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JP2009250307A - 変速装置及び自動二輪車 - Google Patents

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Abstract

【課題】変速時のギヤシフト操作部材の操作フィーリングを良好にさせながら、組立て工数を削減し、更に汎用性を持たせることが可能な変速装置を提供する。
【解決手段】シフト指示により作動する変速ペダル56とシフトスピンドル61との間に、シフト操作の操作力を伝達するシフトリンク機構62が設けられ、このシフトリンク機構62上に、弾発部材としての圧縮コイルばねを介して操作力を伝達するロストモーション機構63が設けられる。
【選択図】図1

Description

本発明は、変速装置の改良に関するものである。
自動二輪車における変速装置は、運転者による変速ペダルの操作又はシフトアクチュエータによってシフトドラムを回転させることでシフトフォークを介して変速歯車を軸方向に移動させ、変速歯車の側面に設けられたドグクラッチの凹凸を嵌合させることにより変速を行うものである。
このような変速装置では、ドグクラッチの凸部が、凹部に嵌合する前に凹部以外の部分に当たる、いわゆる、ドグ当たりが発生することがあり、このドグ当たりが発生すると、変速ペダルの操作フィーリングに影響を与えることがある。
このような変速ペダルの操作フィーリングを改善したものに特許文献1、特許文献2がある。
特許文献1の第1図〜第4図によれば、ペダル7の操作によって回動する変速軸5上に、ねじりコイルばねからなる加圧ばね10を備えたロストモーション機構を設けることで、ドグ当たりのときでもペダル7をストロークさせることが可能であり、ドグクラッチの凸部が凹部が合えば、加圧ばね10の弾性力によってドグクラッチの凸部が凹部に嵌合する。
特許文献2では、変速操作をシフトアクチュエータによって行わせるものであり、図5に示されるように、ドグ当たり時にシフトアクチュエータとしての電動モータ54への負担を軽減するために、電動モータ54の駆動力をコイルばね70を介してシフトドラム48へ伝達するロストモーション機構67を設けている。
実開平1−116240号公報 特開平5−39865号公報
上記特許文献1及び特許文献2では、ロストモーション機構を設けると、シフトドラム周りにねじりコイルばね等の部品が増え、組立て工数の増加が考えられる。更に、ロストモーション機構を設けない車両との間で変速装置の汎用性を持たせることが難しくなる。
本発明の目的は、変速時のギヤシフト操作部材の操作フィーリングを良好にさせながら、組立て工数の増加を抑え、更に汎用性を持たせることが可能な変速装置を提供することにある。
請求項1に係る発明は、シフトスピンドルを回動させ、このシフトスピンドルの回動に連動するシフトドラムによってシフトフォークを介して複数変速段の歯車列のうちの所定の歯車列の噛み合いを選択的に確立させる変速装置において、シフト指示により作動するシフト操作手段とシフトスピンドルとの間に、シフト操作の操作力を伝達する伝達機構が設けられ、この伝達機構上に、弾発部材を介して操作力を伝達するロストモーション機構が設けられることを特徴とする。
作用として、シフト指示によりシフト操作手段が動作すると、シフト操作の操作力が伝達機構上のロストモーション機構を介してシフトスピンドルに伝わり、シフトスピンドルが回動し、これにシフトドラムが連動し、シフトフォークを介して所定の歯車列の噛み合いが確立し、変速される。
このとき、所定の歯車列を構成する一方の歯車に設けられたドグクラッチの凸部と他方の歯車に設けられた凹部とが噛み合わず、凸部が凹部以外の部分にドグ当たりした場合にも、シフト操作手段の動作に伴ってロストモーション機構がシフト操作をロストするため、シフト操作が違和感なく行える。
ロストモーション機構は、シフトスピンドルとシフト操作手段との間の伝達機構上に設けられるため、変速装置のシフトドラム周りに特別に部品を追加せずに済み、伝達機構に対しての取付け、取外しが容易に行える。
従って、変速装置にロストモーション機構を備えていない車種であって、シフトスピンドルとギヤシフト操作部材との間に伝達機構が設けられた車種では、伝達機構上に容易にロストモーション機構が組み付けられる。
請求項2に係る発明は、伝達機構がリンク機構であり、リンク機構が、直線的に動作する直線可動部材を備え、この直線可動部材にロストモーション機構が設けられていることを特徴とする。
作用として、伝達機構の直線可動部材にロストモーション機構を設けることで、伝達機構にロストモーション機構の両端を連結するだけで組付けが可能になる。
