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JP2009103681A - インターフェロン療法の効果予測方法及び予測用キット - Google Patents

インターフェロン療法の効果予測方法及び予測用キット Download PDF

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JP2009103681A JP2008135088A JP2008135088A JP2009103681A JP 2009103681 A JP2009103681 A JP 2009103681A JP 2008135088 A JP2008135088 A JP 2008135088A JP 2008135088 A JP2008135088 A JP 2008135088A JP 2009103681 A JP2009103681 A JP 2009103681A
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Abstract

【課題】C型肝炎ウイルス持続感染者に対するインターフェロン療法の効果を予測できる技術を提供する。
【解決手段】被験者のC型肝炎ウイルス持続感染者から採取した体液における特定のマーカー物質の濃度を指標として、当該被験者がインターフェロン療法によって著効(SVR)を示す者であるか、インターフェロン療法終了後にHCVが再燃(relapse)する者であるかを予測する。体液の例としては血液が挙げられる。イオン交換体や金属キレート体を固定化した基板等の担体にマーカー物質を捕捉し、質量分析によってマーカー物質の濃度を測定することができる。当該方法を簡便に実施できるキットも提供される。
【選択図】図1

Description

本発明はインターフェロン療法の効果予測方法及び予測用キットに関する。本発明のインターフェロン療法の効果予測方法は、インターフェロン療法終了後にC型肝炎ウイルスが再燃するC型肝炎ウイルス持続感染者と、C型肝炎ウイルスが再燃することなく効果が持続するC型肝炎ウイルス持続感染者とを判別できるものである。
C型肝炎は、C型肝炎ウイルス(Hepatitis C virus。以下、「HCV」と略記する。)の感染により発病するウイルス性肝炎である。C型肝炎は特別な症状が起こることなく徐々に進行し、治療せずにおくと10〜30年かけて肝硬変、さらに肝臓癌へと移行することが多い。
C型肝炎の治療法として、従来より、インターフェロンの投与(インターフェロン療法)が行なわれている。インターフェロンにはHCVの増殖を抑える作用があり、治療が成功すれば、HCVは体内から消失する。しかし、インターフェロンの単独投与(インターフェロン単独療法)が有効なC型肝炎患者は限定的であることがわかっている。そこで、インターフェロンと別の抗ウイルス剤であるリバビリンとの併用投与(インターフェロン・リバビリン併用療法)が開発され、インターフェロン単独療法に比較して高い効果をあげている。しかしながら、インターフェロン・リバビリン併用療法によっても治療効果が認められないC型肝炎患者はなお多い。
インターフェロンは、生体内で産生される生理活性物質の一つであり、抗ウイルス作用や抗ガン作用を有することが知られている。インターフェロンには、α、β、γの主要なサブタイプがあり、このうち、C型肝炎の治療に用いられているのはαとβである。一方、リバビリン(Ribavirin,1-β-ribofuranosyl-1,2,4-triazole-3-carboxamide)は、プリン骨格をもつ核酸アナログの一種であり、内服の抗ウイルス剤としてインフルエンザ、ヘルペス、麻疹等の治療に古くから用いられている。しかし、リバビリンの単独投与はC型肝炎の治療にほとんど効果がなく、リバビリンはインターフェロンと併用することでHCVの排除効果を高める効果を発揮する。
インターフェロン療法によりC型肝炎の治療を行なう場合は、40週程度の長期にわたる投与が必要である。しかし、インターフェロンには発熱、全身倦怠感、関節痛等の副作用があり、長期投与による患者の身体的負担は大きい。さらに、インターフェロンは高価な医薬であり、経済的負担も大きい。また、インターフェロン・リバビリン併用療法を行なう場合は、インターフェロン投与と同じ期間のリバビリン投与が必要であるが、リバビリンにも溶血を起こす副作用があり、患者の身体的・経済的負担はさらに大きい。そして、インターフェロン療法やインターフェロン・リバビリン併用療法による治療効果が得られないC型肝炎患者にとっては、これらの療法は副作用を引き起こすだけであり、何ら利益はない。したがって、C型肝炎患者に対するインターフェロン療法やインターフェロン・リバビリン併用療法の効果を治療開始前に予測し、治療効果が期待できない患者をこれらの療法の対象から外すことが望ましい。
インターフェロン療法が成功するか否かについては、ウイルス側の要因と患者側の要因の2つが関与しているといわれている。ウイルス側の要因としては、HCVの遺伝子型とHCVの量の関与が指摘されている。すなわち、HCVには複数の遺伝子型があり、遺伝子型が1a、1bのHCVにはインターフェロンが効きにくく、それ以外の、例えば遺伝子型が2a、2bのHCVにはインターフェロンが効きやすい。また、HCVの量が多いほどインターフェロンが効きにくい。そして、感染しているHCVのタイピング(特許文献1)や、コア領域の変異検出(特許文献2)を行って、インターフェロン療法の効果を予測する方法が提案されている。一方、患者側の要因に着目した技術として、一塩基多型(SNP)(特許文献3,4)、肝臓におけるインターフェロンレセプターの発現量(特許文献5)、血液中の特定のタンパク質の濃度(特許文献6)、を指標としてインターフェロン療法の効果を予測する方法が提案されている。
一方、インターフェロン療法の効果判定については、より細かい分類に基づいて行われている(非特許文献1)。すなわちウイルス学的効果については、治療開始12週目、治療終了時、および治療終了後24週目の3段階でHCV−RNAを測定する。そして、治療開始12週目におけるHCVの陰性化(early virological response;EVR)、治療終了時におけるHCVの陰性化(end-of-treatment response;ETR)、および治療終了後24週目におけるHCVの陰性化(sustained virological response;SVR)について評価する。ここで、治療終了後24週目の評価が最も重要とされており、この段階におけるHCV−RNA陰性(SVR)を「著効」、陽性を無効と判定する。さらに無効例を「再燃」(relapse)と「無反応」(non-response;NR)に分類する。「再燃」は治療終了時にHCV−RNAが陰性であった無効例、「無反応」(NR)は治療終了時にHCV−RNAが陽性であった無効例である。「無反応」に分類される患者は、インターフェロン療法の対象として適していないことになる。
インターフェロン療法によって「著効」(SVR)を示す患者とHCVが「再燃」する患者は、いずれもインターフェロン療法の対象として適当であるが、それぞれに適した治療計画が必要とされる。「著効」を示す患者についてはインターフェロン療法を積極的に受療することが効果的であり、それにより肝臓癌の発生率を抑えることが可能となる。一方、HCVが「再燃」する患者についてはインターフェロン投与を中断せずに長期投与することが効果的であり、それにより肝臓癌の発生率を抑えることが可能となる。
ところが、あるC型肝炎患者がインターフェロン療法によって「著効」を示す者であるか、HCVが「再燃」する者であるかを治療開始前に予測する技術がなく、インターフェロン療法を行う上での障害になっている。例えば、HCVが再燃する患者に対してインターフェロン投与を一定期間行った後に中断してしまい、その結果、HCVが再燃し、治療成績を下げる一因となっている。従来技術は、いずれもインターフェロン療法に対して「無反応」(NR)な患者とそれ以外の患者とを判別するものであり、「著効」(SVR)を示す患者とHCVが「再燃」(relapse)する患者とを判別するものではない。
なお、特許文献1〜4に開示されている技術では、いずれも患者から採取した検体からDNAやRNAを調製する必要があり、操作が煩雑である。また一般に、HCVの型や量をもって判定する場合は、インターフェロンが効き易いか効き難いかの大まかな判定しかできない。また特許文献5に開示されている技術では、検体として肝組織を採取する必要があり、侵襲を伴う。
なお、インターフェロン療法はC型肝炎患者のみならず、C型肝炎ウイルス持続感染者(HCVキャリア)に対して効果がある。すなわち、インターフェロン療法が成功すれば、C型肝炎ウイルス持続感染者からHCVが消失する。
特開2001−238687号公報 特開2007−43985号公報 特開2003−339380号公報 特開2004−298011号公報 特開2001−149076号公報 国際公開第2006/107078号パンフレット 社団法人日本肝臓学会編「慢性肝炎の治療ガイド2006」2006年1月11日発行,p.28
本発明の目的は、インターフェロン療法によって著効を示すC型肝炎ウイルス持続感染者と、インターフェロン療法終了後にHCVが再燃するC型肝炎ウイルス持続感染者とを判別することができる一連の技術を提供することにある。
本発明の1つの様相は、C型肝炎ウイルス持続感染者から採取した体液における下記マーカー物質(A1)〜(A4)の少なくとも1つの濃度を指標として、前記C型肝炎ウイルス持続感染者に対するインターフェロン療法の効果を予測することを特徴とするインターフェロン療法の効果予測方法である。
(A1)pH4.0で弱陽イオン交換体に結合し、かつ質量分析に供すると質量/電荷比が約7780のイオンピークを生じるタンパク質、
(A2)pH9.0で強陰イオン交換体に結合し、かつ質量分析に供すると質量/電荷比が約9300のイオンピークを生じるタンパク質、
(A3)pH9.0で強陰イオン交換体に結合し、かつ質量分析に供すると質量/電荷比が約51300のイオンピークを生じるタンパク質、
(A4)pH9.0で強陰イオン交換体に結合し、かつ質量分析に供すると質量/電荷比が約125000のイオンピークを生じるタンパク質。
本様相のインターフェロン療法の効果予測方法は、C型肝炎ウイルス持続感染者の体液中におけるマーカー物質の濃度を指標とするものである。そして、マーカー物質として上記マーカー物質(A1)〜(A4)のうちの少なくとも1つを用いる。本様相の方法によれば、被験者のC型肝炎ウイルス持続感染者が、インターフェロン療法によって著効(SVR)を示す者であるか、インターフェロン療法終了後にHCVが再燃(relapse)する者であるかを予測することができる。また本様相の方法は、一般の臨床検査と同様に患者から採取した体液を検査材料とするので、簡便かつ迅速である。
本明細書において「インターフェロン療法」とは、C型肝炎ウイルス持続感染者にインターフェロンを投与してHCVの排除を図る抗ウイルス療法を指すものとする。「インターフェロン療法」には、インターフェロン単独療法(インターフェロンの単独投与)の他に、インターフェロンと他の薬剤との併用療法、例えばインターフェロン・リバビリン併用療法(インターフェロンとリバビリンの併用投与)も含まれる。また、投与されるインターフェロンには、天然型インターフェロンの他に、ポリエチレングリコールが付加されたインターフェロン(PEGインターフェロン)のような誘導体も含まれる。
質量/電荷比の「約7780」、「約9300」、「約51300」、「約125000」等は、質量分析における測定値の誤差範囲を考慮した値であり、約7780は概ね7780±0.2%、約9300は概ね9300±0.2%、約51300は概ね51300±0.2%、約125000は概ね125000±0.2%を指す。また、これらのマーカー物質はいずれも主に血液中に存在するタンパク質である。なお、マーカー物質(A1)、(A2)及び(A3)の濃度は、インターフェロン療法終了後にHCVが再燃すると予測されるC型肝炎ウイルス持続感染者の体液において高値を示し、インターフェロン療法によって著効を示すと予測されるC型肝炎ウイルス持続感染者の体液において低値を示す。一方、マーカー物質(A4)は、前者の体液において低値を示し、後者の体液において高値を示す。
好ましくは、下記(1)〜(3)の少なくとも1つを満たす。
(1)マーカー物質(A1)は血小板第4因子又はその修飾体である、
(2)マーカー物質(A2)は結合組織活性化ペプチド3又はその修飾体である。
(3)マーカー物質(A3)はビタミンD結合タンパク質又はその修飾体である。
血小板第4因子(Platelet Factor 4)、結合組織活性化ペプチド3(Connective tissue-activating peptide 3)、及び、ビタミンD結合タンパク質(Vitamin D Binding Protein)はいずれも物理化学的性質がよく知られているので、この好ましい様相によればマーカー物質(A1)、(A2)、(A3)の解析が容易である。
本明細書において「タンパク質の修飾体」という用語は、種々の意味に用いられる。「タンパク質の修飾体」の代表例は、当該タンパク質を構成するアミノ酸残基の少なくとも1つが修飾されたタンパク質である。「修飾」には化合物や官能基の付加(例:リン酸化)のみならず、脱離(例:脱リン酸化)も含まれる。また「タンパク質又はその修飾体」には、当該タンパク質のアイソフォームが含まれる。さらに「タンパク質又はその修飾体」には、当該タンパク質の1次構造において数個のアミノ酸残基が欠失、置換若しくは付加されたような実質的に同一のタンパク質が含まれる。またさらに、「タンパク質又はその修飾体」には、プロテアーゼ等による切断を受けた当該タンパク質由来のタンパク質断片が含まれる。なお、複合体タンパク質の場合には「タンパク質又はその修飾体」にはそのサブユニットも含まれるものとする。逆に、単量体タンパク質の場合には「タンパク質又はその修飾体」にはその2量体等の多量体も含まれるものとする。
本発明の他の様相は、C型肝炎ウイルス持続感染者から採取した体液における下記(C1)〜(C3)のいずれかに属するマーカー物質の少なくとも1つの濃度を指標として、前記C型肝炎ウイルス持続感染者に対するインターフェロン療法の効果を予測することを特徴とするインターフェロン療法の効果予測方法である。
(C1)血小板第4因子又はその修飾体、
(C2)結合組織活性化ペプチド3又はその修飾体、
(C3)ビタミンD結合タンパク質又はその修飾体。
本様相のインターフェロン療法の効果予測方法では、上記(C1)〜(C3)のいずれかに属するマーカー物質の少なくとも1つを用いる。本様相の方法によっても、被験者のC型肝炎ウイルス持続感染者が、インターフェロン療法によって著効(SVR)を示す者であるか、インターフェロン療法終了後にHCVが再燃(relapse)する者であるかを予測することができる。また本様相の方法も、一般の臨床検査と同様に患者から採取した体液を検査材料とするので、簡便かつ迅速である。さらに、血小板第4因子、結合組織活性化ペプチド3、及び、ビタミンD結合タンパク質は、いずれも物理化学的性質がよく知られているので、この好ましい様相によればマーカー物質の解析が容易である。なお「タンパク質の修飾体」については上述したとおりである。
好ましくは、前記体液における下記マーカー物質(B1)〜(B11)の少なくとも1つの濃度をさらに指標とする。
(B1)pH7.0かつ0.5MのNaCl濃度で銅イオン結合金属キレート体に結合し、かつ質量分析に供すると質量/電荷比が約3360のイオンピークを生じるタンパク質、
(B2)pH9.0で強陰イオン交換体に結合し、かつ質量分析に供すると質量/電荷比が約3960のイオンピークを生じるタンパク質、
(B3)pH4.0で弱陽イオン交換体に結合し、かつ質量分析に供すると質量/電荷比が約4160のイオンピークを生じるタンパク質、
(B4)pH7.0かつ0.5MのNaCl濃度で銅イオン結合金属キレート体に結合し、かつ質量分析に供すると質量/電荷比が約6190のイオンピークを生じるタンパク質、
(B5)pH9.0で強陰イオン交換体に結合し、かつ質量分析に供すると質量/電荷比が約6510のイオンピークを生じるタンパク質、
(B6)pH4.0で弱陽イオン交換体に結合し、かつ質量分析に供すると質量/電荷比が約8610のイオンピークを生じるタンパク質、
(B7)pH9.0で強陰イオン交換体に結合し、かつ質量分析に供すると質量/電荷比が約8710のイオンピークを生じるタンパク質、
