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JP2009120874A - 金属酸化物膜の製造方法 - Google Patents

金属酸化物膜の製造方法 Download PDF

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JP2009120874A JP2007293321A JP2007293321A JP2009120874A JP 2009120874 A JP2009120874 A JP 2009120874A JP 2007293321 A JP2007293321 A JP 2007293321A JP 2007293321 A JP2007293321 A JP 2007293321A JP 2009120874 A JP2009120874 A JP 2009120874A
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裕之 小堀
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Abstract

【課題】本発明は、結晶性の低い金属酸化物膜を得ることができる金属酸化物膜の製造方法を提供することを主目的とする。
【解決手段】本発明は、金属源として金属塩または有機金属化合物が溶解した金属酸化物膜形成用溶液を、金属酸化物膜形成温度以上の温度まで加熱した基材に接触させることにより、上記基材上に金属酸化物膜を得る金属酸化物膜の製造方法であって、上記金属酸化物膜形成用溶液が、金属酸化物膜の結晶性を低下させるホウ素化合物を含有することを特徴とする金属酸化物膜の製造方法を提供することにより、上記課題を解決する。
【選択図】図1

Description

本発明は、結晶性の低い金属酸化物膜を得ることができる金属酸化物膜の製造方法に関する。
従来より、金属酸化物膜は様々な優れた物性を示すことが知られており、その特性を活かして、透明導電膜、光学薄膜、燃料電池用電解質等、幅広い分野において使用されている。このような金属酸化物膜の製造方法としては、例えば、ゾルゲル法、スパッタリング法、CVD法、PVD法、印刷法、レーザーアブレーション法等が知られている(例えば特許文献1〜3)。
一方、このような金属酸化物膜を得る別の方法として、スプレー熱分解法が提案されている。スプレー熱分解法は、金属酸化物膜を構成する金属源を含有した溶液を、高温の基材に噴霧することにより金属酸化物膜を得る方法であり、通常500℃程度に加熱した基材を使用することから、瞬時に溶媒が蒸発し、金属源が熱分解反応を起こすため、短時間かつ簡略化された工程で金属酸化物膜を得ることができるという利点を有する。
このようなスプレー熱分解法の研究として、例えば、特許文献4においては、TiO前駆体を含む溶液に過酸化水素又はアルミニウムアセチルアセトナートを添加して原料溶液を調製し、500℃程度に高温保持された基材に上記原料溶液を間歇噴霧することによりTiO前駆体をTiOに熱分解し、基材上に多孔質のTiO薄膜を得る方法が開示されている。また、例えば、特許文献5は、特許文献4と同様に熱分解スプレー法により多孔質のTiO薄膜を得る方法であるが、原料溶液に可溶性チタン化合物を加えた溶液を添加することにより、TiO薄膜と基材との密着性向上を図るものであった。
スプレー熱分解法は、短時間かつ簡略化された工程で金属酸化物膜を得ることができる方法ではあるものの、得られる金属酸化物膜の結晶性は、材料の金属源の種類等に依存するため、所望の結晶性を有する金属酸化物膜を得ることができない場合があった。具体的には、金属酸化物膜の結晶性が高すぎると、例えば、金属酸化物膜と基材との密着性が劣るという問題があった。また、多孔質基材上に、結晶性の高い金属酸化物膜が形成されると、多孔質基材および金属酸化物膜の界面に粒界が発生する問題や、多孔質基材の形状に追従した金属酸化物膜を得ることが困難であるという問題があった。そのため、結晶性の低い金属酸化物膜を得ることができる方法が望まれていた。
なお、特許文献6においては、ゾルゲル法による金属酸化物膜の製造方法が開示されており、金属源としてフッ化ホウ素錯塩を用いることが開示されている。しかしながら、この技術は、金属酸化物膜の結晶性を向上させることを目的とするものであり、上記のように、金属酸化物膜の結晶性を低下させることを目的とするものではなかった。
特開2002−348665号公報 特開平4−361239号公報 特開2005−213105号公報 特開2002−145615号公報 特開2003−176130号公報 特開平8−183605号公報
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、結晶性の低い金属酸化物膜を得ることができる金属酸化物膜の製造方法を提供することを主目的とする。
上記課題を解決するために、本発明においては、金属源として金属塩または有機金属化合物が溶解した金属酸化物膜形成用溶液を、金属酸化物膜形成温度以上の温度まで加熱した基材に接触させることにより、上記基材上に金属酸化物膜を得る金属酸化物膜の製造方法であって、上記金属酸化物膜形成用溶液が、金属酸化物膜の結晶性を低下させるホウ素化合物を含有することを特徴とする金属酸化物膜の製造方法を提供する。
本発明によれば、金属酸化物膜形成用溶液にホウ素化合物を添加することにより、ホウ素化合物を添加していない金属酸化物膜形成用溶液を用いて得られた金属酸化物膜と比較して、結晶性の低い金属酸化物膜を得ることができる。
上記発明においては、上記ホウ素化合物が、ホウ酸であることが好ましい。より効果的に、金属酸化物膜の結晶性を低下させることができるからである。