請求項3に係る発明は、シフト操作手段が、運転者が操作する変速ペダルであることを特徴とする。
作用として、ロストモーション機構によって、変速ペダルの操作フィーリングが向上する。
請求項4に係る発明は、弾発部材が、シフトアップ操作時及びシフトダウン操作時に圧縮方向に作用されることを特徴とする。
作用として、シフトアップ操作時及びシフトダウン操作時に、弾発部材が圧縮方向に作用される構造であるため、弾発部材に操作力を伝える部材及び弾発部材から操作力を受ける部材を弾発部材に固定する必要がない。
請求項5に係る発明は、ロストモーション機構の作動時に、ロストモーション機構によってロストされる量を検出するシフト操作量検出部がロストモーション機構に設けられることを特徴とする。
作用として、シフト操作量検出部により、ロストモーション機構によってロストされるシフト操作量を検出することで、シフト操作量の検出が容易になる。
請求項6に係る発明は、ロストモーション機構が、一端がシフト操作手段及びシフトスピンドルの一方の伝達機構に連結されたケースと、このケース内に一端が挿入されたプルロッドと、ケース内に移動自在に挿入されるとともにケースの他端側で移動が規制されたばね受け片と、プルロッドの一端及びばね受け片のそれぞれの間に配置された弾発部材と、プルロッドの他端に軸方向に所定範囲で移動自在に取付けられるとともにばね受け片を押圧可能とされ、且つシフト操作手段及びシフトスピンドルの他方の伝達機構に連結されたプッシュプルロッドとから構成されていることを特徴とする。
作用として、例えば、ギヤをシフトアップするときに、プッシュプルロッドをケース側に押し込むことで、ケースを静止状態としながらもばね受け片を介して弾発部材を圧縮することが可能になり、ギヤをシフトダウンするときに、プッシュプルロッドを介してプルロッドを引いてケース側から引き出すことで、ケースを静止状態としながらもプルロッドの一端で弾発部材を圧縮することが可能になる。
請求項7に係る発明は、シフト操作量検出部が、ストロークセンサであり、このストロークセンサの検出値に基づいてシフト操作荷重を算出する算出手段を備えることを特徴とする。
作用として、ストロークセンサでストローク量を検出し、このストローク量の検出値に基づいて算出手段でシフト操作荷重を算出する。ロストモーション機構の一部の機能を用いて、シフト荷重が計測できるため、別途、荷重センサを設けなくてよい。
請求項8に係る発明は、請求項1〜請求項7のいずれか1項記載の変速装置が、自動二輪車に備えられていることを特徴とする。
作用として、ロストモーション機構を備えることで、自動二輪車に乗車した運転者が変速操作するときの操作フィーリングが向上する。また、変速装置の外部からロストモーション機構を自動二輪車に容易に取付けられる。
請求項1に係る発明では、シフト指示により作動するシフト操作手段とシフトスピンドルとの間に、シフト操作の操作力を伝達する伝達機構が設けられ、この伝達機構上に、弾発部材を介して操作力を伝達するロストモーション機構が設けられるので、シフト指示によりシフト操作手段が動作すると、シフト操作の操作力が伝達機構上のロストモーション機構を介してシフトスピンドルに伝わり、シフトスピンドルが回動し、これにシフトドラムが連動し、シフトフォークを介して所定の歯車列の噛み合いが確立し、変速される。
このとき、所定の歯車列を構成する一方の歯車に設けられたドグクラッチの凸部と他方の歯車に設けられた凹部とが噛み合わず、凸部が凹部以外の部分にドグ当たりした場合にも、シフト操作手段の動作に伴ってロストモーション機構がシフト操作をロストするため、シフト操作を違和感なく行うことができ、ドグ当たりが解消された際に、弾発部材によって蓄えられた付勢力によって確実に歯車列の噛み合いを確立することができる。
従って、ロストモーション機構によって変速時の操作フィーリングを向上させつつ、確実に変速することができる。
また、ロストモーション機構は、シフトスピンドルとシフト操作手段との間の伝達機構上に設けられるため、変速装置のシフトドラム周りに特別に部品を追加せずに済み、伝達機構に対しての取付け、取外しを容易に行うことができる。
従って、変速装置にロストモーション機構を備えていない車種であって、シフトスピンドルとシフト操作手段との間に伝達機構が設けられた車種では、伝達機構上に容易にロストモーション機構を組み付けることができる。
以上より、シフトドラム周りの設計に影響を与えることがなく、組立て工数を削減することができるとともに、ロストモーション機構を、もともと備えていない車種にも容易に組付けることができ、ロストモーション機構の汎用性を高めることができる。