(B8)pH7.0かつ0.5MのNaCl濃度で銅イオン結合金属キレート体に結合し、かつ質量分析に供すると質量/電荷比が約13900のイオンピークを生じるタンパク質、
(B9)pH9.0で強陰イオン交換体に結合し、かつ質量分析に供すると質量/電荷比が約17300のイオンピークを生じるタンパク質、
(B10)pH9.0で強陰イオン交換体に結合し、かつ質量分析に供すると質量/電荷比が約17400のイオンピークを生じるタンパク質、
(B11)pH7.0かつ0.5MのNaCl濃度で銅イオン結合金属キレート体に結合し、かつ質量分析に供すると質量/電荷比が約28100のイオンピークを生じるタンパク質。
この好ましい様相では、マーカー物質(B1)〜(B11)の少なくとも1つの濃度をさらに指標としてインターフェロン療法の効果を予測する。マーカー物質(B1)〜(B11)は、いずれもインターフェロン療法に対して「無反応」(NR)と予測されるC型肝炎ウイルス持続感染者とそれ以外のC型肝炎ウイルス持続感染者とを判別することができるマーカー物質である。本様相の方法によれば、インターフェロン療法に対して「無反応」(NR)と予測されるC型肝炎ウイルス持続感染者を被験者から排除できるので、予測の精度が高い。
なお、インターフェロン療法に対して「無反応」(NR)なC型肝炎ウイルス持続感染者「以外」のC型肝炎ウイルス持続感染者とは、結局、インターフェロン療法終了時にHCVの陰性化(ETR)を示すC型肝炎ウイルス持続感染者のことである。当該のC型肝炎ウイルス持続感染者は、インターフェロン療法によって「著効」(SVR)を示す者とインターフェロン療法終了後にHCVが「再燃」(relapse)する者の両方を含んでいる。
ここで、質量/電荷比の「約3360」、「約8610」、「約13900」、「約28100」等は、質量分析における測定値の誤差範囲を考慮した値であり、約3360は概ね3360±0.2%、約8610は概ね8610±0.2%、約13900は概ね13900±0.2%、約28100は概ね28100±0.2%を指す。また、これらのマーカー物質はいずれも主に血液中に存在するタンパク質である。なお、マーカー物質(B1),(B2)、(B3)、(B4)、(B6)、及び(B8)は、インターフェロン療法に対して「無反応」と予測されるC型肝炎ウイルス持続感染者の体液において低値を示し、それ以外のC型肝炎ウイルス持続感染者の体液において高値を示す。一方、マーカー物質(B5)、(B7)、(B9)、(B10)、及び(B11)は、前者の体液において高値を示し、後者の体液において低値を示す。
好ましくは、下記(4)〜(13)の少なくとも1つを満たす。
(4)マーカー物質(B1)はアポリポタンパク質A1又はその修飾体である、
(5)マーカー物質(B3)はC1インヒビター又はその修飾体である、
(6)マーカー物質(B4)はアポリポタンパク質A1又はその修飾体である、
(7)マーカー物質(B5)はアポリポタンパク質C1又はその修飾体である、
(8)マーカー物質(B6)は補体C4又はその修飾体である、
(9)マーカー物質(B7)はアポリポタンパク質A2又はその修飾体である、
(10)マーカー物質(B8)はトランスサイレチン又はその修飾体である、
(11)マーカー物質(B9)はアポリポタンパク質A2又はその修飾体である、
(12)マーカー物質(B10)はアポリポタンパク質A2又はその修飾体である、
(13)マーカー物質(B11)はアポリポタンパク質A1又はその修飾体である。
アポリポタンパク質A1(Apolipoprotein A1)、C1インヒビター(Plasma Protease C1 Inhibitor)、アポリポタンパク質C1(Apolipoprotein C1)、補体C4(Complement C4)、アポリポタンパク質A2(Apolipoprotein A2)、及び、トランスサイレチン(Transthyretin)は、いずれも物理化学的性質がよく知られているので、この好ましい様相によればマーカー物質(B1)、(B3)、(B4)、(B5)、(B6)、(B7)、(B8)、(B9)、(B10)、(B11)の解析が容易である。
好ましくは、前記体液における下記(D1)〜(D6)のいずれかに属する少なくとも1つの濃度をさらに指標とする。
(D1)アポリポタンパク質A1又はその修飾体、
(D2)C1インヒビター又はその修飾体、
(D3)アポリポタンパク質C1又はその修飾体、
(D4)補体C4又はその修飾体、
(D5)アポリポタンパク質A2又はその修飾体、
(D6)トランスサイレチン又はその修飾体。
この好ましい様相では、上記(D1)〜(D6)のいずれかに属する少なくとも1つの濃度をさらに指標としてインターフェロン療法の効果を予測する。(D1)〜(D6)に属するマーカー物質は、いずれもインターフェロン療法に対して「無反応」(NR)と予測されるC型肝炎ウイルス持続感染者とそれ以外のC型肝炎ウイルス持続感染者とを判別することができるマーカー物質である。本様相の方法によっても、インターフェロン療法に対して「無反応」(NR)と予測されるC型肝炎ウイルス持続感染者を被験者から排除できるので、予測の精度が高い。さらに、アポリポタンパク質A1、C1インヒビター、アポリポタンパク質C1、補体C4、アポリポタンパク質A2、及び、トランスサイレチンは、いずれも物理化学的性質がよく知られているので、この好ましい様相によればマーカー物質の解析が容易である。なお「タンパク質の修飾体」については上述したとおりである。
本発明の他の様相は、C型肝炎ウイルス持続感染者から採取した体液における下記マーカー物質(B1)〜(B11)の少なくとも1つの濃度を指標として、前記C型肝炎ウイルス持続感染者に対するインターフェロン療法の効果を予測することを特徴とするインターフェロン療法の効果予測方法である。
(B1)pH7.0かつ0.5MのNaCl濃度で銅イオン結合金属キレート体に結合し、かつ質量分析に供すると質量/電荷比が約3360のイオンピークを生じるタンパク質、
(B2)pH9.0で強陰イオン交換体に結合し、かつ質量分析に供すると質量/電荷比が約3960のイオンピークを生じるタンパク質、
(B3)pH4.0で弱陽イオン交換体に結合し、かつ質量分析に供すると質量/電荷比が約4160のイオンピークを生じるタンパク質、
(B4)pH7.0かつ0.5MのNaCl濃度で銅イオン結合金属キレート体に結合し、かつ質量分析に供すると質量/電荷比が約6190のイオンピークを生じるタンパク質、
(B5)pH9.0で強陰イオン交換体に結合し、かつ質量分析に供すると質量/電荷比が約6510のイオンピークを生じるタンパク質、
(B6)pH4.0で弱陽イオン交換体に結合し、かつ質量分析に供すると質量/電荷比が約8610のイオンピークを生じるタンパク質、
(B7)pH9.0で強陰イオン交換体に結合し、かつ質量分析に供すると質量/電荷比が約8710のイオンピークを生じるタンパク質、
(B8)pH7.0かつ0.5MのNaCl濃度で銅イオン結合金属キレート体に結合し、かつ質量分析に供すると質量/電荷比が約13900のイオンピークを生じるタンパク質、
(B9)pH9.0で強陰イオン交換体に結合し、かつ質量分析に供すると質量/電荷比が約17300のイオンピークを生じるタンパク質、
(B10)pH9.0で強陰イオン交換体に結合し、かつ質量分析に供すると質量/電荷比が約17400のイオンピークを生じるタンパク質、
(B11)pH7.0かつ0.5MのNaCl濃度で銅イオン結合金属キレート体に結合し、かつ質量分析に供すると質量/電荷比が約28100のイオンピークを生じるタンパク質。
本様相のインターフェロン療法の効果予測方法では、マーカー物質(B1)〜(B11)の少なくとも1つの濃度を指標としてインターフェロン療法の効果を予測する。本様相の方法によれば、被験者のC型肝炎ウイルス持続感染者が、インターフェロン療法に対して「無反応」(NR)な者であるか否かを予測することができる。本様相の方法は、例えば、被験者のC型肝炎ウイルス持続感染者が、インターフェロン療法によって著効(SVR)を示す者であるか、インターフェロン療法終了後にHCVが再燃(relapse)する者であるかを予測する前の予備判定、すなわち1次スクリーニングに有用である。
好ましくは、下記(4)〜(13)の少なくとも1つを満たす。
(4)マーカー物質(B1)はアポリポタンパク質A1又はその修飾体である、
(5)マーカー物質(B3)はC1インヒビター又はその修飾体である、
(6)マーカー物質(B4)はアポリポタンパク質A1又はその修飾体である、
(7)マーカー物質(B5)はアポリポタンパク質C1又はその修飾体である、
(8)マーカー物質(B6)は補体C4又はその修飾体である、
(9)マーカー物質(B7)はアポリポタンパク質A2又はその修飾体である、
(10)マーカー物質(B8)はトランスサイレチン又はその修飾体である、
(11)マーカー物質(B9)はアポリポタンパク質A2又はその修飾体である、
(12)マーカー物質(B10)はアポリポタンパク質A2又はその修飾体である、
(13)マーカー物質(B11)はアポリポタンパク質A1又はその修飾体である。
アポリポタンパク質A1、C1インヒビター、アポリポタンパク質C1、補体C4、アポリポタンパク質A2、及び、トランスサイレチンは、いずれも物理化学的性質がよく知られているので、この好ましい様相によればマーカー物質(B1)、(B3)、(B4)、(B5)、(B6)、(B7)、(B8)、(B9)、(B10)、(B11)の解析が容易である。
本発明の他の様相は、C型肝炎ウイルス持続感染者から採取した体液における下記(D1)〜(D6)のいずれかに属するマーカー物質の少なくとも1つの濃度を指標として、前記C型肝炎ウイルス持続感染者に対するインターフェロン療法の効果を予測することを特徴とするインターフェロン療法の効果予測方法である。
(D1)アポリポタンパク質A1又はその修飾体、
(D2)C1インヒビター又はその修飾体、
(D3)アポリポタンパク質C1又はその修飾体、
(D4)補体C4又はその修飾体、
(D5)アポリポタンパク質A2又はその修飾体、
(D6)トランスサイレチン又はその修飾体。
本様相のインターフェロン療法の効果予測方法では、上記(D1)〜(D6)のいずれかに属するマーカー物質の少なくとも1つの濃度を指標としてインターフェロン療法の効果を予測する。本様相の方法によっても、被験者のC型肝炎ウイルス持続感染者が、インターフェロン療法に対して「無反応」(NR)な者であるか否かを予測することができる。本様相の方法も、例えば、被験者のC型肝炎ウイルス持続感染者が、インターフェロン療法によって著効(SVR)を示す者であるか、インターフェロン療法終了後にHCVが再燃(relapse)する者であるかを予測する前の予備判定、すなわち1次スクリーニングに有用である。
好ましくは、前記体液は、血液である。
この好ましい様相によれば、検査材料を簡単に採取できるので、より簡便かつ迅速にC型肝炎ウイルス持続感染者におけるインターフェロン療法の効果を予測することができる。
好ましくは、前記体液又は体液成分を、前記マーカー物質に対する親和性を有する物質を固定化した担体に接触させて、体液中の前記マーカー物質を担体上に捕捉し、捕捉された前記マーカー物質の量に基づいて体液中の前記マーカー物質の濃度を算出する。
この好ましい様相によれば、担体上に捕捉されたマーカー物質を測定対象とするので、測定試料中に含まれる夾雑物質の影響を低減させることができる。その結果、より高感度かつ高精度でマーカー物質の濃度を測定することができる。なお、体液成分の例としては、体液が血液である場合の血清又は血漿が挙げられる。
好ましくは、前記担体は平面部分を有し、前記マーカー物質に対する親和性を有する物質は、該平面部分の一部に固定化されている。
この好ましい様相によれば、マーカー物質に対する親和性を有する物質を、担体上の複数箇所にスポット的に固定化することができる。その結果、1個の担体で複数の測定試料を同時処理することや、1個の担体で複数のマーカー物質の濃度を同時測定することが可能となり、作業効率がよい。さらに、各スポットの面積を小さくすることにより、微量の測定試料からでもマーカー物質の濃度を測定することができる。なお、平面部分を有する担体の例としては、チップ等の基板が挙げられる。
好ましくは、前記マーカー物質に対する親和性を有する物質は、イオン交換体、金属キレート体又は抗体である。
この好ましい様相では、マーカー物質に対する親和性を有する物質としてイオン交換体、金属キレート体又は抗体を用い、これらの物質を介して測定試料中のマーカー物質を担体上に捕捉する。当該物質がイオン交換体や金属キレート体の場合には各種のものが入手容易であり、マーカー物質を捕捉するための担体を容易に調製することができる。また、当該物質が抗体の場合には、より特異的にマーカー物質を捕捉することができる。捕捉されたマーカー物質の量を測定する方法としては、質量分析、イムノアッセイ(抗体の場合)が挙げられる。
本発明のさらに他の様相は、本発明のインターフェロン療法の効果予測方法に用いるためのキットであって、前記マーカー物質に対する親和性を有する物質を固定化した担体を含むことを特徴とするインターフェロン療法の効果予測用キットである。
本様相のインターフェロン療法の効果予測用キットは、マーカー物質に対する親和性を有する物質を固定化した担体を含む。本様相のキットによれば、マーカー物質の濃度測定に際して当該担体を別途用意する必要がなく、きわめて簡便にマーカー物質の濃度を測定することができる。
好ましくは、前記マーカー物質に対する親和性を有する物質は、イオン交換体、金属キレート体又は抗体である。
この好ましい様相によれば、マーカー物質をより確実に担体上に捕捉することができる。
本発明のインターフェロン療法の効果予測方法によれば、被験者のC型肝炎ウイルス持続感染者が、インターフェロン療法によって著効を示す者であるか、インターフェロン療法終了後にHCVが再燃する者であるかを予測することができる。その結果、被験者のC型肝炎ウイルス持続感染者に対してより適切なインターフェロン療法を施すことが可能となる。
本発明のインターフェロン療法の効果予測用キットによれば、インターフェロン療法によって著効を示す者であるか、インターフェロン療法終了後にHCVが再燃する者であるかの予測を、より簡便かつ迅速に判別することができる。
本発明の1つの様相は、C型肝炎ウイルス持続感染者から採取した体液における下記マーカー物質(A1)〜(A4)の少なくとも1つの濃度を指標として、前記C型肝炎ウイルス持続感染者に対するインターフェロン療法の効果を予測することを特徴とするインターフェロン療法の効果予測方法である。
(A1)pH4.0で弱陽イオン交換体に結合し、かつ質量分析に供すると質量/電荷比が約7780のイオンピークを生じるタンパク質、
(A2)pH9.0で強陰イオン交換体に結合し、かつ質量分析に供すると質量/電荷比が約9300のイオンピークを生じるタンパク質、
(A3)pH9.0で強陰イオン交換体に結合し、かつ質量分析に供すると質量/電荷比が約51300のイオンピークを生じるタンパク質、
(A4)pH9.0で強陰イオン交換体に結合し、かつ質量分析に供すると質量/電荷比が約125000のイオンピークを生じるタンパク質。
これらのマーカー物質(A1)〜(A4)は、いずれもインターフェロン療法終了後にHCVが再燃すると予測されるC型肝炎ウイルス持続感染者とインターフェロン療法によって著効を示すと予測されるC型肝炎ウイルス持続感染者との間で体液中における濃度が有意に差があるタンパク質である。マーカー物質(A1)、(A2)及び(A3)は、前者の体液において高値を示し、後者の体液において低値を示す。一方、マーカー物質(A4)は、前者の体液において低値を示し、後者の体液において高値を示す。
1つの実施形態では、下記(1)〜(3)の少なくとも1つを満たす。
(1)マーカー物質(A1)は血小板第4因子又はその修飾体である、
(2)マーカー物質(A2)は結合組織活性化ペプチド3又はその修飾体である。
(3)マーカー物質(A3)はビタミンD結合タンパク質又はその修飾体である。
本発明の他の様相は、C型肝炎ウイルス持続感染者から採取した体液における下記(C1)〜(C3)のいずれかに属するマーカー物質の少なくとも1つの濃度を指標として、前記C型肝炎ウイルス持続感染者に対するインターフェロン療法の効果を予測することを特徴とするインターフェロン療法の効果予測方法である。
(C1)血小板第4因子又はその修飾体、
(C2)結合組織活性化ペプチド3又はその修飾体、
(C3)ビタミンD結合タンパク質又はその修飾体。