上記発明においては、前記基材が、多孔質基材、または多孔質膜を備えた基材であることが好ましい。金属酸化物膜が形成される表面が多孔質である場合、金属酸化物の結晶が多孔質表面の特定のポイントから成長し易くなり、基材と金属酸化物膜との界面に粒界が発生し、電子伝導性や密着性が低下し易い。このような場合であっても、本発明においては、ホウ素化合物を金属酸化物膜形成用溶液に添加することで、金属酸化物膜の結晶性を低下させることができ、粒界の発生を抑制することができる。
上記発明においては、上記金属酸化物膜形成用溶液が、さらにドーピング金属源を含有することが好ましい。ドーピング金属源を用いることにより、機能性酸化物膜を得ることができるからである。
上記発明においては、上記金属源を構成する金属元素が、Mg、Al、Si、Ti、V、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Ag、In、Sn、Ce、Sm、Pb、La、Hf、Sc、Gd、Ca、Cr、Ga、Sr、Nb、Mo、Pd、Sb、Te、Ba、WまたはTaであることが好ましい。種々の用途に有用な金属酸化物膜を得ることができるからである。
また、本発明においては、金属源として金属塩または有機金属化合物が溶解した金属酸化物膜形成用溶液に添加され、金属酸化物膜の結晶性を低下させる結晶性低下材であって、ホウ素化合物からなることを特徴とする結晶性低下材を提供する。
本発明によれば、金属源を含有する金属酸化物膜形成用溶液に対して、ホウ素化合物を添加することにより、金属酸化物膜の結晶性を低下させることができる。
また、本発明においては、金属源として金属塩または有機金属化合物が溶解し、かつ、金属酸化物膜の結晶性を低下させるホウ素化合物を含有することを特徴とする金属酸化物膜形成用溶液を提供する。
本発明によれば、ホウ素化合物を添加した金属酸化物膜形成用溶液を用いることで、結晶性の低い金属酸化物膜を得ることができる。
本発明においては、結晶性の低い金属酸化物膜を容易に形成することができるという効果を奏する。
以下、本発明の金属酸化物膜の製造方法、結晶性低下材および金属酸化物膜形成用溶液について説明する。
A.金属酸化物膜の製造方法
まず、本発明の金属酸化物膜の製造方法について説明する。本発明の金属酸化物膜の製造方法は、金属源として金属塩または有機金属化合物が溶解した金属酸化物膜形成用溶液を、金属酸化物膜形成温度以上の温度まで加熱した基材に接触させることにより、上記基材上に金属酸化物膜を得る金属酸化物膜の製造方法であって、上記金属酸化物膜形成用溶液が、金属酸化物膜の結晶性を低下させるホウ素化合物を含有することを特徴とするものである。
本発明によれば、金属酸化物膜形成用溶液にホウ素化合物を添加することにより、ホウ素化合物を添加していない金属酸化物膜形成用溶液を用いて得られた金属酸化物膜と比較して、結晶性の低い金属酸化物膜を得ることができる。すなわち、金属酸化物膜形成用溶液にホウ素化合物を添加することにより、容易に、金属酸化物膜の結晶性を低下させることができる。金属酸化物膜の結晶性が低下する理由は、必ずしも明らかではないが、金属酸化物膜が結晶成長しようとする際に、金属酸化物膜表面では膜化反応に貢献しないホウ素成分が300℃以上で酸化ホウ素となって反応系外へ排出される現象が連続的に発生していると予想され、その結果として金属酸化物膜の結晶成長を阻害したためだと考えられる。
従来、基材として多孔質基材を用いた場合、金属酸化物の結晶が多孔質表面の特定のポイントから成長し易くなり、基材と金属酸化物膜との界面に粒界が発生し、電子伝導性や密着性が低下するという問題があった。これに対して、本発明においては、金属酸化物膜形成用溶液にホウ素化合物を添加することにより、金属酸化物膜の結晶性を低下させ、粒界の発生を抑制することができるという利点を有する。
また、得られる金属酸化物膜の結晶性を低くすることの利点としては、例えば、金属酸化物膜をガスバリア層として用いる場合に、そのバリア性を向上させることができる点が挙げられる。また、金属酸化物膜の結晶性を低くすることにより、基材と金属酸化物膜との密着性を向上させることができる。特に、本発明においては、基材として多孔質基材を用いた場合であっても、密着性や凹凸追従性に優れた金属酸化物膜を得ることができる。このようにして得られた金属酸化物膜は、例えばNOxガス処理用のセルや、酸素富化膜として利用することができる。
次に、本発明の金属酸化物膜の製造方法について図を用いて説明する。図1は、本発明の金属酸化物膜の製造方法の一例を示す説明図である。図1に示すように、本発明の金属酸化物膜の製造方法は、基材1を金属酸化物膜形成温度以上の温度まで加熱し、その後、金属源およびホウ素化合物を含有する金属酸化物膜形成用溶液2を、スプレー装置3を用いて噴霧することにより、基材1上に金属酸化物膜を形成する方法である。
なお、本発明において、「金属酸化物膜形成温度」とは、金属源に含まれる金属元素が酸素と結合し、基材上に金属酸化物膜を形成することが可能な温度をいい、金属塩、有機金属化合物といった金属源の種類、溶媒等の金属酸化物膜形成用溶液の組成によって大きく異なるものである。本発明において、このような「金属酸化物膜形成温度」は、以下の方法により測定することができる。すなわち、実際に所望の金属源を含有する金属酸化物膜形成用溶液を用意し、基材の加熱温度を変化させて接触させることにより、金属酸化物膜を形成することができる最低の基材加熱温度を測定する。この最低の基材加熱温度を本発明における「金属酸化物膜形成温度」とすることができる。この際、金属酸化物膜が形成したか否かは、通常、X線回折装置(リガク製、RINT−1500)より得られた結果から判断し、結晶性のないアモルファス膜の場合は、光電子分光分析装置(V.G.Scientific社製、ESCALAB 200i−XL)より得られた結果から判断するものとする。