請求項2に係る発明では、伝達機構はリンク機構であり、リンク機構が、直線的に動作する直線可動部材を備え、この直線可動部材にロストモーション機構が設けられているので、伝達機構にロストモーション機構の両端を連結するだけで組付けが可能になり、直線可動部材にロストモーション機構を容易に組付けることができる。
請求項3に係る発明では、シフト操作手段が、運転者が操作する変速ペダルであるので、ロストモーション機構によって変速ペダルの操作フィーリングを向上させることができる。
請求項4に係る発明では、弾発部材が、シフトアップ操作時及びシフトダウン操作時に圧縮方向に作用されるので、弾発部材に操作力を伝える部材及び弾発部材から操作力を受ける部材を弾発部材に固定する必要がなく、複雑な構造が不要になり、ロストモーション機構の部品数削減、小型化を図ることができる。
請求項5に係る発明では、ロストモーション機構の作動時に、ロストモーション機構によってロストされる量を検出するシフト操作量検出部がロストモーション機構に設けられるので、シフト操作量検出部により、ロストモーション機構によってロストされるシフト操作量を検出することで、シフト操作量を容易に検出することができる。
請求項6に係る発明では、ロストモーション機構が、一端がシフト操作手段及びシフトスピンドルの一方の伝達機構に連結されたケースと、このケース内に一端が挿入されたプルロッドと、ケース内に移動自在に挿入されるとともにケースの他端側で移動が規制されたばね受け片と、プルロッドの一端及びばね受け片のそれぞれの間に配置された弾発部材と、プルロッドの他端に軸方向に所定範囲で移動自在に取付けられるとともにばね受け片を押圧可能とされ、且つギヤシフト操作部材及びシフトスピンドルの他方の伝達機構に連結されたプッシュプルロッドとから構成されているので、例えば、ギヤをシフトアップするときに、プッシュプルロッドをケース側に押し込むことで、ケースを静止状態としながらもばね受け片を介して弾発部材を圧縮することが可能になり、ギヤをシフトダウンするときに、プッシュプルロッドを介してプルロッドを引いてケース側から引き出すことで、ケースを静止状態としながらもプルロッドの一端で弾発部材を圧縮することが可能になるため、簡単な構造でロストモーション機構を構成することができ、変速装置のコストを低減することができる。
請求項7に係る発明では、シフト操作量検出部が、ストロークセンサであり、このストロークセンサの検出値に基づいてシフト操作荷重を算出する算出手段を備えるので、ストロークセンサでストローク量を検出し、このストローク量の検出値に基づいて算出手段でシフト操作荷重を算出する。ロストモーション機構の一部の機能を用いて、シフト荷重が計測できるため、別途、荷重センサを設けなくてよく、コストを削減することができる。
請求項8に係る発明では、変速装置が自動二輪車に備えられているので、ロストモーション機構を備えることで、自動二輪車に乗車した運転者が変速操作するときの操作フィーリングを向上させることができる。
また、変速装置にロストモーション機構を備えていない自動二輪車にも、変速装置の外部からロストモーション機構を容易に組付けることができ、ロストモーション機構の汎用性を高めることができるとともに、ロストモーション機構を設けても自動二輪車の変速装置の組付け工数を削減することができる。
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
図1は本発明に係る自動二輪車用の変速装置を示す要部斜視図であり、変速装置10は、自動二輪車に搭載されるエンジンの後部に一体的に設けられ、エンジンのクランクケースの外側面に外部変速機構60を備える。
外部変速機構60は、クランクケースの左側面から側方に突出するシフトスピンドル61の先端部に取付けられたシフトリンク機構62と、このシフトリンク機構62の端部に連結された変速ペダル56と、変速ペダル56の操作フィーリングを向上させるためにシフトリンク機構62の途中に設けられたロストモーション機構63とからなる。なお、65はクランクケースからのシフトスピンドル61の突出部分の周囲を覆うスピンドルカバー、66は変速装置10の出力軸に設けられたドライブスプロケット及びこのドライブスプロケットに掛けられるチェーンの一部を覆うスプロケットカバーである。
