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JP2009164076A - 電線用多層被覆 - Google Patents

電線用多層被覆 Download PDF

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JP2009164076A JP2008003111A JP2008003111A JP2009164076A JP 2009164076 A JP2009164076 A JP 2009164076A JP 2008003111 A JP2008003111 A JP 2008003111A JP 2008003111 A JP2008003111 A JP 2008003111A JP 2009164076 A JP2009164076 A JP 2009164076A
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Abstract

【課題】電線、特に電話線ケーブル、電子機器間又は電子機器内の接続用電線等の多層被覆を提供する。
【解決手段】複数の光硬化性樹脂硬化層からなる多層被覆であって、第一層のヤング率が5〜100MPaであり、第二層のヤング率が50〜1000MPaである電線用多層被覆。紫外線等の放射線照射により簡便にかつ均一に強度に優れた電線被覆層が形成され、かつ当該保護層は簡便な操作により剥離することができるため(被覆除去性)、配線操作が容易であり、配線操作時に導体自体を破損することがない。
【選択図】図1

Description

本発明は、電線、特に電話線ケーブル、電子機器間又は電子機器内の接続用電線等の多層被覆に関する。
電線、電話線ケーブル、電子機器間又は電子機器内の接続用電線、自動車用電線等は、絶縁体として電気特性、伝送特性に優れたポリエチレン(PE)を用い、外側のシースにPEやポリ塩化ビニル(PVC)を用いたものが多い。テレビのリード線などにおいては、PE被覆、又はその外側シースにゴムを用いたものが使用されている。また、自動車用電線の被覆にはPVC、PET、架橋PE等が広く使用されている(特許文献1〜4)。
特開2001−312925号公報 特開2005−187595号公報 特開2006−348137号公報 特開2007−45952号公報
しかしながら、従来の電線被覆材には、保護材としての強度が強く求められたため、配線施工時の操作性、すなわち被覆層の剥離性についてはほとんど考慮されていなかった。この剥離性については、電線自体が太い場合には問題とならないが、細部の配線に用いられる細い電線の場合には、剥離性が悪いと配線が困難になるという問題があった。
従って、本発明の目的は、十分な強度を有するとともに剥離性が良好な電線被覆材を提供することにある。
そこで本発明者らは、従来のPVCやPEに代わる電線被覆材を開発すべく、ウレタン(メタ)アクリレート系の放射線硬化性樹脂組成物に着目し、種々検討した結果、特定のヤング率を有する多層被覆が、十分な強度を有するにもかかわらず、良好な剥離性を有することを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、複数の光硬化性樹脂硬化層からなる多層被覆であって、第一層のヤング率が5〜100MPaであり、第二層のヤング率が50〜1000MPaである電線用多層被覆を提供するものである。
多層被覆は、電線を構成する金属導線の外側に接する第一層と、第一層の外側に接する第二層からなり、第二層のさらに外側に他の被覆層を設けることは任意である。
本発明によれば、紫外線等の放射線照射により簡便にかつ均一に強度に優れた電線被覆層が形成され、かつ当該保護層は簡便な操作により剥離することができるため(被覆除去性)、配線操作が容易であり、配線操作時に導体自体を破損することがない。
以下、第一層に用いられる光硬化性樹脂組成物と第二層に用いられる光硬化性樹脂組成物について、それぞれ説明する。
[1.第一層に用いられる光硬化性樹脂組成物]
本発明の多層被覆のうち第一層を形成するための光硬化性樹脂組成物は、特に限定されないが、好ましくは、(A1)ウレタン(メタ)アクリレート、(B1)単官能性の不飽和重合性化合物、(C1)多官能性の不飽和重合性化合物、(D1)光開始剤、酸化防止剤等を含有する組成物である。
第一層を形成するための光硬化性樹脂組成物の調製において、好ましく使用されるウレタン(メタ)アクリレート(A1)は、光硬化性樹脂組成物に高速硬化性を付与し、また、その硬化物に耐久性、高い靱性、コントロールされた柔軟性を付与できるなどの利点があり好ましい。ウレタン(メタ)アクリレートは、ポリオール、ポリイソシアネートおよび水酸基含有(メタ)アクリレートとを反応させることにより製造される。すなわち、ポリイソシアネートのイソシアネート基を、ポリオールの水酸基および水酸基含有(メタ)アクリレートの水酸基と、それぞれ反応させることにより製造される。
この反応としては、例えば、ポリオール、ポリイソシアネートおよび水酸基含有(メタ)アクリレートを、一括に仕込んで反応させる方法;ポリオールおよびポリイソシアネートを反応させ、次いで水酸基含有(メタ)アクリレートを反応させる方法;ポリイソシアネートおよび水酸基含有(メタ)アクリレートを反応させ、次いでポリオールを反応させる方法;ポリイソシアネートおよび水酸基含有(メタ)アクリレートを反応させ、次いでポリオールを反応させ、最後に水酸基含有(メタ)アクリレートを反応させる方法などが挙げられる。
ここで用いるポリオールとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリヘキサメチレングリコール、ポリへプタメチレングリコール、ポリデカメチレングリコールのような一種のイオン重合性環状化合物を開環重合させて得られるポリエーテルジオール、または二種以上のイオン重合性環状化合物を開環共重合させて得られるポリエーテルジオールが挙げられる。