金属酸化物膜形成温度は、上述したように、用いられる金属源等の種類により異なるものであるが、通常200〜600℃の範囲内である。また、本発明において、基材の加熱温度は、金属酸化物膜形成温度以上の温度であれば特に限定されるものではないが、例えば、金属酸化物膜形成温度+300℃以下、中でも金属酸化物膜形成温度+200℃以下、特に金属酸化物膜形成温度+100℃以下であることが好ましい。基材の加熱温度は、通常300〜600℃の範囲内である。
以下、本発明の金属酸化物膜の製造方法について、各構成毎に詳細に説明する。
1.金属酸化物膜形成用溶液
まず、本発明に用いられる金属酸化物膜形成用溶液について説明する。本発明に用いられる金属酸化物膜形成用溶液は、少なくとも、金属源およびホウ素化合物を含有する。さらに、必要に応じて、酸化剤、還元剤、および添加剤等を含有していても良い。
(1)金属源
まず、本発明に用いられる金属源について説明する。本発明に用いられる金属源は、通常、金属塩または有機金属化合物である。本発明においては、2種類以上の金属源を併用しても良い。
本発明においては、上記金属源が、単独で膜を形成可能な単独膜形成可能金属源であることが好ましい。ここで、「単独膜形成可能金属源」とは、以下に示す試験において所定の基準を満たす金属酸化物膜を与える金属源をいう。すなわち、対象となる1種類の金属源、および溶媒(例えばエタノール、トルエンまたはアセチルアセトンを用いることが好ましい。)からなる金属酸化物膜形成用溶液(濃度0.1mol/l)を用意し、この金属酸化物膜形成用溶液を、超音波ネプライザ等を用いて粒径0.5〜20μm程度の液滴とし、金属酸化物膜形成温度から金属酸化物膜形成温度+100℃の範囲内で加熱した基材と1時間接触させることにより、基材上に金属酸化物膜を形成し、その後、得られた金属酸化物膜を常温まで冷却し、1cm程度の金属酸化物膜の領域を圧力0.2Pa程度でウエス等を用いて拭う試験を行う。その結果、剥離を生じない強度を有する金属酸化物膜を与える金属源を、本発明における「単独膜形成可能金属源」とする。なお、基材としては、実際に金属酸化物膜を形成する際に用いられるものを使用する。また、得られる金属酸化物膜が粉体である場合等は、ウエス等で拭った際に容易に剥離するため、単独膜形成可能金属源には該当しない。
上記金属源を構成する金属元素としては、金属酸化物膜を形成可能なものであれば特に限定されるものではないが、例えば、Mg、Al、Si、Ti、V、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Ag、In、Sn、Ce、Sm、Pb、La、Hf、Sc、Gd、Ca、Cr、Ga、Sr、Nb、Mo、Pd、Sb、Te、Ba、WおよびTa等を挙げることができ、中でもAl、Ti、V、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、In、Sn、Ce、Laが好ましい。
上記金属塩としては、金属酸化物膜を形成可能なものであれば特に限定されるものではないが、例えば、上記金属元素を含む塩化物、硝酸塩、硫酸塩、過塩素酸塩、酢酸塩、リン酸塩、臭素酸塩等を挙げることができる。中でも、本発明においては、塩化物、硝酸塩、酢酸塩を使用することが好ましい。これらの化合物は汎用品として入手が容易だからである。上記金属塩としては、具体的には塩化マグネシウム、硝酸アルミニウム、塩化アルミニウム、塩化カルシウム、酢酸スカンジウム、四塩化チタン、オキソ硫酸バナジウム、クロム酸アンモニウム、塩化クロム、二クロム酸アンモニウム、酢酸クロム、硝酸クロム、硫酸クロム、酢酸マンガン、硝酸マンガン、硫酸マンガン、塩化鉄(I)、塩化鉄(III)、酢酸鉄(II)、硝酸鉄(III)、硫酸鉄(II)、硫酸アンモニウム鉄(III)、塩化コバルト、硝酸コバルト、酢酸コバルト、塩化ニッケル、硝酸ニッケル、酢酸ニッケル、塩化銅、硝酸銅、塩化亜鉛、酢酸亜鉛、塩化亜鉛、硝酸イットリウム、塩化イットリウム、塩化酸化ジルコニウム、硝酸酸化ジルコニウム、四塩化ジルコニウム、塩化銀、酢酸銀、塩化インジウム、酢酸インジウム、塩化スズ、酢酸スズ、硫酸スズ、塩化セリウム、酢酸セリウム、硝酸セリウム、シュウ酸セリウム、硝酸二アンモニウムセリウム、硫酸セリウム、塩化サマリウム、硝酸サマリウム、塩化鉛、酢酸鉛、硝酸鉛、ヨウ化鉛、リン酸鉛、硫酸鉛、塩化ランタン、酢酸ランタン、硝酸ランタン、硝酸ガドリニウム、塩化ストロンチウム、酢酸ストロンチウム、硝酸ストロンチウム、五塩化ニオブ、りん酸モリブデン酸アンモニウム、硫化モリブデン、塩化パラジウム、酢酸パラジウム、硝酸パラジウム、五塩化アンチモン、三塩化アンチモン、三フッ化アンチモン、テルル酸、亜硫酸バリウム、塩化バリウム、塩素酸バリウム、過塩素酸バリウム、酢酸バリウム、硝酸バリウム、タングステン酸、タングステン酸アンモニウム、六塩化タングステン、五塩化タンタル、塩化ハフニウム、硫酸ハフニウム等を挙げることができる。
上記有機金属化合物としては、単独で金属酸化物膜を形成可能なものであれば特に限定されるものではないが、具体的には、アセチルアセトナート系錯体を挙げることができる。上記アセチルアセトナート系錯体としては、例えば、アルミニウムアセチルアセトナート、鉄(III)アセチルアセトナート、ニッケル(II)アセチルアセトナート二水和物、銅(II)アセチルアセトナート、亜鉛アセチルアセトナート、ジルコニウムテトラアセチルアセトナート、ジルコニウムモノアセチルアセトナート、クロム(III)アセチルアセトナート、コバルトアセチルアセトナート、トリス(アセチルアセトナト)インジウム(III)、セリウムアセチルアセトナート、ランタンアセチルアセトナート、チタンアセチルアセトナート、カルシウムアセチルアセトナート、モリブデニルアセチルアセトナート、パラジウムアセチルアセトナート等を挙げることができる。
