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JP2009147356A - 気化器及び成膜装置 - Google Patents

気化器及び成膜装置 Download PDF

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Abstract

【課題】微細なミストが気化室の内部を飛行する間に溶媒が揮発してパーティクルとなる状況を回避し、微細なミストを確実に気化させることのできる環境を作り出すことにより、パーティクルの生成を抑制することのできる気化器及びこれを備えた成膜装置の構成を提供する。
【解決手段】原料を溶媒に溶解してなる溶液原料を噴霧する噴霧手段411と、噴霧された前記溶液原料を気化するための加熱された気化面を備えた気化室412と、該気化室にて生成された原料ガスを導出するガス導出口413とを有する気化器410において、前記噴霧手段の噴霧方向にある前記気化面は、通気性を有するフィルタ414によって構成されている。
【選択図】図1

Description

本発明は気化器及び成膜装置に係り、特に、溶液原料を噴霧して気化させるための気化器の構成に関する。
一般に、半導体ウエハなどの基板の表面に絶縁薄膜を形成する成膜装置として、ガス反応によって成膜を行う化学気相成長装置(CVD装置)が用いられている。このようなCVD装置においてPZT等の多元系金属酸化物薄膜を成膜する場合には、原料となる有機金属化合物は常温常圧で固体である場合が多いため、その固体原料をガス化して成膜処理チャンバに供給する必要がある。この場合には、通常、固体原料を適当な溶媒に溶解させて(溶液原料と呼ばれる)液体とし、それを気化器において気化して成膜処理チャンバに供給する。このような原料供給方式は溶液気化法と呼ばれ、バブリング法や固体昇華法に代わる有望なガス化法の一つとして近年盛んに研究開発がなされている(例えば、特許文献1参照)。
上記の溶液気化法を用いて例えば3元系の金属酸化物薄膜を成膜する場合について説明する。ここでは、図9に示す成膜装置100を用いる。この成膜装置100には、原料供給系101Aと、気化器110と、成膜装置本体120とが設けられている。原料供給系101Aにおいて、3系統に分けられた原料容器、例えば鉛系原料の溶液を貯蔵した原料容器101a、ジルコニウム系原料の溶液を貯蔵した原料容器101b及びチタン系原料の溶液を貯蔵した原料容器101cのそれぞれに蓄積された原料溶液は、圧送ガス管102を介して加圧ガスAが供給されることにより原料供給ライン103a、103b及び103cに押し出され、流量制御器105a、105b及び105cを通して原料搬送ライン107に押し出される。この原料搬送ライン107には不活性ガス(例えばHe,Ar)などのキャリアガスBが供給されていて、原料供給ライン103a〜103cがそれぞれ原料搬送ライン107に接続されてなるマニホールド構造により、原料搬送ライン107内で溶液原料とキャリアガスが混合され、気液混合状態で気化器110へと送られる。なお、例えば酢酸ブチルやオクタンやTHF(テトラヒドロフラン)などの溶剤を収容した溶剤容器101dも設けられている。この溶剤容器101dに収容された溶剤も、加圧ガスAにより溶媒供給ライン104に押し出され、流量制御器106を介して原料搬送ライン107に供給されるように構成されている。
気化器110には噴霧ノズル111が設けられ、この噴霧ノズル111に上記原料搬送ライン107が接続されている。また、噴霧ノズル111には、ガス供給配管108によって噴霧ガスCが流量制御器109を通して供給される。この噴霧ノズル111には二重管構造を有する噴霧口が設けられ、例えば、外管内に供給される噴霧ガスCによって内管に供給された溶液原料及びキャリアガスが気化室112内へ噴霧される。ここで、使用される溶媒の気化温度と原料そのものの気化温度は通常異なるので、気化温度の低い溶媒が先に気化しないようにノズル部分は室温程度まで冷却される。例えば、PZTの成膜に用いられる各種原料(通常は常温常圧で固体)の気化温度はおよそ180〜250℃であるのに対して、溶媒である酢酸ブチルの気化温度は126℃である。