上記ポリエーテルジオールを合成するための原料としてのイオン重合性環状化合物としては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブテン−1−オキシド、イソブテンオキシド、オキセタン、3,3−ジメチルオキセタン、3,3−ビスクロロメチルオキセタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、3−メチルテトラヒドロフラン、ジオキサン、トリオキサン、テトラオキサン、シクロヘキセンオキシド、スチレンオキシド、エピクロルヒドリン、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル、アリルグリシジルカーボネート、ブタジエンモノオキシド、イソプレンモノオキシド、ビニルオキセタン、ビニルテトラヒドロフラン、ビニルシクロヘキセンオキシド、フェニルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、安息香酸グリシジルエステル等の環状エーテル類が挙げられる。
これらのポリエーテルジオールは、例えば、PTMG650、PTMG1000、PTMG2000(以上、三菱化学(株)製)、エクセノール 1020、2020、3020、プレミノール PML−4002、PML−5005(以上、旭硝子(株)製)、ユニセーフ DC1100、DC1800、DCB1000(以上、日本油脂(株)製)、PPTG1000、PPTG2000、PPTG4000、PTG400、PTG650、PTG1000、PTG2000、PTG−L1000、PTG−L2000(以上、保土谷化学工業(株)製)、Z−3001−4、Z−3001−5、PBG2000(以上、第一工業製薬(株)製)、Acclaim 2200、2220、3201、3205、4200、4220、8200、12200(以上、ライオンデール社製)等の市販品として入手することができる。
第一層を形成するための光硬化性樹脂組成物の原料の一であるウレタン(メタ)アクリレートの製造用のポリイソシアネート、特にジイソシアネートとしては、例えば2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、1,3−キシリレンジイソシアネート、1,4−キシリレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、3,3'−ジメチル−4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3'−ジメチルフェニレンジイソシアネート、4,4'−ビフェニレンジイソシアネート、1,6−ヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ビス(2−イソシアネートエチル)フマレート、6−イソプロピル−1,3−フェニルジイソシアネート、4−ジフェニルプロパンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、2,5−ビス(イソシアネートメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2,6−ビス(イソシアネートメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン等が挙げられ、特に、2,4−トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)等が好ましい。
また、ウレタン(メタ)アクリレートの製造用の水酸基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェニルオキシプロピル(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリロイルホスフェート、4−ヒドロキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールモノ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、下記式(1)または式(2)
CH2=C(R1)-COOCH2CH2-(OCOCH2CH2CH2CH2CH2)n-OH (1)
CH2=C(R1)-COOCH2CH(OH)CH2-O-C6H5 (2)
(式中、R1 は水素原子またはメチル基を示し、nは1〜15の数を示す)
で表される(メタ)アクリレート等が挙げられる。また、アルキルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、グリシジル(メタ)アクリレート等のグリシジル基含有化合物と、(メタ)アクリル酸との付加反応により得られる化合物も使用することができる。これら水酸基含有(メタ)アクリレートのうち、特に、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等が好ましい。
ポリオール、ポリイソシアネートおよび水酸基含有(メタ)アクリレートの使用割合は、ポリオールに含まれる水酸基1当量に対してポリイソシアネートに含まれるイソシアネート基が1.1〜3当量、水酸基含有(メタ)アクリレートの水酸基が0.2〜1.5当量となるようにするが、ポリオールおよびアクリレート中の水酸基の当量とポリイソシアネート中のイソシアネート基の当量はほぼ等しくするのが好ましい。
ウレタン(メタ)アクリレートの合成は、上記のポリオール、ジイソシアネート、水酸基含有(メタ)アクリレートおよびその他の任意成分を反応させることにより行われる。この反応では、ジイソシアネートのイソシアネート基とジオールの水酸基および水酸基含有(メタ)アクリレートの水酸基とがそれぞれ反応するウレタン化反応が主に進行する。
