍となるように設定することが好ましい。
トナー担持体の周速が、感光体の周速に対し1.05倍未満であると、感光体上のトナーの受ける撹拌効果が不十分となり、良好な画像品質が望めない。また、周速比が3.0を超える場合には、機械的ストレスによるトナーの劣化やトナー担持体へのトナー固着が発生、促進され、好ましくない。
トナー担持体が弾性ローラーである場合、表面に弾性層を有する構造のものが好ましく用いられる。該弾性ローラーに使用される弾性層の材料の硬度としては、30〜60度(ASKER−C/荷重1kg)のものが好適に使用される。
また、トナーコート量はトナー規制部材44により制御されるが、このトナー規制部材44はトナー層を介して現像ローラー40に接触している。この時のトナー規制部材44と現像ローラー40との接触圧は、線圧として0.05N/cm以上0.5N/cm以下が好ましい範囲である。
尚、線圧とはトナー規制部材の長さ当たりに加えられる荷重のことであり、例えば1mの当接長さを有するトナー規制部材に1.2Nの荷重を加えて現像ローラーに接触させた場合、線圧は1.2N/mとなる。線圧が0.05N/cmよりも小さいとトナーコート量の制御に加え均一な摩擦帯電も難しくなり、カブリの悪化等の原因となる。一方、線圧が0.5N/cmよりも大きくなるとトナー粒子が過剰な負荷を受けるため、粒子の変形やトナー規制部材或いは現像ローラーへのトナーの融着等が発生しやすくなり、好ましくない。
トナー規制部材44の自由端部はどのような形状でもよく、例えば断面形状が直線状のもの以外にも、先端近傍で屈曲したL字形状のものや、先端近傍が球状に膨らんだ形状のもの等が好適に用いられる。
トナー規制部材としては、基材としてステンレス、鋼、リン青銅の如き金属弾性体を用い、スリーブ当接部に当る部位に樹脂を接着あるいはコーティング塗布したものが好適に用いられる。
またさらに、トナー規制部材に直流電場及び/または交流電場を印加することによっても、トナーへのほぐし作用のため、均一薄層塗布性、均一帯電性がより向上し、充分な画像濃度の達成及び良質の画像を得ることができる。
<画像形成装置>
図4は、本発明のトナーを適用できる画像形成装置の一例を示す断面模式図である。画像形成装置100は4個の画像形成ステーションPa、Pb、Pc、Pdを縦方向に並設している。そして、各画像形成ステーションPa、Pb、Pc、Pdには、各々、装着手段(不図示)によってプロセスカートリッジ7(7a、7b、7c、7d)が着脱可能に装着される。フルカラー画像形成には、少なくともイエロー系着色剤と結着樹脂とを含有するイエロートナー粒子及び無機微粉体を有するイエロートナーと、少なくともマゼンタ系着色剤と結着樹脂とを含有するマゼンタトナー粒子及び無機微粉体を有するマゼンタトナーと、少なくともシアン系着色剤と結着樹脂とを含有するシアントナー粒子及び無機微粉体を有するシアントナーと、少なくともカーボンブラックと結着樹脂とを含有するブラックトナー粒子及び無機微粉体を有するブラックトナーを有するフルカラー画像形成用トナーキットを用いる。なお、マゼンタ色、シアン色、イエロー色、ブラック色の各カートリッジ7a、7b、7c、7dは同一構成である。
本模式図では、画像形成ステーションPa、Pb、Pc、Pdは、縦方向に僅かに傾斜して並設されているが、傾斜することなく縦方向に整列して設けてもよい。また、プロセスカートリッジ7は、図3に例示したものと同じであっても良いし、異なっていても良い。
各カートリッジ7(7a、7b、7c、7d)は、感光体ドラム1(1a、1b、1c、1d)を備えている。感光体ドラム1は、駆動手段(不図示)によって、同図中、反時計回りに回転駆動される。感光体ドラム1の周囲には、その回転方向に従って順に以下の手段が設けられている。(A)感光体ドラム1表面を均一に帯電する帯電手段2(2a、2b、2c、2d)。(B)画像情報に基づいてレーザービームを照射し感光体ドラム1に静電潜像を形成するスキャナユニット3(3a、3b、3c、3d)。(C)静電潜像に現像剤(以下、「トナー」という。)を付着させてトナー像として現像する現像手段4(4a、4b、4c、4d)。(D)感光体ドラム1上のトナー像を記録媒体Sに転写させる転写装置5。(E)転写後の感光体ドラム1表面に残ったトナーを除去するクリーニング手段6(6a、6b、6c、6d)。
ここで、感光体ドラム1と、プロセス手段である、帯電手段2、現像手段4、クリーニング手段6は、カートリッジ枠体により一体的に構成してカートリッジ化されカートリッジ7を構成している。
感光体ドラム1(1a、1b、1c、1d)は、シリンダの外周面に感光層を設けて構成したものである。感光体ドラム1は、その両端部を支持部材によって回転自在に支持されている。そして、一方の端部に駆動モータ(不図示)からの駆動力が伝達されることにより、反時計周りに回転駆動される。
上記感光体としては、a−Se、CdS、ZnO2、OPC、a−Siの様な光導電絶縁物質層を持つ感光体ドラムが好適に使用される。また、上記OPC感光体における有機系感光層の結着樹脂は、特に限定するものではない。中でもポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル系樹脂が特に、転写性に優れ、感光体へのトナーの融着、外添剤のフィルミングが起こりにくいため好ましい。
帯電手段2(2a、2b、2c、2d)としては、接触帯電方式のものを使用している。帯電手段2は、ローラー状に形成された導電性ローラーである。このローラーを感光体ドラム1表面に当接させるとともに、このローラーに帯電バイアス電圧を印加する。これにより、感光体ドラム1表面を一様に帯電させる。
帯電ローラーを用いた時の好ましいプロセス条件としては、ローラーの当接圧が線圧として0.05乃至5N/cmである。また印加電圧としては、直流電圧或いは直流電圧に交流電圧を重畳したものが好適に用いられる。直流電圧に交流電圧を重畳したものを用いた時には、交流電圧=0.5乃至5dVpp、交流周波数=50Hz乃至5kHz、直流電圧=±0.2乃至±1.5kVであることが好ましい。また、直流電圧を用いた時には、直流電圧=±0.2乃至±5kVであることが好ましい。
帯電ローラー以外の帯電手段としては、帯電ブレードを用いる方法や、導電性ブラシを用いる方法がある。これらの接触帯電手段は、非接触のコロナ帯電に比べて、高電圧が不必要になったり、オゾンの発生が低減するといった効果がある。接触帯電手段としての帯電ローラー及び帯電ブレードの材質としては、導電性ゴムが好ましく、その表面に離型性被膜を設けても良い。離型性被膜としては、ナイロン系樹脂、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)、PVDC(ポリ塩化ビニリデン)などが適用可能である。
スキャナユニット3(3a、3b、3c、3d)は、レーザーダイオード(不図示)によって画像信号に対応する画像光が、高速回転されるポリゴンミラー(不図示)及び結像レンズ(不図示)を介して帯電済みの感光体ドラム1表面を画像情報に応じ露光する。これによって、感光体ドラムに静電潜像を形成する。
現像手段4(4a、4b、4c、4d)は、マゼンタ色、シアン色、イエロー色、ブラック色の各色のトナーを夫々収納したトナー容器41から構成され、トナー容器41内のトナーを送り機構42によってトナー供給ローラー43へ送り込む。
前記トナー供給ローラー43は、図示時計方向に回転し、トナー担持体としての現像ローラー40へのトナーの供給、及び、静電潜像の現像化に寄与せず現像ローラー40上に残留したトナーのはぎとりを行う。
現像ローラー40へ供給されたトナーは、現像ローラー40外周に圧接されたトナー規制部材44によって現像ローラー40(時計回り方向に回転)の外周に塗布され、且つ電荷を付与される。そして、潜像が形成された感光体ドラム1と対向した現像ローラー40に現像バイアスを印加する。そして、潜像に応じて感光体ドラム1上にトナー現像を行う。
転写装置5には、すべての感光体ドラム1(1a、1b、1c、1d)に対向し、接するように循環移動する静電転写ベルト11が設けられている。この転写ベルト11は、駆動ローラー13、従動ローラー14a、14b、テンションローラー15に張架されていて、図中左側の外周面に記録媒体Sを静電吸着する。そして、転写ベルト11は、感光体ドラム1に記録媒体Sを接触させるべく循環移動する。これにより、記録媒体Sは転写ベルト11により転写位置まで搬送され、感光体ドラム1上のトナー像を転写される。
この転写ベルト11の内側に当接し、4個の感光体ドラム1(1a、1b、1c、1d)に対向した位置に転写ローラー12(12a、12b、12c、12d)が並設される。これら転写ローラー12には、転写時にバイアスが印加されて、電荷が静電転写ベルト11を介して記録媒体Sに印加される。このとき生じた電界により、感光体ドラム1に接触中の記録媒体Sに、感光体ドラム1上のトナー像が転写される。