気化室112の内面は原料を気化させるための気化面112aであり、例えば200℃前後に加熱されている。ノズル111から噴出した霧状の溶液原料は気化面112aにぶつかって瞬時に気化し、気化室112内において原料ガスとなる。この原料ガスは、フィルタ114を通してガス導出口113から導出され、ガス輸送管116を通して成膜装置本体120の成膜チャンバ121に供給される。成膜チャンバ121内には、上記ガス輸送管116が接続されたシャワーヘッド122や基板Wを載置するためのサセプタ123などが配置されている。また、シャワーヘッド122には反応ガス供給管117を介してOなどの酸化性ガスも供給される。成膜チャンバ121内では、上記原料ガスと酸化性ガスの反応によって基板W上に薄膜が形成される。
特開平7−94426号公報
しかしながら、上記従来の成膜装置においては、上記気化器110のノズル111から溶液原料を噴霧する場合に、溶液原料の噴霧状態が変動することによって気化室112内の原料ガスの気化状態が変動し、成膜チャンバ121への原料ガスの供給状態が不安定になるという問題点がある。また、気化室112内やその下流側の配管において溶液原料が固化してなるパーティクルが生成され、このパーティクルが成膜チャンバ121内に導入されて成膜再現性や膜質の低下をもたらすという問題点もある。
より詳細に述べると、上記噴霧ノズル111から気化室112の内部に噴霧された霧状の溶液原料のうち、大部分は高温の気化面112aにぶつかった瞬間に気化するが、一部のミストは気化しきれずに微細なミストとなり、気化室112の内部やその下流の配管内などにおいて溶媒が抜けて球状パーティクルとなる。実際に気化器内部に残留したパーティクルを走査型電子顕微鏡で観察したところ、球状パーティクルの大きさはまちまちで直径0.1〜1.8μmまで広く分布していた。ここで、気化室112内に噴霧されたミストから単に溶媒が揮発して球状パーティクルが生成されたと仮定すると、噴霧されたミストの大きさも一様ではなく、直径20〜370μmの範囲で広く分布しているものと推定される。したがって、比較的大きなミストが気化面112aに衝突したときには溶液原料が完全に気化されず、より細かなミスト(飛沫)となり、この細かなミストが気化室112の内部を飛行している間に溶媒が揮発し、パーティクルを生じているものと考えられる。
また、上記パーティクルの発生は、ガス導出口113の手前に配置されたフィルタ(メッシュ)114によって一部除去することができるが、微小なミストはフィルタ114を通過して下流側配管内でパーティクルを生成する可能性があり、また、パーティクルの除去性能を高めるために目を細かくしたりするとフィルタ114に目詰まりが発生しやすくなるという問題点がある。
そこで、本発明は上記問題点を解決するものであり、その課題は、微細なミストが気化室の内部を飛行する間に溶媒が揮発してパーティクルとなる状況を回避し、微細なミストを確実に気化させることのできる環境を作り出すことにより、パーティクルの生成を抑制することのできる気化器及びこれを備えた成膜装置の構成を提供することにある。
本発明の気化器は、原料を溶媒に溶解してなる溶液原料を噴霧する噴霧手段と、噴霧された前記溶液原料を気化するための加熱された気化面を備えた気化室と、該気化室にて生成された原料ガスを導出するガス導出口とを有する気化器において、前記噴霧手段の噴霧方向にある前記気化面は、通気性を有するフィルタによって構成されていることを特徴とする。
この発明によれば、噴霧手段により溶液原料がフィルタに噴霧されるため、フィルタの内部でミストが飛散して微細なミストになっても、微細なミストの一部はフィルタ内部に飛散して他のフィルタの部分に当たることにより再度気化されるため、実質的に複数の気化面の間隔を小さくした場合と同様に、気化率を高め、パーティクルの発生を抑制することができる。なお、フィルタに溶液原料が浸透してフィルタ材の表面に広がった状態で気化が行われる場合もある。