タンパク質の修飾の例としては、N末端αアミノ基やリジンεアミノ基のメチル化、アセチル化、アデニリル化、ミリスチル化等;セリン・スレオニン・アスパラギンへの糖又は糖鎖の付加;セリン・スレオニン・チロシン・アルギニン・ヒスチジンのリン酸化;システインのシステイニル化、ホモシステイニル化、スルホニル化等;グルタミン酸のγ−カルボキシル化;N末端グルタミン酸のピログルタミン酸への変換、等が挙げられる。また、これらの修飾の脱離(脱メチル化、糖又は糖鎖の脱離、脱リン酸化等)も「修飾」に含まれる。
「タンパク質又はその修飾体」には、当該タンパク質のアイソフォームが含まれる。アイソフォームとしては、前記した各種の修飾の他、選択的スプライシングによって生じたタンパク質が挙げられる。さらに、「タンパク質又はその修飾体」には、当該タンパク質の1次構造において数個のアミノ酸残基が欠失、置換若しくは付加されたような実質的に同一のタンパク質が含まれる。またさらに、「タンパク質又はその修飾体」には、プロテアーゼによる切断を受けた当該タンパク質由来のタンパク質断片が含まれる。例えば、当該タンパク質由来と認められうる長さのタンパク質断片、例えば20個以上のアミノ酸残基からなるタンパク質断片、分子量が2千以上のタンパク質断片、等が挙げられる。また、複合体タンパク質の場合には「タンパク質又はその修飾体」にはそのサブユニットも含まれるものとする。逆に、単量体タンパク質の場合には「タンパク質又はその修飾体」にはその多量体も含まれるものとする。
これらの様相の方法の被験者となるC型肝炎ウイルス持続感染者については特に限定はなく、C型肝炎患者を含めた全てのC型肝炎ウイルス持続感染者が被験者となりうる。ただし、インターフェロン療法に対して「無反応」(NR)と予測されるC型肝炎ウイルス持続感染者を被験者から排除しておくと、インターフェロン療法によって著効(SVR)を示す者と、HCVが再燃(relapse)する者との判別精度を上げることができる。インターフェロン療法に対して「無反応」と予測されるC型肝炎ウイルス持続感染者を予め排除する方法としては特に限定はなく、公知の方法を採用することができるが、被験者の体液における下記マーカー物質(B1)〜(B11)の少なくとも1つの濃度を指標として選抜することが好ましい。すなわち、本発明の好ましい実施形態では、前記体液における下記マーカー物質(B1)〜(B11)の少なくとも1つの濃度をさらに指標とする。
(B1)pH7.0かつ0.5MのNaCl濃度で銅イオン結合金属キレート体に結合し、かつ質量分析に供すると質量/電荷比が約3360のイオンピークを生じるタンパク質、
(B2)pH9.0で強陰イオン交換体に結合し、かつ質量分析に供すると質量/電荷比が約3960のイオンピークを生じるタンパク質、
(B3)pH4.0で弱陽イオン交換体に結合し、かつ質量分析に供すると質量/電荷比が約4160のイオンピークを生じるタンパク質、
(B4)pH7.0かつ0.5MのNaCl濃度で銅イオン結合金属キレート体に結合し、かつ質量分析に供すると質量/電荷比が約6190のイオンピークを生じるタンパク質、
(B5)pH9.0で強陰イオン交換体に結合し、かつ質量分析に供すると質量/電荷比が約6510のイオンピークを生じるタンパク質、
(B6)pH4.0で弱陽イオン交換体に結合し、かつ質量分析に供すると質量/電荷比が約8610のイオンピークを生じるタンパク質、
(B7)pH9.0で強陰イオン交換体に結合し、かつ質量分析に供すると質量/電荷比が約8710のイオンピークを生じるタンパク質、
(B8)pH7.0かつ0.5MのNaCl濃度で銅イオン結合金属キレート体に結合し、かつ質量分析に供すると質量/電荷比が約13900のイオンピークを生じるタンパク質、
(B9)pH9.0で強陰イオン交換体に結合し、かつ質量分析に供すると質量/電荷比が約17300のイオンピークを生じるタンパク質、
(B10)pH9.0で強陰イオン交換体に結合し、かつ質量分析に供すると質量/電荷比が約17400のイオンピークを生じるタンパク質、
(B11)pH7.0かつ0.5MのNaCl濃度で銅イオン結合金属キレート体に結合し、かつ質量分析に供すると質量/電荷比が約28100のイオンピークを生じるタンパク質。
これらのマーカー物質(B1)〜(B11)は、いずれもインターフェロン療法に対して「無反応」(NR)と予測されるC型肝炎ウイルス持続感染者とそれ以外(ETR)のC型肝炎ウイルス持続感染者との間で体液中における濃度が有意に差があるタンパク質である。マーカー物質(B1),(B2)、(B3)、(B4)、(B6)、及び(B8)は、前者の体液において低値を示し、後者の体液において高値を示す。一方、マーカー物質(B5)、(B7)、(B9)、(B10)、及び(B11)は、前者の体液において高値を示し、後者の体液において低値を示す。
この好ましい実施形態では、まず、(B1)〜(B11)の少なくとも1つを指標として、被験者のC型肝炎ウイルス持続感染者がインターフェロン療法に対して「無反応」(NR)と予測される者であるか否かを判定する(予備判定)。次に、インターフェロン療法に対して「無反応」と予測される者でない(ETR)と判定された被験者に対して(A1)〜(A4)の少なくとも1つを指標とし、インターフェロン療法によって著効(SVR)を示すと予測される者とインターフェロン療法終了後にHCVが再燃(relapse)すると予測される者のいずれであるかを判定する(本判定)。ただし、マーカー物質の濃度測定についてはこの順番で行う必要はなく、作業効率を考慮して適宜行えばよい。例えば、(A1)〜(A4)並びに(B1)〜(B11)の各マーカーの濃度を一度に測定し、各測定値を相互に照らし合わせることにより、予備判定と本判定とを行ってもよい。本実施形態では予備判定によって本判定の対象をあらかじめ絞り込むので、インターフェロン療法によって著効を示すと予測される者とインターフェロン療法終了後にHCVが再燃すると予測される者との判別精度が特に高い。
1つの実施形態では、下記(4)〜(13)の少なくとも1つを満たす。
(4)マーカー物質(B1)はアポリポタンパク質A1又はその修飾体である、
(5)マーカー物質(B3)はC1インヒビター又はその修飾体である、
(6)マーカー物質(B4)はアポリポタンパク質A1又はその修飾体である、
(7)マーカー物質(B5)はアポリポタンパク質C1又はその修飾体である、
(8)マーカー物質(B6)は補体C4又はその修飾体である、
(9)マーカー物質(B7)はアポリポタンパク質A2又はその修飾体である、
(10)マーカー物質(B8)はトランスサイレチン又はその修飾体である、
(11)マーカー物質(B9)はアポリポタンパク質A2又はその修飾体である、
(12)マーカー物質(B10)はアポリポタンパク質A2又はその修飾体である、
(13)マーカー物質(B11)はアポリポタンパク質A1又はその修飾体である。
他の実施形態では、前記体液における下記(D1)〜(D6)のいずれかに属する少なくとも1つの濃度をさらに指標とする。
(D1)アポリポタンパク質A1又はその修飾体、
(D2)C1インヒビター又はその修飾体、
(D3)アポリポタンパク質C1又はその修飾体、
(D4)補体C4又はその修飾体、
(D5)アポリポタンパク質A2又はその修飾体、
(D6)トランスサイレチン又はその修飾体。
「タンパク質の修飾体」の例については上述のとおりである。さらに具体的に例を挙げると、例えば、後述の実施例5で示したような、ヒトアポリポタンパク質A1(配列番号36)のアミノ酸番号81〜109の部分に相当するタンパク質断片(配列番号37)は「アポリポタンパク質A1の修飾体」に含まれる。また後述の実施例7で示したような、ヒトアポリポタンパク質A1のC末端側に相当する各タンパク質断片は「アポリポタンパク質A1の修飾体」に含まれる。
後述の実施例6で示したような、ヒトC1インヒビター(配列番号39)のアミノ酸番号467〜500に相当するタンパク質断片(配列番号40)は「C1インヒビターの修飾体」に含まれる。
後述の実施例8で示したような、ヒトアポリポタンパク質C1(配列番号45)のN末端側のアミノ酸2個が欠損したタンパク質断片(配列番号46)は「アポリポタンパク質C1の修飾体」に含まれる。
補体C4(配列番号99)の断片である補体C4a(配列番号49)は、「補体C4の修飾体」に含まれる。さらに、後述の実施例9に示したような、補体C4aのC末端のArgが欠損したタンパク質断片(配列番号50)は「補体C4の修飾体」に含まれる。配列番号50のタンパク質断片は「補体C4aの修飾体」とも換言できる。
後述の実施例10に示したような、ヒトアポリポタンパク質A2(配列番号57)にCysが付加したシステイニル化アポリポタンパク質A2は「アポリポタンパク質A2の修飾体」に含まれる。また、アポリポタンパク質A2のC末端のGlnが欠損したタンパク質断片(配列番号58)、さらに、当該タンパク質断片にCysが付加したもの(システイニル化アポリポタンパク質A2の断片)は「アポリポタンパク質A2の修飾体」に含まれる。
後述の実施例12に示したように、アポリポタンパク質A2(配列番号57)の2量体は「アポリポタンパク質A2の修飾体」に含まれる。さらにアポリポタンパク質A2(配列番号57)とGln欠損アポリポタンパク質A2(配列番号58)との組み合わせからなる2量体は「アポリポタンパク質A2の修飾体」に含まれる。またさらに、Gln欠損アポリポタンパク質A2(配列番号58)の2量体は「アポリポタンパク質A2の修飾体」に含まれる。
トランスサイレチンについては、その唯一のCys残基が修飾を受けた種々の修飾トランスサイレチンが見出されている(Amareth Lim et al., J. Biol. Chem., vol. 258, No. 50, 2003)。後述の実施例11に示したように、ヒトトランスサイレチン(配列番号65)のCys残基にCysが付加したシステイニル化トランスサイレチンは「トランスサイレチンの修飾体」に含まれる。
マーカー物質(B1)〜(B11)は、インターフェロン療法によって著効を示すと予測される者とインターフェロン療法終了後にHCVが再燃すると予測される者とを判別する際の予備判定に有用なものであるが、単にインターフェロン療法に対して「無反応」と予測される者とそれ以外の者とを判別する目的に用いることもできる。(D1)〜(D6)のいずれかに属する各マーカー物質についても同様である。
本発明において使用する体液としては、血液が好ましく用いられる。特に、血液から調製した血清又は血漿(体液成分)を検査材料(測定試料)とすることが好ましい。血清又は血漿は遠心分離等の公知の方法で血液から調製することができる。
本発明において、マーカー物質の濃度を測定する方法は、そのマーカー物質の濃度を特異的に測定できる方法であれば、タンパク質の定量に一般に用いられている方法をそのまま用いることができる。例えば、各種のイムノアッセイ、質量分析(MS)、クロマトグラフィー、電気泳動等を用いることができる。
イムノアッセイによれば、夾雑物質の多い試料のままでも正確にマーカー物質の濃度を測定することができる。イムノアッセイの例としては、抗原抗体結合物を直接的又は間接的に測定する沈降反応、凝集反応、溶血反応などの古典的な方法や、標識法と組み合わせて検出感度を高めたエンザイムイムノアッセイ(EIA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、蛍光イムノアッセイ(FIA)等の方法が挙げられる。なお、これらのイムノアッセイに用いるマーカー物質に特異的な抗体は、モノクローナルでもよいし、ポリクローナルでもよい。
質量分析によれば、各マーカー物質由来のイオンピークを特定し、そのイオンピーク強度をもって各マーカー物質の量(濃度)を測定することができる。質量分析によってマーカー物質の濃度を測定する場合のイオン化の方法としては、マトリクス支援レーザーイオン化(matrix-assisted laser desorption/ionization;MALDI)、エレクトロスプレーイオン化(electrospray ionization;ESI)のいずれも適用可能であるが、多価イオンの生成が少ないMALDIが好ましい。特に、飛行時間質量分析計(time-of-flight mass spectrometer;TOF)と組み合わせたMALDI−TOF−MSによれば、より正確にマーカー物質由来のイオンピークを特定することができる。
電気泳動によりマーカー物質の濃度を測定する場合には、例えば、測定試料をSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)に供して目的のマーカー物質を分離し、適宜の色素や蛍光物質でゲルを染色し、目的のマーカー物質に相当するバンドの濃さや蛍光強度を測定すればよい。SDS−PAGEだけではマーカー物質の分離が不十分な場合は、等電点電気泳動(IEF)と組み合わせた2次元電気泳動を用いることもできる。さらに、ゲルから直接検出するのではなく、ウエスタンブロッティングを行って膜上のマーカー物質の量を測定することもできる。
クロマトグラフィーによってマーカー物質の濃度を測定する場合には、例えば、液体高速クロマトグラフィー(HPLC)による方法を用いることができる。すなわち、試料をHPLCに供して目的のマーカー物質を分離し、そのクロマトグラムのピーク面積を測定することにより試料中のマーカー物質の濃度を測定することができる。
好ましい実施形態では、マーカー物質を担体上に捕捉し、その捕捉されたマーカー物質を測定対象とする。すなわち、マーカー物質に対する親和性を有する物質を担体に固定化し、その親和性を有する物質を介してマーカー物質を担体上に捕捉する。そして、捕捉された前記マーカー物質の量に基づいて体液中の前記マーカー物質の濃度を算出する。本実施形態によれば、試料中に含まれる夾雑物質の影響を低減させることができ、より高感度かつ高精度でマーカー物質の濃度を測定することができる。本実施形態において用いることができる担体の例としては、ビーズ、金属、ガラス、樹脂等のような一般的なものの他、基板のような、平面部分を有する担体を用いることができる。基板を用いる場合は、その平面部分の一部にマーカー物質に対する親和性を有する物質を固定化することが好ましい。例としては、基板としてチップを用い、その表面の複数箇所にスポット的にマーカー物質に親和性を有する物質を固定化した担体が挙げられる。なお「親和性」の例としては、イオン結合;金属キレート体とタンパク質中のヒスチジン残基等とのアフィニティ;抗原と抗体、酵素と基質、ホルモンとレセプターのようなバイオアフィニティ;疎水性相互作用のような化学的な相互作用、などが挙げられる。
イオン結合によってマーカー物質を担体に捕捉する場合は、イオン交換体を担体に固定化する。この場合、イオン交換体には陽イオン交換体、陰イオン交換体のいずれも用いることができ、さらに、強陽イオン交換体、弱陽イオン交換体、強陰イオン交換体、弱陰イオン交換体のいずれも用いることができるが、強陰イオン交換体と弱陽イオン交換体が好ましく用いられる。強陰イオン交換体の例としては、4級アンモニウム(トリメチルアミノメチル)(QA)、4級アミノエチル(ジエチル,モノ・2−ヒドロキシブチルアミノエチル)(QAE)、4級アンモニウム(トリメチルアンモニウム)(QMA)等の強陰イオン交換基を有するものが挙げられる。また、弱陽イオン交換体の例としては、カルボキシメチル(CM)等の弱陽イオン交換基を有するものが挙げられる。また、強陽イオン交換体の例としては、スルホプロピル(SP)等の強陽イオン交換基を有するものが挙げられる。さらに、弱陰イオン交換体の例としては、ジメチルアミノエチル(DE)、ジエチルアミノエチル(DEAE)等の弱陰イオン交換基を有するものが挙げられる。
金属キレート体を介してマーカー物質を捕捉する場合は、例えば、Cu2+、Zn2+、Ni2+、Co2+、Al3+、Fe3+、Ga3+等の金属キレート体を固定化した担体を用いることができる。好ましくは、銅イオン結合金属キレート体が用いられる。
抗体によってマーカー物質を担体に捕捉する場合は、マーカー物質に特異的な抗体を担体に固定化すればよい。
疎水性相互作用によってマーカー物質を担体に捕捉する場合は、担体に疎水基をもつ物質を固定化する。疎水基の例としては、C4〜C20のアルキル基、フェニル基等が挙げられる。
本実施形態においてマーカー物質の測定方法にイムノアッセイを用いる場合は、抗体を固定化した担体を用いることが好ましい。このようにすれば、担体に固定化された抗体を1次抗体としたイムノアッセイの系を簡単に構築することができる。例えば、マーカー物質に特異的でエピトープの異なる2種類の抗体を用意し、一方を1次抗体として担体に固定化し、他方を2次抗体として酵素標識し、サンドイッチEIAの系を構築することができる。その他、結合阻止法や競合法によるイムノアッセイの系も構築可能である。さらに、担体として基板を用いる場合は、抗体チップによるイムノアッセイが可能である。抗体チップによれば、複数のマーカー物質の濃度を同時に測定でき、迅速な測定が可能である。