給送部16は、画像形成ステーションPa、Pb、Pc、Pdに記録媒体Sを給送搬送するものである。給送部16には、複数枚の記録媒体Sがカセット17に収納されている。画像形成時には給送ローラー18(半月ローラー)、レジストローラー19が画像形成動作に応じて駆動回転する。給送ローラー18は、カセット17内の記録媒体Sを1枚毎に分離給送した後、レジストローラー19に記録媒体S先端を突き当てて一旦停止させる。その後レジストローラー19は、転写ベルト11の回転と画像書出し位置の同期をとって、記録媒体Sを静電転写ベルト11へと給送する。
定着部20は、記録媒体Sに転写された複数色のトナー画像を定着させるものである。そして、定着部20は、加熱ローラー21aと、これに圧接して記録媒体Sに熱及び圧力を与える加圧ローラー21bとを有する。即ち、感光体ドラム1に形成されたトナー像を転写された記録媒体Sは定着部20を通過する際に、加圧ローラー21bで搬送されるとともに、加熱ローラー21aによって熱及び圧力を与えられる。これによって複数色のトナー像が記録媒体S表面に定着される。
画像形成の動作としては、カートリッジ7(7a、7b、7c、7d)が、画像形成タイミングに合わせて順次駆動される。そして、その駆動に応じて感光体ドラム1a、1b、1c、1dが、反時計回り方向に回転駆動される。そして、各々のカートリッジ7に対応するスキャナユニット3が順次駆動される。この駆動により、帯電ローラー2は感光体ドラム1の周面に一様な電荷を付与する。そして、スキャナユニット3は、その感光体ドラム1周面に画像信号に応じて露光を行って感光体ドラム1周面に静電潜像を形成する。現像手段4内の現像ローラー40は、静電潜像の低電位部にトナーを転移させて感光体ドラム1周面上にトナー像を形成(現像)する。
最上流の感光体ドラム1の周面上に形成されたトナー像の先端が、転写ベルト11との対向点に回転搬送されてくるタイミングで、その対向点に記録媒体Sの印字開始位置が一致するようにレジストローラー19が回転し記録媒体Sを転写ベルト11へ給送する。
記録媒体Sは吸着ローラー22と転写ベルト11とによって挟み込むようにして転写ベルト11の外周に圧接される。そして、転写ベルト11と吸着ローラー22との間に電圧を印加する。そして、誘電体である記録媒体Sと転写ベルト11の誘電体層に電荷を誘起して、記録媒体Sを転写ベルト11の外周に静電吸着させている。これにより、記録媒体Sは静電転写ベルト11に安定して吸着され、最下流の転写部まで搬送される。
このように搬送されながら記録媒体Sは、各感光体ドラム1と転写ローラー12との間に形成される電界によって、各感光体ドラム1のトナー像を順次転写される。
4色のトナー像を転写された記録媒体Sは、ベルト駆動ローラー13の曲率により静電転写ベルト11から曲率分離され、定着部20に搬入される。記録媒体Sは、定着部20で上記トナー像を熱定着された後、排紙ローラー23によって、排紙部24から画像面を下にした状態で本体外に排出される。
図4においては、定着部20に加熱ローラーを用いる方法を例示したが、本発明のトナーは他の定着方法も好適に用いることができる。図5および図6には、発熱体を用いて耐熱性高分子フィルムを加熱し、トナー像の定着を行う装置を示す。
図5はフィルムに常にテンションが加わっている構造の定着装置である。
本発明において、発熱体はその熱容量が小さく、線状あるいは面状の加熱部を有するもので、加熱部の最高温度は100〜300℃であることが好ましい。
また、フィルムは、厚さ1〜100μmの耐熱性のシートであることが好ましく、これら耐熱性シートとしては耐熱性の高い、ポリエステル、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PFA(テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、ポリイミド、ポリアミド等のポリマーシートの他、アルミニウム等の金属シート及び金属シートとポリマーシートから構成されたラミネートシートが用いられる。
より好ましいフィルムの構成としては、これら耐熱性シートが離型層及び/又は低抵抗層を有していることである。
51は装置に固定支持された加熱体であって、ヒータ基板52、通電発熱抵抗体(発熱体)53・検温素子54等よりなる。
ヒータ基板52は耐熱性・絶縁性・低熱容量・高熱伝導性の部材であり、例えば、厚み1mm・巾10mm・長さ240mmのアルミナ基板である。
発熱体53はヒータ基板52の下面(フィルム55との対面側)の略中央部に長手に沿って、電気抵抗材料を厚み約10μm・巾1〜3mmの線状または細帯状にスクリーン印刷等により塗工したものである。電気抵抗材料としては例えば、Ag/Pd(銀パラジウム)、Ta2N、RuO2等が用いられる。
検温素子54は一例としてヒータ基板52の上面(発熱体53を設けた面とは反対側面)の略中央部にスクリーン印刷等により塗工して具備させたPt膜等の低熱容量の測温抵抗体である。低熱容量のサーミスタなども使用できる。
本例の加熱体51の場合は、線状又は面状をなす発熱体53に対し画像形成スタート信号により所定のタイミングにて通電して発熱体53を略全長にわたって発熱させる。通電はAC100Vであり、検温素子54の検知温度に応じてトライアックを含む不図示の通電制御回路により通電する位相角を制御することにより供給電力を制御している。
加熱体51はその発熱体53への通電により、ヒータ基板52・発熱体53の熱容量が小さいので加熱体表面が所要の定着温度(例えば140〜200℃)まで急速に温度上昇する。
そしてこの加熱体51に耐熱性フィルム55が当接している。
熱容量を小さくしてクイックスタート性を向上させるために、フィルム55には総厚100μm以下、20μm以上の耐熱性・離型性、強度・耐久性等のある単層或は複合層のフィルムを使用できる。
例えば、ポリイミド・ポリエーテルイミド(PEI)・ポリエーテルサルホン(PES)・4フッ化エチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体樹脂(PFA)・ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)・ポリパラバン酸(PPA)、或いは複合層フィルム例えば20μm厚のポリイミドフィルムの少なくとも画像当接面側にPTFE(4フッ化エチレン樹脂)・PAF・FEP等のフッ素樹脂・シリコン樹脂等、更にはそれに導電材(カーボンブラック・グラファイト・導電性ウイスカなど)を添加した離型性コート層を10μm厚に施したものなどである。
回転体たる支持ローラー58は例えばシリコンゴム等の離型性のよいゴム弾性体からなり、加熱体51にフィルム55を介して圧接され、ニップ部を形成すると共に、フィルム55を所定速度に移動駆動する。フィルム55との間に被加熱材としての記録材シートが導入されたときには、その記録材シートをフィルム55面に密着させて加熱体51に圧接し、フィルム55と共に移動駆動させる。
発熱体を用いて耐熱性高分子フィルムを加熱し、トナー像の定着を行う装置の他の形態について示す。
図6はフィルムにテンションが加わらない状態がある構造を有する、定着装置である(テンションフリータイプ)。
本発明において、発熱体はその熱容量が小さく、線状あるいは面状の加熱部を有するもので、加熱部の最高温度は100〜300℃であることが好ましい。
また、フィルムは、厚さ1〜100μmの耐熱性のシートであることが好ましく、これら耐熱性シートとしては耐熱性の高い、ポリエステル、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PFA(テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、ポリイミド、ポリアミド等のポリマーシートの他、アルミニウム等の金属シート及び金属シートとポリマーシートから構成されたラミネートシートが用いられる。
より好ましいフィルムの構成としては、これら耐熱性シートが離型層及び/又は低抵抗層を有していることである。
64は装置に固定支持された低熱容量線状加熱体であって、ヒータ基板64a、通電発熱抵抗体(発熱体)64b・表面保護層64c・検温素子64d等よりなる。
ヒータ基板64aは耐熱性・絶縁性・低熱容量・高熱伝導性の部材であり、例えば、厚み1mm・巾10mm・長さ240mmのアルミナ基板である。
発熱体64bはヒータ基板64aの下面(フィルム65との対面側)の略中央部に長手に沿って、電気抵抗材料を厚み約10μm・巾1〜3mmの線状または細帯状に塗工し、その上に表面保護層64cとして耐熱ガラスを約10μmコートしたものである。電気抵抗材料としては例えば、Ag/Pd(銀パラジウム)、Ta2N、RuO2等が用いられる。また、電気抵抗材料の塗工方法としては、スクリーン印刷する方法等が用いられる。
検温素子64dは一例としてヒータ基板64aの上面(発熱体64bを設けた面とは反対側面)の略中央部にスクリーン印刷等により塗工して具備させたPt膜等の低熱容量の測温抵抗体である。低熱容量のサーミスタなども使用できる。