ここで、ガス導出口は、噴霧手段から見てフィルタの手前に設けられる場合と、噴霧手段から見てフィルタ材の背後に設けられる場合とがある。前者の場合には、ガス導出口は噴霧手段から見て図14に示すようにフィルタの側方にあってもよく、或いは、噴霧手段側(上部壁)に設けられていてもよい。また、フィルタとしては、繊維状素材で構成されるメッシュ、繊維状素材を固めたフィルタ材、多孔質材などによって構成できる。
本発明において、前記フィルタの表面は複数の開口部を有する伝熱材に接触し、該伝熱材を介して加熱されていることが好ましい。フィルタの表面が伝熱材に接触し、この伝熱材を介して加熱されていることにより、フィルタの表面全体をより均一に加熱することが可能になるので、ミストの気化率を高めることができるとともに、パーティクルの発生をさらに抑制できる。また、伝熱材には複数の開口部が設けられているので、これらの開口部を通してミストがフィルタに到達するように構成したり、これらの開口部を通してフィルタを通過した原料ガスを排出したりすることが可能になる。また、前記フィルタの裏面は複数の開口部を有する伝熱材に接触し、該伝熱材を介して加熱されていることも好ましい。特にフィルタの表面及び裏面に伝熱材が接触配置される場合にはフィルタを全面的にほぼ均等に加熱することができる。
本発明において、前記フィルタと前記気化室との間は、シール手段によりシールされていることが好ましい。これによれば、隙間からミストやパーティクルが漏洩することを防止できる。
本発明において、前記フィルタは、前記噴霧手段に向かって凹曲面状の裏面を有することが好ましい。これによれば、ミストの気化状態をより均一化できるため、気化率の向上及びパーティクルの低減に効果がある。
本発明において、前記フィルタの裏面は前記気化室の内面に接触するように配置されることが好ましい。これによれば、気化室の内面からフィルタに熱が伝達されるように構成できる。特に、この場合には、フィルタには裏面側の温度が表面側の温度よりも相対的に高くなるように温度勾配を形成することができるので、フィルタの厚さ方向のより広い範囲を用いて原料ガスの気化を生じさせることができるため、堆積物の付着分布を緩和し、フィルタの目詰まりを抑制することができる。
本発明において、前記フィルタの裏面からパージガスを供給するパージガス供給手段を有することが好ましい。これによれば、パージガスによってフィルタへのパーティクルの付着が低減され、また、一旦付着したパーティクルを除去することができる。
次に、本発明のさらに別の気化器は、原料を溶媒に溶解してなる溶液原料を噴霧する噴霧手段と、噴霧された前記溶液原料を気化するための加熱された気化面を備えた気化室と、該気化室にて生成された原料ガスを導出するガス導出口とを有する気化器において、前記噴霧手段の噴霧方向にある前記気化面は、多数の孔若しくは穴を有する多孔材によって構成されていることを特徴とする。
この発明によれば、多孔材の表面に多数の孔若しくは穴が設けられていることによって、多孔材の孔若しくは穴の或る内面部分に到達したミストが飛散して微細なミストが発生しても、当該微細なミストが孔若しくは穴の別の内面部分に接触して気化される確率が増大するので、実質的に複数の気化面の間隔を小さくした場合と同様の効果が得られ、気化率を向上させ、パーティクルの発生を抑制することができる。
ここで、ガス導出口は、噴霧手段から見て多孔材の手前側方に設けられる場合と、噴霧手段側に設けられる場合と、多孔材に貫通孔を設けた上で噴霧手段から見て多孔材の背後に設けられる場合とがある。
本発明において、前記多孔材の前記孔もしくは穴が開口幅よりも短い軸線距離を有する貫通孔であり、複数の前記多孔材が噴霧方向に重なるように配置されていることが好ましい。これによれば、複数の多孔材(多孔板)間でミストが衝突し合うことによって、実質的に複数の気化面の間隔を小さくした場合と同様になり、気化率を向上させ、パーティクルの発生を抑制することができる。ここで、複数の多孔材のうち、隣接する多孔材間において、それぞれに設けられる貫通孔が相互に平面的に重ならない位置に配置されるように構成されていることが望ましい。これによって、或る多孔材の貫通孔を通過したミストが隣接する多孔材の表面(貫通孔のない部分)に接触し気化されるため、微細なミストを効率的に気化することができるとともに、微細なミストが複数の多孔材の設置領域を通過しにくく構成できる。