一方、本実施形態において質量分析を用いる場合は、例えば、抗体の他、イオン交換体、金属キレート体又は疎水基を固定化した担体を用いることができる。なお、これらの物質による結合は抗原と抗体等のバイオアフィニティほどの特異性がないので、これらの物質を固定化した担体を用いる場合はマーカー物質以外の物質も担体上に捕捉されうるが、質量分析によれば分子量を反映した質量分析計スペクトルによって定量するので、問題はない。特に、担体として基板を用い、表面エンハンス型レーザー脱離イオン化(surface-enhanced laser desorption/ionization)−飛行時間質量分析(time-of-flight mass spectrometry)(以下、「SELDI−TOF−MS」と称する)を行うことにより、マーカー物質の濃度をより正確に測定することができる。使用できる基板の種類としては、陽イオン交換基板、陰イオン交換基板、順相基板、逆相基板、金属イオン基板、抗体基板等を用いることができるが、陽イオン交換基板、特に弱陽イオン交換基板と、陰イオン交換基板、特に強陰イオン交換基板と、金属イオン基板とが好ましく用いられる。
本発明の方法によって被験者のC型肝炎ウイルス持続感染者がインターフェロン療法によって著効(SVR)を示すと予測される者とインターフェロン療法終了後にHCVが再燃(relapse)すると予測される者のいずれであるかを実際に判定する手順の一例について、順を追って説明する。この例では、マーカー物質(B1)〜(B11)の少なくとも1つを指標とする予備判定と、マーカー物質(A1)〜(A4)の少なくとも1つを指標とする本判定とを行う。また、検査材料として血漿を用い、各マーカーの濃度測定はSELDI−TOF−MSによって行う。
まず被験者のC型肝炎ウイルス持続感染者から血液を採取し、検査材料となる血漿を調製する。この血漿をpH9.0の条件でQA等の強陰イオン交換樹脂カラムにアプライする。その後、pH9.0(素通り)、pH8.0、pH7.0、pH6.0、pH5.0、pH4.0、及びpH3.0の各溶出液で順次溶出し、最後に有機溶媒で溶出する。各溶出画分を確保する。
pH9.0の画分をCM等の弱陽イオン交換体を固定化した基板(弱陽イオン交換基板)に接触させ、次いで、pH4.0の条件で洗浄する。このとき、マーカー物質(B6)が基板上に捕捉される。また、pH9.0の画分をQA等の強陰イオン交換体を固定化した基板(強陰イオン交換基板)に接触させ、次いで、pH9.0の条件で洗浄する。このとき、マーカー物質(A4)が基板上に捕捉される。また、pH9.0の画分を銅イオン金属キレート体を固定化した基板(銅イオン基板)に接触させ、次いで、pH7.0かつ0.5M NaClの条件で洗浄する。このとき、マーカー物質(B1)及び(B4)が基板上に捕捉される。
pH5.0の画分をCM等の弱陽イオン交換基板に接触させ、次いで、pH4.0の条件で洗浄する。このとき、マーカー物質(A1)が基板上に捕捉される。また、pH5.0の画分をQA等の強陰イオン交換基板に接触させ、次いで、pH9.0の条件で洗浄する。このとき、マーカー物質(A2)及び(B2)が基板上に捕捉される。
pH4.0の画分をQA等の強陰イオン交換基板に接触させ、次いで、pH9.0の条件で洗浄する。このとき、マーカー物質(A3)、(B5)、(B7)、(B9)、及び(B10)が基板上に捕捉される。
有機溶媒の画分をCM等の弱陽イオン交換基板に接触させ、次いで、pH4.0の条件で洗浄する。このとき、マーカー物質(B3)が基板上に捕捉される。また、有機溶媒の画分を銅イオン基板に接触させ、次いで、pH7.0かつ0.5M NaClの条件で洗浄する。このとき、マーカー物質(B8)及び(B11)が基板上に捕捉される。
各基板をSELDI−TOF−MSに供し、各マーカー物質に対応するイオンピークの強度を測定する。得られた各イオンピーク強度を基準値と比較する。基準値としては、例えばマーカー物質(A1)〜(A4)の場合には、インターフェロン療法によって著効を示すことが分かっているC型肝炎ウイルス持続感染者の治療前の血漿と、インターフェロン療法終了後にHCVが再燃することが分かっているC型肝炎ウイルス持続感染者の治療前の血漿を用いて、同様のSELDI−TOF−MSを予め行い、両者の値を比較して設定したカットオフ値を採用することができる。一方、マーカー物質(B1)〜(B11)の場合には、インターフェロン療法に対して無反応であることが分かっているC型肝炎ウイルス持続感染者の治療前の血漿と、それ以外の者であることが分かっているC型肝炎ウイルス持続感染者の治療前の血漿を用いて、同様のSELDI−TOF−MSを予め行い、両者の値を比較して設定したカットオフ値を採用することができる。この際の「著効」(SVR)、「再燃」(relapse)、「無反応」(NR)、および「無反応以外」(ETR)の確定診断については、例えば、血漿中のHCV濃度を元に行うことができる。
まず、マーカー物質(B1)〜(B11)の測定結果を元に、予備判定を行う。具体的には、マーカー物質(B1),(B2)、(B3)、(B4)、(B6)、又は(B8)の場合には、設定した基準値よりもイオンピーク強度が小さいときに、当該C型肝炎ウイルス持続感染者が「インターフェロン療法に対して無反応な者である」と判定する。マーカー物質(B5)、(B7)、(B9)、(B10)、又は(B11)の場合には、設定した基準値よりもイオンピーク強度が大きいときに、当該C型肝炎ウイルス持続感染者が「インターフェロン療法に対して無反応な者である」と判定する。ここで、(B1)〜(B11)の各マーカー物質については、1つだけを採用してもよいし、2つ以上を組み合わせて採用してもよい。
次に、予備判定で「インターフェロン療法に対して無反応な者である」と判定されたC型肝炎ウイルス持続感染者を排除し、残った者を対象として、マーカー物質(A1)〜(A4)の測定結果を元に本判定を行う。具体的には、マーカー物質(A1)、(A2)、又は(A3)の場合には、設定した基準値よりもイオンピーク強度が大きいときに、当該C型肝炎ウイルス持続感染者が「インターフェロン療法終了後にHCVが再燃する者である」と判定する。一方、マーカー物質(A4)の場合には、設定した基準値よりもイオンピーク強度が小さいときに、当該C型肝炎ウイルス持続感染者が「インターフェロン療法終了後にHCVが再燃する者である」と判定する。ここで、(A1)〜(A4)の各マーカー物質については、1つだけを採用してもよいし、2つ以上を組み合わせて採用してもよい。
本判定で「インターフェロン療法終了後にHCVが再燃する者」と判定されたC型肝炎ウイルス持続感染者については、インターフェロン投与を中断するとHCVが再燃する可能性が高く、長期間のインターフェロン投与が効果的と予測される。一方、本判定で「インターフェロン療法終了後にHCVが再燃する者」でないと判定されたC型肝炎ウイルス持続感染者については、インターフェロン療法によって著効を示す可能性が高く、一定期間のインターフェロン投与が効果的と予測される。なお、予備判定で「インターフェロン療法に対して無反応な者」と判定されたC型肝炎ウイルス持続感染者については、インターフェロン療法を行うべきか否かについて注意深く検討する必要がある。
本発明のインターフェロン療法の効果予測用キットは、上記したマーカー物質に対する親和性を有する物質を固定化した担体を含むものである。好ましい実施形態では、マーカー物質に対する親和性を有する物質が、イオン交換体、金属キレート体又は抗体である。本実施形態のキットによれば、SELDI−TOF−MS等を簡便に行なうことができる。本キット中には他の試薬類、例えば、各マーカー物質の標準品、各種バッファー等を含めてもよい。本発明のキットの構成例を以下に挙げる。
(キットの構成例)
(1)弱陽イオン交換基板:1枚
(2)強陰イオン交換基板:1枚
(3)銅イオン基板:1枚
(4)基板洗浄用バッファーA(pH4.0):適量
(5)基板洗浄用バッファーB(pH9.0):適量
(6)基板洗浄用バッファーC(pH7.0;0.5M NaClを含む):適量
(7)各マーカー物質の標準品:各適量
以下に、実施例をもって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
1.プロテインチップを用いたマーカー物質の検索
PEGインターフェロンα2bとリバビリンの48週投与および投与後24週の経過観察による「インターフェロンα・リバビリン併用療法」を受けたC型肝炎患者の治療前の血漿サンプルを収集した。患者の内訳は、著効(SVR)を示した者(48週投与終了時と投与後24週目の両方においてHCV陰性)10名、無反応(NR)であった者(48週投与終了時においてHCV陽性)10名、HCVが再燃(relapse)した者(48週投与終了時においてHCV陰性、投与後24週目においてHCV陽性)12名とした。HCV陰性化の確認は、血中におけるHCV(genotype 1b)数を測定することにより行なった。
各血漿サンプル20μLに、変性バッファー(9M 尿素、2% CHAPS、50mM Tris−HCl(pH9.0))30μLを加えて前処理を行い、タンパク質を変性させた。次に、前処理した各血清サンプルを強陰イオン交換樹脂カラム(Q Ceramic−Hyper DF、バイオセプラ社)にアプライした。次いで、pH9.0のバッファー(50mM Tris−HCl(pH9.0)、0.1%(w/v)1−o−N−オクチル−β−D−グルコピラノシド(以下、「OGP」と称する。))、pH8.0のバッファー(50mM Tris−HCl(pH8.0)、0.1%(w/v)OGP)、pH7.0のバッファー(50mM HEPES−NaOH(pH7.0)、0.1%(w/v)OGP)、pH6.0のバッファー(100mM リン酸ナトリウム(pH6.0)、0.1%(w/v)OGP)、pH5.0のバッファー(100mM 酢酸ナトリウム(pH5.0)、0.1%(w/v)OGP)、pH4.0のバッファー(100mM 酢酸ナトリウム(pH4.0)、0.1%(w/v)OGP)、pH3.0のバッファー(50mM クエン酸ナトリウム(pH3.0)、0.1%(w/v)OGP)、及び有機溶媒(33.3% イソプロパノール、16.7% アセトニトリル、0.1%トリフルオロ酢酸からなる混合液)各200μLで順に溶出させ、画分1(pH9.0、素通り)、画分2(pH8.0)、画分3(pH7.0)、画分4(pH6.0)、画分5(pH5.0)、画分6(pH4.0)、画分7(pH3.0)、画分8(有機溶媒)の8つの粗分画画分を得た。
得られた各画分10μLをpH4.0のプロテインチップ結合バッファー(100mM 酢酸ナトリウム,pH4.0)で10倍希釈した後、弱陽イオン交換チップCM10(バイオラッド社)に添加した。同様に、得られた各画分10μLをpH9.0のプロテインチップ結合バッファー(50mM Tris−HCl,pH9.0)で10倍希釈した後、強陰イオン交換チップQ10(バイオラッド社)に添加した。同様に、得られた各画分10μLをpH7.0かつ0.5M NaClのプロテインチップ結合バッファー(100mM リン酸ナトリウム,0.5M NaCl,pH7.0)で10倍希釈した後、銅修飾チップIMAC30(バイオラッド社)に添加した。各プロテインチップを各結合バッファーで3回洗浄した後に脱イオン水で1回洗浄し、乾燥させた。
次に、各プロテインチップにエネルギー吸収分子であるシナピン酸(SPA−H、SPA−L)又はα−シアノ−4−ヒドロキシケイ皮酸(CHCA)を添加し、プロテインチップリーダーModel PBS IIc(バイオラッド社)を用いて、SELDI−TOF−MSを行なった。なお、測定分子量範囲(m/z)は、3000〜200000の範囲で行なった。また、測定は2連で行い、m/zの平均値を算出した。データ解析は、Protein Chip Software、CiphergenExpress Data Manager、及びBiomarker Patterns Software(いずれもバイオラッド社)を用いて行なった。具体的には、ベースライン補正、分子量校正、スペクトルの正規化処理を行なった後、シングルマーカー解析及び数本のマーカーを組み合わせたマルチフロー解析を行なった。その結果、粗分画画分の種類、プロテインチップの種類、チップの洗浄条件等の組み合わせによって多数のピークが検出された。各ピークについて、p値(Mann−Whitney検定法)、ROC面積、及びイオンピーク強度を算出した。これらの結果から、著効(SVR)を示した者とHCVが再燃(relapse)した者との間でイオンピーク強度に有意な差を示したイオンピークを4種選抜し、これらに対応するタンパク質を(A1)〜(A4)と命名した。同様に、無反応(NR)であった者とそれ以外(ETR)の者との間でイオンピーク強度に有意な差を示したイオンピークを11種選抜し、これらに対応するタンパク質を(B1)〜(B11)と命名した。
2.マーカー物質(A1)の特性
画分5(pH5.0)を弱陽イオン交換チップCM10に接触させ、pH4.0のプロテインチップ結合バッファーで洗浄してSELDI−TOF−MS(EAM:SPA−H)を行なった場合に、質量/電荷比が7777(平均値)のイオンピークが検出された。本ピークは著効(SVR)を示した者で低値を示し、HCVが再燃(relapse)した者で高値を示した。図1(a)に著効を示した者とHCVが再燃した者に分けてピーク強度をプロットしたドットプロット、図1(b)にその箱髭図を示す。図1(a)中の横棒は平均値、図1(b)中の髭の上端と下端はそれぞれ最大値と最小値、箱の上辺と下辺はそれぞれ第3四分位(75パーセンタイル)と第1四分位(25パーセンタイル)、箱の中の線は中央値である(図2以降も同じ)。その結果、本ピークのp値(SVR vs relapse)は0.020、ROC面積は0.72であった。以上より、血液中のタンパク質でSELDI−TOF−MSに供すると質量/電荷比が約7780のピークを生じるタンパク質が、インターフェロン療法によって著効を示すC型肝炎ウイルス持続感染者とインターフェロン療法終了後にHCVが再燃するC型肝炎ウイルス持続感染者との判別の指標となることがわかった。例えば、C型肝炎ウイルス持続感染者の治療前の血漿を検査材料として、上記した条件のSELDI−TOF−MSを行い、質量/電荷比が約7780のイオンピーク強度が基準値より高い場合に、そのC型肝炎ウイルス持続感染者はインターフェロン療法終了後にHCVが再燃する者であると予測することができる。
3.マーカー物質(A2)の特性
画分5(pH5.0)を強陰イオン交換チップQ10に接触させ、pH9.0のプロテインチップ結合バッファーで洗浄してSELDI−TOF−MS(EAM:SPA−H)を行なった場合に、質量/電荷比が9298(平均値)のイオンピークが検出された。本ピークは著効(SVR)を示した者で低値を示し、HCVが再燃(relapse)した者で高値を示した。図2(a)に著効を示した者とHCVが再燃した者に分けてピーク強度をプロットしたドットプロット、図2(b)にその箱髭図を示す。その結果、本ピークのp値(SVR vs relapse)は0.008、ROC面積は0.72であった。以上より、血液中のタンパク質でSELDI−TOF−MSに供すると質量/電荷比が約9300のピークを生じるタンパク質が、インターフェロン療法によって著効を示すC型肝炎ウイルス持続感染者とインターフェロン療法終了後にHCVが再燃するC型肝炎ウイルス持続感染者との判別の指標となることがわかった。例えば、C型肝炎ウイルス持続感染者の治療前の血漿を検査材料として、上記した条件のSELDI−TOF−MSを行い、質量/電荷比が約9300のイオンピーク強度が基準値より高い場合に、そのC型肝炎ウイルス持続感染者はインターフェロン療法終了後にHCVが再燃する者であると予測することができる。
4.マーカー物質(A3)の特性