本例の加熱体64の場合は、線状又は面状をなす発熱体64bに対し画像形成スタート信号により所定のタイミングにて通電して発熱体64bを略全長にわたって発熱させる。
通電はAC100Vであり、検温素子64dの検知温度に応じてトライアックを含む不図示の通電制御回路により通電する位相角を制御することにより供給電力を制御している。
加熱体64はその発熱体64bへの通電により、ヒータ基板64a・発熱体64b・表面保護層64cの熱容量が小さいので加熱体表面が所要の定着温度(例えば140〜200℃)まで急速に温度上昇する。
そしてこの加熱体64に耐熱性フィルム65が当接している。
熱容量を小さくしてクイックスタート性を向上させるために、フィルム65には総厚100μm以下、20μm以上の耐熱性・離型性、強度・耐久性等のある単層或は複合層のフィルムを使用できる。
例えば、ポリイミド・ポリエーテルイミド(PEI)・ポリエーテルサルホン(PES)・4フッ化エチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体樹脂(PFA)・ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)・ポリパラバン酸(PPA)、或いは複合層フィルム例えば20μm厚のポリイミドフィルムの少なくとも画像当接面側にPTFE(4フッ化エチレン樹脂)・PAF・FEP等のフッ素樹脂・シリコン樹脂等、更にはそれに導電材(カーボンブラック・グラファイト・導電性ウイスカなど)を添加した離型性コート層を10μm厚に施したものなどである。
回転体たる支持ローラー62は例えばシリコンゴム等の離型性のよいゴム弾性体からなり、加熱体64にフィルム65を介して圧接され、ニップ部を形成すると共に、フィルム65を所定速度に移動駆動する。フィルム65との間に被加熱材としての記録材シートが導入されたときには、その記録材シートをフィルム65面に密着させて加熱体64に圧接し、フィルム65と共に移動駆動させる。
以下に、本発明にかかる物性値の測定方法について説明する。
<トナーの動的粘弾性の測定方法>
測定装置としては、回転平板型レオメーター「ARES」(TA INSTRUMENTS社製)を用いる。
測定試料としては、25℃の環境下で、錠剤成型器を用いて、トナーを直径8.0mm、厚さ2.0±0.3mmの円板状に加圧成型した試料を用いる。
該試料をパラレルプレートに装着し、室温(25℃)から100℃に10分間で昇温して、試料の形を整えた後、粘弾性の測定開始温度まで冷却し、測定を開始する。この際、初期のノーマルフォースが0になるようにサンプルをセットすることが、重要である。また、以下に述べるように、その後の測定においては、自動テンション調整(Auto Tension Adjustment ON)にすることで、ノーマルフォースの影響をキャンセルできる。
測定は、以下の条件で行う。
(1) 直径8.0mmのパラレルプレートを用いる。
(2) 周波数(Frequency)は1.0Hzとする。
(3) 印加歪初期値(Strain)を0.02%に設定する。
(4) 30〜200℃の間を、昇温速度(Ramp Rate)2.0℃/minで測定を行う。尚、測定においては、以下の自動調整モードの設定条件で行う。自動歪み調整モード(Auto Strain)で測定を行う。
(5) 最大歪(Max Applied Strain)を40.0%に設定する。
(6) 最大トルク(Max Allowed Torque)150.0g・cmとし、最低トルク(Min Allowed Torque)1.0g・cmと設定する。
(7) 歪み調整(Strain Adjustment)を 20.0% of Current Strain と設定する。測定においては、自動テンション調整モード(Auto Tension)を採用する。
(8) 自動テンションディレクション(Auto Tension Direction)をコンプレッション(Compression)と設定する。
(9) 初期スタティックフォース(Initial Static Force)を10.0g、自動テンションセンシティビティ(Auto Tension Sensitivity)を40.0gと設定する。
(10) 自動テンション(Auto Tension)の作動条件は、サンプルモデュラス(Sample Modulus)が1.0×106(Pa)以上である。
<トナーの高温GPC−RALLS−粘度計の分析方法>
(i)前処理
トナー0.1gを専用のろ過容器(例えば東ソー製溶解ろ過容器 ポアサイズ10μm)に入れ、ODCB 10mlとともに15ml試験管に入れる。これを溶液ろ過装置(例えば東ソー製DF−8020)を用い、135℃で24時間溶解させる。
12時間後、下記装置を用い、分析を行った。
(ii)[分析条件]
装置 :HLC−8121GPC/HT(東ソー社製)
DAWN EOS(Wyatt Technology社製)
高温差圧粘度検出器(Viscotek社製)
カラム:TSKgel GMHHR−H(30)HT 7.8cm(ID)×30.0cm(L)
TSKgel GMHHR−H(20)HT 7.8cm(ID)×30.0cm(L)
TSKgel GMHHR−H HT 7.8cm(ID)×30.0cm(L)
3連(東ソー社製)
検出器1:多角度光散乱検出器 Wyatt DAWN EOS
検出器2:高温差圧粘度検出器
検出器3:ブライス型デュアルフロー式示差屈折計
温度:135℃
溶媒:o−ジクロロベンゼン(ジブチルヒドロキシトルエンを0.05wt%添加)
流速:1.0ml/min
注入量 :400μl
本測定においては、絶対分子量に基く分子量分布及び固有粘度が、直接出力されるが、その測定理論は以下の通りである。
[測定理論]
M90=R(θ90)/KC・・・レイリー方程式
M90:90°における分子量
R(θ90):散乱角90°でのレイリー比
K:光学定数(=2π2n2/λ0 4NA・(dn/dc)2)
C:溶液濃度
Rg=(1/6)1/2([η]M90/φ)1/3・・・Flory Fox式
Rg:慣性半径
η:固有粘度
φ:形状要素
絶対分子量:M=R(θ0)/KC
R(θ0)=R(θ90)/P(θ90)
P(θ90)=2/X2・(e-X−(1−X)) (X=4πn/λ・Rg)
λ:波長
(dn/dc):本特許では0.068ml/gとした。
本発明における絶対分子量の重量平均分子量、及び分岐度を表す粘度Ivの常用対数(log[Iv])を絶対分子量(Mw)の常用対数(log[Mw])に対してプロットした際の傾きaは、装置付属の専用ソフト「TriSEC GPC Software GPC−LS−Viscometry Module Version3.0 Rev.B.05.15」(Viscotek社製)を用いて求めた。
絶対分子量の算出にあたっては、標準ポリスチレン樹脂(例えば、商品名「TSKスタンダード ポリスチレン F−10」、東ソー社製)を用いて、既知の分子量及び固有粘度(例えば前記F−10を用いた場合、重量平均分子量(Mw)96400、固有粘度0.411dl/g)より校正を行って求めた。
傾きaの算出は、前記装置付属の専用ソフトでMark−Houwink−Sakurada Plotsを行って、分析範囲を指定することで求めた。
尚、本発明におけるトナーの全樹脂成分(a)の定義とは、高温(135℃における)GPC−RALLS−粘度計分析の3元同時出力プロファイルにおいて、粘度計が検出したクロマトグラムの全樹脂成分に相当する領域の分析値に基づく。
また、本発明の鍵を握るトナーの全樹脂成分における高分子側の成分(s)の定義は、該分析における絶対分子量(Mw)の常用対数(log〔Mw〕)が5.00以上の樹脂成分(s)を示す。
本発明における、全樹脂成分(a)の分岐度に対する絶対分子量(Mw)の常用対数(log〔Mw〕)が5.00以上の樹脂成分(s)の分岐度比は、上記で定義した各成分の傾き比a(a)/a(s)により表される。
<トナーの分子量測定方法>
トナーのTHF可溶分の分子量分布は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、以下のようにして測定する。
まず、室温で24時間かけて、トナーをテトラヒドロフラン(THF)に溶解する。そして、得られた溶液を、ポア径が0.2μmの耐溶剤性メンブランフィルター「マエショリディスク」(東ソー社製)で濾過してサンプル溶液を得る。尚、サンプル溶液は、THFに可溶な成分の濃度が約0.8質量%となるように調整する。このサンプル溶液を用いて、以下の条件で測定する。
装置:HLC8120 GPC(検出器:RI)(東ソー社製)
カラム:Shodex KF−801、802、803、804、805、806、807の7連(昭和電工社製)
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
流速:1.0ml/min
オーブン温度:40.0℃