また、多孔材の中心部をくり抜くことによって、多孔材の中心部の温度低下が生じないように構成することもできる。例えば、多孔板の中心部に上記の孔や穴よりも大きな開口部を設けてもよく、また、多孔板の中心部に近づくほど大きな孔を設けるようにしてもよい。これは、多孔材に多くのミストが当たると、ミストの気化熱により多孔材の中心部の温度が低下するためである。
本発明において、前記多孔材の前記孔若しくは穴が開口幅よりも長い軸線距離を有することが好ましい。これによれば、多孔材(多孔体)の孔若しくは穴の内部に侵入したミストがその孔若しくは穴の内面に接触し気化されるときに、一部気化されない微細なミストが残っても、当該孔若しくは穴の他の部分に直ちに接触して再度気化されることになるため、気化率の向上及びパーティクルの低減を図ることができる。
本発明において、前記多孔材を振動させる振動手段を有することが好ましい。これによれば、ミストの気化を促進させたり、パーティクルの付着を防止したりすることができる。
次に、本発明の成膜装置は、上記のいずれかに記載の気化器と、前記溶液原料を前記気化器に供給する原料供給系と、前記気化器から導出される前記原料ガスを用いて成膜するための成膜室とを有することを特徴とする。上記の気化器を有することによってパーティクルを低減することができるため、成膜室で行われる成膜処理において膜質の向上を図ることができる。
第1実施形態の気化器の構造を示す縦断面図。 第2実施形態の気化器の構造を示す縦断面図。 第3実施形態の気化器の構造を示す縦断面図。 第4実施形態の気化器の構造を示す縦断面図。 第5実施形態の気化器の構造を示す縦断面図。 第6実施形態の気化器の構造を示す縦断面図。 第7実施形態の気化器の構造を示す縦断面図。 第8実施形態の気化器の構造を示す縦断面図。 従来の気化器を含む成膜装置の全体構成を示す概略構成図。
次に、図面を参照して本発明に係る気化器及び成膜装置の実施形態を説明する。以下に示す気化器及び成膜装置の実施形態は、基本的には、図9に示す原料供給系101A、気化器110及び成膜装置本体120を備えた成膜装置100にて説明したものと同じ概略構造を有するものであり、特に、以下に説明する気化器を用いて成膜装置を構成する場合についての説明は省略する。
[第1実施形態]
まず、図1を参照して本発明に係る第1実施形態の気化器410について説明する。この実施形態の気化器410は、噴霧ノズル411と、加熱手段412cなどによって加熱された気化室412とを有し、また、ガス導出口413が設けられている。
この実施形態では、気化室412の内部にフィルタ414が配置され、このフィルタ414の表面414aは、噴霧ノズル411の噴霧口411aに対向配置されていることにより、実質的に主要な気化面となっている。フィルタ414は、金属などの繊維状材料で構成されたメッシュ、同繊維状材料を押し固めたフィルタ材、多孔質材料などによって構成される。なお、隙間からミストやパーティクルが漏洩しないように、フィルタ414と気化室412との間は、Oリングやガスケットなどのシール手段によりシールされていることが望ましい。
また、本実施形態では、ガス導出口413が噴霧口411aから見てフィルタ414の背後に配置されている。したがって、気化空間412Sは、気化室412の内部の噴霧口411aとフィルタ414の間の空間で構成され、この気化空間412Sで生成された原料ガスがフィルタ414を通過することにより、或いは、フィルタ414内で生成された原料ガスがフィルタ414から出ることにより、ガス導出口413から導出されるように構成されている。