画分6(pH4.0)を強陰イオン交換チップQ10に接触させ、pH9.0のプロテインチップ結合バッファーで洗浄してSELDI−TOF−MS(EAM:SPA−H)を行なった場合に、質量/電荷比が51321(平均値)のイオンピークが検出された。本ピークは著効(SVR)を示した者で低値を示し、HCVが再燃(relapse)した者で高値を示した。図3(a)に著効を示した者とHCVが再燃した者に分けてピーク強度をプロットしたドットプロット、図3(b)にその箱髭図を示す。その結果、本ピークのp値(SVR vs relapse)は0.045、ROC面積は0.70であった。以上より、血液中のタンパク質でSELDI−TOF−MSに供すると質量/電荷比が約51300のピークを生じるタンパク質が、インターフェロン療法によって著効を示すC型肝炎ウイルス持続感染者とインターフェロン療法終了後にHCVが再燃するC型肝炎ウイルス持続感染者との判別の指標となることがわかった。例えば、C型肝炎ウイルス持続感染者の治療前の血漿を検査材料として、上記した条件のSELDI−TOF−MSを行い、質量/電荷比が約51300のイオンピーク強度が基準値より高い場合に、そのC型肝炎ウイルス持続感染者はインターフェロン療法終了後にHCVが再燃する者であると予測することができる。
5.マーカー物質(A4)の特性
画分1(pH9.0)を強陰イオン交換チップQ10に接触させ、pH9.0のプロテインチップ結合バッファーで洗浄してSELDI−TOF−MS(EAM:SPA−H)を行なった場合に、質量/電荷比が125350(平均値)のイオンピークが検出された。本ピークは著効(SVR)を示した者で高値を示し、HCVが再燃(relapse)した者で低値を示した。図4(a)に著効を示した者とHCVが再燃した者に分けてピーク強度をプロットしたドットプロット、図4(b)にその箱髭図を示す。その結果、本ピークのp値(SVR vs relapse)は0.003、ROC面積は0.75であった。以上より、血液中のタンパク質でSELDI−TOF−MSに供すると質量/電荷比が約125000のピークを生じるタンパク質が、インターフェロン療法によって著効を示すC型肝炎ウイルス持続感染者とインターフェロン療法終了後にHCVが再燃するC型肝炎ウイルス持続感染者との判別の指標となることがわかった。例えば、C型肝炎ウイルス持続感染者の治療前の血漿を検査材料として、上記した条件のSELDI−TOF−MSを行い、質量/電荷比が約125000のイオンピーク強度が基準値より低い場合に、そのC型肝炎ウイルス持続感染者はインターフェロン療法終了後にHCVが再燃する者であると予測することができる。
6.マーカー物質(B1)の特性
画分1(pH9.0)を銅修飾チップIMAC30に接触させ、pH7.0かつ0.5M NaClのプロテインチップ結合バッファーで洗浄してSELDI−TOF−MS(EAM:CHCA)を行なった場合に、質量/電荷比が3356(平均値)のイオンピークが検出された。本ピークはインターフェロン療法に対して無反応(NR)であった者で低値を示し、それ以外(ETR)の者で高値を示した。図5(a)に無反応であった者とそれ以外の者に分けてピーク強度をプロットしたドットプロット、図5(b)にその箱髭図を示す。その結果、本ピークのp値(NR vs ETR)は0.028、ROC面積は0.67であった。以上より、血液中のタンパク質でSELDI−TOF−MSに供すると質量/電荷比が約3360のピークを生じるタンパク質が、インターフェロン療法に対して無反応なC型肝炎ウイルス持続感染者とそれ以外のC型肝炎ウイルス持続感染者との判別の指標となることがわかった。例えば、C型肝炎ウイルス持続感染者の治療前の血漿を検査材料として、上記した条件のSELDI−TOF−MSを行い、質量/電荷比が約3360のイオンピーク強度が基準値より低い場合に、そのC型肝炎ウイルス持続感染者はインターフェロン療法に対して無反応な者であると予測することができる。このようにして無反応な者と予測された以外のC型肝炎ウイルス持続感染者については、さらに、上記したマーカー物質(A1)〜(A4)の少なくとも1つを指標として著効を示す者とHCVが再燃する者のいずれであるかを予測することができる。
7.マーカー物質(B2)の特性
画分5(pH5.0)を強陰イオン交換チップQ10に接触させ、pH9.0のプロテインチップ結合バッファーで洗浄してSELDI−TOF−MS(EAM:SPA−L)を行なった場合に、質量/電荷比が3962(平均値)のイオンピークが検出された。本ピークはインターフェロン療法に対して無反応(NR)であった者で低値を示し、それ以外(ETR)の者で高値を示した。図6(a)に無反応であった者とそれ以外の者に分けてピーク強度をプロットしたドットプロット、図6(b)にその箱髭図を示す。その結果、本ピークのp値(NR vsETR)は0.00002、ROC面積は0.83であった。以上より、血液中のタンパク質でSELDI−TOF−MSに供すると質量/電荷比が約3960のピークを生じるタンパク質が、インターフェロン療法に対して無反応なC型肝炎ウイルス持続感染者とそれ以外のC型肝炎ウイルス持続感染者との判別の指標となることがわかった。例えば、C型肝炎ウイルス持続感染者の治療前の血漿を検査材料として、上記した条件のSELDI−TOF−MSを行い、質量/電荷比が約3960のイオンピーク強度が基準値より低い場合に、そのC型肝炎ウイルス持続感染者はインターフェロン療法に対して無反応な者であると予測することができる。このようにして無反応な者と予測された以外のC型肝炎ウイルス持続感染者については、さらに、上記したマーカー物質(A1)〜(A4)の少なくとも1つを指標として著効を示す者とHCVが再燃する者のいずれであるかを予測することができる。
8.マーカー物質(B3)の特性
画分8(有機溶媒)を弱陽イオン交換チップCM10に接触させ、pH4.0のプロテインチップ結合バッファーで洗浄してSELDI−TOF−MS(EAM:CHCA)を行なった場合に、質量/電荷比が4156(平均値)のイオンピークが検出された。本ピークはインターフェロン療法に対して無反応(NR)であった者で低値を示し、それ以外(ETR)の者で高値を示した。図7(a)に無反応であった者とそれ以外の者に分けてピーク強度をプロットしたドットプロット、図7(b)にその箱髭図を示す。その結果、本ピークのp値(NR vs ETR)は0.031、ROC面積は0.68であった。以上より、血液中のタンパク質でSELDI−TOF−MSに供すると質量/電荷比が約4160のピークを生じるタンパク質が、インターフェロン療法に対して無反応なC型肝炎ウイルス持続感染者とそれ以外のC型肝炎ウイルス持続感染者との判別の指標となることがわかった。例えば、C型肝炎ウイルス持続感染者の治療前の血漿を検査材料として、上記した条件のSELDI−TOF−MSを行い、質量/電荷比が約4160のイオンピーク強度が基準値より低い場合に、そのC型肝炎ウイルス持続感染者はインターフェロン療法に対して無反応な者であると予測することができる。このようにして無反応な者と予測された以外のC型肝炎ウイルス持続感染者については、さらに、上記したマーカー物質(A1)〜(A4)の少なくとも1つを指標として著効を示す者とHCVが再燃する者のいずれであるかを予測することができる。
9.マーカー物質(B4)の特性
画分1(pH9.0)を銅修飾チップIMAC30に接触させ、pH7.0かつ0.5M NaClのプロテインチップ結合バッファーで洗浄してSELDI−TOF−MS(EAM:CHCA)を行なった場合に、質量/電荷比が6194(平均値)のイオンピークが検出された。本ピークはインターフェロン療法に対して無反応(NR)であった者で低値を示し、それ以外(ETR)の者で高値を示した。図8(a)に無反応であった者とそれ以外の者に分けてピーク強度をプロットしたドットプロット、図8(b)にその箱髭図を示す。その結果、本ピークのp値(NR vs ETR)は0.006、ROC面積は0.70であった。以上より、血液中のタンパク質でSELDI−TOF−MSに供すると質量/電荷比が約6190のピークを生じるタンパク質が、インターフェロン療法に対して無反応なC型肝炎ウイルス持続感染者とそれ以外のC型肝炎ウイルス持続感染者との判別の指標となることがわかった。例えば、C型肝炎ウイルス持続感染者の治療前の血漿を検査材料として、上記した条件のSELDI−TOF−MSを行い、質量/電荷比が約6190のイオンピーク強度が基準値より低い場合に、そのC型肝炎ウイルス持続感染者はインターフェロン療法に対して無反応な者であると予測することができる。このようにして無反応な者と予測された以外のC型肝炎ウイルス持続感染者については、さらに、上記したマーカー物質(A1)〜(A4)の少なくとも1つを指標として著効を示す者とHCVが再燃する者のいずれであるかを予測することができる。
10.マーカー物質(B5)の特性
画分6(pH4.0)を強陰イオン交換チップQ10に接触させ、pH9.0のプロテインチップ結合バッファーで洗浄してSELDI−TOF−MS(EAM:SPA−H)を行なった場合に、質量/電荷比が6511(平均値)のイオンピークが検出された。本ピークはそれ以外(ETR)の者で低値を示し、インターフェロン療法に対して無反応(NR)であった者で高値を示した。図9(a)に無反応であった者とそれ以外の者に分けてピーク強度をプロットしたドットプロット、図9(b)にその箱髭図を示す。その結果、本ピークのp値(NR vs ETR)は0.049、ROC面積は0.64であった。以上より、血液中のタンパク質でSELDI−TOF−MSに供すると質量/電荷比が約6510のピークを生じるタンパク質が、インターフェロン療法に対して無反応なC型肝炎ウイルス持続感染者とそれ以外のC型肝炎ウイルス持続感染者との判別の指標となることがわかった。例えば、C型肝炎ウイルス持続感染者の治療前の血漿を検査材料として、上記した条件のSELDI−TOF−MSを行い、質量/電荷比が約6510のイオンピーク強度が基準値より高い場合に、そのC型肝炎ウイルス持続感染者はインターフェロン療法に対して無反応な者であると予測することができる。このようにして無反応な者と予測された以外のC型肝炎ウイルス持続感染者については、さらに、上記したマーカー物質(A1)〜(A4)の少なくとも1つを指標として著効を示す者とHCVが再燃する者のいずれであるかを予測することができる。
11.マーカー物質(B6)の特性
画分1(pH9.0)を弱陽イオン交換チップCM10に接触させ、pH4.0のプロテインチップ結合バッファーで洗浄してSELDI−TOF−MS(EAM:SPA−L)を行なった場合に、質量/電荷比が8608(平均値)のイオンピークが検出された。本ピークはインターフェロン療法に対して無反応(NR)であった者で低値を示し、それ以外(ETR)の者で高値を示した。図10(a)に無反応であった者とそれ以外の者に分けてピーク強度をプロットしたドットプロット、図10(b)にその箱髭図を示す。その結果、本ピークのp値(NR vs ETR)は0.030、ROC面積は0.66であった。以上より、血液中のタンパク質でSELDI−TOF−MSに供すると質量/電荷比が約8610のピークを生じるタンパク質が、インターフェロン療法に対して無反応なC型肝炎ウイルス持続感染者とそれ以外のC型肝炎ウイルス持続感染者との判別の指標となることがわかった。例えば、C型肝炎ウイルス持続感染者の治療前の血漿を検査材料として、上記した条件のSELDI−TOF−MSを行い、質量/電荷比が約8610のイオンピーク強度が基準値より低い場合に、そのC型肝炎ウイルス持続感染者はインターフェロン療法に対して無反応な者であると予測することができる。このようにして無反応な者と予測された以外のC型肝炎ウイルス持続感染者については、さらに、上記したマーカー物質(A1)〜(A4)の少なくとも1つを指標として著効を示す者とHCVが再燃する者のいずれであるかを予測することができる。
12.マーカー物質(B7)の特性
画分6(pH4.0)を強陰イオン交換チップQ10に接触させ、pH9.0のプロテインチップ結合バッファーで洗浄してSELDI−TOF−MS(EAM:SPA−L)を行なった場合に、質量/電荷比が8713(平均値)のイオンピークが検出された。本ピークはインターフェロン療法に対して無反応(NR)であった者で高値を示し、それ以外(ETR)の者で低値を示した。図11(a)に無反応であった者とそれ以外の者に分けてピーク強度をプロットしたドットプロット、図11(b)にその箱髭図を示す。その結果、本ピークのp値(NR vs ETR)は0.0008、ROC面積は0.75であった。以上より、血液中のタンパク質でSELDI−TOF−MSに供すると質量/電荷比が約8710のピークを生じるタンパク質が、インターフェロン療法に対して無反応なC型肝炎ウイルス持続感染者とそれ以外のC型肝炎ウイルス持続感染者との判別の指標となることがわかった。例えば、C型肝炎ウイルス持続感染者の治療前の血漿を検査材料として、上記した条件のSELDI−TOF−MSを行い、質量/電荷比が約8710のイオンピーク強度が基準値より高い場合に、そのC型肝炎ウイルス持続感染者はインターフェロン療法に対して無反応な者であると予測することができる。このようにして無反応な者と予測された以外のC型肝炎ウイルス持続感染者については、さらに、上記したマーカー物質(A1)〜(A4)の少なくとも1つを指標として著効を示す者とHCVが再燃する者のいずれであるかを予測することができる。
13.マーカー物質(B8)の特性
画分8(有機溶媒)を銅修飾チップIMAC30に接触させ、pH7.0かつ0.5M NaClのプロテインチップ結合バッファーで洗浄してSELDI−TOF−MS(EAM:SPA−H)を行なった場合に、質量/電荷比が13882(平均値)のイオンピークが検出された。本ピークはインターフェロン療法に対して無反応(NR)であった者で低値を示し、それ以外(ETR)の者で高値を示した。図12(a)に無反応であった者とそれ以外の者に分けてピーク強度をプロットしたドットプロット、図12(b)にその箱髭図を示す。その結果、本ピークのp値(NR vs ETR)は0.037、ROC面積は0.66であった。以上より、血液中のタンパク質でSELDI−TOF−MSに供すると質量/電荷比が約13900のピークを生じるタンパク質が、インターフェロン療法に対して無反応なC型肝炎ウイルス持続感染者とそれ以外のC型肝炎ウイルス持続感染者との判別の指標となることがわかった。例えば、C型肝炎ウイルス持続感染者の治療前の血漿を検査材料として、上記した条件のSELDI−TOF−MSを行い、質量/電荷比が約13900のイオンピーク強度が基準値より低い場合に、そのC型肝炎ウイルス持続感染者はインターフェロン療法に対して無反応な者であると予測することができる。このようにして無反応な者と予測された以外のC型肝炎ウイルス持続感染者については、さらに、上記したマーカー物質(A1)〜(A4)の少なくとも1つを指標として著効を示す者とHCVが再燃する者のいずれであるかを予測することができる。
14.マーカー物質(B9)の特性
画分6(pH4.0)を強陰イオン交換チップQ10に接触させ、pH9.0のプロテインチップ結合バッファーで洗浄してSELDI−TOF−MS(EAM:SPA−H)を行なった場合に、質量/電荷比が17271(平均値)のイオンピークが検出された。本ピークはそれ以外(ETR)の者で低値を示し、インターフェロン療法に対して無反応(NR)であった者で高値を示した。図13(a)に無反応であった者とそれ以外の者に分けてピーク強度をプロットしたドットプロット、図13(b)にその箱髭図を示す。その結果、本ピークのp値(NR vsETR)は0.0001、ROC面積は0.80であった。以上より、血液中のタンパク質でSELDI−TOF−MSに供すると質量/電荷比が約17300のピークを生じるタンパク質が、インターフェロン療法に対して無反応なC型肝炎ウイルス持続感染者とそれ以外のC型肝炎ウイルス持続感染者との判別の指標となることがわかった。例えば、C型肝炎ウイルス持続感染者の治療前の血漿を検査材料として、上記した条件のSELDI−TOF−MSを行い、質量/電荷比が約17300のイオンピーク強度が基準値より高い場合に、そのC型肝炎ウイルス持続感染者はインターフェロン療法に対して無反応な者であると予測することができる。このようにして無反応な者と予測された以外のC型肝炎ウイルス持続感染者については、さらに、上記したマーカー物質(A1)〜(A4)の少なくとも1つを指標として著効を示す者とHCVが再燃する者のいずれであるかを予測することができる。
15.マーカー物質(B10)の特性