シフトリンク機構62は、シフトスピンドル61の端部に取付けられたシフトアーム71と、このシフトアーム71に一端が連結ピン72を介して連結されるとともにロストモーション機構63が介在された直線状の上部リンク73と、クランクケースに設けられた支軸74と、この支軸74に回動自在に取付けられるとともに一端が上部リンク73の他端に連結ピン76を介して連結された中間アーム77と、この中間アーム77の他端に一端が連結ピン78を介して連結されるとともに他端が変速ペダル56に連結ピン81を介して連結された直線状の下部リンク82と、変速ペダル56を回動自在に支持するためにクランクケースに取付けられた支軸83とからなる。なお、符号86はロストモーション機構63に付設されたストロークセンサ87からの信号を受ける制御部としてのECUであり、ストロークセンサ87でのストローク量の検出値に基づいてシフト操作荷重を算出する。
上部リンク73は、ロストモーション機構63の上部に連結するアッパ連結リンク73aと、ロストモーション機構63の下部に連結するロア連結リンク73bとからなる。
ECU86は、ストロークセンサ87からのストローク信号を受け、このストローク信号に基づいてロストモーション機構63に備える圧縮コイルばね(不図示。詳細は後述する。)が上記のストローク量だけ圧縮されたときに発生する荷重(シフト操作荷重)を算出するために算出手段を備える。
図2は本発明に係る変速装置の要部を示す第1断面図であり、変速装置10は、後述する複数変速段の歯車列のうちの所定の歯車列の噛み合いを選択的に確立させるための変速操作機構90を備える。
変速操作機構90は、クランクケース27を構成する左側壁27aに複数のボルト92で取付けられたスピンドルカバー65と、スピンドルカバー65にニードルベアリング93を介して回転自在に取付けられるとともに先端部が左側壁27aに設けられた横穴27bに回転自在に挿入されたシフトスピンドル61と、このシフトスピンドル61にシフト機構95を介して連結されるとともにクランクケース27(詳しくは、左側壁27a及び中壁27b)にベアリング111,112を介して回転自在に取付けられたシフトドラム113と、このシフトドラム113の外周面に形成された複数の環状溝115〜117に一端部が挿入されるとともにクランクケース27に取付けられたシフトフォークシャフト121,122に回動自在及びスライド自在に取付けられたシフトフォーク124〜126とを備える。
図3は本発明に係る変速装置の要部を示す第2断面図であり、変速装置10は、クランクケース27の左側壁27a及び中壁27bにベアリング131,132を介して回転自在に取付けられたメインシャフト133と、このメインシャフト133に設けられた複数のメインシャフトギヤ135〜139からなるギヤ列141と、クランクケース27の左側壁27a及び中壁27bにベアリング143,144を介して回転自在に取付けられたカウンタシャフト146と、このカウンタシャフト146に設けられるとともにメインシャフトギヤ135〜139にそれぞれ噛み合うカウンタシャフトギヤ151〜156(メインシャフトギヤ137は、カウンタシャフトギヤ153,154と噛み合う)からなるギヤ列157と、カウンタシャフト146の端部にスプライン結合するとともにボルト161で取付けられたドライブスプロケット162とを備える。なお、163は後輪に動力を伝えるためにドライブスプロケット162に掛けられたチェーンである。
メインシャフト133は、一端部にドリブンギヤ165及び多板クラッチ166が取付けられ、クランクシャフト167に形成されたドライブギヤ167aにドリブンギヤ165が噛み合うことで、クランクシャフト167の回転に伴ってドリブンギヤ165が回転し、このドリブンギヤ165から多板クラッチ166を介してメインシャフト133に回転が伝わる。
メインシャフトギヤ135〜139のうち、メインシャフトギヤ136,137,138は、それぞれの側面にドグクラッチを構成する複数の凸部136a,137a,137b,138aを備え、メインシャフトギヤ137は、メインシャフト133にスプライン結合するとともに軸方向に移動自在とされ、シフトフォーク124(図3参照)の先端が挿入されるフォーク挿入溝137cが形成されている。
即ち、シフトフォーク124が軸方向に移動することにより、メインシャフトギヤ137も軸方向に移動し、凸部137aが、メインシャフトギヤ136の凸部136a間の凹部(ドグクラッチを構成する部分である。)に嵌合するか、又は凸部137bが、メインシャフトギヤ138の凸部138a間の凹部(ドグクラッチを構成する部分である。)に嵌合する。
カウンタシャフトギヤ151〜156のうち、カウンタシャフトギヤ152,155は側面にドグクラッチを構成する複数の凸部152a,152b、155a,155bを備え、カウンタシャフトギヤ151,153,154,156は側面にドグクラッチを構成する複数の凹部151a,153a,154a,156aを備える。
カウンタシャフトギヤ152は、カウンタシャフト146にスプライン結合するとともにシフトフォーク125(図3参照)の先端部が挿入されるフォーク挿入溝152cが形成されている。