これらの化合物の反応においては、通常ナフテン酸銅、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸亜鉛、ラウリル酸ジ−n−ブチルスズ、トリエチルアミン、1,4−ジアザビシクロ〔2.2.2〕オクタン、2,6,7−トリメチル−1,4−ジアザビシクロ〔2.2.2〕オクタン等のウレタン化触媒を、反応物の総量100質量部に対して0.01〜1質量部用いるのが好ましい。また、反応温度は、通常10〜90℃、特に30〜80℃で行うのが好ましい。
このようにして得られるウレタン(メタ)アクリレートは、光硬化性樹脂組成物中に10〜90質量%配合されるのが好ましく、電線に被覆する際の塗工性、硬化させた後の被覆材料の柔軟性および長期信頼性を維持するためには、20〜70質量%配合するのが特に好ましい。
また、第一層を構成する光硬化性樹脂組成物には、さらに、ポリイソシアネート1モルに対して水酸基含有(メタ)アクリレート化合物2モルを反応させたウレタン(メタ)アクリレートを配合することもできる。かかるウレタン(メタ)アクリレートとしては、例えばヒドロキシエチル(メタ)アクリレートと2,5−ビス(イソシアネートメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2,6−ビス(イソシアネートメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタンの反応物、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートと2,4−トリレンジイソシアネートの反応物、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとイソホロンジイソシアネートの反応物、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートと2,4−トリレンジイソシアネートの反応物、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートとイソホロンジイソシアネートの反応物等が挙げられる。
第一層を形成するための光硬化性樹脂組成物の調製において、好ましく使用される(B1)単官能性不飽和重合性化合物としては、例えばN−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム等のビニル基含有ラクタム;イソボルニル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等の脂環式構造含有(メタ)アクリレート;ベンジル(メタ)アクリレート、4−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルホリン、ビニルイミダゾール、ビニルピリジン等が挙げられる。さらに、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、イソブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、t−オクチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、7−アミノ−3,7−ジメチルオクチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、および下記式(3)
CH2=C(R1)-COO(R2O)n-C6H4-R3 (3)
(式中、R1 は水素原子またはメチル基を示し、R2 は炭素数2〜6、好ましくは2〜4のアルキレン基を示し、R3 は水素原子または炭素数1〜12、好ましくは1〜9のアルキル基を示す)
で表される化合物等が挙げられる。
市販品としては、アロニックス M−101、M−102、M−111、M−113、M−114、M−117(以上、東亜合成(株)製);ビスコート LA、STA、IBXA、2−MTA、#192、#193(大阪有機化学工業(株)製);NK エステル AMP−10G、AMP−20G、AMP−60G(以上、新中村化学工業(株)製);ライトアクリレート L−A、S−A、IB−XA、PO−A、PO−200A、NP−4EA、NP−8EA(以上、共栄社化学(株)製);FA−511、FA−512A、FA−513A(以上、日立化成工業(株)製)等が挙げられる。
第一層を形成するための光硬化性樹脂組成物の調製において、好ましく使用される(C1)多官能性不飽和重合性化合物としては、例えばトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリオキシエチル(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのエチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイドの付加体のジオールのジ(メタ)アクリレート、水添ビスフェノールAのエチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイドの付加体のジオールのジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのジグリシジルエーテルに(メタ)アクリレートを付加させたエポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
市販品としては、例えばユピマーUV SA1002、SA2007(以上、三菱化学(株)製);ビスコート #195、#215、#230、#260、#700(大阪有機化学工業(株)製);カヤラッド HDDA(以上、日本化薬(株)製);アロニックス M−210、M−215、M−315(以上、東亜合成(株)製)等が挙げられる。これらのうち、特にトリシクロデカンジメタノールジアクリレート(ユピマーUV SA1002)およびビスコート #230、#700が好ましい。