アセチルアセトナート系錯体以外の有機金属化合物としては、例えば、マグネシウムジエトキシド、カルシウムジ(メトキシエトキシド)、グルコン酸カルシウム一水和物、クエン酸カルシウム四水和物、サリチル酸カルシウム二水和物、チタンラクテート、テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート、ブチルチタネートダイマー、チタニウムビス(エチルヘキソキシ)ビス(2−エチル−3−ヒドロキシヘキソキシド)、ジイソプロポキシチタンビス(トリエタノールアミネート)、ジヒドロキシビス(アンモニウムラクテート)チタニウム、ジイソプロポキシチタンビス(エチルアセトアセテート)、チタンペロキソクエン酸アンモニウム四水和物、ジシクロペンタジエニル鉄(II)、乳酸鉄(II)三水和物、銅(II)ジピバロイルメタナート、エチルアセト酢酸銅(II)、乳酸亜鉛三水和物、サリチル酸亜鉛三水和物、ステアリン酸亜鉛、ストロンチウムジピバロイルメタナート、イットリウムジピバロイルメタナート、ジルコニウムテトラ−n−ブトキシド、ジルコニウム(IV)エトキシド、ジルコニウムノルマルプロピレート、ジルコニウムノルマルブチレート、ジルコニウムアセチルアセトナートビスエチルアセトアセテート、ジルコニウムアセテート、ジルコニウムモノステアレート、ペンタ−n−ブトキシニオブ、ペンタエトキシニオブ、ペンタイソプロポキシニオブ、2−エチルヘキサン酸インジウム(III)、テトラエチルすず、酸化ジブチルすず(IV)、トリシクロヘキシルすず(IV)ヒドロキシド、トリ(メトキシエトキシ)ランタン、ペンタイソプロポキシタンタル、ペンタエトキシタンタル、タンタル(V)エトキシド、クエン酸鉛(II)三水和物、シクロヘキサン酪酸鉛、トリフルオロメタンスルホン酸ガリウム(III)、ストロンチウムジピバロイルメタナート等を挙げることができる。
また、本発明においては、上記金属源が、結晶性の高い金属酸化物膜を与える金属源であることが好ましく、中でも、柱状構造の金属酸化物膜を与える金属源であることが好ましい。本発明の効果を充分に発揮することができるからである。すなわち、結晶性の高い金属酸化物膜を与える金属源が溶解した金属酸化物膜形成用溶液に対して、ホウ素化合物を添加することにより、充分に結晶性の低い金属酸化物膜を得ることができる。このような金属源としては、例えば四塩化チタン、塩化クロム、硝酸クロム、硫酸クロム、酢酸マンガン、硝酸マンガン、塩化鉄(III)、硝酸鉄(III)、硫酸鉄(II)、塩化コバルト、硝酸コバルト、酢酸コバルト、塩化ニッケル、硝酸ニッケル、硝酸銅、塩化亜鉛、酢酸亜鉛、塩化亜鉛、塩化酸化ジルコニウム、硝酸酸化ジルコニウム、四塩化ジルコニウム、硝酸二アンモニウムセリウム、鉄(III)アセチルアセトナート、ニッケル(II)アセチルアセトナート二水和物、銅(II)アセチルアセトナート、亜鉛アセチルアセトナート、ジルコニウムテトラアセチルアセトナート、ジルコニウムモノアセチルアセトナート、クロム(III)アセチルアセトナート、コバルトアセチルアセトナート、トリス(アセチルアセトナト)インジウム(III)、セリウムアセチルアセトナート、チタンアセチルアセトナート等を挙げることができる。
金属酸化物膜形成用溶液における金属源の濃度としては、特に限定されるものではないが、例えば0.001〜1mol/lの範囲内、中でも0.01〜0.5mol/lの範囲内であることが好ましい。濃度が上記範囲内にあれば、比較的短時間で金属酸化物膜を形成することができるからである。
また、本発明においては、金属酸化物膜のドーピングを目的としたドーピング金属源を添加することも可能である。ドーピング金属源を用いることにより、機能性金属酸化物膜を得ることができる。
上記ドーピング金属源の種類は、目的とする金属酸化物膜の種類に応じて適宜選択することが好ましい。例えば固体酸化物型燃料電池の電解質として有用なイットリア安定化ジルコニア膜(YSZ膜)を得る場合は、ジルコニウム元素を有する金属源の他に、ドーピング金属源としてイットリウム元素を有する金属源を用いる。イットリウム元素を有する金属源としては、具体的には、硝酸イットリウム・六水和物等を挙げることができる。すなわち、本発明においては、上記金属源が、ジルコニウム元素を含有するジルコニウム含有金属源と、イットリウム元素を含有するイットリウム含有金属源との組み合わせであることが好ましい。所望のYSZ膜を得ることができるからである。上記ジルコニウム含有金属源としては、上述したように、ジルコニウム元素を含有する金属塩であっても良く、ジルコニウム元素を含有する有機金属化合物であっても良いが、中でも、ジルコニウム元素を含有する有機金属化合物であることが好ましい。特に本発明においては、ジルコニウム含有金属源がジルコニウムテトラアセチルアセトナートであることが好ましい。上記イットリウム含有金属源としては、イットリウム元素を含有するものであれば特に限定されるものではなく、上述したように、イットリウム元素を含有する金属塩であっても良く、イットリウム元素を含有する有機金属化合物であっても良いが、中でも、イットリウム元素を含有する金属塩であることが好ましい。特に本発明においては、イットリウム含有金属源が硝酸イットリウムであることが好ましい。金属酸化物膜形成用溶液に含まれる、ジルコニウム含有金属源およびイットリウム含有金属源の割合は、所望のYSZを得ることができれば特に限定されるものではないが、例えば、ジルコニウム含有金属源を100とした場合に、モル換算で、イットリウム含有金属源が、3〜30の範囲内、中でも5〜20の範囲内であることが好ましい。