即ち、シフトフォーク125が軸方向に移動することにより、カウンタシャフトギヤ152も軸方向に移動し、凸部152aが、カウンタシャフトギヤ151の凹部151aに嵌合するか、又は、凸部152bが、カウンタシャフトギヤ153の凹部153aに嵌合する。
カウンタシャフトギヤ155は、カウンタシャフト146にスプライン結合するとともにシフトフォーク126(図3参照)の先端部が挿入されるフォーク挿入溝155cが形成されている。
即ち、シフトフォーク126が軸方向に移動することにより、カウンタシャフトギヤ155も軸方向に移動し、凸部155aが、カウンタシャフトギヤ154の凹部154aに嵌合するか、又は、凸部155bが、カウンタシャフトギヤ156の凹部156aに嵌合する。
図4は本発明に係るロストモーション機構を示す断面図であり、ロストモーション機構63は、一端がアッパ連結リンク73a(図1参照)にねじ結合されて連結されるアジャストボルト171と、このアジャストボルト171の他端に底部172aがねじ結合された有底筒状のケース172と、このケース172内に移動自在に挿入されたプルロッド173と、このプルロッド173に嵌合されたカラー174と、プルロッド173の小径部173aに移動自在に嵌合されたばね受け片176と、このばね受け片176に当てられた複数のシム177と、プルロッド173の一端に設けられたフランジ173b及びシム177のそれぞれの間に設けられた圧縮コイルばね178と、ばね受け片176がケース172から外れるのを防止するためにケース172の開口部近傍の内面に設けられた環状溝172bに装着された止め輪181と、プルロッド173の小径部173aの端部に移動自在に嵌合するとともに一端がばね受け片176に当てられ、更にピン182でプルロッド173に連結されたプッシュプルロッド183と、ケース172の開口を覆うためにケース172の開口縁部及びプッシュプルロッド183のそれぞれの間に設けられたゴムブーツ184とからなる。
アジャストボルト171は、ロストモーション機構63の全長を調整する部品であり、これによって、異なった車種のリンク機構への組付けを容易に行うことができ、汎用性を高めることができる。なお、186,187はロックナットである。
ケース172は、底部172aに外形が六角柱状の六角形状部172cが一体に形成され、外周面に一体に側方突出部172dが形成され、この側方突出部172dに2本のボルト191,191(一方の符号191のみ示す。)でストロークセンサ87が取付けられている。
ストロークセンサ87は、その検出子87aの先端部が、プッシュプルロッド183に取付けられたストローク検出部材193の検出片193aに取付けられ、検出子87aが出入りすることで、プッシュプルロッド183の軸方向のストローク量が検出される。
プルロッド173は、小径部173aの端部に長穴173cが形成され、この長穴173cに、プッシュプルロッド183に取付けられたピン182が挿入されている。
従って、プッシュプルロッド183は、プルロッド173に対して長穴173cの上下の長さ分だけ軸方向に移動可能である。なお、195はケース172の底部172aとプルロッド173のフランジ173bとの間に設けられたワッシャである。
ばね受け片176は、プルロッド173の小径部173aに嵌合する筒部176aと、この筒部176aの端部に一体成形されたフランジ176bとからなり、フランジ176bと圧縮コイルばね178との間にシム177,177が挟まれている。
シム177は、その枚数を変更することで、圧縮コイルばね178のセット長を変更することが可能であり、圧縮コイルばね178のセット荷重を調整することができる。
このように、セット荷重を調整することで、変速ペダル56(図1参照)を操作したときの操作フィーリングを調整することができる。
また、圧縮コイルばね178のばね定数を変更することによっても上記のセット荷重を変更することができる。
プッシュプルロッド183は、有底筒状の部材であり、外周面に、端部大径部183a、中間部大径部183bが形成されるとともにピン挿入穴183c、183cが開けられ、底部183dに一体におねじ183eが形成されている。
上記の端部大径部183aの端面183fはばね受け片176に当てられ、中間部大径部183bに中間環状溝183gが形成され、ピン挿入穴183c,183cにピン182が圧入され、おねじ183eにストローク検出部材193の筒部193bの端部がねじ結合されている。
ゴムブーツ184は、筒状のものであり、一端に環状の厚肉部184aが形成されてケース172の開口部に形成された環状溝172fに嵌合され、他端は内側に入り込むように形成されてその先端に形成された厚肉部184bがプッシュプルロッド183の中間環状溝183gに嵌合されている。