この実施形態では、噴霧口411aから噴霧されたミストは直接フィルタ414の表面414aに吹き付けられる。表面414aに吹き付けられたミストは、加熱手段412cによってフィルタ414が加熱された状態にあるので、フィルタ414から熱を受けて瞬時に気化するが、このとき、気化できずに残留した微細なミストの一部は、気化空間412Sとガス導出口413との間の圧力差(圧力勾配)によってフィルタ414の内部を進み、フィルタ414の他の部分に接触してさらに気化される。したがって、噴霧口411aから放出されたミストが表面414aに衝突して生じた微細なミストの上記一部にとっては、僅かな飛行距離でフィルタ414の他の部分に接触して気化されるため、実質的に噴霧ノズルに対向する第1の気化面と、第1の気化面に対向する第2の気化面の間隔を狭めた場合と同様の作用効果、すなわち、気化率の向上及びパーティクルの低減といった効果を得ることができる。
この実施形態では、フィルタ414は気化室412の底面(ガス導出口413の周囲にある内面)と離間した状態に配置されているので、フィルタ414のほぼ全面を有効に用いて高いフィルタ効果を得ることができる。ただし、フィルタ414を気化室412の底面に接触させ、この底面を介してフィルタ414を加熱することにより、噴霧ノズル411の噴霧口411aから溶液原料を噴霧している状態で、フィルタ414の裏面側の温度が高く、表面414aの温度が相対的に低くなるように、フィルタ414の厚さ方向に温度勾配を形成してもよい。これによって、フィルタ414において厚さ方向の堆積物の付着分布の偏りを緩和することができるため、フィルタ414の目詰まりを抑制し、フィルタ414を長寿命化することができる。
なお、後述する各実施形態のように、本実施形態において、ガス導出口413をフィルタ414の表面414a側に設けてもよい。この場合には、ガス導出口413を通過する原料ガスに対してフィルタ414のフィルタ効果を与えることはできないが、気化率の向上とパーティクルの低減効果は同様に得ることができる。この場合、ガス導出口413にフィルタ414とは別のフィルタを設置してもよい。
[第2実施形態]
次に、図2を参照して、本発明に係る第2実施形態の気化器420について説明する。この実施形態の気化器420では、第12実施形態と同様のフィルタ424の表面424aが気化面として噴霧ノズル421の噴霧口421aに対向配置されているが、このフィルタ424の裏面は気化室422の内面に接触するように配置されている。また、ガス導出口423はフィルタ424の表面424a側の側面に設けられている。
この実施形態では、加熱手段422cで発生した熱が気化室422の内面からフィルタ424に伝達されるように構成されているため、噴霧ノズル421の噴霧口421aから溶液原料を噴霧している状態で、フィルタ424の裏面側の温度が高く、表面424aの温度が相対的に低くなるように、フィルタ424の厚さ方向に温度勾配を形成することができる。これによって、フィルタ424の厚さ方向のより広い範囲を用いて原料ガスの気化を生じさせることができ、フィルタ424における厚さ方向の堆積物の付着分布を緩和し、フィルタ424の目詰まりを抑制することができる。
この実施形態の気化器420では、第1実施形態と同様に、噴霧口421aから噴霧されたミストがフィルタ424の表面424aに吹き付けられ、フィルタ424から熱を受けて瞬間的に気化し、ここで完全に気化しなかった場合には微細なミストが周囲に飛散する。この微細なミストのうちフィルタ424の内部に向かったものはやがてフィルタ424の他の部分に接触し、ここで気化される。フィルタ424によって生成された原料ガスは気化空間422Sからガス導出口423を経て外部へ導出される。なお、特にフィルタ(メッシュ)の詰まりを回避したい場合や、フィルタに詰まったパーティクルを追い出してフィルタの再生を行いたい場合は、フィルタ424の裏面から別途パージガスを供給するように構成してもよい。このパージガスによってフィルタへのパーティクルの付着が低減され、また、一旦付着したパーティクルを除去することができる。
[第3実施形態]
次に、図3を参照して、本発明に係る第3実施形態の気化器430について説明する。この実施形態の気化器430においては、第2実施形態とほぼ同様に、気化室432の内部にフィルタ434が配置され、フィルタ434の表面434aは噴霧ノズル431の噴霧口431aに対向配置されている。また、ガス導出口433は噴霧口431aから見てフィルタ434の背後に設けられている。