これらの(B1)単官能性不飽和重合性化合物および(C1)多官能性不飽和重合性化合物は、その合計量として、全組成中に15〜80質量%、特に20〜70質量%配合するのが好ましい。15質量%未満では組成物の粘度が高くなりすぎて塗工性が悪くなるばかりでなく、硬化物の靭性が低下し、硬化収縮率が高くなり、また、80質量%を超えると硬化速度が遅くなるので好ましくない。
第一層を形成するための光硬化性樹脂組成物の調製において、好ましく使用される(D1)光重合開始剤としては、例えば1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、キサントン、フルオレノン、ベンズアルデヒド、フルオレン、アントラキノン、トリフェニルアミン、カルバゾール、3−メチルアセトフェノン、4−クロロベンゾフェノン、4,4'−ジメトキシベンゾフェノン、4,4'−ジアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、チオキサントン、ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルホリノ−プロパン−1−オン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキシド等が挙げられる。これらのうち、ホスフィンオキシド系化合物が好ましい。特に、多層被覆した基材の表面に接して形成される被覆層の光硬化性樹脂に用いられる光重合開始剤が、ホスフィンオキシド系化合物であることが好ましい。
市販品としては、イルガキュア184、261、369、500、651、819、907、1700、1850、2959、CGI403、1700、1750、1850、24−61、ダロキュア1116、1173(以上、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製);ルシリンTPO(BASF社製)、ユベクリルP36(USB社製)等が挙げられる。
また、光増感剤としては、例えばトリエチルアミン、ジエチルアミン、N−メチルジエタノールアミン、エタノールアミン、4−ジメチルアミノ安息香酸、4−ジメチルアミノ安息香酸メチル、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル;ユベクリルP102、103、104、105(以上、UCB社製)等が挙げられる。
光重合開始剤は、光硬化性樹脂組成物中に0.01〜10質量%、特に0.01〜4質量%配合するのが好ましい。
本発明の多層被覆に用いる光硬化性樹脂組成物には、前記の成分以外に、必要に応じて本発明の多層被膜の特性を損なわない範囲で硬化性の他のオリゴマー、ポリマー、反応性希釈剤、その他の添加剤等を配合することができる。
硬化性の他のオリゴマー、ポリマーとしては、例えばポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリアミド(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシ基を有するシロキサンポリマー、グリシジルメタアクリレートとそのほかのビニルモノマーとの共重合体とアクリル酸を反応させて得られる反応性ポリマー等が挙げられる。
また、上記成分以外に各種添加剤、例えば、酸化防止剤、着色剤、紫外線吸収剤、光安定剤、シランカップリング剤、熱重合禁止剤、レベリング剤、界面活性剤、保存安定剤、可塑剤、滑剤、溶媒、フィラー、老化防止剤、濡れ性改良剤、塗面改良剤等を必要に応じて配合することができる。
ここで、紫外線吸収剤としては、例えば2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−ドデシロキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系、2−(2'−ヒドロキシ−5'−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−5'−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤が挙げられ、市販品としては、例えばTinuvin P、234、320、326、327、328、329、213(以上、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)、シーソーブ 101、102、103、712、704(以上、シプロ化成(株)製)、スミソーブ 110、130、140(住友化学工業(株)製)等が挙げられる。また、シランカップリング剤としては、例えばγ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、市販品として、SH6062、6030(以上、東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製)、KBM 403、503、803、903、5103(以上、信越化学工業(株)製)等が挙げられる。
また第一層を形成するための光硬化性樹脂組成物の調製において、その他の添加剤としてエポキシ樹脂、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリウレタン、ポリブタジエン、クロロプレン、ポリエーテル、ポリエステル、ペンタジエン誘導体、スチレン/ブタジエン/スチレンブロック共重合体、スチレン/エチレン/ブテン/スチレンブロック共重合体、スチレン/イソプレン/スチレンブロック共重合体、石油樹脂、キシレン樹脂、ケトン樹脂、フッ素系オリゴマー、シリコーン系オリゴマー、ポリスルフィド系オリゴマー等のポリマーまたはオリゴマーも配合することもできる。
第一層を形成するための光硬化性樹脂組成物は、前記各成分を常法により混合して調製することができる。このようにして調製される光硬化性樹脂組成物は液状であり、その粘度は、通常200〜20,000mPa・s/25℃であり、1,000〜15,000mPa・s/25℃が好ましい。