以上に述べたロストモーション機構63の作用を次に説明する。
図5(a),(b)は本発明に係るロストモーション機構の作用を示す作用図である。
(a)において、ギヤをシフトアップする場合(即ち、変速ペダル56(図1参照)の先端部を足の甲で引き上げる場合)には、プッシュプルロッド183が、矢印Aで示すように、ケース172側に向けて押し上げられる。
この結果、プッシュプルロッド183が、ばね受け片176、シム177,177を介して圧縮コイルばね178の下端を押圧するため、圧縮コイルばね178は圧縮され、止め輪181の端面に当たっていたばね受け片176はストローク量S1だけ上方にストロークする。このストローク量S1は、プッシュプルロッド183からストローク検出部材193を介してストロークセンサ87で検出される。
このとき、プッシュプルロッド183の上昇に伴って、ピン182は、長穴173cの下端部から上方に移動するため、プッシュプルロッド183は、プルロッド173を静止させたままで移動することができる。
(b)において、ギヤをシフトダウンする場合(即ち、変速ペダル56(図1参照)の先端部を足の底で押し下げる場合)には、プッシュプルロッド183が、矢印Bで示すように、ケース172から離れるように押し下げられる。
この結果、プッシュプルロッド183が、長穴173cの下端部に位置するピン182を介してプルロッド173を下方へ引くため、プルロッド173のフランジ173bで圧縮コイルばね178の上端が圧縮され、フランジ173bは下方へストローク量S2だけストロークする。このストローク量S2は、プッシュプルロッド183からストローク検出部材193を介してストロークセンサ87で検出される。
以上の図1〜図3に示したように、シフトスピンドル61を回動させ、このシフトスピンドル61の回動に連動するシフトドラム113によってシフトフォーク124〜126を介して複数変速段の歯車列のうちの所定の歯車列の噛み合いを選択的に確立させる変速装置10において、シフト指示により作動するシフト操作手段としての変速ペダル56とシフトスピンドル61との間に、シフト操作の操作力を伝達する伝達機構としてのシフトリンク機構62が設けられ、このシフトリンク機構62上に、弾発部材としての圧縮コイルばね178を介して操作力を伝達するロストモーション機構63が設けられるので、シフト指示により変速ペダル56が動作すると、シフト操作の操作力がシフトリンク機構62上のロストモーション機構63を介してシフトスピンドル61に伝わり、シフトスピンドル61が回動し、これにシフトドラム113が連動し、シフトフォーク124〜126を介して所定の歯車列の噛み合いが確立し、変速される。
このとき、所定の歯車列を構成する一方の歯車に設けられたドグクラッチの凸部と他方の歯車に設けられた凹部とが噛み合わず、凸部が凹部以外の部分にドグ当たりした場合にも、変速ペダル56の動作に伴ってロストモーション機構63がシフト操作をロスト(lost:むだにする、効かなくする、吸収する)するため、シフト操作を違和感なく行うことができ、ドグ当たりが解消された際に、圧縮コイルばね178によって蓄えられた付勢力によって確実に歯車列の噛み合いを確立することができる。
従って、ロストモーション機構63によって変速時の操作フィーリングを向上させつつ、確実に変速することができる。
また、ロストモーション機構63は、シフトスピンドル61と変速ペダル56との間のシフトリンク機構62上に設けられるため、変速装置10のシフトドラム113周りに特別に部品を追加する必要がなく、シフトリンク機構62に対しての取付け、取外しを容易に行うことができる。
従って、変速装置10にロストモーション機構63を備えていない車種であって、シフトスピンドル61と変速ペダル56との間に伝達機構が設けられた車種では、伝達機構上に容易にロストモーション機構63を組み付けることができる。
以上より、シフトドラム113周りの設計に影響を与えることがなく、組立て工数を削減することができるとともに、ロストモーション機構63を、もともと備えていない車種にも容易に組付けることができ、ロストモーション機構63の汎用性を高めることができる。
また、伝達機構はシフトリンク機構62であり、シフトリンク機構62が、直線的に動作する直線可動部材としての上部リンク73を備え、この上部リンク73にロストモーション機構63が設けられているので、シフトリンク機構62にロストモーション機構63の両端を連結するだけで組付けが可能になり、上部リンク73にロストモーション機構63を容易に組付けることができる。