本実施形態では、フィルタ434の表面及び裏面に、アルミニウムなどの熱伝導性の良好な素材で構成された伝熱材435,436が接触するように配置されている。これらの伝熱材435,436は、気化室432の内面に接触し、加熱手段432cから発せられる熱をフィルタ434に伝達する機能を有する。伝熱材435,436は、複数の開口部435a,436aを有し、これらの開口部435a,436aによってフィルタ434の表面及び裏面が露出するように構成されている。これらの開口部はフィルタの目よりも大幅に大きい寸法を有することが好ましく、また、複数の開口部がフィルタ434の表面及び裏面に沿って縦横に配列されていることが好ましい。
この実施形態では、フィルタ434の表面及び裏面に伝熱材435,436が接触配置されているため、フィルタ434を全面的にほぼ均等に加熱することができ、その結果、気化率の向上やパーティクルの低減を図ることができる。このとき、伝熱材435,436の開口部435a,436aは、フィルタ434の表面にミストが直接吹き付けられるようにし、また、フィルタ434の裏面から原料ガスが支障なくガス導出口433へ向けて移動できるようにしている。なお、この実施形態において、伝熱材435,436のうちのいずれか一方のみを用いるように構成しても構わない。また、伝熱材435,436に直接ヒータなどの加熱手段を内蔵しても構わない。
[第4実施形態]
次に、図4を参照して、本発明に係る第4実施形態の気化器440について説明する。この実施形態の気化器440は、気化室442の内部に、噴霧ノズル441の噴霧口441aに向かって凹曲面状の表面444aを有するフィルタ444が配置されている。このフィルタ444は、凹曲面状の表面を有する伝熱材445の上に接触配置されている。この伝熱材445には、第14実施形態と同様に複数の開口部445aが設けられている。
この実施形態では、フィルタ444の表面444aが凹曲面状に構成されているので、噴霧口441aからの距離を全表面に亘ってほぼ同一にすることができる。したがって、ミストの気化状態をより均一化することができるため、気化率の向上及びパーティクルの低減に効果がある。ここで、表面444aは噴霧口441aの近傍を中心とした球面状(半球状)に構成されていることがより好ましい。
[第5実施形態]
次に、図5を参照して、本発明に係る第5実施形態の気化器450について説明する。この実施形態の気化器450においては、気化室452の内部に多数の孔454a,455aを備えた多孔材である多孔板454,455が配置されている。多孔板454,455は、噴霧口451aから見て相互に重なるように配置されている。このとき、多孔板454の孔454aと、多孔板455の孔454aとは噴霧口451aから見て平面的に異なる位置に配置されるように構成されていることが望ましい。なお、ガス導出口453は、噴霧口451a側の気化室452の壁面に設けられている。また、多孔板454,455は、気化室から伝導熱を受けて加熱されていてもよく、或いは、多孔板の内部に直接ヒータなどの加熱手段が内蔵されていてもよい。
この実施形態では、噴霧口451aから噴霧されたミストは、多孔板454,455の表面にて加熱され気化するが、気化しきれなかった一部の微細なミストは、孔454a,455aの他の内面部分や他の多孔板の表面若しくは裏面に接触し、再び熱を受けて気化する。したがって、微細なミストの飛行距離を実質的に短縮することができるため、気化率を向上し、また、パーティクルの発生を抑制することができる。
ここで、場合によっては、ノズルから出たミストが直接気化器内壁に当たるように、多孔板454,455の中心部を(大きく)くり抜いてもよい。例えば、多孔板の中心部に上記の孔や穴よりも大きな開口部を設けてもよく、また、多孔板の中心部に近づくほど大きな孔を設けるようにしてもよい。これによって、多孔板に多くのミストが当たったときに多孔板の中心部の温度が低下するといったことを防止できる。これは、ミストの気化熱により多孔材の中心部の温度が低下しやすいため、中心部に固形物が堆積することを防止する必要があるためである。