なお、第一層に用いる光硬化性樹脂組成物は、光によって硬化されるが、ここで光とは、赤外線、可視光線、紫外線、X線、電子線、α線、β線、γ線等を意味するが、好ましくは紫外線である。
[2.第二層に用いられる光硬化性樹脂組成物]
本発明においては、第二層を形成するための光硬化性樹脂組成物として、次の成分(A2)及び(B2);
(A2)ポリエステルポリオールとポリイソシアネートと水酸基含有(メタ)アクリレートの反応物であるウレタン(メタ)アクリレート、
(B2)環状構造及び1個のエチレン性不飽和基を有する化合物
を含有する放射線硬化性樹脂組成物を用いるのが好ましい。
(A2)成分であるウレタン(メタ)アクリレートは、例えば、ポリオール、ポリイソシアネート及び水酸基含有(メタ)アクリレートとを反応させることにより製造される。
また、(A2)成分は、ポリイソシアネート、好ましくはジイソシアネート1モルに対して水酸基含有(メタ)アクリレート化合物2モルを反応させることにより製造することもできる。かかるウレタン(メタ)アクリレートとしては、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートと2,4−トリレンジイソシアネートの反応物、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートと2,5(又は2,6)−ビス(イソシアネートメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタンの反応物、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとイソフォロンジイソシアネートの反応物、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートと2,4−トリレンジイソシアネートの反応物、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートとイソフォロンジイソシアネートの反応物が挙げられる。
ここで好ましく用いられるポリエステルポリオールの各構造単位の重合様式には特に制限されずランダム重合、ブロック重合、グラフト重合のいずれであってもよい。
ポリエステルポリオールとしては、例えば二価アルコールと二塩基酸とを反応して得られるポリエステルポリオールなどが挙げられる。上記二価アルコールとしては、例えばエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、テトラメチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、1,6−ヘキサンポリオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、3−メチル−1,5−ペンタンポリオール、1,9−ノナンポリオール、2−メチル−1,8−オクタンポリオール等が挙げられる。二塩基酸としては、例えばフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、マレイン酸、フマール酸、アジピン酸、セバシン酸等の二塩基酸を挙げることができる。市販品としては、クラレポリポールP−2010、P−2030、PMIPA、PKA−A、PKA−A2、PNA−2000(以上、クラレ社製)等が入手できる。
これらのポリエステルポリオールのうち、二塩基酸として、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸のような、芳香族ジカルボン酸、又はアジピン酸、セバシン酸のようなアルカンジカルボン酸を用いたものが好ましい。ここでアルカンジカルボン酸のアルカン部分の炭素数は2〜20、特に2〜14が好ましい。また、芳香族カルボン酸の芳香族部分はフェニル基が好ましい。
また、ポリエステルポリオールの数平均分子量は、400〜1000が好ましく、500〜800が特に好ましい。数平均分子量は、ポリスチレンを分子量標準とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC法)により求める。
ポリイソシアネート、水酸基含有(メタ)アクリレートとしては、前記と同様のものを用い、同様の方法により、ウレタン(メタ)アクリレートを製造することができる。
ポリエステルポリオール、ポリイソシアネート及び水酸基含有(メタ)アクリレートの使用割合は、ポリエステルポリオールに含まれる水酸基1当量に対してポリイソシアネートに含まれるイソシアネート基が1.1〜3当量、水酸基含有(メタ)アクリレートの水酸基が0.2〜1.5当量となるようにするのが好ましい。
(A2)成分であるウレタン(メタ)アクリレートは、電線被覆層の強度、及び組成物の粘度の点から、組成物中に、通常30〜80質量%配合されるが、好ましくは40〜70質量%配合され、特に好ましくは40〜60質量%配合される。
(B2)成分である、環状構造及び1個のエチレン性不飽和基を有する化合物は、環状構造を有する重合性単官能化合物である。(B2)成分として、この化合物を用いることにより、本発明組成物により得られる電線被覆層の剥離性が向上する。ここで、環状構造としては、脂環式構造、窒素原子又は酸素原子を含む複素環構造、芳香族環等が挙げられ、このうち脂環式構造が特に好ましい。
このような、環状構造を有する単官能性化合物(B2)としては、例えばN−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム等のビニル基含有ラクタム、イソボルニル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート等の脂環式構造含有(メタ)アクリレート;、ベンジル(メタ)アクリレート、4−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルホリン、ビニルイミダゾール、ビニルピリジン等が挙げられる。さらに、下記式(3)〜(5)で表される化合物を挙げることができる。