また、本発明においては、上記金属源が、インジウム元素を含有するインジウム含有金属源と、スズ元素を含有するスズ含有金属源との組み合わせであることが好ましい。結晶状態が段階的または連続的に変化したITO膜を得ることができるからである。なお、上記インジウム含有金属源としては、インジウム元素を含有するものであれば特に限定されるものではなく、上述したように、インジウム元素を含有する金属塩であっても良く、インジウム元素を含有する有機金属化合物であっても良いが、中でも、インジウム元素を含有する金属塩であることが好ましい。特に本発明においては、インジウム含有金属源が塩化インジウムであることが好ましい。一方、上記スズ含有金属源としては、スズ元素を含有するものであれば特に限定されるものではなく、上述したように、スズ元素を含有する金属塩であっても良く、スズ元素を含有する有機金属化合物であっても良いが、中でも、スズ元素を含有する金属塩であることが好ましい。特に本発明においては、スズ含有金属源が塩化スズであることが好ましい。
(2)ホウ素化合物
次に、本発明に用いられるホウ素化合物について説明する。本発明に用いられるホウ素化合物は、得られる金属酸化物膜の結晶性を低下させるものである。
上記ホウ素化合物としては、金属酸化物膜の結晶性を低下させることができるものであれば特に限定されるものではないが、中でも金属元素を有しないものであることが好ましい。ホウ素化合物に由来する金属元素が、金属酸化物膜に取り込まれることを防止できるからである。上記ホウ素化合物としては、具体的には、ホウ酸、三フッ化ホウ素−ジエチルエーテル、四ホウ酸リチウム、水素化ホウ素カリウム、水素化ホウ素ナトリウム、テトラフルオロホウ酸リチウム、トリス(ジメチルアミノ)ホウ素、ホウ酸トリイソプロピル、ペルオキソホウ酸ナトリウム四水和物、テトラフルオロホウ酸等を挙げることができ、中でも、金属元素を有しないという観点から、ホウ酸、三フッ化ホウ素−ジエチルエーテル、トリス(ジメチルアミノ)ホウ素、ホウ酸トリイソプロピル、テトラフルオロホウ酸が好ましく、特に、ホウ酸が好ましい。より効果的に、金属酸化物膜の結晶性を低下させることができるからである。
なお、ホウ酸(HBO)は、300℃程度に加熱されると、酸化ホウ素(B)になることが知られている。詳細な原理は明らかではないが、幾つかの実験から、この酸化ホウ素が、金属酸化物膜の結晶性を低下させるための重要な要因となっている可能性がある。このような観点からは、上記ホウ素化合物は、加熱された基材と接触する際に、酸化ホウ素を生じる化合物であることが好ましい。
金属酸化物膜形成用溶液に含まれるホウ素化合物の濃度としては、金属酸化物膜の結晶性を低下させることができる濃度であれば特に限定されるものではないが、例えば0.01mol/l以上、中でも0.05〜1mol/lの範囲内、特に0.1〜0.5mol/lの範囲内であることが好ましい。
(3)溶媒
本発明に用いられる溶媒は、上述した金属源等を溶解することができるものであれば、特に限定されるものではなく、例えば、水;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、プロパノール、ブタノール等の総炭素数が5以下の低級アルコール;トルエン;アセチルアセトン、ジアセチル、ベンゾイルアセトン等のジケトン類;アセト酢酸エチル、ピルビン酸エチル、ベンゾイル酢酸エチル、ベンゾイル蟻酸エチル等のケトエステル類;およびこれらの混合溶媒等を挙げることができる。なお、原料(金属源)との相性によっては、例えば、メタノールのみを用いた方が成膜速度が速い場合や、アセチルアセトンを混合した方が成膜速度が速い場合がある。そのため、より好ましくは水、メタノール、エタノール、アセトン、トルエン、アセチルアセトンまたはこれらの混合溶媒が好ましい。また、溶媒の全部または一部として、上記ジケトン類および上記ケトエステル類の少なくとも一方を用いることが好ましい。成膜性が向上するからである。
(4)添加剤
また、本発明に用いられる金属酸化物膜形成用溶液は、セラミックス微粒子および界面活性剤等の添加剤を含有していても良い。
上記セラミックス微粒子を用いることにより、上記セラミックス微粒子を取り囲むように金属酸化物膜が形成され、異種セラミックスの混合膜を得ることや金属酸化物膜の体積増加を図ることができる。なお、上記セラミックス微粒子の含有量は、使用する部材の特徴に合わせて適宜選択されることが好ましい。
上記セラミックス微粒子の種類としては、例えばITO、アルミニウム酸化物、ジルコニウム酸化物、珪素酸化物、チタン酸化物、スズ酸化物、セリウム酸化物、カルシウム酸化物、マンガン酸化物、マグネシウム酸化物、チタン酸バリウム等を挙げることができる。
また、上記界面活性剤は、上記金属酸化物膜形成用溶液と上記基材表面との界面に作用するものである。上記界面活性剤を用いることにより、金属酸化物膜形成用溶液と基材表面との接触面積を向上させることができ、均一な金属酸化物膜を得ることができる。特に、金属酸化物膜形成用溶液を噴霧により接触させる場合、上記界面活性剤の効果により、金属酸化物膜形成用溶液の液滴と基材表面とを充分に接触させることができるため、好適に使用される。なお、上記界面活性剤の使用量は、使用する金属源等に合わせて適宜選択して使用することが好ましい。
上記界面活性剤の種類としては、例えば、サーフィノール485、サーフィノールSE、サーフィノールSE−F、サーフィノール504、サーフィノールGA、サーフィノール104A、サーフィノール104BC、サーフィノール104PPM、サーフィノール104E、サーフィノール104PA等のサーフィノールシリーズ(以上、全て日信化学工業(株)社製)、NIKKOL AM301、NIKKOL AM313ON(以上、全て日光ケミカル社製)等を挙げることができる。
2.基材
次に、本発明に用いられる基材について説明する。本発明に用いられる基材の材料としては、上記加熱温度に対する耐熱性を有するものであれば、特に限定されるものではないが、例えばガラス、SUS、金属板、セラミック基材、耐熱性プラスチック等を挙げることができ、中でもガラス、SUS、金属板、セラミック基材を使用することが好ましい。汎用性があり、充分な耐熱性を有しているからである。