試料注入量:0.10ml
試料の分子量の算出にあたっては、標準ポリスチレン樹脂(例えば、商品名「TSKスタンダード ポリスチレン F−850、F−450、F−288、F−128、F−80、F−40、F−20、F−10、F−4、F−2、F−1、A−5000、A−2500、A−1000、A−500」、東ソ−社製)を用いて作成した分子量校正曲線を使用する。
<トナーのガラス転移温度の測定方法>
本発明におけるトナーのガラス転移温度は、示差走査熱量分析装置「Q1000」(TA Instruments社製)を用いてASTM D3418−82に準じて測定する。
装置検出部の温度補正はインジウムと亜鉛の融点を用い、熱量の補正についてはインジウムの融解熱を用いる。
具体的には、トナー約10mgを精秤し、アルミニウム製のパンの中に入れ、リファレンスとして空のアルミニウム製のパンを用い、測定範囲30〜200℃の間で、昇温速度10℃/minで測定を行う。 この昇温過程で、温度40℃〜100℃の範囲において比熱変化が得られる。このときの比熱変化が出る前と出た後のベースラインの中間点の線と示差熱曲線との交点を、結着樹脂のガラス転移温度Tgとする。
<トナーのTHF不溶分量の測定方法>
トナー中の樹脂成分のTHF不溶分は、以下のようにして測定する。
トナー約1.0gを秤量(W1g)し、予め秤量した円筒濾紙(例えば、商品名No.86R(サイズ28×100mm)、アドバンテック東洋社製)に入れてソックスレー抽出器にセットする。そして、溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)200mlを用いて16時間抽出する。このとき、溶媒の抽出サイクルが約5分に一回になるような還流速度で抽出を行う。
抽出終了後、円筒ろ紙を取り出して風乾した後、40℃で8時間真空乾燥し、抽出残分を含む円筒濾紙の質量を秤量し、円筒濾紙の質量を差し引くことにより、抽出残分の質量(W2g)を算出する。
そして、樹脂成分以外の成分の含有量(W3g)を下記式(1)のように差し引くことによって、THF不溶分を求めることができる。
THF不溶分(質量%)={(W2−W3)/(W1−W3)}×100・・・(1)
樹脂成分以外の成分の含有量は、公知の分析手段によって測定することができる。分析が困難な場合には、以下のようにして樹脂成分以外の成分の含有量(トナー中の焼却残灰分(W3’g))を見積もり、その含有量を差し引くことによって、THF不溶分を求めることができる。
トナー中の焼却残灰分は以下の手順で求める。予め秤量した30mlの磁性るつぼに約2gのトナーを秤量(Wag)する。るつぼを電気炉に入れ約900℃で約3時間加熱し、電気炉中で放冷し、常温下でデシケーター中に1時間以上放冷し、焼却残灰分を含むるつぼの質量を秤量し、るつぼの質量を差し引くことにより焼却残灰分(Wbg)を算出する。そして、下記式(2)により、試料W1g中の焼却残灰分の質量(W3’g)を算出する。
W3’=W1×(Wb/Wa)・・・(2)
この場合、THF不溶分は、下記式(3)で求められる。
THF不溶分(質量%)={(W2−W3’)/(W1−W3’)}×100・・(3)
<トナーの重量平均粒径(D4)の測定方法>
トナーの重量平均粒径(D4)は、以下のようにして算出する。測定装置としては、100μmのアパーチャーチューブを備えた細孔電気抵抗法による精密粒度分布測定装置「コールター・カウンター Multisizer 3」(登録商標、ベックマン・コールター社製)を用いる。測定条件の設定及び測定データの解析は、付属の専用ソフト「ベックマン・コールター Multisizer 3 Version3.51」(ベックマン・コールター社製)を用いる。尚、測定は実効測定チャンネル数2万5千チャンネルで行なう。
測定に使用する電解水溶液は、特級塩化ナトリウムをイオン交換水に溶解して濃度が約1質量%となるようにしたもの、例えば、「ISOTON II」(ベックマン・コールター社製)が使用できる。
尚、測定、解析を行なう前に、以下のように前記専用ソフトの設定を行なった。
前記専用ソフトの「標準測定方法(SOM)を変更」画面において、コントロールモードの総カウント数を50000粒子に設定し、測定回数を1回、Kd値は「標準粒子10.0μm」(ベックマン・コールター社製)を用いて得られた値を設定する。「閾値/ノイズレベルの測定ボタン」を押すことで、閾値とノイズレベルを自動設定する。また、カレントを1600μAに、ゲインを2に、電解液をISOTON IIに設定し、「測定後のアパーチャーチューブのフラッシュ」にチェックを入れる。
前記専用ソフトの「パルスから粒径への変換設定」画面において、ビン間隔を対数粒径に、粒径ビンを256粒径ビンに、粒径範囲を2μmから60μmまでに設定する。
具体的な測定法は以下の通りである。
(1)Multisizer 3専用のガラス製250ml丸底ビーカーに前記電解水溶液約200mlを入れ、サンプルスタンドにセットし、スターラーロッドの撹拌を反時計回りで24回転/秒にて行なう。そして、専用ソフトの「アパーチャーのフラッシュ」機能により、アパーチャーチューブ内の汚れと気泡を除去しておく。
(2)ガラス製の100ml平底ビーカーに前記電解水溶液約30mlを入れる。この中に分散剤として「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)をイオン交換水で約3質量倍に希釈した希釈液を約0.3ml加える。
(3)発振周波数50kHzの発振器2個を位相を180度ずらした状態で内蔵し、電気的出力120Wの超音波分散器「Ultrasonic Dispension System Tetora150」(日科機バイオス社製)を準備する。超音波分散器の水槽内に約3.3lのイオン交換水を入れ、この水槽中にコンタミノンNを約2ml添加する。
(4)前記(2)のビーカーを前記超音波分散器のビーカー固定穴にセットし、超音波分散器を作動させる。そして、ビーカー内の電解水溶液の液面の共振状態が最大となるようにビーカーの高さ位置を調整する。
(5)前記(4)のビーカー内の電解水溶液に超音波を照射した状態で、トナー約10mgを少量ずつ前記電解水溶液に添加し、分散させる。そして、さらに60秒間超音波分散処理を継続する。尚、超音波分散にあたっては、水槽の水温が10℃以上40℃以下となる様に適宜調節する。
(6)サンプルスタンド内に設置した前記(1)の丸底ビーカーに、ピペットを用いてトナーを分散した前記(5)の電解質水溶液を滴下し、測定濃度が約5%となるように調整する。そして、測定粒子数が50000個になるまで測定を行なう。
(7)測定データを装置付属の前記専用ソフトにて解析を行ない、重量平均粒径(D4)を算出する。尚、前記専用ソフトでグラフ/体積%と設定したときの、「分析/体積統計値(算術平均)」画面の「平均径」が重量平均粒径(D4)である。
<トナーの平均円形度の測定方法>
トナー粒子の平均円形度は、フロー式粒子像分析装置「FPIA−3000」(シスメックス社製)によって、校正作業時の測定及び解析条件で測定する。
具体的な測定方法は、以下の通りである。まず、ガラス製の容器中に予め不純固形物などを除去したイオン交換水約20mlを入れる。この中に分散剤として「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)をイオン交換水で約3質量倍に希釈した希釈液を約0.2ml加える。更に測定試料を約0.02g加え、超音波分散器を用いて2分間分散処理を行い、測定用の分散液とする。その際、分散液の温度が10℃以上40℃以下となる様に適宜冷却する。超音波分散器としては、発振周波数50kHz、電気的出力150Wの卓上型の超音波洗浄器分散器(例えば「VS−150」(ヴェルヴォクリーア社製))を用い、水槽内には所定量のイオン交換水を入れ、この水槽中に前記コンタミノンNを約2ml添加する。
測定には、標準対物レンズ(10倍)を搭載した前記フロー式粒子像分析装置を用い、シース液にはパーティクルシース「PSE−900A」(シスメックス社製)を使用した。前記手順に従い調整した分散液を前記フロー式粒子像分析装置に導入し、HPF測定モードで、トータルカウントモードにて3000個のトナー粒子を計測する。そして、粒子解析時の2値化閾値を85%とし、解析粒子径を円相当径1.985μm以上、39.69μm未満に限定し、トナー粒子の平均円形度を求める。
測定にあたっては、測定開始前に標準ラテックス粒子(例えば、Duke Scientific社製の「RESEARCH AND TEST PARTICLES Latex Microsphere Suspensions 5200A」をイオン交換水で希釈)を用いて自動焦点調整を行う。その後、測定開始から2時間毎に焦点調整を実施することが好ましい。
なお、本願実施例では、シスメックス社による校正作業が行われた、シスメックス社が発行する校正証明書の発行を受けたフロー式粒子像分析装置を使用した。解析粒子径を円相当径1.985μm以上、39.69μm未満に限定した以外は、校正証明を受けた時の測定及び解析条件で測定を行った。