画分6(pH4.0)を強陰イオン交換チップQ10に接触させ、pH9.0のプロテインチップ結合バッファーで洗浄してSELDI−TOF−MS(EAM:CHCA)を行なった場合に、質量/電荷比が17424(平均値)のイオンピークが検出された。本ピークはインターフェロン療法に対して無反応(NR)であった者で高値を示し、それ以外(ETR)の者で低値を示した。図14(a)に無反応であった者とそれ以外の者に分けてピーク強度をプロットしたドットプロット、図14(b)にその箱髭図を示す。その結果、本ピークのp値(NR vsETR)は0.0000001、ROC面積は0.90であった。以上より、血液中のタンパク質でSELDI−TOF−MSに供すると質量/電荷比が約17400のピークを生じるタンパク質が、インターフェロン療法に対して無反応なC型肝炎ウイルス持続感染者とそれ以外のC型肝炎ウイルス持続感染者との判別の指標となることがわかった。例えば、C型肝炎ウイルス持続感染者の治療前の血漿を検査材料として、上記した条件のSELDI−TOF−MSを行い、質量/電荷比が約17400のイオンピーク強度が基準値より高い場合に、そのC型肝炎ウイルス持続感染者はインターフェロン療法に対して無反応な者であると予測することができる。このようにして無反応な者と予測された以外のC型肝炎ウイルス持続感染者については、さらに、上記したマーカー物質(A1)〜(A4)の少なくとも1つを指標として著効を示す者とHCVが再燃する者のいずれであるかを予測することができる。
16.マーカー物質(B11)の特性
画分8(有機溶媒)を銅修飾チップIMAC30に接触させ、pH7.0かつ0.5M NaClのプロテインチップ結合バッファーで洗浄してSELDI−TOF−MS(EAM:SPA−H)を行なった場合に、質量/電荷比が28076(平均値)のイオンピークが検出された。本ピークはそれ以外(ETR)の者で低値を示し、インターフェロン療法に対して無反応(NR)であった者で高値を示した。図15(a)に無反応であった者とそれ以外の者に分けてピーク強度をプロットしたドットプロット、図15(b)にその箱髭図を示す。その結果、本ピークのp値(NR vsETR)は0.0004、ROC面積は0.77であった。以上より、血液中のタンパク質でSELDI−TOF−MSに供すると質量/電荷比が約28100のピークを生じるタンパク質が、インターフェロン療法に対して無反応なC型肝炎ウイルス持続感染者とそれ以外のC型肝炎ウイルス持続感染者との判別の指標となることがわかった。例えば、C型肝炎ウイルス持続感染者の治療前の血漿を検査材料として、上記した条件のSELDI−TOF−MSを行い、質量/電荷比が約28100のイオンピーク強度が基準値より高い場合に、そのC型肝炎ウイルス持続感染者はインターフェロン療法に対して無反応な者であると予測することができる。このようにして無反応な者と予測された以外のC型肝炎ウイルス持続感染者については、さらに、上記したマーカー物質(A1)〜(A4)の少なくとも1つを指標として著効を示す者とHCVが再燃する者のいずれであるかを予測することができる。
マーカー物質(A1)の精製と同定
アフィニティ樹脂 NHS-activated Sepharose 100μL(GEヘルスケア社)をスピンカラムに充填し、リガンドとしてウサギIgG(シグマ社)1mgを結合させ、PBSで平衡化した。ヒト標準血清(CEMICOM社)100μLをPBSで2倍希釈した後、平衡化した前記カラムに添加した。TPBSでカラムを洗浄(400μL×3回)し、さらにPBSでカラムを洗浄(400μL×2回)した後、100μLの50%アセトニトリル/0.5%TFAで溶出した。回収した溶出画分の精製度をSELDI−TOF−MSにて確認した。
回収した画分の一部をアセトン沈殿処理した後、ポリペプチド分離用ゲル(15−20%)NTH−5A0T(DRC社)を用いてSDS−PAGEを行った。図16に結果を示す。図16中、レーン1,2はいずれも回収画分、Mは分子量マーカーである。分離された約7.8kDaのバンド(図16の矢印)を切り出してタンパク質を抽出し、SELDI−TOF−MS分析を行い、マーカー物質(A1)の質量/電荷比(平均値:7777)と同等の質量/電荷比を示すピークを確認した(図17の矢印)。
あらためて同様のSDS−PAGEを行って約7.8kDaのバンドを切り出し、還元アルキル化処理した後、0.01μg/μLのトリプシン溶液(50mM 炭酸水素アンモニウム(pH8.0)に溶解)を作用させてゲル内で消化した。消化したサンプル1μLを金属プレート上に滴下し、飽和CHCA溶液0.4μLをさらに滴下して乾燥させた後、質量分析計Proteomics Analyzer 4700(アプライドバイオシステムズ社)で測定したところ、少なくとも6個のピークが検出され、それらの精密質量は、「944.53」、「1577.84」、「1905.00」、「2033.10」、「1333.71」、及び「1461.80」と算出された。これらのデータを元にMascotデータベース(マトリックスサイエンス社)によって既知タンパク質を検索し、ペプチドマスフィンガープリンティングを行ったところ、これらのペプチドはそれぞれ配列番号1〜6で表わされるアミノ酸配列のペプチドと一致し、目的のタンパク質は99%以上の確率で「血小板第4因子」(配列番号7)と同定された。各ペプチドの精密質量、アミノ酸配列、及び配列番号の対応関係を第1表に示す。
マーカー物質(A2)の精製と同定
強陽イオン交換樹脂SP-Sepharose HP(GEヘルスケア社)1mLを充填したスピンカラムを平衡化バッファー(100mM 酢酸ナトリウムバッファー(pH5.5))にて平衡化した。ヒト標準血清(CEMICOM社)1.25mLを前記平衡化バッファーで10倍に希釈し、ステリフリップHV 0.45μmでろ過した後、平衡化した前記カラムに添加した。前記平衡化バッファー(2.5mL×1回)、50mM CAPS−NaOHバッファー(pH10.0)(2.5mL×4回)、及び50mM リン酸カリウムバッファー(pH11.0)(2.5mL×1回)でカラムを洗浄し、50mM リン酸カリウムバッファー(pH11.0)2.5mLで溶出した。回収した溶出画分の精製度をSELDI−TOF−MSにて確認した。
回収した画分の一部をアセトン沈殿処理した後、ポリペプチド分離用ゲル(15−20%)NTH−5A0T(DRC社)を用いてSDS−PAGEを行った。図18に結果を示す。図18中、レーン1〜3はいずれも回収画分、Mは分子量マーカーである。分離された約9.3kDaのバンド(図18の矢印)を切り出してタンパク質を抽出し、SELDI−TOF−MS分析を行い、マーカー物質(A2)の質量/電荷比(平均値:9298)と同等の質量/電荷比を示すピークを確認した(図19の矢印)。
あらためて同様のSDS−PAGEを行って約9.3kDaのバンドを切り出し、実施例2と同様にして質量分析計Proteomics Analyzer 4700(アプライドバイオシステムズ社)で測定したところ、少なくとも13個のピークが検出され、それらの精密質量は、「2151.08」、「1724.83」、「2433.12」、「1548.73」、「1100.63」、「2651.42」、「2979.55」、「1569.80」、「1897.95」、「2026.05」、「1184.61」、「1056.52」、及び「1297.69」と算出された。これらのデータを元にMascotデータベース(マトリックスサイエンス社)によって既知タンパク質を検索し、ペプチドマスフィンガープリンティングを行ったところ、これらのペプチドはそれぞれ配列番号8〜20で表わされるアミノ酸配列のペプチドと一致し、目的のタンパク質は99%以上の確率で「血小板塩基性タンパク質(Platelet Basic Protein)」(配列番号21)と同定された。さらにその電荷/質量比(平均値:9298)から、マーカー物質(A2)は血小板塩基性タンパク質の断片の1つである「結合組織活性化ペプチド3」(配列番号22,アミノ酸配列からの理論分子量:9292)と同定された。各ペプチドの精密質量、アミノ酸配列、及び配列番号の対応関係を第2表に示す。
マーカー物質(A3)の精製と同定
Hi Trap Blue HP 1mL(GEヘルスケア社)を20mMリン酸バッファー(pH7.0)にて平衡化した。ヒト標準血清(CEMICOM社)500μLを20,000G、4℃で10分間遠心し、上清を回収した。回収した上清450μLを20mMリン酸バッファー(pH7.0)で10倍希釈し、Millex HV 0.45μmでろ過した後、平衡化した前記カラムに添加した。20mMリン酸バッファー(pH7.0)でカラムを洗浄し、素通り画分と洗浄画分を確保した。280nmの吸光度が高い画分を回収し、精製度をSELDI−TOF−MSにて確認した。
Hi Trap Q HP 1mL(GEヘルスケア社)を20mMリン酸バッファー(pH7.0)/50mM Tris−HClにて平衡化した。回収した画分4.5mLを50mM Tris−HClで2倍希釈し、平衡化した前記カラムに添加した。20mMリン酸バッファー(pH7.0)/50mM Tris−HClにてカラムを洗浄し(5CV)、さらに50mM Tris−HCl(pH7.0)、50mM MES−NaOH(pH6.0)、50mM酢酸ナトリウムバッファー(pH5.0)で順次洗浄した。50mM酢酸ナトリウム(pH4.0)で溶出し、280nmの吸光度が高い画分を回収し、精製度をSELDI−TOF−MSにて確認した。
回収した画分の一部をアセトン沈殿処理した後、7.5%ポリアクリルアミドゲルを用いてSDS−PAGEを行った。図20に結果を示す。図20中、レーン1〜6はいずれも回収画分、Mは分子量マーカーである。分離された約51.3kDaのバンド(図20の矢印)を切り出してタンパク質を抽出し、SELDI−TOF−MS分析を行い、マーカー物質(A3)の質量/電荷比(平均値:51321)と同等の質量/電荷比を示すピークを確認した(図21の矢印)。
あらためて同様のSDS−PAGEを行って約51.3kDaのバンドを切り出し、実施例2と同様にして質量分析計Proteomics Analyzer 4700(アプライドバイオシステムズ社)で測定したところ、少なくとも11個のピークが検出され、それらの精密質量は、「2328.16」、「1529.78」、「1694.90」、「2518.00」、「2707.18」、「1254.71」、「1275.56」、「1388.68」、「915.46」、「1326.75」、及び「2092.82」と算出された。これらのデータを元にMascotデータベース(マトリックスサイエンス社)によって既知タンパク質を検索し、ペプチドマスフィンガープリンティングを行ったところ、これらのペプチドはそれぞれ配列番号23〜33で表わされるアミノ酸配列のペプチドと一致し、目的のタンパク質は99%以上の確率で「ビタミンD結合タンパク質」(配列番号34)と同定された。各ペプチドの精密質量、アミノ酸配列、及び配列番号の対応関係を第3表に示す。
マーカー物質(B1)の精製と同定
強陰イオン交換樹脂Q-Sepharose FF(GEヘルスケア社)500μLを充填したスピンカラムを50mM Tris−HCl(pH9.0)にて平衡化した。ヒト標準血清(CEMICOM社)100μLを50mM Tris−HCl(pH9.0)で5倍に希釈した後、平衡化した前記カラムに添加した。500μLの50mM Tris−HCl(pH9.0)でカラムを洗浄し、50mMリン酸バッファー(pH7.0)/0.1%OGPで溶出した。回収した溶出画分の精製度をSELDI−TOF−MSにて確認した。
弱陽イオン交換樹脂CM-Sepharose FF(GEヘルスケア社)100μLを充填したスピンカラムを50mM酢酸バッファー(pH5.0)で平衡化した。回収した画分1mLを10%酢酸にてpH5.0に調整した後、その全量を平衡化した前記カラムに添加した。非吸着画分を回収し、精製度をSELDI−TOF−MSにて確認した。
TSK-GEL Super ODS(東ソー社)を0.1%TFAで平衡化した。回収した画分をカラムに添加した。溶媒A(0.1%TFA)から溶媒B(アセトニトリル/0.1%TFA)への直線濃度勾配により溶出した。回収した画分の精製度をSELDI−TOF−MSにて確認した。回収した画分を同じ条件の逆相HPLCに再度供した。回収した画分を3つに分け(主要画分、参考画分1,2)、それらの精製度をSELDI−TOF−MSにて確認した(図22(a)〜(c))。主要画分と参考画分1に、マーカー物質(B1)と同等の質量/電荷比を示すピークを確認した(図22(a),(b)の矢印)。
各画分をトリプシン消化し、SELDI−TOF−MSを行った。主要画分と参考画分2との比較から、マーカー物質(B1)に固有の断片ピーク(m/z:1374)を主要画分と参考画分1から見出した。参考画分1のトリプシン消化物を質量分析計Q−STAR(アプライドバイオシステムズ社)で測定し、マーカー物質(B1)に固有の断片ピーク(m/z:1374)を解析した。
マーカー物質(B1)に固有の断片ピーク(m/z:1374)のMS/MSデータを元にシーケンスタグ法を行い、Mascotデータベース(マトリックスサイエンス社)によって既知タンパク質を検索したところ、断片ピーク(m/z:1374)のペプチドは配列番号35で表わされるアミノ酸配列(LSPLGEEMRDR)のペプチドと一致し、目的のタンパク質は99%以上の確率で「アポリポタンパク質A1」(配列番号36)と同定された。さらに、アポリポタンパク質A1全長のアミノ酸配列(配列番号36)と配列番号35との比較、並びに、マーカー物質(B1)の質量/電荷比(平均値:3356)から、マーカー物質(B1)はアポリポタンパク質A1の81番目〜109番目に相当するタンパク質断片(配列番号37)と同定された。
マーカー物質(B3)の精製と同定
強陽イオン交換樹脂SP-Sepharose HP(GEヘルスケア社)1mLを充填したスピンカラムを平衡化バッファー(100mM 酢酸ナトリウムバッファー(pH5.5))にて平衡化した。ヒト標準血清(CEMICOM社)1.25mLを前記平衡化バッファーで10倍に希釈し、ステリフリップHV 0.45μmでろ過した後、平衡化した前記カラムに添加した。前記平衡化バッファー2.5mLでカラムを洗浄した後、50mM CAPS−NaOHバッファー(pH10.0)2.5mLで4回溶出した(計10.0mL)。2回目の溶出画分を回収し、精製度をSELDI−TOF−MSにて確認した。
回収した画分の一部をアセトン沈殿処理した後、ポリペプチド分離用ゲル(15−20%)NTH−5A0T(DRC社)を用いてSDS−PAGEを行った。図23に結果を示す。図23中、レーン1〜4はいずれも回収画分、Mは分子量マーカーである。分離された約4.2kDaのバンド(図23の矢印)を切り出してタンパク質を抽出し、SELDI−TOF−MS分析を行い、マーカー物質(B3)の質量/電荷比(平均値:4156)と同等の質量/電荷比を示すピークを確認した(図24の矢印)。
あらためて同様のSDS−PAGEを行って約4.2kDaのバンドを切り出し、実施例2と同様にして質量分析計Proteomics Analyzer 4700(アプライドバイオシステムズ社)で測定したところ、少なくとも1個のピークが検出され、その精密質量は「853.44」と算出された。このデータを元にMascotデータベース(マトリックスサイエンス社)によって既知タンパク質を検索し、ペプチドマスフィンガープリンティングを行ったところ、このペプチドは配列番号38で表わされるアミノ酸配列(FPVFMGR)のペプチドと一致し、目的のタンパク質は99%以上の確率で「C1インヒビター」(配列番号39)と同定された。さらにその電荷/質量比(平均値:4156)から、マーカー物質(B3)は「配列番号38の468番目〜500番目(C末端)に相当するタンパク質断片(配列番号40、アミノ酸配列からの理論分子量:4153)と同定された。
マーカー物質(B4)の精製と同定
強陰イオン交換樹脂Q-Sepharose FF(GEヘルスケア社)2mLを充填したスピンカラムを平衡化バッファー(50mM Tris−HCl(pH9.0),1M 尿素,0.22%CHAPS)にて平衡化した。ヒト標準血清(CEMICOM社)1mLに対して変性バッファー(50mM Tris−HCl(pH9.0),9M 尿素,2% CHAPS)を1mL加えて変性処理した。さらに、1.5M Trisバッファーを用いてpH9.0に調整した後、平衡化した前記カラムに添加した。非吸着画分2mLを回収した後、2mLの50mM Tris−HCl(pH9.0)/0.1%OGPでカラムを洗浄し、洗浄画分を回収した。各画分の精製度をSELDI−TOF−MSにて確認した。
弱陽イオン交換樹脂CM-Sepharose FF(GEヘルスケア社)200μLを充填したスピンカラムを100mM酢酸バッファー(pH4.0)/0.1%OGPで平衡化した。先の非吸着画分と洗浄画分とを混合し、さらに10%酢酸にてpH4.0に調整した後、平衡化した前記カラムに添加した。非吸着画分を素通りさせ、さらに、100mM酢酸バッファー(pH4.0)/0.1%OGPをベースにNaCl濃度を段階的に0.5Mまで上げながらカラムを洗浄した。200μLの33.3%イソプロパノール/16.7%アセトニトリル/0.1%TFAで3回溶出した。回収した各画分の精製度をSELDI−TOF−MSにて確認した。