[第6実施形態]
次に、図6を参照して、本発明に係る第6実施形態の気化器460について説明する。この実施形態の気化器460は、気化室462の内部に、多数の孔を有する多孔材である多孔体(多孔ブロック)464が配置されている点で上記第5実施形態と同様であるが、この多孔体464の孔464aは、その開口幅(開口直径)よりも長い軸線距離(貫通距離或いは深さ)を有している点で上記とは異なる。この多孔体464は、例えばハニカム構造を有するものとすることができる。図示例のように噴霧ノズル461の噴霧口461aから見てガス導出口463が多孔体464の背後に配置されている場合には、孔464aは貫通孔として構成される。また、図示例とは異なるが、図2に示すものと同様にガス導出口が多孔体464の噴霧口461a側の側方に、或いは、図5に示すものと同様にガス導出口が噴霧口461a側に設けられている場合には、孔464aを、底部を有する穴としてもよい。
多孔体464の孔の断面形状は、円形、三角形、四角形、六角形などであってもよい。また、場合によっては多孔体に変えてフィン状のもの(例えばラジエターのようなもの)であってもよい。多孔体464は、気化室462からの伝導熱によって、或いは、直接内蔵されたヒータなどの加熱手段などによって加熱されている。また、ミストの気化を促進させたり、パーティクルの付着を防止したりするために、多孔体464を超音波振動子などによって振動させてもよい。
この実施形態では、噴霧口461aから噴霧されたミストは多孔体464の孔464aの内面に接触して上記と同様に気化されるが、ここで、気化しきれずに残った微細なミストは、長い距離を飛行することなく、その孔464a内の他の内面部分に接触するため、そこで再び気化される。したがって、上記と同様に気化率が向上し、また、パーティクルの発生を抑制することができる。
[第7実施形態]
次に、図7を参照して、本発明に係る第7実施形態の気化器470について説明する。この実施形態の気化器470は、その気化室472の内部に、第6実施形態と同様に構成された多孔体474と、第16実施形態と同様に構成された多孔板475,476を噴霧ノズル471の噴霧口471aの噴霧方向に順次に配置したものである。ガス導出口473は、多孔板475,476の背後に設けられている。
この実施形態では、多孔体474を通過した微細なミストをさらに多孔板475,476によって捕捉し、気化させることができるので、さらに気化率を向上し、また、パーティクルを低減することができる。より具体的には、多孔体474を通過したミストやパーティクルは、多孔体の整流作用によってその出口付近では孔の軸線方向に沿ってほぼ直進するようになる。直進したミストやパーティクルは多孔板475,476に対して垂直に衝突する一方、ガスは多孔板の孔をすり抜けて通過することができる。多孔板に衝突したミストやパーティクルはそこで気化するか、或いは、ファンデルワールス力によって多孔板に捕獲されることになる。なお、この実施形態において、噴霧口471a側に多孔板を配置し、ガス導出口473側に多孔材を配置しても構わない。
[第8実施形態]
最後に、図8を参照して、本発明に係る第8実施形態別の気化器480について説明する。この実施形態の気化器480においては、気化室482の内部に第5実施形態と同様に構成された多孔板484,485は、噴霧ノズル481の噴霧口481aに対向配置されている。そして、ガス導出口483の手前位置に第6実施形態と同様に構成された多孔体486を設けている。
この実施形態では、多孔板484,485を通過した微細なミストをさらにガス導出口483の手前に配置された多孔体486によって捕捉し、気化させることができるので、気化率の向上及びパーティクルの低減を図ることができる。ガス導出口483は噴霧口481a側に設けられているので、多孔体486もまた多孔板484,485の噴霧口481a側に配置される。なお、本実施形態において、多孔板484,485と、多孔体486とを入れ替えて配置しても構わない。