(式中、R2は水素原子又はメチル基を示し、R3は炭素数2〜8、好ましくは2〜5のアルキレン基を示し、R4は水素原子又はメチル基を示し、pは好ましくは1〜4の数を示す。)
(式中、R5、R6、R7及びR8は互いに独立で、H又はCH3であり、qは1〜5の整数
である)
これら重合性単官能化合物(B2)のうち、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム等のビニル基含有ラクタム、イソボルニル(メタ)アクリレートが好ましい。
これら重合性単官能化合物(B2)の市販品としては、IBXA(大阪有機化学工業製)、アロニックスM−111、M−113、M114、M−117、TO−1210(以上、東亞合成製)を使用することができる。
これら(B2)成分である環状構造を有する単官能化合物は、電線被覆層の強度及び剥離性の点から、組成物中に、10〜60質量%、さらに20〜60質量%、特に20〜50質量%配合されるのが好ましい。
第二層を形成するための光硬化性樹脂組成物には、さらにポリオール化合物を配合することができる。ポリオールとしては、例えばポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオール及びその他のポリオールが挙げられる。これらのポリオールの各構造単位の重合様式には特に制限されずランダム重合、ブロック重合、グラフト重合のいずれであってもよい。
これらのうち、ポリエーテルポリオールとしては、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリヘキサメチレングリコール、ポリヘプタメチレングリコール、ポリデカメチレングリコールあるいは二種以上のイオン重合性環状化合物を開環共重合させて得られる脂肪族ポリエーテルポリオール等が挙げられる。上記イオン重合性環状化合物としては、例えばエチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブテン−1−オキシド、イソブテンオキシド、3,3−ビスクロロメチルオキセタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、3−メチルテトラヒドロフラン、ジオキサン、トリオキサン、テトラオキサン、シクロヘキセンオキシド、スチレンオキシド、エピクロルヒドリン、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル、アリルグリシジルカーボネート、ブタジエンモノオキシド、イソプレンモノオキシド、ビニルオキセタン、ビニルテトラヒドロフラン、ビニルシクロヘキセンオキシド、フェニルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、安息香酸グリシジルエステル等の環状エーテル類が挙げられる。また、上記イオン重合性環状化合物と、エチレンイミン等の環状イミン類、β−プロピオラクトン、グリコール酸ラクチド等の環状ラクトン酸、あるいはジメチルシクロポリシロキサン類とを開環共重合させたポリエーテルポリオールを使用することもできる。上記二種以上のイオン重合性環状化合物の具体的な組み合わせとしては、例えばテトラヒドロフランとプロピレンオキシド、テトラヒドロフランと2−メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロフランと3−メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロフランとエチレンオキシド、プロピレンオキシドとエチレンオキシド、ブテン−1−オキシドとエチレンオキシド、テトラヒドロフラン、ブテン−1−オキシド、エチレンオキシドの3元重合体等を挙げることができる。これらのイオン重合性環状化合物の開環共重合体はランダムに結合していてもよいし、ブロック状の結合をしていてもよい。
さらに、ポリエーテルポリオールとしては、例えばビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加ポリオール、ビスフェノールFのアルキレンオキサイド付加ポリオール、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールF、水添ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加ポリオール、水添ビスフェノールFのアルキレンオキサイド付加ポリオール、ハイドロキノンのアルキレンオキサイド付加ポリオール、ナフトハイドロキノンのアルキレンオキサイド付加ポリオール、アントラハイドロキノンのアルキレンオキサイド付加ポリオール、1,4−シクロヘキサンポリオール及びそのアルキレンオキサイド付加ポリオール、トリシクロデカンポリオール、トリシクロデカンジメタノール、ペンタシクロペンタデカンポリオール、ペンタシクロペンタデカンジメタノール等の環式ポリエーテルポリオールが挙げられる。その他、環式ポリエーテルポリオールとしては、アルキレンオキサイド付加ポリオール、ビスフェノールFのアルキレンオキサイド付加ポリオール、1,4−シクロヘキサンポリオールのアルキレンオキサイド付加ポリオールなどが挙げられる。これらのポリオールは、直鎖状の分子であってもよいし、分岐構造を有していてもよい。また、これらの併用であってもよい。
ポリオールの市販品としては、三洋化成工業製の「サニックスGP−600」、「サニックスGP−1000」、旭硝子ウレタン製の「EXCENOL1020」、「PPG1000」等が挙げられる。
ポリオールの配合量は、電線被覆層の剥離性及び強度の点から、組成物中に、1〜30質量%、特に5〜25質量%、さらに5〜20質量%であるのが好ましい。