本発明を以下に示す実施例により具体的に説明する。しかし、これは本発明をなんら限定するものではない。以下にトナー粒子の製造方法について記載する。実施例中及び比較例中の部および%は特に断りがない場合、全て質量基準である。
まず、本発明のトナーの製造例で用いられる極性樹脂の製造例を示す。
<極性樹脂の製造例1>
・スチレン 93.35部
・n−ブチルアクリレート 2.50部
・メチルメタクリレート 2.50部
・メタクリル酸 1.65部
・パーブチルD(10時間半減期温度54.6℃(日本油脂製)) 1.80部
上記各成分を、4つ口フラスコ内でキシレン200部を撹拌しながら容器内を十分に窒素で置換し140℃に昇温させた後2時間かけて滴下した。更に、キシレン還流下で10時間保持し、重合を完了し、減圧下で溶媒を蒸留除去した。このようにして得られた樹脂を極性樹脂No.1とする。得られた樹脂の物性を表1に示す。
<極性樹脂の製造例2乃至14>
極性樹脂の製造例1において、添加するモノマー組成を表1に示す共重合体組成に変更し、パーブチルDの添加量を変更することを除いては、極性樹脂の製造1と同様にして極性樹脂No.2乃至14を製造した。得られた極性樹脂No.2乃至14の物性を表1に示す。
St:スチレン
BA:n−ブチルアクリレート
MMA:メチルメタクリレート
MAA:メタクリル酸
α−MSt:α−メチルスチレン
2HEMA:2−ヒドロキシエチルメタクリレート
以下のブラックトナーの製造例で用いられるカーボンブラックの一覧を表2に示す。
(ブラックトナーの製造例1)
下記の手順によって重合法トナーを製造した。
60℃に加温したイオン交換水1300部に、リン酸三カルシウム9部、10%塩酸11部を添加し、TK式ホモミキサー(特殊機化工業製)を用いて、10,000r/minにて撹拌し、pH5.2の水系媒体を調製した。
また、下記の材料をプロペラ式攪拌装置にて100r/minで溶解して溶解液を調製した。
・スチレン・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 70.0部
・n−ブチルアクリレート・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 30.0部
・FCA1001NS(藤倉化成社製)・・・・・・・・・・・・・・・・ 1.0部
・極性樹脂1(表1記載)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 20.0部
次に上記溶解液に、
・カーボンブラックNo.1(表2記載)・・・・・・・・・・・・・・・ 6.5部
・帯電制御剤ボントロンE−88(オリエント化学社製)・・・・・・・・ 1.0部
・ワックスHNP−10(融点75℃:日本精鑞社製)・・・・・・・・ 10.0部
・ジビニルベンゼン・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 0.35部
を加え、その後、混合液を温度65℃に加温した後にTK式ホモミキサー(特殊機化工業製)にて、10,000r/minにて攪拌し、溶解、分散した。
続いて、上記水系媒体中に上記重合性単量体組成物を投入し、重合開始剤として
・パーブチルPV(10時間半減期温度54.6℃(日本油脂製))・・・ 8.0部
を加え、70℃にてTK式ホモミキサーを用いて10,000r/minで 40分間攪拌し、造粒した。
尚、上記造粒工程の30分経過時に、更に追加の開始剤として
・パーブチルPV(10時間半減期温度54.6℃(日本油脂製))・・・ 2.0部
を添加した。
プロペラ式攪拌装置に移して120r/minで攪拌しつつ、70℃で5時間反応させた後、80℃まで昇温し、更に5時間反応を行い、トナー粒子を製造した。重合反応終了後、該粒子を含むスラリーを冷却し、スラリーの10倍の水量で洗浄し、ろ過、乾燥の後、分級によって粒子径を調整してブラックトナー粒子を得た。
上記ブラックトナー粒子100部に対して、流動性向上剤として、ジメチルシリコーンオイル(20質量%)で処理され、トナー粒子と同極性(負極性)に帯電する疎水性シリカ微粉体(1次粒子径:7nm、BET比表面積:130m2/g)1.7部をヘンシェルミキサー(三井三池社製)で3000r/minで15分間混合してブラックトナーNo.1を得た。
ブラックトナーNo.1の物性を表3及び4に示す。
(ブラックトナーの製造例2)
ブラックトナーの製造例1において、カーボンブラックNo.1をカーボンブラックNo.2(表2記載)に変更し、添加部数を10.0部に変更することを除いて、ブラックトナーの製造例1と同様にしてブラックトナーNo.2を製造した。得られたブラックトナーNo.2の物性を表3及び4に示す。
(ブラックトナーの製造例3)
ブラックトナーの製造例1において、カーボンブラックNo.1をカーボンブラックNo.3(表2記載)に変更し、添加部数を12.5部に変更することを除いて、ブラックトナーの製造例1と同様にしてブラックトナーNo.3を製造した。得られたブラックトナーNo.3の物性を表3及び4に示す。
(ブラックトナーの製造例4)
ブラックトナーの製造例1において、カーボンブラックNo.1をカーボンブラックNo.4(表2記載)に変更し、添加部数を5.5部に変更することを除いて、ブラックトナーの製造例1と同様にしてブラックトナーNo.4を製造した。得られたブラックトナーNo.4の物性を表3及び4に示す。
(ブラックトナーの製造例5)
ブラックトナーの製造例1において、カーボンブラックNo.1をカーボンブラックNo.5(表2記載)に変更し、添加部数を4.5部に変更することを除いて、ブラックトナーの製造例1と同様にしてブラックトナーNo.5を製造した。得られたブラックトナーNo.5の物性を表3及び4に示す。
(ブラックトナーの製造例6)
ブラックトナーの製造例1において、添加するFCA1001NS(藤倉化成社製)を下記製造例に示すスルホン酸Ca塩基を有する重合体に変更し、極性樹脂No.1を極性樹脂No.2(表1記載)に変更し、ジビニルベンゼンの添加部数を0.25部に変更することを除いて、ブラックトナーの製造例1と同様にしてブラックトナーNo.6を製造した。得られたブラックトナーNo.6の物性を表3及び4に示す。
<スルホン酸Ca塩基を有する重合体の製造例>
3リットル反応容器に酢酸エチル500mlを仕込み、FCA1001NS(藤倉化成社製)100gを5分間で添加し、更に3時間攪拌した。その後、水酸化カリウム10gのエタノール500ml溶液を1時間かけて滴下し、更に3時間攪拌した。続いて、塩化カルシウム10gのイオン交換水500ml水溶液を調整し、2時間かけて滴下した後更に10時間攪拌した。
これをクロロホルム1.5L中に投入し、更に1.0Lのイオン交換水を加えて5時間攪拌を行った。その後、クロロホルム層を分離し、2.0Lのイオン交換水で洗浄操作を3回行い、減圧乾燥し、スルホン酸Ca塩基を有する重合体を得た。
尚、スルホン酸のカルシウム塩化率は、蛍光X線を測定することにより90%であることを確認した。
(ブラックトナーの製造例7)
ブラックトナーの製造例1において、添加するFCA1001NS(藤倉化成社製)を下記製造例に示すスルホン酸メチルエステル基を有する重合体に変更し、極性樹脂No.1を極性樹脂No.3(表1記載)に変更し、ジビニルベンゼンの添加部数を0.45部に変更することを除いて、ブラックトナーの製造例1と同様にしてブラックトナーNo.7を製造した。得られたブラックトナーNo.7の物性を表3及び4に示す。
<スルホン酸メチルエステル基を有する重合体の製造例>
3リットル反応容器にトリメチルオルトホルメート500mlを仕込み80℃に加熱した。これに、FCA1001NS(藤倉化成社製)100gを5分間で添加し、その後15時間攪拌した。その後、反応混合物をn−ヘキサン9リットルに攪拌しながら滴下した。しばらく放置し、樹脂を析出、沈殿させた。デカンテーションにて上澄みを除き、残渣にクロロホルム500mlを加えて溶かした。これをn−ヘキサン7.5リットルに攪拌下で滴下し、析出、沈殿させ、デカンテーションにて上澄みを除き、残渣を減圧乾燥した。これをメタノール300mlで洗浄し、さらに水300mlで洗浄した。これを減圧乾燥し、スルホン酸メチルエステル基を有する重合体を得た。
尚、スルホン酸のエステル化率は、酸価の測定により85%であることを確認した。
(ブラックトナーの製造例8)
ブラックトナーの製造例1において、極性樹脂No.1を極性樹脂No.4(表1記載)に変更し、カーボンブラックNo.1をカーボンブラックNo.3(表2記載)に変更し、添加部数も7.5部に変更し、70℃の反応温度を67℃に変更することを除いて、ブラックトナーの製造例1と同様にしてブラックトナーNo.8を製造した。得られたブラックトナーNo.8の物性を表3及び4に示す。
(ブラックトナーの製造例9)