更に、シフト操作手段が、運転者が操作する変速ペダル56であるので、ロストモーション機構63によって変速ペダル56の操作フィーリングを向上させることができる。
以上の図5に示したように、圧縮コイルばね178が、シフトアップ操作時及びシフトダウン操作時に圧縮方向に作用される構造としたので、圧縮コイルばね178に操作力を伝える部材及び圧縮コイルばね178から操作力を受ける部材を圧縮コイルばね178に固定する必要がなく、複雑な構造が不要になり、圧縮コイルばね178の両端に、プルロッド173のフランジ173b、シム177を当てるだけで済み、ロストモーション機構63の部品数削減、小型化を図ることができる。
以上の図3、図4に示したように、ロストモーション機構63の作動時に、ロストモーション機構63によってロストされる量を検出するシフト操作量検出部としてのストロークセンサ87が設けられるので、ストロークセンサ87により、ロストモーション機構63によってロストされるシフト操作量を検出することで、シフト操作量を容易に検出することができる。
以上の図1、図4に示したように、ロストモーション機構63が、一端が変速ペダル56及びシフトスピンドル61の一方のシフトリンク機構62、詳しくは、上部リンク73のアッパ連結リンク73aにアジャストボルト171を介して連結されたケース172と、このケース172内に一端が挿入されたプルロッド173と、ケース172内に移動自在に挿入されるとともにケース172の他端側で移動が規制されたばね受け片176と、プルロッド173の一端(詳しくは、フランジ173b)及びばね受け片176(詳しくは、フランジ176b)のそれぞれの間に配置された圧縮コイルばね178(詳しくは、フランジ176bと圧縮コイルばね178との間にはシム177,177が介在する。)と、プルロッド173の他端に軸方向に所定範囲で移動自在(長穴173cの長さの範囲で移動自在)に取付けられるとともにばね受け片176を押圧可能とされ、且つ変速ペダル56及びシフトスピンドル61の他方のシフトリンク機構62、詳しくは、上部リンク73のロア連結リンク73bに連結されたプッシュプルロッド183とから構成されているので、例えば、ギヤをシフトアップするときに、プッシュプルロッド183をケース172側に押し込むことで、ケース172を静止状態としながらもばね受け片176を介して圧縮コイルばね178を圧縮することが可能になり、ギヤをシフトダウンするときに、プッシュプルロッド183を介してプルロッド173を引いてケース172側から引き出すことで、ケース172を静止状態としながらもプルロッド173の一端で圧縮コイルばね178を圧縮することが可能になるため、簡単な構造でロストモーション機構63を構成することができ、変速装置10のコストを低減することができる。
また、シフト操作量検出部が、ストロークセンサ87であり、このストロークセンサ87の検出値に基づいてシフト操作荷重を算出する算出手段としてのECU86(図1参照)を備えるので、ストロークセンサ87でストローク量を検出し、このストローク量の検出値に基づいてECU86でシフト操作荷重を算出する。従って、ロストモーション機構63の一部の機能を用いて、シフト荷重が計測できるため、別途、荷重センサを設けなくてよく、コストを削減することができる。
更に、変速装置10が自動二輪車に備えられているので、ロストモーション機構63を備えることで、自動二輪車に乗車した運転者が変速操作するときの操作フィーリングを向上させることができる。
また、変速装置10にロストモーション機構を備えていない自動二輪車にも、変速装置10の外部からロストモーション機構63を容易に組付けることができ、ロストモーション機構63の汎用性を高めることができるとともに、ロストモーション機構63を設けても自動二輪車の変速装置10の組付け工数を削減することができる。
図6は本発明に係るロストモーション機構の別実施形態を示す断面図であり、図4に示した実施形態と同一構成については同一符号を付け、詳細説明は省略する。
ロストモーション機構200は、アジャストボルト171と、このアジャストボルト171の他端に底部172aがねじ結合された有底筒状のケース202と、このケース202内に移動自在に挿入されたプルロッド203と、このプルロッド203に嵌合されたカラー204と、ばね受け片176と、複数のシム177と、圧縮コイルばね178と、止め輪181と、ピン182と、プッシュプルロッド183と、ゴムブーツ184と、ピン182の抜け止めをするためにプッシュプルロッド183に取付けられたピン抜け止め部材206と、プルロッド203の大径部203eに設けられた被検出部203fを検出するためにカラー204に設けられた磁気センサ222と、この磁気センサ222から外部に信号を取り出す出力用導線223,224とからなる。