回収した各画分を混合した。この混合画分を逆相カラムTSK-GEL Super ODS(東ソー社)を用いたHPLCに供した。カラム2本を用い、溶出条件として溶媒A(0.1%TFA)から溶媒B(70%アセトニトリル/0.1%TFA)への直線グラジエントを採用した。SELDI−TOF−MSにて溶出位置を確認しながら、8回繰り返した。さらに、グラジエント条件を変更して6回繰り返した。最終溶出画分の精製度をSELDI−TOF−MSにて確認した。マーカー物質(B4)の質量/電荷比(平均値:6194)と同等の質量/電荷比を示すピークと同等の質量/電荷比を示すピークを確認した(図25の矢印)。
回収した画分の一部をアセトン沈殿処理した後、16.2%T−6%Cポリアクリルアミド(Tricine)ゲルを用いてSDS−PAGEを行った。図26に結果を示す。図26中、レーン1,2はいずれも回収画分、Mは分子量マーカーである。約6.2kDaのバンドが検出された(図26の矢印)。
あらためて同様のSDS−PAGEを行って約6.2kDaのバンドを切り出し、実施例2と同様にして質量分析計Q−STAR(アプライドバイオシステムズ社)で測定したところ、少なくとも1個のピークが検出され、その精密質量は「1386.71」と算出された。このデータを元にMascotデータベース(マトリックスサイエンス社)によって既知タンパク質を検索し、ペプチドマスフィンガープリンティングを行ったところ、このペプチドは配列番号41で表わされるアミノ酸配列(VSFLSALEEYTKK)のペプチドと一致し、目的のタンパク質は99%以上の確率で「アポリポタンパク質A1」(配列番号36)と同定された。さらにその電荷/質量比(平均値:6194)と配列番号41のアミノ酸配列から、マーカー物質(B4)、マーカー物質(B4)はアポリポタンパク質A1のC末端側のタンパク質断片と考えられた。可能性としては、配列番号36の140番目〜195番目、141番目〜196番目、142番目〜197番目、144番目〜198番目、又は146番目〜200番目に相当するタンパク質断片が考えられた。
マーカー物質(B5)の精製と同定
強陰イオン交換樹脂Q-Sepharose FF(GEヘルスケア社)1mLを充填したスピンカラムを50mM Tris−HCl(pH9.0)にて平衡化した。ヒト標準血清(CEMICOM社)500μLに対して変性バッファー(50mM Tris−HCl(pH9.0),9M 尿素,2% CHAPS)を750μL加えて変性処理した後、平衡化した前記カラムに添加した。非吸着画分を回収し、精製度をSELDI−TOF−MSにて確認した。
回収した画分の一部をアセトン沈殿処理した後、ポリペプチド分離用ゲル(15−20%)NTH−5A0T(DRC社)を用いてSDS−PAGEを行った。図27に結果を示す。図27中、レーン1〜3はいずれも回収画分、Mは分子量マーカーである。分離された約6.5kDaのバンド(図27の矢印)を切り出してタンパク質を抽出し、SELDI−TOF−MS分析を行い、マーカー物質(B5)の質量/電荷比(平均値:6511)と同等の質量/電荷比を示すピークを確認した(図28の矢印)。
あらためて同様のSDS−PAGEを行って約6.5kDaのバンドを切り出し、実施例2と同様にして質量分析計Proteomics Analyzer 4700(アプライドバイオシステムズ社)で測定したところ、少なくとも3個のピークが検出され、それらの精密質量は、「1293.67」、「1488.70」、及び「1201.55」と算出された。これらのデータを元にMascotデータベース(マトリックスサイエンス社)によって既知タンパク質を検索し、ペプチドマスフィンガープリンティングを行ったところ、これらのペプチドはそれぞれ配列番号42〜44で表わされるアミノ酸配列のペプチドと一致し、目的のタンパク質は99%以上の確率で「アポリポタンパク質C1」(配列番号45)と同定された。さらにその電荷/質量比(平均値:6511)から、マーカー物質(B5)は配列番号45のN末端側のアミノ酸2個が欠損した「アポリポタンパク質C1の断片」(配列番号46、アミノ酸配列からの理論分子量:6432)と同定された。各ペプチドの精密質量、アミノ酸配列、及び配列番号の対応関係を第4表に示す。
マーカー物質(B6)の精製と同定
強陰イオン交換樹脂Q-Sepharose FF(GEヘルスケア社)500μLを充填したスピンカラムを平衡化バッファー(50mM Tris−HCl(pH9.0),1M尿素,0.22%CHAPS)にて平衡化した。ヒト標準血清(CEMICOM社)100μLに対して変性バッファー(50mM Tris−HCl(pH9.0),9M 尿素,2% CHAPS)を150μL加えて変性処理した。さらに、250μLの前記平衡化バッファーを加えて希釈した後、平衡化した前記カラムに添加した。非吸着画分500μLを回収した。さらに500μLの50mM Tris−HCl(pH9.0)/0.1%OGPで溶出した。非吸着画分と溶出画分を混合し、目的画分とした。目的画分の精製度をSELDI−TOF−MSにて確認した。
弱陽イオン交換樹脂CM-Sepharose FF(GEヘルスケア社)100μLを充填したスピンカラムを100mMリン酸バッファーにて平衡化した。先の目的画分を10%酢酸でpH6.0に調整した後、平衡化した前記カラムに添加した。非非吸着画分を素通りさせた。100μLの100mMリン酸バッファー(pH6.0)/0,1%OGPでカラムを3回洗浄した。100μLの0.1M NaClを含む100mMリン酸バッファー(pH6.0)/0,1%OGPで2回溶出し、各画分を回収した。回収した各画分の精製度をSELDI−TOF−MSにて確認した。
非多孔性陽イオン交換カラムSP-NPR(東ソー社)を50mM MES−NaOHで平行化し、先の溶出画分を添加した。50mM MES−NaOH(pH6.0)から500mM NaClを含む50mM MES−NaOH(pH6.0)への直線濃度勾配により溶出した。溶出画分の精製度をSELDI−TOF−MSにて確認した。
回収した画分の一部をアセトン沈殿処理した後、15%ポリアクリルアミドゲルを用いてSDS−PAGEを行った。図29に結果を示す。図29中、レーン1,2はいずれも回収画分、Mは分子量マーカーである。分離された約8.6kDaのバンド(図29の矢印)を切り出してタンパク質を抽出し、SELDI−TOF−MS分析を行い、マーカー物質(B6)の質量/電荷比(平均値:8607)と同等の質量/電荷比を示すピークを確認した(図30の矢印)。
あらためて同様のSDS−PAGEを行って約8.6kDaのバンドを切り出し、実施例2と同様にして質量分析計Q−STAR(アプライドバイオシステムズ社)で測定したところ、少なくとも2個のピークが検出され、それらの精密質量は、「749.40」及び「1035.50」と算出された。これらのデータを元にMascotデータベース(マトリックスサイエンス社)によって既知タンパク質を検索し、ペプチドマスフィンガープリンティングを行ったところ、これらのペプチドはそれぞれ配列番号47,48で表わされるアミノ酸配列のペプチドと一致し、目的のタンパク質は99%以上の確率で「補体C4a」(配列番号49)と同定された。
さらにその電荷/質量比(平均値:8607)から、マーカー物質(B6)はC末端アミノ酸のArgが欠失した補体C4aの断片「補体C4a des Arg」(配列番号50、アミノ酸配列からの理論分子量:8608)であることが示唆された。各ペプチドの精密質量、アミノ酸配列、及び配列番号の対応関係を第5表に示す。
マーカー物質(B7)の精製と同定
強陰イオン交換樹脂Q-Sepharose FF(GEヘルスケア社)1mLを充填したスピンカラムを50mM Tris−HCl(pH9.0)にて平衡化した。ヒト標準血清(CEMICOM社)500μLに対して変性バッファー(50mM Tris−HCl(pH9.0),9M 尿素,2% CHAPS)を750μL加えて変性処理した後、平衡化した前記カラムに添加した。非吸着画分を回収し、精製度をSELDI−TOF−MSにて確認した。
回収した画分の一部をアセトン沈殿処理した後、ポリペプチド分離用ゲル(15−20%)NTH−5A0T(DRC社)を用いてSDS−PAGEを行った。図31に結果を示す。図31中、レーン1〜3はいずれも回収画分、Mは分子量マーカーである。分離された約8.7kDaのバンド(図31の矢印)を切り出してタンパク質を抽出し、SELDI−TOF−MS分析を行い、マーカー物質(B7)の質量/電荷比(平均値:8700)と同等の質量/電荷比を示すピークを確認した(図32の矢印)。
あらためて同様のSDS−PAGEを行って約8.7kDaのバンドを切り出し、実施例2と同様にして質量分析計Proteomics Analyzer 4700(アプライドバイオシステムズ社)で測定したところ、少なくとも6個のピークが検出され、それらの精密質量は、「2677.29」、「2350.11」、「2982.44」、「1156.69」、「2513.31」、及び「2385.25」と算出された。これらのデータを元にMascotデータベース(マトリックスサイエンス社)によって既知タンパク質を検索し、ペプチドマスフィンガープリンティングを行ったところ、これらのペプチドはそれぞれ配列番号51〜56で表わされるアミノ酸配列のペプチドと一致し、目的のタンパク質は99%以上の確率で「アポリポタンパク質A2」(配列番号57)と同定された。各ペプチドの精密質量、アミノ酸配列、及び配列番号の対応関係を第6表に示す。
アポリポタンパク質A2はジスルフィド結合による2量体で存在すること、並びに、N末端のGln残基が欠損したものも存在することが知られている(Brewer et al., Proc. Natl. Acad. Sci., 1972, 69, 1304-1308)。そこで、ゲルから抽出したタンパク質をOn−Chipで還元処理し、還元条件と非還元条件でのイオンピークのプロファイルを比較した。その結果、Cysの質量に相当するピークのシフトが観察された。この結果と電荷/質量比(平均値:8700)から、マーカー物質(B7)は、システイニル化されたアポリポタンパク質A2であって且つそのC末端のGlnが欠損しているアポリポタンパク質A2の修飾体であると考えられた。C末端のGlnが欠損しているアポリポタンパク質A2断片の配列を配列番号58に示す。
マーカー物質(B8)の精製と同定
強陰イオン交換樹脂Q-Sepharose HP(GEヘルスケア社)1mLを充填したスピンカラムを平衡化バッファー(50mM Tris−HCl(pH9.0),1M尿素,0.22%CHAPS)にて平衡化した。ヒト標準血清(コスモバイオ社)500μLに対して変性バッファー(50mM Tris−HCl(pH9.0),9M 尿素,2% CHAPS)を750μL加え、4℃で20分間、変性処理した。この変性処理サンプルを平衡化した前記カラムに添加した。50mM Tris−HCl(pH9.0)、100mM酢酸ナトリウムバッファー(pH5.0)、50mMクエン酸ナトリウム(pH3.0)で順次カラムを洗浄した。50%アセトニトリル/0.1%TFAにて溶出した。溶出画分の精製度をSELDI−TOF−MSにて確認した。
回収した画分の一部をアセトン沈殿処理した後、ポリペプチド分離用ゲル(15−20%)NTH−5A0T(DRC社)を用いてSDS−PAGEを行った。図33に結果を示す。図33中、レーン1〜6はいずれも回収画分、Mは分子量マーカーである。分離された約13.9kDaのバンド(図33の矢印A)を切り出してタンパク質を抽出し、SELDI−TOF−MS分析を行い、マーカー物質(B8)の質量/電荷比(平均値:13882)と同等の質量/電荷比を示すピークを確認した(図34の矢印)。
あらためて同様のSDS−PAGEを行って約13.9kDaのバンドを切り出し、実施例2と同様にして質量分析計Proteomics Analyzer 4700(アプライドバイオシステムズ社)で測定したところ、少なくとも6個のピークが検出され、それらの精密質量は、「1522.72」、「1394.62」、「2455.17」、「3140.53」、「2451.20」、及び「2607.31」と算出された。これらのデータを元にMascotデータベース(マトリックスサイエンス社)によって既知タンパク質を検索し、ペプチドマスフィンガープリンティングを行ったところ、これらのペプチドはそれぞれ配列番号59〜64で表わされるアミノ酸配列のペプチドと一致し、目的のタンパク質は99%以上の確率で「トランスサイレチン」(配列番号65)と同定された。各ペプチドの精密質量、アミノ酸配列、及び配列番号の対応関係を第7表に示す。
上述したように、トランスサイレチンについては、その唯一のCys残基が修飾を受けた種々の修飾トランスサイレチンが見出されている。その電荷/質量比(平均値:13882)から、マーカー物質(B8)はCys残基にCysが付加したシステイニル化トランスサイレチンであると考えられた。
マーカー物質(B9)と(B10)の精製と同定
Hi Trap Blue HP 1mL(GEヘルスケア社)を20mMリン酸バッファー(pH7.0)にて平衡化した。ヒト標準血清(コスモバイオ社)1mLを20mMリン酸バッファー(pH7.0)で10倍希釈し、Millex HV 0.45μmでろ過した後、平衡化した前記カラムに添加した。20mMリン酸バッファー(pH7.0)でカラムを洗浄し、素通り画分と洗浄画分を確保した。280nmの吸光度が高い画分を回収し、精製度をSELDI−TOF−MSにて確認した。この精製を4セット行った。
Hi Trap Q HP 1mL(GEヘルスケア社)を20mMリン酸バッファー(pH7.0)にて平衡化した。回収した画分20mL(4セット分)を、平衡化した前記カラムに添加した。20mMリン酸バッファー(pH7.0)にてカラムを洗浄した。さらに、100mM、125mM、又は160mMのNaClを含む各20mMリン酸バッファー(pH7.0)で順次洗浄した。200mM NaClを含む20mMリン酸バッファー(pH7.0)で溶出した。280nmの吸光度が高い画分を回収し、精製度をSELDI−TOF−MSにて確認した。
回収した画分の一部をアセトン沈殿処理した後、15%ポリアクリルアミドゲルを用いてSDS−PAGEを行った。図35に結果を示す。図35中、レーン1,6はいずれも回収画分、Mは分子量マーカーである。分離された約17.4kDaのバンド(図35の矢印)を切り出してタンパク質を抽出し、SELDI−TOF−MS分析を行い、マーカー物質(B9)、(B10)の両方の質量/電荷比(B9の平均値:17274、B10の平均値:17407)をカバーしているピークを確認した(図36の矢印)。
あらためて同様のSDS−PAGEを行って約17.4のバンドを切り出し、実施例2と同様にして質量分析計Proteomics Analyzer 4700(アプライドバイオシステムズ社)で測定したところ、少なくとも6個のピークが検出され、それらの精密質量は、「1199.68」、「1853.96」、「1626.79」、「1156.68」、「1284.78」、及び「1069.65」と算出された。これらのデータを元にMascotデータベース(マトリックスサイエンス社)によって既知タンパク質を検索し、ペプチドマスフィンガープリンティングを行ったところ、これらのペプチドはそれぞれ配列番号66〜71で表わされるアミノ酸配列のペプチドと一致し、目的のタンパク質は99%以上の確率で「アポリポタンパク質A2」(配列番号57)と同定された。各ペプチドの精密質量、アミノ酸配列、及び配列番号の対応関係を第8表に示す。
上述したように、アポリポタンパク質A2はジスルフィド結合による2量体で存在すること、並びに、C末端のGln残基が欠損したもの(配列番号58)も存在することが知られている。さらに、Cys残基のSH基がブロックされてシスチンとなり得ることも知られている。(a)アポリポタンパク質A2(配列番号57)の2量体、(b)アポリポタンパク質A2(配列番号57)とそのC末端のGln残基が欠損したもの(配列番号58)からなる2量体、(c)C末端のGln残基が欠損したアポリポタンパク質A2(配列番号58)二個からなる2量体、の理論分子量は、ぞれぞれ、17380、17252、17123であることから、マーカー物質(B9)は(b)の2量体、マーカー物質(B10)は(a)の2量体と考えられた。
マーカー物質(B11)の精製と同定