ブラックトナーの製造例1において、極性樹脂No.1を極性樹脂No.5(表1記載)に変更し、添加部数を25部に変更することを除いて、ブラックトナーの製造例1と同様にしてブラックトナーNo.9を製造した。得られたブラックトナーNo.9の物性を表3及び4に示す。
(ブラックトナーの製造例10)
ブラックトナーの製造例1において、極性樹脂No.1を極性樹脂No.6(表1記載)に変更し、70℃の反応温度を73℃に変更することを除いて、ブラックトナーの製造例1と同様にしてブラックトナーNo.10を製造した。得られたブラックトナーNo.10の物性を表3及び4に示す。
(ブラックトナーの製造例11)
ブラックトナーの製造例1において、極性樹脂No.1を極性樹脂No.7(表1記載)に変更し、添加部数を32部に変更し、カーボンブラックNo.1をカーボンブラックNo.5(表2記載)に変更し、添加部数も7.0部に変更することを除いて、ブラックトナーの製造例1と同様にしてブラックトナーNo.11を製造した。得られたブラックトナーNo.11の物性を表3及び4に示す。
(ブラックトナーの製造例12)
ブラックトナーの製造例1において、極性樹脂No.1を極性樹脂No.8(表1記載)に変更し、添加部数を8部に変更することを除いて、ブラックトナーの製造例1と同様にしてブラックトナーNo.12を製造した。得られたブラックトナーNo.12の物性を表3及び4に示す。
(ブラックトナーの製造例13)
ブラックトナーの製造例1において、極性樹脂No.1を極性樹脂No.9(表1記載)に変更することを除いて、ブラックトナーの製造例1と同様にしてブラックトナーNo.13を製造した。得られたブラックトナーNo.13の物性を表3及び4に示す。
(ブラックトナーの製造例14)
ブラックトナーの製造例1において、極性樹脂No.1を極性樹脂No.10(表1記載)に変更することを除いて、ブラックトナーの製造例1と同様にしてブラックトナーNo.14を製造した。得られたブラックトナーNo.14の物性を表3及び4に示す。
(ブラックトナーの製造例15)
ブラックトナーの製造例1において、極性樹脂No.1を極性樹脂No.11(表1記載)に変更することを除いて、ブラックトナーの製造例1と同様にしてブラックトナーNo.15を製造した。得られたブラックトナーNo.15の物性を表3及び4に示す。
(ブラックトナーの製造例16)
ブラックトナーの製造例1において、極性樹脂No.1を極性樹脂No.12(表1記載)に変更することを除いて、ブラックトナーの製造例1と同様にしてブラックトナーNo.16を製造した。得られたブラックトナーNo.16の物性を表3及び4に示す。
(ブラックトナーの製造例17)
ブラックトナーの製造例1において、FCA1001NS(藤倉化成社製)を添加しないことを除いて、ブラックトナーの製造例1と同様にしてブラックトナーNo.17を製造した。得られたブラックトナーNo.17の物性を表3及び4に示す。
(ブラックトナーの製造例18)
スチレン/n−ブチルアクリレート共重合体(質量比72/28) 70部
(Mp=25000 Mn=8500 Mw/Mn=3.0 Tg=54℃)
スチレン/n−ブチルアクリレート共重合体(質量比80/20) 30部
(Mp=85000 Mn=50000 Mw/Mn=3.0 Tg=64℃)
ボントロンE−88(オリエント化学工業(株)製) 2.0部
カーボンブラックNo.1(表2記載) 6.5部
エステルワックス(吸熱ピーク=72℃,半値幅=4℃) 5.0部
上記成分をバンバリーミキサーにより溶融混練し、冷却後、ジェットミルにより微粉砕を行い、さらに、機械的衝撃力を利用する表面改質装置を用いて球形化処理を行い、球形の粉砕原料を得た。次に、得られた粉砕原料を分級機により分級して、平均円形度は0.949、重量平均粒径6.5μmのブラックトナー粒子(18)を得た。
上記ブラックトナー粒子(18)100部に対して、流動性向上剤として、ジメチルシリコーンオイル(20質量%)で処理され、トナー粒子と同極性(負極性)に帯電する疎水性シリカ微粉体(1次粒子径:7nm、BET比表面積:130m2/g)1.7部をヘンシェルミキサー(三井三池社製)で3000r/minで15分間混合してブラックトナーNo.18を得た。
ブラックトナーNo.18の物性を表3及び4に示す。
(ブラックトナーの製造例19)
ブラックトナーの製造例1において、造粒工程の30分時に添加する追加の開始剤量を2.5部に変更することを除いて、ブラックトナーの製造例1と同様にしてブラックトナーNo.19を製造した。得られたブラックトナーNo.19の物性を表3及び4に示す。
(ブラックトナーの製造例20)
ブラックトナーの製造例1において、ジビニルベンゼンの変わりにエチレングリコールジメタクリレートを添加することを除いて、ブラックトナーの製造例1と同様にしてブラックトナーNo.20を製造した。得られたブラックトナーNo.20の物性を表3及び4に示す。
(ブラックトナーの製造例21)
ブラックトナーの製造例1において、造粒工程の30分時に添加する追加の開始剤をパーブチルNHP(10時間半減期温度50.6℃(日本油脂製))に変更することを除いて、ブラックトナーの製造例1と同様にしてブラックトナーNo.21を製造した。得られたブラックトナーNo.21の物性を表3及び4に示す。
(ブラックトナーの製造例22)
ブラックトナーの製造例1において、溶解工程に新たにt−ドデシルメルカプタンを0.2部添加することを除いて、ブラックトナーの製造例1と同様にしてブラックトナーNo.22を製造した。得られたブラックトナーNo.22の物性を表3及び4に示す。
(ブラックトナーの製造例23)
ブラックトナーの製造例1において、ジビニルベンゼンの変わりにトリメチロールプロパントリメタクリレートを添加することを除いて、ブラックトナーの製造例1と同様にしてブラックトナーNo.23を製造した。得られたブラックトナーNo.23の物性を表3及び4に示す。
(ブラックトナーの製造例24)
ブラックトナーの製造例1において、溶解工程に新たにt−ドデシルメルカプタンを0.2部添加し、反応温度を65℃に変更し、造粒工程30分時に追加で添加する開始剤を添加しないことを除いて、ブラックトナーの製造例1と同様にしてブラックトナーNo.24を製造した。得られたブラックトナーNo.24の物性を表3及び4に示す。
(ブラックトナーの製造例25)
ブラックトナーの製造例1において、極性樹脂No.1の添加部数を15部に変更し、カーボンブラックNo.1をカーボンブラックNo.2(表2記載)に変更し、ジビニルベンゼンの添加部数を0.15部に変更することを除いて、ブラックトナーの製造例1と同様にしてブラックトナーNo.25を製造した。得られたブラックトナーNo.25の物性を表3及び4に示す。
(ブラックトナーの製造例26)
ブラックトナーの製造例1において、ジビニルベンゼンの添加部数を0.55部に変更することを除いて、ブラックトナーの製造例1と同様にしてブラックトナーNo.26を製造した。得られたブラックトナーNo.26の物性を表3及び4に示す。
(ブラックトナーの製造例27)
ブラックトナーの製造例1において、極性樹脂No.1の添加部数を10部に変更し、カーボンブラックNo.1をカーボンブラックNo.4(表2記載)に変更し、ジビニルベンゼンの添加部数を0.15部に変更することを除いて、ブラックトナーの製造例1と同様にしてブラックトナーNo.27を製造した。得られたブラックトナーNo.27の物性を表3及び4に示す。
(ブラックトナーの製造例28)
ブラックトナーの製造例1において、ジビニルベンゼンの添加部数を0.65部に変更することを除いて、ブラックトナーの製造例1と同様にしてブラックトナーNo.28を製造した。得られたブラックトナーNo.28の物性を表3及び4に示す。
(ブラックトナーの製造例29)
ブラックトナーの製造例1において、スチレンの添加量を69部、n−ブチルアクリレートの添加量を31部に変更することを除いて、ブラックトナーの製造例1と同様にしてブラックトナーNo.29を製造した。得られたブラックトナーNo.29の物性を表3及び4に示す。
(ブラックトナーの製造例30)
ブラックトナーの製造例1において、スチレンの添加量を73部、n−ブチルアクリレートの添加量を27部に変更することを除いて、ブラックトナーの製造例1と同様にしてブラックトナーNo.30を製造した。得られたブラックトナーNo.30の物性を表3及び4に示す。
(ブラックトナーの製造例31)
ブラックトナーの製造例1において、スチレンの添加量を68部、n−ブチルアクリレートの添加量を32部に変更することを除いて、ブラックトナーの製造例1と同様にしてブラックトナーNo.31を製造した。得られたブラックトナーNo.31の物性を表3及び4に示す。
(ブラックトナーの製造例32)
ブラックトナーの製造例1において、スチレンの添加量を74部、n−ブチルアクリレートの添加量を26部に変更することを除いて、ブラックトナーの製造例1と同様にしてブラックトナーNo.32を製造した。得られたブラックトナーNo.32の物性を表3及び4に示す。