また、本発明に用いられる基材は、例えば、平滑な表面を有するもの、微細構造部を有するもの、穴が開いているもの、溝が刻まれているもの、多孔質であるもの、多孔質膜を備えたものであっても良い。中でも、平滑な表面を有するもの、微細構造部を有するもの、溝が刻まれているもの、多孔質であるもの、多孔質膜を備えたものが好適に使用される。なお、上記の多孔質膜としては、例えば、酸化チタン等の金属微粒子を焼成してなるもの等を挙げることができる。
特に、本発明においては、上記基材が、多孔質基材、または多孔質膜を備えた基材であることが好ましい。金属酸化物膜が形成される表面が多孔質である場合、金属酸化物の結晶が多孔質表面の特定のポイントから成長し易くなり、基材と金属酸化物膜との界面に粒界が発生し、電子伝導性や密着性が低下し易い。このような場合であっても、本発明においては、ホウ素化合物を金属酸化物膜形成用溶液に添加することで、金属酸化物膜の結晶性を低下させることができ、粒界の発生を抑制することができる。
3.基材と金属酸化物膜形成用溶液との接触方法
次に、本発明における基材と金属酸化物膜形成用溶液との接触方法について説明する。上記接触方法としては、上述した金属酸化物膜形成用溶液と上述した基材とを接触させる方法であれば特に限定されるものではないが、金属酸化物膜形成用溶液および基材を接触させた際に、基材の温度を低下させない方法であることが好ましい。基材の温度が低下すると成膜反応が起こらず所望の金属酸化物膜を得ることができない可能性があるからである。このような基材の温度を低下させない方法としては、例えば、金属酸化物膜形成用溶液を液滴として基材に接触させる方法等が挙げられ、中でも上記液滴の径が小さいことが好ましい。上記液滴の径が小さければ、金属酸化物膜形成用溶液の溶媒が瞬時に蒸発し、基材温度の低下をより抑制することができ、さらに液滴の径が小さいことで、均一な金属酸化物膜を得ることができるからである。
このような径が小さい金属酸化物膜形成用溶液の液滴を基材に接触させる方法は、特に限定されるものではないが、具体的には、金属酸化物膜形成用溶液を噴霧することにより基材に接触させる方法、金属酸化物膜形成用溶液をミスト状にした空間の中に基材を通過させる方法等が挙げられる。
上記金属酸化物膜形成用溶液を噴霧することにより基材に接触させる方法は、例えばスプレー装置等を用いて噴霧する方法等が挙げられる。上記スプレー装置等を用いて噴霧する場合、液滴の径は、通常0.01〜1000μmの範囲内、中でも0.1〜300μmの範囲内であることが好ましい。液滴の径が上記範囲内にあれば、基材温度の低下を抑制することができ、均一な金属酸化物膜を得ることができるからである。
また、上記スプレー装置の噴射ガスとしては、金属酸化物膜の形成を阻害しない限り特に限定されるものではないが、例えば、空気、窒素、アルゴン、ヘリウム、酸素等を挙げることができ、中でも不活性な気体である窒素、アルゴン、ヘリウムが好ましい。また、上記噴射ガスの噴射量としては、例えば、0.1〜50l/minの範囲内、中でも1〜20l/minの範囲内であることが好ましい。また、上記スプレー装置は固定されていているもの、可動式のもの、回転によって上記溶液を噴射させるもの、圧力によって上記溶液のみを噴射させるもの等であっても良い。このようなスプレー装置としては、一般的に用いられるスプレー装置を用いることができ、例えばハンドスプレー(スプレーガンNo.8012、アズワン社製)、超音波ネプライザー(NE−U17、オムロン社製)等を用いることができる。
また、金属酸化物膜形成用溶液をミスト状にした空間の中に基材を通過させる方法においては、液滴の径は、通常0.01〜300μmの範囲内、中でも0.1〜100μmの範囲内であることが好ましい。液滴の径が上記範囲内にあれば、基材温度の低下を抑制することができ、均一な金属酸化物膜を得ることができるからである。
また、基材の加熱方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、ホットプレート、オーブン、焼成炉、赤外線ランプ、熱風送風機等の加熱方法を挙げることができ、中でも基材温度を上記温度に保持しながら上記金属酸化物膜形成用溶液に接触できる方法が好ましく、具体的にはホットプレート等を使用することが好ましい。
次に、上述した接触方法について図面を用いて具体的に説明する。上述した金属酸化物膜形成用溶液を噴霧することにより基材に接触させる方法としては、例えば、ローラーによって基材を連続的に移動させ噴霧する方法、固定された基材上に噴霧する方法、パイプのような流路に噴霧する方法等が挙げられる。
上記ローラーによって基材を連続的に移動させ噴霧する方法としては、例えば、図2に示すように、基材1を、金属酸化物膜形成温度以上の温度まで加熱したローラー4〜6を用いて連続的に移動させ、スプレー装置3により金属酸化物膜形成用溶液2を噴霧し金属酸化物膜を形成する方法等を挙げることができる。この方法は、連続的に金属酸化物膜を形成することができるという利点を有する。
また、上記固定された基材上に噴霧する方法としては、例えば、図1に示すように、基材1を金属酸化物膜形成温度以上の温度まで加熱し、この基材1に対して、スプレー装置3を用いて金属酸化物膜形成用溶液2を噴霧することにより、金属酸化物膜を形成する方法等を挙げることができる。
また、上述した金属酸化物膜形成用溶液をミスト状にした空間の中に基材を通過させる方法としては、例えば、図3に示すように、金属酸化物膜形成用溶液2をミスト状にした空間に、金属酸化物膜形成温度以上の温度まで加熱された基材1を通過させることにより金属酸化物膜を形成する方法等を挙げることができる。
4.その他
また、本発明の金属酸化物膜の製造方法においては、上述した接触方法等により得られた金属酸化物膜の洗浄を行っても良い。上記金属酸化物膜の洗浄は、金属酸化物膜の表面等に存在する不純物を取り除くために行われるものであって、例えば、金属酸化物膜形成用溶液に使用した溶媒を用いて洗浄する方法等を挙げることができる。