尚、本発明の気化器及び成膜装置は、上述の図示例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、上記各実施形態では、PZT成膜のための原料を気化する場合を前提として説明したが、本発明はこれに限定されず、他の膜種のための原料を気化する場合にも適用することが可能である。他の膜種としては、例えば、Sr原料とBi原料とTa原料とを気化させてSBT金属酸化物の薄膜等を形成する場合や、Bi原料とLa原料とTi原料とを気化させてBLT金属酸化物の薄膜等を形成する場合や、Ba原料とSr原料とTi原料とを気化させてBST金属酸化物の薄膜等を形成する場合や、Sr原料とTi原料とを気化させてSTO金属酸化物の薄膜等を形成する場合などが挙げられる。
100…成膜装置、101A…原料供給系、110…気化器、103a,103b,103c…原料供給ライン、107…原料搬送ライン、411…噴霧ノズル、412…気化室、413…ガス導出口、414…フィルタ、414a…表面、435,436…伝熱材、454,455…多孔板、464…多孔体、410、420、430、440、450、460、470、480…気化器

Claims (13)

  1. 原料を溶媒に溶解してなる溶液原料を噴霧する噴霧手段と、噴霧された前記溶液原料を気化するための加熱された気化面を備えた気化室と、該気化室にて生成された原料ガスを導出するガス導出口とを有する気化器において、前記噴霧手段の噴霧方向にある前記気化面は、通気性を有するフィルタによって構成されていることを特徴とする気化器。
  2. 前記フィルタの表面は複数の開口部を有する伝熱材に接触し、該伝熱材を介して加熱されていることを特徴とする請求項1に記載の気化器。
  3. 前記フィルタと前記気化室との間は、シール手段によりシールされていることを特徴とする請求項1に記載の気化器。
  4. 前記フィルタの裏面は複数の開口部を有する伝熱材に接触し、該伝熱材を介して加熱されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の気化器。
  5. 前記フィルタは、前記噴霧手段に向かって凹曲面状の裏面を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の気化器。
  6. 前記フィルタの裏面は前記気化室の内面に接触するように配置されることを特徴とする請求項1に記載の気化器。
  7. 前記フィルタには、裏面側の温度が表面側の温度よりも相対的に高くなるように温度勾配が形成されることを特徴とする請求項6に記載の気化器。
  8. 前記フィルタの裏面からパージガスを供給するパージガス供給手段を有することを特徴とする請求項6又は7に記載の気化器。
  9. 原料を溶媒に溶解してなる溶液原料を噴霧する噴霧手段と、噴霧された前記溶液原料を気化するための加熱された気化面を備えた気化室と、該気化室にて生成された原料ガスを導出するガス導出口とを有する気化器において、前記噴霧手段の噴霧方向にある前記気化面は、多数の孔若しくは穴を有する多孔材によって構成されていることを特徴とする気化器。
  10. 前記多孔材の前記孔もしくは穴が開口幅よりも短い軸線距離を有する貫通孔であり、複数の前記多孔材が噴霧方向に重なるように配置されていることを特徴とする請求項9に記載の気化器。
  11. 前記多孔材の前記孔若しくは穴が開口幅よりも長い軸線距離を有することを特徴とする請求項9に記載の気化器。
  12. 前記多孔材を振動させる振動手段を有することを特徴とする請求項9又は11のいずれか一項に記載の気化器。
  13. 請求項1乃至12のいずれか一項に記載の気化器と、前記溶液原料を前記気化器に供給する原料供給系と、前記気化器から導出される前記原料ガスを用いて成膜するための成膜室とを有することを特徴とする成膜装置。
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