(ブラックトナーの製造例33)
ブラックトナーの製造例1において、カーボンブラックNo.1をカーボンブラックNo.3(表2記載)に変更し、ジビニルベンゼンの添加部数を0.25部に変更することを除いて、ブラックトナーの製造例1と同様にしてブラックトナーNo.33を製造した。得られたブラックトナーNo.33の物性を表3及び4に示す。
(ブラックトナーの製造例34)
ブラックトナーの製造例1において、極性樹脂No.1を極性樹脂No.13(表1記載)に変更することを除いて、ブラックトナーの製造例1と同様にしてブラックトナーNo.34を製造した。得られたブラックトナーNo.34の物性を表3及び4に示す。
(ブラックトナーの製造例35)
ブラックトナーの製造例1において、極性樹脂No.1を極性樹脂No.14(表1記載)に変更することを除いて、ブラックトナーの製造例1と同様にしてブラックトナーNo.35を製造した。得られたブラックトナーNo.35の物性を表3及び4に示す。
(ブラックトナーの製造例36)
ブラックトナーの製造例1において、カーボンブラックNo.1をカーボンブラックNo.6(表2記載)に変更し、ジビニルベンゼンの添加部数を0.05部に変更することを除いて、ブラックトナーの製造例1と同様にしてブラックトナーNo.36を製造した。得られたブラックトナーNo.36の物性を表3及び4に示す。
(ブラックトナーの製造例37)
ブラックトナーの製造例1において、ジビニルベンゼンの添加部数を0.75部に変更することを除いて、ブラックトナーの製造例1と同様にしてブラックトナーNo.37を製造した。得られたブラックトナーNo.37の物性を表3及び4に示す。
(ブラックトナーの製造例38)
ブラックトナーの製造例1において、スチレンの添加量を67部、n−ブチルアクリレートの添加量を33部に変更することを除いて、ブラックトナーの製造例1と同様にしてブラックトナーNo.38を製造した。得られたブラックトナーNo.38の物性を表3及び4に示す。
(ブラックトナーの製造例39)
ブラックトナーの製造例1において、スチレンの添加量を75部、n−ブチルアクリレートの添加量を25部に変更することを除いて、ブラックトナーの製造例1と同様にしてブラックトナーNo.39を製造した。得られたブラックトナーNo.39の物性を表3及び4に示す。
(ブラックトナーの製造例40)
ブラックトナーの製造例1において、造粒工程の30分時に添加する追加の開始剤をパーブチルNHP(10時間半減期温度50.6℃(日本油脂製))に変更し、添加タイミングを造粒工程の40分時に変更することを除いて、ブラックトナーの製造例1と同様にしてブラックトナーNo.40を製造した。得られたブラックトナーNo.40の物性を表3及び4に示す。
<実施例1乃至33、比較例1乃至7>
ブラックトナーの製造例1乃至33で製造したブラックトナーを、各々下記項目の基準に即して評価を行った。実施例1乃至33のブラックトナーは低温定着特性と現像耐久特性に優れた効果を発揮したのに対して、比較例1乃至7のブラックトナーは低温定着性と現像耐久特性のバランスに乏しい結果であった。評価結果を表5に示す。
以下に本発明の画像評価方法および評価基準について説明する。
画像形成装置としては市販のレーザプリンタであるLBP−5400(キヤノン製)の改造機を用い、以下特に断りの無い限り、温度23℃、相対湿度50%の環境下において、評価紙としてXerox社製business4200(75g/m2)を用いて行った。
尚、評価機の改造点は、評価機本体のギアおよびソフトウエアを変更することにより、プロセススピードが220mm/secとなるように改造した。
評価に用いるカートリッジはブラックカートリッジを用いた。すなわち、市販のブラックカートリッジから製品トナーを抜き取り、エアーブローにて内部を清掃した後、本発明によるトナーを200g充填して評価を行った。なお、トナーキットの評価においては、マゼンタ、イエロー、シアンの各ステーションにそれぞれ対応した色の評価トナーを200g充填したマゼンタ、イエロー、およびシアンカートリッジを挿入して、フルカラー出力による定着画像の評価を行った。
低温定着性
上記で説明したLBP5400(キヤノン社製)の改造機を用い、ファーストプリントアウトタイムを20秒に設定し、10mm×10mmのベタ画像(トナー載り量0.50mg/cm2)をXerox社製Business4200(75g/m2)上に出力し、安定した定着画像が得られる最低定着可能温度を下記基準にて評価した。尚、本発明の安定した定着画像とは、得られた定着画像濃度と、定着画像を50g/cm2の荷重をかけたシルボン紙で5回摺擦した後の画像濃度を測定し、濃度低下率が10%以下の定着状態と定義する。
A:最低定着可能温度が150℃以上160℃以下で、安定した定着画像が得られる
B:最低定着可能温度が160℃より高く170℃以下で、安定した定着画像が得られる
C:最低定着可能温度が170℃より高く190℃以下で、安定した定着画像が得られる
D:最低定着可能温度が190℃より高い、又は定着可能温度を有さない
(2)ベタ黒再現性
上記で説明したLBP5400(キヤノン社製)の改造機を用い、全面ベタ黒画像(先端余白:5mm、トナー載り量0.50mg/cm2)をXerox社製Business4200(75g/m2)上に最大グロスを示す定着温度で出力し、定着画像内のベタ黒再現性を以下の目視基準により評価した。
A:ベタ黒画像の濃度及び明度が鮮やかに均一であり、全く問題無いレベル。
B:ベタ黒画像の明度ムラ又は明度ムラが僅かに観察できるが、実用上問題無いレベル。
C:ベタ黒画像の濃淡ムラ及び明度のムラが確認されるが、画像濃度は問題無いレベル。
D:ベタ黒画像の濃度ムラ及び明度ムラが非常に目立ち、全面において紙繊維が透けて見える濃度低下を伴うレベル。
(3)定着グロス
ベタ全域画像(先端余白:5mm、トナー載り量0.50mg/cm2)をXerox社製business4200(75g/m2)上に、設定温調を170℃、プロセススピードを100mm/secに変更して出力し、定着画像内を9等分した各区画の75°グロスを測定し、平均値を求めて下記基準により評価した。なお、本発明に使用した光沢度測定器は、日本電色工業(株)製のPG−3D(入射角θ=75°)を使用し、標準面は光沢度96.9の黒色ガラスを使用した。
A:75°グロス平均値 23.0以上
B:75°グロス平均値 18.0以上23.0未満
C:75°グロス平均値 13.0以上18.0未満
D:75°グロス平均値 13.0未満
(4)定着安定性
上記で説明したLBP5400(キヤノン社製)の改造機を用い、評価紙にXerox社製business4200(75g/m2)を用いたときの最低定着可能温度から、高温域におけるオフセットが発生する温度までを定着可能温度領域と定義し、以下の基準により定着の安定性を評価した。尚、オフセット発生温度は、最低定着可能温度から順に5℃ずつ設定温調を上げていき、先端余白5mmの箇所に10mm×160mmの16階調の横帯グラデーション画像を出力し、オフセットの発生を目視で確認した。
A:定着可能温度域が50℃以上
B:定着可能温度域が40℃以上50℃未満
C:定着可能温度域が30℃以上40℃未満
D:定着可能温度域が30℃未満
(5)画像カブリ
上記で説明したLBP5400(キヤノン社製)の改造機を用い、耐久試験を行うことによりトナーの耐久性を評価した(プロセススピード220mm/sec,スリーブ周速330mm/secに設定)。
耐久試験の条件は、高温高湿環境(30℃,80%RH)、常温常湿環境(23℃,50%RH)、低温低湿環境(15℃,10%RH)の各環境下において、印字比率が2%のオリジナル画像を1日に3000枚のプリントアウトを行い、4日間で合計12000枚の出力を行った。なお、評価のタイミングは1000枚おきと、各評価日の最初の1枚目においてべた白画像を出力して、下記評価基準により行った。
「REFLECTMETER MODEL TC−6DS」(東京電色社製)を用いて、標準紙とプリントアウト画像の白地部分の反射率を測定して、下記式によりカブリ(反射率;%)を算出した。フィルターは、グリーンフィルターを装着して測定した。
なお、評価基準は耐久を通しての最悪値を以下の基準により判断した。
A:非常に良好 1.0%未満
B:良好 1.0%以上乃至2.0%未満
C:実用上問題なし 2.0%以上乃至3.0%未満
D:実用上問題あり 3.0%以上
カブリ(反射率;%)=(標準紙の反射率;%)−(サンプルの反射率;%)
(6)ハーフトーン画像再現性
転写紙の搬送方向に対して、画像濃度が後述するマクベス反射濃度計の濃度で0.4・0.6・0.8・1.2を示すハーフトーンの横帯画像が並べられたオリジナルチャートを出力して、この画像を目視にて観察し、ドットの再現性と、現像ブレードの汚染により発生する搬送方向に沿った縦スジの有無を以下の基準に基づき評価した。