プルロッド203の被検出部203fは、磁性材からなる大径部203eに複数の非磁性層203gが磁性層203hと軸方向に交互に配置された部分であり、カラー204に設けられた磁気センサ222に対してプルロッド203が下降したときに、プルロッド203のストローク量を磁気センサ222で検出することが可能になる。
また、ばね受け片176が上昇したときには、シム177を介してカラー204がプルロッド203に対して上昇するため、ばね受け片176のストローク量を検出することが可能になる。
上記の被検出部203f及び磁気センサ222は、ストロークセンサ227を構成するものである。
尚、本実施形態では、図1に示したように、ロストモーション機構63を、シフトリンク機構62の上部リンク73上に設けたが、これに限らず、シフトリンク機構62の下部リンク82上に設けてもよい。
また、シフト操作手段として、シフトペダルで説明したが、シフト操作手段は、シフトアクチュエータ(モータ)であってもよい。
本発明の変速装置は、二輪車に好適である。
本発明に係る変速装置を示す要部斜視図である。 本発明に係る変速装置の要部を示す第1断面図である。 本発明に係る変速装置の要部を示す第2断面図である。 本発明に係るロストモーション機構を示す断面図である。 本発明に係るロストモーション機構の作用を示す作用図である。 本発明に係るロストモーション機構の別実施形態を示す断面図である。
符号の説明
10…変速装置、56…シフト操作手段(変速ペダル)、61…シフトスピンドル、62…伝達機構(シフトリンク機構)、63,200…ロストモーション機構、73…直線可動部材(上部リンク)、86…算出手段(ECU)、87,227…シフト操作量検出部(ストロークセンサ)、113…シフトドラム、124〜126…シフトフォーク、141,157…歯車列(ギヤ列)、172…ケース、173…プルロッド、176…ばね受け片、178…弾発部材(圧縮コイルばね)、183…プッシュプルロッド。

Claims (8)

  1. シフトスピンドルを回動させ、このシフトスピンドルの回動に連動するシフトドラムによってシフトフォークを介して複数変速段の歯車列のうちの所定の歯車列の噛み合いを選択的に確立させる変速装置において、
    シフト指示により作動するシフト操作手段と前記シフトスピンドルとの間に、シフト操作の操作力を伝達する伝達機構が設けられ、この伝達機構上に、弾発部材を介して操作力を伝達するロストモーション機構が設けられることを特徴とする変速装置。
  2. 前記伝達機構はリンク機構であり、
    前記リンク機構は、直線的に動作する直線可動部材を備え、この直線可動部材にロストモーション機構が設けられていることを特徴とする請求項1記載の変速装置。
  3. 前記シフト操作手段は、運転者が操作する変速ペダルであることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の変速装置。
  4. 前記弾発部材は、シフトアップ操作時及びシフトダウン操作時に圧縮方向に作用されることを特徴とする請求項2又は請求項3のいずれか1項記載の変速装置。
  5. 前記ロストモーション機構の作動時に、ロストモーション機構によってロストされる量を検出するシフト操作量検出部がロストモーション機構に設けられることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項記載の変速装置。
  6. 前記ロストモーション機構は、一端が前記シフト操作手段及び前記シフトスピンドルの一方の伝達機構に連結されたケースと、このケース内に一端が挿入されたプルロッドと、ケース内に移動自在に挿入されるとともにケースの他端側で移動が規制されたばね受け片と、前記プルロッドの一端及びばね受け片のそれぞれの間に配置された弾発部材と、前記プルロッドの他端に軸方向に所定範囲で移動自在に取付けられるとともに前記ばね受け片を押圧可能とされ、且つ前記ギヤシフト操作部材及び前記シフトスピンドルの他方の前記伝達機構に連結されたプッシュプルロッドとから構成されていることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項記載の変速装置。
  7. 前記シフト操作量検出部は、ストロークセンサであり、このストロークセンサの検出値に基づいてシフト操作荷重を算出する算出手段を備えることを特徴とする請求項5又は請求項6記載の変速装置。
  8. 請求項1〜請求項7のいずれか1項記載の変速装置を備えることを特徴とする自動二輪車。
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