実施例11で行ったSDS−PAGEにおいて、分離された約28.1kDaのバンド(図33の矢印B)を切り出してタンパク質を抽出した。抽出タンパク質についてSELDI−TOF−MS分析を行い、マーカー物質(B11)の質量/電荷比(平均値:28120)と同等の質量/電荷比を示すピークを確認した(図37の矢印)。
あらためて同様のSDS−PAGEを行って約28.1kDaのバンドを切り出し、実施例2と同様にして質量分析計Proteomics Analyzer 4700(アプライドバイオシステムズ社)で測定したところ、少なくとも28個のピークが検出され、それらの精密質量は、「1650.84」、「1815.85」、「1400.67」、「1612.78」、「2202.11」、「2887.44」、「1932.94」、「3237.46」、「2020.99」、「1252.62」、「1380.71」、「1283.58」、「869.52」、「1706.92」、「1467.79」、「1723.95」、「873.45」、「896.48」、「1031.52」、「1318.64」、「781.44」、「1301.65」、「831.43」、「1012.58」、「1230.71」、「1386.71」、及び「1514.81」と算出された。これらのデータを元にMascotデータベース(マトリックスサイエンス社)によって既知タンパク質を検索し、ペプチドマスフィンガープリンティングを行ったところ、これらのペプチドはそれぞれ配列番号72〜99で表わされるアミノ酸配列のペプチドと一致し、目的のタンパク質は99%以上の確率で「アポリポタンパク質A1」(配列番号36)と同定された。各ペプチドの精密質量、アミノ酸配列、及び配列番号の対応関係を第9表に示す。
(a)は質量/電荷比が7777(平均値)のイオンピークについてのドットプロット、(b)はその箱髭図である。 (a)は質量/電荷比が9298(平均値)のイオンピークについてのドットプロット、(b)はその箱髭図である。 (a)は質量/電荷比が51321(平均値)のイオンピークについてのドットプロット、(b)はその箱髭図である。 (a)は質量/電荷比が125350(平均値)のイオンピークについてのドットプロット、(b)はその箱髭図である。 (a)は質量/電荷比が3356(平均値)のイオンピークについてのドットプロット、(b)はその箱髭図である。 (a)は質量/電荷比が3962(平均値)のイオンピークについてのドットプロット、(b)はその箱髭図である。 (a)は質量/電荷比が4156(平均値)のイオンピークについてのドットプロット、(b)はその箱髭図である。 (a)は質量/電荷比が6194(平均値)のイオンピークについてのドットプロット、(b)はその箱髭図である。 (a)は質量/電荷比が6511(平均値)のイオンピークについてのドットプロット、(b)はその箱髭図である。 (a)は質量/電荷比が8608(平均値)のイオンピークについてのドットプロット、(b)はその箱髭図である。 (a)は質量/電荷比が8713(平均値)のイオンピークについてのドットプロット、(b)はその箱髭図である。 (a)は質量/電荷比が13882(平均値)のイオンピークについてのドットプロット、(b)はその箱髭図である。 (a)は質量/電荷比が17271(平均値)のイオンピークについてのドットプロット、(b)はその箱髭図である。 (a)は質量/電荷比が17424(平均値)のイオンピークについてのドットプロット、(b)はその箱髭図である。 (a)は質量/電荷比が28076(平均値)のイオンピークについてのドットプロット、(b)はその箱髭図である。 実施例2で行ったSDS−PAGEの結果を表す写真である。 実施例2で行ったSELDI−TOF−MSの結果を表すイオンピーク図である。 実施例3で行ったSDS−PAGEの結果を表す写真である。 実施例3で行ったSELDI−TOF−MSの結果を表すイオンピーク図である。 実施例4で行ったSDS−PAGEの結果を表す写真である。 実施例4で行ったSELDI−TOF−MSの結果を表すイオンピーク図である。 実施例5で行ったSELDI−TOF−MSの結果を表すイオンピーク図であり、(a)は主要画分、(b)は参考画分1、(c)は参考画分2である。 実施例6で行ったSDS−PAGEの結果を表す写真である。 実施例6で行ったSELDI−TOF−MSの結果を表すイオンピーク図である。 実施例7で行ったSELDI−TOF−MSの結果を表すイオンピーク図である。 実施例7で行ったSDS−PAGEの結果を表す写真である。 実施例8で行ったSDS−PAGEの結果を表す写真である。 実施例8で行ったSELDI−TOF−MSの結果を表すイオンピーク図である。 実施例9で行ったSDS−PAGEの結果を表す写真である。 実施例9で行ったSELDI−TOF−MSの結果を表すイオンピーク図である。 実施例10で行ったSDS−PAGEの結果を表す写真である。 実施例10で行ったSELDI−TOF−MSの結果を表すイオンピーク図である。 実施例11で行ったSDS−PAGEの結果を表す写真である。 実施例11で行ったSELDI−TOF−MSの結果を表すイオンピーク図である。 実施例12で行ったSDS−PAGEの結果を表す写真である。 実施例12で行ったSELDI−TOF−MSの結果を表すイオンピーク図である。 実施例13で行ったSELDI−TOF−MSの結果を表すイオンピーク図である。

Claims (15)

  1. C型肝炎ウイルス持続感染者から採取した体液における下記マーカー物質(A1)〜(A4)の少なくとも1つの濃度を指標として、前記C型肝炎ウイルス持続感染者に対するインターフェロン療法の効果を予測することを特徴とするインターフェロン療法の効果予測方法。
    (A1)pH4.0で弱陽イオン交換体に結合し、かつ質量分析に供すると質量/電荷比が約7780のイオンピークを生じるタンパク質、
    (A2)pH9.0で強陰イオン交換体に結合し、かつ質量分析に供すると質量/電荷比が約9300のイオンピークを生じるタンパク質、
    (A3)pH9.0で強陰イオン交換体に結合し、かつ質量分析に供すると質量/電荷比が約51300のイオンピークを生じるタンパク質、
    (A4)pH9.0で強陰イオン交換体に結合し、かつ質量分析に供すると質量/電荷比が約125000のイオンピークを生じるタンパク質。
  2. 下記(1)〜(3)の少なくとも1つを満たすことを特徴とする請求項1に記載のインターフェロン療法の効果予測方法。
    (1)マーカー物質(A1)は血小板第4因子又はその修飾体である、
    (2)マーカー物質(A2)は結合組織活性化ペプチド3又はその修飾体である。
    (3)マーカー物質(A3)はビタミンD結合タンパク質又はその修飾体である。
  3. C型肝炎ウイルス持続感染者から採取した体液における下記(C1)〜(C3)のいずれかに属するマーカー物質の少なくとも1つの濃度を指標として、前記C型肝炎ウイルス持続感染者に対するインターフェロン療法の効果を予測することを特徴とするインターフェロン療法の効果予測方法。
    (C1)血小板第4因子又はその修飾体、
    (C2)結合組織活性化ペプチド3又はその修飾体、
    (C3)ビタミンD結合タンパク質又はその修飾体。
  4. 前記体液における下記マーカー物質(B1)〜(B11)の少なくとも1つの濃度をさらに指標とすることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のインターフェロン療法の効果予測方法。
    (B1)pH7.0かつ0.5MのNaCl濃度で銅イオン結合金属キレート体に結合し、かつ質量分析に供すると質量/電荷比が約3360のイオンピークを生じるタンパク質、
    (B2)pH9.0で強陰イオン交換体に結合し、かつ質量分析に供すると質量/電荷比が約3960のイオンピークを生じるタンパク質、
    (B3)pH4.0で弱陽イオン交換体に結合し、かつ質量分析に供すると質量/電荷比が約4160のイオンピークを生じるタンパク質、
    (B4)pH7.0かつ0.5MのNaCl濃度で銅イオン結合金属キレート体に結合し、かつ質量分析に供すると質量/電荷比が約6190のイオンピークを生じるタンパク質、
    (B5)pH9.0で強陰イオン交換体に結合し、かつ質量分析に供すると質量/電荷比が約6510のイオンピークを生じるタンパク質、
    (B6)pH4.0で弱陽イオン交換体に結合し、かつ質量分析に供すると質量/電荷比が約8610のイオンピークを生じるタンパク質、
    (B7)pH9.0で強陰イオン交換体に結合し、かつ質量分析に供すると質量/電荷比が約8710のイオンピークを生じるタンパク質、
    (B8)pH7.0かつ0.5MのNaCl濃度で銅イオン結合金属キレート体に結合し、かつ質量分析に供すると質量/電荷比が約13900のイオンピークを生じるタンパク質、
    (B9)pH9.0で強陰イオン交換体に結合し、かつ質量分析に供すると質量/電荷比が約17300のイオンピークを生じるタンパク質、
    (B10)pH9.0で強陰イオン交換体に結合し、かつ質量分析に供すると質量/電荷比が約17400のイオンピークを生じるタンパク質、
    (B11)pH7.0かつ0.5MのNaCl濃度で銅イオン結合金属キレート体に結合し、かつ質量分析に供すると質量/電荷比が約28100のイオンピークを生じるタンパク質。
  5. 下記(4)〜(13)の少なくとも1つを満たすことを特徴とする請求項4に記載のインターフェロン療法の効果予測方法。
    (4)マーカー物質(B1)はアポリポタンパク質A1又はその修飾体である、
    (5)マーカー物質(B3)はC1インヒビター又はその修飾体である、
    (6)マーカー物質(B4)はアポリポタンパク質A1又はその修飾体である、
    (7)マーカー物質(B5)はアポリポタンパク質C1又はその修飾体である、
    (8)マーカー物質(B6)は補体C4又はその修飾体である、
    (9)マーカー物質(B7)はアポリポタンパク質A2又はその修飾体である、
    (10)マーカー物質(B8)はトランスサイレチン又はその修飾体である、
    (11)マーカー物質(B9)はアポリポタンパク質A2又はその修飾体である、
    (12)マーカー物質(B10)はアポリポタンパク質A2又はその修飾体である、
    (13)マーカー物質(B11)はアポリポタンパク質A1又はその修飾体である。
  6. 前記体液における下記(D1)〜(D6)のいずれかに属する少なくとも1つの濃度をさらに指標とすることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のインターフェロン療法の効果予測方法。
    (D1)アポリポタンパク質A1又はその修飾体、
    (D2)C1インヒビター又はその修飾体、
    (D3)アポリポタンパク質C1又はその修飾体、
    (D4)補体C4又はその修飾体、
    (D5)アポリポタンパク質A2又はその修飾体、
    (D6)トランスサイレチン又はその修飾体。
  7. C型肝炎ウイルス持続感染者から採取した体液における下記マーカー物質(B1)〜(B11)の少なくとも1つの濃度を指標として、前記C型肝炎ウイルス持続感染者に対するインターフェロン療法の効果を予測することを特徴とするインターフェロン療法の効果予測方法。
    (B1)pH7.0かつ0.5MのNaCl濃度で銅イオン結合金属キレート体に結合し、かつ質量分析に供すると質量/電荷比が約3360のイオンピークを生じるタンパク質、
    (B2)pH9.0で強陰イオン交換体に結合し、かつ質量分析に供すると質量/電荷比が約3960のイオンピークを生じるタンパク質、
    (B3)pH4.0で弱陽イオン交換体に結合し、かつ質量分析に供すると質量/電荷比が約4160のイオンピークを生じるタンパク質、
    (B4)pH7.0かつ0.5MのNaCl濃度で銅イオン結合金属キレート体に結合し、かつ質量分析に供すると質量/電荷比が約6190のイオンピークを生じるタンパク質、
    (B5)pH9.0で強陰イオン交換体に結合し、かつ質量分析に供すると質量/電荷比が約6510のイオンピークを生じるタンパク質、
    (B6)pH4.0で弱陽イオン交換体に結合し、かつ質量分析に供すると質量/電荷比が約8610のイオンピークを生じるタンパク質、
    (B7)pH9.0で強陰イオン交換体に結合し、かつ質量分析に供すると質量/電荷比が約8710のイオンピークを生じるタンパク質、
    (B8)pH7.0かつ0.5MのNaCl濃度で銅イオン結合金属キレート体に結合し、かつ質量分析に供すると質量/電荷比が約13900のイオンピークを生じるタンパク質、
    (B9)pH9.0で強陰イオン交換体に結合し、かつ質量分析に供すると質量/電荷比が約17300のイオンピークを生じるタンパク質、
    (B10)pH9.0で強陰イオン交換体に結合し、かつ質量分析に供すると質量/電荷比が約17400のイオンピークを生じるタンパク質、
    (B11)pH7.0かつ0.5MのNaCl濃度で銅イオン結合金属キレート体に結合し、かつ質量分析に供すると質量/電荷比が約28100のイオンピークを生じるタンパク質。
  8. 下記(4)〜(13)の少なくとも1つを満たすことを特徴とする請求項7に記載のインターフェロン療法の効果予測方法。
    (4)マーカー物質(B1)はアポリポタンパク質A1又はその修飾体である、
    (5)マーカー物質(B3)はC1インヒビター又はその修飾体である、
    (6)マーカー物質(B4)はアポリポタンパク質A1又はその修飾体である、
    (7)マーカー物質(B5)はアポリポタンパク質C1又はその修飾体である、
    (8)マーカー物質(B6)は補体C4又はその修飾体である、
    (9)マーカー物質(B7)はアポリポタンパク質A2又はその修飾体である、
    (10)マーカー物質(B8)はトランスサイレチン又はその修飾体である、
    (11)マーカー物質(B9)はアポリポタンパク質A2又はその修飾体である、
    (12)マーカー物質(B10)はアポリポタンパク質A2又はその修飾体である、
    (13)マーカー物質(B11)はアポリポタンパク質A1又はその修飾体である。
  9. C型肝炎ウイルス持続感染者から採取した体液における下記(D1)〜(D6)のいずれかに属するマーカー物質の少なくとも1つの濃度を指標として、前記C型肝炎ウイルス持続感染者に対するインターフェロン療法の効果を予測することを特徴とするインターフェロン療法の効果予測方法。
    (D1)アポリポタンパク質A1又はその修飾体、
    (D2)C1インヒビター又はその修飾体、
    (D3)アポリポタンパク質C1又はその修飾体、
    (D4)補体C4又はその修飾体、
    (D5)アポリポタンパク質A2又はその修飾体、
    (D6)トランスサイレチン又はその修飾体。
  10. 前記体液は、血液であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載のインターフェロン療法の効果予測方法。
  11. 前記体液又は体液成分を、前記マーカー物質に対する親和性を有する物質を固定化した担体に接触させて、体液中の前記マーカー物質を担体上に捕捉し、捕捉された前記マーカー物質の量に基づいて体液中の前記マーカー物質の濃度を算出することを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載のインターフェロン療法の効果予測方法。
  12. 前記担体は平面部分を有し、前記マーカー物質に対する親和性を有する物質は、該平面部分の一部に固定化されていることを特徴とする請求項11に記載のインターフェロン療法の効果予測方法。
  13. 前記マーカー物質に対する親和性を有する物質は、イオン交換体、金属キレート体又は抗体であることを特徴とする請求項11又は12に記載のインターフェロン療法の効果予測方法。
  14. 請求項1〜13のいずれか1項に記載のインターフェロン療法の効果予測方法に用いるためのキットであって、前記マーカー物質に対する親和性を有する物質を固定化した担体を含むことを特徴とするインターフェロン療法の効果予測用キット。
  15. 前記マーカー物質に対する親和性を有する物質は、イオン交換体、金属キレート体又は抗体であることを特徴とする請求項14に記載のインターフェロン療法の効果予測用キット。
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