尚、耐久条件及びサンプリングのタイミングは、上記(5)画像カブリの評価に従って行った。
A:全てのハーフトーン画像が鮮やかに均一であり、ドットを高精度で再現している。
B:一部のハーフトーン画像でわずかなドットの乱れが確認されるが、ほとんど気になら ないレベル。
C:一部のハーフトーン画像上でドットの乱れが確認されるが、実用画像上では目立ちに くいレベル。
D:全てのハーフトーン画像上のドット再現性が悪く、ガサついた印象の画像であったり 、現像ブレード汚染に起因する縦スジ状の画像欠陥が目立つ等、実用画像の品質を大 きく損なうレベル。
(7)ベタ濃度安定性評価
Xerox社製business4200(75g/m2)を用いて、画像を縦・横で3分割ずつ(計9分割)したときの中心にそれぞれ20mm×20mmのベタ黒パッチを有するオリジナル画像を出力し、その9点平均濃度の耐久試験による変化度合いをベタ濃度安定性として評価した。
尚、画像濃度の測定は、「マクベス反射濃度計 RD918」(マクベス社製)を用いて、原稿濃度が0.00の白地部分の画像に対する相対濃度を測定した。
また、耐久条件及びサンプリングのタイミングは上記(5)画像カブリの評価に従って行い、初期濃度に対する最大濃度差を以下の基準により評価した。
A:非常に良好 0.10未満
B:良好 0.10以上0.20未満
C:実用上問題なし 0.20以上0.30未満
D:実用上問題あり 0.30以上
以下、トナーキットの評価基準を説明する。
(8)フルカラートナーキットの定着安定性評価
上記で説明したLBP5400(キヤノン社製)の改造機を用い、評価紙にXerox社製business4200(75g/m2)を用いたときの各色の最低定着可能温度と、各色の高温域におけるオフセット発生温度を測定し、全てのカラートナーにおいて定着が可能である温度領域を定着可能温度域と定義し、以下の基準によりフルカラートナーキットの定着安定性を評価した。尚、オフセット発生温度は、最低定着可能温度から順に5℃ずつ設定温調を上げていき、先端余白5mmの箇所に10mm×160mmの16階調の横帯グラデーション画像を出力し、オフセットの発生を目視で確認した。
A:定着可能温度域が50℃以上
B:定着可能温度域が40℃以上50℃未満
C:定着可能温度域が30℃以上40℃未満
D:定着可能温度域が30℃未満
(9)フルカラートナーキットのベタ画像再現性
上記で説明したLBP5400(キヤノン社製)の改造機を用い、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各単色ベタ画像と、レッド、グリーン、ブルーの各200%の2次色ベタ画像を一面に配したオリジナル画像を出力し、カラー画像が最も高いグロスを示す定着温度においてベタ定着品質を以下の目視基準により評価した。
A:各色ベタ画像の濃度及び明度が鮮やかに均一であり、カラーバランスに優れた定着品 質を示す。
B:色トナー及びブラックトナーのいずれかのベタ画像において、濃度ムラ又は明度ムラ が僅かに観察できるが、実用上問題無いレベル。
C:色トナー及びブラックトナーのいずれかのベタ画像において、濃淡ムラ及び明度のム ラが確認されるが、画像濃度差は気になら無いレベル。
D:色トナー及びブラックトナーのいずれかのベタ画像において、濃度ムラ及び明度ムラ が非常に目立つレベルであり、特にブラックトナーの濃度ムラ及び明度ムラが際立っ て悪いレベル。
(10)フルカラートナーキットのグロス安定性
上記で説明したLBP5400(キヤノン社製)の改造機を用い、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各単色ベタ画像と、レッド、グリーン、ブルーの各200%の2次色ベタ画像を一面に配したオリジナル画像を出力し、定着画像内の75°グロスの最大値と最小値を測定し、その差をフルカラー定着画像のグロス安定性と定義し、下記基準により評価した。なお、本発明に使用した光沢度測定器は、日本電色工業(株)製のPG−3D(入射角θ=75°)を使用し、標準面は光沢度96.9の黒色ガラスを使用した。
A:グロス差2.0未満
B:グロス差2.0以上4.0未満
C:グロス差4.0以上6.0未満
D:グロス差6.0以上
(イエロートナーの製造例1)
ブラックトナーの製造例1において、添加するカーボンブラックをC.I.ピグメントイエロー74に変更し、造粒工程で添加する追加の開始剤を添加しないことを除いて、ブラックトナーの製造例1と同様にしてイエロートナーNo.1(Y−1)を製造した。得られたイエロートーNo.1の物性を表6に示す。
(マゼンタトナーの製造例1)
ブラックトナーの製造例1において、添加するカーボンブラックをC.I.ピグメンレッド122に変更し、造粒工程で添加する追加の開始剤を添加しないことを除いて、ブラックトナーの製造例1と同様にしてマゼンタトナーNo.1(M−1)を製造した。得られたマゼンタトーNo.1の物性を表6に示す。
(シアントナーの製造例1)
ブラックトナーの製造例1において、添加するカーボンブラックをC.I.ピグメントブルー15:3に変更し、造粒工程で添加する追加の開始剤を添加しないことを除いて、ブラックトナーの製造例1と同様にしてシアントナーNo.1(C−1)を製造した。得られたシアントーNo.1の物性を表6に示す。
(イエロートナーの製造例2)
イエロートナーの製造例1において、スチレンの添加量を75部、n−ブチルアクリレートの添加量を25部に変更することを除いて、イエロートナーの製造例1と同様にしてイエロートナーNo.2(Y−2)を製造した。得られたイエロートナーNo.2の物性を表6に示す。
(マゼンタトナーの製造例2)
マゼンタトナーの製造例1において、スチレンの添加量を75部、n−ブチルアクリレートの添加量を25部に変更することを除いて、マゼンタトナーの製造例1と同様にしてマゼンタトナーNo.2(M−2)を製造した。得られたマゼンタトナーNo.2の物性を表6に示す。
(シアントナーの製造例2)
シアントナーの製造例1において、スチレンの添加量を75部、n−ブチルアクリレートの添加量を25部に変更することを除いて、シアントナーの製造例1と同様にしてシアントナーNo.2(C−2)を製造した。得られたシアントナーNo.2の物性を表6に示す。
(イエロートナーの製造例3)
イエロートナーの製造例1において、スチレンの添加量を68部、n−ブチルアクリレートの添加量を32部に変更することを除いて、イエロートナーの製造例1と同様にしてイエロートナーNo.3(Y−3)を製造した。得られたイエロートナーNo.3の物性を表6に示す。
(マゼンタトナーの製造例3)
マゼンタトナーの製造例1において、スチレンの添加量を68部、n−ブチルアクリレートの添加量を32部に変更することを除いて、マゼンタトナーの製造例1と同様にしてマゼンタトナーNo.3(M−3)を製造した。得られたマゼンタトナーNo.3の物性を表6に示す。
(シアントナーの製造例3)
シアントナーの製造例1において、スチレンの添加量を68部、n−ブチルアクリレートの添加量を32部に変更することを除いて、シアントナーの製造例1と同様にしてシアントナーNo.3(C−3)を製造した。得られたシアントナーNo.3の物性を表6に示す。
(イエロートナーの製造例4)
イエロートナーの製造例1において、スチレンの添加量を73部、n−ブチルアクリレートの添加量を27部に変更することを除いて、イエロートナーの製造例1と同様にしてイエロートナーNo.4(Y−4)を製造した。得られたイエロートナーNo.4の物性を表6に示す。
(マゼンタトナーの製造例4)
マゼンタトナーの製造例1において、スチレンの添加量を73部、n−ブチルアクリレートの添加量を27部に変更することを除いて、マゼンタトナーの製造例1と同様にしてマゼンタトナーNo.4(M−4)を製造した。得られたマゼンタトナーNo.3の物性を表6に示す。
(シアントナーの製造例4)
シアントナーの製造例1において、スチレンの添加量を73部、n−ブチルアクリレートの添加量を27部に変更することを除いて、シアントナーの製造例1と同様にしてシアントナーNo.4(C−4)を製造した。得られたシアントナーNo.4の物性を表6に示す。
<実施例34乃至36及び比較例8>
ブラックトナーの製造例1、28、25で製造したブラックトナーと、イエロー・マゼンタ・シアンの各トナーの製造例1乃至3で製造したカラートナーをそれぞれ対応色のカートリッジに詰め替えて、表6に示す組み合わせのトナーキットとして、フルカラー定着画像品質を下記基準に即して評価を行った。
実施例34のトナーキットは、安定した定着領域と、ベタ画像品質及びグロスバランスに優れた効果を発揮した。実施例35、36のトナーキットにおいても概ね優れたフルカラー定着画像品質を示したのに対して、比較例8のトナーキットはカラートナーとブラックトナーの最適定着温度域がずれることにより、ブラックトナーのベタ黒画像が濃度ムラ及び明度ムラの目立つ問題を生じた。評価結果を表7に示す。