第二層を形成するための光硬化性樹脂組成物には、さらに電線被覆層の剥離性及び耐候性の点から、シリコーン化合物を含有させるのが好ましい。当該シリコーン化合物としては、ポリエーテル変性シリコーン、アルキル変性シリコーン、ウレタンアクリレート変性シリコーン、ウレタン変性シリコーン、メチルスチリル変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、エポキシポリエーテル変性シリコーン、アルキルアラルキルポリエーテル変性シリコーン等が挙げられ、これらのうちポリエーテル変性シリコーン、エポキシ変性シリコーンが特に好ましい。
ポリエーテル変性シリコーンとしては、少なくとも1個のケイ素原子に基R14−(R15O)s−R16−(ここで、R14は水酸基又は炭素数1〜10のアルコキシ基を示し、R15は炭素数2〜4のアルキレン基を示し(R15は2種以上のアルキレン基が混在していてもよい)、R16は炭素数2〜12のアルキレン基を示し、sは1〜20の数を示す)が結合しているポリジメチルシロキサン化合物が好ましい。このうちR15としては、エチレン基、プロピレン基が好ましく、特にエチレン基が好ましい。当該シリコーン化合物の市販品のうち、エチレン性不飽和基等の重合性基を有しないものとしては、例えばSH28PA;ジメチルポリシロキサンポリオキシアルキレン共重合体、東レダウコーニング社、ペインタッド19、54;ジメチルポリシロキサンポリオキシアルキレン共重合体、東レダウコーニング社、FM0411;サイラプレーン、チッソ、SF8428;ジメチルポリシロキサンポリオキシアルキレン共重合体(側鎖OH含有)、東レダウコーニング社、BYK UV3510(ビックケミー・ジャパン社製、ジメチルポリシロキサン−ポリオキシアルキレン共重合体)、DC57(東レ・ダウコーニング・シリコーン社製、ジメチルポリシロキサン−ポリオキシアルキレン共重合体)等を挙げることができる。また、エチレン性不飽和基を有する当該シリコーン化合物の市販品としては、例えば、Tego Rad 2300、2200N、テゴ・ケミー社等を挙げることができる。
また、エポキシ変性シリコーンとしては、分子内にエポキシ基を有するものであれば特に制限されないが、ジメチルポリシロキサンの側鎖にエポキシ基を有するものが好ましい。
このようなエポキシ変性シリコーンとしては、SF8411、SF8413(東レ・ダウコーニング社製)等の市販品を用いることができる。
これらのシリコーン化合物の平均分子量は電線被覆層の剥離性の点から、1500〜35000のものが好ましい。より好ましい平均分子量は1500〜20000であり、さらに1500〜20000が好ましく、特に3000〜15000が好ましい。
また、シリコーン化合物は、エチレン性不飽和基等の重合性基を有しないことが、良好な剥離性を維持することができるので好ましい。
シリコーン化合物の配合量は、電線被覆層の剥離性及び強度の点から、組成物中に、0.1〜50質量%、さらに0.5〜40質量%、特に1〜20質量%が好ましい。
さらに、第二層を形成するための光硬化性樹脂組成物には、前記と同様の成分を含有させることができる。
本発明の多層被覆は、電線の被覆に用いられる。電線基材に、まず第一の光硬化性樹脂組成物を塗布し、紫外線を照射して硬化し、この硬化物面上に引き続き第二の光硬化性樹脂組成物を塗布し、紫外線を照射することにより、電線用多層被覆が形成される。また、基材上にまず第一の光硬化性樹脂組成物を塗布し、引き続き第二の光硬化性樹脂組成物を塗布した後、紫外線を照射することにより、第一の被覆層と第二の被覆層とを同時に硬化することもできる。
本発明の多層被覆において、第一層のヤング率は5〜100MPa、好ましくは5〜50MPaであり、第二層のヤング率は50〜1000MPa、好ましくは50〜500MPaである。このようなヤング率の硬化層を多層被覆することにより、十分な強度が得られるとともに、剥離性も良好となる。
次に実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明は何らこれら実施例に限定されるものではない。
[製造例1:(A1)ウレタン(メタ)アクリレートの合成1]
撹拌機を備えた反応容器に、2,4−トリレンジイソシアネート13.3g、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール0.02g、ジブチル錫ジラウレート0.08g、フェノチアジン0.008gを仕込み、これらを撹拌しながら液温度が20℃になるまで冷却した。2−ヒドロキシエチルアクリレート8.9gを液温度が25℃以下になるように制御しながら滴下した後、室温にて1時間撹拌、反応させた。その後、数平均分子量2000のポリプロピレングリコール77.7gを添加し、液温度約60℃で撹拌、反応させた。残留イソシアネートが0.1質量%以下になった時点を反応終了とし、数平均分子量が2580のポリエーテル系ウレタンアクリレートを得た。得られたポリエーテル系ウレタンアクリレートを、UA−1とする。
[製造例2:(A2)ウレタン(メタ)アクリレートの合成2]
攪拌機を備えた反応容器に、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール0.120g、イソボロニルアクリレート233.12g、トルエンジイソシアナート62.99gを加え、攪拌しながら、15℃まで冷却した。ヒドロキシエチルアクリレートを液温度が20℃以下になるように制御しながら42.00g滴下した後、湯浴にして40℃にし1時間攪拌した。その後、分子量2000のポリエステルポリオール(下記式で表される化合物。クラレポリポールP−2030;クラレ(株)製)380.67を加え、70℃で3時間攪拌させ、残留イソシアネートが0.1質量%以下になった時を反応終了とした。得られたウレタン(メタ)アクリレートを、UA−2とする。
[製造例3:ウレタン(メタ)アクリレートの合成3]