B.結晶性低下材
次に、本発明の結晶性低下材について説明する。本発明の結晶性低下材は、金属源として金属塩または有機金属化合物が溶解した金属酸化物膜形成用溶液に添加され、金属酸化物膜の結晶性を低下させる結晶性低下材であって、ホウ素化合物からなることを特徴とするものである。
本発明によれば、金属源を含有する金属酸化物膜形成用溶液に対して、ホウ素化合物を添加することにより、金属酸化物膜の結晶性を低下させることができる。
本発明の結晶性低下材は、金属源として金属塩または有機金属化合物が溶解した金属酸化物膜形成用溶液に添加されるものである。金属塩、有機金属化合物、および金属酸化物膜形成用溶液等については、上記「A.金属酸化物膜の製造方法」に記載した内容と同様であるので、ここでの説明は省略する。
また、本発明の結晶性低下材は、ホウ素化合物からなるものである。本発明に用いられるホウ素化合物は、上記「A.金属酸化物膜の製造方法」に記載した内容と同様である。中でも、本発明においては、ホウ素化合物が、ホウ酸であることが好ましい。
C.金属酸化物膜形成用溶液
次に、本発明の金属酸化物膜形成用溶液について説明する。本発明の金属酸化物膜形成用溶液は、金属源として金属塩または有機金属化合物が溶解し、かつ、金属酸化物膜の結晶性を低下させるホウ素化合物を含有することを特徴とするものである。
本発明によれば、ホウ素化合物を添加した金属酸化物膜形成用溶液を用いることで、結晶性の低い金属酸化物膜を得ることができる。
本発明の金属酸化物膜形成用溶液は、少なくとも、金属源およびホウ素化合物を含有する。さらに、必要に応じて、酸化剤、還元剤、および添加剤等を含有していても良い。これらの材料、およびホウ素化合物の濃度等については、上記「A.金属酸化物膜の製造方法」に記載した内容と同様であるので、ここでの説明は省略する。
また、本発明の金属酸化物膜形成用溶液は、通常、金属酸化物膜形成温度以上の温度まで加熱した基材に接触させ、前記基材上に金属酸化物膜を得るために用いられるものである。金属酸化物膜形成温度および基材等については、上記「A.金属酸化物膜の製造方法」に記載した内容と同様であるので、ここでの説明は省略する。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。
[実施例1−1]
本実施例においては、ホウ酸を添加した金属酸化物膜形成用溶液を用いて、シリコンウェハ上にZrO膜を作製した。
まず、基材としてシリコンウェハを用意した。次に、金属源としてジルコニウムテトラアセチルアセトナート(関東化学社製)、溶媒としてエタノール20重量%、トルエン80重量%の混合溶媒を用意した。その後、混合溶媒に、ジルコニウムテトラアセチルアセトナートを0.1mol/l、ホウ酸を0.1mol/lとなるように溶解させ、100mlの金属酸化物膜形成用溶液を得た。次に、上記基材をホットプレート(アズワン社製)で500℃に加熱し、この基材に対し、上記金属酸化物膜形成用溶液を超音波ネプライザ(オムロン社製)にて100mlスプレーし、基材上に金属酸化物膜を得た。
得られた金属酸化物膜を、X線回折装置(リガク製、RINT−1500)を用いて測定したところ、ほとんど結晶性がないことを確認した(図4参照)。そこで、この金属酸化物膜に対して、光電子分光分析装置(V.G.Scientific社製 ESCALAB 200i−XL)を用いて測定を行ったところ、ZrO膜が形成されていることを確認できた。
[実施例1−2]
本実施例においては、ホウ酸を添加した金属酸化物膜形成用溶液を用いて、微粒子酸化チタン上に、ZrO膜を作製した。本実施例の結果と、後述する比較例1の結果とを比較することにより、基材と金属酸化物膜との界面に発生する粒界が減少する効果について確認する。
まず、シリコンウェハ上に微粒子酸化チタン層を作製した。一次粒径20nmのTiO微粒子(日本アエロジル社製P25)37.5重量%、アセチルアセトン1.25重量%、ポリエチレングリコール(平均分子量3000)1.88重量%となるように、ホモジナイザーを用いて水およびイソプロピルアルコールに溶解及び分散させてスラリーを作製した。上記シリコンウェハ上にドクターブレードにて上記スラリーを塗布後、室温で20分放置し、その後100℃で30分間乾燥させた。その後、電気マッフル炉(デンケン社製P90)を用い、500℃、30分間、大気圧雰囲気下にて焼成した。これにより、シリコンウェハ上に酸化チタンの多孔質膜を形成し、基材を得た。
次に、得られた基材を用いたこと以外は、実施例1−1と同様にして金属酸化物膜を作製した。基材および金属酸化物膜を走査型電子顕微鏡で観察すると、図5(a)に示すように、粒界のないZrO膜が形成されていることを確認できた。
一方、上記方法により得られた金属酸化物膜を、マッフル炉(デンケン社製P90)を用いて焼成した。焼成条件は3時間かけて1000℃まで昇温し、そのまま1000℃で一時間保持し、室温まで自然冷却させた。焼成後の基材および金属酸化物膜を、走査型電子顕微鏡を用いて観察すると、図5(b)に示すように、粒界のないZrO膜が形成されていることを確認できた。このことから、焼成処理の後には結晶化するが、それでも緻密なZrO膜が維持されていることを確認できた。
[比較例1]
本比較例においては、ホウ酸を添加しないこと以外は実施例1と同様に実験した。
金属源としてジルコニウムテトラアセチルアセトナート(関東化学社製)、溶媒としてエタノール20重量%、トルエン80重量%の混合溶媒を用意した。その後、混合溶媒に、ジルコニウムテトラアセチルアセトナートを0.1mol/lとなるように溶解させ、100mlの金属酸化物膜形成用溶液を得た。この金属酸化物膜形成用溶液を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、金属酸化物膜を得た。