2,4−トリレンジイソシアネートに替えて、イソフォロンジイソシアネートを同量用いた以外は製造例2と同様にして、(A)ウレタン(メタ)アクリレートを合成した。得られたウレタン(メタ)アクリレートをUA−3とする。
実施例1〜5及び比較例1
表1に示す組成の各成分を、攪拌機を備えた反応容器に仕込み、液温度を50℃に制御しながら1時間攪拌し、液状硬化性樹脂組成物を得た。
試験例
前記実施例及び比較例で得た液状硬化性樹脂組成物を、以下のような方法で硬化させて試験片を作製し、下記の各評価を行った。結果を表1及び表2に示す。
1.ヤング率:
250μm厚のアプリケーターバーを用いてガラス板上に液状硬化性樹脂組成物を塗布し、これを空気下で1J/cm2のエネルギーの紫外線で照射して硬化させ、ヤング率測定用フィルムを得た。このフィルムから、延伸部が幅6mm、長さ25mmとなるよう短冊状サンプルを作成し、温度23℃、湿度50%で引っ張り試験を行った。引っ張り速度は1mm/minで2.5%歪みでの抗張力からヤング率を求めた。
2.破断強度及び破断伸び:
引張試験器(島津製作所社製、AGS−50G)を用い、試験片の破断強度及び破断伸びを下記測定条件にて測定した。
引張速度 :50mm/分
標線間距離(測定距離):25mm
測定温度 :23℃
相対湿度 :50%RH
3.剥離性(貼り付き力):
実施例及び比較例で得られた組成物に関し、その硬化物の剥離性(貼り付き力)を測定した。液状組成物を125μm厚のアプリケーターを用いてガラス板上に塗布し、5%酸素雰囲気下で0.1J/cm2の紫外線を照射し、厚さ約70μmの硬化フィルムを得た。
この硬化フィルムの空気側表面同士を張り合せ、ガラス板ではさみ、温度23℃、湿度50%下に24時間静置した。その後、この硬化フィルムから延伸部が幅10mmとなるように短冊状サンプルを作成した。このサンプルを引っ張り試験器を用いてJIS Z0237に準拠して密着力試験を行った。引張速度は50mm/minでの抗張力から貼り付き力を求めた。
4.剥離性(銅板との密着力):
実施例及び比較例で得られた組成物に関し、その硬化物の密着力を測定した。液状組成物を190μm厚のアプリケーターを用いて銅板上に塗布し、窒素雰囲気下で0.5J/cm2の紫外線を照射し、厚さ約130μmの硬化フィルムを得た。このサンプルを温度23℃、湿度50%下に24時間静置した。その後、この硬化フィルムから幅10mmとなるように短冊状サンプルを銅板上で作成した。このサンプルを引っ張り試験機を用いてJIS Z0237に準拠して密着力試験を行った。引張速度は50mm/minでの抗張力から金属との密着力を求めた。
5.被覆除去性:
銅線に、一次被覆材(実施例5)、二次被覆材(表1に示した硬化性組成物:実施例1〜4)を、リワインダーモデル(吉田工業製)を用いて塗布及び紫外線硬化した。上記銅線への被覆方法は、電線に、まず第一の光硬化性樹脂組成物を塗布し、紫外線を照射して(リワインダーモデルにて)硬化し、引き続き第二の光硬化性樹脂組成物を塗布硬化する方法と、また、銅線に第一の光硬化性樹脂組成物を塗布し、すぐに引き続き第二の光硬化性樹脂組成物を塗布、紫外線を照射することにより、第一の被覆層と第二の被覆層とを同時に硬化する方法も用いることができる。
上記で製造した被覆された銅線の末端から3cmの個所をマイクロストリッパー(Micro Electronics 社製、マイクロストリップ、MS-1-6N)ではさみ、引っ張り試験機(島津製作所製;図1)を用いて速度50m/minで引っ張り、銅線被覆層を引き抜く際の被覆除去応力(図2に示す最大応力)を測定した。
表1において、
PPG4000;分子量4000のポリプロピレングリコール(旭硝子ウレタン社製)。
PPG1000;分子量1000のポリプロピレングリコール(旭硝子ウレタン社製)。
SH28PA;ジメチルポリシロキサンポリオキシアルキレン共重合体(東レ・ダウコーニング社製)。
SF8411;エポキシ変性シリコーン(東レ・ダウコーニング社製)。
Irgacure184;1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)。
ルシリンTPO;2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド(BASF社製)。
Irganox245:エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)プロピオネート](チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社製)。
なお、表中、ビス((メタ)アクリロイルオキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカンは、「トリシクロデカンジイルジメタノールジ(メタ)アクリレート」とも言う。
引っ張り試験機の概念図を示す図である。 多層被覆層を引き抜く際の被覆除去応力挙動概念図である。

Claims (4)

  1. 複数の光硬化性樹脂硬化層からなる多層被覆であって、第一層のヤング率が5〜100MPaであり、第二層のヤング率が50〜1000MPaである電線用多層被覆。
  2. 第二層が、次の成分(A)及び(B);
    (A)ポリエステルポリオールとポリイソシアネートと水酸基含有(メタ)アクリレートの反応物であるウレタン(メタ)アクリレート、
    (B)環状構造及び1個のエチレン性不飽和基を有する化合物、
    を含有する放射線硬化性樹脂組成物を硬化させて得られるものである請求項1記載の電線用多層被覆。
  3. 放射線硬化性樹脂組成物が、更にシリコーン化合物を含有する請求項2記載の電線用多層被覆。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項記載の多層被覆を有する電線。
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