上記方法により得られた金属酸化物膜を、X線回折装置を用いて測定したところ、ZrO膜が得られていることを確認した。また、基材および金属酸化物膜を走査型電子顕微鏡で観察すると、図6に示すように、粒界が多いZrO膜が形成されていることを確認できた。
[実施例2−1]
本実施例においては、ホウ酸を添加した金属酸化物膜形成用溶液を用いて、ITO膜を作製した。本実施例の結果と、後述する比較例2の結果とを比較することにより、基材と金属酸化物膜との界面に発生する粒界が減少する効果について確認する。
まず、金属源として塩化インジウム(関東化学社製)、塩化スズ(関東化学社製)、溶媒としてエタノール(関東化学社製)を用意した。塩化インジウムを0.1mol/l、塩化スズを0.005mol/l、ホウ酸を0.1mol/lとなるように溶解させ、100mlの金属酸化物膜形成用溶液を得た。次に、上記基材をホットプレート(アズワン社製)で500℃に加熱し、この基材の酸化チタン面に対し、上記金属酸化物膜形成用溶液を超音波ネプライザ(オムロン社製)にて100mlスプレーし、基材上に金属酸化物膜を得た。次に、実施例1で使用した基材をホットプレート(アズワン社製)で500℃に加熱し、この基材の酸化チタン面に対し、上記金属酸化物膜形成用溶液を超音波ネプライザ(オムロン社製)にて100mlスプレーし、基材上に金属酸化物膜を得た。
上記方法により得られた金属酸化物膜を、X線回折装置を用いて測定したところ、ITO膜が得られていることを確認した(図7参照)。また、基材および金属酸化物膜を走査型電子顕微鏡で観察すると、図8に示すように、粒界のないITO膜が形成されていることを確認できた。
[実施例2−2]
ホウ酸を0.01mol/lとなるように原料溶液中へ溶解させたこと以外は、実施例2−1と同様に金属酸化物膜を作製した。
上記方法により得られた金属酸化物膜を、X線回折装置(リガク製、RINT−1500)を用いて測定したところ、ITO膜が得られていることを確認した(図9参照)。基材および金属酸化物膜を走査型電子顕微鏡で観察すると、図10に示すように、粒界のないITO膜が形成されていることを確認できた。
[比較例2]
本比較例においては、ホウ酸を添加しないこと以外は実施例2と同様に実験した。
金属源として塩化インジウムを0.1mol/l、塩化スズを0.005mol/lとなるように溶解させ、100mlの金属酸化物膜形成用溶液を得た。この金属酸化物膜形成用溶液を用いたこと以外は、実施例2と同様にして、金属酸化物膜を作製した。
得られた金属酸化物膜を、X線回折装置を用いて測定したところ、ITO膜が得られていることを確認した(図11)。また、基材および金属酸化物膜を走査型電子顕微鏡で観察すると、図12に示すように、粒界が多いITO膜が形成されていることを確認した。
本発明の金属酸化物膜の製造方法の一例を示す説明図である。 本発明の金属酸化物膜の製造方法の他の例を示す説明図である。 本発明の金属酸化物膜の製造方法の他の例を示す説明図である。 実施例1−1で得られた金属酸化物膜のX線回折測定の結果を示すグラフである。 実施例1−2で得られた金属酸化物膜の断面を示すSEM写真である。 比較例1で得られた金属酸化物膜の断面を示すSEM写真である。 実施例2−1で得られた金属酸化物膜のX線回折測定の結果を示すグラフである。 実施例2−1で得られた金属酸化物膜の断面を示すSEM写真である。 実施例2−2で得られた金属酸化物膜のX線回折測定の結果を示すグラフである。 実施例2−2で得られた金属酸化物膜の断面を示すSEM写真である。 比較例2で得られた金属酸化物膜のX線回折測定の結果を示すグラフである。 比較例2で得られた金属酸化物膜の断面を示すSEM写真である。
符号の説明
1 … 基材
2 … 金属酸化物膜形成用溶液
3 … スプレー装置
4、5、6 … ローラー

Claims (7)

  1. 金属源として金属塩または有機金属化合物が溶解した金属酸化物膜形成用溶液を、金属酸化物膜形成温度以上の温度まで加熱した基材に接触させることにより、前記基材上に金属酸化物膜を得る金属酸化物膜の製造方法であって、
    前記金属酸化物膜形成用溶液が、金属酸化物膜の結晶性を低下させるホウ素化合物を含有することを特徴とする金属酸化物膜の製造方法。
  2. 前記ホウ素化合物が、ホウ酸であることを特徴とする請求項1に記載の金属酸化物膜の製造方法。
  3. 前記基材が、多孔質基材、または多孔質膜を備えた基材であることを特徴とする請求項1または請求項2の金属酸化物膜の製造方法。
  4. 前記金属酸化物膜形成用溶液が、さらにドーピング金属源を含有することを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれかの請求項に記載の金属酸化物膜の製造方法。
  5. 前記金属源を構成する金属元素が、Mg、Al、Si、Ti、V、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Ag、In、Sn、Ce、Sm、Pb、La、Hf、Sc、Gd、Ca、Cr、Ga、Sr、Nb、Mo、Pd、Sb、Te、Ba、WまたはTaであることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれかの請求項に記載の金属酸化物膜の製造方法。
  6. 金属源として金属塩または有機金属化合物が溶解した金属酸化物膜形成用溶液に添加され、金属酸化物膜の結晶性を低下させる結晶性低下材であって、
    ホウ素化合物からなることを特徴とする結晶性低下材。
  7. 金属源として金属塩または有機金属化合物が溶解し、かつ、金属酸化物膜の結晶性を低下させるホウ素化合物を含有することを特徴とする金属酸化物膜形成用溶液。
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